(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】自動改札システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20220719BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20220719BHJP
【FI】
G06Q50/30
G07B15/00 B
(21)【出願番号】P 2018048797
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593092482
【氏名又は名称】JR東日本メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅川 智彦
(72)【発明者】
【氏名】溝口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】深津 智威
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公信
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴規
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157107(JP,A)
【文献】特開2007-114848(JP,A)
【文献】特開2009-087290(JP,A)
【文献】特開2017-228011(JP,A)
【文献】特開2019-046354(JP,A)
【文献】特開2007-241853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が保有する乗車媒体に記憶されている情報もしくは人体の特徴を情報として読み取り可能な情報読取手段と、
ネットワーク通信手段と、を備えた複数の改札機と、
ネットワーク通信手段を備え、前記情報読取手段により読み取られた情報を受信し
、受信した情報に基づきそれぞれ異なる演算プログラムで運賃または利用料金の演算処理を行う3以上の処理ユニット
を有するサーバと、
が通信ネットワークを介して通信可能に接続されている自動改札システムであって、
前記サーバは
、前記3以上の処理ユニットによる
それぞれの演算結果を突合
して、所定の判定
ロジックに従って
前記乗車媒体を保有する利用者の改札機の通過可否に関する判定を
プログラム処理によって行う判定手段を備え、当該判定手段による判定結果および前記演算結果を当該サーバが備える前記ネットワーク通信手段により前記通信ネットワークを介して前記改札機
へ送信するように構成され、
前記改札機は、前記情報読取手段によって読み取られた情報と当該改札機の固有情報とを当該改札機
が備える前記ネットワーク通信手段により
前記通信ネットワークを介して前記サーバへ送信し、
前記サーバより前記判定手段による判定結果
および前記演算結果を受信し
、受信した前記判定結果および前記演算結果に応じてゲート扉または報知手段を制御して当該改札機を通過許可状態または通過不可状態にするように構成され
、
前記所定の判定ロジックは、前記3以上の処理ユニットの演算結果が一致または前記3以上の処理ユニットのうち応答のなかった処理ユニットを除く他の複数の処理ユニットの演算結果が一致した場合に前記演算結果の運賃を確定することであることを特徴とする自動改札システム。
【請求項2】
前記サーバは、
前記演算結果または前記判定結果に関する取扱いを設定可能な取扱い設定手段を有し、前記演算処理または前記判定手段による前記判定において前記取扱い設定手段により設定されている取扱いに応じた処理を実行し、
前記判定結果には、無効、有効、判定不能、再判定要求が含まれ、
前記サーバは、前記設定されている取扱いに応じて前記判定結果が有効の場合は前記演算結果の運賃を確定して判定結果と共に前記改札機へ送信し、前記判定結果が無効または判定不能の場合は当該判定結果を前記改札機へ送信し、前記判定結果が再判定要求の場合は応答がなかった判定手段へ再判定の要求を返す処理を実行し、
判定結果が有効であることを受信した改札機は当該改札機を通過許可状態にし、判定結果が無効または判定不能であることを受信した改札機は当該改札機を通過不可状態にすることを特徴とする請求項1に記載の自動改札システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記改札機より送信されて来た情報に基づく
前記演算処理を、前記
3以上の処理ユニットに対して振り分ける振り分け手段を備え、
前
記判定手段は、前記振り分け手段による振り分けに応じて
前記演算処理を実行した
3以上の処理ユニットによる
それぞれの演算結果に基づいて
、前記乗車媒体を保有する利用者の改札機の通過可否に関する判定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動改札システム。
【請求項4】
