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特許7106233球状で架橋可能なポリアミド粒子の粉末、製造方法及び選択的レーザー焼結技術における使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】球状で架橋可能なポリアミド粒子の粉末、製造方法及び選択的レーザー焼結技術における使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/12 20060101AFI20220719BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220719BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20220719BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08J7/12 A CFG
B29C64/153
B29C64/314
C08J3/24 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019534672
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 FR2017053776
(87)【国際公開番号】W WO2018115767
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】1663160
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515023350
【氏名又は名称】セットアップ パフォーマンス エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ジメネス,ジェローム
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-240355(JP,A)
【文献】特表2016-521767(JP,A)
【文献】特開2005-097370(JP,A)
【文献】特開2009-013395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/12
B29C 64/153
B29C 64/314
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基Rtによって官能化され、架橋可能ポリアミド(I)の球状粒子の粉末であって、前記架橋性官能基Rtが前記粒子の表面及び塊中に存在し、前記架橋可能なポリアミド(I)の粒子が20μm~100μmの範囲の平均直径d50を有することを特徴とする、ポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項2】
前記架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、(d90-d10)が10μm~80μm、好ましくは20μm~60μmの範囲にあるような平均直径d90及びd10を有することを特徴とする、請求項1に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項3】
前記ポリアミドが脂肪族又は半芳香族、半結晶性ポリアミド、好ましくは脂肪族である、請求項1又は2に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項4】
前記ポリアミドが、PA6、PA6.6、PA10.10、PA10.12、PA11及びPA12から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項5】
前記架橋性官能基Rtが、アルコキシシラン、クロロシラン及びアシルオキシシラン基から選択され、好ましくはアルコキシシラン基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項6】
前記架橋性官能基Rtがグラフトによってポリアミド(II)に導入される、請求項1から5のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項7】
前記架橋性官能基Rtが、式:
Rg-R1-Si(R2)3-a(R3) (III)
(式中:
・a=0、1、又は2であり;
・Rgは、Rrと反応することができるグラフト官能基であり;
・R1は、二価の炭化水素基又はSiを直接Rgにつなぐ共有結合であり;
・R2は、アルコキシ又はアシル基であり、又はハロゲンを表し、基R2はa=0又は1である場合、同一又は異なり;
・R3は、アルキル基であり、基R3はa=2である場合、同一又は異なる)
の架橋剤(III)を、反応性官能基Rrと称される前記ポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基に直接グラフトすることによって供給されることを特徴とする、請求項6に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項8】
前記架橋剤(III)の前記グラフト官能基Rgが、
・アミノ基-NH
・エチレン性不飽和を有する基、好ましくはビニル、アリル、及びメタクリロイル基;
・エポキシ基、好ましくはグリシジル、グリシドキシ、及びオキシラニル基から選択される基;
・チオール基-SH;
・ハロゲン原子、好ましくは塩素;
・イソシアネート基--N=C=O;及び
・アクリルウレア基-CO-NH-CO-NH又はアルキルウレア基R-NH-CO-NH(式中、Rは二価の炭化水素基を表す)
から選択される少なくとも1種の基を含むことを特徴とする、請求項7に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項9】
前記架橋剤(III)が、a=0であり、R1が二価の炭化水素基、好ましくはプロピレン基であり、R2がアルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基であり、Rgがエポキシ基、好ましくはグリシドキシ基であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項10】
前記架橋可能なポリアミド(I)が、架橋可能なポリアミドの全質量に対して、0.3質量%~9質量%、好ましくは1質量%~5質量%の範囲の割合の架橋性官能基Rtを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末。
【請求項11】
a)ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を提供する工程であって、前記粒子が20μm~100μmの範囲の平均直径d50を有する工程;
b)少なくとも1つの架橋性官能基Rtと、反応性官能基Rrと称される、前記ポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基と反応することができる少なくとも1つのグラフト官能基Rgとの両方を含む架橋剤(III)を提供する工程;
c)混合物(II+III)を得るために、前記ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を前記架橋剤(III)と混合する工程;
d)工程c)から得られた前記混合物(II+III)を、Tg(II)+70℃≦Tcryst(II)-35℃である場合は、前記ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+5℃~前記ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+70℃の範囲であるか、又はTg(II)+70℃>Tcryst(II)-35℃である場合は、Tg(II)+5℃~前記ポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)-35℃の範囲である温度T1まで加熱して、架橋剤(IV)を含浸させたポリアミドの球状粒子の粉末を得る工程;
e)架橋剤(IV)を含浸させた前記ポリアミド粉末を、T1より高く且つ前記ポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)より低い温度T2まで加熱して、架橋可能なポリアミド(I)の粉末を得る工程、
を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を製造する方法。
【請求項12】
前記架橋剤(III)が以下の式:
Rg-R1-Si(R2)3-a(R3) (III)
(式中、
・a=0、1、又は2であり;
・Rgは、前記ポリアミド(II)の前記反応性官能基Rrと反応することができるグラフト官能基であり;
・R1は、二価の炭化水素基又はSiを直接Rgにつなぐ共有結合であり;
・R2は、アルコキシ又はアシル基又はハロゲンであり、基R2はa=0又は1である場合、同一又は異なり;
・R3は、アルキル基であり、好ましくはC1~C6アルキル基であり、基R3はa=2である場合、同一又は異なる)
を有することを特徴とする、請求項11に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を製造するための方法。
【請求項13】
工程c)の前記混合物が、架橋剤(III)及びポリアミド(II)の全質量に対して、1質量%~10質量%、好ましくは3質量%~8質量%、さらにより好ましくは4質量%~6質量%の範囲の割合の架橋剤(III)を用いて製造される、請求項11又は12に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を製造するための方法。
【請求項14】
工程e)に続き、流動剤、強化充填剤、難燃剤、熱安定剤、帯電防止剤又は導電剤、又は着色剤を添加するための工程f)を含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を製造するための方法。
【請求項15】
選択的レーザー焼結技術によって中間物品を製造するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の使用方法。
【請求項16】
選択的レーザー焼結技術を用いる、請求項1から10のいずれか一項に記載の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から中間物品を製造するための方法。
【請求項17】
i. 選択的レーザー焼結技術を用いた、請求項16に記載の方法による架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から出発する、中間物品の形成;及び
ii. 前記中間物品の前記架橋可能なポリアミド(I)の架橋可能な官能基Rtの少なくとも一部分の架橋、
を含む、物品の製造方法。
【請求項18】
前記架橋が加水分解によって、特に周囲空気中で行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の方法による、架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から製造される物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的レーザー焼結(SLS)の技術に適した架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末、及びこの種の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末を得る方法に関する。本発明はまた、架橋工程が後に続くSLSによる前記架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末から物品を製造する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
