(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】サウンドポストシステム
(51)【国際特許分類】
G10D 3/02 20060101AFI20220719BHJP
G10D 1/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G10D3/02
G10D1/02
(21)【出願番号】P 2020544673
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052758
(87)【国際公開番号】W WO2019162081
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】202018000990.3
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520315763
【氏名又は名称】ディアストラッド イー.ケー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】バルセレイト,ウィリ-ポール
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3210571(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0040310(US,A1)
【文献】独国実用新案第202017105759(DE,U1)
【文献】米国特許第2145237(US,A)
【文献】米国特許第2162595(US,A)
【文献】米国特許第5208408(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウンドポスト(1)及び調整ツール(2)を備えたサウンドポストシステムであって、前記サウンドポストはチューブ(3)を備え、前記チューブ(3)は、一方の端部にヒンジ式に連結された接触要素(5)と、他方の端部に支持要素(12)を伴うねじ機構(10、11)とを有し、前記ねじ機構は、前記チューブ(3)の嵌合ねじ山(10)と、前記支持要素(12)に接続されたねじ山付き構成要素(11)とによって形成され、別のヒンジ式に連結された
接触要素(18)は、前記チューブから離れた前記支持要素(12)の側に配設され、前記ねじ機構(10、11)を作動させることによって、2つの
前記接触要素(5、18)間の距離を変えることができ、ここで前記サウンドポストシステムは、前記支持要素(12)及び前記チューブ(3)の両方が、トルク力を導入するための放射状の穴(13、16)を備え、前記調整ツール(2)が、放射状の穴(13、16)の中に挿入するためのロッド(22)と、前記ロッド(22)に接続されたハンドル(20)とを備えることを特徴とする、サウンドポストシステム。
【請求項2】
前記チューブ(3)は炭素繊維で作られることを特徴とする、請求項1に記載のサウンドポストシステム。
【請求項3】
前記チューブ(3)の前記嵌合ねじ山は、雌ねじであることを特徴とする、請求項1または2に記載のサウンドポストシステム。
【請求項4】
前記雌ねじは、前記チューブに挿入されて固定された、ねじ山付きスリーブ(10)内に形成されることを特徴とする、請求項3に記載のサウンドポストシステム。
【請求項5】
前記チューブの前記嵌合ねじ山は、雄ねじであることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項6】
前記支持要素(12)に接続された前記ねじ山付き構成要素は、ねじ山付きロッド(11)であることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項7】
前記支持要素に接続された前記ねじ山付き構成要素は、ねじ山付きボルトであることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項8】
前記支持要素(12)に接続された前記ねじ山付き構成要素は、ねじ山付きスリーブであることを特徴とする、請求項1、2、または5のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項9】
前記支持要素(12)はディスク形状であることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項10】
前記支持要素(12)はナットであることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項11】
