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特許7106290ナビゲーション装置および経路案内停止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置および経路案内停止方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20220719BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20220719BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20220719BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220719BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220719BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01C21/34
G10L15/00 200Q
G10L15/22 453
B60R16/02 655R
G08G1/0969
G06F3/16 630
G06F3/16 650
G06F3/16 620
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018030797
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019144195
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】赤津 宏幸
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052945(JP,A)
【文献】特開2009-229241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G10L 15/00
G10L 15/22
B60R 16/02
G08G 1/0969
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収音装置により収音された音声を音声認識し、音声に対応する発話コマンドを認識する音声認識部と、
誘導経路を案内する誘導経路案内部と、
前記誘導経路案内部が前記誘導経路を案内しているときに、前記音声認識部により前記誘導経路の案内の停止を指示する前記発話コマンドが認識された場合において、ユーザーが過去に車両により到着したことのある特定地点と、車両との離間距離が所定距離以下の場合には、前記誘導経路案内部による前記誘導経路の案内を停止させ、前記特定地点と車両との離間距離が所定距離以下ではない場合には、前記誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる経路案内停止制御部と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記特定地点は、ユーザーに自宅として予め登録された地点を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記経路案内停止制御部は、
前記音声認識部により前記誘導経路の案内の停止を指示する前記発話コマンドが認識された場合において、前記誘導経路が、予め登録された自宅を目的地とする経路であって、かつ、前記特定地点としての自宅と車両との離間距離が所定距離以下の場合には、前記誘導経路案内部による前記誘導経路の案内を停止させ、自宅と車両との離間距離が所定距離以下ではない場合には、前記誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記特定地点は、ユーザーが過去に目的地として設定したことのある地点を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路案内停止制御部は、
前記特定地点の周辺の道路の密度が大きいほど、前記所定距離の値を小さくする
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記経路案内停止制御部は、
前記特定地点を含む所定範囲内にある道路の総距離が大きいほど、前記特定地点の周辺の道路の密度が大きいと判定する
ことを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
ナビゲーション装置の音声認識部が、誘導経路案内部による誘導経路の案内中に、収音装置により収音された音声を音声認識し、音声に対応する発話コマンドを認識するステップと、
