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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ピッキングカート
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
B65G1/137 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018162981
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033167
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518199920
【氏名又は名称】株式会社B-STORM
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】羽方 将之
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-033219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029213(US,A1)
【文献】特開平11-322027(JP,A)
【文献】特開2000-142927(JP,A)
【文献】特開2017-114677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッキング対象物を格納する場所の周辺を移動するカート本体と、このカート本体に搭載されてピッキング対象物を収納する複数の籠と、前記複数の籠の近傍にそれぞれ対応して配置された表示器と、前記カート本体に搭載されて前記カート本体がピッキング作業位置に到達したことを検出する位置検出部とを備えており、
前記表示器は、前記カート本体がピッキング作業位置に到達すると、対応する籠についての、前記ピッキング作業位置におけるピッキングデータの内容を表示する構成となっており、
前記位置検出部は、前記カート本体の周辺の画像を撮影する、前記カート本体に搭載された第1カメラを備えており、
前記位置検出部は、前記第1カメラで取得した画像に基づいて前記カート本体の位置の検出を行う構成となっており、
さらに発光部と照射位置補正部とを備えており、
前記発光部は、前記カート本体に搭載されており、かつ、前記カート本体の停止位置において、前記ピッキング対象物又は前記ピッキング対象物の格納位置に向けて発光する構成となっており、
前記照射位置補正部は、前記カート本体に搭載されて前記ピッキング対象物の格納位置情報の画像を取得する第2カメラを備えており、
かつ、前記照射位置補正部は、前記カート本体が前記停止位置に停止したときに、前記第2カメラで撮影した画像に基づいて、前記発光部による光の照射位置を、前記発光部からの光の色又は点滅パターンにより特定し、特定された前記光の照射位置を、あらかじめ設定された製品アドレスにより特定される位置と照合し、不整合があった場合には、前記製品アドレスと整合するように、前記発光部からの発光方向を補正する構成となっている
ことを特徴とするピッキングカート。
【請求項2】
さらに制御部と駆動部とを備えており、
前記制御部は、前記カート本体の停止位置において、前記カート本体に搭載された全ての籠に対応するピッキングが完了したことを判定した後、前記駆動部により次の停止位置に前記カート本体を移動させる構成となっている
請求項1に記載のピッキングカート。
【請求項3】
前記照射位置補正部は、前記カート本体の水平位置を補正するためのジャイロを備えている
請求項又はに記載のピッキングカート。
【請求項4】
前記制御部は、全ての前記籠についてのピッキング作業が終了した後、前記駆動部により、籠の払い出し位置に前記カート本体を移動させ、その後、ピッキング作業準備開始用のホームポジションに前記カート本体を移動させる構成となっている
請求項に記載のピッキングカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の取出し又は仕分けを行うためのピッキングに用いられるピッキングカートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、商品の仕分けシステムにおいて用いられる自走式カートが記載されている。この自走式カートは表示器を有しており、自走式カートが所定の棚の前に停止した後、この表示器によって、棚位置と商品名とを作業者に呈示するようになっている。
【0003】
しかしながら、カートが複数の籠を有する場合は、表示器の表示と籠との対応がわかりにくくなってしまう。実際には、1回の停止位置において、一つの棚から複数の籠に商品を入れる場合や、複数の棚から一つの籠に商品を入れる場合など、様々な状況が生じうる。このような複雑な状況においても、作業者が、効率よくかつ誤りなくピッキングを行うことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-322027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、ピッキング対象物やピッキング位置と、対象物を収容すべき籠との関係が判りやすくなり、ピッキング作業の効率を向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0007】
