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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】連続式加熱炉及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/12 20060101AFI20220719BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20220719BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20220719BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
F27B9/12
F27B9/40
F27D19/00 A
F27D21/00 A
F27D21/00 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018155532
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020029988
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 聡
(72)【発明者】
【氏名】得永 健
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-224192(JP,A)
【文献】特開平11-142061(JP,A)
【文献】特開平04-186091(JP,A)
【文献】実開平03-023795(JP,U)
【文献】特開平05-172465(JP,A)
【文献】米国特許第4527974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 19/00
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口、加熱帯、冷却帯及び出口を順に備え、少なくとも一つのワークを入口から出口に向かって搬送しながら加熱処理するための連続式加熱炉であって、
冷却帯は、
・前記ワークを直接冷却するための周囲ガスが出口から冷却帯に流入可能に構成されており、
・前記ワークの搬送方向に並列に間隔を置いて配列され、冷却力を独立して調節するための少なくとも一つの調節器をそれぞれ有する複数の間接冷却器を備え
・冷却帯内の余熱ガスを排出するための一つ又は二つ以上の余熱排気口を備え
・複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも更に出口側に、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口を備え、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも入口側には、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの導入口を備えず、
・複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも出口側に余熱排気口を有する、
連続式加熱炉。
【請求項2】
各間接冷却器は、各間接冷却器の内部を流れる冷媒の流量を調節可能な少なくとも一つの調節器を有する請求項に記載の連続式加熱炉。
【請求項3】
前記ワークの重量を測定する重量センサーと、重量センサーで測定される前記ワークの重量に基づいて各調節器を作動させ、間接冷却器の冷却力を調節する自動制御機構とを備える請求項1又は2に記載の連続式加熱炉。
【請求項4】
冷却帯の炉内温度を測定する温度計と、当該温度計の値に基づいて各調節器を作動させ、間接冷却器の冷却力を調節する自動制御機構とを備える請求項1~の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
【請求項5】
連続式焼成炉である請求項1~の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
【請求項6】
出口から冷却帯に流入する前記周囲ガスの流量、及び、一つ又は二つ以上の余熱排気口から排出される余熱ガスの流量を実質的に変化させることなく、前記ワークの重量及び冷却帯の炉内温度の一方又は両方に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することを含む請求項1~の何れか一項に記載の連続式加熱炉の運転方法。