複数の路線区間のそれぞれに対応して設けられた前記サーバを複数備え、前記複数のサーバは通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されており、
前記複数のサーバの前記振り分け手段は、前記路線区間に対応した運賃または利用料金の演算処理を他の前記サーバに振り分ける機能を有し、
振り分けを行った前記サーバの前記判定手段は、前記複数のサーバの演算結果を突合して演算および判定を行い、当該演算結果および判定結果を、前記通信ネットワークを介して対応する前記改札機へ送信し、
前記演算結果
および前記判定結果を受信した
前記改札機は、
受信した前記演算結果および前記判定結果に応じて
ゲート扉または報知手段を制御して当該改札機を通過許可状態または通過不可状態にするように構成されていることを特徴とする請求項
3に記載の自動改札システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動改札システムや自動精算システムのような乗車媒体(ICカード等)の情報あるいは人体の特徴を情報として使用して入出場管理を行う駅入出場管理システムに関し、特に運賃や利用料金などの演算・決定処理の実行を伴う自動改札システムに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカード対応型の自動改札機においては、ICカードの認証、利用経路の判定、精算金額の演算、精算などの処理が行われている。従来の自動改札機においては、これらの処理を、改札機に内蔵されている判定ボードによって行うように構成されている。
この判定ボードには、判定プログラムや運賃データなどが格納されたメモリが搭載されているが、メモリが故障したり回路基板上で短絡等の電気的異常が生じたりすると、正確な判定を行うことができなくなり、誤判定が発生する。
【0003】
そこで、ハードウェアの一部に発生した不具合による誤判定に基づいて改札処理が行われるのを防止するようにした発明が提案されている(特許文献1)。この特許文献1の発明においては、乗車媒体から読取った乗車券情報に対して、メインCPUボードと判定CPUボードとで同じ判定ロジックによる判定処理を実行し、それらの判定結果が一致しなかった場合に、判定結果が異常であると判断し改札処理を中断するようにしている。しかしながら、この発明は、ハードウェアの不具合には対応できるものの、2つのボードで同じ判定ロジックによって判定処理を行うため、判定ロジックそのものに不具合があった場合には対応できないという問題がある。
【0004】
そこで、改札機に設けられたリーダライタが読み取った乗車媒体の情報に基づき、通行可否、精算経路、精算金額の各判定項目について判定する判定ボードと、この判定ボードとは別の判定ロジックにより上記各判定項目について判定する判定ボードとを設け、2つの判定ボードの判定結果を判定項目ごとに比較し、それぞれの判定項目についての判定結果がすべて一致する場合は、その一致した通行可否の判定結果に基づき通行許可または通行禁止の処理を行い、判定結果のいずれかが不一致である場合は、係員への案内処理を行うようにした発明が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-185210号公報
【文献】特開2008-4019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されている発明は、判定ロジックの不具合に起因する誤判定による運賃の誤収受を回避することができるものの、各々判定ロジックが異なる複数の判定ボードを各自動改札機に内蔵する必要があるため、自動改札機のコストが高くなるという課題がある。また、運賃の改定などがあった場合には、すべての自動改札機に内蔵されているすべての判定ボードに記憶されている運賃データを修正する必要があり、データの更新に非常に多くの手間と時間を要するという課題がある。
【0007】
しかも、鉄道利用者が複数の鉄道事業者の線区をまたがって移動した場合には、他の事業者の線区の運賃も演算しなくてはならないが、他の事業者で運賃の改定や演算方法の変更があった場合や新駅が設けられた場合にも自動改札機内の判定ボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要があり、更新の頻度が高くなるという課題がある。
また、これまでの運賃突合に関する先行特許出願に係る発明では、自動改札機側において処理できる突合数は2種類までで、かつ、その判定処理は固定的(画一的)なものであった。つまり、従来の発明では、2種類以上のN種類での突合は想定されていなかった。さらに、突合結果に基づく最終的な判定に関しても、
