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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/86 20160101AFI20220719BHJP
   B60J 10/36 20160101ALI20220719BHJP
   B60J 10/24 20160101ALI20220719BHJP
   B60J 10/248 20160101ALI20220719BHJP
【FI】
B60J10/86
B60J10/36
B60J10/24
B60J10/248
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018135591
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020011631
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 良太
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-013819(JP,U)
【文献】実開平06-085116(JP,U)
【文献】特開平08-132876(JP,A)
【文献】実開平02-056021(JP,U)
【文献】実開昭59-035218(JP,U)
【文献】特開昭59-118526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00 - 10/90
B60J 5/00 - 5/14
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアにおける周縁部に沿って取り付けられる取付基部と、
前記ドアを閉じる過程で、前記自動車のボディにおけるドア開口部の周縁に弾接する中空シール部と、を備え、
前記取付基部と、前記中空シール部における車外側に形成された車外側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車外側に連結された車外側連結壁を介して連結されており、
前記車外側壁のドア中央側端部の車外側面から車外側に向けて突出するとともに、先端部が前記周縁部の背面に弾接する背面シールリップ部を備えたドアウェザーストリップであって、
前記取付基部と、前記中空シール部における車内側に形成された車内側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁と、前記車内側連結壁のドア外周側面に連結された第1連結壁と、を介して連結されており、
前記第1連結壁は、ドア外周側およびドア中央側に湾曲しながら、車内側に延設されており、
前記第1連結壁および前記背面シールリップ部は、ともに、前記周縁部の取付面に対向する、前記ドア開口部の周縁における第1面よりもドア中央側に位置させているとともに、前記ドアウェザーストリップにおける、少なくとも前記ドア開口部の周縁のサイドシル側およびロック側と対応する部位に取付されており、
前記車内側壁は、前記第1連結壁との連結箇所から、前記取付基部に対して垂直方向よりも前記車外側壁側に向けて傾いて起立していることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項2】
前記車内側連結壁のドア外周側端の車外側面、および前記車外側壁のドア中央側端の車内側面を連結する第2連結壁を備えたことを特徴とする請求項1に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項3】
前記車内側壁のドア中央側端部は、前記車内側連結壁のドア外周側端よりもドア中央側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項4】
前記第2連結壁の肉厚が前記中空シール部の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項2または3に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項5】
前記第2連結壁には、肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成される第1薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項2から4までの何れか1項に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項6】
前記第2連結壁における少なくとも一方の表面には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2から5までの何れか1項に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項7】
