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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】真空吸引アーム及びコレットホルダ
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019567138
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002227
(87)【国際公開番号】W WO2019146681
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2018009492
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】小島 智幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 徹
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-192492(JP,A)
【文献】特開2017-027997(JP,A)
【文献】特開2004-158658(JP,A)
【文献】特開平10-075094(JP,A)
【文献】特開平04-085997(JP,A)
【文献】特開平09-283988(JP,A)
【文献】実開昭61-117633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端のコレット挿入孔から上方に連続する真空吸引孔を中心軸側に有した第1の筒状をなし、該第1の筒状の外周から前記真空吸引孔まで貫通する、前記中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、前記鏡像面に垂直で前記中心軸を通る中心線上で互いに対向する第1及び第2案内孔が設けられたコレットシャフトと、
前記中心軸に沿った断面において、前記中心軸に沿った方向の中央が外周側に突出して肉厚の厚い鍔部を有し、該鍔部より上方側が肉厚の薄い鞘部となることにより、前記断面の形状の前記上方側がL字型段差形状であり、前記L字型段差形状の内周側に位置し前記コレットシャフトの外周面に接する摺動内周面及び該摺動内周面から下方の前記鞘部から離れた位置において前記中心軸から遠心方向に拡がるテーパ状の押圧内周面、該押圧内周面から下方に連続する保護内周面を有し、前記中心軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部と、
前記第1及び第2案内孔内にそれぞれ配置され、前記押圧内周面から対称方向に押圧されることが可能な第1及び第2押圧球と、
下端部に設けられたノズルチップ挿入孔から前記中心軸方向の上方に連続する貫通孔を内部に有し、上部の外径形状が前記コレット挿入孔の内径形状に整合した第2の筒状をなし、該第2の筒状の外周面にリング状の保持溝が設けられたノズルコレットと、
前記中心軸に沿った断面形状がL字型段差形状となるように、下部側に肉厚の薄い円筒状鞘部を有し、前記コレットシャフトの前記外周面の一部に固定されたバネ押さえ部と、
前記バネ押さえ部の前記鞘部の外周に上端部の内周を接し、前記球押さえ部の前記鞘部の外周に下端部の内周を接し、前記中心軸方向に伸縮可能なバネと
を備え、前記ノズルコレットの前記上部が前記コレット挿入孔に挿入された際に、前記保持溝に嵌合した前記第1及び第2押圧球を前記保持溝に向けて互いに対称方向に押圧することを特徴とする真空吸引アーム。
【請求項2】
前記第2の筒状の外周面かつ前記保持溝の下方に固定された回り止めピンを更に備え、
前記上部が前記コレット挿入孔に挿入された際に、前記コレットシャフトの前記下端部の外縁部かつ前記第1案内孔の下方に切り欠き状に設けられた回り止め溝に前記回り止めピンが嵌合することを特徴とする請求項1に記載の真空吸引アーム。
【請求項3】
下端のコレット挿入孔から上方に連続する真空吸引孔を中心軸側に有した第1の筒状をなし、該第1の筒状の外周から前記真空吸引孔まで貫通する、前記中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、前記鏡像面に垂直で前記中心軸を通る中心線上で互いに対向する第1及び第2案内孔が設けられたコレットシャフトと、
前記中心軸に沿った断面において、前記中心軸に沿った方向の中央が外周側に突出して肉厚の厚い鍔部を有し、該鍔部より上方側が肉厚の薄い鞘部となることにより、前記断面の形状の前記上方側がL字型段差形状であり、前記L字型段差形状の内周側に位置し前記コレットシャフトの外周面に接する摺動内周面及び該摺動内周面から下方の前記鞘部から離れた位置において前記中心軸から遠心方向に拡がるテーパ状の押圧内周面、該押圧内周面から下方に連続する保護内周面を有し、前記中心軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部と、
前記第1及び第2案内孔内にそれぞれ配置され、前記押圧内周面から対称方向に押圧されることが可能な第1及び第2押圧球と、
前記中心軸に沿った断面形状がL字型段差形状となるように、下部側に肉厚の薄い円筒状鞘部を有した段差形状であり、前記コレットシャフトの前記外周面の一部に固定されたバネ押さえ部と、
前記バネ押さえ部の前記鞘部の外周に上端部の内周を接し、前記球押さえ部の前記鞘部の外周に下端部の内周を接し、前記中心軸方向に伸縮可能なバネと
