(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】固定具及び自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 15/00 20060101AFI20220719BHJP
B62K 19/30 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B62K15/00
B62K19/30
(21)【出願番号】P 2022008316
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521430069
【氏名又は名称】野村 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】野村 亘
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-038038(JP,U)
【文献】特開2008-132955(JP,A)
【文献】実開平06-018186(JP,U)
【文献】特許第5745145(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 15/00,19/18-19/42
B62J 11/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体から引き抜いたハンドル軸と前輪とを含んで構成される前輪側車体と、前記ハンドル軸を引き抜いた車体で構成される後輪側車体とに分離し、前記前輪と後輪とを同軸に固定した状態の自転車の車体の固定具であって、
前記前輪側のハンドル軸を把持する把持部材と、
前記把持部材と前記後輪側車体を連結し、前記ハンドル軸の前記前輪の回転方向への揺動を抑止するアーム部材と、
を備える固定具。
【請求項2】
前記把持部材は、
略円筒形状の軸方向に沿って、前記ハンドル軸の径よりも狭い
幅の開口部を設けた
前記略円筒形状の弾性部材により構成され、
前記アーム部材は、シートステーに、折り畳み可能に取り付けられ、伸長状態において前記把持部材の前記開口部が斜め上を向いた状態となるよう前記把持部材を支持し、
前記把持部材の前記開口部に前記ハンドル軸を押し込むことで前記前輪側車体と前記後輪側車体とをロックする請求項1の固定具。
【請求項3】
前輪側車体と後輪側車体とをトップチューブ及びダウンチューブの位置で分離し、前輪と後輪とを同軸に固定した状態の自転車の車体の固定具であって、
前輪側のトップチューブを把持する第1の把持部材と、
後輪側のトップチューブを把持する第2の把持部材と、
前記第1の把持部材と、前記第2の把持部材と、を連結支持するアーム部材と、
を備える固定具。
【請求項4】
前記第1の把持部材は、
略円筒形状の弾性部材の軸方向に沿って、前記前輪側のトップチューブの径よりも狭
い幅の開口部を持つ
前記略円筒形状の弾性部材により構成され、
前記第2の把持部材は、
略円筒形状の弾性部材の軸方向に沿って、前記後輪側のトップチューブの径よりも狭
い幅の開口部を持つ
前記略円筒形状の弾性部材により構成され、
前記第1、第2の把持部材の前記各開口部に前記前輪側のトップチューブと前記後輪側のトップチューブとをそれぞれ押し込むことで前記前輪側車体と前記後輪側車体とをロックする請求項3の固定具。
【請求項5】
前記第1の
把持部材は、前記前輪側のトップチュー
ブの前記後輪側のトップチューブとの連結端を、前記後輪側車体
に近づける方向に
前記前輪側のトップチューブを回動させた状態で保持できるように、前記アーム部材に対して角度を変更可能に取り付けられている請求項3又は4の固定具。
【請求項6】
前記アーム部材は、前記前輪と前記後輪とを同軸に固定した状態の自転車の幅に応じて伸縮可能に構成されている請求項1から5いずれか一の固定具。
【請求項7】
請求項1から6いずれか一の固定具を備えた自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解した自転車の車体の固定具及び自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通機関に自転車を持ち込む際に、各公共交通機関において持ち込みルール(輪行ルール)が定められている。具体的には、輪行袋に収納し、はみ出さないようにすることや、長さ、幅、高さの3辺の合計が2.5m、最長辺の長さが2m以内、重さ30kg以内といったルールが定められている。