(項目1)
ピッキング対象物を格納する場所の周辺を移動するカート本体と、このカート本体に搭載されてピッキング対象物を収納する複数の籠と、前記複数の籠の近傍にそれぞれ対応して配置された表示器と、前記カート本体がピッキング作業位置に到達したことを検出する位置検出部とを備えており、
前記表示器は、前記カート本体がピッキング作業位置に到達すると、対応する籠についての、前記ピッキング作業位置におけるピッキングデータの内容を表示する構成となっている
ことを特徴とするピッキングカート。
【0008】
(項目2)
前記位置検出部は、前記カート本体の周辺の画像を撮影する第1カメラを備えており、
さらに、前記位置検出部は、前記第1カメラで取得した画像に基づいて前記カート本体の位置の検出を行う構成となっている
項目1に記載のピッキングカート。
【0009】
(項目3)
さらに制御部と駆動部とを備えており、
前記制御部は、前記カート本体の停止位置において、前記カート本体に搭載された全ての籠に対応するピッキングが完了したことを判定した後、前記駆動部により次の停止位置に前記カート本体を移動させる構成となっている
項目1又は2に記載のピッキングカート。
【0010】
(項目4)
さらに発光部を備えており、
前記発光部は、前記カート本体の停止位置において、前記ピッキング対象物又は前記ピッキング対象物の格納位置に向けて発光する構成となっている
項目1~3のいずれか1項に記載のピッキングカート。
【0011】
(項目5)
さらに照射位置補正部を備えており、
前記照射位置補正部は、前記カート本体が停止位置に停止するたびに、前記発光部からの発光方向を補正する構成となっている
項目4に記載のピッキングカート。
【0012】
(項目6)
前記照射位置補正部は、前記ピッキング対象物の格納位置情報の画像を取得する第2カメラを備えており、
前記照射位置補正部は、前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記発光方向を補正する構成となっている
項目5に記載のピッキングカート。
【0013】
(項目7)
前記照射位置補正部は、前記カート本体の水平位置を補正するためのジャイロを備えている
項目5又は6に記載のピッキングカート。
【0014】
(項目8)
前記制御部は、全ての前記籠についてのピッキング作業が終了した後、前記駆動部により、籠の払い出し位置に前記カート本体を移動させ、その後、ピッキング作業準備開始用のホームポジションに前記カート本体を移動させる構成となっている
項目3に記載のピッキングカート。
【発明の効果】
【0015】
本発明のピッキングカートによれば、ピッキング対象物やピッキング位置と、対象物を収容すべき籠との関係を作業者が容易に理解することができる。したがって、本発明によれば、ピッキング作業の効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るピッキングカートの概略的な構成を示すためのブロック図である。
図2図1のピッキングカートの概略的な説明図である。
図3図1のピッキングカートの動作を説明するための説明図である。
図4図1のピッキングカートの動作を説明するためのフローチャートである。
図5】ピッキングデータの一例を示す説明図である。
図6】製品データ構成の一例を示す説明図である。
図7】カート走行経路シークエンスの一例を示す説明図である。
図8】カート走行経路の一例を示す説明図である。
図9】表示器に表示されるデータの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るピッキングカート(以下単に「カート」と略称することがある)について説明する。以下の実施形態では、対象物の取り出しを行うためのシステムを前提として説明する。ただし、本発明のカートを、対象物の仕分け用のシステムにおいて用いることは可能である。
【0018】
(本実施形態の構成)
本実施形態のピッキングカートは、ピッキング対象物を格納する場所の周辺を移動するカート本体1と、このカート本体1に搭載されてピッキング対象物を収納する複数の籠2と、複数の籠2の近傍にそれぞれ対応して配置された表示器3と、カート本体1がピッキング作業位置に到達したことを検出する位置検出部4とを主要な構成として備えている(図1及び図2参照)。さらに、本実施形態のピッキングカートは、入力部5と、制御部6と、駆動部7と、発光部8と、照射位置補正部9とを追加的な要素として備えている。
【0019】
(カート本体)
カート本体1は、複数の籠2を多段で搭載できるラック11を備えている(図2参照)。具体的には、ラック11は、6個の籠2を縦3段×横2列で搭載できるようになっている。カート本体1としては、手押し式でもよいが、本実施形態では、駆動部7により駆動される自走式のものとなっている。
【0020】
(籠)
籠2は、上方が開口しており、作業者がピッキング対象物を容易に出し入れすることができるように構成されている。このような籠2としては、従来のピッキング作業に用いられるものと同様でよいので、詳しい説明は省略する。
【0021】
(表示器)
