(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】顔靭帯・顔筋膜リリース機器
(51)【国際特許分類】
A61H 15/00 20060101AFI20220719BHJP
A61N 1/06 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
A61H15/00 390A
A61N1/06
(21)【出願番号】P 2021030528
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2022-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511152049
【氏名又は名称】株式会社ユニッシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】中西 博文
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-73812(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038822(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0082870(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
A61N 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の顔に適用可能な機器であって、
使用者の手を挿入可能な空間からなる挿入部と、当該挿入部の内部に挿入された前記使用者の手の掌を載置可能な載置部を外面に備えた本体部と、
当該本体部の底面に形成された開口部の内部に配され、刺激信号を出力可能なローラーと、
前記開口部の内部に固定して配される、刺激信号を出力可能な導電素子と、
前記本体部に内蔵され、前記開口部と空気的に連通し、当該開口部から外部の空気を吸引するための吸引部と、を備え、
前記開口部の周縁に、土手状の連続した周状突起が当該開口部を取り囲むように形成され
、
前記開口部に配される前記ローラーが、前記開口部より内側に入り込んでいることを特徴とする機器。
【請求項2】
前記ローラーが、前記開口部
から見て0.5~3mm内側に入り込んでいることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記ローラーと前記導電素子は、ローラーカップの内部に取り付けられ、
当該ローラーカップは前記本体部の底面に配設され、
当該底面に形成された前記開口部が、前記ローラーカップの開口部からなり、
前記周状突起が、前記ローラーカップの開口部の周縁からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記刺激信号が、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気的筋肉刺激)及びRF(Radio Frequency:ラジオ周波数)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の機器。
【請求項5】
前記本体部の前記使用者の手が挿入される側が、上嘴部及び下嘴部の間に前記挿入部が形成された、側面視で嘴形状とされ、
前記載置部が前記下嘴部の上面となり、
前記本体部に、前記挿入部と連通し、使用者の指を挿入可能な開口穴からなる指挿入部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の機器。
【請求項6】
前記上嘴部の下面、及び前記下嘴部の上面が、上方を凸にした丸みを帯びた形状とされていることを特徴とする請求項5に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔靭帯・顔筋膜リリース機器に関する。さらに詳しくは、顔のリガメント(顔靱帯)やSMAS筋膜(顔筋膜に相当。)等をリリースするのに役立つ顔靭帯・顔筋膜リリース機器に関する。
【背景技術】
【0002】
美容器、美顔器等の機器(a device)は、頬等の顔面に接触させることにより、顔の肌(皮膚)はもちろんのこと、顔の筋肉等にアプローチし、肌がより美しい状態になるように導くものである。このような機器を使用することにより、エステティックサロンやクリニック等に通って専門のトリートメントやケアを必要とせずとも、自宅で気軽に肌のトリートメント等を行うことができる。
【0003】
また、定期的にエステティックサロン等に通うのは、スケジュール的にも金銭的にも負担になりがちであり、加えて、近年のコロナ禍にあっては、外出することもままならないため、以前にもまして、自宅で美容器、美顔器等の機器を用いた肌のトリートメント等が広く行われるようになっている。
【0004】
セルフトリートメントやセルフケアで用いられる美容器、美顔器等の機器としては、例えば、使用者の顔面などに対して、マッサージ用のローラーや球体を押し付けながら回転させて、使用者の顔面のマッサージを行なうタイプのものが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照。)。
【0005】
このような構成の美容ローラー等の機器は、使用者が把持部を把持した状態で、マッサージローラー部を使用者の顔に押し付けながら回転させ、使用者の顔面のマッサージを行うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-163179号公報
【文献】実用新案登録第3158360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、顔の美容として、リガメントのリリースが有効であることがいわれている。ここで、「リガメント」とは、顔に存在する膜組織のことであり、貝柱のような細い紐(ひも)状の繊維組織から成り立っている、顔靭帯とも呼ばれるものである。
【0008】
かかるリガメント(顔靭帯)は、一般に、耳下腺リガメント、眼窩下リガメント、頬骨リガメント、咬筋リガメント及び下顎リガメントの5種類があるといわれており、顔の肌(皮膚)や表情筋ないし脂肪を骨に繋いで支える役割を備える。このように、リガメントは、顔の肌や脂肪等を支え、落下をくい止め、顔のたるみを抑える重要な組織であると考えられている。
【0009】
