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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】自律神経系活動評価装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
A61B5/16 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019099023
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192053
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月14日~15日に開催された生体医工学シンポジウム2018にて、発表した。また、平成30年12月11日~13日に開催されたuhealth2018にて、発表した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業センター・オブ・イノベーションプログラム 『運動の生活カルチャー化により活力ある未来をつくるアクティブ・フォー・オール拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 志麻
(72)【発明者】
【氏名】落合 優
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088358(WO,A1)
【文献】特開2019-000474(JP,A)
【文献】特開2016-190022(JP,A)
【文献】特開2016-193021(JP,A)
【文献】特開2002-259968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を撮像可能なカメラと、
前記カメラにて撮像された人体の画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段にて取得した前記人体の画像データの一部を切り出す切り出し手段と、
前記切り出し手段にて切り出した前記人体の画像データの一部におけるRGBの画素値を算出する算出手段と、
前記算出手段にて算出したRGBの画素値に基づいて、G/B値を導出する導出手段と、
前記切り出し手段にて切り出した前記人体の画像データの一部におけるRGB色空間を、色相(H)と彩度(S)と輝度(V)で表現するHSV色空間に変換する第1変換手段と、
前記第1変換手段にて変換したHSV色空間のうち、輝度(V)を削除する削除手段と、
前記削除手段にて輝度(V)を削除したHSV色空間をRGB色空間に変換する第2変換手段と、を有し、
前記算出手段は、前記第2変換手段にて変換したRGB色空間におけるRGBの画素値を算出してなる自律神経系活動評価装置。
【請求項2】
前記切り出し手段は、前記人体のうち毛細血管が多い部分を、前記画像データ取得手段にて取得した前記人体の画像データから切り出してなる請求項1に記載の自律神経系活動評価装置。
【請求項3】
前記カメラは、前記人体の動画を撮像し、
前記画像データ取得手段は、前記カメラにて撮像された前記人体の動画の画像データを取得し、
前記算出手段は、前記切り出し手段にて切り出した前記人体の画像データの一部における各RGBの画素値の平均値を算出し、
前記導出手段は、前記算出手段にて算出した各RGBの画素値の平均値に基づいて、G/B値を導出してなる請求項1又は2に記載の自律神経系活動評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律神経系活動の評価を行うことができる自律神経系活動評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の自律神経系活動の評価を行うにあたって、血圧を計測したり、心電図を計測したりする方法が知られている。血圧を計測するにあたっては、カフを人体の上腕に巻いて血圧を測定する血圧計が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、心電図を計測し、得られた心拍変動データに対して周波数解析をする方法が知られている(例えば、特許文献2~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-360524号公報
【文献】特開2004-242720号公報
【文献】特開2000-166879号公報
【文献】特開平11-155845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、何れの方法も、人体に、何らかの器具等をセットしなければならず、非常に時間と手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、非接触で簡単容易に自律神経系活動の評価を行うことができる自律神経系活動評価装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に係る自律神経系活動評価装置は、人体(M)を撮像可能なカメラ(2)と、
前記カメラ(2)にて撮像された人体(M)の画像データを取得する画像データ取得手段(CPU30、ステップS1)と、
前記画像データ取得手段(CPU30、ステップS1)にて取得した前記人体(M)の画像データの一部を切り出す切り出し手段(CPU30、ステップS4)と、
