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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ラボラトリ機器のための引き出し組立体
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
G01N35/04 H
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018070711
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2018185299
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17165689.5
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100203611
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 大地
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マイアー
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513975(JP,A)
【文献】米国特許第08439459(US,B2)
【文献】特開2017-044698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059597(US,A1)
【文献】国際公開第2016/103642(WO,A1)
【文献】特開平03-188375(JP,A)
【文献】実開昭55-042200(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02952905(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラボラトリ機器(100)のための引き出し組立体(120)であって、前記引き出し組立体(120)が、
前記ラボラトリ機器(100)の液体のための容器(102)が装填されるように構成された引き出し(122)であって、前記引き出し(122)が前方端部(124)および後方端部(126)を備える、引き出し(122)と、
前記引き出し(122)に隣接するように配置された少なくとも1つの部分(130)を備えるフレーム(128)であって、前記部分(130)が第1の端部(134)から第2の端部(136)まで長手方向(132)に延在する、フレーム(128)と、
を備え、
前記引き出し(122)は、前記引き出し(122)が前記フレーム(128)内に格納されて前記前方端部(124)が前記第1の端部(134)に隣接する格納位置と、前記引き出し(122)が前記フレーム(128)から延伸して前記前方端部(124)が前記第2の端部(136)に隣接する延伸位置との間で、前記フレーム(128)に対して移動可能であり、
前記フレーム(128)が、第1の部分(140)および前記第1の部分(140)の下方にある第2の部分(142)を有する経路(138)を備え、前記第1の部分(140)および前記第2の部分(142)が前記長手方向(132)に平行な方向に延在し、前記第1の部分(140)が前記第1の端部(134)に向かってテーパ状となっており、前記引き出し(122)の方を向き、
前記引き出し組立体(120)がさらに、
前記経路(138)内で移動可能である回転要素(148)と、
前記引き出し(122)が前記格納位置にあるときに前記回転要素(148)を前記第2の部分(142)から前記第1の部分(140)まで持ち上げるように構成されたリフト機構(150)と、
を備え、
前記経路(138)が、前記格納位置から前記延伸位置まで前記引き出し(122)が移動させられるときに前記回転要素(148)が前記第1の部分(140)のところに位置し前記引き出し(122)に接触することになるように、および、前記引き出し(122)が前記延伸位置にあるときにのみ前記回転要素(148)が前記第2の部分(142)に入ることが可能となるように、構成される、
引き出し組立体(120)。
【請求項2】
前記第1の部分(140)および前記第2の部分(142)が、そのそれぞれの端部のところにある第1の接続部分(144)および第2の接続部分(146)により互いに接続可能であり、前記引き出し(122)が前記延伸位置にある場合にのみ、前記第1の接続部分(144)が前記第1の部分(140)および前記第2の部分(142)に対して露出され、前記引き出し(122)が前記格納位置にある場合にのみ、前記第2の接続部分(146)が前記第1の部分(140)および前記第2の部分(142)に対して露出される、請求項1に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項3】
前記リフト機構(150)が前記引き出し(122)によって動作可能であり、前記リフト機構(150)がレバー(152)および傾斜要素(154)を備え、前記傾斜要素(154)が、前記傾斜要素(154)を前記第2の部分(142)の方に向かせるような低い位置と前記傾斜要素(154)を前記第1の部分(140)の方に向かせるような高い位置との間で、前記レバー(152)の作動により傾斜可能である、請求項1または2に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項4】
前記レバー(152)が、前記引き出し(122)との係合により作動されるように構成される、請求項3に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項5】
前記引き出し(122)が互いの方を向く2つのストッパ表面(156、158)を備え、前記レバー(152)が前記2つのストッパ表面(156、158)の間に位置する、請求項3または4に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項6】
前記経路(138)が前記引き出し(122)の下方に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項7】
前記経路(138)が前記第2の端部(136)に隣接するところに位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項8】
少なくとも1つの容器を有するマガジン(104)が前記引き出し(122)内に装填される場合に前記延伸位置から前記格納位置まで前記引き出し(122)が移動するのを防止するように構成されたストッパ要素(166)をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項9】
前記ストッパ要素(166)が前記マガジン(104)の頂部表面(168)を横切って延在するような位置に配置される、請求項8に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項10】
前記ストッパ要素(166)が少なくとも1つのフラップを備え、前記少なくとも1つのフラップが、閉位置―前記フラップ(170)が前記長手方向(132)に対して垂直な方向において前記マガジン(104)の前記頂部表面(168)を横切って延在するような位置―と、開位置―前記フラップ(170)が前記マガジン(104)の前記頂部表面(168)を露出するような位置―との間で枢動可能である、請求項9に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項11】
