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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】濃縮システム及び濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20220719BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220719BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B01D61/00 500
B01D61/02 500
B01D61/58
C02F1/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019077973
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020175319
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】紀平 幸則
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001110(JP,A)
【文献】特開2017-176929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367285(US,A1)
【文献】国際公開第2020/179594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/04、1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、被処理液が供給される第一室、吸水液が供給される第二室、及び前記第一室と前記第二室とに仕切る半透膜を備えるとともに、被処理液の水分の一部を前記第一室から前記半透膜を介して前記第二室に移動させて被処理液を濃縮する第1半透膜装置及び第2半透膜装置と、
被処理液を前記第1半透膜装置の第一室、前記第2半透膜装置の第一室の順に供給する被処理液供給路と、
前記第2半透膜装置の第一室において濃縮された被処理液を排出する被処理液排出路と、
前記被処理液排出路を介して前記第2半透膜装置の第一室において濃縮された被処理液が供給されかつ該被処理液をさらに濃縮する濃縮装置と、
前記濃縮装置において濃縮された被処理液を排出しかつその一部を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室、前記第1半透膜装置の第二室の順に供給する吸水液供給路と、
前記第1半透膜装置の第二室において半透膜を透過した水分により希釈された吸水液を排出する吸水液排出路と、を備え、
前記第2半透膜装置は、前記吸水液供給路を介して第一室の被処理液よりも浸透圧の高い吸水液が第二室に供給されることで、正浸透法により被処理液を濃縮し、
前記第1半透膜装置は、前記第2半透膜装置の第二室において半透膜を透過した水分により希釈されかつ第一室の被処理液よりも浸透圧の低い吸水液が第二室に供給されることで、逆浸透法により被処理液を濃縮する、濃縮システム。
【請求項2】
前記濃縮装置は、前記被処理液排出路により供給される被処理液の水分の一部を蒸発させることで該被処理液を濃縮する、請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項3】
被処理液から逆浸透法により透過水を分離して該被処理液を濃縮する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置において濃縮された被処理液を前記第1半透膜装置の第一室に供給する被処理液供給路と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の濃縮システム。
【請求項4】
前記吸水液排出路は、前記第1半透膜装置の第二室において希釈された吸水液を被処理液として前記逆浸透膜装置に還流する、請求項3に記載の濃縮システム。
【請求項5】
前記濃縮装置で生成された析出物を被処理液から固液分離する固液分離装置をさらに備え、
前記固液分離装置で生成されたろ液が吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給される、請求項1~4のいずれかに記載の濃縮システム。
【請求項6】