前記切り出し手段(CPU30、ステップS4)にて切り出した前記人体(M)の画像データの一部におけるRGBの画素値を算出する算出手段(CPU30、ステップS9)と、
前記算出手段(CPU30、ステップS9)にて算出したRGBの画素値に基づいて、G/B値を導出する導出手段(CPU30、ステップS11)と、
前記切り出し手段(CPU30、ステップS4)にて切り出した前記人体(M)の画像データの一部におけるRGB色空間を、色相(H)と彩度(S)と輝度(V)で表現するHSV色空間に変換する第1変換手段(CPU30、ステップS5)と、
前記第1変換手段(CPU30、ステップS5)にて変換したHSV色空間のうち、輝度(V)を削除する削除手段(CPU30、ステップS6)と、
前記削除手段(CPU30、ステップS6)にて輝度(V)を削除したHSV色空間をRGB色空間に変換する第2変換手段(CPU30、ステップS8)と、を有し、
前記算出手段(CPU30、ステップS9)は、前記第2変換手段(CPU30、ステップS8)にて変換したRGB色空間におけるRGBの画素値を算出してなることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に係る自律神経系活動評価装置は、上記請求項1に記載の自律神経系活動評価装置において、前記切り出し手段(CPU30、ステップS4)は、前記人体(M)のうち毛細血管が多い部分を、前記画像データ取得手段(CPU30、ステップS1)にて取得した前記人体(M)の画像データから切り出してなることを特徴としている。
【0010】
さらに、請求項に係る自律神経系活動評価装置は、上記請求項1又は2に記載の自律神経系活動評価装置において、前記カメラ(2)は、前記人体(M)の動画を撮像し、
前記画像データ取得手段(CPU30、ステップS1)は、前記カメラ(2)にて撮像された前記人体(M)の動画の画像データを取得し、
前記算出手段(CPU30、ステップS9)は、前記切り出し手段(CPU30、ステップS4)にて切り出した前記人体(M)の画像データの一部における各RGBの画素値の平均値を算出し、
前記導出手段(CPU30、ステップS11)は、前記算出手段(CPU30、ステップS9)にて算出した各RGBの画素値の平均値に基づいて、G/B値を導出してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、G/B値を導出してるため、G/B値の比率が高ければ、緑色の光(LG)の反射量が増大しているということであるから、真皮(MHb)に存在している毛細血管は収縮していることが分かり、もって、人体(M)がストレス等を感じ交感神経が働いていることが分かる。また、G/B値の比率が低ければ、緑色の光(LG)の反射量が減少しているということであるから、真皮(MHb)に存在している毛細血管は拡張していることが分かり、もって、人体(M)がリラックス等しており副交感神経が働いていることが分かる。
【0012】
しかして、G/B値の比率を導出しさえすれば、非接触で簡単容易に自律神経系活動の評価を行うことができることとなる。さらに、請求項1に係る発明によれば、切り出し手段(CPU30、ステップS4)にて切り出した人体(M)の画像データの一部におけるRGB色空間を、色相(H)と彩度(S)と輝度(V)で表現するHSV色空間に変換し、その変換したHSV色空間のうち、輝度(V)を削除し、輝度(V)を削除したHSV色空間をRGB色空間に変換するようにしている。このようにすれば、室内の照明等撮影環境に左右されないデータを抽出することができ、もって、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、人体(M)のうち毛細血管が多い部分を、画像データ取得手段(CPU30、ステップS1)にて取得した人体(M)の画像データから切り出しているから、毛細血管の動きをより正確に判断することが可能となり、もって、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができることとなる。
【0015】
さらに、請求項に係る発明によれば、人体(M)の動画を撮像し、各RGBの画素値の平均値を算出し、その算出した各RGBの画素値の平均値に基づいて、G/B値を導出するようにしているから、ノイズ等の影響を低減させた信頼性の高いデータを導出することができ、もって、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る自律神経系活動評価装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る自律神経系活動評価装置の制御手順を示すフローチャート図である。
図3】(a)は切り出した顔領域の画像例を示し、(b)は(a)に示す画像例から輝度を削除した場合の画像例を示す図である。
図4】光の3原色が皮膚のどこまで浸透するのかを説明する説明図である。
図5】(a)はヘモグロビンの吸光度を示すグラフ図であり、(b)は血管拡張時の緑色の光の反射量を示す説明図、(c)は血管収縮時の緑色の光の反射量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る自律神経系活動評価装置の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
本実施形態に係る自律神経系活動評価装置は、人体を撮像し、撮像した画像からG(Green)とB(Blue)値の比を導出することによって、自律神経系活動の評価を行うようにするものである。
