(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する抗体によって状態を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220719BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220719BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K45/00
A61P29/00
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2018144803
(22)【出願日】2018-08-01
(62)【分割の表示】P 2015530076の分割
【原出願日】2013-08-30
【審査請求日】2018-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-18
(32)【優先日】2012-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511025307
【氏名又は名称】ファイブ プライム セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】マステラー エマ
(72)【発明者】
【氏名】リードクイスト クリス
(72)【発明者】
【氏名】ザンギ ジェイムズ アレン
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルトン ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー ケビン
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】森井 隆信
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/140249(WO,A2)
【文献】特表2012-502113(JP,A)
【文献】特表2007-520554(JP,A)
【文献】Blood,2012年5月,Vol.119,No.22,pp.5329-5330
【文献】The FASEB Journal,2006年,Vol.20,pp.E1315-1326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/395
A61P29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を含む、
炎症性疾患を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、IL-1β、IL-8、CCL2、CCL7、CXCL5、
及びCXCL6
から選択される少なくとも1つの因子
を低下させる
ことを特徴し、
前記抗体が、ヒトのコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合し、且つヒトのコロニー刺激因子1(CSF1)のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つヒトのIL-34のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つ配列番号15の配列を有する重鎖(HC) CDR1、配列番号16の配列を有するHC CDR2、及び配列番号17の配列を有するHC CDR3を含む重鎖、ならびに配列番号18の配列を有する軽鎖(LC) CDR1、配列番号19の配列を有するLC CDR2、及び配列番号20の配列を有するLC CDR3を含む軽鎖を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
抗体を含む、
炎症性疾患を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、IL-1β、IL-8、CCL2、CCL7、CXCL5、
及びCXCL6
から選択される少なくとも1つの因子
を低下させる
ことを特徴し、
前記抗体が、ヒトのコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合し、且つヒトのコロニー刺激因子1(CSF1)のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つヒトのIL-34のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つ配列番号39の配列を含む重鎖及び配列番号46の配列を含む軽鎖を含む、
前記医薬組成物。
【請求項3】
抗体を含む、
炎症性疾患を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、IL-1β、IL-8、CCL2、CCL7、CXCL5、
及びCXCL6
から選択される少なくとも1つの因子
を低下させる
ことを特徴し、
前記抗体が、ヒトのコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合し、且つヒトのコロニー刺激因子1(CSF1)のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つヒトのIL-34のヒトのCSF1Rへの結合を阻止し、且つ配列番号53の配列を含む重鎖及び配列番号60の配列を含む軽鎖を含む、
前記医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体が、リガンド誘導性CSF1Rリン酸化をインビトロで阻害する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が、Fab、Fv、scFv、Fab’又は(Fab’)
2である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が、完全長の重鎖及び完全長の軽鎖を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体がIgG抗体である、請求項1~
5又は
7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体がIgG4抗体である、請求項1~
5又は
7~
8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記IgG4抗体がS241P変異を含む、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の治療剤
と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する抗体によって状態を治療する方法が提供される。そのような方法には、たとえば、関節リウマチ、多発性硬化症及び全身性エリテマトーデスのような炎症性及び自己免疫性の状態を治療する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、他の関節も罹患するが、主として手足の小さな関節が関与する対称性の多発性関節炎を特徴とする全身性の炎症性疾患である。さらに悪性の(最も一般的にはリウマチ因子(RF)陽性)の疾患の患者は、たとえば、リウマチ結節、血管炎、強膜炎、心嚢炎及びフェルティ症候群のような関節外の症状を呈する。RA患者の大半は罹患関節で軟骨及び骨の進行性の崩壊を経験し、それは最終的には永続性の身体障害をもたらし得る。歴史的に、RAの長期予後は不良であり、患者のおよそ50%は診断の時から10年以内に有意な機能的身体障害を経験する。RAはまた約3~10年の平均余命の減少に関連している。
【0003】
コロニー刺激因子1受容体(ここではCSF1Rと呼び、当該技術ではFMS、FIM2、C-FMS、M-CSF受容体及びCDl15とも呼ばれる)はN末端の細胞外ドメイン(ECD)とチロシンキナーゼ活性を持つC末端側の細胞内ドメインとを持つ1回膜貫通の受容体である。CSF1RへのCSF1のリガンド結合又はインターロイキン34リガンド(ここではIL-34と呼ぶ、Science320:807-11(2008)(非特許文献1))のリガンド結合は、受容体の二量体化、CSF1Rタンパク質チロシンキナーゼ活性の上方調節、CSF1Rチロシン残基のリン酸化、及び下流のシグナル伝達事象をもたらす。CSF1及びIL-34は双方とも、単球の生存、増殖及びマクロファージ並びにたとえば、破骨細胞、樹状細胞及び小膠細胞のような他の単球様細胞系列への分化を刺激する。
【0004】
多数の腫瘍細胞は、CSF1Rを介して単球/マクロファージ細胞を活性化するCSF1を分泌することが見いだされている。腫瘍におけるCSF1のレベルは腫瘍における腫瘍関連マクロファージ(TAM)のレベルに相関することが示されている。TAMのより高いレベルは患者の予後不良に相関することが見いだされている。加えて、CSF1は、たとえば、マウスにおけるヒト乳癌異種移植片にて腫瘍増殖及び転移への進行を促進することが見いだされている。たとえば、Paulusら、Cancer Res.66:4349-56(2006)(非特許文献2)を参照のこと。さらに、CSF1Rは骨転移における溶骨性骨破壊にて役割を担う。たとえば、Ohnoら、Mol.Cancer Ther.5:2634-43(2006)(非特許文献3)を参照のこと。
【0005】
CSF1及びその受容体は種々の炎症性疾患及び自己免疫性疾患に関与することも見いだされている。たとえば、Hamilton,Nat.Rev.8:533-44(2008)(非特許文献4)を参照のこと。たとえば、関節リウマチに罹患した関節の滑膜内皮細胞がCSF1を産生することが見いだされているということは、その疾患におけるCSF1及びその受容体の役割を示唆している。抗体によるCSF1R活性の遮断は、関節炎のマウスモデルにおける骨及び軟骨の破壊の低下及びマクロファージ数の低下を含む有益な臨床効果を生じる。たとえば、Kitauraら、J.Clin.Invest.115:3418-3427(2005)(非特許文献5)を参照のこと。
【0006】
たとえば、マクロファージ、小膠細胞及び破骨細胞のような成熟分化した骨髄系列の細胞は、たとえば、関節リウマチ、多発性硬化症及び骨量減少の疾患のような種々の疾患の病理に寄与する。分化した骨髄系列の細胞は、末梢血の単球中間体に由来する。CSF1Rの刺激は、骨髄前駆細胞からの単球の発生、単球の増殖及び生き残り、並びに末梢血単球のたとえば、マクロファージ、小膠細胞及び破骨細胞のような分化した骨髄系列の細胞への分化に寄与する。従ってCSF1Rの刺激は、分化した骨髄系列の細胞の増殖、生き延び、活性化及び成熟に寄与し、病的な状況では、CSF1Rの刺激は分化した骨髄系列の細胞の疾患病状に介在する能力に寄与する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Science320:807-11(2008)
【文献】Paulusら、Cancer Res.66:4349-56(2006)
【文献】Ohnoら、Mol.Cancer Ther.5:2634-43(2006)
【文献】Hamilton,Nat.Rev.8:533-44(2008)
【文献】Kitauraら、J.Clin.Invest.115:3418-3427(2005)
【発明の概要】
【0008】
一部の実施形態では、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を対象に投与することを含み、抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、対象は炎症性の状態を有する。一部の実施形態では、対象は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス、炎症性腸疾患、炎症性関節炎及びCD16+障害から選択される状態を有する。
【0009】
一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6のレベルを低下させることを含む。一部のそのような実施形態では、対象は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、及びキャッスルマン病から選択される状態を有する。一部の実施形態では、方法はTNF-αのレベルを低下させることを含む。一部のそのような実施形態では、対象は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される状態を有する。一部の実施形態では、方法はIL-1βのレベルを低下させることを含む。一部のそのような実施形態では、対象は関節リウマチ及び若年性特発性関節炎から選択される状態を有する。一部の実施形態では、方法はCXCL10のレベルを低下させることを含む。
【0010】
一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6のレベルを低下させることを含み、又は方法はTNF-αのレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-1βのレベルを低下させることを含み、又は方法はCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6及びTNF-αのレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6及びIL-1βのレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はTNF-α及びIL-1βのレベルを低下させることを含み、又は方法はTNF-α及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-1β及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、方法はIL-6、TNF-α及びIL-1βのレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6、TNF-α及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はTNF-α、IL-1β及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6、IL-1β及びCXCL10のレベルを低下させることを含み、又は方法はIL-6、IL-1β、TNF-α及びCXCL10のレベルを低下させることを含む。
【0011】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子の高レベルに関連する状態を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、その状態を持つ対象に、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を投与することを含み、抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、抗体は、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる。一部の実施形態では、対象は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される状態を有する。一部の実施形態では、状態はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子の高レベルに関連する。一部の実施形態では、状態は高いレベルのIL-6に関連する。一部のそのような実施形態では、状態は関節リウマチ、若年性特発性関節炎及びキャッスルマン病から選択される。一部の実施形態では、状態は高いレベルのTNF-αに関連する。一部のそのような実施形態では、状態は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される。一部の実施形態では、状態は高いレベルのIL-1βに関連する。一部のそのような実施形態では、状態は関節リウマチ及び若年性特発性関節炎から選択される。一部の実施形態では、状態は高いレベルのCXCL10に関連する。
【0012】
一部の実施形態では、炎症性関節炎を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は炎症性関節炎の対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含み、抗体はCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、抗体はIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる。一部の実施形態では、炎症性関節炎は関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性特発性関節炎から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、炎症性の状態を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は炎症性の状態の対象に、CSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含み、抗体はCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、抗体はIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる。一部の実施形態では、炎症性の状態は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、CD16+障害を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法はCD16+障害の対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含み、抗体はCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、抗体はIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる。一部の実施形態では、抗体はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させる。一部の実施形態では、CD16+障害は関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。
【0015】
本明細書で記載される実施形態のいずれかでは、抗体はIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルをインビトロで低下させ得る。
【0016】
本明細書で記載される実施形態のいずれかでは、対象は、抗体の投与の前に、高いレベルのIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子を有していてもよい。
【0017】
一部の実施形態では、方法はさらに、メソトレキセート、抗TNF剤、グルココルチコイド、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、JAK阻害剤、SYK阻害剤、抗IL-6剤、抗CD20剤、抗CD19剤、抗GM-CSF剤、抗IL-1剤及びCTLA4剤から選択される少なくとも1つの追加の治療剤を投与することを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、メソトレキセート、抗TNF-α抗体、可溶性TNF受容体、グルココルチコイド、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、JAK阻害剤、SYK阻害剤、抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗GM-CSF抗体、抗GM-CSF受容体抗体、抗IL-1抗体、IL-1受容体拮抗剤、及びCTLA4-Ig融合分子から選択される。一部の実施形態では、状態はメソトレキセートに耐性である。
【0018】
一部の実施形態では、炎症性の状態を治療する方法が提供され、ここで、方法は、(a)炎症性の状態を伴う対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することと、(b)対象にて少なくとも1種の因子のレベルが高いのであれば、CSF1Rを結合し且つCSF1RへのIL-34の結合を阻止する有効量の抗体を対象に投与することであって、抗体がIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、ことを含む。
【0019】
一部の実施形態では、炎症性の状態を治療する方法が提供され、ここで、方法は、(a)炎症性の状態を伴う対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子の高いレベルを検出することと、(b)CSF1Rを結合し且つCSF1RへのIL-34の結合を阻止する有効量の抗体を対象に投与することであって、抗体がIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、ことを含む。
【0020】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はIL-6のレベルを低下させ得る;又は抗体はTNF-αのレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-1βのレベルを低下させ得る;又は抗体はCXCL10のレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-6及びTNF-αのレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-6及びIL-1βのレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-6及びCXCL10のレベルを低下させ得る;又は抗体はTNF-α及びIL-1βのレベルを低下させ得る;又は抗体はTNF-α及びCXCL10のレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-1β及びCXCL10のレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-6、TNF-α及びIL-1βのレベルを低下させ得る;又は抗体はIL-6、TNF-α及びCXCL10のレベルを低下させ得る;又は抗体はTNF-α、IL-1β及びCXCL10のレベルを低下させ得る;又は方法はIL-6、IL-1β及びCXCL10のレベルを低下させることを含み;又は抗体はIL-6、IL-1β、TNF-α及びCXCL10のレベルを低下させ得る。
【0021】
一部の実施形態では、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含む、抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、CSF1Rを結合する抗体から恩恵を得うる対象を特定する方法が提供され、ここで、対象における少なくとも1種の因子の高いレベルは対象がCSF1Rを結合する抗体から恩恵を得うることを示す。一部の実施形態では、対象はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、対象は関節リウマチを有する。一部の実施形態では、対象は高いレベルのCD16+単球を有する。
【0022】
一部の実施形態では、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含む、抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、炎症性の状態を患っている対象にてCSF1Rを結合する抗体に対する応答性を予測する方法が提供され、ここで、対象における少なくとも1種の因子の高いレベルは対象がCSF1Rを結合する抗体に応答する可能性が高いことを示す。一部の実施形態では、対象はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、対象は関節リウマチを有する。一部の実施形態では、対象は高いレベルのCD16+単球を有する。
【0023】
本明細書で記載される実施形態のいずれかでは、状態はメソトレキセートに耐性であってもよく及び/又は対象はメソトレキセートに対する不十分応答者であってもよい。さらに、本明細書で記載される実施形態のいずれかでは、状態はTNF阻害剤に耐性であってもよく及び/又は対象はTNF阻害剤に対する不十分応答者であってもよい。
【0024】
一部の実施形態では、メソトレキセートに対する不十分応答者にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含む、メソトレキセートに対する不十分応答者を治療する方法が提供され、ここで、抗体はCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、TNF阻害剤に対する不十分応答者にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含む、TNF阻害剤に対する不十分応答者を治療する方法が提供され、ここで、抗体はCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、不十分応答者はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、CD16+障害は関節リウマチである。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。一部の実施形態では、メソトレキセート及び/又はTNF阻害剤に対する不十分応答者におけるIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルは抗体の投与の後に低下する。
【0025】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgの用量で投与され得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体の有効量は0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgであり得る。一部の実施形態では、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を対象に投与することを含む関節リウマチを治療する方法が提供され、ここで、抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、有効量は0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgである。
【0026】