前記ねじ機構(10、11)はロックユニット(14)を備えることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項12】
前記ロックユニットはロックナット(14)であることを特徴とする、請求項11に記載のサウンドポストシステム。
【請求項13】
前記ロックナット(14)は放射状の穴(15)を有することを特徴とする、請求項12に記載のサウンドポストシステム。
【請求項14】
前記チューブ(3)の前記放射状の穴(13)は、少なくとも1対の、共に整合された穴を備えることを特徴とする、請求項1~13のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項15】
前記接触要素(5、18)は、前記チューブ(3)に対してボールベアリングによって支持されることを特徴とする、請求項1~14のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項16】
前記接触要素(5、18)は、交換できるよう配置されることを特徴とする、請求項1~15のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【請求項17】
前記調整ツール(2)の前記ハンドルは、ハンドル(20)及びガイドロッド(21)を備え、前記ハンドル(20)から離れた前記ガイドロッド(21)の端部において、前記ロッド(22)が配置されることを特徴とする、請求項1~16のうちいずれか一項に記載のサウンドポストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンドポスト及び調整ツールを備える、サウンドポストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなサウンドポストシステムは、弦楽器の微調整のために使用される。
【0003】
弦楽器の音は、個々の構成要素の互いに対する形状及びそれらの大きさによって、基本的に決定される。個々の構成要素の各々は、他の全ての構成要素に対して特定の機能を有し、それらは、個々の全ての構成要素と相互作用する。
【0004】
これらの構成要素のうちの1つは、いわゆるサウンドポストである。ヨーロッパ地域で開発された、木製の表板を有する各弦楽器に必須である構成要素としてのサウンドポストは、とりわけ以下の機能によって、弦楽器の構成要素のリストにおいて特に重要な位置付けである。
【0005】
サウンドポストは、表板の長手方向の振動を支持する。この振動は、弦の横断方向の振動(ホイップラッシュ効果)によって刺激され、非対称の作用ブリッジによって、このブリッジの後ろの特定の距離において、(テールピースに向けて)伝達される。サウンドポストの長さまたは位置のいかなる変化も、たとえそれが小さくても、音に顕著な変化を生じさせる。
【0006】
サウンドプレートの「表板」及び「裏板」の2つの内側が球面状であるため、それらは不規則な円形の断面を形成し、各ポイントにおいて異なる半径及び距離であるために、サウンドポストは、実際には1箇所のみで適合できる直線区間に相当する。
【0007】
無視すると弦楽器の木部に容積変化の影響を与える、湿度条件の変化により、楽器の幾何学的条件も変化する。それは適合の変化をもたらす。なぜならサウンドポストは、その長さに関する変化に耐えることができないからである。
【0008】
サウンドポストのヘッド両端部の、楽器の「表板及び裏板」の内側との決定的な関係は、以下の条件に見合う場合にのみ満たされる。
a)サウンドポストに適合した表板及び裏板が、(「表板」及び「裏板」の内側の)接触領域全体に「隙間なく」、かつ楽器の内側における両端部の全てのポイントで等しい圧力で、自立する。
b)裏板及び表板におけるサウンドポストの選択された箇所は、所望の音色での振動を可能にする。
c)サウンドポストのそれぞれの長さに依拠する、裏板と表板との間のサウンドポストの支持圧は、楽器の所望の応答挙動及び振幅発展をもたらす信号通過速度を可能にする。
【0009】
サウンドポストの半径/直線区間の比率により、箇所の変化の全てについて、上述のポイントa)~c)に従って、新しい長さを決定することが必要である。
【0010】
一旦正しいと思われる箇所が見つかると、その後必要とされる長さの調整は音調変化をもたらし、それは箇所を修正することによる再修正を必要とする。ここで再び、a)の条件を満たさなければならず、それはサウンドポストの長さが無効になることを意味する。
【0011】
この長さが、必要な長さ未満であれば、新たなサウンドポストの生成は避けられない。
【0012】
サウンドの最適化と適合との間の、これらの相互的な条件を満たすことは、一般的に時間がかかる手順であり、その達成は、使用者の専門家的経験に大きく依存する。
