(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】制御された柔軟性を備えるスパインを有する電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20220719BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018041570
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2020-12-25
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】サンウー・ミン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】マリサ・ボルハ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127920(JP,A)
【文献】特開2017-035484(JP,A)
【文献】特表2011-507656(JP,A)
【文献】特表2013-540563(JP,A)
【文献】特表平08-504333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0112128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
H05K1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学的カテーテルの電極アセンブリに用いるスパインであって、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コアの上に同軸に配設されたポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配された複数の電極とを備え、各電極は、前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は、前記スパインに沿って
前記長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に
異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償
し、
前記ポリマーカバーと前記柔軟性コアとの間に同軸に配設された充填材料を更に含み、
前記調整された量の材料は、前記スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて可変数の充填材料層を含み、
前記スパインの前記長さに沿った遠位位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った中間位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った近位位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記近位位置は、充填材料層を有さないか、又は、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数よりも少ない充填材料層の層数を有する、スパイン。
【請求項2】
前記調整された量の材料は、
前記スパインの前記長さに沿ったより均一な柔軟性を前記スパインに提供するように構成されている、請求項1に記載のスパイン。
【請求項3】
前記スパインの前記長さに沿った前記遠位位置には充填材料層を2層含み、
前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置には充填材料層を1層含み、
前記スパインの前記長さに沿った前記近位位置には充填材料層がない、請求項
1に記載のスパイン。
【請求項4】
各充填材料層はシュリンクフィットポリマーを含む、請求項
1に記載のスパイン。
【請求項5】
電気生理学的カテーテルの電極アセンブリに用いるスパインであって、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コアの上に同軸に配設されたポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配された複数の電極とを備え、各電極は、前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は、前記スパインに沿って前記長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償し、
前記柔軟性コアは、前記スパインの前記長さに沿った遠位位置から中間位置を経て近位位置まで、寸法が小さくなるテーパ形状を有する、スパイン。
【請求項6】
近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンとを有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端の電極アセンブリとを含むカテーテルであって、前記電極アセンブリは、前記カテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、前記スパインは、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有し、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は前記スパインに沿って
前記長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に
異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償
し、
前記ポリマーカバーと前記柔軟性コアとの間に同軸に配設された充填材料を更に含み、
前記調整された量の材料は、前記スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて可変数の充填材料層を含み、
前記スパインの前記長さに沿った遠位位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った中間位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った近位位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記近位位置は、充填材料層を有さないか、又は、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数よりも少ない充填材料層の層数を有する、カテーテル。
【請求項7】