一部の実施形態では、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を対象に投与することを含む、関節リウマチの対象にて骨吸収を減らす方法が提供され、ここで、抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、有効量は0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgである。一部の実施形態では、骨吸収の低下は、TRAP5b、NTx及びCTxのうち1つ以上のレベルを決定することによって測定され、TRAP5b、NTx及びCTxのうち1つ以上のレベルの低下は骨吸収の低下を示す。一部の実施形態では、TRAP5bのレベルを血清又は血漿にて測定する。一部の実施形態では、NTxのレベルを尿で測定する。一部の実施形態では、CTxのレベルを血清で測定する。
【0027】
本明細書で記載される実施形態のいずれかでは、CSF1Rを結合する抗体の投与に続く因子の測定は、抗体の投与後6時間以内、8時間以内、12時間以内、18時間以内、1日以内、2日以内、3日以内、1週間以内又は2週間以内であり得る。
【0028】
一部の実施形態では、抗体がコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、CSF1Rを結合する有効量の抗体の投与の後に、対象からの血清試料におけるAST及び/又はALTのレベルは正常上限(ULN)の8倍を超えない。一部の実施形態では、投与の後に対象からの血清試料におけるクレアチンキナーゼ(CK)のレベルはULNの10倍を超えない。一部の実施形態では、投与の後に対象からの血清試料におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルはULNの3倍を超えず、対象からの血清試料における総ビリルビンはULNの2倍を超えない。一部の実施形態では、AST、ALT、CK及び/又はビリルビンのレベルは、CSF1Rを結合する抗体の投与後の6時間以内、8時間以内、12時間以内、18時間以内、1日以内、2日以内、3日以内、1週間以内又は2週間以内に測定される。
【0029】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体の重鎖及び/又は抗体の軽鎖は以下に記載される構造を有し得る。
【0030】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体の重鎖は配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含み得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体の軽鎖は配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含み得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体の重鎖は配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含み得る、且つ抗体の軽鎖は配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含み得る。
【0031】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、HC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3は(a)配列番号15、16及び17;(b)配列番号21、22及び23;並びに(c)配列番号27、28及び29から選択される一揃いの配列を含み得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、LC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3は(a)配列番号18、19及び20;(b)配列番号24、25及び26;並びに(c)配列番号30、31及び32から選択される一揃いの配列を含み得る。
【0032】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、重鎖はHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含んでもよく、ここで、HC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3は(a)配列番号15、16及び17;(b)配列番号21、22及び23;並びに(c)配列番号27、28及び29から選択される一揃いの配列を含み;且つ軽鎖はLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を含んでもよく、ここで、LC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3は(a)配列番号18、19及び20;(b)配列番号24、25及び26;並びに(c)配列番号30、31及び32から選択される一揃いの配列を含む。
【0033】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、CSF1Rを結合する抗体は、(a)配列番号9に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号10に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(b)配列番号11に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号12に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(c)配列番号13に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号14に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(d)配列番号39に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号46に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(e)配列番号40に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号46に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(f)配列番号41に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号46に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(g)配列番号39に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号47に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(h)配列番号40に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号47に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(i)配列番号41に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号47に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;及び(j)配列番号42に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号48に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(k)配列番号42に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号49に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(l)配列番号42に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号50に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(m)配列番号43に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号48に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(n)配列番号43に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号49に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(o)配列番号43に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号50に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(p)配列番号44に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号51に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(q)配列番号44に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号52に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;(r)配列番号45に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号51に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖;又は(s)配列番号45に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む重鎖及び配列番号52に対して少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%同一である配列を含む軽鎖を含み得る。
【0034】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は、(a)配列番号15を有する重鎖(HC)CDR1、配列番号16を有するHC CDR2及び配列番号17を有するHC CDR3を含む重鎖並びに配列番号18を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号19を有するLC CDR2及び配列番号20を有するLC CDR3を含む軽鎖;(b)配列番号21を有する重鎖(HC)CDR1、配列番号22を有するHC CDR2及び配列番号23を有するHC CDR3を含む重鎖並びに配列番号24を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号25を有するLC CDR2及び配列番号26を有するLC CDR3を含む軽鎖;又は(c)配列番号27を有する重鎖(HC)CDR1、配列番号28を有するHC CDR2及び配列番号29を有するHC CDR3を含む重鎖並びに配列番号30を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号31を有するLC CDR2及び配列番号32を有するLC CDR3を含む軽鎖を含み得る。
【0035】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は、(a)配列番号53を含む重鎖及び配列番号60を含む軽鎖;(b)配列番号53を含む重鎖及び配列番号61を含む軽鎖;又は(c)配列番号58を含む重鎖及び配列番号65を含む軽鎖を含み得る。一部の実施形態では、抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで、抗体は(a)配列番号53から成る重鎖及び配列番号60から成る軽鎖;(b)配列番号53から成る重鎖及び配列番号61から成る軽鎖;又は(c)配列番号58から成る重鎖及び配列番号65から成る軽鎖を含む。
【0036】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はヒト化された抗体であり得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab'及び(Fab')2から選択され得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はキメラ抗体であり得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はIgA、IgG及びIgDから選択され得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はIgGであり得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はIgG4であり得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は、少なくとも1つのIgG4重鎖定常領域にてS241Pの変異を含むIgG4であり得る。
【0037】
本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はヒトのCSF1Rに結合し得る、及び/又はカニクイザルのCSF1Rに結合する。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はCSF1Rへのリガンドの結合を阻止し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はCSF1及び/又はIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はCSF1及びIL-34双方のCSF1Rへの結合を阻止し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はリガンド誘導性CSF1Rリン酸化を阻害し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はCSF1及び/又はIL-34誘導性のCSF1Rリン酸化を阻害し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体は1nMより小さい親和性(KD)でヒトのCSF1Rに結合し得る。本明細書で記載される方法のいずれかでは、抗体はCSF1又はIL-34の存在下での単球の増殖及び/又は生き延び応答を阻害し得る。
【0038】
一部の実施形態では、CSF1Rを結合する抗体を含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、本明細書で記載される治療方法のいずれかで使用するためにCSF1Rを結合する抗体及びCSF1Rを結合する抗体を含む組成物が提供される。
[本発明1001]
対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる方法であって、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を前記対象に投与することを含み、前記抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、方法。
[本発明1002]
IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させることを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
IL-6のレベルを低下させることを含む、本発明1001又は1002の方法。
[本発明1004]
前記対象が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎及びキャッスルマン病から選択される状態を有する、本発明1003の方法。
[本発明1005]
TNF-αのレベルを低下させることを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記対象が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される状態を有する、本発明1005の方法。
[本発明1007]
IL-1βのレベルを低下させることを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記対象が、関節リウマチ及び若年性特発性関節炎から選択される状態を有する、本発明1007の方法。
[本発明1009]
CXCL10のレベルを低下させることを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子の高いレベルに関連する状態を治療する方法であって、前記状態を持つ対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含み、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記抗体は前記少なくとも1種の因子のレベルを低下させる、方法。
[本発明1011]
前記状態が、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子の高いレベルに関連する、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記状態が、IL-6の高いレベルに関連する、本発明1010又は1011の方法。
[本発明1013]
前記状態が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎及びキャッスルマン病から選択される、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記状態が、TNF-αの高いレベルに関連する、本発明1010~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
前記状態が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記状態が、IL-1βの高いレベルに関連する、本発明1010~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記状態が、関節リウマチ及び若年性特発性関節炎から選択される、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記状態が、CXCL10の高いレベルに関連する、本発明1010~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記対象が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される状態を有する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1020]
炎症性関節炎の対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含む炎症性関節炎を治療する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記抗体がIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、方法。
[本発明1021]
前記抗体が、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させる、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記抗体がIL-6のレベルを低下させる、本発明1020又は1021の方法。
[本発明1023]
前記抗体がTNF-αのレベルを低下させる、本発明1020~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記抗体がIL-1βのレベルを低下させる、本発明1020~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記抗体がCXCL10のレベルを低下させる、本発明1020~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記炎症性関節炎が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び若年性特発性関節炎から選択される、本発明1020~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
炎症性状態の対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含む炎症性状態を治療する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記抗体がIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、方法。
[本発明1028]
前記抗体が、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させる、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記抗体がIL-6のレベルを低下させる、本発明1027又は1028の方法。
[本発明1030]
前記抗体がTNF-αのレベルを低下させる、本発明1027~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
前記抗体がIL-1βのレベルを低下させる、本発明1027~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
前記抗体がCXCL10のレベルを低下させる、本発明1027~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記炎症性状態が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される、本発明1027~1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
CD16+障害を持つ対象にCSF1Rを結合する有効量の抗体を投与することを含むCD16+障害を治療する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記抗体がIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、方法。
[本発明1035]
前記抗体が、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子のレベルを低下させる、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記抗体がIL-6のレベルを低下させる、本発明1034又は1035の方法。
[本発明1037]
前記抗体がTNF-αのレベルを低下させる、本発明1034~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
前記抗体がIL-1βのレベルを低下させる、本発明1034~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記抗体がCXCL10のレベルを低下させる、本発明1034~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記CD16+障害が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される、本発明1034~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
前記抗体がCD16+単球の数を実質的に減らす、本発明1036~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
前記抗体の投与の後にCD16-単球の数が実質的に不変である、本発明1036~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
前記抗体が、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルをインビトロで低下させる、本発明1022~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記対象が、前記抗体の投与の前に、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子の高いレベルを有している、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記状態がメソトレキセートに耐性である、及び/又は前記対象がメソトレキセート不十分応答者である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記状態がTNF阻害剤に耐性である、及び/又は前記対象がTNF阻害剤不十分応答者である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1047]
CSF1Rを結合する抗体をメソトレキセート不十分応答者に投与することを含む前記メソトレキセート不十分応答者を治療する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、方法。
[本発明1048]
CSF1Rを結合する抗体をTNF阻害剤不十分応答者に投与することを含む前記TNF阻害剤不十分応答者を治療する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、方法。
[本発明1049]
前記不十分応答者がCD16+障害を有する、本発明1047又は1048の方法。
[本発明1050]
前記CD16+障害が関節リウマチである、本発明1049の方法。
[本発明1051]
前記抗体がCD16+単球の数を実質的に減らす、本発明1047~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記抗体の投与の後にCD16-単球の数が実質的に不変である、本発明1047~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記抗体の投与の後に前記不十分応答者におけるIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルが低減される、本発明1047~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
CSF1Rを結合する抗体の恩恵を得うる対象を特定する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記方法が、前記対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含み、前記対象における前記少なくとも1種の因子の高いレベルは前記対象がCSF1Rを結合する前記抗体の恩恵を得うることを指し示す、方法。
