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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20220719BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G09F9/00 302
G09F9/00 350Z
G02F1/1333
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019007791
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020118759
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真
(72)【発明者】
【氏名】赤村 高宏
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-079865(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187281(WO,A1)
【文献】特開2014-202830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0185110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示セルを有する表示ユニットと、前記表示ユニットの表示方向である前方に位置する透光性の表面パネルと、を有する表示装置において、
前記表示ユニットと並ぶ支持部材が設けられ、前記支持部材に、前記表面パネルの面と交差する方向へ弾性変形可能な支持片が形成され、
前記支持部材の前記表示方向と逆側である後方に、後方部材が設けられて、前記支持片と前記後方部材との間に、前後方向の隙間が形成されており、
前記表面パネルが、前記表示ユニットと前記支持片の双方に接着されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記支持片の自由端は、重力方向である下方または上方に向けられている請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記支持片の自由端は、重力方向と交差する方向である横方向に向けられている請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記支持片は、前記表示ユニットの両側にそれぞれ設けられており、
前記表示ユニットを挟んで一方の側に設けられた前記支持片と、他方の側に設けられた前記支持片とで、前記自由端が互いに離れる方向に向けられている請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記支持片と前記後方部材との間に、前記支持片の重力方向への変形を規制する規制機構が設けられている請求項3または4記載の表示装置。
【請求項6】
前記支持片と前記後方部材の少なくとも一方に、前記支持片が前記後方部材に接近するのを規制する突き当て突部が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示セルに作用する曲げ応力を低減して表示ムラが発生しにくい構造とした表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の表示装置は、表示セルを有する表示ユニットを備えている。自動車の車室内のダッシュボードやインストルメントパネルなどに支持基台が組み込まれ、支持基台に表示セルが支持されている。表示ユニットの前方には透光性の表面パネルが設置されており、表示セルで生成される画像が表面パネルを透過して表示される。この種の表示装置では、車体内に固定されるときに支持基台に作用する応力が表示セルに影響を与える課題を有している。表示ユニットに大きな応力が作用すると、表示セルに歪みが発生して、表示ムラが発生する課題がある。最近では、視野角を広く確保するためにIPS方式の液晶セルが用いられつつあるが、この液晶セルは、曲げ応力や捩じり応力が作用すると黒ムラ(輝度ムラ)が発生しやすくなる。
【0003】
特許文献1に、表示セルに作用する曲げ応力を低減して表示ムラを発生しにくくした表示装置に関する発明が記載されている。
【0004】
この表示装置は、化粧パネルとなる支持体を有しており、支持体に形成された表示窓の内部に、金属板で形成されたブラケットが設けられている。ブラケットには、表示セルとバックライトが支持されている。表示セルの前面にはタッチパッドを挟んで、ガラス板などの透光性の板材で形成された表面パネルが貼り付けられている。また、表面パネルの縁部分が、支持体の前面である支持面に接着されて固定されている。ブラケットには、複数の取付け片が一体に形成され、それぞれの取付け片と支持体とが、取付けねじを使用した固定機構によって固定されている。
【0005】
