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特許7106166バルーンカテーテルの製造方法及びバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルの製造方法及びバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220719BHJP
   A61J 15/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
A61M25/10 500
A61J15/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021003016
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022013611
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】109122558
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521017929
【氏名又は名称】貝斯美▲徳▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Besmed Health Business Corporation
【住所又は居所原語表記】No. 5, Lane 116, Wu Kong 2nd Rd., Wuku Dist., New Taipei City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】熊 道存
(72)【発明者】
【氏名】陳 冠宏
(72)【発明者】
【氏名】熊 緯
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/240542(WO,A1)
【文献】特開2007-068774(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02673110(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルの製造方法であって、
押出機でシリコーンゴム材料を押し出して、内カテーテルと、前記内カテーテルを周りから覆う外カテーテルと、離型層と、を含むカテーテルを形成すると共に、前記内カテーテルを、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの外壁面に形成されている溝と、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの内部に形成されている中空通路とを有するよう形成し、且つ、前記離型層は、バルーンカテーテルが製造された際には少なくとも一部が除去されているものであって、前記カテーテルの一端部である第1の端部において、前記内カテーテルの前記外壁面と前記外カテーテルの内壁面の間の、前記第1の端部の先端及び前記先端以外の少なくとも一部に環状に配置される第1のステップと、
前記カテーテルの前記離型層が配置された部分における前記外カテーテルの少なくとも先端を含む一部を、前記内カテーテルから分離してから、前記カテーテルの前記第1の端部にある前記外カテーテルの先端が前記内カテーテルの先端より突出するように、少なくとも一部の分離された前記内カテーテルを除去する第2のステップと、
前記内カテーテルの先端より突出する前記外カテーテルの部分を前記内カテーテルの前記中空通路内に折り返してから、バルーンカテーテルの使用中に前記離型層が配置された部分の前記外カテーテルが膨らんだ時に前記中空通路が該膨らんだ外カテーテルの前記先端に近い部分に塞がれないように、前記外カテーテルの折り返された部分の少なくとも一部を前記中空通路の内壁面に気密に接着して、気体を入れて膨らめるバルーン構造を構成する第3のステップと、を含むことを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記第2のステップにおける、少なくとも一部の分離された前記内カテーテルの除去は、前記外カテーテルの少なくとも先端を含む一部を周りへ前記外カテーテルの外壁面にまで折り返してから、該折り返しにより分離されて露出した前記内カテーテルを除去することで実施することを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記第3のステップにおける、前記中空通路内に折り返された前記外カテーテルの前記中空通路の前記内壁面への接着は、接着剤、熱溶接、加圧、超音波またはそれらの組み合わせによるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記内カテーテルの前記中空通路内にある前記内壁面に対して、粗化、熱処理、介在層を加えることまたはそれらの組み合わせを含む表面処理を行うステップを更に含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおける、前記カテーテルのシリコーンゴム材料による押出成形は、前記内カテーテルの直径及び前記外カテーテルの直径が共に前記第1の端部の先端方向へ縮径するように形成することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項6】