表示器3は、カート本体1のラック11において、それぞれの籠2の近傍に設置されている(図2参照)。表示器3は、カート本体1がピッキング作業位置に到達すると、対応する籠2についての、ピッキング作業位置におけるピッキングデータの内容を表示する構成となっている。表示器3としては、例えばLEDや液晶や電子ペーパーを用いた表示器を用いることができるが、これには制約されない。
【0022】
表示器3は、ピッキング終了ボタン31を備えている(図2参照)。ピッキング終了ボタン31は、作業者がピッキング作業終了時に押し下げることによって、表示器3の表示を消すことができるようになっている。
【0023】
(位置検出部)
位置検出部4は、カート本体1の周辺の画像を撮影する第1カメラ41を備えている。位置検出部4は、第1カメラ41で取得した画像に基づいてカート本体1の位置の検出を行う構成となっている。
【0024】
(入力部)
入力部5は、システム側から制御部6へのデータを受け取ることができる機能要素であり、例えば、無線LANを介してシステム側と通信できる通信機器が用いられている。
【0025】
(制御部)
制御部6は、カート本体1の停止位置において、カート本体1に搭載された全ての籠に対応するピッキングが完了したことを判定した後、駆動部7により次の停止位置にカート本体を移動させる構成となっている。
【0026】
本実施形態の制御部6は、全ての籠2についてのピッキング作業が終了した後、駆動部7により、籠2の払い出し位置にカート本体1を移動させ、その後、ピッキング作業準備開始用のホームポジションにカート本体1を移動させる構成となっている。制御部6は、例えば、適宜なメモリと、CPUと、入出力インタフェースとを備えた構成とされている。
【0027】
(駆動部)
駆動部7は、制御部6の指令に基づき、カート本体1を所定の位置及び方向に走行させる構成となっている。具体的には、駆動部7は、車輪、モーター(図示せず)、バッテリー(図示せず)、操舵機構(図示せず)など、カート本体1の走行に必要な構成を備えている。駆動部7は、障害物を検知して自動的に停止する機能を備えることが望ましい。
【0028】
(発光部)
発光部8は、カート本体1の適宜な個所に取り付けられており、カート本体1の停止位置において、ピッキング対象物又はピッキング対象物の格納位置に向けて発光する構成となっている(図3参照)。発光部8としては、例えばレーザやLEDを用いることができる。発光部8は、制御部6からの指令に基づいて、対象物が収納されているはずの棚位置に向けて光を照射できるようになっている。発光部8は、制御部によって制御可能な適宜な光学系を用いて、光の照射方向を変更できるようになっている。
【0029】
(照射位置補正部)
照射位置補正部9は、カート本体1が停止位置に停止するたびに、発光部8からの発光方向を補正する構成となっている。
【0030】
本実施形態の照射位置補正部9は、ピッキング対象物の格納位置情報の画像を取得する第2カメラ91を備えている(図3参照)。照射位置補正部9は、第2カメラ91で撮影した画像に基づいて発光方向を補正する構成となっている。第2カメラ91の画角を、図3において符号911で示している。
【0031】
さらに、照射位置補正部9は、カート本体1の水平位置を補正するためのジャイロを備えている。
【0032】
前記した各要素についてのさらに詳しい構成は、後述のピッキングカートの動作として後述する。
【0033】
(本実施形態におけるピッキングカートの動作)
次に、図4図8をさらに参照して、本実施形態におけるピッキングカートの動作について説明する。
【0034】
図3のステップSA-1)
まず、カート本体1の制御部6にピッキングデータを記憶させる。ホスト側から制御部6への、ピッキングデータの転送は、例えば無線LANを用いて、入力部5を介して行うことができる。
【0035】
図5にピッキングデータの例を示す。このピッキングデータ100は、籠を特定するための籠ID110と、各籠に対応する(つまりピッキング対象の)製品データ120とを備える。この例では、各籠について、n個のピッキングデータ(つまりn個のピッキング対象物)を示しているが、各籠に対応するピッキング対象物の個数は異なっていてもよく、一つだけであってもよい。
【0036】
図6に、一つの製品データ120の構成例を示す。この製品データ120は、製品データID(αm)と、製品番号と、製品名と、製品アドレスと、ピッキング数量とを備えている。ここで製品データIDにおけるαは任意の籠を表し、mは当該籠に収納されるべき製品データを示す。製品アドレスは、製品が収納された棚位置を示しており、一般には(X,Y,Z)の三次元情報としてあらわされる。ここでX,Yはフロアの平面情報、Zは棚の高さ情報に対応する。
【0037】
複数のカートが並行に走行する場合、ピッキングデータは、カートごとに転送される。
【0038】
図3のステップSA-2)
ついで、制御部6は、受信したピッキングデータ100に基づいて、当該カート本体1の走行経路を生成する。具体的には、制御部6は、ピッキングデータ100に含まれる製品データ120の製品アドレスを用いて、棚アドレスを生成する。本実施形態における棚アドレスは、フロア平面における二次元座標(X,Y)である。ついで、制御部6は、あらかじめ想定されるカート経路に沿うように、棚アドレスを整列させる。