【0003】
特許文献1に、自転車の取り外した前輪を、後輪の側方に回転可能な形で取り付け、後輪と前輪を接地回転させて自転車の車体を押し歩き運搬できるようにした前輪取付け部品が開示されている。また、特許文献1記載の発明に相当する商品は、輪行用ホイール連結アダプターとして市販されている(非特許文献1参照)。特許文献2には、自転車から外した前後車輪をフレームの左右に挟んだ状態で取り付けることができるようにした輪行器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-51261号公報
【文献】登録実用新案第3128283号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】LOVE CYCLIST、“もっと遠くへ。ロードバイク用輪行袋おすすめ8選&電車輪行のポイント”、[online]、[令和3年1月2.日検索]、インターネット〈URL:https://lovecyclist.me/bike-bags/〉
【文献】ナニワ銀輪堂、“輪行用パーツ”、[online]、[令和3年1月2.日検索]、インターネット〈URL:https://www.ginrindo.biz/新品パーツ/輪行パーツ/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輪行に適した折り畳み自転車等も各種開発されているが、本格的なロードバイクやクロスバイクで輪行を楽しみたいというニーズがある。一方で、ロードバイクやクロスバイクによる輪行は、前輪等の分解や組立が必要になる(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1の前輪取付け部品等によれば、輪行袋を被せたまま両輪を転がして自転車を運搬することが可能となる。しかしながら、特許文献1の方法では、同公報の
図9、
図10に示すように、前輪のみを外すものであるため、サイズが大きくなってしまうという問題点がある。分解に要する手間を省きつつ、よりサイズを小さくする方法としては、自転車のフレーム本体から前輪ごとフォークを抜く方法が知られている(例えば、非特許文献2の「ノーマルフレームの場合は長谷川式輪行サイズとなります。」の写真参照)。
【0008】
しかしながら、前輪を接地回転可能にするということは、フロントフォークが前輪の回転方向に、自由に回転してしまうことを意味する。このため、前後の両輪を並列に固定しただけでは、フロントフォークが前後の意図しない方向に回転し、損傷してしまう可能性がある。
【0009】
また、車体フレームをその中間点で分割可能なデモンタブル式の自転車の場合、よりサイズを小さくすることができる(非特許文献2の「バッグを積んだままでも輪行スタイルにチェンジ出来ます。(デモンタ)」の写真参照)。しかしながら、デモンタブル式自転車の前輪は、フレームに対してハンドルの操作により自在に回転するようになっている。このため、前後の両輪を並列に固定しただけでは、前輪側のフレームが意図しない方向に回転し、後輪側のフレームにぶつかる等して損傷してしまう可能性がある。
【0010】
このため、上記フォーク抜き輪行、デモンタブル自転車のいずれも場合も、前後の両輪を連結するだけでなく、紐やベルトで固定することが行われている(例えば、非特許文献2の「ユニバーサル ポンプクリップ」の項参照)。しかしながら、紐やベルトによる固定では、ハンドルやフレームの位置関係により緩んでしまう可能性があり、別途、チェーンカバー、フレームカバーで養生を行うことが推奨されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
本発明は、押し歩き可能な輪行の際のフレーム固定や養生にかかる手間を省力化できる固定具及び自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の視点によれば、車体から引き抜いたハンドル軸と前輪とを含んで構成される前輪側車体と、前記ハンドル軸を引き抜いた車体で構成される後輪側車体とに分離し、前記前輪と後輪とを同軸に固定した状態の自転車の車体の固定具であって、前記前輪側のハンドル軸を把持する把持部材と、前記把持部材と前記後輪側車体を連結し、前記ハンドル軸の前記前輪の回転方向への揺動を抑止するアーム部材と、を備える固定具が提供される。
【0013】