【0019】
この点、より詳しく説明すると、自律神経系活動は、健康状態を見る上で、重要な指標の一つである。そこで、本発明者らは、自律神経系活動の一つである毛細血管の動向に着目することとした。すなわち、図4に示すように、人体の皮膚MHは、表皮MHaと、真皮MHbと、皮下組織MHcと、で構成されており、真皮MHbには、毛細血管が存在している。そして、光の3原色のうち、青色の光LBは、表皮MHaまで浸透し、緑色の光LGは、真皮MHbまで浸透し、赤色の光LRは、皮下組織MHcまで浸透する特性があることが知られている。
【0020】
一方、人体の血液中に見られる赤血球の中に存在するタンパク質であるヘモグロビンは、図5(a)に示すように、500nm~560nmの波長の光、すなわち、緑色の光LGを吸収しやすいという特性があることが知られている。
【0021】
かくして、このような特性に着目すると、以下のような特性があることが分かる。すなわち、人体がリラックスしている等副交感神経が働いている時、真皮MHbに存在している毛細血管は拡張することとなるから、ヘモグロビン量が増加することとなる。しかして、このような状態で、図5(b)に示すように、緑色の光LGが照射されると、ヘモグロビン量が増加していることから、緑色の光LGの吸収量が増大し、もって、緑色の光LGの反射量が減少(図示、緑色の反射光LGa参照)することとなる。
【0022】
一方、人体がストレス等を感じ交感神経が働いている時、真皮MHbに存在している毛細血管は収縮することとなるから、ヘモグロビン量が減少することとなる。しかして、このような状態で、図5(c)に示すように、緑色の光LGが照射されると、ヘモグロビン量が減少していることから、緑色の光LGの吸収量が減少し、もって、緑色の光LGの反射量が増大(図示、緑色の反射光LGb参照)することとなる。
【0023】
かくして、このような特性に鑑み、本実施形態に係る自律神経系活動評価装置は、人体を撮像し、撮像した画像からG(Green)とB(Blue)値の比を導出することによって、自律神経系活動の評価を行うようにしているものである。すなわち、撮像した画像のG(Green)値が高ければ、緑色の光LGの反射量が増大(図5(c)に示す、緑色の反射光LGb参照)しているということであるから、真皮MHbに存在している毛細血管は収縮していることが分かる。そして、撮像した画像のG(Green)値が低ければ、緑色の光LGの反射量が減少(図5(b)に示す、緑色の反射光LGa参照)しているということであるから、真皮MHbに存在している毛細血管は拡張していることが分かることとなる。
【0024】
しかして、このように、撮像した画像のG(Green)値に着目すれば、自律神経系活動の評価を行うようにすることができる。この点、図面を参照して詳しく説明することとする。
【0025】
図1に示すように、自律神経系活動評価装置1は、人体Mを撮像可能なカメラ2と、画像処理装置3と、で構成されている。
【0026】
カメラ2は、デジタルカメラ、或いは、スマートフォンやノートパソコン等に内蔵されているカメラ等、透視投影モデルに基づいたカメラ等からなるもので、人体Mの動画や静止画を撮像可能なものである。
【0027】
画像処理装置3は、CPU30と、マウスやキーボード、タッチパネル等にて外部から所定データを画像処理装置3に入力することができる入力部31と、画像処理装置3外に所定データを出力することができる出力部32と、所定のプログラム等を格納した書込み可能なフラッシュROM等からなるROM33と、作業領域やバッファメモリ等として機能するRAM34と、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示部35と、で構成されている。
【0028】
かくして、上記のような自律神経系活動評価装置1を使用するにあたっては、作業者が、図1に示す画像処理装置3の入力部31を用いて、ROM33内に格納されているプログラムの起動を指示する。これにより、画像処理装置3のCPU30(図1参照)は、図2に示すような処理を行う。以下、図2を参照して説明する。なお、図2に示すプログラムの処理内容はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0029】
まず、CPU30(図1参照)は、カメラ2で撮像された人体Mの動画像データを取得する(ステップS1)。なお、取得する動画像データとしては、例えば、3秒間、カメラ2で人体Mを撮像したものを取得する。
【0030】
次いで、CPU30(図1参照)は、取得した動画像データの1フレーム分を取得する(ステップS2)。具体的には、カメラ2で撮像した3秒間の動画像データを30fps(frames per second)で分割し、90フレームにした後、その90フレームのうち、1フレーム分を取得するというものである。
【0031】
次いで、CPU30(図1参照)は、取得した1フレーム分のデータから、顔検出のアルゴリズムの一手法である、Haar-like特徴量等を用いた顔検出アルゴリズムを実行して、人体Mの顔領域MK(例えば、図3(a)参照)を切り出す(ステップS3)。
【0032】