前記ストッパ要素(166)が、2つのフラップ(170)を備え、前記2つのフラップ(170)の各々が、閉位置―前記フラップ(170)が前記長手方向(132)に対して垂直な方向において前記マガジン(104)の前記頂部表面(168)を横切って延在するような位置―と、開位置―前記フラップ(170)が前記マガジン(104)の前記頂部表面(168)を露出するような位置―との間で枢動可能である、請求項10に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項12】
前記引き出し(122)内の目標位置のところに前記マガジン(104)を配置するように構成された少なくとも1つの位置決め要素(172)をさらに備える、請求項から11のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項13】
前記格納位置において前記引き出し(122)をロックするように構成されたロック機構をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項14】
前記引き出し(122)の状態を検出するように構成されたセンサをさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【請求項15】
前記ラボラトリ機器(100)が、ラボラトリ用搬入・搬出システムであるか、または、ラボラトリ用搬入・搬出システムの一部である、請求項1から14のいずれか一項に記載の引き出し組立体(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラボラトリ機器のための引き出し組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者試料を検査して種々のインビトロの診断試験を受けさせるような臨床ラボラトリなどのラボラトリでは、血液、尿などの試料を含む試験管を、慎重であるが効率的な手法で、大量に取り扱う必要がある。ここ数年、このような状況においては、対応するシステムおよびデバイスを用いる自動化された手順が利用されている。
【0003】
これらの試料管の取り扱い中における1つの側面は、例えば冷蔵デバイスであってよい保管コンパートメント内に管が配置されることに関連するものである。効率的な取り扱いのために、管が個別には取り扱われず、いわゆるラック内に配置される。通常、管は、クライアントにより、つまり、試料をラボラトリに送る、人間、デパートメントまたは施設により、既にラック内に配置されており、その後でこれらのラック内でラボラトリに送られる(sent)かまたは移送される(transported)。ラボラトリでは、管を備えるラックが試験のためのさらなる取り扱いステップを受ける。非常に多くの場合、このようなラックは、サイズ、高さ、直径、中身、試料の使用期限などが様々の管を含み、それにより自動化される取り扱いが複雑となり、その結果、一部の事例においては、ラボラトリ内での試験プロセスでのラックのさらなる自動での挿入が不可能となり、ラックを手動で排出する必要がある。
【0004】
EP2148204A1が、ラボラトリ試料管(laboratory sample tube)を保管するためのおよび保管されている試料管を回収するためのラボラトリ用搬入・搬出システムと、ラボラトリ用搬入・搬出システム内でラボラトリ試料管を取り扱うための方法とを開示している。このシステムは、ラックハンドラセクションと、保管セクションとを備えるいわゆる保管・回収モジュールの一部である。ラックハンドラセクションが引き出し(drawers)を備え、空の主ラックおよび/またはエラーが指定された試料管を含む主ラック、および/または、少なくとも1つの回収された試料管を含むラックが、これらの引き出しを介して保管・回収モジュールから取り出され得る。
【0005】
この自動の試料試験システムによっていくつかの利点がもたらされるが、それでも改善の余地がある。このような自動の試料取り扱いシステムの場合、除外(exception out)の実施可能性の提供が望まれる。その理由は、そのような除外により、ラボ(lab)移送システムから到来する管または保管されている管がいわゆる除外場所(exception out place)まで移送されることを可能にするからである。この動作はミドルウェアからのソフトウェアコマンドによって始動され得る。次いで、使用者が「除外」の警告が出されている(フラグが立っている)管を有する保管ラックを手動で抜き取ることができる。このような除外を可能にすることは引き出しによって実現され得る。このような引き出しは、満杯または空のラックを備える引き出しが格納させられ得るようにするために、しかしあらかじめ完全に格納させられていない場合には再挿入され得ないようにすることを確実にするために、何らかの安全対策を必要とする。その理由は、管を取り扱うのに使用されるロボットの制御装置が、引き出しの格納時に空のラックを想定しているからである。依然としてラック内にわずかでも管が存在する場合、ロボットがそれらの管を検出しない可能性があり、それをもって衝突する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP2148204A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、誤用を防止し、引き出しを機器の中に押し戻すことが許可されるまで使用者に引き出しを完全に引き出させるようにするような、ラボラトリ機器のための引き出し組立体と、そのような引き出し組立体を有するラボラトリ機器とが開示される。加えて、引き出しを再装填するためにはラックを完全に空にする必要があるようにするために、1つまたは複数の試料管を中に有する保管ラックを装填することが機械的に防止される。
【0008】
ラボラトリ機器のための引き出し組立体およびラボラトリ機器の開示される実施形態が、独立請求項の特徴を有する。単独の形でまたは任意の組み合わせの形で実現され得るような特定の実施形態が従属請求項に記載される。
【0009】
以下で使用される「有する(have)」、「備える(comprise)」または「含む(include)」という表現、あるいは、それらの任意の文法的変形は、非排他的に使用される。したがって、これらの表現は、これらの表現によって提示される特徴に加えて、その文脈で説明される実在物内に他の特徴が存在しないような状況、ならびに、1つまたは複数の他の特徴が存在するような状況、の両方を意味することができる。例えば、「AはBを有する(A has B)」、「AはBを備える(A comprises B)」および「AはBを含む(A includes B)」という表現は、AにB以外の他の要素が存在しないような状況(つまり、Aが排他的にBのみから構成されるような状況)、ならびに、実在物Aの中に、Bに加えて、要素C、要素CおよびD、あるいは、さらなる他の要素などの、1つまたは複数の別の要素が存在するような状況、の両方を意味することができる。
【0010】
さらに、「少なくとも1つ(at least one)」、「1つまたは複数(one or more)」という表現、あるいは、特徴または要素が1回または2回以上存在してよいことを示す同様の表現が、通常、それぞれの特徴または要素を提示するときに1回のみ使用される、ということに留意されたい。以下では、多くの場合において、それぞれの特徴または要素を参照するとき、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されないが、これは、それぞれの特徴または要素が1回または2回以上存在してよいということを否定しない。