前記車内側連結壁に、肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成される第2薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項2から6までの何れか1項に記載のドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアの周縁部におけるシール性や遮音性などの向上を図るために、様々な構造を有するドアウェザーストリップの研究・開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図8に示すように、自動車のドア周縁部56に固定されるドアウェザーストリップ50が開示されている。ドアウェザーストリップ50は、取付基部51、中空シール部52、および背面シールリップ部54を備えている。中空シール部52の車内側側壁には、略S字状をなす湾曲部53が形成されている。背面シールリップ部54は、中空シール部52における取付基部51から遠い位置に形成されており、常時ドア周縁部56に接触して、中空シール部52を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-55977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアウェザーストリップにおいては、中空シール部に生じる撓み変形によって、取付基部の車内側の一端がリア側に引き寄せられる力が生じる場合があり、これにより取付基部の車内側の一端が浮くことで、シール性および遮音性が低下するという課題がある。
【0006】
特許文献1に記載されたドアウェザーストリップ50は、所定間隔をあけて、クリップ55によりドア周縁部56に固定されているものの、背面シールリップ部54が取付基部51から遠い位置に配置してあるため、ドアを閉じる過程において中空シール部52が撓み変形する際に、取付基部51の車内側の一端が浮く可能性は、少ない。
【0007】
しかし、ドア周縁部56の形状によっては、中空シール部52における取付基部51から遠い位置に背面シールリップ部54を形成することができず、取付基部51に近い位置に背面シールリップ部54を形成しなければならない場合もある。結果として、ドアを閉じる過程において、中空シール部52に生じる撓み変形によって、取付基部51の車内側の一端が浮いてしまい、シール性および遮音性が低下してしまう場合もある。
【0008】
本発明の一態様は、背面シールリップ部が取付基部に近い位置に形成される場合においても、シール性および遮音性に優れたドアウェザーストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、自動車のドアにおける周縁部に沿って取り付けられる取付基部と、前記ドアを閉じる過程で、前記自動車のボディにおけるドア開口部の周縁に弾接する中空シール部と、を備え、前記取付基部と、前記中空シール部における車外側に形成された車外側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車外側に連結された車外側連結壁を介して連結されており、前記車外側壁のドア中央側端部の車外側面から車外側に向けて突出するとともに、先端部が前記周縁部の背面に弾接する背面シールリップ部を備えたドアウェザーストリップであって、前記取付基部と、前記中空シール部における車内側に形成された車内側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁と、前記車内側連結壁のドア外周側面に連結された第1連結壁と、を介して連結されており、前記第1連結壁は、ドア外周側およびドア中央側に湾曲しながら、車内側に延設されており、前記第1連結壁および前記背面シールリップ部は、ともに、前記周縁部の取付面に対向する、前記ドア開口部の周縁における第1面よりもドア中央側に位置させているとともに、前記ドアウェザーストリップにおける、少なくとも前記ドア開口部の周縁のサイドシル側およびロック側と対応する部位に取付されている構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、背面シールリップ部が取付基部に近い位置に形成される場合においても、シール性および遮音性に優れたドアウェザーストリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、ドアウェザーストリップが取り付けられる自動車の外観を示す斜視図であり、(b)は、フロントドアの周縁部に閉ループ状に装着されるドアウェザーストリップの全体形状を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るドアウェザーストリップの取付状態に関する図であり、(a)は、フロントドアのルーフセクションにおける取付状態を示し、(b)は、ヒンジセクションにおける取付状態を示し、(c)は、サイドシルセクションにおける取付状態を示し、(d)は、ロックセクションにおける取付状態を示す。
図3】本発明の実施形態1に係るドアウェザーストリップの構造を示すロックセクションにおける断面図である。
図4】本発明の実施形態2に係るドアウェザーストリップの構造を示すロックセクションにおける断面図である。
図5】(a)~(c)は、それぞれ本発明の実施形態2に係るドアウェザーストリップの変形例の構造を示すロックセクションにおける断面図である。
図6】本発明の実施形態3に係るドアウェザーストリップの構造を示すロックセクションにおける断面図である。
図7】様々な形態のドアウェザーストリップにおける、取付基部の車内側端部の浮きの状態を示す断面図である。
図8】従来のドアウェザーストリップの構造を示すルーフセクションにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
