(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】螺旋バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20220719BHJP
A61F 2/958 20130101ALI20220719BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61F2/958
(21)【出願番号】P 2018098597
(22)【出願日】2018-05-23
(62)【分割の表示】P 2015535743の分割
【原出願日】2013-10-01
【審査請求日】2018-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-28
(32)【優先日】2012-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515089116
【氏名又は名称】キューマックス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ラデュカ,ロバート シー.
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】村上 聡
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502679(JP,A)
【文献】特開2001-009039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/10
A61F2/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
変形可能なセクションであって、
前記変形可能なセクションが、弾性材料、可撓性支持材料、並びに、前記弾性材料の表面及び前記可撓性支持材料の表面の両方によって画定された膨張ルーメンを備え、前記変形可能なセクションは変形していない構造から変形した構造へ変形することができ、
前記変形可能なセクションが前記変形していない構造をなしているとき、前記弾性材料の表面と前記可撓性支持材料の表面とは、互いに前記膨張ルーメンの反対側に位置
するとともに、前記膨張ルーメンは前記変形可能なセクション内で前記変形可能なセクションの長さ方向に沿って螺旋状に捻じれており、
前記変形可能なセクションが前記変形した構造をなしているとき、前記膨張ルーメンは、コイル状または螺旋形状を有し、前記膨張ルーメンが前記コイル状または前記螺旋形状を有するとき、前記膨張ルーメンは前記変形可能なセクションの外部表面によって画定される通路の周囲に螺旋状に延びており、前記変形可能なセクションが血管内で前記変形して
いる構造にあるとき、前記通路の中心および前記血管の中心を血液が流れるように、前記通路の中心が前記血管の中心に位置し、前記変形可能なセクションが前記変形した構造をなしているとき、前記弾性材料及び前記可撓性支持材料は前記通路の周囲に螺旋状に延在し、
前記変形可能なセクションは、前記膨張ルーメンの膨張により前記変形していない構造から前記変形した構造に変形可能であり、
前記膨張ルーメン内の圧力が上昇すると、前記弾性材料が、前記膨張ルーメンから離れる方向に拡張する、カテーテル。
【請求項2】
前記変形可能なセクションが前記変形した構造をなしているとともに前記膨張ルーメン内の前記圧力が上昇すると、前記膨張ルーメンの断面寸法が増加し、前記変形可能なセクションが前記変形した構造をなしているとき、前記可撓性支持材料は、前記変形可能なセクションの螺旋形状の内径に沿って位置し、前記弾性材料は、前記螺旋形状の外径上に位置し、これらにより、前記膨張ルーメン内の前記圧力が上昇すると、前記弾性材料が前記可撓性支持材料から径方向外側に拡張する、請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項3】
カテーテルであって、
変形可能なセクションであって、
前記変形可能なセクションが、弾性材料、可撓性支持材料、並びに、前記弾性材料及び前記可撓性支持材料の両方によって画定された膨張ルーメンを備え、前記変形可能なセクションは、線形状から螺旋形状に変形可能であり、前記変形可能なセクションが前記線形状にあるとき、前記弾性材料と前記可撓性支持材料とは、互いに前記膨張ルーメンの反対側に位置
