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特許7106293バルブの弁座漏れ量測定方法とバルブの弁座漏れ量測定装置及び水素ステーション用の高圧バルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】バルブの弁座漏れ量測定方法とバルブの弁座漏れ量測定装置及び水素ステーション用の高圧バルブ
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20220719BHJP
   G01M 3/08 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01M3/04 H
G01M3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018034696
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148559
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-260541(JP,A)
【文献】実開昭58-071116(JP,U)
【文献】特開2003-130753(JP,A)
【文献】特開2013-113652(JP,A)
【文献】特開2011-034916(JP,A)
【文献】特開2014-041101(JP,A)
【文献】米国特許第04524608(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
G01N 5/00-9/36
G01N 35/00-37/00
G01F 11/00-13/00
G01F 17/00-22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試弁から漏れ出た気泡を水上置換によりシリンジ内に一定時間溜める捕集工程と、その後に前記シリンジに蓄積させた気泡を吸引して前記シリンジよりも内径の小さい細径管状体内に移動させる吸引工程を実施し、前記細径管状体内に吸引移動させた前記供試弁からの漏れ流体を計測することによって、前記供試弁の弁座漏れ量を高精度に算出するようにしたことを特徴とするバルブの弁座漏れ量測定方法。
【請求項2】
前記シリンジ内から吸引して前記細径管状体内で略円筒状となった気体状の漏れ流体の長さを計測することにより、弁座漏れ量を算出するようにした請求項1に記載のバルブの弁座漏れ量測定方法。
【請求項3】
前記細径管状体の周囲に配置した光電式センサで、前記細径管状体内に存在する漏れ流体の長さを計測するようにした請求項1又は2に記載のバルブの弁座漏れ量測定方法。
【請求項4】
前記細径管状体に吸引した漏れ流体が複数に分かれている場合は、それぞれの漏れ流体の長さを合計して算出するようにした請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブの弁座漏れ量測定方法。
【請求項5】
供試弁の一次側に設けられた流体源と、前記供試弁の二次側に接続されたシリンジ内に漏れ流体を送給するために設けられた水上置換部と、前記シリンジの二次側に接続された前記シリンジよりも内径の小さい細径管状体と、前記縮径管状体の二次側に気泡を吸引する際に開閉する遮断用バルブとを備え、前記シリンジ内に前記供試弁から漏れ出た気泡を一定時間捕集した状態で、前記縮径管状体内に吸引する際に前記遮断用バルブを開放して真空吸引することにより、前記縮径管状体に移動した漏れ流体の長さを計測して前記供試弁の弁座漏れ量を算出するようにしたことを特徴とするバルブの弁座漏れ量測定装置。
【請求項6】
前記細径管状体の周囲に光電式センサを上下動可能に移動させて漏れ流体の長さを計測するようにした請求項5に記載のバルブの弁座漏れ量測定装置。
【請求項7】
前記細径管状体は、前記シリンジの二次側に各種の容量により着脱可能に設けられ、幅広い漏れ量範囲での計測を可能とした請求項5又は6に記載のバルブの弁座漏れ量測定装置。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1項に記載した弁座漏れ量測定装置で計測した前記供試弁を水素ステーション用の高圧水素用バルブに用いた水素ステーション用の高圧バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの弁座漏れ量の測定方法に関し、特に、高圧流体に用いられるバルブの場合にも、微小な弁座漏れ量を高精度に計測可能なバルブの弁座漏れ量測定方法とバルブの弁座漏れ量測定装置及び水素ステーション用の高圧バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、燃料電池自動車用水素ステーションの配管設備では高圧水素ガスが流体として用いられ、この場合、水素ガスが80MPa以上になったり、場合によっては約103MPaに至ることもある。このような設備の配管では、高圧流体の漏れを防ぐために高圧バルブが用いられるが、一般に、バルブの弁座漏れを完全にゼロに抑えることは難しい。このため、微小な漏れ量を許容しつつも、漏れを限りなく少なくできるバルブが求められ、特に高圧水素用バルブでは、弁座から漏れ出る流量を100分の数mLに抑えることが要求されることもある。