[本発明1055]
炎症性状態を患う対象にてCSF1Rを結合する抗体への応答性を予測する方法であって、前記抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記方法が、前記対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含み、前記対象における前記少なくとも1種の因子の高いレベルは前記対象がCSF1Rを結合する前記抗体に応答する可能性が高いことを指し示す、方法。
[本発明1056]
前記対象がメソトレキセート不十分応答者である、本発明1054又は1055の方法。
[本発明1057]
前記対象がTNF阻害剤不十分応答者である、本発明1054~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記対象がCD16+障害を有する、本発明1054~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記対象が関節リウマチを有する、本発明1054~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記対象が高いレベルのCD16+単球を有する、本発明1054~1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
CSF1Rを結合する前記抗体を投与することをさらに含む、本発明1054~1060のいずれかの方法。
[本発明1062]
DMARD、メソトレキセート、TNF阻害剤、抗TNF剤、グルココルチコイド、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、JAK阻害剤、SYK阻害剤、抗IL-6剤、抗CD20剤、抗CD19剤、抗GM-CSF剤、抗IL-1剤、及びCTLA4剤から選択される少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、メソトレキセート、抗TNF-α抗体、可溶性TNF受容体、グルココルチコイド、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、JAK阻害剤、SYK阻害剤、抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗GM-CSF抗体、及び抗GM-CSF受容体抗体、抗IL-1抗体、IL-1受容体拮抗剤、及びCTLA4-Ig融合分子から選択される、本発明1062の方法。
[本発明1064]
炎症性状態を治療する方法であって、
(a)前記炎症性状態の対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することと、
(b)前記対象にて前記少なくとも1種の因子のレベルが高いのであれば、CSF1Rを結合し、且つCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する有効量の抗体を前記対象に投与することであって、前記抗体が、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、こと
を含む、方法。
[本発明1065]
炎症性状態を治療する方法であって、
(a)前記炎症性状態の対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子の高いレベルを検出することと、
(b)CSF1Rを結合し、且つCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する有効量の抗体を前記対象に投与することであって、前記抗体が、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる、こと
を含む、方法。
[本発明1066]
前記抗体はリガンド誘導性CSF1Rリン酸化をインビトロで阻害する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1067]
前記抗体が、
(a)配列番号39の配列を含む重鎖と配列番号46の配列を含む軽鎖とを含む、抗体;
(b)配列番号15の配列を有する重鎖(HC)CDR1と配列番号16の配列を有するHC CDR2と配列番号17の配列を有するHC CDR3とを含む重鎖、及び、配列番号18の配列を有する軽鎖(LC)CDR1と配列番号19の配列を有するLC CDR2と配列番号20の配列を有するLC CDR3とを含む軽鎖を含む、抗体;ならびに
(c)配列番号53の配列を含む重鎖と配列番号60の配列を含む軽鎖とを含む、抗体
から選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1068]
前記抗体がヒト化抗体である、本発明1067の方法。
[本発明1069]
前記抗体が、Fab、Fv、scFv、Fab'及び(Fab')2から選択される、本発明1067又は1068の方法。
[本発明1070]
前記抗体が、0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgの用量で投与される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1071]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルが正常上限(ULN)の8倍を超えない、本発明1070の方法。
[本発明1072]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるクレアチンキナーゼ(CK)のレベルがULNの10倍を超えない、本発明1070又は1071の方法。
[本発明1073]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるAST及び/又はALTのレベルがULNの3倍を超えず、且つ前記対象に由来する前記血清試料における総ビリルビンがULNの2倍を超えない、本発明1070~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
対象にて関節リウマチを治療する方法であって、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を結合する有効量の抗体を前記対象に投与することを含み、前記抗体はコロニー刺激因子1(CSF1)のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、前記有効量が0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgである、方法。
[本発明1075]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるAST及び/又はALTのレベルが正常上限(ULN)の8倍を超えない、本発明1074の方法。
[本発明1076]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるCKのレベルがULNの10倍を超えない、本発明1074又は1075の方法。
[本発明1077]
投与の後に、前記対象に由来する血清試料におけるAST及び/又はALTのレベルがULNの3倍を超えず、且つ前記対象に由来する前記血清試料における総ビリルビンがULNの2倍を超えない、本発明1074~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
前記抗体はリガンド誘導性CSF1Rリン酸化をインビトロで阻害する、本発明1074~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
前記抗体が、
(a)配列番号39の配列を含む重鎖と配列番号46の配列を含む軽鎖とを含む、抗体;
(b)配列番号15の配列を有する重鎖(HC)CDR1と配列番号16の配列を有するHC CDR2と配列番号17の配列を有するHC CDR3とを含む重鎖、及び、配列番号18の配列を有する軽鎖(LC)CDR1と配列番号19の配列を有するLC CDR2と配列番号20の配列を有するLC CDR3とを含む軽鎖を含む、抗体;ならびに
(c)配列番号53の配列を含む重鎖と配列番号60の配列を含む軽鎖とを含む、抗体
から選択される、本発明1074~1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
前記抗体がヒト化抗体である、本発明1079の方法。
[本発明1081]
前記抗体が、Fab、Fv、scFv、Fab'及び(Fab')2から選択される、本発明1079又は1080の方法。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】実施例1にて考察される、ヒト化抗体huAb1~huAb16のそれぞれについてのヒト化重鎖可変領域の配列比較を示す図である。四角で囲んだ残基は、相当するマウスの残基に戻したヒトアクセプター配列におけるアミノ酸である。
【
図2A】実施例1にて考察される、ヒト化抗体huAb1~huAb16のそれぞれについてのヒト化軽鎖可変領域の配列比較を示す図である。四角で囲んだアミノ酸は、相当するマウスの残基に戻したヒトアクセプター配列における残基である。
【
図3】実施例2にて記載される、1μg/mlのhuAb1又はIgG4アイソタイプ対照によって4日間処置した無傷の滑膜外植片(n=関節リウマチ患者6人)の組織培養培地でのELISAによって測定したIL-6サイトカイン濃度を示す図である。
【
図4-1】
図4A~Iは、実施例2にて記載される、huAb1又はIgG4アイソタイプ対照によって4日間処置した無傷の滑膜外植片(n=関節リウマチ患者4人)の組織培養培地での多重Luminex(登録商標)解析によって測定したサイトカインの濃度を示す図である。
【
図4-2】
図4J~Lは、実施例2にて記載される、huAb1又はIgG4アイソタイプ対照によって4日間処置した無傷の滑膜外植片(n=関節リウマチ患者4人)の組織培養培地での多重Luminex(登録商標)解析によって測定したサイトカイン及びマトリクスメタロプロテイナーゼの濃度を示す図である。
【
図5】実施例2にて記載される、huAb1又はIgG4アイソタイプ対照によって4日間処置した無傷の滑膜外植片(n=関節リウマチ患者6人)の組織培養培地での多重Luminex(登録商標)解析によって測定した(A)CXCL7、(B)CXCL11及び(C)CXCL12のレベルを示す図である。
【
図6】実施例3にて記載される、抗CSF1R抗体で予防的に処置した、コラーゲン誘発関節炎を持つマウスの(A)前足及び(B)膝におけるマクロファージの数を示す図である。
【
図7】実施例3にて記載される、抗CSF1R抗体で治療的に処置した、コラーゲン誘発関節炎を持つマウスの(A)前足及び(B)膝におけるマクロファージの数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を投与することを含む、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させる方法が提供される。本明細書で考察されるように、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体は、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させること及びそれら因子の高いレベルと関連する状態を治療することに有効である。例となるそのような状態には、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス、及び炎症性腸疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本発明者らは、CSF1Rを結合する抗体に関節リウマチ患者からの滑膜生検試料を接触させることがIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2(MCP-1とも呼ばれる)、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9のレベルを低下させることを見いだした。
【0041】
本明細書で使用される項目見出しは、構成目的のためのものであって、記載される主題を限定するとして解釈されるべきではない。特許出願及び出版物を含む、本明細書で引用される文献はすべて任意の目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0042】
定義
特に他の定義がない限り、本発明と関連して使用される科学用語及び専門用語は当業者によって共通して理解される意味を有することとする。さらに文脈によって特に要求されない限り、単数用語は複数用語を含むべきであり、複数用語は単数用語を含むこととする。
【0043】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(たとえば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応及び精製法と関連して使用される例となる技法は当該技術で既知である。そのような技法及び手順の多くは、たとえば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))ほかに記載されている。加えて、化学合成、化学分析、医薬品調剤、製剤化及び送達及び患者の治療のための例となる技法も当該技術で既知である。
【0044】
本出願では、「又は」の使用は、特に言及されない限り、「及び/又は」を意味する。複数の従属クレームの文脈では、「又は」の使用は、1を超える先行する従属クレーム又は独立クレームを択一的な形式によってのみ戻って参照する。また、「要素」又は「成分」のような用語は、特に言及されない限り、1つのユニットを含む要素及び成分と1を超えるサブユニットを含む要素及び成分の双方を包含する。
【0045】
本開示に従って利用される以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有するように理解されるべきである。
【0046】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は相互交換可能に使用されてもよく、ヌクレオチドのポリマーを指す。ヌクレオチドのそのようなポリマーは天然の及び/又は非天然のヌクレオチドを含有してもよく、それらにはDNA、RNA及びPNAが挙げられるが、これらに限定されない。「ヌクレオチド配列」は核酸分子又はポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの線形配列を指す。
【0047】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は相互交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最短の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは天然の又は非天然のアミノ酸残基を含有してもよく、それらにはペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体及び多量体が挙げられるが、これらに限定されない。完全長のタンパク質及びその断片の双方が定義によって包含される。用語にはまた、ポリペプチドの発現後修飾、たとえば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化等も含まれる。さらに、本発明の目的では、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、ネイティブの配列に対する欠失、付加及び置換(一般に性質上保存的な)のような修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発によって意図的であってもよいし、又はPCR増幅によるタンパク質又はエラーを作出する宿主の変異によって偶発的であってもよい。
【0048】
用語「CSF1R」は本明細書では、N末端のECD、膜貫通ドメイン及び細胞内チロシンキナーゼドメインを含み、N末端のリーダー配列を伴う又は伴わない完全長のCSF1Rを指す。一部の実施形態では、CSF1Rは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトのCSF1Rである。
【0049】
本明細書で使用される用語「CSF1R細胞外ドメイン」(「CSF1R ECD」)は、細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインを欠くCSF1Rポリペプチドを指す。CSF1R ECDには、CSF1及び/又はIL-34を結合することが可能である完全長のCSF1R ECD及びCSF1R ECD断片が含まれる。ヒト完全長のCSF1R ECDは本明細書では、配列番号2のアミノ酸1~512(すなわち、リーダー配列を含む)又はアミノ酸20~512(すなわち、リーダー配列を含まない)のいずれかを含むと定義される。一部の実施形態では、ヒトのCSF1R ECD断片は配列番号2のアミノ酸20~506(配列番号5を参照)を含む。一部の実施形態では、ヒトのCSF1R断片はアミノ酸507、508、509、510又は511で終わる。一部の実施形態では、カニクイザルCSF1R ECDは配列番号7(リーダー配列を伴う)又は配列番号7のアミノ酸20~506(リーダー配列を伴わない)を含む。
【0050】
抗CSF1R抗体を参照して、たとえば、CSF1及び/又はIL-34のようなリガンド「の結合を阻止する」という用語及びその文法的変形は、CSF1RとCSF1及び/又はIL-34のようなCSF1Rリガンドとの間の相互作用を阻害する能力を指すのに使用される。そのような阻害は、たとえば、CSF1R上の結合部位の重なり合い及び/又はリガンドの親和性等を変える抗体によって誘導されるCSF1Rの構造変化によるリガンド結合の直接的な妨害を含むいずれかのメカニズムを介して生じる。「機能的である」と言われる抗体及び抗体断片はそのような特性を有することを特徴とする。
【0051】
「免疫」活性は、ネイティブの又は天然に存在するCSF1Rポリペプチドによって保有される抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指すのみである。
【0052】
本明細書で使用される用語「抗体」は、重鎖の少なくとも相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖の少なくともCDR1、CDR2及びCDR3を含む分子を指し、該分子は抗原に結合することが可能である。用語、抗体には、たとえば、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab'及び(Fab')2のような抗原を結合することが可能である断片が含まれるが、これらに限定されない。用語、抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体及びたとえば、マウス、ヒト、カニクイザル等のような種々の種の抗体も含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
一部の実施形態では、抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1本の重鎖と、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1本の軽鎖とを含む。一部の実施形態では、抗体は、各重鎖が重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む2本の重鎖と、各軽鎖が軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む2本の軽鎖とを含む。本明細書で使用される、たとえば、6つのCDRすべて(3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR)を含む単鎖ポリペプチド鎖を含む単鎖Fv(scFv)又はいずれか他の抗体は、重鎖及び軽鎖を有すると見なされる。一部の実施形態では、重鎖は3つの重鎖CDRを含む抗体の領域であり、軽鎖は3つの軽鎖CDRを含む抗体の領域である。
【0054】
本明細書で使用される用語「重鎖可変領域」は、重鎖CDR1、フレームワーク(FR)2、CDR2、FR3及びCDR3を含む領域を指す。一部の実施形態では、重鎖可変領域はまたFR1の少なくとも一部及び/又はFR4の少なくとも一部も含む。一部の実施形態では、重鎖CDR1はKabat残基26~35に相当し、重鎖CDR2はKabat残基50~65に相当し、重鎖CDR3はKabat残基95~102に相当する。たとえば、免疫的に関心のあるタンパク質のKabat配列(Kabat Sequences of Proteins ofImmunological Interest)(1987及び1991,NIH,Bethesda,Md.)及び
図1を参照のこと。一部の実施形態では、重鎖CDR1はKabat残基31~35に相当し、重鎖CDR2はKabat残基50~65に相当し、重鎖CDR3はKabat残基95~102に相当する。同上文献を参照のこと。
【0055】
本明細書で使用される用語「重鎖定常領域」は、少なくとも3つの重鎖定常領域、CH1、CH2及びCH3を含む領域を指す。非限定の例となる重鎖定常領域にはγ、δ及びαが挙げられる。非限定の例となる重鎖定常領域にはε及びμも挙げられる。各重鎖定常領域は抗体のアイソタイプに相当する。たとえば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。さらにμ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。ある特定のアイソタイプはさらにサブクラスに分けることができる。たとえば、IgG抗体にはIgG1(γ1定常領域を含む)、IgG2(γ2定常領域を含む)、IgG3(γ3定常領域を含む)、及びIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が挙げられるが、これらに限定されず;IgA抗体にはIgA1(α1定常領域を含む)及びIgA2(α2定常領域を含む)が挙げられるが、これらに限定されず;IgM抗体にはIgM1及びIgM2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
一部の実施形態では、重鎖定常領域は、抗体に所望の特性を付与する1以上の変異(又は置換)、付加又は欠失を含む。非限定の例となる変異はIgG4のヒンジ領域(定常ドメインCH1とCH2の間)におけるS241P変異であり、それはIgG4のモチーフCPSCPをCPPCPに変え、それはIgG1における相当するモチーフに類似する。変異は、一部の実施形態では、さらに安定なIgG4抗体を生じる。たとえば、Angalら、Mol.Immunol.30:105-108(1993);Bloomら、Prot.Sci.6:407-415(1997);Schuurmanら、Mol.Immunol.38:1-8(2001)を参照のこと。
【0057】
本明細書で使用される用語「重鎖」は、リーダー配列を伴う又は伴わない少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、重鎖は重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。本明細書で使用される用語「完全長の重鎖」は、リーダー配列を伴う又は伴わない重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0058】
本明細書で使用される用語「軽鎖可変領域」は、軽鎖CDR1、フレームワーク(FR)2、CDR2、FR3及びCDR3を含む領域を指す。一部の実施形態では、軽鎖可変領域はFR1及び/又はFR4も含む。一部の実施形態では、軽鎖CDR1はKabat残基24~34に相当し、軽鎖CDR2はKabat残基50~56に相当し、軽鎖CDR3はKabat残基89~97に相当する。たとえば、免疫的に関心のあるタンパク質のKabat配列(Kabat Sequences of Proteins ofImmunological Interest)(1987及び1991, NIH, Bethesda, Md.)及び
図1を参照のこと。
【0059】
本明細書で使用される用語「軽鎖定常領域」は、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を指す。非限定の例となる軽鎖定常領域にはλ及びκが含まれる。
【0060】
本明細書で使用される用語「軽鎖」は、リーダー配列を伴う又は伴わない少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、軽鎖は軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。本明細書で使用される用語「完全長の軽鎖」は、リーダー配列を伴う又は伴わない軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0061】
本明細書で使用される「キメラ抗体」は、第1の種(たとえば、マウス、ラット、カニクイザル等)に由来する少なくとも1つの可変領域と第2の種(たとえば、ヒト、カニクイザル等)に由来する少なくとも1つの定常領域とを含む抗体を指す。一部の実施形態では、キメラ抗体は少なくとも1つのマウスの可変領域と少なくとも1つのヒトの定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は少なくとも1つのカニクイザルの可変領域と少なくとも1つのヒトの定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は少なくとも1つのラットの可変領域と少なくとも1つのマウスの定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体の可変領域すべてが第1の種に由来し、キメラ抗体の定常領域すべてが第2の種に由来する。
【0062】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域における少なくとも1つのアミノ酸がヒト可変領域に由来する相当するアミノ酸で置き換えられている抗体を指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体は少なくとも1つのヒト定常領域又はその断片を含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体はFab、scFv、(Fab')2等である。
【0063】
本明細書で使用される「CDR移植抗体」は、第1の種(非ヒト)の相補性決定領域(CDR)が第2の種(ヒト)のフレームワーク領域(FR)に移植されているヒト化抗体を指す。
【0064】
本明細書で使用される「ヒト抗体」は、ヒトで産生される抗体、XenoMouse(登録商標)のようなヒトの免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物で産生される抗体、及びファージディスプレイのようなインビトロの方法を用いて選択される抗体を指し、該抗体のレパートリーはヒトの免疫グロブリンの配列に基づく。
【0065】