それぞれが半透膜によって仕切られた第一室及び第二室を有する第1半透膜装置及び第2半透膜装置の前記第一室に、前記第1半透膜装置、前記第2半透膜装置の順に被処理液を供給する一方、前記第二室に前記第2半透膜装置、前記第1半透膜装置の順に吸水液を供給し、被処理液の水分の一部を前記第一室から前記半透膜を介して前記第二室に移動させて被処理液を濃縮する第1濃縮工程と、
前記第1濃縮工程で濃縮された被処理液をさらに濃縮する第2濃縮工程と、を含み、
前記第2濃縮工程で濃縮された被処理液の一部を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給し、
前記第1濃縮工程では、
前記第2半透膜装置の第一室の被処理液に対して、前記第2濃縮工程で得られかつ該被処理液よりも浸透圧の高い吸水液を前記半透膜を介して接触させて、正浸透法により被処理液を濃縮する正浸透膜処理工程と、
前記第1半透膜装置の第一室の被処理液に対して、前記正浸透処理工程で希釈されかつ該被処理液よりも浸透圧の低い吸水液を前記半透膜を介して接触させて、逆浸透法により被処理液を濃縮する逆浸透膜処理工程と、が行われる、濃縮方法。
【請求項7】
前記第2濃縮工程では、前記第1濃縮工程後の被処理液の水分の一部を蒸発させることで該被処理液を濃縮する、請求項6に記載の濃縮方法。
【請求項8】
被処理液から逆浸透法により透過水を分離して該被処理液を濃縮する前濃縮工程をさらに含み、
前記前濃縮工程で濃縮された被処理液を前記第1濃縮工程で濃縮する、請求項6又は7に記載の濃縮方法。
【請求項9】
前記逆浸透膜処理工程で希釈された吸水液を前記前濃縮工程において被処理液として利用する、請求項8に記載の濃縮方法。
【請求項10】
前記第2濃縮工程で生成された析出物を被処理液から固液分離する固液分離工程をさらに含み、
前記固液分離工程で生成されたろ液を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給する、請求項6~9のいずれかに記載の濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の濃縮システム及び濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば海水から淡水を分離して回収する際には、海水を高濃度に濃縮するが、濃縮方法としては従来から逆浸透法が知られている。逆浸透法は、被処理液としての海水を半透膜によって被処理液よりも浸透圧の低い溶液と隔離し、被処理液側に、両溶液の浸透圧差を超える高い圧力を印加することで、被処理液側から浸透圧の低い溶液側へ水を逆行して透過させる技術である。しかし、逆浸透法では、被処理液の濃縮が進んで濃度が高くなると、両溶液の浸透圧差が大きくなり、さらに濃縮を進めるためには高いエネルギーが必要となる。よって、逆浸透法だけでは被処理液の濃縮率に限界がある。そのため、近年では、図5に示す濃縮システム100が提案されている(例えば非特許文献1を参照)。
【0003】
図5に示す濃縮システム100は、逆浸透膜装置101の後段に、半透膜111により第一室112及び第二室113に分けられた半透膜装置110が設けられている。半透膜装置110は、第一室112に逆浸透膜装置101において濃縮された被処理液が供給され、第二室113に吸水液として第一室112を通過した後の被処理液の一部が供給される。そして、第一室112を通過する被処理液に対して第二室113を通過する吸水液よりも高い圧力で加圧することで、第一室112の被処理液に含まれる水分の一部が半透膜111を介して第二室113の被処理液に移動し、第一室112の被処理液が濃縮される一方で、第二室113の吸水液が希釈される。なお、第一室112を通過した後の濃縮された被処理液の残部は、例えば蒸発濃縮装置102に供給されることによってさらに濃縮される。図5に示す濃縮システム100では、半透膜装置110の第一室112と第二室113とに供給される溶液の濃度差が小さく、両溶液の浸透圧差が小さいため、逆浸透膜装置101において濃縮された被処理液を、半透膜装置110において低エネルギーで高濃度に濃縮することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Recovering and Re-use of Salt by Zero Liquid Discharge (ZLD)、[online]、hyrec、[平成31年3月12日検索]、インターネット<URL:http://www.hyrec.co/test-page/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す濃縮システム100では、被処理液を低エネルギーで高濃度に濃縮することができるものの、省エネルギー化の観点からは、被処理液を低エネルギーでさらに高濃度に濃縮することができる濃縮システムが望まれている。