【0011】
さらに、以下で使用される、「特には(particularly)」、「より特には(more particularly)」、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」、または同様の表現は、代替の可能性を制限することなく、任意選択の特徴との組み合わせで使用される。したがって、これらの表現によって提示される特徴は任意選択の特徴であり、特許請求の範囲の範囲を限定することを一切意図されない。当業者には理解されるであろうが、本発明は代替の特徴を使用することによっても実施され得る。同様に、「本発明の実施形態の(in an embodiment of the invention)」または同様の表現によって提示される特徴は、本発明の代替的実施形態に関して一切制限することなく、また、本発明の範囲に関して一切制限することなく、また、このような形で提示される特徴を、本発明の他の任意選択のまたは非任意選択の特徴と組み合わせることの可能性に関して一切制限することなく、任意選択の特徴であることを意図される。
【0012】
ラボラトリ機器のための開示される引き出し組立体は、ラボラトリ機器の液体のための容器、特には試料管、を受けるためのマガジンが装填されるように構成された引き出しであって、引き出しが前方端部および後方端部を備える、引き出しと、引き出しに隣接するように配置された少なくとも1つの部分を備えるフレームであって、この部分が第1の端部から第2の端部まで長手方向に延在する、フレームと、を備える。引き出しは、引き出しがフレーム内に格納されて前方端部が第1の端部に隣接する格納位置と、引き出しがフレームから延伸して前方端部が第2の端部に隣接する延伸位置との間で、フレームに対して移動可能である。フレームが、第1の部分および第1の部分の下方にある第2の部分を有する経路を備える。第1の部分および第2の部分は長手方向に平行な方向に延在する。第1の部分は第1の端部に向かってテーパ状となっており、引き出しの方を向く。引き出し組立体は、経路内を移動可能である回転要素と、引き出しが格納位置にあるときに回転要素を第2の部分から第1の部分まで持ち上げるように構成されたリフト機構とをさらに備える。経路は、格納位置から延伸位置まで引き出しが移動させられるときに回転要素が第1の部分のところに位置し引き出しに接触することになるように、および、引き出しが延伸位置にあるときにのみ回転要素が第2の部分に入ることが可能となるように、構成される。
【0013】
本明細書で使用される「引き出し(drawer)」という用語は、その中に手が届くようにするために水平方向に引かれて外に出され得るような方式で一部片のボディまたはケーシングの中に嵌合される箱形状のまたは平坦なコンテナを意味する。
【0014】
本明細書で使用される「ラボラトリ機器(laboratory instrument)」という用語は、1つまたは複数の生物試料および/または1つまたは複数の試薬に対して1つまたは複数の処理ステップ/ワークフローステップを実行するように動作可能である任意の装置または装置構成要素を意味する。それに関して、「処理ステップ(processing steps)」という表現は、遠心分離、分取、および、試料分析などの、物理的に実行される処理ステップを意味する。「ラボラトリ機器(laboratory instrument」という用語は、分析前機器(pre-analytical instrument)、分析後機器(post-analytical instrument)、またさらには、分析機器、を包含する。
【0015】
本明細書で使用される「容器(vessel)」という用語は、分析、より特には医療分析の分野の試料または試薬を保管するのに適する任意のタイプのコンテナを意味する。このような容器は通常は管として設計される。
【0016】
本明細書で使用される「マガジン(magazine)」という用語は、基本的に、複数の容器を保持するようにおよびラボラトリ機器に供給されるように構成された任意のデバイスを意味する。
【0017】
本明細書で使用される「経路(path)」という用語は、回転要素を誘導する必要がある場合のようなボール経路(ball path)と同様に構成された任意の経路である。
本明細書で使用される「回転要素(rolling element)」という用語は、ボール、ローラまたはシリンダなどの、回転するように構成された任意の要素である。
【0018】
本明細書で使用される「下方(below)」という表現は、引き出し組立体がその目標の向きにあるということを前提として、重力方向に対する向きを意味する。
上述の構成を用いて、引き出しを引き出すことが可能となり、ここでは、回転要素が引き出し方向において転がり軸受と同様に機能し、対して、テーパ状の第1の部分が、完全に引き出されない限りにおいては反対方向へ戻るような引き出しの移動を防止する。したがって、非常に単純な機構により、完全に引き出されていない場合において引き出しが後方に移動することが防止される。
【0019】
第1の部分および第2の部分が、そのそれぞれの端部のところにある第1の接続部分および第2の接続部分により互いに接続可能となり得、ここでは、引き出しが延伸位置にある場合にのみ、第1の接続部分が第1および第2の部分に対して露出され、引き出しが格納位置にある場合にのみ、第2の接続部分が第1の部分および第2の部分に対して露出される。したがって、その端の位置にあるとき、引き出しが完全に引き出されるかまたは完全に挿入されるかのいずれかにおいて、第1の部分および第2の部分が互いに接続される。
【0020】
リフト機構が第2の接続部分のところに配置され得る。したがって、リフト機構が、引き出しが完全に挿入されるときに回転要素を第2の部分から第1の部分まで移動させるように機能する。
【0021】
リフト機構が引き出しにより動作可能となり得る。したがって、リフト機構を動作させるために、および、回転要素を第2の部分から第1の部分まで移動させるために、別のデバイスが提供されなければならないということがない。
【0022】
リフト機構がレバーおよび傾斜要素を備えることができ、ここでは、傾斜要素が、傾斜要素を第2の部分の方に向かせるような低い位置と傾斜要素を第1の部分の方に向かせるような高い位置との間で、レバーの作動により傾斜可能である。したがって、傾斜機構は、傾斜運動または枢動運動により回転要素を第2の部分から第1の部分まで移動させるように構成され、それにより傾斜機構をかなりコンパクトに設計することが可能となる。
【0023】
レバーが、引き出しとの係合により作動されるように構成され得る。したがって、レバーを動作させるのに引き出しのみが必要であり、それにより構成部材の数が減る。
引き出しが互いの方を向く2つのストッパ表面を備えることができ、ここでは、レバーが2つのストッパ表面の間に位置する。したがって、レバーが、ストッパ表面との係合により高い信頼性で動作させられ得る。
【0024】
経路が引き出しの下方に位置する。したがって、引き出し組立体がかなりコンパクトに設計され得る。
経路が第1の端部より第2の端部の近くに位置することができる。したがって、経路が引き出しの引き出された位置の近くに配置され得る。
【0025】
経路が第2の端部に隣接するところに位置することができる。したがって、経路が保守管理または類似の目的のために容易にアクセス可能となり得る。
回転要素がボールであってよい。したがって、回転要素がかなりコンパクトになり得、あらゆる方向に回転することができる。
【0026】
