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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/08 20060101AFI20220719BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20220719BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220719BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220719BHJP
   B64D 1/22 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B64D45/08
G05D1/10
B64C39/02
B64D47/08
B64D1/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020510251
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012534
(87)【国際公開番号】W WO2019186713
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】515100042
【氏名又は名称】株式会社ACSL
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ラービ・クリストファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベリストロム・ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔介
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0011333(US,A1)
【文献】特表2006-501116(JP,A)
【文献】特開2017-058937(JP,A)
【文献】国際公開第2017/081898(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332851(US,A1)
【文献】国際公開第2017/115446(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64D 1/08- 1/14, 1/22,
45/08,47/08
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する特定機構が所定の箇所に取り付けられた、伸縮機構を有するテザーを有する無人航空機であって、
前記無人航空機の飛行位置を検知する位置センサと、
前記無人航空機の下方の画像を取得するカメラと、
前記特定機構を動作させる場所である目標位置の座標情報と、前記目標位置を識別し前記目標位置に対して所定の相対位置関係に配置される目標位置マーカーの外観を表わす目標位置マーカーパターンと、を記憶するメモリと、
前記位置センサによって検知された前記飛行位置に基づいて、出発位置から前記目標位置に向かって前記無人航空機を飛行させる自動飛行制御部と、
前記目標位置マーカーパターンを参照し、前記カメラで取得された前記画像の中から前記目標位置マーカーに対応する画像部分を検出し、前記検出された前記目標位置マーカーの画像部分に基づいて前記無人航空機と前記目標位置マーカーとの相対位置を求め、前記相対位置に基づき前記自動飛行制御部に前記無人航空機を前記目標位置の直上に誘導させる飛行位置修正部と、
前記伸縮機構を制御することにより前記テザーの長さを調節するテザー制御部と、
を含み、
前記テザー制御部は、前記無人航空機の位置が前記目標位置の直上になったときに、前記特定機構に特定の動作をさせる動作位置まで前記テザーを伸長させるものであり、
前記特定機構は、配送物を保持する機能を有する着脱機構であり、
前記動作位置は、前記配送物を前記着脱機構から解放する解放高度であり、
前記着脱機構は、前記特定の動作により前記配送物を解放するものであり、
前記目標位置は、前記配送物の配送先の位置であり、
前記配送物には、その上面に前記配送物を識別する配送物マーカーが付されており、
前記メモリは、前記配送物マーカーの外観を表わす配送物マーカーパターンをさらに記憶しており、
前記飛行位置修正部は、前記テザー制御部が前記テザーを伸長させている間に、前記配送物マーカーパターンを参照し、前記カメラで取得した画像に含まれる前記配送物マーカーの画像部分に基づいて前記目標位置に前記配送物が下降させられるように前記自動飛行制御部に前記無人航空機を誘導させる
ことを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
前記テザー制御部は、前記カメラで取得された前記画像に基づいて前記テザーを前記動作位置まで伸長させる、請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記配送物マーカーは、コードパターンであり、
前記飛行位置修正部は、前記カメラで取得された前記画像の中の前記配送物マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、前記配送物の三次元的な位置を特定する、
請求項1又は2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記解放高度は、前記配送物が接地する対地高度であり、
前記着脱機構は、前記配送物が接地すると、保持していた前記配送物を解放する自動解放機構を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記テザー制御部は、前記無人航空機を一定の対地高度に保つための揚力の減少を感知することにより、前記配送物が前記着脱機構から解放されたと判断する、
請求項4に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記解放高度は、前記配送物が接地する対地高度であり、
前記テザー制御部は、前記配送物が接地したことを感知すると前記着脱機構を解放させるものである、
請求項1からのいずれか1項に記載の無人航空機。
【請求項7】
前記テザー制御部は、前記配送物が接地したことを、前記無人航空機を一定の対地高度に保つための揚力の減少により感知する、
請求項6に記載の無人航空機。
【請求項8】
前記テザー制御部は、前記カメラで取得した画像に含まれる前記配送物マーカーの画像部分の大きさに基づいて、前記無人航空機と前記配送物マーカーとの間の距離を検知する、
請求項1からのいずれか1項に記載の無人航空機。
【請求項9】
前記テザー制御部は、検知された前記無人航空機と前記配送物マーカーとの間の距離、及び前記無人航空機の対地高度に基づき、前記配送物が前記解放高度まで下降させられたときに前記着脱機構を解放させるものである、
請求項8に記載の無人航空機。
【請求項10】
前記解放高度は、前記配送物が接地する対地高度である、
請求項9に記載の無人航空機。
【請求項11】
前記目標位置マーカーは、二次元コードパターンであり、
前記飛行位置修正部は、前記カメラで取得された前記画像の中の前記目標位置マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、前記目標位置との間の三次元的な相対位置を特定する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機に関し、より詳しくは、所定の機能を有する特定機構が所定の箇所に取り付けられたコードを有する無人航空機に関する。本発明は、さらにより詳しくは、配送物をテザーの先端で保持して目標位置まで配送するための無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
無人航空機で配送物を所定の目標位置に確実に配送することが可能になれば、極めて利便性の高い配送システムを構築することができる。そのため、そのような配送システムについてのいくつかの提案がなされて来た。
【0003】
従来の技術として、ドローンの到達範囲の限界を克服して、ドローンによる宅配を実用化して宅配業務の効率化を行うために、配送車100に配達すべき荷物と共にドローン210を搭載して宅配し、ここで、この配送車には天井に離着陸スペースと荷物出庫口を有し、且つこの荷物出庫口への荷物供給手段を有し、荷物を受け取ったドローンが宅配邸まで飛行して宅配を行い、一定地区でこのドローンによる宅配を終えると、配送車がドローンと共に他の地区に移動し、更なる宅配を行う配送システムが存在している(特許文献1)。しかしこの配送システムは、宅配先に正確に到達するための特段の手段を有しておらず、正確な配送が可能かどうかは不明である。