この表示装置の組立て作業では、最初に、表示セルの前面に固定されている表面パネルを、支持体の前面である支持面に接着して固定する。その後に、固定機構において、取り付け片を支持体にねじ止めする。この固定機構では、取り付け片に形成された取付け穴の内径が取付けねじの軸部の直径よりも十分に大きく開口しており、取付け片と支持体との相対的な固定位置を、表示画面と垂直な方向へ変化させることができるようになっている。表示セルに固定された表面パネルを支持体の支持面に接着した後の工程で、固定機構において、取り付け片と支持体とを、その相対位置を表示画面と垂直な方向に調整してから固定することによって、ブラケットに大きな応力が作用しなくなり、表示セルに作用する曲げ応力を低下させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-122151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された表示装置は、表面パネルが、表示セルの前面と化粧パネルである支持体の支持面の双方に固定されている。そのため、固定機構において、取付け片と支持体との相対位置を表示画面と垂直な向きに調整してねじ止めできたとしても、支持体と表面パネルとの接着部に発生する力が表示セルに応力を与える現象を完全に解消することはできない。
【0008】
また、表面パネルと支持体の支持面とを接着しない構造の採用も検討することができる。しかし、例えば、表示ユニットに設けられたブラケットの枠部にのみ表面パネルが接着された構造を採用したときには、この表面パネルを支持体に接着しない構造では、表面パネルの支持強度が十分ではなく、表面パネルに大きな衝撃などが作用したときに、表面パネルが表示ユニットから剥がされたり、表面パネルと表示ユニットとの相対位置がずれる、などの問題が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、表示ユニットと並んで位置する支持部材に表面パネルを接着することで表面パネルの接着強度を高くでき、しかも表面パネルと支持部材との接着部に発生する力が表示セルに作用する現象を低減できるようにした表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表示セルを有する表示ユニットと、前記表示ユニットの表示方向である前方に位置する透光性の表面パネルと、を有する表示装置において、
前記表示ユニットと並ぶ支持部材が設けられ、前記支持部材に、前記表面パネルの面と交差する方向へ弾性変形可能な支持片が形成され、
前記支持部材の前記表示方向と逆側である後方に、後方部材が設けられて、前記支持片と前記後方部材との間に、前後方向の隙間が形成されており、
前記表面パネルが、前記表示ユニットと前記支持片の双方に接着されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の表示装置は、前記支持片の自由端が、重力方向である下方または上方に向けられているものである。
【0012】
あるいは、本発明の表示装置は、前記支持片の自由端が、重力方向と交差する方向である横方向に向けられているものである。
【0013】
本発明の表示装置は、前記支持片は、前記表示ユニットの両側にそれぞれ設けられており、
前記表示ユニットを挟んで一方の側に設けられた前記支持片と、他方の側に設けられた前記支持片とで、前記自由端が互いに離れる方向に向けられていることが好ましい。
【0014】
前記支持片の自由端が横方向に向けられているものでは、前記支持部材に対して、表示方向と逆側である後方に、後方部材が設けられており、
前記支持片と前記後方部材との間に、前記支持片の重力方向への変形を規制する規制機構が設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明は、前記支持片と前記後方部材の少なくとも一方に、前記支持片が前記後方部材に接近するのを規制する突き当て突部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、表面パネルが、支持部材に形成された支持片と、表示ユニットと、の双方に接着されているため、表面パネルの接着強度を十分に高くできる。例えば、表面パネルが表示ユニットを構成するブラケットの枠部にのみ接着されている構造であっても、この表面パネルを支持片によっても支持することができるため、表面パネルの接着強度を十分に大きくできる。そのため、表面パネルが比較的大きな面積のガラス板であっても、耐衝撃強度を高くすることができる。また、車両の振動が作用したときなどにおいて、耐振動強度も高くすることができる。しかも、支持部材に弾性変形可能な支持片が設けられ、表面パネルが支持片に接着されているため、表面パネルと支持部材との接着力が表示セルに与える応力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の第1実施形態の表示装置を示す正面図、(B)は、(A)を1B-1B線で切断した半断面図、