近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンとを有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端の電極アセンブリとを含むカテーテルであって、前記電極アセンブリは、前記カテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、前記スパインは、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有し、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は前記スパインに沿って
前記長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に
異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償
し、
前記柔軟性コアは、前記スパインの前記長さに沿った遠位位置から中間位置を経て近位位置まで、寸法が小さくなるテーパ形状を有する、カテーテル。
【請求項8】
バスケット形状電極アセンブリとして構成された、近位端と遠位端で連結された複数のスパインを更に含み、前記バスケット形状電極アセンブリは、前記スパインが半径方向の外方に湾曲する膨張配置と、前記スパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配置される畳み込まれた配置とを有する、請求項
6または7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記複数のスパインはレーザカットされた材料のチューブから形成されるフレーム構造を含む、請求項
8に記載のカテーテル。
【請求項10】
スパインの柔軟性を制御するための方法であって、
前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有するスパインを設けることであって、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有する、ことと、
前記スパインを構成する材料の量を前記スパインに沿って
前記長手方向に調整し、前記スパインに沿っ
て異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償することと、を含
み、
前記ポリマーカバーと前記柔軟性コアとの間に同軸に配設された充填材料を更に含み、
前記調整された量の材料は、前記スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて可変数の充填材料層を含み、
前記スパインの前記長さに沿った遠位位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った中間位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数は、前記スパインの前記長さに沿った近位位置における充填材料層の層数より多く、前記スパインの前記長さに沿った前記近位位置は、充填材料層を有さないか、又は、前記スパインの前記長さに沿った前記中間位置における充填材料層の層数よりも少ない充填材料層の層数を有する、方法。
【請求項11】
スパインの柔軟性を制御するための方法であって、
前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有するスパインを設けることであって、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有する、ことと、
前記スパインを構成する材料の量を前記スパインに沿って
前記長手方向に調整し、前記スパインに沿っ
て異なる数のリード線が存在することによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償することと、を含
み、
前記柔軟性コアは、前記スパインの前記長さに沿った遠位位置から中間位置を経て近位位置まで、寸法が小さくなるテーパ形状を有する、方法。
【請求項12】
前記材料の量を調整することは、前記スパインに、
前記スパインの前記長さに沿ったより均一な柔軟性を提供する、請求項
10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学的(EP)カテーテルに関し、詳細には、心臓におけるマッピング及び/又はアブレーションに対応したEPカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学カテーテルは、通常、心臓中の電気的活性のマッピングのために使用される。異なる目的のための様々な電極の設計が知られている。具体的には、バスケット形状の電極アレイを有するカテーテルが既知であり、例えば、米国特許第5,772,590号、同第6,748,255号、及び同第6,973,340号に記載されている。なお、当該特許文献のそれぞれの全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。バスケットカテーテルは通常、細長いカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に装着されたバスケット形状の電極アセンブリとを有する。バスケットアセンブリは、近位端と遠位端とを有し、その近位端と遠位端とに接続された、複数のスパインを備える。それぞれのスパインは、少なくとも1つの電極を備える。バスケットアセンブリはスパインが半径方向に外方に湾曲する膨張配置と、スパインがカテーテル本体の軸に概ね沿って配置される畳み込まれた配置とを有する。更に複数の電極を有する1つ又は2つ以上のスパインを特徴とする、別の電極アセンブリ構成を使用してもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,961,602号は、マルチレイ電極アセンブリを記載しており、このマルチレイ電極アセンブリは、それらの近位端で取り付けられるが自由な遠位端を有する2つ以上のスパインを有し、スパインが所望する形状又は構成をとり、調査又は治療されている解剖学的構造を形成している患者の組織により容易に接触し、あるいは患者の組織に隣接して配置されることを可能にする。
【0003】