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被処理液を低エネルギーでさらに高濃度に濃縮することができる濃縮システム及び濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、それぞれが、被処理液が供給される第一室、吸水液が供給される第二室、及び前記第一室と前記第二室とに仕切る半透膜を備えるとともに、被処理液の水分の一部を前記第一室から前記半透膜を介して前記第二室に移動させて被処理液を濃縮する第1半透膜装置及び第2半透膜装置と、被処理液を前記第1半透膜装置の第一室及び前記第2半透膜装置の第一室の順に供給する被処理液供給路と、前記第2半透膜装置の第一室において濃縮された被処理液を排出する被処理液排出路と、前記被処理液排出路を介して前記第2半透膜装置の第一室において濃縮された被処理液が供給されかつ該被処理液をさらに濃縮する濃縮装置と、前記濃縮装置において濃縮された被処理液を排出しかつその一部を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室及び前記第1半透膜装置の第二室の順に供給する吸水液供給路と、前記第1半透膜装置の第二室において半透膜を透過した水分により希釈された吸水液を排出する吸水液排出路と、を備え、前記第2半透膜装置は、前記吸水液供給路を介して第一室の被処理液よりも浸透圧の高い吸水液が第二室に供給されることで、正浸透法により被処理液を濃縮し、前記第1半透膜装置は、前記第2半透膜装置の第二室において半透膜を透過した水分により希釈されかつ第一室の被処理液よりも浸透圧の低い吸水液が第二室に供給されることで、逆浸透法により被処理液を濃縮する、濃縮システムを提供する。
【0008】
本発明の濃縮システムにおいては、前記濃縮装置は、前記被処理液排出路により供給される被処理液の水分の一部を蒸発させることで該被処理液を濃縮することが好ましい。
【0009】
本発明の濃縮システムにおいては、被処理液から逆浸透法により透過水を分離して該被処理液を濃縮する逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置において濃縮された被処理液を前記第1半透膜装置の第一室に供給する被処理液供給路と、をさらに備えることが好ましい。この態様では、前記吸水液排出路は、前記第1半透膜装置の第二室において希釈された吸水液を被処理液として前記逆浸透膜装置に還流することがより好ましい。
【0010】
本発明の濃縮システムにおいては、前記濃縮装置で生成された析出物を被処理液から固液分離する固液分離装置をさらに備え、前記固液分離装置で生成されたろ液が吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給されることがより好ましい。
【0011】
また、本発明は、それぞれが半透膜によって仕切られた第一室及び第二室を有する第1半透膜装置及び第2半透膜装置の前記第一室に、前記第1半透膜装置及び前記第2半透膜装置の順に被処理液を供給する一方、前記第二室に前記第2半透膜装置及び前記第1半透膜装置の順に吸水液を供給し、被処理液の水分の一部を前記第一室から前記半透膜を介して前記第二室に移動させて被処理液を濃縮する第1濃縮工程と、前記第1濃縮工程で濃縮された被処理液をさらに濃縮する第2濃縮工程と、を含み、前記第2濃縮工程で濃縮された被処理液の一部を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給し、前記第1濃縮工程では、前記第2半透膜装置の第一室の被処理液に対して、前記第2濃縮工程で得られかつ該被処理液よりも浸透圧の高い吸水液を前記半透膜を介して接触させて、正浸透法により被処理液を濃縮する正浸透膜処理工程と、前記第1半透膜装置の第一室の被処理液に対して、前記正浸透処理工程で希釈されかつ該被処理液よりも浸透圧の低い吸水液を前記半透膜を介して接触させて、逆浸透法により被処理液を濃縮する逆浸透膜処理工程と、が行われる濃縮方法を提供する。
【0012】