引き出し組立体が、少なくとも1つの容器を有するマガジンが引き出し内に装填される場合に延伸位置から格納位置まで引き出しが移動するのを防止するように構成されたストッパ要素をさらに備えることができる。したがって、依然として1つまたは複数の容器を有するマガジンが装填されることが機械的に防止され、引き出しを再装填するためにはマガジンを完全に空にすることが必要となる。
【0027】
ストッパ要素がマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置に配置され得る。したがって、ストッパ要素が、マガジンの頂部表面から容器が突出しているかどうかを高い信頼性で検出することができる。
【0028】
ストッパ要素は少なくとも1つのフラップを備えることができ、フラップは、閉位置―フラップが長手方向に対して垂直な方向においてマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置―と、開位置―フラップがマガジンの頂部表面を露出するような位置―との間で枢動可能である。したがって、ストッパ要素が、1つまたは複数の容器が引き出しの中にある場合に引き出しを再装填または挿入するのを防止するように構成される。その理由は、ストッパ要素が、長手方向に対して垂直に延在することになるような位置からさらに移動させられ得ないからである。したがって、ストッパ要素が一方向弁と類似するように機能する。
【0029】
ストッパ要素は2つのフラップを備えることができ、各フラップは、閉位置―フラップが長手方向に対して垂直な方向においてマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置―と、開位置―フラップがマガジンの頂部表面を露出するような位置―との間で枢動可能である。したがって、ストッパ要素が、1つまたは複数の容器が引き出しの中にある場合に引き出しを再装填または挿入するのを防止するように構成される。その理由は、ストッパ要素が、長手方向に対して垂直に延在することになるような位置からさらに移動させられ得ないからである。したがって、ストッパ要素が一方向弁と同様に機能する。
【0030】
閉位置では2つのフラップが互いの方を向くことができる。したがって、閉位置ではフラップが互いに隣接するように配置され、その結果、容器がマガジンの中にある場合にはマガジンが後方に移動させられ得ないようになる。
【0031】
引き出し組立体が、引き出し内の目標位置のところにマガジンを配置するように構成された少なくとも1つの位置決め要素をさらに備えることができる。したがって、マガジンが正確に配置されることが保証される。
【0032】
位置決め要素は位置決めばねまたは位置決めクランプであってよい。したがって、かなり単純な構成がマガジンを正確に位置決めすることを可能とする。
引き出し組立体が、格納位置において引き出しをロックするように構成されたロック機構をさらに備えることができる。したがって、意図されずにまたは誤って引き出しが引き出されることが防止される。
【0033】
引き出し組立体が、引き出しおよび/またはマガジンの状態を検出するように構成されたセンサをさらに備えることができる。したがって、マガジンに1つまたは複数の容器が装填されているかどうか、ならびに/あるいは、引き出しが挿入されているのかまたは引き出されているのか、を検出する追加の安全デバイスが提供され得る。
【0034】
ラボラトリ機器は、ラボラトリ用搬入・搬出システムであってよいか、または、ラボラトリ用搬入・搬出システムの一部であってよい。したがって、開示される引き出し組立体は自動の試料取り扱い装置と共に使用され得る。
【0035】
開示されるラボラトリ機器が上述の少なくとも1つの引き出し組立体を備える。したがって、上述の引き出し組立体は、互いに独立して動作させられ得る別の引き出し組立体との組み合わせで使用され得る。
【0036】
ラボラトリ機器が、液体のための複数の容器を取り扱うように構成され得る。したがって、高度な自動化が実現され得る。
ラボラトリ機器が少なくとも1つのマガジンをさらに備えることができる。したがって、多数のマガジンを広範囲で取り扱うことが実現され得る。
【0037】
マガジンがラックであってよく、液体のための容器が試料管であってよい。したがって、一般的なラボラトリ器具が、開示されるラボラトリ機器内で使用され得る。
本発明は、コンピュータ上でのまたはコンピュータネットワーク上でのプログラムの実行時に、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態において本発明による方法を実施するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムをさらに開示および提案する。具体的には、コンピュータプログラムがコンピュータ可読データ媒体上に保存され得る。したがって、具体的には、上で示した方法ステップa)~d)のうちの1つの方法ステップ、2つ以上の方法ステップ、または、すべての方法ステップが、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、また好適にはコンピュータプログラムを使用して、実施され得る。
【0038】
本発明は、コンピュータ上でのまたはコンピュータネットワーク上でのプログラムの実行時に、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態において本発明による方法を実施することを目的とする、プラグラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに開示および提案する。具体的には、プログラムコード手段がコンピュータ可読データ媒体上に保存され得る。
【0039】
さらに、本発明は、その上で保存されるデータ構造を有するデータ媒体を開示および提案し、データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの作業メモリまたはメインメモリ内にロードされるなどといったように、コンピュータまたはコンピュータネットワークにロードされた後で、本明細書で開示される実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態による方法を実行することができる。
【0040】
本発明は、コンピュータ上でのまたはコンピュータネットワーク上でのプログラムの実行時に、本明細書で開示される実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態による方法を実施することを目的とする、機械可読媒体上に保存されるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに提案および開示する。本明細書で使用されるコンピュータプログラム製品は、トレード可能な製品としてのプログラムを意味する。この製品は、一般に、紙フォーマット内に存在するなどといったように任意のフォーマット内に存在してよいか、または、コンピュータ可読データ媒体上に存在してよい。具体的には、コンピュータプログラム製品がデータネットワーク上に配布され得る。
【0041】
最後に、本発明は、本明細書で開示される実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態による方法を実施するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって可読である命令を含む変調データ信号を提案および開示する。
【0042】
