(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像撮像装置及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
A61B6/03 350U
A61B6/03 340Z
(21)【出願番号】P 2018171956
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】シャオチュアン パン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダン シア
(72)【発明者】
【氏名】ユービン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ マナーク
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-81101(JP,A)
【文献】特開2009-172380(JP,A)
【文献】特開2013-85955(JP,A)
【文献】特開2017-6640(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122613(WO,A1)
【文献】特開2007-97977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影データを用いて再構成された初期再構成画像において第一の関心領域(ROI)を設定する設定部と、
前記初期再構成画像における前記第一の関心領域に対応する領域を順投影して第一のROIサイノグラムデータを生成し、前記投影データと前記第一のROIサイノグラムデータとに基づいて、前記第一の関心領域に対応する第一のROI投影データと前記第一の関心領域に対応しない第一の非ROI投影データとを取得する取得部と、
前記投影データ、前記第一のROI投影データ、前記第一の非ROI投影データを用いて、前記第一の関心領域については第一の解像度を有し、前記第一の関心領域外の領域については前記第一の解像度より低い第二の解像度を有するマルチ解像度画像を再構成する再構成部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記再構成部は、前記第一の関心領域についての逐次近似再構成と前記第一の関心領域外の領域についての逐次近似再構成とを別々に実行する請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記再構成部は、
前記第一の関心領域についての変数及び前記第一の関心領域外の領域についての変数を調整して前記逐次近似再構成における一回目の第一の目的関数を最適化し、前記マルチ解像度画像をアップデートし、
前記第一の関心領域についての変数を調整して前記逐次近似再構成における二回目の第二の目的関数を最適化し、前記第一の関心領域外の領域についての解像度を維持しつつ前記マルチ解像度画像をアップデートする、
請求項2記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第一の目的関数は、第一の正則化項を含み、
前記第二の目的関数は、前記第一の正則化項とは異なる拘束条件を課す第二の正則化項を含む、
請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記再構成部は、前記第一の関心領域およびその外側の前記マルチ解像度画像を表すデータ忠実項と、前記第一の関心領域の前記マルチ解像度画像に課された拘束条件を表す第一の正則化項と、前記第一の関心領域の外側の前記マルチ解像度画像に課された拘束条件を表す第二の正則化項と、
を含む目的関数を最適化する逐次再構成法を用いて、前記マルチ解像度画像を再構成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記再構成部は、前記データ忠実項に関する拘束条件に従って前記目的関数を最適化することで、前記マルチ解像度画像を再構成する請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記再構成部は、複数の検出器素子を用いて得られた前記投影データをダウンサンプルして前記初期再構成画像を生成する請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、
前記投影データを、近傍ピクセルを含む複数のグループに分割し、各グループにおいてピクセル値を加算すること、
前記投影データを、近傍ピクセルを含む複数のグループに分割し、各グループにおいてピクセル値を平均化すること、
前記投影データのピクセルの値の補間を統合すること、
のうちの一つを実行することにより、前記ダウンサンプリングを実行する請求項7記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記設定部は、
前記初期再構成画像における空間的変動の局所的測定を実行し、
前記空間的変動の局所的測定の結果に基づいて、前記初期再構成画像において前記第一の関心領域を自動的に設定する、
請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記設定部は、ラプラシアン-ピラミッド法、ガウシアン-ピラミッド法、ウェーブレットに基づく手法、エッジ検出法、信号-処理法、フーリエ変換に基づく法、のうちの少なくとも一つを用いて、前記空間的変動の前記局所的測定を実行する請求項9記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記設定部は、ユーザからの指示に応答して、前記初期再構成画像において前記第一の関心領域をマニュアル設定する請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記再構成部は、投影角に対応する前記投影データが撮影対象の境界から境界までに対応しない場合には、前記投影データを補外して前記初期再構成画像を生成する請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記設定部は、前記初期再構成画像において、前記第一の関心領域とは異なる第二の関心領域を設定し、