物品は添加技術によって製作することができる。物品は層ごとに製造される。この目的のために、上流のコンピュータ支援設計ソフトウェア(CAD)によって、得られる物品の三次元(3D)構造が薄片に分割される。製造される仮想3Dオブジェクトは、このように極めて薄い二次元薄片に分割される。次いで、これらの薄い薄片は、以下の二進シーケンスを繰り返し行うことによって、層の形態で一つずつ製造される:
・所望の物品を製造するのに必要な材料を粉末の形態で各層のための連続床を形成するために堆積させ、続いて
・各層を凝集させ、事前に定義されたパターンに従い、エネルギー供給によって、又は液体を微細な液滴で噴霧することによって、層を局所的に一緒に結合させる。
【0003】
物品はこのように、エネルギー供給により又は液体の微細な液滴を噴霧することにより一緒に結合されている基本層を重ね合わせることによって、構築される。局所的なエネルギーは、指向性光ビーム(LED又はレーザー)又は指向性電子ビームを用いて、又は実際にはエネルギーを集束させ、粉末床をCADによって選択されたパターンに従って走査することを可能にする任意のエネルギー源を用いて供給され得る。すると、エネルギー-材料の相互作用が、使用される材料の性質及びエネルギー源の性質に応じて、材料の焼結又は融解/固化、又は実際には材料の光重合又は光架橋をもたらす。
【0004】
既知の様々な添加技術のうち、SLSとして知られる選択的レーザー焼結が特に挙げられる。
【0005】
ポリマー粉末から物品を製造するための選択的レーザー焼結(ラピッドプロトタイピング)の技術は既知であり、特許US6136948及び出願WO96/06881に記載されている。
【0006】
SLS技術を用いて、物品を構成することを意図する材料の粉末が、連続床を形成するために堆積される。次いで、強力なレーザーからのビームを選択されたパターンに従って局所的に施与して、所望の物品に対応する層を形成するために粉末を凝集させ、且つ焼結によりそれを前の層に結合させる。局所的なエネルギー供給の作用下で、粉末の粒は部分的に融解して一緒に密着し、層に凝集性をもたらす。次いで、新しい粉末層が敷かれ、手順が再開される。
【0007】
多くのポリマーが、先験的にSLS法に適している:ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアミドなどである。ポリアミド(特にPA11及びPA12)は現在、SLSを使用する物品の製造に、特にエンジニアリング構成要素の製造に、最も広く使用されている材料である。PA12粉末から製作された物品は、機械的負荷(機械的強度)に関して厳しい要件を満たし、押出し又は射出成形などのプラスチック加工において習慣的に使用されている変換技術を用いて製造される部品の特性に近い特性を有する。
【0008】
SLS技術に適するために、プラスチック材料から形成された粉末についての2つの重要な特性は、プラスチック材料の熱的性質及び粉末の粒径(粒子の形状及び寸法)である。PA12は、完全に適した熱特性を有するので、SLS法に最も広く用いられている熱可塑性ポリマーであることが示されている。PA12は、粉末の良好な流動と粉末の堆積床による高密度を提供するために、球状粒子の粉末の形態で用いられる。
【0009】
特許US6245281は、PA12粉末の最適な物理化学的性質を開示している:融点185℃~189℃、融解エンタルピー112±17J/g、結晶化点138℃~143℃である。記載されているPA12粒子は、寸法が50マイクロメートル(μm)~150μmである。
【0010】
PA12の球状粒子の粉末は、例えば、特許US5932687に記載されているように、PA12の溶解/沈殿によって得られ得る。それらはまた、特許出願WO2006/051222に記載されているように、懸濁液中又は溶液中でのポリマー合成の間に直接得られ得る。球状粒子を得るために使用することができる第三の技術は、特許出願WO2007/115977に記載されているような押出し法である。
【0011】
ポリアミド粉末を得るための当業者にとって最も利用しやすい技術は、機械的粉砕である。しかしながらこれは、粉末の流動特性及び積み重なり特性を変える可能性があることからSLS技術における使用にはあまり適していない、制御されていない形状を有する非球状粒子を生成するという不利益を被る。
【0012】
さらに、アルコキシシラン基をポリアミドにグラフトすることは既に知られている。この種のグラフトは溶解相で行われて(すなわち、ポリマーの融解温度より高い温度に加熱)グラフトポリマーが得られるが、これは粉末の形態ではなく、それ故結果として、SLS技術における使用に適していない。従って、特許出願WO1999/047584は、溶解相において官能化トリアルコキシシランをコポリアミドにグラフトすることを記載している。得られたポリマーは、ホットメルト接着剤として使用される。官能化シラングラフトにより架橋されたポリアミドの製造を記載している特許出願FR2535729、及び熱機械的性質を改良するためにポリアミドに不飽和アルコキシシランをグラフトすることを記載している特許US5804681も、引用され得る。
【0013】
しかしながら、溶解状態のポリマーへの、特に高分子鎖への「ペンダントグラフト(pendant grafting)」による化学的変性は、ポリマーの結晶構造、故に熱的性質、すなわちその融解温度、結晶化温度、及びエンタルピーを変性し得る。
【0014】
さらに、表面での粉末ポリアミド粒子の化学的変性の例が存在するが、これはSLS技術には全く適していない。
【0015】
一例として、出願EP16686142は、ポリアミドと表面コーティングとの適合性を改良するために、官能化グラフトモノマーで表面をグラフトしたポリアミド粉末の粒子を製造する方法を記載している。この方法は、ポリアミド粒子をグラフトモノマーと混合する工程と、それに続く光子又は電子の照射工程とを含む。得られた粒子は次いで、表面でのみグラフトされ、SLS技術には適さない寸法を有する(実施例では10μm±2μm)。
【0016】
さらに、特許GB1565674は、ガラスコーティング用途で、熱可塑性ポリマー粉末を架橋可能にするために変性することを記載している。この方法は、架橋剤をポリマーに含浸させる第一の工程と、それに続き、溶解状態でグラフトする工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特許US6136948
【文献】出願WO96/06881
【文献】特許US6245281
【文献】特許US5932687
【文献】特許出願WO2006/051222
【文献】特許出願WO2007/115977
【文献】特許出願WO1999/047584
【文献】特許出願FR2535729
【文献】特許US5804681
【文献】出願EP16686142
【文献】特許GB1565674
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このように、SLS技術のための使用範囲を広げ、荷重下でのクリープを回避するために使用することが可能である、良好な流動特性及び積み重なり特性、及び良好な熱機械的特性を有するポリアミド粒子の粉末が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、特に架橋性グラフトがその上及び中にグラフトされる、粒子の寸法及び形状に関してSLS技術に適している、ポリアミド粒子の粉末を提供することによって、上記の不利益を克服することを提案する。より正確には、本出願人が提案する解決策は、架橋性官能基Rtによって官能化され、架橋可能ポリアミド(I)の球状粒子の粉末の使用方法を提供し、前記架橋性官能基Rtは、前記粒子の表面及び塊中に存在し、前記架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、20μm~100μmの範囲の平均直径d50を有する。
【0020】
本発明の粉末によって提供される架橋は、ポリマーの熱機械的特性が改良可能である(より広い範囲の使用温度、機械的強度、破断点伸び、熱耐性、たわみ性、及び/又は熱降伏強度)一方で、粒子の形状及び寸法により、SLS技術と適合する良好な流動及び最適化された粉末密度が可能となることを意味する。
【0021】
有利には、架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末は、以下の特徴のうちの1つ以上、又は以下の特徴のうちの少なくとも1つの組合せ、又は相互排他的でない場合は以下の特徴のすべてさえも示す。
【0022】
・前記架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、(d90-d10)が10μm~80μm、好ましくは20μm~60μmの範囲にあるような平均直径d10及びd90を有する;
・ポリアミドが、PA6、PA6.6、PA11及びPA12から選択される;
・架橋性官能基Rtが、アルコキシシラン、クロロシラン、及びアシルオキシシラン基から選択され、好ましくはアルコキシシラン基である;
・架橋性官能基Rtがグラフトによりポリアミド(II)に導入される。
【0023】
・架橋性官能基Rtが、式:
Rg-R1-Si(R2)3-a(R3) (III)
(式中:
・a=0、1、又は2であり;
・Rgは、Rrと反応することができるグラフト官能基であり;
・R1は、二価の炭化水素基又はSiを直接Rgにつなぐ共有結合であり;
・R2は、アルコキシ又はアシル基であり、又はハロゲンを表し、基R2はa=0又は1である場合、同一又は異なり;
・R3は、アルキル基であり、基R3はa=2である場合、同一又は異なる)
の架橋剤(III)を、反応性官能基Rrと称されるポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基に直接グラフトすることによって供給される。
【0024】
・架橋剤(III)のグラフト官能基Rgは、
・アミノ基-NH
・エチレン性不飽和を有する基、好ましくはビニル、アリル、及びメタクリロイル基;
・エポキシ基、好ましくはグリシジル、グリシドキシ、及びオキシラニル基から選択される基;
・チオール基-SH;
・ハロゲン原子、好ましくは塩素;
・イソシアネート基-N=C=O;及び
・アクリルウレア基-CO-NH-CO-NH又はアルキルウレア基-R-NH-CO-NH(式中、Rは二価の炭化水素基である)
から選択される少なくとも1種の基を含む。
【0025】
・架橋剤(III)が、a=0であり、R1が二価の炭化水素基、好ましくはプロピレン基であり、R2がアルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基であり、Rgがエポキシ基、好ましくはグリシドキシ基であるようなものである;
・架橋可能なポリアミド(I)が、架橋可能なポリアミドの全質量に対して、0.3質量%~9質量%、好ましくは1質量%~5質量%の範囲の割合の架橋性官能基Rtを有する。
【0026】
本出願人はまた、SLS技術に適した架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末、及び特に本発明において定義する架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末を製造するための方法を提案する。架橋可能なポリアミド(1)の球状粒子の粉末の製造方法は、以下の工程を含む:
a)ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を提供する工程であって、前記粒子が20μm~100μmの範囲の平均直径d50を有する工程;