好適には、本発明のコンピュータ実装の態様を参照すると、本明細書で開示される実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態による方法の、方法ステップのうちの1つまたは複数の方法ステップ、あるいは、すべての方法ステップが、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して実施され得る。したがって、一般に、データの提供/操作を含めた方法ステップのうちの任意の方法ステップが、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実施され得る。一般に、これらの方法ステップには、試料を提供することおよび/または実際の測定を実施することの特定の側面などの、手動の仕事を必要とするような方法ステップを通常除いた、方法ステップのうちの任意の方法ステップが含まれてよい。
【0043】
具体的には、本発明は:
- 少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサが、本記述で説明される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するように適合された、コンピュータまたはコンピュータネットワークと、
- コンピュータ上でデータ構造が実行されている間において、本記述で説明される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するように適合された、コンピュータにロード可能なデータ構造と、
- コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムが、コンピュータ上でプログラムが実行されている間において、本記述で説明される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するように適合された、コンピュータプログラムと、
- コンピュータ上でまたはコンピュータネットワーク上でコンピュータプログラムが実行されている間において、本記述で説明される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するためのプログラム手段を含むコンピュータプログラムと、
- 上記の実施形態によるプログラム手段を含むコンピュータプログラムであって、プログラム手段がコンピュータにより可読である記憶媒体上に保存される、コンピュータプログラムと、
- 記憶媒体であって、データ構造が記憶媒体上に保存され、データ構造が、コンピュータのまたはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業用記憶装置にロードされた後で、本記述で説明される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するように適合された、記憶媒体と、
- プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上でまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行される場合に本記述に記載される実施形態のうちの1つの実施形態による方法を実施するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に保存され得るかまたは記憶媒体上に保存されている、コンピュータプログラム製品と、
をさらに開示する。
【0044】
本発明の所見をまとめると、以下の実施形態が好適である。
実施形態1:ラボラトリ機器のための引き出し組立体であって、この引き出し組立体が、
ラボラトリ機器の液体のための容器、特には試料管を受けるためのマガジンが装填されるように構成された引き出しであって、引き出しが前方端部および後方端部を備える、引き出しと、
引き出しに隣接するように配置された少なくとも1つの部分を備えるフレームであって、この部分が第1の端部から第2の端部まで長手方向に延在する、フレームと、
を備え、
引き出しは、引き出しがフレーム内に格納されて前方端部が第1の端部に隣接する格納位置と、引き出しがフレームから延伸して前方端部を第2の端部に隣接する延伸位置との間で、フレームに対して移動可能であり、
フレームが、第1の部分および第1の部分の下方にある第2の部分を有する経路を備え、第1の部分および第2の部分が長手方向に平行な方向に延在し、第1の部分が第1の端部に向かってテーパ状となっており、引き出しの方を向き、
引き出し組立体がさらに、
経路内を移動可能である回転要素と、
引き出しが格納位置にあるときに回転要素を第2の部分から第1の部分まで持ち上げるように構成されたリフト機構と
を備え、
経路が、格納位置から延伸位置まで引き出しが移動させられるときに回転要素が第1の部分のところに位置して引き出しに接触することになるように、および、引き出しが延伸位置にあるときにのみ回転要素が第2の部分に入ることが可能となるように、構成される、引き出し組立体。
【0045】
実施形態2:第1の部分および第2の部分が、そのそれぞれの端部のところにある第1の接続部分および第2の接続部分により互いに接続可能であり、引き出しが延伸位置にある場合にのみ、第1の接続部分が第1の部分および第2の部分に対して露出され、引き出しが格納位置にある場合にのみ、第2の接続部分が第1の部分および第2の部分に対して露出される、実施形態1に記載の引き出し組立体。
【0046】
実施形態3:リフト機構が第2の接続部分のところに配置される、実施形態2に記載の引き出し組立体。
実施形態4:リフト機構が引き出しによって動作可能である、実施形態1から3のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0047】
実施形態5:リフト機構がレバーおよび傾斜要素を備える引き出し組立体であって、傾斜要素が、傾斜要素を第2の部分の方に向かせるような低い位置と傾斜要素を第1の部分の方に向かせるような高い位置との間で、レバーの作動により傾斜可能である、実施形態1から4のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0048】
実施形態6:レバーが、引き出しとの係合により作動されるように構成される、実施形態5に記載の引き出し組立体。
実施形態7:引き出しが互いの方を向く2つのストッパ表面を備え、レバーが2つのストッパ表面の間に位置する、実施形態5または6に記載の引き出し組立体。
【0049】
実施形態8:経路が引き出しの下方に位置する、実施形態1から7のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
実施形態9:経路が第1の端部より第2の端部の近くに位置する、実施形態1から8のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0050】
実施形態10:経路が第2の端部に隣接するところに位置する、実施形態1から9のいずか1つに記載の引き出し組立体。
実施形態11:回転要素がボールである、実施形態1から10のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0051】
実施形態12:引き出し組立体が、少なくとも1つの容器を有するマガジンが引き出し内に装填される場合に延伸位置から格納位置まで引き出しが移動するのを防止するように構成されたストッパ要素をさらに備える、実施形態1から11のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0052】
実施形態13:ストッパ要素がマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置に配置される、実施形態12に記載の引き出し組立体。