内カテーテルと、前記内カテーテルを周りから覆う外カテーテルと、気体を入れて膨らますことができるバルーン構造と、を含むカテーテルを含み、
前記内カテーテルは、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの外壁面に形成されている溝と、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの内部に形成されている中空通路と、を有し、
前記バルーン構造は、前記カテーテルの一端部である第1の端部に構成されているものであって、該第1の端部において、前記内カテーテルの前記外壁面と前記外カテーテルの内壁面との間の、前記第1の端部の先端及び前記先端以外の少なくとも一部は離型層が配置されていて接着されていなくて前記バルーン構造の膨張可能部分になっており、且つ、前記カテーテルの前記第1の端部にある前記外カテーテルの先端が前記内カテーテルの先端より突出していて、前記外カテーテルの先端近くが前記内カテーテルの前記中空通路内に延伸していて、少なくとも一部が前記中空通路内の内壁面と気密に接着されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記内カテーテルの前記中空通路内にある前記内壁面は、粗面に形成されており、該粗面は、凹凸表面または螺旋状表面を含んでいることを特徴とする請求項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記内カテーテル及び前記外カテーテルは、直径が前記第1の端部の先端方向へ縮径するように形成されていることを特徴とする請求項6または請求項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルの製造方法に関し、特に簡単にバルーンカテーテルを製造できる製造方法に関する。また、該製造方法で製造されたバルーンカテーテルにも関する。
【背景技術】
【0002】
医療の過程において、バルーンカテーテルを生物体内に挿入して、生物体内で必要な治療空間を拡大、または支持力を増やすことによって、医療の効率を高めることがある。或は、バルーンカテーテルを介して、食品などの栄養剤または薬物を生物体内に投入して、該生物体に対して栄養補給または治療を行う。
【0003】
図10に示されるように、従来のバルーンカテーテルの製造方法は以下のステップを含む。
【0004】
(1)押出機でシリコーンゴム材料を押し出してカテーテル90を形成するステップ。
【0005】
(2)カテーテル90の一端にあるエリアA内の管壁に、該管壁を貫通する孔91を開けるステップ。
【0006】
(3)エリアAにおけるカテーテル90の外壁面から内壁面にわたる剥離層92を形成するステップ。
【0007】
(4)接着剤でシリコーンゴム材料をカテーテル90のエリアAの位置P1、位置P2、位置P3に接着して、バルーン構造を構成するステップ。
【0008】
他には、例えば特許文献1及び特許文献2に記載のバルーンカテーテルがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-210017号公報
【文献】特開2006-346449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のバルーンカテーテルの製造方法は、孔を開けるステップと3回の接着ステップとを必要とする。従って、バルーンカテーテルの製造ステップが多く、製造時間が長い上、多数の接着ステップにより接着剤の残留量が高すぎて製造コストが高い問題点がある。
【0011】
上記問題点に鑑みて、本発明は、より簡単にバルーンカテーテルを製造するバルーンカテーテルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、バルーンカテーテルの製造方法であって、
押出機でシリコーンゴム材料を押し出して、内カテーテルと、前記内カテーテルを周りから覆う外カテーテルと、離型層と、を含むカテーテルを形成すると共に、前記内カテーテルを、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの外壁面に形成されている溝と、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの内部に形成されている中空通路とを有するよう形成し、且つ、前記離型層は、バルーンカテーテルが製造された際には少なくとも一部が除去されているものであって、前記カテーテルの一端部である第1の端部において、前記内カテーテルの前記外壁面と前記外カテーテルの内壁面の間の、前記第1の端部の先端及び前記先端以外の少なくとも一部に環状に配置されるように形成する第1のステップと、