電極アセンブリは、左心房又は右心房のような電極アセンブリが配備される領域の電気的機能を、単一拍動を含む可能な限り少ない拍動で検出可能であることが望まれる。したがって、適切な電極アセンブリを設計することにおける目標は、バスケット形状又は他の構成を使用するか否かにかかわらず、アセンブリが可能な限り多くの電極から電気信号を効率的かつ正確に記録するために意図する展開形状を確実にとることである。心臓中の電気的活性のより完全な画像はアレイ内の密度電極を増加することで得られることもまた理解される。しかし、各電極はそれ自体のリード線を必要とするため、比較的多数の電極に必要なケーブル配線はスパインの柔軟性に著しく影響し、電極アセンブリに準最適な展開形態をとることをもたらす。この影響は、温度センサ、位置センサ等を含む電極アセンブリに含まれてもよい他の構成要素用の配線を含む必要性によって悪化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、以下の材料に記載される本開示の技術は、スパインの柔軟性を制御するため電極アセンブリのスパイン剛性の変動を補償するのに役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、電気生理学的カテーテルの電極アセンブリで用いるスパインに関する。スパインは、スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、柔軟性コア上に同軸に配設されたポリマーカバーと、ポリマーカバーの上でスパインに沿って長手方向に分配された複数の電極とを含んでもよく、各電極はスパインの近位端に延びる少なくとも1つの関連するリード線を有する。スパインを構成する材料の量は、スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じるスパインに対する柔軟性の変化を補償するため、スパインに沿って長手方向に調整されてもよい。
【0006】
1つの態様では、調整された量の材料は、長さに沿ってより均一な柔軟性をスパインに供給するように構成されてもよい。
【0007】
1つの態様では、スパインは、スパインの長さに沿った近位位置に比べて遠位位置に、相対的により多くの材料を有することができる。
【0008】
1つの態様では、スパインは、材料の量の調整を可能にするために、ポリマーカバーと柔軟性コアとの間で同軸に配設された充填材料を有することができる。例えば、調整された量の材料は、スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて、充填材料の可変数の層であってもよい。スパインの長さに沿った近位位置に比較して、遠位位置でより多くの充填材料の層が存在してもよい。1つの実施形態では、遠位位置には充填材料の2つの層があり、中間位置には充填材料の1つの層があり、近位位置には充填材料の層がない。
【0009】
1つの態様では、充填材料の各層はシュリンクフィットポリマーであってもよい。
【0010】
1つの態様では、調整された量の材料はテーパ構造的構成要素であってもよい。
【0011】
更に本開示は、近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンを有する細長いカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端の電極アセンブリとを有するカテーテルに関し、電極アセンブリはカテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、スパインはスパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、ポリマーカバーの上でスパインに沿って長手方向に分配される複数の電極を有し、各電極はスパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、スパインを構成する材料の量はスパインに沿って長手方向に調整され得て、スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じるスパインに対する柔軟性の変化を補償する。
【0012】
1つの態様では、カテーテルは、バスケット形状電極アセンブリとして構成される、近位端と遠位端で連結された複数のスパインを有することができ、バスケット形状電極アセンブリは、スパインが半径方向の外方に湾曲する膨張配置と、スパインがカテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配置される畳み込まれた配置とを有する。複数のスパインは、レーザカットされた材料のチューブから形成されたフレーム構造であってもよい。
【0013】
更に、本開示はスパインの柔軟性を制御する方法を含む。方法は、スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、ポリマーカバーの上でスパインに沿って長手方向に分散される複数の電極を有するスパインであって、各電極はスパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有するスパインを供給することと、スパインを構成する材料の量をスパインに沿って長手方向に調整し、スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じるスパインに対する柔軟性の変化を補償することとを含んでもよい。
【0014】
1つの態様では、材料の量は、長さに沿ってより均一な柔軟性をスパインに供給するように調整されてもよい。
【0015】
1つの態様では、材料の量を調整することは、スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて、充填材料層の数を変えることを含んでもよい。材料の量を変えることは、スパインの長さに沿った近位位置に比較して遠位位置において充填材料のより多くの層を供給することを含んでもよい。
【0016】
更に本開示は、治療方法を含む。この方法は、近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンを有する細長いカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端の電極アセンブリとを有するカテーテルであって、電極アセンブリはカテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、スパインはスパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、ポリマーカバーの上でスパインに沿って長手方向に分配される複数の電極を有し、各電極はスパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、スパインを構成する材料の量はスパインに沿って長手方向に調整され得て、スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じるスパインに対する柔軟性の変化を補償するカテーテルを供給することと、電極アセンブリを有するカテーテルの遠位端を、少なくとも1つのスパインがカテーテル本体の長手方向軸に沿って概ね整列する畳み込まれた配置にある状態で患者内の所望する領域に前進することと、電極アセンブリを、少なくとも1つのスパインが膨張配置をとる膨張配置にさせることであって、膨張配置は調整された量の材料によってもたらされるスパインの柔軟性に少なくとも部分的に基づくこととを含んでもよい。電気信号は、組織と接触する少なくとも1つの電極から受信され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