するとともに、前記膨張ルーメンは前記変形可能なセクション内で前記変形可能なセクションの長さ方向に沿って螺旋状に捻じれており、前記変形可能なセクションが前記螺旋形状にあるとき、前記弾性材料、前記可撓性支持材料、及び前記膨張ルーメンは、前記変形可能なセクションの外部表面によって画定される通路の周囲に螺旋状に延びており、前記変形可能なセクションが血管内で螺旋形状にあるとき、前記通路の中心および前記血管の中心を血液が流れるように、前記通路の中心が前記血管の中心に位置する変形可能なセクションと、
前記変形可能なセクションが前記線形状にあるとき、前記膨張ルーメンの膨張は、前記変形可能なセクションを前記螺旋形状に変形させ、
前記弾性材料及び前記可撓性支持材料は、異なるヤング係数を有し、前記膨張ルーメンの膨張に伴って、前記弾性材料及び前記可撓性支持材料はそれぞれ異なる比率で長さが変化する、カテーテル。
【請求項4】
前記変形可能なセクションが前記変形していない構造をなしているとき、前記変形可能なセクションは直線
状である、請求項
1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年12月7日出願の特許文献1;2012年11月9日出願の特許文献2;及び2012年10月1日出願の特許文献3の非仮出願である。これらの米国仮特許出願の開示内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
体内の管腔の閉塞を引き起こさずに体内の管腔壁に対して径方向外向きの力を加えるように配置することができるバルーンカテーテルの要求が存在する。このようなカテーテルは、蛇行した解剖学的構造内を進む能力を付与するだけではなく、変化する拡張特性、例えば、小さい又は大きい径方向外向きの力、低い又は高い拡張比を付与するように形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国仮特許出願第61/734,860号
【文献】米国仮特許出願第61/724,875号
【文献】米国仮特許出願第61/708,524号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で説明される方法及び器具は血管の流れを維持したまま拡張を可能にする変形可能なセクションを有するカテーテルを含む改善されたカテーテルについてである。以下の開示は、体内の血管に使用される器具及び方法について述べるが、このような方法及び器具は、様々な体の部分に適用することができる。
【0005】
本開示は、カテーテルを含み、このカテーテルは、近位部分と、遠位部分と、この近位部分と遠位部分との間に位置する、変形可能な断面を有する変形可能なセクションであって、この変形可能なセクションの断面が、第1の側の弾性材料、第2の側の可撓性支持材料、並びにこれらの弾性材料及び可撓性支持材料の両方によって画定された膨張ルーメンを備え、弾性材料、膨張ルーメン、及び可撓性支持材料が、変形可能なセクションの長さに沿って螺旋状に延在するように、変形可能なセクションの断面が、変形可能なセクションの長さに沿って捻じれている、変形可能なセクションと、少なくとも変形可能なセクションの長さに沿って、少なくともカテーテルの近位部分まで可撓性支持材料を貫通して延在するプルワイヤであって、このプルワイヤに近位側に張力が加えられると、変形可能なセクションが螺旋形状に変形する、プルワイヤと、を備え、膨張ルーメン内の圧力が上昇すると、弾性材料が、膨張ルーメンから離れる方向に拡張する。
【0006】
1つのバリエーションでは、螺旋形状において、可撓性支持材料が、螺旋形状の内径に沿って位置し、弾性材料が、螺旋形状の外径に位置し、これにより、膨張ルーメン内の圧力が上昇すると、弾性材料が、螺旋形状から径方向外側に拡張する。
【0007】
別のバリエーションでは、プルワイヤが、プルワイヤルーメンを貫通して延在し、このプルワイヤルーメンと膨張ルーメンとが、変形可能なセクションの断面において互いに180度反対に位置している。
【0008】
器具のバリエーションは、近位部分及び変形可能なセクションの可撓性支持材料を貫通して延在するガイドワイヤルーメンを備えることができる。器具は、近位部分、遠位部分、及び変形可能なセクションの中心を貫通して延在する1つ以上のガイドワイヤルーメンを任意選択で備えることもできる。
【0009】
一例では、ガイドワイヤルーメンは、遠位部分を貫通して延在する。
【0010】
器具は、近位部分を貫通して延在する膨張ルーメンを任意選択で備えることもできる。
【0011】
器具のバリエーションでは、可撓性支持材料のデュロメータの硬さは、近位部分のデュロメータの硬さよりも低い。
【0012】