前記ナビゲーション装置の経路案内停止制御部が、前記誘導経路案内部が前記誘導経路を案内しているときに、前記音声認識部により前記誘導経路の案内の停止を指示する前記発話コマンドが認識された場合において、ユーザーが過去に車両により到着したことのある特定地点と、車両との離間距離が所定距離以下の場合には、前記誘導経路案内部による前記誘導経路の案内を停止させ、前記特定地点と車両との離間距離が所定距離以下ではない場合には、前記誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせるステップと、
を含むことを特徴とする経路案内停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および経路案内停止方法に関し、特に、実行中の経路案内を、ユーザーが音声により命令して停止させることが可能なナビゲーション装置および経路案内停止方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの誘導経路を案内するナビゲーション装置において、ユーザーが、誘導経路の案内の停止を指示する発話コマンドを発話することにより、誘導経路の案内を停止させることが可能に構成されたものが知られている。従来のナビゲーション装置は、誘導経路の案内の停止を指示する発話コマンドを認識した場合、すぐに誘導経路の案内を停止するのではなく、一旦、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせ、当該問い合わせに対して、ユーザーから誘導経路の案内の停止を指示する応答があった場合に、誘導経路の案内を停止する。これは、収音された音声に偶発的に発話コマンドが含まれている場合や、音声認識の失敗によりユーザーが発話コマンドを発話してないのにもかかわらず発話コマンドが認識されてしまった場合に、ユーザーの意図に反して誘導経路の案内が停止することを防止するためである。
【0003】
なお、特許文献1には、ユーザーが音声によって所定の処理の実行を指示した場合に、車両が置かれている状況を鑑みて、安全性等の観点から、当該所定の処理を実行することが妥当であるか否かを判定し、妥当でない場合は、当該所定の処理を実行しない装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-087950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のナビゲーション装置では、ユーザーが誘導経路の案内の停止を指示する発話コマンドを発話した場合、必ず、ユーザーに対して誘導経路の案内を停止してよいかどうかの問い合わせが行われ、ユーザーがそれに応答する作業を行う必要があるため、ユーザーにとって煩わしかった。この問題を解消するため、誘導経路の案内の停止を指示する発話コマンドを認識した場合に、問い合わせを行うことなく誘導経路の案内を停止する構成とすることも可能である。しかしながら、この場合、収音された音声に偶発的に発話コマンドが含まれている場合や、音声認識の失敗によりユーザーが発話コマンドを発話してないのにもかかわらず発話コマンドが誤って認識されてしまった場合にも、一律に、誘導経路の案内が停止されることになる。このため、ユーザーがあまり詳しくない土地で運転を行っている場合等、ユーザーにとって誘導経路の案内が必要なときにも、ユーザーの意図に反して誘導経路の案内が突然停止する可能性があり、誘導経路の案内の意図しない停止に起因してユーザーが動揺してしまう事態が発生し得るという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ユーザーが誘導経路の案内を必要としている場合に、ユーザーの意図に反して誘導経路の案内が突然停止することを防止しつつ、ユーザーが音声による指示によって誘導経路の案内を停止するときのユーザーの煩わしさをできるだけ低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置は、誘導経路を案内しているときに、誘導経路の案内の停止を指示する発話コマンドが認識された場合において、ユーザーが過去に車両により到着したことのある地点と、車両との離間距離が所定距離以下の場合には、誘導経路の案内を停止し、当該地点と車両との離間距離が所定距離以下ではない場合には、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる。
【発明の効果】
【0008】