【請求項7】
冷却帯は、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも更に出口側に、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口を備えており、
冷却帯に供給される当該冷却用ガスの流量を実質的に変化させることなく、前記ワークの重量及び冷却帯の炉内温度の一方又は両方に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することを含む請求項に記載の運転方法。
【請求項8】
各間接冷却器の冷却力は、各間接冷却器の内部を流れる冷媒の流量を調節可能な少なくとも一つの調節器によって調節される請求項6又は7に記載の運転方法。
【請求項9】
加熱帯を通過した後の前記ワークはセラミックス製であり、前記ワークが、複数の間接冷却器のうち、入口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し始めてから、出口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し終わるまでの間に、前記ワークの表面温度が600℃を超える温度から600℃未満の温度に低下するように、各間接冷却器の冷却力を調節する請求項6~8の何れか一項に記載の運転方法。
【請求項10】
前記ワークが、複数の間接冷却器のうち、入口に最も近い位置にある間接冷却器を通過してから、出口に最も近い位置にある間接冷却器を通過するまでの間に、前記ワークの表面温度が800℃以上から500℃以下に低下するように、各間接冷却器の冷却力を調節する請求項に記載の運転方法。
【請求項11】
前記ワークが冷却帯を通過するときの炉圧変動が1.5Pa以下である請求項6~10の何れか一項に記載の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続式加熱炉に関する。また、本発明は連続式加熱炉の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根瓦、衛生陶器、食器、並びにハニカム構造体(例:フィルタ及び熱交換器)等のセラミックス製品を焼成する連続焼成炉は、バーナー燃焼による炉内酸素濃度の低下を除いては意図的に酸素濃度を低下させることなく運転されることから大気焼成連続炉と呼ばれている。
【0003】
大気焼成連続炉においては、炉内圧力を予熱帯≦焼成帯≦冷却帯となるように調整することで、冷却帯で焼成品を冷却することにより昇温された炉内ガスは、焼成帯に流れてワークの焼成に有効利用される。また、温度の高い焼成帯から温度の低い予熱帯に流れた炉内ガスは、ワークの予熱に有効利用されている。このように、大気焼成連続炉においては、熱を有効利用することで省エネを図る操炉方法が一般的に実施されてきた。
【0004】
大気焼成連続炉における冷却機構は、炉外の空気を冷却空気として直接炉内に打込み、焼成品と熱交換させて冷却する直接冷却が行われるのが一般的である(例:特許第2859987号公報、特開平4-124586号公報)。
【0005】
大気焼成連続炉において、熱回収効率を高めるために、直接冷却に加えて間接冷却を行う技術も知られている(特公平3-40317号公報)。当該公報には、間接冷却を行うことにより、冷却帯での焼成物の冷却は従来どおり冷却帯へ冷却用空気を吹き込んで冷却を行うことに加えて、冷却帯の炉内圧力バランスに影響を与えることなく焼成物及び台車から加熱空気として熱回収を行うことができる点が記載されている。また、当該公報には、冷却帯の冷却能力の増加により冷却帯の圧力バランスの維持が容易になることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2859987号公報
【文献】特開平4-124586号公報
【文献】特公平3-40317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大気焼成連続炉は汎用性が高く、同一炉を用いて多種類のワークを焼成する場合が多い。しかしながら、ワークによっては重量が大幅に異なる場合もある。このため、同一操炉条件下でも重量の軽いワークが炉内を通過した場合は冷却能力が過剰となり、冷却帯のヒートカーブが低下(低温化)し、窯道具やワークの冷却割れが発生する不具合が有った。逆に、重量の重いワークが炉内を通過した場合には冷却能力不足により冷却帯ヒートカーブが大幅に上昇(高温化)して、ワークの窯出し温度が高温となり、ワークの荷下ろし作業に支障を来す等の不具合が発生する場合が有った。
