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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/02 20060101AFI20220719BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220719BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220719BHJP
【FI】
H02K9/02 B
H05K7/20 B
H02M7/48 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017242445
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019110681
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】齋地 正義
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-138485(JP,A)
【文献】特開平10-117077(JP,A)
【文献】特開2014-116529(JP,A)
【文献】特開平11-307302(JP,A)
【文献】実開昭53-024262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/02
H05K 7/20
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生抵抗と、回生抵抗が固定されるフレームと、前記回生抵抗に接続される回路基板を備えるモータ制御装置であって、
前記フレームは、放熱フィンと、前記放熱フィンの放熱面と隙間をもって対向する背面板を備え、
前記回生抵抗は、前記背面板と前記放熱面との隙間に配置され、
前記回路基板に第1発熱体が搭載され、
前記フレームは前記放熱フィンを複数備え、前記複数の前記放熱フィンのうちで前記背面板に最も近い位置に配置され、且つ、前記第1発熱体から最も離れた位置にある第1放熱フィンに切欠きが形成され、
前記回生抵抗は前記切欠きに配置され、前記第1発熱体から2番目に離れた位置にある第2放熱フィンの前記放熱面に固定され、
隣り合う複数の前記放熱フィンに配線用切欠き部が形成され、
前記配線用切欠き部は、前記放熱フィンの配列方向に延在する配線用切欠き溝を構成することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記フレームは、前記背面板と繋がるフレーム本体を備え、
前記フレーム本体は、前記放熱フィンが突出する放熱フィン形成部を備え、
前記放熱フィン形成部に対して前記放熱フィンが突出する側とは反対側に第2発熱体が配置され、
前記回生抵抗は、前記放熱フィン形成部との間に隙間をもって配置されていることを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記回生抵抗は、固定部材を介して前記放熱面に固定され、
前記固定部材は、前記回生抵抗に当接する第1固定部と、前記放熱面に当接する第2固定部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記回生抵抗は前記放熱面に固定され、
前記第1固定部には固定孔または固定用切欠き部が形成され、前記放熱面には前記固定孔または前記固定用切欠き部と重なる位置にねじ孔が形成され、
前記背面板には、前記ねじ孔と重なる位置に貫通穴が形成されていることを特徴とする
請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記放熱フィンは厚肉部を備え、前記厚肉部に前記ねじ孔が形成されていることを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体を冷却するための放熱フィンを備えたモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置やサーボアンプなどの電子機器は、電流が流れると高温になる発熱体を備えているため、冷却用の放熱構造を備えている。特許文献1には、発熱体として回生抵抗を備えたサーボアンプが開示されている。特許文献1では、サーボアンプのフレームに放熱フィンが一体に形成されている。特許文献1の図4には、複数の放熱フィンの先端を切り欠いて回生抵抗を配置するスペースを形成し、複数の放熱フィンの先端に接するように回生抵抗を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-138485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図4のような構造では、放熱フィンに切り欠きを形成するため、放熱フィンの表面積が小さくなる。従って、放熱効果が低下する。また、放熱フィンに切り欠きを形成せずに回生抵抗を取り付けた場合、装置の幅方向のサイズが大型化するという問題がある。
