(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】エレベーター用インターホン親機
(51)【国際特許分類】
H04M 1/15 20060101AFI20220719BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
H04M1/15
H04M1/02 G
(21)【出願番号】P 2020109291
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509269414
【氏名又は名称】NIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一家 正昭
(72)【発明者】
【氏名】山藤 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 昌裕
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204051(JP,A)
【文献】特開2020-031340(JP,A)
【文献】特開2020-057917(JP,A)
【文献】特開2019-087897(JP,A)
【文献】特開2019-193017(JP,A)
【文献】特開2010-177804(JP,A)
【文献】特開2012-209693(JP,A)
【文献】特開2008-211347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/02-1/23
H04M 9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び左右方向に広がる
形態を有し、壁面に設置されるハウジングであって、前記壁面に接する背面ケース及び前記背面ケースに締結される正面ケースにより構成される中空のハウジングと、
インターホン通話のための複数の電子部品が搭載される基板と、
を含み、
前記ハウジングは、
前記基板を収容した基板室と、
前記基板室を上下左右から取り囲む環状の空間であって、子機からの信号線群を収容する配線室と、
を含
み、
前記正面ケースは、
前記上下方向及び前記左右方向に広がる正面ケース本体と、
前記正面ケース本体の縁に連なる環状の側壁と、
前記正面ケース本体の背面から起立し、前記基板室と前記配線室とを仕切る環状の仕切り壁と、
を含み、
前記配線室が、前記正面ケース本体、前記環状の側壁、前記環状の仕切り壁、及び、前記背面ケースにより囲まれ、
前記信号線群が前記側壁に形成された開口を通じて前記配線室に引き込まれる、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項2】
請求項1記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記仕切り壁により形成される背面開口を覆う内部背面板が設けられた、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項3】
請求項1記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記配線室は、
前記基板室の上側に設けられた上側部分と、
前記基板室の左側に設けられ、前記上側部分に連なる左側部分と、
前記基板室の下側に設けられ、前記左側部分に連なる下側部分と、
前記基板室の右側に設けられ、前記上側部分及び前記下側部分に連なる右側部分と、
を含む、ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項4】
請求項1記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記仕切り壁は、前記基板に設けられたレセプタクルを露出させる開口を有し、
前記信号線群の端部に設けられたコネクタが前記レセプタクルに接続される、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項5】
請求項
4記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記信号線群は、前記子機からの外部信号線群と、前記コネクタが接続された中継信号線群と、を含み、
前記外部信号線群と前記中継信号線群とを接続する複数の接続部品が前記配線室に収容されている、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項6】
請求項
5記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記
側壁は、前記外部信号線群を前記配線室へ引き込むため
の前記開口を形成するために選択的に打ち抜かれる複数の部分を有する、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項7】
上下方向及び左右方向に広がるハウジングと、
インターホン通話のための複数の電子部品が搭載される基板と、
を含み、
前記ハウジングは、
前記基板を収容した基板室と、
前記基板室を上下左右から取り囲む環状の空間であって、子機からの信号線群を収容する配線室と、
を含み、
前記ハウジング内にはスピーカ設置場所が含まれ、