誘導経路が案内されている場合において、ユーザーが過去に車両により到着したことのある地点と、車両との離間距離が十分に近い場合は、ユーザーが過去に赴いたことのある地点の周辺に車両が位置しているということであり、ユーザーが車両の周辺の道路の状況を把握しており、ユーザーにとって誘導経路の案内は必要ない状況であると想定される。逆に言えば、このような場合以外の場合は、ユーザーが、車両の周辺の道路の状況を十分に把握しておらず、ユーザーが、誘導経路の案内を必要としている状況であると想定される。これを踏まえ、上記のように構成した本発明によれば、ユーザーが誘導経路の案内が必要ない状況であると想定される場合にのみ、ユーザーに対して問い合わせが行われること無く、自動で誘導経路の案内が停止されるため、ユーザーが誘導経路の案内を必要としている場合に、ユーザーの意図に反して誘導経路の案内が突然停止することを防止できる。その上で、上記のように構成した本発明によれば、ユーザーにとって誘導経路の案内は必要ない状況であると想定される場合には、ユーザーが、音声により誘導経路の案内の停止を指示した場合に、ユーザーに対して問い合わせが行われること無く、自動で誘導経路の案内が停止されるため、この場合は、ユーザーが問い合わせに対して応答するという作業を行う必要が無く、ユーザーの煩わしさを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1の機能構成例を示すブロック図を、車両に設けられた収音装置2、音声出力装置3およびタッチパネル4と共に示す図である。本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両に搭載された装置であり、車両の位置を検出する機能や、ユーザーにより設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」という)を探索し、案内する機能等を備える。なお、本実施形態では、ナビゲーション装置1を、車両に搭載された装置として説明するが、ナビゲーション装置1は、車両に固定的に取り付けられた装置である必要はなく、例えば、携帯端末(スマートフォンや、タブレット型コンピューター、ノート型コンピューター等)であってもよい。なお、本実施形態では、車両の運転手がユーザーであるものとする。
【0011】
収音装置2は、ユーザーの発話音声をマイクにより収音し、音声信号として出力する。音声出力装置3は、音声信号の入力に応じて、音声信号に基づく音声をスピーカーにより出力する。タッチパネル4は、ダッシュボードの中央部等の運転手が視認可能な位置に設けられた表示パネル4a(液晶パネルや、有機ELパネル等)と、表示パネル4aに重ねて配置されたタッチセンサー4bとを備える。
【0012】
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、機能構成として、自車位置検出部10、誘導経路案内部11、音声認識部12および経路案内停止制御部13を備えている。上記各機能ブロック10~13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~13は、実際にはコンピューターのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また、ナビゲーション装置1は、記憶手段として、地図データ記憶部20を備える。地図データ記憶部20は、地図データ20aを記憶する。地図データ20aは、地図を表示する際に用いる地図表示用データ、および、経路の探索に用いる道路データ(道路網のリンクやノードに関する情報)を含んで構成される。
【0013】
自車位置検出部10は、各種センサーからの入力に基づいて、車両の現在位置を検出する。各種センサーは、車両の地図上の位置や方位を検出するGPSユニットや、車両の相対的な方位を検出するセンサー(センサーや、加速度センサー等)、車両の速度を検出する車速センサー等を含んで構成される。
【0014】
誘導経路案内部11は、地図データ記憶部20が記憶する地図データ20aおよび自車位置検出部10が検出する車両の現在位置に基づいて、ユーザーに設定された目的地までの経路(誘導経路)を探索し、誘導経路を案内する。誘導経路案内部11は、表示パネル4aに車両の周辺の地図を表示すると共に、地図上に、車両の位置を明示する画像、および、誘導経路を明示する画像を付加することによって、誘導経路を案内する。
【0015】
本実施形態では、ユーザーは、事前に、目的地の候補として、「自宅」を登録することができる。ユーザーによって、予め登録された自宅が目的地として設定された場合、誘導経路案内部11は、車両の現在位置から自宅までの誘導経路を探索し、誘導経路の案内を実行する。
【0016】