【0005】
また、特許文献1の図1には、サーボアンプの背面を構成するフレームの部分(取付台座)に形成された凹部に回生抵抗を配置することも記載されている。しかしながら、フレームを大きく切り欠く構造であるため、フレームの強度が低下するという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回生抵抗の熱をフレームに設けられた放熱フィンによって放熱することができ、且つ、回生抵抗を取り付けることによる本体フレームの強度低下および放熱効果の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、回生抵抗と、回生抵抗が固定されるフレームと、前記回生抵抗に接続される回路基板を備えるモータ制御装置であって、前記フレームは、放熱フィンと、前記放熱フィンの放熱面と隙間をもって対向する背面板を備え、前記回生抵抗は、前記背面板と前記放熱面との隙間に配置され、前記回路基板に第1発熱体が搭載され、前記フレームは前記放熱フィンを複数備え、前記複数の前記放熱フィンのうちで前記背面板に最も近い位置に配置され、且つ、前記第1発熱体から最も離れた位置にある第1放熱フィンに切欠きが形成され、前記回生抵抗は前記切欠きに配置され、前記第1発熱体から2番目に離れた位置にある第2放熱フィンの前記放熱面に固定され、隣り合う複数の前記放熱フィンに配線用切欠き部が形成され、前記配線用切欠き部は、前記放熱フィンの配列方向に延在する配線用切欠き溝を構成することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、背面板と放熱フィンとの隙間に回生抵抗を配置することができる。従って、放熱フィンの先端側に回生抵抗を配置する構成と比較して、モータ制御装置の幅方向のサイズの大型化を抑制できる。また、複数の放熱フィンを切り欠いて放熱フィンの先端に接するように回生抵抗を配置した場合と比較して、放熱フィンの表面積の減少が少ないので、放熱効果の低下を抑制できる。更に、背面板を切り欠いて回生抵抗を配置した場合と比較して、フレームの強度の低下を抑制できる。また、回路基板と回生抵抗とを接続する配線を配線用切欠き溝に収容して引き回すことができる。従って、配線がフレームの外側で引き回されることがないので、回路基板と回生抵抗とを接続する配線の断線を抑制できる。
【0009】
また、本発明によれば、前記回生抵抗は、前記放熱面に固定される。従って、背面板の側から回生抵抗を放熱面に固定する作業を行うことができるので、回生抵抗を固定する際、および、回生抵抗を取り外す際の作業性が良好であり、メンテナンス性が良好である。例えば、背面板に穴を形成しておき、背面板の外側(モータ制御装置の後側)から回生抵抗の固定作業を行うことができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記回路基板に第1発熱体が搭載され、前記複数の前記放熱フィンのうちで前記背面板に最も近い位置に配置され、且つ、前記第1発熱体から最も離れた位置にある第1放熱フィンに切欠きが形成され、前記回生抵抗は前記切欠きに配置され、前記第1発熱体から2番目に離れた位置にある第2放熱フィンの前記放熱面に固定される。従って、回生抵抗を第1発熱体から離れた位置に固定できるので、第1発熱体から発せられる熱によって回生抵抗が熱せられることがない。また、回生抵抗から発せられる熱によって、第1発熱体が熱せられることもない。従って、回生抵抗の発熱による第1発熱体の温度上昇や、第1発熱体の発熱による回生抵抗の温度上昇を抑制できる。また、このような配置により、放熱フィンと背面板との隙間が狭い場合でも回生抵抗を配置できる。また、第1放熱フィンは切り欠かれているので、背面板の側から回生抵抗の固定作業を行うことができる。従って、回生抵抗を固定する際、および、回生抵抗を取り外す際の作業性が良好であり、メンテナンス性が良好である。
【0012】