器具は、少なくとも1つの巻き又は複数の巻きを有する螺旋状の変形可能なセクションを備えることができ、この螺旋形状は、ピッチ及び直径を有する。
【0013】
器具は、複数の巻きの少なくとも2つの巻きが、螺旋形状の長さに沿って連続しているバリエーションを含み得る。追加のバリエーションでは、複数の巻きの少なくとも2つの巻きは、螺旋形状の長さに沿って離間し、互いに接触していない。
【0014】
一部のバリエーションでは、螺旋形状のピッチは、複数の巻きに対して一定である。あるいは、螺旋形状のピッチは、複数の巻きに対して変化し得る。さらに、螺旋形状の直径は、螺旋形状の長さに沿って一定であっても良いし、又は変化しても良い。
【0015】
本開示は、体内の管腔内で医療処置を実施する方法も含む。一例では、このような方法は、体内の管腔内にカテーテルを挿入するステップであって、カテーテルが、近位部分と、遠位部分と、この近位部分と遠位部分との間に位置する変形可能なセクションであって、この変形可能なセクションの断面が、第1の側の弾性材料、第2の側の可撓性支持材料、及びこれらの弾性材料及び可撓性支持材料の両方によって画定された膨張ルーメンを備え、弾性材料、膨張ルーメン、及び可撓性支持材料が、変形可能なセクションの長さに沿って螺旋状に延在するように、変形可能なセクションの断面が、変形可能なセクションの長さに沿って捻じれている、変形可能なセクションと、を有する、ステップと、プルワイヤに張力を加えることによって、変形可能なセクションをほぼ線形の形状から螺旋形状に変形させるステップであって、プルワイヤが、少なくとも変形可能なセクションの長さに沿って、少なくともカテーテルの近位部分まで可撓性支持材料を貫通して延在し、プルワイヤの張力により、変形可能なセクションが螺旋形状に変形する、ステップと、膨張ルーメン内の圧力を上昇させることによって弾性材料を拡張させるステップと、を含む。
【0016】
別の例では、この方法は、弾性材料を拡張させるステップを含み、このステップでは、体内の管腔がカテーテルによって閉塞されないように螺旋形状を貫通する通路を維持したまま、弾性材料を体内の管腔の壁に対して拡張させて、径方向外側の力を体内の管腔の壁に加える。
【0017】
別の例では、この方法は、カテーテルの変形可能なセクションを別の医療器具内に配置するステップであって、体内の管腔がカテーテルによって閉塞されないように螺旋形状を貫通する通路を維持したまま、弾性材料の拡張により、別の医療器具を体内の管腔の壁に対して拡張させる、ステップをさらに含み得る。
【0018】
本開示は、カテーテルの別のバリエーションも含み、このカテーテルは、近位部分と、遠位部分と、この近位部分と遠位部分との間に位置する変形可能と、を備え、変形可能なセクションの断面が、第1の側の弾性材料、第2の側の可撓性支持材料、並びに弾性材料及び可撓性支持材料の両方によって画定された膨張ルーメンを備え、変形可能なセクションの断面が、変形可能なセクションの長さに沿って異なるヤング係数を有する2つの材料を含み、これにより、弾性材料、膨張ルーメン、及び可撓性支持材料が、管の弾性部分の膨張の際に異なる比率で長さが変化し、弾性バルーン材料が、カテーテルのルーメンの可撓性支持材料に対して伸長し、この伸長により、変形可能なセクションが、円筒状の円錐又はフック型であるコイル又は螺旋形状に変形する。
【0019】
このようなヤング係数は、任意選択で、
【0020】
【0021】
本明細書で説明されるアクセス器具及び処置のバリエーションは、可能な限り、様々な実施形態の特徴の組み合わせ、又は実施形態自体の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】螺旋構造をとることができる変形可能なセクションを有するカテーテルを例示している。
【
図1B】変形可能なセクションが螺旋又は螺旋形状をとるようにプルワイヤに加えられる近位方向の力を例示している。
【
図1C】螺旋構造にあるカテーテルの斜視図を示している。
【
図1D】カテーテルの変形可能なセクションの拡張可能な構造を例示している。
【
図1E】カテーテルの変形可能なセクションの拡張可能な構造を例示している。
【
図1F】カテーテルの変形可能なセクションの拡張可能な構造を例示している。
【
図1G】カテーテルの変形可能なセクションの拡張可能な構造を例示している。
【
図1H】カテーテルの変形可能なセクションの拡張可能な構造を例示している。
【