前記取得部は、前記初期再構成画像における前記第二の関心領域に対応する領域を順投影して前記第二のROIサイノグラムデータを生成し、前記投影データと第二のROIサイノグラムデータとに基づいて、前記第二の関心領域に対応する第二のROI投影データと前記第二の関心領域に対応しない第二の非ROI投影データとを取得し、
前記再構成部は、前記第二のROI投影データと前記第二の非ROI投影データとを用いて、前記第二の関心領域については第三の解像度を有し、前記第二の関心領域外の領域については前記第三の解像度より低い第四に解像度を有するマルチ解像度画像を再構成する、
請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記再構成部は、前記初期再構成画像において設定された前記第一の関心領域と異なる第二の関心領域とが重複する場合には、前記第一の関心領域及び前記第二の関心領域の一方の内側にのみ属する領域の解像度が、前記第一の関心領域及び前記第二の関心領域の双方の内側に属する領域の解像度、及び前記第一の関心領域及び前記第二の関心領域の双方の外側に属する領域の解像度と異なるように、前記マルチ解像度画像を実行する請求項13記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
X線源と、
前記X線源から曝射されたX線を検出する複数の検出素子と、
前記複数の検出素子によって検出された投影データを用いて再構成された初期再構成画像において、第一の関心領域(ROI)を設定する設定部と、
前記初期再構成画像における前記第一の関心領域に対応する領域を順投影して第一のROIサイノグラムデータを生成し、前記投影データと前記第一のROIサイノグラムデータとに基づいて、前記第一の関心領域に対応する第一のROI投影データと前記第一の関心領域に対応しない第一の非ROI投影データとを取得する取得部と、
前記投影データ、前記第一のROI投影データ、前記第一の非ROI投影データを用いて、前記第一の関心領域については第一の解像度を有し、前記第一の関心領域外の領域については前記第一の解像度より低い第二に解像度を有するマルチ解像度画像を再構成する再構成部と、
を具備する医用画像撮像装置。
【請求項16】
コンピュータに、
投影データを用いて再構成された初期再構成画像において第一の関心領域(ROI)を設定させる設定機能と、
前記初期再構成画像における前記第一の関心領域に対応する領域を順投影して第一のROIサイノグラムデータを生成させ、前記投影データと前記第一のROIサイノグラムデータとに基づいて、前記第一の関心領域に対応する第一のROI投影データと前記第一の関心領域に対応しない第一の非ROI投影データとを取得させる取得機能と、
前記投影データ、前記第一のROI投影データ、前記第一の非ROI投影データを用いて、前記第一の関心領域については第一の解像度を有し、前記第一の関心領域外の領域については前記第一の解像度より低い第二に解像度を有するマルチ解像度画像を再構成させる再構成機能と、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、医用画像処理装置、医用画像撮像装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)システム(或いはコンピュータ断層撮影装置)および方法は、特に医用撮像および医用診断の為に、幅広く使用されている。CTシステムは、一般的に被検体の身体に関する一枚または複数の断面的なスライスの画像を作成する。X線源などの放射源は、一側面から身体にX線を照射する。身体と反対側にある少なくとも一つの検出器は、身体を通過した放射線を検出する。身体を通過してきた放射線の減衰は、検出器から受け取った電気信号を処理することで測定される。
【0003】
CTサイノグラムは、様々な投影測定に対する、検出器アレイに沿った位置の関数として、またX線源と検出器アレイとの間の投影角の関数として、身体を通過した減衰を示す。サイノグラムにおいて、空間的次元は、X線検出器のアレイに沿った位置を参照する。時間/角度次元は、CTスキャンの間の時間の関数として変化するX線の投影角を参照する。画像化されたオブジェクト(例えば椎骨)の部分から生じる減衰は、縦軸の周辺に正弦波を描く。回転軸から更に遠いオブジェクトの部分は、より大きな振幅での正弦波に一致し、当該正弦波の位相は、回転軸周辺のオブジェクトの角度位置に一致する。逆ラドン変換―また任意のその他の画像再構成法―の実行は、サイノグラムにおける投影データから画像を再構成することである。
【0004】
臨床アプリケーションにおいて、身体内の所定のサブ領域は、特定の患者の特定のスキャンに対して、より大きな意味を持つ可能性がある。例えば、インターベンショナルCTにおいて、ステントまたはその他の医用デバイスが患者に挿入されることがあり、当該医用デバイスの配置を直接取り囲む領域は、最重要領域である。この最重要エリアにおける高解像度を達成するのに、小さな直径のX線ビームは、CTスキャンに対する関心の関連する領域について、焦点を当てることが出来る。しかし、当該関心の小さな領域からの再構成画像は、裁断誤差(truncation error)という結果を招きかねない。他方で、大きな視野角での再構成画像は、解像度が乏しいか、または投影データから再構成するのに著しく長い時間および計算的リソースか、のどちらかをもたらす可能性がある。
【0005】
CTスキャンにおいて、裁断誤差およびアーチファクトは、小さな直径のX線ビームが患者の全体の横断面に比べて狭い領域を占める場合に生じる。X線ビームにより照射された関心領域(ROI)外側で入手できるのが不完全なデータなので、再構成は潜在的に画像を無駄にする深刻なアーチファクトに、見舞われることがある。これらのアーチファクトを減らすために、ROIの外側のデータを推定する、または決定することによる、いくつものアプローチが提案されてきた。
【0006】