前記カテーテルの前記離型層が配置された部分における前記外カテーテルの少なくとも先端を含む一部を、前記内カテーテルから分離してから、前記カテーテルの前記第1の端部にある前記外カテーテルの先端が前記内カテーテルの先端より突出するように、少なくとも一部の分離された前記内カテーテルを除去する第2のステップと、
前記内カテーテルの先端より突出する前記外カテーテルの部分を前記内カテーテルの前記中空通路内に折り返してから、バルーンカテーテルの使用中に前記離型層が配置された部分の前記外カテーテルが膨らんだ時に前記中空通路が該膨らんだ外カテーテルの前記先端に近い部分に塞がれないように、前記外カテーテルの折り返された部分の少なくとも一部を前記中空通路の内壁面に気密に接着して、気体を入れて膨らめるバルーン構造を構成する第3のステップと、を含むことを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、内カテーテルと、前記内カテーテルを周りから覆う外カテーテルと、気体を入れて膨らますことができるバルーン構造と、を含むカテーテルを含み、
前記内カテーテルは、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの外壁面に形成されている溝と、前記内カテーテルの延伸方向に沿って前記内カテーテルの一端から他端まで延伸するように前記内カテーテルの内部に形成されている中空通路と、を有し、
前記バルーン構造は、前記カテーテルの一端部である第1の端部に構成されているものであって、該第1の端部において、前記内カテーテルの前記外壁面と前記外カテーテルの内壁面との少なくとも一部が接着されていなくて前記バルーン構造の膨張可能部分になっており、且つ、前記外カテーテルの先端近くが前記内カテーテルの前記中空通路内に延伸していて、少なくとも一部が前記中空通路内の内壁面と気密に接着されていることを特徴とするバルーンカテーテルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、内カテーテルを周りから覆う外カテーテルを形成し、内カテーテルの外壁面に溝を形成することにより、内カテーテルに孔を開けるステップが不要となり、また、外カテーテルと内カテーテルとの接着が1回でよいので、バルーンカテーテルの製造ステップが少なくなり、バルーンカテーテルの製造時間が短縮されるので、バルーンカテーテルの製造加工コストを減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第1の実施例を示すフロー図である。
図2】上記の製造方法の第1のステップS1で形成されたカテーテルを示す断面図である。
図3】上記の製造方法の第1のステップS1で形成されたカテーテルを示す他の断面図である。
図4】上記の製造方法の第2のステップS2を経たカテーテルを示す断面図である。
図5A】上記の製造方法の第3のステップS3を経たカテーテルを示す断面図である。
図5B】上記の製造方法の第3のステップS3を経た他のカテーテルを示す断面図である。
図6】上記の製造方法で形成されたバルーンカテーテルを示す部分斜視図である。
図7A】上記の製造方法で形成されたバルーンカテーテルの膨らんだ状態を示す断面図である。
図7B】上記の製造方法で製造された他のバルーンカテーテルの膨らんだ状態を示す断面図である。
図8】本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第2の実施例で製造されたバルーンカテーテルを示す断面図である。
図9】本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第3の実施例で製造されたバルーンカテーテルを示す断面図である。
図10】従来のバルーンカテーテルの製造方法で製造されたバルーンカテーテルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のバルーンカテーテルは、尿道カテーテル、血尿カテーテル、気管内チューブ、胃瘻造設カテーテル(gastrostomy catheter)、腎盂形成、腎瘻造設カテーテル(nephrostomy catheter)、卵管整形(卵管形成術(falloposcopic tuboplasy、FT))などの生物体内専用カテーテルとして適用できる。
【0017】
本発明のバルーンカテーテルの本体は、内カテーテルと外カテーテルを有するものである。該内カテーテルは、中空通路を画成しながら、該内カテーテルのカテーテル壁に溝が形成されている。該外カテーテルは該内カテーテルを周りから覆っている。
【0018】
該外カテーテルと該内カテーテルとは、それらの間に離型層が配置されている部分があり、該部分に対応して部分的に該外カテーテルと該内カテーテルとが分離している一方、他の部分の該外カテーテルと該内カテーテルとが接着されている。離型層は、製造の過程において除去されるものであり、例えば外部に連通する通路(溝)から揮発(気化)されるが、揮発の程度(一部または全部)は、離型層の種類により異なる。
【0019】