本発明の濃縮方法においては、前記第2濃縮工程では、前記第1濃縮工程後の被処理液の水分の一部を蒸発させることで該被処理液を濃縮することが好ましい。
【0013】
本発明の濃縮方法においては、被処理液から逆浸透法により透過水を分離して該被処理液を濃縮する前濃縮工程をさらに含み、前記前濃縮工程で濃縮された被処理液を前記第1濃縮工程で濃縮することが好ましい。この態様では、前記逆浸透膜処理工程で希釈された吸水液を前記前濃縮工程において被処理液として利用することがより好ましい。
【0014】
本発明の濃縮方法においては、前記第2濃縮工程で生成された析出物を被処理液から固液分離する固液分離工程をさらに含み、前記固液分離工程で生成されたろ液を吸水液として前記第2半透膜装置の第二室に供給することがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2半透膜装置の第一室から排出される被処理液を濃縮装置で濃縮し、濃度(浸透圧)を高めた被処理液を吸水液として第2半透膜装置の第二室に戻している。そのため、第2半透膜装置では、第一室の被処理液よりも浸透圧の高い吸水液が第二室に供給されるので、正浸透法により被処理液が濃縮される(正浸透膜処理工程)。一方で、第1半透膜装置では、第2半透膜装置の第二室において希釈されかつ第一室の被処理液よりも浸透圧の低い吸水液が第二室に供給されるので、逆浸透法により被処理液の濃縮が行われる。このように、本発明では、逆浸透法による被処理液の濃縮機能に加えて正浸透法による被処理液の濃縮機能が追加されるため、半透膜装置での膜分離による被処理液の濃縮をより少ないエネルギーで行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。また、本発明では、正浸透法による被処理液の濃縮機能が追加されているので、半透膜装置での膜分離によって被処理液をより高濃度に濃縮することができる。よって、従来例の濃縮システムと比べて、被処理液を低エネルギーで高濃度に濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の濃縮システムの概略構成を示す模式図である。
図2】半透膜装置の概略構成を拡大して示す模式図である。
図3】被処理液の濃度変化を説明するグラフである。
図4】本発明の他の実施形態の濃縮システムの概略構成を示す模式図である。
図5】従来例の濃縮システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。本発明の濃縮装置及び濃縮方法は、水分を含む液体から水分を分離して該液体を濃縮する際に用いられるものである。
【0018】
水分を含む液体としては、例えば無機塩類を含有する水溶液を挙げることができる。無機塩類としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸などの強酸と、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属との無機塩類を挙げることができる。本実施形態では、海水を例にして説明している。
【0019】
その他、水分を含む液体としては、例えば経口液体や外用液体を挙げることができる。経口液体は、人又は動物が口にするものを意味しており、例えば、濃縮ジュースや清涼飲料などの飲料、麺つゆ・各種出汁・調味料・スープのような液状の食べ物、液状の健康補助食品、経口医薬品などが挙げられる。また、外用液体は、人又は動物の体に塗る液状のものを総称しており、例えば、化粧水やローション、液状ハンドクリームのような液状化粧料、皮膚や口中に塗布又は散布する液状医薬品などが挙げられる。さらに、経口液体にしても外用液体にしても、消費者又は患者が最終的に使用するものには限らず、原料になるものも含んでいる。
【0020】
図1は、本実施形態の濃縮システム10の概略構成を示す模式図である。濃縮システム10は、それぞれが半透膜3A,3Bにより仕切られた第一室1A,1B及び第二室2A,2Bを有する第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bと、濃縮装置5と、逆浸透膜装置6と、被処理液供給路L1と、被処理液排出路L2と、吸水液供給路L3と、吸水液排出路L4と、原液供給路L5とを備えている。
【0021】
