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特許7106138VO2焼結体の製造方法およびVO2焼結体スパッタリングターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】VO2焼結体の製造方法およびVO2焼結体スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220719BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20220719BHJP
   C09K 5/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C04B35/495
C09K5/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019197735
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070846
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143411
【氏名又は名称】株式会社高純度化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】海野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】柴木 健志
(72)【発明者】
【氏名】富樫 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 寛太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴山 卓眞
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-115398(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006337(WO,A1)
【文献】特開2016-119166(JP,A)
【文献】特開2001-032063(JP,A)
【文献】国際公開第2020/144982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C04B 35/495
C09K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25粉とV23粉とを混合して混合粉を調製し、
非酸化雰囲気下に、前記混合粉を加熱しながら圧縮して、1~1000Paの減圧下に、焼結温度800~1200℃、焼結時間0.1~1.5時間、25粉とV23粉との反応焼結を行うことにより、ビッカース硬度(Hv)が300以上であり、相対密度が95%以上の焼結体を作製する、VO2焼結体の製造方法。
【請求項2】
25粉およびV23粉に加えて、さらに酸化タングステンを混合して混合粉を調製し、かつ、
前記混合粉中、V25粉およびV23粉の合計に対して、酸化タングステンの含有量を0.01~8mol%とする、請求項1に記載のVO2焼結体の製造方法。
【請求項3】
25粉およびV23粉に加えて、さらに酸化クロムを混合して混合粉を調製し、かつ、
前記混合粉中、V25粉およびV23粉の合計に対して、酸化クロムの含有量を0.01~25mol%とする、請求項1に記載のVO2焼結体の製造方法。
【請求項4】
VO2焼結体のビッカース硬度(Hv)が300以上であり、相対密度が95%以上である、VO2焼結体スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体スパッタリングターゲット等に好適な蓄熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱とは、熱エネルギーを蓄え、必要な時に放熱することをいう。また、蓄熱材とは、熱エネルギーを蓄え、必要な時に放熱する材料のことをいう。蓄熱には潜熱蓄熱と顕熱蓄熱とがある。潜熱蓄熱とは、物質が固体から液体へ、もしくは液体から固体へと変わる固液相変化潜熱を利用する蓄熱のこと、または、物質が固相から固相へと相変化するときに固相―固相変化潜熱を利用する蓄熱のことをいう。一方、顕熱蓄熱とは、物質の比熱、すなわち、物質の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量を利用したものであり、物質の温度を上昇・下降させるために必要な熱エネルギーを蓄えることをいう。
【0003】
一般に、潜熱蓄熱は相変化を伴うため、顕熱蓄熱に比べて、単位体積当たりの蓄熱量が多く、また、相変化温度が一定であるため、熱の取り出し温度が安定であることから、工業的により利用される傾向がある。また、潜熱蓄熱の中でも、固相-固相変化潜熱を利用する蓄熱は、物質が固体から液体へ、もしくは液体から固体へと変わる固液相変化潜熱を利用する蓄熱と違い、異なる相を介在しない点で利用しやすい利点がある。
【0004】