実施形態14:ストッパ要素が少なくとも1つのフラップを備え、フラップが、閉位置―フラップが長手方向に対して垂直な方向においてマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置―と、開位置―フラップがマガジンの頂部表面を露出するような位置―との間で枢動可能である、実施形態13に記載の引き出し組立体。
【0053】
実施形態15:ストッパ要素が2つのフラップを備え、各フラップが、閉位置―フラップが長手方向に対して垂直な方向においてマガジンの頂部表面を横切って延在するような位置―と、開位置―フラップがマガジンの頂部表面を露出するような位置―との間で枢動可能である、実施形態14に記載の引き出し組立体。
【0054】
実施形態16:閉位置では2つのフラップが互いの方を向く、実施形態15に記載の引き出し組立体。
実施形態17:引き出し組立体が、引き出し内の目標位置のところにマガジンを配置するように構成された少なくとも1つの位置決め要素をさらに備える、実施形態1から16のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0055】
実施形態18:位置決め要素が位置決めばねまたは位置決めクランプである、実施形態17に記載の引き出し組立体。
実施形態19:引き出し組立体が、格納位置において引き出しをロックするように構成されたロック機構をさらに備える、実施形態1から18のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0056】
実施形態20:引き出し組立体が、引き出しおよび/またはマガジンの状態を検出するように構成されたセンサをさらに備える、実施形態1から19のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0057】
実施形態21:ラボラトリ機器が、ラボラトリ用搬入・搬出システムであるか、または、ラボラトリ用搬入・搬出システムの一部である、実施形態1から20のいずれか1つに記載の引き出し組立体。
【0058】
実施形態22:実施形態1から21のいずれか1つに記載の少なくとも1つの引き出し組立体を備えるラボラトリ機器。
実施形態23:ラボラトリ機器が、液体のための複数の容器を取り扱うように構成される、実施形態22に記載のラボラトリ機器。
【0059】
実施形態24:ラボラトリ機器が少なくとも1つのマガジンをさらに備える、実施形態22または23に記載のラボラトリ機器。
実施形態25:マガジンがラックであり、液体のための容器が試料管である、実施形態24に記載のラボラトリ機器。
【0060】
本発明の別の任意選択の特徴および実施形態が、好適には従属の実施形態と組み合わされる、好適な実施形態の以下の説明でさらに詳細に開示される。ここでは、それぞれの任意選択の特徴が、当業者により実現されるような、単独の形で、さらには、任意の実現可能な組み合わせの形で、実現され得る。本発明の範囲はこれらの好適な実施形態によって限定されない。これらの実施形態が図に概略的に描かれている。ここでは、これらの図中の同じ参照符号が等しい要素または機能的に等しい要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】ラボラトリ機器を示す斜視図である。
図2】ラックハンドラ領域を示す斜視図である。
図3】引き出し組立体を示す斜視図である。
図4】部分を示す斜視図である。
図5】引き出し組立体を示す断面図である。
図6】引き出し組立体を示す断面図である。
図7】引き出し組立体を示す断面図である。
図8】引き出し組立体を示す断面図である。
図9】部分を示す平面図である。
図10】部分を示す平面図である。
図11】引き出し組立体を示す斜視図である。
図12】引き出し組立体を示す斜視図である。
図13図13Aから13Dは、第1の動作状態の引き出し組立体を示す異なった断面図である。
図14図14Aから14Dは、第2の動作状態の引き出し組立体を示す異なった断面図である。
図15図15Aから14Dは、第3の動作状態の引き出し組立体を示す異なった断面図である。
図16図16Aから16Dは、第4の動作状態の引き出し組立体を示す異なった断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1がラボラトリ機器100の斜視図を示す。ラボラトリ機器100が、いわゆる、ラボラトリ用搬入・搬出システムである。別法として、ラボラトリ機器100がラボラトリ用搬入・搬出システムの一部分であってもよい。ラボラトリ機器100が、液体のための複数の容器102(図3)を取り扱うように構成される。この例示の実施形態では液体のための容器102が試料管である。ラボラトリ機器100が、少なくとも1つのマガジン104(図2および3)をさらに備える。マガジン104は容器102を受けるように構成される。マガジン104はラックである。
【0063】
ラボラトリ機器100が、ラックハンドラセクション106および保管セクション108を備える。2つのセクション106、108の間に、装填/抜き取りインターフェース(詳細には示されない)が設けられ、ここを通してラックがラックハンドラセクション106から保管セクション108の中まで移送され、また、(回収の場合は)逆に移送される。この装填/抜き取りインターフェースがゲートなどを有することができる。
【0064】
保管セクション108が冷蔵庫110を備えることができる。本発明の文脈の保管セクションは、マガジン104内で複数の試料試験管を保管することができる様々なサイズのキャビネットである。保管セクションが、保管セクション内の試験管のために周囲温度を室温未満、18度未満であってよく、また10度未満であってよい温度、で維持するための調節(tempering)ユニットを有することができる。
【0065】
保管セクション108が、その内部に、多数のマガジン104を保管するための複数のシェルフを備える。本発明の幾何形状の基準を満たすマガジン104(つまり、種々のタイプである、到来するラック)に含まれるすべての容器102がそれらのそれぞれのマガジン104から取り出され、適切な保管ラックへと再び仕分けられ、その後で保管セクション108に装填される。保管セクションは、1人または2人の人間がドア(詳細には示されない)を通って保管セクション108の内部に入るのを可能にするのに十分な大きさであってよい。ドアが開けられている場合、安全スイッチング回路により、すべての動いているシステム(ロボットアーム、あるいは、他の移送または運搬システム、など)が、例えばニュートラルポジションまたはホームポジションで停止するようになる。マガジン104は複数の列のラックであり、例えば11個以上の位置、例としては13個から108個の位置、を備える3列である。さらに、保管セクション108が廃棄ユニット112を備えることができる。廃棄ユニット112が、保管セクション108を廃棄ユニット112から分離する壁の中にある内部開口部(詳細には示されない)を介して保管セクション108に接続される。この開口部を通して、使用期限(つまり、貯蔵寿命)の過ぎている容器102が廃棄ユニット112内で自動で廃棄され得る。ラックハンドラセクション106が、窓を備える複数の外壁から構成されたハウジングを有し、その結果、作業員が、機能しているラックハンドラの全体を直接に視認することができるようになる。ラックハンドラセクション106が外壁のうちの1つの外壁の中に開口部114を備え、開口部114を通してラックがラボラトリ機器100の中に挿入され得る。
【0066】