【0039】
棚アドレスを整列させた例を、カート走行経路シークエンス200として図7に示す。ここで(X1,Y1)、(X2,Y2)…(Xn,Yn)とあるのは、それぞれの棚アドレスである。後述するように、カート本体1は、これらの棚アドレスの位置に順次停止することになる。棚アドレスの添え字は停止順序を示す。ここで、二つの棚アドレス間の距離が閾値よりも近い場合には、カート本体1の頻繁な走行/停止を避けるため、両アドレス間の中間位置を代替的な棚アドレスとすることもできる。
【0040】
生成された走行経路300の例を図8に示す。ここで走行経路300は、複数の棚10の間を縫って走行するように設定されている。また、走行経路300には、籠搭載位置310と、払出し位置320と、ホームポジション330が設定されているものとする。
【0041】
図3のステップSA-3)
まず、籠搭載位置310において、所定数(本例では6個)の空の籠2をカート本体1に搭載する(図2参照)。ついで、カート本体1をホームポジション330に配置する。
【0042】
図3のステップSA-4)
ついで、制御部6からの指令により駆動部7を動作させて、走行経路300に沿ってカート本体1を走行させる。ここで、カート本体1に搭載された位置検出部4は、第1カメラ41によりカート本体1の周囲の画像を取得し、得られた画像に基づいてカート本体1の位置を常時検出している。画像に基づく位置検出の手法としては、例えば、床面や天井や棚などの構造物に設置された複数のマーカの画像に基づいて位置を検出する手法など、種々のものを使用可能である。
【0043】
図3のステップSA-5)
位置検出部4により検出された位置が、カート走行経路シークエンス200において指定された位置、すなわち、次に停止すべき棚アドレス(X,Y)に一致したとする。すると、制御部6は、位置検出部4からの検出信号に基づいて、駆動部7に指令を発し、カート本体1の走行を停止させる。
【0044】
図3のステップSA-6~SA-7)
カート本体1が停止すると、制御部6は、当該停止位置(すなわち棚アドレス)に対応する製品アドレスをすべて検索する。この検索は、製品アドレスが棚アドレスを含むことから、容易に実行可能である。次いで、制御部6は、当該製品アドレスに対応する製品データ120から、製品名と製品アドレスと数量とを表示用データとして抽出する。図9は、そのようにして抽出された表示用データの一例である。この表示用データ400においてA~Fは、一つのカートに搭載された各籠を示しており、am~fmは各籠に収納されるべき製品についての製品データを示している。ここでmは製品データを区別するための任意の自然数を示す添え字である。
【0045】
ここで、ある棚アドレスにおいてam~fmの製品データに示される製品がピッキング対象であったとする。このとき、制御部6は、適宜の順で、いずれかの籠2に対応する一つの製品データを特定し、当該製品データにおける製品名、製品アドレス、ピッキング数量を、当該籠2の近傍にある一つの表示器3に表示する。このとき、表示器3における表示を点滅表示とすると、作業者の注意を惹きやすいので好ましい。これにより作業者は、ピッキング対象物の位置や数量を容易に知ることができる。
【0046】
また、表示器3による表示と同時に又は前後して、制御部6は、製品アドレスによって特定される位置に向けて、発光部8により光(例えばレーザ光)を照射する(図3参照)。これにより、作業者は、製品の位置をより確実に知ることができる。具体的には、発光部8は、製品が格納されたポケット101の下側の仕切り部102に向けて光を照射するようになっている。製品アドレスと光照射方向との関係は予め校正されているものとする。
【0047】
さらに、本実施形態では、照射位置補正部9の第2カメラ91により、光の照射方向の画像を取得する。ついで、照射位置補正部9は、発光部8による光の照射位置を、色や光の点滅パターンなどの適宜の情報を用いて特定する。ついで、照射位置補正部9は、特定された照射位置と製品アドレスによって特定される位置とを照合し、不整合があれば、発光部8における光の照射方向を、製品アドレスに整合するように修正する。これにより、本実施形態では、正しい方向に光を照射することができ、ピッキング作業の効率を向上させることができるという利点がある。製品アドレスと光照射方向との関係が所期状態において校正済みであったとしても、走行位置検出の誤差などの種々の要因により、光照射方向が本来あるべき方向からずれることがある。本実施形態では、このようなずれを修正することができる。また、照射位置補正部9に備えられたジャイロを用いることにより、光照射方向の修正をより精度よく行うこともできる。
【0048】
図3のステップSA-8~SA-9)
次いで、作業者は、表示器3により指定された数量の製品を、棚10から取り出して、対応する籠2に収納する。ここで、本実施形態では、各籠2に対応して表示器3を設置したので、製品を収納すべき籠2の特定が容易となり、作業効率を向上させることができる。ついで、作業者は、籠2に製品を収納した後、当該表示器3のピッキング終了ボタン31を押し下げる。これにより、表示器3における表示を消すことができる。また、制御部6は、当該表示器3に示された製品のピッキング終了を知ることができる。
【0049】
図3のステップSA-10~SA-11)