図5のような処理フローや「取扱い設定」のような、多様なケースに対応できる柔軟な仕組みを持たず、画一的な判定のみで、柔軟な取扱いが出来ないことが課題の一つであった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、運賃の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合にも、改札機内のボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要がなく、短期間に変更に対応できる自動改札システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、誤演算による運賃の誤収受のリスクの低い自動改札システムを提供することにある。また、他の目的は、複数の処理ユニットの結果に応じた判定処理のハンドリング(取扱い設定)を柔軟に行えることを可能にすることにある。さらに、同等の仕組みを採用する複数の自動改札システムを横断した併算処理についても、判定に対する信頼性を高く維持しつつ、また段階的かつ柔軟にシステム拡張を可能にすることを目的とする。
本発明のさらに他の目的は、改札機の改修コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願に係る発明は、通信手段と、情報読取手段により読み取られた情報を受信して、入出場可否判断を行う複数の処理ユニットと、通信ネットワークを介して改札機へ判定結果を送信する判定手段と、を備えたサーバと、
利用者が保有する乗車媒体に記憶されている情報もしくは人体の特徴を情報として読み取り可能な情報読取手段と、通信手段と、を備え、前記情報読取手段によって読み取られた情報と当該改札機の固有情報とを当該改札機の前記通信手段により前記サーバへ送信し、前記判定手段による判定結果を受信して通過許可状態または通過不可状態にするように構成した複数の改札機と、が通信ネットワークを介して通信可能に接続されている自動改札システムである。
【0010】
ここで、「乗車媒体」とは鉄道やバスなどの交通機関を利用する際の認証のために使用するICカードのような専用乗車媒体の他、そのようなICカードを内蔵した携帯端末あるいは機器が有する通信機能とソフトウェアとの協働で乗車媒体としての機能を有する汎用の携帯端末が含まれる。また、「処理ユニット」の「演算」には、論理積などの論理演算処理や判定処理などの処理が含まれる。
上記のように構成された自動改札システムによれば、運賃や料金を演算する処理ユニットがサーバ側に設けられているため、改札機側で運賃や料金の演算をする必要がない。そのため、運賃や料金の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合にも、自動改札機内のボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要がなく、短期間に変更に対応することが期待できるとともに変更に伴い発生するコストを低減することが期待できる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記サーバは、2つ以上の複数の処理ユニットの演算結果を突合可能で、その突合結果に応じた判定を可能とする機構を有し、かつ、それらの結果に対応する取扱い設定を柔軟に定義できるものとする。
【0012】
かかる構成によれば、複数の処理ユニットの演算結果の突合結果に基づく判定方式を採用できることで、誤演算による運賃の誤収受のリスクが低く、また、演算結果に対応する取扱い設定を柔軟に定義できることで、ロバスト性の高い自動改札システムを実現することができる。また、処理ユニットからの応答を所定時間に制限しているので、必要な処理時間内に改札処理を実施することができる。
前記予め設定されている取扱いとしては、例えば応答のない処理ユニットを除く複数の処理ユニットによる演算結果がすべて一致したことなどがある。
【0013】
また、望ましくは、前記サーバは、前記改札機より送信されて来た情報に基づく入出場可否の判断を、前記複数の処理ユニットに対して振り分ける振り分け手段を備え、
前記判定手段は、前記振り分け手段による振り分けに応じて演算処理を実行した複数の処理ユニットによる演算結果に基づいて判定を行うように構成する。
【0014】
さらに、望ましくは、前記サーバは、
複数の自動改札システムに対して、振り分ける振り分け手段を備え、
所定のロジックで入出場可否を判断する複数の処理ユニットを自動改札システムごとに備えるとともに、その結果を総合的に判断する判定手段を備え、その判断結果を改札機へ送信する。
そして、前記サーバは、自動改札システムごとに算出された運賃を合算して対応する前記改札機へ送信し、合算した運賃を受信した改札機は前記乗車媒体に対して通過を許可する。
【0015】
上記のように構成することにより、いずれかの自動改札システムにおいて運賃の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合に、当該自動改札システムの処理ユニットのみデータやプログラムを修正すればよく、他の自動改札システムの処理ユニットのデータやプログラムを修正する必要がないので、相互に影響を及ぼすことが無い。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動改札システムによれば、運賃の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合にも、改札機内のボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要がなく、個々の改札機に対して行う変更に比べ、短期間での変更に対応できる。また、誤演算による運賃の誤収受のリスクの低い自動改札システムを実現することができる。さらに、本発明によれば、改札機の改修コストを低減することが期待できるという効果がある。