音声認識部12は、収音装置2により収音された音声を音声認識し、音声に対応する発話コマンドを認識する。詳述すると、ナビゲーション装置1には、発話コマンドごとの音声パターンが事前に登録されている。発話コマンドとは、ナビゲーション装置1(ナビゲーション装置1の制御下にある他の装置であってもよい)に特定の処理を実行することを指示する文言のことであり、ユーザーは、一の発話コマンドを発話することにより、ナビゲーション装置1に対する物理的なアクションを起こすことなく、ナビゲーション装置1に当該一の発話コマンドに対応する特定の処理を実行させることができる。例えば、発話コマンドは、車両の周辺の地図を表示することを指示する「地図表示」や、登録された自宅までの誘導経路の探索および探索された誘導経路の案内を指示する「自宅に帰る」、車両の周辺に存在するコンビニエンスストアを検索することを指示する「近くのコンビニ」等である。そして、本実施形態では、発話コマンドに、誘導経路案内部11による誘導経路の案内が行われている場合に、誘導経路の案内の停止を指示する「ルート消去」が含まれている。以下、この発話コマンドを特に「ルート消去コマンド」という。
【0017】
音声認識部12は、収音装置2から入力される音声信号を継続して分析し、音声信号により表される音声パターン(ユーザーが発話した文言の音声パターン)と、予め登録された発話コマンドの音声パターンの何れかとの類似度が、所定の閾値以上となったか否かを監視する。音声認識部12は、音声信号により表される音声パターンと、一の発話コマンドの音声パターンとの類似度が、所定の閾値以上となったことを検出した場合、当該一の発話コマンドを、ユーザーが発話した発話コマンドとして認識する。音声認識部12は、認識した発話コマンドが、ルート消去コマンドである場合には、経路案内停止制御部13に対して、ルート消去コマンドを認識したことを通知する。
【0018】
なお、詳細は省略するが、音声認識部12によりルート消去コマンド以外の発話コマンドが認識された場合、ナビゲーション装置1は、認識された発話コマンドに対応する処理を適切に実行する。
【0019】
経路案内停止制御部13は、音声認識部12によりルート消去コマンドが認識された場合に、以下の処理を実行する。なお、ユーザーがルート消去コマンドを発話した場合、基本的には、誘導経路案内部11により誘導経路の案内が行われている状況である。経路案内停止制御部13は、音声認識部12によりルート消去コマンドが認識されたときに、誘導経路案内部11により誘導経路の案内が行われていない場合(ユーザーが誤ってまたは意図せずルート消去コマンドを発話した場合)、以下の処理を実行しない。
【0020】
経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11が案内中の誘導経路の目的地が、予め登録された自宅か、それ以外の地点かを判定する。誘導経路の目的地が、予め登録された自宅以外の地点の場合、経路案内停止制御部13は、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる。本実施形態では、経路案内停止制御部13は、表示パネル4aに「本当にルートを消去しますか?」といった誘導経路の案内の停止を実行してよいかどうかを確認する文言を表示すると共に、誘導経路の案内の停止の実行を指示する場合に操作されるタッチボタンと、当該停止をキャンセルする場合に操作されるタッチボタンとを表示する。
【0021】
更に、経路案内停止制御部13は、音声出力装置3に、「本当にルートを消去しますか?」といった誘導経路の案内の停止を実行してよいかどうかを確認する文言を音声により出力させる。ユーザーは、誘導経路の案内の停止を実行させる場合は、タッチパネル4の対応するタッチボタンをタッチ操作するか、または、誘導経路の案内の停止を実行させる所定の文言(例えば「消去する」)を発話する。一方、ユーザーは、誘導経路の案内の停止をキャンセルする場合は、タッチパネル4の対応するタッチボタンをタッチ操作するか、または、キャンセルを指示する所定の文言(例えば「消去しない」)を発話する。ユーザーが音声を発話した場合、その音声が音声認識部12により認識され、認識結果が経路案内停止制御部13に通知される。
【0022】
誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせた後、経路案内停止制御部13は、問い合わせに対し、ユーザーの応答があったか否かを監視し、応答があった場合は、その応答が誘導経路の案内の停止の実行を指示する応答であるか、当該停止のキャンセルを指示する応答であるかを判定する。ユーザーの応答が、誘導経路の案内の停止の実行を指示する応答である場合、経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11に誘導経路の案内の停止を指示する。一方、ユーザーの応答が、誘導経路の案内の停止のキャンセルを指示する応答である場合、経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11の誘導経路の案内を停止しない。この場合、引き続き、誘導経路案内部11により誘導経路の案内が実行される。
