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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】三輪車及び三輪車の設計方法
(51)【国際特許分類】
   B62K 9/02 20060101AFI20220719BHJP
   B62J 1/00 20060101ALI20220719BHJP
   B62K 15/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B62K9/02
B62J1/00 E
B62K15/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018186898
(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公開番号】P2020055405
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載年月日 平成30年6月7日 掲載アドレス http://www.idesnet.co.jp/products/content.php?id=490 (2)展示会名 東京おもちゃショー2018 展示日 平成30年6月7日から同年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】598139793
【氏名又は名称】アイデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 範光
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0098567(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108583757(CN,A)
【文献】特表2006-524597(JP,A)
【文献】実開昭61-131388(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0211955(US,A1)
【文献】特開2012-071697(JP,A)
【文献】実開昭59-113287(JP,U)
【文献】特開2006-082777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00
B62K 9/02
B62K 15/00
B62B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、
前記サドルは、前記後輪軸部の中心よりも前側に、前後方向へ連続する長尺状の着座部を有するとともに、前記着座部よりも後側に、前記後輪軸部よりも上方で前記後輪軸部を前後に跨る長さの非着座部を有し、
前記着座部は、前部寄りに幼児を跨らせて着座させる前側着座領域と、後部寄りに幼児を跨らせて着座させる着座領域であって前記前側着座領域よりも前後方向に長い後側着座領域とを確保してその全長が設定されていることを特徴とする三輪車。
【請求項2】
前記非着座部には、前記着座部よりも上方へ突出する隆起部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の三輪車。
【請求項3】
前記後フレーム部が、前記後輪軸部から上方へ突出しながら前方へ傾き、前記後側着座領域の下方側で前記車体フレーム部に連結していることを特徴とする請求項1又は2記載の三輪車。
【請求項4】
前記着座部の前後方向の長さが、前記サドルの全長の70~85%の範囲内であって、且つ285~350mmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の三輪車。
【請求項5】
車幅方向両側の前記後輪と前記サドルの後端とが被載置面に三点で接触して自立するように、前記サドルの後端位置が設定されていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の三輪車。
【請求項6】
操作部に対する操作によって前記車体フレーム部の折り曲げを可能にする三輪車であって、前記操作部が、前記サドルにおける前記着座部よりも後側に設けられていることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の三輪車。
【請求項7】
請求項1~6何れか1項に記載の三輪車の設計方法であって、
所定の年齢の平均的な体格の幼児によって占領されるように前記前側着座領域を想定し、前記前側着座領域よりも後側に前記後側着座領域を想定し、これら前側着座領域の長さと後側着座領域の長さを合計して、前記着座部全体の長さを求めることを特徴とする三輪車の設計方法。
【請求項8】
請求項1~6何れか1項に記載の三輪車の設計方法であって、