b)少なくとも1つの架橋性官能基Rtと、反応性官能基Rrと称されるポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基と反応することができる少なくとも1つのグラフト官能基Rtとの両方を含む架橋剤(III)を提供する工程;
c)混合物(II+III)を得るために、ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を、架橋剤(III)と混合する工程;
d)工程c)から得られた混合物(II+III)を、Tg(II)+70℃≦Tcryst(II)-35℃である場合は、ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+5℃~ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+70℃の範囲であるか、又はTg(II)+70℃>Tcryst(II)-35℃である場合は、Tg(II)+5℃~ポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)-35℃の範囲である温度T1まで加熱して、架橋剤(IV)を含浸させたポリアミドの球状粒子の粉末を得る工程;
e)架橋剤(IV)を含浸させたポリアミド粉末を、T1より高く且つポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)より低い温度T2まで加熱して架橋可能なポリアミド(I)の粉末を得る工程。
【0027】
有利には、架橋性官能基は、前記ポリアミド粒子の粉末に直接グラフトされる。本出願人が提案するポリアミド粒子の粉末を製造するための方法は、まず第一に、粒子の粉末の形状及び粒径が保たれることを可能にする。流動特性、粒子の粉末の流動性及び積み重なりの特性は、このようにして保たれ制御される。第二に、それは固体状態で、好ましくはポリマーの結晶化温度未満で行われるので、化学的変性はポリマーの結晶構造を変性しない。従って、ポリマー粒子の粉末は、ポリアミド粉末(II)の選択によって調整されるSLS法に適した熱特性を保持する。従って、本発明の架橋可能なポリアミド粒子の熱プロファイルは、同じポリアミドの架橋可能でない粒子のそれと比較してほんのわずかしか変性されない。融解エンタルピー及び結晶化エンタルピーの変動はほとんどなく(10%未満)、融解温度(開始(オンセット)及びピーク)のエンタルピーの変動もほとんどなく、結晶化温度のわずかな低下(オフセット及びピーク、最大5℃)によって焼結ウィンドウ(すなわち、結晶化温度オフセットと融解温度開始との間の差)を広げることに寄与する。
【0028】
特に、架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を製造するための方法は、以下の特徴のうちのいずれか、又は以下の特徴のうちの少なくとも2つの任意の組み合わせ、又は以下の特徴のすべてさえを、相互排他的ではない場合、組み込んで行うことが可能である:
・架橋剤(III)が以下の式
Rg-R1-Si(R2)3-a(R3) (III)
(式中、
・a=0、1、又は2であり;
・Rgは、ポリアミド(II)の反応性官能基Rrと反応することができるグラフト官能基であり;
・R1は、二価の炭化水素基又はSiを直接Rgにつなぐ共有結合であり;
・R2は、アルコキシ又はアシル基又はハロゲンであり、基R2はa=0又は1である場合、同一又は異なり;
・R3は、アルキル基であり、好ましくはC1~C6アルキル基であり、基R3はa=2である場合、同一又は異なる;)
を有する;
・工程c)における混合物は、架橋剤(III)及びポリアミド(II)の全質量に対して、1質量%~10質量%の、好ましくは3質量%~8質量%の、さらにより好ましくは4質量%~6質量%の範囲の割合の架橋剤(III)を用いて製造される;
・工程d)における加熱は、Tg(II)+50℃>Tcryst(II)-35℃である場合、Tg(II)+10℃~Tcryst(II)-40℃の、さらにより好ましくはTg(II)+20℃~Tcryst(II)-45℃の範囲の温度T1で行う;
・工程d)における加熱は、Tg(II)+70℃≦Tcryst(II)-35℃である場合、Tg(II)+10℃~Tg(II)+70℃、好ましくはTg(II)+20℃~Tg(II)+70℃の範囲の温度T1で行う;
・工程e)における加熱は、T1+10℃以上且つTcryst(II)未満の、好ましくはT1+20℃~Tcryst(II)-5℃、さらにより好ましくはT1+30℃~Tcryst(II)-10℃の温度T2で行う;
本発明はまた、本発明において記載する製造方法によって得ることができる、架橋可能なポリアミド(1)の球状粒子の粉末を提供する。
【0029】
本発明はまた、選択的レーザー焼結技術を用いて中間物品を製造するための、本発明の架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の使用方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、本発明のポリアミド(I)の球状粒子の粉末から出発して、選択的レーザー焼結技術を用いる、特に連続して一緒に結合される要素の重ね合わせた層を形成することによる、中間物品の製造方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、
i. 選択的レーザー焼結技術を用いた、本発明において記載する架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から出発する、中間物品の形成;及び
ii. 前記架橋可能なポリアミド(I)の架橋可能な官能基Rtの少なくとも一部分の架橋、
を含む、物品の製造方法を提供する。
【0032】
工程ii)における架橋は、加水分解によって、及び特に周囲空気中で、行われ得る。
【0033】
最後に、本発明は、本発明において記載する架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から形成され、前記架橋可能なポリアミド(I)の架橋可能な官能基Rtの少なくとも一部分を架橋した後に得られる物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施例1のIRスペクトルを表す。
図2図2は、実施例2のIRスペクトルを表す。
図3図3は、実施例3のIRスペクトルを表す。
図4図4は、実施例4のIRスペクトルを表す。
図5図5は、参考例PA12及び比較例についてのものと比較した、実施例5及び6についての弾性率及び損失角デルタの正接(タンデルタ)に対応する損失係数又は減衰係数の変化のグラフを表す。
図6】参考例11についてのものと比較した、実施例7についての弾性率及び損失角デルタの正接(タンデルタ)に対応する損失係数又は減衰係数の変化のグラフを表す。
図7図7は、PA12、PA11、実施例1~4のポリマー及び比較例のポリマーの、光学顕微鏡画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末
本発明は、架橋性官能基Rtによって官能化され、架橋可能ポリアミド(I)を提供する。



【0036】
本発明の架橋可能なポリアミド(I)は、球状粒子の粉末の形態である。
【0037】
「球状粒子」という用語は、球形度指数、すなわちその最大直径とその最小直径との間の比が、1.2未満である粒子を意味すると理解されるべきである。
【0038】
本発明の架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、20μm~100μm、好ましくは35μm~50μmの範囲の平均直径d50を有する。
【0039】
一実施形態では、本発明の架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、45μm~80μm、好ましくは50μm~75μmの範囲の平均直径d90を有する。
【0040】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)の粒子は、10μm~35μm、好ましくは15μm~30μmの範囲の平均直径d10を有する。
【0041】
本発明において用いる「平均直径d10/d50/d90を有する粒子」という用語は、前記粒子の10体積%/50体積%/90体積%が、レーザー回折粒度測定法としても知られている乾式レーザー粒度測定法技術で測定して、より小さい直径を有する直径(の粒子)を意味すると理解されるべきである。
【0042】
有利には、架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子は、寸法が均一である。
【0043】
本発明において用いる「寸法が均一」という用語は、粒子の寸法分布が狭く、特に粒子が、(d90-d10)が10μm~80μm、好ましくは20μm~60μmの範囲にあるような平均直径を有することを意味すると理解されるべきである。
【0044】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)は、30℃~90℃、好ましくは40℃~60℃の範囲のガラス転移温度Tg(I)を有する。
【0045】
材料のガラス転移温度は、機械的特性が変化する温度に対応し、ここで材料は、ガラス状態(硬質固体)から、より大きな変形能力を有するゴム状態に変化する。それはポリマーの非晶質相を特徴付ける。ポリアミドなどのポリマーでは、この現象は、非晶質ドメインに位置する高分子鎖のセグメントの動きに関連している。
【0046】
本発明において、ガラス転移温度は示差走査熱量測定、DSCによって測定される。
【0047】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)は、170℃~220℃、好ましくは175℃~205℃の範囲の融解温度Tfus(I)を有する。
【0048】
融解温度は、融解に対応する熱的現象のピーク(Tfusピークと定義する)の最大値で測定された温度に対応する。本発明において、融解温度は、示差走査熱量測定、DSCによって測定される。頻繁に測定される「開始」値は、微結晶の融解現象の出発に対応し、ピークのベースラインと、ピークの最大温度未満の温度に対する融解ピークの第一部分の最大勾配を有する点への正接との交点に対応する外挿された温度である。
【0049】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)は、110℃~170℃、好ましくは145℃~165℃の範囲の結晶化温度Tcryst(I)を有する。
【0050】
結晶化温度は、結晶化に対応する熱的現象のピーク(Tcrystピークと定義する)の最大値で測定された温度に対応する。結晶化温度は、示差走査熱量測定、DSCによって測定され得る。頻繁に測定される「オフセット」値は、微結晶の結晶化現象の終わりに対応し、ピークのベースラインと、ピークの最大温度を超える温度に対する結晶ピークの第二部分の最大勾配を有する点への正接との交点に対応する外挿された温度である。
【0051】
一実施形態では、ポリアミド(I)の融解エンタルピーは、-120J/g~-80J/gの範囲である。
【0052】
融解エンタルピー(ΔHfus)は、ポリアミドが固体状態から液体状態に移行するときに、熱の形態でポリアミドによって吸収されるエネルギーに対応する。
【0053】
本発明において、融解エンタルピーは、示差走査熱量測定、DSCによって、以下の実施例に記載するように、特に温度が上昇するときの最初のスキャンの間に、測定される。
【0054】
ポリアミドは、脂肪族又は半芳香族の半結晶性ポリアミドであり得る。
【0055】