リガメントは、加齢やストレス・生活習慣等、様々な要因で劣化し硬く細くなり、それが原因で、顔の肌(皮膚)や脂肪を支えきれなくなる場合がある。リガメントの劣化は、顔の弛みに関係しており、リガメントの劣化により、顔の下半分が弛み、ほうれい線の形成等、老け顔をつくる原因ともいわれている。一方、かかるリガメントをバランスよく鍛え、リリース(ほぐす)ことができれば、顔の肌や筋肉が引き上がり、リフトアップ(フェイスリフトアップ)に繋がり、顔が若返ることや、小顔を造り出す効果を得ることができると考えられる。
【0010】
また、顔の表情筋を覆う1枚の筋膜で、肌(皮膚)を支える土台ともいえるSMAS(Superficial Musculo-Aponeurotic System)筋膜(表在性筋膜:スマス筋膜とも呼ばれる。)は、顔表面の肌や表情筋を骨にしっかりと繋ぎ、脂肪を支えているリガメント(顔靭帯)に直接はたらきかける、顔の筋膜(顔筋膜)と呼ぶことができる筋膜である。一方、かかるSMAS筋膜が衰えると、リガメントが劣化するのと同様に、おでこや目尻、眉間部のシワや頬のたるみが増え、ほうれい線が深くなり、老け顔をつくる原因となっている。
【0011】
顔の肌や表情筋等の張りは、かかるリガメントやSMAS筋膜によって保たれているといっても過言ではない。一方、顔にある筋肉の半分以上は自身で動かすことができないため、通常のマッサージや運動等では、筋肉の奥を動かすアプローチが難しいといわれており、これは、前記した特許文献1等に開示されるローラーのみによるマッサージでも同様であった。
【0012】
これに対して、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気的筋肉刺激)等の電気的な刺激信号により、筋肉に微弱な電流を与えてリガメント等を強制的に動かすことにより顔のトリートメント等を図る機器も検討されている。このようなEMS等の刺激信号を発する機器は、リガメントのリリースやSMAS筋膜の癒着の引き剥がし(SMAS筋膜のリリース。)等に有効であるが、それだけの機能となったり、大型の装置となってしまうことも多く、多機能でコンパクトな構造の機器の提供が望まれていた。
【0013】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、リガメントやSMAS筋膜のリリース等を効率よく実施して顔の美容に役立つとともに、多機能でありながらコンパクトな構造で、使用者が自宅でも使いやすい機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明に係る機器は、
人体の顔に適用可能な機器であって、
使用者の手を挿入可能な空間からなる挿入部と、当該挿入部の内部に挿入された前記使用者の手の掌を載置可能な載置部を外面に備えた本体部と、
当該本体部の底面に形成された開口部の内部に配され、刺激信号を出力可能なローラーと、
前記開口部の内部に固定して配される、刺激信号を出力可能な導電素子と、
前記本体部に内蔵され、前記開口部と空気的に連通し、当該開口部から外部の空気を吸引するための吸引部と、を備え、
前記開口部の周縁に、土手状の連続した周状突起が当該開口部を取り囲むように形成され、
前記開口部に配される前記ローラーが、前記開口部より内側に入り込んでいることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る機器は、前記した本発明において、前記ローラーが、前記開口部から見て0.5~3mm内側に入り込んでいることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る機器は、前記した本発明において、前記ローラーと前記導電素子は、ローラーカップの内部に取り付けられ、当該ローラーカップは前記本体部の底面に配設され、当該底面に形成された前記開口部が、前記ローラーカップの開口部からなり、前記周状突起が、前記ローラーカップの開口部の周縁からなることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る機器は、前記した本発明において、前記刺激信号が、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気的筋肉刺激)及びRF(Radio Frequency:ラジオ周波数)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る機器は、前記した本発明において、前記本体部の前記使用者の手が挿入される側が、上嘴部及び下嘴部の間に前記挿入部が形成された、側面視で嘴形状とされ、前記載置部が前記下嘴部の上面となり、前記本体部に、前記挿入部と連通し、使用者の指を挿入可能な開口穴からなる指挿入部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る機器は、前記した本発明において、前記上嘴部の下面、及び前記下嘴部の上面が、上方を凸にした丸みを帯びた形状とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、本体部に配されるローラーの転動によるマッサージ機能、吸引部による吸引機能及び底面に固定される導電素子やローラーによる刺激信号の出力による刺激機能(刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能)を備え、使用時にこれらの機能全てを組み合わせて実施することができるため、使用者の顔の肌等のリガメントやSMAS筋膜のリリースを効率よく確実に実施することができ、顔のトリートメントやケアといった顔の美容を効率よく実施することができる機器となる。加えて、本発明は使用者の顔の肌の筋膜の癒着を効率よく引き剥がす、いわゆる筋膜リリースや、セルライトの解消等を簡便に実施することができる。
【0021】
また、吸引を行う開口部の周縁に、土手状の連続した周状突起がかかる開口部を取り囲むように形成されているので、吸引部による吸引時に機密性を高めることができ、顔の硬く弛んだ肌を開口部の内部に確実に吸引することが可能となり、対象部位となる顔の肌の保持が適切になされ、前記の効果を効率よく奏させることになる。
【0022】
さらに、前記したように多機能でありながら、本体部が、内部に吸引部、底面に刺激信号を出力可能な固定された導電素子やローラーを配設して一体化したコンパクトな構造であるとともに、使用者の手を挿入可能な空間からなる挿入部と、かかる挿入部の内部に、挿入された使用者の手の掌を載置可能な載置部をその外面に備え、片手で掴んで使用することができ、使用者が自宅でも使いやすい機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る機器の一態様を示した上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明に係る機器の一態様を示した下方から見た斜視図である。