所定の年齢の平均的な体格の幼児によって占領されるように前記前側着座領域を想定し、前記前側着座領域の後端側に前端側の重なり代を重ね合わせるように前記後側着座領域を想定し、前記前側着座領域の長さと前記後側着座領域の長さの合計から前記重なり代を減じて、前記着座部全体の長さを求めることを特徴とする三輪車の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児用として好適な三輪車、及び三輪車の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、前後方向へわたるメインフレーム部と、前記メインフレーム部の前端側に枢支されて上下方向へ延設された前フレームと、前記前フレームの下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレームの上端側に接続されて車幅方向へ延設された操行ハンドルと、前記メインフレーム部の後端側に枢支されて下方へ延設された後フレームと、後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な左右の後輪と、前記メインフレームに支持されたサドルとを備えた三輪車がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-82777号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の三輪車は、特定の年齢の幼児の平均的な体格を想定して、全体の大きさや、サドルの大きさ等が設定されている。
このため、前記想定よりも小さな体格の幼児の場合、三輪車をこぐ体力や運動能力が備わっていたとしても、ペダルに足が届かずにこぐことができないという問題が生じる場合がある。
また、幼児が成長して前記想定よりも大きくなると、臀部(尻)がサドルからはみ出し、三輪車全体の加重バランスが崩れ、走行し難くなったり、相対的に長くなった脚部のためにペダルを踏む操作や地面を蹴る操作がし難くなったりするおそれがある。
そして、前者の場合、三輪車自体を小型のものに変更する必要が生じ、後者の場合には、三輪車自体を大型のものに変更する必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、前記サドルは、前記後輪軸部の中心よりも前側に、前後方向へ連続する長尺状の着座部を有するとともに、前記着座部よりも後側に、前記後輪軸部よりも上方で前記後輪軸部を前後に跨る長さの非着座部を有し、前記着座部は、前部寄りに幼児を跨らせて着座させる前側着座領域と、後部寄りに幼児を跨らせて着座させる着座領域であって前記前側着座領域よりも前後方向に長い後側着座領域とを確保してその全長が設定されていることを特徴とする三輪車。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、年齢等により体格が異なる幼児をバランスよく着座させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る三輪車の一例を示す斜視図である。
図2】同三輪車の側面図であり、サドル及び下カバーを外した状態を示す。
図3】同三輪車の平面図であり、ハッチングは前後の着座領域の一例を示す。
図4】同三輪車の平面図であり、ハッチングは前後の着座領域の他例を示す。
図5】同三輪車の使用状態を例示する側面図であり、(a)は比較的小柄な幼児が用いた状態を示し、(b)は比較的大柄な幼児が用いた状態を示す。
図6】同三輪車が折り畳まれようとしている状態を示す側面図である。
図7】同三輪車を収納のために自立させた状態を示す側面図である。
図8】同三輪車が折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、前記サドルは、前記後輪軸部の中心よりも前側に、前後方向へ連続する長尺状の着座部を有するとともに、前記着座部よりも後側に、前記後輪軸部を前後に跨る長さの非着座部を有し、前記着座部は、前部寄りに幼児を跨らせて着座させる前側着座領域と、後部寄りに幼児を跨らせて着座させる着座領域であって前記前側着座領域よりも前後方向に長い後側着座領域とを確保してその全長が設定されている(図1図5参照)。
【0009】
第二の特徴として、幼児が非着座部に着座しないで着座部に着座するように、前記非着座部には、前記着座部よりも上方へ突出する隆起部が設けられている(図1及び図5参照)。
【0010】
第三の特徴としては、特に比較的大柄な幼児が着座する後側着座領域を頑強に支持するために、前記後フレーム部が、前記後輪軸部から上方へ突出しながら前方へ傾き、前記後側着座領域の下方側で前記車体フレーム部に連結している(図2参照)。
【0011】
第四の特徴は、幅広い年齢層の幼児に対応可能な好ましい態様として、前記着座部の前後方向の長さが、前記サドルの全長の70~85%の範囲内であって、且つ285~350mmの範囲内に設定されている(図3及び図4参照)。
【0012】
第五の特徴は、省スペースな収納性を得る態様として、車幅方向の両側の前記後輪と前記サドルの後端とが被載置面に三点で接触して自立するように、前記サドルの後端位置が設定されている(図7及び図8参照)。