【0013】
この理由のため、調整可能なサウンドポスト、及びサウンドポストを再調整可能なサウンドポストシステムが、先行技術において提案されてきた。
【0014】
米国特許第2,145,237号明細書は、誘導した圧縮ばねによってサウンドポストの長さを自動的に調整する調整システムからなる、サウンドポストを開示している。そこでは、表板内部及び裏板内部の不規則な円の半径によって生じたそれぞれの傾きを、各ケースにおいて適合させなければならない。これは、調整せずに1箇所のみで実際の密着をもたらすことができるが、他の考えられる箇所の全てではもたらさない場合がある、という制約である。
【0015】
米国特許第5,208,408号明細書は、好適な材料及びねじ山ピッチを使用して、摩擦を抑制することによってのみ固定が実現される、調整可能なサウンドポストを開示している。この構成要素の極端な振動が、自己調整をもたらす。さらに、「固定する位置」は、全高が常にそれぞれの弦楽器の内側寸法に対応する必要はないことを意味する。したがって、サウンドポストは所定の位置で不変ではない。例えば、より古く、より高さがある楽器よりも数センチメートル異なるサウンドポストの長さを有することが多い、平坦な現代の楽器の異なる高さへの調整は、構成要素全体の交換によってのみ、成功裏に適合させることができる。同じことが、独国特許発明第102014009336号明細書によるサウンドポストに当てはまる。
【0016】
米国特許第878,124号明細書は、サウンドポストが裏板の穴を通して、かつこの穴の縁に装着されたナットを通して外側に導かれる、調和した形態と考えられる、サウンドポストの長さ調整機能を開示している。位置決めねじとして設計されたサウンドポストの端部は、調整可能な方法で、表板と裏板との間の距離を作り出す。したがって、弦楽器に特有の長手方向の伝搬における発振励起は、ブリッジフットを精査するときは可能ではない。さらに、楽器の改造、及び裏板(この場合は表板も)に穴をあけることは、多くの楽器所有者から敬遠される。
【0017】
独国特許発明第202017105759号明細書は、可変位置付けを伴う調整可能サウンドポスト、自動ヘッド端部適合、及び取り付けられた状態における長さ調整を開示している。しかし、プラスチックロッド、プラスチックリング、プラスチックナット、調整スパナ、2つ磁石の、6つの異なる要素は、取り付け及び調整が必要である。
【0018】
取り付け後、構成要素の比較的大きい調整ホイールが、弦楽器の内側に残る。これは、重量の増加をもたらし、音の挙動に影響する。楽器の内側に調整補助器具を残すことは、一般的に望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第2,145,237号明細書
【文献】米国特許第5,208,408号明細書
【文献】独国特許発明第102014009336号明細書
【文献】米国特許第878,124号明細書
【文献】独国特許発明第202017105759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の先行技術の観点において、本発明の目的は、簡単な方法で取り付けることができ、位置を変えることができ、それほど技術的訓練を伴わない人によっても、わずかな技術的努力で調整することができる、サウンドポストシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
技術的解決のため、請求項1の特徴を伴うサウンドポストシステムが提案される。さらなる利点及び特徴は、従属請求項から明白となろう。
【0022】
本発明によると、サウンドポストシステムは、サウンドポスト及び調整ツールを備える。サウンドポストは、チューブを備える。本発明に関する「チューブ」は、中央の穴、もしくは内部にドリル加工した端部のみを伴う、連続チューブまたはバーを意味する。通常、チューブは任意の材料で作ることができる。本発明の有利な提案によると、チューブは炭素繊維から作られるか、または少なくとも部分的に炭素繊維材料を含む。これは、楽器の挙動に好ましい効果を有する信号通過速度及びイナーシャが使用されることを意味する。異なる材料は異なる密度を有し、そのため広範な音の変化を生成できる。
【0023】
さらに、本発明の用語「チューブ」は、必ずしも円筒形の外形を有する必要はない。この設計は、弦楽器の所望の音色及び音の挙動にも適合させることができる。
【0024】