図2】(A)は本発明の第2実施形態の表示装置を示す正面図、(B)は、(A)を2B-2B線で切断した半断面図、
図3】本発明の第3実施形態の表示装置を示す正面図、
図4図1(A)においてIV矢視で示した第1接着部の構造を示す部分分解斜視図、
図5図2(A)においてV矢視で示した第2接着部の構造を示す部分分解斜視図、
図6図5に示した第2接着部の変形例を示す部分分解斜視図、
図7図6に示す第2接着部で接着されている状態をVII-VII線で切断した断面図、
図8図5に示した第2接着部の変形例を示す部分分解斜視図、
図9図8に示す第2接着部で接着されている状態をIX-IX線で切断した断面図、
図10図5に示した第2接着部に設けられた支持片の変形例を示す部分斜視図、
図11図8に示した支持片を使用した第2接着部をXI-XI線で切断した断面図、
図12】(A)(B)は、第1接着部または第2接着部に用いられる支持片のさらなる変形例を示す正面図、
図13】(A)(B)は、第1接着部または第2接着部に用いられる支持片のさらなる変形例を示す正面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(A)に第1実施形態の表示装置1の正面図が示され、図1(B)に表示装置1の断面図が示されている。図2(A)に第2実施形態の表示装置101の正面図が示され、図2(B)に表示装置101の断面図が示されている。図3に第3実施形態の表示装置201の正面図が示されている。
いずれの表示装置も車載用表示装置であり、Z1方向が表示方向である前方、Z2方向が後方または背部方向、Y1方向が上方、Y2方向が重力の向く方向である下方、X1方向は重力方向と交差する(直交する)左横方向、X2方向は重力方向と交差する(直交する)右横方向である。
【0020】
図1(B)および図2(B)に示すように、表示装置1,101,201は、表示ユニット10を有している。表示ユニット10はブラケット11を有している。ブラケット11は金属板が折られて形成されている。表示ユニット10では、ブラケット11に表示セル12とバックライト装置13とが保持されている。表示セル12は、液晶セルやELセルなどである。実施の形態の表示セル12は、カラー液晶表示セルであり、視野角を広く確保できるIPS方式の液晶表示セルである。表示セル12は、対向する透明基板の間に液晶層と、画素を構成する電極層と、カラーフィルタとが設けられ、さらに偏光板などが重ねられて構成されている。バックライト装置13は、アクリル板などの透光性の導光板と、導光板の背部に設けられた反射部材と、導光板に光を入射させるLEDなどの光源とから構成されている。バックライト装置13は表示セル12と密着してもよいし、隙間を介して対向していてもよい。
【0021】
表示セル12とバックライト装置13は、箱状に形成されたブラケット11の内部において接着され、または支持爪で挟持されるなどして固定されている。図1(B)と図2(B)に示すように、ブラケット11には、表示方向である前方(Z1方向)において、表示セル12を囲む形状の枠部(額縁部)11aが折り曲げられて形成されている。表示ユニット10では、前方において枠部11aで囲まれている領域が表示画面VAとなる。
【0022】
表示装置1は支持基台2を有している。支持基台2は軽金属材料を使用してダイキャスト法によって形成されている。表示ユニット10のブラケット11は、支持基台2にねじ止めや凹凸嵌合構造などの固定手段によって固定されている。ブラケット11の前方(Z1方向)部分には、表示画面VAよりもX1方向とX2方向に突出し、さらにY1方向とY2方向に突出するフランジ構造の後方部材2aが一体に形成されている。支持基台2は、自動車の車室内に設けられたダッシュボードやインストルメントパネルに組み込まれ、車体にねじ止めされ、または車体に固定された付属部材にねじ止めされている。
【0023】
図1(B)と図2(B)に示すように、支持基台2と一体の後方部材2aの前方に支持部材4が設けられている。支持部材4は合成樹脂材料で形成されており、支持基台2とは固定ねじなどを使用して互いに動くことなく固定されている。支持部材4には四角形の窓4aが開口しており、表示ユニット10が窓4aの内部に位置している。その結果、支持部材4は、表示ユニット10と左右の横方向(X1-X2方向)と上下方向(Y1-Y2方向)と並んで位置している。図1(A)に示す表示装置1には、表示ユニット10と左横方向(X1方向)および右横方向(X2方向)に並ぶ部分に、第1接着部20が設けられ、図2(A)に示す表示装置101には、第2接着部30が設けられている。図3に示す表示装置201には、第1接着部20と第2接着部30の双方が設けられている。図1(B)と図2(B)に示すように、第1接着部20または第2接着部30が設けられている領域において、支持部材4とその後方に位置する後方部材2aとの間には、前後方向(Z1-Z2方向)に、わずかな隙間δ1が形成されている。
【0024】