本発明において、前記フレームは、前記背面板と繋がるフレーム本体を備え、前記フレーム本体は、前記放熱フィンが突出する放熱フィン形成部を備え、前記放熱フィン形成部に対して前記放熱フィンが突出する側とは反対側に第2発熱体が配置され、前記回生抵抗は、前記放熱フィン形成部との間に隙間をもって配置されていることが好ましい。このようにすると、第2発熱体の熱を放熱フィンに効率良く伝達できるため、第2発熱体の冷却効率が良い。また、第2発熱体の熱が伝わる放熱フィン形成部と回生抵抗との間に隙間があって空気の層が設けられているため、放熱フィン形成部と回生抵抗との間で熱が伝達されにくい。従って、回生抵抗の発熱による第2発熱体の温度上昇や、第2発熱体の発熱による回生抵抗の温度上昇を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記回生抵抗は、固定部材を介して前記放熱面に固定され、前記固定部材は、前記回生抵抗に当接する第1固定部と、前記放熱面に当接する第2固定部を備えることが好ましい。このようにすると、回生抵抗の熱を放熱フィンに伝達する経路として、固定部材によって伝達する経路が加わる。従って、回生抵抗の冷却効率を向上させることができる。
【0014】
例えば、前記回生抵抗は前記放熱面に固定され、前記第1固定部には固定孔または固定用切欠き部が形成され、前記放熱面には前記固定孔または前記固定用切欠き部と重なる位置にねじ孔が形成され、前記背面板には、前記ねじ孔と重なる位置に貫通穴が形成されている構成を採用することができる。また、前記放熱フィンは厚肉部を備え、前記厚肉部に前記ねじ孔が形成されていることが好ましい。このようにすると、背面板の外側から固定ねじを放熱フィンのねじ孔に締め込んで固定部材を固定することができる。また、ねじ孔の長さを確保できるので、固定強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、背面板と放熱フィンとの隙間に回生抵抗を配置することができる。従って、放熱フィンの先端側に回生抵抗を配置する構成と比較して、モータ制御装置の幅方向のサイズの大型化を抑制できる。また、複数の放熱フィンを切り欠いて放熱フィンの先端に接するように回生抵抗を配置した場合と比較して、放熱フィンの表面積の減少が少ないので、放熱効果の低下を抑制できる。更に、背面板を切り欠いて回生抵抗を配置した場合と比較して、フレームの強度の低下を抑制できる。また、背面板の側から回生抵抗を放熱面に固定する作業を行うことができるので、回生抵抗を固定する際、および、回生抵抗を取り外す際の作業性が良好であり、メンテナンス性が良好である。例えば、背面板に穴を形成しておき、背面板の外側(モータ制御装置の後側)から回生抵抗の固定作業を行うことができる。さらに、回生抵抗を第1発熱体から離れた位置に固定できるので、第1発熱体から発せられる熱によって回生抵抗が熱せられることがない。また、回生抵抗から発せられる熱によって、第1発熱体が熱せられることもない。従って、回生抵抗の発熱による第1発熱体の温度上昇や、第1発熱体の発熱による回生抵抗の温度上昇を抑制できる。また、このような配置により、放熱フィンと背面板との隙間が狭い場合でも回生抵抗を配置できる。また、第1放熱フィンは切り欠かれているので、背面板の側から回生抵抗の固定作業を行うことができる。従って、回生抵抗を固定する際、および、回生抵抗を取り外す際の作業性が良好であり、メンテナンス性が良好である。加えて、回路基板と回生抵抗とを接続する配線を配線用切欠き溝に収容して引き回すことができる。従って、配線がフレームの外側で引き回されることがないので、回路基板と回生抵抗とを接続する配線の断線を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したモータ制御装置を斜め後方側から見た斜視図である。
図2図1のモータ制御装置の分解斜視図である。
図3】フレームと第1基板および第2基板の分解斜視図である。
図4図1のモータ制御装置の断面斜視図(図1のA-A断面図)である。
図5】回生抵抗が固定されたフレームの側面図である。
図6】フレームに対する回生抵抗の取付構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータ制御装置の実施形態を説明する。本形態のモータ制御装置は、サーボモータを制御するために用いられるサーボアンプである。
【0018】
図1は本発明を適用したモータ制御装置1を斜め後方から見た斜視図であり、図2図1のモータ制御装置1の分解斜視図である。本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。以下、本明細書では、Y方向を上下方向としてモータ制御装置1を設置した場合の例について説明するが、本発明のモータ制御装置1は、Y方向を上下方向とする設置姿勢で用いられるものに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、X方向はモータ制御装置1の幅方向(左右方向)であり、Y方向はモータ制御装置1の上下方向であり、Z方向はモータ制御装置1の前後方向である。また、左右方向における「左」と「右」は、モータ制御装置1を前面側から見た場合の「左」と「右」である。X方向の一方側(右側)を+Xで示し、他方側(左側)を-Xで示し、Y方向の一方側(上側)を+Yで示し、他方側(下側)を-Yで示し、Z方向の一方側(前側)を+Zで示し、他方側(後側)を-Zで示す。