前記ハウジングには前記スピーカ設置場所に入り込んだ液滴をそこから前記配線室へ導く通路が形成されている、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項8】
上下方向及び左右方向に広がるハウジングと、
インターホン通話のための複数の電子部品が搭載される基板と、
を含み、
前記ハウジングは、
前記基板を収容した基板室と、
前記基板室を上下左右から取り囲む環状の空間であって、子機からの信号線群を収容する配線室と、
を含み、
前記ハウジングにはマイク設置場所が含まれ、
前記ハウジング内には前記マイク設置場所に入り込んだ液滴をそこから前記配線室へ排出する通路が形成されている、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【請求項9】
請求項
7又は
8記載のエレベーター用インターホン親機において、
前記配線室に入り込んだ液滴をそこから外界へ逃がすための排出口が形成されている、
ことを特徴とするエレベーター用インターホン親機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター用インターホン親機に関し、特に、かご内に設置された子機との間でインターホン通話を行うための親機に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター用インターホンは、インターホン親機(以下、単に親機という。)及びインターホン子機(以下、単に子機という。)により構成される。子機は、かごの中に設置される。具体的には、かご内において、押釦列を備えたパネルの奥側(壁面内)に子機が設置される。パネルには、子機に接続された呼出釦も設けられる。非常時には、乗客によって呼出釦が操作され、親機が応答すると、親機と子機との間で通話を行える。1つの親機に対して複数の子機が接続されることもある。1つの子機に対して複数の親機が接続されることもある。
【0003】
親機は、一般に、管理人室に設置されるが、特定の乗り場における垂直な壁面(例えば、ビル内一階ホールにおける垂直な壁面)に設置されることもある。管理人室が存在しない場合、いずれかの乗り場への親機の設置の必要性が高くなる。
【0004】
特許文献1にはエレベーター用インターホン親機が開示されている。それはハンドセットを備え、水平の台座上に設定されるものである。垂直な壁面上に設置される親機の場合、人や物への親機の衝突をできるだけ避けるため、壁面からの突出量を抑えることが望まれる。また、ハンドセットの脱落が生じないよう、ハンドセットを備えないプレストーク方式を採用することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
垂直の壁面上に設置される親機においては、特に、乗り場における構造体の壁面に後付けで設置される親機においては、親機の背面側に外部信号線群の取り出し口や配線スペースが確保されていない場合が多い。そのような場合、壁面に沿って外部信号線群を設置し、その端部を親機内に導くことが求められる。見栄えを良くするためには、外部信号線群を親機まで、できるだけ直線的に導く必要がある。
【0007】
以上のような背景から、また作業性の観点から、外部信号線群における端部をある程度の長さにわたって親機内に引き込めるようにしておくことが望まれる。換言すれば、外部信号線群における弛み部分又は余り部分を親機内に収容できるようにしておくことが望まれる。また、必要に応じて、外部信号線群を中継信号線群に接続するための複数の部品を収容するスペースを親機内に確保しておくことが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、エレベーター用インターホン親機において、壁面からの突出量を抑えながらその内部に比較的に大きな配線用スペースを確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベーター用インターホン親機は、上下方向及び左右方向に広がるハウジングと、インターホン通話のための複数の電子部品が搭載され、前記上下方向及び前記左右方向に広がる基板と、を含み、前記ハウジングは、前記基板を収容した基板室と、前記基板室を上下左右から取り囲む環状の空間であって、子機からの信号線群を収容する配線室と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベーター用インターホン親機において、壁面からの突出量を抑えながらその内部に比較的に大きな配線用スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るエレベーター用インターホンを示す図である。
【
図2】実施形態に係る親機の正面を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る親機の背面を示す斜視図である。
【
図6】基板室の周囲に設けられた環状の配線室を示す図である。
【
図9】他の実施形態に係るエレベーター用インターホンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係るエレベーター用インターホン親機は、ハウジング及び基板を含む。ハウジングは、上下方向及び左右方向に広がる形態を有する。基板には、インターホン通話のための複数の電子部品が搭載されており、それは上下方向及び左右方向に広がる形態を有する。ハウジングは、基板を収容した基板室と、基板室を上下左右から取り囲む環状の空間であって子機からの信号線群を収容する配線室と、を有する。
