(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ハーフミラー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/26 20220101AFI20220719BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20220719BHJP
B60R 1/12 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B60R1/26
B60R1/04 G
B60R1/12 Z
(21)【出願番号】P 2018049013
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】塚田 正司
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇司
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0002477(US,A1)
【文献】実開平01-178142(JP,U)
【文献】国際公開第2016/203526(WO,A1)
【文献】特開2016-188003(JP,A)
【文献】特開2013-244752(JP,A)
【文献】特開2016-052814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
B60R 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントガラスに対して固着される取付座と、前記取付座に組み付けられるハーフミラー本体と、を備えており、前記ハーフミラー本体には、鏡として作用するミラー機能と所定の映像を表示する表示機能とを有するディスプレィを備えているハーフミラー装置であって、
前記ハーフミラー本体は、前記取付座に対して前後方向に進退可能となっており、
前記取付座は、左右に対を成すベースと、レバーと、アームと、左右に対を成す支持アームと、を備え、
前記左右に対を成すベースには、前記アームに形成されている左右の丸軸状の張出軸を挿し込み可能な長孔が形成されており、
前記長孔は、その軸線と、前記ハーフミラー本体の退行状態と進出状態を結ぶ線と、が平行となるように設定されており、
前記レバーには、前記アームに形成されている丸ピンを挿し込み可能な長孔が形成されており、
前記左右に対を成す支持アームは、前記アームに形成されている丸軸状の回転軸が回転可能に組付けられた状態で前記左右に対を成すベースに対して回転可能に組付けられており、
前記取付座に対して進出状態のハーフミラー本体は、前記取付座に対して前記前後方向を軸方向とする軸回りに回動可能となっているハーフミラー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハーフミラー装置であって、
前記ハーフミラー本体は、前記取付座に対して進出状態または退行状態に保持されるようにばね部材によって付勢されているハーフミラー装置。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、
前記ハーフミラー本体は、前記自動車の天井に対して前記前後方向に揺動可能にトルクヒンジを介して支持されているハーフミラー装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、
前記取付座に対して進出状態のハーフミラー本体を退行状態に戻すと、前記ハーフミラー本体が前記前後方向を軸方向とする軸回りに傾いた状態に調節されていても、この傾きが無くなるように戻されるハーフミラー装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、
ハーフミラー本体が退行状態から進出状態に切り替わっても、このハーフミラー本体のディスプレィのディスプレィ面の前後方向における傾きを退行状態のそれと同じとなっているハーフミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフミラー装置に関し、詳しくは、自動車のフロントガラスに対して固着される取付座と、取付座に組み付けられるハーフミラー本体とを備えており、ハーフミラー本体には、鏡として作用するミラー機能と所定の映像を表示する表示機能とを有するディスプレイを備えているハーフミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントガラスには、例えば、光学式のミラー装置、電子式のミラー装置、ハーフミラー装置等、これらの何れかのミラー装置が取り付けられている。光学式のミラー装置は、主として、鏡として作用するディスプレイから構成されており(鏡として作用するミラー機能を備えており)、昔から、多くの自動車に適用されているものである。