【
図6】操作パネルによる制御の概要を示した説明図である。
【
図8】ローラー、導電素子及びローラーカップを示した分解斜視図である。
【
図10】吸引された空気の経路を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(I)本発明に係る機器1の構成:
以下、図面を用いて、本発明に係る機器1の一態様について説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る機器1の一態様を示した上方から見た斜視図、
図2は、本発明に係る機器1の一態様を示した下方から見た斜視図、
図3は、機器1の側面図、
図4は、機器1の内部構造の概略図、をそれぞれ示す。ここで、本発明における「上方」及び「下方」、「前方」及び「後方」等の方向については、
図1等に矢印とともに載せているとおりである。
【0026】
(機器1の構成、形状等)
本発明に係る機器1は、人体の顔に適用可能な機器1であり、使用者の手Hを挿入可能な空間からなる挿入部21と、当該挿入部21の内部に挿入された使用者の手の掌Pを載置可能な載置部22を外面に備えた本体部2と、当該本体部2の底面23に形成された開口部24の内部に配され、刺激信号を出力可能なローラー3と、前記開口部24の内部に固定して配される、刺激信号を出力可能な導電素子34と、前記本体部2に内蔵され、前記開口部24と空気的に連通し、当該開口部24から外部の空気を吸引するための吸引部(ポンプ)4と、を基本構成として備える。
【0027】
なお、
図3では、機器1を把持する使用者の手Hを点線で示しており、手H及び手の掌Pについてはかかる
図3を参照のこと。また、
図4は、機器1の本体部2に内蔵される部材の一部は図示していない。
【0028】
美容器(美容機器)や美顔器(美顔機器)等として使用可能な本発明の機器1の本体部2は、部品搭載部2c(
図4参照。)に搭載等される、吸引部であるポンプ4等の部品、部材を内蔵し、底面23の開口部24に導電素子34やローラー3等を配している。機器1の本体部2は、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂から構成することができる。
【0029】
本実施形態にあっては、
図1ないし
図4に示すように、本体部上部2aと本体部下部2bが組み合わされて形成される本体部2における使用者の手Hが挿入される側(挿入部21が形成される側のことであり、
図1等では本体部2の後方(
図1の矢印方向参照。以下同じ。)側)が、側面視で嘴(くちばし)形状とされており、使用者の手Hが挿入される側と反対側(
図1等では本体部2の前方(
図1の矢印方向参照。以下同じ。))が底面23から繋がる流線形状とされている態様を示している。
【0030】
嘴形状(Bill Shape)とは、
図1等に示すように、鳥が嘴を開いた状態を指し、嘴の開いた部分が挿入部21となり、後記するように、開いた部分の上方に上嘴部27、下方に下嘴部28が存在する。
【0031】
なお、側面視で嘴形状とは、L字形状で、L字の縦線が斜めとなり、L字の横線と鋭角を形成するような形状と言える。L字の縦線が上嘴部27、L字の横線が下嘴部28、L字の2本の線の空いた部分が挿入部21、にそれぞれ相当する。
【0032】
本体部2の嘴形状は、先端を丸く尖らせた上嘴部27及び下嘴部28が形成されるとともに、これらの上嘴部27及び下嘴部28の間に挿入部21が形成されて構成される。上嘴部27は、本体部2の前方の流線形状と繋がり、本実施形態では、上面27a及び下面27bとも、上方を凸とした丸みを帯びた形状とされ、下嘴部の上面28aは、上方を凸とした丸みのある形状とされるとともに、上嘴部27と下嘴部28との間に形成される挿入部21に使用者の手Hを挿入した場合に、使用者の手の掌Pを載置可能な載置部22とすることができる。
【0033】
本実施形態に係る機器1は、本体部2が、内部にポンプ4を、また、刺激信号を出力可能なローラー3と固定された導電素子34を底面23に配設してコンパクトに一体化した、多種の機能を備えた機器1でありながら、前記した構成により、片手で把持して使用することができる形状とされる。
【0034】
本実施形態では、本体部2の前方側に、挿入部21と連通し、使用者の指Fを挿入可能な1つの開口穴からなる略楕円形状の指挿入部26が形成されている構成を示している。このような構成で、使用者が挿入部21に手Hを挿入し、指挿入部26に指Fを挿入した状態で使用することができる。また、使用者の手Hを挿入した際に、手の甲Bと掌Pと接する部分である上嘴部の下面27bと、載置部22となる下嘴部の上面28aが上方を凸とした丸みを帯びた形状とされているため、挿入される手の甲B及び掌Pがフィットしやすくなる。
【0035】
さらに、
図1ないし
図4に示すように、嘴形状において、側面視で上嘴部27が下嘴部28より短い(本実施形態にあっては、側面視で上嘴部27が下嘴部28の半分程度の長さである態様を示している。)ようにすれば、使用者の手Hの掌Pとともに、手の甲Bがより一層フィットしやすくなるので好ましい。このように、本実施形態に示した本体部2については、使いやすさを考慮した、エルゴノミック(人間工学的)なデザインからなる形状とされている。
【0036】
かかる形状の本体部2により構成される機器1を使用するに際し、使用者は、例えば、開口された挿入部21に手Hを挿入し、掌Pを下嘴部28における載置部22に載せ、かつ、指(例えば、人差し指等。)Fを指挿入部26に挿入して、片手で機器1を把持するようにして、底面23の前方側に開口部24に配されるローラー3を顔の肌等に接触させて使用してもよい。また、手Hで上嘴部27を掴んで使用するようにしてもよい。
【0037】
(操作パネル5)
下嘴部の下面28bには、
図2や後記する
図5に示すように、操作パネル5が配設されている。下嘴部の下面28bに配設されている操作パネル5は、電源の入/切等や、後記するローラー3や導電素子34の刺激機能、及び開口部24を吸引口として、外部の空気を吸引する吸引機能等を操作するものである。
【0038】
図5は、機器1の底面図である。また、
図6は、操作パネル5による制御の概要を示した説明図である。
図5に示す操作パネル5は、
図6に制御の概要を示すように、機器1の本体部2に内蔵される制御部7を介して、図示しない超音波発振回路を設けた電子回路基板(電気回路基板)32(
図4参照。)を含んだ刺激信号発生部33と繋がるローラー3及び固定された導電素子、及びポンプ4と電気的に接続され、これらのモードの選択や出力レベルの操作等を可能とするものである。刺激信号発生部33は、