<ドアウェザーストリップの取り付け例>
図1および図2を参照して、本発明に係るドアウェザーストリップ10が取り付けられた自動車1における、ドア開口部2の周辺の構造について説明する。図1の(a)に示すように、自動車1には、フロントドア3が設けられている。また、自動車1のボディにおける、ドア閉時においてフロントドア3がヒンジ(図示は省略)によりボディに一体化される箇所にはドア開口部2が形成されている。フロントドア3は、ドア開口部2を閉じるための開閉可能な自動車部品である。
【0013】
また、フロントドア3のドア周縁部(周縁部)3aには、その全周にわたって、閉ループ状にドアウェザーストリップ10が取り付けられている〔図1の(b)参照〕。ドアウェザーストリップ10は、ドア開口部2の周縁2aとドア周縁部3aとの間をシールするための自動車部品である。ドア周縁部3aに取り付けられたドアウェザーストリップ10が、ドア開口部2の周縁2aに弾接することで、ドア開口部2の周縁2aとドア周縁部3aとの間がシールされる。
【0014】
ドアウェザーストリップ10は単一の押出成形品として形成されている。これにより、ドアウェザーストリップ10が一本回し構造をとることで、ドアウェザーストリップ10を安価に提供できる。
【0015】
ドアウェザーストリップ10は、スポンジ状のゴムによって形成されている。ゴムの材料としては、例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)を用いることができる。但し、成形材料として、熱可塑性エストラマー(オレフィン系またはスチレン系熱可塑性エストラマー)、その他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を用いてもよい。なお、ドアウェザーストリップ10の部分ごとに異なる材料を用いてもよい。また、部分的に、または全体をソリッド状の材料で構成してもよい。
【0016】
図2に示すように、ドアウェザーストリップ10は、ルーフセクション〔図2の(a)参照〕、ヒンジセクション〔図2の(b)参照〕、サイドシルセクション〔図2の(c)参照〕、またはロックセクション〔図2の(d)参照〕において、ドア周縁部3aにおける各セクションの形状に応じた位置に取り付けられる。
【0017】
なお、ドア開口部2の周縁2aの上側の部位を、ルーフ側の部位と言い、下側の部位をサイドシル側の部位と言い、フロント側の部位をヒンジ側の部位と言い、リア側の部位をロック側の部位と言う。
【0018】
また、同様に、ドア周縁部3aの上側の部位を、ルーフ側の部位と言い、下側の部位をサイドシル側の部位と言い、フロント側の部位をヒンジ側の部位と言い、リア側の部位をロック側の部位と言う。ドアウェザーストリップ10は、ドア周縁部3aの取り付けられる部位に応じて、ルーフ側、サイドシル側、ヒンジ側、およびロック側の各部位に対応する部分に分けられる。
【0019】
また、ドア開口部2の周縁2aが弾接する、ドアウェザーストリップ10における部分は、ドアウェザーストリップ10が取り付けられるドア周縁部3aの位置によって変化する。
【0020】
上述したドアウェザーストリップ10の取り付け態様は、あくまで一例であり、ドアウェザーストリップ10を、例えば、自動車1のリアドア4の周縁部(図示せず)に取り付けてもよい。また、例えば、自動車1に設けられたバックドア(車両サイド部に設けられたフロントドアやリアドアと同様な場合)の周縁部(図示せず)に、ドアウェザーストリップ10を取り付けてもよい。換言すれば、ドアウェザーストリップ10をはじめとする、本発明に係るドアウェザーストリップの適用対象となるドア等の開閉体の種類、およびドア周縁部の構造等については、特に限定されない。
【0021】
また、ドアウェザーストリップ10は、ドア周縁部3aの全周にわたって取り付けられる必要はなく、ドア周縁部3aの一部にのみ取り付けられてもよい。例えば、ドア周縁部3aにおけるサイドシルセクションのみに取り付けられてもよい。
【0022】
<ドアウェザーストリップの構造>
図2および図3を参照して、本実施形態に係るドアウェザーストリップ10の構造を説明する。図3に示すように、本実施形態に係るドアウェザーストリップ10は、取付基部11、中空シール部12、および背面シールリップ部14を備える。
【0023】
取付基部11と、中空シール部12における車内側に形成された車内側壁12aとは、取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁16aと、車内側連結壁16aのドア外周側面に連結された湾曲形状の第1連結壁13を介して連結されている。
【0024】
なお、本明細書中の全文において、(図2から図8も含む)取付基部11がドア周縁部3aの取付面3a-1に当接する面の側を、ドアウェザーストリップ10における“ドア中央側(取付基部側)”と呼び、反対側を“ドア外周側”と呼ぶこととして、定義する。
【0025】
第1連結壁13は、ドア外周側およびドア中央側に湾曲しながら、車内側に延設されている。第1連結壁13および背面シールリップ部14は、ともに、ドア周縁部3aの取付面3a-1に対向する、ドア開口部2の周縁2aにおける第1面2a-1よりもドア中央側に位置させている。
【0026】