【0020】
図1に示すように、モータ制御装置1は全体として直方体状である。モータ制御装置1は、幅方向Xの略中央に配置されるフレーム10と、フレーム10に固定されるカバー部材20を備える。カバー部材20は、フレーム10の右側(+X方向)に配置される第1カバー部材21と、フレーム10の左側(-X方向)に配置される第2カバー部材22と、フレーム10の前側(+Z方向)に配置される第3カバー部材23を備える。図2に示すように、モータ制御装置1は、第1カバー部材21の内側に配置される第1基板40、および、第2カバー部材22の内側に配置される第2基板50を備える。第1基板40および第2基板50は、フレーム10に固定される。
【0021】
(フレーム)
図3はフレーム10と第1基板40および第2基板50の分解斜視図である。図2図3に示すように、フレーム10は、モータ制御装置1の幅方向Xの略中央に配置される板状のフレーム本体11と、フレーム本体11の後端(-Z方向の端部)に設けられた矩形の背面板12を備える。フレーム本体11は、背面板12と繋がる放熱フィン形成部13と、放熱フィン形成部13の上端(+Y方向の端部)および下端(-Y方向の端部)からそれぞれ前側(+Z方向)に延びる上フレーム14および下フレーム15を備える。
【0022】
フレーム本体11には、上下方向Yに延在する放熱フィン30が一体に形成されている。本形態のフレーム10は、アルミなどの熱伝導性の良い金属で形成されている。従って、放熱フィン30による放熱効果を高めることができる。また、アルミは加工性が良いた
め、放熱フィン30の形成が容易である。放熱フィン30は、背面板12の前側(+Z方向)において、Z方向に略一定のピッチで複数枚配列されている。放熱フィン30は、フレーム本体11の放熱フィン形成部13から右側(+X方向)に突出しており、モータ制御装置1の右側(+X方向)の側面に露出している。モータ制御装置1の右側(+X方向)の側面は、後側(-Z方向)の部分が放熱フィン30によって構成され、放熱フィン30の前側(+Z方向)の部分が第1カバー部材21によって構成されている。
【0023】
図3に示すように、第1基板40は、上フレーム14および下フレーム15からそれぞれ+X方向に突出するボス部141、151にねじ止めされる。同様に、第2基板50は、上フレーム14および下フレーム15からそれぞれ-X方向に突出するボス部(図示省略)にねじ止めされる。図4図1のモータ制御装置の断面斜視図(図1のA-A位置の断面斜視図)である。図4に示すように、第2基板50は、放熱フィン形成部13に対して-X方向側から当接し、放熱フィン形成部13にねじ止めされている。
【0024】
背面板12には、対角位置にある2箇所の角部の一方に固定孔121が形成され、他方には切欠き122が2箇所形成されている。固定孔121は、背面板12の上側(+Y方向)の縁の左側(-X方向)の角部に形成されている。また、切欠き122は、背面板12の下側(-Y方向)の縁の右側(+X方向)の角部に形成されている。固定孔121と、2箇所の切欠き122のうちの1箇所に固定ねじをねじ止めすることにより、背面板12を対角位置の2箇所で支持部材に固定することができる。これにより、背面板12を介してモータ制御装置1を支持部材に固定することができる。
【0025】
(カバー部材)
モータ制御装置1の前面は、第3カバー部材23によって構成されている。モータ制御装置1の前面には、図示しないコネクタ部や、入出力用の端子部が設けられている。第3カバー部材23は、コネクタ部を配置する開口部や、端子部を覆う開閉蓋が設けられた前板部231と、前板部231の+Y方向の縁に接続される上板部232と、前板部231の-Y方向の縁に接続される底板部233と、前板部231と、前板部231の+X方向の縁に接続される右側板部234と、前板部231の-X方向の縁に接続される左側板部235を備える。
【0026】
第1カバー部材21は、モータ制御装置1の右側(+X方向)の側面の前側部分を構成する右側板部211と、右側板部211の上端縁(+Y方向の縁)に接続される上板部212と、右側板部211の下端縁(-Y方向の縁)に接続される底板部(図示省略)を備える。また、第2カバー部材22は、モータ制御装置1の左側(-X方向)の側面を構成する左側板部221と、左側板部221の上端縁(+Y方向の縁)に接続される上板部222と、左側板部221の下端縁(-Y方向の縁)に接続される底板部223を備える。
【0027】