更なる特徴及び利点は、添付図面に例示するように、本開示の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。添付図面の同様の参照記号は、概して、図全体を通じて同一の部分又は要素を示す。
【
図1】一実施形態による、本発明のカテーテルの平面図である。
【
図2】一実施形態による、制御された柔軟性を有するスパインの概略図である。
【
図3】一実施形態による、スパイン用のテーパ柔軟性コアの概略図である。
【
図4】一実施形態による、スパイン用のテーパ管状部材の概略図である。
【
図5】一実施形態による、バスケット形状電極アセンブリ用のフレーム構造及び制御された柔軟性を有するスパインを概略的に示す端図である。
【
図6】一実施形態による、
図5に示されたスパインの遠位位置の断面図である。
【
図7】一実施形態による、
図5に示されたスパインの中間位置の断面図である。
【
図8】一実施形態による、
図5に示されたスパインの近位位置の断面図である。
【
図9】一実施形態による、左心房内に配備される、制御された柔軟性を備えたスパインを有するバスケット形状電極アセンブリの概略図である。
【
図10】一実施形態による、制御された柔軟性を備えたスパインを有する電極アセンブリを用いる侵襲性医療処置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本開示の実践又は実施形態には、本明細書に記載されている選択肢と類似の又は等価ないくつかの選択肢を用いることが可能であるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載されている。
【0019】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0020】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態は、これらの具体的な詳細なしでも実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に示される例示的実施形態の新しさを明確にするために、周知の構造及び装置がブロック図形式で示される。
【0021】
単に便宜的及び明確さの目的で、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側などの方向を示す用語が、添付の図に関して使用されることがある。これら及び類似の方向を示す用語は、本開示の範囲をいかなる意味でも制限すると見なされるべきではない。
【0022】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0023】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0024】
心室内での特定の種類の電気的活性は周期的ではない。例としては、動脈粗動又は動脈細動、及び梗塞から生じた心室壁の瘢痕に起因する心室性頻拍が挙げられる。かかる電気的活性は、1心拍ごとに不規則である。この種類の電気的活性を解析する、つまり「マップ」するには、1心拍内など可能な限り迅速に「全体像」を把握することが望ましい。したがって、一実施形態では、マップ、つまり全体像の全てのポイントは、10分の1秒以内に同時に取得することができる。このような操作を容易にするために、この電気的活性を正確にマップするために、患者の心臓の解剖学的構造に密接に適合する電極アセンブリを使用し得る。更に、電気的活性マップの分解能は、増加した密度を有する電極アレイを使用することにより改善され得る。
【0025】
本開示の態様の例示を助けるため、
図1は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の近位端部に制御ハンドル14と、を備え、複数のスパイン18を有し、それぞれが複数の電極20を担持する複数のスパイン18を有するバスケット形状の電極アセンブリ16がカテーテル本体12の遠位端部に取り付けられている、電気生理学カテーテル10を模式的に示す。カテーテル本体12は、単一の軸方向ルーメン、つまり中央ルーメン(図示せず)を有する、細長い管状構造を備えるが、所望により、任意追加的に複数のルーメンを有することもできる。電気信号の正確なマッピングを可能にするには、例えば、1回という少ない拍動で右房又は左房の電気的機能の大部分又はその実質的に全てを検出するには、比較的高密度の電極アレイを提供することが望ましいことがある。したがって、用いるスパイン18の数は、8、10、12、又は任意の好適な数であってよい。スパイン18は、径方向に均一に又は不均一に分布してよい。更に、各スパイン18は、スパインあたり少なくとも10個及び最大約16個の電極など、複数の電極20を含んでよい。更に多くの電極もまた可能である。同様に、電極は、スパインに沿って均一に分配するか、又は測定される電気信号の分析を容易にするために近位、中央、若しくは遠位に偏在させることができる。
【0026】
畳み込まれた配置のとき、スパインはガイド用シースなどによって拘束されてもよく、ガイド用シースを引っ張って、スパインを畳み込まれた配置から膨張展開配置にたわませてもよい。上記の内容から分かるように、畳み込まれた配置では、スパイン18は、外径を最小にして患者内に挿入し患者から引き出すために、カテーテル本体12と概ね直線状の配列をとる。膨張配置では、バスケット形状電極アセンブリ16のスパイン18は外方に湾曲する。患者内の所望の位置に位置決めされたとき、膨張配置になることによって、電極16は、バスケット形状電極アセンブリ10が位置決めされたチャンバ又は他の領域の壁と接触又は接近してもよい。バスケット形状電極アセンブリ10の全体サイズは、右心房や左心房などの調査又は治療される患者の部位にぴったりと合うように、患者の解剖学的構造に基づいて選択されてもよい。
【0027】