【0004】
さらに従来の技術として、配達目的地に商品のパッケージを配達するドローンを保護するために、ドローンが商品のパッケージの購入に関連する購入コードを受信することができ、ドローンは、購入コードが認証される時に、配達目的地の着陸ゾーン内に着陸することができるシステムが存在している(特許文献2)。このシステムは、GNSS位置決定および検出されたワイヤレスアクセスポイントの既知の位置、カメラベースの認識、無線ビーコンなどで着陸サイトにセットアップすることができる(段落0019)。しかしこのシステムは、配送物を正確に目標位置に下降させるための特段の手段を有しておらず、正確な目標位置への配送が可能かどうかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-153337号公報
【文献】特表2017-534101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来の技術では、無人航空機を使用して目標位置を迅速かつ正確に特定して、その目標位置に正確に配送物を配送することは困難であった。それは、まず、GPSのような飛行位置を感知する位置センサは誤差が非常に大きく、目標位置を正確に特定することは極めて困難であったからである。また、カメラで無人航空機の外部をモニターし、目標位置をカメラから取得した画像に基づいて特定することも考えられるが、画像から目標位置を確実かつ正確に特定することも困難であったからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、以下のような特徴を有するものである。すなわち、本発明は、所定の機能を有する特定機構が所定の箇所に取り付けられたコードを有する無人航空機において、目標位置に対して所定の相対位置関係に配置される目標位置マーカーの外観を表わす目標位置マーカーパターンを参照し、無人航空機の下方の画像を取得するカメラで取得された画像の中から目標位置マーカーに対応する画像部分を検出し、それに基づいて無人航空機を目標位置の直上に誘導させることを特徴とする。
【0008】
本発明は、コードを伸縮機構を有するテザーとすることもできる。本発明は、無人航空機の位置が目標位置の直上になったときに、特定機構に特定の動作をさせる動作位置までテザーを伸長させる、ように構成することもできる。本発明は、カメラで取得された画像に基づいてテザーを動作位置まで伸長させる、ように構成することもできる。
【0009】
本発明は、特定機構としての配送物を保持する機能を有する着脱機構が動作することにより、配送物の配送先の位置である目標位置において、動作位置である解放高度で配送物を着脱機構から解放する、ように構成できる。本発明は、配送物の上面に付される配送物マーカーの外観を表わす配送物マーカーパターンをさらに記憶しており、テザーを伸長させている間に、配送物マーカーパターンを参照し、カメラで取得した画像に含まれる配送物マーカーの画像部分に基づいて目標位置に配送物が下降させられるように無人航空機を誘導させる、ように構成することもできる。
【0010】
本発明は、配送物マーカーがコードパターンであり、カメラで取得された画像の中の配送物マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、配送物の三次元的な位置を特定する、ように構成することもできる。本発明は、解放高度が配送物が接地する対地高度であり、着脱機構は、配送物が接地すると、保持していた配送物を解放する自動解放機構を含む、ように構成することもできる。本発明は、無人航空機を一定の対地高度に保つための揚力の減少を感知することにより、配送物が着脱機構から解放されたと判断する、ように構成することもできる。
【0011】
本発明は、解放高度が配送物が接地する対地高度であり、配送物が接地したことを感知すると着脱機構を解放させる、ように構成することもできる。本発明は、配送物が接地したことを、無人航空機を一定の対地高度に保つための揚力の減少により感知する、ように構成することもできる。本発明は、カメラで取得した画像に含まれる配送物マーカーの画像部分の大きさに基づいて、無人航空機と配送物マーカーとの間の距離を検知する、ように構成できる。本発明は、検知された無人航空機と配送物マーカーとの間の距離、及び無人航空機の対地高度に基づき、配送物が解放高度まで下降させられたときに着脱機構を解放させる、ように構成することもできる。本発明は、解放高度を配送物が接地する対地高度とすることもできる。本発明は、目標位置マーカーが二次元コードパターンであり、カメラで取得された画像の中の目標位置マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、目標位置との間の三次元的な相対位置を特定する、ように構成することもできる。
【0012】
本発明は、上述の特徴を有する無人航空機でもよく、その無人航空機に実行される方法でもよく、コンピュータに実行されたときに無人航空機を実現するコンピュータプログラムやそれを記憶した記録媒体でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、目標位置に対して所定の相対位置関係に配置される目標位置マーカーの外観を表わす目標位置マーカーパターンを参照し、無人航空機の下方の画像を取得するカメラで取得された画像の中から目標位置マーカーに対応する画像部分を検出し、それに基づいて無人航空機を目標位置の直上に誘導させる構成を有するため、無人航空機を使用して目標位置を迅速かつ正確に特定して、その目標位置で所定の機能を有する特定機構を動作させることができる、という効果を有する。
【0014】
本発明は、コードは伸縮機構を有するテザーとした場合、特定機構を任意の吊り下げ長で動作させることができるという効果を有する。本発明は、無人航空機の位置が目標位置の直上になったときに、特定機構に特定の動作をさせる動作位置までテザーを伸長させる場合、目標位置の直上で特定機構を動作させることができるという効果を有する。本発明は、カメラで取得された画像に基づいてテザーを動作位置まで伸長させる場合、目標位置への誘導に使用されるカメラを使用してテザーの伸長の制御もできる、という効果を有する。
【0015】
本発明は、特定機構としての配送物を保持する機能を有する着脱機構が動作することにより、配送物の配送先の位置である目標位置において、動作位置である解放高度で配送物を着脱機構から解放する場合、配送物を配送先に移動させ、任意の解放高度で配送物を解放することができる、という効果を有する。本発明は、配送物の上面に付される配送物マーカーの外観を表わす配送物マーカーパターンをさらに記憶しており、テザーを伸長させている間に、配送物マーカーパターンを参照し、カメラで取得した画像に含まれる配送物マーカーの画像部分に基づいて目標位置に配送物が下降させられるように無人航空機を誘導させる場合、テザーを伸長させている間において無人航空機が目標位置の直上から位置がずれないようにすることで、目標位置に配送物を正確に下降させることができる、という効果を有する。
【0016】
本発明は、配送物マーカーがコードパターンであり、カメラで取得された画像の中の配送物マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、配送物の三次元的な位置を特定する場合、配送物マーカーのコード形状に基づき、迅速かつ正確に配送物の三次元的な位置を特定することができる、という効果を有する。本発明は、解放高度が配送物が接地する対地高度であり、着脱機構は、配送物が接地すると、保持していた配送物を解放する自動解放機構を含む場合、配送物に着地ショックを与えずに解放できる。本発明は、無人航空機を一定の対地高度に保つための揚力の減少を感知することにより、配送物が着脱機構から解放されたと判断する場合、特別な機構を追加しなくても配送物の解放を検知できる、という効果を有する。
【0017】
本発明は、カメラで取得した画像に含まれる配送物マーカーの画像部分の大きさに基づいて、無人航空機と配送物マーカーとの間の距離を検知する場合、目標位置への誘導に使用されるカメラを使用して、配送物マーカーのコード形状に基づき、迅速かつ正確に配送物との間の距離を検知することができる、という効果を有する。本発明は、検知された無人航空機と配送物マーカーとの間の距離、及び無人航空機の対地高度に基づき、配送物が解放高度まで下降させられたときに着脱機構を解放させる場合、検知した対地高度に基づいて正確な解放高度で配送物を解放することができる、という効果を有する。本発明は、目標位置マーカーが二次元コードパターンであり、カメラで取得された画像の中の目標位置マーカーの画像部分の位置及び大きさに基づいて、目標位置との間の三次元的な相対位置を特定する場合、目標位置マーカーのコード形状に基づき、迅速かつ正確に配送物の三次元的な位置を特定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る無人航空機の一例であるマルチコプタの外観図である。