【0008】
しかしながら、冷却帯ヒートカーブを一定に保つべく直接冷却の風量を増減すると、冷却帯の炉圧が変動し、先に述べた予熱帯、焼成帯及び冷却帯の間の炉圧バランスが崩れて炉内のガス流れが狂いやすい。炉全体のヒートカーブが狂ってしまうと、炉圧のバランス調整に大変な労力を要する。このため、従来はワークの重量に応じた冷却帯のヒートカーブ調整を適切に行うことが出来ず、成り行きで冷却帯ヒートカーブが変動するままになることが多かった。
【0009】
特公平3-40317号公報には冷却帯に間接冷却を取り入れることで熱回収効率を更に高めることが提案されている。しかしながら、当該公報に記載の発明は、ヒートカーブを調整することは意図されていない
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、炉圧バランスを崩すことなくヒートカーブの調整を容易に行うことのできる連続式加熱炉を提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、そのような連続式加熱炉の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特公平3-40317号公報に記載の発明では、冷却帯の出口側に近い位置に設置された間接冷却ボックスで熱回収し、その後に冷却ボックスからの加熱空気を、焼成帯に近い位置に設置された蓄熱冷却型交換器に供給して更に熱回収している。しかしながら、この構成だと、間接冷却ボックス及び蓄熱冷却型交換器は直列に繋がっており、蓄熱冷却型交換器の冷却力は間接冷却ボックスから流入する冷媒に依存する。このため、両者の冷却能力を独立して制御することは難しく、ヒートカーブの調整能力は十分ではない。
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、炉外ガスを用いた直接冷却に加えて、複数の間接冷却器にそれぞれ冷却力を調節することのできる独立した調節器を設け、これらの間接冷却器をワークの搬送方向に並列に配列することで、炉圧バランスを崩すことなくヒートカーブの調整を容易に行えることを見出した。本発明は当該知見を基礎として完成したものであり、以下に例示される。
【0013】
[1]
入口、加熱帯、冷却帯及び出口を順に備え、少なくとも一つのワークを入口から出口に向かって搬送しながら加熱処理するための連続式加熱炉であって、
冷却帯は、
・前記ワークを直接冷却するための周囲ガスが出口から冷却帯に流入可能に構成されており、
・前記ワークの搬送方向に並列に配列され、冷却力を独立して調節するための少なくとも一つの調節器をそれぞれ有する複数の間接冷却器を備え、且つ、
・冷却帯内の余熱ガスを排出するための一つ又は二つ以上の余熱排気口を備える、
連続式加熱炉。
[2]
冷却帯は、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも更に出口側に、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口を備える[1]に記載の連続式加熱炉。
[3]
冷却帯は、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも入口側には、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの導入口を備えない[1]又は[2]に記載の連続式加熱炉。
[4]
各間接冷却器は、各間接冷却器の内部を流れる冷媒の流量を調節可能な少なくとも一つの調節器を有する[1]~[3]の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
[5]
前記ワークの重量を測定する重量センサーと、重量センサーで測定される前記ワークの重量に基づいて各調節器を作動させ、間接冷却器の冷却力を調節する自動制御機構とを備える[1]~[4]の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
[6]
冷却帯の炉内温度を測定する温度計と、当該温度計の値に基づいて各調節器を作動させ、間接冷却器の冷却力を調節する自動制御機構とを備える[1]~[5]の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