バスケット形状電極アセンブリ16では、スパイン18の遠位端は合わせて固定されており、かつ所望により引張部材22に取り付けられてよく、この引張部材はカテーテル本体12と概ね同軸であり、カテーテル本体12の近位端から中央ルーメンを通って延在している。引張部材は、カテーテル本体に対して長手方向の運動を可能にし、したがって、スパイン18の遠位端をカテーテル本体12に対して近位に移動させて、電極アセンブリを半径方向に膨張させることができる。スパイン18の近位端は、カテーテル本体12に固定され得るため、スパイン14の遠位端と近位端との間の間隔は、引張部材22の近位方向への相対的運動により短縮され得て、スパイン18を外方に湾曲し、膨張配置をとらせる。いくつかの実施形態では、スパイン18は、以下に述べるような形状記憶材料の使用による等、拘束されていない場合に想定される事前成形された膨張配置を有することができ、引張部材を必要としない。
【0028】
この開示の態様はバスケット形状電極アセンブリ16のコンテキストで説明されるが、本技術は、例えば心臓のチャンバ又は血管小孔のような患者の解剖学的構造により画定される三次元空間を占めるために電極アレイを供給するのに適合するスパインを特徴とする任意の電極アセンブリに適用されてもよい。したがって、電極アセンブリの膨張配置は、
図1に示される略球状であり得るが、楕円形、卵形、半球状等の構成は所望により使用されてもよい。同様に、別の電極アセンブリは、更に患者の解剖学的構造に適合するように構成された所望の形状での展開を容易にする事前成形された膨張配置を有し得るアレイの電極を担持している1つ又は2つ以上のスパインを有してもよく、スパインの遠位端が自由である上述のマルチレイ電極アセンブリを含む。膨張配置は、電極と標的組織との間に十分な接触を確立するのに役立ち得る。バスケット形状又は他の設計が用いられるか否かにかかわらず、電極アセンブリの、その意図する膨張配置をとり、患者の解剖学的構造に適合しようとする能力は、スパインの柔軟性に基づく。本明細書で用いられるように、用語「柔軟性」及び「剛性」は、スパインの相対的なコンプラインスを指すために交換可能に用いられ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、形状記憶材料を用いて、膨張配置及び畳み込まれた配置をとることを補助してもよい。例えば、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金を使用してよい。ニチノール製ワイヤは、体温にて可撓性かつ弾性である。大部分の金属と同様、ニチノール製ワイヤは、最小限の力を受けて変形し、力の不在下で本来の形状に戻る。ニチノールは、形状記憶合金(SMA)と呼ばれる材料クラスに属し、可撓性及び弾性以外にも形状記憶及び超弾性など興味深い機械的特性を有する。このため、ニチノールは、その温相に依存する「記憶形状」を有することができる。オーステナイト相はニチノールのより強い、より高い温度相であり、単純な立法晶構造を有する。超弾性挙動は、この相(50~60℃の温度の広がりにわたって)で生じる。それに応じて、マルテンサイト相は比較的弱く、より低い温度相であり、双晶構造を有する。ニチノール材料がマルテンサイト相内にあるとき、比較的容易に変形し、変形した状態で留まる。しかしながら、そのオーステナイト遷移温度を超えて加熱すると、ニチノール材料は変形前の形状に戻り、「形状記憶」効果をもたらす。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を開始する温度は、「As」温度と呼ばれる。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を完了した温度は、「Af」温度と呼ばれる。したがって、このような材料で形成された場合のバスケット形状電極アセンブリ16のような電極アセンブリは、ガイド用シースの中に送り込まれるように畳み込まれ、その後、ガイド用シースの除去及び/又は引張部材の作動における患者の所望する領域への送達によりその膨張形状記憶構成に容易に戻ることができる三次元形状を有し得る。1つの例示的な実施形態では、いくつか又は全てのスパイン18を含むフレーム構造は、レーザカット又は他の同様の技術によりニチノールハイポチューブから形成して、モノリシックなフレーム構造を提供することができる。実施形態により、約8~9ミルの壁厚を有する3mmチューブが用いられ得る。代替的な実施形態は必ずしも形状記憶特性を必要としないが、膨張配置及び畳み込まれた配置をとるのに十分な弾性を有する他の材料を用いることができ、ステンレス鋼のような金属材料又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のようなポリマー材料を含む。
【0030】
本開示の実施形態では、各スパイン(バスケット形状電極アセンブリ16のスパイン18のような)は、通常は数個の複数の電極を含む。対応して、各電極は、カテーテルに結合された器具による記録及び処理のためにカテーテルを介して電極で受信された電気信号を導くため、それ自体のリード線(複数可)を必要とする。スパインは、ポリマーチューブ内に同軸に配設された、形状記憶ワイヤのようなコア基質を用いて形成されてもよい。例えば、単一スパイン18は
図2で詳細に示され、ポリマーカバー26内に同軸に配設される柔軟性コア24を形成するため、記載された基質材料を用いて構築されてもよい。電極20は、リング電極として構成されてもよく、例えば、溶接、はんだ付け、又は1つ又は2つ以上のリード線と電気接続を形成する方法と共にクリンピング等によりポリマーカバー26の上に固定されてもよい。対応して、各リング電極20は、スパイン18に沿って長手方向に設置され、少なくとも1つの対応するリード線に連結されてもよい。各電極20は、少なくとも1つのリード線を有するため、スパイン18に沿う断面には、断面に対して遠位位置にある電極20に対応する全てのリード線を含む。同様に、配線を必要とするカテーテル本体12によって担持され得る任意の他の構成要素もまた、任意の近位位置にリード線を有する。例えば、1つ又は2つ以上の位置センサ28(
図1に示すように)は、患者内のカテーテルの可視化に役立つために、カテーテル本体12の遠位端に対して既知の位置にあり得る。温度センサ、接触センサ、アブレーション電極等を含む様々な他の構成要素は、カテーテル10によって展開され得る。結果として、所与の位置におけるリード線の数は、電極及び構成要素がスパイン18の長さに沿って分配されるとすれば、その相対的な長手方向位置に直接関連する。
【0031】