図6に示すように、EMS信号発生部33EとRF信号発生部33Rを備え、電子回路基板32に接続されている。
【0039】
操作パネル5は、
図5に示すように、操作ボタンとして、電源ボタン51、吸引モードボタン52、EMSモードボタン53、RFモードボタン54、レベル上昇ボタン55、レベル下降ボタン56が、また、ランプとして、レベル表示ランプ57、バッテリーランプ58がそれぞれ形成されている。
【0040】
なお、操作パネル5は、刺激機能(刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能)のモードであるEMSモード及びRFモードを備え、かかるEMSモードを操作するボタンとしてEMSモードボタン53、RFモードを操作するボタンとしてRFモードボタン54が形成されたものを示しており、刺激機能のモードもEMSモード及びRFモードとして説明している。
【0041】
電源ボタン51は、機器1の電源の入/切(オン(ON)/オフ(OFF))、吸引モード及びEMSモード及びRFモードの開始、停止、一時停止等について操作するものである。例えば、電源ボタン51を数秒押圧すると電源が「入」となり、吸引モードボタン52のランプ及びEMSモードボタン53、RFモードボタン54のランプが点滅するようにしてもよい。
【0042】
機器1による操作を一時停止させる場合には、例えば、動作中に電源ボタン51を押圧することにより、吸引モードあるいはEMSモード(RFモード)が使用しているレベルのまま動作が一時停止されるようにしてもよい。また、電源ボタン51を数秒押圧することにより、電源が「切」となるようにしてもよい。
【0043】
また、電源を「入」とした状態で、電源ボタン51を再度押圧することにより、吸引モードの動作を開始することができるが、吸引モードボタン52は、操作状態がEMSモード(EMS機能を操作可能)あるいはRFモード(RF機能を操作可能)の時に押圧することにより、吸引モード(吸引機能を操作可能)に変換されるようにしてもよい。逆に、EMSモードボタン53は、操作状態が吸引モードの時に押圧することにより、EMSモードに変換されるようにしてもよい。同様に、RFモードボタン54は、操作状態が吸引モードの時に押圧することにより、RFモードに変換されるようにしてもよい。
【0044】
なお、EMSモードとRFモードは、同時に適用できるようにしても問題ないが、周波数帯域が異なり、敢えて同時に適用する必要もないため、同時には適用できないようにしてもよい。なお、電気的な刺激信号であるEMS及びRF(RF波)についての詳細は後記する。
【0045】
レベル上昇ボタン55は、操作しているモード(吸引モード、EMSモード、RFモード)の出力を上昇させるものであり、例えば、一度押圧するごとにモードの出力が1段階上昇される。レベル下降ボタン56は、操作しているモード(吸引モード、EMSモード、RFモード)の出力を下降させるものであり、例えば、一度押圧するごとにモードの出力が1段階下降される。
【0046】
レベル表示ランプ57は、前記した操作の状態にあわせて、吸引モード、EMSモード、RFモードのレベルを表示するものであり、
図6には、6段階でレベルが表示されている。また、バッテリーランプ58は、内蔵されるバッテリー(充電池)25(
図4参照。)の残量を表示するものであり、例えば、消灯時はバッテリー残量が30%以上(使用に問題ない。)、点灯時はバッテリー残量が30%未満(そろそろ充電の必要があり。)、点滅時はバッテリー残量が10%未満(すぐに充電の必要があり。)、等のように表示することができる。なお、前記した30%や10%は、任意に決定することができる。
【0047】
機器1の本体部2に内蔵されるバッテリー(充電池)25の充電は、例えば、図示しない充電器の充電用端子を、機器1の外部に配設された差込口29に接続することにより、簡便に実施することができる。なお、差込口29は、充電器の形状に対応して、機器1の任意の位置(例えば、本体部2の前方側等。)に形成してもよい。
【0048】
(ローラー3、導電素子34)
図7はローラーカップ6を示した斜視図、
図8は、ローラー3、導電素子34及びローラーカップ6を示した分解斜視図、
図9は、ローラー3を示した斜視図である。本実施形態の機器1にあっては、ローラー3と導電素子34を一体としてはじめて、顔の皮膚を吸引し、挟み込んだ状態で、EMSまたはRFといった信号を出力させることができる。
【0049】
前記した
図5にも示すように、機器1の本体部2の底面23には、開口部24が形成されている。開口部24は、本実施形態にあっては、短辺を外側に向かって膨らむ曲線とした略矩形状とし、また、
図5等に示すように、開口部24には、
図7に示したローラーカップ6が取り付けられ、ローラーカップ6の開口部62がそのまま機器1(本体部2)の開口部24となる。ローラーカップの開口部62(開口部24)は、内部に形成された図示しない吸引穴と繋がるカップ吸引経路63と、後記する吸引部(ポンプ)4が空気的に連通することにより、開口部62,24は吸引部(ポンプ)4と空気的に連通し、かかる吸引部4は、開口部62,24から外部の空気を吸引する。
【0050】
本発明の機器1は、顔に適用可能であることを考慮すると、開口部24,62の面積は、例えば、600~1000mm2とすることが好ましく、750~850mm2とすることが特に好ましい。
【0051】
また、底面23の開口部24(本実施形態にあっては、ローラーカップの開口部62)の周縁には、土手状の連続した周状突起61がかかる開口部24,62を取り囲むように形成されている(開口部62を取り囲む周状の枠(枠部)となる。)。かかる周状突起61が形成されていることにより、吸引部(ポンプ)4による吸引時に機密性を高めることができ、顔の硬く弛んだ肌(皮膚)を開口部24の内部(本実施形態にあってはローラーカップ6の開口部62の内部を指す。)に確実に吸引することが可能となり、美容対象部位となる顔の肌の保持が適切になされる。
【0052】
なお、本実施形態にあって、本体部2の底面23には、
図7に示したローラーカップが配設され、ローラーカップ6の開口部62がそのまま機器1(本体部2)の開口部24となるので、かかる周状突起61は、ローラーカップ6の開口部62の周縁が本体部2の底面23に現れることにより形成される。ローラーカップ6の形状は、底面23に配設可能で、内部にローラー3や導電素子34を取り付けられる形状であれば特に制限はなく、例えば、開口(ローラーカップ6の開口部62に対応する。)を有した有底の筒形状、碗形状等の任意の形状とすることができる。
【0053】