本明細書で使用される用語「リーダー配列」は、哺乳類細胞からのポリペプチドの分泌を促す、ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。リーダー配列は哺乳類細胞からのポリペプチドの放出の際に切断されて成熟タンパク質を形成し得る。リーダー配列は天然であっても合成であってもよく、それらが連結されるタンパク質に対して非相同であってもよいし、又は相同であってもよい。例となるリーダー配列には、たとえば、それぞれヒトの軽鎖及び重鎖のリーダー配列に相当する配列番号3及び4のアミノ酸配列のような抗体のリーダー配列が挙げられるが、これらに限定されない。非限定の例となるリーダー配列には、非相同性タンパク質に由来するリーダー配列も含まれる。一部の実施形態では、抗体はリーダー配列を欠く。一部の実施形態では、抗体は少なくとも1つのリーダー配列を含み、それはネイティブ抗体のリーダー配列及び非相同性のリーダー配列から選択され得る。
【0066】
用語「ベクター」は、宿主細胞にて増殖し得るクローニングしたポリヌクレオチド(単数)又はポリヌクレオチド(複数)を含有するように操作され得るポリヌクレオチドを記載するのに使用される。ベクターは、1以上の以下の要素:複製開始点、当該ポリペプチドの発現を調節する1以上の調節配列(たとえば、プロモータ及び/又はエンハンサ)、及び/又は1以上の選択可能なマーカー遺伝子(たとえば、抗生剤耐性遺伝子及び比色アッセイで使用され得る遺伝子、たとえば、β-ガラクトシダーゼ)を含み得る。用語「発現ベクター」は宿主細胞にて当該ポリペプチドを発現させるのに使用されるベクターを指す。
【0067】
「宿主細胞」はベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであってもよい又はレシピエントである細胞を指す。宿主細胞は原核細胞であってもよいし、又は真核細胞であってもよい。例となる真核細胞には、霊長類細胞又は非霊長類動物細胞のような哺乳類細胞;酵母のような真菌細胞;植物細胞;及び昆虫細胞が挙げられる。非限定の例となる哺乳類細胞には、NSO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、及び293細胞及びCHO細胞、並びにそれぞれ293-6E細胞及びDG44細胞のようなその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用される用語「単離される」は、分子が通常自然界で共に見いだされる成分の少なくとも一部から分離されている分子を指す。たとえば、ポリペプチドは、それが産生される細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合、「単離される」と言われる。ポリペプチドが発現後細胞から分泌される場合、それを産生した細胞からポリペプチドを含有する上清を物理的に分離することがポリペプチドを「単離すること」であると見なされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが通常自然界で見いだされるさらに大きなポリヌクレオチド(たとえば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNA)の一部ではない場合、又は、たとえば、RNAポリヌクレオチドの場合、それが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合、「単離される」と言われる。従って、宿主細胞の内部でのベクターに含有されるDNAポリヌクレオチドはそのポリヌクレオチドが実際にそのベクターにて見いだされない限り、「単離された」と言われ得る。
【0069】
用語「高いレベル」は、対照、たとえば、炎症性の状態又は本明細書で記載される他の状態を患っていない個体(単数)又は個体(複数)における特定の組織に比べて、対象の同じ組織におけるサイトカイン又はマトリクスメタロプロテイナーゼのようなタンパク質のさらに高いレベルを意味する。高いレベルは、たとえば、タンパク質の上昇した発現、上昇した安定性、低下した分解、上昇した分泌、低下したクリアランス等のようないずれかのメカニズムの結果であり得る。
【0070】
用語「低下させる」は、対象の特定の組織にて、たとえば、サイトカイン又はマトリクスメタロプロテイナーゼのようなタンパク質のレベルを少なくとも10%低下させることを意味する。一部の実施形態では、CSF1Rを結合する抗体のような剤は、対象の特定の組織にて、たとえば、サイトカイン又はマトリクスメタロプロテイナーゼのようなタンパク質のレベルを少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%低下させる。一部の実施形態では、タンパク質のレベルは、たとえば、CSF1Rを結合する抗体のような剤と接触する前のタンパク質のレベルに比べて低下させられる。
【0071】
用語「耐性である」は治療剤に耐性の文脈で使用される場合、過去における治療剤の標準用量への対象の応答に比べて又は治療剤の標準用量への類似の障害のある類似の対象の予想される応答に比べて、治療剤の標準用量への応答の低下又は応答の欠如を意味する。従って、一部の実施形態では、対象は以前に治療剤を与えられていないにもかかわらず該治療剤に耐性であってもよく、又は該対象は、過去1回以上の機会において治療剤に応答した後に該治療剤に対する耐性を現してもよい。
【0072】
用語「対象」及び「患者」はヒトを指すのに本明細書では相互交換可能に使用される。一部の実施形態では、齧歯類、サル類、ネコ科動物、イヌ科動物、ウマ科動物、ウシ科動物、ブタ科動物、ヒツジ科動物、ヤギ科動物、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類スポーツ動物及び哺乳類ペットを含むがこれらに限定されない、他の哺乳類を治療する方法も提供される。
【0073】
本明細書で使用される用語「試料」は、たとえば、物理的な、生化学的な、化学的な、及び/又は生理学的な特徴に基づいて性状分析される、定量される、及び/又は特定されるべきである細胞性の実体及び/又は他の分子的実体を含有する対象から得られる又は対象に由来する組成物を指す。例となる試料は組織試料である。別の例となる試料は血清又は血漿の試料である。
【0074】
用語「組織試料」は対象の組織から得られる類似の細胞の採取物を指す。組織試料の供給源は、新鮮な、凍結した、及び/又は保存した臓器又は組織の試料又は生検材料又は吸引液からの固形組織;血液又はいずれかの血液構成成分;たとえば、脳脊髄液、羊水、腹水、滑膜液、又は間質液のような体液;対象の妊娠又は発達における任意の時期の細胞であり得る。一部の実施形態では、組織試料は滑膜生検組織試料及び/又は滑膜液試料である。一部の実施形態では、組織試料は滑膜液試料である。組織試料は一次細胞又は培養細胞又は細胞株であってもよい。任意で、組織試料は病んだ組織/臓器から得られる。組織試料は、たとえば、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定液、栄養素、抗体等のような実際自然界では混ざり合うことのない化合物を含有し得る。本明細書で使用される「対照試料」又は「対照組織」は、対象が治療される疾患に罹っていないと分かっている又は考えられる供給源から得られる試料、細胞又は組織を指す。
【0075】
本明細書での目的で、組織試料の「切片」は固形組織試料から切り出される組織又は細胞の薄い薄片のような組織試料の一部又は一片を意味する。
【0076】
本明細書で使用される「関節リウマチ」又は「RA」はRAの分類についての1987年、2000年又は2010年の基準(米国リウマチ学会又は米国リウマチ学会議)又は類似の基準に従って診断され得る認識された病状を指す。一部の実施形態では、用語「関節リウマチ」は、関節の損傷を招き、結果的に慢性疼痛、機能の喪失及び身体障害を生じ得る関節の内膜(滑膜)の炎症を主として特徴とする慢性自己免疫疾患を指す。RAは、皮膚、肺及び眼を含む生体の複数の臓器を冒し得るので、それは全身性疾患と呼ばれる。
【0077】
用語「関節リウマチ」には、活動期及び早期のRAだけでなく、以下で定義されるような初期のRAも含まれる。RAの生理的な指標には、RAでは不変ではないが、特徴的である対称性の関節の腫脹が挙げられる。手の近位指節間(PIP)関節並びに中手指節関節(MCP)、手首、肘、膝、足首及び中足指節(MTP)関節の紡錘状腫脹が一般にあり、腫脹は容易に検出される。受動運動における疼痛が関節の炎症には最も感度の高い試験であり、炎症及び構造的変形は罹患関節の動きの範囲を限定することが多い。典型的な視覚的変化には、MCP関節での指の尺骨偏位、過伸展、又はMCP及びPIP関節の過屈曲、肘の屈曲拘縮、並びに手根骨及びつま先の亜脱臼が挙げられる。RAの対象は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)及び/又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に耐性であり得る。非限定の例となる「DMARD」には、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メソトレキセート(MTX)、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ(加えて、経口又は皮下のMTX)、アザチオプリン、D-ペニシルアミン、金塩(経口)、金塩(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリンA及び局所シクロスポリンを含むシクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA(Goodyear及びSilverman、J. Exp. Med., 197(9):1125-1139 (2003))(その塩及び誘導体を含む)等が挙げられる。本発明に係る治療法のためのさらなる候補には、毒性、不十分な有効性及び/又は耐性のために、たとえば、エタネルセプト、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ及び/又はアダリムマブのようなTNF阻害剤による以前の又は現在の治療に対して不十分な応答を経験している者が挙げられる。
【0078】
「活動期の関節リウマチ」患者とは、RAの潜伏期の症状ではなく活動期の症状を伴う患者を意味する。「早期活動期の関節リウマチ」対象は、RAの分類について改訂された1987年、2000年又は2010年の基準(米国リウマチ学会又は米国リウマチ学会議)に従って少なくとも8週間、しかし、4年を超えない間活動期RAと診断された対象である。
【0079】
「早期関節リウマチ」対象は、RAの分類について改訂された1987年、2000年又は2010年の基準(米国リウマチ学会又は米国リウマチ学会議)に従って少なくとも8週間、しかし、4年を超えない間RAと診断された対象である。RAには、たとえば、若年性発症RA、若年性特発性関節炎(JIA)又は若年性RA(JRA)が含まれる。
【0080】
「初期RA」患者は、たとえば、抗CCP及び共有エピトープのようなRA特異的な予後診断バイオマーカーの存在と関連してRA診断のACR基準を完全には満たさない早期の多発性関節炎を有する。これらの患者には、多発性関節炎を呈し、抗CCP抗体が陽性であるが、未だRAの診断を有していない患者、及び真正のACR基準のRA(95%の確率)を発症しつつある高リスクにある患者が含まれる。
【0081】
用語「炎症性関節炎」は自己免疫状態が原因で生じるいずれかの関節炎を包含する。炎症性関節炎に関与し得る炎症性関節炎及び自己免疫状態の非限定の例には、関節リウマチ(若年性発症RA、若年性特発性関節炎(JIA)又は若年性関節リウマチ(JRA))、強直性脊椎炎、混合性結合組織疾患(MCTD)、乾癬関節炎、反応性関節炎、強皮症、スチル病、全身性エリテマトーデス、急性及び慢性の関節炎、リウマチ性滑膜炎、痛風又は痛風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、II型コラーゲン誘発関節炎、感染性関節炎、敗血症性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、脊椎関節炎、変形性関節症、進行性慢性関節炎、変形性関節炎、一次性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、閉経関節炎、エストロゲン欠乏関節炎、フェルティ症候群、及びRA以外のリウマチ性自己免疫疾患が挙げられる。
【0082】
「関節損傷」は最も広義に使用され、結合組織及び軟骨を含む1以上の関節のいずれかの部分に対する損傷又は部分的な若しくは完全な破壊を指し、該損傷は任意の原因の構造的な及び/又は機能的な損傷を含み、関節の疼痛/関節痛を引き起こし得るし、又は引き起こし得ない。それには、限定しないで、炎症性の関節疾患並びに非炎症性の関節疾患に関連する又はその結果生じる関節の損傷が挙げられる。この損傷は、任意の状態、たとえば、自己免疫疾患、特に炎症性関節炎、最も特に関節リウマチが原因で生じ得る。本明細書での目的で、関節は、(動物のような脊椎動物の)骨格の要素間のそれを取り囲み、支える部分との接触の点であり、それには、たとえば、臀部、脊椎の椎骨間の関節、脊椎と骨盤の間の関節(仙腸骨関節)、腱と靭帯が骨に連結する関節、肋骨と脊椎の間の関節、肩、膝、足、肘、手、指、足首、及びつま先の関節、特に手足における関節が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される用語「ループス」は、結合組織を攻撃する抗体が一般に関与する自己免疫性の疾患又は障害である。ループスの基本的な形態は、全身性のもの、全身性エリテマトーデス(SLE)であり、それには皮膚SLE及び亜急性皮膚SLE、並びに他の型のループス(腎炎、腎外、脳炎、小児性、非腎性、円盤状の及び脱毛症を含む)が含まれる。ある特定の実施形態では、用語「全身性エリテマトーデス」は、皮膚病変、関節の疼痛と腫脹、腎臓疾患(ルーパス腎炎)、心臓及び/又は肺の周りの体液、心臓の炎症及び種々の他の全身性の状態を生じ得る慢性の自己免疫疾患を指す。ある特定の実施形態では、用語「ループス腎炎」はSLE患者で生じる腎臓の炎症を指す。ループス腎炎には、たとえば、糸球体腎炎及び/又は間質性腎炎が含まれ、それは高血圧、タンパク尿及び腎不全をもたらし得る。ループス腎炎は、たとえば、国際腎臓学会/国際腎病理学会によって定義されたような疾患の重症度と程度に基づいて分類され得る。ループス腎炎のクラスには、クラスI(最小限のメサンギウムループス腎炎)、クラスII(メサンギウム増殖性ループス腎炎)、クラスIII(巣状ループス腎炎)、クラスIV(びまん性分節性(IV-S)又はびまん性包括性(IV-G)のループス腎炎)、クラスV(膜性ループス腎炎)及びクラスVI(進行性硬化性のループス腎炎)が挙げられる。用語「ループス腎炎」にはクラスすべてが包含される。
【0084】
用語「多発性硬化症」(「MS」)は、ミエリンの進行性の破壊を特徴とする中枢神経系の慢性の及び多くは身体障害性の疾患を指す。「脱髄」はミエリン鞘が炎症を起こす、損傷される、及び神経線維から分離する場合に生じる。4つの国際的に認識されたMSの形態、すなわち、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)及び進行性再発型多発性硬化症(PRMS)がある。
【0085】
「一次性進行型多発性硬化症」又は「PPMS」は、再発と寛解の重なり合いが全くない発症からの疾患の緩やかな進行を特徴とする。疾患活動の小休止の期間があり得、良好な及び不良な数日又は数週間があり得る。PPMSは、発症が通常30代の後半又は40代の前半であり、男性も女性と同様に発症する可能性があり、当初の疾患活動が脊髄であり、脳ではないことが多い点でRRMS及びSPMSとは異なる。PPMSは脳に移行することが多いが、RRMS又はSPMSほど脳領域を損傷する可能性は低く;たとえば、PPMSの人々は認知問題を発症する可能性は低い。PPMSはMRI走査で炎症性(ガドリニウム増強)病変を示すことが最もありにくいMSの亜型である。多発性硬化症の人々全体の10~15%が一次性進行型形態に罹患している。PPMSは、McDonaldら、Ann.Neurol.50:121-7(2001)における基準に従って定義され得る。本明細書で治療されるPPMSの対象は普通、PPMSの確からしい又は確定的な診断を持つものである。
【0086】
「再発寛解型多発性硬化症」又は「RRMS」は、再発(増悪としても知られる)を特徴とし、その間に新しい症状が現れることができ、古いものが再び現れる又は悪化する。再発は、寛解の期間がその後に続き、その間に、再発中に得た損失から人が完全に又は部分的に回復する。再発は数日、数週間又は数カ月続くことができ、回復はゆっくり及び徐々に又はほぼ瞬時であることができる。MSを呈する人々の大半は先ずRRMSと診断される。これは、典型的に、人々が20代又は30代の時である(これよりもかなり早い又はかなり遅い診断も知られるが)。MSのこの亜型を呈する女性は男性より2倍多い。再発の間、中枢神経系(CNS)の白質領域における神経線維(ニューロン)の周りでの保護的な絶縁鞘であるミエリンが生体自体の免疫系による炎症性応答にて損傷され得る。このことが、損傷されるCNSの領域に応じてかなり異なる多種多様な神経症状の原因となる。再発の直後、炎症応答は徐々におさまり、CNSにおける特殊な種類の膠細胞(乏突起膠細胞と呼ばれる)が再ミエリン化(それによって軸索の周りのミエリン鞘が修復され得る過程)を支援する。それが寛解に関与し得るこの再ミエリン化である。RRMS患者のおよそ50%が疾患発症から10年以内にSPMSに転換する。30年後、この数字は90%に上昇する。どの時点においても疾患の再発/寛解形態はMSの人々全体の約55%を占める。
【0087】
「二次性進行型多発性硬化症」又は「SPMS」は、重なった再発と軽微な寛解と停滞を伴う又は伴わない臨床的な神経損傷の着実な進行を特徴とする。SPMSを発症する人々は2~40年以上の範囲で続いていた可能性のあるRRMSの期間を以前経験しているであろう。任意の重なった再発及び寛解は時間をかけて次第になくなる傾向がある。疾患の二次性進行性の相の開始から、一部の個体では進行は未だにかなり遅いけれども、RRMSの間よりも身体障害がはるかに早く進行し始める。SPMSはRRMSよりも低い炎症性病変の形成のレベルと関連する傾向があるが、疾患の全体の負荷は進行し続ける。どの時点においてもSPMSは多発性硬化症の人々全体の約30%を占める。
【0088】
「進行性再発型多発性硬化症」又は「PRMS」は、重なり合った再発と寛解を伴う臨床的な神経損傷の着実な進行を特徴とする。再発の直後に有意な回復があるが、再発間では症状は徐々に悪化する。多発性硬化症の人々全体の5%前後がPRMSに罹患している。一部の神経学者がPRMSはPPMSの変異であると考えている。
【0089】
用語「CD16+障害」は、哺乳類のCD16+単球が哺乳類における病的状態の原因となる、介在する、又はさもなければ寄与する疾患を意味する。含まれるのはまた、CD16+単球の減少が疾患の進行に改善効果を有する疾患である。この用語に含まれるのはCD16+の炎症性疾患、感染性疾患、免疫不全疾患、腫瘍等である。一部の実施形態では、CD16+の炎症性疾患にはメソトレキセート療法に応答しない炎症性疾患が挙げられる。一部の実施形態では、CD16+の炎症性疾患にはメソトレキセート耐性の関節リウマチ、メソトレキセート耐性の多発性硬化症、メソトレキセート耐性のループス、メソトレキセート耐性の炎症性腸疾患、メソトレキセート耐性のクローン病、メソトレキセート耐性の喘息及びメソトレキセート耐性の乾癬が挙げられる。ある特定の実施形態では、メソトレキセート耐性の関節リウマチのようなメソトレキセート耐性の疾患を有する患者はメソトレキセート不完全応答者又はメソトレキセート不十分応答者と呼ばれる。一部の実施形態では、CD16+障害を持つ対象はメソトレキセート不十分応答者である。一部の実施形態では、TNF阻害剤耐性の関節リウマチのようなTNF阻害剤耐性疾患を有する患者は、TNF阻害剤不完全応答者又はTNF阻害剤不十分応答者と呼ばれる。一部の実施形態では、CD16+障害を持つ対象はTNF阻害剤不十分応答者である。
【0090】
本発明に従って治療することができるCD16+障害の例には、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、若年性特発性関節炎(JIA)(全身性JIA及び多関節型JIAを含む)、乾癬関節炎、リウマチ性多発性筋痛、変形性関節症、成人発症スチル病、脊椎関節症、強直性脊椎炎、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性ミオパシー(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫介在性の血小板減少症)、ブドウ膜炎、甲状腺炎(グレーブ病、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ性甲状腺炎、アトピー性甲状腺炎、慢性甲状腺炎)、糖尿病、免疫介在性の腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、腎炎(たとえば、メサンギウム増殖性腎炎)、骨粗鬆症、悪液質(癌性悪液質を含む)、腫瘍、前立腺癌、脈絡膜血管新生(たとえば、加齢性黄斑変性症、特発性脈絡膜血管新生、近視性脈絡膜血管新生、特発性脈絡膜血管新生)、眼炎症性疾患(たとえば、汎ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、強膜炎、角膜炎、眼窩の炎症、視神経炎、ドライアイ、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、術後炎症)、筋委縮、多発性硬化症、特発性脱髄性多発性神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発性神経障害のような中枢性及び末梢性の神経系の脱髄性疾患、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎及び他の非肝臓指向性ウイルス性肝炎)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽種性肝炎、及び硬化性胆管炎のような肝胆汁性疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、グルテン感受性腸疾患及びウィップル病を含む炎症性腸疾患(IBD)、膵炎、島移植(たとえば、膵島移植)、水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触皮膚炎、乾癬を含む自己免疫性又は免疫介在性の皮膚疾患、喘息、アレルギー鼻炎、アトピー性皮膚炎、遅延性過敏症、食物過敏症及び蕁麻疹のようなアレルギー性疾患、好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎のような肺の免疫性疾患、移植片拒絶及び移植片対宿主病、慢性拒絶を含む移植に関連する疾患;腎線維症及び肝線維症を含む線維症、アテローム性硬化症及び冠状動脈疾患、巨細胞性動脈炎(GCA)、タカヤス動脈炎(TA)、結節性動脈炎、慢性腎疾患に関連する循環器事象、心筋梗塞、虚血が誘発する重篤な不整脈及び鬱血性心不全を含む循環器疾患、II型糖尿病を含む糖尿病、特発性器質性肺炎(BOOP)、血球貪食症候群、マクロファージ活性化症候群、サルコイドーシス及び歯周炎が挙げられるが、これらに限定されない。AIDS(HIV感染)、A、B、C、D、及びE型肝炎、ヘルペス等のようなウイルス性疾患、細菌感染、真菌感染、原虫感染及び寄生虫感染を含む感染性疾患。
【0091】
本明細書で使用される用語「メソトレキセート不十分応答者」は、たとえば、標準の用量での毒性及び/又は不十分な有効性のためにメソトレキセート治療に対する不十分な応答を経験した又は経験している対象を指す。一部の実施形態では、メソトレキセート不十分応答者は、標準の用量を少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間服用した後、メソトレキセートに対する不十分な応答を経験した又は経験している。
【0092】
本明細書で使用される用語「TNF阻害剤不十分応答者」は、たとえば、標準の用量での毒性及び/又は不十分な有効性のためにTNF阻害剤に対する不十分な応答を経験した又は経験している対象を指す。一部の実施形態では、TNF阻害剤不十分応答者は、標準の用量を少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間服用した後、TNF阻害剤に対する不十分な応答を経験した又は経験している。一部の実施形態では、TNF阻害剤不十分応答者は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ及びエタネルセプトから選択されるTNF阻害剤に対する不十分な応答を経験した又は経験している。一部の実施形態では、TNF阻害剤はTNF-α阻害剤である。
【0093】
用語「実質的に同一の」及び「実質的に不変の」及びそれらの文法的変形は、CD16-単球のようなタンパク質又は細胞型のレベルを指すのに使用される場合、たとえば、当業者がレベル間での差異がほとんどない、又は生物学的な及び/又は統計的な意味がないと見なすように数値で示されるように、比較されるレベル間で十分に高い程度の類似性を示す。
【0094】
用語「実質的に低下させる」及び「実質的に減らす」及びそれらの文法的変形は、CD16+単球のようなタンパク質又は細胞型のレベルを指すのに使用される場合、たとえば、当業者がレベル間での差異が生物学的に及び/又は統計的に有意であると見なすように数値で示されるような、比較されるレベル間の十分に高い程度の差異を示す。
【0095】
本明細書で使用される「抗[因子]剤」又は「[因子]阻害剤」は、たとえば、因子又は因子の受容体(あれば)に結合することによって、又は因子又は因子の受容体(あれば)の発現を特異的に阻害することによって因子の活性に拮抗する剤を指す。例となる抗[因子]剤には、抗[因子]抗体、抗[因子]受容体抗体、因子に結合する可溶性[因子]受容体、[因子]又は[因子]受容体を結合する小分子、[因子]又は[因子]受容体のプレmRNA又はmRNAに相補性であるアンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられるが、これらに限定されない。非限定の例となる因子には、TNF-α、IL-1、IL-6、CD20、CD19及びGM-CSFが挙げられる。
【0096】
因子がリガンドである場合は1以上の受容体へのその結合を含む、剤が因子の活性を中和する、遮断する、阻害する、無効にする、低減する、及び/又は妨害する場合、該剤は因子活性に「拮抗する」。
【0097】
本明細書で使用される「治療」は、治療的処置及び予防的な又は防御的な対策の双方を指し、ここで、目的は標的とする病状又は障害を防ぐこと又は鈍化すること(軽減する)である。ある特定の実施形態では、用語「治療」は、ヒトを含む哺乳類での疾患に対する治療剤のいずれかの投与又は適用を対象とし、それには、疾患又は疾患の進行を抑制すること又は遅らせること;退行を引き起こすことによって、又は失った、失くした若しくは欠損のある機能を回復する若しくは修復することによって疾患を部分的に若しくは完全に緩和すること;不十分な過程を刺激すること;又は疾患の安定期の重症度を軽減させることが挙げられる。用語「治療」には、表現型特性の重症度を軽減すること及び/又はその特性の発生、程度又は可能性を低減することも含まれる。治療の必要な者には、すでに障害を持つ者並びに障害を有する傾向がある者又は障害が予防されるべきである者が挙げられる。