次いで、CPU30(図1参照)は、切り出した顔領域MKから、顔検出のアルゴリズムの一手法である、Haar-like特徴量等を用いた顔検出アルゴリズムを実行して、図3(b)に示す頬の部分のROI(Region of Interest)画像を切り出す(ステップS4)。具体的には、顔のパーツ(目、口、鼻など)は略一定の比率で位置が決まっていることから、特徴抽出がしやすい顔の1つのパーツ(例えば、目、鼻)を原点として、鼻部、頬、額部の検出を行う。より詳しく説明すると、Haar-like特徴量等を用いた顔検出アルゴリズムを実行して、矩形領域内部を2~3等分して各領域の輝度値の総和の差を特徴量として用いることで顔のパーツを導出する。例えば、目の検出は、目付近の領域は、鼻や頬の領域に比べて輝度値が低く、目は眉間より低いという特徴を用いて検出するようにしている。また、鼻の検出は、3等分された矩形領域を用いて、各領域の輝度値の総和を導出し、中央と左右の差が大きい部分を鼻として検出するようにしている。これは、鼻を矩形領域で囲った際、鼻は中心部の輝度値が高く、両端は低いという特徴があるためである。しかして、このようにして、顔のパーツを導出して、図3(b)に示す頬の部分のROI(Region of Interest)画像を切り出すこととなる。
【0033】
次いで、CPU30(図1参照)は、切り出したROI画像をRGB色空間からHSV色空間へ変換する(ステップS5)。RGB色空間とは、赤、緑、青の三原色を混合することにより構成される色空間であり、HSV色空間とは、色相(Hue)、彩度(Saturation・Chroma)、輝度(Value)によって構成される色空間である。なお、色空間の変換は、従来公知の方法により行うことができるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0034】
次いで、CPU30(図1参照)は、HSV色空間へ変換したROI画像の輝度(Value)を削除する処理を行う(ステップS6)。これにより、図3(b)に示すような輝度を削除した画像に変換されることとなる。なお、図3(b)においては、理解を容易にするために、切り出した顔領域MK全体の輝度を削除した画像を示しているが、RGB色空間からHSV色空間へ変換されるのは切り出したROI画像のみであり、輝度(Value)を削除するのは、そのROI画像のみである。また、言うまでもないが、切り出されるROI画像は、HSV色空間に変換する前の画像(図3(a)に示す切り出した顔領域MK)からである。
【0035】
次いで、CPU30(図1参照)は、輝度(Value)を削除したROI画像の色相の閾値処理を行う(ステップS7)。具体的には、輝度(Value)を削除したROI画像の色相のうち、0~42の範囲、又は、163~180の範囲に存在する色相のみを抽出する処理を行う。なお、輝度(Value)を削除したROI画像に、図3(b)に示すような壁が存在していた場合は、壁の色相は、42~60の範囲に存在する色相のみを抽出する処理を行う。
【0036】
次いで、CPU30(図1参照)は、輝度(Value)を削除し、色相の閾値処理を行ったROI画像をHSV色空間からRGB色空間へ変換する(ステップS8)。なお、色空間の変換は、従来公知の方法により行うことができるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0037】
次いで、CPU30(図1参照)は、再びRGB色空間へ変換したROI画像における各RGBの画素値の平均値を算出する。すなわち、CPU30(図1参照)は、再びRGB色空間へ変換したROI画像におけるR(Red)値の画素値を全て抽出し、その抽出したR(Red)値の画素値の平均値を算出する。そしてさらに、ROI画像におけるG(Green)値の画素値を全て抽出し、その抽出したG(Green)値の画素値の平均値を算出する。またさらに、ROI画像におけるB(Blue)値の画素値を全て抽出し、その抽出したB(Blue)値の画素値の平均値を算出するというものである(ステップS9)。
【0038】
次いで、CPU30(図1参照)は、所定回数カウンタをインクリメント(+1)した上で、所定回数(例えば、90)に達したか否かを確認する(ステップS10)。すなわち、90フレーム分の処理が終了したか否かを確認する。換言すれば、所定回数カウンタが「1」であれば、1フレーム分の処理が終了しており、「2」であれば、2フレーム分の処理が終了しており、「3」であれば、3フレーム分の処理が終了しているというように確認することができる。
【0039】
しかして、所定回数(例えば、90)に達していなければ(ステップS10:NO)、CPU30(図1参照)は、ステップS2の処理に戻り、ステップS2~ステップS9の処理を再度行う。
【0040】
一方、所定回数(例えば、90)に達していれば(ステップS10:YES)、CPU30(図1参照)は、所定回数カウンタをクリアし、ステップS11の処理に進む。
【0041】
次いで、CPU30(図1参照)は、上記算出した所定フレーム分(例えば、90フレーム分)のG(Green)値の画素値の平均値を全て足し合わせ、さらに、上記算出した所定フレーム分(例えば、90フレーム分)のB(Blue)値の画素値の平均値を全て足し合わせた上で、G(Green)/B(Blue)値を導出し(ステップS11)、処理を終える。
【0042】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、導出したG(Green)/B(Blue)値の比率が高ければ、緑色の光LG(図5(c)参照)の反射量が増大しているということであるから、真皮MHb(図4参照)に存在している毛細血管は収縮していることが分かり、もって、人体Mがストレス等を感じ交感神経が働いていることが分かる。また、導出したG(Green)/B(Blue)値の比率が低ければ、緑色の光LG(図5(b)参照)の反射量が減少しているということであるから、真皮MHb(図4参照)に存在している毛細血管は拡張していることが分かり、もって、人体Mがリラックス等しており副交感神経が働いていることが分かる。