【0003】
このような要求を満足するために、バルブの弁座漏れ量を確認する際には、通常、バルブの製造後に弁座漏れ試験(シートテスト)が実施される。弁座漏れ試験を実施する場合、バルブの種類・用途・使用環境などに応じて独立した規格が設定され、この規格に定義された基準をバルブ製品が満たすか否かが試験される。このような規格の代表例として、「JIS2003:2003 バルブの検査通則」が知られている。この規格の弁座漏れ検査では、試験流体が所定圧力で弁閉状態のバルブに加圧充填されて弁座漏れが試験され、例えば、レートB、呼び径50Aの空気圧試験の場合、バルブの許容漏れ量が15mm/sec以下と規定されている。
【0004】
一方、その他の弁座漏れ試験装置として、特許文献1において、JIS規格に準拠した気体導出具によるバルブの試験装置が開示されている。この試験装置では、気体導出管、捕獲器、メスシリンダが設けられ、弁座漏れ試験によりバルブから漏洩した気体が気体導出管から捕獲器内に案内され、この捕獲器を介して上下逆さまに配設されたメスシリンダ内に収集される。そして、メスシリンダ内に集められた気体量を目視により計測することにより、水上置換法で一定時間における弁座漏れ量を計測するようになっている。
【0005】
さらに、特許文献2の圧縮性流体の漏洩量計測装置では、倒立支持されたメスシリンダに加えて、メスシリンダの上部に液位検出用超音波センサが設けられている。この装置では、水上置換法でバルブから漏れ出た気体がメスシリンダ内に案内され、この気体でメスシリンダ内に蓄積した液体の液面が下降したときに、その液位が超音波センサにより測定されて漏れ量が検出される。
【0006】
他方、特許文献3のワーク気密検査装置における水上置換法では、内部に液体が貯留され、ワークより漏れ出たエアーが流出路を介して蓄積される液体貯留槽が設けられ、この液体貯留槽に気泡確認装置が連結されている。そして、気泡を計測する装置として、発光素子と受光素子、又は照明装置とビデオカメラ、或は超音波発信器とその受信器からなり、それぞれによってワークより漏れ出た気泡を確認し、一定時間内の気泡量を測定しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3774719号公報
【文献】特許第2566114号公報
【文献】特許第3850273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した「JIS2003:2003 バルブの検査通則」により弁座漏れ検査をおこなう場合、レートB、呼び径50Aにおいて、バルブの許容漏れ量が15mm/sec以下と規定されていることから、極わずかな微小漏れを高分解能で測定することは想定されていない。このため、高圧水素用バルブなどの漏れ量を100分の数mLに抑えることが必要なバルブの弁座漏れ量を測定することはできない。
【0009】
一方、特許文献1のバルブの試験装置では、バルブから漏れ出した気体をメスシリンダ内に蓄積し、その気体量を計測しているため、前記の「JIS2003:2003 バルブの検査通則」による空気圧試験の場合と同様に、100分の数mL以下の微小な漏れ量を測定することは難しい。メスシリンダ内の気体量を目視により計測していることから、正確性にも欠け、計測者ごとに計測値にバラツキが生じる可能性も有している。
【0010】
さらに、特許文献2では、漏れ出た気体量を超音波センサの液位測定により測定しているが、この場合にもメスシリンダ内に気体を蓄積している。そのため、シリンダ内容積の確保のために口径を大きく設けると漏れ気体による液位の変化が少なくなることから、100分の数mL以下の微小な漏れ量を測定することは難しい。
【0011】
特許文献3においては、水上置換法において、ワークから漏れ出したエアーを、発光素子と受光素子、又は照明装置とビデオカメラ、或は超音波発信機とその受信機などの気泡確認装置で確認しようとしているが、気泡中の気体の量は必ずしも一定量ではないことから、各気泡の容積を精密に測定することは難しい。このため、測定結果に誤差が生じ、正確に水素漏れ量を測定することが困難になり、この気密検査装置を用いて高圧水素用バルブの極わずかな高圧流体の微小漏れを測定することはできない。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、バルブの弁座からの流体の漏れ量が極わずかな場合にも、その漏れ量の誤差やバラツキを抑えた状態で高分解能で測定し、漏れ量を極微小量に抑えることができるバルブの弁座漏れ量測定方法とバルブの弁座漏れ量測定装置及び水素ステーション用の高圧バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、供試弁から漏れ出た気泡を水上置換によりシリンジ内に一定時間溜める捕集工程と、その後にシリンジに蓄積させた気泡を吸引してシリンジよりも内径の小さい細径管状体内に移動させる吸引工程を実施し、細径管状体内に吸引移動させた供試弁からの漏れ流体を計測することによって、供試弁の弁座漏れ量を高精度に算出するようにしたバルブの弁座漏れ量測定方法である。