第2の視点によれば、前輪側車体と後輪側車体とをトップチューブ及びダウンチューブの位置で分離し、前輪と後輪とを同軸に固定した状態の自転車の車体の固定具であって、前輪側のトップチューブを把持する第1の把持部材と、後輪側のトップチューブを把持する第2の把持部材と、前記第1の把持部材と、前記第2の把持部材と、を連結支持するアーム部材と、を備える固定具が提供される。
【0014】
第3の視点によれば、上記した各固定具を備えた自転車が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、押し歩き可能な輪行の際のフレーム固定や養生にかかる手間を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態の固定具を備えた自転車の正面図(分解状態)である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の固定具の平面図(a)及び正面図(b)である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の固定具の把持部材の構成を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の固定具を用いてフレームを固定した状態を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の固定具を折り畳んだ状態を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の固定具を備えた自転車の平面図(分解状態)である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の固定具の取り付け態様を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態の固定具の角度調整機能を説明するための図である。
【
図9】第1、第2の実施形態の固定具のアーム部材に長さ調整機構を追加した第3の実施形態の構成を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の固定具の把持部材の向きに変更を加えた第4の実施形態の構成を示す図である。
【
図11】第2の実施形態の固定具の把持部材の向きに変更を加えた第5の実施形態の構成を示す図である。
【
図12】第1の実施形態の固定具の把持部材の構造に変更を加えた第6の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
続いて、フォーク抜きによる分解を行って押し歩き運搬ができるようにした本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の固定具を備えた自転車の正面図(分解状態)である。
図1を参照すると、前後輪連結部材16を用いて、フォーク抜きした前輪側車体と後輪側車体とを連結し、押し歩き運搬できる状態とした自転車が示されている。
【0018】
図1の例では、後輪側車体の変速機構13が内側になるように、かつ、前輪側車体の進行方向の右側が内側になるように、前輪側車体と後輪側車体とが前後輪連結部材16で同軸に固定、連結されている。このように連結した状態で、両足センタースタンド10を倒すことで、前輪8及び後輪9が接地回転し、押し歩き可能となる。また、変速機構13は両輪の間に配置されるため、押し歩き運搬中の変速機構13を保護することが可能となっている。
【0019】
本実施形態の固定具4は、前記フォーク抜きした前輪側車体のハンドル軸(フォークコラム)2と、シートステー3を連結し、固定する。このように、シートステー3と、ハンドル軸(フォークコラム)2を剛性のある部材で連結することで、ハンドル軸(フォークコラム)2がシートステー3に固定される。前述のとおり、前輪側車体と後輪側車体は前後輪連結部材16を用いて連結されているため、前輪側車体と後輪側車体は上下の2点で連絡され、安定した状態となる(
図1参照)。これにより、利用者は、輪行袋を被せたまま、サドル12を掴んで、安定した押し歩き運搬を行うことができる。
【0020】
図2は、本発明の第1の実施形態の固定具の平面図(a)及び正面図(b)である。
図2を参照すると、アーム部材41と、把持部材42と、アーム部材41を後輪側車体に取り付けるためのステー43とを備えた固定具4が示されている。
【0021】