一実施形態では、ポリアミドは脂肪族ポリアミドである。この実施形態では、ポリアミドは、PA6(ポリカプロラクタム:[NH-(CH-CO])、PA6.6(ポリヘキサメチレンアジパミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.9(ポリヘキサメチレンノナンジアミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.10(ポリヘキサメチレンセバカミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.12(ポリヘキサメチレンドデカンジアミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH10-CO])、PA10.10(ポリデカメチレンセバカミド:[NH-(CH)10-NH-CO-(CH10-CO])、PA10.12(ポリデカメチレンドデカンジアミド:[NH-(CH)10-NH-CO-(CH10-CO])、PA11(ポリウンデカンアミド:[NH-(CH10-CO])、PA12(ポリラウリルラクタム:[NH-(CH11-CO])から選択される。
【0056】
一実施形態では、ポリアミドは半芳香族の半結晶性ポリアミドである。本発明において適した半芳香族の半結晶性ポリアミドの例として、PA mXD.6(ポリメタキシリレンアジパミド)及びPA mXD.10(ポリメタキシレンセバカミド)が挙げられる。特定の実施形態では、ポリアミド(I)はPA mXD.10である。
【0057】
本発明の好ましい態様において、ポリアミドは脂肪族ポリアミドであり、好ましくはPA6、PA6.6、PA6.10、PA10.10、PA10.12、PA11及びPA12から、及び好ましくはPA11及びPA12から選択される。
【0058】
本発明の架橋可能なポリアミド(I)は、前記ポリアミド粒子の表面及び塊中に存在する架橋性官能基Rtを含む。
【0059】
「粒子の表面及び塊中に存在する基」という用語は、粒子の表面だけでなく、これらの粒子内、特にコアにも存在することを意味すると理解されるべきである。
【0060】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)の架橋性官能基Rtのパーセンテージは、架橋可能なポリアミド(I)の全質量に対して、有利には0.3質量%~9質量%、好ましくは1質量%~5質量%の範囲である。
【0061】
一実施形態では、架橋可能なポリアミド(I)は、架橋可能なポリアミド(I)が含む架橋性官能基Rtを介して、水の存在下で、特に周囲空気中に存在する水の存在下で、架橋可能である。
【0062】
一実施形態では、架橋性官能基Rtは、20℃~100℃、好ましくは50℃~95℃の範囲の温度で架橋可能である。これは、アルコキシシラン及びクロロシラン基から選択される架橋可能な官能基Rtに特に当てはまる。
【0063】
一実施形態では、架橋性官能基Rtは、式:
Rg-R1-Si(R2)3-a(R3) (III)
(式中:
・a=0、1、又は2であり;
・Rgは、反応性官能基Rrと反応することができるグラフト官能基であり;
・R1は、二価の炭化水素基又はSiを直接Rgにつなぐ共有結合であり;
・R2は、アルコキシ又はアシル基又はハロゲン原子であり、基R2はa=0又は1である場合、同一又は異なり;
・R3は、アルキル基、好ましくはC1~C6アルキル基であり、基R3はa=2である場合、同一又は異なる)
の架橋剤(III)を、反応性官能基Rrと称されるポリアミド(II)のアミン及び/又は酸及び/又はアミド官能基に好ましくは直接グラフトすることによって供給される。
【0064】
「ポリアミドのアミン官能基」という用語は、第一級アミン、すなわち-NH基を意味すると理解されるべきである。一実施形態では、ポリアミドはポリアミド鎖の末端に第一級アミン官能基を含む。
【0065】
本発明において用いる「ポリアミドのカルボキシル官能基」又は「ポリアミドの酸官能基」という用語は、カルボン酸基、すなわち-COOH基を意味すると理解されるべきである。一実施形態では、ポリアミドはポリアミド鎖の末端に酸官能基を含む。
【0066】
本発明において用いる「ポリアミドのアミド官能基」という用語は、ポリアミド鎖の第二級アミド官能基を意味すると理解されるべきである。
【0067】
本発明において用いる「二価の炭化水素基」という用語は、二価アルキル基、好ましくは二価(C1~C20)アルキル基、好ましくは二価(C1~C10)アルキル、より好ましくは(C2~C5)アルキル基を意味すると理解されるべきである。
【0068】
本発明において用いる「アルコキシ」という用語は、-O(C1~C10)アルキル基、好ましくは-O(C1~C6)アルキル、及びより好ましくは-O(C1~C3)アルキルを意味すると理解されるべきである。本発明において適したアルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソ-プロピルオキシ、ブチルオキシ、イソ-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシ基が挙げられる。好ましくは、本発明のアルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0069】
「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐の非環式アルキル基を意味する。本発明において適したアルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-ペンチル、sec-ペンチル、ネオ-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル基が挙げられる。
【0070】
本発明において用いる「アシル」という用語は、-C(=O)(C1~C10)アルキル基、好ましくは-C(=O)(C1~C6)アルキルを意味すると理解されるべきである。本発明において適したアシル基の例として、ホルミル、アセチル及びプロピオニル基が特に挙げられる。
【0071】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子、好ましくは塩素の原子を意味すると理解されるべきである。
【0072】
架橋性官能基Rtは、有利にはアルコキシシラン、クロロシラン及びアシルオキシシラン基から選択され、好ましくはアルコキシシラン基である。
【0073】
一実施形態では、架橋剤(III)のグラフト官能基Rgは、
・アミノ基-NH
・エチレン性不飽和を含む基、好ましくはビニル、アリル及びメタクリロイル基;
・好ましくはグリシジル、グリシドキシ、オキシラニル基から選択されるエポキシ基;
・チオール基-SH;
・ハロゲン原子、好ましくは塩素;
・イソシアネート基-N=C=O;及び
・アシルウレア基-CO-NH-CO-NH又はアルキルウレア基-R-NH-CO-NH(式中、Rは二価の炭化水素基である)
から選択される少なくとも1種の基を含む。
【0074】
「エチレン性不飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合を意味すると理解されるべきである。本発明において適した1以上のエチレン性不飽和を含む基の例として、ビニル、アリル及びメタクリロイル基が挙げられる。
【0075】
「エポキシ基」という用語は、オキサシクロプロパンとしても知られる、3員を有する環状エーテルを含む基を意味すると理解されるべきである。エポキシ基の例として、グリシジル、グリシドキシ及びオキシラニル基が特に挙げられる。
【0076】
一実施形態では、架橋剤(III)のグラフト官能基Rgは、エポキシ基及びハロゲン原子から選択される少なくとも1個の基を含む。本発明の特定の一実施形態では、Rgはエポキシ基、好ましくはグリシドキシ基である。他の特定の実施形態では、Rgはハロゲン原子、好ましくは塩素を表す。
【0077】
一実施形態では、架橋剤(III)は、a=0であるようなものである。
【0078】
一実施形態では、架橋剤(III)は、a=0又は1であり、基R2がすべて同一であるようなものである。
【0079】
一実施形態では、架橋剤(III)は、a=2であり、基R3はすべて同一である。
【0080】
好ましくは、R1は二価の炭化水素基であり、好ましくはエチレン、プロピレン及びブチレン基から選択され、好ましくはプロピレン基である。
【0081】
一実施形態では、Rgはエポキシ基、好ましくはグリシドキシ基を表し、R1は二価の炭化水素基、好ましくはプロピレン基を表す。
【0082】
好ましくは、すべての基R2(好ましくは同一である)はアルコキシ基であり、好ましくは-OMe又は-OEt基である。本発明の特定の実施形態では、基R2の全ては同一であり、-OMe又は-OEtを表す。
【0083】
好ましくは、R3はメチル基である。
【0084】
特定の実施形態では、a=0であり、R1は二価の炭化水素基、好ましくはプロピレン基であり、R2はアルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基であり、Rgはエポキシ基、好ましくはグリシドキシ基である。
【0085】
本発明の別の特定の実施形態では、a=0であり、R1は共有結合であり、R2はアルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基であり、Rgはハロゲン原子、好ましくは塩素である。
【0086】
本発明の別の特定の実施形態では、a=1であり、R1は共有結合であり、R2はアルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ基であり、R3はアルキル基、好ましくはメチルであり、Rgはハロゲン原子、好ましくは塩素である。
【0087】
本発明において適し得る架橋剤の例として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロメチル(メチル)ジエトキシシラン、及びクロロメチル(メチル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0088】
架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の製造方法
本発明はまた、本発明において定義するような架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の製造方法を提供する。
【0089】
本製造方法は、以下の工程:
a)ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を提供する工程であって、前記粒子が20μm~100μmの範囲の平均直径d50を有する工程;
b)少なくとも1つの架橋性官能基Rtと、反応性官能基Rrと称されるポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基と反応することができる少なくとも1つのグラフト官能基Rtとの両方を含む架橋剤(III)を提供する工程;
c)混合物(II+III)を得るために、ポリアミド(II)の球状粒子の粉末を、架橋剤(III)と混合する工程;
d)工程c)から得られた混合物(II+III)を、ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+5℃~ポリアミド(II)のガラス転移温度Tg(II)+70℃の、又はTg(II)+70℃>Tcryst(II)-35℃である場合は、ポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)-35℃までの範囲である温度T1まで加熱して、架橋剤(IV)を含浸させたポリアミドの球状粒子の粉末を得る工程;