また、第1連結壁13は、ドアウェザーストリップ10における、少なくともドア開口部2の周縁2aのサイドシル側(サイドシルセクション)およびロック側(ロックセクション)と対応する部位に取付されている。
【0027】
取付基部11は、自動車1におけるドア周縁部3aの取付面3a-1に当接して固定される部分である。取付基部11における、ドア周縁部3aの取付面3a-1に当接する面は、略平板状に形成される。このような形状であれば、ドア周縁部3aとドアウェザーストリップ10との間に隙間がなくなり、高いシール性および遮音性を実現できる。取付基部11における車内側端部11aまたは車外側端部11bは、少なくともいずれか一方に突起部を備えてもよい。
【0028】
取付基部11には、所定の間隔によりクリップ挿入穴11cが形成される。本実施形態に係るドアウェザーストリップ10は、取付基部11を介して、自動車1におけるドア周縁部3aに、クリップ20を用いて固定されることにより取り付けられる。クリップ20は、取付基部11に形成されるクリップ挿入穴11cと、ドア周縁部3aにおいてクリップ挿入穴11cに対応する位置に形成される取付穴(図示せず)とを、連通して係合させる。これにより、ドアウェザーストリップ10がドア周縁部3aに固定される。
【0029】
ドア周縁部3aにおいて、クリップ挿入穴11cが形成される所定の間隔としては、例えば、70cm~130cm程度が好ましい。上記の数値範囲内であれば、所定の間隔は、例えば等間隔であってもよいし、クリップ挿入穴11cごとに異なる間隔であってもよい。このような間隔であれば、ドアウェザーストリップ10が安定してドア周縁部3aに装着される。また、ドア周縁部3aの形状に応じて、クリップ20の間隔が変化してもよい。
【0030】
例えば、車体R形状等にも左右されるが、ドア周縁部3aにおいて、曲線部分は曲線の形状に合わせ、直線部分より狭い間隔にしてもよい。クリップ20は、一般的な物を用いることができる。
【0031】
中空シール部12は、取付基部11と押出一体成形される部分である。中空シール部12の内部には、中空部15が形成される。これにより、ドアを閉じる過程においてドア開口部2の周縁2aと中空シール部12とが弾接した際に、中空シール部12が撓み変形することができる。そのため、ドアウェザーストリップ10によって、フロントドア3を閉める際の衝撃が緩和され、かつ、ドア周縁部3aとドア開口部2の周縁2aとが良好にシールされる。
【0032】
中空シール部12は、ドア開口部2の周縁2aと弾接する弾接部12cを備える。弾接部12cは、取付基部11の車内側端部11a近辺から遠ざかっている車内側壁12aと、取付基部11の車外側端部11b近辺から遠ざかっている車外側壁12bと、に両端から連結されて形成される。
【0033】
弾接部12cは、ドア開口部2の周縁2aと弾接し、ドア開口部2の周縁2aとフロントドア3との間をシールする。ここで、ドアウェザーストリップ10の少なくとも一部分が、フロントドア3における何れのセクションに位置するかによって、中空シール部12における弾接部12cの位置および大きさは異なる。
【0034】
図2に示すように、例えば、ルーフセクション(a)およびヒンジセクション(b)においては、中空シール部12の略ドア外周側の半分が弾接部12cであり、サイドシルセクション(c)およびロックセクション(d)においては、中空シール部12の略ドア外周側の半分であって、かつ、車内側に位置する部分が弾接部12cである。中空シール部12における弾接部12cの位置および大きさは当然、これらに限定されない。
【0035】
取付基部11と中空シール部12における車内側に形成された車内側壁12aとは、取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁16aと、車内側連結壁16aのドア外周側面に連結された第1連結壁13とを介して連結されている。また、第1連結壁13はドア外周側およびドア内周側に湾曲しながら、車内側に延設されている。
【0036】
第1連結壁13を備えることで、中空シール部12における断面周長が延長される。ドアを閉じる過程において、中空シール部12とドア開口部2の周縁2aとが弾接することで生じる撓み変形によって、取付基部11が中空シール部12側に引き寄せられる力(以下、撓み張力という)が発生し、取付基部11における車内側端部11aが浮きが抑制される。
【0037】
前記構成によれば、第1連結壁13による断面周長の延長部分があることで、第1連結壁13がない場合と比べて中空シール部12が余計に撓むことができるため、取付基部11にかかる撓み張力が軽減される。よって、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制され、ドアウェザーストリップ10のシール性および遮音性の低減が抑制される。
【0038】
背面シールリップ部14は、ヒレ形状で、少なくともドアを閉じる過程において、その先端部がドア周縁部3aの背面3a-2に当接するように、中空シール部12における車内側に形成された車内側壁のドア中央側端の車外側面から突出して形成される。背面シールリップ部14は、ドアを閉じる過程において中空シール部12を支持し、中空シール部12の撓みが抑制される。よって、取付基部11にかかる撓み張力が軽減される。なお、背面シールリップ部14の先端部は、ドア周縁部3aの背面3a-2に直接当接してもよいし、ドア周縁部3aに取り付けられるその他の部品に当接してもよい。
【0039】