【0014】
請求項2に係る発明は、シリンジ内から吸引して細径管状体内で略円筒状となった気体状の漏れ流体の長さを計測することにより、弁座漏れ量を算出するようにしたバルブの弁座漏れ量測定方法である。
【0015】
請求項3に係る発明は、細径管状体の周囲に配置した光電式センサで、細径管状体内に存在する漏れ流体の長さを計測するようにしたバルブの弁座漏れ量測定方法である。
【0016】
請求項4に係る発明は、細径管状体に吸引した漏れ流体が複数に分かれている場合は、それぞれの漏れ流体の長さを合計して算出するようにしたバルブの弁座漏れ量測定方法である。
【0017】
請求項5に係る発明は、供試弁の一次側に設けられた流体源と、供試弁の二次側に接続されたシリンジ内に漏れ流体を送給するために設けられた水上置換部と、シリンジの二次側に接続されたシリンジよりも内径の小さい細径管状体と、縮径管状体の二次側に気泡を吸引する際に開閉する遮断用バルブとを備え、シリンジ内に供試弁から漏れ出た気泡を一定時間捕集した状態で、縮径管状体内に吸引する際に遮断用バルブを開放して真空吸引することにより、縮径管状体に移動した漏れ流体の長さを計測して供試弁の弁座漏れ量を算出するようにしたバルブの弁座漏れ量測定装置である。
【0018】
請求項6に係る発明は、細径管状体の周囲に光電式センサを上下動可能に移動させて漏れ流体の長さを計測するようにしたバルブの弁座漏れ量測定装置である。
【0019】
請求項7に係る発明は、細径管状体は、シリンジの二次側に各種の容量により着脱可能に設けられ、幅広い漏れ量範囲での計測を可能としたバルブの弁座漏れ量測定装置である。
【0020】
請求項8に係る発明は、弁座漏れ量測定装置で計測した供試弁を水素ステーション用の高圧水素用バルブに用いた水素ステーション用の高圧バルブである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、水上置換により外部の気体の混入を防ぎつつシリンジ内に捕集でき、気体状の漏れ流体を細径管状体に吸引させ、細径管状体内に移動した漏れ流体を計測することで、バルブの弁座からの漏れ量が極わずかな場合にも、細径管状体を介して長さ方向に変形させ、弁座からの漏れ流体を一定時間シリンジに溜めた後に、シリンジから細径管状体に吸引して移動させることにより、漏れ流体の全ての気泡を精度よく確実に捕集できる。そのため、細径管状体内の漏れ流体の全量を計測でき、気泡の大きさのバラツキなどによる誤差の影響を受けることがなく、単位時間当たりに漏れ出した流体を正確に計測して供試弁の弁座漏れ量を高精度に算出可能となる。これにより、漏れ量の誤差や計測者ごとのバラツキを抑え、100分の数mLの少ない弁座漏れ量であっても高分解能で測定可能となる。しかも、漏れ流体を、より内径の大きいシリンジに捕集させた後に細径管状体に吸引することで、容易にかつ確実に細径管状体内に移動し、正確な測定を実施できる。この測定結果により、漏れ量を極微小量に抑えた供試弁を提供でき、例えば水素ステーションで用いられる高圧水素用バルブのような精度が要求される高圧バルブであっても、極微小量の漏れの基準値に対応した高精度な製品を提供できる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、細径管状体内で略円筒状となった気体状の漏れ流体の長さを計測して弁座漏れ量を算出することで、略円筒状態に変形した気体状漏れ流体の体積を計算式により容易に算出可能になり、誤差や計測者ごとのバラツキを抑えつつ正確な弁座漏れ量の測定が可能になる。これにより、0.02~0.03mLのわずかな弁座漏れ量も算出可能となる。
【0023】
請求項3に係る発明によると、光電式センサで細径管状体内の漏れ流体の長さを光学的に計測することで、弁座漏れ量の測定を自動化でき、細径管状体内の水と漏れ流体との境界を正確に判別し、漏れ流体の計測を高精度に実施可能になる。計測時の応答時間を短くできることから、短時間で連続して供試弁の弁座漏れ量を計測可能になる。
【0024】
請求項4に係る発明によると、細径管状体内の漏れ流体が複数に分かれている場合であっても、これらの漏れ流体の長さを合計して算出することで精度の高い漏れ量の測定が可能となる。
【0025】
請求項5に係る発明によると、複雑な設備を必要とすることなくバルブの弁座漏れを測定可能になり、供試弁の弁座漏れ量が極わずかな場合にも、細径管状体を介して長さ方向に変形させ、弁座からの漏れ流体を一定時間シリンジに溜めた後に、シリンジから細径管状体に吸引して移動させることにより、漏れ流体の全ての気泡を精度よく確実に捕集できる。そのため、細径管状体内の漏れ流体の全量を計測でき、気泡の大きさのバラツキなどによる誤差の影響を受けることがなく、単位時間当たりに漏れ出した流体を正確に計測して供試弁の弁座漏れ量を高精度に算出可能となる。これにより、漏れ量の誤差や計測者ごとのバラツキを抑え、弁座漏れ量が100分の数mLの少ない場合であっても高分解能で測定可能となる。この測定結果により、漏れ量を極微小量に抑えた供試弁を提供でき、例えば水素ステーションで用いられる高圧水素用バルブのような精度が要求される高圧バルブであっても、極微小量の漏れの基準値に対応した高精度な製品を提供できる。