e)架橋剤(IV)を含浸させたポリアミド粉末を、T1より高く且つポリアミド(II)の結晶化温度Tcryst(II)より低い温度T2まで加熱して、架橋可能なポリアミド(I)の粉末を得る工程、
を含む。
【0090】
有利には、本製造方法は、粒子の表面及び塊中に存在する架橋可能な官能基を有する架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を得るために使用し得る。
【0091】
有利には、得られる架橋可能なポリアミド(I)の粒子の粉末は、乾燥している。
【0092】
一実施形態では、出発ポリアミド(II)は、30℃~90℃、好ましくは40℃~60℃の範囲のガラス転移温度Tg(II)を有する。
【0093】
一実施形態では、出発ポリアミド(II)は、170℃~220℃、好ましくは175℃~205℃の範囲の融解温度Tfus(II)を有する。
【0094】
一実施形態では、出発ポリアミド(II)は、110℃~170℃、好ましくは145℃~165℃の範囲の結晶化温度Tcryst(II)を有する。
【0095】
一実施形態では、ポリアミド(I)の融解エンタルピーは、-120J/g~-80J/gの範囲である。
【0096】
一実施形態では、ポリアミド(II)は、20μm~100μm、好ましくは35μm~50μmの範囲の平均直径d50を有する球状粒子の形態である。
【0097】
ポリアミド(II)は、脂肪族又は半芳香族の半結晶性である。
【0098】
一実施形態では、ポリアミド(II)は脂肪族ポリアミドである。この実施形態では、ポリアミド(II)は、PA6(ポリカプロラクタム:[NH-(CH-CO])、PA6.6(ポリヘキサメチレンアジパミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.9(ポリヘキサメチレンノナンジアミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.10(ポリヘキサメチレンセバカミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH-CO])、PA6.12(ポリヘキサメチレンドデカンジアミド:[NH-(CH-NH-CO-(CH10-CO])、PA10.10(ポリデカメチレンセバカミド:[NH-(CH10-NH-CO-(CH10-CO])、PA10.12(ポリデカメチレンドデカンジアミド:[NH-(CH10-NH-CO-(CH10-CO])、PA11(ポリウンデカンアミド:[NH-(CH10-CO])、及びPA12(ポリラウリルラクタム:[NH-(CH11-CO])から選択される。
【0099】
一実施形態では、ポリアミド(II)は半芳香族、半結晶性ポリアミドである。本発明において適した半芳香族半結晶性ポリアミドの例として、PA mXD.6(ポリメタキシリレンアジパミド)及びPA mXD.10(ポリメタキシリレンセバカミド)が挙げられる。特定の一実施形態では、ポリアミド(II)はPA mXD.10である。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、ポリアミド(II)は脂肪族ポリアミドであり、好ましくはPA6、PA6.6、PA6.10、PA10.10、PA10.12、PA11及びPA12から、及び好ましくはPA11及びPA12から選択される。
【0101】
第一の実施形態では、架橋性官能基Rtはポリアミド(II)合成の間に導入される。
【0102】
別の実施形態では、架橋性官能基Rtは、ポリアミド(II)へ直接グラフトされることによって提供される。これに関して、ポリアミド(II)は、架橋剤がそこで反応する反応性官能基を有する。この実施形態では、架橋性官能基Rtは、架橋剤(III)を、反応性官能基Rrと称されるポリアミド(II)のアミン及び/又はカルボキシル及び/又はアミド官能基に直接グラフトすることによって供給される。換言すれば、架橋可能なポリアミド(I)は、それが製造されているときに、架橋剤(III)の官能基Rgがポリアミド(II)の反応性官能基Rrと反応して、架橋可能な官能基Rtのグラフトをもたらすことによって、特徴づけられる。
【0103】
有利には、架橋剤(III)は上記に定義した通りである。
【0104】
出発ポリアミド(II)及び架橋剤(III)は、特にArkema社及びMomentive Performance Materials Inc社からそれぞれ市販されている。
【0105】
有利には、本発明によれば、架橋可能なポリアミド(I)は、架橋可能な官能基の存在においてのみ、出発ポリアミド(II)と異なる。
【0106】
一実施形態では、工程c)の混合物は、架橋剤(III)及びポリアミド(II)の全質量に対して、1質量%~10質量%、好ましくは3質量%~8質量%、さらにより好ましくは4質量%~6質量%の範囲の割合の架橋剤(III)を用いて製造される。
【0107】
有利には、架橋剤(III)中に存在する架橋性官能基のパーセンテージは、架橋剤(III)の30質量%~90質量%に相当する。従って、1質量%~10質量%の架橋剤(III)を架橋可能なポリアミド(I)の製造に使用する場合、これは有利には、架橋可能なポリアミド(I)の全質量に対して、0.3質量%~9質量%、好ましくは1質量%~5質量%の範囲の架橋性官能基Rtのパーセンテージを有する。
【0108】
有利には、グラフト量は50%~100%、好ましくは60%~100%、さらにより好ましくは70%~100%の範囲である。ここでグラフト量は、グラフト工程からの収率である。
【0109】
一実施形態では、工程c)の混合物は、20℃~30℃の範囲の温度で製造される。
【0110】
一実施形態では、工程c)における混合は、乾式で、溶媒なしで、特に容器又は密封ミキサー中で、不活性雰囲気中又はその他の方法で行われる。
【0111】
一実施形態では、Tg(II)+70℃>Tcryst(II)-35℃である場合、工程d)の加熱は、Tg(II)+5℃~Tcryst(II)-35℃の、好ましくはTg(II)+10℃~Tcryst(II)-40℃の、さらにより好ましくはTg(II)+20℃~Tcryst(II)-45℃の範囲の温度T1で行う。
【0112】
一実施形態では、Tg(II)+70℃≦Tcryst(II)-35℃である場合、工程d)の加熱は、Tg(II)+5℃~Tg(II)+70℃の、好ましくはTg(II)+10℃~Tg(II)+70℃の、好ましくはTg(II)+20℃~Tg(II)+70℃の範囲の温度T1で行う。
【0113】
一実施形態では、加熱工程d)は、密封容器内で、撹拌してもしなくてもよく、好ましくは不活性雰囲気、特に窒素又はアルゴン中で行う。
【0114】
一実施形態では、工程e)の加熱は、T1+10℃以上且つTcryst(II)未満の、好ましくはT1+20℃~Tcryst(II)-5℃、さらにより好ましくはT1+30℃~Tcryst(II)-10℃の温度T2で行う。
【0115】
一般に、工程d)から温度T1への加熱は、1時間(h)~4hの間維持され、工程e)から温度T2への加熱は、3h~12hの間維持される。
【0116】
本発明の特定の実施形態では、製造方法は、工程e)に続き、好ましくはシリカ又はヒュームドシリカから選択される流動剤、好ましくは固体又は中空ガラスビーズ、炭素繊維、ウォラストナイト繊維又はアルミナから選択される強化充填剤、難燃剤、熱安定剤、帯電防止剤又は導電剤、又は着色剤を添加するための工程f)を含む。
【0117】
架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の使用方法
SLS技術を用いた中間物品の形成
本発明はまた、選択的レーザー焼結法(SLS)を用いて、中間物品と定義する物品を製造するための、本発明において定義する架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の使用方法を提供する。本発明はまた、本発明の架橋可能なポリマー(I)の球状粒子の粉末から、選択的レーザー焼結技術(SLS)を用いて、中間物品として知られる物品を製造する方法を提供する。
【0118】
中間物品と定義する物品の三次元形状は、SLS技術によって、すなわち以下の工程を繰り返すことにより、連続して一緒に結合される要素の重ね合わせた層を形成することによって、製造される。
【0119】
a)本発明において定義するような架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末を、含む、又は排他的にそれによって構成された、粉末の連続床を堆積させる工程;
b)架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の堆積した粉末の一部分の局所的固化を、各層に対し所定のパターンに従ってレーザービームを施与することによって行って層要素を生成し、そのように形成された層要素を、中間物品の所望の三次元形状が次第に成長するような方式で、前の層に同時に結合させる工程。
【0120】
有利には、工程a)の粉末の連続床は一定の厚さを有し、層のレベルで見なす所望の中間物品の断面の上の表面として延びて、物品の端部での精度を保証する。粉末床の厚さは、有利には40μm~120μmの範囲である。
【0121】
工程b)の固化は、レーザー処理によって行われる。
【0122】
この目的のために、当業者に既知の任意のSLS印刷機、例えばSharebot社製のSnowWhiteタイプ、3D Systems社Vanguard HSタイプ、又はEOS社製のP396タイプを使用することが特に可能である。
【0123】
SnowWhiteタイプのプリンタを使用する場合、レーザーの出力は、有利には4ワット(W)~8Wの範囲にある。
【0124】
レーザーの移動速度は、有利には毎秒0.2メートル(m/s)~2.5m/s、好ましくは0.8m/s~2m/sの範囲である。
【0125】
SLS印刷機のパラメータは、粉末床の表面温度が焼結範囲内である、すなわち結晶化オフセット温度と融解開始温度との間に含まれるように、好ましくはTcryst(I)オフセット+10℃~Tfus(I)開始-5℃の範囲であるような方式で選択される。
【0126】
有利には、架橋可能なポリアミド(I)の粒子の粉末は、レーザー通過の間に架橋せず、得られる部品は依然として熱可塑性である。
【0127】
中間物品の三次元構造が形成されると、次いで固化していない材料が取り除かれる。
【0128】
有利には、使用されるがレーザーの影響を受けていない架橋可能なポリアミド(I)の粒子の粉末は、熱の作用下で凝集せず、全く変性せず、特に有利には、SLSによる物品の製造に再度、特に少なくとも5回使用することができる。
【0129】
中間物品の架橋による物品の形成
本発明はまた、本発明において定義するような架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末の選択的レーザー焼結(SLS)のための第一の工程、続いて前記架橋可能なポリアミド(I)を架橋する工程によって形成される物品を提供する。
【0130】
本発明は、
i. 選択的レーザー焼結技術を用いた、本発明において定義するような架橋可能なポリアミド(I)の球状粒子の粉末から出発する、特に本発明において記載する方法に従った、中間物品の形成;及び
ii. 中間物品の前記架橋可能なポリアミドの架橋可能な官能基Rtの少なくとも一部分の架橋、
を含む、ポリアミド物品の製造方法を提供する。
【0131】
一実施形態では、工程ii)の架橋は、水の存在下で、好ましくは外気からの水分の吸収によって、又は制御雰囲気中、例えば相対湿度80%の40℃で、又は水に浸漬することによって行う。
【0132】
特定の実施形態では、工程ii)の架橋は、中間物品を水中に、好ましくは20℃~100℃、好ましくは50℃~95℃の範囲の温度で、1h~2h、好ましくは6h~18h、より好ましくは9h~15h浸漬することによって行う。