を備え、下端部に設けられたノズルチップ挿入孔から前記中心軸方向の上方に連続する貫通孔を内部に有し、上部の外径形状が前記コレット挿入孔の内径形状に整合した第2の筒状をなし、該第2の筒状の外周面にリング状の保持溝が設けられたノズルコレットの前記上部が前記コレット挿入孔に挿入された際に、前記保持溝に嵌合した前記第1及び第2押圧球を前記保持溝に向けて互いに対称方向に押圧することを特徴とするコレットホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の微細部材をハンドリングする精密加工装置に用いられる真空吸引アーム及びこの真空吸引アームを構成するコレットホルダに係り、特にコレットホルダの先端に挿入されるノズルコレットを高速に自動交換するシステムに好適なコレットホルダ及びノズルコレットに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルヘッドを有する従来の真空吸引型精密加工装置として、ノズルヘッド側に設けられたリング状の弾性体の押圧がノズルヘッドの穴に埋設されたピンローラに伝えられ、そのピンローラが装置本体のパイプ側面に設けられた保持溝に固定されるという仕組みが提案されている(特許文献1参照。)。装置本体のパイプ側に設けられた弾性体の押圧がパイプの穴に設置された球体に伝えられ、その球体がノズルヘッドの側面に設けられた凹部に嵌まり込むという仕組みも提案されている(特許文献2参照。)。特許文献1及び2に記載された発明は、一方の部材に設けられた弾性体の押圧を受けた部品が他方の部材の溝に嵌まり込んで固定される点で共通しており、ノズルヘッドの着脱は、弾性体の押圧力より大きい力を加えることで、いずれもワンタッチで可能である。
【0003】
また、特許文献1及び2に記載された発明においては、ノズルヘッドを装置本体に固定する際の水平方向の位置ずれがある場合、人が位置ずれの程度を目視で確認し、手動で正しい位置に調整しなければならないので、ノズルヘッドの高精度高速自動交換システムへの使用には適しない。あるいは、カメラやセンサで位置ずれを認識して自動調整する装置を別途用意しなければならない。手動の場合は手間や時間がかかり、カメラやセンサの場合は装置導入のためのコストがかかってしまうという問題が生じる。
【0004】
シャフト回転に伴い、ノズルの装着位置がずれないように非対称構造によって、ノズルの回転を防止するノズル回転防止機構も提供されている(特許文献3参照。)。特許文献3に記載された発明においては、二つの硬球が、ノズルの溝部の周方向に沿って互いの間隔が不均等になるように非対称に設けられ、二つの硬球がノズルの溝部の溝に嵌合することにより、ノズルの回転が防止される。特許文献3の図1(b)に記載されたような二つの硬球が非対称に配置された構造では、静的な状態ではノズルの回転が防止できる。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載された発明では、非対称に配置された二つの硬球からの力が一方向にしか印加されないので、ノズル交換のような動的な動作においては、ノズルの高速上下運動の際に縦ぶれが発生し、ノズル交換時のノズルの位置が安定しない。したがって、特許文献3に記載された発明では、縦ぶれがノズルの高速な吸脱着の際に悪影響を及ぼし、高精度高速自動交換システムに使用される高速上下運動でのノズルの吸脱着の精度を高く保つことができない。更に、特許文献3に記載された非対称な二つの硬球の配置では、ノズルの磨耗に偏りが生じるので、高精度高速自動交換システムに使用されるような高速上下運動の場合にはノズルの寿命が短くなり、不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3087540号公報
【文献】特許第3064368号公報
【文献】特開2003-243892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、ノズルコレットの高精度高速自動交換システムに使用可能で、高速上下運動でも縦ぶれしないでノズルコレットの吸脱着の精度を高く保つことができる真空吸引アーム、この真空吸引アームを構成する保持力の高い高精度なコレットホルダ、このコレットホルダの先端に挿入されるノズルコレッを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(a)下端のコレット挿入孔から上方に連続する真空吸引孔を中心軸側に有した第1の筒状をなし、この第1の筒状の外周から真空吸引孔まで貫通する、中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、鏡像面に垂直で中心軸を通る中心線上で互いに対向する第1及び第2案内孔が設けられたコレットシャフトと、(b)コレットシャフトの外周面に接する摺動内周面及びこの摺動内周面から下方かつ中心軸から遠心方向に拡がるテーパ状の押圧内周面、この押圧内周面から下方に連続する保護内周面を有し、中心軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部と、(c)第1及び第2案内孔内にそれぞれ配置され、押圧内周面から対称方向に押圧されることが可能な第1及び第2押圧球と、(d)下端部に設けられたノズルチップ挿入孔から中心軸方向の上方に連続する貫通孔を内部に有し、上部の外径形状がコレット挿入孔の内径形状に整合した第2の筒状をなし、この第2の筒状の外周面にリング状の保持溝が設けられたノズルコレットを備える真空吸引アームであることを要旨とする。第1の態様に係る真空吸引アームにおいて、ノズルコレットの上部がコレット挿入孔に挿入された際に、保持溝に嵌合した第1及び第2押圧球を保持溝に向けて互いに対称方向に押圧する。
【0009】