例えば、アルゴリズムの第一のカテゴリがROIの外側のデータを推定することにより、ROIアーチファクトを解消するようと試みるものである。裁断されたデータを補外するために、技法を使用することが出来る。実施例の中には、補外手順はフィルタ補正逆投影(FBP)法の畳み込みステップへと組み込むことができ、またはROIの内側の再構成を改善するのに平滑化関数を使用することにより組み込むことができる。これらの推定されたまたは除去された投影は、ROIの外側のオブジェクトを厳密にモデルとしない可能性があり、残留アーチファクトという結果に繋がる。更に、これらの技法は、ROIの外側の画像情報を提供しない。当該画像情報により、臨床医(clinical practitioner)は、より容易に再構成画像の解釈することができ、ROIにおける画像に対する視覚的コンテキストを提供することが可能である。
【0007】
裁断アーチファクト課題を解決するための特定のその他の方法は、全撮像視野(Full Field Of View:Full FOV)に対応する第一のパスと、限定されたまたは制限された撮像視野を使用する第二のパスと、二つのパスを使用する。例えば、ROI画像再構成は、二つのパスのIRと、二つのパスの中間の一投影差分とを使用することによる逐次再構成(IR)を使用することで、実行することが出来る。この方法を実行するための二つの選択肢としては、(i)第一のパスにおいて粗いグリッドサイズを適用し、第二のパスにおいて細かいグリッドサイズを適用する、(ii)二つのパス両方で細かいグリッドサイズを使用するが、第二のパスでボクセル数の分だけ減らすことにより、縮小した画像ボリュームに適用する、である。二つのパスの方法は、裁断アーチファクトを減らすことが可能であるが、第二のスキャンを実行し追加での再構成ステップを実行するのに、複雑性が益し時間が掛かるという犠牲を払っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した補外法および二つのパス法は、画像を再構成するのに計算的時間を増やすことなく、裁断アーチファクトを十分に軽減することが出来ない。一方、例えば、臨床医が、患者の体内にステントまたは医用デバイスの位置決めや配置などの課題に対する撮像に基づく高速フィードバックに頼るような臨床的なアプリケーションにおいては、計算的時間を増やすことは非現実的であると言える。
上記事情に鑑み、効率的なマルチスケール画像再構成を実現することができる医用画像処理装置、医用画像撮像装置及び医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、投影データを用いて再構成された初期再構成画像において第一の関心領域(ROI)を設定する設定部と、前記初期再構成画像における前記第一の関心領域に対応する領域を順投影して第一のROIサイノグラムデータを生成し、前記投影データと前記第一のROIサイノグラムデータとに基づいて、前記第一の関心領域に対応する第一のROI投影データと前記第一の関心領域に対応しない第一の非ROI投影データとを取得する取得部と、前記投影データ、前記第一のROI投影データ、前記第一の非ROI投影データを用いて、前記第一の関心領域については第一の解像度を有し、前記第一の関心領域外の領域については前記第一の解像度より低い第二に解像度を有するマルチ解像度画像を再構成する再構成部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の理解をより完全なものにするには、添付の図面に関連して検討する際に、以下の詳細な説明を参照することで、もたらされよう。
【
図1】一実施例に係る、マルチ解像度逐次再構成(IR)法の第一の実行のフロー概要図を示している。
【
図2】一実施例に係る、投影データから生成された投影画像および再構成画像における高解像度領域と低解像度領域とを示している。
【
図3】一実施例に係る、関心領域(ROI)の低周波数領域と高周波数領域とが再構成画像に重畳された、再構成画像の例を示している。
【
図4】一実施例に係る、ROIのマルチ低解像度とROIのマルチ高解像度とが再構成画像に重畳された、再構成画像の例を示している。
【
図5】一実施例に係る、画像ドメインにおけるROIの高解像度を投影ドメインへと順投影することを実行するステップのフロー概略図を示している。
【
図6】一実施例に係る、画像ドメインにおけるROIの内側および外側の異なる解像度(つまり、ピクセルピッチ)を使用してマルチ解像度画像を再構成/再改良するためのステップのフロー概略図を示している。
【
図7A】一実施例に係る、三次元オブジェクトOBJを二次元検出器アレイへと投影する例の概略図を示している。
【
図7B】投影データを生成するのに、頭部ファントムを二次元検出器アレイへと投影する例の概略図を示している。
【
図7C】ROIの投影を決定するのに、画像ドメインROIを投影ドメインへと順投影する例の概略図を示している。
【
図7D】頭部ファントムの投影データ上に重畳されたROIの投影を示している。
【
図8】ROIの内側および外側のピクセルピッチの比が2の場合に、画像ドメインROIの投影から投影ドメインROIが決定されている例を示している。
【
図9】ROIの内側および外側のピクセルピッチの比が4の場合に、画像ドメインROIの投影から投影ドメインROIが決定されている例を示している。
【
図10】一実施例に係る、フラットパネル検出器(FPD)上へのX線投影測定の概略図を示している。
【
図11A】インターベンショナルな臨床アプリケーションにおいて使用されている、ステントの再構成画像の横断面の再構成画像を示している。
【
図11B】ステントの側面の投影画像を示している。
【
図12】大脳皮質と頭蓋との間の空間に、くも膜下出血が存在している頭部の再構成画像の例を示している。
【
図13】一実施例に係る、画像を様々な解像度の四つの領域へと区切っている例を示している。
【
図14】一実施例に係る、マルチ解像度IR法の第二の実行のフロー概略図を示している。
【
図15】CTスキャナの実施例の概要図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