【0017】
また、運賃突合に関する先行特許出願に係る自動改札機の発明においては自動改札機側で処理できる突合数が2種類の突合までで、かつ、その処理結果は固定的(画一的)なものであったが、本発明によれば、突合判定を行う数もフレキシブルで2種類以上の組合せが可能となる。また、突合結果については各「取扱い設定」を採用することで、固定的(画一的)ではない判定を行なえかつこれらと同様の仕組みを他自動改札システムにも採用し、自動改札システム間で組み合わせ、総合判定を行う仕組みを採用することで、併算が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】自動改札システムの一実施形態のシステム構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】実施形態における自動改札システムを構成する其々の処理サーバの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る自動改札システムにおいて実施される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の自動改札システムを構成する総合判定サーバにおいて実施される処理の一例の概要を示す図である。
【
図5】
図3のフローチャートのステップS16において実施される総合判定処理の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の自動改札システムの第1の変形例を示すブロック図である。
【
図7】実施形態の自動改札システムの第2の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る自動改札システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る自動改札システムの一実施形態のシステム構成の概略を示す。
図1に示すように、本実施形態の自動改札システムは、複数の自動改札システムの各駅に設置されている複数の自動改札機10A,10B,……と、複数の自動改札システムの改札業務を統合的に管理する統合改札管理システム20とが、通信ネットワーク30を介してデータ通信可能に接続されている。
【0020】
自動改札機10A,10B,……は、それぞれ乗車媒体に記憶されている情報(媒体ID)を非接触で読み取るリーダライタと、読み取った情報を当該自動改札機の識別コードと共に送信する通信手段を備えている。ここで、乗車媒体としては、ICチップを内蔵したICカードや、2次元バーコードを印刷した切符、改札機へ乗車情報を送信可能な通信手段あるいは2次元バーコードを表示可能な表示手段を備えた携帯端末などであっても良い。また、カードの情報を読み取るリーダライタの代わりに、人体の特徴を生体情報として読み取る装置を用いても良い。
【0021】
統合改札管理システム20は、自動改札機10A,10B,……により乗車媒体から読み取られたID(識別コード)に基づいて正規の乗車媒体であるか否か認証する処理ユニットからなる認証サーバ21と、所定のルールに従って運賃、料金(以下、運賃等と記す)の演算処理を振り分ける振り分けサーバ22と、運賃等の演算処理を実行する複数の処理ユニットU-A~U-Nを備えた処理サーバ23と、処理サーバ23の各処理ユニットU-A~U-Nからの演算結果を突き合わせて総合的な判定を行う総合判定サーバ24などから構成されている。
【0022】
振り分けサーバ22は、基本的には、例えば利用者が自動改札システムXの区間と自動改札システムYの区間と自動改札システムZの区間にまたがって乗車した場合には、自動改札システムXの利用区間の運賃等の演算を処理ユニットU-Aに実行させ、自動改札システムYの利用区間の運賃等の演算を処理ユニットU-Bに実行させ、自動改札システムZの利用区間の運賃等の演算を処理ユニットU-Cの複数のユニットに実行させる。そして、処理ユニットU-A~U-Cにおける演算結果は総合判定サーバ24へ送信され、総合判定サーバ24は所定の判定ロジックに従った通過可否の判定および演算結果の合算を行う。
【0023】
認証サーバ21は、発行済みの乗車媒体のIDを記憶するデータベース25を備えており、通信ネットワーク30を介して受信した自動改札機10A,10B,……からのIDとデータベース25内のIDとを照合して入出場の可否を判定して、結果を対応する自動改札機へ送信する。