【0026】
請求項6に係る発明によると、光電式センサの上下移動によって細径管状体内の水と気体状の漏れ流体との境界を正確に判別し、高精度な漏れ流体の長さの計測が可能になる。計測時の応答時間が短いことから、連続して短時間で供試弁を計測でき、光電式センサのフットプリントを抑えて周囲が狭い空間にも配置できる。
【0027】
請求項7に係る発明によると、異なる容量の細径管状体に取り換え可能であり、微小漏れ量の計測に限定されることのない、より広い範囲で漏れ量計測が可能であり、もって使用価値の高いバルブの弁座漏れ量測定方法と測定装置を提供できる。
【0028】
請求項8に係る発明によると、高圧水素用バルブに適した高圧バルブを提供でき、水素ステーションに用いたときに、弁閉時の高圧水素の不要な弁座漏れを防いで、安全性を確保しつつ開閉操作により所定量の高圧水素を供給したり停止することが可能な高精度のバルブとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のバルブの弁座漏れ量測定方法を示すフローチャートである。
図2】バルブの弁座漏れ量測定装置を用いた測定設備の一例を示す模式図である。
図3】バルブの弁座漏れ量測定装置を示す概略模式図である。
図4図2の測定設備の要部を示す模式図である。
図5図4における測定ルーチンを示す模式図である。
図6】細径管状体の一部拡大断面図である。
図7】水素ステーションの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のバルブの弁座漏れ量測定方法とバルブの弁座漏れ量測定装置及び水素ステーション用の高圧バルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2においては、バルブの弁座漏れ量測定装置を用いた測定設備を示し、図3にはバルブの弁座漏れ量測定装置の概略模式図を示している。先ず、この測定装置を説明する。
【0031】
図2において、バルブの弁座漏れ量測定装置(以下、装置本体1という)は、検査用流体源2、水上置換部3、細径管状体4、光電式センサ5を有し、これらが測定用流路6により接続され、バルブ(供試弁)10の弁座漏れ量を高精度に算出することが可能になっている。図示しないが、水上置換部3、細径管状体4、光電式センサ5は、1つの筐体内に収納されている。
【0032】
供試弁10は、高圧流体に適した高圧バルブが用いられ、特に水素ステーションで用いられる高圧水素用バルブが使用される。図示しないが、高圧水素用バルブ(供試弁10)は、ステムを介してボール弁体が回動され、このボール弁体が弁箱内に装着された弁座を摺動しつつ開閉可能に設けられたトラニオン構造のボールバルブの構造を呈し、70~105MPa程度の高圧水素を流体として流すことが可能に設けられている。
【0033】
流体源2は、供試弁10の一次側に設けられ、この流体源2の内部には検査用流体が蓄積されている。検査用流体は水素を含む高圧ガス(以降、水素ガスという)からなり、例えば5%H/95%Nの混合ガスが使用される。流体源2と供試弁10との間には、検査用流体の圧力を増圧するための増圧器11、流路を開閉して検査用流体を供試弁10に送給或は停止可能な一次側バルブ12、供試弁10の一次側の圧力を検知するための圧力計13がこの順序によって設けられ、これらを介して検査用流体が所望の圧力で供試弁10に供給可能に設けられる。
【0034】
供試弁10の二次側(弁座漏れ側)の測定用流路6は二方に分岐され、一方が弁座漏れ量の測定側、他方が圧力を低下させるベント側となっている。
【0035】
弁座漏れ量の測定側の流路には、流路開閉用の二次側バルブ14を介して、チューブ15、水上置換部3、細径管状体4が設けられる。
【0036】
水上置換部3は、円筒状の容器であるシリンジ20、水槽21を有している。
水槽21は装置本体1の底部に設けられた基台22上に取付けられ、この水槽21の内部には水Wが蓄積される。水槽21内の中央付近に、シリンジ20が水没状態で立設配置される。
【0037】
シリンジ20は、チューブ15を介して二次側バルブ14の二次側に接続される。これにより、水上置換部3は、供試弁10に水素ガスを供給したときにこの供試弁10からの漏れ流体Aを、チューブ15を通してシリンジ20内に送給可能になっている。シリンジ20は、チューブ15からの気泡状の個々の漏れ流体Aが内部で衝突・結合して大きな気泡になりやすい程度の小径に設けられ、本例では6mL(内径約φ11mm)の容量のシリンジが用いられる。また、前記チューブ15は、SUS製の1/8インチ(内径約φ1.77mm)サイズが用いられる。
【0038】
