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特許7106206障害情報提供システム、情報処理装置、障害情報提供方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】障害情報提供システム、情報処理装置、障害情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/137 20060101AFI20220719BHJP
   G08G 1/133 20060101ALI20220719BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220719BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220719BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20220719BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G08G1/137
G08G1/133
G09B29/00 A
G09B29/10 A
G08G1/01 A
G01C21/26 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018046475
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2018200679
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2017104501
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英樹
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212456(JP,A)
【文献】特開2011-081608(JP,A)
【文献】特開2004-333464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/137
G08G 1/133
G09B 29/00
G09B 29/10
G06F 16/29
G08G 1/01
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置にネットワークを介して電子地図を提供する情報処理装置と、前記端末装置とを有する障害情報提供システムであって、
前記情報処理装置は、
低速車両の走行の障害となる複数の障害要因として、段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、路面の凹凸の少なくとも2つ以上の障害要因を総合して生成された、前記低速車両の走行の困難性情報をメッシュごとに有する障害情報を記憶する障害情報記憶手段を参照し、
前記端末装置から電子地図の要求を受けた場合、前記障害情報を前記電子地図と共に前記端末装置に送信する電子情報提供手段を有し、
前記端末装置は、
前記電子地図及び前記障害情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記電子地図を前記メッシュに区切って、メッシュごとに前記困難性情報の大きさに応じた態様でアイコンを表示し、更に、前記障害情報をディスプレイに表示する表示手段と、を有し、
前記障害情報は、前記段差の高さ、前記縦勾配の角度、前記横勾配の角度、及び、前記路面の凹凸の種類である路面種類を有することを特徴とする障害情報提供システム。
【請求項2】
前記障害情報は、複数の障害要因に基づいて算出された前記低速車両の走行の困難性情報を有し、
前記表示手段は、前記困難性情報の大きさに応じた態様で前記障害情報がある旨を電子地図に表示することを特徴とする請求項1に記載の障害情報提供システム。
【請求項3】
前記障害情報は、所定範囲における複数の障害要因に基づいて生成されており、
前記表示手段は、前記電子地図の前記所定範囲ごとに前記障害情報がある旨を表示することを特徴とする請求項2に記載の障害情報提供システム。
【請求項4】
前記端末装置は、
前記端末装置に対する操作を受け付ける受付手段を有し、
前記受付手段が前記障害情報の詳細を表示させる操作を受け付けた場合、前記表示手段は前記困難性情報を表示することを特徴とする請求項2又は3に記載の障害情報提供システム。
【請求項5】
前記障害情報は、複数の障害要因のそれぞれが前記困難性情報に寄与する寄与率を有しており、
前記受付手段が前記障害情報の詳細を表示させる操作を受け付けた場合、前記表示手段は前記寄与率が最も大きい前記障害要因を表示することを特徴とする請求項4に記載の障害情報提供システム。
【請求項6】
前記寄与率が最も大きい前記障害要因が前記段差、前記縦勾配、又は、前記横勾配の場合であって、前記受付手段が前記障害情報の詳細を表示させる操作を受け付けた場合、
前記表示手段は前記寄与率が最も大きい前記障害要因を表示すると共に、前記段差の高さ、前記縦勾配の角度、又は、前記横勾配の角度を表示することを特徴とする請求項5に記載の障害情報提供システム。
【請求項7】
前記寄与率が最も大きい前記障害要因が前記路面の凹凸の場合であって、前記受付手段が前記障害情報の詳細を表示させる操作を受け付けた場合、
前記表示手段は前記寄与率が最も大きい前記障害要因を表示すると共に、前記路面種類を表示することを特徴とする請求項5に記載の障害情報提供システム。
【請求項8】
前記端末装置は、
低速車両の走行に関する情報を検出するセンサと、
前記センサが検出した低速車両の走行に関する情報を前記情報処理装置に送信する送信手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
低速車両の走行に関する情報を受信する情報受信手段を有し、
低速車両の走行に関する情報を分析して前記障害情報を生成する請求項2~7のいずれか1項に記載の障害情報提供システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、
所定範囲を走行した端末装置から段差の高さ、縦勾配の角度、横勾配の角度、及び、路面種類に関するセンサデータを蓄積し、
前記所定範囲ごとに、前記段差の高さの平均、前記縦勾配の角度の平均、前記横勾配の角度の平均、及び、路面種類ごとの検出回数を算出し、
これらを正規化した値にそれぞれの障害要因の検出回数を乗じた値の和を、全ての障害要因の検出回数で割った値を前記困難性情報として算出する集計手段を有する請求項2~8のいずれか1項に記載の障害情報提供システム。
【請求項10】
前記情報処理装置は、
前記端末装置から電子地図の要求を、前記端末装置の大きさに関する情報と共に取得し、前記端末装置の大きさに応じて複数の障害要因が総合される前記メッシュのメッシュサイズを決定するメッシュサイズ決定手段と、
前記低速車両の走行に関する情報が分析された分析結果から前記障害情報を生成する集計手段と、を有し、
前記集計手段は、前記メッシュサイズ決定手段が決定したメッシュサイズのメッシュに含まれる前記低速車両の走行に関する情報の分析結果を、前記メッシュサイズ決定手段が決定したメッシュサイズの前記メッシュごとに集計して前記メッシュごとに前記障害情報を生成することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の障害情報提供システム。
【請求項11】
地図データを記憶する地図データ記憶手段に予め記憶されている前記メッシュを、均等に分割して分割数に応じた階層に分け、各階層のメッシュに階層に応じた桁数の識別情報を付与するメッシュ分割手段を有し、
前記メッシュサイズ決定手段は、決定したメッシュサイズに最も近いサイズのメッシュが得られる前記階層に対応する前記桁数を前記集計手段に通知し、
前記集計手段は前記桁数に対応するメッシュサイズのメッシュごとに、前記低速車両の周囲の前記低速車両の走行に関する情報の分析結果を集計する請求項10に記載の障害情報提供システム。
【請求項12】
電子地図及び障害情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記電子地図をメッシュに区切って、メッシュごとに困難性情報の大きさに応じた態様でアイコンを表示し、更に、前記障害情報をディスプレイに表示する表示手段と、を有する端末装置にネットワークを介して電子地図を提供する情報処理装置であって、
低速車両の走行の障害となる複数の障害要因として、段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、路面の凹凸の少なくとも2つ以上の障害要因を総合して生成された、前記低速車両の走行の困難性情報をメッシュごとに有する障害情報を記憶する障害情報記憶手段を参照し、
前記端末装置から電子地図の要求を受けた場合、前記障害情報を前記電子地図と共に前記端末装置に送信する電子情報提供手段を有し、
前記障害情報は、前記段差の高さ、前記縦勾配の角度、前記横勾配の角度、及び、前記路面の凹凸の種類である路面種類を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
端末装置にネットワークを介して電子地図を提供する情報処理装置と、前記端末装置とを有する障害情報提供システムが行う障害情報提供方法であって、
前記情報処理装置の電子情報提供手段が、