図2】本発明の実施形態に係る無人航空機の一例であるマルチコプタの外観図であって、テザー及びその周辺部を拡大した図である。
図3】本発明の実施形態に係る無人航空機の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る無人航空機の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物配送処理の動作フロー図である。
図6】本発明の実施形態に係る無人航空機による飛行位置修正処理の動作フロー図である。
図7】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(自動解放型)の動作フロー図である。
図8】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(接地検出型)の動作フロー図である。
図9】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(高度検出型)の動作フロー図である。
図10】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(高度検出型)におけるテザー伸長時に目標位置の上方に吊り下げられた状態で下降させられている配送物のカメラから撮影したイメージである。
図11】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(高度検出型)におけるテザー伸長時に目標位置の上方に吊り下げられた状態で下降させられている配送物のカメラから撮影したイメージである。
図12】本発明の実施形態に係る無人航空機による配送物解放処理(高度検出型)におけるテザー伸長時に目標位置の上方に吊り下げられた状態で下降させられている配送物のカメラから撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である無人航空機100を、図面を参照しながら説明する。ただし本発明は以下に説明する具体的態様に限定されるわけではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の態様を取り得る。例えば、本発明の無人航空機は、図1に示すマルチコプタに限らず、回転翼機、固定翼機等、任意の無人航空機であってよいし、また自律飛行型の無人航空機である必要もない。また、無人航空機100のシステム構成も、図に示されるものに限らず同様の動作が可能であれば任意の構成を取ることができる。例えば通信回路の機能を飛行制御部に統合する等、複数の構成要素が実行する動作を単独の構成要素により実行してもよいし、あるいは主演算部の機能を複数の演算部に分散する等、単独の構成要素が実行する動作を複数の構成要素により実行してもよい。また、無人航空機100のメモリ内に記憶される各種データは、それとは別の場所に記憶されていてもよいし、各種メモリに記録される情報も、1種類の情報を複数の種類に分散して記憶してもよいし、複数の種類の情報を1種類にまとめて記憶してもよい。
【0020】
用語の説明
「高さ」とは垂直方向の長さである。「高度」はある測定点の高さを意味し、通常、海面からの高さ(海抜)を表わす。「対地高度」は、地表面からの高さである。「飛行高度」は、飛行する高さであるが、対地高度で表される。「解放高度」は配送物等を着脱機構から解放する対地高度である。
【0021】
無人航空機の外観構成
図1は、本発明に係る無人航空機(マルチコプタ)100の一例であるマルチコプタの外観図である。無人航空機100は、外観に関しては、制御ユニット101と、制御ユニット101からの制御信号により駆動される6つのモータ102と、各々のモータ102の駆動により回転して揚力を発生させる6つのロータ(回転翼)103と、制御ユニット101と各々のモータ102とを接続する6つのアーム104と、着陸時に無人航空機を支える着陸脚105とを備える。モータ102、ロータ103、及びアーム104の数は、それぞれ、3、4などのような3以上の数とすることもできる。制御ユニット101からの制御信号により6つのモータ102が回転させられ、それにより6つのロータ103の各々の回転数を制御することにより、上昇、下降、前後左右への飛行、旋回等、無人航空機100の飛行が制御される。また、無人航空機100は、その本体下部などの適切な場所に、無人航空機100の下方の画像を取得するカメラ106や、テザー112の下垂部分の長さが所定の長さとなるように巻き取ることができる正逆方向に回転可能なウインチを含むテザー伸縮機構111、が取り付けられている。また、無人航空機100は、飛行位置センサ107、アンテナ108も有している。テザー112の先端などの所定の箇所には、保持対象物を保持するための着脱機構113が取り付けられている。テザー112には、着脱機構113に限らず、所定の機能を有する特定機構を所定の箇所に取り付けることができる。好適には、特定機構は、無人航空機100が目標位置の直上に来た時、好適にはさらに特定機構が特定の動作位置に下降させられたときに特定の動作を行う。特定機構としては、各種の動作を行う機構を使用することができる。例えば、特定機構としては、各種センサ、カメラ、各種ツールなどを使用することができる。特定機構は、それが目標位置の直上に来たことをそれ自身が感知して特定動作を行うように構成することもできるし、無人航空機100や特定機構の位置を感知した制御ユニット101からの制御信号により特定動作を行うように構成することもできる。なお、伸縮可能なテザー112に代えて固定長のコードのような部材を使用し、そのコードの所定の箇所に特定機構を取り付けることもできる。
【0022】
図1及び図2には、無人航空機100の構成物ではないが、フックレセプタクル151が上面に取り付けられた配送物150が着脱機構113に保持されている状態が示されている。図では、テザー112の先端に取り付けられた着脱機構113がフックレセプタクル151を挟んで保持している。フックレセプタクル151は、フックによって引っ掛けることができる構造物であり、例えば環状の構造物である。着脱機構113は、テザー112の先端ではない箇所に取り付けてもよい。着脱機構113は、配送物150のような保持対象物を解放可能に把持する機構であり、典型的には、対象物を挟んで引っ掛けたり解放したりすることができるフック機構である。フック機構は、それが保持する配送物150が接地するなどして荷重が抜けた場合に自動解放するような、受動的な自動解放機構を備えていてもよい。図2に着脱機構113の具体例として示したフック機構は、2つの対向する引っ掛け部材を軸により相互に回転可能に固定して、その上部に引っ掛け部材を解放する方向にゴムのような弾性部材で張力をかける構成からなる自動解放機構を有している。それぞれの引っ掛け部材の先端には上方に向いた突起からなるロック機構が備えられている。引っ掛け部材が交差して配送物150のフックレセプタクル151の環状部分を通貫することによって挟んだときに、フックレセプタクル151がその突起の移動を阻害して、引っ掛け部材が解放方向に動くことを防止することにより、着脱機構113が配送物150を保持した状態でロックされる。配送物150が接地するなどして荷重が抜けると、フックレセプタクル151が上方に移動して突起が移動できるようになり、引っ掛け部材が解放方向に移動して配送物150を解放する。代替的に、着脱機構113は、ソレノイドなどで駆動される能動的なロック機構を有しており、着脱機構113が配送物150を保持した状態で解除可能にロックされていてもよい。この場合、着脱機構113のソレノイドは無人航空機100と導線によって接続されている。その導線を通じてソレノイドを駆動する電気信号が制御ユニット101から伝達されると、配送物150を保持している着脱機構113のロック機構が解除され、配送物150が解放される。
【0023】
無人航空機の構成
図3は、図1に示す無人航空機100の構成を示すブロック図である。無人航空機100は、大きく、制御ユニット101、制御ユニット101に電気的に接続されたモータ102、モータ102に機械的に接続されたロータ103、カメラ106、飛行位置センサ107、アンテナ108、テザー伸縮機構111から構成される。制御ユニット101は、無人航空機100の飛行や配送物150の飛行制御や配送処理を行うための情報処理や、そのための電気信号の制御を行うための構成であり、典型的には基板上に各種の電子部品を配置して配線することによってそのような機能の実現に必要な回路を構成したユニットである。制御ユニット101は、さらに、情報処理ユニット120、通信回路121、制御信号生成部122、スピードコントローラ123、画像処理ユニット124、インターフェイス125から構成される。