コンピュータ断層撮影(CT)およびコーンビームCT(CBCT)、関心領域(ROI)再構成は、指定されたROIにおける高解像度画像を取得するのに使用される。当該技法は、拡大されたROI再構成(ズーミング再構成)とも呼ぶことが出来、拡大されたROI再構成は、指定されたROIでの解剖学的特徴の表現について小さな画像ボクセルサイズを使用する。更に、特定の実施例で、ROI再構成は、粗解像度画像およびROIの外側の領域に対する情報も生成出来る。ここに説明される方法および装置は、とりわけ、ROIにわたり投影する領域に対して使用されるピクセルピッチに関連するROIの外側の領域に対応する投影データに対する異なるピクセルピッチを使用することで、より従来的な方法に勝るコンピュータ的利点またその他の利点を提供する。対照的に、より従来的な方法は、シングルCTスキャンに対する投影データにおけるマルチピクセルピッチを使用しない。更に、ここに説明される方法は、二つのパス方法で使用されるようなマルチプルスキャンではなく、シングルスキャンに基づいて逐次再構成を使用してROI再構成を実行する。
【0013】
逐次再構成(IR)を使用するCTにはありがちなことであるが、画像化されるオブジェクトOBJの全体が、CTスキャナの画像ボリュームの範囲である。この事が、裁断効果を弱める。しかし、高解像度画像が再構成された場合に、画像化された領域を小さなROIにまで減らすことは、オブジェクトOBJの画像を再構成するための計算的な負担を減らすことに繋がる。別の場合、特にROIに対する高解像度再構成を所望の場合、また同じように高解像度が再構成画像の全体的なボリュームに対して使用される場合には、高画質な画像を再構成するのに要する時間が途轍もなく掛かる可能性がある。
【0014】
逐次画像再構成に対する計算的な時間は、順投影演算および逆投影演算によって、その多くが占められている。これは、よくIRアルゴリズムが逐次の多重ステップを使用して再構成画像へと収束するからであり、この多重ステップの各ステップは、一回の順投影演算と一回の逆投影演算との両方を含むことが可能である。これらの二つの演算のそれぞれに対する浮動小数点数は、画像ドメインにおけるボクセル数に、投影/サイノグラムドメインにおけるピクセル数を掛けたオーダーになる可能性がある。ここで使用される、「サイノグラムドメイン」および「投影ドメイン」という用語は、代替可能に使用される。この様にして、画像または投影ドメインのサイズを変えることなく、解像度の倍増することは、各順および逆投影演算に対する計算的な時間において2の5乗、つまり32倍、計算的な時間における増加という結果になる可能性がある。
【0015】
従って、細かい(高い)解像度での大きな画像ボリュームに対して計算的な複雑性は急激に増大する可能性があり、これが、臨床アプリケーションに対し、ROIを最小化しながらも、高解像度がROIに対して所望される所以である。しかし、上で述べた通り、ROIがオブジェクトの部分を除去した場合に、裁断アーチファクトは、撮像領域から締め出された当該オブジェクトの部分に属する未知のX線減衰から生じている。
【0016】
全撮像視野(FOV)投影データは、ROIから除外されたオブジェクトOBJの領域に対するX線減衰についての情報を提供するのに使用することが出来、この様にして裁断アーチファクトを除去する。結果的に、フルFOVが投影データに表された場合に、オブジェクトOBJの全体が、IRにおいて順投影および逆投影演算で表され、裁断効果は弱められる。インターバルX線放射線学で使用されるコーンビームCT(CBCT)など高解像度撮像において、投影データに対する固有の検出器解像度は、かなり高い可能性がある、つまり、最も近くに近傍するピクセル間の距離として定義されている小さなピクセルピッチの可能性がある。
【0017】
固有の検出器解像度を伴う全FOV投影データは、特に画像ドメインにおける小さなROIのみが、固有の解像度を基に可能な限り最も高い解像度を求める場合に、高い計算的負荷を課すことがある。この様にして、全FOV画像は、固有の解像度からより粗い検出器解像度(つまり、大きなピクセルピッチ)へと投影データをダウンサンプリングすることによって、再構成することが出来る。当該ダウンサンプリングは、例えば、大きなピクセルに対応するグループへとピクセルをグループ分けすることによって(例えば、四つの固有のピクセルを2×2の正方形に、または六つの固有のピクセルを2×3の長方形に、それぞれグループ分けすること)、また粗分解能ピクセルに対応するダウンサンプリングされた投影データを決定するのに、固有のピクセルの各グループ分けにおいて、個別の固有のピクセルに対する信号強度/カウント値にわたって平均化することによって、達成することが出来る。
【0018】
代わりに、粗い投影データの任意のサイズ、形状、次元を、任意の既知の補間、補外、および/または統合法を使用して、固有の解像度グリッドから粗い解像度グリッドへとマッピングすることにより、取得しても良い。画像ドメイン解像度に対し同程度の変化の2のピクセル―ピッチ比だけ投影データをダウンサンプリングすることは、順投影および逆投影演算を実行する計算的時間における2の5乗、つまり32のファクターの減少という結果になることがあり、結果的にIRアルゴリズムに対する抜本的な効率性の向上に繋がる。
【0019】
ROIにおける高解像度を達成しながらも、全FOVでの後続画像再構成の両方を達成するためには、画像ドメインは、米国特許番号8,625,870において述べられている通り、ROIの外側の低解像度領域およびROIの内側の高解像度領域へと区切ることが出来るが、ここに当該番号を記載することで、当該案件全体を組み込むものとする。しかし、IRアルゴリズムの効率性は、単に画像ドメインを高および低解像度領域に区切ることだけでなく、サイノグラムドメインも区切ること、つまり投影データを高および低解像度領域に区切ることで、更に高めることが出来る。ダウンサンプリングがピクセルピッチにおいて2の変化のファクターによって実行される例に戻り、ボクセルのピッチのみ(ボクセルは、画像ドメインにおけるボリュームピクセルである)を変えることは、2の3乗、つまり8のファクター分、計算的負担を減らす。2の5乗、つまり32のファクター分が合計で改善することは、画像ドメインにおけるボクセルおよび投影データにおけるピクセルの両方が、2の比でピクセル-ピッチによりダウンサンプルされる必要がある。