[7]
連続式焼成炉である[1]~[6]の何れか一項に記載の連続式加熱炉。
[8]
出口から冷却帯に流入する前記周囲ガスの流量、及び、一つ又は二つ以上の余熱排気口から排出される余熱ガスの流量を実質的に変化させることなく、前記ワークの重量及び冷却帯の炉内温度の一方又は両方に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することを含む[1]~[7]の何れか一項に記載の連続式加熱炉の運転方法。
[9]
冷却帯は、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも更に出口側に、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口を備えており、
冷却帯に供給される当該冷却用ガスの流量を実質的に変化させることなく、前記ワークの重量及び冷却帯の炉内温度の一方又は両方に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することを含む[8]に記載の運転方法。
[10]
各間接冷却器の冷却力は、各間接冷却器の内部を流れる冷媒の流量を調節可能な少なくとも一つの調節器によって調節される[8]又は[9]に記載の運転方法。
[11]
加熱帯を通過した後の前記ワークはセラミックス製であり、前記ワークが、複数の間接冷却器のうち、入口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し始めてから、出口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し終わるまでの間に、前記ワークの表面温度が600℃を超える温度から600℃未満の温度に低下するように、各間接冷却器の冷却力を調節する[8]~[10]の何れか一項に記載の運転方法。
[12]
前記ワークが、複数の間接冷却器のうち、入口に最も近い位置にある間接冷却器を通過してから、出口に最も近い位置にある間接冷却器を通過するまでの間に、前記ワークの表面温度が800℃以上から500℃以下に低下するように、各間接冷却器の冷却力を調節する[11]に記載の運転方法。
[13]
前記ワークが冷却帯を通過するときの炉圧変動が1.5Pa以下である[8]~[12]の何れか一項に記載の運転方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る連続式加熱炉によれば、炉圧バランスを崩すことなくヒートカーブの調整を容易に行える。このため、例えば焼成するワークの品種が変わってワークの重量が変動したときにも炉圧調整をすることなくヒートカーブを調整することが可能となり、簡便に焼成品に冷却割れが発生するリスクを低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る連続式加熱炉の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る連続式加熱炉の冷却帯の構成を示す模式図である。
図3】複数の間接冷却器の配列方法の一例を示す模式図である。
図4】実施例における冷却風量及び冷却帯炉圧の時間変化を示すグラフである。
図5】比較例における冷却風量及び冷却帯炉圧の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る連続式加熱炉(10)の全体構成を示す模式図である。本実施形態に係る連続式加熱炉(10)は、入口(11)、加熱帯(12)、冷却帯(13)及び出口(14)を順に備え、台車(15)に積載したワーク(図示せず)を入口(11)から出口(14)に向かって搬送しながら加熱処理することができる。
【0018】
加熱帯とは、連続式加熱炉の入口から、炉内を加熱するための最も出口側に近い箇所に設置された加熱機器までのワーク進行方向の範囲を指す。冷却帯とは、最も出口側に近い箇所に設置された加熱機器の直後から、連続炉の出口までのワーク進行方向の範囲を指す。「加熱」の概念には「焼成」が含まれる。セラミックス製品を製造する場合、加熱帯(12)は脱バインダーが行われる予熱帯(12a)と、焼成が行われる焼成帯(12b)とに区分することが可能である。
【0019】