表示装置1,101,201は、前方(Z1方向)に表面パネル5が設けられている。表面パネル5は透光性でありガラス板で形成されている。ただし、表面パネル5が、アクリル系の合成樹脂板であってもよい。表面パネル5の後方(Z2方向)に向く表面には、タッチパネルが重ねられて貼られている。このタッチパネルを設けることで、操作者の指が表面パネル5のどの位置に触れたかを検知することができる。
【0025】
図1(A)と図2(A)および図3に示すように、表面パネル5は、表示セル12で生成される表示画面VAの前方を覆う領域が、表示画面透過領域5aである。表面パネル5は、横方向(X1-X2方向)の幅寸法と上下方向(Y1-Y2方向)の高さ寸法が、表示画面VAの幅寸法および高さ寸法よりも大きく、表面パネル5は、表示画面透過領域5aよりも左横方向(X1方向)へ延長された左延長部5bと、右横方向(X2方向)へ延長された右延長部5c、および上方(Y1方向)に延長された上延長部5dと、下方(Y2方向)に延長された下延長部5eを有している。
【0026】
そして、表面パネル5は、表示ユニット10のブラケット11に形成された枠部(額縁部)11aの前面に、第1接着剤層6を介して接着されている。また、表面パネル5の左延長部5bおよび右延長部5cは、第1接着部20または第2接着部30において、第2接着剤層7を介して、支持部材4に接着されている。第1接着剤層6と第2接着剤層7は両面接着テープである。あるいは第1接着剤層6および第2接着剤層7は、UV硬化型接着剤や乾燥硬化型接着剤を塗布することで形成されていてもよい。
【0027】
図4に、図1(A)の正面図においてIV矢視で示す第1接着部20が分解斜視図で示されている。
【0028】
第1接着部20では、支持部材4に、U字形状の開口部21で3方向が囲まれた支持片22が一体に形成されている。支持片22は、支持部材4の他の部分との境界部である基端22aと、前記基端22aから離れた位置にあって支持部材4の他の部分と連続しない自由端22bとを有している。支持片22は矩形状であり、基端22aを支点とし、表面パネル5の面と交差する方向である前後方向(Z1-Z2方向)に向けて撓み変形(弾性変形)可能である。第1接着部20では、支持片22の自由端22bが重力の作用方向である下方(Y2方向)へ向けられている。また、支持片22の前方(Z1方向)に向く表面が、第2接着剤層7によって、表面パネル5の左延長部5bと右延長部5cに接着されて固定されている。
【0029】
図5に、図2(A)の正面図においてV矢視で示す第2接着部30が分解斜視図で示されている。
【0030】
第2接着部30では、支持部材4に、U字形状の開口部31で3方向が囲まれた支持片32が一体に形成されている。支持片32は、支持部材4の他の部分との境界部である基端32aと、前記基端32aから離れた位置にあって支持部材4の他の部分と連続しない自由端32bとを有している。支持片32は矩形状であり、基端32aを支点とし、表面パネル5の面と交差する方向である前後方向(Z1-Z2方向)に向けて撓み変形(弾性変形)可能である。第2接着部30では、支持片32の自由端32bが重力方向と交差する方向である横方向(X1方向またはX2方向)に向けられている。また、支持片32の前方(Z1方向)に向く表面が、第2接着剤層7によって、表面パネル5の左延長部5bと右延長部5cに接着されて固定されている。
【0031】
図1に示す表示装置1と図2に示す表示装置101および図3に示す表示装置201は、いずれも、表面パネル5が、表示ユニット10の一部であるブラケット11に形成された枠部11aに第1接着剤層6によって接着固定されているとともに、表面パネル5の左延長部5bと右延長部5cが、第2接着剤層7によって、複数か所において、支持部材4に形成された支持片22または支持片32に接着固定されている。そのため、表面パネル5が、表示画面VAよりも大きな面積を有し比較的質量の大きいガラス板で形成されていても、この表面パネル5の接着固定強度を十分に高くすることができる。表面パネル5の接着固定強度が高いため、表示装置に不意な衝撃が作用したときであっても、表面パネル5が脱落したり、位置ずれするなどの不良を抑制することができる。
【0032】
第1接着部20または第2接着部30では、支持片22または支持片32が、表面パネル5の面と交差する方向へ弾性変形して撓むことができる。そのため、支持部材4と表面パネル5とを固定している複数の接着部の前後方向の位置がばらついていても、支持片22または支持片32が前記ばらつきに追従して撓み変形できる。よって、第1接着部20または第2接着部30において、表面パネル5と支持部材4とを接着している固定力が表示セル12に与える影響を低減できる。表示セル12に作用する応力および歪みを軽減できるため、表示画面VAでの表示品質を劣化させることがなく、表示セル12がIPS方式の液晶表示セルであっても、曲げ歪みによる黒ムラ(輝度ムラ)などが発生しにくい。
【0033】