細径管状体4は、その内径がシリンジ20よりも小さく設けられ、その一端側が水槽21に水没されたシリンジ20の二次側に接続され、他端側が水槽21よりも上部に位置するように配置される。この細径管状体4は、図3の基台22上に固定された支柱23に位置保持用の固定具24を介して立設状態に取付けられ、この細径管状体4、及びシリンジ20が水槽21に対して所定位置に固定されている。
【0039】
細径管状体4は、所定の容量によりシリンジ20の二次側に接続部25を介して着脱可能に設けられ、図示しない外部のコンピュータに予め設定された計算プログラムを変更するだけで、細径管状体4を利用した幅広い漏れ量範囲の計測が可能になっている。接続部25は適宜の接続手段であればよく、例えば、螺合手段、或は嵌合手段による接続部25により、細径管状体4がシリンジ20に固定される。この接続部25により、細径管状体4とシリンジ20とを密封状態で容易に接続でき、その接続後にはこれらの内部が外部より密封された状態となる。
【0040】
本例における細径管状体4の内部容積は、例えば1mLに設けられ、この細径管状体4を用いた装置本体1による漏れ流体Aの最小測定量(分解能)は、0.02~0.03mL、最大測定量が約0.70mLになっている。内部容積の異なる細径管状体4を設けることもでき、この場合、径方向の断面積や高さを変えることにより各種の容量に設定できる。
【0041】
細径管状体4と前述したシリンジ20とを組合わせる場合、形状やサイズの適切な組合わせは、「計測する全漏れ量」、「チューブ15の内径」、「チューブ15から出てくる漏れ流体Aの気泡1個の大きさ」などを考慮した上で設定するようにする。この場合、気泡の大きさは、「使用する流体の性質」、「水の性質(例えば表面張力等)」などの要素が関係している。
【0042】
図2図4に示すように、細径管状体4の二次側の測定用流路6には、開閉操作可能な遮断用バルブ30、真空発生器31が接続される。真空発生器31は、細径管状体4側に真空を発生可能に設けられ、この真空発生器31により、弁座漏れ量の測定前にシリンジ20内の漏れ流体Aを細径管状体4に吸引し、細径管状体4やシリンジ20内を水Wで満たすことが可能になっている。そして、この状態で、チューブ15を介して細径管状体4内に送給される漏れ流体Aを、この細径管状体4内に移動させることが可能になっている。
【0043】
真空発生器31には圧縮エア供給部32が接続され、この圧縮エア供給部32から真空発生器31に圧縮エアが供給可能に設けられる。さらに、圧縮エア供給部32の反対側には排気・排水流路33が設けられる。真空発生器31と圧縮エア供給部32との間には流路開閉用の遮断弁34が設けられる。
【0044】
光電式センサ5は反射型透過センサよりなり、投光・受光用の一体形投受光部40、反射板41を有し、これらが略コ字に形成された保持板42の両側内面側に対向配置された状態で所定間隔に取り付けられる。保持板42は、基台22に支柱状の取付け部43を介して取り付けられた電動アクチュエータ43の所定位置に固定され、電動アクチュエータ44により上下動することで、光電式センサ5が上下動可能に設けられる。
【0045】
光電式センサ5において、図4の矢印に示すように、投受光部40の投光部位から光が放出可能に設けられ、このとき、投受光部40と反射板41との間の細径管状体4内に気体である漏れ流体Aが存在する場合には、放出された光が反射板41で反射されて受光部位により検知される。一方、同位置に水Wが存在する場合には、投光部位から放出された光がこの水Wにより屈折し、反射板41から受光部位に戻ってくる光の量が極端に少なくなったり、或は無くなったりする。このような光電式センサ5の検出強度の大小(及び検出の有無)を利用することで漏れ流体A或は水Wの存在を検知可能であり、これにより漏れ流体Aの長さが計測可能に設けられる。
【0046】
本例では、光電式センサ5が光を規定量検出したとき、すなわち細径管状体4内に漏れ流体Aが存在するときにオンとなり、光の検出量が少なくなったとき(或は無くなったとき)、すなわち細径管状体4内に水Wが存在するときにオフとなる。光電式センサ5のオンオフは任意に設定可能であり、光を規定量検出したとき、或は光の検出量が少なくなったり無くなったときの何れの場合をオンするようにしてもよい。
【0047】
装置本体1において、光電式センサ5を、保持板42を介して電動アクチュエータ44で上下方向に移動させることにより、吸引により細径管状体4に移動させた漏れ流体Aをこの細径管状体4の長さ方向に沿って図6(a)の長さHを計測可能になる。この計測により、供試弁10からの漏れ流体Aを高精度に算出することが可能になっている。
【0048】
前述した供試弁10の二次側の二方に分岐されたベント側にはベントバルブ45が設けられ、このベントバルブ45の開閉により、供試弁10の二次側から余分な流体を外部に逃がすことが可能になっている。
【0049】
なお、装置本体1は、自動操作或は手動操作が可能であり、自動操作の場合、供試弁10をセットした状態でスイッチを投入することで、流体源2からの検査用流体(水素ガス)の供給、各バルブの開閉動作、シリンジ20や細径管状体4への水Wの導入、光電式センサ5の動作などの各部の操作を自動化して、自動運転による弁座漏れ量の測定が可能となる。