離型層として、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ポリビニル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、シリコ-ン油やシリコーンゴムといったシリコーン材料、フッ素、フルオロプラスチック(fluoroethylene plastic)、炭化水素、アルコール、カルボン酸及カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、ケトン、アミド(amide)またはハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0020】
本発明のバルーンカテーテルは、人体に挿入または人体から抜出する際に、患者の痛みや傷を軽減できる。そして、一体的に成形する方法で製造することにより、体内の廃液の堆積(例えば、尿路結石)を効果的に防止できる。一体的に成形したバルーン構成及び短くなったドレナージ通路により、体内(例えば、膀胱)の廃液を効果的に排出できる。また、栄養剤の輸送システム(例えば、胃瘻造設カテーテル)に好適である。人体に深く挿入する場合、バルーン構成を有する一端を、組織と出入り口との間に留置できて、内固定板の全ての機能を発揮する。
【0021】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、内カテーテルを周りから覆う外カテーテルを形成し、内カテーテルの外壁面に溝を形成することにより、バルーンカテーテルの製造ステップが少なくなり、バルーンカテーテルの製造時間が短縮されるので、バルーンカテーテルの製造加工コストを減少できる。
【0022】
更に、バルーンカテーテルの製造ステップが少なくなることにより、大量製造の際に、製造ステップの多さによる製造ミスの増加、成形品の収縮率の増加、成形品の精度の低下を防止できて、医療従事者の使用上の不便や、患者の健康に対する危害などを防止できる。
【0023】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法によるバルーンカテーテルは、医療従事者の操作及び医療行為の効率を向上できる。
【0024】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の特定の具体実施形態において、図1図5に示されるように、以下のステップを含む。
【0025】
第1のステップS1では、押出機でシリコーンゴム材料を押し出して、内カテーテル11と、内カテーテル11を周りから覆う外カテーテル12と、離型層13と、を含むカテーテル10を形成すると共に、内カテーテル11を、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の外壁面に形成されている溝111と、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の内部に形成されている中空通路112とを有する。離型層13は、カテーテル10の一端部である第1の端部において、内カテーテル11の前記外壁面と外カテーテル12の内壁面の間の、第1の端部の先端及び前記先端以外の少なくとも一部に環状に配置されるように形成する。なお、離型層は、バルーンカテーテルの製造中に少なくとも一部が揮発されるものである。
【0026】
第2のステップS2では、カテーテル10の離型層13が配置された部分における外カテーテル12の少なくとも先端を含む一部を、内カテーテル11から分離してから、カテーテル10の前記第1の端部にある外カテーテル12の先端が内カテーテル11の先端より突出するように、少なくとも一部の分離された内カテーテル11を除去する。
【0027】
第3のステップS3では、内カテーテル11の先端より突出する外カテーテル12の部分を内カテーテル11の中空通路112内に折り返してから、バルーンカテーテルの使用中に離型層13が配置された部分の外カテーテル12が膨らんだ時に中空通路112が該膨らんだ外カテーテルの前記先端に近い部分に塞がれないように、外カテーテル12の折り返された部分の少なくとも一部を中空通路112の内壁面に気密に接着する。これにより気体を入れて膨らますことができるバルーン構造を構成する。
【0028】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の特定の具体実施形態において、第2のステップS2における、少なくとも一部の分離された内カテーテル11の除去は、カテーテル10の前記第1の端部における前記外カテーテルの少なくとも先端を含む一部を周りへ外カテーテル12の前記外壁面にまで折り返してから、該折り返しにより分離されて露出した内カテーテル11を除去することで実施する。
【0029】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の特定の具体実施形態において、中空通路112に離隔構造を形成するステップが更にある。該離隔構造は、内カテーテル11の延伸方向に沿って延伸するように内カテーテル11の内壁面に構成、連接されて、内カテーテル11内の空間を離隔して、使用上、分流の効果がある。