処理サーバ23は、自動改札システムごとに運賃等の演算処理を行うサーバであり、振り分けサーバ22の設置場所と同一の場所(改札業務処理センター等)に設置されていても良いし、物理的に離れた位置にあるプライベート型クラウドプラットフォーム上に構築されたものであっても良い。なお、後者の場合、振り分けサーバ22と処理サーバ23との間、および総合判定サーバ24と処理サーバ23との間は通信ネットワーク30を介して接続される。
【0024】
処理ユニットU-A~U-Nは、各々異なる演算プログラムA,B,……Nによって自動改札システムごとに運賃等の演算処理を行うように構成されている。なお、すべての処理ユニットが互いに異なる演算プログラムによって処理を行うように構成されている必要はなく、全体として複数の異なる演算プログラムによって処理を行うようにされていれば、幾つかの処理ユニットが同一の演算プログラムで処理を行うように構成されていても良い。
【0025】
図2には、処理サーバ23の構成例が示されている。
図2の実施例においては、自動改札システムごとに振り分けサーバ22A,22B,22Cと処理サーバ23A,23B,23Cと総合判定サーバ24A,24B,24Cが設けられている。
図2に示すように、処理サーバ23A,23B,23Cは、各々異なる演算プログラムA,B,……Nによって処理を行う複数の処理ユニットU1-A,U1-B,……U1-N;U2-A,U2-B,……U2-M;U3-A,U3-B,……U3-Lによって構成されている。
【0026】
振り分けサーバ22A,22B,22Cは、基本的には、例えば利用者が自動改札システムXの区間と自動改札システムYの区間と自動改札システムZの区間に跨って乗車した場合には、自動改札システムXの利用区間の運賃等の演算を処理サーバ23Aの複数のユニットに実行させ、自動改札システムYの利用区間の運賃等の演算を処理サーバ23Bの複数のユニットに実行させ、自動改札システムZの利用区間の運賃等の演算を処理サーバ23Cの複数のユニットに実行させる。そして、処理サーバ23A,23B,23Cにおける演算結果は総合判定サーバ24A,24B,24Cへ送信され、さらに総合判定サーバ24Aに統合され、所定の判定ロジックに従った通過可否の判定および演算結果の合算を行う。
【0027】
なお、振り分けサーバ22Aは、運賃等の演算処理を振り分ける際に、同一の運賃演算を各処理サーバ23A,23B,23C内のすべての処理ユニットに実行させるように振り分けても良いし、1つの処理サーバ内の所定数(例えば3台)の処理ユニットに実行させるように振り分けても良い。また、
図2には、自動改札システムの数が「3」の場合が示されているが、自動改札システムの数はこれに限定されるものでない。
図2に示されているシステムにおいては、いずれかの1つの振り分けサーバ(例えば振り分けサーバ22A)が中心となって他の振り分けサーバ(22B,22C)へ処理を振り分けて、結果を総合判定サーバ(24A)で受け取る様子が示されているが、振り分けサーバ22A以外の振り分けサーバ22Bまたは22Cが中心となって他の振り分けサーバへ処理を振り分けて、結果を総合判定サーバ24Bまたは24Cで受け取る場合もある。
【0028】
次に、本実施形態の自動改札システムにおける処理の手順について、
図3のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の実施例では、乗車媒体がICカードである場合を例にとって説明する。
先ず、いずれかの自動改札機10に乗車媒体としてのICカードがかざされると、リーダライタによってICカードに記憶されている情報(カードID等)が読み取られる(ステップS1)。次に、自動改札機10の通信手段によって、ICカードから読み取った情報が、当該自動改札機の固有情報としての識別コードおよびICカードのステータスデータと共に認証サーバ21へ送信される(ステップS2)。
【0029】
認証サーバ21が自動改札機10からの情報を受信すると(ステップS3)、データベースを参照して利用できるICカードであるか否かの認証を行う(ステップS4)。この「認証」においては、入場に最低限必要な残高があるなど、入場に必要な条件を満たすか否かの判定を行うようにしても良い。また、ICカードに駅への入場記録があるか否かに基づいて入場か出場かを判定する。そして、認証サーバ21が認証結果(入場/出場の判定結果を含む)を自動改札機10へ返送し、自動改札機10が認証結果を受信する(ステップS5,S6)。
すると、自動改札機10が認証結果を解読し(ステップS7)、認証結果が「不可」(No)の場合には自動改札機10は利用者の通過を不可とする(ステップS8)。具体的には、例えば改札機もしくはその前方に設置されているゲート扉を閉じたり、赤ランプを点灯もしくは音声を出力したりするなどして通過を禁止する。なお、認証サーバ21は、ICカードから読み取った情報のうちカード残高をチェックして所定金額以下である場合にも、「認証不可」の判定結果を自動改札機10へ返送するようにしても良い。
【0030】