遠位位置と比較してスパインに沿った近位位置に比較的多くのケーブル配線が存在すると、スパイン18の柔軟性はその長さに沿って著しく変化を生じ得る。したがって、遠位位置及び近位位置で充填された断面の量は、スパイン18の剛性に著しく影響するのに十分に異なってもよい。対応して、本開示の技術は、スパイン18の柔軟性をその長手方向の長さに沿って制御することに関する。1つの態様では、これは、近位位置と遠位位置との間の剛性の差を減じるために、より均一なコンプライアンスプロファイルを作ることを含んでもよい。一般に、スパイン18に沿った所与の長手方向位置に供給される材料の量は、遠位電極とその位置に存在し得る構成要素のためのケーブル配置の量を補償するのに役立つように調整され得る。例えば、結果として生じるスパイン18の剛性により均一性を与えるために、その長さに沿った近位位置に対して遠位位置に相対的により多くの材料が存在し得る。しかしながら、実施形態に応じて、その長さに沿って可変コンプライアンス特性を示すスパインを利用することが有利であり得る。例えば、柔軟性は、電極アセンブリが配備される空間の見込寸法が所与される場合に、電極20の1つ又は2つ以上を組織と接触して保持する力を供給するのに役立つように調整され得る。このように、異なる相対的な長手方向位置でスパイン18を形成するのに用いられる材料の量は、所望の剛性を達成するように調整され得る。
【0032】
1つの態様では、材料の量の適切な調整は、柔軟性コア20及び/又はポリマーチューブ22を含む任意のカバーを含んでもよい基質のような、スパイン18を形成する構造的構成要素の1つ又は2つ以上を調整することで達成され得る。テーパの程度、方向及び位置は、所望のコンプライアンスプロファイルに依存してもよい。再び、より均一な柔軟性を達成するコンテキストにおいて、テーパは遠位位置での相対的に大きな寸法から近位位置での相対的に小さな寸法であり得る。スパイン18の長手方向寸法に沿った材料の量を調整することは、所望に応じて各々テーパであり得る1つ又は2つ以上の材料の層を追加することを含み得る。例示としてのみで、限定するものではないが、
図3は、テーパ柔軟性コア24の一部分を長手方向断面で概略的に示し、
図4は、テーパ管状部材30の一部分を断面でもまた概略的に示し、それはポリマーカバー26の代わりに用いられてもよく、又は柔軟性コア24とポリマーカバー26との間のような、スパイン18の上に同軸に配設される追加の構造的構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーカバー26のようなスパイン18の外側構成要素は、電極20を均一にするのを可能にするため比較的一定の外径を示すように構成されてもよく、取り付けを容易にして、電気信号の一貫した測定を確実にするのに役立つ。
【0033】
構成要素のテーパリングがより複雑な製造プロセスを表すことができるとすれば、スパイン18の長手方向に沿って適切な材料の1つ又は2つ以上の層を加えることにより材料の量を調整することが所望されてもよい。各層は相対的に一定の厚さを有するが、材料の量は長手方向位置に応じて層を含むか省略することで調整されてもよい。各層は同じ又は異なる厚さを有してもよい。したがって、材料の量は、再度、スパイン18に沿った長手方向位置に応じて、複数の層を積み重ねることでも調整され得る。一例として、
図5は、バスケット形状電極アセンブリ16を作るのに用いられるフレーム構造32の端図を概略的に示し、上述のように、形状記憶合金のような適切な材料のチューブからレーザカットされてもよい。遠位ハブ34は、チューブの無処置部分により形成され得て、その結果、スパイン18の遠位端は一緒に固定される。明瞭化のため、この実施形態の12個のスパイン18のうちの1つのみの延長部分が、柔軟性コア24の上に同軸に配設されたポリマーカバー26を備えて示される。更に、これらの図は、正確な縮尺率ではなく、様々な構成要素間の関係を単に示すことを意図する。上述のように、充填材料36の1つ又は2つ以上の層は、スパイン18の長さに沿った様々な位置に供給されてもよく、スパイン柔軟性の所望する制御を達成する。一例では、充填材料36の層はシュリンクフィットチューブから形成され得るが、他の適切な材料も使用され得る。この実施形態では、ポリマーチューブ22の遠位端は、密閉されてもよく、更に点線で示される、短い長さのシュリンクフィット材料38でフレーム構造42に固定されてもよい。
【0034】
本開示の技術により、スパインの長さに沿って供給される材料の量は、長手方向位置に応じて充填材料36の層を選択的に加えることにより調整され得る。例えば、
図6は、最も遠位の電極位置でのラインA-Aに沿うスパイン18の断面を示す。対応して、最も遠位の電極20aに関連する単一リード線40が示される。この実施形態では、充填材料36の2つの層は、この位置で柔軟性コア24の上に配設される。比較のために、
図7は、第3の最も遠位の電極20bの位置であるラインB-Bに沿うスパイン18の断面を示す。示すように、リード線40は、この電極に接続され、一方、2つの追加のリード線は2つの更に遠位の電極に結合して存在する。この実施形態では、充填材料36の1つの層は、この位置で柔軟性コア24の上に配設される。更に、
図8は、第15電極の近位位置でラインC-Cに沿ったスパイン18の断面を示し、15個のリード線40が存在する。この実施形態では、充填材料は柔軟性コア24のこの部分に沿って省略される。
図5~
図8を参照して説明された構成は、1つの実施形態のみであり、層なしを含む、任意の所望の数の充填材料層が、可変する長手方向位置で用いられ、生じるスパインに所望する柔軟性特性を達成することができることを理解されたい。更に、この実施形態は、一般にスパイン18の長さに沿ったより均一な柔軟性を供給することに関するが、別の実施形態では、材料の量は所望に応じて可変するコンプライアンスプロファイルを供給する方法で調整され得る。
【0035】
本開示の技術による電極アセンブリのスパインの剛性により大きな制御を加えることで、アセンブリは意図する膨張配置をより容易にとることが可能になり得る。1つの態様では、これは患者の解剖学的構造により密接に適合することを含み得る。更にこれらの技術は、スパインの畳み込み又はスパイン柔軟性における望ましくない変動による捩れの可能性を減少することで電極アセンブリの安全プロファイルを改善し得る。
【0036】
カテーテル本体12は、可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さ方向に沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。1つの構造は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)で形成された外壁を有する。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、そのため、制御ハンドル14が回転されると、カテーテル本体の遠位端部がそれに対応する方式で回転するようになっている。カテーテル本体12の外径は重要ではないが、一般に可能な限り小さくし、所望の用途に応じて約10フレンチ以下であってもよい。同様に、外壁の厚さは重要ではないが、中央ルーメンが引張ワイヤ、リード線ワイヤ、センサケーブル及び任意の他のワイヤ、ケーブル又はチューブを収容できるのに十分に薄い。所望により、外壁の内部表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性が改善される。本発明と関連して使用する上で好適なカテーテル本体の構造物の例は、米国特許第6,064,905号に記載及び図示されており、同特許の全開示内容は本明細書において参照により援用されている。