低速車両の走行の障害となる複数の障害要因として、段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、路面の凹凸の少なくとも2つ以上の障害要因を総合して生成された、前記低速車両の走行の困難性情報をメッシュごとに有する障害情報を記憶する障害情報記憶手段を参照し、
前記端末装置から電子地図の要求を受けた場合、前記障害情報を前記電子地図と共に前記端末装置に送信するステップと、
前記端末装置の受信手段が、前記電子地図及び前記障害情報を受信するステップと、
表示手段が、前記受信手段が受信した前記電子地図を前記メッシュに区切って、メッシュごとに前記困難性情報の大きさに応じた態様でアイコンを表示し、更に、前記障害情報をディスプレイに表示するステップと、を有し、
前記障害情報は、前記段差の高さ、前記縦勾配の角度、前記横勾配の角度、及び、前記路面の凹凸の種類である路面種類を有することを特徴とする障害情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害情報提供システム、情報処理装置、及び、障害情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行時に各種のセンサで取得したセンサデータをサーバに送信し、サーバが道路上の障害物を検出したり道路の混雑状況を生成したりする技術が知られている。このように車両自身がセンサとなる情報の収集方法をプローブセンサ(測定対象に密着させて対象の性質を測定する器具)を模倣してプローブカーによる情報収集という(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
プローブカーによる情報収集は一般的な車両以外の低速車両にも適用可能である。車椅子などの低速車両は歩行者と同じ場所を歩行者と異なりタイヤを回転させて移動するため、走行に関し歩行者とは異なる障害がある。例えば、段差を乗り越えること、車椅子が傾斜を移動すること、狭い通路を通過すること、及び、所定の路面の場所を走行すること等に関し、歩行者とは異なる困難を伴う場合がある。したがって、低速車両がプローブカーとなる場合は、サーバは低速車両に特有の障害要因を検出する。
【0004】
サーバは低速車両の走行の障害となる場所を地図情報に対応付けておく。低速車両のユーザは障害となる場所を電子地図と共にサーバから取得することで、障害要因を避けて移動することができる(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、自分の位置を検出する位置検出部と、自車両に生じる振動や傾斜に基づく障害情報を生成する障害情報生成部と、走行位置と障害情報をサーバに送信するデータ送信部を有する情報提供システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-98939号公報
【文献】特開2010-20702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された情報提供システムでは、ユーザに提供する障害要因を単一種に限定してしまっているという問題がある。すなわち、特許文献2では走行位置が凹凸路面、傾斜路、段差のいずれであるかを特定するだけであり、段差もあり更に傾斜もあるような地形の障害情報を提供できない。段差があるだけでなく更に傾斜も付いている等、複合的な障害要因を有する地形は少なくない。一般に、複合的な障害要因を有する場所は単一種の障害要因を有する場所に比べて走行時の困難性が高い。例えば、段差だけであれば車椅子が乗り越えられても傾斜が付いているために段差を乗り越えられなくなる等の状況が生じうる。したがって、サーバが各地形から複合的な障害要因を検出し、複合的な障害要因の有無等を低速車両のユーザに提供することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、複合的な障害要因に関する障害情報を提供する障害情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、端末装置にネットワークを介して電子地図を提供する情報処理装置と、前記端末装置とを有する障害情報提供システムであって、前記情報処理装置は、低速車両の走行の障害となる複数の障害要因として、段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、路面の凹凸の少なくとも2つ以上の障害要因を総合して生成された、前記低速車両の走行の困難性情報をメッシュごとに有する障害情報を記憶する障害情報記憶手段を参照し、前記端末装置から電子地図の要求を受けた場合、前記障害情報を前記電子地図と共に前記端末装置に送信する電子情報提供手段を有し、前記端末装置は、前記電子地図及び前記障害情報を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記電子地図を前記メッシュに区切って、メッシュごとに前記困難性情報の大きさに応じた態様でアイコンを表示し、更に、前記障害情報をディスプレイに表示する表示手段と、を有し、前記障害情報は、前記段差の高さ、前記縦勾配の角度、前記横勾配の角度、及び、前記路面の凹凸の種類である路面種類を有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
複合的な障害要因に関する障害情報を提供する障害情報提供システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】障害情報提供システムが提供する障害情報を説明する図の一例である。
図2】障害情報提供システムのシステム構成図の一例を示す
図3】端末装置とサーバの機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
図4】サーバで判断される障害要因の種類について説明する図の一例である。
図5】サーバで判断される障害要因の種類について説明する図の一例である。
図6】障害要因の有無の判断の流れを説明する図である。
図7】分析エンジンの機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
図8】障害要因の検出を補足する図の一例である。
図9】メッシュにおいて検出された分析結果を模式的に示す図である。
図10】メッシュに対応付けられた障害情報を模式的に示す図である。
図11】端末装置のディスプレイにおける電子地図と障害情報の表示例を示す図である。
図12】障害情報提供システムの全体的な動作を説明するシーケンス図の一例である。
図13】低速車両10の大きさが多様であるのに対しメッシュサイズが固定又は一定である場合に生じる不都合を説明する図の一例である。
図14】障害物情報システムの概略的な動作を説明する図の一例である(実施例2)。
図15】端末装置とサーバの機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である(実施例2)。
図16】メッシュの分割による最小サイズのメッシュの作成方法を説明する図の一例である。
図17】車体情報に含まれる全長からメッシュサイズの決定方法を説明する図の一例である。
図18】障害情報提供システムの全体的な動作を説明するシーケンス図の一例である。
図19】低速車両の大きさに応じて決定されたサイズのメッシュにおける障害情報の表示例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の一例として障害情報提供システムと障害情報提供方法について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
<提供する障害情報の概略>
図1は、本実施形態の障害情報提供システムが提供する障害情報を説明する図の一例である。車椅子などの低速車両10には端末装置20が装着されており、電子地図と共に障害情報が端末装置20に提供される。
【0013】
端末装置20が表示する電子地図は後述するように所定範囲のメッシュに区切られており、メッシュごとに走行の困難性を示すスコア(困難性情報)が対応付けられている。このスコアは検出された複数の障害要因を総合して算出されている。
【0014】
端末装置20はスコアの大きさに応じた態様(色や形状などの見た目)のピンアイコン51を表示する。したがって、ユーザはピンアイコン51の例えば色を見て走行できそうか否かのおよその判断が可能になる。
【0015】
更に、ユーザは電子地図を見て自分が走行する場所にあるピンアイコン51を押下することができる。図1に示すように、端末装置20はピンアイコン51に対応付けられている障害情報の詳細50を例えばポップアップ表示する。障害情報の詳細50にはメッシュに対応付けられたスコア53が表示される。ユーザはスコア53という具体的な数値を見て走行できそうか否かを判断できる。更に、障害情報の詳細50には複合的な障害要因のうち最もスコアに影響した最大障害要因52が表示される。図1では「点字ブロック」がスコアに最も影響した最大障害要因52である。ユーザは具体的な障害要因を確認して走行するか否かを判断できる。更に、詳細ボタン54の押下によりメッシュに対応付けられた障害情報についてより詳細な情報が表示される。
【0016】
このように本実施形態の障害情報提供システムは複合的な障害要因を総合して提供するため、複合的な障害要因を有する地形の走行がどのくらい困難であるかを低速車両10のユーザが判断しやすくなる。
【0017】
<用語について>