モータ制御装置1の天面(+Y方向の面)は、フレーム10と、第1カバー部材21の上板部212および第2カバー部材22の上板部222と、第3カバー部材23の上板部232によって構成されている。上板部212、222には放熱穴26が形成されている。放熱穴26は幅方向Xに長い長穴であり、前後方向Zに配列されている。また、モータ制御装置1の底面は、フレーム10と、第1カバー部材21の底板部213および第2カバー部材22の底板部223と、第3カバー部材23の底板部233によって構成されている。底板部213、223には、上板部212、222と同様に放熱穴26が形成されている。モータ制御装置1の内部空間は、第1カバー部材21および第2カバー部材22に形成された放熱穴26を介して外部と連通する。
【0028】
図1図2に示すように、上フレーム14には、Z方向に離間した3箇所にフック19が形成されている。第1カバー部材21の上板部212は、中央のフック19が係合する
係合穴214を備えている。また、第2カバー部材22の上板部222は、中央のフック19を除く他の2箇所のフック19が係合する係合穴214を備えている。同様のフック機構は、下フレーム15と、第1カバー部材21の底板部(図示省略)および第2カバー部材22の底板部223との間にも形成されている。これらのフック機構により、第1カバー部材21および第2カバー部材22がフレーム10に固定される。
【0029】
第3カバー部材23には、右側板部234および左側板部235から後側(-Z方向)に突出するフック236が形成されている。フック236は、第1カバー部材21の右側板部211に形成された係合穴215、および、第2カバー部材22の左側板部221に形成された係合穴225と係合される。このフック機構によって第1カバー部材21および第2カバー部材22に対して第3カバー部材23が固定される。なお、カバー部材20の固定構造はフック機構以外の構造であってもよい。
【0030】
第2カバー部材22の上板部222には、後側(-Z方向)に向かうに従って下側(-Y方向)へ傾斜する傾斜面を備えた凹部229が形成されている。背面板12に形成された固定孔121は、凹部229の内側に配置されているため、凹部229内にねじ止め用の工具を挿入して、固定孔121に挿入した固定ねじを背面板12の前側(+Z方向)からねじ止めすることができる。また、同様に、背面板12の切欠き122の前側(+Z方向)には、放熱フィン30の-Y方向の端部を切り欠いた切欠き31によって形成される凹部32(図4参照)が形成されている。放熱フィン30に形成された凹部32は、第1カバー部材21の底板部213に形成された凹部219(図4参照)と連続している。従って、凹部219および凹部32にねじ止め用の工具を挿入して、背面板12の切欠き122に挿入した固定ねじを背面板12の前側(+Z方向)からねじ止めすることができる。
【0031】
(発熱体)
第1基板40および第2基板50は、電子部品が搭載された回路基板である。第1基板40は制御用の基板であり、第3カバー部材23に設けられたコネクタ部を介して外部から入力される制御命令、および、サーボモータに搭載されたエンコーダからの信号に基づき、第2基板50に駆動信号を供給する。第2基板50はドライバ基板である。第2基板50には、第1基板40からの駆動信号に従って電源電流からU相、V相、W相の交流電流を生成してサーボモータへ供給するためのサーボモータ制御回路を構成する回路パターンおよび電子部品が実装されている。
【0032】
モータ制御装置1は、カバー部材20の内側に配置される第1発熱体5および第2発熱体6を備える。第1発熱体5および第2発熱体6は、サーボモータ制御回路を構成する電子部品である。サーボモータ制御回路は、交流電源から供給される電源電流を整流する整流回路と、整流回路に接続されるコンデンサと、コンデンサに接続されるインバータ回路を備える。第1発熱体5はコンデンサであり、第2基板50に搭載される。図2に示すように、放熱フィン30の前側(+Z方向)に配置される第1基板40には、放熱フィン30側(-Z方向)の端部を切り欠いた切欠き41が形成されている。第1発熱体5は、放熱フィン30の前側(+Z方向)に配置され、第1基板40の切欠き41に配置されている。
【0033】
第2発熱体6は、インバータ回路を構成するIGBTトランジスタである。なお、第2発熱体6は、インバータ回路をモジュール化したIPM(インテリジェントパワーモジュール)であってもよい。図4に示すように、フレーム本体11の放熱フィン形成部13は、放熱フィン30が突出する側とは反対側(-X方向)を向く面に第2基板50が当接しており、放熱フィン形成部13と当接する第2基板50の部分に第2発熱体6が固定されている。第2発熱体6は、第2基板50と第2カバー部材22との隙間に配置されている
