(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】温風暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20220719BHJP
F24H 3/04 20220101ALI20220719BHJP
F24H 15/128 20220101ALI20220719BHJP
F24H 15/20 20220101ALI20220719BHJP
F24H 15/30 20220101ALI20220719BHJP
【FI】
F24H9/02 302B
F24H3/04 301
F24H15/128
F24H15/20
F24H15/30
(21)【出願番号】P 2018156880
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若月 慶介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勲
(72)【発明者】
【氏名】松木 航平
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-117697(JP,A)
【文献】特開2017-044361(JP,A)
【文献】特開2014-081142(JP,A)
【文献】特開平01-310263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/00-3/12,9/02,15/00-15/493
F24D 1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の燃料を燃焼するバーナと、
温風を吹き出す吹出口と、
前記吹出口に設けられた回動可能な複数の羽根と、
前記羽根を回動させる羽根駆動モータと、
前記羽根の動作を検知する羽根動作検知手段と、
燃料を気化する気化装置と、
前記気化装置を加熱するヒータと、
燃焼運転を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、燃焼を開始する前に、前記羽根駆動モータを回転させて羽根が正常に動作するかを確認する羽根動作判定を
複数回実行
し、
前記羽根動作判定は、前記気化装置の予熱開始前もしくは予熱中に実行される第1羽根動作判定と、前記気化装置の予熱完了後に実行される第2羽根動作判定を含む温風暖房装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1羽根動作判定により、前記羽根が正常に動作することを確認した場合、前記第2羽根動作判定を実行するまでは羽根動作の判定を行わない請求項
1記載の温風暖房装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1羽根動作判定により、前記羽根が正常に動作することを確認した場合、前記羽根を所定角度で固定する羽根固定動作を実行し、前記羽根固定動作の実行中に前記第2羽根動作判定を実行する請求項
2記載の温風暖房装置。
【請求項4】
前記羽根駆動モータの回転を前記羽根の回動動作に変換する駆動機構は、前記羽根に外部から力が加わったときに、前記羽根を元の位置に復帰させる復元力を付与するバネ部材を備える請求項
3記載の温風暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼により温風を発生させて室内を暖房する温風暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の暖房装置としては、例えば、本体内に燃料を燃焼させるバーナを備え、バーナで発生した燃焼ガスと本体に取り込んだ室内の空気とを混合して温風とし、この温風を本体前面に設けた吹出口から吹き出して室内を暖房するものが知られている。また、この吹出口には、上下に回動可能な羽根を設けて、吹き出される温風の風量に応じて羽根を上下に回動(スイング)させることにより、室内の温度分布を均一にして、暖房効果を高めるようにしたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