この光学式のミラー装置により、簡便な構造で自動車の後方の視界を確保できる。また、電子式のミラー装置は、主として、カメラで撮影した自動車の後方の映像を表示するディスプレイから構成されており(所定の映像を表示する表示機能を備えており)、近年、一部の自動車に適用されているものである。この電子式のミラー装置により、荷室に積載物があっても自動車の後方の視界を確保できる。また、ハーフミラー装置は、主として、鏡として作用するディスプレイと、カメラで撮影した自動車の後方の映像を表示するディスプレイとを兼ねるディスプレイから構成となっており(鏡として作用するミラー機能と、所定の映像を表示する表示機能とを備えており)、近年、一部の自動車に適用されているものである(特許文献1参照)。このハーフミラー装置により、上述した電子式のミラー装置と同様に、荷室に積載物があっても自動車の後方の視界を確保できる。また、カメラ等が破損した場合でも、鏡として作用するミラー機能を使用して自動車の後方の視界を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のハーフミラー装置では、ディスプレイを見る運転席の乗員(運転手)の視線移動を抑える観点から、このディスプレイを運転席の乗員から遠い視線位置に設置することが求められた。すなわち、ディスプレイをフロントガラスの傍に設置することが求められた。しかしながら、ディスプレイを鏡として作用するミラー機能として使用する場合、ディスプレイ面(ミラー面)が運転席の乗員に対向するようにディスプレイの向きを調節しなければいけなかった。そのため、この調節のとき、ディスプレイがフロントガラスに干渉することがあった。したがって、ディスプレイの向きを調節できないことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、鏡として作用するミラー機能と所定の映像を表示する表示機能とを有するディスプレイを備えているハーフミラー装置において、このディスプレイを運転席の乗員から遠い視線位置に設置できつつ、このディスプレイをミラー機能として使用する場合、このディスプレイの向きを調節できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、自動車のフロントガラスに対して固着される取付座と、取付座に組み付けられるハーフミラー本体をと備えているハーフミラー装置である。ハーフミラー本体には、鏡として作用するミラー機能と所定の映像を表示する表示機能とを有するディスプレィを備えている。ハーフミラー本体は、取付座に対して前後方向に進退可能となっている。取付座は、左右に対を成すベースと、レバーと、アームと、左右に対を成す支持アームと、を備えている。左右に対を成すベースには、アームに形成されている左右の丸軸状の張出軸を挿し込み可能な長孔が形成されている。長孔は、その軸線と、ハーフミラー本体の退行状態と進出状態を結ぶ線と、が平行となるように設定されている。レバーには、アームに形成されている丸ピンを挿し込み可能な長孔が形成されている。左右に対を成す支持アームは、アームに形成されている丸軸状の回転軸が回転可能に組付けられた状態で左右に対を成すベースに対して回転可能に組付けられている。取付座に対して進出状態のハーフミラー本体は、取付座に対して前後方向を軸方向とする軸回りに回動可能となっている。
【0007】
請求項1の発明によれば、取付座に対してハーフミラー本体を退行させると、このハーフミラー本体のディスプレイを運転席の乗員から遠い視線位置に設置できる。これとは逆に、取付座に対してハーフミラー本体を進出させると、この進出させたハーフミラー本体がフロントガラスとの距離が離れるため、フロントガラスに干渉させることなく、このハーフミラー本体の向きを調節できる。したがって、このハーフミラー本体のディスプレイをミラー機能として使用する場合、このディスプレイの向きを調節できる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハーフミラー装置であって、ハーフミラー本体は、取付座に対して進出状態または退行状態に保持されるようにばね部材によって付勢されている。
【0009】
請求項2の発明によれば、常に、ハーフミラー本体を退行状態または進出状態に保持できる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1~2のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、ハーフミラー本体は、自動車の天井に対して前後方向に揺動可能にトルクヒンジを介して支持されている。
【0011】
請求項3の発明によれば、ハーフミラー本体が退行状態または進出状態にあっても、このハーフミラー本体のディスプレイ面の傾きを同じ(例えば、