。第2発熱体6から発生する熱は、放熱フィン形成部13を経由して放熱フィン30に伝達され、放熱フィン30の表面から放熱される。なお、第2発熱体6は、放熱フィン形成部13に直接またはインシュレータを介して固定されていてもよい。
【0034】
また、モータ制御装置1は、第2基板50に実装されるサーボモータ制御回路に接続される回生抵抗7を備える。回生抵抗7は、サーボモータ制御回路に接続されるサーボモータの減速時などに発生する回生エネルギーを熱に変換する発熱体である。本形態では、回生抵抗7は、背面板12と放熱フィン30との隙間に配置され、放熱フィン30に固定されている。
【0035】
(回生抵抗の取付構造)
図5は回生抵抗7が固定されたフレーム10の側面図である。また、図6はフレームに対する回生抵抗の取付構造の説明図である。図5図6に示すように、放熱フィン30は、前後方向Zに複数配列されており、フレーム10の上端(+Y方向の端部)から下端(-Y方向の端部)までの範囲で上下方向Yに延在する。各放熱フィン30の-Y方向の角部には切欠き31が形成されている。この切欠き31は、背面板12の側に向かうに従って高さが増大する凹部32を構成している。複数の放熱フィン30において、隣り合う放熱フィン30の間には、空気通路となる隙間33が形成されている。本形態では、複数の放熱フィン30の板厚は同一であり、隣り合う放熱フィン30の間の隙間33の幅も同一である。各放熱フィン30は、+Z方向および-Z方向を向く放熱面34を備える。
【0036】
以下、複数の放熱フィン30のうち、背面板12に最も近い放熱フィン30を第1放熱フィン30Aとする。本形態では、6枚の放熱フィン30を備えており、第1放熱フィン30Aから前側(+Z方向)に向かって順に第2放熱フィン30B、第3放熱フィン30C、第4放熱フィン30D、第5放熱フィン30E、第6放熱フィン30Fとする。第1放熱フィン30Aは、第2基板50に搭載された第1発熱体5から最も遠い放熱フィンである。また、第2放熱フィン30Bは、第1発熱体5から2番目に遠い放熱フィンである。
【0037】
第1放熱フィン30Aは、背面板12に最も近い位置に配置されている。第1放熱フィン30Aには、+X方向の縁から-X方向に向かって切り欠いた切欠き35が形成されている。切欠き35は、第1放熱フィン30AのY方向の略中央に設けられている。切欠き35には、回生抵抗7が配置されている。回生抵抗7を取り外すと、切欠き35が形成された範囲では、第1放熱フィン30Aの隣に位置する第2放熱フィン30Bの放熱面34と背面板12とが所定の隙間をもって対向する。回生抵抗7は、第2放熱フィン30Bの-Z方向を向く放熱面34と背面板12との間に配置され、第2放熱フィン30Bの放熱面34に固定されている。
【0038】
図4に示すように、第1放熱フィン30Aに形成された切欠き35は、第1放熱フィン30AをX方向の途中位置まで切り欠いて形成されている。従って、切欠き35に配置される回生抵抗7と、放熱フィン形成部13との間には、X方向の隙間Dが形成されている。放熱フィン形成部13に対して、放熱フィン30が形成される側とは反対側には、第2基板50を介して第2発熱体6が固定される。つまり、回生抵抗7は、第2発熱体6が固定される部分(放熱フィン形成部13)との間に空気の層ができるように配置されている。
【0039】
回生抵抗7は、固定部材8を介して第2放熱フィン30Bの放熱面34に固定される。固定部材8は、回生抵抗7のY方向の両端に1つずつ配置される。各固定部材8は、板状の第1固定部81と、第1固定部81に対して略直角に繋がる板状の第2固定部82を備えた屈曲部材である。第1固定部81は回生抵抗7の側面に当接し、回生抵抗7に固定さ
れる。第2固定部82は放熱面34に当接し、固定ねじ9によって第2放熱フィン30Bにねじ止めされる。図6に示すように、第2固定部82には固定孔83が形成され、第2放熱フィン30Bには、固定孔83と重なる位置にねじ孔36(図5参照)が形成されている。第2放熱フィン30Bは、ねじ孔36が形成された部分が他の部分より板厚が厚い厚肉部37となっている。背面板12には、第2放熱フィン30Bのねじ孔36と重なる位置に貫通穴123が形成されている。貫通穴123は、固定ねじ9をねじ止めする工具を挿入する穴である。
【0040】
