(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
G01N35/10 C
(21)【出願番号】P 2018022094
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
(72)【発明者】
【氏名】村田 達也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆広
(72)【発明者】
【氏名】村松 友美
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247688(JP,A)
【文献】特開2011-033551(JP,A)
【文献】特開平08-285661(JP,A)
【文献】特開平07-043369(JP,A)
【文献】特開平07-239334(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079829(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/129105(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に設けられた開口から試薬の吐出を行う分注プローブと、
前記分注プローブを移動する駆動部と、
反応容器に対して相対位置
に固定され、前記分注プローブと接触する導電体と、
前記分注プローブと前記導電体との接触を検出する検出器とを備え、
前記駆動部は、前記分注プローブを前記反応容器内へ進入させ、前記検出器により前記分注プローブと前記導電体との接触が検出される位置まで移動することにより、前記開口を前記反応容器の内壁に近接させ、
前記分注プローブは、前記反応容器の内壁に近接した前記開口から前記試薬を吐出する自動分析装置。
【請求項2】
前記分注プローブは、導電性を有する直線状の管からなり、
前記駆動部は、前記分注プローブを、上面に開口部を有する前記反応容器の前記開口部
へ進入させ、前記導電体との接触が検出される位置まで移動することにより、前記開口を前記反応容器の内壁に近接させる請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記導電体は、前記反応容器以上の高さとなる位置に固定されている請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注プローブは、上下方向に中心軸を有する第1の管部と、前記第1の管部の外径よりも小さい外径であって前記中心軸を下側に延長した線上に中心軸を有する第2の管部とにより構成され、前記第1の管部の外壁と前記第2の管部の外壁とで段差を有する直線状の管からなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記導電体は、前記反応容器の内壁に対して水平方向であって当該反応容器から遠ざかる方向に、前記段差の分だけ離れた位置に固定されている請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記分注プローブを前記反応容器の上方より下降させて、前記第2の管部が当該反応容器内に位置すると共に前記第1の管部が当該反応容器以上の高さとなる位置で停止させ、前記位置から前記第1の管部と前記導電体との接触が検出される位置まで水平方向に移動することにより、前記第2の管部の下端に有する前記開口を前記反応容器の内壁に近接させ、
前記分注プローブは、前記開口から前記内壁に沿って下方に前記試薬を吐出する請求項4又は請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記分注プローブを前記反応容器
の上方より下降させて、前記第2の管部の下端に有する前記開口が当該反応容器内に進入した位置から、前記第2の管部が当該反応容器内に位置すると共に前記第1の管部が当該反応容器以上の高さとなる、前記第1の管部と前記導電体との接触が検出される位置まで斜め下方に移動することにより、前記開口を当該反応容器の内壁に近接させ、
前記分注プローブは、前記開口から前記内壁に沿って下方に前記試薬を吐出する請求項4又は請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記導電体は、前記反応容器の内壁の上部に固定されている請求項2に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体から採取された試料と試薬容器に収容された試薬とを分注してその試料に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、生化学検査項目や免疫検査項目等を対象項目とし、被検体から採取された試料と各検査項目の分析に用いる試薬とを反応容器に分注し、反応容器内の試料と試薬の反応によって生ずる色調や濁りの変化を光学的に測定する。そして、自動分析装置は、測定結果に基づいて、試料に含まれる各検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを得ることができる。