本実施形態の濃縮システム10では、被処理液は、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bに供給される前に逆浸透膜装置6において透過水が分離することで濃縮され(前濃縮工程)、濃度が高められた後、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bに供給される。そして、被処理液は、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bにおいて濃縮され(第1濃縮工程)、濃度がさらに高められた後、濃縮装置5に供給され、濃縮装置5においてさらに濃縮され(第2濃縮工程)、濃度がより一層高められている。
【0022】
まず、逆浸透膜装置6は、従来から公知の構造のものを用いることができ、その内部が半透膜9により2つの室7,8に仕切られている。逆浸透膜装置6の一方側の室7には、原液供給路L5が接続され、被処理液の貯留タンク11から被処理液が原液供給路L5を通って該室7に供給される。
【0023】
貯留タンク11と逆浸透膜装置6との間にはナノ濾過膜装置12が配置されている。ナノ濾過膜装置12は、貯留タンク11に貯留される被処理液に含まれる主に2価イオンを排除する機能を有する。本実施形態のように被処理液が海水などの無機塩類を含む水溶液である場合には、ナノ濾過膜装置12は、特に硫酸イオンを高く排除するものが好ましい。これにより、被処理液中に含まれるスケール成分を高い割合で除去することができる。被処理液からスケール成分を事前に除去しておくことで、後述する第2半透膜装置4Bで被処理液を高濃度に濃縮した際に、溶解度の小さい硫酸カルシウムなどのスケールが析出して、半透膜3Bが懸濁物質や結晶などで閉塞することを抑制できる。
【0024】
逆浸透膜装置6の他方側の室8には、逆浸透法により半透膜9を透過した透過水を排出する透過水排出路L6が接続されている。透過水は透過水排出路L6により回収され、淡水として利用される。また、逆浸透膜装置6の一方側の室7には、被処理液供給路L1が接続されている。被処理液供給路L1は、逆浸透膜装置6の一方側の室7と第1半透膜装置4Aの第一室1Aとを接続しており、該室7において半透膜9を透過せずかつ透過水の分離により濃縮された被処理液は、該室7から排出され、被処理液供給路L1を通って第1半透膜装置4Aの第一室1Aに供給される。
【0025】
次に、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bは、図1及び図2に示すように、それぞれが閉じたタンク(又はハウジングやケーシングなど)の構造であり、金属又は合成樹脂により形成される。第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bの内部は、それぞれが半透膜3A,3Bにより第一室1A,1Bと第二室2A,2Bとに仕切られている。第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bは、互いに分離されており、両装置4A,4Bの第一室1A,1B同士が流路L9で接続され、第二室2A,2B同士が流路L10で接続されている。
【0026】
半透膜3A,3Bは、水を透過させる性質を有する膜であり、例えば酢酸セルロース、ポリアミド、ポリスルホン、アクアポリン(蛋白質)などの従来から公知の素材のものを用いることができる。第1半透膜装置4Aの半透膜3Aとしては、一般に逆浸透膜と呼ばれる半透膜を用いることが好ましく、第2半透膜装置4Bの半透膜3Bとしては、一般に正浸透膜と呼ばれる半透膜を用いることが好ましい。また、半透膜3A,3Bは、例えば平膜や中空糸膜、その他にも従来から公知の構造のものを用いることができる。半透膜3A,3Bが平膜である場合、半透膜3A,3Bを例えば金網のような支持体によって姿勢を保持することができる。半透膜3A,3Bが中空糸膜である場合、特に限定されるものではないが、第1半透膜装置4Aでは第一室1Aが中空糸膜の緻密層(活性層)側であり、第2半透膜装置4Bでは第二室2Bが中空糸膜の緻密層(活性層)側であることが好ましい。
【0027】