図2が、ラックハンドラセクション106のラックハンドラ領域116の斜視図を示す。開口部114が、少なくとも1つのロボットアーム118を備えるラックハンドラ領域116に繋がっている。開口部114は、スライドドアまたは格納式ドア(詳細には示されない)により閉鎖可能となり得る。
【0067】
ラボラトリ機器100が少なくとも1つの引き出し組立体120をさらに備える。引き出し組立体120がラックハンドラセクション106内に位置する。引き出し組立体120により、空のマガジン104、および/または、エラーが指定された容器102を含むマガジン104、ならびに/あるいは、少なくとも1つの回収された容器102を含むマガジン104が、ラボラトリ機器100から取り出され得る。以下で、引き出し組立体120をさらに詳細に説明する。
【0068】
図3が引き出し組立体120の斜視図を示す。以下では1つの引き出し組立体120に関連してのみ説明されるが、2つ以上の引き出し組立体120が存在してもよいことに留意されたい。引き出し組立体120が、ラボラトリ機器100の液体のための容器102、具体的には試料管を受けるためのマガジン104が装填されるように構成された引き出し122を備える。引き出しが前方端部124および後方端部126を備える。前方端部124および後方端部126が互いに反対側に位置する。前方端部124が、ラボラトリ機器100の方を向く引き出し122の端部となるように構成される。後方端部126が、ラボラトリ機器100から離れる方を向く引き出し122の端部となるように、および、ラボラトリ機器100の使用者に対して露出されるようにまたはアクセス可能となるように、構成される。引き出し組立体120が、引き出し122に隣接するように配置された少なくとも1つの部分130を備えるフレーム128をさらに備える。
【0069】
図4が部分130の斜視図を示す。部分130が第1の端部134から第2の端部136まで長手方向132に延在する。引き出し122がフレーム128に接続される。引き出し122は、引き出し122がフレーム128内に格納されるかまたは挿入されて前方端部124が第1の端部134に隣接する格納位置と、引き出し122がフレーム128から延伸して前方端部124が第2の端部136に隣接する延伸位置との間で、フレーム128に対して移動可能である。フレーム128が経路138を備える。
【0070】
図5および図6が、異なる動作状態の引き出し組立体120の断面図を示す。図7および8が、図5および図6の平面に平行な平面に沿う、異なる動作状態の引き出し組立体120の断面図を示す。経路138が引き出し122の下方に位置する。経路138が第1の端部134より第2の端部136の近くに位置する。より具体的には、経路138が第2の端部136に隣接するように位置する。経路が第1の部分140および第1の部分140の下方にある第2の部分142を有する。第1の部分140および第2の部分142が長手方向132に平行な方向に延在する。第1の部分140が第1の端部134に向かってテーパ状となっており、引き出し122の方を向く。第1の部分140および第2の部分142が、そのそれぞれの端部のところにある第1の接続部分144および第2の接続部分146により互いに接続可能である。引き出し122が延伸位置にある場合にのみ、第1の接続部分144が第1の部分140および第2の部分142に対して露出される。引き出し122が格納位置にある場合にのみ、第2の接続部分146が第1の部分140および第2の部分142に対して露出される。
【0071】
引き出し組立体120が、経路138内を移動可能である回転要素148をさらに備える。例示の実施形態では、回転要素148がボールである。図5に示されるように格納位置から延伸位置まで引き出し122が移動させられるときに回転要素148が第1の部分140のところに位置して引き出し122に接触することになるように、および、図6に示されるようにおよび後でさらに詳細に説明されるように引き出し122が延伸位置にあるときにのみ回転要素148が第2の部分142に入ることが可能となるように、経路138が設計または構成される。
【0072】
引き出し組立体120が、引き出しが格納位置にある場合に回転要素148を第2の部分142から第1の部分140まで持ち上げるように構成されたリフト機構150をさらに備える。リフト機構150が第2の接続部分のところに配置される。リフト機構150が引き出しにより動作可能である。リフト機構150がレバー152および傾斜要素154を備える。傾斜要素154が、傾斜要素154を第2の部分142の方に向かせるような図6に示される低い位置と傾斜要素154を第1の部分140の方に向かせるような図5に示される高い位置との間で、レバー152の作動により傾斜可能である。レバー152が、引き出し122との係合により作動されるように構成される。このため、引き出し122が互いの方を向く2つのストッパ表面156、158を備え、ここでは、レバー152が2つのストッパ表面156、158の間に位置する。ストッパ表面156、158が引き出し122の下側160のところに位置する。第1のストッパ表面156が第1の端部124に隣接するように配置され、第2のストッパ表面158が後方端部126に隣接するように配置される。図7が第2のストッパ表面158に係合されるレバー152を示しており、これは、傾斜要素154が高い位置にあることを意味している。図8が第1のストッパ表面156に係合されるレバー152を示しており、これは、傾斜要素154が低い位置にあることを意味している。
【0073】
図9および図10が、引き出し組立体120の、異なる動作状態の部分130の平面図を示している。第1の部分140が第1の端部134に向かってテーパ状となっていることから、引き出し122が延伸位置に向かってのみ移動することが可能である。その理由は、第1の部分140にある回転要素148のみが図9に矢印162で示される方向に移動させられ得るからである。回転要素148により、引き出し122が格納位置に向かって反対方向に移動することが防止される。その理由は、回転要素148が、第1の部分140内で、反対方向においては、図10に矢印164で示される方向に非常にわずかな程度でのみしか移動させられ得ないからである。
【0074】
図11および図12が引き出し組立体120の斜視図を示す。引き出し組立体120が、少なくとも1つの容器102を有するマガジン104が引き出し122内に装填される場合に延伸位置から格納位置まで引き出し122が移動するのを防止するように構成されたストッパ要素166をさらに備える。ストッパ要素166が、マガジン104の頂部表面168を横切って延在するような位置に配置される。ストッパ要素166は少なくとも1つのフラップ170を備え、フラップ170は、図11に示される閉位置―フラップ170が長手方向132に対して垂直な方向においてマガジン104の頂部表面168を横切って延在するような位置―と、図12に示される開位置―フラップ170がマガジン104の頂部表面168を露出するような位置―との間で枢動可能である。例示の実施形態では、ストッパ要素166は2つのフラップ170を備え、フラップ170の各々は、閉位置―それぞれのフラップ170が長手方向132に対して垂直な方向においてマガジン104の頂部表面168を横切って延在するような位置―と、開位置―それぞれのフラップ170がマガジン104の頂部表面168を露出するような位置―との間で枢動可能である。引き出し122が完全に格納位置にある場合、フラップ122がマガジン104の頂部表面168を横切って延在しない。というよりは、フラップ170が長手方向132に対して垂直な方向に延在し、頂部表面168に隣接する。閉位置では2つのフラップ170が互いの方を向く。開位置では、フラップ170が、フレーム128の部分130の第2の端部136に向かう長手方向に132に対して平行な方向に、互いに平行に延在する。図12が引き出し122が引き出された状態を示しており、対して、図11が引き出し122がフレーム128に挿入または装填された状態を示しているということことに留意されたい。