本発明の第2の態様は、(a)下端のコレット挿入孔から上方に連続する真空吸引孔を中心軸側に有した第1の筒状をなし、この第1の筒状の外周から真空吸引孔まで貫通する、中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、鏡像面に垂直で中心軸を通る中心線上で互いに対向する第1及び第2案内孔が設けられたコレットシャフトと、(b)コレットシャフトの外周面に接する摺動内周面及びこの摺動内周面から下方かつ中心軸から遠心方向に拡がるテーパ状の押圧内周面、この押圧内周面から下方に連続する保護内周面を有し、中心軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部と、(c)第1及び第2案内孔内にそれぞれ配置され、押圧内周面から対称方向に押圧されることが可能な第1及び第2押圧球を備えるコレットホルダであることを要旨とする。第2の態様に係るコレットホルダにおいて、下端部に設けられたノズルチップ挿入孔から中心軸方向の上方に連続する貫通孔を内部に有し、上部の外径形状がコレット挿入孔の内径形状に整合した第2の筒状をなし、この第2の筒状の外周面にリング状の保持溝が設けられたノズルコレットの上部がコレット挿入孔に挿入された際に、保持溝に嵌合した第1及び第2押圧球を保持溝に向けて互いに対称方向に押圧する。
【0010】
本発明の第3の態様は、下端部に設けられたノズルチップ挿入孔から中心軸方向の上方に連続する貫通孔を内部に有し、上部の外径形状がコレットホルダの下端のコレット挿入孔の内径形状に整合した第2の筒状をなし、この第2の筒状の外周面にリング状の保持溝が設けられたノズルコレットに関する。第3の態様に係るノズルコレットにおいて、コレットホルダが、コレット挿入孔から上方に連続する真空吸引孔を中心軸側に有した第1の筒状をなしこの第1の筒状の外周から真空吸引孔まで貫通する、中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、鏡像面に垂直で中心軸を通る中心線上で互いに対向する第1及び第2案内孔が設けられたコレットシャフトと、コレットシャフトの外周面に接する摺動内周面及びこの摺動内周面から下方かつ中心軸から遠心方向に拡がるテーパ状の押圧内周面、この押圧内周面から下方に連続する保護内周面を有し中心軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部と、第1及び第2案内孔内にそれぞれ配置され、押圧内周面から対称方向に押圧されることが可能な第1及び第2押圧球とを備える。そして、第3の態様に係るノズルコレットにおいて、ノズルコレットの上部がコレット挿入孔に挿入された際に、保持溝に嵌合した第1及び第2押圧球を保持溝に向けて互いに対称方向に押圧する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルコレットの高精度高速自動交換システムに使用可能で、高速上下運動でも縦ぶれしないでノズルコレットの吸脱着の精度を高く保つことができる真空吸引アーム、この真空吸引アームを構成する保持力の高い高精度なコレットホルダ、このコレットホルダの先端に挿入されるノズルコレットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は本発明の実施形態に係る真空吸引アームの正面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A方向から見た断面図であり、図1(c)は図1(b)のA部分の拡大図である。
図2図2(a)は本発明の実施形態に係る真空吸引アームにノズルチップを挿入した場合の正面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A方向から見た断面図である。
図3図3(a)は図2(b)のノズルチップの断面斜視図であり、図3(b)はノズルチップを下方から見た斜視図である。
図4図2(b)の状態から、ノズルコレット及びノズルチップが本発明の実施形態に係る真空吸引アームのコレットホルダから抜去された断面図である。
図5図5(a)は図1(a)の状態から球押さえ部が上方に摺動した場合の正面図であり、図5(b)は図5(a)のA-A方向から見た断面図であり、図5(c)は図5(b)のA部分の拡大図である。
図6図6(a)(b)(c)はいずれも図1(b)のA部分の拡大図に相当する図であり、図6(a)はノズルコレットの抜去前の図であり、図6(b)はノズルコレットを抜去途中の遷移図であり、図6(c)はノズルコレットの抜去後の図である。
図7図7(a)は図1(a)のB-B方向から見た拡大断面図であり、図7(b)は押圧球が4個である場合の図7(a)相当の図である。
図8図8(a)は本発明の実施形態に係る真空吸引アームが備えられた精密加工装置全体の正面図であり、図8(b)は図8(a)の状態からノズルコレット及びノズルチップが抜去された状態の断面図である。
図9図8(a)の斜視図である。
図10図7に対応する、比較例に係る真空吸引アームの拡大断面図であり、図10(a)は押圧球が3個である場合、図10(b)は押圧球が1個である場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
又、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、本発明の実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(真空吸引アームの構造)