一方、ステップS7で認証結果が「可」である(Yes)と判定される、すなわち認証対象となるICカードのIDが利用不可のID(ネガティブID)では無く、かつ入場に最低限必要な残高があるなどの入場に必要な条件を満たすと、自動改札機10は、入場の場合(ステップS9:Yes)には、ステップS9aへ進み、ICカードに入場情報を記録しかつ「入場可」とする。また、出場の場合(ステップS9:No)には、ステップS18へ進む。
一方、認証サーバ21は、ステップS5で自動改札機10へ認証結果を送信した後、ステップS10へ進み、当該ICカードに関するステータスデータを振り分けサーバ22へ送信し、振り分けサーバ22によってステータスデータが受信される(ステップS11)。ここで、ステータスデータとは、ICカードのID、入場駅の駅名もしくは駅コード、出場駅の駅名もしくは駅コード、カード残高等のデータである。また、ステータスデータに入場時刻と出場時刻を含ませるようにしても良い。
【0031】
続いて、振り分けサーバ22は、所定の振り分けルールに従って、運賃等の演算処理を各自動改札システムの処理サーバ23A,23B,23Cの処理ユニットU1-A,U1-B,……U1-N;U2-A,U2-B,……U2-N;U3-A,U3-B,……U3-Nに振り分ける(ステップS12)。この際、振り分けサーバ22は、ICカードのIDと自動改札システムごとの演算対象の対象区間の開始駅と終了駅の情報を付加して運賃等の演算を指示する。すると、演算を振り分けられた処理ユニットは、受け取った情報を用いて運賃等を演算する(ステップS13)。
その後、処理ユニットによる演算結果が総合判定サーバ24へ送信され(ステップS14)、総合判定サーバ24によって演算結果が受信される(ステップS15)。すると、総合判定サーバ24は、所定の判定ロジックに従って総合的な判定を行い(ステップS16)、判定結果および確定された運賃等のデータを対応する自動改札機10へ送信する(ステップS17)。
【0032】
次に、自動改札機10が判定結果を受信し(ステップS18)、判定が「不可」(ステップS19;No)の場合には自動改札機10は通過不可とする(ステップS20)。一方、ステップS19で判定結果が「可」である(Yes)と判定されると、自動改札機10は、カード残高から受信した運賃等を減算した金額を新たな残高データとしてICカードに書き込み(ステップS21)、利用者の通過を許可する(ステップS22)。以上の手順によって改札処理が終了する。
【0033】
なお、ICカードに残高データを書き込む際に、入場駅の駅名、出場駅の駅名、入場時刻、出場時刻を履歴情報として書き込むようにしても良い。また、総合判定サーバ24が運賃データを送信する代わりに、残高から運賃等を差し引いた金額を算出して、その金額データを対応する自動改札機10へ送信するようにしても良い。
上記のように、運賃等の演算を行うサーバを設けることによって、自動改札機の処理負担を軽減しコストの低減も期待することができるとともに、運賃等の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合にも自動改札機内のボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要がなく、短期間に変更に対応できるという利点がある。
【0034】
次に、ステップS16で行われる総合判定処理の一例について説明する。
図4には、本実施形態の自動改札システムにおける判定ロジックの一例の概念が示されている。なお、
図4には、一例として利用者が2つの自動改札システムX,Yの路線を利用して移動した場合の運賃等の
判定ロジックが示されているが、3つの自動改札システムX,Y,Zの路線を利用して移動した場合も考え方は同じである。また、
判定ロジックを、後述の「取扱い設定」で
図4に示す以外のものに設定できるようにしても良い。
【0035】
図4には、自動改札システムXの処理サーバ23A内の3つの処理ユニットA,B,C(例えば処理ユニットU1-A,U1-B,U1-C)と自動改札システムYの処理サーバ23B内の3つの処理ユニットA,B,C(例えば処理ユニットU2-A,U2-B,U2-C)に運賃の演算が振り分けられた場合が示されている。なお、以下の説明では、運賃、料金を「運賃」として説明する。
本実施形態における判定ロジックに従うと、上記の場合において、自動改札システムXの3つの処理ユニットA,B,Cの結果がすべて一致すれば一致した運賃等を自動改札システムXの利用区間の運賃Fxとして確定するとともに、自動改札システムYの3つの処理ユニットA,B,Cの結果がすべて一致すれば一致した運賃を自動改札システムYの利用区間の運賃Fyとして確定し、両方の運賃を合算したもの(Fx+Fy)を精算運賃として決定する。
【0036】
また、
図4(A)に示すように、自動改札システムXの3つの処理ユニットA,B,Cのうち2つの処理ユニット(例えばAとB)の結果が一致し、所定時間内に残りの処理ユニット(例えばC)からの応答がなかった場合にも、応答なしを除く2つの処理ユニットの一致した運賃を自動改札システムXの利用区間の運賃として確定する。自動改札システムYの3つの処理ユニットA,B,Cにおいても同様である。
一方、3つの処理ユニットA,B,Cの結果が不一致であった場合や、例えば