【0030】
特定の具体実施形態において、前記離隔構造として、シート状構造、三角錐構造、多角形構造、ヘリンボーン構造(herringbone)、H字形構造、十字形構造及び上記の構造の組み合わせを含む。
【0031】
特定の具体実施形態において、前記離隔構造の第1の端部における先端は、内カテーテル11の先端より引っ込んでおり、且つ、前記離隔構造の延伸方向に沿う長さは、内カテーテル11の延伸方向に沿う長さより短くなっている。
【0032】
特定の具体実施形態において、第3のステップS3における、中空通路112内に折り返された外カテーテル12の中空通路112の内壁面への接着は、接着剤、熱溶接、加圧、超音波またはそれらの組み合わせによるものである。
【0033】
特定の具体実施形態において、中空通路112内に折り返された外カテーテル12を中空通路112の前記内壁面へ接着する前に、内カテーテル11の中空通路112内にある前記内壁面に対して、粗化、熱処理、介在層を加えることまたはそれらの組み合わせを含む表面処理を行うステップを更に含む。
【0034】
特定の具体実施形態において、中空通路112内に折り返された外カテーテル12を中空通路112の前記内壁面へ接着する前に、内カテーテル11の中空通路112内にある前記内壁面に対して、表面処理として粗化を行うステップを更に含む。該粗化は、内カテーテル11の中空通路112内にある前記内壁面を、凹凸表面または螺旋状表面または他の面積を増加するための面を含む粗面に形成することである。
【0035】
特定の具体実施形態において、前記粗面とする凹凸表面は、一次凹凸表面と、該一次凹凸表面の少なくとも一部に形成されている微細な二次凹凸表面とにより構成される。
【0036】
特定の具体実施形態において、図6に示されるように、更に分岐チューブ20を前記第1の端部(バルーンが構成されている端部)の反対端部に設置するステップを含む。該分岐チューブ20は、内カテーテル11の溝111に連通する送気チューブ21と、内カテーテル11の中空通路112に連通し且つ送気チューブ21と連通しないフィードチューブ22とを備える。
【0037】
特定の具体実施形態において、第1のステップS1における、カテーテル10のシリコーンゴム材料による押出成形は、内カテーテル11の直径及び外カテーテル12の直径が変化しないように形成する。
【0038】
特定の具体実施形態において、第1のステップS1における、カテーテル10のシリコーンゴム材料による押出成形は、内カテーテル11の直径及び外カテーテル12の直径が共に前記第1の端部の先端方向へ縮径するように形成する。
【0039】
特定の具体実施形態において、第1のステップS1における、カテーテル10のシリコーンゴム材料による押出成形は、内カテーテル11の直径及び外カテーテル12の直径が共に前記第1の端部の先端方向へ拡大するように形成する。
【0040】
特定の具体実施形態において、第1のステップS1において、内カテーテル11の溝111にレントゲン造影材料を配置してレントゲン造影部を形成することを更に含む。
【0041】
本発明のバルーンカテーテルは、図2図5に示されるように、上記のバルーンカテーテルの製造方法により製造されたものであって、内カテーテル11と、内カテーテル11を周りから覆う外カテーテル12と、気体を入れて膨らますことができるバルーン構造と、を含むカテーテル10を含む。
【0042】
内カテーテル11は、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の外壁面に形成されている溝111と、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の内部に形成されている中空通路112と、を有する。
【0043】
前記バルーン構造は、カテーテル10の一端部である第1の端部に構成されているものであって、該第1の端部において、内カテーテル11の外壁面と外カテーテル12の内壁面との少なくとも一部が接着されていなくて前記バルーン構造の膨張可能部分になっており、且つ、外カテーテル12の先端近くが内カテーテル11の中空通路112内に延伸していて、少なくとも一部が中空通路112内の内壁面と気密に接着されている。
【0044】
特定の具体実施形態において、図6に示されるように、分岐チューブ20を更に含む。該分岐チューブ20は、内カテーテル11の溝111に連通する送気チューブ21と、内カテーテル11の中空通路112に連通し且つ送気チューブ21と連通しない少なくとも1つのフィードチューブ22とを備える。
【0045】
特定の具体実施形態において、内カテーテル11及び外カテーテル12は、直径が変化しないように形成されている。
【0046】
特定の具体実施形態において、内カテーテル11及び外カテーテル12は、直径が前記第1の端部の先端方向へ縮径するように形成されている。それにより、前記第1の端部の先端に丸くされた端部を設置しなくても、バルーンカテーテルを患者に挿入または人体から抜出する際に、患者の痛みや傷を軽減でき、なお且つ製造過程がより簡単になる。