かかる周状突起61の高さは、機器1のサイズ等により適宜決定すればよいが、機器1の底面23から見て概ね1~6mmであることが好ましい。周状突起61の高さがかかる範囲であれば、機密性を確実に保持することができる。周状突起61の高さは、機器1の底面23から見て2~4mmであることが特に好ましい。なお、周状突起61の頂上は顔の肌と接する部分となるため、
図3等に示すように、周状突起61の頂部は、角が丸くされた平面状であることが好ましい。
【0054】
また、ローラーカップ6の開口部62の内部には、2つのローラー3、及び2つの導電素子34が配設されている。ローラーカップ6の内部に配設されるローラー3は、開口部62(開口部24と共通。)より内側に入り込んでいることが好ましい。
【0055】
吸引部(ポンプ)4による吸引時には、顔の肌を開口部24,62の内部に引き込むことになるが、ローラー3が、開口部24,62より内側(内部)に入り込んでいることにより、開口部24,62の内側に引き込んだ顔の肌を確実に転動することができる。また、逆に、顔の肌をローラーで転動する際に、開口部24,62の内部にかかる顔の肌を引き込みやすくなり、かかる引き込んだ状態で吸引を行うことができる。ローラー3は、開口部24,62(周状突起61の頂部)から見て概ね0.5~3mm内側に入り込んでいることが好ましく、1~2mm内側に入り込んでいることが特に好ましい。
【0056】
このように、本発明の機器1は、開口部24から見て、相対的にローラー3が内側に入り込んだ状態で配設されているため、開口部24,62内部に配設される、ローラー3等の部材が外部に現れることもない。
【0057】
ローラー(回転子)3は、その回転軸31(
図9参照。)が機器1の動作方向(
図1の、前方-後方の矢印方向参照。)と直交するようにして配設されており、本実施形態にあっては、その表面襞状の凹凸面を有する略卵形状(中央部を大径としたした略全体紡錘形状)の部材からなる態様を示している。
【0058】
ローラー3は、開口部24の内部に、機器1の動作方向に対して直交するように支架された回転軸31を中心にして回転可能に取り付けられ、2つの(一対の)ローラー3が平行に並んだ状態で支持されている。開口部24,62の内部に配されるローラー3は、
図7~
図9にも示すように、回転軸31を、ワッシャー31wを介して取付台3s(
図8を参照。)に、回転軸31を中心に回転可能に取り付けられる。また、取付台3sは、介在部材3k(
図8を参照。)を介して、ローラーカップ6に取り付けられることになる。ローラー3の数は、1つ以上とすればよいが、2つ以上とすることが好ましい。2つ以上とする場合のローラー3の間隔は、特に制限はないが、16~30mmとすることが好ましい。
【0059】
回転軸31に回転自在(転動自在)に支持されたローラー3は、使用者の手Hが本体部2を把持して、ローラー3が配設される底面23を使用者の肌等に押し付けることにより、かかる肌等にローラー3の外周部が身体に押し当てられる。また、前記した機器1の動作方向に動かすことにより、ローラー3が回転、転動することにより、顔の肌等をマッサージすることができ、リガメントのリリース等に役立つ。また、ローラー3の転動によって顔の肌等を引き上げることができるので、吸引機能によるセルライト等の解消がされやすくなる。
【0060】
なお、本発明の機器1は、顔の肌(皮膚)のリガメントやSMAS筋膜(顔筋膜に相当。)のリリースに有効であるとともに、いわゆる筋膜リリースやセルライトの解消等にも役立つものである。以下、これらの効果をまとめて、「リガメントのリリース等」とする場合もある。
【0061】
導電素子34は、本実施形態にあっては、前記したローラー3を、回転軸31に対して直交する面で切断し、さらに、回転軸31を通過する面で切断した形状とされている。導電素子34は、本実施形態にあっては、2つ並んだローラー3に対して、ローラー3の間の左右に位置するように、介在部材34kを介して、ローラーカップ6の内部の支台34dの上に固定して取り付けられて(嵌め込まれて)いる。
【0062】
開口部24,62の内部に固定して配されるかかる導電素子34は電極となり、刺激信号を発生することにより、刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能(単に「刺激機能」として示しているところもある。)によりリガメントのリリース等に有効となる。導電素子34の数は、1つ以上とすればよいが、2つ以上とすることが好ましい。
【0063】
刺激機能の代表例として、例えば、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気的筋肉刺激)機能やRF(Radio Frequency:ラジオ周波数)(RF波とも呼ばれる。)による機能が知られており、本発明による刺激信号は、EMSまたはRFによる機能から選択することが好ましい。また、刺激機能は、リガメントのリリース等に有効な吸引機能と併用することが好ましい。なお、本発明では、「EMS機能」と呼ぶところも、単に「EMS」としている箇所もあり、また、「RF波」や「RF(波)による機能」と呼ぶところも、単に「RF」としている箇所もある。
【0064】
また、導電素子34と同様、開口部24に配設されるローラー3は電極となり、刺激信号を発生することが可能であり、刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激を行うことができる。本発明は、ローラー3と導電素子34といった2種類の電極(素子)が刺激信号を発することができるため、電気刺激信号を効率よく印加し、かかる電気刺激信号に対応した美容効果を期待することができる。
【0065】
かかるEMS機能やRF機能は、人間に電気を流し、細胞や筋肉を刺激するものであり、機器1にあっては、ローラー3や導電素子34が肌等と接触することにより、接触する肌等に刺激信号(低周波ないし高周波の刺激信号)が印加され、ローラー3や導電素子34により同時にEMSやRFで刺激を与えることで、吸引機能と併用することによるリガメントのリリース等を効率よく実施することができる。
【0066】
機器1は、ローラー3について、転動によるマッサージ機能だけでなく、それを電極にして刺激信号を発生する刺激機能を発揮する媒体として用いている。そして、かかるマッサージ機能及び刺激機能と、リガメントのリリース等に有効な、吸引部(ポンプ)4を用いた吸引機能とを組み合わせて実施することができる点で、リガメントのリリース等という効果を相乗的に発揮することができる。
【0067】