【0020】
次に、図を参照しながら、本実施形態について説明する。以下、図において、同じ参照番号は同一のまたは様々な図を通して対応する部分を指し示すものとする。
【0021】
図1は、ROIの外側のピクセルおよびボクセルに対する画像ドメインおよびサイノグラムドメインの両方におけるダウンサンプルされた領域を使用するIR法のフロー概略図を示すものである。
図2は、ROIに対応する領域における固有の解像度で、またROIの外側の領域に対する4のピクセル-ピッチ比によりダウンサンプルされた、画像ドメインにおけるボクセルおよび投影データにおけるピクセルの両方の例を示すものである。簡潔にするために、
図2は、画像ドメインおよびサイノグラムドメインにおける単一の高解像度(HR)領域のみを示している。一般的に、多重高解像度ROIは、後に説明される通り、全FOVにおいて選択することが出来る。更に、各ROIに対する解像度は、ROIに表された解剖学的特徴のタイプと、所定の臨床アプリケーションに対する所望の解像度と、に従って、別々に特定が出来る。多重高解像度ROIを取得するためには、ここで述べられる通り、個別のROIにおける高解像度は、ボクセルおよびピクセルの両方に対する低解像度で全体のFOVを初期化すること、投影ドメインにおいて細かい解像度を課すこと、また画像ドメインにおける解像度を再改良するのにIRアルゴリズムを逐次的に解くこと、により、達成することが出来る。一つ以上のROIが全FOVにおいて指定された場合に、ROIにおける改善された解像度は、ここに述べられる通り、連続的にまたは並行して達成することが出来る。連続的な場合、サイノグラムドメインおよび画像ドメインの両方における粗から細への切り替えは、現在のROIの解像度が次のROIへと移動してしまう前に、またIR法を使用して次のROIにおける解像度を改良する前に、IR法にわたって改良されるように、個別のROIのそれぞれに対して連続して実行される。
【0022】
図1に戻り、方法100は、オブジェクトOBJのマルチ解像度再構成を実行する。
【0023】
方法100のステップ110において、投影データが取得される。当該投影データは、ここで説明される様なCTスキャナを使用してCTスキャンやX線循環器装置による回転CアームコーンビームCT撮影などなどを実行することにより、取得することが可能である。また、投影データは、コンピュータメモリから以前に取得された投影データを呼び戻すことで、取得しても良い。当該取得された投影データは、CTスキャナのX線検出器の固有の解像度の可能性がある。
【0024】
方法100のステップ120において、初期再構成画像を決定することが出来る。当該初期画像は、ダウンサンプルされた投影データを使用して、またダウンサンプルされた投影データと同程度である初期画像に対する画像解像度を使用して、生成することが可能である。当該初期画像は、フィルタ補正逆投影(FBP)法、フェルドカンプ-デイビス-クレス(FDK)再構成法、そして例えば最小二乗または罰則付き重み付けられた最小二乗データ忠実項および正則化項を伴う目的関数を使用するIR法を含む、任意の公知のCT再構成法を使用して生成することが出来る。IR法を使用する特定の実施例において、当該IR法は、収束まで実行し続けるのではなく、所定数の逐次の実行が出来る。また当該IR法は、順序サブセット、ネステロフの加速、そして分離可能二次サロゲートを含む、収束を改善する様々な加速法やその他の技法も使用出来る。更に、当該IR法は、FBPまたはFDK再構成画像を使用して初期化が出来る。当業者には公知のCT再構成法の様々な組み合わせも使用しても良い。
【0025】
上で説明した通り、投影データのダウンサンプリングは、細分解能ピクセルを、ダウンサンプルされたデータの粗分解能ピクセルに対応するピクセルグループへとグループ分けし、その後粗分解能ピクセルの値を生成するのに細分解能ピクセルの個別のピクセルグループの値を平均化または合計することにより、達成することが出来る。代わりに、細分解能ピクセルを、補間、補外、および/または細分解能グリッドから粗分解能グリッドへの統合を使用して、粗分解能ピクセルに対するグリッドまたはその他のピクセルパターンへとリサンプルしても良い。
【0026】
方法100の130において、ROIは、初期画像において決定することが出来る。当該ROIは、高解像度での画像再構成が所望される領域の可能性がある。当該ROIを決定するための処理は、臨床的関連の特徴および/または領域を決定するのに、自動化することも出来るし、または、例えばグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を使用して、ユーザ入力(マニュアル設定)を含む、ことも出来る。例えば、ROIの自動化された決定は、臓器や骨の間の境界など、高程度の高空間周波数(HF)含有量を有する領域を決定するのに、エッジ検出法を使用することも含むことが出来る。これらの高周波数領域は、均一に低空間周波数(LF)の内容での領域に比べて、より高解像度での画像再構成の恩恵を受ける。ROIは、三次元の形状か、または所定の長さを第三の次元に沿って押し出した二次元の形状とすることが出来る。特定の実施例において、ROIはしきい値および領域成長法を使用して決定することも出来る。所定のしきい値を上回るエッジまたは高周波数測定に対応するピクセルは、しきい値および領域成長法をシードすることが出来る。
【0027】
様々なROIがそれらに対応するピクセルピッチで決定された後に初期画像のボクセル値は、各個別のROIにおける所望のピクセルを有するボクセルへの補間を使用して、
図2に示されたようにマッピングすることが出来る。
【0028】
様々なエッジまたは高周波数測定は、高解像度がピクセルの所定の近傍に対して適切であるという印として、使用が出来る。例えば、初期画像と導関数との間の畳み込みの絶対値は、導関数の測度を生成するのに各ピクセルの近傍における平均減衰によって、規格化することが出来る。当該微分の測度は、減衰において著しく空間的変分を示している初期画像の領域において、更に大きくなることだろう。