走行の障害とは、走行の妨げ、邪魔、又は、バリア(障壁)となりうる地形をいう。低速車両の種類によって異なってよい。
【0018】
障害要因とは、障害の具体的な因子又は原因をいう。障害要因は地形に基づく場合が多いが、場所に固定である必要はなく、建築物や敷設物などに基づくものでもよい。本実施形態では、段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、路面の凹凸を障害要因の一例とする。
【0019】
また、複数の障害要因を総合するとは、複数の障害要因に基づく走行の困難性を1つに合わせまとめることをいう。
【0020】
障害情報とは走行の障害に関する情報である。好ましくは、走行の困難性の程度、又は、障害要因に関する情報の少なくも一方を含む。走行の困難性は、走行の際の障害の大きさ、走行しづらさ、又は、難しさを言う。
【0021】
低速車両の走行に関する情報は、障害要因を分析するために適切な情報であればよい。例えば、加速度、傾斜、及び位置情報が挙げられる。
【0022】
<システム構成例>
図2は、障害情報提供システム100のシステム構成図の一例を示す。障害情報提供システム100は、サーバ40と低速車両10に装着された端末装置20とを有し、サーバ40と端末装置20はネットワークNを介して通信する。
【0023】
本実施形態の障害情報提供システム100では低速車両10がプローブカーとして動作する。プローブカーとは車両自身がセンサとなる情報の収集方法における車両自身を言う。端末装置20は障害を検出するため後述する各種センサを有しており、端末装置20は位置情報と共にセンサが検出したセンサデータをサーバ40に送信する。サーバ40は、センサデータを加工して障害情報を作成し、電子地図と共に障害情報を端末装置20に送信する。
【0024】
ネットワークNは携帯電話網、無線LAN網、又は、WiMAX通信網などの通信事業者が提供する公衆回線とプロバイダ(インターネットに接続するためのサービスを提供する企業)が提供するプロバイダネットワークとを有している。通信事業者の公衆回線に端末装置20が接続するためにネットワークNには基地局8が接続されている。LANなどの施設内のネットワークがネットワークNに含まれてもよい。
【0025】
サーバ40は通信機能を備えた情報処理装置である。サーバ40は、例えば、サーバ用途として提供される情報処理装置、パーソナル・コンピュータ、又はワークステーション等をその実体とする。サーバ40は、CPUと、CPUがプログラムの実行に使用する高速なメモリ(RAM)、BIOS(Basic Input/Output System)等を記憶するROM、プログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)等の補助メモリ、ネットワークNに接続するためのネットワークI/F(インタフェース)等を備える。この他、サーバ40に接続されたディスプレイに画面を描画するグラフィックスI/F、オペレータの入力を受け付けるキーボード及びマウスなどの入力装置を有していてもよい。
【0026】
低速車両10は、主に歩行者と同じ場所を低速に走行する車両である。低速車両10は、レシプロエンジン車、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド)、FCV(燃料電池車)、又は、自動二輪車などの動力を備え高速に移動する一般車両と対比して低速に走行する車両をいう。本実施形態は低速車両10の一例として車椅子が説明に使用される。車椅子は乗車したユーザ又は背後から車椅子を押す介護者などにより走行するため比較的低速である。電動(モータ)で移動する車椅子もあるがモータの出力は大きくなく一般車両と比べれば低速である。
【0027】
また、低速車両10は軽車両でもよい。軽車両とは道路交通法によると、自転車、荷車その他、人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む)である。例えば、リヤカーや人力車も軽車両である。なお、車椅子は法律上、歩行者と同じ扱いである。
【0028】
低速車両10には、アタッチメント9を介して端末装置20が装着される。アタッチメント9は端末装置20を同じ姿勢で保持できる器具又は容器などである。同じ姿勢が要求されるのは低速車両10の走行場所の傾斜等を端末装置20が検出するためである。好ましくは車椅子に着座したユーザが少ない視線移動で端末装置20のディスプレイ26を閲覧できるようにアタッチメント9が端末装置20を固定する。
【0029】
端末装置20は、サーバ40と通信する機能、及び、障害情報を検出するためのセンサ等を備えた情報処理装置である。端末装置20の一例としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話、及びノートPC(Personal Computer)等が挙げられる。端末装置20はブラウザソフトウェア又はアプリケーションソフトウェアを実行する。ブラウザソフトウェアは任意のURL(Uniform Resource Locator)に接続しWebページを表示させるソフトウェアであり、サーバ40と通信して電子地図と共に障害情報を表示させる。アプリケーションソフトウェアは電子地図を表示させるための専用のソフトウェアであり、サーバ40と通信して電子地図と共に障害情報を表示させる。いずれの場合もナビゲーション機能を有する。ナビゲーション機能とは、低速車両10の周辺の電子地図を端末装置20のディスプレイに表示すると共に、出発地から目的地までの経路を案内する機能である。
【0030】
また、端末装置20は汎用的な情報処理装置として用意される他、ナビゲーション専用端末でもよい。ナビゲーション専用端末はPND(Portable Navigation Device)とも呼ばれる。この他、主に他の用途で使用される装置(例えば、音楽プレーヤ、ゲーム機等)が端末装置20として使用されてもよい。
【0031】
端末装置20は、汎用的な情報処理装置として用意される場合とナビゲーション専用端末のどちらの場合でも、低速車両10に搭載された状態と携帯可能な状態の切り替えが可能であってよい。つまり、端末装置20は低速車両10に対し脱着可能である。
【0032】
端末装置20は、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、タッチパネルや音声認識装置などの入力装置、及び、基地局8と通信するための通信装置等を有すると共に、障害情報を検出するためのセンサを有している。センサは、例えば三軸の加速度センサ、姿勢を検出するジャイロセンサ、東西南北の方位を検出する方位センサ、及び、現在地を検出するGPS(Global Positioning System)受信機などである。
【0033】
<機能について>
図3は、端末装置20とサーバ40の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
【0034】
<<端末装置>>
端末装置20は、センサ部21、センサデータ送信部22、電子地図取得部23、操作受付部25、及び、画面表示部24を有している。これら図3に各ブロックとして示す機能は、端末装置20が有するハードウェアリソースのいずれかが、HDDからRAMに展開されたプログラムに従ったCPUからの命令により動作することで実現される機能又は手段である。端末装置20が実行するプログラムは、プログラム配信用のサーバから配信されるか又は記憶媒体に記憶された状態で配布される。
【0035】
センサ部21は、更に位置検出部21a、加速度検出部21b、及び、傾斜検出部21cを有している。位置検出部21aは、端末装置20の現在地を位置情報として検出する。位置検出部21aは周期的に現在地を検出し自律航法やマップマッチングなどにより電子地図上の位置を推定する。位置検出部21aは例えばCPUがGPS受信機を制御することで実現される。
【0036】
加速度検出部21bは少なくとも上下方向の加速度を検出し、好ましくは上下方向、左右方向、及び、前後方向に生じる加速度を検出する。加速度検出部21bは、例えばCPUが三軸の加速度センサを制御することで実現される。傾斜検出部21cは端末装置20に生じる角速度を積分して端末装置20がどのくらい傾斜しているかを検出する。すなわち、ロール角、ピッチ角、及び、ヨー角を検出する。傾斜検出部21cは例えばCPUがジャイロセンサを制御することで実現される。
【0037】
センサ部21の位置検出部21a、加速度検出部21b、及び、傾斜検出部21cはそれぞれ周期的に情報を検出し、センサデータ送信部22に送出する。位置検出部21aが検出する位置情報、加速度検出部21bが検出する加速度情報、及び、傾斜検出部21cが検出する傾斜情報をまとめて「センサデータ」と称する。
【0038】
センサデータ送信部22は、センサデータが検出されたタイミングでセンサデータをサーバ40に送信する。検出されたタイミングでセンサデータを送信すると端末装置20の負荷が大きい等の不都合がある場合、一定時間ごと、一定量のセンサデータが貯まるごと、又は、負荷が少ないタイミングに送信すればよい。一定時間は数秒~1分程度が考えられるが、センサデータはリアルタイムに送信されなくてもよいので、適宜、処理負荷等を考慮して決定される。
【0039】
操作受付部25はユーザから端末装置20に対する各種の操作を受け付ける。例えば、障害情報の表示に関する操作を受け付ける。また、ユーザから経路検索のため目的地の入力を受け付け、必要であれば現在地以外の出発地を受け付ける。また、経路案内の開始、リルートの指示、電子地図の拡大・縮尺の指示、及び、表示範囲変更などの指示を受け付ける。