ワークは加熱処理を受ける物品であり、特に限定されるべきものではないが、フェライト及びセラミックコンデンサー等の電子部品、半導体製品、セラミック製品、陶磁器、酸化物系耐火物、ガラス製品、金属製品、アルミナ・グラファイト質及びマグネシア・グラファイト質等のカーボン系耐火物が例示される。1000℃以上、典型的には1200℃以上、より典型的には1400℃以上、例えば1000~2000℃にワークを加熱する場合に本発明に係る連続式加熱炉を好適に使用することができる。
【0020】
連続式加熱炉の種類に特に制約はない。例えば、トンネルキルン、ローラーハースキルン及びプッシャーキルン等とすることができる。また、連続式加熱炉は、典型的には大気焼成炉であり、m値(理論空気量に対する実燃焼空気量の比)を1.0以上の状態で燃料を燃焼させる。
【0021】
<2.冷却帯>
図2は、本発明の一実施形態に係る連続式加熱炉(10)の冷却帯(13)の構成を示す模式図である。
冷却帯(13)は、
・ワークを直接冷却するための周囲ガスが出口(14)から冷却帯(13)に流入可能に構成されており、
・ワークの搬送方向に並列に配列され、冷却力を独立して調節するための少なくとも一つの調節器(44)をそれぞれ有する複数の間接冷却器(42)を備え、且つ、
・冷却帯(13)内の余熱ガスを排出するための一つ又は二つ以上の余熱排気口(31)を備える。
【0022】
冷却帯(13)は、ワークを直接冷却するための周囲ガスが出口(14)から冷却帯に流入可能に構成されている。周囲ガスは典型的には空気であり、好ましくは外気を使用することができる。出口(14)から冷却帯に周囲ガスが流れるように構成することで、炉内圧力を加熱帯≦冷却帯となるように調整することが可能となり、冷却帯(13)に流入した周囲ガスを、入口(11)に向かって流すことができる。入口(11)側には排気口(図示せず)が設置されており、炉内ガスはここから吸引排気される。これにより、冷却帯で熱エネルギーを回収して昇温した炉内ガスの熱エネルギーを加熱帯で利用することができるようになるので、熱の利用効率が向上する。
【0023】
また、冷却帯(13)は、ワークの搬送方向に並列に配列された複数の間接冷却器(42)を備える。各間接冷却器(42)の構造は特に制限はないが、例えばジャケット構造又はパイプ構造を有することができる。各間接冷却器(42)には冷媒を流すことができる。各間接冷却器(42)は間接冷却排気ファン(35)と間接冷却排気ダクト(36)を介して連通しており、冷媒は各間接冷却器(42)を流れる間に炉内ガスから熱を受け取った後、間接冷却排気ファン(35)の吸引力によって間接冷却排気ダクト(36)を通って排出される。間接冷却排気ファン(35)及び間接冷却排気ダクト(36)は間接冷却器(42)毎に設けてもよいが、低コスト化の観点から複数本を適宜合流させて共通の間接冷却排気ダクト(36)から排出してもよい。間接冷却排気ファン(35)から排出された冷媒は大気へ放出してもよいし、燃焼用空気やワークの予熱のため等の熱源として再利用してもよい。代替的に、熱交換器等で冷却して冷却帯(13)の冷媒として循環使用することも可能である。
【0024】
本実施形態では冷媒として空気を使用することを想定しているが、冷媒としては空気に限られることはなく、例えば、N2及びAr等の気体、水等の液体を使用することが可能である。
【0025】
各間接冷却器(42)は、冷却力を独立して調節するための少なくとも一つの調節器(44)をそれぞれ有する。間接冷却であることから、冷却力の増減によって炉内ガスの流量を変化させることはないから、炉圧バランスに影響を与えることもない。また、各間接冷却器(42)に独立した冷却能力調節器(44)が備わっているため、ヒートカーブの制御性が向上する。例えば、冷却帯(13)を温度領域に応じて複数のゾーンに分け、ゾーン毎に間接冷却器(42)の冷却力を独立して調節することが可能である。
【0026】
前記調節器(44)としては、各間接冷却器(42)の冷却力を個別に調整することができるものであれば特に制限はないが、例えば、調節器として各間接冷却器の内部を流れる冷媒の流量を調節可能なダンパー及びバルブ等の流量制御装置を使用することができる。また、モーターの回転数を制御可能なインバータをもつ送風機及びポンプ等の冷媒供給装置を調節器(44)として使用することもできる。
【0027】