【0023】
一方、誘導経路案内部11が案内中の誘導経路の目的地が、予め登録された自宅の場合、経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11に自宅の位置を示す情報(以下「自宅位置情報」という)の応答を要求して自宅位置情報を取得する。次いで、経路案内停止制御部13は、取得した自宅位置情報と、地図データ記憶部20が記憶する地図データ20aに基づいて、自宅の周辺の道路の密度レベルを判定する。密度レベルとは、自宅の周辺の道路の密度の大きさを、予め定められたレベルによって示す指標である。本実施形態では、密度レベルの値として、密度が大きい順に、大レベル、中レベル、小レベルが用意されている。自宅の周辺の道路の密度とは、自宅の周辺における道路の密集具合のことである。一般に、田舎よりも都会の方が、道路の密度は大きい傾向がある。
【0024】
密度レベルを判定するときの経路案内停止制御部13の処理について詳述すると、経路案内停止制御部13は、取得した自宅位置情報と、地図データ記憶部20が記憶する地図データ20aに基づいて、自宅を中心として、予め定められた大きさの範囲内にある道路を認識する。次いで、経路案内停止制御部13は、自宅を中心とする予め定められた大きさの範囲における全ての道路の長さの合計値を算出する。地図上の一定の大きさの領域における道路の密度と、当該領域における道路の総距離(=当該領域に属する全ての道路の長さの合計値)との間には、正の相関関係があり、総距離が大きいほど、道路の密度も大きくなる。従って、算出した合計値は、自宅を中心とする予め定められた大きさの範囲(自宅の周辺)における道路の密度の大きさを表す指標として用いることができる。
【0025】
そして、経路案内停止制御部13は、合計値が第1閾値以上の場合、密度レベルが大レベルであると判定し、合計値が第1閾値よりも小さく第2閾値(<第1閾値)以上の場合、密度レベルが中レベルであると判定し、合計値が第2閾値よりも小さい場合、密度レベルが小レベルであると判定する。
【0026】
以上のようにして密度レベルを判定した後、経路案内停止制御部13は、密度レベルの値に基づいて、比較対象距離(特許請求の範囲の「所定距離」に相当)の値を決定する。本実施形態では、比較対象距離の値の候補として、第1値、第2値および第3値(ただし、第1値<第2値<第3値)が用意されており、経路案内停止制御部13は、密度レベルが大レベルの場合は、比較対象距離の値を第1値とし、密度レベルが中レベルの場合は、比較対象距離の値を第2値とし、密度レベルが小レベルの場合は、比較対象距離の値を第3値とする。以上のように、経路案内停止制御部13は、自宅の周辺の道路の密度が大きいほど、比較対象距離の値を小さくし、逆に、自宅の周辺の道路の密度が小さいほど、比較対象距離の値を大きくする。
【0027】
次いで、経路案内停止制御部13は、取得した自宅位置情報が示す自宅の位置と、自車位置検出部10が検出する車両の現在位置とに基づいて、車両と自宅との離間距離が比較対象距離以下か否かを判定する。経路案内停止制御部13は、車両と自宅との離間距離が比較対象距離以下の場合、誘導経路案内部11に誘導経路の案内の停止を指示する。この結果、誘導経路案内部11による誘導経路の案内は、ルート消去コマンドに認識に応じて自動で停止する。一方、経路案内停止制御部13は、車両と自宅との離間距離が比較対象距離を上回る場合、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる。経路案内停止制御部13は、問い合わせに係る処理、および、問い合わせに対する応答に対応する処理を上述した手順で実行する。
【0028】
以上のように、本実施形態では、経路案内停止制御部13は、音声認識部12によりルート消去コマンドが認識された場合、誘導経路案内部11が案内中の誘導経路が、予め登録された自宅を目的地とする経路であって、かつ、車両と自宅との離間距離が比較対象距離以下の場合には、誘導経路案内部11による誘導経路の案内を停止させ、それ以外の場合には、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる。この構成のため、以下の効果を奏する。なお、本実施形態において、自宅が、特許請求の範囲の「特定地点」に相当する。
【0029】