【0024】
カメラ106は、無人航空機100の下部の適切な位置に取り付けられた映像を撮影するためのカメラである。カメラ106は、それの撮影範囲の画像のデータを取得する。画像は、典型的には一連の静止画像からなる動画の画像である。取得した画像データは、画像処理ユニット124によって処理され、画像に写った物体やパターンが認識される。飛行位置センサ107は、GPS(Global Positioning System)センサのような無人航空機100の飛行位置の座標を感知するナビゲーションのためのセンサである。飛行位置センサ107は、好適には、三次元的な座標を感知する。飛行位置センサ107は、主として、無人航空機100が飛行計画経路に沿って飛行する時の位置を制御するために使用される。
【0025】
なお、図示しないが、無人航空機100は、6軸ジャイロ(加速度/角速度センサ)のような姿勢センサ、磁気センサのような方位センサ、気圧センサのような高度センサ等の無人航空機100の飛行を制御するための飛行制御用の各種の基本的センサも有している。姿勢センサは無人航空機100の移動と傾きなどを検出するためのセンサであり、無人航空機100の飛行時の姿勢を制御するために使用される。方位センサは、飛行方向を制御するために使用される。高度センサは無人航空機100の高度を検出するセンサであり、無人航空機100の飛行高度を制御するために使用される。無人航空機100は、超音波センサのような距離センサを備えていてもよい。距離センサは、障害物や地面との間の距離を測定し、障害物との衝突を避けたり、対地高度を精密に測定するために使用することができる。アンテナ108は、無人航空機100を操縦したり制御するための情報や各種データを含む無線信号を受信したり、テレメトリ信号を含む無線信号を無人航空機100から送信するための空中線である。
【0026】
テザー伸縮機構111は、テザー112を巻き取るウインチのような構成であって、制御を受けてそれを所定の回転方向に所定の回転量だけ回転させることができる構成である。テザー伸縮機構111により、テザー112の下垂部分の長さを所定量に調節することができる。テザー伸縮機構111は、制御ユニット101からの回転のオン・オフ及び回転方向を示す指示信号を受信し、それに基づいてモータなどの動力によりウインチを指示された回転方向に駆動し、テザー112を繰り出したり、巻き取ったりすることによりテザー112の長さを調節する。
【0027】
情報処理ユニット120は、プロセッサ、一時メモリ等から構成されて各種の演算やフロー制御を行う主演算回路120cと、メモリ(図示せず)とを含み、メモリには、飛行制御プログラム120p1、飛行位置修正プログラム120p2、テザー制御プログラム120p3のようなプログラム、及び飛行計画経路データ120d1、目標位置データ120d2、目標位置マーカーパターン120d3、配送物マーカーパターン120d4のようなデータが記憶される。メモリは、具体的には、フラッシュメモリやバックアップRAMメモリなどの不揮発性メモリとすると好適である。
【0028】
通信回路121は、アンテナ108を通じて受信した無線信号から、無人航空機100のための操縦信号、制御信号や各種データなどを復調して主演算回路120cに入力したり、無人航空機100から出力されるテレメトリ信号などを搬送する無線信号を生成するための電子回路であり、典型的には無線信号処理ICである。なお、例えば、操縦信号の通信と、制御信号、各種データの通信とを別の周波数帯の異なる通信回路で実行するようにしてもよい。例えば、手動での操縦を行うためのコントローラ(プロポ)の送信器と950MHz帯の周波数で通信し、データ通信を2GHz帯/1.7GHz帯/1.5GHz帯/800MHz帯の周波数で通信するような構成を採ることも可能である。
【0029】
制御信号生成部122は、主演算回路120cによって演算により得られた制御指令値データを、電圧を表わすパルス信号(PWM信号など)に変換する構成であり、典型的には、発振回路とスイッチング回路を含むICである。スピードコントローラ123は、制御信号生成部122からのパルス信号を、モータ102を駆動する駆動電圧に変換する構成であり、典型的には、平滑回路とアナログ増幅器である。図示していないが、無人航空機100は、リチウムポリマーバッテリやリチウムイオンバッテリ等のバッテリデバイスや各要素への配電系を含む電源系を備えている。
【0030】
画像処理ユニット124は、カメラ106から取得した画像データに基づき、画像を認識して、画像中の物体の位置決定、種別判別、計測などを行う構成であり、典型的には、プロセッサ、一時メモリ、プログラムを記憶したROM等から構成されて画像処理を行うユニットである。画像処理ユニット124は、カメラ106と組み合わされて、マシンビジョンを構成する。
【0031】
インターフェイス125は、主演算回路120cと、画像処理ユニット124、テザー伸縮機構111、飛行位置センサ107などの機能要素との間で信号の送受信ができるように信号の形態を変換することにより、それらを電気的に接続する構成である。なお、説明の都合上、図面においてインターフェイスは1つの構成として記載しているが、接続対象の機能要素の種類によって別のインターフェイスを使用することが通常である。また、接続対象の機能要素が入出力する信号の種類によってはインターフェイス125が不要な場合もある。また、図3において、インターフェイス125が媒介せずに接続されている情報処理ユニット120であっても、接続対象の機能要素が入出力する信号の種類によってはインターフェイスが必要となる場合もある。
【0032】
飛行制御プログラム120p1は、ドローンの飛行を制御するフライトコントローラの機能を実現するプログラムであり、操作者からの操縦信号(非自律飛行時)や飛行計画経路(自律飛行時)などに基づいて無人航空機100の飛行を適切に制御するためのプログラムである。飛行制御プログラム120p1は、具体的には、飛行制御用の各種センサから得られる情報により無人航空機100の姿勢、速度等を判断し、飛行位置センサ107から得られる情報により無人航空機100の現在の飛行位置などを判断し、操縦信号、飛行計画経路、速度制限、高度制限等の目標値と比較することにより主演算回路120cで各ロータ103に対する制御指令値を演算し、制御指令値を示すデータを制御信号生成部122に出力する。制御信号生成部122は、その制御指令値を電圧を表わすパルス信号に変換して各スピードコントローラ123に送信する。各スピードコントローラ123は、そのパルス信号を駆動電圧へと変換して各モータ102に印加し、これにより各モータ102の駆動を制御して各ロータ103の回転数を制御することにより無人航空機100の飛行が制御される。飛行位置修正プログラム120p2は、飛行位置センサ107から得られる情報に基づく飛行位置データを、カメラ106で取得された画像を画像処理ユニット124によって認識した画像認識結果に基づいて修正するためのプログラムである。テザー制御プログラム120p3は、テザー伸縮機構111に対してテザー112を伸縮させる制御を行うためのプログラムである。テザー伸縮機構111は、典型的には、着脱機構113のような特定機構を動作させる位置までテザー112を伸長させ、特定機構が動作した後はテザー112の伸長を停止させたり、テザー112を収容するように動作する。
【0033】
飛行計画経路データ120d1は、無人航空機100の三次元(緯度、経度、高度)の飛行計画経路を表すデータであり、典型的には、飛行計画経路上に存在する一連の複数のウェイポイントの集合のデータである。飛行計画経路は、典型的には、それらの複数のウェイポイントを順番に結んだ直線の集合であるが、ウェイポイントの所定範囲内においては所定の曲率の曲線とすることもできる。好適には、飛行計画経路の特定のウェイポイントの近傍に目標位置が存在すると良い。そのウェイポイントには、それを通過後に目標位置に向かう旨の情報が付加される。そのウェイポイントは、飛行計画経路の終点(折り返し点)とすることもできる。なお、あるウェイポイントを目標位置とすることもできる。この場合、そのウェイポイントのデータには、それが目標位置である旨の情報が付加される。飛行計画経路データ120d1は、複数のウェイポイントにおける飛行速度を定めるデータを含んでいてもよい。飛行計画経路データ120d1は、典型的には自律飛行において飛行計画経路を定めるために使用されるが、非自律飛行において飛行時のガイド用として使用することもできる。飛行計画経路データ120d1は、典型的には、飛行前に無人航空機100に入力されて記憶される。
【0034】