複数の放熱フィン30のうち、第1放熱フィン30Aを除く他の5枚には、それぞれ、回生抵抗7の取付位置より下側(-Y方向)に配線用切欠き部が形成されている。5枚の放熱フィン30に形成された配線用切欠き部は、放熱フィン30の配列方向である前後方向Zに並んでおり、前後方向Zに延在する配線用切欠き溝38を構成している。配線用切欠き溝38には、回生抵抗7に接続される図示しない配線が配置される。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態のモータ制御装置1は、回生抵抗7と、回生抵抗7が固定されるフレーム10と、回生抵抗7に接続される第2基板50を備える。フレーム10は、放熱フィン30と、放熱フィン30の放熱面34と隙間をもって対向する背面板12を備える。回生抵抗7は、背面板12と放熱フィン30との隙間に配置され、放熱フィン30の放熱面34に固定される。このように、背面板12と放熱フィン30との隙間に回生抵抗7を配置したことにより、放熱フィン30の先端側に回生抵抗7を配置した場合と比較して、モータ制御装置1の幅方向(X方向)のサイズの大型化を抑制できる。また、複数の放熱フィン30を切り欠いて放熱フィン30の先端に接するように回生抵抗7を配置した場合と比較して、放熱フィン30の表面積の減少が少ないので、放熱効果の低下を抑制できる。更に、背面板を切り欠いて回生抵抗を配置した場合と比較して、フレーム10の強度の低下を抑制できる。また、回生抵抗7をカバー部材20の内側に配置せず、モータ制御装置1の側面に配置して外部に露出させているので、放熱効果を高めることができ、モータ制御装置1の内部の温度上昇を抑制できる。
【0042】
本形態では、回生抵抗7を放熱面34に固定しており、放熱面34に回生抵抗7を面接触させている。従って、放熱効果を高めることができる。また、放熱フィン30に回生抵抗7を固定したことにより、背面板12の側から回生抵抗7の着脱作業を行うことができる。すなわち、背面板12に貫通穴123を形成して、背面板12の外側から回生抵抗7の着脱作業を行うことができる。これにより、回生抵抗7を着脱する際の作業性を良くすることができ、メンテナンス性を良好にすることができる。また、第1基板40の側から工具を挿入して回生抵抗7の着脱作業を行う必要がないので、回生抵抗7の前側(+Z方向)に配置される放熱フィン30に工具を挿入するための貫通穴を設ける必要もない。従って、放熱フィン30の表面積の減少を抑制できるので、放熱効果の低下を少なくすることができる。
【0043】
本形態では、第2基板50に第1発熱体5が搭載され、フレーム10は複数枚の放熱フィン30を備えているので、第1発熱体5から最も離れた位置にある第1放熱フィン30Aに切欠き35を形成し、第1発熱体5から2番目に離れた位置にある第2放熱フィン30Bの放熱面34に回生抵抗7を固定している。このようにすると、回生抵抗7を第1発熱体5から離れた位置に固定できるので、第1発熱体5から発せられる熱によって回生抵抗7が熱せられることがない。また、回生抵抗7から発せられる熱によって、第1発熱体5が熱せられることもない。従って、回生抵抗7の発熱による第1発熱体5の温度上昇や、第1発熱体5の発熱による回生抵抗7の温度上昇を抑制できる。また、このように、第1放熱フィン30Aに切欠き35を形成したことにより、背面板12と放熱フィン30との隙間が狭い場合でも回生抵抗7を配置できる。また、第1放熱フィン30Aは切り欠か
れているので、背面板12の側から回生抵抗7の固定作業を行うことができる。さらに、第1放熱フィン30Aの切欠き35は、X方向の途中位置まで切り欠いており、X方向の全範囲を切り欠いていない。従って、第1放熱フィン30Aにおける放熱面積の減少量が少ないので、放熱効果の低減を抑制することができる。また、回生抵抗7を配置しない場合においても第1放熱フィン30Aの面積を確保できる。
【0044】
本形態のフレーム本体11は、背面板12に接続される放熱フィン形成部13を備え、放熱フィン30は放熱フィン形成部13から+X方向に突出する。第2発熱体6は、放熱フィン形成部13に対して放熱フィン30が突出する側とは反対側(-X方向)に配置されている。従って、第2発熱体6の熱が放熱フィン形成部13から放熱フィン30に伝わるので、第2発熱体6の熱を放熱できる。また、回生抵抗7は、放熱フィン形成部13との間に隙間Dをもつように配置されている。従って、回生抵抗と第2発熱体6との間に空気の層があるので、回生抵抗7の発熱による第2発熱体6の温度上昇や、第2発熱体6の発熱による回生抵抗7の温度上昇を抑制できる。
【0045】
本形態の回生抵抗7は、固定部材8を介して第2放熱フィン30Bの放熱面34に固定される。固定部材8は、回生抵抗7に当接する第1固定部81と、放熱面に当接する第2固定部82を備えている。従って、回生抵抗7の熱を第2放熱フィン30Bに伝達する経路として、固定部材8を介する伝達経路が加わるので、回生抵抗7の冷却効率を向上させることができる。なお、固定部材8の形状は本形態のようなものに限定されない。例えば、回生抵抗7全体を覆う固定部材を用いて固定することもできる。また、固定部材8を用いずに、回生抵抗7に固定孔を設けて固定することもできる。あるいは、接着剤を用いて放熱面34に回生抵抗7を固定することもできる。