刺激信号は、刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能を効率よく発揮するためには、低周波ないし高周波の電気的な刺激信号(低周波パルス、中周波パルス、高周波パルス等。)を印加するものであり、例えば、電気的な刺激信号として、EMS信号(EMS)を用いる場合は、低周波(例えば、1~1000Hz等。)、中周波(例えば、1000~2000Hz等。)や高周波(例えば、3000Hz以上とされ、3000~50000Hz等。)の周波数域から刺激信号を選択して使用すればよいと考えられる。
【0068】
特に、電気的な刺激信号として、RF信号(RF波)を用いる場合には、例えば、高周波(例えば、10000~1000000Hz等。)等の周波数域から刺激信号を選択して使用すればよいと考えられる。
【0069】
一般に、周波数が高いほど顔の肌等の深い場所に刺激を与えることができ、例えば、低周波では顔の肌(皮膚)下数mm(ミリメートル)、中周波では数cmとなる。また、高周波では10cm以上の深さで、いわゆるインナーマッスルに到達する刺激を与えることができる。以上より、顔の肌等のどのくらいの深さに刺激を与えるかを考慮して、電気的な刺激信号の種類や周波数の範囲を決定するようにしてもよい。
【0070】
導電素子34やローラー3が電気的に接続される刺激信号発生部33は、
図6に示すように、図示しない超音波発振回路を設け、EMS信号発生部32E及びRF信号発生部32Rを備えた電子回路基板32を含み、制御部7を介した操作パネル5からの操作により、出力レベルの調整も含め、超音波発振回路からの信号をもとに、導電素子34やローラー3を発生源として刺激信号を印加させることができる。
【0071】
なお、刺激信号の波形は、EMSについても、RFについても、リガメントやSMAS筋膜のリリース等に役立つための、美容に適する種々の波形を適用することができ、いわゆるドレナージュモード等を使用するようにしてもよいが、特に制限はなく、従来公知の波形を用いるようにすればよい。なお、単一の波の2つ、あるいはそれ以上を複合して形成された干渉波を用いて、より大きな刺激を与えるようにしてもよい。
【0072】
リガメントのリリース等については、好ましくは吸引機能と併用することにより、EMSとRFの両方が有効に作用するが、特にRFが有効であると考えられる。RFは、1MHz程度のラジオ波(高周波)により、肌深部で熱を発生させ、温熱作用でたるんだ肌のコラーゲン線維を熱収縮させ、肌を引締めることで、ハリを出させることができる。また、吸引部(ポンプ)4の吸引機能と組み合わせることで、肌の深部を温めながら揉みほぐし、新陳代謝を高めることができる。
【0073】
EMSは、例えば、自分の意思で動く表情筋(白筋)と、鍛えにくい深層筋(赤筋)に直接電気的刺激を与えることができ、顔の筋肉を鍛えることができる。吸引機能やRF波の機能(例えば、EMSとRFで交互に刺激する等。)と組み合わせることで、筋膜を緩めてシワなどを改善し、またフェイスラインを引き締めることができる。
【0074】
導電素子34やローラー3は刺激信号を発生し、顔の肌等に印加可能なように、導電性材料を用いて構成されることが好ましい。導電性材料としては。例えば、ステンレス(SUS)、銀、白金、アルミニウム、ジュラルミン、銅、あるいはこれらの材料にクロムメッキ等のメッキ加工を施したもの等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0075】
(吸引機能)
一方、本発明に係る機器1が有する吸引機能は、ローラー3及び導電素子34が配設されている開口部24を吸引口として、かかる開口部24と空気的に連通し、本体部2に内蔵される吸引部であるポンプ4が稼働して外部の空気を吸引することにより実施される。また、ポンプ4は、制御部7(
図6を参照。)を介した操作パネル5からの操作により、出力レベルも含めた吸引動作が調整される。
【0076】
図10は、吸引された空気の経路を示した説明図である。
図10について、「IN」は空気の吸引を示す。本体部2に内蔵されるポンプ4は、本体部下部2bに組み合わされる、部品搭載部2cに搭載されて、本体部2の内部に固定される。なお、
図10にあっては、本体部上部2aは載せていない。
【0077】
チューブt1は、ローラーカップ6の図示しない吸引穴と繋がるカップ吸引経路63と接続され、空気的に連通することになる。ポンプ4の能力については、吸引した際に真空状態を好適に維持すべく、最大吐出流量、最大吐出圧力、最大真空到達度等を適宜決定すればよい。
【0078】
ポンプ4には、後記する空気抜きボタン42が、チューブt2,t3を介してポンプ4と空気的に連通するように配設される。また、本体部2(本体部下部2b)には、ドレンタンク44(ドレインタンクとも呼ばれる。)が、取り外し可能に取り付けられることになる。なお、
図10では、ドレンタンク44が、外部に現れる第1部材44aと、内部に隠れる第2部材44bとに分解されて示されている。
【0079】
空気抜きボタン42は、内部に図示しない弁が取り付けられ、空気抜きボタン42を押圧することにより、弁が開放状態とされる。機器1が備える空気抜き機構は、空気抜きボタン42を押圧し、内部の弁を開放状態とすることにより、空気がチューブt2,t3と空気的に連通する図示しない排出穴から抜かれることにより実施される。このように、吸引機能を実施中に肌等を吸引しすぎた場合には、ポンプ4を停止した状態で、空気抜きボタン42を押すことにより、吸引された空気を外部に排出することができる。
【0080】
機器1の本体部2の底面23を肌等に密着させた状態でポンプ4を稼働させると、底面23に形成された吸引口である開口部24(ローラーカップ6の開口部62)の図示しない吸引穴と繋がるカップ吸引経路63を介して、空気と、あらかじめ肌等に塗布された図示しないジェル(ジェルについては後記する。)、肌等の汚れ、老廃物等(ジェル等)が吸引される。吸引された空気とジェル等(以下、単に「空気等」とする場合がある。)は、上方にあるポンプ4方向に移動し、カップ吸引経路63と繋がれる、ポンプ4周辺のチューブt1を介してドレンタンク44に達する。
【0081】
ドレンタンク44は、送り込まれる空気等のうち、不要分(ドレン)であるジェル等を貯留する。ジェル等が取り除かれた空気がドレンタンク44から再度上方に排出され、真空状態が維持される。
【0082】
ポンプ4を停止した状態で、空気抜きボタン42を押圧することにより、空気抜きボタン42の内部にある弁が開放され(真空状態が開放され)、空気抜きボタン42から空気が吸引される。吸引された空気は、空気抜きボタン42と空気的に連通するチューブt2,t3を介して、ローラーカップ6の開口部62に形成された図示しない排出穴から空気が外部に排出されることになる。
【0083】
(II)機器1の使用方法:
本実施形態に係る機器1を使用するには、操作パネル5の操作により、吸引モード及び刺激機能のモードであるEMSモードまたはRFモードの出力レベルを調整した上で、ローラー3が配設されている底面23の前方側を美容対象となる顔の肌等に接触させ、機器1を