【0037】
一態様では、電気生理学医は、当該分野において一般に知られているように、ガイド用シース、ガイドワイヤ、及び拡張器を患者の体内に導入することが可能である。本発明のカテーテルに関連して使用するのに好適なガイド用シースの例は、PREFACE(商標)編組ガイド用シース(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,CA)から市販されている)及びDiRex(商標)ガイド用シース(BARD(Murray Hill,NJ)から市販されている)である。ガイドワイヤを挿入し、拡張器を取り除き、カテーテルをガイドシースを通じて導入すると、それにより、プラー内のガイドワイヤルーメンが、カテーテルがガイドワイヤの上を通過することを可能にする。
図9に図示する1つの例示的方法では、カテーテルは、下大静脈(IVC)を通って右房(RA)に最初に導入され、左房(LA)に到達するために、隔膜(S)を通過する。
【0038】
上記の内容から分かるように、カテーテル全体が患者の脈管系を通って所望の位置に到達できるように、ガイドシース42が、畳み込まれた配置にあるバスケット形状の電極アセンブリ16のスパイン18を被覆する。引張部材は、提供された場合、アセンブリがガイド用シースに通されている間にアセンブリのスパインを平らにできるように、カテーテル本体の遠位に位置決めされてもよい。カテーテルの遠位端が所望の位置、例えば左房に到達すると、ガイド用シースは引き抜かれて、バスケット形状電極アセンブリ16が露出する。引張部材が存在する場合、スパイン18が遠位接合部と近位接合部との間で外方に撓むように、移動範囲を通って近位側に引かれてもよく、操作されてもよい。代替的に又は追加で、バスケット形状電極アセンブリ16は、スパイン18の事前成形された特性により、ガイド用シース42を抜去することで膨張配置をとることができる。いずれの構成でも、バスケット形状電極アセンブリ16は、上述の技術により与えられたスパイン柔軟性への制御のため、その意図された膨張配置をより確実にとることができる。バスケット形状電極アセンブリ16が径方向に膨張した状態で、リング電極20が心房の組織と接触する。バスケット形状電極アセンブリ16が膨張配置にある場合、電気生理学医は、患者を診断し、治療を施す際に電気生理学医を誘導できる電極20を使用して、局所活動時間をマッピングし、かつ/又は焼灼を行うことができる。カテーテルは、カテーテル本体に装着された1個若しくは2個以上の基準リング電極を含んでもよく、かつ/又は1個若しくは2個以上の基準電極を患者の身体の外部に配置してもよい。バスケット形状の電極アセンブリ上に複数の電極を有する本発明のカテーテルを使用することにより、電気生理学医は、心房など心臓の洞領域の、真の解剖学的構造を得ることができ、従来のカテーテルよりも少ないポイントを測定することで、この領域をより迅速にマップすることができる。
【0039】
図10は、バスケット形状電極アセンブリ16の使用法を図示しやすくするための、本発明の実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。カテーテル10は、遠位端に、制御された柔軟性を備えたスパインを有するバスケット形状の電極アセンブリ16(この図では図示なし)を備え、近位端に、それぞれの電極20(この図で示されていない)からのワイヤを、検出された信号を記録し解析するためのコンソール52に結合するコネクタ50を有してもよい。電気生理学医54は、患者56にカテーテル10を挿入することによって、この患者の心臓58から電極電位信号を取得することができる。この専門家は、挿入を実施するために、カテーテルに取り付けられた制御ハンドル14を使用する。コンソール52は、受信信号を解析する処理装置60を含んでよく、コンソールに取り付けられたディスプレイ62に、解析結果を表示することができる。この結果は典型的に、信号から誘導されたマップ、数値表示、及び/又はグラフの形式である。
【0040】
更なる態様では、処理装置60はまた、
図1に概略的に示すように、バスケット形状電極アセンブリ16に隣接するカテーテル10の遠位端付近に設置された、1個又は2個以上の位置センサ28からの信号を受信することができる。このセンサは、1個の磁場応答コイル又は複数個のかかるコイルをそれぞれ備えてよい。複数のコイルを使用することにより、六次元位置及び向き座標を決定できる。したがって、センサは、外部コイルからの磁場に応答して電気位置信号を生成し、それによってプロセッサ60が、心臓腔内におけるカテーテル10の遠位端の位置を判定すること(例えば、位置及び向き)を可能にする。次いで、電気生理学医は、ディスプレイ62において、患者の心臓画像上のバスケット形状電極アセンブリ16の位置を確認することができる。例として、この位置検出法は、Biosense Webster Inc.社(カリフォルニア州ダイアモンドバー)製のCARTO(商標)システムを使用して実行してよく、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/005768(A1)号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に開示されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。理解されるように、他の位置検出法も用いることができる。所望により、少なくとも2個の位置センサがバスケット形状電極アセンブリ16の近位及び遠位に位置し得る。近位センサに対する遠位センサの座標を測定してよく、バスケット形状電極アセンブリ16のスパイン18の曲率に関する他の既知の情報と共に使用して、電極20のそれぞれの位置を検出する。
【0041】