ドア周縁部3aの形状によっては、背面シールリップ部14を形成できる位置が制限されることがある。例えば、図2の(a)で示すように、ルーフセクションにドアウェザーストリップ10を取り付けた場合、背面シールリップ部14をドアウェザーストリップ10におけるドア中央側部に形成しなければ、背面シールリップ部14の端部とドア周縁部3aに取り付けられた部品23(グラスラン)とが当接できない。
【0040】
このように、背面シールリップ部14が、ドアウェザーストリップ10のドア中央側部(取付基部11および中空シール部12の境界の近辺)に形成せざるをえない場合でも、
本実施形態に係るドアウェザーストリップ10の構成によれば、ドアを閉じる過程における中空シール部12の撓みは、背面シールリップ部14による中空シール部12の支持に加え、第1連結壁13が撓むことで、取付基部11にかかる撓み張力が軽減される。そのため、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制され、ドアウェザーストリップ10のシール性および遮音性が向上する。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図4を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態に係るドアウェザーストリップ30は、図4に示すように、第2連結壁17を備える点において、実施形態1に係るドアウェザーストリップ10と異なる。
【0042】
第2連結壁17は、中空シール部12と押出一体成形(第2連結壁17と中空シール部12とが連なって形成)される。第2連結壁17は、(取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された)車内側連結壁16aの車外側面と、中空シール部12における車外側に形成された車外側壁12bのドア中央側端部の車内側面とに連結され、取付基部11に対して略平行に、延伸して形成される。また、第2連結壁17により中空部15が中空部15aおよび中空部15bに分割される。
【0043】
第2連結壁17が形成されることにより、ドアを閉じる過程において、中空シール部12がドア開口部2の周縁2aと弾接する際に、中空シール部12が、取付基部11との境界の近辺から大きく撓み、ドアウェザーストリップ30が過剰に潰れることが抑制される。すなわち、第2連結壁17によって、主に撓み変形が生じる中空シール部12の大きさが、中空部15aを囲む範囲まで狭くなる。
【0044】
中空部15bを囲む範囲については、第2連結壁17が連結壁16a・16bを支持することによって、撓み変形が抑制される。これにより、中空シール部12とドアウェザーストリップ30が過剰に潰れることによる、シール性および遮音性の低減を抑制できる。
【0045】
本実施形態において、車内側壁12aのドア中央側端部は、車内側連結壁16aのドア外周側端よりもドア中央側に位置していることが好ましい。前記構成によれば、車内側壁12aのドア中央側端部は、車内側連結壁16aのドア外周側端よりもドア外周側に位置する場合と比較して、第1連結壁13が中空シール部12の断面周長を延長する効果が高まる。よって、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制される。
【0046】
<変形例>
本実施形態は、第2連結壁17の形状を変更することで、様々な形態をとることができる。このような形態のバリエーションについて、図5を参照して以下に説明する。
【0047】
図5の(a)に示すように、本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップ31は、中空シール部12の肉厚よりも薄い肉厚として形成される第2連結壁17aを備える。第2連結壁17aの肉厚は、例えば、中空シール部12における肉厚の3/4以下であってもよく、1/2以下であってもよい。第2連結壁17aの肉厚が薄いほど、第2連結壁17aの剛性が低下するため、第2連結壁17aが撓みやすくなる。
【0048】
図5の(b)に示すように、本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップ32は、肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成される、第1薄肉部18aを少なくとも1か所備えた、第2連結壁17bを備える。第1薄肉部18aは、第2連結壁17bにおける少なくともいずれか一方の面に形成される。
【0049】
第1薄肉部18aは、第2連結壁17bの中心付近に形成されてもよいし、第2連結壁17bにおける車内側および/または車外側に形成されてもよい。第1薄肉部18aにおける、最も薄い部分の肉厚は、例えば、第2連結壁17bにおける第1薄肉部18a以外の部分の肉厚の3/4以下であってもよく、1/2以下であってもよい。第1薄肉部18aの肉厚が薄いほど、また、第1薄肉部18aの形成される数が多いほど、第1薄肉部18aを備える第2連結壁17bの剛性が低下するため、第2連結壁17bが撓みやすくなる。
【0050】
図5の(c)に示すように、本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップ33は、第2連結壁17cにおける少なくとも一方の表面に、凹凸が形成されていても良い。本実施形態のドアウェザーストリップ33は、例えば、非直線的に波打った形状(蛇腹形状)として形成される第2連結壁17cを備える。