上述の暖房装置では、運転を停止している間は羽根を閉じて吹出口が閉塞された状態になっている。運転スイッチを操作して運転開始が指示されると、バーナでの燃焼を開始させ、送風ファンを回転させるとともに、羽根駆動モータを駆動して吹出口を閉塞している羽根を回動させて吹出口を開放する。このときの羽根の回動角度は、バーナでの燃焼量が大きくなるほど角度を大にして略水平状態に近づくように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように可動する羽根を備える暖房装置においては、本体の前面に障害物があって羽根の動きが制限されたり、羽根を駆動するモータが故障したりすると、羽根が正しく動作しなくなってしまう可能性がある。羽根が正しく動作せずに、燃焼が開始された後も羽根が閉じたままであったり、羽根の角度が設定された角度よりも小さくなったりしていると、温風の吹き出しが阻害されて本体や床面を加熱してしまい、安全性を損ねるという問題が発生する。
【0006】
本発明は、羽根が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを防止して、安全に使用することのできる温風暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガス状の燃料を燃焼するバーナと、
温風を吹き出す吹出口と、
前記吹出口に設けられた回動可能な複数の羽根と、
前記羽根を回動させる羽根駆動モータと、
前記羽根の動作を検知する羽根動作検知手段と、
燃料を気化する気化装置と、
前記気化装置を加熱するヒータと、
燃焼運転を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、燃焼を開始する前に、前記羽根駆動モータを回転させて羽根が正常に動作するかを確認する羽根動作判定を複数回実行し、
前記羽根動作判定は、前記気化装置の予熱開始前もしくは予熱中に実行される第1羽根動作判定と、前記気化装置の予熱完了後に実行される第2羽根動作判定を含む温風暖房装置である。
【発明の効果】
【0008】
上述のように構成することにより、羽根が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことが防止されるので、安全性に優れた温風暖房装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における温風暖房装置の内部構成図である。
【
図2】本実施形態における温風暖房装置の断面構成図である。
【
図4】吹出口の拡大断面図である。(A)は羽根を閉じた状態を示し、(B)は羽根を開いた状態を示す。
【
図5】本実施形態における温風暖房装置の、羽根を駆動する機構の斜視図である。
【
図7】本実施形態における温風暖房装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本実施形態における羽根動作判定の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態における羽根動作判定の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0011】
本発明は、温風を吹き出す吹出口に、モータの駆動により回動する複数の羽根を備えた温風暖房装置であって、バーナでの燃焼を開始する前に、羽根駆動モータを回転させて羽根が正常に動作するかを確認する羽根動作判定を実行する。これにより、羽根が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを未然に防止して、暖房装置を安全に使用することができる。
【0012】
また、暖房装置は燃料を気化する気化装置と、気化装置を加熱するヒータを備えて構成され、上述の羽根動作判定を複数回実行する。燃料を気化する構造を有する暖房装置の場合、運転開始の指示をしてから実際にバーナで燃焼が開始されるまでには、気化装置の予熱にかかる時間として、数十秒から数分を必要とする。そのため、この間に羽根動作判定を複数回実行することで、燃焼開始前に羽根が正しく動作しない状態になったことを確実に検知して、羽根が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを未然に防止することができる。
【0013】
また、上述の羽根動作判定として、気化装置の予熱開始前もしくは予熱中に実行される第1羽根動作判定と、気化装置の予熱完了後に実行される第2羽根動作判定を含む。第1羽根動作判定と第2羽根動作判定を実行することで、より確実に羽根が正しく動作しない状態になったことを検知することができる。
【0014】
また、第1羽根動作判定を実行して、羽根が正常に動作することを確認した場合には、第2羽根動作判定を実行するまでは羽根動作判定を行わない。これにより、気化装置の予熱中に、羽根に手が触れるなどして一時的に位置が変わってしまったとしても、燃焼開始前に羽根が正常な位置に復帰したのであれば羽根は正常に動作していると判定するため、無用なエラー判定を抑制することができる。