図2A】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2B】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2C】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2D】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2E】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2F】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2G】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2H】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2I】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2J】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図2K】変形可能なセクションの断面が変形可能なセクションの長さに沿ってどのように捻じれているかを示している。
【
図3A】本明細書で説明されるカテーテルのバリエーションに使用される螺旋形状の追加のバリエーションを例示している。
【
図3B】本明細書で説明されるカテーテルのバリエーションに使用される螺旋形状の追加のバリエーションを例示している。
【
図3C】本明細書で説明されるカテーテルのバリエーションに使用される螺旋形状の追加のバリエーションを例示している。
【
図5A】医療器具を体内の管腔内に留置するために変形可能なセクションが使用されているカテーテルの一例を示している。
【
図5B】医療器具を体内の管腔内に留置するために変形可能なセクションが使用されているカテーテルの一例を示している。
【
図5C】医療器具を体内の管腔内に留置するために変形可能なセクションが使用されているカテーテルの一例を示している。
【
図6A】ガイドワイヤルーメンが変形可能なセクションの一側から出て遠位部分で器具に再び進入している器具のバリエーションを示している。
【
図6B】ガイドワイヤルーメンが変形可能なセクションの一側から出て遠位部分で器具に再び進入している器具のバリエーションを示している。
【
図7A】螺旋の巻きを形成するときに変形可能なセクションの拡張を可能にするアクチュエータを備える器具の別のバリエーションを示している。
【
図7B】螺旋の巻きを形成するときに変形可能なセクションの拡張を可能にするアクチュエータを備える器具の別のバリエーションを示している。
【
図8A】流体送達ルーメンを備える器具のバリエーションを例示している。
【
図8B】流体送達ルーメンを備える器具のバリエーションを例示している。
【
図8C】流体送達ルーメンを備える器具のバリエーションを例示している。
【
図8D】流体送達ルーメンを備える器具のバリエーションを例示している。
【
図9A】変形可能なセクションの外面のポートを示している。
【
図9B】変形可能なセクションの外面のポートを示している。
【
図10】
図10は、動脈内で拡張して流体を送達している器具のバリエーションを示している。
【
図11A】器具の追加のバリエーションを示している。
【
図11B】器具の追加のバリエーションを示している。
【
図12A】コイル又は螺旋を形成するときに変形可能なセクションを補助するために使用される追加のワイヤ又は構造を備えた器具のバリエーションを示している。
【
図12B】コイル又は螺旋を形成するときに変形可能なセクションを補助するために使用される追加のワイヤ又は構造を備えた器具のバリエーションを示している。
【
図12C】コイル又は螺旋を形成するときに変形可能なセクションを補助するために使用される追加のワイヤ又は構造を備えた器具のバリエーションを示している。
【
図12D】コイル又は螺旋を形成するときに変形可能なセクションを補助するために使用される追加のワイヤ又は構造を備えた器具のバリエーションを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の例示は、本開示に従った器具及び方法の様々な実施形態及び例を実証する。様々な器具及び方法の態様の組み合わせ並びにこれらの器具及び方法自体の組み合わせは、本開示の範囲内と見なされる。
【0024】
図1Aは、本開示に従ったカテーテル100のバリエーションを例示している。
図1Aは、カテーテル100を概ね線形の構造で示している;しかしながら、カテーテル100は、任意選択で、蛇行した解剖学的構造、例えば、体中の脈管及び/又は他の器官内を進めるために可撓性に構成することができる。