なお、この構成によれば、上記した第一~第三の特徴を一部含まない独立した発明とした場合でも、省スペースな収納性を得ることが可能である。
【0013】
第六の特徴は、誤操作の少ない良好な折畳み操作性が得られる態様として、操作部に対する操作によって前記車体フレーム部の折り曲げを可能にする三輪車であって、前記操作部が、前記サドルにおける前記着座部よりも後側に設けられている(図5及び図6参照)。
なお、この構成によれば、上記した第一~第四の特徴を一部含まない独立した発明とした場合でも、誤操作の少ない良好な折畳み操作性を得ることが可能である。
【0014】
第七の特徴は、上記三輪車の設計方法であって、所定の年齢の平均的な体格の幼児によって占領されるように前記前側着座領域を想定し、前記前側着座領域よりも後側に前記後側着座領域を想定し、これら前側着座領域の長さと後側着座領域の長さを合計して、前記着座部全体の長さを求めるようにした(図3参照)。
【0015】
第八の特徴は、上記三輪車の設計方法であって、所定の年齢の平均的な体格の幼児によって占領されるように前記前側着座領域を想定し、前記前側着座領域の後端側に前端側の重なり代を重ね合わせるように前記後側着座領域を想定し、前記前側着座領域の長さと前記後側着座領域の長さの合計から前記重なり代を減じて、前記着座部全体の長さを求めるようにした(図4参照)。
【0016】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、同一または相当する構成要素について同一符号を付することで、重複する説明を省略する。
【0017】
三輪車1は、前後方向へわたる車体フレーム部10と、車体フレーム部10の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部20と、前フレーム部20の下端側に回転自在に支持された前輪30と、前フレーム部20の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部40と、車体フレーム部10の後端側で下方へ延設された後フレーム部50と、後フレーム部50の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部60と、後輪軸部60の両端側で回転自在な左右の後輪70,70と、車体フレーム部10に支持されたサドル80とを具備している(図1図3参照)。
【0018】
車体フレーム部10、前フレーム部20、ハンドル部40、後フレーム部50、及び後輪軸部60等は、例えば、硬質金属材料からなる中空のパイプ材により形成される。
【0019】
車体フレーム部10は、略水平に直線状に延設された水平状フレーム部11(図2参照)と、この水平状フレーム部11の前端側から前方斜め上方へ傾斜する傾斜フレーム部12とを有する。
この車体フレーム部10の後端側には、後フレーム部50が一体に接続されている。なお、他例としては、後フレーム部50を車体フレーム部10とは別体の部材とすることも可能である。
【0020】
水平状フレーム部11の前部側は、前後に分割されており、その前後間には、前部側を後部側に対し折れ曲がり可能にする第一の折曲機構Aが設けられる。
【0021】
第一の折曲機構Aは、水平状フレーム部11の前部側を第一の枢支部a1を支点にして回動させる機構や、水平状フレーム部11の前部側を後部側に対し直線状に係止するとともに、この係止状態を操作部17aの引張操作により解除する機構等を構成している。
この構成によれば、前記係止状態が解除されると、水平状フレーム部11の前部側が回動可能になり、これに伴って前輪30も回動可能になる。
前輪30は、前記回動をすると、車体フレーム部10と後フレーム部50の間の内角α側の空間S1に入り込む(図6図8参照)。
【0022】
なお、第一の折曲機構Aは、同様の機能を有するものであれば、図示例以外の機構を用いることが可能である。
【0023】
操作部17aは、長尺な可撓性帯状の部材であり、図示例によれば後端側が略U字状に曲げられ用いられる。この操作部17aは、その一端側を第一の折曲機構Aに止着するとともに、他端側を、サドル80の着座部81よりも後側の貫通孔に挿通して外部に露出している。
【0024】
なお、図2中、符号15は、第一の折曲機構Aを覆う可撓性の被覆部材、符号16は、第一の折曲機構Aおよび被覆部材15等を下方側から覆う下カバーである。
【0025】
前フレーム部20は、車体フレーム部10の前端側に接続され上下方向へ延設された部位であり、上部側に接続されたハンドル部40のハンドル操作により、ハンドル部40及びフォーク部21を一体的に回転させて、前輪30の走行方向を変化させるように構成される。
【0026】
前フレーム部20における車体フレーム部10との接続箇所よりも上側には、この上側部を折り曲げるようにして後方へ回動させる第二の折曲機構Cと、第二の折曲機構Cを回動不能にロックし、このロック状態を所定の操作により解除するロック機構Dとが設けられる。
【0027】
第二の折曲機構Cは、前フレーム部20を通常時は直線状に保持しており、図7に示すように、ロック機構Dを解除操作した後に、ハンドル部40及び前フレーム部20の上部側を、第二の枢支部c1を支点にして折り曲げるようにして後方へ回動させる。