すなわち、予め登録された自宅を目的地とする誘導経路が案内されている場合において、車両と自宅との離間距離が十分に近い場合は、ユーザーは、車両の現在位置から自宅までの経路を把握しており、誘導経路の案内は必要ない状況であると想定される。一方、「予め登録された自宅を目的地とする誘導経路が案内されている場合において、車両と自宅との離間距離が十分に近い場合」以外の場合は、以下の場合である。すなわち、誘導経路の目的地が登録された自宅以外の地点であるか、誘導経路の目的地が登録された自宅であるものの車両と自宅との離間距離が大きい場合である。このような場合は、ユーザーが、車両の現在位置の周辺の道路の状況を十分に把握していない可能性があり、ユーザーが、誘導経路の案内を必要としている可能性が十分に高い状況であると想定される。
【0030】
以上を踏まえ、上記構成によれば、ユーザーが誘導経路の案内が必要ない状況であると想定される場合にのみ、ユーザーに対して問い合わせが行われないため、ユーザーが誘導経路の案内を必要としている場合に、ユーザーの意図に反して誘導経路の案内が突然停止することを防止できる。その上で、上記構成によれば、ユーザーにとって誘導経路の案内が必要ない状況であると想定される場合には、ユーザーが、音声により誘導経路の案内の停止を指示した場合に、ユーザーに対して問い合わせが行われること無く、自動で誘導経路の案内が停止されるため、この場合は、ユーザーが問い合わせに対して応答するという作業を行う必要が無く、ユーザーの煩わしさを低減できる。
【0031】
更に、本実施形態では、経路案内停止制御部13は、自宅の周辺の道路の粗密状況に応じて、自宅の周辺の道路の密度が大きいほど、比較対象距離の値を小さくする。つまり、経路案内停止制御部13は、自宅の周辺の道路の密度が大きい場合は、小さい場合と比較して、より自宅に近い位置でルート消去コマンドが認識された場合にのみ、問い合わせを行わず、誘導経路の案内を停止する。この構成により、以下の効果を奏する。
【0032】
すなわち、自宅と車両とが一定距離だけ離れている状況において、自宅の周辺の道路の密度が大きいほど、自宅に至るまでに選択可能な道路の選択肢が多く、また、道のりが複雑になる傾向があり、ユーザーが車両の現在位置から自宅までの経路を把握していない可能性が高くなるものと想定される。従って、自宅の周辺の道路の密度が大きければ大きいほど、車両がより自宅に近づいた段階で、ユーザーが自宅までの経路を把握している状態となる。これを踏まえ、本実施形態の構成として、比較対象距離(所定距離)を密度レベルに関係なく一定の距離としてもよいが、これに対して上記構成によれば、自宅の周辺の道路の密度が大きいほど、比較対象距離の値が小さくなるため、より的確に、ユーザーが、自宅までの経路を把握していない状況で、自宅までの誘導経路の案内が突然停止してしまうことを防止できる点で好ましい。
【0033】
次に、ナビゲーション装置1の動作について説明する。図2は、ナビゲーション装置1の動作例を示すフローチャートである。図2のフローチャートは、誘導経路案内部11により誘導経路の案内が行われている状況で、音声認識部12によりルート消去コマンドが認識された場合に、ナビゲーション装置1が実行する処理を示している。
【0034】
図2に示すように、ナビゲーション装置1の音声認識部12は、収音装置2から入力する音声信号を継続して分析し、音声にルート消去コマンドが含まれる場合には、ルート消去コマンドを認識する(ステップSA1)。音声認識部12は、ルート消去コマンドを認識した場合、そのことを経路案内停止制御部13に通知する。
【0035】
経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11が案内中の誘導経路の目的地が、予め登録された自宅か否かを判定する(ステップSA2)。誘導経路の目的地が、予め登録された自宅ではない場合(ステップSA2:NO)、経路案内停止制御部13は、誘導経路の案内を停止してよいかどうかをユーザーに問い合わせる(ステップSA3)。上述したように、本実施形態では、ユーザーに対する問い合わせは、表示パネル4aによる情報の表示、および、音声出力装置3による音声の出力によって行われる。
【0036】
問い合わせの後、経路案内停止制御部13は、問い合わせに対し、ユーザーの応答があったか否かを監視する(ステップSA4)。応答があった場合(ステップSA4:YES)、経路案内停止制御部13は、その応答が誘導経路の案内の停止の実行を指示する応答であるか否かを判定する(ステップSA5)。ユーザーの応答が、誘導経路の案内の停止の実行を指示する応答である場合(ステップSA5:YES)、経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11に誘導経路の案内の停止を指示し、誘導経路の案内を停止させる(ステップSA6)。一方、ユーザーの応答が、誘導経路の案内の停止の実行を指示する応答ではない場合、換言すれば、ユーザーの応答が、誘導経路の案内の停止のキャンセルを指示する応答である場合(ステップSA5:NO)、経路案内停止制御部13は、誘導経路案内部11の誘導経路の案内を停止しない(ステップSA7)。この場合、引き続き、誘導経路案内部11により誘導経路の案内が実行される。