【0098】
「慢性」投与は、長い間当初の治療効果(活性)を維持できるような急性様式に対向した連続様式での剤の投与を指す。「間欠」投与は、中断なしで連続するのではなく、むしろ事実上周期的である治療である。
【0099】
用語「有効量」又は「治療上有効な量」は、対象にて疾患又は障害を治療するのに有効な薬剤の量を指す。ある特定の実施形態では、有効量は所望の治療成績又は予防成績を達成するのに必要な投与量で及び時間で有効な量を指す。本発明の抗CSF1R抗体の治療上有効な量は、たとえば、個体の疾患の状態、年齢、性別及び体重、並びに個体にて所望の応答を引き出す抗CSF1R抗体の能力等の要因に従って変化し得る。治療上有効な量は、治療上有益な効果が抗CSF1R抗体のいずれの毒性の又は有害な効果にも勝る量を包含する。一部の実施形態では、表現「有効量」はCD16+障害を治療するのに有効である抗体の量を指す。障害がRAである場合、そのような有効量は、RAの兆候又は症状を軽減すること(たとえば、24週及び/又は48週でACR20、ACR50又はACR70を達成すること)、疾患の活動を軽減すること(たとえば、疾患活動スコア、DAS28)、構造的な関節損傷の進行を遅らせること、身体機能を改善すること等の1以上を生じることができる。
【0100】
「予防上有効な量」は、所望の予防成績を達成するのに必要な投与量で及び時間で有効な量を指す。通常、しかし、必然ではないが、予防的投与は疾患に先立って又は疾患の早期段階で使用されるので、予防上有効な量は治療上有効な量よりも少ないであろう。
【0101】
1以上のさらなる治療剤「との併用での」投与には、任意な順での同時(並行)投与及び連続投与が挙げられる。
【0102】
「薬学上許容可能なキャリア」は、対象への投与のために「医薬組成物」を一緒に含む治療剤で使用するために当該技術では従来使用されている非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、被包材、製剤化補助剤又はキャリアを指す。薬学上許容可能なキャリアは採用される投与量及び濃度にてレシピエントに非毒性であり、製剤の他の成分と相溶性である。薬学上許容可能なキャリアは採用される製剤に適する。たとえば、治療剤が経口で投与されるのであれば、キャリアはゲル状カプセルであり得る。治療剤が皮下で投与されるのであれば、キャリアは理想的には皮膚に刺激性ではなく、注射部位反応を起こさない。
【0103】
抗CSF1R抗体
抗CSF1R抗体には、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト抗体、本明細書で考察される重鎖及び/又は軽鎖のCDRを含む抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
例となるヒト化抗体
一部の実施形態では、CSF1Rを結合するヒト化抗体が提供される。ヒト化抗体は、抗体治療剤に対する免疫応答を生じ、治療剤の有効性を低下させ得る非ヒト抗体に対するヒトの免疫応答(たとえば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応)を減らす又は排除するので、ヒト化抗体は治療分子として有用である。
【0105】
非限定の例となるヒト化抗体には本明細書で記載されるhuAb1~huAb16が挙げられる。非限定の例となるヒト化抗体にはまた、huAb1~huAb16から選択される抗体の重鎖可変領域及び/又はhuAb1~huAb16から選択される抗体の軽鎖可変領域を含む抗体も挙げられる。非限定の例となるヒト化抗体には配列番号39~45から選択される重鎖可変領域及び/又は配列番号46~52から選択される軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。例となるヒト化抗体には0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3及び/又は軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含むヒト化抗体も挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は、0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3及び/又は軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。非限定の例となるヒト化抗CSF1R抗体には、配列番号15、16及び17;配列番号21、22及び23;及び配列番号27、28及び29から選択される一揃いの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体が挙げられる。非限定の例となるヒト化抗CSF1R抗体にはまた、配列番号18、19及び20;配列番号24、25及び26;及び配列番号30、31及び32から選択される一揃いの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体も挙げられる。
【0107】
非限定の例となるヒト化抗CSF1R抗体には、表1(配列番号を示す。配列については表8を参照)における一揃いの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体が挙げられる。表1の各行は、例となる抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を示す。
【0108】
【0109】
さらなる例となるヒト化抗体
一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖と、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖とを含み、抗体はCSF1Rを結合する。
【0110】
本明細書で使用される特定のポリペプチドが、アミノ酸配列に対して、たとえば、少なくとも95%同一であるかどうかは、たとえば、コンピュータプログラムを用いて決定することができる。特定の配列が参照配列に対して、たとえば、95%同一であるかどうかを決定する場合、同一性パーセントは参照アミノ酸配列の完全長に対して算出される。
【0111】
一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は本明細書で考察されるCDRのうち少なくとも1つを含む。すなわち、一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は、本明細書で考察される重鎖CDR1、本明細書で考察される重鎖CDR2、本明細書で考察される重鎖CDR3、本明細書で考察される軽鎖CDR1、本明細書で考察される軽鎖CDR2、及び本明細書で考察される軽鎖CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む。さらに、一部の実施形態では、ヒト化抗CSF1R抗体は本明細書で考察されるCDRに基づく少なくとも1つの変異させたCDRを含み、ここで、変異させたCDRは本明細書で考察されるCDRに比べて1、2、3又は4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換である。当業者は特定のCDR配列に好適な1以上の保存的なアミノ酸置換を選択することができ、ここで、好適な保存的なアミノ酸置換は変異させたCDRを含む抗体の結合特性を有意に変えるとは予測されない。
【0112】
例となるヒト化抗CSF1R抗体にはまた、本明細書で考察される抗体とCSF1Rへの結合について競合する抗体も含まれる。従って、一部の実施形態では、Fab0301、0302及び0311;及びこれらFabの二価(すなわち、2つの重鎖と2つの軽鎖を有する)抗体版から選択される抗体とCSF1Rへの結合について競合するヒト化抗CSF1R抗体が提供される。
【0113】
例となるヒト化抗体の定常領域
一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト化抗体は1以上のヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域にはIgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域にはκ及びλから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト化抗体はヒトIgGの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト化抗体はヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト化抗体はヒトIgG4定常領域にてS241P変異を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト化抗体はヒトIgG4定常領域とヒトκ軽鎖を含む。
【0114】
重鎖定常領域の選択は抗体がインビボでエフェクター機能を有するかどうかを決定することができる。そのようなエフェクター機能には、一部の実施形態では、抗体依存性細胞介在性の細胞傷害性(ADCC)及び/又は補体依存性の細胞傷害性(CDC)が挙げられ、それは抗体が結合する細胞の殺傷を生じることができる。一部の癌の治療方法を含む治療の一部の方法では、たとえば、抗体が腫瘍の維持又は増殖を支える細胞に結合する場合、細胞の殺傷が望ましい場合がある。腫瘍の維持又は増殖を支え得る例となる細胞には、腫瘍細胞自体、腫瘍に対して脈管系を動員するのを助ける細胞、及び腫瘍の増殖又は腫瘍の生き延びを支える又は促進するリガンド、増殖因子又は対抗受容体を提供する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖又はヒトIgG3重鎖を含む抗CSF1R抗体が選択される。
【0115】
治療の一部の方法では、エフェクター機能が望ましくない場合がある。たとえば、一部の実施形態では、ループス及び/又はMS及び/又はRA及び/又は骨溶解の治療で使用される抗体はエフェクター機能を有さないことが望ましい場合がある。従って、一部の実施形態では、癌の治療のために開発される抗CSF1R抗体はループス及び/又はMS及び/又はRA及び/又は骨溶解の治療で使用するには好適でなくてもよい。従って、一部の実施形態では、有意なエフェクター機能を欠く抗CSF1R抗体がループス及び/又はMS及び/又はRA及び/又は骨溶解の治療で使用される。一部の実施形態では、ループス及び/又はMS及び/又はRA及び/又は骨溶解の治療のための抗CSF1R抗体はヒトIgG4又はIgG2の重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgG4定常領域はS241P変異を含む。
【0116】
任意の方法によって抗体がヒト化され得る。ヒト化の非限定の例となる方法は、たとえば、米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第6,180,370号;Jonesら、Nature、321:522-525(1986);Riechmannら、Nature、332:323-27(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534-36(1988);及び米国特許出願公開第2009/0136500号にて記載された方法が挙げられる。
【0117】
上記で言及したように、ヒト化抗体は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域における少なくとも1アミノ酸がヒトのフレームワーク領域における相当する位置に由来するアミノ酸で置き換えられている抗体である。一部の実施形態では、非ヒト可変領域のフレームワーク領域における少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも15又は少なくとも20アミノ酸がヒトの1以上のフレームワーク領域における1以上の相当する位置に由来するアミノ酸で置き換えられる。
【0118】
一部の実施形態では、置換に使用される相当するヒトのアミノ酸の一部は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子のフレームワーク領域に由来する。すなわち、一部の実施形態では、非ヒトアミノ酸の1以上は第1のヒト抗体のヒトフレームワーク領域に由来する又は第1のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされる相当するアミノ酸で置き換えられてもよく;非ヒトアミノ酸の1以上は第2のヒト抗体のヒトフレームワーク領域に由来する又は第2のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされる相当するアミノ酸で置き換えられてもよく;非ヒトアミノ酸の1以上は第3のヒト抗体のヒトフレームワーク領域に由来する又は第3のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされる相当するアミノ酸で置き換えられてもよい、等。さらに、一部の実施形態では、単一のフレームワーク領域、たとえば、FR2にて置換に使用される相当するヒトアミノ酸のすべてが同一のヒトフレームワークに由来する必要はない。一部の実施形態では、しかしながら、置換に使用される相当するヒトアミノ酸のすべては同一のヒト抗体に由来する又は同一のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされる。
【0119】
一部の実施形態では、1以上のフレームワーク領域全体を相当するヒトフレームワーク領域で置き換えることによって抗体がヒト化される。一部の実施形態では、置き換えられる非ヒトフレームワーク領域に対する最高レベルの相同性を有するヒトフレームワーク領域が選択される。一部の実施形態では、そのようなヒト化抗体はCDR移植抗体である。
【0120】
一部の実施形態では、CDR移植に続いて、1以上のフレームワークアミノ酸がマウスのフレームワーク領域における相当するアミノ酸に戻される。一部の実施形態では、そのような「復帰変異」を行って1以上のCDRの構造に寄与すると思われる及び/又は抗原接触に関与し得る及び/又は抗体の構造全体の整合性に関与すると思われる1以上のマウスのフレームワークアミノ酸を保持する。一部の実施形態では、CDR移植に続いて抗体のフレームワーク領域に対して10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1又はゼロの復帰変異を行う。
【0121】
一部の実施形態では、ヒト化抗体はまたヒトの重鎖定常領域及び/又はヒトの軽鎖定常領域も含む。
【0122】
例となるキメラ抗体
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は少なくとも1つの非ヒト可変領域及び少なくとも1つのヒト定常領域を含む。一部のそのような実施形態では、抗CSF1R抗体の可変領域すべては非ヒト可変領域であり、抗CSF1R抗体の定常領域すべてはヒト定常領域である。一部の実施形態では、キメラ抗体の1以上の可変領域はマウス可変領域である。キメラ抗体のヒト定常領域は、もしあれば、それが置き換える非ヒト定常領域と同一アイソタイプである必要はない。キメラ抗体は米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851-55(1984)にて考察されている。
【0123】
非限定の例となるキメラ抗体には、0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域を含むキメラ抗体が挙げられる。追加の非限定の例となるキメラ抗体には、0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3及び/又は軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含むキメラ抗体が挙げられる。
【0124】
非限定の例となるキメラ抗CSF1R抗体には、重鎖及び軽鎖の可変領域の以下の対:配列番号9と10;配列番号11と12;及び配列番号13と14を含む抗体が挙げられる。
【0125】
非限定の例となる抗CSF1R抗体には、表1で上記に示した一揃いの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体が挙げられる。
【0126】
さらなる例となるキメラ抗体
一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖と、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖とを含み、抗体はCSF1Rを結合する。
【0127】
一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は、本明細書で考察されるCDRのうち少なくとも1つを含む。すなわち、一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は、本明細書で考察される重鎖CDR1、本明細書で考察される重鎖CDR2、本明細書で考察される重鎖CDR3、本明細書で考察される軽鎖CDR1、本明細書で考察される軽鎖CDR2、及び本明細書で考察される軽鎖CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む。さらに、一部の実施形態では、キメラ抗CSF1R抗体は本明細書で考察されるCDRに基づく少なくとも1つの変異させたCDRを含み、ここで、変異させたCDRは本明細書で考察されるCDRに比べて1、2、3又は4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換である。当業者は特定のCDR配列に好適な1以上の保存的なアミノ酸置換を選択することができ、ここで、好適な保存的なアミノ酸置換は変異させたCDRを含む抗体の結合特性を有意に変えるとは予測されない。
【0128】
例となるキメラ抗CSF1R抗体にはまた、本明細書で考察される抗体とCSF1Rへの結合について競合するキメラ抗体も含まれる。従って、一部の実施形態では、Fab0301、0302及び0311;及びこれらFabの二価(すなわち、2つの重鎖と2つの軽鎖を有する)抗体版から選択される抗体とCSF1Rへの結合について競合するキメラ抗CSF1R抗体が提供される。
【0129】
例となるキメラ抗体の定常領域
一部の実施形態では、本明細書で記載されるキメラ抗体は1以上のヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域にはIgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域にはκ及びλから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、本明細書で記載されるキメラ抗体はヒトIgGの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるキメラ抗体はヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部のそのような実施形態では、本明細書で記載されるキメラ抗体はヒトIgG4定常領域にてS241P変異を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるキメラ抗体はヒトIgG4定常領域とヒトκ軽鎖を含む。
【0130】
上記で言及したように、エフェクター機能が望ましいかどうかは抗体に対して意図される治療の特定の方法に依存し得る。従って、一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1の重鎖定常領域又はヒトIgG3の重鎖定常領域を含むキメラ抗CSF1R抗体が選択される。一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4又はIgG2の重鎖定常領域を含むキメラ抗CSF1R抗体が選択される。
【0131】
例となるヒト抗体
任意の好適な方法によってヒト抗体を作製することができる。非限定の例となる方法には、ヒトの免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウスにてヒト抗体を作製することが挙げられる。たとえば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551-55(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255-8(1993);Lonbergら、Nature、368:856-9(1994);及び米国特許第5,545,807号;同第6,713,610号;同第6,673,986号;同第6,162,963号;同第5,545,807号;同第6,300,129号;同第6,255,458号;同第5,877,397号;同第5,874,299号及び同第5,545,806号を参照のこと。
【0132】
非限定の例となる方法には、ファージディスプレイライブラリを用いてヒト抗体を作製することも挙げられる。たとえば、Hoogenboomら、J.Mol.Biol.227:381-8(1992);Marksら、J.Mol.Biol.222:581-97(1991);及びPCT公開番号WO99/10494を参照のこと。
【0133】
一部の実施形態では、ヒト抗CSF1R抗体は配列番号1の配列を有するポリペプチドに結合する。例となるヒト抗CSF1R抗体には、本明細書で記載される抗体とCSF1Rへの結合について競合する抗体も挙げられる。従って、一部の実施形態では、Fab0301、0302及び0311;及びこれらFabの二価(すなわち、2つの重鎖と2つの軽鎖を有する)抗体版から選択される抗体とCSF1Rへの結合について競合するヒト抗CSF1R抗体が提供される。
【0134】
一部の実施形態では、ヒト抗CSF1R抗体は1以上のヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域にはIgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域にはκ及びλから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト抗体はヒトIgGの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト抗体はヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部のそのような実施形態では、本明細書で記載されるヒト抗体はヒトIgG4定常領域にてS241P変異を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるヒト抗体はヒトIgG4定常領域とヒトκ軽鎖を含む。
【0135】
一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1の重鎖定常領域又はヒトIgG3の重鎖定常領域を含むヒト抗CSF1R抗体が選択される。一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4又はIgG2の重鎖定常領域を含むヒト抗CSF1R抗体が選択される。
【0136】
追加の例となる抗CSF1R抗体
例となる抗CSF1R抗体には、たとえば、本明細書で記載されるCDR配列の1以上を含むマウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体及び操作された抗体も含まれる。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される重鎖可変領域と、本明細書で記載される軽鎖可変領域とを含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3と本明細書で記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0137】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はFab0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖可変領域を含む。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、ヒト化抗体huAb1~huAb16から選択される抗体の重鎖可変領域を含む抗体も含まれる。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む抗体が含まれる。
【0138】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はFab0301、0302及び0311から選択される抗体の軽鎖可変領域を含む。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、ヒト化抗体huAb1~huAb16から選択される抗体の軽鎖可変領域を含む抗体も含まれる。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。
【0139】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はFab0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、ヒト化抗体huAb1~huAb16から選択される抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む抗体も含まれる。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、重鎖及び軽鎖の可変領域の以下の対:配列番号9と10;配列番号11と12;及び配列番号13と14;配列番号39と40;配列番号41と42;配列番号43と44;配列番号45と46;配列番号47と48;配列番号49と50;及び配列番号51と52を含む抗体が含まれる。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、重鎖及び軽鎖の以下の対:配列番号33と34;配列番号35と36;及び配列番号37と38を含む抗体も含まれる。
【0140】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、Fab0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、配列番号15、16及び17;配列番号21、22及び23;及び配列番号27、28及び29から選択される一揃いの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体が含まれる。