【0015】
また、第1羽根動作判定を実行して、羽根が正常に動作することを確認した場合には、羽根固定動作を実行し、羽根固定動作の実行中に第2羽根動作判定を実行する。これにより、第2羽根動作判定に要する時間が短縮されるので、羽根動作の異常を素早く検知することができる。
【0016】
また、モータの回転によって羽根を回動させる駆動機構は、羽根に外部から力が加わったときに、羽根を元の位置に復帰させる復元力を付与するバネ部材を備えて構成される。そのため、前述の羽根固定動作の実行中に、手が触れるなどして羽根が閉じられてしまったとしても、第2羽根動作判定が実行される前に手が離れて外部からの力が作用しなくなったときには羽根は復元力によって自動的に元の位置に戻ることができる。これにより、第2羽根動作判定では羽根が正常に動作していると検知されるため、無用なエラー判定をより確実に抑制することができる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0018】
図1は、温風暖房装置の内部構成図であり、
図2は、温風暖房装置の断面構成図である。なお、本実施形態では、温風暖房装置の一例として燃料を燃焼させて暖房を行うファンヒーターを例に説明する。
【0019】
本体1内には、灯油などの液体燃料を加熱して気化ガスとする気化装置2と、気化装置2で発生した気化ガスを燃焼して熱を発生させるバーナ3と、バーナ3の上方に設けられた燃焼室4と、バーナ3に点火する点火ヒータ5と、図示しない給油タンクから供給された燃料を貯留する油受皿6と、油受皿6上に載置され気化装置2へ燃料を汲み上げる電磁ポンプ7を備えている。
【0020】
そして本体1の背面には、室内の空気を本体1内部に取り入れる送風機8が取り付けられる。また、本体1の正面には、暖房装置の動作を指示するための多数のスイッチが設けられた操作部16と、温風を吹出す吹出口9が取り付けられており、この吹出口9は複数の羽根10を備えている。
【0021】
図3は、気化装置の断面構成図である。気化装置2は、液体燃料を加熱気化する気化部40と、この気化部40と連通し気化部40で加熱気化された気化ガスを先端の噴出口43より噴出するノズル部41とから構成される。ノズル部41は、円筒部421と小径部422が一体に形成されている筒体42と、先端に噴出口43を有するノズルパイプ44と、筒体42の外周に取り付けられたソレノイドコイル45を有している。また、気化部40は、ヒータ46を備え、連通口47を介してノズルパイプ44と連通するとともに、送液管48を介して電磁ポンプ7と接続している。
【0022】
ノズル部41の筒体42の内部には、ソレノイドコイル45の通電により摺動する可動片49と、筒体42の後端に固定された固定片50と、可動片49と固定片50の間に介在するスプリング51と、を有している。固定片50には小空間であるニゲ部52が形成され、このニゲ部52を通じて気化部40やノズルパイプ44内に残留した気化ガスを油受皿6に戻すためのニゲパイプ53が接続されている。
【0023】
可動片49は、内部に固定片50のニゲ部52を閉塞するプランジャー弁54が挿入固定されるとともに、ノズルパイプ44側に向けてバルブロッド55が取り付けられており、このバルブロッド55は先細り形状をなしていてその先端にはノズルパイプ44の噴出口43を開閉する針弁56が形成されている。また、可動片49はスプリング51の付勢力により常時ノズルパイプ44側に押圧されていて、これにより針弁56が噴出口43を閉塞した状態となっている。
【0024】
上述のように構成される気化装置2では、運転開始が指示されると、ヒータ46への通電が開始され、ヒータ46の発熱により気化部40が加熱される。気化部40が燃料を気化することのできる温度まで上昇すると電磁ポンプ7が始動する。これにより気化部40内に燃料が送られ、燃料は加熱気化して気化ガスとなり、連通口47を通ってノズルパイプ44内に流入する。
【0025】
また、電磁ポンプ7の始動に相前後してソレノイドコイル45に通電が行われ、ソレノイドコイル45の磁気力により可動片49が吸引されて固定片50側に摺動する。可動片49が摺動することでバルブロッド55も固定片50側に移動するため、バルブロッド55の先端に設けられた針弁56が噴出口43を開放し、さらにプランジャー弁54が固定片50のニゲ部52を閉塞するため、ノズルパイプ44内に流入した気化ガスは噴出口43よりバーナ3に向けて噴出される。