ついで、制御部6は、当該棚アドレス(つまり同じ停止位置)におけるピッキング対象物が他にあるかどうかを確認し、他にあれば、前記ステップSA-6以降の作業を繰り返す。
【0050】
例えば、同じ籠2において、異なる製品アドレスに収納された製品を収容するときは、発光部8による光の照射位置を変更する。他の動作は前記したステップと同様である。
【0051】
また、同じ停止位置において、異なる籠2に、同じ製品アドレスの製品を収納することもある。この場合は、発光部8による光の照射位置を変更せず、表示器3の表示のみを変更することなる。
【0052】
図3のステップSA-12~SA-13)
同じ停止位置におけるピッキング対象物がないときは、制御部6は、カート走行経路シークエンス200を参照し、駆動部7により、カート本体1を次の停止位置(Xi+1,Yi+1)に移動させる。ついで、全てのピッキング工程が終了するまで、前記したステップSA-5以降の動作を繰り返す。
【0053】
図3のステップSA-14)
カート走行経路シークエンス200に示された全ての停止位置でのピッキング作業を完了したことを判定した後、制御部6は、払出し位置320(図8参照)にカート本体1を移動させる。払出し位置320では、作業者が全ての籠2を取り出す。取り出された籠2は、適宜な手段により次工程に移送される。籠2の取り出し作業が完了した後、作業者は、入力部5などの適宜の入力手段(図示せず)により、制御部6にそのことを通知する。
【0054】
図3のステップSA-15)
ついで、制御部6は、籠搭載位置310にカート本体1を移動させる。籠搭載位置310では、前記と同様に、所定数の空の籠2を作業者がカート本体1に搭載する。さらに、制御部6は、籠2が搭載されたカート本体1をホームポジション330に移動させる。以降の動作は、前記したステップSA-4以降と同様である。
【0055】
本実施形態によれば、カート本体1が自走式となっているので、作業者がカート本体1に帯同する必要がなく、所定個所に待機していればピッキングを行うことができる。したがって、作業者への負担を軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、既存の棚収納システムへの適用が容易であるという利点もある。
【0057】
なお、前記実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【0058】
例えば、前記した実施形態では、位置検出部4として、カメラ画像によりカート位置を判定する構成としたが、それに代えて、あるいはそれに追加して、GPS(グローバルポジショニングシステム)の受信により測位することにより、又は、経路に沿って取り付けらた磁気テープやバーコードやRFIDなどの情報を読み取ることによりカート位置を判定する構成であってもよい。
【0059】
また、前記の説明では、1台のカートを例にしたが、複数台のカートが並行して走行するシステムとすることもできる。
【0060】
さらに、前記の説明では、カートを自走式としたが、手動式とすることもできる。
【0061】
また、前記の説明では、ピッキングの一例として、対象物の取り出し作業について説明したが、対象物を仕分ける作業に本発明のカートを用いることもできる。この場合は、籠に収納された製品を各棚(あるいは仕分け先の搬送器具など)に分配することになる。
【0062】
前記した各構成要素は、機能ブロックとして存在していればよく、独立したハードウエアとして存在しなくても良い。また、実装方法としては、ハードウエアを用いてもコンピュータソフトウエアを用いても良い。さらに、本発明における一つの機能要素が複数の機能要素の集合によって実現されても良く、本発明における複数の機能要素が一つの機能要素により実現されても良い。さらに、機能要素は、物理的に離間した位置に配置されていてもよい。この場合、機能要素どうしがネットワークにより接続されていても良い。グリッドコンピューティング又はクラウドコンピューティングにより機能を実現し、あるいは機能要素を構成することも可能である。
【0063】
例えば、前記した位置検出部と制御部と照射位置補正部とを一つのコンピュータとそれに接続された外部カメラにより構成することもできるし、ネットワークに接続された外部機器(例えばサーバ)によりこれらの機能の一部または全部を代替することもできる。
【0064】
また、前記した第1カメラと第2カメラの機能を一つのカメラにより発揮することもできる。つまり、例えば、第1カメラに第2カメラの機能を実装することにより、カート本体1に搭載するカメラの台数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 カート本体
11 ラック
2 籠
3 表示器
31 ピッキング終了ボタン
4 位置検出部
41 第1カメラ
5 入力部
6 制御部
7 駆動部
8 発光部
9 照射位置補正部
91 第2カメラ
10 棚
101 ポケット
102 仕切り部
100 ピッキングデータ
110 籠ID
120 製品データ
200 カート走行経路シークエンス
300 走行経路
310 籠搭載位置
320 払出し位置
330 ホームポジション
400 表示用データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9