【0133】
一実施形態では、架橋量は、70%~100%の範囲、好ましくは100%である。
【0134】
本発明の「架橋量」は、架橋された架橋可能なポリアミド中の架橋可能な官能基の割合を意味すると理解されるべきである。この割合は、架橋性官能基の初期質量に対する質量パーセンテージとして表される。
【0135】
一実施形態では、上述のようなポリアミド物品の製造方法は、形成された物品を乾燥させるために、工程ii)に続く工程iii)をさらに含む。好ましくは、この乾燥工程は、20℃~100℃、好ましくは50℃~95℃の範囲の温度で、特に1h~12h、好ましくは3h~6h行う。
【0136】
本発明を以下の実施例で説明するが、それらは純粋に例示として挙げるものであり、決して範囲を限定するものではない。実施例は、添付の図面を参照する。
【0137】
図1は、実施例1のIRスペクトルを表す。図中、
・1:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187);
・2:PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth);
・3:95%のPA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)+5%のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187)の混合物;
・4:80℃の含浸相の後、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187)を含浸させたPA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth);及び
・5:5%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトしたPA12。
【0138】
図2は、実施例2のIRスペクトルを表す。図中、
・1:グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871);
・2:PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth);
・3:95%のPA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)+5%のグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)の混合物;及び
・4:5%のグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12。
【0139】
図3は、実施例3のIRスペクトルを表す。図中、
・1:グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871);
・2:PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth);
・3:92%のPA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)+8%のグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)の混合物;及び
・4:8%のグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12。
【0140】
図4は、実施例4のIRスペクトルを表す。図中、
・1:グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871);
・2:PA11(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural);
・3:94%のPA11(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural)+6%のグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)の混合物;及び
・4:6%のグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA11。
【0141】
図5は、参考例PA12及び比較例についてのものと比較した、実施例5及び6についての弾性率及び損失角デルタの正接(タンデルタ)に対応する損失係数又は減衰係数の変化のグラフを表す。図中、
・グラフ1:PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)
・グラフ2:実施例5
・グラフ3:実施例6;及び
・グラフ4:比較例。


【0142】
図6は、参考例11についてのものと比較した、実施例7についての弾性率及び損失角デルタの正接(タンデルタ)に対応する損失係数又は減衰係数の変化のグラフを表す。図中、
・グラフ1:PA11(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural);及び
・グラフ2:実施例7.
図7は、PA12、PA11、実施例1~4のポリマー及び比較例のポリマーの、光学顕微鏡画像を表す。
【実施例
【0143】
材料及び方法
DSC分析:示差走査分析(DSC)は、TA Instruments社製のDSC Q20装置を用いて行った。適用された熱サイクルは以下の通りであった:10℃/分で周囲温度から240℃への第一の上昇、10℃/分で240℃から-20℃への温度減少、10℃/分で-20℃から240℃の温度への第二の上昇。
【0144】
粒子の粒径及び形状:ポリマー粒子の粉末の粒径は、Malvern Instruments社のMastersizer 2000粒度計を用いて、乾式レーザー粒度計により測定した。粒子の形状は、Andonstar社製のUSB顕微鏡を用いて光学顕微鏡によって観察した。
【0145】
熱可塑性:ポリマーの熱可塑性は、温度調節された液圧プレス(220℃に加熱し、保持期間2分の間10バールでプレスされたプレスプレート間に堆積させた40グラム(g)の粉末)を用いた熱圧縮により、薄膜を製造することによって確認した。
【0146】
本発明の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の製造:ポリアミド(II)の粉末1キログラム(k)を、流動しない粘着性ペーストが得られるまで、架橋剤(III)と乾式混合した。次いで混合物(II+III)を密封式ステンレス鋼容器に入れ、次にこれをプログラム可能なオーブンに入れた。次の熱サイクルを適用した:粉末の含浸を行うため80℃で3h等温にし、続いてグラフトを行うために130℃で8h等温にした。
【0147】
赤外分析:赤外分光法は、反射下でSmart ITRセルを備えたNicolet IS10分光計を用いて行った。
【0148】
熱重量分析(TGA):TGA分析は、不活性雰囲気(窒素)下で、TA Instruments社製のTGA Q500装置を用いて、10℃/分の温度上昇を650℃まで適用することによって行った。
【0149】
実施例1:5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトしたPA12種の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の製造
レーザー焼結に適したPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)(d50=38μm、球状粒、182℃に等しい融解温度、40℃に等しいガラス転移温度)を、本発明に従って変性させた。グラフト剤は、5%w/wの割合のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187)であった。本発明の架橋可能なポリアミドの容器は、「材料及び方法」の項に記載の方法に従って調製した。
【0150】
5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187)を含浸させた、PA12の粒子の粉末(Arkema社から販売されているOrgasol smooth invent)の別の容器も同じ方式で調製したが、80℃の含浸相の後、グラフト相の前にオーブンから除去した。
【0151】
冷却後、得られた架橋可能なポリアミドの粒子の粉末を乾燥させ、変性していないPA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)の流動特性に近い流動特性を回復させた。
【0152】
グリシドキシプロピルトリメトキシシランのグラフトを確認するために、赤外分光法及び熱重量分析(TGA)による分析を、(i)架橋可能なポリアミドの粒子の粉末について、及び(ii)グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含浸させたグラフトしないPA12の粒子の粉末について行った。
【0153】
赤外分析は、シランのエポキシ官能基の特性であり、初期混合物中及び含浸相の終わりに除去した試料中に存在する、760cm-1での吸光度ピークが(図1、グラフ3及び4参照)、グラフト相後に消失した(図1、グラフ5参照)ことを示した。これらのエポキシ官能基は、グラフト反応によって消費された。
【0154】
-O-CH-結合の特性である1072cm-1での吸光度ピークは、1110cm-1にシフトした(図1参照)。
【0155】
含浸相の終わりに除去した粉末に関して、2つのピークは一致した:グラフトは含浸相の間に既に始まっていた。TGA分析により、4%~4.5%の割合の揮発分がもたらされた。
【0156】
グラフト相の終わりに除去したポリアミド粒子の粉末に関して、1070cm-1のピークが消失していた。TGAによって測定された揮発分の割合は0.2%未満であり、これはグラフトがほぼ完了したことを示していた。
【0157】
架橋可能なポリアミドの粒子の粉末の熱プロファイルは、DSC分析によって決定された。結果は、PA12粉末の熱プロファイルが、グラフトによって変性されなかったことを証明する(表1参照)。
【0158】
得られた粉末の粒径はほとんど変性しなかった(表2及び図7参照)。粒子の球形は保持された。粒子径は均一なままであった:(d90-d10)値は26μmであり、PA12の値(23μm)に匹敵した。
【0159】
グラフトしたPA粉末の熱可塑性は、温度調整された液圧プレスを用いた熱圧着により、薄膜を製造することによって確認した。得られた膜は完全に均質であり、そのことから、5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトしたPA12粉末は、依然として熱可塑性であることが示された。
【0160】
このように、本発明の5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトしたPA12粒子は、球状で寸法が均一であり、SLS技術に適していた。それによって得られた粉末は乾燥しており、良好な流動特性を有していた。加えて、本発明の5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトしたPA12の球状粒子の粉末の熱プロファイルは、グラフトによって変性されておらず、従ってSLS技術に適した熱的性質を保持していた。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
実施例2:5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12種の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の製造