【0014】
上記構成によれば、ハウジング内に基板室を取り囲む配線室が設けられているので、ハウジング内に比較的に大きな配線用スペースを確保でき、同時に、ハウジングそれ自体の厚みを薄くできる。配線室は、環状の形態を有するので、そこにおいて比較的に自由に信号線群の引き回しを行える。必要に応じて、配線室内に1又は複数の接続部品を設けることも可能である。垂直な壁面にインターホン親機を設置した場合、それに対して衝撃力が及び易くなるが、配線室がガード機能を発揮し、基板室が保護され、特にその内部の基板が保護される。基板室の奥側に配線室を設けた場合に比べて、上記構成によれば、親機の厚みをかなり低減できる。本願明細書において、環状は、円形、多角形の他、矩形を含む概念である。
【0015】
実施形態において、配線室は、基板室の上側に設けられた上側部分と、基板室の左側に設けられ上側部分に連なる左側部分と、基板室の下側に設けられ左側部分に連なる下側部分と、基板室の右側に設けられ上側部分及び下側部分に連なる右側部分と、を含む。すなわち、配線室は、回廊のような形態を有する。様々な方向から来る信号線群における弛み部分や余り部分をハウジング内に容易かつ柔軟に収容できる。
【0016】
実施形態において、ハウジングは、基板室と配線室とを仕切る環状の仕切り壁を有する。仕切り壁は、基板に設けられたレセプタクルを露出させる開口を有する。信号線群の端部に設けられたコネクタがレセプタクルに接続される。この構成によれば、接続作業が容易となる。
【0017】
実施形態において、信号線群は、子機からの外部信号線群と、コネクタが接続された中継信号線群と、を含む。外部信号線群と中継信号線群とを接続する複数の接続部品が配線室に収容される。この構成によれば、複数の接続部品を保護できる。配線室内において複数の接続部品が分散配置されてもよい。
【0018】
実施形態において、ハウジングは、外部信号線群を配線室へ引き込むために選択的に打ち抜かれる複数の部分を有する。外部信号線群のアプローチ方向に応じていずれかの部分が打ち抜かれ、そこが通路として機能する。この構成によれば、外部信号線群を直線的に最短距離で引き込むことが容易となり、かつ、ハウジング周辺の見栄えを良好にできる。
【0019】
実施形態において、ハウジング内にはスピーカ設置場所が含まれる。ハウジングにはスピーカ設置場所に入り込んだ液滴をそこから配線室へ導く通路が形成されている。この構成によれば、スピーカ設置場所に入り込んでしまった液滴が配線室へ自然に誘導される。よって、スピーカ設置場所に液滴が留まることを防止又は軽減できる。通路として、傾斜したスロープや傾斜した溝が採用されてもよい。
【0020】
実施形態において、ハウジング内にはマイク設置場所が含まれる。ハウジング内にはマイク設置場所に入り込んだ液滴をそこから配線室へ排出する通路が形成されている。この構成によれば、液滴がマイク設置場所に留まってしまうことを防止又は軽減できる。配線室が基板室を通り囲んでいることを利用して、液滴を一時的に逃がす空間として配線空間が利用される。ハウジングには、そこに入り込んだ液滴をそこから外界へ逃がすための排出口が形成される。
【0021】
(2)実施形態の詳細
図1には、エレベーター10が示されている。X方向が水平方向であり、Y方向が垂直方向(鉛直方向)である。かご12は、乗客を乗せて昇降運動する。乗り場14には、ドア16が設置されている。かご12が到着した後、ドア16が開運動する。
【0022】
エレベーター用インターホン18は、図示の構成例において、子機20、親機22及び信号線群24により構成される。子機20は、かご12内に設置されており、それに対しては、緊急時に操作される呼出釦26が接続されている。呼出釦26を子機20の一部とみなしてもよい。
【0023】
親機22は、図示の例では、乗り場14における垂直な壁面15上であって、ドア16に対して比較的に近い位置に設けられている。親機22は、薄型であり、親機22においては拡声方式つまりプレストーク方式が採用されている。親機22は、通話釦28、マイク30及びスピーカ32を有している。
【0024】
緊急時において、乗客により呼出釦26が押されると、親機22においてブザー音が生じ、また、発光器の点滅が生じる。乗り場にいる者が通話釦28を押すと、ブザー音が停止し、また点滅が停止する。その時点で、親機22と子機20の間で通話を行える。通話釦28を押している状態では、親機22から子機20へ音声信号が伝送され、子機20において音声信号が音として出力される。通話釦28を離している状態では、子機20から親機22へ音声信号が伝送され、親機22において音声信号が音として出力される。
【0025】
なお、信号線群24に対して、親機22と並列に他の親機が接続されてもよい。親機22に複数の子機が接続されてもよい。親機22と子機20の間で常時、双方向通話を行えるように構成してもよい。
【0026】
図2には、親機22の正面が示されている。
図2においては、親機22を基準としてx方向、y方向及びz方向が定義されている。x方向は左右方向であり、y方向は上下方向であり、z方向は奥行方向である。親機22を垂直な壁面に設置した状態では、x方向である左右方向が第1水平方向に一致し、y方向である上下方向が垂直方向に一致し、z方向である奥行方向が第2水平方向に一致する。
【0027】