本発明によると、チューブと呼ばれる、サウンドポストの中間構成要素は、一方の端部にヒンジ式で連結された接触要素を有する。この接触要素は、ボールベアリングによってチューブに対して支持され得る。この目的のため、本発明の1つの提案は、ボールベアリングをサウンドポストの端部に装着することである。これは、接着剤によって、接着し、上に置き、ねじ留めする、などによって成され得る。ボールベアリング要素は、チューブから離れるよう方向付けられたボール要素を伴うフランジを有する。本発明の提案によると、接触要素は、ボールを受けるためのボールソケットを有する。ボールソケットは、例えばアンダーカットを有し、それによって接触要素はボールをクリップ留めすることができる。有利には、本発明の1つの提案によると、接触要素は交換可能である。それによって、接触要素は任意の材料から組み立てることができ、任意の表面外形に適合させることができる。さらに、本発明の有利な提案によると、接触要素は、弦楽器の内側の異なる表面に良好に装着できるよう、少なくとも部分的に弾力性のある表面を有することができる。チューブと呼ばれるサウンドポストの他端部において、ねじ機構が配置される。全体的に、本発明に関するねじ機構は、ねじ山付きスピンドルまたはねじ山付きチューブなどの、ねじ山付き構成要素を備えたサブアセンブリであり、移動可能であるが回転させて取り付けられない嵌合ねじ山、すなわちスピンドルナットまたは嵌合チューブと相互作用する。このように、1つの要素の回転運動は、長手方向運動に変換される。
【0025】
ねじ機構の自由端部において、支持要素が提供され、別の接触要素がヒンジ式で連結する。この第2の接触要素には、第1の接触要素と同じことが当てはまる。第2の接触要素は、ボールベアリングによって支持され、異なる材料から構成することができ、弦楽器の内側の任意の接触面に装着されるよう配置することができる。
【0026】
ねじ機構の作動は、2つの接触要素間の距離を変える。
【0027】
本発明によると、このような設計は、特に支持要素及びチューブの両方が放射状の穴を有することを特徴とする。これらは、トルク力を両方の要素に導入する役割をする。システムに属する調整ツールを、調整ツールに属するロッドを一方の手でチューブの放射状の穴に、かつ他方の手で支持要素の放射状の穴に挿入することによって使用する場合、ロッドに接続されたハンドルを介してトルクを加えることができる。このようにして、上記のねじ機構における2つの要素の相対運動が、上記2つの要素が互いから離れるか、または互いに向かう効果を生成することができる。このようにして、サウンドポストは機械的に長さを調整され、楽器の内側の意図される位置で、弦楽器の対向する内面に対する支柱となる。そのとき支柱の強度は、音の挙動に影響する。
【0028】
ねじ機構は、様々な方法で生成され得る。例えば雌ねじを、ねじ山が付いたスリーブを挿入することによって、チューブの一方の端部の内側に形成することができる。代替として、雄ねじを、スリーブを装着することによって、またはいずれの場合もチューブ内にねじ山を直接切削することによって、チューブに設けることができる。
【0029】
雌ねじまたは雄ねじのいずれが形成されるかによって、支持要素に接続される嵌合要素は、例えばねじ山付きロッド、ボルト、またはねじ山付きスリーブとなる。
【0030】
ねじ山のピッチは、各ケースで楽器の技術的態様によって決められる。
【0031】
本発明のさらに有利な提案によると、支持要素はディスク形状、可能であればナットの形状である。これは、ロッドを放射状の穴の中に挿入することによって、支持要素を介してトルクを加えられるよう、回転させずにねじ山が付いた構成要素に接続される。逆トルクは、チューブの放射状の穴の中に挿入された調整ツールのロッドによって、かつ反力を加えることによって生成される。
【0032】
有利には、ねじ機構は、ロックナットの形状である、本発明の有利な提案によるロックナットを備える。本発明の別の有利な提案によると、上記のロックナットも、同じ調整ツールを使用して緩めるかまたは締めることができる、1つまたは複数の放射状の穴を有することができる。
【0033】
対応した良好なトルクまたは逆トルクをチューブに導入するのを可能にするために、本発明は、共通して整合された放射状の穴、すなわち実際的または事実上チューブの長手方向の中央線を横断する貫通穴が作られる。このようにして、非常に繊細なトルクを最適に適用することが可能である。
【0034】
有利には、調整ツールには、ハンドル及びハンドルに装着されたガイドロッドが設けられる。ロッドはガイドロッドの端部に配置され、チューブの放射状の穴及び支持要素の放射状の穴の両方、ならびに必要に応じてロックナットの中に挿入させることができる。有利には、このロッドは、ガイドロッドに対して調整可能とすることができる。
【0035】
先行技術とは対照的に、本明細書で提示する新しい発明は、2本の手で把持する曲がったワイヤのみを必要とし、そのため操作性に関して取り扱いがより容易である。楽器の内側に調整要素を残す必要もない。