【0040】
電子地図取得部23は、位置検出部21aが検出した位置情報をサーバ40に送信し、現在地周辺の電子地図と障害情報を取得する。また、操作受付部25が受け付けた操作に応じてサーバ40に経路検索要求、及び、電子地図の更新要求など各種の要求を送信し、サーバ40から電子地図と共に障害情報を取得する。経路検索を要求した場合、電子地図取得部23は経路情報も取得する。経路情報とは経路に沿ってユーザが進行するために進路を変更する交差点や進行方向を指示する情報である。
【0041】
画面表示部24は、電子地図、各種のボタン、テキスト及びアイコンを用いてナビ画面(目的地までユーザを案内する画面)を生成し、ディスプレイ26に表示する。また、操作受付部25がナビ画面に対する操作を受け付けると、操作に応じてナビ画面を遷移させる。
【0042】
なお、図3では端末装置20がサーバ40から電子地図を取得しているが、サーバ40が有する地図DB493を端末装置20が有しておき、端末装置20が電子地図を生成してもよい。この場合、サーバ40から送信された障害情報を画面表示部24が電子地図に合成する。
【0043】
<<サーバ>>
サーバ40は、センサデータ受信部41、分析エンジン42、集計部43、及び、地図生成部44を有している。図3に各ブロックとして示すサーバ40の機能は、サーバ40が有するハードウェアリソースのいずれかが、HDDからRAMに展開されたプログラムに従ったCPUからの命令により動作することで実現される機能又は手段である。サーバ40が実行するプログラムは、プログラム配信用のサーバから配信されるか又は記憶媒体に記憶された状態で配布される。
【0044】
また、サーバ40は、HDD、ROM又はRAM等により構築される記憶部49を有している。記憶部49には、分析結果DB491、障害地点DB492、及び、地図DB493が構築されている。これらの各DBは、サーバ40が直接有していなくてもよく、サーバ40がアクセス可能なネットワークN上の任意の場所にあればよい。分析結果DB491については表1で説明し、障害地点DB492については表2で説明する。地図DB493は電子地図を描画するための地図データを記憶している。電子地図に表示される情報には、都道府県などの区画、緑地や河川、道路や鉄道、記号や注記など多くの表示対象があるため、性質の似たものに分類し各分類ごとに描画できるようになっている。それぞれに分類された表示対象又は表示対象が描画された状態をレイヤーといい、電子地図はいくつかのレイヤーを重ねることで描画される。
【0045】
センサデータ受信部41は、端末装置20からセンサデータを受信して、分析エンジン42に送出する。分析エンジン42はセンサデータを蓄積しておき、所定時間Tごとに障害要因の有無の判断を行うための分析を行う。所定時間Tは例えば、数秒ごとであり任意の端末装置20の数秒分のセンサデータの分析を1回の分析とする。例えば5秒ごとに分析する場合、5秒間のセンサデータの分析により1回の分析結果(障害要因の有無の判断)が得られる。この分析の詳細は後述されるが、分析により各障害要因の有無と障害要因がある場合は検出された障害要因の個別属性データが判断される。分析結果は分析結果DB491に記憶される。分析結果の一例を表1に示す。
【0046】
集計部43は、メッシュごとに障害要因を集計して、メッシュごとに障害情報を生成する。障害情報の一例を表2に示す。
【0047】
地図生成部44は、端末装置20から送信された現在地の周囲の電子地図を地図DB493に記憶された地図情報を使って生成する。本実施形態では更に障害地点DB492に記憶された障害情報を電子地図に添付する。障害情報はメッシュ単位で作成されるので、例えば、スコアが所定値以上のメッシュの中央にスコアの大きさに応じた色のピンアイコン51を描画する。このピンアイコン51には表2のような障害情報が対応付けられる。
【0048】
【表1】
表1は分析結果の一例を示す。分析結果は管理ID、メッシュコード、検出地点、検出日時、障害要因、方位、及び、個別属性データの各項目を有する。管理IDは分析結果を一意に特定するための識別情報である。IDはIdentificationの略であり識別子や識別情報という意味である。IDは複数の対象から、ある特定の対象を一意的に区別するために用いられる名称、符号、文字列、数値又はこれらのうち1つ以上の組み合わせをいう。
【0049】
メッシュコードは地表がメッシュ状に区切られた場合の各メッシュの識別情報である。メッシュは正方形の矩形領域であり、1辺の長さは障害情報の集計に適切な長さが決定されている。1辺の長さは、例えば10メートル前後であるが、5メートルでもよいし、10メートル超でもよい。極端に狭いと電子地図の閲覧時に表示される障害情報(ピンアイコン51)が多くなり過ぎ、極端に広いと電子地図ではピンアイコン51が表示されてもメッシュ内のごく一部にしか障害がないという状況が生じやすくなる。
【0050】
検出地点は、センサデータに含まれる位置情報(緯度、経度)である。所定時間Tにおける位置情報の平均などでよい。検出日時はセンサデータが検出された日時である。例えば、1組のセンサデータに含まれる各情報の検出日時の平均、端末装置20がセンサデータを送信した日時、又は、サーバ40がセンサデータを受信した日時等である。障害要因は、分析により障害があると判断された障害の要因である。本実施形態では段差、縦勾配、横勾配、狭路、及び、凹凸を障害要因とする。分析結果にはこれらのうち存在すると判断された障害要因のみが登録される。
【0051】
方位は、障害要因がどの方位への走行時に検出されたかを示す。例えば、北向きを0度にして、時計回りに最大359度の値を取る。方位は障害要因ごとに登録される。
【0052】
個別属性データは存在すると判断された障害要因に関する属性データである。例えば、段差の属性データは高さであり、縦勾配と横勾配の属性データは角度であり、凹凸の属性データは点字ブロック、砂利、土又は平坦のいずれかの路面種類である。なお、狭路は有無が判断されるため個別属性データはなくてよい。
【0053】
【表2】
表2は障害情報の一例を示す。障害情報はメッシュコード、中心座標、要因別寄与率、スコア、方位、及び、個別属性データの各項目を有する。メッシュコードは表1と同じものである。中心座標は、メッシュの中心の座標である。要因別寄与率は、各障害要因がスコアに寄与した寄与率である。したがって、寄与率が大きい障害要因ほど当該メッシュの障害要因として顕著である。スコアは、当該メッシュを低速車両10が走行する際の走行の困難性を示す。スコアはある一定の範囲の値を取り、ユーザはスコアにより当該メッシュの走行の困難性がどのくらい高いかを判断できる。本実施例では0~100の値を取るとして説明するが1~10の10段階でもよいし、ABCの3段階でもよい。方位は、当該メッシュ内で検出された各障害要因ごとの方位の平均値である。障害情報の個別属性データはメッシュ内で検出された同じ障害要因の個別属性データの平均値である。
【0054】
<障害要因の例>
続いて、図4、5を用いて本実施形態のサーバ40で判断される障害要因の例について説明する。
【0055】
・段差
図4(a)は段差と呼ばれる障害要因の一例を示す。段差とは、走行時に高さが急激に変化することをいう。段差201のようにそれまでよりも高さが高くなる場合と、段差202のようにそれまでよりも高さが低くなる場合がある。段差の属性データは段差201の高さh、及び、段差202の高さhである。なお、段差202の高さは負値(マイナス値)として算出されるが、本実施形態では正負を区別しないものとする。これは、低速車両10はどちらの方向にも走行する可能性があり、正負の判断の必要性が乏しいためである。
【0056】
・縦勾配
図4(b)は縦勾配と呼ばれる障害要因の一例を示す。縦勾配とは、進行方向に連続的に高さが変化することをいう。図4(b)の角度αが縦勾配である。高さが徐々に高くなる登りの縦勾配と、高さが徐々に低くなる下りの縦勾配がある。登りか下りかは傾斜情報により判断可能であるが、本実施形態では正負を区別しないものとする。
【0057】
・横勾配
図4(c)は横勾配と呼ばれる障害要因の一例を示す。横勾配とは、進行方向に垂直な方向に連続的に高さが変化することをいう。図4(c)の角度βが横勾配である。右下がりの横勾配と、左下がりの横勾配がある。本実施形態では右下がりと左下りを区別しないものとする。
【0058】
・狭路
図4(d)は狭路と呼ばれる障害要因の一例を示す。狭路とは、低速車両10の横幅に対し幅員が狭い通路をいう。例えば、低速車両10が車椅子の場合、1メートル程度の幅員の通路である。狭路の一例として図4(d)は公園の車止めを示している。このように狭路は湾曲していることも少なくない。狭路では低速車両10が対向者とすれ違いしにくく、湾曲している場合には細かな方向転換や切り返しなどが必要になるため、低速車両10が通行しにくい。
【0059】
・凹凸
図5(a)~(c)は凹凸と呼ばれる障害要因の一例を示す。凹凸とは、路面の凹凸に関する路面種類である。低速車両10の走行時に路面が平坦でなかったり変動したりすると走行しにくい。図5(a)は凹凸の一例として点字ブロック203を示している。点字ブロック203では細かい振動が低速車両10に生じるため低速車両10が走行しにくい。図5(b)は凹凸の一例として砂利204を示している。砂利は低速車両10のタイヤが沈み込むため低速車両10が走行しにくい。図5(c)は凹凸の一例として土205を示している。軟らかい土、又は、雨や霜が発生した後の土は低速車両10のタイヤが沈み込むため走行しにくい。