図1Aは、遠位端部114で終端した任意選択のルーメンを有する遠位部分102を備えるカテーテルを示している。カテーテル100は、このカテーテル100を操作するために操作者によって使用される近位部分106も備える。カテーテル100のバリエーションは、近位部分106の近位端部に向けて配置される任意の数のハブ又はハンドルを備えることができる。カテーテル100は、近位部分106と遠位部分102との間に位置する変形可能なセクション104を備える。後述されるように、変形可能なセクション104は、プルワイヤ108又は他の同様の手段によって使用者が作動させることができる。器具100のバリエーションは、遠位部分102が存在しないカテーテル100、又はカテーテル100のかなりの長さに沿って延在する変形可能なセクション104を有するカテーテル100を含み得る。変形可能なセクション104は、以下に詳細に説明されるように、変形可能なセクション104の長さに沿って捻じれた、118に示される断面を有する。この捻じれた断面は、変形可能な部分104の長さに沿って螺旋状に延在する少なくとも2つの異なる材料を含む。
【0025】
図1Bは、変形可能なセクション104を螺旋又は螺旋形状110にする、プルワイヤ108に加えられる近位方向の力116を例示している。変形可能なセクション104の捻じれた断面は、変形可能なセクションの少なくとも一部を貫通するプルワイヤ108に張力が加えられると、変形可能なセクション104が螺旋状に変形する。
図1Bに例示されているバリエーションは、4つの巻き112を有する螺旋形状100を明示している。しかしながら、本明細書で説明される器具及び方法は、任意の数の巻き112、及び以下に示される代替の螺旋構造を有することができる。
【0026】
図1Cは、螺旋形状の変形可能なセクション104を有するカテーテル100の斜視図を示し、図示されているように、螺旋形状110は、螺旋構造のときにカテーテル100が体内の管腔を閉塞させるのを防止する通路120を有する。
【0027】
図1Dは、本開示のカテーテル100の別のバリエーションを例示している。このバリエーションでは、カテーテル100の変形可能なセクション104は、拡張することができる。
図1Eは、
図1Dの線1E-1Eに沿って切り取られた断面を例示している。
図1Fは、螺旋形状の最も左の巻き112の拡大図を例示している。図示されているように、カテーテル100は、膨張ルーメン150、ガイドワイヤルーメン152、及びプルワイヤ154又はプルワイヤルーメン154を備えることができる。器具のバリエーションは、拡張可能な材料156及び可撓性材料158によって画定された膨張ルーメン150を備える。この可撓性材料により、変形可能なセクション104の選択的な湾曲が可能になると共に、拡張可能な材料156が、膨張ルーメン150の加圧時に拡張する。特定のバリエーションでは、弾性材料156は、通路120を維持したまま材料156が螺旋形状から外側に拡張し、これにより、器官又は体内の管腔を通る流れが維持されるように正しく配置されている。
【0028】
弾性材料は、医療用弾性バルーンに一般的に使用される材料を含み得る。支持/弾性材料の材料の例として、ペバックス、又はペバックスとシロキサンの混合物を挙げることができる。弾性材料は、可撓性材料と同時に押し出しすることができる。また、器具のバリエーションは、変形可能なセクションに使用される可撓性材料よりも硬い材料を含む近位部分を備えることができる。
【0029】
さらに、特定のバリエーションでは、器具は、特定の材料が選択されれば、別個のプルワイヤを必要とすることなく自動的に螺旋を形成することができる。例えば、このようなバリエーションでは、弾性の拡張可能バルーン材料が、同時押し出しされる、又はカテーテルの非弾性材料に他の方法で接着され、これらの2つの材料は、異なる剛性及び伸長応力ひずみ曲線を有する。このようなバリエーションでは、管の弾性部分の膨張時に、長さが、管の一方の壁のみで変化するため、他方の壁が、低弾性材料によって拘束される。これにより、拡張時に、カテーテルのバルーンセグメントが螺旋コイル構造を自動的に形成する。バルーンの直径及び膨張した螺旋バルーン構造の直径は、材料の選択、デュロメータ硬さ、長さ、及び押し出し断面形状を含む適切な設計パラメータを選択することによって予め決定することができる。
【0030】
図1Gは、螺旋形状から離れる方向に弾性材料156を拡張させることによる変形可能なセクション104に沿った拡張を例示している。図示されているように、可撓性材料158は、螺旋形状の形成を可能にするが、通路120の閉塞は防止する。