潜熱蓄熱の材料として、二酸化バナジウム(VO2)は注目すべき物質である。VO2は、ルチル型構造の酸化物で、V23-VO2間のVn2n-1(n=3~9)相において、金属-絶縁体転移を69℃という室温より高い温度で起こす(非特許文献1参照)。また、転移エンタルピーも237J/ccと非常に大きく、当該相転移の起こる温度範囲も非常に狭い(特許文献1参照)。
【0005】
VO2は、バナジウム(V)の一部をタングステン(W)で置き換えることで、金属-絶縁体転移の起こる温度(相転移温度)が低下する性質を有する(特許文献1)。また、VO2には、バナジウム(V)の一部をクロム(Cr)で置き換えることで、金属-絶縁体転移の起こる温度(相転移温度)が上昇する性質もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-163510公報
【文献】特開2014-210835公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Solid State Chemistry, Vol.6, pp.258-270, 1973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、VO2は相転移温度を変化させることができる等の機能および特徴を有しており、潜熱蓄熱材料として、例えば、スパッタリングターゲット材等への応用が期待されている。
VO2は粉末の状態であり、実用化のためには、粉末を加熱して焼結し、固化する必要がある。しかし、VO2は酸化物であり、また、酸化物の中でも難焼結性であるために、VO2粉末を焼結しても、焼結体の焼結密度は低く、VO2粉末の理論密度(4.66g/cm3)に対する、VO2焼結体の実際の密度の比である相対密度で表すと、65~85%である。このように相対密度の低い焼結体ターゲットを用いてスパッタしても、スパッタレートは低く、また不安定である。このような焼結体ターゲットを用いて成膜された膜は緻密さや均質性に欠くことがある。
【0009】
そのため、VO2粉末を用いて、相対密度が高く、かつ、ターゲット材として必要な高い硬度を有する焼結体を生成しうる焼結体の製造方法が要望されている。
本発明は、高い相対密度と高い硬度とを両立したVO2焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のVO2焼結体の製造方法は、V25粉とV23粉とを混合して混合粉を調製し、非酸化雰囲気下に、前記混合粉を加熱しながら圧縮して、1~1000Paの減圧下に、焼結温度800~1200℃、焼結時間0.1~1.5時間、25粉とV23粉との反応焼結を行うことにより、ビッカース硬度(Hv)が300以上であり、相対密度が95%以上の焼結体を作製することを特徴とする。
このような方法によれば、相対密度が95%以上であり、ビッカース硬度(Hv)が300以上である焼結体が得られる。このような焼結体はスパッタリングターゲット材として好適である。
【0011】
また、本発明のVO2焼結体の製造方法では、V25粉およびV23粉に加えて、さらに酸化タングステンまたは酸化クロムを混合してもよい。このとき、酸化タングステンの好適な含有量は、V25粉およびV23粉の合計に対して、0.01~8mol%であり、酸化クロムの好適な含有量は、V25粉およびV23粉の合計に対して、0.01~25mol%である。
【0012】
すなわち、VO2におけるVの一部をWに置き換えることによって、VO2単体の場合よりも、VO2焼結体の蓄熱温度域を低くすることができる。一方、VO2におけるVの一部をCrに置き換えることによって、VO2単体の場合よりも、VO2焼結体の蓄熱温度域を高くすることができる。
【0013】
本発明のVO2焼結体スパッタリングターゲットは、VO2焼結体のビッカース硬度(Hv)が300以上であり、相対密度が95%以上であることを特徴とする。
前記のとおり、本発明では、V25粉およびV23粉の混合粉を用いた反応焼結プロセスを用いることで、緻密な焼結体を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、V25粉およびV23粉を混合した混合粉を、真空ホットプレス法、放電プラズマ焼結(SPS)法または熱間等方圧加工(HIP)法を用いて、V25粉およびV23粉を反応焼結させることで、焼結密度が4.4g/cm3以上、ビッカース硬度(Hv)300以上であり、かつ、VO2粉末の理論密度に対する潜熱量、すなわち、相対密度が95%以上である焼結体を製造することができる。
【0015】
また、本発明によれば、VO2焼結体中のVの一部をWに置き換えてV1-xx2(0≦x≦0.08)とすることで、VO2焼結体の蓄熱温度域を低くすることができ、VO2焼結体中のVの一部をCrに置き換えてV1-yCry2(0≦y≦0.25)とすれば、VO2焼結体の蓄熱温度域を高くすることができる。よって、本発明の製造方法は、VO2焼結体の蓄熱温度域を変更する場合にも有効である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、相対密度が95%以上であり、スパッタリングターゲット(以下単に「ターゲット」ともいう。)材として好適なVO2焼結体の製造方法を提供するものであり、V25粉とV23粉とを混合して混合粉を調製し、非酸化雰囲気下に、前記混合粉を加熱しながら圧縮して、V25粉とV23粉との反応焼結を行うことを特徴とする。
【0017】