ロック機構Dは、ハンドル部40の上部側にダイヤル状に構成され、回転操作されることで、前フレーム部20上部側を回動不能にロックしたりそのロック状態を解除したりする。
これら第二の折曲機構C及びロック機構Dは、同様の機能を有するものであれば、図示例以外の機構を用いることが可能である。
【0028】
前輪30の左右両側には、前輪30と一体的に回転するようにペダル31が設けられる。
【0029】
また、ハンドル部40は、前フレーム部20の上端から左右へ略T字状に延設され、その延設方向の先端側に、手で把持されるグリップ部41が設けられる。
【0030】
後フレーム部50は、車体フレーム部10の後端側から下方へ延設されている。この後フレーム部50の下端側には、逆T字状に、後輪軸部60が接続される。
言い換えれば、後フレーム部50は、後輪軸部60の中央側から上方へ突出しながら前方へ傾き、着座部81の後側着座領域81bの下方側で車体フレーム部10に連結されている。
この後フレーム部50と車体フレーム部10の水平状フレーム部11との成す角度αは、本実施の形態の好ましい一例によれば、100~110度の範囲内に設定されている(図2参照)。この構成によれば、車体フレーム部10の後端側に加わる荷重を、後フレーム部50によって効果的に支えることができる上、後フレーム部50と車体フレーム部10の内角側の空間S1に、折り畳まれた前輪30を効果的に収納することができる。
なお、図中、符号51は、例えば、施錠用チェーンの装着や、牽引用ロープの接続、小物入れの装着等、多用途に用いられるU字状の係止部である。
【0031】
後輪軸部60は、当該三輪車1の車幅方向の両側へ延設される。その延設方向の各端部側には、後輪70が回転自在に支持される。この後輪軸部60の上半部側には、必要に応じて、凹凸状の滑り止め部が設けられ、幼児等が足を掛け易いようにしている。
車幅方向の両側の後輪70,70は、図示例によれば、前輪30よりも小径に形成される。
【0032】
サドル80は、その下面側が、車体フレーム部10の水平状フレーム部11を車幅方向へ跨る凹溝状に形成され、この凹溝状部分を水平状フレーム部11に嵌め合わせて、ブラケット及びネジ等により止着固定される。
なお、このサドル80は、単一の一体の部材から構成してもよいし、硬質部材と、該硬質部材を覆う軟質のクッション部材等の複数の部材から構成してもよい。
【0033】
このサドル80の上面側には、後輪軸部60の中心よりも前側に、前後方向へ連続する長尺状の着座部81が設けられ、着座部81よりも後側に、後輪軸部60を前後に跨る長さの非着座部82が設けられる。
【0034】
着座部81は、前部寄りに幼児を跨らせて着座させる前側着座領域81aと、後部寄りに幼児を跨らせて着座させる着座領域であって前側着座領域81aよりも前後に長い後側着座領域81bとを確保してその全長が設定される。
具体的に説明すれば、着座部81は、例えば、以下の二つの方法(図3及び図4参照)により設計することが可能である。
【0035】
図3に例示する設計方法では、着座部81の前部側に、比較的小柄な幼児を跨らせて着座させる前側着座領域81aを想定し、この前側着座領域81aよりも後側に、前側着座領域81aよりも前後方向に長い後側着座領域81bを想定し、これら前側着座領域81aの長さaと後側着座領域81bの長さbを合計して、着座部81全体の長さL1を求める。
なお、図示例によれば、前側着座領域81aは、着座部81全体の長さL1の中心よりも前側に位置する。
【0036】
また、図4に例示する他の設計方法では、着座部81の前部寄りに、比較的小柄な幼児を跨らせて着座させる前側着座領域81aを想定し、前側着座領域81aの後端側に前端側の重なり代cを重ね合わせるように後側着座領域81bを想定し、前側着座領域81aの長さと後側着座領域81bの長さの合計から重なり代81cを減じて、着座部81全体の長さL1を求める。
なお、図示例によれば、重なり代cは、着座部81全体の長さL1の中心を含むように位置する。
【0037】
前側着座領域81aは、比較的低い所定の年齢(例えば、1.5歳)の平均的な体格の幼児が着座部81に跨って着座した際に前後方向にわたって占領される領域であり、その前後方向の長さaは実験的に求めることが可能である。
後側着座領域81bは、前記年齢よりも高い所定の年齢(例えば、4.5歳)の平均的な体格の幼児が着座部81に跨って着座した際に前後方向にわたって占領される領域であり、その前後方向の長さbは実験的に求めることが可能である。
【0038】
特に、後者(図4参照)は、安全上等の観点から、二人の幼児が同時に前後に跨って座ることを避けるようにした態様である。
【0039】
本願発明者は、試行錯誤の実験の末、着座部81の前後方向の全体の長さL1を、サドル80の全長L0の70~85%の範囲内であって、且つ285~350mmの範囲内とした。