【0029】
更に、高解像度画像から恩恵を受けることの出来る領域の別の測度は、局所平均によって規格化された空間的な窓のある標準偏差を使用して生成が出来る。当該規格化された標準偏差は、高いテクスチャ領域の測度を提供する。
【0030】
同様に、パワースペクトラル密度の空間的な窓があり且つ平均の周波数は、どの領域が高いテクスチャであるかについても提供することだろう。また、ウェーブレットに基づく変換の高周波数成分により表された減衰率は、高い解像度から恩恵を受けている領域を示す測度を同じように提供するだろう。これは、再構成画像(例えば、ガウスまたはラプラシアンピラミッド分解またはウェーブレット変換分解)のピラミッド分解に基づく方法、信号-処理法、フーリエ変換に基づく方法、その他の測定に対しても、当てはまる。高い空間的変動を示す領域の多くのその他の測度についても、当業者によって検討されている。任意のエッジ検出法、または異なる領域でのテクスチャ、または空間的変動/構造における(例えば局所的測定の)差を検出するための方法を使用することが出来る。
【0031】
特定の実施例において、例えば、デノイジングまたは平滑化の影響を受けやすい画像の領域に対しては、残る領域に高解像度を割り当てることが可能な一方で、粗解像度を割り当てることが可能な様に、低および高解像度画像の選択は、初期画像を解析することで決定することが出来る。
【0032】
更に、異なる正則化には、当該正則化の決定された統計的特性に従って、様々な領域において割り当てることが出来る。例えば、高解像度領域において、エッジ保存またはエッジ強化正則化を適用することが出来る一方で、粗解像度領域において平滑化正則化を適用することが出来る。特定の実施例において、全ての領域は、同じ正則化、例えば全変分(TV)最小化正則化を、使用する。
【0033】
特定の実施例において、専用GUIが、初期画像における低および高解像度の領域の選択に対して使用することが出来る。当該専用GUIは、初期画像の表示が可能で、ユーザは、GUIにおいて高解像度のROIの特定が可能となる。
【0034】
更に、特定の実施例において、ユーザは、GUIにおける低解像度のROIの特定も出来る。
【0035】
特定の実施例において、マルチ解像度へのセグメンテーションは、ユーザからの事前入力を使用して、または初期設定を使用して、自動的に実行することが出来る。これらの入力および/またはデフォルト設定に基づいて、画像セグメンテーションの基準は、高(低)解像度の領域の決定に対して、設定される。画像セグメンテーションの様々な技法が、高解像度領域の対象を見つけ出すための基準に基づいて、実行が出来る。これらの技法は、自動または半自動技法の両方を含むことが可能である。半自動でのアプローチが適用された場合に、GUIは、初期値またはクロッピングした結果がユーザによって提供出来るように、含むことが出来る。
【0036】
まず特定の実施例において、ラプラシアン-分解アプローチを使用出来る。当該ラプラシアン-分解アプローチでは、ラプラシアンフィルタは、初期画像について解析フィルタバンク演算として使用され、サブバンド構造のラプラシアンピラミッドという結果となる。各サブバンドボリューム画像は、相互作用的な再構成を使用して処理が可能であるが、スケールに関連したピクセルピッチを伴う。より詳細な画像特徴を有する、高周波数サブバンドの再構成は、低周波数サブバンド再構成が粗グリッドを用いる一方で、小さなピクセルピッチを用いる。最終的な出力は、再構成されたサブバンド画像の合成である。
【0037】
次に特定の実施例において、ウェーブレットに基づくアプローチを使用出来る。ラプラシアン分解アプローチと同様、ウェーブレット変換も初期画像に適用が出来、サブバンド構造のウェーブレットピラミッドを形成する。高解像度での特徴は、低解像度領域が低周波数サブバンドから再構成される一方で、細解像度グリッドを用いることで、高周波数サブバンドから再構成される。
【0038】
図3は、HF ROIが指定された再構成画像の横断面である。また、
図3は、当該HF ROIに比べてより粗い解像度を使用する、LF ROIも示している。方法100は、解像度の二つのレベルのみに拘泥されることなく、マルチ解像度が様々な領域で使用することが可能である。例えば、高解像度は、臨床的に関連するとして指定された、またはHF ROIとして指定された領域に対して、適用することが出来る一方で、中解像度は未指定の領域に適用することが出来て、低解像度はLF ROIとなるよう指定された領域に指定が出来る。
【0039】
図4は、二つのHF ROIおよび二つのLF ROIが特定された再構成頭部画像の横断面スライスを示している。当該二つのHF ROIは、同じ解像度を有しても良いし、異なる解像度を有しても良い。同様に、当該二つのLF ROIは、同じ解像度を有しても有さなくても良い。この様にして、マルチ解像度を適用することが出来る。例えば、所定のROIにおける解像度は、最適な解像度を達成するのに自動で調整が可能である。ROIにおける検出されたエッジの変化率が、ROIにおけるピクセルピッチの解像度限界とほぼ等しいことが決定された場合に、当該ピクセルピッチがHF ROIまたは固有の解像度における最も鮮明な特徴を解像するのに十分になるまで、当該ピクセルピッチは、X線検出器の固有の解像度へと次第に減る。
【0040】
特定の実施例において、ROIにおける現在のピクセルピッチがその他の特徴ではないが多少の特徴を解像するのに十分な場合に、サブROIはROIにおいて決定することが可能で、当該サブROIは、小さなピクセルピッチを要求する多少の特徴に対応する。その場合に、当該小さなピクセルピッチは、サブROIへと適用が出来、IR法は、サブROIにおけるエッジや詳細な特徴を解像するために、サブROIにおける解像度を改良するのに実行することが出来る。更なる確認および検査が、上に説明されたエッジおよび構造測定を使用して、例えば小さなピクセルピッチがサブROIにおける最も詳細な特徴を解像するのに十分かどうかを決定するのに実行することが出来る。これらの特徴を解像するのに、より詳細な解像度を要求される場合があっても、サブROI全体におけるピクセルピッチを、更に減らすことが出来る。