親機22は、樹脂等により構成された中空のハウジング34を有する。ハウジング34は、左右方向及び上下方向に広がっており、薄く平坦な形態を有している。ハウジング34は、正面ケース36と背面ケース38により構成される。親機22を壁面に設置した状態では、背面ケース38の背面が壁面に接する。正面ケース36には、プッシュ式の通話釦40が設けられている。その下側にはマイク穴42が設けられている。正面ケース36の上部には複数のスピーカ穴44が形成されている。複数のスピーカ穴44の上側には、フィルム46が貼付されている。フィルム46上に任意の文字列を形成し得る。マイク穴42の下側にフィルム48が貼付されている。そこにも任意の文字列を形成し得る。通話釦40の周囲には、又は、通話釦40を覆うように、フィルム50が設けられている。
【0028】
符号54,56は、外部信号線群を引き込むルートを示している。正面ケース36における側壁には、外部信号線群を通過させる開口を形成するための打ち抜き可能な2つの薄肉部分が設けられている。符号52は水抜き穴つまり排出口を示している。
【0029】
図3には、親機22の背面が示されている。背面ケース38は、外部信号線群を受け入れる開口を生じさせるための打ち抜き可能な部分58を有する。符号60は、外部信号線群を引き込むルートを示している。親機22が設置される壁には、通常、外部信号線群を取り出す開口や配線用の開口が存在しない。よって、ハウジングの右側、左側、上側又は下側において壁面に沿って外部信号線群が配置される。
その外部信号線群が、側壁に形成された開口を通じて配線室に引き込まれる。
【0030】
図4は、親機22の正面図である。親機の内部には、左右方向及び上下方向に広がった基板が設けられている。基板上には、複数の電子部品が搭載されている。複数の電子部品には、マイコンの他、スイッチ62、マイク64、スピーカ66、LED68,70,72が含まれる。マイク64の前側にマイク穴42が形成されている。通話釦40を押すと、スイッチ62がオン状態となる。
【0031】
LED68は、呼出表示用の表示器であり、子機から呼出信号の受信により、LED68が点滅動作を行う。LED72は、話す状態を表示するものであり、通話釦40を押し続けている間、LED72が点灯する。LED70は、聞く状態を表示するものであり、親機応答後、通話釦40を離している間、LED70が点灯する。
図4に示すA-A断面が
図5に示されている。
【0032】
図5において、ハウジング34は、正面ケース36と背面ケース38とで構成される。ハウジング34内には基板室75が形成されており、基板室75内に基板76が収容されている。基板室75は、正面ケース36の一部をなす矩形の仕切り壁に囲まれている。仕切り壁により形成される開口が内部背面板73により覆われている。基板76には、マイク64及びスピーカ66が搭載されている。
図5においては、基板76に搭載されたLED68,72も現れている。
【0033】
中空部分77は正面ケース36と背面ケース38を締結するためのネジ及びナットが収容される部分である。それは正面から見てフィルム78で覆われており、ネジの露出が防止されている。符号74は打ち抜き可能な薄肉部分を示している。
【0034】
図6には、正面ケース36の背面側が示されている。正面ケース36は、環状の側壁80及びその内側に設けられた環状の仕切り壁82を有する。ここで、環状は矩形を意味する。仕切り壁82により形成される背面側の開口
(背面開口)が内部背面板73によって覆われている。仕切り壁82の内部に基板室75が形成され、その内部に基板が設けられている。側壁80と仕切り壁82の間に、環状の空間としての配線室86が形成されている。配線室86は、基板室75の上下左右を取り囲んでいる。具体的には、配線室86は、上側部分86a、上側部分86aの左側端に連なる左側部分86b、左側部分86bの下側端に連なる下側部分86c、及び、下側部分86cの右側端に連なる右側部分86dにより構成される。右側部分86dの上側端が上側部分86aの右側端に連なっている。
【0035】
仕切り壁82は、正面ケースの本体(左右方向及び上下方向に広がる部分)
の背面から奥行方向に起立している。側壁80は、
正面ケースの本体の縁に連なり、奥行方向にかけて傾斜している。仕切り壁82の一部が切り欠きとしての開口82Aを構成している。基板にはレセプタクルが設けられ(但し
図6には図示されていない)、レセプタクルが開口82Aから配線室86へ露出している。レセプタクルには、中間信号線群に設けられたコネクタが接続される。符号54,56は既に説明したように信号線群のアプローチ経路を示している。
【0036】
図7には、信号線群の配置例が示されている。既に説明したように、環状の側壁80に沿ってその内側に環状の仕切り壁82が形成されている。仕切り壁82の内部が基板室75であり、そこに基板が収容されている。基板にはレセプタクル88が設けられている。基板室75を上下左右から取り囲むように環状の配線室86が設けられている。そこには信号線群90が配置される。
【0037】
信号線群90は、具体的には、外部からハウジング内に引き込まれた外部信号線群94、及び、コネクタ92が接続された中継信号線群96により構成される。外部信号線群94と中継信号線群96が複数の接続部品98により接続される。図面複雑化を防止するため、複数の接続部品98の一部については破線で表現されている(符号98Aを参照)。個々の接続部品98は、例えば、圧着端子である。コネクタ92はレセプタクル88に接続されている。