【0050】
シリンジ20と二次側バルブ14とをチューブ15により接続しているが、チューブ15以外の送給手段により漏れ流体Aをシリンダ20に送るようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、漏れ流体Aの計測手段として光電式センサ5を用いているが、細径管状体4に図示しない目盛を設け、この目盛を読み取ることで漏れ流体Aの長さHを計測してもよい。この場合、1目盛を0.01mLとすれば、漏れ流体Aによる弁座漏れ量を高分解能で算出可能になる。
【0052】
供試弁10は、ボールバルブ以外の態様のバルブであってもよく、さらに高圧流体用バルブ以外のバルブを用いることもでき、供試弁10とするバルブの許容漏れ量に応じて細径管状体4の内部容積や目盛、最小測定量(分解能)を適宜設定することで、微小漏れから漏れ量の多い場合にも対応できる。
【0053】
図示しないが、水槽21に液面センサを設置し、水槽21内の水嵩が所定高さを下回ったときに、ポンプで水槽21内に水を供給するようにしてもよい。この場合、漏れ流体測定による吸引の繰り返しで水が排気されても、水槽21内の水量を漏れ量測定を実施可能な状態に維持できる。また、検査を実施しない期間が所定の長さに到達したときにポンプにより水槽21内に水を供給するようにしてもよい。これにより、長期間放置して汚れた水槽21内の水をオーバーフローさせて新鮮な水に交換することが可能となる。
【0054】
続いて、上述した装置本体1によるバルブの弁座漏れ量測定方法を説明する。図1においては、本発明のバルブの弁座漏れ量測定方法を示すフローチャートを示している。
図1の測定方法により、図2図4の装置本体1で弁座漏れ量を測定する場合には、先ず、装置本体1の測定用流路6の所定位置に、供試弁10の一、二次側を接続した状態にセットする。供試弁10は、作業者の手動により接続するが、自動化による接続も可能である。この状態で、一次側バルブ12を開状態、二次側バルブ14とベントバルブ45とを閉状態にし、供試弁10を開状態に操作する。
【0055】
次に、増圧器11を動作させ、供試弁10の一次側から流体源2内の水素ガスを、圧力計13を確認しつつ所定の検査圧力に昇圧させた状態で供試弁10に供給する。この場合、事前に図示しないコンピュータ(制御部)に接続されたモニターを有するタッチパネル(操作パネル)から、弁座漏れ量試験に用いる検査圧力を入力して設定しておく。検査圧力としては、例えば、98MPa、50MPa、1.0MPaなどがある。この検査圧力の数値や、弁座漏れ量の測定結果、及びこれら以外の各種情報はモニターに表示される。
供試弁10への水素ガスの供給後には、一次側バルブ12を閉状態にする。このとき、供試弁10内部に水素ガスが所定圧力で封入された状態となる。その後、増圧器11を停止させる。
【0056】
供試弁10を閉状態にしてから、ベントバルブ45を開状態に操作して大気圧と連通させた状態にし、供試弁10直後の図示しない二次側圧力計が大気圧になるまで保持する。大気圧になったら、ベントバルブ45を閉状態に操作する。
【0057】
一方、二次側バルブ14の閉状態で遮断用バルブ30を開状態に操作し、真空発生器31を動作させて細径管状体4内を吸引し、この細径管状体4、シリンジ20内に残留する気泡を真空引きにより排気・排水流路33より排出する。気泡の排出後には、遮断用バルブ30を閉状態にし、真空発生器31を停止させる。
【0058】
二次側バルブ14を開状態に操作する。これにより、図4図5(a)の状態で、弁閉状態の供試弁10から弁座漏れした水素ガスが矢印に示すようにチューブ15を介して漏れ量の測定側に送られる。
【0059】
漏れ流体Aはチューブ15を通過し、水上置換部3のシリンジ20内に送られる。シリンジ20は水槽21内に水没状態で立設配置されているため、チューブ15からの漏れ流体Aは、気泡状となってシリンジ20内の上部側に蓄積される。この場合、初めのうちは漏れ量の挙動が落ち着かないため、二次側バルブ14開操作後の所定時間における漏れ流体Aは外部に捨てるようにする。所定時間が経過したら、遮断用バルブ30を開状態にし、シリンジ20内に溜められた漏れ流体Aを真空排気する。これにより、不要な気泡が外部に排気され、その際、前回の漏れ量の測定等により細径管状体4に残されていた気泡も同時に排気される。このとき、遮断用バルブ30を開ける前に、二次側バルブ14を一旦閉めるようにすることが望ましく、この場合には漏れ流体Aの継続吸引を防止して、細径管状体4内を迅速に水Wのみで満たすことができる。
【0060】
上記により不要な気泡の真空排気を完了した後、光電式センサ5をその可動領域の最上部から最下部まで移動させて気泡の検出の無いことを確認する。そして、再度遮断用バルブ30を閉状態とすることで、漏れ量の測定を正確におこなうことが可能な状態となる。
【0061】