【0141】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、Fab0301、0302及び0311から選択される抗体の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。非限定の例となる抗CSF1R抗体には、配列番号18、19及び20;配列番号24、25及び26;及び配列番号30、31及び32から選択される一揃いの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体が含まれる。
【0142】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、Fab0301、0302及び0311から選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3と軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3とを含む。
【0143】
非限定の例となる抗CSF1R抗体には、表1で上記に示した一揃いの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3と軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3とを含む抗体が含まれる。
【0144】
さらなる例となる抗体
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含み、抗体はCSF1Rを結合する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖と、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖とを含み、抗体はCSF1Rを結合する。
【0145】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で考察されるCDRのうち少なくとも1つを含む。すなわち、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、本明細書で考察される重鎖CDR1、本明細書で考察される重鎖CDR2、本明細書で考察される重鎖CDR3、本明細書で考察される軽鎖CDR1、本明細書で考察される軽鎖CDR2、及び本明細書で考察される軽鎖CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む。さらに、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は本明細書で考察されるCDRに基づく少なくとも1つの変異させたCDRを含み、ここで、変異させたCDRは本明細書で考察されるCDRに比べて1、2、3又は4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換である。当業者は特定のCDR配列に好適な1以上の保存的なアミノ酸置換を選択することができ、ここで、好適な保存的なアミノ酸置換は変異させたCDRを含む抗体の結合特性を有意に変えるとは予測されない。
【0146】
例となる抗CSF1R抗体にはまた、本明細書で考察される抗体とCSF1Rへの結合について競合する抗体も含まれる。従って、一部の実施形態では、Fab0301、0302及び0311;及びこれらFabの二価(すなわち、2つの重鎖と2つの軽鎖を有する)抗体版から選択される抗体とCSF1Rへの結合について競合する抗CSF1R抗体が提供される。
【0147】
例となる抗体の定常領域
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体は1以上のヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域にはIgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域にはκ及びλから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体はヒトIgGの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体はヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体はヒトIgG4定常領域にてS241P変異を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体はヒトIgG4定常領域とヒトκ軽鎖を含む。
【0148】
上記で言及したように、エフェクター機能が望ましいかどうかは抗体に対して意図される治療の特定の方法に依存し得る。従って、一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1の重鎖定常領域又はヒトIgG3の重鎖定常領域を含む抗CSF1R抗体が選択される。一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4又はIgG2の重鎖定常領域を含む抗CSF1R抗体が選択される。
【0149】
例となる抗CSF1R重鎖可変領域
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域が提供される。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域はマウスの可変領域、ヒトの可変領域又はヒト化された可変領域である。
【0150】
抗CSF1R抗体重鎖可変領域は重鎖のCDR1、FR2、CDR2、FR3及びCDR3を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域はさらに重鎖のFR1及び/又はFR4を含む。非限定の例となる重鎖可変領域には、配列番号9、11、13及び39~45から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域は配列番号15、21及び27から選択される配列を含むCDR1を含む。
【0152】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域は配列番号16、22及び28から選択される配列を含むCDR2を含む。
【0153】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖可変領域は配列番号17、23及び29から選択される配列を含むCDR3を含む。
【0154】
例となる重鎖可変領域には、配列番号15、16及び17;配列番号21、22及び23;並びに配列番号27、28及び29から選択される一揃いのCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖は、配列番号9、11、13及び39~45から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含み、重鎖は軽鎖と一緒に、CSF1Rを結合する抗体を形成することが可能である。
【0156】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖は、本明細書で考察されるCDRのうち少なくとも1つを含む。すなわち、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖は、本明細書で考察される重鎖CDR1、本明細書で考察される重鎖CDR2及び本明細書で考察される重鎖CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む。さらに、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体重鎖は、本明細書で考察されるCDRに基づく少なくとも1つの変異させたCDRを含み、ここで、変異させたCDRは本明細書で考察されるCDRに比べて1、2、3又は4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換である。当業者は特定のCDR配列に好適な1以上の保存的なアミノ酸置換を選択することができ、ここで、好適な保存的なアミノ酸置換は変異させたCDRを含む重鎖の結合特性を有意に変えるとは予測されない。
【0157】
一部の実施形態では、重鎖は重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、重鎖はヒト重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域にはIgA、IgG及びIgDから選択されるアイソタイプがある。一部の実施形態では、ヒト重鎖定常領域はIgGの定常領域である。一部の実施形態では、重鎖はヒトigG4の重鎖定常領域を含む。一部のそのような実施形態では、ヒトIgG4の重鎖定常領域はS241P変異を含む。
【0158】
一部の実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、重鎖はヒトIgG1又はIgG3の重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、エフェクター機能があまり望ましくない場合、重鎖はヒトIgG4又はIgG2の重鎖定常領域を含む。
【0159】
例となる抗CSF1R軽鎖可変領域
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域が提供される。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域は、マウスの可変領域、ヒトの可変領域、又はヒト化された可変領域である。
【0160】
抗CSF1R抗体軽鎖可変領域は軽鎖のCDR1、FR2、CDR2、FR3及びCDR3を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域はさらに軽鎖のFR1及び/又はFR4を含む。非限定の例となる軽鎖可変領域には、配列番号10、12、14及び46~52から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域が挙げられる。
【0161】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域は配列番号18、24及び30から選択される配列を含むCDR1を含む。
【0162】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域は配列番号19、25及び31から選択される配列を含むCDR2を含む。
【0163】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖可変領域は配列番号20、26及び32から選択される配列を含むCDR3を含む。
【0164】
非限定の例となる軽鎖可変領域には、配列番号18、19及び20;配列番号24、25及び26;並びに配列番号30、31及び32から選択される一揃いのCDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖は、配列番号10、12、14及び46~52から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含み、ここで、軽鎖は重鎖と一緒に、CSF1Rを結合する抗体を形成することが可能である。
【0166】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖は本明細書で考察されるCDRのうち少なくとも1つを含む。すなわち、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖は、本明細書で考察される軽鎖CDR1、本明細書で考察される軽鎖CDR2、及び本明細書で考察される軽鎖CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む。さらに、一部の実施形態では、抗CSF1R抗体軽鎖は本明細書で考察されるCDRに基づく少なくとも1つの変異させたCDRを含み、ここで、変異させたCDRは本明細書で考察されるCDRに比べて1、2、3又は4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換である。当業者は特定のCDR配列に好適な1以上の保存的なアミノ酸置換を選択することができ、ここで、好適な保存的なアミノ酸置換は変異させたCDRを含む軽鎖の結合特性を有意に変えるとは予測されない。
【0167】
一部の実施形態では、軽鎖はヒト軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域はヒトκ及びヒトλの軽鎖定常領域から選択される。
【0168】
例となる追加のCSF1R結合分子
一部の実施形態では、CSF1Rを結合する追加の分子が提供される。そのような分子には、たとえば、抗カリン、アドネクチン、アンキリン反復等のような非標準の足場が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、Hosseら、Prot.Sci.15:14(2006);Fiedler,M.及びSkerra,A.,"Non-Antibody Scaffolds,"pp.467-499 in Handbook of Therapeutic Antibodies,Dubel,S.編、Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2007を参照のこと。
【0169】
抗CSF1R抗体の例となる特性
一部の実施形態では、上述の構造を有する抗体は、1nM未満の結合親和性(KD)でCSF1Rに結合し、CSF1及び/又はIL-34のCSF1Rへの結合を阻止し、かつCSF1及び/又はIL-34によって誘導されるCSF1Rリン酸化を阻害する。
【0170】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1Rの細胞外ドメイン(CSF1R-ECD)に結合する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は1nM未満、0.5nM未満、0.1nM未満又は0.05nM未満のCSF1Rに対する結合親和性(KD)を有する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、0.01~1nMの間、0.01~0.5nMの間、0.01~0.1nMの間、0.01~0.05nMの間又は0.02~0.05nMの間のKDを有する。
【0171】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1Rへのリガンドの結合を阻止する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1RへのCSF1の結合を阻止する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1RへのIL-34の結合を阻止する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1RへのCSF1及びIL-34双方の結合を阻止する。一部の実施形態では、リガンドの結合を阻止する抗体はCSF1Rの細胞外ドメインに結合する。一部の実施形態では、抗体は、任意の目的で参照によって本明細書に組み入れられる、たとえば、米国特許第8,206,715号B2の実施例7に記載されたアッセイを用いて、それがCSF1Rへのリガンドの検出可能な結合の量を少なくとも50%減らす場合、CSF1Rへのリガンドの結合を阻止する。一部の実施形態では、抗体は、CSF1Rへのリガンドの検出可能な結合の量を少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%減らす。一部の実施形態では、抗体はリガンド結合を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%等阻止すると言われる。
【0172】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はリガンド誘導性CSF1Rリン酸化を阻害する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1誘導性CSF1Rリン酸化を阻害する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はIL-34誘導性CSF1Rリン酸化を阻害する。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体はCSF1誘導性かつIL-34誘導性両方のCSF1Rリン酸化を阻害する。一部の実施形態では、任意の目的で参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第8,206,715号B2の実施例6に記載されたアッセイを用いて、抗体が、検出可能なリガンド誘導性CSF1Rリン酸化の量を少なくとも50%低下させる場合、抗体は「リガンド誘導性CSF1Rリン酸化を阻害する」と見なされる。一部の実施形態では、抗体は、検出可能なリガンド誘導性CSF1Rリン酸化の量を少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%低下させる。一部のそのような実施形態では、抗体はリガンド誘導性CSF1Rリン酸化を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%等阻害すると言われる。
【0173】
一部の実施形態では、抗体はCSF1及び/又はIL-34の存在下での単球の増殖応答及び/又は生き延び応答を阻害する。一部の実施形態では、たとえば、任意の目的で参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第8,206,715号B2の実施例10で記載されたアッセイを用いて、抗体が、CSF1及び/又はIL-34の存在下での単球の増殖応答及び/又は生き延び応答の量を少なくとも50%低下させる場合、抗体は「単球の増殖応答及び/又は生き延び応答を阻害する」と見なされる。一部の実施形態では、抗体は、CSF1及び/又はIL-34の存在下での単球の増殖応答及び/又は生き延び応答の量を少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%低下させる。一部のそのような実施形態では、抗体は単球の増殖応答及び/又は生き延び応答を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%等阻害すると言われる。
【0174】
例となる抗体複合体
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は標識及び/又は細胞傷害剤に結合される。本明細書で使用される標識とは、抗体の検出を円滑にする及び/又は抗体が結合する分子の検出を円滑にする部分である。非限定の例となる標識には、放射性同位元素、蛍光群、酵素群、化学発光群、ビオチン、エピトープタグ、金属結合タグ等が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は意図される適用に従って好適な標識を選択することができる。
【0175】
本明細書で使用される細胞傷害剤とは、1以上の細胞の増殖能を低下させる部分である。細胞がアポトーシスを受ける又はそれ以外の方法で死ぬので前よりも細胞が増殖できなくなる、細胞が細胞周期を介して進むことができない及び/又は細胞が分裂できない、細胞が分化する等の場合、細胞は増殖能を低下させている。非限定の例となる細胞傷害剤には、放射性同位元素、毒素及び化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は意図される適用に従って好適な細胞傷害剤を選択することができる。
【0176】
一部の実施形態では、化学的なインビトロ方法を用いて標識及び/又は細胞傷害剤が抗体に結合される。結合の非限定の例となる化学的な方法は当該技術で既知であり、たとえば、Thermo Scientific Life Science Research Produces(以前のPierce;イリノイ州、ロックフォード)、Prozyme(カリフォルニア州、ヘイワード)、SACRI Antibody Services(カナダ、カルガリー)、AbD Serotec(ノースカロライナ州、ローリー)等から市販されているサービス、方法及び/又は試薬が挙げられる。一部の実施形態では、標識及び/又は細胞傷害剤がポリペプチドである場合、標識及び/又は細胞傷害剤を少なくとも1つの抗体鎖を伴った同じ発現ベクターから発現させて抗体鎖に融合された標識及び/又は細胞傷害剤を含むポリペプチドを産生することができる。当業者は、意図される適用に従って抗体に標識及び/又は細胞傷害剤を結合する好適な方法を選択することができる。
【0177】
例となるリーダー配列
一部の分泌タンパク質を大量に発現させ、分泌させるために、非相同タンパク質に由来するリーダー配列が望ましい可能性がある。一部の実施形態では、リーダー配列はそれぞれ軽鎖及び重鎖のリーダー配列である配列番号3及び4から選択される。一部の実施形態では、非相同のリーダー配列を採用することは、リーダー配列は分泌過程の間でERにて取り除かれるので得られる成熟ポリペプチドが不変のままであり得るという点で有利であり得る。非相同のリーダー配列の付加は一部のタンパク質を発現させ、分泌させるのに必要とされ得る。
【0178】
ある特定の例となるリーダー配列は、たとえば、シンガポール国立大学生化学部門によって維持されているオンラインリーダー配列データベースにて記載されている。Chooら、BMC Bioinformatics,6:249(2005);及びPCT公開番号WO2006/081430を参照のこと。
【0179】
抗CSF1R抗体をコードする核酸分子
抗CSF1R抗体の1以上の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。一部の実施形態では、核酸分子は抗CSF1R抗体の重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸分子は抗CSF1R抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドの双方を含む。一部の実施形態では、第1の核酸分子は重鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2の核酸分子は軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。
【0180】
一部のそのような実施形態では、重鎖及び軽鎖は、2つの別々のポリペプチドとして1つの核酸分子から又は2つの別々の核酸分子から発現される。一部の実施形態では、たとえば、抗体がscFvである場合、単一のポリヌクレオチドが一緒に連結された重鎖及び軽鎖の双方を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0181】
一部の実施形態では、抗CSF1R抗体の重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドは翻訳される際、重鎖又は軽鎖のN末端に位置するリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。上記で考察したように、リーダー配列はネイティブの重鎖又は軽鎖のリーダー配列であってもよいし、又は別の非相同のリーダー配列であってもよい。
【0182】
核酸分子は、当該技術で従来続けられている組換えDNA法を用いて構築され得る。一部の実施形態では、核酸分子は選択される宿主細胞での発現に好適である発現ベクターである。
【0183】
抗CSF1R抗体の発現及び産生
ベクター
抗CSF1Rの重鎖及び/又は抗CSF1Rの軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。抗CSF1Rの重鎖及び/又は抗CSF1Rの軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。そのようなベクターには、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ベクターは重鎖をコードする第1のポリヌクレオチド配列及び軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、重鎖及び軽鎖は2つの別々のポリペプチドとしてベクターから発現される。一部の実施形態では、重鎖及び軽鎖は、たとえば、抗体がscFvである場合、単一ポリペプチドの一部として発現される。
【0184】
一部の実施形態では、第1のベクターは重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは類似の量(たとえば、類似のモル量又は類似の質量の量)にて宿主細胞に形質移入される。一部の実施形態では、5:1~1:5の間のモル比又は質量比の第1のベクター及び第2のベクターが宿主細胞に形質移入される。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターには1:1~1:5の間の質量比が使用される。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターには1:2の質量比が使用される。
【0185】
一部の実施形態では、CHO細胞又はCHOに由来する細胞又はNSO細胞におけるポリペプチドの発現について最適化されるベクターが選択される。例となるそのようなベクターは、たとえば、Running Deerら、Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)にて記載されている。
【0186】
一部の実施形態では、ベクターは、ヒトを含む動物における抗CSF1R重鎖及び/又は抗CSF1R軽鎖のインビボ発現のために選択される。一部のそのような実施形態では、ポリペプチドの発現は、組織特異的な様式で機能するプロモータの制御下にある。たとえば、肝臓特異的なプロモータは、たとえば、PCT公開番号WO2006/076288にて記載されている。
【0187】
宿主細胞
種々の実施形態では、抗CSF1R重鎖及び/又は抗CSF1R軽鎖は、細菌細胞のような原核細胞にて又は真菌細胞(たとえば、酵母)、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞のような真核細胞にて発現され得る。そのような発現は、たとえば、当該技術で既知の手順に従って実施され得る。ポリペプチドを発現させるのに使用され得る例となる真核細胞には、COS7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-S及びDG44細胞を含むCHO細胞;PER.C6(登録商標)細胞(Crucell);及びNSO細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、抗CSF1R重鎖及び/又は抗CSF1R軽鎖は酵母にて発現され得る。たとえば、米国特許出願公開第2006/0270045号を参照のこと。一部の実施形態では、抗CSF1R重鎖及び/又は抗CSF1R軽鎖に対して所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて特定の真核細胞宿主が選択される。たとえば、一部の実施形態では、CHO細胞は、293細胞にて産生される同じポリペプチドよりも高いレベルのシアル化を有するポリペプチドを産生する。
【0188】