図4(B)に示すように、自動改札システムXの3つの処理ユニットA,B,Cのうち2つの処理ユニット(例えばAとB)の結果が不一致で処理ユニットCからの応答がなかったような場合には、NG(演算不能)とする。その他の応答結果に対する判断の仕方については、後に説明する。
【0037】
上記のような判定ロジックを採用することで、利用者が複数の自動改札システムの路線を利用して移動した場合に、速やかに合計した精算運賃を算出して改札処理を行うことができる。また、完全一致によらず改札処理を行うため、改札機の通過が拒否される事態(改札ゲートの遮断)が発生する回数を減らし利用者に対する利便性を向上させることができる。
ここで、処理ユニットからの応答なしが発生する原因としては、演算プログラムのアルゴリズムの違いによりいずれかの処理ユニットにおける演算時間が長く所定時間内に応答できない場合や、プログラムのバグにより演算が中断される場合、応答が正常に出来ないというエラーとしての応答(NACK等)があった場合などが考えられる。
【0038】
次に、ステップS16で行われる総合判定処理の具体的な手順の一例を、
図5を用いて説明する。
総合判定処理が開始されると、先ず処理サーバ23A~23Cについて全ての判定手段(処理ユニット)からの応答があったか否か判定する(ステップS61)。そして、全ての応答があった(Yes)と判定すると、ステップS62へ進み、予め設定されている取扱い(取扱い設定)に合致するか否か判定する。ここで、「取扱い設定」には、例えばすべての判定結果が、高額(例えば100,000円)のように明らかに間違っている場合などがある。そして、ステップS62で、「取扱い設定」に合致していない(No)と判定すると、ステップS63へ移行して「判定不能」として処理する。
【0039】
一方、ステップS62で「取扱い設定」に合致している(Yes)と判定すると、ステップS64へ進んで、全ての判定結果(演算結果)が合致しているか否か判定する。ここで、全ての判定結果が合致している(Yes)と判定すると、ステップS65へ進み、合致した判定結果を採用する。また、ステップS64で、判定結果が合致していない(No)と判定すると、ステップS66へ移行して、予め設定した取扱い(取扱い設定)に合致するか判断する。
ここで、「取扱い設定」とは、例えばA駅からB駅までの移動経路が2つあった場合にはキロ程(距離)が短い方の経路を利用したとみなして演算する(設定1)とか、同一経路に対する運賃が異なる場合に差額が所定額(例えば30円)以内であれば安い方を採用して演算する(設定2)などが考えられる。
【0040】
上記ステップS66で、「取扱い設定」に合致したと判断すると、合致した設定1に基づく判定結果αまたは設定2に基づく判定結果βを採用し(ステップS67,S68)、いずれの「取扱い設定」にも合致しない(No)と判断すると、「判定不能」として処理する(ステップS69)。
また、上記ステップS61で、「No」すなわち少なくとも1つの判定手段(処理ユニット)からの応答がないと判定すると、ステップS70へ移行して、全ての判定手段(処理ユニット)からの応答がなかったのか判定する。そして、「No」すなわちいずれかの判定手段(処理ユニット)からの応答がないと判定すると、ステップS71へ進んで、予め設定されている「応答がない場合の取扱い設定」に該当するか否か判断する。
【0041】
ここで、「取扱い」とは、例えば応答があった判定手段(処理ユニット)の判定結果(例えばα)が「取扱い設定」に合致した場合にその判定結果を有効とする(設定3)とか、応答がなかった判定手段(処理ユニット)へ再判定の要求を返す(設定4)とか、応答があった方の演算結果を含めて無効とする(設定5)とかが考えられる。ステップS71で、予め設定されているいずれかの「取扱い」に該当した場合、該当した「取扱い設定」に対応して、判定結果αを採用(ステップS72)、または再判定要求(ステップS73)を実行し、「無効とする」(設定5)に該当した場合あるいはいずれの「取扱い設定」にも該当しない場合(No)には判定不能とする処理(ステップS74)を実行する。
【0042】
一方、上記ステップS70で、全ての判定手段(処理ユニット)からの応答がなかった(Yes)と判定すると、ステップS75へ進んで、予め設定されている「応答がない場合の取扱い設定」に該当するか否か判断する。
ここで、「取扱い設定」とは、例えば全ての判定手段(処理ユニット)へ再判定の要求を返す(設定6)とかが考えられる。ステップS75で、予め設定されている「取扱い設定(設定6)」に該当した場合には再判定要求(ステップS76)を実行し、「取扱い設定」に該当しない場合(No)には判定不能とする処理(ステップS77)を実行する。なお、再判定要求の取扱いを設定する上記「設定4」や「設定6」に相当する再判定要求の設定内容には上限リトライ回数を含ませ、リトライ回数が上限に達した場合に判定不能とするようにしても良い。
【0043】