【0026】
燃焼室4は、その上部に、バーナ3で発生した燃焼排ガスが排出される開口4aを有し、さらに燃焼室4を覆うように遮熱板11が設けられている。燃焼室4と遮熱板11の間は、燃焼排ガスと送風機8からの空気とを混合して温風とする温風通路12として構成されている。
【0027】
図4は、吹出口の拡大断面図であり、
図4(A)は可動羽根を閉じた状態を示し、
図4(B)は可動羽根を所定角度開いた状態を示す断面図である。本実施形態の温風暖房装置においては、吹出口9は上下に回動可能な3枚の可動羽根13と、この可動羽根13の間に配置されて水平方向に延びる回動しない2枚の固定羽根14を備えている。運転が停止しているときは、
図4(A)のように可動羽根13は閉じられており、バーナ3での燃焼中は後述する羽根駆動モータ23が回転して可動羽根13を駆動して、
図4(B)のように可動羽根13が開いた状態となる。なお、以降の説明において、可動羽根13の角度とは、図中のθで示す角度を指すものとする。
【0028】
可動羽根13はバーナ3での燃焼量に応じて上下方向に回動させることができ、温風の吹き出す角度を調節する。一方、固定羽根14は、温風通路12を通過した温風を前方に誘導する役割を有する。可動羽根13の縦方向の長さ(
図4(A)における上下方向の長さ)が長い場合には、羽根と羽根の間隔が広くなるため、温風通路12を通過した温風が羽根の間から下方に向かって流れやすくなってしまうが、固定羽根14を設けることで、本体1の前方に向けて温風を吹き出すことができるため、意図する方向へ効率よく温風を排出することができる。とくに、本実施形態のように、温風通路12が下方に向かっていて、温風が吹き下ろされる構造である場合には、固定羽根14がより効果を発揮する。なお、固定羽根14を設けない構造であってもかまわない。
【0029】
図5は、可動羽根を駆動する機構の斜視図であり、
図6は、同機構の正面図である。可動羽根13を備えた吹出口9は、支持金具20によって本体1に取り付けられるようになっている。
【0030】
支持金具20には、回動軸21を介して可動羽根13と連結された連携カム22と、可動羽根13を駆動するための羽根駆動モータ23と、羽根駆動モータ23と連結された駆動用カム24と、可動羽根13の動作を検知する羽根動作検知手段25が取り付けられており、さらに、回動軸21を中心とした連携カム22の回転動作を案内するガイド孔26が設けられている。
【0031】
連携カム22は、二つのピン(第1ピン221、第2ピン222)を備えている。第1ピン221は前述の回動軸21と連結し、第2ピン222は、支持金具20に対して摺動自在に設けられる駆動板27と連結している。この駆動板27の下部には、後述する羽根動作検知手段25に対応する遮蔽片29が設けられている。
【0032】
また駆動板27には、駆動用カム24から延びる駆動軸241が係止されるとともに、駆動軸241の先端に取り付けられたバネ部材28の一端が取り付けられている。バネ部材28は、可動羽根13に外部から力が加わったときに、可動羽根13を元の位置に復帰させる復元力を付与する。羽根駆動モータ23によって可動羽根13が所定の位置に固定されているとき、手が触れるなどして可動羽根13が閉じられてしまったとしても、手が離れて外部からの力が作用しなくなったときには復元力によって自動的に元の位置に戻ることができる。
【0033】
羽根駆動モータ23は正逆回転可能なステッピングモータで構成され、後述する制御部30からの指示に基づいて回転が制御される。そして、羽根駆動モータ23の回転によって駆動用カム24が回動すると駆動板27が上下に移動し、この駆動板27の上下動が連携カム22を介して可動羽根13を上下に回動させる。つまり、駆動板27が下方に移動すると、連携カム22が矢印Aの方向に回転して可動羽根13は上向きに回動する。反対に、駆動板27が上方に移動すると、連携カム22が矢印Bの方向に回転して可動羽根13は下向きに回動することとなる。可動羽根13が上向きに回動して所定角度に到達したことは、羽根動作検知手段25により検知される。
【0034】
羽根動作検知手段25は、例えば発光部251と、発光部251に対向して配置された受光部252を備えるフォトインタラプタで構成される。羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根13を上向きに回動させると、駆動板27が下方に移動する。そして、可動羽根13の角度が所定角度になると遮蔽片29が発光部251と受光部252の間に入り込んで発光部251からの光を遮断する。つまり、受光部252が光を検知できなくなると、可動羽根13が所定角度に到達したと判定される。なお、羽根動作検知手段25の構成はこれに限らず、他の検知方式を用いてもよい。