まず、原料としてV25粉およびV23粉を用意する。V25は1750℃で分解すると、V23になる。一方、V23粉は、酸化不足の傾向を有し、空気中で加熱すると酸化されて燃える。本発明のVO2焼結体の製造方法では、VO2焼結体の原料として、V25粉およびV23粉を混合し、当該原料粉を加熱しながら圧縮して、反応焼結させることを特徴とする。
【0018】
25粉およびV23粉とも平均粒径は通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。V25粉およびV23粉の平均粒径は、均一な混合が容易であるとの観点から、同程度が好ましい。
【0019】
前記原料粉の粒径が前記範囲を超えると、均一な混合が難しくなり、また結晶粒の粗大化や粒界偏析が起こることがある。そのため、原料粉の粒径は小さい方が好ましい。なお、V25粉およびV23粉の粒径を選択することは、原料粉の比表面積が制御されて、混合焼結体に高い相対密度を与えることに繋がる。
【0020】
次いで、V25粉およびV23粉をそれぞれ秤量し、公知の粉砕方法を用いて粉砕・混合する。粉砕方法は、例えば、湿式または乾式によるボールミル、振動ミル、およびビーズミル等である。本発明では、粉と粉との混合に一般的に用いられるボールミルが用いられる。原料混合粉において、V25粉およびV23粉の割合(V25粉:V23粉、mol比)は、通常は45~55:55~45、好ましくは48~52:52~48であり、最も好ましくは50:50である。
【0021】
25粉およびV23粉の合計を100mol%としたとき、V25粉およびV23粉の含有量はそれぞれ50mol%である場合が最も好ましい。V25粉の含有量が50mol%を超えると、V23粉の含有量はその分だけ減少する。非酸化雰囲気下、V23はV25から供給された酸素分と反応してVO2を生成する。そのため、VO2の生成量は減少したV23粉の含有量(mol%)に限定され、VO2焼結体中には反応焼結に関与しないV25が多く残り、100mol%のVO2からなるVO2焼結体より蓄熱性が低下することとなる。
【0022】
一方、V25粉の含有量が50mol%を下回ると、V23粉の含有量はその分だけ増加する。V25粉の含有量が少なければ、V25から供給される酸素分も少なくなる。そうすると、VO2の生成量は、減少したV25粉の含有量(mol%)に限定され、VO2焼結体中には、酸素不足のため、反応焼結に関与しないできなかったV23が多く残り、100mol%のVO2からなるVO2焼結体より蓄熱性が低下することになる。
【0023】
次いで、V25粉およびV23粉からなる原料混合粉を焼結装置に入れる。原料混合粉を非酸化雰囲気下、加熱しながら圧縮することで、V25粉およびV23粉の反応焼結を行う。つまり、焼結装置内でV25粉およびV23粉を反応させると同時に焼結してVO2焼結体を生成する。
特許文献1では、V25粉末を水素およびアルゴンの混合ガス(水素5%、アルゴン95%)中で焼結して、まず低級酸化物であるV23粉末を生成した後、当該V23粉末と、V25粉およびWO3粉末とを、バナジウム、タングステンおよび酸素が所定のmol比となるように混合して、減圧下に焼成してV1-xx2の粉末試料を作製している。つまり、特許文献1の方法では、V25粉を一度水素で還元する必要がある。また、均一な混合が1回の操作では不充分であり、複数回の均質化処理が必要となる。これに対して、本発明では、V25粉およびV23粉からなる混合粉を出発原料とすることで、VO2の製造工程においてV25を直接利用しており、均質化処理も1回で足りることから、均一な焼結体、すなわち、高密度かつ高強度のVO2焼結体を効率的に製造することができる。
【0024】
本発明のVO2焼結体の製造方法において、焼結温度は、通常は800~1200℃、好ましくは900~1100℃であり、焼結時間は、通常は0.1~1.5時間、好ましくは0.25~1時間である。加熱温度が1200℃を超えると、V25の分解速度が速すぎて所定量のVO2が生成しないことがある。一方、加熱温度が800℃を下回ると、焼結が充分に進行せず、VO2焼結体中にV25またはV23が残留し、ターゲット材に必要な焼結密度まで到達できないことがある。
【0025】
加熱は、通常は3000Pa以下、具体的には1~1000Paの減圧下で行う。
非酸化雰囲気は、窒素、ヘリウムおよびアルゴン等の不活性ガスの他に、還元性ガスであってもよい。
ここで、焼結とは、真空ホットプレス法、常圧焼結法、HIP法(熱間等方圧加圧法)、およびSPS法(放電プラズマ焼結法)等により、粉末を高温で固めることをいう。本発明では、これらの焼結法のうち、真空ホットプレス法、SPS法またはHIP法を用いることが好ましい。
【0026】
得られたVO2焼結体は、その相対密度が95%以上、好ましくは98%以上である。本明細書において、相対密度とは、前記したように、焼結前のVO2粉末の密度(4.66g/cm3)に対するVO2焼結体の密度の比である。相対密度が95%以上であるとき、VO2焼結体の潜熱量もVO2が粉末状態であるときの潜熱量の95%以上となる。なお、潜熱量は示差走査熱量測定(DSC)により求められる。また、相対密度が95%以上であるとき、VO2焼結体のJIS Z 2244に準拠するビッカース硬度(Hv)は300以上となる。