本発明の実施形態に係る真空吸引アームは、図8及び図9に示すような、被操作対象物としての電子部品等の組立て実装用の真空吸引型精密加工装置の一部を構成する。実施形態に係る真空吸引アームは、図1に示すように、筒状のコレットシャフト11と、コレットシャフト11に固定されたバネ押さえ部13と、バネ押さえ部13に上端部を接し、コレットシャフト11の筒軸方向に伸縮可能なバネ15と、コレットシャフト11に接し、バネ15を伸縮させながらコレットシャフト11の筒軸方向に摺動可能な筒状の球押さえ部17と、コレットシャフト11の案内孔内に配置された第1押圧球21aと第2押圧球21bを備えてコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)を構成している。図1(b)及び図7(a)の断面図等に示すように、実施形態に係る真空吸引アームにおいては、第1押圧球21aと第2押圧球21bが、コレットシャフト11の筒軸を通る鏡像面に関して鏡像関係となるように、コレットシャフト11の筒軸を通る線上で互いに対向して配置されている。後述するように、コレットシャフト11の筒軸(中心軸)を通る面に関して鏡像関係を達成するためには、押圧球の個数は偶数個が望ましい。図7(a)に示す配置では、第1押圧球21aと第2押圧球21bはコレットシャフト11の筒軸を通る鏡像面に垂直な中心線上に並んでいる。
【0016】
さらに、図4に示すように、実施形態に係る真空吸引アームのコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)のコレットシャフト11の下端部側の内部には、上部がコレットシャフト11の下端部へ挿抜可能なノズルコレット23と、ノズルコレット23の外周面に固定された回り止めピン25と、ノズルコレット23の下端側から挿入されたノズルチップ51を備えるノズルヘッドユニット(23,25,51)が挿入される。
【0017】
即ち、図2及び図8に示すように、実施形態に係るコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)の下端部には、ノズルヘッドユニット(23,25,51)の円錐状の上部が挿入可能である。図1図2図4等に示す態様(方向)では、実施形態に係る真空吸引アームのコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)は、鉛直方向を長手方向とするようにコレットシャフト11を備える。コレットシャフト11は、図4に示すように、第1外周面を定義する第1の筒状をなし、長手方向の下端のコレット挿入孔35及びコレット挿入孔35から第1の筒状の筒軸方向(第1方向)の上方に連続する真空吸引孔31を有する。
【0018】
図8に示すように、真空吸引孔31の上端は真空配管用継手(アダプタ)71に接続される。ノズルヘッドユニット(23,25,51)がコレットシャフト11の下端部に挿入された状態において、図8及び図9に示した真空配管用継手(アダプタ)71を通して真空ポンプで空気を吸引されることで、コレットシャフト11及びノズルコレット23、ノズルチップ51の内側の空洞部が負圧となり、ノズルチップ51の先端部分で被操作対象物が真空吸引(減圧吸引)される真空吸引チャックが構成される。被操作対象物が真空吸引された状態で、コレットシャフト11及びノズルコレット23、ノズルチップ51の内側の空洞部を正圧にすると、真空吸引されていた被操作対象物はノズルチップ51の先端部分から脱着する。
【0019】
図1(c),図5(c)及び図6(a)等の拡大図に示すように、コレットシャフト11の下端部の外縁部には切り欠き状の回り止め溝45が設けられ、回り止め溝45の上方において、コレットシャフト11の第1外周面から求心方向に貫通する案内孔(第1案内孔)43aが設けられている。「第1外周面」とは、コレットシャフト11の第1の筒状の外側の側面全体を指す。コレット挿入孔35及び真空吸引孔31は長手方向となる第1方向に沿って連続し、コレットシャフト11のほぼ全体を第1方向に沿って貫通する。図1(b)においては、コレット挿入孔35の直径は真空吸引孔31の直径より大きいが、ノズルコレット23の上部が挿抜できるのであれば、コレット挿入孔35の直径は真空吸引孔31の直径より小さくても構わない。図4に示すように、ノズルコレット23の上部は段差部を有するが段差の角部を結んだ包絡面としては概ね円錐形状となる外径面を有する。図1(b)に示すコレット挿入孔35と真空吸引孔31の境界部には、空気漏れ防止のため、又は、ノズルコレット23挿入時の衝撃を緩衝するために、Oリング等の弾性体を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0020】
さらに、図1(a)及び(b)に示すように、実施形態に係るコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)は、コレットシャフト11の第1外周面に固定されたバネ押さえ部13を備える。バネ押さえ部13のコレットシャフト11への固定方法については、溶接、蝋付け等の金属接合、焼き嵌め、カシメ等の加圧変形を利用した接合、圧入、ネジ等による機械的な接合でもよいし、接着剤等による化学的な接合でもよい。バネ押さえ部13はバネ15の上端部に接し、バネ15の押圧によっては動かない部材であるので、バネ15の押圧に耐える固定方法であればいずれでもよい。図1(b)ではバネ押さえ部13はコレットシャフト11とは別の部材であるが、バネ押さえ部13はコレットシャフト11と一体となった構造でも構わない。さらに図1(b)では、断面形状がL字型となるように、バネ押さえ部13は下部側に円筒状に突出した鞘部を有した段差形状である。バネ押さえ部13の鞘部がバネ15とコレットシャフト11の間に円筒状に挟まることにより、バネ15が直接コレットシャフト11へ接触することを防いでいる。バネ15のコレットシャフト11への接地面積を減らすことで、摩擦を減らし、部材の劣化を防ぐなどの効果があるために、バネ押さえ部13の鞘部は好ましい構造である。しかしバネ15は、バネ押さえ部13と球押さえ部17との間にあって、第1方向に摺動可能な球押さえ部17を摺動させる役割を果たすことができればよいので、バネ押さえ部13の下部側に突出した鞘部はあってもなくてもよい。