【0035】
図7は、温風暖房装置の構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータからなる制御部30は、室内の温度を検知する室温検知手段17、操作部16に設けられた各種ボタン(例えば、運転の開始および停止を指示する運転ボタン161、温度を設定する室温設定ボタン162、運転モードを設定する運転モード設定ボタン163)、可動羽根13の動作を検知する羽根動作検知手段25、気化装置2の温度を検知する気化部温度検知手段18、からの入力を受ける。そして、点火ヒータ5、電磁ポンプ7、送風機8、ヒータ46、ソレノイドコイル45、羽根駆動モータ23への制御信号を出力し、暖房運転を制御する。
【0036】
また、制御部30は、バーナ3での燃焼量を演算して決定する燃焼量制御手段31、送風機8の回転を制御する送風機制御手段32、羽根駆動モータ23の回転を制御する羽根駆動モータ制御手段33、ヒータ46への通電を制御するヒータ制御手段34、ソレノイドコイル45への通電を制御するソレノイド制御手段35、点火ヒータ5への通電を制御する点火制御手段36、とを含んで構成される。なお、図の構成は本実施形態にかかる温風暖房装置の一実施例であって、図示される以外のその他の構成要素を含んでいても構わない。
【0037】
また、本発明の温風暖房装置は、複数の運転モードを切替可能に備えており、運転モードは操作部16の運転モード設定ボタン163を操作することで選択される。そして、この運転モードには、可動羽根13を予め設定された角度範囲内で上下方向に回動させる可動モードと、可動羽根13を予め設定された角度に固定する固定モードを有しており、いずれのモードにおいても可動羽根13の角度は燃焼量制御手段31によって決定された燃焼量に応じて設定される。
【0038】
例えば、燃焼量が大火力のときの可動羽根13は、可動モードでは70~80度の間で上下動を繰り返し、固定モードでは75度に固定される。また、燃焼量が小火力のときの可動羽根13は、可動モードでは60~75度の間で上下動を繰り返し、固定モードでは65度に固定される。中間火力のときは、大火力と小火力の間の角度に設定される。なお、上述の角度は一例であって、適宜設定することができる。
【0039】
可動羽根13は、運転モードによらず、燃焼量が大きいときのほうが、燃焼量が小さいときよりも角度が大きくなるように設定される。つまり、燃焼量が大きい場合には、温風の吹き出し角度を大きくして温風を遠くまで運ぶとともに、開口面積を大きくすることで本体1内に熱がこもってしまうことを有効に防止することができる。また、燃焼量が小さい場合に吹出開口を下に向けることで、足元を温めることができ、これにより暖房効率をあげることができる。
【0040】
そして、上述の構成からなる暖房装置では、燃焼を開始する前に可動羽根13が正常に動作するかを確認する羽根動作判定を実行する。つまり、運転ボタン161が操作されて運転開始が指示されると、バーナ3での燃焼を開始する前に羽根動作判定を実行する。この羽根動作判定では、制御部30は羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根13を上方に回動させ、羽根動作検知手段25によって可動羽根13が所定角度に到達したことが検知されたかを判定する。可動羽根13が所定角度(第1角度)に到達した場合には、可動羽根13は正常に動作すると判断して燃焼を開始することができる。一方、所定時間内に可動羽根13が第1角度に到達しなかった場合には、可動羽根13は正常に動作しないと判断して、燃焼動作は開始されない。
【0041】
本体1の前面に障害物があって可動羽根13の動きが制限されたり、羽根駆動モータ23が故障したりすると、可動羽根13が正常に動作しなくなってしまう可能性がある。可動羽根13が正常に動作せずに、燃焼が開始された後も閉じたままであったり、可動羽根13の角度が設定された角度よりも小さくなったりしていると、温風の吹き出しが阻害されて本体1や床面を加熱してしまい、安全性を損ねるという問題が発生する。そこで、燃焼を開始する前に羽根動作判定を実行することで、可動羽根13が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを未然に防止して、暖房装置を安全に使用することができる。さらに、運転開始の指示に基づいて可動羽根13が回動するので、使用者は運転が開始されたことを視覚的に確認することができる。