図7、9に示すように、鉛直方向に沿わせた状態)にできる。したがって、運転席の乗員の視認性が悪化することを防止できる。また、トルクヒンジを介することにより、自動車の走行時におけるガタツキを吸収できる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、取付座に対して進出状態のハーフミラー本体を退行状態に戻すと、ハーフミラー本体が前後方向を軸方向とする軸回りに傾いた状態に調節されていても、この傾きが無くなるように戻される。
【0013】
請求項4の発明によれば、ハーフミラー本体を退行状態に戻すとき、例えば、取付座を覆うカバーの縁にハーフミラー本体の本体ケースが案内されることとなる。したがって、このハーフミラー本体の戻しのとき、調節されているハーフミラー本体の向きも戻すことができる。結果として、ハーフミラー本体の向きを戻す手間を省くことができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれかに記載のハーフミラー装置であって、ハーフミラー本体が退行状態から進出状態に切り替わっても、このハーフミラー本体のディスプレイのディスプレイ面の前後方向における傾きを退行状態のそれと同じとなっている。
【0015】
請求項5の発明によれば、ハーフミラー本体が退行状態または進出状態にあっても、このハーフミラー本体のディスプレイ面の傾きを同じ(本願の実施形態では、
図7、9に示すように、鉛直方向に沿わせた状態)にできる。したがって、運転席の乗員の視認性が悪化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るハーフミラー装置を自動車のフロントガラスに取り付けた車室の斜視図である。
【
図7】
図1のハーフミラー装置の動作を説明する模式図であり、ハーフミラー本体の退行状態を示している。
【
図8】
図7に示す状態から、ハーフミラー本体を進出させている途中の状態を示している。
【
図9】
図8に示す状態から、さらに、ハーフミラー本体を進出させた進出状態を示している。
【
図10】第2実施形態に係るハーフミラー装置の取付座を後から見た分解図である。
【
図12】実施例2のハーフミラー装置の動作を説明する模式図であり、ハーフミラー本体の退行状態を示している。
【
図13】
図12に示す状態から、ハーフミラー本体を進出させている途中の状態を示している。
【
図14】
図13に示す状態から、さらに、ハーフミラー本体を進出させた進出状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を、
図1~9を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、自動車1の向きを基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。このことは、後述する第2実施形態においても同様である。最初に、
図1~2を参照して、第1実施形態に係る自動車1の車室1aの前方と、ハーフミラー装置5とを個別に説明する。
【0018】
はじめに、車室1aの前方から説明する。
図1~2から明らかなように、自動車1の天井2には、フロントガラス3の傍の中央にオーバーヘッドコンソール4が組み付けられている。このオーバーヘッドコンソール4には、マップランプ、小物入れ(いずれも図示しない)が設けられている。これにより、運転席や助手席の乗員(いずれも図示しない)は、夜間であっても車室1a内で地図を見たり、サングラス等の小物をオーバーヘッドコンソール4に収納できる。
【0019】
次に、ハーフミラー装置5を説明する。
図3~4から明らかなように、ハーフミラー装置5は、主として、取付座10と、ハーフミラー本体20とから構成されている。以下に、これら取付座10とハーフミラー本体20とを個別に説明する。
【0020】
はじめに、取付座10を説明する。取付座10は、主として、左右に対を成すベース11と、レバー12と、アーム13と、左右に対を成す支持アーム14とから構成されている(
図5~6参照)。左右のベース11には、後述するアーム13の左右の張出軸13cを挿し込み可能な長孔11aが前後方向に沿ってそれぞれ形成されている。また、左右のベース11には、後述するノブ16の軸16aを貫通可能な貫通孔11bが形成されている。
【0021】
レバー12には、左右に張り出した張出部12aが形成されている。また、レバー12の側面には、左右を貫通する長孔12bが形成されている。また、レバー12の表面には、長孔12bに連通する切欠溝12cが形成されている。この切欠溝12cには、圧縮ばね12dが組み付けられている。なお、組み付けられた圧縮ばね12dの一端12eは、切欠溝12cの内面に掛け留めされ、同他端12fは、後述するアーム13の丸ピン13bの外周面に掛け留めされている。
【0022】