ステー43は、略長方形の板状部材によって構成され、その一端には、後輪側車体のシートステー3に巻回し固定する固定部材431が備えられている。また、ステー43の他の一端には、ネジ穴432が設けられ、ねじ止めすることで、アーム部材41を支持可能となっている。
【0022】
アーム部材41は、その一端に略円弧形状の断面を持つ把持部材42が取り付けられ、ハンドル軸(フォークコラム)2を把持可能となっている。把持部材42は、弾性変形可能な材質で構成され、
図2の矢印の方向に、ハンドル軸(フォークコラム)2を押し込むことでハンドル軸(フォークコラム)2を把持しロックする。
【0023】
把持部材42の材質としては、耐衝撃性があり、耐熱、耐水性、耐薬品性に優れた汎用プラスチックのポリオレフィンやエンジニアリングプラスチックのABS樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリエステルなどのプラスチックを好適に用いることができる。なお、ABSは、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂の総称である。
【0024】
また、把持部材42の略円弧形状は、
図2に示すように、把持対象物であるハンドル軸(フォークコラム)2の直径と同程度の内径の略円弧形状とすることができる。より望ましい形態において、把持部材42、ハンドル軸(フォークコラム)2の直径に対しやや小さい内径(例えば、ハンドル軸(フォークコラム)2の直径に対し、-0.5mm~-1.0mm)の略円弧形状とすることもできる。
【0025】
図3は、上記把持部材42の詳細構成を説明するための図である。把持部材42の略円弧形状の円弧の角度θとしては、開口部の幅がハンドル軸(フォークコラム)2の径よりも狭くなるよう210~270度の範囲を好ましく採用できる。把持部材42の略円弧形状の幅wは、例えば25mm~60mm、板厚tは、1.5~4mmの範囲で設定することが好ましい。もちろん、これらの数値は、把持部材42の素材、脱着の容易性、耐久性及び想定する外力の大きさ等に応じて設定される。
【0026】
続いて、本実施形態の固定具4の使用方法について説明する。まず、
図1に示すように、両足センタースタンド10を立てて、車体を自立させる。次に、前後のブレーキケーブル等を外した後、ハンドルステムごとハンドルをフレームから外す。なお、必要に応じて、左右のペダルを折り畳んだり、取り外したりしてもよい。なお、取り外したハンドルステムは、必要に応じて、トップチューブに固定すればよい。
【0027】
次に、ハンドル軸(フォークコラム)2の上端にあるヘッドのナット部品を外し、フレーム本体のヘッドチューブから、前輪付きのフロントフォーク(前輪側車体)を抜き、取り外す。
【0028】
次に、
図1において、後輪9の右側に取り付けた前後輪連結部材16に、前輪8の右側の車軸を固定する。
【0029】
この状態では、前輪付きのフロントフォーク(前輪側車体)は、前後に回転可能であるため、前輪付きのフロントフォークが前後に揺動しないように固定する必要がある。そこで、本実施形態の固定具4の把持部材42に、ハンドル軸(フォークコラム)を押し込むことで(
図2参照)、ハンドル軸(フォークコラム)2を固定する。
【0030】
上記のように、本実施形態の固定具4は、ハンドル軸(フォークコラム)2とステー43とを連結する。さらに、前述のとおり、アーム部材41はステー43にねじ止めされているため、ハンドル軸(フォークコラム)2がシートステー3に対して、俯仰方向(前輪の回転方向)に相対回転することを抑止することができる。最後に、輪行袋に収納することで、輪行準備が完了する。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施形態の固定具4を用いてフレームを固定した状態を示す図である。
図4に示すように、前記アーム部材41は、前記シートステー3と略平行になるように前記ハンドル軸(フォークコラム)2を把持可能に、前記把持部材42を支持する。この状態では、前輪側車体と、後輪側車体とは、前後輪連結部材16と、固定具4との2点で連結された状態となる。したがって、紐やベルトによる固定をしなくても、前記ハンドル軸(フォークコラム)2の前後(俯仰方向)の揺動を抑止することができる。もちろん、チェーンカバー、フレームカバー等による車体の養生等も不要となる。
【0032】