漏れ量の測定を開始する際には、遮断用バルブ30を開状態にし、真空発生器31を動作させて細径管状体4内を吸引させるようにする。これによって、シリンジ20内に蓄積された漏れ流体Aが細径管状体4に吸引され、この細径管状体4内で円筒状となりつつ少しずつ上方に移動する。図5(b)、図5(c)において、黒塗りの部分は気体状や気泡状の漏れ流体Aを示しており、図5(b)に示すように、漏れ流体Aが、細径管状体4の周囲に配置した光電式センサ5の投受光部40、反射板41の高さまで浮上したときに、この漏れ流体Aが検知される。このように漏れ流体Aが所定の高さまで到達した後に、遮断用バルブ30を閉状態とし、この漏れ流体Aを細径管状体4の上部で停止させることで更なる上昇を防ぐようになっている。
【0062】
細径管状体4内に吸引移動され、略円筒状となった状態で存在する気体状や気泡状の漏れ流体Aは、光電式センサ5によりその長さHが計測される。そして、この計測結果より、供試弁10の弁座漏れ量がコンピュータで高精度に算出されるようになっている。
【0063】
光電式センサ5による計測時には、図5(b)の漏れ流体A(気体)を検知した状態から、光電式センサ5がコンピュータ制御により電動アクチュエータ44を介して上昇し、図5(c)に示すようにその投受光部40と反射板41とが漏れ流体Aの上面よりも上方の水(液体)の位置まで移動した状態となる。
【0064】
続けて、光電式センサ5が細径管状体4の上部から下降し、漏れ流体Aの位置に達した時にこの漏れ流体Aを検知してオンの状態となり、さらに下降して漏れ流体Aの下部の細径管状体4内の水Wの位置に達するまでオンの状態を維持する。このときの光電式センサ5のオンの状態の継続により、略円筒状の漏れ流体Aの長さ(全長)Hが計測される。その際、例えば0.1mm単位で計測可能になっている。
光電式センサ5は、細径管状体4の水槽21の水Wに浸っていない、なるべく下方の所定位置まで下降する。これにより、漏れ流体Aが細径管状体4の中間や下部付近で停止した場合にも、この漏れ流体Aが確実に検知される。
【0065】
この漏れ流体Aの長さHの計測結果を用いて、コンピュータの計算プログラムにより供試弁10の弁座漏れ量が算出される。コンピュータ内には、予め測定に用いられる細径管状体4の高さ1mmあたりの内容積のデータが蓄積され、このデータと計測した漏れ流体Aの長さHから、「細径管状体4の高さ1mmあたりの内容積(mL/mm)×漏れ流体Aの長さH(mm)」の式により、漏れ流体Aの容積(mL)が弁座漏れ量として求められる。また、細径管状体の断面積をデータとしてコンピュータに蓄積し、この断面積を用いて、「断面積(mm)×漏れ流体Aの長さH(mm)÷1000」の式より漏れ流体Aの容積(mL)を求めるようにしてもよい。
【0066】
コンピュータによる弁座漏れ量の算出結果は、モニター上に表示され、例えば、予め設定した許容可能な弁座漏れ量以下の場合に「OK」、許容可能な弁座漏れ量よりも多い場合は「NG」と表示されたり、弁座漏れ量の数値が直接表示されるようになっている。
【0067】
図6(a)、図6(b)においては、細径管状体4の漏れ流体Aが含まれる部分の一部拡大断面図を示している。
図6(a)に示すように、細径管状体4内の漏れ流体Aをなす気泡Pが1つである場合には、その上端から下端までが漏れ流体Aの長さHとなり、この長さHを計測すればよい。
【0068】
一方、図6(b)に示すように、細径管状体に吸引した円筒状漏れ流体Aに水が混じったときには、漏れ流体Aの気泡Pが複数に分かれて2個以上存在することがある。この場合には、それぞれの気体状や気泡状の漏れ流体Aの長さを合計して算出するようにすればよい。図6(b)においては、3個の漏れ流体Aの気泡Pが存在するため、各漏れ流体Aの上端から下端までのそれぞれの長さH1、H2、H3を合計するようにする。
【0069】
その際、上述した漏れ流体Aの容積を求める計算式は、気泡Pの形状が円筒状であることが前提になっている。しかし、実際の細径管状体4内の気泡Pの上面と下面は、水の表面張力による毛細管現象からドーム状になることが多く、これにより、漏れ流体Aの気泡Pの数が多くなるにつれて計算式との誤差が大きくなる。そのため、漏れ流体Aの気泡Pの数は最大でも図6(a)に示すような3個までとすることが望ましい。本例の装置本体1では、4個めの漏れ流体Aの気泡が検知された時点で計測を中止され、弁座漏れ量測定が最初からやり直されるようにプログラムされている。
【0070】
本実施形態では、前述したように内部容積が1mLの細径管状体4を用い、光電式センサ5の可動範囲から約0.7mLまでの漏れ量を計測できるようになっている。漏れ流体Aの容量がより大きい場合には、細径管状体4に形状が近く、容量の大きい別の細径管状体に付け替え、予め変更した計算プログラムをコンピュータに設定しておくこともできる。これにより、弁座の微小漏れ量の測定はおろか、漏れ量範囲の広い(漏れ量の大きい)供試弁10の弁座漏れ量の測定も容易におこなうことが可能になっている。
【0071】
表1において、本発明の測定装置に使用可能な細径管状体4の容量と、各細径管状体4により測定可能な漏れ量並びにその測定精度の例を示す。表1は細径管状体4の例であって、表1以外にも、さまざまな容量の細径管状体4をシリンジ20に着脱可能に設けることができる。