着座部81全体の長さL1を前記範囲の下限よりも小さくした場合は、1.5歳の幼児が成長して平均的な体格の5歳の幼児になった場合に、この幼児の臀部が着座部81からはみ出たり、脚部がペダルまでの距離に相対し長すぎたりして、バランスの良い着座が困難になるおそれがある。
着座部81の全体の長さL1を前記範囲の上限よりも大きくした場合には、二人の幼児が同時に前後に跨って座ってしまう可能性が著しく高くなる。
なお、着座部81全体の長さL1は、より好ましくは286~348mmの範囲内とされ、本実施の形態の一例では、着座部81全体の長さL1を317mm、サドル80の全長L0を409mmに設定している。
【0040】
また、着座部81は、1.5~5歳の幼児が無理なく自然に跨れるように、後部寄りに最大幅Wが約120mmの部分を配置し、この部分の幅が前方に行くにしたがって徐々に狭くなるようにしている
【0041】
着座部81の表面は、凹凸のない略平坦状に形成され、図示例について詳細に説明すれば、車幅方向において中央部を上方へ突出させた凸曲面状であって、且つ前方へ連続し若干下り傾斜する面に形成される。
【0042】
非着座部82は、幼児が着座することのないように確保された部位であり、着座部81よりも後側において後輪軸部60を前後に跨る範囲に設けられる。
この非着座部82には、着座部81よりも上方へ突出する側面視略山形状の隆起部82aが設けられる。この隆起部82aの頂部は、後輪軸部60の中心よりも前側に位置する。着座部81は、この頂部よりも更に前側に位置することになる。
【0043】
そして、上記構成の三輪車1は、左右の後輪70,70とサドル80の最後端部80aとが略水平で平坦状な被載置面Xに三点で接触して自立するように(図7及び図8参照)、サドル80の最後端部80aを後輪軸部60よりも後方へ突出させている。
【0044】
次に、上記構成の三輪車1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
幼児は、サドル80に着座する際、隆起部82aを有する非着座部82を避けて、その前側の着座部81に着座する。すなわち、幼児の着座位置を、着座部81側へ自然に促すことができる。
【0045】
また、着座部81には、前側着座領域81a及び後側着座領域81bが、前後方向へわたって比較的長く確保される。
このため、例えば、低年齢で体格の小さい幼児は、図5(a)に示すように、着座部81の前側着座領域81aに着座し、足をペダル31に掛けたり、足で床を蹴ったり等の動作を自然に行うことができる。
また、高年齢で体格の大きい幼児は、図5(b)に示すように、着座部81の後側着座領域81bに着座するため、比較的長い脚部を余らせることなく、足をペダル31に掛けたり、足で床を蹴ったり等の動作を自然に行うことができる。
【0046】
しかも、前後に変化する着座加重を後輪軸部60よりも前側で受けるようにしているので、例えば重量バランスの後方への偏りによって前輪30が浮くようなこともなく、走行状態を安定させることができる。
【0047】
また、後側着座領域81b側を、上方斜め前方へ傾いた後フレーム部50等によって頑強に支持しているため、体格の大きな幼児の着座により比較的大きな重量が加わった場合でも、各部の破損や変形等を効果的に防ぐことができる。
【0048】
また、三輪車1を収納する際には、図6に示すように、保護者等が一方の手で操作部17aを引きながら、他方の手で前フレーム部20側を下方へ折り込むようにすれば、第一の折曲機構Aによって、第一の枢支部a1よりも前側の部分(前側部位11a、前フレーム部20及びハンドル部40及び前輪30等)が回動して、前輪30が、サドル80と後フレーム部50がなす内角側の空間S1に入り込む。
このため、三輪車1をコンパクトな収納態様にすることができる。
【0049】
なお、操作部17aがサドル80の着座部81よりも後側に位置するため、着座部81に跨って前方を向いた幼児が、走行中等に誤って操作部17aを操作してしまうようなことを防ぐことができる。
【0050】
また、前記収納態様において、後輪70,70とサドル80の最後端部80aとを地面や床面等の被載置面Xに三点で接触させて、当該三輪車1全体を自立させることができる(図7及び図8参照)。このため、三輪車1を、転動防止した状態で、水平面積の比較的小さい被載置面Xに載置することが可能である。
さらに、ハンドル部40を後方へ回動させるようにして、前フレーム部20を折り畳めば、高さ寸法が小さくなり、よりコンパクトな収納態様にすることができる。
【0051】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:三輪車
10:車体フレーム部
11:水平状フレーム部
12:傾斜フレーム部
15:被覆部材
17a:操作部
20:前フレーム部
30:前輪
40:ハンドル部
50:後フレーム部
60:後輪軸部
70:後輪
80:サドル
81:着座部
81a:前側着座領域
81b:後側着座領域
82:非着座部
82a:隆起部
A:第一の折曲機構
C:第二の折曲機構
D:ロック機構
S1:空間(収納空間)
X:被載置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8