なお、上記実施例では、例えば振り分けサーバ22により運賃演算が振り分けられた複数の処理ユニットのうち応答なしを除く複数の処理ユニットの演算結果が一致した場合にその演算結果を利用区間の運賃として決定することを許容している(
図4(A),
図5のステップS70)が、代わりに、多数決処理で、一致したものが多い運賃を利用区間の運賃として確定する判定ロジックを採用するようにしても良い。また、上記実施例では、振り分けサーバ22により運賃演算が振り分けられた複数の処理ユニットのうち応答なしを除く複数の処理ユニットの演算結果が一致しなかった場合に不可(NG)としている(
図4(B),
図5のステップS70)が、代わりに、多数決処理で、一致しなかった場合に不可(NG)とするようにしても良い。
【0044】
また、このような多数決論理を採用する場合、各処理ユニットの信頼性を機械学習によって学ばせて、得られた信頼性に基づいて各処理ユニットに優先順位を与え、優先順位の低い処理ユニット同士の演算結果が一致したとしても優先順位の高い処理ユニット同士の演算結果が一致しなかった場合には不可(NG)とし、優先順位の高い処理ユニット同士の演算結果が一致した場合にその演算結果を利用区間の運賃として確定するようにしても良い。これにより、誤演算による運賃の誤収受のリスクの低い自動改札システムを実現することができる。
【0045】
次に、
図6および
図7を用いて上記実施形態の自動改札システムの変形例について説明する。
図6および
図7のうち
図6は第1の変形例を、また
図7は第2の変形例を示す。
図6に示されている第1の変形例の自動改札システムは、自動改札機10A,10B,……に、ICカードなどの乗車媒体から読み取られたID(識別コード)に基づいて正規の乗車媒体であるか否か認証する機能を持たせることによって、
図1の自動改札システムにおける認証サーバ21を省略したものである。自動改札機における認証は、例えば有効な乗車媒体には共通のコードを記憶させておいて、そのコードを読み取ることで行えるようにすることができる。この変形例によれば、前記実施形態の自動改札システムに比べて自動改札機とサーバとの間の通信回数を減らすことが期待できるため、改札処理に要する時間を短縮することができる。
【0046】
図7に示されている第2の変形例の自動改札システムは、自動改札機10A,10B,……と共に、精算機40を、通信ネットワーク30を介してサーバ21、22、24と通信できるように構成し、自動改札機とサーバとの間で行なっている上述したような処理を精算機40とサーバとの間でも行なえるようにしたものである。この変形例によれば、従来の精算機に比べて精算機の処理負担を軽減しコストを低減することが期待できるとともに、運賃の改定や演算方法の変更、駅の増設があった場合にも精算機内のボードに記憶されているデータや演算式を修正する必要がなく、短期間に変更に対応できるという利点がある。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、振り分け処理により運賃演算が振り分けられた複数の処理ユニットのうち応答なしを除く複数の処理ユニットの演算結果が一致した場合にその演算結果を利用区間の運賃として確定する判定を総合判定サーバ24で行なっているが、このような判定は処理サーバ23側で行うようにしても良い。
【0048】
また、前記実施形態では、乗車駅と降車駅との間に複数の経路がある場合、振り分けサーバ22は最短経路にて運賃演算をするよう処理サーバに振り分けを行うようにしているが、エスカレータやホームドアなど駅設備に利用者が保有する乗車媒体の情報を読み取るリーダや乗車媒体と通信可能な通信手段を設置して利用者(乗車媒体)の移動経路を把握し、実際に利用した路線区間に応じた運賃を演算するように振り分けを行うようにしても良い。
さらに、前記実施形態では、主として1つのサーバ内の複数(例えば3つ)の処理ユニットが異なる演算ロジック(運賃演算プログラム)で運賃を算出するように構成されている場合について説明したが、全ての処理ユニットの演算ロジックが同じであっても、通信遅延などの関係で演算結果が全て一致しない(一部からは応答がない)というケースがあり得るので、本発明はそのように構成されたシステムに適用しても有効である。
【0049】
また、前記実施形態の自動改札システムでは、改札処理を4種類のサーバ(21,22,23,24)に分担させているが、例えば振り分けサーバ22と総合判定サーバ24を1つのサーバとして構成するなど、任意のサーバ構成とすることができる。
さらに、前記実施形態の自動改札システムにおいては、自動改札機がICカードなどの乗車媒体の情報を非接触で読み取るリーダライタを備えると説明したが、乗車媒体としての磁気カードをリードライト可能なリーダライタを備えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10A,10B 自動改札機
20 統合改札管理システム
21 認証サーバ
22 振り分けサーバ(振り分け手段)
23 処理サーバ
24 総合判定サーバ(総合判定手段)
25 記憶装置(データベース)
30 通信ネットワーク
40 精算機
U-A~U-N 処理ユニット