【0051】
なお、第2連結壁17cは、非直線的な形状であればよく、例えば、略S字形状または略円弧形状等に形成されてもよい。このような形状によれば、第2連結壁17cの断面長が延長されることで第2連結壁17cの剛性が低下するため、第2連結壁17cが撓みやすくなる。
【0052】
第2連結壁17a・17b・17cのような形状によれば、第2連結壁17が撓みやすい形状であることから、第2連結壁17の剛性が低下し、これに伴い第2連結壁17の可撓性が上昇する。そのため、ドアを閉じる過程において、第2連結壁17によってドアウェザーストリップ31・32・33の潰れを抑制し、かつ、可撓性に優れた第2連結壁17が撓むことで、中空シール部12の撓みによる撓み張力の、取付基部11への伝達が抑制される。
【0053】
よって、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制される。なお、本実施形態における第2連結壁17の形状は、第2連結壁17の可撓性を上昇させる形状であればよく、第2連結壁17a・17b・17cのような形状に限られない。
【0054】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図6を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
本実施形態に係るドアウェザーストリップ34は、第2連結壁17を備えると共に、車内側連結壁16aに第2薄肉部18bを備える点において、実施形態1に係るドアウェザーストリップ10と異なる。
【0056】
第2薄肉部18bは、車内側連結壁16aにおける外面および/または内面に形成される。第2薄肉部18bは、車内側連結壁16aの中心付近に形成されてもよいし、車内側連結壁16aにおける取付基部11側および/または中空シール部12側に形成されてもよい。
【0057】
第2薄肉部18bにおける、最も薄い部分の肉厚は、例えば、上記車内側連結壁16aにおける第2薄肉部18b以外の部分の肉厚の3/4以下であってもよく、1/2以下であってもよい。第2薄肉部18bの肉厚が薄いほど、また、第2薄肉部18bの形成される数が多いほど、第2薄肉部18bを備える車内側連結壁16aの剛性が低下するため、車内側連結壁16aが撓みやすくなる。
【0058】
第2薄肉部18bによれば、車内側連結壁16aの剛性が低下し、これに伴い車内側連結壁16aの可撓性が上昇する。そのため、ドアを閉じる過程において、可撓性に優れた車内側連結壁16aが撓むことで、中空シール部12の撓みによる撓み張力の、取付基部11への伝達が抑制される。よって、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制される。
【0059】
また、このような構成によれば、第2連結壁17の剛性は低下しないため、第2連結壁17によるドアウェザーストリップ34の潰れを抑制する効果を保ちながら、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制される効果が得られる。
【0060】
なお、本実施形態における車内側連結壁16aの形状は、車内側連結壁16aの可撓性を上昇させる形状であればよく、第2薄肉部18bを備える形状に限られない。また、第2連結壁17および上記の両方の可撓性が上昇する形状(例えば、第1薄肉部18aおよび第2薄肉部18bを両方備える形状)として、ドアウェザーストリップ34が形成されてもよい。
【0061】
〔取付基部における車内側端部の浮き〕
本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップについて、ドア閉時における取付基部11における車内側端部11aの浮き量を計測した。本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップ10・30・34と、比較対象であるドアウェザーストリップ40とについて、フロントドア3におけるロックセクションに取り付けられた状態を、断面模型により再現した。比較対象であるドアウェザーストリップ40は、第1連結壁13および第2連結壁17を備えない点において、実施形態1に係るドアウェザーストリップ10と異なる。
【0062】
ドア周縁部3aに取り付けたドアウェザーストリップと、ドア開口部2の周縁2aとを弾接させ、取付基部11における車内側端部11aの浮き量wを計測した。図7の(a)は、比較対象であるドアウェザーストリップ40における、浮き量w1を示す。図7の(b)は、本発明の一実施態様に係るドアウェザーストリップ10における、浮き量w2を示す。図7の(c)は、本発明の一実施態様に係るドアウェザーストリップ30における、浮き量w3を示す。図7の(d)は、本発明の一実施態様に係るドアウェザーストリップ34における、浮き量w4を示す。
【0063】
それぞれの条件における浮き量wを計測した結果、浮き量w1は0.7mm、浮き量w2は0mm、浮き量w3は0.35mm、浮き量w4は0.3mmであった。この結果から、本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップはいずれも、比較対象である第1連結壁13を備えないドアウェザーストリップ40と比較して、浮き量wが低下していた。すなわち、本発明の一実施形態に係るドアウェザーストリップは、第1連結壁13を備えることで、取付基部11における車内側端部11aの浮きが抑制されていることから、シール性および遮音性に優れていることが裏付けられた。