また、図1(B)と図2(B)に示すように、第1接着部20または第2接着部30が構成されている領域において、支持部材4とその後方に位置する後方部材2aとの間に、前後方向(Z1-Z2方向)に隙間δ1が形成されて、支持片22または支持片32が、前方(Z1方向)のみならず後方(Z2方向)へも撓むことができるようになっている。そのため、表示装置1,101,201を車両に固定するときに、表面パネル5に対して前方および後方に向けて作用する歪みを、支持片22,32の前後方向の弾性変形によって効果的に吸収できるようになる。
【0034】
図1(A)に示す第1実施形態の表示装置1は、第1接着部20に設けられた支持片22の自由端22bが重力方向に沿う下方向(Z2方向)に向けられているため、例えば、表面パネル5に対して重力方向へ向く大きな衝撃および加速度が作用したとしても、支持片22が破損するなどの現象が生じにくくなる。
【0035】
図1(A)に示す表示装置1は、全ての第1接着部20において、支持片22の自由端22bが下方(Z2方向)へ向けられているため、表面パネル5に、横方向(X1-X2方向)に向く軸を中心とした回転方向の歪みが作用したときに、この歪みを、それぞれの支持片22の撓みによって吸収しやすい。
【0036】
なお、第1接着部20では、支持片22をその自由端22bが上方(Y1方向)を向くように配置することも可能である。例えば、図1(A)に示す表示装置1において、下側に位置している第1接着部20の支持片22の自由端22bを下方(Y2方向)に向け、上側に位置している第1接着部20の支持片22の自由端22bを上方(Y1方向)に向け、下側に位置する第1接着部20と上側に位置する第1接着部20とで、支持片22の自由端22bを上下方向において互いに逆向きとすることができる。この構造では、表面パネル5に、横方向に向く軸を中心とする回転方向の歪みがいずれの向きで作用しても、それぞれの第1接着部20の支持片22の撓みによって前記歪みを吸収しやすくなる。
【0037】
図2(A)に示す表示装置101では、左延長部5bに設けられた第2接着部30で、支持片32の自由端32bが左横方向(X1方向)に向けられ、右延長部5cに設けられた第2接着部30で、支持片32の自由端32bが右横方向(X2方向)に向けられて、左延長部5bに設けられた第2接着部30と、右延長部5cに設けられた第2接着部30とで、支持片32の自由端32bの向きが横方向において互いに逆向きである。したがって、図2(B)に示すように、左右の第2接着部30では、支持片32が上下方向(Y1-Y2方向)に向く軸を中心とする回転方向の歪みmを発生しやすく、左側と右側とでその歪みmの回転方向が互いに逆向きである。そのため、表面パネル5に、上下方向に向く軸を中心とする回転方向の歪みM、すなわちX1-X2方向に曲率を有する「反り」が作用したときに、それぞれの第2接着部30の支持片32の弾性変形によって前記歪み(反り)を吸収しやすくなっている。
【0038】
図3に示す表示装置201では、表面パネル5を支持部材4に接着固定するために、第1接着部20と第2接着部30の双方が使用されている。表面パネル5の左延長部5bには第2接着部30が設けられて、支持片32の自由端32bが表面パネル5の左縁部に向けられている。表面パネル5の右延長部5cに第1接着部20が設けられて、支持片22の自由端22bが下方(Y2方向)に向けられている。あるいは自由端22bが上方(Y1方向)に向けられていてもよい。この表示装置201では、表面パネル5に、上下方向に向く軸を中心とする回転方向の歪みが与えられたときに、第2接着部30の支持片32が撓みやすくなり、横方向に向く軸を中心とする回転方向の歪みが与えられたときに、第1接着部20の支持片22が撓みやすくなる。よって、表面パネル5に多方向から与えられる曲げ応力を緩和でき、表示セル12に大きな応力が作用するのを防止しやすくなる。
【0039】
図6図7に、第2接着部30の第1変形例が示されている。第2接着部30では、支持片32の自由端32bが重力方向と交差する横方向に向けられている。そのため、例えば質量の大きい表面パネル5に下向きの大きな加速度が作用したときに、支持片32が基端32aを支点として下方へ大きく変形し、支持片32が破損するおそれがある。そこで、図6図7に示す第2接着部30では、支持片32の重力方向への変形を規制する規制機構40が設けられている。
【0040】
図6図7に示す規制機構40では、後方部材2aの前方(Z1方向)に向く表面から前方へ突出する規制突部41が一体に形成されている。規制突部41は横方向(X1-X2方向)に延びる長尺状の突出部であり、支持片32の下方に向く側縁部32cに沿う方向に延びて、側縁部32cに隙間を空けて対向している。表面パネル5に下向きの大きな加速度が与えられ、支持片32が下向きに変形しようとしたときに、側縁部32cが規制突部41に当たることによって、支持片32が大きく変形するのを防止でき、支持片32の損傷を防止できる。
【0041】