【0031】
図1Hは、
図1Gの線1H-1Hに沿って切り取られた断面図を示している。図示されているように、弾性材料156は、(流体又はガスのいずれかによって)膨張ルーメンが加圧されるため、螺旋から離れる方向に拡張している。
図1Hは、変形可能なセクション104の変形を可能にするが、拡張する可撓性材料156の支持体となる弾性材料158も例示している。
【0032】
図2Aは、
図1Fに示されている変形可能なセクション104の断面を例示している。同様に、膨張ルーメン150は、拡張可能な材料156及び可撓性材料158によって画定されている。この可撓性材料が、変形可能なセクション104の選択的な湾曲を可能にし、拡張可能な材料156が、膨張ルーメン150の加圧時に拡張する。同様に、弾性材料156は、通路120を維持したまま材料156が螺旋形状から外側に拡張し、これにより、器官又は体内の管腔を通る流れが維持されるように正しく留置することができる。
【0033】
一例では、器具の非拡張部分は、Peba、ポリウレタン、ナイロン、あるいはポリウレタンとシロキサンの混合物、Pebaとシロキサンの混合物、又はナイロンとシロキサンの混合物から形成することができる。Pebaとシロキサン、ポリウレタンとシロキサン、又はナイロンとシロキサンを含むバリエーションでは、押し出しは、シロキサンがチオエーテル材料中に均等に分散するように行われる。シロキサンを均等に分布させることにより、押し出しの間中、潤滑性の一定した向上が可能となる。代替のバリエーションは、医療器具の適用例に使用される一般的に知られている任意の材料から形成される器具を含む。
【0034】
図2Bは、変形可能なセクション104の断面の捻じれを例示する変形可能なセクション104の部分図を示している。
図2Bは、線2C/2C~線2K/2Kに沿って切り取られた多数の断面図を示している。図示されているように、断面が、変形可能なセクション104の長さに沿って捻じれ、これにより、この断面を形成する異なる材料が、変形した部分104に沿って螺旋状に捻じれている。断面が捻じれている部分に亘る捻じれ及び/又は長さの割合は、特定の適用例に必要な特徴を得るために選択的に選ぶことができる。
【0035】
図3A~
図3Cは、様々な変形可能なセクション104の螺旋形状110のバリエーションを例示している。
図3Aは、螺旋の巻き間の均一な直径170、172及び均一なピッチ174を有する螺旋形状を例示している。
図3Bは、変化する直径を例示している。この例では、直径174は、遠位側の巻きが近位側の巻きよりも小さい直径176を有するように遠位方向に縮小している。
図3Cは、距離178、180、182によって測定される変化するピッチを有する螺旋形状を例示している。図示されているように、ピッチは、遠位方向に拡大している。しかしながら、ピッチは、近位方向にも拡大することができる。
【0036】
図4Aは、1つの螺旋の巻き112を有するカテーテル100のバリエーションを例示している。
図4Bは、
図4Aのカテーテル100の側面図を例示している。
図4Cは、弾性材料156が拡張し、可撓性材料158が、変形して巻き112を形成し、通路120を形成するための支持体となっている
図4Aのバリエーションを示している。
図4Cは、ガイドワイヤルーメンを通過しているガイドワイヤ188も示している。
【0037】
図5A~
図5Cは、本明細書で説明されたようにカテーテル100を使用する方法の一例を例示している。
図5Aに示されているように、カテーテル100は、血管10又は器官(このバリエーションでは、血管は大動脈弓)の中を前進している。しかしながら、カテーテル100は、体内の様々な器官又は血管に適合する大きさとすることができる。カテーテル100は、任意選択で、インプラント200を血管10内で拡張するために使用することができる。あるいは、カテーテル100は、器官又は血管に対して拡張する力を付与するために単独で使用することができる。
図5Bは、カテーテル100の変形可能なセクション104の螺旋への変化を例示している。図示されているように、これは、任意選択で、位置決め又は部分的な留置のためにインプラント202を部分的に拡張することができる。
図5Cは、インプラント202を完全に留置する弾性材料の拡張を示している。上記説明されたように、螺旋形状の通路により、血管10の流れが連続している。
【0038】