所望の宿主細胞への1以上の核酸の導入は、リン酸カルシウム形質移入、DEAE/デキストランが介在する形質移入、カチオン脂質が介在する形質移入、エレクトロポレーション、形質導入、感染等を含むがこれらに限定されない任意の方法によって、達成され得る。非限定の例となる方法は、たとえば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第3版.Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)にて記載されている。いずれかの好適な方法に従って所望の宿主細胞にて核酸を一時的に又は安定して形質移入し得る。
【0189】
一部の実施形態では、好適な方法に従って、ポリペプチドをコードする1以上の核酸分子で操作されている又は形質移入されている動物にて1以上のポリペプチドがインビボで産生され得る。
【0190】
抗CSF1R抗体の精製
いずれかの好適な方法によって抗CSF1R抗体を精製し得る。そのような方法には、アフィニティマトリクス又は疎水性相互作用クロマトグラフィの使用が挙げられるが、これらに限定されない。好適なアフィニティリガンドには、CSF1RのECD及び抗体定常領域を結合するリガンドが挙げられる。たとえば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G又は抗体アフィニティカラムを用いて定常領域を結合し、抗CSF1R抗体を精製し得る。疎水性相互作用クロマトグラフィ、たとえば、ブチルカラム又はフェニルカラムも一部のポリペプチドを精製するのに好適であり得る。ポリペプチドを精製する多数の方法は当該技術で既知である。
【0191】
抗CSF1R抗体の無細胞での製造
一部の実施形態では、無細胞系で抗CSF1R抗体を製造する。非限定の例となる無細胞系は、たとえば、Sitaramanら、Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endoら、Biotechnol.Adv.21:695-713(2003)にて記載されている。
【0192】
因子を検出する方法
本開示は、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子を低減する方法に関する。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体による治療の前に、対象は、高いレベルの、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子を有している。一部の実施形態では、因子のレベルはタンパク質のレベルを検出することによって決定される。ヒトのIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-9、及びMMP-2の非限定の例となるアミノ酸配列はそれぞれ配列番号96~108に示される。天然に存在する変異体、たとえば、置換及び/又は欠失(たとえば、切り詰め)を含む変異体、翻訳後修飾を含む変異体、スプライス変異体、及び対立遺伝子変異体を含むタンパク質のネイティブな形態が特に企図される。
【0193】
一部の実施形態では、因子のレベルはmRNAのレベルを検出することによって決定される。ヒトのIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9のmRNA(又はその相補体、cDNA)について例となるヌクレオチド配列は当該技術で既知である。場合によっては、タンパク質のレベルがたとえば治療前に高かったのか又は治療後に低くなったのかを判定するためにmRNAレベルの検出を用い得るように、mRNAのレベルはコードされるタンパク質のレベルと相関し得る。一部の実施形態では、タンパク質のレベルが検出される。しかしながら、本明細書で記載される方法を実施するためには、抗体による治療の前又は後で因子(複数可)のレベルを決定することが必要ではないことが留意されるべきである。場合によっては、特定の状態には引用された1種以上の因子の高いレベルが関与するので、その状態を持つ対象は引用された1種以上の因子を低下させる治療から恩恵を得ることが想定され得る。従って、明白に述べられない限り、特許請求される方法を実施するためには、治療の前又は後で1種以上の因子のレベルを検出することは必要とされない。
【0194】
試料におけるタンパク質のレベルを検出する任意の方法が企図される。当業者は、分析される試料の種類並びに検出されるタンパク質の正体及び数に応じて好適な方法を選択することができる。非限定の例となるそのような方法には、免疫組織化学法、ELISA、ウエスタンブロット、多重検体検出(たとえば、Luminex(登録商標)技術を用いた)、質量分光分析法、等が挙げられる。
【0195】
同様に試料におけるmRNAのレベルを検出する任意の方法が企図される。当業者は分析される試料の種類並びに検出されるmRNAの正体及び数に応じて好適な方法を選択することができる。非限定の例となるそのような方法には、RT-PCR、定量RT-PCR及びマイクロアレイに基づく方法等が挙げられる。
【0196】
CD16+及び/又はCD16-の単球のレベルを決定する任意の方法が企図される。当業者は分析される試料の種類に応じて好適な方法を選択することができる。CD16+及び/又はCD16-の単球のレベルを決定する非限定の例となる方法には、たとえば、CD16+単球単離キット(ドイツ、ベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyl Biotec)のような市販のキットによって提供される方法が挙げられる。
【0197】
治療用組成物及び治療方法
抗CSF1R抗体を用いた疾患の治療方法
本明細書で提供されるのは、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を投与することを含む、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる方法である。一部の実施形態では、方法は、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子を低下させることを含む。
【0198】
例となる成熟ヒトIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-9、及びMMP-2についてのアミノ酸配列は表9(それぞれ配列番号96~108の配列の表)に示す。追加のネイティブな成熟配列も存在し得る。一部の実施形態では、ネイティブな成熟配列は、表9にて示される成熟配列のアミノ末端から欠失された1~10又はそれ以上のアミノ酸を有する。一部の実施形態では、ネイティブな成熟配列は、表9にて示される成熟配列に比べて1以上のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有する。各因子のネイティブな成熟形態すべてが本明細書に包含されるように意図される。
【0199】
本明細書で提供されるのは、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を投与することを含む、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子の高いレベルに関連する状態を治療する方法である。これら1種以上の因子の高いレベルに関連する例となる状態には、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体は本明細書で記載されるhuAb1~huAb16から選択される。一部の実施形態では、抗体はhuAb1である。
【0200】
一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を対象に投与することを含む、対象にてIL-6のレベルを低下させる方法が提供される。IL-6のレベルを低下させることは、一部の実施形態では、たとえば、関節リウマチ及び若年性特発性関節炎、キャッスルマン病のような高いIL-6に関連する状態の治療において有益である。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を対象に投与することを含む対象にてTNF-αのレベルを低下させる方法が提供される。TNF-αのレベルを低下させることは、一部の実施形態では、たとえば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎のような高いTNF-αに関連する状態の治療において有益である。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を対象に投与することを含む対象にてIL-1βのレベルを低下させる方法が提供される。IL-1βのレベルを低下させることは、一部の実施形態では、たとえば、関節リウマチ及び若年性特発性関節炎のような高いIL-1βに関連する状態の治療において有益である。本明細書の実施形態のいずれかでは、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体は本明細書で記載されるhuAb1~huAb16から選択され得る。本明細書の実施形態のいずれかでは、抗体はhuAb1であり得る。
【0201】
一部の実施形態では、方法はIL-6及びIL-1βを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6及びTNF-αを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-1β及びTNF-αを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-1β及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はTNF-α及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β及びTNF-αを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、TNF-α及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はTNF-α、IL-1β及びCXCL10を低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β、TNF-α及びCXCL10を低下させることを含む。
【0202】
CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性の状態の対象に投与することを含む、炎症性の状態を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、炎症性の状態を治療する方法は、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体を投与することを含む、炎症性の状態の対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子を低下させることを含む。CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体は本明細書で記載されるhuAb1~huAb16から選択される。一部の実施形態では、抗体はhuAb1である。非限定の例となる炎症性の状態には、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス、炎症性腸疾患、炎症性関節炎及びCD16+障害が挙げられる。
【0203】
CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することを含む炎症性関節炎を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、炎症性関節炎を治療する方法は、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を投与することを含む、炎症性関節炎の対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることを含む。一部の実施形態では、方法はIL-6、IL-1β、TNF-α、及びCXCL10から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は4種の因子を低下させることを含む。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体は本明細書で記載されるhuAb1~huAb16から選択される。一部の実施形態では、抗体はhuAb1である。
【0204】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、炎症を軽減し、パンヌス形成を軽減し、軟骨の損傷を軽減し、骨吸収を軽減し、関節におけるマクロファージの数を低減し、自己抗体の形成を低減し、及び/又は骨量減少を軽減する。
【0205】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、炎症を軽減する。炎症を軽減することは、一部の実施形態では、赤血球沈降速度を低下させること及び/又は血液におけるC反応性タンパク質のレベルを下げることを含む。対象にて炎症が存在する場合、赤血球沈降速度は、多分、血中のフィブリノーゲンのレベルの上昇のために増大する。赤血球沈降速度は、ウエスターグレン管にて抗凝固処理した赤血球の高さの変化を1時間測定することによって該速度を算出することを含むがこれに限定されない、当該技術の任意の方法によって決定され得る。Procedures for the Erythrocyte Sedimentation Rate Test;Approved Standard-Fifth Edition.CLSI document H02-A5.Wayne,PA:Clinical and Laboratory Standards Institute;2011も参照のこと。血中のC反応性タンパク質のレベルはRAPITEX(登録商標)CRP試験キット(Siemens)を使用することを含むがこれに限定されない、当該技術の任意の方法によって決定され得る。
【0206】
炎症を軽減することは、一部の実施形態では、液体の集積による組織腫脹である末梢浮腫を軽減することを含む。末梢浮腫は、場合によっては、関節リウマチの対象の足首、足、脚及び/又はふくらはぎに生じ得る。炎症を軽減することは、一部の実施形態では、1以上の罹患関節の滑膜における炎症性細胞の浸潤を低減することを含む。滑液は、一部の実施形態では、関節穿刺によって採取され得る。
【0207】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、パンヌス形成を軽減する。パンヌス形成を軽減することは、一部の実施形態では、軟骨及び/又は軟骨下骨へのパンヌスの浸潤を軽減すること及び/又はパンヌスの浸潤の結果生じる硬組織の破壊を軽減することを含む。パンヌス形成は、1以上の罹患関節を画像化することを含むがこれに限定されない当該技術の任意の方法によって、測定することができる。パンヌス形成を検出するための非限定の例となる画像化法には、磁気共鳴画像化法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)走査、関節鏡検査法、超音波検査法、複式超音波検査法及びパワードップラー画像化法が挙げられる。一部の実施形態では、抗体の投与の後に及び/又は対象が抗体による治療を受けている特定の時間間隔の間、パンヌス形成の進行が減速される。治療は単回用量であってもよいし、又は複数回用量であってもよい。
【0208】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは軟骨の損傷を軽減する。軟骨の損傷を軽減することには、一部の実施形態では、軟骨細胞の喪失を抑制すること、コラーゲンの崩壊を軽減すること及び/又は軟骨量の低下を抑制することが含まれる。軟骨の損傷は1以上の罹患関節の画像化を含むがこれに限定されない当該技術の任意の方法によって、測定することができる。軟骨の損傷を検出するための非限定の例となる画像化法には、MRI、CT走査、関節鏡検査法及びX線画像化法が挙げられる。一部の実施形態では、抗体の投与の後に及び/又は対象が抗体による治療を受けている特定の時間間隔の間、軟骨損傷の進行が減速される。治療は単回用量であってもよいし、又は複数回用量であってもよい。
【0209】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは骨吸収を低減する。骨吸収を低減することは、一部の実施形態では、関節リウマチに罹患した関節における破骨細胞の数を減らすことを含む。
【0210】
一部の実施形態では、骨吸収は対象からの血清又は血漿にてTRAP5bのレベルを決定することによって測定されてもよく、ここでTRAP5bのレベルの上昇は対象における骨吸収の上昇を指し示す。従って、一部の実施形態では、TRAP5bのレベルの低下は対象における骨吸収の低下を指し示す。TRAP5bのレベルは、ある特定の例では、CSF1Rを結合する抗体による治療の前後に測定してもよく、及び/又は治療の経過全体を通して定期的に測定し、骨量低下の抑制における治療の有効性をモニターしてもよい。TRAP5bのレベルは、ELISA(FAICEA又は断片吸収免疫捕捉酵素アッセイを含む;たとえば、Quidel(登録商標)TRAP5bアッセイ(スイス、ジッサッハのTECOmedical Group)を参照)を含むがこれらに限定されない当該技術の任意の方法を用いて、測定され得る。
【0211】
一部の実施形態では、骨吸収は対象の尿におけるN末端テロペプチド(NTx)のレベルを決定することによって測定されてもよく、ここでNTxのレベルの上昇は対象における骨吸収の上昇を指し示す。従って、一部の実施形態では、NTxのレベルの低下は対象における骨吸収の低下を指し示す。NTxのレベルは、ある特定の例では、CSF1Rを結合する抗体による治療の前後に測定してもよく、及び/又は治療の経過全体を通して定期的に測定し、骨量低下の抑制における治療の有効性をモニターしてもよい。NTxのレベルは、ELISAを含むがこれらに限定されない当該技術の任意の方法を用いて、測定され得る。NTxのレベルを決定する非限定の例となるアッセイには、Osteomark(登録商標)NTx尿ELISA(マサチューセッツ州、ウォルサムのAlere社)及びQuest Diagnostics、Mayo Medical Laboratories等のような研究所によって提供される種々のアッセイが挙げられる。
【0212】
一部の実施形態では、骨吸収は対象の血清におけるC末端テロペプチド(CTx)のレベルを決定することによって測定されてもよく、ここでCTxのレベルの上昇は対象における骨吸収の上昇を指し示す。従って、一部の実施形態では、CTxのレベルの低下は対象における骨吸収の低下を指し示す。CTxのレベルは、ある特定の例では、CSF1Rを結合する抗体による治療の前後に測定してもよく、及び/又は治療の経過全体を通して定期的に測定し、骨量低下の抑制における治療の有効性をモニターしてもよい。CTxのレベルは、ELISAを含むがこれに限定されない当該技術の任意の方法を用いて、測定され得る。CTxのレベルを決定する非限定の例となるアッセイには、血清CrossLaps(登録商標)(CTx-1)ELISA(アリゾナ州、スコッツデールのImmunodiagnostic Systems社)及びQuest Diagnostics、Mayo Medical Laboratories等のような研究所によって提供される種々のアッセイが挙げられる。
【0213】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは骨量低下を抑制する。骨量低下は、X線画像化法、MRI、CT、骨密度測定法、単一の及び二重の光子吸光光度分析法(SPA、DPA)、単一の及び二重のエネルギーX線吸光光度分析法(SXA、DXA)、超音波検査法、シンチグラフィを含むがこれらに限定されない当該技術の任意の方法を用いて、及び骨の形成と吸収の血清マーカーのレベルを測定することによって決定され得る。骨の形成と吸収の非限定の例となる血清マーカーを表2に示す。
【0214】
【0215】
一部の実施形態では、抗体の投与の後に及び/又は対象が抗体による治療を受けている特定の時間間隔の間、骨量低下の進行が減速される。治療は単回用量であってもよいし、又は複数回用量であってもよい。
【0216】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、自己抗体のレベルを低減する。自己抗体のレベルは、当該技術の任意の方法によって測定され得る。一部の実施形態では、自己抗体のレベルはリウマチ因子(RF)及び/又は抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)及び/又は抗核抗体(ANA)のレベルによって決定される。
【0217】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、炎症性関節炎に罹患した関節(滑液を含む)にてマクロファージ及び/又はCD16+単球のような単球系列の細胞の数を実質的に減らす。
【0218】
一部の実施形態では、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される1種以上の因子のレベルを低下させることに加えて、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体を炎症性関節炎の対象に投与することは、CD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、対象は関節リウマチ及びSLE(ループス)から選択される自己免疫状態を有する。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体の投与の後に、CD16-単球の数は実質的に不変である。一部の実施形態では、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する抗体が対象に投与される場合、CD16-単球が減少するよりも大きな程度にCD16+単球が減少する。一部の実施形態では、CD16+単球は少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%減少する。一部の実施形態では、CD16-単球は30%未満、20%未満又は10%未満減少する。一部の実施形態では、CD16+単球はCD16+末梢血単球である。一部の実施形態では、CD16-単球はCD16-末梢血単球である。
【0219】
一部の実施形態では、たとえば、huAb1~huAb16のような、CSF1Rを結合し且つCSF1及びIL-34のリガンド結合を阻止する有効量の抗体をCD16+障害を持つ対象に投与することを含むCD16+障害を治療する方法が提供され、ここで、抗体は、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを低下させる。非限定の例となるCD16+障害には、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患が挙げられる。一部の実施形態では、CD16+障害を持つ対象は、健常な個体又は健常な個体のプールにおけるCD16+単球のレベルに比べて高いレベルのCD16+単球を有する。一部の実施形態では、CD16+障害を発症する前(たとえば、一部の実施形態では、対象が後から思うとそのとき「健常」であると見なしたようにCD16+障害のいずれかの症状を発症する実質的に前)の対象のCD16+単球のレベルに比べて、CD16+障害を持つ対象は高いレベルのCD16+単球を有する。
【0220】
一部の実施形態では、抗体がCSF1のCSF1Rへの結合及びIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する(たとえば、huAb1~huAb16)、CSF1Rを結合する抗体の恩恵を得うる対象を特定する方法が提供される。一部のそのような実施形態では、方法は、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含む。一部の実施形態では、対象における少なくとも1種の因子の高いレベルは対象がCSF1Rを結合する抗体の恩恵を得うることを示す。一部の実施形態では、対象はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、対象は関節リウマチを有する。一部の実施形態では、対象は高いレベルのCD16+単球を有する。
【0221】
一部の実施形態では、抗体がCSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する、CSF1Rを結合する抗体(たとえば、huAb1~huAb16)に対する炎症性の状態を患う対象における応答性を予測する方法が提供される。一部のそのような実施形態では、方法は、対象にてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルを決定することを含む。一部の実施形態では、対象における少なくとも1種の因子の高いレベルは対象がCSF1Rを結合する抗体に応答する可能性が高いことを示す。一部の実施形態では、対象はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、対象は関節リウマチを有する。一部の実施形態では、対象は高いレベルのCD16+単球を有する。
【0222】
多数の患者はメソトレキセート単独又はTNF阻害剤との併用でのメソトレキセートに対する不十分な応答を有する。本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、対象はメソトレキセートに耐性である状態を有する(たとえば、対象はメソトレキセート不十分応答者である)。メソトレキセート不十分応答者である対象のようなメソトレキセートに耐性である状態を有する対象は、以前はメソトレキセートに応答し得たが、メソトレキセートに耐性になり得た、又は対象はメソトレキセートに応答したことがない。メソトレキセートへの耐性とは、標準用量のメソトレキセート後に改善すると予想され得る状態の様子が改善されないこと、及び/又は、標準用量よりずっと多いメソトレキセートが投与された場合しか改善が起こらないことを意味する。一部の実施形態では、メソトレキセート不十分応答者は、標準用量を少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間服用した後、メソトレキセートへの不十分な応答を経験した又は経験している。「標準」用量は、医療専門家によって決定され、対象の年齢、体重、既往歴、疾患の重症度、投与の回数等に左右され得る。
【0223】
本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、対象はTNF阻害剤不十分応答者である。TNF阻害剤不十分応答者である対象は、以前TNF阻害剤に応答し得たが、TNF阻害剤にあまり応答しなくなった、又は対象はTNF阻害剤に応答したことがない。TNF阻害剤への不十分応答とは、標準用量のTNF阻害剤後に改善すると予想され得る状態の様子が改善されないこと、及び/又は、標準用量よりずっと多くが投与された場合しか改善が起こらないことを意味する。一部の実施形態では、TNF阻害剤への不十分応答者は、標準用量を少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間服用した後、TNF阻害剤への不十分な応答を経験した又は経験している。「標準」用量は、医療専門家によって決定され、対象の年齢、体重、既往歴、疾患の重症度、投与の回数等に左右され得る。一部の実施形態では、TNF阻害剤への不十分応答者は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ペゴール、ゴリムマブ及びエタネルセプトから選択されるTNF阻害剤への不十分な応答を経験した又は経験している。