【0041】
代わりに、サブROIにおけるいくつかのエッジおよび特徴が、その他のエッジおよび特徴が十分に解像されない一方で、サブROIにおいて十分に解像された場合に、当該サブROIはサブのサブROIを取得するのに更にサブ分割をすることが出来、ROIにおけるすべての特徴が十分に解像される、または固有の解像度に達するまで、続く。この逐次処理は、以下に説明するように停止基準が満たされるまで、ステップ130、140、150、155を逐次的に繰り返すことで、実現が可能である。
【0042】
方法100のステップ140において、画像ドメインにおける様々なROIが、サイノグラムドメイン上へと順投影される。
図5は、画像ドメインからサイノグラムドメインへとROIを順投影するための、ステップ140の一実施例のフロー概要図を示している。更に、
図7A、7B、7C、7Dは、画像ドメインからサイノグラムドメインへの順投影を図示し、
図8、9は、当該順投影に基づいて、サイノグラムドメインにおけるどのピクセルが、サイノグラムドメインROIの内側か、そしてどれがサイノグラムドメインROIの外側か、の決定を描いている。
【0043】
再構成画像f、投影データg、は、システムマトリクス方程式により、以下の式(1)ように関連付けられる。
【数1】
ここでAは順投影演算子/マトリクスであり、検出器面上へのオブジェクトOBJのラドン変換または投影を表している。特定の実施例において、この順投影演算子Aは、「レイ-ドリブン(ray-driven)順投影」として呼ぶことが出来る。対応する「ピクセル-ドリブン逆投影」Bも、定義出来る。
図7Aは、空間プロフィールfを有するオブジェクトを検出器アレイ上へとfを順投影するために、オブジェクトを横切るX線の物理的な仕組みを描き、投影画像gを生成している。
図7Bは、頭部ファントムの順投影を示し、
図7Cは、順投影されているファントムの脊髄の部分に対応するROIを示す。最後に、
図7Dは、ファントムの順投影および画像ドメインROIの画像ドメイン上への順投影の間の重なり(重畳)を描いている。
【0044】
図7Aは、CT撮像に対する投影の測定の幾何学を示す。位置の関数としてのX線減衰に対するオブジェクトOBJは、X線が検出器アレイによって検出される前にオブジェクトOBJを横切るように、関数f(X,Y,Z)によって与えられる。X線ビームは、Z軸に関連して投影角度φであるz軸に沿って伝播する。各当該画像において、X線は、画像化されるオブジェクトを通過し、当該X線が検出器アレイにぶつかるまで伝播し続ける。検出器アレイは、検出器アレイにわたる離散的な位置でX線強度を検出するのにピクセルのアレイを含むことが出来る。これらの測定は、画像オブジェクトOBJのCT画像を作り出すのにコンピュータメモリを使用して記録され後に処理される、検出器にわたって投影された強度/減衰g(x’,y’)のマップを生じさせる。
図7Aにおいて、検出器は画像ボリュームの最も近い境界からの距離dであるように示されている。軸x,y,zは、オブジェクトOBJの座標系を定義する一方で、軸X,Y,Zは、オブジェクトOBJに関して回転するX線スキャナの座標系を定義し、x’とy’は、X線検出器に対するピクセルアレイの座標を定義する。
【0045】
図7Bは、頭部ファントムからの投影画像の生成を示しており、
図7Cは、ROIを検出器アレイのピクセルに対応する投影面へと順投影することで画像ドメインROIのバーチャル投影を示している。
図7Dは、頭部ファントムの投影画像にわたるROIの投影の重畳を示している。高解像度再構成画像を生成するために、ROIの投影は、より大きなピクセルピッチが所望されるピクセルと重なるということが、見て取れる。他方、高解像度投影データは、ROIの投影と重なっているピクセルに対しては必要ではない。その理由は、これらのピクセルは、再構成画像の低解像度の部分と対応するからである。
【0046】
特定の実施例において、粗解像度ピクセル(つまり、サイノグラムドメインROIの外側のピクセル)は、画像ドメインROIの投影と重ならない、あれらの粗解像度ピクセルであるとして、決定され、当該サイノグラムドメインにおけるROIは、投影データの残りのピクセル全てを含む。サイノグラムドメインにおけるROIは、
図8や9に示されている通り、小さなピクセルピッチを有することになるだろう。
図8と9において、円周は、画像ドメインROIのサイノグラムドメイン上への投影を表している。
図8は、サイノグラムドメインの内側と外側との間のピクセルピッチの比は、2であり、一方で
図9は、上記比は、4である。ROIの外側の粗解像度ピクセル(つまり、白色領域)は、
図8および9に示されたグリッドの左上の角に示された個別の解像度を有する一方で、ROIを伴うピクセル(つまり、灰色領域)は、グリッドにより表された小さい解像度を有する。
図8および9において、サイノグラムドメインROIの境界は、粗解像度ピクセルと画像ドメインROIの投影との間の全ての重なり合いを除去するように選択される。
【0047】
代わりに、サイノグラムドメインROIの境界は、所定の比以上の分だけ、画像ドメインROIの投影と重なり合う粗解像度のピクセルのみを除外するよう選択することが出来る。
【0048】
特定の実施例において、画像ドメインROI内側のボクセルは、所定値(例えば、1の値)を割り当てられており、画像ドメインROI外側の領域には、別の所定の値(例えば、0の値)が割り当てられている。その場合に、サイノグラムドメインROIは、値の所定の範囲内(例えば、0以上、1、または10)にあるピクセルの順投影値のみを含むように決定することが出来る。
【0049】
サイノグラムドメインROIにおける投影データのピクセル値は、例えばX線検出器の固有の解像度を伴う投影データを使用して取得することが出来る。この様にして、マルチ解像度投影データが生成出来るのである。
【0050】
図5は、ステップ140の一実施例のフロー概略図を示している。
【0051】