目標位置データ120d2は、着脱機構113のような特定機構を動作させる位置である目標位置の座標情報を表わすデータである。座標として、典型的には、緯度、経度などが使用されるが、他の情報を使用しても良い。また、目標位置データ120d2は高度の情報を含んでいると好適である。目標位置データ120d2は、典型的には、配送物150を配送する先である配送位置の座標データである。目標位置データ120d2は、複数の目標位置のデータを含むことも可能である。また、前述のように、目標位置データ120d2で定められる目標位置をウェイポイントとして飛行計画経路データ120d1に組み込んで記憶させることも可能である。
【0035】
目標位置マーカーパターン120d3は、目標位置に対して所定の相対位置関係に配置される目標位置マーカー161の外観を表わすデータである。目標位置マーカー161は、目標位置を視覚的に確実に特定することができるようにするためのパターンを有するマーカーであり、それを印刷した紙や布などが目標位置に近傍に配置される。目標位置マーカー161のデータは、画像データ(例えば、JPEG形式の画像)とすることもできるし、目標位置マーカー161がコードパターンの場合は、コード(例えば、二次元コードを生成することができる数字列)とすることもできる。また、目標位置マーカーパターン120d3は、目標位置マーカー161の大きさの情報も含んでいる。目標位置マーカー161としては、QRコード(登録商標)のような二次元コードが典型的であるが、バーコードのような一次元のコードや、シンボリックな図形などを使用することもできる。目標位置マーカー161は、種々の大きさの複数のパターンを組み合わせたものとすると、位置の測定の正確性を向上できる。また、目標位置マーカー161は、その全体や、その内部のそれぞれの箇所が特定の色を有していてもよく、目標位置マーカーパターン120d3はそのような色の情報を含んでいてもよい。目標位置マーカー161は、目標位置に対して所定の相対位置関係(例えば、500mm北側かつ200mm東側に配置、目標位置の周りを囲むように配置、など)に配置される。その相対位置関係も、目標位置マーカーパターン120d3に対応付けて記憶される。目標位置マーカー161の位置が特定されると、その相対位置関係の値を使用することにより、目標位置の位置を特定することができる。また、目標位置マーカー161は所定の大きさ及び形状(例えば、220mm×220mmの正方形)を有するものである。カメラ106で取得された画像中に目標位置マーカー161の画像部分が存在する場合、その画像部分の大きさを特定することにより、目標位置マーカー161までの距離を計算することができる。また、カメラ106で取得された画像中の目標位置マーカー161の画像部分の位置を特定することにより、目標位置マーカー161の方向を特定することもできる。目標位置マーカーパターン120d3は、典型的には、主演算回路120cに読み出されて画像処理ユニット124に送られ、画像処理ユニット124で画像認識のために使用される。目標位置マーカーパターン120d3は、画像処理ユニット124内に記憶されていてもよい。
【0036】
目標位置データ120d2は、そこに配置される目標位置マーカー161の外観を表わす目標位置マーカーパターン120d3と関連付けて記憶されている。目標位置データ120d2が複数の目標位置のデータを含む場合は、目標位置マーカーパターン120d3は、その複数の目標位置のそれぞれに関連付けられた複数の目標位置マーカー161の外観を表わすデータを含んでいる。その場合、目標位置マーカー161と目標位置の相対位置関係を、異なる目標位置毎に異なる相対位置関係とすることも可能である。
【0037】
配送物マーカーパターン120d4は、配送物150の上面に配置される配送物マーカー162の外観を表わすデータである。そのデータは、画像データ(例えば、JPEG形式の画像)とすることもできるし、目標位置マーカー161がコードパターンの場合は、コード(例えば、二次元コードを生成することができる数字列)とすることもできる。また、配送物マーカーパターン120d4は、配送物マーカー162の大きさの情報も含んでいる。配送物マーカー162は、配送物150の三次元的な位置を視覚的に確実に特定することができるようにするためのパターンを有するマーカーであり、それを印刷した紙などが配送物150の上面に貼付される。配送物マーカー162としては、QRコード(登録商標)のような二次元コードが典型的であるが、バーコードのような一次元のコードや、シンボリックな図形などを使用することもできる。配送物マーカー162は、種々の大きさの複数のパターンを組み合わせたものとすると、位置の測定の正確性を向上できる。また、配送物マーカー162は、その全体や、その内部のそれぞれの箇所が特定の色を有していてもよく、配送物マーカーパターン120d4はそのような色の情報を含んでいてもよい。配送物マーカー162は、典型的には、配送物150の上面の中央部に配置されるが、中央部から所定の相対位置に配置することも可能である。配送物マーカー162の位置が特定されると、配送物150の位置を特定することができる。また、配送物マーカー162は所定の大きさ及び形状(例えば、220mm×220mmの正方形)を有するものである。カメラ106で取得された画像中に配送物マーカー162の画像部分が存在する場合、その画像部分の大きさを特定することにより、配送物マーカー162までの距離を計算することができる。また、カメラ106で取得された画像中の配送物マーカー162の画像部分の位置を特定することにより、配送物マーカー162の方向を特定することもできる。配送物マーカーパターン120d4は、典型的には、主演算回路120cに読み出されて画像処理ユニット124に送られ、画像処理ユニット124で画像認識のために使用される。
【0038】
無人航空機の機能構成
図4は、無人航空機100に含まれる情報処理ユニット120の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図4は、無人航空機100の制御部においてソフトウェアで実施される機能モジュールの構成を示す。情報処理ユニット120は、機能の観点からは、飛行制御モジュール120m1、飛行位置修正モジュール120m2、テザー制御モジュール120m3のようなモジュールが、飛行計画経路データ120d1、目標位置データ120d2、目標位置マーカーパターン120d3、配送物マーカーパターン120d4のようなデータにアクセス可能に接続されたものである。飛行制御モジュール120m1は、飛行制御プログラム120p1が、主演算回路120cによって、必要に応じ飛行計画経路データ120d1を参照しながら実行されることによって機能するモジュールである。飛行位置修正モジュール120m2は、飛行位置修正プログラム120p2が、主演算回路120cによって、必要に応じ飛行計画経路データ120d1、目標位置マーカーパターン120d3を参照しながら実行されることによって機能するモジュールである。テザー制御モジュール120m3は、テザー制御ログラム120p3が、主演算回路120cによって、必要に応じ、目標位置マーカーパターン120d3、配送物マーカーパターン120d4を参照しながら実行されることによって機能するモジュールである。それぞれのモジュールの機能は、動作説明において説明する。
【0039】
無人航空機100の配送物配送処理
無人航空機100の典型的な配送物配送処理は以下の通りである。無人航空機100は、テザー112の着脱機構113で配送物150を保持した状態で出発位置を出発し、飛行計画経路に沿って自律飛行する。そして、無人航空機100は、飛行計画経路上に存在する目標位置で停止して一定の対地高度でホバーリングし、テザー112を伸長させて配送物150を着脱機構113の解放位置まで降下させ、配送物150をそこで解放することによって、配送物150を目標位置に配送する。なお、配送物150を配送した後には、無人航空機100は、テザー112を巻き取って収容し、その下垂部分の長さを短縮させると好適である。テザー伸縮機構111のウインチは、テザー112をその先端付近の着脱機構113まで巻き取った場合に押されて動作するプレススイッチを有しており、そのプレススイッチが動作するとテザー112の巻き取りを中止する。また、配送物150を配送した後には、無人航空機100を所定の飛行計画経路に沿って出発位置に帰投させるように制御することもできる。以下、配送物配送処理の動作フローについて説明する。
【0040】