【0003】
自動分析装置では、試薬を反応容器に分注する際、試薬分注プローブを反応容器の上方まで移動し、高所から反応容器の中央に目掛けて試薬を吐出しており、反応容器内に吐出された試薬の飛散や試薬に泡が生じて分析データが悪化する問題がある。この問題に対して、試薬分注プローブの先端を曲げ、曲げた先端を反応容器内に進入させて反応容器の内壁に向けて試薬を吐出することで飛散や泡立ちを防ぐ方法が知られている。
【0004】
最近は、試料と試薬の微量化と、微量化を実現するための反応容器の小容量化が進められている。小容量化により反応容器の開口部が狭くなっているため、試薬分注プローブを反応容器内に進入させようとすると、途中で衝突して所定の位置まで移動させることができず試薬を精度よく分注することができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、試薬を精度よく分注することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態の自動分析装置は、下端に設けられた開口から吐出を行う分注プローブと、前記分注プローブを移動する駆動部と、反応容器に対して相対位置が固定され、前記分注プローブと接触する導電体と、前記分注プローブと前記導電体との接触を検出する検出器とを備え、前記駆動部は、前記分注プローブを前記反応容器内へ進入させ、前記検出器により前記分注プローブと前記導電体との接触が検出される位置まで移動することにより、前記開口を前記反応容器の内壁に近接させ、前記分注プローブは、前記反応容器の内壁に近接した前記開口から前記試薬を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係る分析部の構成の一例を示す斜視図。
【
図3】実施形態に係る第1試薬分注プローブの構成の一例を示す側面図。
【
図4】実施形態に係る反応部の構成の一例を示す平面図。
【
図6】実施形態に係る第1試薬分注工程の一例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの各停止位置の一例を示す図。
【
図8】実施形態に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの各停止位置の一例を示す図。
【
図9】実施形態に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの各停止位置の一例を示す図。
【
図10】実施形態に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの移動方向の他の例を示す図。
【
図11】実施形態に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの各停止位置の一例を示す図。
【
図12】実施形態に係る反応部の構成の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目に対応する標準試料及び試薬を分注して当該標準試料及び試薬の混合液の測定により標準データを生成し、被検試料及び各検査項目に対応する試薬を分注して当該被検試料及び試薬の混合液の測定により被検データを生成する分析部10を備えている。また、自動分析装置100は、分析部10の標準試料及び被検試料の各試料の分注や各試薬の分注等を行う複数のユニットを駆動する駆動部40を備えている。
【0011】
また、自動分析装置100は、駆動部40を制御する分析制御部41を備えている。また、自動分析装置100は、分析部10で生成された標準データに対して各検査項目の検量データを生成し、生成した各検査項目の検量データを用いて分析部10で生成された被検データに対して分析データを生成する演算部42を備えている。また、自動分析装置100は、演算部42で生成された各検査項目の検量データや分析データを保存するデータ記憶部43を備えている。
【0012】
また、自動分析装置100は、演算部42で生成された検量データや分析データ等を表示する表示部44を備えている。また、自動分析装置100は、各試料及び各試薬の分注や混合液の測定に係る分析パラメータを設定する入力、各試料に対してこの試料を識別する試料IDや各検査項目を設定する入力等を行う入力部45を備えている。また、自動分析装置100は、分析制御部41、演算部42、データ記憶部43及び表示部44を制御するシステム制御部46を備えている。
【0013】
図2は、分析部10の構成の一例を示した斜視図である。この分析部10は、標準試料及び被検試料などの各試料を収容する試料容器11と、試料容器11を保持する試料ラック12とを備えている。また、分析部10は、各検査項目の成分と反応する例えば1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する第1試薬容器13と、第1試薬容器13を保冷する第1試薬庫14とを備えている。また、分析部10は、第1試薬庫14内に配置され、複数の第1試薬容器13を保持する第1試薬ラック15を備えている。