アーム13には、その一端13aを左右に橋渡す丸ピン13bが形成されている。この丸ピン13bの両端は、橋渡したアーム13から張り出す円柱状の張出軸13cとなっている。このアーム13は、半割構造となっており、その丸ピン13bがレバー12の長孔12bに挿し込まれる格好でレバー12に組み付けられている。これにより、レバー12の長孔12bとアーム13の丸ピン13bとは、互いが相対移動可能となっている。
【0023】
また、このアーム13は、その左右の張出軸13cが左右のベース11の長孔11aに挿し込まれる格好で左右のベース11に組み付けられている。これにより、ベース11の長孔11aとアーム13の張出軸13cとは、互いが相対移動可能となっている。左の支持アーム14の一端14aは、トルクヒンジ15を介して左のベース11に枢着(回転可能に組み付け)されている。また、左の支持アーム14の他端14bは、アーム13の他端13dの左側に形成された回転軸13fを介して枢着(回転可能に組み付け)されている。これと同様に、右の支持アーム14の一端14aは、トルクヒンジ15を介して右のベース11に枢着されている。
【0024】
また、右の支持アーム14の他端14bは、アーム13の他端13dの右側に形成された回転軸13fを介して枢着されている。このように枢着されていることにより、後述するようにロッド30を介して取付座10のアーム13に組み付けられているハーフミラー本体20は、ベース11に対して前後方向にトルクヒンジ15を介して揺動可能となっている。なお、レバー12の左の張出部12aには、左のベース11の貫通孔11bを介して左のノブ16の軸16aが固着されている。これと同様に、レバー12の右の張出部12aには、右のベース11の貫通孔11bを介して右のノブ16の軸16aが固着されている。取付座10は、このように構成されている。
【0025】
次に、ハーフミラー本体20を説明する。ハーフミラー本体20は、左右方向が長手方向を成す本体ケース21と、この本体ケース21の開口21aを覆うように複数のビス(図示しない)を介して組み付けられたディスプレイ22と、これら本体ケース21とディスプレイ22との間に挟み込まれるように複数のビス(図示しない)を介して組み付けられた取付部23とから構成されている。
【0026】
このディスプレイ22は、鏡として作用するミラー機能と、カメラ(図示しない)で撮影した自動車の後方の映像を表示する表示機能とを有するものである。そのため、このディスプレイ22は、カメラで撮影した自動車の後方の映像を表示させると、この後方の映像を表示する表示手段として機能する(表示機能が動作)こととなる。一方、このディスプレイ22は、カメラで撮影した自動車の後方の映像を表示させないと、鏡として作用するミラーとして機能する(ミラー機能が動作する)こととなる。ハーフミラー本体20は、このように構成されている。
【0027】
このように構成されているハーフミラー本体20は、ロッド30を介して取付座10のアーム13に組み付けられている。このロッド30は、前軸部31と、後軸部32と、これらを繋ぐボールジョイント33とから構成されている。この前軸部31は、取付座10のアーム13の取付穴13eに固着され、この後軸部32は、ハーフミラー本体20の取付部23の取付穴23aに固着されている。
【0028】
そのため、ボールジョイント33を介してハーフミラー本体20のディスプレイ22のディスプレイ面22aが運転席の乗員に対向するようにハーフミラー本体20の向きを調節できる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「前記取付座に対して進出状態のハーフミラー本体は、前記取付座に対して前記前後方向を軸方向とする軸回りに回動可能となっている」に相当する。すなわち、取付座10に対してハーフミラー本体20の向きを調節できる。
【0029】
これら取付座10とハーフミラー本体20とからハーフミラー装置5は構成されている。このように構成されているハーフミラー装置5は、その取付座10がフロントガラス3のオーバーヘッドコンソール4寄りに接着剤(図示しない)によって取り付けられている(
図1参照)。なお、この取り付けられた状態において、取付座10は、樹脂製のカバー6によって覆われている。すなわち、このカバー6に形成されている左右の係合爪6aは、取付座10を覆った状態で、オーバーヘッドコンソール4の前端の左右に形成された係合孔(図示しない)に組み付けられている(
図2参照)。
【0030】
続いて、
図7~9を参照して、上述したハーフミラー装置5の動作を説明する。この説明にあたって、
図7に示すように、ハーフミラー装置5のハーフミラー本体20が取付座10に対して退行状態にあるときから説明する。このように退行状態にあると、このハーフミラー本体20のディスプレイ22を運転席の乗員から遠い視線位置に設置できることとなる。そのため、ディスプレイ22を見る運転席の乗員の視線移動を抑えることができる。また、このように退行状態にあると、圧縮ばね12dは定常状態となっている。