図5は、無人航空機100による配送物配送処理の動作フロー図である。飛行前の事前準備として、適切な飛行計画経路を作成し、飛行計画経路上に存在する一連の複数のウェイポイントの集合を飛行計画経路データ120d1として無人航空機100内に記憶させておく。飛行計画経路データ120d1は、それぞれのウェイポイントにおける高度あるいは対地高度の情報を含むこともできる。また、配送物を配送すべき目標位置の座標データなどを目標位置データ120d2として無人航空機100内に記憶させておく。なお、目標位置をウェイポイントとして扱うこともできる。この場合、飛行計画経路データ120d1は、目標位置であるウェイポイント、及び目標位置ではなく通過位置を表わすウェイポイントが混在したものとなる。飛行計画経路データ120d1及び目標位置データ120d2を無人航空機100に記憶させる際には、それらを無線信号で無人航空機100に送信し、アンテナ108及び通信回路121を経由して情報処理ユニット120に読み込ませると好適である。無人航空機100が他の適当なインターフェイスを有している場合、そのインターフェイスを経由して無人航空機100の情報処理ユニット120に読み込ませてもよい。
【0041】
飛行前に事前準備が完了すると、飛行制御モジュール120m1により飛行計画経路に沿った自律飛行制御機能が実行される。すなわち、飛行制御モジュール120m1は、飛行計画経路データ120d1を読み出し、それによって定められる飛行計画経路に沿って目標位置に飛行するように無人航空機100を制御する(ステップS101)。具体的には、飛行計画経路データ120d1で定められるウェイポイントをその順番に経由して飛行するように無人航空機100の飛行方向及び高度を制御する。飛行計画経路データ120d1は好適には目標となる飛行速度のデータを含んでおり、無人航空機100は、その飛行速度で飛行計画経路に沿って飛行するように制御される。飛行制御モジュール120m1は、飛行時に、ユーザからの手動の操作を受け付けて非自律飛行を実行させてもよい。この場合、飛行計画経路はガイド用として使用することになり、例えば、手動の操作が終了したときに無人航空機100を飛行計画経路上に復帰させることなどができる。
【0042】
飛行制御モジュール120m1は、目標位置データ120d2を読み出し、現在の飛行位置が目標位置の近傍に達したかどうかを判断する(ステップS102)。具体的には、飛行計画経路データ120d1で定められるウェイポイントにおいて、通過後に目標位置に向かうべきウェイポイントに到達したとき、あるいはそのウェイポイントの近傍(所定の距離以内)に達したときに飛行位置が目標位置の近傍に達したと判断する。なお、目標位置がウェイポイントに含まれる場合は、当該ウェイポイントの近傍(所定の距離以内)に達した場合に、目標位置の近傍に達したと判断する。次に、現在の飛行位置が目標位置の近傍に達した場合、飛行位置修正モジュール120m3が飛行位置修正処理を実行する(ステップS103)。ステップS102において現在の飛行位置が目標位置の近傍でない場合は、ステップS101に戻り、無人航空機100を飛行計画経路データ120d1に基づいて引き続き飛行させる。飛行位置修正処理は、カメラ106で取得された画像を画像処理ユニット124によって認識した画像認識結果に基づき、典型的にはGPS受信機である飛行位置センサ107から得られる飛行位置データに含まれる誤差(数m程度)を減少させることによって、飛行位置データをより正確な値に修正する処理である。飛行位置データをより正確な値に修正することにより、無人航空機100は目標位置の直上に正確に誘導されることになる。また、飛行位置データを修正せずに、カメラ106で取得された画像を画像処理ユニット124によって認識した画像認識結果のみに基づいて、無人航空機100は目標位置の直上に正確に誘導することも可能である。その場合、目標位置の直上に正確に誘導されたときの飛行位置センサ107に基づく飛行位置データは、誤差分だけずれたままである。飛行位置修正処理の詳細な動作については、後述する。飛行位置修正処理により、無人航空機100は目標位置の直上に誘導されて、そこでホバーリングすることとなる。次に、現在の飛行位置が目標位置に達した場合、配送物解放処理を実行させる(ステップS104)。配送物解放処理では、典型的には、テザー112が伸長させられて配送物150が解放高度まで下降させられた後に着脱機構113から解放され、目標位置に配送される。配送物解放処理では、テザー112の伸長に、無人航空機100を下降させる処理を組み合わせることもできる。なお、飛行位置修正処理(ステップS103)は、配送物解放処理の実行が開始されても、引き続き実行されたままであると好適である。このようにすると、配送物解放処理の実行中にも無人航空機100は目標位置の直上に留まることにより、目標位置に正確に配送物150を配送することが可能となる。配送物解放処理の詳細な動作については、後述する。また、好適には、飛行制御モジュール120m1は、配送物解放処理が終了すると、飛行計画経路データ120d1を読み出し、それによって定められる飛行計画経路に沿って出発位置に飛行するように無人航空機100を制御する(ステップS105)。飛行計画経路データ120d1は、出発位置から目標位置を経由して出発位置まで戻る一連の経路のデータであってもよい。また、飛行計画経路データ120d1は、出発位置から目標位置までの片道の経路のデータであってもよく、この場合、無人航空機100は、目標位置に達した後、往路を逆にたどって出発位置に戻る。
【0043】
(飛行位置修正処理)飛行位置修正処理の詳細な処理を以下に説明する。図6は、無人航空機100による飛行位置修正処理の動作フロー図である。飛行時に、カメラ106は下方、好適には直下方向を中心とする撮影範囲の映像を撮影する。画像処理ユニット124は、カメラ106で取得された画像を認識して画像認識結果を生成し、情報処理ユニット120はそれを取得する。また、GPS受信機などの飛行位置センサ107は、飛行位置などの情報を取得し、それを情報処理ユニット120に送る。これによって、情報処理ユニット120内の各種のモジュールは画像認識結果や飛行位置データを使用することができる。画像処理ユニット124は、目標位置マーカーパターン120d3を参照することにより、目標位置マーカー161の画像部分を特定することが可能である。まず、画像処理ユニット124は、カメラ106から画像データを取得する(ステップS111)。画像処理ユニット124は、取得した画像中に、目標位置マーカーパターン120d3に対応する画像部分があるかを探して特定する(ステップS112)。当該画像部分の認識のためには、公知の画像認識技術を使用することができる。飛行位置修正モジュール120m2は、画像認識結果に基づき、目標位置との方向及び距離を特定する(ステップS113)。具体的には、当該目標位置マーカー161の画像部分の大きさ及び目標位置マーカー161の大きさの情報に基づき無人航空機100と目標位置マーカー161との距離を求め、取得した画像全体の中の当該画像部分の位置に基づいて目標位置マーカー161への方向を求める。例えば、カメラ106が直下を撮影範囲の中心としている場合、カメラ106から取得した画像全体の中で当該画像部分が中心にあれば、目標位置マーカー161はカメラ106の直下にあることになる。また、現実の目標位置マーカー161の大きさが分かっているため、それの外観を、所定の焦点距離のレンズを有し、所定のサイズ及び解像度の撮像素子を有するカメラ106により画像データに変換した場合の、目標位置マーカー161の画像中の大きさ(あるいは、撮像素子上での像の大きさ)と、目標位置マーカー161とカメラ106の距離との間の関係を求めることができる。この関係を使用することにより、目標位置マーカー161に対応する画像部分の画像中での大きさを特定すれば、目標位置マーカー161とカメラ106の間の距離を求めることができる。なお、レンズの特性によっては、目標位置マーカー161に対応する画像部分の画像中での位置も関係する場合もあるので、その場合には、画像中での位置も考慮することによって、より正確に目標位置マーカー161とカメラ106の間の距離を求めることができる。
【0044】
上述の処理により、まず、目標位置マーカー161と無人航空機100との間の三次元的な相対位置を特定する。ここで、カメラ106と、無人航空機100の中心部及び/又はテザー112が無人航空機100から下垂する場所とが、ある方向、ある距離だけずれている場合は、そのずれを考慮して、目標位置マーカー161と無人航空機100との間の三次元的な相対位置を特定すると好適である。そして、目標位置に対して目標位置マーカー161は所定の相対位置関係に配置されているので、特定した目標位置マーカー161の位置をその相対位置関係だけオフセットさせることにより、無人航空機100と目標位置との間の相対位置が特定される。なお、高機能な画像処理ユニット124の場合、画像処理ユニット124がステップS113の動作の少なくとも一部を実行することも可能である。
【0045】