【0014】
また、分析部10は、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する第2試薬容器16と、第2試薬容器16を保冷する第2試薬庫17とを備えている。また、分析部10は、第2試薬庫17内に配置され、複数の第2試薬容器16を保持する第2試薬ラック18を備えている。また、分析部10は、反応部19を備えている。
【0015】
また、分析部10は、試料ラック12に保持された試料容器11内の試料を吸引して、反応部19に吐出する分注を行う試料分注プローブ20を備えている。また、分析部10は、試料分注プローブ20を回転方向及び上下方向に移動可能に支持する試料分注アーム21を備えている。
【0016】
また、分析部10は、第1試薬ラック15に保持された第1試薬容器13内の第1試薬を吸引して、試料が分注された反応部19に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ22を備えている。また、分析部10は、第1試薬分注プローブ22を回転方向及び上下方向に移動可能に支持する第1試薬分注アーム23を備えている。また、分析部10は、第1試薬分注プローブ22と第1試薬容器13内の第1試薬との接触を検出する第1検出器24を備えている。
【0017】
また、分析部10は、第2試薬ラック18に保持された第2試薬容器16内の第2試薬を吸引して、第1試薬が分注された反応部19に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ25を備えている。また、分析部10は、第2試薬分注プローブ25を回転方向及び上下方向に移動可能に支持する第2試薬分注アーム26を備えている。また、分析部10は、第2試薬分注プローブ25と第2試薬容器16内の第2試薬との接触を検出する第2検出器27を備えている。
【0018】
また、分析部10は、反応部19に分注された試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬及び第2試薬の混合液を撹拌する撹拌ユニット28を備えている。また、分析部10は、撹拌ユニット28により撹拌が行われた反応部19の標準試料及び試薬の混合液や被検試料及び試薬の混合液に光を照射して標準データや被検データを生成する測定部29を備えている。また、分析部10は、測定を終了した反応部19を洗浄する洗浄ユニット30を備えている。
【0019】
図1に戻り、駆動部40は分析部10の試料ラック12を駆動する搬送機構を有し、試料ラック12に保持された試料容器11を移動する。また、駆動部40は第1試薬ラック15を駆動するモータを有し、第1試薬ラック15に保持された第1試薬容器13を移動する。また、駆動部40は第2試薬ラック18を駆動するモータを有し、第2試薬ラック18に保持された第2試薬容器16を移動する。
【0020】
また、駆動部40は、反応部19を回転駆動するモータを有し、反応部19を回転移動する。また、駆動部40は、試料分注アーム21、第1試薬分注アーム23及び第2試薬分注アーム26をそれぞれ回転駆動するモータを有し、試料分注プローブ20、第1試薬分注プローブ22及び第2試薬分注プローブ25を水平方向に回転移動する。また、駆動部40は、試料分注アーム21、第1試薬分注アーム23及び第2試薬分注アーム26をそれぞれ上下駆動するモータを有し、試料分注プローブ20、第1試薬分注プローブ22及び第2試薬分注プローブ25を上下方向に移動する。
【0021】
分析制御部41はCPU及び記憶回路を有し、入力部45から入力された各検査項目の分析パラメータ、各試料ID、この試料IDで識別される試料に設定された検査項目等の入力情報に基づき駆動部40を制御して、分析部10の各ユニットを作動させる。
【0022】
そして、分析制御部41は、入力部45よりキャリブレーションを開始させる入力が行われると、駆動部40を駆動制御して試料容器11の移動、第1試薬容器13の移動、第2試薬容器16の移動、標準試料の分注、第1試薬の分注、第2試薬の分注、混合液の撹拌、測定等のキャリブレーション動作を分析部10に実行させる。
【0023】
また、分析制御部41は、入力部45より検査を開始させる入力が行われると、駆動部40を駆動制御して試料容器11の移動、第1試薬容器13の移動、第2試薬容器16の移動、被検試料の分注、第1試薬の分注、第2試薬の分注、混合液の撹拌、測定等の検査動作を分析部10に実行させる。
【0024】
演算部42は例えばCPUと記憶回路を有し、分析部10の測定部29で生成された各検査項目の標準データ及び当該検査項目の標準試料に対して予め設定された標準値に基づいて、当該検査項目の標準データと標準値との関係を示す検量データを生成する。また、演算部42は、測定部29で検査項目ごとに生成された被検データに対して、当該検査項目の検量データを用いて濃度値や酵素の活性値等の分析データを生成する。
【0025】