【0060】
<障害要因の有無の判断の流れ>
図6を用いて障害要因の有無の判断の流れを説明する。まず、図6(a)は低速車両10が走行する地形を模式的に示す。図示するように低速車両10は縦勾配を走行しており途中に段差201がある。図6(a)のt-1、t、t+1はそれぞれ分析エンジン42がセンサデータを分析する所定時間Tの範囲を示している。つまり、t-1の所定時間Tで取得されたセンサデータで1回の分析が行われ、tの所定時間Tで取得されたセンサデータで1回の分析が行われ、t+1の所定時間Tで取得されたセンサデータで1回の分析が行われる。
【0061】
図6(b)はt-1、t、t+1の各所定時間Tで取得されたセンサデータN-1、N、N+1を模式的に示す。図6(b)のセンサデータは例えば加速度である。センサデータN-1とN+1のセンサデータは比較的平坦であるが、センサデータNは大きな変動を示す。例えば、加速度の場合は加速度が大きく変化したことを示す。分析エンジン42はこのようなセンサデータNの分析により障害要因の有無と障害要因の個別属性データを判断する。
【0062】
図6(c)はメッシュ210と障害要因の関係を説明する図の一例である。図6(c)の矢印61は低速車両10の軌跡であり、t-1、t、t+1は図6(a)と同様に所定時間Tの範囲を示す。障害要因があると判断されると、分析結果に検出地点62が記録される。検出地点62が含まれるメッシュに分析結果が対応付けられる。
【0063】
<分析エンジンについて>
図7図8を用いて分析エンジン42による障害要因の有無と障害要因の個別属性データの判断について詳細に説明する。図7は、分析エンジン42の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。分析エンジン42は、各障害要因に対応した判断部を有する。例えば、段差判断部42a、縦勾配判断部42b、横勾配判断部42c、狭路判断部42d、及び、凹凸判断部42eを有する。また、図7では、判断に用いる代表的なセンサデータがそれぞれの判断部に対応付けられているが、判断部とセンサデータの対応は説明ための一例に過ぎない点に注意されたい。
【0064】
段差判断部42aは加速度情報に基づいて段差という障害要因の有無、及び、段差の高さを判断する。図8(a)は加速度情報の一例を示す。なお、段差の違いは上下方向の加速度に影響するので主に上下方向の加速度に着目すればよい。よく知られているように加速度が2回積分されると、変位が得られる。この変位が高さである。段差判断部42aは、所定時間T分の時間に対する加速度情報を線形補間して更に等間隔に値を取ることで等間隔のデータに変換する。このデータを2回積分することで図8(b)に示すように段差の高さに変換される。
【0065】
段差判断部42aは、高さの絶対値を閾値と比較し、高さが閾値以上の場合、段差があると判断する。なお、段差の有無は加速度情報そのものに基づいて行ってもよい。すなわち、加速度の絶対値と閾値を比較する。加速度の絶対値が大きい場合には障害要因として段差があると判断できる。
【0066】
縦勾配判断部42bは傾斜情報のうちピッチ角を主に参照し、所定時間T分の平均、最大値、又は、最小値を算出する。これらのうち1つ以上の絶対値が閾値より大きい場合、障害要因として縦勾配があると判断する。また、縦勾配があると判断した場合、所定時間T分の平均を個別属性データとする。
【0067】
横勾配判断部42cは傾斜情報のうちロール角を主に参照し、所定時間T分の平均値、最大値、又は、最小値を算出する。これらのうち1つ以上の絶対値が閾値より大きい場合、障害要因として横勾配があると判断する。また、横勾配があると判断した場合、所定時間T分の平均を個別属性データとする。
【0068】
狭路判断部42dは、例えば位置の変化と速度に基づいて狭路の有無を判断する。図8(c)は狭路通過時の低速車両10の位置の変化の一例を示す。狭路は低速車両10が走行しにくい通路なので、速度が極端に低下する。したがって、所定時間T分の移動量を閾値と比較し、閾値未満であれば狭路と判断できる。好ましくは、更に、狭路が湾曲していることを利用する。所定時間T内で進行方向が閾値以上、変更されている場合、通路が湾曲していたと判断できる。例えば、所定時間T内の位置情報を直線で接続して、最初の直線と他の直線の角度の違いを算出し閾値と比較する。したがって、狭路判断部42dは、速度が閾値未満であり、かつ、進行方向が変更されている場合、障害要因として狭路があると判断する。
【0069】
凹凸判断部42eは、加速度情報と傾斜情報に基づいて路面の凹凸を判断する。点字ブロックの場合、加速度は上下方向、左右方向、及び、前後方向に細かく変動する。したがって、例えば時系列に得られている加速度の正負を検出し、所定時間Tにおける正負の反転数が閾値を超える場合に、障害要因として凹凸があり路面種類が点字ブロックであると判断する。上下方向、左右方向、及び、前後方向の加速度の1つ以上で反転数が閾値を超えた場合に点字ブロックであると判断すればよい。あるいは、凹凸判断部42eは加速度情報をフーリエ変換して高周波数成分が低周波数成分に対し有意に大きい場合に、点字ブロックであると判断してもよい。
【0070】
砂利の場合、加速度の変動は点字ブロックほど大きくないが、タイヤが沈み込むため、低速車両10がふらつく。例えば、左右、前後のタイヤで沈み込み方が異なるため横勾配及び縦勾配の変動が生じる。凹凸判断部42eは、例えば、所定時間Tの左右、前後の傾斜の分散を算出して閾値と比較し、閾値以上の分散が検出される場合、障害要因として凹凸があり路面種類の砂利があると判断する。
【0071】
土の場合も砂利と同様の傾向があるため、砂利と同様に判断できる。砂利にくらべ土の方がタイヤの沈み込みが少ないので、凹凸判断部42eは、土用に用意された閾値を傾斜から求めた分散と比較する。
【0072】
凹凸判断部42eは、点字ブロック、砂利、及び土のいずれでもないと判断した場合、路面種類が平坦であると判断する。
【0073】
<分析結果に基づく集計>
以上のようにして、分析エンジン42が所定時間Tのセンサデータに障害要因があると判断すれば、検出地点の分析結果が得られる。
【0074】
図9は、あるメッシュにおいて検出された分析結果を模式的に示す。図9では1つのメッシュに10個の分析結果が得られている。集計部43はメッシュ単位で分析結果を集計する。
【0075】
【表3】
表3は、各障害要因の集計方法を説明する図の一例である。表3に示すように、集計部43は障害要因ごとに個別属性データの平均を算出して集計値とする。例えば10個の分析結果から各障害要因が検出された分析結果が障害要因ごとに抽出され平均が算出される。
・段差:個別属性データの高さの平均を算出
・縦勾配:個別属性データの縦勾配の平均を算出
・横勾配:個別属性データの横勾配の平均を算出
・狭路については個別属性データがないので平均は算出されない。狭路については「0.5」を集計値とする。これは、後述するように段差、縦勾配、横勾配の集計値(平均)が1以下の値に正規化されるため、「0~1」の範囲の中間値としたものである。狭路がスコアに与える寄与率を大きくしたい場合は"1"に近い値とし、小さくしたい場合は"0"に近い値とする。
・凹凸については路面種類(点字ブロック、砂利、土、平坦)ごとの検出回数が集計値である。
【0076】
例えば、あるメッシュに10個の分析結果が対応付けられており、そのうち3つで段差の障害要因が検出されている場合、3つの障害要因の個別属性データから段差の高さh1~h3を取得し、(h1+h2+h3)/3が高さの平均である。縦勾配と横勾配も同様に算出される。狭路については10個の分析結果に狭路という障害要因があるか否かに関わらず0.5が集計値である。凹凸については、10個の分析結果から点字ブロックが検出された分析結果の数、砂利が検出された分析結果の数、土が検出された分析結果の数、平坦が検出された分析結果の数をカウントする。
【0077】
また、方位については単純に各障害要因ごとに方位の平均が算出される。
【0078】
集計部43は、段差、縦勾配、及び、横勾配、の平均を障害情報の個別属性データに設定する。また、凹凸については1回以上、検出された路面種類をそれぞれ障害情報の個別属性データに設定する。また、障害要因ごとの方位の平均を障害情報に設定する。
【0079】
<スコアの算出>
以上で各障害要因ごとに集計値が得られたが、これらは単位も各数値のレンジ(範囲)も大きく異なっており、単純に合計しても障害要因を総合することは困難である。そこで、集計部43は各集計値を正規化する。
・段差(Sstep):集計値(高さの平均)を高さの最大値で割った値
・縦勾配(Sslopel):集計値(縦勾配の平均)を縦勾配の最大値で割った値
・横勾配(Sslopex):集計値(横勾配の平均)を横勾配の最大値で割った値
・狭路(Snarrow):上記のように「0.5」をそのまま正規化された値とする
・凹凸(Sirre):検出回数が最も多い路面種類(点字ブロック、砂利、土又は平坦)の検出回数を全ての路面種類の検出回数で割った値
以上により、それぞれの障害要因の集計値のレンジを0~1の範囲に揃えることができた。集計部43は、障害要因の検出回数により集計値を重み付けして合計することで、メッシュ内の総合的な走行の困難性を表すスコアを算出する。
【0080】
スコアの算出を説明するため、以下のように定義する。
step:メッシュ内で段差という障害要因が検出された回数
slopel:メッシュ内で縦勾配という障害要因が検出された回数