次に、飛行位置修正モジュール120m2は、無人航空機100を目標位置の直上に正確に誘導する(ステップS114)。具体的には、飛行位置修正モジュール120m2は、特定した目標位置の直上に無人航空機100が向かうように、飛行制御モジュール120m1に指示を出す。この指示は、飛行位置センサ107によって得られた飛行位置データを、目標位置マーカー161の画像を使用することによって得られた無人航空機100と目標位置との相対位置を使用してより正確な値に修正することによって、なすことができる。すなわち、無人航空機100は目標位置の直上に誘導されているところ、飛行位置データが正確な値に補正されると、無人航空機100は、正確に目標位置の直上に誘導されることになるからである。
【0046】
また、飛行位置データを修正せずに、無人航空機100は目標位置の直上に正確に誘導することも可能である。これは、無人航空機100と目標位置との相対位置の水平方向のずれを打ち消す位置に移動するように、飛行位置修正モジュール120m2が飛行制御モジュール120m1に指示を出すことによって、なすことができる。具体的には、飛行位置修正モジュール120m2は、ずれの方向の逆方向に対して、ずれの距離だけ移動する指示を飛行制御モジュール120m1に出す。この場合、目標位置の直上に正確に誘導されたときの飛行位置センサ107に基づく飛行位置データは、誤差分だけずれたままである。
【0047】
飛行制御モジュール120m1は、正確に特定された目標位置の直上まで無人航空機100が移動するようにロータ103の個々の回転数を制御し、無人航空機100を進行方向に傾斜させて、その方向に移動させる。なお、飛行位置修正モジュール120m2は、無人航空機100が目標位置の直上に来た後も、目標位置とのずれを検知し、無人航空機100が目標位置の直上の留まり続けるように、飛行制御モジュール120m1に指示を出し続けると好適である。また、飛行位置修正モジュール120m2は、飛行計画経路に設定された高度又は対地高度を保持するように、飛行制御モジュール120m1に指示を出す。これにより、無人航空機100は目標位置の直上で、飛行計画経路に沿った移動時と同じ高度又は対地高度でホバーリングすることとなる。代替的に、飛行位置修正モジュール120m2は、無人航空機100が目標位置の直上に来た時に、飛行計画経路に沿った移動時とは異なる高度又は対地高度になるように飛行位置修正モジュール120m2に指示を出してもよい。好適には、飛行計画経路に沿った移動時より低い高度又は対地高度でホバーリングするように制御する。このようにすると、テザー112を伸長すべき長さを短くすることが出来るため、配送物150をより早く、正確に目標位置に下降させて解放することが可能となる。
【0048】
(配送物解放処理)配送物解放処理の詳細な処理を以下に説明する。配送物解放処理について、(1)着脱機構113が配送物150の接地により自動解放する自動解放型、(2)情報処理ユニット120が配送物150の接地を検出して着脱機構113を解放する接地検出型、(3)情報処理ユニット120が配送物150の解放高度に来たことを検出して着脱機構113を解放する高度検出型、の3種類の実施形態を説明する。なお、配送物150が接地又は解放位置で着脱機構113から解放される限り、これらの実施形態を組み合わせることも可能である。
【0049】
(配送物解放処理(自動解放型))
この実施形態においては、着脱機構113は前述の自動解放機構を有しており、配送物150が接地すると自動的に解放される。図7は、無人航空機100による配送物解放処理(自動解放型)の動作フロー図である。無人航空機100が目標位置に到達してホバーリングを開始すると、テザー制御モジュール120m3が、テザー伸縮機構111に指示を出してテザー112を伸長させる(ステップS121)。具体的には、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で回転させ、テザー112を繰り出して、配送物150を下降させる。なお、無人航空機100をある程度下降させた後にテザー112を伸長させたり、テザー112をある程度伸長させた後に無人航空機100を下降させたり、無人航空機100を下降させながらテザー112を伸長させたり、無人航空機100のみを下降させることによっても配送物150を下降させることも可能である。次に、テザー制御モジュール120m3は、飛行制御モジュール120m1が一定高度にホバーリング(下降中であれば、一定速度で下降)するための揚力を所定の減少量だけ減少させたかどうかを判断する(ステップS122)。これにより、配送物150が接地して自動解放機構が動作したかどうかが検出できる。テザー制御モジュール120m3には、配送物150の重量に基づいた揚力の所定の減少量を記憶させておくと好適である。所定の減少量とは配送物150の重量に対応する揚力の大きさであり、揚力の減少する絶対値で表わすこともできるが、揚力の減少する割合で表わした方が好ましい。揚力は、ロータ103の回転数、そしてモータ102へ供給する動作電圧に関係するが、動作電圧の増減の割合を制御することによって、揚力の増減の割合もほぼ同様に制御できるからである。配送物150を搭載した無人航空機100の全体の重量に対する配送物150の重量の割合が大きいほど、揚力の減少する割合は大きい。ロータ103に接続されたモータ102へ供給する動作電圧を規定する制御信号生成部122への指示信号が、その揚力の所定の減少量に対応する程度の電圧の減少を指示したことを検出することにより、その揚力の所定の減少量を検出する。すなわち、配送物150が接地して自動解放機構が動作すると、配送物150の重量だけ無人航空機100の重量が減少し、無人航空機100が上昇しようとする。そのような挙動を検知した飛行制御モジュール120m1はロータ103の回転数を減少させて揚力を減少させる制御をすることにより、一定の高度を保とうとする。テザー制御モジュール120m3は、そのような飛行制御モジュール120m1による揚力を所定の減少量だけ減少させる制御を検出することにより、配送物150が接地して自動解放機構が動作したことを検出することができる。なお、自動解放機構が動作した直後の、無人航空機100が上昇しようとする上向きの加速度を検出することによっても、配送物150が接地して自動解放機構が動作したことを検出することができる。この加速度も配送物150の重量に対応する値である。テザー制御モジュール120m3は、揚力が所定の大きさだけ減少させられたと判断すると、配送物150が接地したことにより自動解放機構が動作して配送物150が解放されたと判断して、テザー112の伸長を停止させる。無人航空機100を下降させていた場合は、下降を停止させる。これにより、配送物150が目標位置に配送されたことになり、配送物解放処理が完了する。なお、テザー制御モジュール120m3は、配送物150が着脱機構113から解放された後に、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で逆方向に回転させ、テザー112をその先端付近の着脱機構113まで巻き取らせてもよい。テザー制御モジュール120m3は、揚力が減少させられていないと判断すると、ステップS121に戻り、テザー112の伸長を継続させる。
【0050】
なお、この実施形態では、配送物150が接地して自動解放機構が動作したことを揚力の変化で検知しているが、他の方法でそれを検知することも可能である。例えば、着脱機構113に自動解放機構に連動したスイッチを取り付けておき、自動解放機構が動作したことを電気信号で検知できるにしてもよい。また、着脱機構113に自動解放機構が動作したときに視覚的に大きな変化が起きるような構造(目立つ色のフラップなど)を取り付けておき、それをカメラ106から取得した画像データを画像処理ユニット124で画像認識することによって、自動解放機構が動作したことを検知できるようにしてもよい。
【0051】
(配送物解放処理(接地検出型))
この実施形態においては、着脱機構113はソレノイドなどで駆動されるロック機構を有しており、配送物150が接地したことが検出されると、指示により解放される。図8は、無人航空機100による配送物解放処理(接地検出型)の動作フロー図である。無人航空機100が目標位置に到達してホバーリングを開始すると、テザー制御モジュール120m3が、テザー伸縮機構111に指示を出してテザー112を伸長させる(ステップS131)。具体的には、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で回転させ、テザー112を繰り出して、配送物150を下降させる。なお、無人航空機100をある程度下降させた後にテザー112を伸長させたり、テザー112をある程度伸長させた後に無人航空機100を下降させたり、無人航空機100を下降させながらテザー112を伸長させたり、無人航空機100のみを下降させることによっても配送物150を下降させることも可能である。次に、テザー制御モジュール120m3は、飛行制御モジュール120m1が一定高度にホバーリング(下降中であれば、一定速度で下降)するための揚力を所定の減少量だけ減少させたかどうかを判断する(ステップS132)。この判断は、前述のステップS122と同じ処理で実行することが可能である。テザー制御モジュール120m3は、揚力が所定の大きさだけ減少させられたと判断すると、配送物150が接地したと判断して、テザー112の伸長を停止させるとともに、着脱機構113のロック機構を解放する指示を出す(ステップS133)。無人航空機100を下降させていた場合は、下降を停止させる。これにより、配送物150が接地した後に着脱機構113から解放され、配送物150が目標位置に配送されたことになり、配送物解放処理が完了する。なお、テザー制御モジュール120m3は、配送物150が着脱機構113から解放された後に、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で逆方向に回転させ、テザー112をその先端付近の着脱機構113まで巻き取らせてもよい。テザー制御モジュール120m3は、揚力が減少させられていないと判断すると、ステップS131に戻り、テザー112の伸長を継続させる。