レーザー焼結に適したPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)(d50=38μm、球状粒、182℃に等しい融解温度、40℃に等しいガラス転移温度)を、本発明に従って、5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)で変性させた。グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)を含浸させたPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)も、実施例1に記載したように製造した。
【0164】
実施例1に関して、赤外分析は、初期混合物中に存在するシランのエポキシ官能基の特性である、760cm-1での吸光度ピークが(図2、グラフ3参照)、グラフト相後に消失した(図2、グラフ4参照)ことを示した。これらのエポキシ官能基は、グラフト反応によって消費された。
【0165】
Si-O-C結合の特性である950cm-1での吸光度ピークは、1025cm-1にシフトした。シランの-O-CH-結合の1070cm-1及び1163cm-1での吸光度ピークは、1110cm-1及び1185cm-1にシフトした。
【0166】
シランの特性的な結合の吸光度ピークのシフトは、ポリアミドにそれらシランをグラフトした結果である。
【0167】
TGA分析により0.2%未満の揮発分含量が得られ、これはほぼ完全なグラフトを示していた。
【0168】
変性させたPA12粉末のDSC分析は、PA12粉末の熱プロファイルがグラフトによって変性されなかったことを示した(表1参照)。
【0169】
実施例1に関して、PA12の粉末の粒径及び粒の球形は変性されなかった(表2及び図7参照)。粒子径は均一なままであった:(d90-d10)値は25μmであり、PA12の値(23μm)に匹敵した。
【0170】
熱圧縮により得られた膜は、完全に均質であった。5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粉末は、依然として熱可塑性であった。
【0171】
従って、本発明の5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子は、球状で寸法が均一であり、SLS技術に適していた。それによって得られた粉末は乾燥しており、良好な流動特性を有していた。加えて、本発明の5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12の球状粒子の粉末の熱プロファイルは、グラフトによって変性されておらず、従ってSLS技術に適した熱的性質を保持していた。
【0172】
実施例3:8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12種の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の製造
レーザー焼結に適したPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)(d50=38μm、球状粒、182℃に等しい融解温度、40℃に等しいガラス転移温度)を本発明に従って、「材料及び方法」の項に記載されているように、8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)を用いて変性させた。
【0173】
実施例1に関して、赤外分析は、初期混合物中に存在するシランのエポキシ官能基の特性である、760cm-1での吸光度ピークが(図3、グラフ3参照)、グラフト相後に消失した(図3、グラフ4参照)ことを示した。これらのエポキシ官能基は、グラフト反応によって消費された。
【0174】
Si-O-C結合の特性である950cm-1での吸光度ピークは、1025cm-1にシフトした。シランの-O-CH-結合の1070cm-1及び1163cm-1での吸光度ピークは、1110cm-1及び1185cm-1にシフトした。
【0175】
シランの特性的な結合の吸光度ピークのシフトは、ポリアミドに後者、シランをグラフトした結果である。
【0176】
1072cm-1での吸光度ピークは、グラフト反応の終了時に依然として存在し、1110cm-1でのピークと共存した(図3、グラフ4参照)。従って、グラフトは完全ではなかった。
【0177】
TGA分析により、2~2.5%程度の揮発分含量が得られた。
【0178】
不完全なグラフトにもかかわらず、8%w/wのシランで変性させたPA12粉末のDSC分析は、グラフトによっても、又はグラフトしないシランの存在によっても、PA12粉末の熱プロファイルが変性されないことを示した(表1参照)。
【0179】
このようにしてグラフトしたPA12の粉末の粒径及び粒の球状形状は、変性されなかった(表2及び図7参照)。粒子径は均一なままであった:(d90-d10)値は27μmであり、PA12の値(23μm)に匹敵した。
【0180】
熱圧縮により得られた膜は、シランの蒸発が原因で気泡を有していた。対照的に、それは不均一ではなかった。8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPAの粉末は、依然として熱可塑性であった。
【0181】
このように、ここでもまた、本発明の8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子は、球状で寸法が均一であり、SLS技術に適していた。それによって得られた粉末は乾燥しており、良好な流動特性を有していた。加えて、本発明の8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12の球状粒子の粉末の熱プロファイルは、グラフトによって変性されておらず、従ってSLS技術に適した熱的性質を保持していた。
【0182】
実施例4:6%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA11種の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の製造
レーザー焼結に適したPA11の粉末(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural)(d50=37μm、不規則な粒形状、202℃に等しい融解温度、41℃に等しいガラス転移温度)を本発明に従って、「材料及び方法」の項に記載されているように、6%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A1871)を用いて変性させた。
【0183】
赤外分析は、初期混合物中に存在するシランのエポキシ官能基の特性である、760cm-1での吸光度ピークが(図4、グラフ3参照)、グラフト相後に消失した(図4、グラフ4参照)ことを示した。これらのエポキシ官能基は、グラフト反応によって消費された。
【0184】
Si-O-C結合の特性である952cm-1での吸光度ピークは、1037cm-1にシフトした。シランの-O-CH-結合の1074cm-1及び1163cm-1での吸光度ピークは、1120cm-1及び1198cm-1にシフトした。
【0185】
シランの特性的な結合の吸光度ピークのシフトは、ポリアミドに後者、シランをグラフトした結果である。
【0186】
TGA分析により0.2%未満の揮発分含量が得られ、これはほぼ完全なグラフトを示していた。
【0187】
PA11のグラフト粉末のDSC分析は、PA11の粉末の熱プロファイルがグラフトによって変性されなかったことを示した(表1参照)。
【0188】
グラフトしたPA11粒の粉末の粒径及び形状は変性されていなかった(表2及び図7参照)。粒子径は均一なままであった:(d90-d10)値は58μmであり、PA11(56μm)の値に匹敵した。
【0189】
熱圧縮により得られた膜は完全に均質であった。6%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA11粉末は、依然として熱可塑性であった。
【0190】
従って、本発明の6%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子は、球状で寸法が均一であり、SLS技術に適していた。それによって得られた粉末は乾燥しており、良好な流動特性を有していた。加えて、本発明の6%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA11の球状粒子の粉末の熱プロファイルは、グラフトによって変性されておらず、従ってSLS技術に適した熱的性質を保持していた。
【0191】
比較例
レーザー焼結に適したPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)(d50=38μm、球状粒、182℃に等しい融解温度、40℃に等しいガラス転移温度)を、5%w/wのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc社から販売されているSilquest A187)を用いた反応性押出によって変性させた。
【0192】
グラフトは、直径26mm、長さ80の直径(D)を有し、16の独立した加熱区域5Dを有する共回転二軸スクリュー押出機を用いて行った。温度プロファイルに関して、第一区域を200℃に調節した。他の全ての区域は220℃に調節した。グラフトはこのように溶解相で行った。
【0193】
用いたスクリュープロファイルは、熱可塑性材料をグラフトするのに用いられる標準のスクリュープロファイルであった。スクリューの回転速度は、毎時4キログラム(kg/h)に固定したポリアミド流速について、毎分100回転(rpm)に固定した。
【0194】
PA12及びシランは、乾燥混合物の形態で押出機の基部で主ホッパーに組み込んだ。
【0195】
ロッドを水中で冷却し、押出機からの出口で粒状化した。
【0196】
得られた顆粒は、表面の水分を除去するために80℃で4hにわたって乾燥させた。
【0197】
グラフトは押出機内の溶解相中で行われていたので、得られたPA12の変性顆粒は、コア及び表面で均質にグラフトされていた。
【0198】
変性させたPA顆粒の熱プロファイルを比較するために、得られた顆粒について示差走査熱量分析(DSC)を行った。この熱分析は、反応性押出によって変性させたPA12の熱プロファイルが変性されたことを示した(表1参照)。特に、変性させたPA12について、観察された融解温度(Tfusピーク)及びTfus開始(オンセット)は、より低い温度にオフセットされた。結晶化温度(Tcrystピーク)及びTcrystオフセットは、より高い温度にオフセットされた。焼結ウィンドウ(TfusオフセットとTcrystオフセットとの間の差に対応する)は、それ故、約11℃減少した。融解及び結晶化エンタルピーもまた減少した。
【0199】
次いで得られた顆粒を、Retsch社Zm200ラボ用ミル(250μmふるい、ナイフ速度12000rpm)で低温粉砕した。この目的のために、顆粒をミルに導入する前に30分間液体窒素中で冷却した。
【0200】
次いで得られた粉末を、Retsch社AS200ラボ用ふるいを用いて、100μmで篩過した。
【0201】
得られた粉末の粒径をレーザー粒度計を用いて測定し、粒子の形状を光学顕微鏡を用いて観察した。変性させていないPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)と比較して、粒子径分布が変性しており、粒子の形状は非常に不均一、不規則及び非球形であった(表2及び図7参照)。
【0202】