【0072】
【表1】
【0073】
供試弁10の弁座漏れ量の測定後には、二次側バルブ14を閉状態、ベントバルブ45を開状態にし、供試弁10を開状態にする。これによって、供試弁10の一次側の測定用流路6の余分な流体がベントバルブ45を介して外部に排気される。
次いで、供試弁10を装置本体1から取外すようにすれば、この供試弁10の弁座漏れ量の測定が完了となる。供試弁10の測定用流路6への装着及び取外しは、手動又は自動によりおこなうことができ、自動化した場合には、供試弁10の弁座漏れ量の測定を連続的に実施できる。
【0074】
次に、本発明のバルブの弁座漏れ量測定方法及び弁座漏れ量測定装置の上記実施形態における作用を説明する。
図1図5において、本発明の弁座漏れ測定方法は、供試弁10からの漏れ流体Aである水素ガスを水上置換によりシリンジ20内に蓄積させているので、水Wに溶けにくい漏れ流体Aである水素ガスを高い純度でシリンジ20内に採取し、細径管状体4に移動できる。
【0075】
この場合、弁座から漏れ出た水素ガスを一定時間シリンジ20に溜めた後に、真空発生器31を介してシリンジ20から細径管状体4に吸引して移動させているため、水素ガスの全ての気泡を精度よく確実に捕集できる。そして、細径管状体4内の水素の全量を計測できるために、気泡の大きさのバラツキなどによる誤差の影響を受けることがなく、単位時間当たりに漏れ出した水素ガスを正確に計測して、供試弁10の弁座漏れ量を高精度に算出可能となる。
【0076】
上記のように内径のより大きいシリンジ20に水素ガスを溜めた後に、この水素ガスを吸引により細径管状体4に移動させていることで、細径管状体4内への水素ガスの移動も容易になる。シリンジ20と細径管状体4とを螺合や嵌合手段による接続部25で接続しているため、これらを容易にかつ正確に位置決め固定でき、接続後には漏れ流体A(水素ガス)の外部への漏れを防止している。
【0077】
細径管状体4内で略円筒状となった水素ガスの長さHを計測することでこの水素ガスの体積を正確に算出可能になり、しかも、細径管状体4の周囲に配置した光電式センサ5を用いて計測していることから、誤差やバラツキを抑えて高精度で測定できる。これにより、供試弁10から漏れ出る水素ガスの流量を例えば0.02~0.03mLの高分解能で計測可能になる。
【0078】
漏れ量の測定の自動化も可能になり、例えば24時間などの長時間の試験時間を必要とする場合でも、自動化により捕集した気泡を最後に一回計測するだけでよいため、長時間、常に計測をし続ける必要がなく測定が簡単になる。
【0079】
さらに、目盛を有するシリンジ20を用いるようにすれば、漏れ流体Aがシリンジ20に捕集された段階で、その漏れ量の大きさを目視によりある程度確認できる。これにより、仮に、漏れ流量が細径管状体4の最大測定量である約0.70mLよりも多い場合であっても、シリンジ20容量の6mLまでであれば、細径管状体4への吸引前の漏れ流体Aの体積を視認できる。
【0080】
上述した弁座漏れ量測定装置で計測した供試弁10は、例えば、水素ステーション用の高圧水素用バルブとして用いられる。
図7は、水素ステーションの一例を示し、この水素ステーションは、蓄圧器110、圧縮機111、ディスペンサ112、プレクール熱交換器113、迅速継手114、充填ホース115、充填ノズル116、車載タンク117の各ユニットを有し、これらユニットを介して高圧水素の供給ライン122が構成されている。
【0081】
供試弁は、各ユニットの間に、手動弁120又は自動弁121として設けられたり、或は圧縮機111内部の図示しない非圧縮流体の供給ライン等に配置され、車両の種類等に応じて、所定のプログラムにより高圧水素の供給のオンオフや供給量が制御可能に設けられている。
この場合、前述の測定装置によって弁座漏れ量を極わずかに抑えた供試弁を用いることにより、供給ライン122全体の圧力損失を大幅に抑えて、高精度の水素ステーションを構成することが可能になっている。
【0082】
本例の水素ステーションは、その本体側が自動車側よりも高圧であり、自動車接続側との差圧のみで水素充填がおこなわれる、いわゆる差圧充填式の構成であるが、これ以外にも、蓄圧することなく圧縮機から自動車に直接水素が充填される、いわゆる直充填式の構成の水素ステーションの供給ラインや各ユニット内部に供試弁を設けることもできる(図示せず)。
【0083】
本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。例えば、バルブの弁座漏れ量の測定以外にも、パイプや各種の内部に流路を有する機器等の漏れ量を測定する場合に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 装置本体
2 流体源
3 水上置換部
4 細径管状体
5 光電式センサ
10 供試弁
15 チューブ
20 シリンジ(容器)
A 漏れ流体
H 長さ
P 気泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7