各間接冷却器(42)の冷却力はワークの重量に応じて調整することができる。例えば、ワークの重量が重いときには冷却力が高く、ワークの重量が軽いときには冷却力が低くなるように各調節器(44)を調整することでヒートカーブを制御することができる。各間接冷却器の冷却力の調整は手動制御でもよいが、自動制御することもできる。自動制御する場合、一実施形態において、連続式加熱炉は、ワークの重量を測定する重量センサー(50)と、重量センサー(50)で測定されるワークの重量に基づいて各調節器を作動させ、間接冷却器の冷却力を調節する自動制御機構とを備える。例えば、調節器がモーター駆動のダンパー又はバルブの場合、これらの開度を制御装置によって制御することができる。
【0028】
また、各間接冷却器(42)の冷却力は冷却帯(13)に設置した一つ又は複数の温度計(52)の値に応じて調整することもできる。例えば、冷却帯に搬送方向に沿って複数の温度計を設置し、冷却帯を複数のゾーンに分けてゾーンごとに目標値を設定し、温度計の値が目標値を下回るときは当該ゾーンに設置されている間接冷却器の冷却力が低く、温度計の値が目標値を上回るときは当該ゾーンに設置されている間接冷却器の冷却力が高くなるように調整することができる。この場合も、各間接冷却器の冷却力の調整は手動制御でもよいが、自動制御することもできる。
【0029】
複数の間接冷却器(42)は並列に配列されており、ある間接冷却器(42)を通過した冷媒は冷却帯において別の間接冷却器(42)を通過することなく炉外へ排出される。当該構成によって、各間接冷却器(42)は別の間接冷却器(42)で熱回収された冷媒を使用することがないため、ヒートカーブの制御性が向上する。逆に、複数の間接冷却器(42)が直列に繋がっていると後段の間接冷却器ほど冷却力の制御自由度が低下し、各間接冷却器(42)の冷却力を独立して調整することは困難である。
【0030】
図3に複数の間接冷却器(42)の配列方法の例を示す。図3においては、各間接冷却器(42)はパイプ構造を有しており、冷却帯における炉壁(48)の両側面を貫通するように構成されている。複数の間接冷却器(42)は図中に矢印で示すワークの搬送方向に沿って並列に配置されている。各間接冷却器(42)にはダンパー等の冷媒の流量制御装置(44)が個別に設置されている。冷媒が炉内を流れる向きは複数の間接冷却器(42)の間ですべて同一でもよいが、搬送方向に直交する左右方向に炉内ガスの温度分布を均一化するという観点からは、冷媒が逆向きに流れる間接冷却器(42)を少なくとも一つ設置することが好ましく、冷媒の流れる向きが反対となる間接冷却器(42)を搬送方向に交互に配列することがより好ましい。
【0031】
図2を参照すると、冷却帯(13)の炉壁(48)には一つ又は複数の余熱排気口(31)を設置することができる。余熱排気口(31)は余熱排気ファン(33)と余熱排気ダクト(32)を介して連通しており、余熱排気ファン(33)の吸引力により、冷却帯(13)の炉内ガスの一部を余熱排気口(31)から排出可能となっている。冷却帯(13)から炉内ガスを抽出することで、冷却帯におけるヒートカーブを制御しやすくなる。余熱排気ダクト(32)の途中には外気導入口(34)を設けてもよく、これにより余熱排気ダクト(32)を流れるガスの温度を調整することができる。
【0032】
冷却帯(13)は、複数の間接冷却器(42)のうち出口(14)に最も近い位置にある間接冷却器(42)よりも更に出口(14)側に、ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口(38)を備えてもよい。冷却用ガスは一つ又は二つ以上の出口打ち込みファン(37)から空気(典型的には外気)を吸引して、出口打ち込みダクト(39)を通して供給することができる。出口打ち込みの冷却用ガスとして、余熱排気ファン(33)から排出されたガスを循環使用してもよい。冷却用ガス導入口(38)から炉内に入った冷却用ガスはワークの直接冷却に利用することができる。出口打ち込みの冷却用ガスの温度は、限定的ではないが、例えば60~100℃とすることができる。
【0033】
一般に、連続式加熱炉(10)は複数の缶体を接続して構築されるところ、当該導入口(38)は、出口(14)に最も近い缶体又はそれよりも一つ前の缶体に設置することが好ましい。出口付近においては、ワークの温度は十分に低下しており、直接冷却しても割れの発生が生じるおそれはほとんどない。むしろ、出口付近では直接冷却を行うほうが、加熱帯(12)と冷却帯(13)の炉圧バランスを調整することができる点で有利である。
【0034】