【0064】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るドアウェザーストリップは、自動車のドアにおける周縁部に沿って取り付けられる取付基部と、前記ドアを閉じる過程で、前記自動車のボディにおけるドア開口部の周縁に弾接する中空シール部と、を備え、前記取付基部と、前記中空シール部における車外側に形成された車外側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車外側に連結された車外側連結壁を介して連結されており、前記車外側壁のドア中央側端部の車外側面から車外側に向けて突出するとともに、先端部が前記周縁部の背面に弾接する背面シールリップ部を備えたドアウェザーストリップであって、前記取付基部と、前記中空シール部における車内側に形成された車内側壁とは、前記取付基部のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁と、前記車内側連結壁のドア外周側面に連結された第1連結壁と、を介して連結されており、前記第1連結壁は、ドア外周側およびドア中央側に湾曲しながら、車内側に延設されており、前記第1連結壁および前記背面シールリップ部は、ともに、前記周縁部の取付面に対向する、前記ドア開口部の周縁における第1面よりもドア中央側に位置させているとともに、前記ドアウェザーストリップにおける、少なくとも前記ドア開口部の周縁のサイドシル側およびロック側と対応する部位に取付されている構成である。
【0065】
前記構成によれば、取付基部と、中空シール部における車内側に形成された車内側壁とは、車内側連結壁と、第1連結壁とを介して連結されている。そのため、ドアを閉じる過程において、中空シール部の撓みが第1連結壁に吸収され、中空シール部の撓みの取付基部への伝達が抑制される。よって、取付基部における車内側端部の浮きが抑制される。よって、取付基部における車内側端部の浮きに起因する、シール性および遮音性の低減を抑制できる。
【0066】
本発明の態様2に係るドアウェザーストリップは、前記車内側連結壁のドア外周側端の車外側面、および前記車外側壁のドア中央側端の車内側面を連結する第2連結壁を備えてもよい。前記構成によれば、第2連結壁を設けることで、ドアを閉じる過程において、ドアウェザーストリップが過剰に潰れることによるシール性および遮音性の低減を抑制できる。
【0067】
本発明の態様3に係るドアウェザーストリップは、前記車内側壁のドア中央側端部は、前記車内側連結壁のドア外周側端よりもドア中央側に位置していることが好ましい。前記構成によれば、車内側壁のドア中央側端部が、車内側連結壁のドア外周側端よりもドア外周側に位置する場合と比較して、第1連結壁が中空シール部の断面周長を延長する効果が高まる。よって、取付基部における車内側端部の浮きがより抑制される。
【0068】
本発明の態様4に係るドアウェザーストリップは、前記第2連結壁の肉厚が前記中空シール部の肉厚よりも薄くてもよい。前記構成によれば、第2連結壁が薄く形成されることで、ドアを閉じる過程において、ドアウェザーストリップの潰れを抑制し、かつ、中空シール部の撓みを第2連結壁が吸収することができる。
【0069】
本発明の態様5に係るドアウェザーストリップは、前記第2連結壁には、肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成される第1薄肉部が設けられていてもよい。前記構成によれば、第2連結壁に第1薄肉部が形成されることで、ドアを閉じる過程において、ドアウェザーストリップの潰れを第2連結壁が抑制し、かつ、中空シール部の撓みを第2連結壁により吸収することができる。
【0070】
本発明の態様6に係るドアウェザーストリップは、前記第2連結壁における少なくとも一方の表面には、凹凸が形成されていても良い。前記構成によれば、第2連結壁の周長が延長される。そのため、ドアを閉じる過程において、ドアウェザーストリップの潰れを第2連結壁が抑制し、かつ、中空シール部の撓みを第2連結壁により吸収することができる。
【0071】
本発明の態様7に係るドアウェザーストリップは、前記車内側連結壁に、肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成される第2薄肉部が設けられていてもよい。前記構成によれば、車内側連結壁に第2薄肉部が形成されることで、中空シール部の撓みを車内側における第2連結壁により吸収することができる。
【0072】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 自動車 2 ドア開口部 2a 周縁 3a ドア周縁部(周縁部)
10、30、31、32、33、34 ドアウェザーストリップ
11 取付基部 11a 車内側端部 11b 車外側端部
12 中空シール部 12a 車内側壁 12b 車外側壁
12c 弾接部 13 第1連結壁 14 背面シールリップ部
16a 車内側連結壁 16b 車外側連結壁
17、17a、17b、17c 第2連結壁
18a 第1薄肉部 18b 第2薄肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8