第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bはともに、第一室1A,1Bに被処理液が第1半透膜装置4A、第2半透膜装置4Bの順で供給され、第二室2A,2Bに吸水液が第2半透膜装置4B、第1半透膜装置4Aの順で供給される。第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bでは、詳細は後述するが、第一室1A,1Bに供給される被処理液中の水分の一部が、第一室1A,1Bから半透膜3A,3Bを透過して第二室2A,2Bに移動する。これにより、第一室1A,1Bの被処理液は濃縮され、第二室2A,2Bの吸水液は希釈される。なお、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bは、図示ではともに横置き方式になっており、第一室1A,1Bが上で第二室2A,2Bが下になっているが、第一室1A,2Bが下で第二室2A,2Bが上になっていてもよい。また、第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bはともに縦向きの姿勢で配置されていてもよい。
【0028】
第1半透膜装置4Aの第一室1Aの一端部(図示では左端部)に被処理液供給路L1が接続され、第2半透膜装置4Bの第一室1Bの他端部(図示では右端部)に被処理液排出路L2が接続されている。被処理液排出路L2は、第2半透膜装置4Bの第一室1Bと濃縮装置5とを接続している。逆浸透膜装置6から被処理液が被処理液供給路L1を通って第1半透膜装置4Aの第一室1Aに導入され、第1半透膜装置4Aの第一室1A及び第2半透膜装置4Bの第一室1Bにおいて濃縮された被処理液は、第2半透膜装置4Bの第一室1Bから排出されて、被処理液排出路L2を通って濃縮装置5に供給される。
【0029】
第2半透膜装置4Bの第二室2Bの一端部(図示では右端部)に吸水液供給路L3が接続され、第1半透膜装置4Aの第二室2Aの他端部(図示では左端部)に吸水液排出路L4が接続されている。吸水液供給路L3は、濃縮装置5と第2半透膜装置4Bの第二室2Bとを接続している。吸水液排出路L4は、第1半透膜装置4Aの第二室2Aと原液供給路L5とを接続している。濃縮装置5から吸水液が吸水液供給路L3を通って第2半透膜装置4Bの第二室2Bに導入され、第2半透膜装置4Bの第二室2B及び第1半透膜装置4Aの第二室2Aにおいて希釈された吸水液は、第1半透膜装置4Aの第二室2Aから排出されて、被処理液として吸水液排出路L4及び原液供給路L5を通って逆浸透膜装置6の一方側の室7に供給される。
【0030】
上述した構成の第1半透膜装置4A及び第2半透膜装置4Bにおいて、図2及び図3に示すように、第1半透膜装置4Aでは、第二室2Aから吸水液排出路L4を介して排出される吸水液の濃度fよりも高い濃度a(a>f)の被処理液が、被処理液供給路L1を介して第一室1Aに供給されており、本質的には第一室1A内の被処理液の濃度の方が第二室1B内の吸水液の濃度よりも高くなっている。
【0031】
そのため、第1半透膜装置4Aでは、被処理液に半透膜3Aを介して被処理液よりも浸透圧が低い吸水液が接触している。しかし、この浸透圧差よりも大きな物理的圧力が第一室1A内の被処理液に加えられていることで、逆浸透法により被処理液中の水分の一部が第一室1Aから半透膜3Aを透過して第二室2Aに移動する。その結果、被処理液は第一室1A内を流れるに伴い水が分離されることにより濃縮されて濃度が高くなる一方、吸水液は第二室1B内を流れるに伴い水を吸収することにより希釈されて濃度が低くなる。なお、物理的圧力を第一室1A内の被処理液に加える方法としては、特に限定されるものではなく、逆浸透法において用いられている種々の方法を用いることができる。
【0032】
このように、第1半透膜装置4Aでは、被処理液は、吸水液排出路L4側(被処理液供給路L1側)において吸水液との濃度差が最も高く、次第に濃度差が減少している。そして、被処理液は濃度bまで濃縮された後、第一室1Aから排出されて第2半透膜装置4Bの第一室1Bに供給されるが、この濃度bは、第二室2Aに対し第2半透膜装置4Bの第二室2Bから供給される吸水液の濃度eよりも低くなっている。
【0033】
第一室1Aから排出される際の被処理液の濃度bが第二室2Aに供給される吸水液の濃度eよりも低いことで、次の第2半透膜装置4Bにおいて、第一室1B内の被処理液の浸透圧が第二室2B内の吸水液の浸透圧よりも低くなり、両液の浸透圧差を駆動力として正浸透法により被処理液中の水分の一部が自主的に半透膜3Bを透過して吸水液に吸水される。このように、第1半透膜装置4Aでは、被処理液は、第2半透膜装置4Bにおいて正浸透法で吸水液に吸水させることが可能な浸透圧差に達する濃度bまで濃縮されている。
【0034】
また、第1半透膜装置4Aにおいては、第二室2A内の吸水液は、原液供給路L5を通って逆浸透膜装置6に供給される被処理液の濃度gよりも低くなる濃度fまで、希釈されることが好ましい。これにより、逆浸透膜装置6に供給する被処理液の濃度h(浸透圧)を原液よりも低下させることができるので、逆浸透膜装置6において省エネルギーで被処理液を濃縮することができる。