【0021】
バネ15には、中心軸が真空吸引孔31の中心軸と一致するコイルバネや輪バネ、側面部分をバネ押さえ部13に接するコイルバネの集合体など、バネとしての機能を有するものであればいずれでも用いることができる。バネ15の上端部はバネ押さえ部13に接しているが、バネ15のバネとしての機能が失われないのであれば、上端部でバネ押さえ部13に固定されていても構わない。
【0022】
さらに、図1に示すように、実施形態に係るコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)は、バネ15の下端部に接した筒状の球押さえ部17をコレットシャフト11の第1外周面側に備える。球押さえ部17は、内周面として、バネ押さえ部13と第1案内孔43aとの間の第1外周面に接する摺動内周面及び摺動内周面から下方かつ真空吸引孔31の中心軸から遠心方向に連続するテーパ状の押圧内周面19、押圧内周面19から下方に連続する保護内周面を有する。摺動内周面は第1外周面に接しているが、固定はされておらず、回転も摺動も可能である。押圧内周面19は、摺動内周面の下方に末広がりの形状で連続する円錐面状の内周面である。保護内周面は、押圧内周面19に連続し、母線の方向が第1方向と平行の円筒面として設けられている。保護内周面で囲まれた円柱空間の直径は、摺動内周面で囲まれた円柱空間の直径より大きい。
【0023】
さらに球押さえ部17は、摺動内周面を共通面として、長手方向の上部の断面形状がほぼL字型となるように中央の肉厚が厚い鍔部からの段差部を外周面側に有する円筒形状である。球押さえ部17は、中央の鍔部から長手方向の上方向に伸びる円筒状の鞘部を有し、この鞘部の外周面がバネの下端部の内周側と接する。この鞘部は、バネ押さえ部13の場合と同様、バネ15が直接コレットシャフト11へ接触することを防いでいる。バネ15のコレットシャフト11への接地面積を減らすことで、摩擦を減らし、部材の劣化を防ぐなどの効果があるために好ましい構造である。しかしバネ15は、バネ押さえ部13と球押さえ部17との間にあって、第1方向に摺動可能な球押さえ部17を摺動させる役割を果たすことができればよいので、この鞘部はあってもなくてもよい。バネ押さえ部13の場合と同様、バネ15のバネとしての機能が失われないのであれば、バネ15の下端部は球押さえ部17に固定されていても構わない。図1(b)においては、バネ押さえ部13と球押さえ部17との間には間隙33が存在し、間隙33は球押さえ部17の上方への摺動可能領域となっている。また間隙33は、バネ15の接地面積を減らし、バネ15の伸縮時の摩擦を減らす効果も有する。球押さえ部17はバネ15の伸縮とともに、コレットシャフト11の第1外周面上を第1方向に摺動可能である。
【0024】
さらに、図1(b)及び(c)に示すように、実施形態に係るコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)は、第1案内孔43a内に配置され、押圧内周面19を介してバネ15による押圧を受けて、第1方向と略垂直方向に移動することが可能な押圧球(第1押圧球)21aを備える。第1押圧球21aは第1案内孔43aに直接固定はされていない。図1(b)の第2押圧球21bについても第1押圧球21aと同様であり、第2押圧球21bは第1押圧球21aとコレットシャフト11の筒軸(中心軸)を通る面に関して鏡像関係となるように配置されている。第2押圧球21bはコレットシャフト11に設けられた第2案内孔内に配置され、押圧内周面19を介してバネ15による押圧を受けて、第1方向と略垂直方向に移動することができる。
【0025】
さらに、図1(b),図2(b),図4に示すように、実施形態に係る真空吸引アームは、コレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)のコレット挿入孔35へ挿抜可能なノズルコレット23を備える。ノズルコレット23の上部となる先端部分は、概ね上底が小さな円錐状であり、コレット挿入孔35の内径形状に整合した外径寸法を有している。ノズルコレット23の先端部分は、ノズルコレット23の上部がコレット挿入孔35に挿入された際に、第1押圧球21a及び第2押圧球21bを介して、バネ15による対称方向の押圧をコレットシャフト11の筒軸(中心軸)方向に受ける。
【0026】
図1(b)に示すように、ノズルコレット23の下部は、その下端部にノズルチップ挿入孔39を設けたコレット形状(円筒型のクランプ形状)をなしている。ノズルチップ挿入孔39から第1方向の上方に連続する貫通孔37が設けられ、先端部分を円錐台状とするように、第2外周面によって定義された第2の筒状をなしている。ノズルチップ挿入孔39はノズルチップを挿入してクランプすることができれば大きさや形状は問わない。ノズルチップは、被操作対象物により形状が異なるため、ノズルチップ挿入孔39はノズルチップの形状に合わせる必要がある。
【0027】
ノズルコレット23の「第2外周面」は第2の筒状の外側の側面全体を指し、図1(b)及び図4等に示すように、凹凸を複数有するが、包絡面としては概ね円錐状の面である。ノズルコレット23には、第2外周面にリング状の保持溝41が設けられ、ノズルコレット23の上部がコレット挿入孔35に挿入された際に、第1押圧球21aの移動及び第1押圧球21aの保持溝41への嵌合を介して、バネ15による押圧を保持溝41で受ける。第1押圧球21aとコレットシャフト11の筒軸(中心軸)を通る面に関して鏡像関係となるように配置された第2押圧球21bに関しても、第2押圧球21bの移動及第2押圧球21bの保持溝41への嵌合を介して、バネ15による押圧を保持溝41で、第1押圧球21aと鏡像関係となる対称方向に受ける。保持溝41は第2外周面の上部を囲むリング状の溝であり、ノズルコレット23をコレット挿入孔35へ挿入した際にコレット挿入孔35に収まる位置であればよい。また、保持溝41の形状は、図1(b)及び(c)の断面図においてはV字型であるが、V字型の断面形状に限定されるものではない。第1方向に沿って長手方向に切った保持溝41の断面形状は、ノズルコレット23をコレット挿入孔35へ挿入した際に、バネ15の押圧により押圧内周面19を介して第1の筒状の求心方向に押された第1押圧球21a及び第2押圧球21bが嵌合することができれば、U字型でもコの字型等でもいずれでもよい。