【0036】
これは、先行技術及び従来の設計と比較して、大きな利点をもたらす。したがって半日を必要としかねない調整作業は、数分のみに軽減される。表板及び裏板の内側への損傷は、実質的に不可能であり、伝統的な木製サウンドポストまたは穴の場合のように、直線区間の傾きのための損傷はない。使用者は、弦楽器製造者のような特別な専門資格を必要としない。全ての演奏者は、わずかな訓練の後で、実際に彼らの楽器を調整できる。
【0037】
本発明は、決定的な詳細において先行技術とは異なる。エンドピースの材料、またはボールベアリングによって支持された接触要素の材料の選択は、十分な静止摩擦が可能である限り任意のものでよく、可変なものとして構成要素に追加される。異なる材料は、異なる減衰及び信号通過速度をもたらす。その結果は、各ケースで異なる音の構成となる。ボールヘッドは、木製のエンドピースに埋め込まれたアルミニウムボールとは対照的に、本明細書では、サファイアで作られ、炭素繊維のエンドピースに埋め込まれたものとして説明する。両バージョンは、同じ信号伝達速度を有することはできず、完全に異なる音の特性を有する。
【0038】
さらに、2つの調整要素の間における接続部の材料(炭素繊維、木材、金属など)、及び設計(チューブまたはロッド)は、必要に応じて選択することができる。異なる材料は、異なる密度すなわち信号伝達速度、及び異なる慣性モーメントを有する。広範な音の変化は、このように生成することができる。
【0039】
この様々な選択肢は、全ての考えられる弦楽器、及び演奏者の様々な音構想の要求を満たすことを可能にする。
【0040】
加えて、設置及び調整は、非常に実施が容易である。
【0041】
つまり、1回の設定でその結果は恒久的である。
【0042】
上述のように、構成要素を設置及び調整した後、弦楽器の中にその固定部品として時間制限なしに残すのに好適であり、表板及び裏板の損傷を避けるため、従来の方法による木製サウンドポストを適合させる間に、一時的に使用するためのツールとしても好適である。
【0043】
取り付け及び調整ツールは、構成要素に面した端部が曲げられたワイヤから構成され、楽器によって調整された様々なワイヤ厚さ(バイオリン及びビオラには1.5mm、チェロには2mm、ならびにダブルベースには3mm)を有し、かつ木製のハンドルによって他方の端部で終端する。このワイヤは、ガイドロッドによって木製ハンドルに堅固に接続される。
【0044】
チューブは、好ましくは異なる弦楽器によって様々な径で設計される。例えば、バイオリン及びビオラには概ね6mm、チェロには概ね10mm、ダブルベースには概ね18mmである。
【0045】
接触要素には、ボールが支持部(バイオリン及びビオラには4mm径、チェロには5mm径、及びダブルベースには10mm径)にそれぞれ取り付けられる。支持部において、対応するボール穴を有する接触要素(木製または他の材料)のための座部としてのボールが、構成要素の端部を形成する。
【0046】
本発明は、非常に実用的で、簡単に作られ、かつ使用が容易であるサウンドポストシステムを提供する。さらなる利点及び特徴は、添付の図を参照して、以下の説明から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】サウンドポスト及び調整ツールの1つの実施形態の、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に示されるサウンドポスト1の実施形態は、チューブ3を備え、その端部4においてプラグ8が挿入される。このプラグ8が、装着されたボール7を保持する。プラグ8は、チューブの中に押し込まれないよう、例えば取り付けフランジによって寸法が決められる。接触要素5は、ボール6にクリップ留めされるボールソケット7によって、ボール6に装着される。したがって接触要素5は、枢動されて、ほとんど全ての表面位置に適合させることができる。接触要素5は、様々な形状、サイズ、材料などにも交換可能である。
【0049】
チューブ3の他方の端部9では、ねじ山付きスリーブ10が、示された設計例において挿入されている。取り付けフランジのために、ねじ付きスリーブ10もチューブ3に対して移動できない。ねじ山付きロッド11は、ねじ山付きスリーブ10の雌ねじの中にねじ留めされ、その自由端部は支持ディスク12に堅固に接続される。次にこの支持ディスクは、ボールソケット19を伴う接触要素18が装着される、ボール17を支持する。接触要素18は、接触要素5と同じ方法で設計される。これら2つの接触要素5及び18の形状、材料、ならびにサイズが変化するのは言うまでもなく、互いに異なる場合もある。
【0050】