slopex:メッシュ内で横勾配という障害要因が検出された回数
narrow:メッシュ内で狭路という障害要因が検出された回数
irre:メッシュ内で検出された最も多い路面種類の検出回数
そして、Nallを以下のように定義する。
all=Nstep+Nslopel+Nslopex+Nnarrow+Nirre
スコアは下式で算出される。
【0081】
【数1】
式(1)から明らかなように、各障害要因の検出回数が多いほどスコアは大きくなる。また、集計値が大きいほどスコアが大きくなる。したがって、メッシュ内の総合的な走行の困難性を数値で表すことができる。なお、スコアはNallで割られているので0~1の値を取る。本実施形態では、見やすさを考慮して式(1)の算出結果を100倍するものとする。これにより、スコアは0~100の値を取る。
【0082】
また、各障害要因の寄与率は以下のように算出される。
【0083】
【数2】
なお、式(2)の分子の「N×S」は任意の障害要因の集計値と検出回数の積を表す。集計部43は、各障害要因の寄与率を障害情報に設定する。
【0084】
<障害情報の表示例>
以上のようにして表2の障害情報が算出される。障害情報はメッシュ単位に集計されるので電子地図上の表現としては以下のようになる。
【0085】
図10は、メッシュに対応付けられた障害情報を模式的に示す図である。メッシュの中心に表2の障害情報が対応付けられる。また、端末装置20が電子地図を表示する際、スコアが閾値以上の場合にだけ、障害情報が存在する旨を表示してもよい。スコアが小さい障害情報は表示する必要性が低いためである。しかし、どのくらいのスコアを走行しにくいと感じるかは個人差があるのでユーザが閾値を設定することができることが好ましい。
【0086】
また、図10(a)に示すように、障害情報が存在する旨が表示される場合、スコアが大きいほど注意喚起性が高い色でピンアイコン51が表示される。なお、ピンアイコン51の注意喚起性を表す態様は色の他、大きさでもよいし、形状でもよいし、記号(例えば、大、中、小)でもよいし、点滅の早さでもよい。
【0087】
また、図10(b)に示すように、端末装置20はピンアイコン51でなく電子地図に枠58を描画してもよい。スコアが閾値以上の場合、スコアが大きいほど注意喚起性が高い色でメッシュ210を囲む枠58が表示される。
【0088】
図11は、端末装置20のディスプレイ26における電子地図と障害情報の表示例を示す。電子地図は均等にメッシュに区切られているが、障害要因が検出されたメッシュ又はスコアが閾値以上のメッシュにだけピンアイコン51が表示されている。また、ピンアイコン51はスコアの大きさによって異なる色で表示される。ユーザがピンアイコン51を押下すると、操作受付部25が押下されたピンアイコン51を特定し、画面表示部24が該ピンアイコン51に対応付けられた障害情報の詳細50を表示する。図11では区別するため障害情報の詳細50Aと50Bの符号を付した。
【0089】
図11では障害情報の詳細として、複合情報55、最大障害要因52、スコア53、及び、詳細ボタン54が表示されている。複合情報55は、当該メッシュで複数の障害要因が検出された場合に「複」と表示され、当該メッシュで単一の障害要因が検出された場合に「単」と表示される。したがって、ユーザは一目で複合的な障害要因があるか否かを判断できる。
【0090】
最大障害要因52はメッシュ内で寄与率が最大の障害要因である。凹凸が最大の障害要因の場合は、障害情報の詳細50Aに示すように路面種類を表示することが好ましい。ユーザは複合的な障害要因がある中で走行の困難性に最も影響する障害要因を確認できる。この路面種類は個別属性データの凹凸に対応付けられた路面種類のうち検出回数が最も多い路面種類である。また、障害情報の詳細50Bに示すように、段差、縦勾配又は横勾配が最大の寄与率を有する場合、個別属性データ(高さ、縦勾配、横勾配)を表示することが好ましい。ユーザは複合的な障害要因がある中で走行の困難性に最も影響する障害要因を確認でき、更にどのくらいの段差、縦勾配、又は横勾配であるかを知ることができる。
【0091】
スコア53は障害情報に設定された上記の式(2)で算出された値である。詳細ボタン54が押下されると画面表示部24は、中心座標から求めた地名、障害情報に設定された方位、及び、各障害要因ごとの寄与率等をディスプレイ26に表示させる。
【0092】
<動作手順>
図12は、本実施形態の障害情報提供システム100の全体的な動作を説明するシーケンス図の一例である。
【0093】
ステップS1:端末装置20のセンサ部21は位置情報、加速度情報、及び、傾斜情報を検出する。センサデータ送信部22は送信するタイミングまでの間、センサデータを収集しておく。
【0094】
ステップS2:送信するタイミングになると、センサデータ送信部22はセンサデータをサーバ40に送信する。
【0095】
ステップS3:サーバ40のセンサデータ受信部41はセンサデータを受信し、分析エンジン42に蓄積する。
【0096】
ステップS4:分析エンジン42は所定時間T分のセンサデータを順次、分析する。分析エンジン42は所定時間Tごとにセンサデータから障害要因の有無を判断し、障害要因がある場合は各障害要因の個別属性データを算出する。分析結果は分析結果DB491に記憶される。
【0097】
ステップS5:集計部43は、分析結果DB491から分析結果を読み出して、メッシュごとに分析結果を集計して障害情報を生成する。障害要因は短時間に変化するものではないので、メッシュごとに一定量の分析結果が蓄積された場合に行えばよい。
【0098】
ステップS6:端末装置20の電子地図取得部23は、任意のタイミングで電子地図をサーバ40に要求する。電子地図の要求には端末装置20の位置情報が含まれていてよい。
【0099】
ステップS7:サーバ40の地図生成部44は、位置情報の周辺の電子地図を生成し、この電子地図の範囲のメッシュに対応付けられた障害情報を電子地図に添付する。
【0100】
ステップS8:地図生成部44は電子地図と共に障害情報を端末装置20に送信する。
【0101】
ステップS9:端末装置20の電子地図取得部23は電子地図を受信し、画面表示部24に送出する。画面表示部24は、ピンアイコン51等で表現された障害情報を電子地図と共にディスプレイ26に表示する。
【0102】
<まとめ>
以上説明したように本実施形態の障害情報提供システム100は、複合的な障害要因を総合して障害情報を生成するため、複合的な障害要因を有する地形の走行がどのくらい困難であるかを低速車両10のユーザが判断しやすくなる。
【実施例2】
【0103】
本実施例では、分析結果が集計されるメッシュのメッシュサイズを低速車両10の大きさによって変更する障害情報提供システム100について説明する。
【0104】
実施例1では、「メッシュは正方形の矩形領域であり、1辺の長さは障害情報の集計に適切な長さが決定されている。」と説明した。また、サーバ40はこのメッシュ(又は、矩形や多角形のようなある程度まとまった範囲)に分析結果を集計したうえでユーザへ情報提供を行う。
【0105】
しかしながら、低速車両10というカテゴリーには多様な大きさのものが存在するため、データ集計の単位(すなわちメッシュサイズ)が固定又は一定であるといくつかの不都合が生じる。図13を用いて説明する。
【0106】
図13は、低速車両10の大きさが多様であるのに対しメッシュサイズが固定又は一定である場合に生じる不都合を説明する図の一例である。まず、図13(a)は低速車両10の実機の外観図を示す。低速車両10aは歩道を走行可能であるが、低速車両10bは車道を走行するように法律で定められている。また、低速車両10aは乗車した人が立った状態で運転し、左右に平行な2つの車輪しかないため、その全長は数10cmである。一方、低速車両10bは乗車した人が脚を前方に伸ばして座った状態で運転し、前後に合計4つの車輪があるため、その全長は1~2〔m〕である。
【0107】
図13(b)は複数のメッシュ7を示し、図13(c)は図13(b)の1つのメッシュ7を拡大した図である。このメッシュ7に含まれる分析結果はこのメッシュ7の障害情報として集計される。図13(c)において、矢印101はメッシュ7のサイズに対する低速車両10aの相対的な大きさを示し、矢印102はメッシュ7のサイズに対する低速車両10bの相対的な大きさを示す。
【0108】
まず、低速車両10aのように図13(c)のメッシュ7のサイズに対し低速車両10aの大きさが小さい場合を説明する。メッシュ7の中心Oがメッシュの位置になるため障害情報はメッシュの中心Oに表示されるが、メッシュ7のサイズに対し低速車両10の大きさが小さい場合、障害情報の実際の事象が存在する位置と地図上に示される障害情報が存在する位置とがかい離するため、障害情報の信頼度が低下する。つまり、地図上ではユーザの近くにあるはずの障害要因が実際の自車位置からは遠くに存在するためユーザが違和感を覚えるおそれがある。また、複数の異なる障害要因が1つのメッシュ7に集計される傾向が高まりユーザが受ける障害情報が複雑になるおそれがある。なお、メッシュ7のサイズに対し低速車両10aの大きさが小さいことを単に「データ集計の単位が大きすぎる」という場合がある。
【0109】
低速車両10bのように図13(c)のメッシュサイズに対し低速車両10bの大きさが大きい場合、1つのメッシュで生じた障害要因(分析結果)の数が少なくなり、障害情報の信頼度が低下するおそれがある。例えば、段差の大きさを数値化する際に1つの段差では高さ等が不正確となるおそれがあるが、1つのメッシュに段差に関する複数の分析結果が得られていれば、その平均を算出することでより正確な段差の障害情報を生成できる。なお、メッシュサイズに対し低速車両10aの大きさが大きいことを単に「データ集計の単位が小さすぎる」という場合がある。