【0028】
さらに、図1(b),(c)及び図4に示すように、実施形態に係るノズルコレット23の第2外周面に回り止めピン25が固定されている。回り止めピン25は、ノズルコレット23の上部がコレット挿入孔35に挿入された際に、真空吸引アームの回り止め溝45に嵌合する。回り止めピン25は第2外周面からノズルコレット23の貫通孔37の中心軸から遠心方向に突き出すように固定されているピンである。ノズルコレット23がコレット挿入孔35に挿入される際に、切り欠き状の回り止め溝45に嵌合することで、貫通孔37の中心軸に関するノズルチップの回転方向の位置(回転角)と挿入深度を決める機能を有する。同機能を有するのであれば、回り止めピン25はノズルコレット23と一体となった構造でもよい。図1(b)及び(c)においては、回り止め溝45は第1案内孔43aの下方に位置しているが、貫通孔37の中心軸に関するノズルコレット23の回転方向の位置と挿入深度を決める機能を持たせられるのであれば、回り止め溝45の位置は任意である。
【0029】
図3に示すように、実施形態に係る真空吸引アームに使用するノズルコレット23に挿入されるノズルチップ51は、吸着窓49を有する下端部の形状が、一辺の長さが例えば0.1mm程度以下、或いは0.05mm程度以下等の微細な矩形である。この矩形部分の各辺の向きが0.1mm程度以下、或いは0.05mm程度以下等の微少寸法を有する被操作対象物の真空吸引には重要である。図4に示す状態においてノズルコレット23に対するノズルチップ51の回転方向の位置を適切に調整できていれば、ノズルコレット23がコレット挿入孔35に挿入された図2に示す状態となった際に、ノズルチップ51の先端である矩形部分の向きを貫通孔37の中心軸に関する正しい位置(角度)に配置することができる。
【0030】
(ワンタッチ動作)
図1及び図5を用いて、ノズルコレット23がコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)のコレット挿入孔35に挿入された状態における、バネ15を用いたワンタッチの押圧の作用を詳細に説明する。
【0031】
図1(a)及び(b)においては、伸縮可能なバネ15による対称方向の押圧は、第1方向に摺動可能な球押さえ部17を下方に摺動させる方向に印加されている。図1(c)において、球押さえ部17にかけられた押圧は、押圧内周面19に接している第1押圧球21a及び第2押圧球21bに伝わっている。第1押圧球21aは第1案内孔43aに固定されずに配置されているので、第1方向に直交する方向(求心方向)に押圧を伝えることになる。図示を省略しているが第2押圧球21bも、コレットシャフト11の筒軸(中心軸)を通る面に関して第1案内孔43aと鏡像関係となるように配置された第2案内孔に固定されずに配置されており、第1方向に直交する方向(求心方向)で、第1押圧球21aと鏡像関係となる方向に押圧を伝えることになる。図1(c)のようにノズルコレット23がコレット挿入孔35に挿入されている状態においては、第1押圧球21a及び第2押圧球21bに対称に伝わった押圧は、ノズルコレット23の保持溝41にかけられる。バネ15の下方への押圧が、押圧内周面19が介在することにより、水平方向に近い方向(第1の筒状の中心に向かう求心方向)への対称的な押圧に変換され、ノズルコレット23がコレットシャフト11に一時的に保持(固定)されることになる。
【0032】
上記の鏡像関係をなす対称的な押圧によるノズルコレット23のコレットシャフト11への固定を実現するには、第1案内孔43aの形状は、第1外周面から第1の筒状の中心に向かう求心方向にかけて窄まった形状が好ましい。第1案内孔43aの下面が水平で、上面でテーパがかかった形状でもよい。第1案内孔43aの上面及び下面が共に水平で、図7のように上方からの断面図で見た際に第1案内孔43aの両側面にテーパがかかった形状でもよい。いずれにしても、図1(c)に示すように、第1押圧球21a及び第2押圧球21bが、押圧内周面19からかけられた対称的な押圧を保持溝41に伝えられる形状であればよい。第1案内孔43a及び押圧内周面19は、図1(c)の断面図においては直線状であるが、断面図で見た時に曲線を成す形状であってもよい。図示を省略しているが、第1押圧球21aと鏡像関係をなす第2押圧球21bに関しても、第2案内孔及び押圧内周面19は、断面図で見た時に曲線を成す形状であってもよいが、第1案内孔43aとは鏡像関係をなすような対称性が要せられる。
【0033】
図5は、図1における球押さえ部17を上方に摺動させ、球押さえ部17の鞘部がバネ押さえ部13の鞘部に接した状態、すなわち図1における間隙33がなくなった状態を示す。図5の状態においては、押圧内周面19は第1押圧球21a及び第2押圧球21bに接しないため、バネ15の押圧は第1押圧球21a及び第2押圧球21bには伝わらない。図5(c)に示すように第1案内孔43aの下面がテーパ状となっていれば、第1押圧球21a及び第2押圧球21bは第1の筒状の中心から遠心方向に移動する。第1押圧球21a及び第2押圧球21bは、たとえ第1外周面から大きくはみ出して移動しても、保護内周面に押さえられることにより、実施形態に係る真空吸引アームからは外れない構造となっている。第1押圧球21a及び第2押圧球21bが移動することで、保持溝41との嵌合から外れ、ノズルコレット23は押圧を受けず、ノズルコレット23がコレットシャフト11への固定から外れる。第1案内孔43aの下面がテーパ状となっていなくとも、第1押圧球21a及び第2押圧球21bは保持溝41を押圧せず、ノズルコレット23がコレットシャフト11への固定から外れることになる。