一方、間接冷却器が設置される冷却帯の領域は、ワークの温度が比較的高温であり、直接冷却すると過冷却によって割れが発生する可能性がある。このため、冷却帯は、複数の間接冷却器のうち出口に最も近い位置にある間接冷却器よりも入口側には、一つ又は二つ以上のファンを介して供給される冷却用ガスであって前記ワークを直接冷却するための冷却用ガスの導入口を備えないことが好ましい。
【0035】
<3.運転方法>
本発明は一実施形態において、上述した連続式加熱炉の運転方法を提供する。連続式加熱炉の運転方法は一実施形態において、出口(14)から冷却帯に流入する周囲ガスの流量、及び、一つ又は二つ以上の余熱排気口(31)から排出される余熱ガスの流量を実質的に変化させることなく、ワークの重量に基づいて、複数の間接冷却器(42)の冷却力をそれぞれ調節することを含む。
【0036】
冷却帯(13)における冷却力が同じ場合、ワークの重量が変わるとワークの熱容量が変化するためヒートカーブが変化してしまう。ヒートカーブを維持するためには、ワークの重量変化に応じて適切に冷却帯(13)における冷却力を変化させることが望まれる。本実施形態によれば、出口(14)から冷却帯に流入する周囲ガスの流量、及び、一つ又は二つ以上の余熱排気口(31)から排出される余熱ガスの流量を実質的に変化させることはないため、炉圧バランスを崩すことはない。また、複数の間接冷却器は搬送方向に並列に配列されており、冷却力を独立して調節するための少なくとも一つの調節器をそれぞれ有することから、これらの間接冷却器の冷却力を調節することでヒートカーブの調整を容易に行える。
【0037】
従って、本発明に係る連続式加熱炉の運転方法の一実施形態においては、ワークが冷却帯を通過するときの炉圧変動を1.5Pa以下とすることができ、好ましくは1.0Pa以下とすることができる。
【0038】
冷却帯(13)が、ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口(38)を備えている場合も同様であり、冷却帯に供給される当該冷却用ガスの流量を実質的に変化させることなく、前記ワークの重量に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することができる。
【0039】
ワークの重量に加えて、又は、ワークの重量に代替して、複数の間接冷却器(42)の冷却力の調節は、冷却帯の炉内温度に基づいて行ってもよい。従って、連続式加熱炉の運転方法は別の一実施形態において、出口(14)から冷却帯に流入する周囲ガスの流量、及び、一つ又は二つ以上の余熱排気口(31)から排出される余熱ガスの流量を実質的に変化させることなく、冷却帯に設置した一つ又は複数の温度計の値に基づいて、複数の間接冷却器(42)の冷却力をそれぞれ調節することを含む。
【0040】
冷却帯(13)が、ワークを直接冷却するための冷却用ガスの一つ又は二つ以上の導入口(38)を備えている場合も同様であり、冷却帯に供給される当該冷却用ガスの流量を実質的に変化させることなく、冷却帯に設置した一つ又は複数の温度計の値に基づいて、複数の間接冷却器の冷却力をそれぞれ調節することができる。
【0041】
周囲ガス、余熱ガス及び冷却用ガスの流量が実質的に変動しないというのは、ダンパーの開度を変化させたり、ファンの回転速度を変化させたりする等これらの流量を人為的に意図的に変化させる操作を行わないことを意味する。一般に、これらの流量は変動するため、意図的に変化させなくても平均値からそれぞれ±10%以下の範囲で変動し得る。
【0042】
加熱帯を通過した後のワークがセラミックス製である場合、ワークが600℃付近にあるときに直接冷却を受けると過冷却によって割れが発生しやすい。例えばSiCの場合は600℃、コージェライトの場合は570℃近辺で割れが発生しやすい。そこで、ワークが、複数の間接冷却器のうち、入口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し始めてから、出口に最も近い位置にある間接冷却器を通過し終わるまでの間に、前記ワークの表面温度が600℃を超える温度から600℃未満の温度に低下するように、望ましくは800℃以上から500℃以下に低下するように、各間接冷却器の冷却力を調節することが好ましい。
【0043】
本発明に係る連続式加熱炉の運転手順の一例を示す。
ワークの物量を想定される最小の状態として初期調整を行う。この場合は、間接冷却器は停止又は最小出力状態とする。
出口打ち込みファンを起動すると共に、余熱排気ファンを起動し、冷却帯のヒートカーブを狙いの状態に調整する。