図6Aは、ガイドワイヤルーメン152を備える器具のバリエーションを示し、このガイドワイヤルーメン152は、器具を貫通して延在し、かつ複数の開口114を有し、これらの複数の開口114により、ガイドワイヤが、変形可能なセクション104の外部に出て、遠位部分102の開口114から器具100に再び進入し、これにより、ガイドワイヤが、遠位のガイドワイヤ開口114を通過することができる。図示されているように、ガイドワイヤルーメン152は、器具100の近位部分106において、プルワイヤ108又は他の同様の手段に近接して延在させることができる。しかしながら、変形可能なセクション104又はその近傍で、ガイドワイヤルーメンが、開口114で器具100を出ているため、ガイドワイヤが、器具から出て変形可能なセクション104に沿って進み、器具の遠位部分102に近接した第2の開口114で器具に再び進入することができる。この構成により、ガイドワイヤが、最も遠位の開口114から延出することができる。
【0039】
図6Bは、器具100を貫通して延在するが、螺旋巻き110の中を通過しているガイドワイヤ188を例示している。次いで、ガイドワイヤ188は、器具100の遠位部分102に再び進入しているため、医師が、ガイドワイヤ188を用いて器具100の遠位部分102を操作することができる。
【0040】
図7A及び
図7Bは、変形可能なセクション104が螺旋巻き112を形成するときに変形可能なセクション104の拡張を可能にするアクチュエータ194を備える器具100の別のバリエーションを示している。
図7Aは、線形構造にある器具100を示し、変形可能なセクション104を貫通して延在するプルワイヤ108が、近位側に延びて、アクチュエータ192に接続されている。このバリエーションでは、プルワイヤ108は、アクチュエータ192内でピストン194に接続されている。アクチュエータ192は、弁190(このバリエーションでは、三方弁である)にも接続されている。弁は、器具100の取り付け具186にも接続されている。プルワイヤ108は、ガイドワイヤルーメン152に挿入されるガイドワイヤとは別個にすることができることに留意されたい。
【0041】
図7Bは、矢印210によって示されている、弁190によって駆動される流体源を示している。流体210は、矢印212によって示されているように器具100内を移動して、上記説明された拡張可能な領域を拡張する。しかしながら、三方弁190はまた、流体でアクチュエータ192を加圧して、ピストン194をアクチュエータ192から外側に移動させる。ピストン194は、プルワイヤ108に接続されているため、ピストン194の移動により、矢印216によって示されているようにプルワイヤが近位側に移動する。プルワイヤの移動により、変形可能なセクション104の巻き112が螺旋形状を形成する。
【0042】
図8A~
図8Dは、本明細書で説明される器具に使用される別の態様を例示している。これらの図面は、器具100の拡張可能なセクションの断面図を示している。このバリエーションでは、器具100は、流動物質のカテーテル本体からの送達を可能にする流体送達ルーメン162を備える。
図8Aは、流体送達ルーメン162が器具100の拡張可能な壁156に配置されているバリエーションを示している。代替のバリエーションは、流体送達ルーメン162を器具100の壁内の任意の位置に配置することを可能にする。
図8Bは、複数の流体送達ルーメン162を備える器具100のバリエーションを例示している。
図8A~
図8Dには示されていないが、流体送達ルーメン162は、器具本体100の外部の所望の位置に流体を供給する1つ以上のポートを有する。
図8Cは、流体送達ルーメン162が閉塞されることなく楕円形の形状をとっている拡張した状態の器具100を示している。
図8Dは、流体送達ルーメン162が、カテーテル100の外面の拡張可能なセクション163によって形成されている器具100の別のバリエーションを例示している。この構成は、拡張して流体の通過を容易にすることができる大きい流体送達ルーメンを可能にしている。流体送達ルーメン162は、カテーテルが直線状及び/又はコイル形状であるときに流体の送達を可能にする1つ以上の流体送達ポート(
図8A~
図8Dには不図示)を有する。
【0043】
図9A及び
図9Bは、1つ以上の流体ポート128が器具100のコイル部分又は螺旋部分の外面で終端している、本明細書で説明される器具のバリエーションを例示している。ポート128は、流体ルーメンに流体連通し、変形可能なセクション104の螺旋の巻き112の一側又は両側に配置することができる。このような構成では、ポート128を螺旋の巻き112の一側及び/又は両側に配置することにより、変形可能なセクション104の拡張の際にポート128が遮断されるのを防止する。