【0110】
そこで、本実施例の障害情報提供システム100は、分析結果が集計され1つの障害情報が生成されるメッシュのメッシュサイズを低速車両10の大きさに応じて適切に決定する。
【0111】
<障害情報提供システムの概略的な動作>
図14は、本実施例の障害物情報システムの概略的な動作を説明する図の一例である。
(1)実施例1で説明したように低速車両10は、センサデータをサーバ40へ送信する。
(2)センサデータの収集時のサーバ40は、実施例1と同様に、センサデータの分析結果を分析結果DB491に登録しておく。一方、サーバ40は地図DB493等のメッシュを最小サイズのメッシュに分割しておく。最小サイズのメッシュとは、国内外を走行している低速車両10において最も小さいとみなせる低速車両10の大きさよりもやや大きい程度の小さなサイズのメッシュサイズである。なお、最小のメッシュサイズは地図データとして提供されるメッシュも考慮される。最も小さいとみなせる低速車両10よりも大きい最小サイズのメッシュを生成しておくことで、大きめの低速車両10に提供される障害情報のメッシュサイズは最小サイズのメッシュが統合された大きさになる。したがって、全ての低速車両10について低速車両10の大きさよりも大きいメッシュを用意できる。
(3)任意の低速車両10が走行位置に応じた電子地図をサーバ40に要求するが、本実施例では電子地図を要求する際に低速車両10の車体情報を送信する。車体情報は、例えば車体の全長など車体の大きさが分かる情報を含む。
(4)電子地図の要求を取得したサーバ40は、低速車両10の大きさに対し適切なサイズのメッシュサイズを決定する。そして、サーバ40は、このメッシュサイズのメッシュごとに分析結果を集計してメッシュごとに障害情報を生成する。
(5)サーバ40は、このようにして大きさが適切に変更されるメッシュの障害情報を電子地図と共に低速車両10に送信する。
【0112】
<機能について>
図15は、端末装置20とサーバ40の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。なお、本実施例において、図3において同一の符号を付した構成要素は同様の機能を果たすので、主に本実施例の主要な構成要素についてのみ説明する場合がある。
【0113】
本実施例のサーバ40は新たにメッシュ生成部46とメッシュサイズ決定部45を有している。メッシュ生成部46は上記のように国内外を走行する最も小さい低速車両10の大きさが考慮された最小サイズのメッシュを生成する。最小サイズのメッシュを生成する際、メッシュ生成部46はメッシュを識別するためのメッシュコードを生成し、地図データの座標と対応付けておく。
【0114】
メッシュサイズ決定部45は、端末装置20から電子地図要求と車体情報を取得すると、メッシュサイズを決定すると共に、このメッシュサイズのメッシュを特定するための最小限のメッシュコード長と位置情報を集計部43に送出する。
【0115】
したがって、本実施例の集計部43は、メッシュサイズが決まってから分析結果を集計して障害情報を生成する。集計部43は、メッシュサイズ決定部45が決定したメッシュコード長で位置情報をメッシュコードに変換する。詳細は後述されるがメッシュコード長が3桁なら、位置情報を3桁のメッシュコードに変換する。集計部43はメッシュコードで特定されるメッシュに含まれる障害要因の分析結果を分析結果DB491から取得し、メッシュごとに障害情報を生成する。また、メッシュコードに対応付けて障害情報を障害地点DB492に登録する。
【0116】
そして、地図生成部44は、電子地図の要求に含まれる位置情報にしたがって地図DB493から地図データを読み出し電子地図を生成し、位置情報で特定されるメッシュコード(桁数は低速車両10の大きさによって変わりうる)の障害情報を障害地点DB492から読み出して電子地図に添付する。
【0117】
<最小サイズのメッシュについて>
図16を用いて、最小サイズのメッシュの作成方法を説明する。図16は、メッシュの分割による最小サイズのメッシュの作成方法を説明する図の一例である。一般に地図データは四角形のメッシュに分割して提供されているため、地図DB493の地図データもある程度のサイズのメッシュにまで分割されている。例えば図16の最左のようなサイズに分割されたメッシュの地図データが入手可能であるとする。これを便宜的に階層1のメッシュとする。
【0118】
一方、このような地図データは更に分割可能(理論的には際限なく)であり、階層1のメッシュを均等(例えば1/4)に分割できる。分割後の階層のメッシュを便宜的に階層2のメッシュとする。同様に、1/4の分割を繰り返せば、分割数に応じて階層3,階層4等(更に下位の階層があってもよい)のように階層が1つ大きくなりサイズが1/2になるメッシュに分割できる。
【0119】
本実施例では、国内外を走行している低速車両10において最も小さいとみなせる低速車両10の大きさがメッシュよりも小さく、かつ、障害要因の実際の位置とメッシュの中心との距離がそれほど大きくならないように決定することが好ましい。そこで、国内外を走行している低速車両10において最も小さいとみなせる低速車両10の全長の2倍程度をメッシュの最小サイズとする。例えば、低速車両10の全長が30〔cm〕であれば、メッシュの最小サイズ(一辺の長さ)は60〔cm〕である。
【0120】
一方、階層1のメッシュサイズが60〔cm〕の倍数でなければ、階層1のメッシュの分割を繰り返しても、一辺の長さが60〔cm〕のメッシュは得られない。このため、メッシュ生成部46は、分割によりメッシュの1辺の長さが低速車両10の全長の2倍程度よりも小さくなった場合、その直前の分割時におけるメッシュを最小サイズのメッシュに決定する。例えば、5回目の分割で1辺の長さが50〔cm〕になった場合、4回目の分割時のメッシュサイズである100〔cm〕を最小サイズのメッシュに決定する。なお、メッシュの1辺の長さと低速車両10の全長の2倍とのずれが所定範囲内に入るように決定すればよく、低速車両10の全長の2倍よりもメッシュサイズが小さくてもよい。
【0121】
例えば、図16に示すように階層1から3回の分割で最小サイズのメッシュが得られたものとする。この場合、分割後の各メッシュを特定するメッシュコードは決まった方法で付与される。一例として、メッシュの左上から時計回りに1,2,3,4と番号を付与するだけで下位の階層のメッシュコードを生成できる。図16の一部のメッシュについてメッシュコードを下記に示す。
階層1:1
階層2:1-1 ~ 1-4
階層3:1-1-1 ~ 1-1-4
階層4:1-1-1-1 ~ 1-1―1-4
本実施例では、どの階層のサイズのメッシュに分析結果を集計するかは、電子地図を要求する低速車両10の大きさによって変わるが、そのサイズはメッシュコードの桁数(これをメッシュコード長という)で特定できることが分かる。例えば、階層3のサイズのメッシュで障害情報が提供される場合は、3桁(1-1-1~1-1-4)がメッシュコード長である。集計部43はこのメッシュコード長で定まるサイズのメッシュに分析結果を集計する。
【0122】
また、メッシュ生成部46は階層1のメッシュを分割する際、各階層の座標とメッシュコードを対応付けておく。まず、階層1のメッシュの例えば対角頂点の座標は地図DB493により既知でありこれを(緯度1,経度1)(緯度1+H,経度1+W)とする。Wは階層1のメッシュの経路方向の広さ、Hは階層1のメッシュの緯度方法の広さである。階層2の各メッシュの座標は縦横に半分のサイズなので計算により簡単に求められる。したがって、各階層のメッシュの座標とメッシュコードを対応付けておくことができる。
メッシュコード1:(緯度1,経度1)(緯度1+W,経度1+W)
メッシュコード1-1:(緯度1,経度1)(緯度1+H/2,経度1+W/2)
メッシュコード1-1-1:(緯度1,経度1)(緯度1+H/4,経度1+W/4)
メッシュコード1-1-1-1:(緯度1,経度1)(緯度1+H/8,経度1+W/8)
したがって、位置情報が分かればメッシュコードも分かることになる。メッシュ生成部46は各階層のメッシュの座標とメッシュコードの対応を集計部43に通知する。あるいは、集計部43がメッシュの座標とメッシュコードの対応を参照できればよい。これにより、集計部43は電子地図を要求された位置情報が分かるとこれをメッシュコードに変換し、メッシュごとに集計した障害情報をメッシュコードに対応付けて障害地点DB492に登録できる。
【0123】
<電子地図におけるメッシュサイズの決定>
次に、図17を用いて、低速車両10の大きさに基づくメッシュサイズの決定方法を説明する。図17は、車体情報に含まれる全長からメッシュサイズの決定方法を説明する図の一例である。図17に示すように、メッシュサイズ決定部45は車体情報に含まれる全長の2倍をメッシュサイズに決定する。全長とは、車体情報に含まれる縦×横×高さのうち縦×横に関し長い方をいう。高さ方向は、地面を占める大きさとの関連が低いため無視される。なお、低速車両10からは全長だけが送信されてもよい。また、車種情報が送信されサーバ40がテーブルを参照して車種を全長に変換してもよい。
【0124】