上記の説明文は、現時点において開示されている本発明の実施形態に基づいて示したものである。本発明が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施しうる点は認識されるであろう。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺どおりではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載及び例示される正確な構成のみに関連したものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するものとされる特許請求の範囲と一致し、かつこれを支持するものとして読まれるべきである。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 電気生理学的カテーテルの電極アセンブリに用いるスパインであって、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コアの上に同軸に配設されたポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配された複数の電極とを備え、各電極は、前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は、前記スパインに沿って長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償する、スパイン。
(2) 前記調整された量の材料は、前記長さに沿ったより均一な柔軟性を前記スパインに提供するように構成されている、実施態様1に記載のスパイン。
(3) 前記調整された量の材料は、前記スパインの前記長さに沿った近位位置に比べて遠位位置に相対的に多くの材料を含む、実施態様2に記載のスパイン。
(4) 前記ポリマーカバーと前記柔軟性コアとの間に同軸に配設された充填材料を更に含む、実施態様1に記載のスパイン。
(5) 前記調整された量の材料は、前記スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて可変数の充填材料層を含む、実施態様4に記載のスパイン。
【0043】
(6) 前記スパインの前記長さに沿った近位位置に比べて遠位位置により多くの充填材料層が存在する、実施態様5に記載のスパイン。
(7) 遠位位置には充填材料層を2層含み、中間位置には充填材料層を1層含み、近位位置には充填材料層がない、実施態様6に記載のスパイン。
(8) 各充填材料層はシュリンクフィットポリマー(shrink fit polymer)を含む、実施態様5に記載のスパイン。
(9) 前記調整された量の材料はテーパ構造的構成要素を含む、実施態様1に記載のスパイン。
(10) 近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンとを有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端の電極アセンブリとを含むカテーテルであって、前記電極アセンブリは、前記カテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、前記スパインは、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有し、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は前記スパインに沿って長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償する、カテーテル。
【0044】
(11) バスケット形状電極アセンブリとして構成された、近位端と遠位端で連結された複数のスパインを更に含み、前記バスケット形状電極アセンブリは、前記スパインが半径方向の外方に湾曲する膨張配置と、前記スパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配置される畳み込まれた配置とを有する、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記複数のスパインはレーザカットされた材料のチューブから形成されるフレーム構造を含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) スパインの柔軟性を制御するための方法であって、
前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コア上に同軸に配設されるポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有するスパインを設けることであって、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有する、ことと、
前記スパインを構成する材料の量を前記スパインに沿って長手方向に調整し、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償することと、を含む、方法。
(14) 前記材料の量を調整することは、前記スパインに、前記長さに沿ったより均一な柔軟性を提供する、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記材料の量を調整することは、前記スパインに沿った相対的な長手方向位置に応じて充填材料層の数を変えることを含む、実施態様13に記載の方法。
【0045】
(16) 前記材料の量を調整することは、前記スパインの前記長さに沿った近位位置に比べて遠位位置により多くの充填材料層を提供することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 治療のための方法であって、
近位端と遠位端と内部を通る少なくとも1つのルーメンとを有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端の電極アセンブリとを有するカテーテルを提供することであって、前記電極アセンブリは、前記カテーテル本体に連結された近位端を有する少なくとも1つのスパインを含み、前記スパインは、前記スパインの長さにわたって延在する柔軟性コアと、前記柔軟性コアの上に同軸に配設されたポリマーカバーと、前記ポリマーカバーの上で前記スパインに沿って長手方向に分配される複数の電極とを有し、各電極は前記スパインの近位端に延在する少なくとも1つの関連するリード線を有し、前記スパインを構成する材料の量は、前記スパインに沿って長手方向に調整され、前記スパインに沿った異なる相対的な長手方向位置に存在する電極リード線の数を変えることによって生じる前記スパインに対する柔軟性の変化を補償する、ことと、
前記電極アセンブリを有する前記カテーテルの前記遠位端を、前記少なくとも1つのスパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に沿って概ね整列する畳み込まれた配置にある状態で患者内の所望する領域に前進させることと、
前記電極アセンブリを、前記少なくとも1つのスパインが膨張配置をとる膨張配置にさせることであって、前記膨張配置は前記調整された量の材料から生じる前記スパインの柔軟性に少なくとも部分的に基づいている、ことと、を含む、方法。
(18) 組織と接触する前記少なくとも1つの電極から電気信号を受信することを更に含む、実施態様17に記載の方法。