さらに、本実施形態の固定具4は、ステー43を介して、後輪側車体に、ネジで固定されている。目的地に着き、自転車に乗る際には、ネジを緩めることで、
図5に示すように、折り畳むことが可能となっている。このため、帰路についても同様の手順で車体を分解した後、押し歩き運搬可能な状態に移行させることができる。また、固定具4側には、
図2の符号411に示すように、切り欠き部が設けられているため、必要がない場合、固定具4を取り外して保管することも可能となっている。
【0033】
さらに、本実施形態の固定具4の把持部材42は、
図4に示すように、伸長状態において、略円弧形状の開口部が斜め上(ハンドル軸の前面側)を向くように形成されている。このため、押し歩き移動時に衝撃を受けた際にも、ハンドル軸(フォークコラム)2が外れにくいという利点がある。
【0034】
[第2の実施形態]
続いて、デモンタブルタイプの自転車に好適に適用される第2の実施形態について図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態の固定具を備えた自転車の平面図(分解状態)である。
図6を参照すると、トップチューブとダウンチューブの位置で、前輪側車体と後輪側車体とを分離したデモンタブルタイプの自転車が示されている。
【0035】
このデモンタブルタイプの自転車についても前後輪連結部材16を用いて、前輪側車体と後輪側車体とを連結し、押し歩き運搬することができる。
図6の例では、後輪側車体の変速機構13が内側になるように、かつ、前輪側車体の進行方向の右側が内側になるように、前輪側車体と後輪側車体とが前後輪連結部材16で連結されている。このように連結した状態で、センタースタンド(図示省略)を倒すことで、前輪8及び後輪9が接地回転し、押し歩き可能となる。また、変速機構13は両輪の間に配置されるため、押し歩き運搬中の変速機構13を保護することが可能となっている。
【0036】
本実施形態の固定具7は、前輪側トップチューブ5と、後輪側トップチューブ6とを連結し、固定する。このように、前輪側トップチューブ5と、後輪側トップチューブ6とを剛性のある部材で連結することで、前輪側トップチューブ5の水平方向(
図6の上下方向)の移動が抑制される。これにより、利用者は、輪行袋を被せたまま、サドル12を掴んで、安定した押し歩き運搬を行うことができる。
【0037】
図7は、本発明の第2の実施形態の固定具7の正面図である。
図7を参照すると、前輪側トップチューブ5を把持する第1の把持部材73と、後輪側トップチューブ6を把持する第2の把持部材72と、前記第1の把持部材73と前記第2の把持部材72とを連結支持するアーム部材711、712と、を備えた固定具7が示されている。本実施形態のアーム部材711、712は、ボルト713の締め付け、又は、介在させたスプリングワッシャ等によるトルクフリクションによって、任意の角度で固定できるように構成されている。
【0038】
第1、第2の把持部材73、72の材質としては、第1の実施形態と同様に、耐衝撃性があり、耐熱、耐水性、耐薬品性に優れた汎用プラスチックのポリオレフィンやエンジニアリングプラスチックのABS樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリエステルなどのプラスチックを好適に用いることができる。
【0039】
第1、第2の把持部材73、72は、
図7に示すように、把持対象物であるトップチューブ5、6の直径と同程度の内径を持つ略円弧形状とすることができる。また、より望ましい形態において、第1、第2の把持部材73、72は、把持対象物であるトップチューブ5、6の直径に対しやや小さい内径(例えば、トップチューブ5、6の直径に対し、-0.5mm~-1.0mm)の略円弧形状とすることもできる。
【0040】
また、第1の実施形態の把持部材42と同様に、第1、第2の把持部材73、72の略円弧形状の円弧の角度θとしては、開口部の幅がハンドル軸(フォークコラム)2の径よりも狭くなるよう210~270度の範囲を好ましく採用できる(
図3参照)。また、第1の実施形態の把持部材42と同様に、第1、第2の把持部材73、72の幅wは、例えば25mm~60mm、板厚tは、1.5~4mmの範囲で設定することが好ましい。もちろん、これらの数値は、第1、第2の把持部材73、72の素材、脱着の容易性、耐久性及び想定する外力の大きさ等に応じて設定される。
【0041】
また、前記アーム部材711、712の角度調整機能は、例えば、