その後、ワークの物量を増大させた状態で、余熱排気ファン及び出口打ち込みファンの出力は変えずに、間接冷却器の冷却力(例:各ダンパー開度)を調整して狙いのヒートカーブになるよう調整する。
【実施例
【0044】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
図1に示す構造の連続式加熱炉に対して、図2に示す構造の間接冷却器を設置し、実際にワークを加熱及び冷却する運転を行った。詳細運転条件は以下である。
(1)炉の種類:トンネル型大気焼成炉(炉長100m、炉内幅2.5m)
(2)ワーク:円柱状ハニカム成形品(φ80~150mm×高さ70~160mmの範囲で変化)
(3)台車1台当たりのワーク数:150~648
(4)間接冷却条件
・冷媒:10~40℃程度の空気
・間接冷却器構造:外径φ40mm×肉厚5mmのセラミックス製パイプ構造
・間接冷却器設置個所:炉壁天井から200mmの位置でワークの搬送方向に直角な方向に炉壁の両側面を貫通するように配置(図3参照)
・間接冷却器配列:ワークの搬送方向に沿って、100mm間隔で並列に49本配置
・冷媒の流れ方向:隣り合う間接冷却器同士で炉内を流れる冷媒の流れが交互に逆向き
・流量制御方法:各間接冷却器にそれぞれダンパーを設置
・冷媒流量(複数の間接冷却器を流れる合計流量):800Nm3/hr→400Nm3/hr→620Nm3/hr→800Nm3/hrと段階的に変化
・間接冷却を行った冷却帯の炉内温度領域:概ね800℃から500℃に低下する領域
(5)直接冷却条件
炉の出口からの外気導入:200~400Nm3/hr
出口打ち込みファンからの冷却空気:200~500Nm3/hr(10~40℃程度の空気)
【0046】
結果を図4に示す。図4の上側のグラフには、実施例に係る連続式加熱炉を運転中に、ダンパーの開度を調節することで冷却帯用の間接冷却器を流れる冷媒の流量(冷却風量)を変化させたときの冷却風量の時間変化が示されている。図4の下側のグラフには、上側グラフに示すように冷却風量を変化させたときの冷却帯炉圧(相対圧力)の時間変化が示されている。図4から理解できるように、冷却帯の炉圧の変動は1Pa程度であり、冷却帯の炉圧は冷却風量の変化によって影響を受けなかったことが分かる。
【0047】
また、冷却帯に設置した炉内温度計の値に応じて、各間接冷却器を流れる冷却風量を変化させ、所定の冷却帯ヒートカーブを保つように当該連続加熱炉の運転を行って種々の重量のワークを5000個以上焼成した。その結果、ワークの割れは一切発生しなかった。
【0048】
(比較例)
実施例で使用した連続式加熱炉において、間接冷却器に替えて直接冷却器を用い、冷却帯へ冷却空気を吹き込んだ他は、実施例と同様の条件でワークを加熱及び冷却する運転を行った。冷却帯への直接冷却条件は以下である。
・冷媒:空気
・直接冷却器配列:ワークの搬送方向に沿って、1500mm間隔で4個配置
・直接冷却器設置個所:炉壁天井から冷却空気が吹き込まれるように導入口を配置
・流量制御方法:各直接冷却器にそれぞれダンパーを設置
・冷媒流量(複数の間接冷却器を流れる合計流量):200Nm3/hr→300Nm3/hr→380Nm3/hrと段階的に変化
・直接冷却を行った冷却帯の炉内温度領域:概ね800℃から500℃に低下する領域
【0049】
結果を図5に示す。図5の上側のグラフには、比較例に係る連続式加熱炉を運転中に、ダンパーの開度を調節することで直接冷却器から冷却帯に吹き込む冷媒の流量(冷却風量)を変化させたときの冷却風量の時間変化が示されている。図5の下側のグラフには、上側グラフに示すように冷却風量を変化させたときの冷却帯炉圧(相対圧力)の時間変化が示されている。図5から理解できるように、冷却帯の炉圧は、冷却風量の変化によって大きく影響を受けることが分かる。
【0050】
また、当該連続式加熱炉を用いて、種々の重量のワークを1000個焼成した。この際、ワークの重量によらず、冷却帯への冷却風量は一定とした。その結果、20%程度のワークにマイクロクラックが発生した。
【符号の説明】
【0051】
10 連続式加熱炉
11 入口
12 加熱帯
13 冷却帯
14 出口
15 台車
32 余熱排気ダクト
31 余熱排気口
33 余熱排気ファン
34 外気導入口
35 間接冷却排気ファン
36 間接冷却排気ダクト
37 出口打ち込みファン
38 冷却用ガス導入口
42 間接冷却器
44 調節器(流量制御装置)
46 冷媒
48 炉壁
50 重量センサー
52 温度計
図1
図2
図3
図4
図5