【0037】
一方、誘導経路の目的地が、予め登録された自宅である場合(ステップSA2:YES)、経路案内停止制御部13は、自宅の周辺の道路の密度レベルを判定する(ステップSA8)。次いで、経路案内停止制御部13は、密度レベルの値に基づいて、比較対象距離の値を決定する(ステップSA9)。次いで、経路案内停止制御部13は、車両と自宅との離間距離が比較対象距離以下か否かを判定する(ステップSA10)。
【0038】
車両と自宅との離間距離が比較対象距離以下の場合(ステップSA10:YES)、誘導経路案内部11に誘導経路の案内の停止を指示し、誘導経路の案内を停止させる。一方、車両と自宅との離間距離が比較対象距離を上回る場合(ステップSA10:NO)、経路案内停止制御部13は、処理手順をステップSA3へ移行する。ステップSA3以下の処理は上述した通りである。
【0039】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、経路案内停止制御部13は、音声認識部12によりルート消去コマンドが認識された場合において、誘導経路が予め登録された自宅を目的地とする経路であって、かつ、自宅と車両との離間距離が比較対象距離以下の場合には、問い合わせを行うことなく、誘導経路の案内を停止させた。この点に関し、誘導案内停止制御部13が、誘導経路の目的地が予め登録された自宅であるか否かにかかわらず、車両の現在位置と、自宅との離間距離が比較対象距離以下の場合には、問い合わせを行うことなく、誘導経路の案内を停止する構成でもよい。この場合であっても、車両の現在位置がユーザーの自宅に十分に近く、ユーザーが車両の周辺の道路の状況を把握していると想定される場合にのみ、問い合わせを行うことなく、誘導経路の案内が停止されるため、上述した実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
【0041】
また、上記点に関し、誘導案内停止制御部13が、誘導経路の目的地が予め登録された自宅であるか否かにかかわらず、車両の現在位置と、ユーザーが過去に車両により到着したことのある地点である特定地点との離間距離が比較対象距離以下の場合には、問い合わせを行うことなく、誘導経路の案内を停止する構成でもよい。この構成において、「ユーザーが過去に目的地として設定したことのある地点」を、特定地点とすることが可能である。例えば、ユーザーが目的地として設定した地点を登録しておき、後にユーザーの指示に応じて、登録された地点を目的地の候補として提供する機能をナビゲーション装置1が有する場合に、登録された地点のそれぞれを、特定地点とすることが可能である。
【0042】
ここで、ユーザーが過去に車両により到着したことのある地点の周辺は、ユーザーが過去に実際に赴いたことのある場所であり、ユーザーが道路の状況について把握していると想定される。従って、当該地点の周辺に車両が位置している場合は、ユーザーにとって誘導経路の案内は必要ない状況であると想定される。これを踏まえ、上記構成によれば、ユーザーが車両の周辺の道路の状況を把握していると想定される場合にのみ、問い合わせを行うことなく、誘導経路の案内が停止されるため、上述した実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
【0043】
また、上述した実施形態では、自宅の周辺の密度を、密度の大きさに応じて予め3つにレベル分けし、また、密度レベルに応じて比較対象距離の値を予め用意しておき、経路案内停止制御部13が、密度レベルの特定、密度レベルに応じた比較対象距離の決定の順番で処理を行う構成であった。この点に関し、比較対象距離の値を決定する方法は例示した方法に限らない。例えば、所定の計算式を用いて比較対象距離の値を決定する構成でもよい。また、上述した実施形態では、自宅の周辺の道路の密度を、一定の大きさの領域における道路の総距離を用いて定義したが、例えば、道路の密度を、一定の大きさの領域における道路の面積が占める割合、道路リンクの数等、他の方法によって定義してもよい。また、密度レベルによらず比較対象距離が固定値であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ナビゲーション装置
2 収音装置
11 誘導経路案内部
12 音声認識部
13 経路案内停止制御部
図1
図2