全長の2倍が、図16で説明した最小サイズの倍数になるとは限らないので、メッシュサイズ決定部45は、全長の2倍の値が最も近いメッシュサイズを決定する。あるいは、全長の2倍の値よりも大きくてかつ最も近いメッシュサイズでもよいし、全長の2倍の値よりも小さくてかつ最も近いメッシュサイズでもよい。こうすることで、メッシュサイズ決定部45は図16のいずれかの階層のメッシュサイズ(及びメッシュコード長も)を決定できる。
【0125】
なお、2倍とするのは一例であって、2倍より大きい整数倍(3倍~10倍等)してもよい。また、全長だけでなく縦×横の面積を考慮して、この面積の関数からメッシュサイズを決定してもよい。
【0126】
<障害情報の登録>
集計部43は、メッシュサイズ決定部45が決定したメッシュコード長で位置情報をメッシュコードに変換する。例えば、階層3のメッシュサイズが決定されると、低速車両10の位置情報を中心としてディスプレイに表示されるいくつかのメッシュに対応する3桁のメッシュコード(例えば1-1-1 ~ 1-1-4)に変換する。つまり、低速車両10の周囲の障害情報を階層3のメッシュコード長に応じたメッシュごとに集計する。変換には、3桁のメッシュコードに対応付けられた座標を参照すればよい。そして、これらのメッシュコードで特定されるメッシュに含まれる分析結果を分析結果DB491から取得して、メッシュごとに障害情報を生成する。また、メッシュコードに対応付けて障害情報を障害地点DB492に登録する。
【0127】
仮に、メッシュサイズ決定部45からメッシュサイズそのものが指定された場合は、メッシュの分割等を改めて行う必要があるが、本実施例では分割済みのメッシュのメッシュコード長が指定されるので適切なサイズのメッシュを特定できる。また、メッシュは予め最小サイズまで分割されているので、どのような大きさの低速車両10から電子地図を要求されても、全長の2倍程度の大きさのメッシュごとに障害情報を生成できる。
【0128】
<動作手順>
図18は、本実施形態の障害情報提供システム100の全体的な動作を説明するシーケンス図の一例である。図18の説明では主に図12との相違を説明する。
【0129】
S11:サーバ40のメッシュ生成部46は予め最小サイズのメッシュを生成しておく。地図DB493の地図データは上記のようにある程度のサイズのメッシュに分割されているので、このメッシュを更に分割すればよい。なお、最小サイズのメッシュの作成は1度行っておけばよい。
【0130】
次の、ステップS12~S15の処理は図12のステップS1~S4と同様でよい。また、本実施例では、電子地図が要求されるまでは障害情報が作成されないため、次の処理としてステップS16の電子地図の要求が行われる。
【0131】
S16:端末装置20の電子地図取得部23は、任意のタイミングで電子地図をサーバ40に要求する。電子地図の要求には端末装置20の位置情報と車体情報が含まれている。
【0132】
S17:サーバ40のメッシュサイズ決定部45は、車体情報に含まれる低速車両10の全長に基づいてメッシュサイズを決定する。メッシュサイズ決定部45は、メッシュサイズに応じたメッシュコード長と位置情報を集計部43に送出する。
【0133】
S18:集計部43は、低速車両10の位置情報を通知されたメッシュコード長のメッシュコードに変換する。この時、位置情報を中心とするいくつかのメッシュ(ディスプレイの表示範囲)のメッシュコードを特定する。そして、このメッシュコードで特定される各メッシュごとに分析結果を集計して障害情報を生成し、障害地点DB492にメッシュコードと共に登録する。障害情報の生成方法は実施例1と同様でよい。障害地点DB492に登録されるメッシュコードはメッシュサイズ決定部45が決定したメッシュコード長の桁数である。つまり、最小サイズのメッシュコードまでは指定する必要がない。
【0134】
S19:次に、サーバ40の地図生成部44は、同様にディスプレイの表示範囲の電子地図を生成し、位置情報で特定されるメッシュコードの障害情報を障害地点DB492から読み出して電子地図に添付する。
【0135】
ステップS20、S21は図12のステップS8,S9と同様でよい。
【0136】
<低速車両の大きさに応じたメッシュにおける障害情報の表示例>
図19は、低速車両10の大きさに応じて決定されたサイズのメッシュ7における障害情報の表示例を模式的に示す図である。図19(a)は小型の低速車両10が電子地図を表示させた場合の障害情報の表示例を示す。図19(a)の1つのメッシュ7は最小サイズのメッシュ又はこれよりも若干大きい程度のメッシュである。低速車両10の大きさに対しメッシュサイズがそれほど大きくないので、障害要因が存在する位置と地図上に示される障害情報が存在する位置とがかい離しにくく、障害情報の信頼度の低下を抑制できる。また、複数の異なる障害要因が1つのメッシュに集計される傾向が低くなりユーザが受ける障害情報はそれほど複雑にならない。
【0137】
図19(b)は大型の低速車両10が電子地図を表示させた場合の障害情報の表示例を示す。図19(b)の1つのメッシュ7は3~4以上の最小サイズのメッシュと同程度のサイズのメッシュである。この場合、1つのメッシュ7で生じた障害要因の数が少なくなりにくいので、解析結果の信頼度の低下を抑制できる。
【0138】
<まとめ>
以上説明したように、本実施例の障害情報閲覧システムは、分析結果を集計するメッシュサイズを低速車両10の大きさに応じて適切に決定することで、障害情報の信頼性の低下を抑制できる。
【0139】
なお、本実施例において、センサデータの登録時に車体情報をサーバ40が取得し、車体情報ごとに分析結果を登録しておくことも有効である。メッシュサイズはセンサデータを送信した低速車両10の大きさに応じて決定しておくことができるので、実施例1と同様にセンサデータが送信された時点で障害地点DB492にメッシュごとの障害情報を登録できる。つまり、低速車両10の大きさ毎に複数の障害地点DB492が用意される。電子地図の要求時には、要求した低速車両10の大きさに対応した障害地点DB492から障害情報が提供される。
【0140】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0141】
例えば、本実施形態ではメッシュに障害情報が対応付けられたが、リンクに障害情報が対応付けられてもよい。リンクとは、道路網の結節点(ノード)と結節点を結ぶ道路を表す線分である。低速車両10が車椅子の場合、車椅子は歩道を走行するので歩道を表すリンクに、サーバ40がセンサデータの検出位置を対応付ければリンクごとの障害情報の生成が可能になる。
【0142】
この場合、ピンアイコン51もリンク上(例えばリンクの中央)に表示される。ユーザは自分が通過する歩道にピンアイコン51があるかどうか分かるので、ピンアイコン51があるリンクを通過するかどうかを判断しやすくなる。
【0143】
ユーザが経路検索した場合、端末装置20は経路上のピンアイコン51のみを表示してもよい。こうすることで、ユーザは経路上にある障害要因を把握しやすくなる。また、経路上のピンアイコン51があるリンクを回避する経路を端末装置20がサーバ40に要求してもよい。こうすることで、ユーザは障害要因を避けた経路を取得できる。この時、ユーザは自分が回避したい障害要因を端末装置20に入力してもよい。サーバ40は経路上の障害情報のうちユーザが入力した障害要因を含むリンクを回避する経路を検索する。
【0144】
また、本実施形態ではメッシュサイズが均一であると説明したが、メッシュサイズは均一でなくてもよい。例えば、分析結果の数が閾値を超えるごとにサーバ40はメッシュを1/2又は1/4に分割することを繰り返す。分析結果の数が大きい場所では局所的な障害情報が得られる。
【0145】
また、本実施形態では端末装置20が障害を検出するためのセンサを有していたが、センサと端末装置20が別体でもよい。この場合、センサと端末装置20は有線又は無線で通信する。あるいは、センサが直接、サーバにセンサデータを送信してもよい。
【0146】
また、図3などの構成例は、端末装置20とサーバ40による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。端末装置20とサーバ40の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0147】
また、サーバ40が有する各データベースを複数の情報処理装置が分散して有していてもよい。また、図2図3では一台のサーバ40を図示したが、サーバ40が複数台、存在してもよい。また、一台のサーバ40が有する機能が複数のサーバに分散して配置されてもよい。
【0148】
なお、障害地点DB492は障害情報記憶手段の一例であり、地図生成部44は電子情報提供手段の一例であり、電子地図取得部23は受信手段の一例であり、画面表示部24は表示手段の一例であり、操作受付部25は受付手段の一例であり、集計部43は集計手段の一例であり、障害地点DB492は障害情報記憶手段の一例である。センサデータ送信部22は送信手段の一例であり、センサデータ受信部41は情報受信手段の一例である。メッシュサイズ決定部45はメッシュサイズ決定手段の一例であり、メッシュ生成部46はメッシュ分割手段の一例であり、地図DB493は地図データ記憶手段の一例である。
【符号の説明】
【0149】
10 低速車両
20 端末装置
40 サーバ
41 センサデータ受信部
42 分析エンジン
43 集計部
44 地図生成部
51 ピンアイコン
100 障害情報提供システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19