【0035】
一方で、図2及び図3に示すように、第2半透膜装置4Bは、上述したように、第二室2Bから流路L10を介して排出される吸水液の濃度eよりも低い濃度b(e>b)の被処理液が、流路L9を介して第一室1Bに供給されている。また、第2半透膜装置4Bでは、第一室1Bから排出される被処理液が濃縮装置5に供給され、濃縮装置5により濃縮されて濃度が高められた被処理液の一部が吸水液として第二室2Bに供給されているので、第一室1Bから被処理液排出路L2を介して排出される被処理液の濃度cよりも高い濃度d(d>c)吸水液が、吸水液供給路L3を介して第二室2Bに供給されている。
【0036】
よって、第2半透膜装置4Bでは、全体的に第一室1B内の被処理液の濃度よりも第二室2B内の吸水液の濃度の方が高くなっており、被処理液には半透膜3Bを介して被処理液よりも浸透圧が高い吸水液が接触している。そのため、両液の浸透圧差によって、被処理液中の水分の一部が正浸透法により第一室1Bから半透膜3Bを透過して第二室2Bに移動する。その結果、被処理液が濃縮されている。
【0037】
このように、第2半透膜装置4Bでは、被処理液は、濃度bから濃度c(b>c)まで濃縮された後、第一室1Bから排出されて濃縮装置5に供給されるが、濃縮は、被処理液中に含まれる無機塩類、特に溶解度の小さい硫酸カルシウムなどのスケールが析出しない程度に行われる。すなわち、スケールの溶解度以下で被処理液を高濃度にできる濃度cまで濃縮する。これにより、被処理液を高濃度に濃縮しても、硫酸カルシウムなどのスケールが析出して、半透膜3Bが懸濁物質や結晶などにより閉塞することを抑制できる。
【0038】
次に、濃縮装置5は、第2半透膜装置4Bの第一室1Bから供給される被処理液を濃縮するものであるが、被処理液の濃縮方法については特に限定されるものではない。例えば濃縮装置5として、被処理液を蒸発濃縮する蒸発濃縮装置を用いることができる。蒸発濃縮装置5としては、被処理液を蒸発により濃縮可能であれば特に限定されず、例えば蒸発缶内に複数の伝熱管を備え、伝熱管内を流れる蒸気との熱交換により被処理液を蒸発させる多管式蒸発濃縮装置を用いることができ、多管式蒸発濃縮装置としては、例えば圧縮機を備えたヒートポンプ型、エゼクターを備えたエゼクター駆動型、低圧蒸気を利用するスチーム型などを用いることができる。また、蒸発濃縮装置5としては、伝熱管を備えない代わりに加熱器を備え、蒸発缶外のヒーターで加熱した被処理液を蒸発缶内でフラッシュ蒸発させるフラッシュ式蒸発濃縮装置を用いてもよい。
【0039】
濃縮装置5は、第2半透膜装置4Bの第一室1Bにおいて濃縮された被処理液が被処理液排出路L2を通して供給されることで、該被処理液をさらに濃縮する。濃縮装置5で濃縮されて、濃度(浸透圧)が最も高められた被処理液(濃縮液)は濃縮装置5から排出され、その一部は吸水液供給路L3を通って吸水液として第2半透膜装置4Bの第二室2Bに供給され、その残部は濃縮液排出路L7を通って回収される。また、濃縮装置5において被処理液の蒸発により発生する水蒸気は凝縮され、凝縮水が凝縮水排出路L8により回収されて、淡水として利用される。
【0040】
なお、濃縮装置5としては、蒸発濃縮装置に限定されるものではなく、その他の装置を用いることもできる。ただし、濃縮装置5として蒸発濃縮装置を用いると、濃縮装置5により濃縮後の被処理液の温度を濃縮前よりも上げることができ、詳細は後述するが、第2半透膜装置4Bの第二室2Bに供給する被処理液(吸水液)の浸透圧をより高くすることができるので好ましい。
【0041】
濃縮装置5と第2半透膜装置4Bの第二室2Bとの間の吸水液流路L3には、フィルターが設けられている。濃縮後の被処理液(吸水液)に無機塩類の析出により懸濁物質や結晶などが含まれる場合に、フィルター13により被処理液から懸濁物質や結晶などが取り除かれることで、第2半透膜装置4Bにおいて半透膜3Bが懸濁物質や結晶などにより閉塞することを抑制できる。
【0042】