【0027】
本発明では、混合粉を調製するに際して、V25粉およびV23粉に加えて、さらに酸化タングステンまたは酸化クロムを混合してもよい。
酸化タングステンには、タングステンの酸化数により、W23、WO2およびWO3があるが、WO3粉末を用いるのが一般的である。酸化クロムにも、CrO、Cr23、CrO2およびCrO3以外に、混合酸化物や過酸化物があるが、通常は最も安定なCr23が用いられる。
【0028】
WO3粉末の含有量は、V25粉およびV23粉の合計に対して、0.01~8mol%である。VO2焼結体中のVの一部をWに置き換えてV1-xx2(0≦x≦0.08)とすることで、VO2焼結体の蓄熱温度域を低くすることができる。
Cr23粉末の含有量は、V25粉およびV23粉の合計に対して、0.01~25mol%である。VO2焼結体中のVの一部をCrに置き換えてV1-yCry2(0≦y≦0.25)とすれば、VO2焼結体の蓄熱温度域を高くすることができる。
【0029】
本発明のVO2焼結体ターゲットは、VO2焼結体の相対密度が95%であり、主としてVO2からなる。ただし、本発明の効果を損なわない範囲内で、例えば、製造過程で生じ得る酸化物および窒化物等の不可避的な成分を含有することを排除するものではない。
【実施例
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0031】
[実施例1]
25粉およびV23粉をmol比が50:50となるように秤量して、ボールミル用容器に装入した後、ボールミルで12時間混合した。得られた混合粉を取り出し、ホットプレス焼結炉の内径76.2mmのカーボン型に装入し、15Paの減圧下に焼結した。焼結条件は、焼結温度を800℃、焼結時間を1時間、焼結雰囲気をアルゴンとした。得られた焼結体の密度からVO2粉末の密度に対する相対密度を求めたところ、97.7%であった。
焼結体の潜熱量をブルカー製DSC3120を用いて測定したところ、229J/cm3と、VO2が粉末状態であるときの潜熱量の95%以上であった。JIS Z 2244に準拠したビッカース硬度(Hv)をフーチュアテック製硬度計FV-700を用いて測定したところ、472であった。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様に、V25粉およびV23粉を秤量、混合した後、混合粉をカーボン型に装入して焼結した。得られた焼結体の相対密度は96.8%であった。
次いで、実施例1と同様に、焼結体の各特性値を測定したところ、潜熱量は230J/cm3と、VO2の粉末状態の95%以上であり、ビッカース硬度は361であった。
【0033】
[実施例3]
実施例1と同様に、V25粉およびV23粉を秤量、混合した後、混合粉をカーボン型に装入して焼結した。得られた焼結体の相対密度は98.5%であった。
次いで、実施例1と同様に、焼結体の各特性値を測定したところ、潜熱量は234J/cm3と、VO2の粉末状態の95%以上であり、ビッカース硬度は433であった。
【0034】
実施例1~3の結果を表1に示す。表1から、同一方法で焼結体を作製した場合、焼結体の相対密度は96.8~98.5%、潜熱量は229~234J/cm3、ビッカース硬度は361~472であり、再現性良く焼結体が作製できることがわかる。
【0035】
【表1】
【0036】
[比較例1]
25粉およびV23粉をmol比が50:50となるように秤量して、ボールミル用容器に装入した後、ボールミルで12時間混合した。得られた混合粉を取り出し、耐熱性容器に移し替え、電気炉に入れて、アルゴン雰囲気中で加熱することにより、VO2粉を調製した。加熱温度は950℃、加熱時間は0.4時間とした。
【0037】
前記VO2粉をホットプレス焼結炉の内径76.2mmのカーボン型に装入し、焼結した。焼結条件は、焼結温度を800℃、焼結時間を1時間、焼成雰囲気をアルゴンとした。得られた焼結体の相対密度を測定したところ、75.6%であった。
実施例1と同様に焼結体の各特性値を測定したところ、潜熱量は199J/cm3と、VO2の粉末状態の95%未満であった。ビッカース硬度は231であった。
これらの結果を表2に示す。
【0038】
[比較例2]
加熱温度を950℃から1050℃に変更し、加熱時間を0.4時間から0.6時間に変更した以外は、比較例1と同様にして、VO2粉を調製した。
【0039】
比較例1と同様に、VO2粉をホットプレス焼結炉に装入して焼結した。得られた焼結体の相対密度は80.7%であった。
実施例1と同様に焼結体の各特性値を測定したところ、潜熱量は168J/cm3と、VO2の粉末状態の95%未満であった。ビッカース硬度は161であった。
これらの結果を表2に示す。
【0040】
[比較例3]
加熱温度を950℃から1020℃に変更し、加熱時間を0.4時間から0.5時間に変更した以外は、比較例1と同様にして、VO2粉を調製した。
【0041】
比較例1と同様に、VO2粉をホットプレス焼結炉に装入して焼結した。得られた焼結体の相対密度は78.7%であった。
実施例1と同様に焼結体の各特性値を測定したところ、潜熱量は172J/cm3と、VO2の粉末状態の95%未満であった。ビッカース硬度は243であった。
これらの結果を表2に示す。
【0042】
【表2】