【0046】
本形態では、固定部材8の第2固定部82に固定孔83が形成され、第2放熱フィン30Bには、固定孔83と重なる位置に厚肉部37が設けられ、厚肉部37にねじ孔36が形成されている。そして、背面板12には、ねじ孔36と重なる位置に貫通穴123が形成されている。従って、背面板の外側から固定ねじ9を第2放熱フィン30Bのねじ孔36に締め込んで、固定部材8を第2放熱フィン30Bに固定することができる。その際、ねじ孔36は厚肉部37に形成されているので、ねじ孔36の長さを確保でき、固定強度を確保できる。このような固定構造は、モータ制御装置1の外側から回生抵抗7の着脱作業を行うことができるので、回生抵抗7を着脱する際の作業性を良くすることができる。従って、メンテナンス性が良好である。なお、第2固定部82に固定孔83でなく固定用切欠き部を形成し、固定用切欠き部に固定ねじ9を通して固定することもできる。
【0047】
本形態では、複数の放熱フィン30のうち、第1放熱フィン30Aを除く他の5枚に配線用切欠き部が形成されており、放熱フィン30の配列方向である前後方向Zに延在する配線用切欠き溝38が設けられている。従って、第2基板50と回生抵抗7とを接続する配線を配線用切欠き溝38に収容して引き回すことができる。これにより、配線がフレーム10の外側で引き回されることがないので、第2基板50と回生抵抗7とを接続する配線の断線を抑制できる。
【0048】
参考形態)
(1)上記形態では、第1放熱フィン30Aを切り欠いて第2放熱フィン30Bに回生抵抗7を固定しているが、回生抵抗7を取り付ける位置は、他の放熱フィン30であってもよい。例えば、第1放熱フィン30Aと背面板12との隙間が、回生抵抗7を配置可能な幅である場合には、第1放熱フィン30Aに切欠き35を形成せず、第1放熱フィン30Aの放熱面34に回生抵抗7を固定することができる。この場合には、第1発熱体5から最も離れた位置にある第1放熱フィン30Aの放熱面34に回生抵抗7が固定されるので、第1発熱体5と回生抵抗7とを離して配置できる。従って、回生抵抗7の発熱による第1発熱体5の温度上昇を抑制できる。また、回生抵抗7が固定される放熱フィン30まで第1発熱体5の熱が伝わりにくいので、回生抵抗7の温度上昇を抑制できる。
【0049】
(2)第1放熱フィン30Aと背面板12との隙間が、回生抵抗7を配置可能な幅である場合には、回生抵抗7を放熱面34でなく背面板12の側に固定することができる。この場合には、第1固定部81に形成した固定孔83をねじ孔とし、背面板12にはねじ孔と重なる固定孔を形成することにより、背面板12の後側(-Z方向)から固定ねじ9を固定部材8にねじ止めすることができる。背面板12の内側に回生抵抗7を固定した場合には、第1発熱体5と回生抵抗7とをより離して配置できるため、回生抵抗7の発熱による第1発熱体5の温度上昇を抑制できる。
【0050】
(3)隣り合う放熱フィン30の隙間33が回生抵抗7を配置可能な幅である場合は、隙間33に回生抵抗7を配置し、隙間33に面する放熱フィン30に回生抵抗7を固定することができる。この場合には、回生抵抗7と背面板12との間に位置する放熱フィン30に貫通穴を形成し、背面板12の貫通穴123および放熱フィン30の貫通穴に工具を挿入して、固定部材8を放熱フィン30にねじ止めすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…モータ制御装置、5…第1発熱体、6…第2発熱体、7…回生抵抗、8…固定部材、9…固定ねじ、10…フレーム、11…フレーム本体、12…背面板、13…放熱フィン形成部、14…上フレーム、15…下フレーム、19…フック、20…カバー部材、21…第1カバー部材、22…第2カバー部材、23…第3カバー部材、26…放熱穴、30…放熱フィン、30A…第1放熱フィン、30B…第2放熱フィン、30C…第3放熱フィン、30D…第4放熱フィン、30E…第5放熱フィン、30F…第6放熱フィン、31…切欠き、32…凹部、33…隙間、34…放熱面、35…切欠き、36…ねじ孔、37…厚肉部、38…配線用切欠き溝、40…第1基板、41…切欠き、50…第2基板、81…第1固定部、82…第2固定部、83…固定孔、121…固定孔、122…切欠き、123…貫通穴、141、151…ボス部、211…右側板部、212…上板部、213…底板部、214、215…係合穴、219…凹部、221…左側板部、222…上板部、223…底板部、224、225…係合穴、229…凹部、231…前板部、232…上板部、233…底板部、234…右側板部、235…左側板部、236…フック、D…隙間、X…幅方向、Z…前後方向、Y…上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6