【0043】
しかして、G(Green)/B(Blue)値の比率を導出しさえすれば、非接触で簡単容易に自律神経系活動の評価を行うことができることとなる。しかるに、このように非接触で簡単容易に自律神経系活動の評価を行うことができるようになれば、毎日の生活に組み込み易くなり、もって、鬱等の発病を未然に防ぐことができる。なお、基準値は、各個人で任意に決定し、その基準値より高ければ、導出したG(Green)/B(Blue)値の比率が高いと判断し、その基準値より低ければ、導出したG(Green)/B(Blue)値の比率が低いと判断するようにすれば良い。
【0044】
ところで、本実施形態においては、G(Green)値だけを導出せず、G(Green)/B(Blue)値を導出しているが、これは、値の正規化を行うためである。このようにすれば、室内の照明等撮影環境が値に及ぼす影響を低減させることができ、もって、自律神経系活動の評価の精度を高めることができることとなる。
【0045】
また、本実施形態においては、室内の照明等撮影環境の影響をより低減させるために、切り出したROI画像をRGB色空間からHSV色空間へ変換し、輝度(Value)を削除した上で、再び、RGB色空間へ変換するようにしている。このようにすれば、室内の照明等撮影環境に左右されないデータを抽出することができ、もって、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができることとなる。
【0046】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、ROI画像の色相の閾値処理を行う例を示したが、この処理を設けなくとも良い。しかしながら、設けた方がより室内の照明等撮影環境に左右されないデータを抽出することができるため、好ましい。
【0047】
また、本実施形態においては、人体Mの動画像データをカメラ2にて撮像する例を示したが、静止画データでも良い。しかしながら、人体Mの動画像データをカメラ2にて撮像するのが好ましい。動画像データを撮像すれば、各RGBの画素値の平均値に基づいて、G(Green)/B(Blue)値を導出することができ、もって、ノイズ等の影響を低減させた信頼性の高いデータを導出することができるためである。これにより、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができる。なお、動画像データを用いることにより、3秒毎の平均値を導出することができ、もって、リアルタイムに値を導出することが可能となる。このようにすれば、心電図を用いてリアルタイムに自律神経系活動の評価を行うとすれば、1分毎のデータでしか評価することができなかったが、動画像データを用いることにより、3秒毎のデータで評価することが可能となる。
【0048】
ところで、本実施形態においては、図2に示すように、1フレーム毎に処理をする例を示したが、移動平均を用いれば、最初の3秒間の処理(90フレームの処理)が終われば、それ以降の処理は、1フレーム毎のサンプリングで算出すること可能となる。
【0049】
また、本実施形態においては、ROI画像として、人体Mの頬を切り出す例を示したが、それに限らず、鼻部、手、足等、人体Mの中で毛細血管が多いとされる部分を切り出すようにすれば良い。しかして、このように毛細血管が多いとされる部分を切り出すことにより、毛細血管の動きをより正確に判断することが可能となり、もって、自律神経系活動の評価の精度をより高めることができることとなる。
【0050】
また、本実施形態においては、顔検出のアルゴリズムの一手法である、Haar-like特徴量等を用いた顔検出アルゴリズムを用いた例を示したが、それに限らず、機械学習ライブラリのDlibを用いて検出するようにしても良い。また、目の検出にあたっては、輝度値を用いて行うことができる。すなわち、虹彩と強膜は、色や輝度値から見て大きく差がある部分であるため、小さい矩形領域を用いて、中心線から左右の輝度値の総和を導出し、差が大きいところを見て、虹彩と強膜の境界を検出するようにする。そして、虹彩は、ある程度大きさが一定という特徴があることから、色の閾値処理で黒部分のみを導出し、面積を用いて黒目を検出することにより、目の検出を行うことができる。また、二次元画像であれば、目は円形状であるから、形状を導出するハフ変換を用いることにより、円形部分を検出することができ、もって、目の検出を行うことができる。さらに、唇の検出にあたっては、唇は赤みを帯びている為、色の閾値処理である程度の位置を導出し、上唇の山部分の輝度値が低いことを用いて唇の中央を検出することにより、唇の検出を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態においては、カメラ2と画像処理装置3を別々に設ける例を示したが、それに限らず、画像処理装置3にカメラ2を内蔵し、一体にしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 自律神経系活動評価装置
2 カメラ
3 画像処理装置
30 CPU
M 人体
MK 顔領域
MH 皮膚
MHa 表皮
MHb 真皮
MHc 皮下組織
LB 青色の光
LG 緑色の光
LR 赤色の光













図1
図2
図3
図4
図5