データ記憶部43は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等のストレージを有し、演算部42で生成された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部42で生成された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0026】
表示部44は、例えばCRTや液晶パネルなどのモニタを有し、分析部10の反応部19に吐出させる各検査項目の試料の量、第1試薬の量及び第2試薬の量等の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面を表示する。また、表示部44は、被検試料毎にこの被検試料を識別する試料ID及び検査対象の検査項目を設定するための検査項目設定画面を表示する。
【0027】
入力部45は、例えばキーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備えている。そして、入力部45は、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力や、試料ID及び検査項目を設定するための入力を行う。また、入力部45は、キャリブレーションを開始させる入力、検査を開始させる入力等を行う。
【0028】
システム制御部46は、CPU及び記憶回路を備え、入力部45から入力されたコマンド信号、各検査項目の分析パラメータ、試料ID及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部41、演算部42、データ記憶部43及び表示部44を統括してシステム全体を制御する。
【0029】
以下、
図1乃至
図10を参照して、分析部10の第1試薬分注プローブ22、反応部19及び第1検出器24の構成と、第1試薬ラック15に保持された第1試薬容器13の第1試薬を反応部19に分注するときの第1試薬分注プローブ22及び第1検出器24の動作とについて説明する。
【0030】
なお、第2試薬分注プローブ25は第1試薬分注プローブ22と同様に構成されるのでその説明を省略する。また、第2検出器27は第1検出器24と同様に構成されるのでその説明を省略する。また、第2試薬ラック18に保持された第2試薬容器16の第2試薬を反応部19に分注するときの第2試薬分注プローブ25及び第2検出器27の動作は、第1試薬容器13の第1試薬を反応部19に分注するときの第1試薬分注プローブ22及び第1検出器24と同様に動作するのでその説明を省略する。
【0031】
先ず、
図3を参照して、第1試薬分注プローブ22の構成について説明する。
【0032】
図3は、第1試薬分注プローブ22の構成の一例を示した側面図である。この第1試薬分注プローブ22は、導電性を有する例えば円筒状のステンレススチール管の下端部をステンレススチール管の直線状の中心軸方向に絞って段差を設けることにより形成され、上下方向に中心軸を有する第1の管部W1と、第1の管部W1の外径よりも小さい外径であって第1の管部W1の中心軸を下側に延長した線上に中心軸を有する第2の管部W2とにより構成される。
【0033】
第1試薬分注プローブ22は、第1の管部W1の外壁と第2の管部W2の外壁との段差が距離L1となるように形成されている。また、第1試薬分注プローブ22は、第2の管部W2の下端に設けた第1試薬を吸引して吐出する開口221を有する。また、第1試薬分注プローブ22は、第1の管部W1の上端部が第1試薬分注アーム23に支持されている。また、第1試薬分注プローブ22は、第1検出器24に電気的に接続されている。
【0034】
このように、第1試薬分注プローブ22を第2の管部W2よりも外径の大きい第1の管部W1で支持することにより、第1試薬分注プローブ22の支持剛性を高めることができるため、第1試薬の分注精度を低下させる要因となる第1試薬分注プローブ22の振動を抑えることができる。
【0035】
次に、
図4及び
図5を参照して、反応部19の構成について説明する。
【0036】
図4は、反応部19の構成の一例を示した平面図である。また、
図5は、
図4のA-A線矢視断面図である。この反応部19は、破線で示した第1の円19a上に一定の間隔で配列された複数の反応容器60と、第1の円19aと同心円の破線で示した第2の円19b上に一定の間隔で配列された反応容器60の数と同数の導電体61と、複数の反応容器60及び複数の導電体61を保持する保持体である円環状の反応ディスク62とにより構成される。
【0037】
反応容器60は、測定部29から照射される光の透過性、耐薬品性及び電気的絶縁性を有する例えばプラスチック材又はガラス材により形成され、試料分注プローブ20から吐出された試料、第1試薬分注プローブ22から吐出された第1試薬及び第2試薬分注プローブ25から吐出された第2試薬を収容する容器である。
【0038】
また、反応容器60は上面に開口部を有し、内部の4つの平らな内壁により構成される直方体をなしている。また、反応容器60は、第1の円19aの半径方向に対して対向する2つの内壁の面が垂直になるように反応ディスク62に保持されている。以下では、反応容器60の対向する2つの内壁のうち、半径方向内方の内壁を内周内壁と呼び、半径方向外方の内壁を外周内壁と呼ぶ。