図1の矢印方向に沿って前方ないし後方に動かし、開口部24の内部にあるローラー3を、顔の肌等に密着させた状態で回転、転動させる。
【0084】
ポンプ4による吸引及びローラー3の転動により、真空状態となった開口部24の内部に顔の肌等がゆっくり引き上げられる。また、転動するローラー3が引き上げられた肌等を巻き込み、顔の肌の下に存在するリガメントやSMAS筋膜、セルライト等を揉みほぐしていくことになる。
【0085】
さらに、固定された導電素子34やローラー3に印加される、EMSやRFといった刺激信号に基づく刺激機能により、老廃物の排泄を促すことができる。このように、ローラー3によるマッサージとポンプ4による吸引機能により顔の肌の下に存在するリガメントや、コラーゲン線維がからみついた脂肪細胞が揉みほぐされ、SMAS筋膜の癒着を剥がし、脂肪の代謝が上がり、EMSやRFといった刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能により、吸引機能等と併用されることによるリガメントやSMAS筋膜を効率よく適切にリリースする。また、顔における筋膜の癒着の引き剥がし(筋膜リリース)や、セルライトの解消等を導くことができる。
【0086】
なお、機器1の使用の前には、使用者の肌等に潤滑剤等となるジェルを塗布することが好ましい。ジェルの塗布により、機器1のローラー3が肌等の上を滑りやすくなり、赤みや内出血等の発生を防止することができる。また、ジェルにはローラー3ないしローラーカップ6と肌等の気密性を高める効果があり、機器1の吸引機能を補完する。さらに、刺激機能によるEMSやRFといった電気刺激を、ローラーカップ6内に吸引された肌等に導電させる媒質の役割も兼ねることになる。
【0087】
ジェルを構成する成分としては、特に制限はないが、水を溶媒として、例えば、グリセリン、BG(ブチレングリコール)、DPG(ジプロピレングリコール)、カルボマー、キサンタンガム、アルギニン、アルゲエキス、イチョウ葉エキス、ブドウ葉エキス、セイヨウアカマツ球果エキス、アシタバ葉/茎エキス、マテ茶葉エキス、コーヒー種子エキス、PEG-60アーモンド脂肪酸グリセリル、セチルヒドロキシエチルセルロース、メチルパラベン、アラントイン、グリチルリチン酸2K、フェノキシエタノール、水酸化カリウム、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、オトギリソウエキス、アルニカ花エキス、シナノキエキス、ゼニアオイエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージ葉エキス、トウキンセンカ花エキス等の各成分を含有するものを用いるようにしてもよい。
【0088】
(III)本発明の効果:
以上説明した本発明によれば、本体部2に配されるローラー3の転動によるマッサージ機能、吸引部(ポンプ)4による吸引機能及び底面23に固定される導電素子34やローラー3による刺激信号の出力による刺激機能(刺激信号(電気信号)の印加による電気刺激機能)を備え、使用時にこれらの機能全てを組み合わせて実施することができるため、使用者の顔の肌等のリガメントやSMAS筋膜のリリースを効率よく確実に実施することができ、顔のトリートメントやケアといった顔の美容を効率よく実施することができる機器1となる。加えて、本発明は使用者の顔の肌の筋膜の癒着を効率よく引き剥がす、いわゆる筋膜リリースや、セルライトの解消等を簡便に実施することができる。
【0089】
また、吸引を行う開口部24の周縁に、土手状の連続した周状突起61がかかる開口部24を取り囲むように形成されているので、吸引部4による吸引時に機密性を高めることができ、顔の硬く弛んだ肌を開口部24の内部に確実に吸引することが可能となり、対象部位となる顔の肌の保持が適切になされ、前記の効果を効率よく奏させることになる。
【0090】
さらに、前記したように多機能でありながら、本体部2が、内部に吸引部4、底面23に刺激信号を出力可能な固定された導電素子34やローラー3を配設して一体化したコンパクトな構造であるとともに、使用者の手Hを挿入可能な空間からなる挿入部21と、かかる挿入部21の内部に、挿入された使用者の手の掌Pを載置可能な載置部22をその外面に備え、片手で掴んで使用することができ、使用者が自宅でも使いやすい機器1となる。
【0091】
本発明は、従来、指や手を使ったり、マッサージをする部分がローラーのみからなる機器により行っていたマッサージを、効率よくかつ確実に実施することができる機器1である。
【0092】
本発明は、使用の際、ローラーカップ6の内部に、使用者の顔の硬くなって弛んだ肌(皮膚)を吸引して保持しながら、ローラー3によって揉み解していくことで、硬くなったリガメントを徐々にリリースしていくことが可能となる。また、ローラーカップ6の内部に吸引された顔の肌の下に存在するリガメントに、導電素子34やローラー3により同時にEMSやRFで刺激を与えることで、リガメントのリリースやSMAS筋膜の癒着の引き剥がし(SMAS筋膜のリリース)を効率よく実施することができる。
【0093】
本発明は、刺激信号としてEMSだけでなく、ローラーカップ6の内部に吸引した硬く弛んだ肌と筋膜を含んだ肌に、RFを出力(印加)させることが可能となる。顔のマッサージは、リガメントが硬くなった状態では、押すだけで痛い場合があるため、従来のマッサージ方法では続けることが困難であった。これに対して、本発明は、前記したように、ローラーカップ6の内部に肌を吸引しながらローラーで揉みほぐすとともに、EMSやRFといった刺激信号により、硬くなったリガメントが簡便かつ効率よくリリースされ、SMAS筋膜もリリースされることにより、顔のトリートメントやケアを簡便に実施することができる。
【0094】
なお、吸引機能を使用した顔へのトリートメントは、なるべく短時間で効率よく行う必要がある一方、本発明にあっては、固定された導電素子に加えて、ローラー3からもEMSやRFの刺激信号を発することができるため、トリートメントの効率化を可能とし、特に、刺激信号をRFとすれば、熱伝導効果も期待できる。
【0095】
また、本発明の機器1は、顔におけるリガメントやSMAS筋膜のリリースに加えて、(SMAS筋膜以外の)顔における筋膜の癒着を効率よく引き剥がすことができる(筋膜リリース)。いわゆる筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:MPS)にあっては、検査では異常が認められず、痛みを感じる場所と痛みが発生する場所(トリガーポイント)が離れているケースもよくある。また、かかるトリガーポイントの殆どが、筋膜が癒着した部分であると考えられている。