【0075】
引き出し組立体120が、マガジン104を引き出し122内の目標位置のところに配置するように構成された少なくとも1つの位置決め要素172をさらに備える。例示の実施形態では、位置決め要素172が位置決めばねまたは位置決めクランプである。
【0076】
引き出し組立体120が、任意選択で、引き出し122を格納位置でロックするように構成されたロック機構をさらに備えることができる。引き出し組立体120が、任意選択で、引き出し122および/またはマガジン104の状態を検出するように構成されたセンサをさらに備えることができる。例えば、センサが、引き出し122が格納位置または延伸位置あるいはそれらの間の任意の位置のいずれにあるのかを検出することができる。加えてまたは別法として、センサが、マガジン104が空であるのかどうか、あるいは、少なくとも1つの容器が存在するのかどうか、を検出することができる。
【0077】
図13A~13Dが、第1の動作状態にある引き出し組立体120の異なる断面図を示している。図13A~13Dに示される第1の動作状態では、引き出し122が図13Aで特に示される格納位置にある。リフト機構150の傾斜要素154が図13Bに示されるような高い位置にあり、ここでは、傾斜要素154が第1の部分140の方を向く。回転要素148が図13Bおよび13Dに示されるように第1の部分140にある。リフト機構150のレバー152が、図13Cに示されるように、引き出し122の第2のストッパ表面158に係合される。
【0078】
図14A~14Dが、第2の動作状態にある引き出し組立体120の異なる断面図を示している。図14A~14Dに示される第2の動作状態では、引き出し122が、図14Aに特に示されるように、格納位置から延伸位置への途中の中間位置にある。言い換えると、引き出し122が使用者によって引き出され始めており、その結果、図13Aに示される格納位置と比較すると、引き出しが右側に位置している。リフト機構150の傾斜要素154が依然として図14Bに示される高い位置にあり、ここでは、傾斜要素154が第1の部分140の方を向く。回転要素148が依然として図14Bおよび14Dに示されるように第1の部分140にある。リフト機構150のレバー152が移動させられておらず、引き出し122の第2のストッパ表面158に係合されていないが、図14Cに示されるように、第1のストッパ表面156と第2のストッパ表面158との間に位置する。テーパ状の第1の部分140および回転要素148が、図14Dの図示に関して引き出し122が左側に移動させられるのを妨害する。
【0079】
図15A~15Dが、第3の動作状態にある引き出し組立体120の異なる断面図を示している。図15A~15Dに示される第3の動作状態では、引き出し122が、図15Aに特に示されるように、延伸位置にある。言い換えると、引き出し122が使用者によって完全に引き出されており、その結果、図14Aに示される中間位置と比較すると、引き出しが右側に位置している。リフト機構150の傾斜要素154が図15Bに示される低い位置にあり、ここでは、傾斜要素154が第2の部分142の方を向く。回転要素148が、図15Bおよび15Dに示されるように、第1の接続部分144を通って第2の部分142に入ることが可能となる。リフト機構150のレバー152が、図15Cに示されるように、引き出し122の第1のストッパ表面156に係合される。
【0080】
図16A~16Dが、第4の動作状態にある引き出し組立体120の異なる断面図を示している。図16A~16Dに示される第4の動作状態では、引き出し122が、図16Aに特に示されるように、延伸位置から格納位置への途中の中間位置にある。言い換えると、引き出し122が使用者によりラボラトリ機器100に装填され始めており、その結果、図15Aに示される延伸位置と比較して、引き出しが左側に位置している。リフト機構150の傾斜要素154が依然として図16Bに示されるような低い位置にあり、ここでは、傾斜要素154が第2の部分142の方を向く。回転要素148が依然として図16Bおよび16Dに示されるような第2の部分142にある。リフト機構150のレバー152が引き出し122の第1のストッパ表面156に係合されていないが、図16Cに示されるように、第1のストッパ表面156と第2のストッパ表面158との間に位置している。第2の部分142が、テーパ状ではなく、直線状などとなるように設計され得ることから、回転要素148は、図16Dの図示に関して引き出し122が左側に移動させられるのを妨害しない。
【0081】
引き出し122が図16Aおよび16Dの図示に関してさらに左側に移動させられると、引き出し122が再び格納位置まで移動させられる。リフト機構150のレバー152が引き出し122の第2のストッパ表面158に係合されると、リフト機構150の傾斜要素154が低い位置から高い位置まで移動させられる。それにより、回転要素148が、傾斜要素154により、第2の接続部分146を通って第1の部分まで上方に移動させられる。したがって、引き出し122が図13Aに示されるように再び配置される。この位置では、位置決め要素172が、所定の方向への付勢力により、マガジン104を引き出し122内のその目標位置のところに配置する。
【0082】
引き出し122が格納位置にある間において少なくとも1つの容器102がマガジン104内に存在する場合、ストッパ要素166のフラップ170が閉位置にあり、長手方向132に対して垂直な方向に延在する。引き出し122が延伸位置まで移動させられると、フラップ170が、容器102に係合されることにより、開位置まで移動または枢動させられ、図12に示されるように長手方向132に平行に延在する。すべての容器102を取り外した後、フラップ170が再び閉位置へと移動または枢動することができ長手方向132に対して垂直な方向に延在することができる。すべての容器102がマガジン104から取り外されているわけではなく、1つまたは複数の容器102がマガジン104内に依然として存在する場合、マガジン104が格納位置まで再び移動させられることが阻止される。これは、フラップ170が容器102に係合されることになり、それによりフレーム128の部分130の第1の端部134に向かって反対方向に移動または枢動することが可能ではないことを理由とする。
【符号の説明】
【0083】
100 ラボラトリ機器
102 容器
104 マガジン
106 ラックハンドラセクション
108 保管セクション108
110 冷蔵庫
112 廃棄ユニット
114 開口部
116 ラックハンドラ領域
118 ロボットアーム
120 引き出し組立体
122 引き出し
124 前方端部
126 後方端部
128 フレーム
130 部分
132 長手方向
134 第1の端部
136 第2の端部
138 経路
140 第1の部分
142 第2の部分
144 第1の接続部分
146 第2の接続部分
148 回転要素
150 リフト機構
152 レバー
154 傾斜要素
156 第1のストッパ表面
158 第2のストッパ表面
160 下側
162 矢印
164 矢印
166 ストッパ要素
168 頂部表面
170 フラップ
172 位置決め要素
図1
図2
図3
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