調整目的として、放射状の穴16が支持ディスク12に作られる。次に、支持ディスク12が回され、チューブ3がそれに対して保持されると、回転方向によって、ねじ山付きロッド11は、ねじ山付きスリーブの中にねじ留めされるか、またはねじ山付きスリーブ10から出される。
【0051】
操作目的で、調整ツール2は、好ましくは木製のハンドル20を伴い形成され、このハンドルはガイドロッド21の一方の端部に配置される。ガイドロッド21の自由端部にはロッド22が形成される。ロッド22は、例示の実施形態においては好適な角度が付けられている。ロッド22は、チューブの放射状の穴13及び/または支持ディスクの放射状の穴16の中に挿入可能な径を有する。調整ツール2が、ロッド22がチューブ3の放射状の穴13を通過するよう適用され、第2の調整ツール2が支持ディスク12の放射状の穴16に適用され、かつに対応するトルクが適用される場合に、ねじ山付きロッド11は、チューブ3の回転に対して固定されて配置されたねじ山付きスリーブ10に対して、回転される。このようにして、接触要素5及び18の互いに対する距離は、調整され得る。
【0052】
固定の目的で、やはり放射状の穴15を有するロックナット14が設けられる。ロックナット14は、ねじ山付きロッド11を、チューブ3の端部における自由端部、またはねじ山付きスリーブ10の取り付けフランジに対して塞ぐために、対応する方法で調整後に回転させることができる。
【0053】
取り付け:
上述の説明におけるサウンドポストの取り付けは、非常に容易である。
1)サウンドポストの長さは、内側キャリパー(楽器製造のための一般的ツール)を使用して決められる。代替として、木製サウンドポストは、おおよその長さ決定のために使用することができる。長さは、接触要素5及び18の、互いの外面からの距離である。
2)必要に応じて、チューブ3は長さを切断される。
3)プラグ8が、一方の端部に挿入される。
4)ねじ山付きスリーブ10が、他方の端部に挿入される。
5)ねじ山付きロッド11ならびに接触要素5及び18が装着される。
6)長さが大まかに事前設定される。
7)ハンドル20を有し角度が付けられたロッド22である、取り付けツール2(バイオリン、ビオラ、及びチェロには1.5mm、ダブルベースには3m)が、チューブ3の放射状の穴13に挿入される。
8)重い下部は、揺れを止めることによってサウンドポスト1を取り付け位置に保持する。重い下部は、楽器のf字孔の中に挿入され、床に位置付けられて、表板のアーチの反対方向に引かれる。
【0054】
このように、構成要素の取り付けは完了する。
【0055】
調整:
上述のサウンドポストの調整は、非常に容易であり、かつてないほどの正確性を可能にする。
【0056】
上述の取り付けツール2が使用され、湾曲した楽器のf字孔を通して、ロックナット14の穴15のうちの1つの中に挿入される。同じ設計の第2の調整ツール2を使用して、ロックナット14は、反時計回りに回すことによってチューブ3から離される。
【0057】
これは、ねじ山付きロッド11を自由に回転可能にするので、ツール2を支持ディスク12に存在する放射状の穴16の中に挿入することによって、ねじ山付きロッド11を所望の方向(ねじを延ばすためには左、縮めるためには右)に回すことができる。
【0058】
同時に、チューブ3の放射状の穴13に挿入かつ保持されたロッド22によって、チューブ3は保持される。
【0059】
構成要素の長さの変化は、さらなる回転が実施された穴の数から読み取ることができる:
-6箇所の放射状の穴が存在する。
-ダブルベースの変形のためのねじ山ピッチは、0.75mm/Uである。
-したがって、構成要素の長さの変化は、動かされる各穴で0.125mmである。
【0060】
懸念される場合、内側キャリパーを使用して、各変化の前後に計測することが可能である。
【0061】
当然ながら、この前後の計測は、対応するスライドゲージを使用して外側からも可能である。
【0062】
実際、調整幅は、例えば演奏者が楽器を持って移動するとき、音感によって主に設定される。
【0063】
その後、ロックナット14は再び締められ、それによって調整プロセスは完了する。
【0064】
上述の実施形態は、説明目的のみの役割であり、限定ではない。
【符号の説明】
【0065】
1 サウンドポスト
2 調整ツール
3 チューブ
4 端部
5 接触要素
6 ボール
7 ボールソケット
8 プラグ
9 端部
10 ねじ山付きスリーブ
11 ねじ山付きロッド
12 支持ディスク
13 放射状の穴
14 ロックナット
15 放射状の穴
16 放射状の穴
17 ボール
18 接触要素
19 ボールソケット
20 ハンドル
21 ガイドロッド
22 ロッド