変性させたPA12顆粒は熱可塑性であった。それらから得られた膜は、完全に均質であった。対照的に、粉砕により得られた粉末から得られた膜は、不均一であった。材料が流動する線は、透明度によって観察可能であり、これは、粘度の増加、又はPA12の架橋の開始さえも示していた。
【0203】
反応性押出により変性され、粉砕されたPA12膜は、このように、特に粒子の寸法分布及び形状のために、及び融解温度の減少及び結晶化温度の上昇から生じる焼結ウィンドウの減少のために、選択的レーザー焼結による3D印刷の方法には適していなかった。
【0204】
粉末からプレスした膜を水中に90℃で12h浸漬し、縮合加水分解によってアルコキシシラン基の架橋を生成した。浸漬サイクル後、膜を換気オーブン中90℃で6h乾燥した。次いで試験片を穿孔器で切断した。
【0205】
架橋は、1ヘルツ(Hz)の周波数で5℃/分の温度上昇で行われた、張力下の切断試験片の動的熱機械分析(DMTA)によって実証された。
【0206】
弾性率の変化及び損失角デルタに対する正接(タンデルタ)の変化のグラフは、反応性押出によって5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12の結晶相の融解後、弾性率が崩壊せずに300℃まで維持された一方、標準PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)のそれは、結晶相の融解時に完全に崩壊したことを示した(図4)。
【0207】
実施例5:SLSにおける実施例2の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の使用
実施例2の5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子の粉末を、Sharebot社製のSnowWhiteタイプの3Dプリンタで焼結し、規格ISO 527-1:2012に定義されるようなH2タイプの試験片を製造し、張力下のプラスチック材料の機械的性質を決定した。
【0208】
この試験を行うために用いた層の厚さは、100μmであった。
【0209】
焼結パラメータを表3に示す。これらのパラメータはレーザー出力、レーザー走査速度及び環境温度であった。
【0210】
この種の機械では、温度を調節する2つの手段が可能である:熱電対、環境温度を用いて行われる焼結チャンバの温度を測定することによる調節、及び赤外線センサーを用いて行われる粉末床の表面温度を測定することによる調節である。実施例2に従って変性させたPA12粉末を焼結するために、環境温度を測定することによる調節モードを選択した。
【0211】
【表3】
【0212】
グラフトしないPA12粉末(Arkema社から販売されているOrgasol Invent Smooth)に対して、レーザー放射の出力及びレーザーの走査速度を、より多くのエネルギーを粉末に移すような方式で変性させ、その粉末を正確に融解して良好な部品の焼結を得た。
【0213】
レーザー焼結によって得られたH2試験片の熱可塑性は、温度調整された油圧プレスを用いて熱圧着によって薄膜を製造することによって確認した。
【0214】
焼結の間、5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粉末は、レーザー通過の間に架橋しなかった。
【0215】
さらに、レーザーの影響を受けていないグラフトしたPA12粒子の粉末の熱可塑性は、薄膜を製造することによって確認した。従って、グラフトしたPA12粉末は、熱の作用下で架橋しなかった。他の焼結試験を行うために、それを多数回(少なくとも5回)再使用することができる。
【0216】
焼結したH2試験片のDSC分析は、融解及び焼結の間に起こる再結晶化後の粉末の熱プロファイルが、比較例の変性させたPA粉末のそれと同等であることを示した。従って、比較例の結果は、選択的レーザー焼結に適した熱プロファイルを有するPA12が、融解し再結晶化すると、後者を失うことを示した。
【0217】
アルコキシシラン基の縮合加水分解によって引き起こされる、変性させたPAから形成した焼結部品の架橋は、水中に90℃で12h浸漬することによって行った。
【0218】
浸漬サイクルの後、試験片を換気オーブン中90℃で6h乾燥した。
【0219】
架橋は、1Hzの周波数で5℃/分の温度上昇で行われる、張力下の動的熱機械分析(DMTA)によって実証された。
【0220】
弾性率の変化及び損失角デルタに対する正接の変化(タンデルタ)のグラフは、5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12の結晶相の融解後、弾性率が崩壊せずに300℃まで維持された一方、参照例PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)のそれは、結晶相の融解時に完全に崩壊したことを示した(図5)。
【0221】
この挙動は、当業者にはよく知られているように、一般に60%~70%の架橋の割合を有する、シラン経路によって架橋することができるポリエチレン(Pex-b)の挙動と同等であった。
【0222】
従って、本発明の5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子の粉末は、焼結工程の間のレーザー通過の間に架橋せず熱可塑性のままである。焼結試験片を架橋した後、熱機械的特性は、架橋できないPA12粒子の粉末からの焼結部品のそれと比較して、改良された。
【0223】
図5において、本発明に従って変性させ、選択的レーザー焼結後に架橋させたPA12の熱機械的特性(グラフ2)と、比較例に従って反応性押出によって変性させ、熱圧縮による形成後に架橋させたPA12の熱機械的特性(グラフ4)との比較は、実施例5と同様に、本発明の架橋剤をグラフトすると、グラフトを反応性押出によって行った場合に得られるものに近いレベルの架橋がもたらされたことを示す。
【0224】
この結果は、本発明に従って変性させ、選択的レーザー焼結後に架橋させたPA12の熱機械的性質が、コアでグラフトし架橋させたPA12の熱機械的性質と同等であるという条件で、本発明の粉末の変性が、粒子の表面及びコアでグラフトをまさにもたらすことを証明する。
【0225】
表面のみでのグラフトは、ほんのわずかなPA(PAの10%未満)の架橋をもたらすであろう。このような量の架橋PAの場合、変性させたPA12は、10%程度まで任意の充填剤で充填したPA12のような挙動であろう。当業者は、そのような材料については、充填していない及び変性させていないPA12のように、弾性率が融解温度の後に崩壊することを認識している。
【0226】
実施例6:SLSにおける実施例3の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の使用
実施例3からの8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子の粉末をSharebot社製のSnowWhiteタイプの3Dプリンタで焼結し、H2タイプの試験片を製造した。
【0227】
この試験を実施するために使用された層の厚さは100μmであり、調節モードは環境温度の測定によるものであった。
焼結パラメータを表3に示す。
【0228】
実施例5と同様の方法で、このグラフトしたPA12粒子の粉末の焼結は、レーザー通過の間に粉末を正確に融解して部品の良好な焼結を得るために、グラフトしないPA12粒子と比較して、大きなエネルギー入力を必要とした。
【0229】
レーザー焼結によって得られたH2試験片の熱可塑性及び焼結されていないが焼結手順の完全な熱サイクルを受けたグラフトしたPA12粒子の粉末の熱可塑性は、温度調整した油圧プレスを用いて熱圧着により薄膜を製造することによって確認した。
【0230】
焼結したH2試験片のDSC分析は、実施例5で焼結した試験片の熱プロファイルと類似の熱プロファイルを示した。
【0231】
変性させたPAから焼結することによって得られた部品を、水中に90℃で12h浸漬することによって架橋した後、試験片を、動的熱機械分析(張力下で1Hzの周波数で5℃/分の温度上昇で行われる)によって評価する前に、換気オーブン中90℃で6h乾燥した。
【0232】
弾性率の変化及び損失角デルタに対する正接の変化のグラフは、変性させたPA12の結晶相の融解後、弾性率が崩壊せずに300℃まで維持された一方、参照例PA12(Arkema社から販売されているOrgasol invent smooth)のそれは、結晶相の融解時に完全に崩壊した(図5)ことを示した。融解に関連する率の減少は、実施例5の参照例PA12及び架橋PA12と比較して、約10度高い温度にオフセットされた。このオフセットは、やはり縮合加水分解のプロセスに関与し、架橋密度の増加に寄与する、実施例3に従って製造した粉末のグラフトしていないシランの過剰分におそらく関連する。
【0233】
従って、本発明の8%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA12粒子の粉末は、焼結工程の間のレーザー通過の間に架橋せずに熱可塑性のままである。焼結試験片を架橋した後、熱機械的特性は、架橋できないPA12粒子の粉末からの焼結部品のそれと比較して、改良された。
【0234】
図5において、本発明に従って変性させ、選択的レーザー焼結後に架橋させたPA12の熱機械的特性(グラフ3)と、比較例に従って反応性押出によって変性させ、熱圧縮による製造後に架橋させたPA12の熱機械的特性(グラフ4)との比較は、本発明の架橋剤をグラフトすると、グラフトを反応性押出によって行った場合に得られるものに近いレベルの架橋がもたらされたことを示す。
【0235】
この結果は、本発明の粉末の変性が、粒子の表面及びコアでグラフトをまさにもたらすことを証明する。
【0236】
実施例7:SLSにおける実施例4の架橋可能なポリアミドの球状粒子の粉末の使用
実施例4に従った5%w/wのグリシドキシプロピルトリエトキシシランをグラフトしたPA11の粒子の粉末を、Sharebot社製のSnowWhiteタイプの3Dプリンタで焼結し、H2タイプの試験片を製造した。この試験を実施するために使用された層の厚さは100μmであり、選択した調節モードは環境温度の測定であった。焼結パラメータを表3に示す。
【0237】
参考例のPA11(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural)と比較して、実施例4に従って変性させたPA11の粉末は、部品の正確な融解及び良好な焼結を得るために、レーザー通過の間により多くのエネルギー供給を必要とした。
【0238】
レーザー焼結によって得られたH2試験片の熱可塑性及び焼結されていないが焼結手順の完全な熱サイクルを受けたPA11粒子の変性させた粉末の熱可塑性は、温度調整された液圧プレスを用いた熱圧着により薄膜を製造することによって確認した。
【0239】
実施例4に従ってグラフトしたPA11の粒子の粉末から焼結することによって得られた部品を、水中に90℃で12h浸漬することによって架橋した後、試験片を、動的熱機械分析(張力下で1Hzの周波数で5℃/分の温度上昇で行われる)によって評価する前に、換気オーブン中90℃で6h乾燥した。
【0240】
弾性率の変化及び損失角デルタに対する正接の変化のグラフは、変性させたPA11の結晶相の融解後、弾性率が崩壊せずに300℃まで維持された一方、参照例PA11(Arkema社から販売されているRilsan Invent Natural)のそれは、結晶相の融解時に完全に崩壊した(図6)ことを示した。
【0241】
実施例5及び6に関して、これらの熱機械的特性は、本発明の架橋剤をPA11上にグラフトすることは、PA11の粒子の表面及びコアにグラフトをまさにもたらし、従ってそれらが選択的レーザー焼結方法に適していることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7