【0047】
特定の具体実施形態において、内カテーテル11及び外カテーテル12は、直径が前記第1の端部の先端方向へ拡大するように形成されている。それにより、内カテーテル11の先端より突出する外カテーテル12の部分を内カテーテル11の中空通路112内に折り返して、中空通路112の内壁面に接着する際に、内径の増加により外カテーテル12の折り返した部分のしわが減少し、一般的な容易な接着方法でより優れた接着効果を得られる。
【0048】
特定の具体実施形態において、内カテーテル11の中空通路112内にある前記内壁面は、粗面に形成されており、該粗面は、凹凸表面または螺旋状表面を含んでいる。
【0049】
特定の具体実施形態において、内カテーテル11の溝111にレントゲン造影材料を配置しているレントゲン造影部を更に含む。レントゲン造影部の設置により、使用者がレントゲンでバルーンカテーテルの位置を確認でき、医療の効率が向上する。
【0050】
以下、図面を参照しながら、本発明のバルーンカテーテルの製造方法の各実施例について詳しく説明する。
【0051】
本発明をより詳細に説明する前に、適切と考えられる場合において、同一の符号は、同様の特性を有し得る対応する要素を示すために各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい。また、添付図面のデータは概要を説明するものであり、実物のスケールに対応していない場合がある。
【0052】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第1の実施例は、図1に示されるように、以下のステップを含む。
【0053】
第1のステップS1:図2及び図3に示されるように、押出機でシリコーンゴム材料を押し出して、内カテーテル11と、内カテーテル11を周りから覆う外カテーテル12と、離型層13と、を含むカテーテル10を形成する。内カテーテル11は、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の外壁面に形成されている溝111と、内カテーテル11の延伸方向に沿って内カテーテル11の一端から他端まで延伸するように内カテーテル11の内部に形成されている中空通路112とを有する。離型層13は、カテーテル10の一端部である第1の端部において、内カテーテル11の前記外壁面と外カテーテル12の内壁面の間の、前記第1の端部の先端及び前記先端以外の少なくとも一部に環状に配置されるように形成する。
【0054】
また、溝111と中空通路112とは互いに平行し連通しない。外カテーテル12と内カテーテル11とは、同じ長さを有する。離型層13は、第1の端部がある区域Bの中に配置され、第1のステップS1にて揮発する。
【0055】
第2のステップS2:図4に示されるように、カテーテル10の区域Bの中の離型層13が配置された部分における外カテーテル12の少なくとも先端を含む一部を、内カテーテル11から分離してから、カテーテル10の前記第1の端部にある外カテーテル12の先端が内カテーテル11の先端より突出するように、少なくとも一部の分離された内カテーテル11を除去する。
【0056】
即ち内カテーテル11が除去される区域である区域Cの分、カテーテル10は、外カテーテル12が内カテーテル11より長い。
【0057】
この実施例において、第2のステップS2における、少なくとも一部の分離された内カテーテル11の除去は、外カテーテル12の少なくとも先端を含む一部を周りへ外カテーテル12の前記外壁面にまで折り返してから、このように外カテーテル12の上記一部をめくり返すことにより分離されて露出した内カテーテル11を除去することで実施する。
【0058】
第3のステップS3:図4図5A図5Bに示されるように、内カテーテル11の先端より突出する区域Cにある外カテーテル12の部分を内カテーテル11の中空通路112内に折り返してから、使用中、離型層13が配置されていた部分の外カテーテル12が膨らんだ時に中空通路112が該膨らんだ外カテーテルの前記先端に近い部分に塞がれないように外カテーテル12の折り返された部分の少なくとも一部を中空通路112の内壁面に気密に接着して、気体を入れて膨らますことができるバルーン構造を構成する。
【0059】
該接着は、接着剤、熱溶接、加圧、超音波またはそれらの組み合わせによるものである。
【0060】
この実施例において、図5A図5Bに示される位置P4で外カテーテル12を中空通路112の内壁面に接着する。位置P4は、カテーテル10の先端の近く、中空通路112の少なくとも一部の内壁面にある。
【0061】
図5A図5B図6に示されるように、臨床の使用時には、使用者が前記第1の端部(バルーンが構成されている端部)の反対端部に分岐チューブ20を設置することができる。分岐チューブ20は、内カテーテル11の溝111に連通する送気チューブ21と、内カテーテル11の中空通路112に連通し且つ送気チューブ21と連通しないフィードチューブ22とを備える。
【0062】