【0039】
また、反応ディスク62に保持された複数の反応容器60のうちの位置C1に停止した反応容器60は、破線で示した円軌道Tに沿って水平方向の矢印R1方向及びこのR1方向とは反対方向の矢印R2方向に回転移動する第1試薬分注プローブ22の円軌道T上に位置する。
【0040】
導電体61は、導電性を有する例えば四角柱をなすステンレススチール材により形成され、当該導電体61に対して第2の円19bの半径方向外方に位置する反応容器60に対して相対位置が固定されている。ここでは、導電体61は、反応容器60以上の高さであって、第2の円19bの半径方向に対して対向する2つの側面が垂直になるように、反応ディスク62上に配置された金具63により固定されている。また、導電体61は、半径方向外方に位置する反応容器60の内周内壁に対して、水平方向であって当該反応容器60から遠ざかる方向である半径方向内方に、第1試薬分注プローブ22の段差と同じ距離L1離れた位置に固定されている。また、反応ディスク62に保持された複数の導電体61のうち、位置C1に停止した反応容器60に対して半径方向内方に位置する導電体61は、第1試薬分注プローブ22の円軌道T上に位置する。
【0041】
なお、導電体61を、この導電体61に対して半径方向外方に位置する反応容器60に対して第1の円19aの半径方向外方に固定するようにしてもよい。この場合、第1の円19aの半径方向外方に固定する導電体61を、半径方向内方に位置する反応容器60の外周内壁から水平方向に距離L1離れた位置に固定する。また、導電体61を、第1試薬分注プローブ22の円軌道T上に位置するように固定する。
【0042】
第1検出器24は、発振器、ブリッジ回路、差動アンプ、同期検波回路、位相制御回路、積分回路、増幅回路、微分回路等を備え、第1試薬分注プローブ22と接続されている。そして、第1検出器24は、第1試薬分注プローブ22と分析部10の各ユニットを支持する筐体との静電容量の変化をブリッジ回路で電圧信号に変換することにより、第1試薬ラック15に保持された第1試薬容器13内の第1試薬の液面と第1試薬分注プローブ22との接触や、第1試薬分注プローブ22と導電体61との接触を検出する。すなわち、第1検出器24は、第1試薬の液面検出機能と、導電体61に対する接触検出機能を有している。
【0043】
以下、
図1乃至
図11を参照して、分析部10の第1試薬分注プローブ22に1サイクルタイムの間に第1試薬の分注を1回行わせる第1試薬分注工程について説明する。そして、
図6は、第1試薬分注工程の一例を示すフローチャートである。また、
図7乃至
図9は、第1試薬の分注における第1試薬分注プローブ22の各停止位置の一例を示す図である。また、
図10は、第1試薬の分注時における第1試薬分注プローブ22の移動の他の例を示す図である。また、
図11は、第1試薬の分注における第1試薬分注プローブ22の各停止位置の一例を示す図である。
【0044】
なお、第2試薬分注プローブ25に1サイクルタイムの間に第2試薬の分注を1回行わせる第2試薬分注工程は、第1試薬分注工程と同様なのでその説明を省略する。
【0045】
図6において、第1試薬分注工程Sでは、駆動部40は第1試薬分注アーム23を回転駆動するモータにより、第1試薬分注プローブ22を円軌道Tの基本位置から水平方向に回転移動して、
図7(a)に示すように、第1試薬ラック15に保持された分注対象の第1試薬容器13上方の上停止位置P1で停止させる(ステップS1)。
【0046】
ステップS1の後、駆動部40は第1試薬分注アーム23を上下駆動するモータにより、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P1から下降させて第1試薬容器13内に進入させ、
図7(b)に示すように、第1検出器24により第1試薬分注プローブ22と第1試薬との接触が検出された位置より所定の距離下方の吸引位置P2で停止させる(ステップS2)。
【0047】
このように、第1検出器24が第1試薬分注プローブ22と第1試薬との接触を検出することにより、分析制御部41は第1試薬容器13内の第1試薬の液面を検出することができる。そして、分析制御部41は第1試薬容器13内の第1試薬の液面を検出したときの第1試薬分注プローブ22の位置を算出することにより、第1試薬容器13内の第1試薬の残量を計算することができる。また、分析制御部41は駆動部40を制御して第1試薬分注プローブ22を、第1試薬容器13内の第1試薬の量に応じた吸引位置P2で停止させることができる。
【0048】
ステップS2の後、第1試薬分注プローブ22は、吸引位置P2で第1試薬を吸引する(ステップS3)。
【0049】
ステップS3の後、駆動部40は、第1試薬分注プローブ22を吸引位置P2から上昇させて上停止位置P1で停止させる(ステップS4)。
【0050】
ステップS4の後、駆動部40は、上停止位置P1の第1試薬分注プローブ22を、円軌道Tに沿ってR1方向に回転移動する。そして、駆動部40は、