以上、上述した構成の本実施形態の濃縮システム10及び濃縮方法によれば、第2半透膜装置4Bの第一室1Bから排出される被処理液を濃縮装置5で濃縮し、濃度(浸透圧)を高めた被処理液を吸水液として第2半透膜装置4Bの第二室2Bに戻している。そのため、第2半透膜装置4Bでは、第一室1Bの被処理液よりも浸透圧の高い吸水液が第二室2Bに供給されるので、正浸透法により被処理液が濃縮される。一方で、第1半透膜装置4Aでは、第2半透膜装置4Bの第二室2Bにおいて希釈されかつ第一室1Aの被処理液よりも浸透圧の低い吸水液が第二室1Bに供給されるので、逆浸透法により被処理液の濃縮が行われる。このように、本実施形態では、逆浸透法による被処理液の濃縮機能に加えて正浸透法による被処理液の濃縮機能が追加されているため、半透膜装置4A,4Bでの膜分離による被処理液の濃縮を、図3に示す従来例の濃縮システム100と比べてより少ないエネルギーで行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1半透膜装置4Aにおいては、第一室1A内の被処理液と第二室2A内の吸水液との濃度差が小さくなり、両溶液の浸透圧差を小さくすることができる。よって、逆浸透法により透過水を第一室1Aから半透膜3Aを介して第二室2Aに水を移動させるために第一室1A内の被処理液に加える物理的圧力を下げることができるので、省エネルギー性を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、正浸透法による被処理液の濃縮機能が追加されているので、半透膜装置4A,4Bでの膜分離によって被処理液を、図3に示す従来例の濃縮システム100と比べてより高濃度に濃縮することができる。そのうえ、濃縮装置5で被処理液を蒸発濃縮する場合に、図3に示す従来例の濃縮システム100と比べて、被処理液の濃度がより高濃度になっていることから、濃縮装置5の蒸気量、処理量を低減することができる。よって、濃縮装置5でのエネルギー消費を低減することができ、システム全体で省エネルギー性を向上することができる。
【0045】
また、濃縮装置5で被処理液を蒸発濃縮することで、濃縮後の被処理液の温度が濃縮前よりも上がり、濃縮装置5から第2半透膜装置4Bの第二室2Bに供給される被処理液(吸水液)の浸透圧が高くなる。よって、第2半透膜装置4Bにおいては、第一室1B内の被処理液と第二室2B内の吸水液との浸透圧差が大きくなることから、正浸透法により第一室1Bから半透膜3Bを介して第二室2Bに移動する透過水量を増やすことができ、第一室1B内の被処理液の濃縮効率を高めることができる。
【0046】
また、濃縮装置5で被処理液を蒸発濃縮することで、濃縮後の被処理液の温度が濃縮前よりも上がり、温度上昇によって濃縮装置5から各半透膜装置4A,4Bの第二室2A,2Bに供給される被処理液(吸水液)の粘度が低下する。これにより、各半透膜装置4A,4Bの第二室2A,2B内の吸水液の流動性が増すので、濃度分極を低減することができる。
【0047】
また、第2半透膜装置4Bにおいて希釈された吸水液を逆浸透膜装置6に還流し、被処理液として利用しているので、被処理液から淡水を取り出す回収効率向上することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
例えば上記実施形態において、濃縮装置5(第2濃縮工程)において被処理液中の無機塩類の溶解度を超える濃度まで被処理液を濃縮して無機塩類を晶析させてもよく、その場合には、図4に示すように、濃縮後の被処理液を固液分離装置14に供給する。濃縮後の被処理液には、析出した無機塩類の懸濁物質や結晶などが含まれるため、固液分離装置14により濃縮後の被処理液から懸濁物質や結晶などを取り除き、ろ液を吸水液として第2半透膜装置4Bの第二室2Bに供給する。これにより、第2半透膜装置4Bの第二室2Bに供給される吸水液に懸濁物質や結晶などが含まれないので、第2半透膜装置4Bにおいて半透膜3Bが懸濁物質や結晶などにより閉塞することを抑制できる。固液分離装置14としては、被処理液から懸濁物質や結晶などを取り除くことが可能であれば特に限定されるものではなく、遠心分離機、MF(精密ろ過)膜やUF(限外ろ過)膜などのろ過膜などを用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、第1半透膜装置4Aと第2半透膜装置4Bとが流路L9,L10を介して分離されているが、両装置4A,4Bを流路L9,L10で接続することなく一体化してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B 第一室
2A,2B 第二室
3A,3B 半透膜
4A 第1半透膜装置
4B 第2半透膜装置
5 濃縮装置
6 逆浸透膜装置
10 濃縮システム
L1 被処理液供給路
L2 被処理液排出路
L3 吸水液供給路
L4 吸水液排出路
図1
図2
図3
図4
図5