【0038】
打ち抜きにより生じた開口100を介して外部信号線群94が配線室86内に引き込まれている。符号102は外部信号線群94の内でハウジング外に存在する部分を示している。外部信号線群94及び中継信号線群96は、それぞれ、例えば、4本から10本までの範囲内の信号線で構成される。
【0039】
図7に示されているように、配線室86が基板室75から見て回廊のように基板室75を取り囲んでおり、配線室86においては、信号線群90の引き込み位置に応じて、それを任意の経路又は形態で配置することができる。例えば、弛み部分や余り部分がハウジング内に収容されるように、信号線群90の引き回し経路を適宜定められる。実施形態においては、配線室86内に複数の接続部品98も収容されている。必要に応じて、それらを分散配置してもよい。なお、符号80Aは側壁80の内面を示しており、符号82Aは仕切り壁82の外面を示している。それらで挟まれる空間が配線室86である。
すなわち、配線室86は、正面ケースにおける本体、側壁80及び仕切り壁82、並びに、背面ケースによって囲まれている(図5を参照)。
【0040】
基板室75の上下左右が配線室86で囲まれているので、基板室75から見て、配線室86がガード機能を発揮する。すなわち、左方向や右方向からの衝撃が側壁80に及んでも、その衝撃が配線室86により緩和された上で、基板室75へ及ぶ。これにより基板及びそこに設けられた複数の電子部品を保護できる。
【0041】
仮に、基板室の奥側に配線室を設けた場合、ハウジングの厚みが増大してしまうが、実施形態によれば、ハウジングを薄型化できる。すなわち、壁面からの突出量を小さくできる。これにより、人や物が親機に衝突する可能性を低下できる。
【0042】
図8には、親機の動作例が示されている。S10において、子機からの呼出信号が検出されると、S12において、ブザーが動作し、同時に、呼出LEDが点滅動作する。S14において、親機が応答操作を行うと、S16において、ブザー動作が停止し同時に呼出LEDの点滅が停止する。その後、S18において、親機と子機との間で通話を行える。通話釦を押した状態では、親機のマイクが動作し、話すLEDが点灯する。通話釦を離した状態では、親機のスピーカが動作し、聞くLEDが点灯する。無操作でm分(例えば数分)を経過した場合、タイムアウトとなり、通話の終了となる。
【0043】
図9には、他の実施形態に係る親機104が示されている。
図9には、正面ケース106の背面側が示されている。正面ケース106は、側壁108及び仕切り壁110を有する。それらの間が配線室111である。仕切り壁110には開口130が設けられている。他の実施形態においては、仕切り壁110における開口130の近傍部分132が傾斜している。正面ケース106にはスピーカ設置場所を囲むリブ112が形成されている。リブ112の最下位置には下方へ貫通した溝116が形成されている。傾斜板118における第1端部が溝116の直下まで及んでいる。傾斜板118における第2端部がスリット120に連なっている。
【0044】
具体的には、仕切り壁110における左側部分110Aにはスリット120が形成されている。傾斜板118上から配線室111の左側部分111Aに液滴が流れ込むように、傾斜板118が設けられている。すなわち、溝116、傾斜板118、及び、スリット120は、スピーカ穴114からスピーカ設置場所に進入した液滴を配線室111へ流す経路を構成している。これにより、スピーカ設置場所に液滴が留まることが解消又は軽減されている。傾斜板118の上面の傾斜角度は、水平に対して数度であり、例えば、1~5度の範囲内である。配線室111の下部には上述した水抜き用の排水口が形成されているので、配線室111に入り込んだ液滴がハウジング内に留まることが防止されている。
【0045】
正面ケース106にはマイクを収容する環状のリブ122が形成されている。リブ122の最下位置には下方に貫通した溝124が形成されている。また、仕切り壁110の下部110Bにも下方に貫通した溝128が形成されている。マイク穴からマイク収容場所に液滴が侵入した場合、その液滴は溝124,128を介して配線室111の下側部分111Bに流れ、更に排水口を経由して外部へ流れ出る。
【0046】
他の実施形態によれば、スピーカ穴やマイク穴から侵入した液滴を効果的に外部へ流出させることが可能である。その場合において配線室が液滴を排出するルートとして利用されている。
【0047】
上記実施形態によれば、ハウジング内に基板室を取り囲む配線室が設けられているので、ハウジング内に比較的に大きな配線用スペースを確保できる。同時に、ハウジングそれ自体の厚みを薄くできる。配線室は、周回可能な形態を有するので、そこにおいて比較的に自由に信号線群の配線を行える。必要に応じて、配線室内に1又は複数の接続部品を設けることも可能である。垂直な壁面にインターホン親機を設置した場合、左右方向から衝撃力が及び易くなるが、配線室がガード機能を発揮し、それによって取り囲まれた基板室が保護され、特にその内部の基板が保護される。よって、上記実施形態によれば、実用性に優れる親機を提供できる。
【符号の説明】
【0048】
10 エレベーター、12 かご、14 乗り場、15 壁面、18 エレベーター用インターホン、20 子機、22 親機、24 信号線群、28 通話釦、30 マイク、32 スピーカ、75 基板室、82 仕切り壁、86 配線室。