図9Bは、ポート128を備える器具100のバリエーションを例示している。このバリエーションでは、ポート128は、変形可能なセクション104の巻き128の中心に配置されている。
図9A及び
図9Bはまた、流体の外部供給源を対応するハブに接続して流体の送達を可能にするために、流体送達ルーメン(不図示)に流体接続することができる任意の数のハブ196、198を備える器具100も示している。追加のバリエーションでは、ポートは、限定されるものではないが、カテーテルの非拡張部分を含むカテーテルの追加の部分に配置することができる。
【0044】
図10は、心臓12の冠動脈14内に配置された、本明細書で説明された器具100のバリエーションを例示し、変形可能なセクション104はコイル状で、冠状血管14の血液の流れを可能にする。器具100はまた、上記説明されたポートを介した薬物、医薬、又は他の薬剤の送達も可能にする。
【0045】
図11A及び
図11Bは、器具の追加のバリエーションを示し、螺旋又は変形可能なセクションが、近位部分106及び遠位部分102に接続され、そして、螺旋形状への変形を可能にするために弾性材料156及び可撓性材料158を含む。図示されているように、変形可能なセクション104は、任意選択で、透明又は半透明の材料になるように選択することができる。
【0046】
図12A~
図12Dは、変形可能なセクション104の螺旋構造への変形を容易にする機構を備える器具100の別の例を示している。本明細書で説明された他のバリエーションと同様に、本明細書で説明された各例の機構及び態様は、このような機構が対立しない器具の他の開示されるバリエーションと組み合わせることができる。
【0047】
図12Aに示されているように、器具100は、その近位端部から(例えば、図示されているハブ196から)、変形可能なセクション104の近位側(又は近位端部)に位置する第1の開口208まで延びたワイヤ204(ワイヤ、縫合糸、糸、紐、又は同様の構造とすることができる)を備える。ワイヤ204は、変形可能なセクション104の一部に沿って器具の外部に延出し、変形可能なセクション104の遠位側(又はその遠位端部)の位置218で器具100に再び進入する。ワイヤ204は、遠位位置218で固定しても良いし、又は器具内で遠位開口218に維持することができれば自由に浮動しても良い。
図12Aはまた、ロック機構206を有するハブ196を備えた器具100のバリエーションを例示している。ロック機構206は、所望に応じてワイヤ204を固定する。以下に説明されるように、所望に応じて変形可能なセクションが配置されたら、ワイヤ204を、ロック機構206を用いて所定の位置にロックして変形可能なセクションを螺旋形状に固定することができる。追加のバリエーションでは、ワイヤ204は、上述の
図7A及び
図7Bに示されているピストン機構に接続することができる。
【0048】
図12Bは、コイルになり始めている変形可能なセクション104を例示している。上述のように、変形可能なセクション104は、プルワイヤ又は器具100を形成する材料の天然の特性を利用してコイル形状をとるようにすることができる。図示されているように、ワイヤ204は、器具100の外部に出たままである。
図12Cは、近位開口208と遠位開口218との間の距離をなくすために引っ張られているワイヤ204を例示している。所望に応じて、この動作により、器具100の変形可能なセクション104が螺旋形状を形成することができる。
図12Dは、ワイヤ(不図示)が器具の螺旋コイルを固定しているときの変形可能なセクション104の螺旋形状を例示している。
図12A~
図12Dに示されているバリエーションは、螺旋形状の1つの巻きしか形成していないが、任意の数のワイヤを使用して器具の追加の巻きを形成することができる。あるいは、ワイヤは、変形可能なセクション104の任意の数の巻きを通過することができる。
【0049】
別のバリエーションでは、器具は、遠位先端部の近位端部に取り付けられ、ちょうど第1のバルーンのループが開始する部分から出るプルワイヤルーメンを貫通して延在する紐又は他の同様の構造を備えることができる。次いで、カテーテルが、最初のループを形成するときに、紐がルーメンの中に戻る。これは、バルーンのループの数に応じて繰り返すことができる。カテーテルが膨張する前に直線状である場合、紐は、ループセクションのカテーテルの長さに沿った1つの点、又は2つのループを有する場合は2つの点で数インチ外に出る。紐は、手動で、又は上記開示されたシリンジプランジャの概念を用いて後ろから引っ張ることができる。