【0096】
MPSの治療方法は、トリガーポイントの癒着を解消するための筋膜リリースにより痛みを除去するものが多い。本発明に係る機器1は、吸引しながらローラー3で揉み解した状態で、EMSやRFといった刺激信号を適用することで、ローラー3による一定の圧力を加えた状態で筋膜を伸張させる処理を行うことができる。その結果、「引きながら剥がす」という理学療法的な取り組みにより、使用者にはソフトな感覚で、痛みを伴わず簡単に顔の筋膜リリースを実施することができ、MPSの原因ともなる癒着した筋膜を、短時間で痛みなく簡単にリリースすることができる。
【0097】
さらに、本発明の機器1は、セルライトの解消にも役立つ。本発明は、使用の際、ローラーカップ6の内部に使用者の顔の皮下脂肪を吸引させながら、使用者の顔の肌の深部のセルライトをローラー3によって揉み解していくことで、絡みついたコラーゲン線維をセルライトから引き離し、圧迫されたリンパ管や血管に隙間を持たせることにより、老廃物の排泄を促進させる等により、サイズダウンを含むセルライトの解消等を図ることができる。
【0098】
また、吸引されたセルライトに、導電素子34やローラー3により電気的な刺激を与えることで、リンパ管や血管の流れ(循環)の改善という相乗効果を高めることが可能となる。
【0099】
セルライトは顔の肌の表面に凹凸を生じさせ、顔の外観にも影響を及ぼすが、本発明によるセルライトの解消により、かかる凹凸を消滅させることができる。なお、セルライトは、一般に、解消には長期間を要する一方、短期間で元に戻る性質であるが、本発明によるセルライトケアでは、前記したようにリンパ管や血管の流れ(循環)も改善するため、セルライトの解消を比較的短期間で実施できるとともに、セルライトの再生を予防できる。
【0100】
(IV)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0101】
前記した実施形態では、ローラー3の形状は、前記したように、略卵形状(中央部を大径した全体紡錘形状)の態様を示しているが、ローラー3の形状としては、これ以外のもの、例えば、円筒状、球状等のものを採用しても問題はない。なお、ローラー3の回転については、前記したように特に駆動体を設けないようにしてもよく、また、図示しない駆動体(モーター等)を本体部2に内蔵する等によって、電動で(電気的に)回転するようにしてもよい。
【0102】
同様に、導電素子34も、前記したローラー3を回転軸31に直交する方向に切断した形状を、さらに、回転軸31を通過する面で切断した形状とした態様を示したが、刺激信号を発することができるものであれば、これ以外の形状としても問題なく、任意の形状を採用することができる。
【0103】
ローラー3及び導電素子34の数は、前記した実施形態ではそれぞれ2つとした例を示して説明したが、ローラー3及び導電素子34の数は2つには限定されず、1つ以上の任意の数とすることができる。
【0104】
前記した実施形態では、ローラーカップ6は、機器1に対して固定されて配設されることを想定して説明したが、ローラーカップ6は、かかる導電素子34及びローラー3を含めて機器1(本体部2)に対して取り外し可能としてもよい。
【0105】
前記した実施形態では、機器1の本体部2の形状として、
図1等に示した形状を例にして説明したが、本体部2は、使用者の手Hを挿入可能な空間からなる挿入部21と、かかる挿入部21の内部に挿入された使用者の手の掌Pを載置可能な載置部22を外面に備えた任意の形状を採用することができる。
【0106】
なお、本発明の機器1は、人体の顔面に適用可能な美容機器(美顔機器)であるが、適用箇所を人体の顔に限定する必要はなく、人体の他の部位等に適用しても問題なく、また、適用する部位や肌の状態の程度の差異等にもよるが、前記した効果を奏することも期待できる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、リガメント(顔靭帯)やSMAS筋膜(顔筋膜)のリリース等を行うことで顔の美容に役立つ機器を提供する手段として美容分野、医療分野、衛生分野等で広く適用可能であり、産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0108】
1 …… 機器
2 …… 本体部
2a …… 本体部上部
2b …… 本体部下部
2c …… 部品搭載部
21 …… 挿入部
22 …… 載置部
23 …… 底面
24 …… 開口部
25 …… バッテリー(充電池)
26 …… 指挿入部
27 …… 上嘴部
27a …… 上嘴部の上面
27b …… 上嘴部の下面
28 …… 下嘴部
28a …… 下嘴部の上面
28b …… 下嘴部の下面
29 …… 差込口
3 …… ローラー
3k …… 介在部材
3s …… 取付台
31 …… 回転軸
31w …… ワッシャー
32 …… 電子回路基板
33 …… 刺激信号発生部
33E …… EMS信号発生部
33R …… RF信号発生部
34 …… 導電素子
34d …… 支台
34k …… 介在部材
4 …… 吸引部(ポンプ)
42 …… 空気抜きボタン
44 …… ドレンタンク
44a …… 第1部材
44b …… 第2部材
5 …… 操作パネル
51 …… 電源ボタン
52 …… 吸引モードボタン
53 …… EMSモードボタン
54 …… RFモードボタン
55 …… レベル上昇ボタン
56 …… レベル下降ボタン
57 …… レベル表示ランプ
58 …… バッテリーランプ
6 …… ローラーカップ
61 …… 周状突起
62 …… ローラーカップの開口部
63 …… カップ吸引経路
7 …… 制御部
t1~t3 …… チューブ
H …… 手
P …… 掌
B …… 甲
F …… 指
【要約】
【課題】リガメントやSMAS筋膜のリリース等を効率よく実施して顔の美容に役立つとともに、多機能でありながらコンパクトな構造で、使用者が自宅でも使いやすい機器を提供すること。
【解決手段】本発明は、ローラー3の転動によるマッサージ機能、吸引部4による吸引機能及び底面23に固定される導電素子34やローラー3による刺激信号の出力による刺激機能を備え、使用者の顔の肌等のリガメントのリリース等の効果を効率よく確実に実施することができる機器1となる。また、吸引を行う開口部24の周縁に、周状突起61がかかる開口部24を取り囲むように形成されているので、吸引部4による吸引時に機密性を高めることができ、前記の効果を効率よく奏させることになる。さらに、多機能でありながらコンパクトな構造である等により、使用者が自宅でも使いやすい機器1となる。
【選択図】
図4