図8に示すように、前輪側トップチューブ5と、後輪側トップチューブ6との間の距離が長く、アーム部材711、712の長さが不足する場合に利用することができる。また、輪行時の大きさをより小さくするため、前輪側トップチューブ5を、後輪側トップチューブ6の方向に志向させた状態で固定する場合にも利用することができる。この機能は、前輪側トップチューブ5が後輪側トップチューブ6等に対して極端に長い場合にも、輪行時の大きさを小さくする点でも有効である。
【0042】
続いて、本実施形態の固定具7の使用方法について説明する。まず、両足センタースタンドを立てて、車体を自立させる。次に、前後のブレーキケーブル等を外した後、ハンドルステムごとハンドルをフレームから外す。なお、必要に応じて、左右のペダルを折り畳んだり、取り外したりしてもよい。なお、ハンドルは、非特許文献2に示すように、輪行中邪魔にならないように、フレームに取り付けておいてもよい。
【0043】
次に、専用のカップリング工具等を用いて、トップチューブとダウンチューブの位置で前輪側車体と後輪側車体とを分離する。次に、
図6において、後輪9の右側に取り付けた前後輪連結部材16に、前輪8の右側の車軸を固定する。
【0044】
この状態では、前輪側トップチューブ5は、左右に首振り可能な状態であり、揺動しないように固定する必要がある。そこで、本実施形態の固定具7の第1の把持部材73及び第2の把持部材72を、それぞれ前輪側トップチューブ5及び後輪側トップチューブ6を押し込むことで(
図6参照)、前後のトップチューブを固定する。
【0045】
上記のように、本実施形態の固定具7は、前輪側トップチューブ5及び後輪側トップチューブ6とを連結する。さらに、前述のとおり、アーム部材711、712は、ボルト713の締め付け又は適切なトルクフリクションによって、任意の角度で固定できるように構成されている。このため、本実施形態の固定具7は、前輪側トップチューブ5が後輪側トップチューブ6に対し、任意の角度を保った状態を維持することができる。最後に、輪行袋に収納することで、輪行準備が完了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の固定具7は、前輪側車体と後輪側車体とを、前後輪連結部材16と、固定具7との2点で連結された状態に維持する。したがって、本実施形態の固定具7によれば、紐やベルトによる固定をしなくても、前輪側トップチューブ5の水平方向の揺動を抑止することができる。もちろん、チェーンカバー、フレームカバー等による車体の養生等も不要となる。
【0047】
さらに、本実施形態の固定具7は、第1の把持部材73及び第2の把持部材72にて、前輪側トップチューブ5及び後輪側トップチューブ6を把持する構成となっているため、自由に取り外すことが可能となっている。
【0048】
さらに、本実施形態の固定具7の第1の把持部材73は、
図6、
図7に示すように、略円弧形状の開口部が上を向くように形成されている。また、第2の把持部材72は、
図6、
図7に示すように、略円弧形状の開口部が下を向くように形成されている。
図6に示されたように、前輪側トップチューブ5の方が長いため、下向きの力を受けやすい傾向があるが、第1の把持部材73の略円弧形状の開口部は上を向くように形成されているため、衝撃などを受けても外れにくくなっている。さらに、固定具7自体が、下向きの力を受けても、第2の把持部材72の略円弧形状の開口部が下を向くように形成されているため、第2の把持部材72の部分も外れにくくなっている。
【0049】
[第3の実施形態]
以上、本発明の第1、第2の実施形態の固定具4、7を説明したが、固定具4、7はそれぞれ種々の変形を加えることが可能となっている。例えば、
図9は、第1、第2の実施形態の固定具のアーム部材に長さ調整機構を追加した第3の実施形態の構成を示す図である。
【0050】
図9の上段の(a)は、第1の実施形態の固定具4のアーム部材41を入れ子形状にしてビス孔44を設けた構成の固定具4aを示している。この構成によれば、ビス45を抜き、位置を変えることで、アーム部材41の長さを調整することができる。
【0051】
図9の下段の(b)は、第2の実施形態の固定具7のアーム部材711を入れ子形状にしてビス孔44を設けた構成の固定具7aを示している。この構成によっても、ビス45を抜き、位置を変えることで、アーム部材711の長さを調整することができる。
【0052】