【0031】
この退行状態から、ノブ16を手前側に回す操作を行う。すると、ノブ16の軸16aの軸回りにレバー12が手前側に回転し始める。このレバー12の回転により、アーム13の丸ピン13bがベース11の長孔11aの前端から後端側へ向けて移動していく。そのため、ハーフミラー本体20が取付座10から進出していく。すなわち、取付座10に対してハーフミラー本体20が後に向けて進出していく。この進出していくとき、左右の支持アーム14により、ハーフミラー本体20は前後方向に揺動することとなる。
【0032】
また、このレバー12の回転により、アーム13の張出軸13cがレバー12の長孔12bの上端から下端側へ向けて圧縮ばね12dを定常状態から撓ませながら移動していく。なお、アーム13の丸ピン13bがベース11の長孔11aの中央に到達すると、圧縮ばね12dが最大に撓んだ状態となっている(
図8参照)。そして、アーム13の丸ピン13bがベース11の長孔11aの後端へ到達するまでノブ16を手前側に回す操作を行うと、ハーフミラー本体20が取付座10に対して後ろに向けて進出した進出状態に切り替わる(
図9参照)。
【0033】
なお、ベース11の長孔11aの長さは、アーム13の張出軸13cと回転軸13fとを結ぶ線Cが取付座10に対してハーフミラー本体20が退行状態と進出状態とにおいて平行となるように設定されている(
図7、9参照)。これにより、ハーフミラー本体20が進出状態に切り替わっても、このハーフミラー本体20のディスプレイ22のディスプレイ面22aの前後方向における傾きを退行状態のそれと同じにできる。すなわち、ハーフミラー本体20が退行状態または進出状態にあっても、このハーフミラー本体20のディスプレイ面22aの傾きを同じ(この第1実施形態では、
図7、9に示すように、鉛直方向に沿わせた状態)にできる。したがって、運転席の乗員の視認性が悪化することを防止できる。
【0034】
また、この進出状態に切り替わると、撓ませられた圧縮ばね12dは定常状態へ戻されることとなる。このようにして、ハーフミラー本体20を取付座10に対して後に向けて進出できる。すなわち、運転席の乗員は、ハーフミラー本体20を手前側に引き出すことができる。このように引き出すことができると、この引き出したハーフミラー本体20がフロントガラス3との距離が離れるため、ハーフミラー本体20のディスプレイ22のディスプレイ面22aが運転席の乗員に対向するようにハーフミラー本体20の向きを調節しても、この調節したハーフミラー本体20のディスプレイ22がフロントガラス3に干渉することがない。
【0035】
なお、取付座10に対して進出状態(
図9参照)に切り替えたハーフミラー本体20を退行状態に戻すためには、上述したノブ16を奥側に回す操作を行えばよい。すると、上述した動作の逆の動作、すなわち、取付座10に対してハーフミラー本体20が前に向けて退行していく動作が行われる(
図8参照)。そのため、取付座10に対してハーフミラー本体20を退行状態に戻すことができる(
図7参照)。
【0036】
また、この戻しが行われるとき、ハーフミラー本体20のディスプレイ22のディスプレイ面22aが運転席の乗員に対向するようにハーフミラー本体20の向きが調節されていると、このハーフミラー本体20の本体ケース21の略コ字状の案内カバー21bがカバー6の略コ字状の縁6bに干渉する。そのため、この調節された向きが調節前の状態に戻される。この記載が、特許請求の範囲に記載の「前記取付座に対して進出状態のハーフミラー本体を退行状態に戻すと、前記ハーフミラー本体が前記前後方向を軸方向とする軸回りに傾いた状態に調節されていても、この傾きが無くなるように戻される」に相当する。
【0037】
本発明の第1実施形態に係るハーフミラー装置5は上述したように構成されている。この構成によれば、ノブ16を回す操作を行うと、取付座10に対してハーフミラー本体20が前後に進退可能となっている。そのため、取付座10に対してハーフミラー本体20を退行させると、このハーフミラー本体20のディスプレイ22を運転席の乗員から遠い視線位置に設置できる。また、取付座10に対してハーフミラー本体20の向きを調節可能となっている。そのため、取付座10に対してハーフミラー本体20を進出させると、この進出させたハーフミラー本体20がフロントガラス3との距離が離れるため、フロントガラス3に干渉させることなく、このハーフミラー本体20の向きを調節できる。したがって、このハーフミラー本体20のディスプレイ22をミラー機能として使用する場合、このディスプレイ22の向きを調節できる。
【0038】