【0042】
可動羽根13が第1角度に到達したことは、羽根動作検知手段25によって検知される。ここでいう第1角度とは、可動羽根13の通常動作時の最大角度と同じか、若しくはそれ以上の角度のことを指す。本実施形態では、通常動作時の可動羽根13の最大角度は80度(可動モード時における最大角度)に設定されているので、第1角度は80度以上の角度であればよい。そして、羽根動作判定においては、可動羽根13が第1角度に到達したことを羽根動作検知手段25が検知した後、さらに羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根13を機械的に回動可能な最大角度である上限角度まで開く動作を行うようにしてもよい。
【0043】
また、羽根動作判定は複数回実行することができる。本実施形態のように、液体燃料をヒータ46の加熱によって気化する構造を有する暖房装置の場合、運転開始の指示をしてからヒータ46の加熱を開始して、気化部40の温度が燃料を気化することのできる温度に到達してから燃焼開始となる。つまり、運転開始の指示をしてから実際にバーナ3で燃焼が開始されるまでには、予熱時間として数十秒から数分の時間を必要とする。そこで、この予熱時間中に羽根動作判定を複数回実行することで、燃焼開始前に可動羽根13が正しく動作しない状態になっていることを確実に検知して、可動羽根13が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを未然に防止することができる。
【0044】
図8は、上述の羽根動作判定の一例を示すフローチャートである。運転停止中は、
図4(A)に示すように、可動羽根13は閉じられており吹出口9は閉塞されている。ステップ1で運転開始が指示されたことを検知すると、可動羽根13を上方に回動させるよう羽根駆動モータ23を回転させ(ステップ2)、さらにヒータ46への通電を開始する(ステップ3)。なお、羽根駆動モータ23の回転とヒータ46への通電を同時に開始してもよい。
【0045】
ステップ2で羽根駆動モータ23が回転を始めると、可動羽根13が上方に回動するので、可動羽根13の角度が第1角度に到達したかを羽根動作検知手段25の検知結果によって判定する「第1羽根動作判定」を実行する(ステップ4)。この第1羽根動作判定は、気化装置2の予熱中に実行される動作判定である。本体1の前面に障害物があったり、羽根駆動モータ23が故障していたりすると、羽根駆動モータ23を回転させても可動羽根13は第1角度まで到達することができない。そのため、羽根駆動モータ23の回転を開始してから所定時間(例えば10秒)が経過したかを判定し(ステップ5)、所定時間が経過しても可動羽根13が第1角度に到達したことが検知されない場合は可動羽根13の動作に何らかの異常があると判定して運転を停止する(ステップ6)。第1羽根動作判定を実行することで、可動羽根13の動作の異常を運転開始時に判定し、異常が検知された場合には燃焼は開始されないため、暖房装置を安全に使用することができる。
【0046】
一方、第1羽根動作判定で可動羽根13が第1角度に到達したことが検知されると(ステップ4でYes)、可動羽根13は正常に動作していると判断して、次に気化部40の温度が燃料を気化することのできる所定温度に到達したかを判定する(ステップ7)。気化部の温度が所定温度に到達したことを検知すると(ステップ7でYes)、気化装置2の予熱が完了したと判断し(ステップ8)、点火ヒータ5への通電を開始する(ステップ9)。
【0047】
続いて、可動羽根13の角度が第1角度に到達しているかを羽根動作検知手段25の検知結果によって判定する「第2羽根動作判定」を実行する(ステップ10)。この「第2羽根動作判定」は、気化装置2の予熱完了後に実行される動作判定である。
【0048】
気化装置2の熱容量やヒータ46の熱量にもよるが、気化装置2の予熱を開始してから予熱が完了するまでには数十秒から数分の時間を必要とする。第1羽根動作判定で可動羽根13が正常に動作することが確認された場合でも、気化装置2の予熱中に可動羽根13を手で押さえるなどすると、実際に燃焼を開始するときには可動羽根13の角度が変わってしまうことが考えられる。そこで、第1羽根動作判定で可動羽根13が正常に動作することが確認された後、気化装置2の予熱が完了した時点で第2羽根動作判定を実行し、燃焼動作を行ってもよいかを判定する。
【0049】