【0034】
図6を用いて、ノズルコレット23のコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)からの抜去の様子について詳しく説明する。図6(a)はノズルコレット23の抜去前のロック状態のコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)を示し、図1(c)と同様、バネ15の下方の押圧を受けた球押さえ部17が、押圧内周面19を介して第1押圧球21aに押圧を伝え、第1押圧球21aが保持溝41に嵌合することでノズルコレット23が固定されている状態である。図示を省略しているが、第1押圧球21aと鏡像関係をなす第2押圧球21bに関しても、球押さえ部17が、押圧内周面19を介して第2押圧球21に鏡像関係の押圧を伝え、第2押圧球21が保持溝41に嵌合することでノズルコレット23が固定される。図6(a)の状態から、バネ15の押圧力より大きな力をかけてノズルコレット23を下方に移動させようとすると、図6(a)における保持溝41を構成するV字の面のうち上側の面で、第1押圧球21a及び第2押圧球21を第1の筒状の中心から遠心方向に鏡像関係をなして押し返す分力が発生する。
【0035】
次に、遠心方向に押し返す分力が印加された第1押圧球21a及び第2押圧球21は、球押さえ部17を上方に摺動させ、接しているバネ15を上方に鏡像関係で押し返す。この結果、ノズルコレット23はコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)に対し下方に移動可能となり、第2外周面の上部が第1押圧球21a及び第2押圧球21を対称に押し返す分力を伴いつつ、図6(b)の遷移状態となり、ロック状態が解除される。ロック状態から解除されたアンロック状態になると、図6(b)の状態から、ノズルコレット23は容易に下方に移動可能となるので、ノズルコレット23がコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)のコレットシャフト11から完全に抜去されて、最終的に図6(c)の状態となる。第1押圧球21a及び第2押圧球21はノズルコレット23の第2外周面からの分力から解放されるが、バネ15からの押圧内周面19を介した押圧を受けて第1の筒状の中心に向かう求心方向に移動する。求心方向への移動の際に、コレット挿入孔35へ第1押圧球21aが落ちずに、第1案内孔43aの内部又はコレットシャフト11の内周面の第1案内孔43aの外縁部で第1押圧球21aの移動が止まるよう、第1案内孔43aの大きさ及び形状を設定しなければならない。図示を省略しているが、第1押圧球21aと鏡像関係をなす第2押圧球21bに関しても、コレット挿入孔35へ第2押圧球21bが落ちずに、第2案内孔の内部又はコレットシャフト11の内周面の第2案内孔の外縁部で第2押圧球21bの移動が止まるよう、第2案内孔の大きさ等を設定しなければならない。
【0036】
図6を用いてノズルコレット23のコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)からの抜去について説明したが、バネ15の押圧より大きな力で球押さえ部17を上方に摺動させることによりアンロック状態となり、ノズルコレット23をコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)の下方に移動させる動作をワンタッチで完了できることが分かる。ノズルコレット23のコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)への挿入については、抜去と逆の仕組みでワンタッチで行うことができる。
【0037】
図1においては、ノズルコレット23を固定するための押圧球として、第1押圧球21a及び第2押圧球21bの2つの押圧球を鏡像関係に対抗させた。図7(a)の断面図に示すように、第1押圧球21a及び第2押圧球21bは第1の筒状の中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、鏡像面に垂直で中心軸を通る中心線上で互いに対向する配置である。図7(b)に、第1押圧球21a、第2押圧球21b、第3押圧球21c及び第4押圧球21dの4個の押圧球の配置を示すが、実施形態に係る真空吸引アームの押圧球は偶数個であれば、第1の筒状の中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係で、鏡像面に垂直で中心軸を通る中心線上で互いに対向する配置が実現できる。図7(b)に示す配置では、第1押圧球21aと第3押圧球21cがコレットシャフト11の筒軸を通る第1の鏡像面に垂直な第1中心線上に並び、第2押圧球21bと第4押圧球21dがコレットシャフト11の筒軸を通る第2の鏡像面に垂直な第2中心線上に並んでいる。第1押圧球21a、第2押圧球21b、第3押圧球21c及び第4押圧球21dの名称は便宜上であり、図7(b)の第3押圧球21cを「第2押圧球」と呼び、第2押圧球21bを「第4押圧球」と呼んでも構わない。いずれにせよ、押圧球は偶数個であれよく、図7(a)及び(b)は一例であるので、押圧球を6つ以上設けることもできる。図7(a)及び(b)に示されるような鏡像関係を基礎とする対称配置の構造を採用することにより、対称に配置された偶数個の押圧球からの力が均等にノズルコレット23に印加されるので、ノズルコレット23が高速に上下運動する際にも、縦ぶれの発生を抑制し、固定されたノズルコレット23の位置を安定させることができ、高精度かつ高速のノズルコレット23の自動交換が可能になる。