上記のような長さ調整機能を持つ第3の実施形態の固定具4a、7aによれば、自転車の車輪の幅や、前後輪連結部材16の長さの違いによって発生する、前後の車体間の距離の変更に対応することが可能となる。
【0053】
本発明者の調査によれば、前輪側車体と後輪側車体とが前後輪連結部材16で同軸に固定、連結された状態の前後の車輪の間隔は12~20cmの範囲を取りうる。本実施形態の長さ調整機構を持つ固定具によれば、これらの前後の車輪の間隔の変更に対応することが可能となる。また、本発明者の調査によれば、代表的なツーリング車において、一般的な前後輪連結部材16を用いて連結した際の前後の車輪の間隔は14~17cmの範囲に収まる。本実施形態のアーム部材の長さ調整機構は、この範囲に対応できるものとすることもできる。
【0054】
[第4の実施形態]
また、本発明の第1の実施形態の固定具4では、把持部材42の略円弧形状の開口部が斜め上を向くように形成されているものとして説明したが、略円弧形状の開口部の位置は、この位置に限定されない。例えば、
図10に示すように、把持部材42の略円弧形状の開口部が斜め下(ハンドル軸の背面側)を向くように形成された固定具4bとすることもできる。もちろん、把持部材42の開口部が側方(外側)を向くようにしてもよい。
ていてもよい。
【0055】
[第5の実施形態]
同様に、本発明の第2の実施形態の固定具7では、第1の把持部材73の略円弧形状の開口部が上を向き、第2の把持部材72の略円弧形状の開口部が下を向くように形成されているものとして説明したが、略円弧形状の開口部の位置は、この位置に限定されない。例えば、
図11に示すように、第1の把持部材73の略円弧形状の開口部が下を向き、第2の把持部材72の略円弧形状の開口部が上を向くように形成された固定具7bとすることもできる。もちろん、第1の把持部材73及び第2の把持部材72の開口部がそれぞれ側方(外側)を向くようにしてもよい。
【0056】
[第6の実施形態]
また、本発明の第1の実施形態の固定具4では、把持部材42が略円弧形状で形成されているものとして説明したが、把持部材42の形状は、略円弧形状に限定されない。例えば、例えば、
図12に示すように、略円弧形状に代えて、ヒンジ式の把持部材42aを設けた構成の固定具4cに変更することができる。このようなヒンジ式の把持部材42aによっても、ハンドル軸(フォークコラム)2を把持、ロックすることが可能である。同様に、第2の実施形態の固定具7においても、第1、第2の把持部材73、72に代えて、ヒンジ式の把持部材を設けることも可能である。また、第2の実施形態の固定具7の場合、第1、第2の把持部材73、72のいずれか一方を、トップチューブの直径に対し同等以上の内径を持つ円筒状に形成し、トップチューブの取り外し位置から、トップチューブに挿入する構成を採用することもできる。
【0057】
[第6の実施形態]
また、上記した第1~第6の実施形態の固定具は、単体の固定具として後付け装着することもできるが、
図5に例示されたように、固定具4を備えた自転車として実現することもできる。同様に、第2の実施形態の固定具7についても、固定具7を備えた自転車として実現することもできる。
【0058】
なお、上記の特許文献及び非特許文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0059】
2 ハンドル軸(フォークコラム)
3 シートステー
4、4a、4b、4c、7、7a、7b 固定具
5 前輪側トップチューブ
6 後輪側トップチューブ
8 前輪
9 後輪
10 両足センタースタンド
12 サドル
13 変速機構
16 前後輪連結部材
41 アーム部材
411 切り欠き部
42、42a 把持部材
43 ステー
44 ビス孔
45 ビス
431 固定部材
432 ネジ穴
73 第1の把持部材
72 第2の把持部材
711、712 アーム部材
713 ボルト
【要約】
【課題】押し歩き可能な輪行の際のフレーム固定や養生にかかる手間の省力化。
【解決手段】車体から引き抜いたハンドル軸と前輪とを含んで構成される前輪側車体と、前記ハンドル軸を引き抜いた車体で構成される後輪側車体とに分離し、前記前輪と後輪とを同軸に固定した状態の自転車の車体の固定具を提供する。具体的には、この固定具は、前記前輪側のハンドル軸を把持する把持部材と、前記把持部材と前記後輪側車体を連結し、前記ハンドル軸の前記前輪の回転方向への揺動を抑止するアーム部材と、を備える。
【選択図】
図1