なお、ステップ4で可動羽根13が正常に動作することが確認された場合、制御部30は羽根駆動モータ23の回転を停止させ、可動羽根13は第1角度(または上限角度でもよい)に開いた状態で固定されている。第2羽根動作判定は、可動羽根13が第1角度に固定されている間に実行される。
【0050】
第2羽根動作判定において、羽根動作検知手段25が可動羽根23を検知しない場合(ステップ10でNo)は、可動羽根13の角度異常と判断して運転を停止する(ステップ11)。第2羽根動作判定を実行することで、可動羽根13の角度の異常を燃焼開始前に判定し、異常が検知された場合には燃焼は開始されないため、暖房装置を安全に使用することができる。
【0051】
第2羽根動作判定で可動羽根13が第1角度にあることが検知されると(ステップ10でYes)、電磁ポンプ7を駆動して気化装置2へ燃料の供給を開始し(ステップ12)、ソレノイドコイル45への通電を行う(ステップ13)。電磁ポンプ7が駆動されると、気化部40内に燃料が供給され、燃料は気化部40内で加熱気化して気化ガスとなり、気化ガスは連通口47を通ってノズルパイプ44に流入する。その後、ソレノイドコイル45へ通電することで、針弁56が噴出口43を開放し、ノズルパイプ44内に流入した気化ガスは噴出口43からバーナ3に向けて噴出される。バーナ3に噴出された気化ガスは、点火ヒータ5によって点火されて燃焼が開始される。
【0052】
このように、電磁ポンプ7の駆動を開始する前に第2羽根動作判定を行うことで、第2羽根動作判定で異常が発見された場合には、気化装置2に燃料が供給される前に運転を停止することができる。ただし、これに限るものではなく、少なくともソレノイドコイル45への通電を行う前に第2羽根動作判定を実行する。なお、第2羽根動作判定は、ステップ9で点火ヒータ5の通電を開始する前に実行してもよい。
【0053】
以上のように、羽根動作判定として、気化装置2の予熱中に実行される第1羽根動作判定と、予熱完了後に実行される第2羽根動作判定を行うことで、可動羽根13が正常に動作するかを運転開始時だけでなく、燃焼開始前にも確認するので、可動羽根13が正しく動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを素早く、かつ確実に防止することができる。
【0054】
また、第1羽根動作判定を実行して、可動羽根13が正常に動作することが確認された場合には、第2羽根動作判定を実行するまでは羽根動作判定は行われない。これにより、気化装置2の予熱中に、可動羽根13に手が触れるなどして一時的に角度が変わってしまったとしても、燃焼を開始する前に可動羽根13が正常な位置に復帰したのであれば可動羽根13は正常に動作していると判定することになるので、無用なエラー判定を抑制することができる。
【実施例2】
【0055】
図9は、羽根動作判定の他の一例を示すフローチャートである。
図8に示した実施形態とは、第1羽根動作判定を実行するタイミングが異なっている。以下、
図8と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態においては、ステップ21で運転開始が指示されたことを検知すると、可動羽根13を上方に回動させるよう羽根駆動モータ23を回転させ(ステップ22)、第1羽根動作判定を実行する(ステップ23)。本実施形態における「第1羽根動作判定」は、気化装置2の予熱開始前に実行される動作判定である。
【0057】
第1羽根動作判定では、羽根駆動モータ23の回転を開始してから所定時間が経過したかを判定し(ステップ24)、所定時間が経過しても可動羽根13が第1角度に到達したことが検知されない場合は可動羽根13の動作に何らかの異常があると判定して運転を停止する(ステップ25)。一方、可動羽根13が第1角度に到達したことが検知されると(ステップ23でYes)、可動羽根13は正常に動作していると判断して、ヒータ46への通電を開始する(ステップ26)。
【0058】
このように、気化装置2の予熱前に実行される第1羽根動作判定と、予熱完了後に実行される第2羽根動作判定を行うことで、可動羽根13が正常に動作するかを運転開始時だけでなく、燃焼開始前にも確認するので、可動羽根13が正常に動作しない状態で燃焼が開始されてしまうことを素早く、かつ確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0059】
2 気化装置
3 バーナ
9 吹出口
13 可動羽根(羽根)
23 羽根駆動モータ
25 羽根動作検知手段
28 バネ部材
30 制御部
46 ヒータ