図5A図6図7Aに示されるように、医療過程において本発明の第1の実施例の製造方法により製造されたバルーンカテーテルを使用する時に、該バルーンカテーテルの気体を入れて膨らますことができるバルーン構造が構成されている端部を生物体内に挿入し、送気針を分岐チューブ20の送気チューブ21に設置して、該送気針で空気をバルーンカテーテルに送入し、送入された空気が内カテーテル11の溝111を経由して、バルーン構造が構成されたカテーテル10の一端に進入することにより、カテーテル10の区域Dの外カテーテル12が外側へ膨張し、膨らんだバルーン構造30を形成するようになる。
【0063】
膨らんだバルーン構造30により、生物体内において医療に必要な空間を拡張でき、医療の精度及び効率が向上する。フィーダーをフィードチューブ22に設置して、該フィーダーにより食品などの栄養剤または薬物をバルーンカテーテルに送入し、送入された栄養剤または薬物が内カテーテル11の中空通路112を経由して生物体内に注入されることで、該生物体に対して栄養補充または治療を行う。
【0064】
図5B図6図7Bに示されるように、医療過程において本発明の第1の実施例の製造方法により製造された他のバルーンカテーテルを使用する時に、該バルーンカテーテルの気体を入れて膨らますことができるバルーン構造が構成されている端部を生物体内に挿入し、送気針を分岐チューブ20の送気チューブ21に設置して、該送気針で空気をバルーンカテーテルに送入し、送入された空気が内カテーテル11の溝111を経由して、バルーン構造が構成されたカテーテル10の一端に進入することにより、カテーテル10の区域Dの外カテーテル12が外側且つ前記延伸方向の内カテーテル11から離れる方向へ膨張し(即ち、図7Bの下へ膨張する)、膨らんだバルーン構造30を形成する。
【0065】
上記の構成によれば、本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、内カテーテル11を周りから覆う外カテーテル12を形成し、内カテーテル11の外壁面に溝111を形成することにより、内カテーテル11に孔を開けるステップが要らなく、また、外カテーテル12と内カテーテル11との接着が、1回のみでよいので、バルーンカテーテルの製造ステップが少なくなり、バルーンカテーテルの製造時間が短縮されるので、バルーンカテーテルの製造加工コストを減少できる。
【0066】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第2の実施例は、以下の相違点以外、第1の実施例と同じであるので、以下、その相違点のみを説明する。
【0067】
図8に示されるように、第1のステップS1における、カテーテル10Aのシリコーンゴム材料による押出成形は、内カテーテル11Aの直径及び外カテーテル12Aの直径が共に前記第1の端部の先端方向へ縮径するように形成する。
【0068】
本発明の第2の実施例の製造方法により製造されたバルーンカテーテルは、気体を入れて膨らますことができるバルーン構造が構成されている端部が縮径されているので、該製造方法により製造されたバルーンカテーテルは、開口が小さい生物体内にもより簡単に挿入できて、人体に挿入または人体から抜出する際に、患者の痛みや傷を軽減でき、医療の効率が向上する。
【0069】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法の第3の実施例は、以下の相違点以外、第1の実施例と同じであるので、以下、その相違点のみを説明する。
【0070】
図9に示されるように、第1のステップS1において、押出により内カテーテル11Bの溝111Bにレントゲン造影材料を設置してレントゲン造影部14Bを更に形成することにより、第1のステップS1で形成されたバルーンカテーテルは、内カテーテル11Bの溝111Bに設置されているレントゲン造影部14Bを更に含む。レントゲン造影材料として、バリウム系造影材料などが挙げられる。
【0071】
レントゲン造影部14Bの設置により、使用者がレントゲンでバルーンカテーテルの位置を確認でき、医療の効率が向上する。
【0072】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることを理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、医療用のバルーンカテーテルの製造に好適であり、本発明のバルーンカテーテルは、生物体内に挿入する各医療用途に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
10、10A カテーテル
11、11A、11B 内カテーテル
111、111B 溝
112 中空通路
12、12A 外カテーテル
13 離型層
14B レントゲン造影部
20 分岐チューブ
21 送気チューブ
22 フィードチューブ
30 膨らんだバルーン構造
S1 第1のステップ
S2 第2のステップ
S3 第3のステップ
B、C、D 区域
P4 位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10