図8(a)に示すように、第1試薬分注プローブ22を試料が吐出されて位置C1に停止した反応容器60上方の上停止位置P3で停止させる(ステップS5)。
【0051】
ステップS5の後、駆動部40は、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3から下降させ、位置C1の反応容器60開口部のほぼ中央から進入させる。そして、駆動部40は、
図8(b)に示すように、第1試薬分注プローブ22を、位置C1の反応容器60及びこの反応容器60に対して半径方向内方に位置する導電体61から離間し、第2の管部W2が反応容器60内に位置すると共に第1の管部W1が反応容器60以上の高さに位置し、開口221の高さが分析パラメータとして設定された量の試料及び第1試薬からなる混合液の反応容器60内における液面の高さHよりも上方となる進入位置P4で停止させる(ステップS6)。
【0052】
このように、第1試薬分注プローブ22の直線状の第1の管部W1及び第2の管部W2のうち、第1の管部W1よりも小さい外径の第2の管部W2を反応容器60内に進入させることにより、衝突することなく反応容器60内に第1試薬分注プローブ22の開口221を進入させることができる。
【0053】
ステップS6の後、駆動部40は、
図9(a)に示すように、第1試薬分注プローブ22を進入位置P4から水平方向のR1方向へ回転移動して、第2の管部W2が位置C1の反応容器60内に位置すると共に第1の管部W1が位置C1の反応容器60以上の高さに位置し、第1検出器24により第1の管部W1と導電体61との接触が検出される検出位置P5で停止させる(ステップS7)。
【0054】
第1試薬分注プローブ22は、第1の管部W1の外壁が導電体61に接触する検出位置P5で、第2の管部W2の外壁が位置C1の反応容器60の内周内壁に接触し、開口221が位置C1の反応容器60の内周内壁に近接している。
【0055】
このように、導電体61を、この導電体61に対して半径方向外方に位置する反応容器60の内周内壁に対して水平方向に距離L1離れた位置に固定し、且つ、反応容器60内に第2の管部W2が進入した第1試薬分注プローブ22の回転方向に固定することにより、開口221が反応容器60の内壁に近接する検出位置P5に第1試薬分注プローブ22を停止させることができる。
【0056】
また、第1試薬分注プローブ22を、反応容器60よりも導電性の高い導電体61と接触させることにより、第1試薬分注プローブ22が反応容器60と接触したときよりも、第1検出器24が大きな静電容量の変化を検出することができるため、開口221が反応容器60の内壁に近接する検出位置P5に第1試薬分注プローブ22を精度よく停止させることができる。
【0057】
また、第1試薬分注プローブ22を、第2の管部W2よりも剛性の高い第1の管部W1を導電体61と接触させて停止させることにより、第1試薬分注プローブ22の変形を防ぐことができる。
【0058】
また、第1試薬分注プローブ22を、第2の管部W2よりも剛性の高い第1の管部W1を導電体61と接触させて停止させることにより、第1試薬分注プローブ22の振動を抑えて第1試薬を精度よく分注させることができる。
【0059】
なお、
図10(a)に示すように、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3より下降させ、開口221が反応容器60内に進入した位置P6から更にR1方向への回転を加えて下降させながら回転させて矢印で示す斜め下方に移動させ、反応容器60及び導電体61から離間して進入位置P4と同じ高さとなる位置P7で停止させ、位置P7からR1方向へ回転移動させて、第1検出器24により第1の管部W1と導電体61との接触が検出される検出位置P5で停止させるように実施してもよい。これにより、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3から検出位置P5まで短時間で移動させることができる。
【0060】
また、
図10(b)に示すように、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3より下降させ、開口221が反応容器60内に進入した位置P6から更にR1方向への回転を加えて下降させながら回転させて矢印で示す斜め下方に移動させ、第1の管部W1と導電体61との接触が第1検出器24により検出される検出位置P5で停止させるように実施してもよい。これにより、
図10(a)の場合よりも、更に短時間で第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3から検出位置P5まで移動させることができる。
【0061】
ステップS7の後、第1試薬分注プローブ22は、
図9(a)に矢印で示すように、開口221から反応容器60内周内壁に沿って第1試薬を下方に吐出する(ステップS8)。
【0062】