【0052】
(配送物解放処理(高度検出型))
この実施形態においては、配送物150の高度を検出しており、配送物150が所定の解放高度に達したときに、ソレノイドなどで駆動されるロック機構を有している着脱機構113が指示により解放される。図9は、無人航空機100による配送物解放処理(高度検出型)の動作フロー図である。解放高度は、例えば目標位置の数十cm上方などの位置とすることができるが、解放高度をゼロとすることにより、配送物150が接地したときに着脱機構113を解放するようにすることもできる。無人航空機100が目標位置に到達してホバーリングを開始すると、テザー制御モジュール120m3は、直下方向を中心とする撮影範囲を有するカメラ106から画像データを取得する(ステップS141)。画像処理ユニット124は、配送物マーカーパターン120d4を参照することにより、配送物マーカー162の画像部分を特定することが可能である。画像処理ユニット124は、取得した画像中に、配送物マーカーパターン120d4に対応する画像部分があるかを探して特定する(ステップS142)。当該画像部分の認識のためには、公知の画像認識技術を使用することができる。テザー制御モジュール120m3は、画像認識結果に基づき配送物150との距離を特定する(ステップS143)。具体的には、当該画像部分の大きさ及び配送物マーカー162の大きさの情報に基づき無人航空機100と配送物マーカー162との距離を求める。この処理は、前述のステップS113と同様の処理によって実行することが可能である。これにより、無人航空機100の下面から配送物150が無人航空機100の下方にテザー112によって吊り下げられた箇所までの距離である吊り下げ長を特定することができる。そして、無人航空機100の対地高度から吊り下げ長を減算することにより、配送物150の地面からの高度を特定することができる。配送物150の接地を検出する場合は、配送物150の地面からの高度がゼロとなったことを検出すればよい。なお、正確には、配送物150の全高を考慮し、吊り下げ長に配送物150の全高を加えた値を対地高度から減算することにより、配送物150の下面の地面からの高度を、配送物150の地面からの高度として使用することができる。また、配送物150の接地は、配送物マーカー162がそれ以上、下降しなくなったことを検出することによっても検出することができる。なお、無人航空機100の対地高度は、飛行位置修正モジュール120m2がカメラ106で取得された目標位置マーカー161の画像部分の画像処理ユニット124による認識結果に基づきを精密に求めることも可能である。
【0053】
図10から12は、無人航空機100による配送物解放処理(高度検出型)におけるテザー伸長時に目標位置の上方に吊り下げられた状態で下降させられている配送物のカメラ106から撮影したイメージである。それらの図は、画像処理ユニット124から画像認識結果を重畳して出力された画像イメージであり、特定のパターンとして認識された画像部分にそれを囲む四角形が追加され、また、特定の物体の中心部と判断された位置に+を○で囲んだマークが追加されている。図10から12においては、目標位置を中心として目標位置マーカー161を構成する複数の二次元コードがその目標位置の周りに配置されており、その中心からやや近傍に、配送物マーカー162が上面に付された配送物150が吊り下げられていることが示されている。図10などに示された目標位置マーカー161は、目標位置の周りを覆うように複数の二次元コードを配置したパターンであるが、目標位置の特定の相対位置に1個から数個の二次元コードを配置したパターンを使用することも可能である。図10などに示された配送物マーカー162は、2個の二次元コードを並べて配置したパターンであるが、1個あるいは3個以上の二次元コードを配置したパターンを使用することも可能である。図10では、配送物150は目標位置よりやや高い高度にあり、また、配送物150は目標位置より図で上側にずれた位置にある。図11では、図10の場合より配送物150が低い高度にあり、また、配送物150の目標位置からのずれも小さくなっている。図12では、図11の場合より配送物150がさらに低い高度にあり、また、配送物150の目標位置からのずれもほぼ消失している。この後、配送物150は接地して解放されることになる。
【0054】
テザー制御モジュール120m3が、テザー伸縮機構111に指示を出してテザー112を伸長させる(ステップS144)。具体的には、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で回転させ、テザー112を繰り出して、配送物150を下降させる。なお、無人航空機100をある程度下降させた後にテザー112を伸長させたり、テザー112をある程度伸長させた後に無人航空機100を下降させたり、無人航空機100を下降させながらテザー112を伸長させたり、無人航空機100のみを下降させることによっても配送物150を下降させることも可能である。テザー制御モジュール120m3は、配送物150の地面からの高度が解放高度以下になったかを判断する(ステップS145)。そして、テザー制御モジュール120m3は、配送物150の地面からの高度が解放高度以下になったと判断すると、テザー112の伸長を停止させるとともに、着脱機構113のロック機構を解放する指示を出す(ステップS146)。無人航空機100を下降させていた場合は、下降を停止させる。これにより、配送物150が目標位置の直上の解放高度で解放されて目標位置に配送されたことになり、配送物解放処理が完了する。なお、テザー制御モジュール120m3は、配送物150が着脱機構113から解放された後に、テザー伸縮機構111のウインチをモータなどの動力で逆方向に回転させ、テザー112をその先端付近の着脱機構113まで巻き取らせてもよい。ステップS145においてテザー制御モジュール120m3は、配送物150の地面からの高度が解放高度以下になっていないと判断すると、ステップS141に戻り、テザー112の伸長を継続させつつ、カメラ106から取得した画像に基づいて、配送物150が解放高度まで下降させられたかどうかを確認するステップを継続する。
【0055】
本発明に係る無人航空機の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、これに種々の変更を加えることができる。上記の実施形態は、配送物150を目標位置に配送する場合のものであったが、これは一例であり、本発明がこの特定の具体例に限定されることを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の無人航空機は、物流、観測などの種々の用途に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 無人航空機
101 制御ユニット
102 モータ
103 ロータ
104 アーム
105 着陸脚
106 カメラ
107 飛行位置センサ
108 アンテナ
111 テザー伸縮機構
112 テザー
113 着脱機構
120 情報処理ユニット
120c 主演算回路
120d1 飛行計画経路データ
120d2 目標位置データ
120d3 目標位置マーカーパターン
120d4 配送物マーカーパターン
120m1 飛行制御モジュール
120m2 飛行位置修正モジュール
120m3 テザー制御モジュール
120p1 飛行制御プログラム
120p2 飛行位置修正プログラム
120p3 テザー制御プログラム
121 通信回路
122 制御信号生成部
123 スピードコントローラ
124 画像処理ユニット
125 インターフェイス
150 配送物
151 フックレセプタクル
161 目標位置マーカー
162 配送物マーカー
図1
図2
図3
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図12