また、この構成によれば、取付座10に対してハーフミラー本体20を退行状態または進出状態にすると、圧縮ばね12dは定常状態となっている。また、取付座10に対してハーフミラー本体20を退行状態と進出状態との途中状態にすると、圧縮ばね12dは撓んだ状態となっている。このようになっていると、ハーフミラー本体20は、圧縮ばね12dによって取付座10に対して対向状態または進出状態に保持されるように付勢されることとなる。そのため、ハーフミラー本体20が退行状態と進出状態との途中状態で保持されることを防止できる。したがって、常に、ハーフミラー本体20を退行状態または進出状態に保持できる。
【0039】
また、この構成によれば、ハーフミラー本体20は、ベース11に対して前後方向にトルクヒンジ15を介して揺動可能となっている。そのため、ハーフミラー本体20が退行状態または進出状態にあっても、このハーフミラー本体20のディスプレイ面22aの傾きを同じ(この例では、
図7、9に示すように、鉛直方向に沿わせた状態)にできる。したがって、運転席の乗員の視認性が悪化することを防止できる。また、トルクヒンジ15を介することにより、自動車1の走行時におけるガタツキを吸収できる。
【0040】
また、この構成によれば、ハーフミラー本体20を退行状態に戻すとき、ハーフミラー本体20のディスプレイ22のディスプレイ面22aが運転席の乗員に対向するようにハーフミラー本体20の向きが調節されていると、このハーフミラー本体20の本体ケース21の略コ字状の案内カバー21bがカバー6の略コ字状の縁6bに干渉する。そのため、このカバー6の縁6bにハーフミラー本体20の本体ケース21が案内されることとなる。したがって、このハーフミラー本体20の戻しのとき、調節されているハーフミラー本体20の向きも戻すことができる。結果として、ハーフミラー本体20の向きを戻す手間を省くことができる。
【0041】
また、この構成によれば、ベース11の長孔11aの長さは、アーム13の張出軸13cと回転軸13fとを結ぶ線Cが取付座10に対してハーフミラー本体20が退行状態と進出状態とにおいて平行となるように設定されている(
図7、9参照)。そのため、ハーフミラー本体20が退行状態または進出状態にあっても、このハーフミラー本体20のディスプレイ面22aの傾きを同じ(この第1実施形態では、
図7、9に示すように、鉛直方向に沿わせた状態)にできる。したがって、運転席の乗員の視認性が悪化することを防止できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、
図10~14を用いて説明する。この第2実施形態のハーフミラー装置105は、既に説明した第1実施形態のハーフミラー装置5と比較すると、その構造を簡素化したものである。なお、以下の説明にあたって、上述した第1実施形態で説明した部材と同一または均等な構成の部材には、図面において同一の符号を付すことで、重複する説明を省略することとする。
【0043】
この第2実施形態のハーフミラー装置105も、第1実施形態のハーフミラー装置5と同様に、主として、取付座10と、ハーフミラー本体20とから構成されている。ただし、この第2実施形態のハーフミラー装置105では、
図10~11から明らかなように、アーム13の張出軸13cは、四角柱状となっている。また、この第2実施形態のハーフミラー装置105では、左右の支持アーム14およびトルクヒンジ15を必要としないものとなっている。
【0044】
本発明の第2実施形態に係るハーフミラー装置105は上述したように構成されている。この構成によれば、第1実施形態のハーフミラー装置5と同様の作用効果を得ることができる(
図12~14参照)。なお、上述したように、アーム13の張出軸13cが四角柱状となっているため、左右の支持アーム14を必要としなくても第1実施形態のハーフミラー装置5と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0046】
各実施形態では、ディスプレイ22の表示機能として、カメラで撮影した自動車の後方の映像を表示する機能を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ディスプレイ22の表示機能として、記憶媒体(図示しない)に記憶されている映像(例えば、映画)を表示する機能であっても構わない。このようにディスプレイ22の表示機能が記憶媒体(図示しない)に記憶されている映像を表示する機能である場合、ハーフミラー本体20は、取付座10に対して退行状態または進出状態のいずれであっても構わない。例えば、自動車1の車内で休憩中において、ハーフミラー本体20のディスプレイ22によって、例えば、映画等を見る事ができる。
【0047】
また、各実施形態において、圧縮ばね12dを用いることなく、引っ張りばねを用いても構わない。また、第2実施形態において、ノブ16は、前後方向にスライドするものであっても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 自動車
2 天井
3 フロントガラス
5 ハーフミラー装置
10 取付座
12d 圧縮ばね
15 トルクヒンジ
20 ハーフミラー本体
22 ディスプレイ