このように、第1試薬分注プローブ22の開口221を反応容器60の内周内壁に近接させることにより、反応容器60の内周内壁に沿って下方に第1試薬を吐出させることができるので、第1試薬を精度よく分注することができる。これにより、第1試薬は反応容器60内周内壁を伝って落下するので、吐出された勢いで空中を落下した第1試薬が反応容器60内の底面や試料に衝突して、試薬や試料の一部が反応容器60内の測定に関与しない内壁の高い位置や反応容器60外へ飛散するのを抑制することができる。また、反応容器60内の試料及び第1試薬の混合液の泡立ちを抑制することができるため、試料の一部が泡に保持されるのを防ぐことが可能となり、撹拌ユニット28で試料と第1試薬を均一に撹拌することができる。
【0063】
ステップS8の後、駆動部40は、
図11(a)に示すように、第1試薬分注プローブ22を検出位置P5から水平方向のR2方向へ回転移動して進入位置P4で停止させる(ステップS9)。
【0064】
ステップS9の後、駆動部40は、
図11(b)に示すように、第1試薬分注プローブ22を進入位置P4から上昇させて上停止位置P3で停止させる(ステップS10)。
【0065】
ステップS10の後、駆動部40は、第1試薬分注プローブ22を上停止位置P3から円軌道Tに沿って水平方向のR2方向に回転移動して基本位置で停止させる(ステップS11)。
【0066】
なお、ステップS8の後、第1試薬分注プローブ22を、検出位置P5からR2方向に回転させて位置P7で停止させ、位置P7からR2方向に回転させながら上昇させることにより位置P6まで斜め上方に移動させ、位置P6から回転を停止させて上昇させ、上停止位置P3で停止させるように実施してもよい。これにより、第1試薬分注プローブ22を検出位置P5から上停止位置P3まで短時間で移動させることができる。また、ステップS8の後、第1試薬分注プローブ22を、検出位置P5からR2方向に回転させながら上昇させることにより位置P6まで斜め上方に移動させ、位置P6から回転を停止させて上昇させ、上停止位置P3で停止させるように実施してもよい。これにより、第1試薬分注プローブ22を検出位置P5から上停止位置P3まで更に短時間で移動させることができる。
【0067】
上記実施形態に限定されるものではなく、導電体61を、
図12(a)に示すように、L字型の板状の導電体61aに置き換えると共に、反応容器60内周内壁の上部に窪みを形成した反応容器60aに置き換えて、導電体61aを反応容器60aの内周内壁の窪みの部分と反応ディスク62とに跨って固定する。そして、導電体61aの反応容器60aの内周内壁に固定する部分の面が、反応容器60a内周内壁の窪み以外の内壁面とほぼ同一の平面になるように固定するように実施してもよい。この場合、ステップS1乃至S5を実行させることにより、第1試薬分注プローブ22を、第1の管部W1が反応容器60a及び導電体61a上方に位置し、第2の管部W2の外壁が導電体61aに接触する検出位置P5で開口221を反応容器60aの内周内壁に近接して停止させることができる。
【0068】
また、
図12(b)に示すように、反応容器60の上部をカットした反応容器60bに置き換えると共に、導電体61を反応容器60のカットした上部と同じ形状の導電体61bに置き換える。そして、反応容器60b上に導電体61bを配置して、反応容器60b内壁面と導電体61b内壁面とが同一平面になるようにして固定して実施するようにしてもよい。この場合、ステップS1乃至S5を実行させることにより、第1試薬分注プローブ22を、第1の管部W1が反応容器60b及び導電体61b上方に位置し、第2の管部W2の外壁が導電体61bに接触する検出位置P5で開口221を反応容器60bの内周内壁に近接して停止させることができる。
【0069】
また、第1試薬分注プローブ22を、第1の管部W1の部分と第2の管部W2の部分とが同じ外径であって、段差のない直線状の管に置き換えて実施するようにしてもよい。この場合、導電体61を、この導電体61の第2の円19bの半径方向に対して対向する2つの側面うちの半径方向外方の側面と、当該導電体61に対して半径方向外方に位置する反応容器60の内周内壁との水平方向における位置が同じになるように固定することにより、第1の管部W1に相当する部分が当該導電体61に接触して第1検出器24に検出される位置において、第2の管部W2を当該反応容器60内壁に接触させて停止させることができる。
【0070】
以上述べた実施形態によれば、反応容器60に対する導電体61の相対位置を固定し、第1試薬分注プローブ22の第2の管部W2を反応容器60内に進入させ、第1検出器24により第1の管部W1と導電体61との接触が検出される検出位置P5で停止させることにより第1試薬分注プローブ22の開口221を反応容器60の内壁に近接させて反応容器60内壁に沿って第1試薬を吐出させることができる。これにより、第1試薬を精度よく分注することができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
W1 第1の管部
W2 第2の管部
13 第1試薬容器
22 第1試薬分注プローブ
24 第1検出器
40 駆動部
60 反応容器
61 導電体
62 反応ディスク
221 開口