【0038】
図10に、比較例に係る真空吸引アームの拡大断面図を図7に対比して示すが、押圧球が奇数個の場合は、第1の筒状の中心軸を通る鏡像面に関して鏡像関係とすることができない。特に、図10(b)に示すように、押圧球が第1押圧球21aの1つの場合は、バネ15の押圧が第1押圧球21aによりノズルコレット23の保持溝41に伝えられるが、力が一方向からしかかからないので、固定されたノズルコレット23の位置が安定せずに縦ぶれ等が発生し、被操作対象物の吸脱着に影響を及ぼす。又、非対称の配置であるので、部材の磨耗に偏りが生じたりする可能性が高くなり、高精度高速自動交換システムに使用される高速の上下運動に適合できない。図10(a)に示すように、第1押圧球21a、第2押圧球21b及び第3押圧球21cとして、押圧球が3つの場合も、高速上下運動に伴ってデルタ関数的な衝撃力を印加された場合、力が鏡像関係にある対抗押圧球によって押し戻されないので、固定されたノズルコレット23の位置が安定せずに被操作対象物の吸脱着に影響を及ぼしたり、部材の磨耗に偏りが生じたりする可能性が高くなる。図7(a)及び(b)のように、押圧球を偶数個とすることで対抗押圧球を配置することにより、高速上下運動に伴ってデルタ関数的な衝撃力が印加された場合であっても、固定されたノズルコレット23の位置を安定させることができる。よって、押圧球を偶数個として鏡像関係を実現することにより、被操作対象物の吸脱着に悪影響を及ぼしたり、部材の磨耗に偏りが生じたりする可能性を低減でき、ノズルコレット23の高精度高速自動交換システムに使用することができる。
【0039】
実施形態に係る真空吸引アームを構成する部材の素材は主に金属を想定しており、例えばノズルコレット23にはスプラインシャフトが利用できる。しかし、真空吸引アームを構成する部材は、精密加工装置の一部として使用に耐えうる強度と加工性があれば、その他の素材であっても構わない。例えばガラス繊維や炭素繊維等を加えた繊維強化プラスチック(FRP)や、内部に金属素材を有し、周りにプラスチックを射出成形した複合素材等でも構わない。
【0040】
図1に示す実施形態に係る真空吸引アームのコレットホルダ(11,13,15,17,21a,21b)によれば、バネ15による下方への対称的な押圧の分力をノズルコレット23を固定するための押圧となる対称方向の力として利用しているため、ゴム等の弾性体を使用して押圧した場合より、ロック状態における固定力が減衰しない。また、被操作対象物の吸脱着動作中の高速上下運動においても、常にバネ15による下方への鏡像関係をなす押圧の分力を受けているため、ノズルコレット23の縦ぶれや横ぶれ、回転方向のぶれを生じにくく、ノズルコレット23に挿入されたノズルチップによる被操作対象物の吸脱着の精度を高く保つことができる。
【0041】
さらに、ノズルヘッドユニット(23,25,51)からノズルチップ51を自在に分離可能な機構としたことで、主な交換部材をノズルチップ51のみにすることができ、より安価な精密加工装置にすることができる。また、ノズルチップ51の仕様変更も容易となる。特に、ノズルコレット23に回り止めピン25が真空吸引アームの回り止め溝45に嵌合する構造となっているので、ノズルチップ51の先端の微細な矩形の位置や向きを正確に決めることが容易であり、高精度高速自動交換システムを備えた真空吸引型精密加工装置等への適用も容易になる。
【0042】
図4の状態から、ノズルコレット23をコレット挿入孔35に挿入すると図2の状態となる。挿入の際に互いに水平方向の位置ずれがある場合、位置ずれの幅がノズルコレット23の先端部分の円錐面27の横幅以内に収まるのであれば、コレットシャフト11の下端部に円錐面27が接触した後、コレットシャフト11の下端部が円錐面27を滑りながら、コレットシャフト11又はノズルコレット23が水平移動し、適切な水平位置でノズルコレット23がコレット挿入孔35に収まることが可能となる。
【0043】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るノズルコレット23によれば、ノズルコレット23の先端形状を円錐面27を有する形状にするだけで、真空吸引アーム側のコレット挿入孔35への挿入の際に位置ずれを解消することができる。人の目視による位置ずれ調整の必要がなく、他の装置を用意することのない、より安価で簡易な方法で位置ずれを解消することができる。
【0044】
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
又、上記の実施形態で説明した個別の技術的思想の一部を適宜、互いに組み合わせることも可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0046】
11…コレットシャフト
13…バネ押さえ部
15…バネ
17…球押さえ部
19…押圧内周面
21a…第1押圧球
21b…第2押圧球
21c…第3押圧球
21d…第4押圧球
23…ノズルコレット
25…回り止めピン
27…円錐面
31…真空吸引孔
33…間隙
35…コレット挿入孔
37…貫通孔
39…ノズルチップ挿入孔
41…保持溝
43a…第1案内孔
43b…第2案内孔
43c…第3案内孔
43d…第4案内孔
45…回り止め溝
47…ノズル内側空間
49…吸着窓
51…ノズルチップ
71…真空配管用継手(アダプタ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10