図7に示すように、規制突部41の突出高さは、その先端部が支持部材4の前方(Z1方向)に向く表面よりも突出しないことが好ましい。すなわち、規制突部41の先端から支持部材4の前方(Z1方向)に向く表面までの距離をδ2とすると、δ 2≧0であることが好ましい。このように設定すると、表面パネル5が後方に向けて押され、支持片32が後方部材2aに当たるまで変形しても、規制突部41がガラス板である表面パネル5に当たることがなく、表面パネル5が損傷するのを防止できるようになる。
【0042】
図8図9にも、第2接着部30の変形例が示されている。この第2接着部30も規制機構40を有している。この規制機構40では、支持部材4に形成された支持片32の後方(Z2方向)に向く表面からさらに後方に突出する規制突部42が一体に形成されている。後方部材2aには規制穴43または規制凹部が形成されており、規制穴43または規制凹部の下縁部が規制部43aとなっている。図9に示すように、支持片32に設けられた規制突部42は、規制部43aに上方から対向している。
【0043】
図8図9に示す第2接着部30においても、表面パネル5に下向きの大きな加速度が与えられ、支持片32が下向きに変形しようとしたときに、規制突部42が、規制穴43または規制凹部の規制部43aに当たることによって、支持片32の損傷を防止できる。この第2接着部30では、規制突部42が上下方向(Y1-Y2方向)に延びる長尺形状であるため、規制突部42の上下方向の強度が高くなっており、規制突部42が規制部43aに大きな加速度で衝突しても、規制突部42が損傷するのを防止ができる。
【0044】
図6図7に示す変形例、および図8図9に示す変形例に示すように、規制機構40では、支持片32と後方部材2aの少なくとも一方に規制突部が形成され、支持片32が重力方向へ動いたときに、前記規制突部の突き当てにより、支持片32の重力方向への移動が規制される。
【0045】
図10図11にも、第2接着部30の変形例が示されている。この第2接着部30に設けられた規制機構40では、図6図7に示した変形例と同様に、後方部材2aから前方に突出する規制突部41が形成されて、規制突部41が支持片32の重力方向に向く側縁部32cに対向している。支持部材4の後方(Z2方向)に向く表面には、スペーサ突起44が一体に形成されており、スペーサ突起44が後方部材2aに突き当てられて、支持部材4と後方部材2aとの前後方向の隙間δ1の寸法が高精度に決められている。さらに、支持部材4に形成された支持片32の後方に向く表面に後方へ突出する突き当て突部45が設けられている。
【0046】
図10図11に示す第2接着部では、支持片32の後方の表面からのスペーサ突起44の突出高さ寸法よりも、突き当て突部45の突出高さ寸法が低くなっている。その結果、支持片32が後方部材2aに向けて変形したときに突き当て突部45が後方部材2aに当たることになり、表面パネル5が後方に向けて押されたときでも、支持片32の後方(Z2方向)への変形量が過大になるのを防止することができる。この規制機構40でも、規制突部41の先端と、支持部材4の前方に向く表面との距離δ3は、δ3≧0であることが好ましい。なお、スペーサ突起44と突き当て突部45は、後方部材2aから前方に向けて突出していてもよい。すなわち、スペーサ突起44と突き当て突部45は、支持片32と後方部材2aの少なくとも一方に設けられていればよい。
【0047】
図12(A)(B)および図13(A)(B)には、第1接着部20に設けられる支持片22または、第2接着部30に設けられる支持片32の種々の変形例が示されている。
図12(A)に示す支持片22,32は、基端22a,32aに近い部分の幅寸法が細くなっており、撓み変形しやすい。図12(B)に示す支持片22,32は、基端22a,32aに向けて幅寸法が徐々に広くなり、撓み剛性が高められている。
【0048】
図13(A)に示す支持片22,32は、縁部に円弧などの曲線部を有している。図13(B)に示す支持片22,32は、三角形である。
このように、支持片22,32は、基端22a,32aで支持部材4の他の部分と連続し、基端22a,32aから離れた位置に、支持部材4の他の部分と連続しない自由端22b,32bが形成されていればどのような形状であってもよい。また第2接着剤層7は、基端22a,32aよりも自由端22b,32b側へ寄った位置に配置される。
【符号の説明】
【0049】
1,101,201 表示装置
2 支持基台
2a 後方部材
4 支持部材
5 表面パネル
5a 表示画面透過領域
5b 左延長部
5c 右延長部
6 第1接着剤層
7 第2接着剤層
10 表示ユニット
11 ブラケット
11a 枠部
12 表示セル
13 バックライト装置
20 第1接着部
21 開口部
22 支持片
22a 基端
22b 自由端
30 第2接着部
31 開口部
32 支持片
32a 基端
32b 自由端
40 規制機構
41,42 規制突部
43 規制穴
45 突き当て突部
VA 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13