【0224】
一部の実施形態では、メソトレキセート不十分応答者を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、CSF1Rを結合する抗体をメソトレキセート不十分応答者に投与することを含み、抗体は、huAb1~huAb16のように、CSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、不十分応答者はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、CD16+障害は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される。一部の実施形態では、CD16+障害は関節リウマチである。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。一部の実施形態では、抗体の投与の後に、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルが不十分応答者で低下する。一部の実施形態では、不十分応答者は、たとえば、健常な個体又は健常な個体のプールにおけるCD16+単球のレベルに比べて高いレベルのCD16+単球を有する。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。
【0225】
一部の実施形態では、TNF阻害剤不十分応答者を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、CSF1Rを結合する抗体をTNF阻害剤不十分応答者に投与することを含み、抗体は、huAb1~huAb16のように、CSF1のCSF1Rへの結合を阻止し、且つIL-34のCSF1Rへの結合を阻止する。一部の実施形態では、不十分応答者はCD16+障害を有する。一部の実施形態では、CD16+障害は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎、エリテマトーデス及び炎症性腸疾患から選択される。一部の実施形態では、CD16+障害は関節リウマチである。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。一部の実施形態では、抗体の投与の後に、IL-6、IL-1β、IL-8、CCL2、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、MMP-7、MMP-2、及びMMP-9から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10種の因子のレベルが不十分応答者で低下する。一部の実施形態では、不十分応答者は、たとえば、健常な個体又は健常な個体のプールにおけるCD16+単球のレベルに比べて高いレベルのCD16+単球を有する。一部の実施形態では、抗体はCD16+単球の数を実質的に減らす。一部の実施形態では、抗体の投与の後にCD16-単球の数は実質的に不変である。
【0226】
投与の経路及びキャリア
種々の実施形態では、抗CSF1R抗体は、経口、動脈内、非経口、鼻内、筋肉内、心臓内、脳室内、気管内、頬内、直腸内、腹腔内、皮内、局所、経皮、及びクモ膜下の投与を含むがこれらに限定されない種々の経路によって、又はさもなければ埋め込み若しくは吸入によってインビボで投与され得る。主題の組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、軟膏、溶液、座薬、注腸剤、注射剤、吸入剤及び噴霧剤を含むがこれらに限定されない、固体、半固体、液体又は気体の形態での製剤に製剤化され得る。抗CSF1R抗体をコードする核酸分子を金微粒子に被覆し、文献に記載されたような粒子衝撃装置又は「遺伝子銃」によって皮内に送達し得る(たとえば、Tangら、Nature 356:152-154 (1992)を参照)。適当な製剤及び投与の経路は意図される適用に従って選択され得る。
【0227】
種々の実施形態では、多種多様な薬学上許容可能なキャリアと共に製剤にて抗CSF1R抗体を含む組成物が提供される(たとえば、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons: Drugfacts Plus, 第20版. (2003); Anselら、 Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 第7版., Lippencott Williams and Wilkins (2004); Kibbeら、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版,Pharmaceutical Press (2000)を参照)。ビヒクル、補助剤及び希釈剤を含む種々の薬学上許容可能なキャリアが利用可能である。さらに、たとえば、pH調整剤及び緩衝化剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤等のような種々の薬学上許容可能な補助物質も利用可能である。非限定の例となるキャリアには生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0228】
種々の実施形態では、抗CSF1R抗体を含む組成物は、たとえば、植物油又は他の油、合成の脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル又はプロピレングリコールのような水性又は非水性の溶媒にて、所望であれば、たとえば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤のような従来の添加剤と共にそれらを溶解する、懸濁する、又は乳化することによって、皮下投与を含む注射用に製剤化され得る。種々の実施形態では、組成物は、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような加圧した許容可能な高圧ガスを用いて吸入用に製剤化され得る。種々の実施形態では、組成物はまた、たとえば、生分解性又は非生分解性のポリマーと共に徐放性のマイクロカプセルにも製剤化され得る。非限定の例となる生分解性製剤には、ポリ乳酸/グリコール酸ポリマーが挙げられる。非限定の例となる非生分解性製剤には、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。そのような製剤を作製するある特定の方法は、たとえば、欧州特許第1125584A1号にて記載されている。
【0229】
それぞれ単回用量又は複数回用量の抗CSF1R抗体を含有する1以上の容器を含む医薬パック及びキットも提供される。一部の実施形態では、単位投与量が提供され、該単位投与量は1以上の追加の剤を伴って又は伴わずに抗CSF1R抗体を含む所定の量の組成物を含有する。一部の実施形態では、そのような単位投与量は注射用の充填済使い捨て注射器にて供給される。種々の実施形態では、単位投与量に含有される組成物は、生理食塩水、スクロース等;リン酸塩等のような緩衝液を含んでもよく;及び/又は安定で有効なpH範囲で製剤化されてもよい。或いは、一部の実施形態では、組成物は凍結乾燥粉末として提供され得、これは、適当な液体たとえば無菌水の添加後すぐに再構成され得る。一部の実施形態では、組成物は、スクロース及びアルギニンを含むがこれらに限定されないタンパク質の凝集を阻害する1以上の物質を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物はヘパリン及び/又はプロテオグリカンを含む。
【0230】
医薬組成物は、特定の適応症の治療又は予防に有効な量で投与される。治療上有効な量は通常、治療される対象の体重、該対象の体調又は健康状態、治療される状態の広範さ、又は治療される対象の年齢に左右される。一般に抗CSF1R抗体は用量当たり約10μg/体重kg~約100mg/体重kgの範囲での量で投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は用量当たり約50μg/体重kg~約5mg/体重kgの範囲での量で投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は用量当たり約100μg/体重kg~約10mg/体重kgの範囲での量で投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は用量当たり約100μg/体重kg~約20mg/体重kgの範囲での量で投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は用量当たり約0.5mg/体重kg~約20mg/体重kgの範囲での量で投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、又は10mg/kg体重の用量で投与され得る。
【0231】
抗CSF1R抗体(たとえば、huAb1)の適当な投与によって、クレアチンキナーゼ(CK)の上昇、ならびに/又は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のような1種以上の肝臓トランスアミナーゼの上昇、ならびに/又は総ビリルビンの上昇を含むがこれらに限定されない特定の有害事象をできるだけ抑えながら、有効な治療が達成され得る。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体(たとえば、huAb1)の用量は、CKのレベルが正常上限(ULN)の10×未満であるように選択される。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体(たとえば、huAb1)の用量は、AST及び/又はALTのレベルが正常上限(ULN)の8×未満であるように選択される。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体(たとえば、huAb1)の用量は、AST及び/又はALTのレベルがULNの3×未満であるように及び総ビリルビンがULNの2×未満であるように選択される。CK、ビリルビン、AST及び/又はALTのレベルは当該技術の任意の方法によって決定され得る。CK、AST、ALT及びビリルビンのレベルを決定する方法及び正常上限を決定する方法は当該技術で既知である。一部の実施形態では、治療開始前の対象についてCK、AST、ALT及び/又はビリルビンのベースラインレベルが決定される。一部の実施形態では、CK、AST、ALT及び/又はビリルビンのレベルは治療中に測定されて、たとえば、考えられる肝臓毒性を検出する。
【0232】
CK、AST、ALT及びビリルビンのレベルを決定する方法は当該技術で既知である。一部の実施形態では、AST及びALTのレベルは共役酵素反応を用い、NADHの低下を測定することによって決定される。一部の実施形態では、CKのレベルは共役酵素反応を用い、NADHの形成を測定することによって決定される。一部の実施形態では、ビリルビンのレベルは試料中のビリルビンをジアゾ化スルファニル酸と反応させ、アゾビリルビンを光度で測定することによって決定される。CK、AST、ALT及びビリルビンのレベルを決定するアッセイは、たとえば、Quest Diagnostics、Mayo Medical Laboratories等のような多数の研究所から利用可能である(及び/又はそれらによって実行される)。一部の実施形態では、CK、AST、ALT及び/又はビリルビンのベースラインレベル及び治療レベルは同一の研究所によって決定される。通常、CK、AST、ALT及び/又はビリルビンのレベルをアッセイする各研究所は、その研究所におけるCK、AST、ALT及び/又はビリルビンのアッセイの正常な範囲及びULNを決定している。種々の実施形態では、CK、AST、ALT及び/又はビリルビンのレベルは血清、血漿又は全血にて測定される。一部の実施形態では、CK、AST、ALT及び/又はビリルビンのレベルは血清又は血漿にて測定される。薬剤誘発肝臓損傷に関する情報は、たとえば、「産業界のためのガイダンス:薬剤誘発肝臓損傷:市販前臨床評価」、米国保健福祉省、食品医薬品局、薬剤評価研究センター(CDER)及び生物製剤評価研究センター(CBER)2009年7月にて見いだされ得る。Watkinsら、2011,Drug Saf.34(3):243-252も参照のこと。
【0233】
抗CSF1R抗体組成物は必要に応じて対象に投与され得る。投与の回数の決定は、治療される状態、治療される対象の年齢、治療される状態の重症度、治療される対象の一般的な健康状態等の検討に基づいて、たとえば、主治医のような当業者によって為され得る。一部の実施形態では、有効な用量の抗CSF1R抗体が1回以上対象に投与される。種々の実施形態では、有効な用量の抗CSF1R抗体が対象に1ヵ月に1回、1ヵ月に1回未満、たとえば、2ヵ月ごとに又は3ヵ月ごとに投与される。他の実施形態では、有効な用量の抗CSF1R抗体が1ヵ月に1回を超えて、たとえば、3週間ごとに、2週間ごとに又は毎週投与される。有効な用量の抗CSF1R抗体は少なくとも1回対象に投与される。一部の実施形態では、有効な用量の抗CSF1R抗体は、少なくとも1ヵ月、少なくとも6ヵ月、又は少なくとも1年の期間を含む複数回数投与され得る。
【0234】
併用療法
抗CSF1R抗体は単独で、又は他の治療様式と共に投与され得る。それらは、他の治療様式、たとえば、手術、化学療法、放射線療法、又は他の治療用抗体のような生物製剤の投与の前に、実質的にそれと同時に、又はその後で提供され得る。炎症性関節炎(関節リウマチ、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎等を含む)の治療については、抗CSF1R抗体は、他の治療剤、たとえば、メソトレキセート、レミカド(登録商標)(インフリキシマブ)、フミラ(登録商標)(アダリムマブ)、シムポニ(登録商標)(ゴリムマブ)及びセルトリズマブペゴールのような抗TNF抗体を含む抗TNF剤、並びにエンブレル(登録商標)(エタネルセプト)のような可溶性TNF受容体;プレドニゾロンのようなグルココルチコイド;レフルノミド;アザチオプリン;CP590690のようなJAK阻害剤;R788のようなSYK阻害剤;エルシリモマブ、シルツキシマブ及びシルクマブのような抗IL-6抗体、並びにアクテルムラ(登録商標)(トシリズマブ)のような抗IL-6R抗体を含む抗IL-6剤;リツキシン(登録商標)(リツキシマブ)、イブリツモマブチウキセタン、オファツムマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブ及びトシツモマブのような抗CD20抗体を含む抗CD-20剤;抗CD19抗体のような抗CD19剤;抗GM-CSF抗体及び抗GM-CSFR抗体のような抗GM-CSF剤;アナキンラを含むIL-1受容体拮抗剤のような抗IL-1剤;アバタセプト及びベラタセプトを含むCTLA4-Ig融合体のようなCTLA-4アゴニスト;シクロスポリンのような免疫抑制剤と共に投与され得る。
【0235】
全身性エリテマトーデスの治療については、抗CSF1R抗体は、他の治療剤、たとえば、ヒドロキシクロロキン(プラクエニル(登録商標));プレドニソン、メチルプレドニソン及びプレドニゾロンのようなコルチコステロイド;サイクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、アザチオプリン(イムラン(登録商標)、アザサン(登録商標))、ミコフェノレート(セルセプト(登録商標))、レフルノミド(アラバ(登録商標))、メソトレキセート(トレキサル(商標))、及びベリムマブ(ベンリスタ(登録商標))のような免疫抑制剤と共に投与され得る。
【0236】
多発性硬化症の治療については、抗CSF1R抗体は、他と治療剤、たとえば、インターフェロンα;インターフェロンβ;プレドニソン;チサブリ(登録商標)のような抗α4インテグリン抗体;リツキサン(登録商標)のような抗CD20抗体;FTY720(フィンゴチモド;ギレンヤ(登録商標));及びクラドリビン(リュースタチン(登録商標))と共に投与され得る。
【実施例】
【0237】
以下で考察される実施例は本発明の純粋に例となるものであることが意図されるのであって、決して本発明を限定するように見なされるべきではない。実施例は、以下の実験が実施された実験のすべて又はそれのみであることを表そうとするものではない。使用される数(たとえば、量、温度等)に関して正確さを保証するように努力してきたが、ある程度の実験的な誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に指示されない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【実施例1】
【0238】
ヒト化抗CSF1R抗体
種々のヒト化抗CSF1R抗体は以前開発された。たとえば、PCT公開番号WO2011/140249を参照のこと。
【0239】
親キメラ抗体可変領域の配列及びヒトアクセプター可変フレームワーク領域の配列と整列化させたヒト化重鎖可変領域及びヒト化軽鎖可変領域のそれぞれの配列を
図1(重鎖)及び
図2(軽鎖)に示す。ヒトアクセプター可変フレームワーク領域の配列と比べたヒト化可変領域の変化を四角で囲んだ。可変領域のそれぞれについてのCDRのそれぞれは囲んだ領域の中に示され、囲んだ配列の上記で「CDR」と記す。
【0240】
以下の表9は抗体huAb1~huAb16のヒト化重鎖及びヒト化軽鎖についての完全配列を示す。これら抗体のそれぞれのヒト化重鎖及びヒト化軽鎖の名称及び配列番号を表3に示す。
【0241】
(表3)huAb1~huAb16のヒト化重鎖及びヒト化軽鎖
【0242】
以前記載されたようにヒト、カニクイザル、及びマウスのCSF1R ECDへの結合について16のヒト化抗体を調べた。たとえば、PCT公開番号WO2011/140249を参照のこと。抗体は、ヒト及びカニクイザル双方のCSF1R ECDに結合するが、マウスのCSF1R ECDに結合しないことが見いだされた。ヒト化抗体はまた、ヒト及びマウス双方のCSF1RへのCSF1及びIL-34の結合を阻止し、CHO細胞にて発現させたヒトCSF1RのCSF1誘導性かつIL-34誘導性のリン酸化を阻害することも見いだされた。たとえば、PCT公開番号WO2011/140249を参照のこと。
【0243】
ヒトCSF1R ECDへの結合についてのka、kd及びKDは以前決定したが、それを表4に示す。たとえば、PCT公開番号WO2011/140249を参照のこと。
【0244】
(表4)ヒトCSF1Rについてのヒト化抗体の結合親和性
【実施例2】
【0245】
HuAb1は滑膜生検材料外植片にてサイトカイン及びある特定のマトリクスメタロプロテイナーゼの産生を変化させる
関節リウマチ患者の関節から滑膜組織試料を得た。患者は臨床的に活動期の疾患を有し、組織は臨床的に活動期の関節から得た。患者はすべて書面でインフォームドコンセントを提出し、これらの試験はアムステルダム大学のアカデミックメディカルセンター(AMC)の医学倫理委員会によって認可された。生検試料を採取した6人の患者の臨床的特徴を表5に示す。
【0246】
(表5)RA患者の臨床的特徴(n=6)
ACCP:抗環状シトルリン化ペプチド、CRP:C反応性ペプチド、DAS28:28関節疾患活動期スコア、ESR:赤血球沈降速度、RF:リウマチ因子。
【0247】
2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、50mg/mlのゲンタマイシン、20mMのHEPES緩衝液及び10%FCSを伴ったDMEM(ニューヨーク州、グランドアイランドのLife Technologies)を含む完全培地にて約5mm3容量の滑膜生検試料を3連で培養した。培養は、5%CO2/95%空気の湿った環境にて37℃で実施した。漸増濃度のhuAb1又は対照IgG4抗体ET904(カリフォルニア州、エメリービルのEureka Therapeutics)の非存在下又は存在下で滑膜試料を4日間培養した。無細胞上清を回収し、2つの別々のアリコートで-80℃にて保存した。一方のアリコートはELISAによってIL-6の産生について評価した。他方のアリコートは、Luminex(登録商標)技術(マサチューセッツ州、ビレリカのMillipore)を用いたサイトカインとマトリクスメタロプロテイナーゼの産生の多重解析について評価した。各培養条件における3つの組織断片をプールし、瞬間凍結し、mRNAの発現の解析のために保存した。一部の生検試料は検出限界を下回るサイトカイン及び/又はマトリクスメタロプロテイナーゼを示したが、そのようなデータも以下で考察する表及び図に含めた。
【0248】
ELISAによるIL-6産生の解析の結果を表6に示す。
【0249】
(表6)無傷の滑膜生検材料のIL-6産生に対するhuAb1処置の効果(ELISA)
【0250】
1μg/ml又は10μg/mlのhuAb1の存在下では、同一濃度の対照抗体でのインキュベートに比べて4日間の培養の後、試料のすべてにてIL-6産生は低下した。0.1μg/mlのhuAb1の存在下では、0.1μg/mlの対照抗体でのインキュベートに比べて4日間の培養の後、6つの試料のうち4つでIL-6産生は低下した。
図3は、1μg/mlの対照抗体又は1μg/mlのhuAb1の存在下で4日間培養した後の4つの試料におけるIL-6産生の低下のプロットを示す。1μg/ml及び10μg/mlのhuAb1双方にてIL-6産生の平均低下は統計的に有意だった(各用量でp=0.0313)。
【0251】
図4は、1μg/mlのhuAb1又は対照抗体にて滑膜生検試料の4つを4日間培養した後の多重解析の結果を示す。1μg/mlの対照抗体とのインキュベートに比べて、1μg/mlのhuAb1とのインキュベートの後、4つの試料すべてにおいてIL-6、IL-1β、IL-8、CCL2(MCP-1とも呼ばれる)、CXCL10、TNF-α、CCL7、CXCL5、CXCL9、CXCL6、及びMMP-9のレベルは低下した。MMP-7のレベルは2つの試料で低下し、対照抗体で処置した群におけるMMP-7は測定可能なレベルであった。
【0252】
以下の表7は、
図4で示す4つの滑膜生検材料外植片についての多重解析の結果を示す。表7では、培地のみ、0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのIgG4対照、又は0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのhuAb1でのインキュベートの後、4つの滑膜生検材料外植片における平均のサイトカインレベルを示す。
【0253】
培地のみ、0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのIgG4対照、又は0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのhuAb1の存在下にて2つの追加の滑膜生検材料外植片を培養した後、IL-8、CCL2(MCP-1とも呼ばれる)、CCL7(MCP3とも呼ばれる)、CXCL5、CXCL6、CXCL9(MIGとも呼ばれる)、CXCL10(IP-10)、TNF-α、MMP-2、MMP-7、及びMMP-9のレベルの多重解析を実質的に上記のとおりに行った。加えて、培地のみ、0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのIgG4対照、又は0.1μg/ml、1μg/ml、もしくは10μg/mlのhuAb1の存在下にて6つの滑膜生検材料外植片すべてを培養した後、CXCL7、CXCL11及びCXCL12のレベルの多重解析を実質的に上記のとおりに行った。以下の表8は、調べた6つの滑膜生検材料外植片すべての多重解析の結果を示す。
図5は、1μg/mlのhuAb1又は対照抗体にて滑膜生検材料外植片のうち4つを4日間培養した後の(A)CXCL7、(B)CXCL11及び(C)CXCL12の多重解析の結果を示す。
【0254】
(表7)無傷の滑膜生検材料のサイトカイン産生に対するhuAb1処置の効果(n=4)
【0255】
(表8)無傷の滑膜生検材料のサイトカイン産生に対するhuAb1処置の効果(n=6)
【実施例3】
【0256】
抗CSF1R抗体処置は関節リウマチのマウスモデルにおける関節にて組織マクロファージの数を減らす
フロイント完全アジュバントにて乳化したウシII型コラーゲン(2mg/ml)150μlを0日目及び21日目にオスDBA/1マウスの尾の付け根に皮内注射した。予防的投与については、ビヒクル、30mg/kgの抗CSF1R抗体(マウスのIgG1Fc領域を含有するキメララット抗マウスCSF1Rモノクローナル抗体)、又は10mg/kgのエンブレル(登録商標)のマウスへの投与を0日目に開始した。処置は32日目まで週に3回続いた。治療的投与については、少なくとも一方の足で腫脹が発生したらすぐにマウスを処置群に無作為化した。群の足腫脹平均スコアは登録時0.5~1(推定最大スコア5のうち)だった。マウスに週3回、ビヒクル、30mg/kgの抗CSF1R抗体、又は10mg/kgのエンブレル(登録商標)を投与した。関節炎23日目でマウス実験を終了した。
【0257】
予防モデル及び治療モデルの双方で、群の中での中央値スコアの合計に相当する関節炎スコアに基づいて各投与群から4匹の動物を代表動物として選択した。終了時、足及び膝を採取してホルマリンに入れ、パラフィン包埋し、切片にしてF4/80で染色して組織マクロファージを特定した。存在する足又は膝の各切片の関節周囲の軟組織及び真皮全体においてF4/80細胞を数えた。骨髄におけるF4/80陽性細胞は数えなかった。次いで総数を200倍視野5つ当たりの数に対して基準化した。これをF4/80陽性の細胞浸潤の多巣性の性質を説明するために行った。組織は一般に類似のサイズであり、転換にて説明される小さな変動を伴う。統計的有意性は、一元ANOVAとその後の各群を互いに比較するテューキーの事後検定によって決定した。
【0258】
抗CSF1R抗体の予防的処置の結果を
図6に示す。コラーゲン誘発関節炎のマウスの抗CSF1R抗体による予防的処置は、前足(A)及び膝(B)におけるマクロファージの数の有意な減少を生じ、どちらの場合にも、減少は、エンブレル(登録商標)による処置の後の減少よりも大きかった(
***=p≦0.001;
*=p≦0.05;ns=有意ではない)。
【0259】
抗CSF1R抗体の治療的処置の結果を
図7に示す。コラーゲン誘発関節炎のマウスの抗CSF1R抗体による治療的処置は、前足(A)及び膝(B)におけるマクロファージの数の有意な減少を生じ、どちらの場合にも、減少は、エンブレル(登録商標)による処置の後の減少よりも大きかった(
***=p≦0.001;
**=p≦0.01;ns=有意ではない)。
【0260】
配列の表
表9は本明細書で考察されるある特定の配列を提供する。特に指示されない限り、ポリペプチド及び抗体の配列はすべてリーダー配列なしで示される。
【0261】
【配列表】