ステップ140のステップ510において、HF-ROI投影(つまり、画像ドメインROIの投影)を生成するのに画像ドメインHF-ROI(つまり、画像ドメインROI)が順投影される。
【0052】
ステップ140のステップ520において、HF-ROI投影を伴う所定の重複比を有する粗解像度ピクセルは、HF-ROI(つまり、サイノグラムドメインROI)の部分であるとして、特定される。
【0053】
ステップ140のステップ530において、投影データに対するグリッドは、サイノグラムドメインROIにおける高解像度ピクセルピッチを有して決定される。その場合に、サイノグラムドメインROIにおける投影データは、例えば固有の検出器解像度を有する投影データを使用して、この高解像度ピクセルピッチと釣り合った高解像度を有するように投入される。
【0054】
方法100のステップ150において、画像ドメインにおけるROIの解像度は、マルチ解像度投影データを使用してIR法を実行することにより、改良される。マルチ解像度データに対するシステムマトリクスは、低および高解像度部分へと二分することが出来、以下の式(2)のように表すことができる。
【数2】
ここでf
Hは高解像度を有し画像ドメインROIの内側である再構成画像であり、f
Lは低解像度を有し画像ドメインROIの外側である再構成画像であり、g
Hは高解像度を有しサイノグラムドメインROIにある投影データであり、g
Lは低解像度を有しサイノグラムドメインROIの外側にある投影データである。
【0055】
特定の実施例において、高および低お解像度再構成画像を最適化するための逐次は、別々に実行することが出来、また一旦低解像度再構成画像が安定した解へと収束したら、当該低解像度再構成画像は、IR法が引き続きROI内側の高解像度再構成画像を最適化する一方で、一定を維持出来る。例えば、分離された低解像度画像再構成問題は、以下の式(3)の様に表すことができる。
【数3】
加えて、分離された低解像度画像再構成問題は、以下の式(4)の様に表すことができる。
【数4】
更に、異なる正則化項が低および高解像度画像f
Lおよびf
Hに対して、使用することが出来る。任意の既知の方法が、対応する目的関数とそれらの目的関数に対応するデータ忠実項および正則化項とを最適化するのに使用が出来る。
【0056】
特定の実施例において、データ忠実項あるいは正則化項は、最適化項よりも拘束条件として、操作することが出来る。
【0057】
特定の実施例において、高および低解像度画像の両方を組み合わせる目的関数の最小化は、次の式(5)によって与えることができる。
【数5】
ここで合計目的関数は、次の式(6)で与えることができる。
【数6】
U
H(f
H)は、高解像度画像に対する正則化関数であり、U
L(f
L)は、低解像度画像に対する正則化関数であり、Tは、マトリクス移項であり、β
Hおよびβ
Lは、関連する重みを目的関数における正則化項へと適用する個別の正則化拘束条件である。
【0058】
特定の実施例において、高および低解像度正則化関数は、同じであってもよいし、また更には単一の関数へと統一してもよい。任意の既知の正則化関数を使用してよい。
【0059】
特定の実施例において、別々の高および低解像度目的関数は小さくすることが出来、IR法は、高および低解像度目的関数の最適化間を逐次することが出来る。また、安定した解は、低解像度画像に対して取得された後に、高解像度目的関数は、独立して最適化することが出来る。高解像度目的関数は、次の式(7)によって与えることができる。
【数7】
低解像度目的関数は、次の式(8)によって与えることができる。
【数8】
【0060】
図6は、ステップ150の一実施例のフロー概略図を示している。
【0061】
ステップ150のステップ610において、マルチ解像度画像は、第一の目的関数、または目的関数の組み合わせを最小化することで、最適化される。例えば、φTotalは、所定の逐次数に対して、または低解像度画像が収束基準を満たし安定するまで、最小化することが出来る。代わりに、φHおよびφLの組み合わせは、所定の収束基準を満たすために、逐次的に最小化出来る。特定の実施例において、ステップ610ではφLのみが最小化される。
【0062】
ステップ150のステップ620において、マルチ解像度画像は、一枚または複数枚の追加の目的関数を最小化することで、更に改良される。例えば、φHは、独立して最小化することが出来る。
【0063】
代わりに、新たなサブROIは、ROIに比べてより更に小さいピクセルピッチで定義することが可能で、サブROIに対する新たな目的関数は、サブROIの外側のその他の領域全てが一定の状態を保つ一方で、最小化することが出来る。
【0064】
更に、特定の実施例において、マルチROIおよびマルチ解像度が可能で、各ROIは、各ROIの対応する目的関数を有することが出来る。その場合に、これらのROIのそれぞれに対する目的関数は、上で説明された通り、並行してまたは連続してのどちらかで、最小化することが出来る。
【0065】
一般的に、画像および投影データのためにマルチ解像度を使用して逐次再構成することは、別々の逐次再構成の融合として、観察することが可能で、別々の逐次再構成は、それぞれ個別のROIにおける画像に対し、また個別のROIにおける投影データに対し、異なる解像度をそれぞれ含んでいる。上での説明も、当業者には理解されている通り、高解像度での二つ以上の解像度および/または一つ以上のROIの場合へと、簡単に拡張することが出来る。更に、IR法において適用されたパラメータは、各ROIをそれらが独自の画像、投影データ、解像度での個別の再構成問題として取り扱うことにより、各ROIに対して個別に調整することが出来る。
【0066】
レイードリブン順投影の実施例は、レイと個別のボクセルとの間の重複を決定することで、所定のピクセル上への所定のレイ照射に沿って、個別のボクセルの寄与を計算することにより、達成することが出来る。この様にして、レイ積分への関連する寄与は、レイが通過する個別のボクセルのサイズ/解像度に依存する(例えば、高解像度ボクセルは、小さくなり且つ比例して寄与がより少なくなる可能性があるが、しかしこれは長さの関数としての寄与が保たれるように、高解像度ボクセル数が比例して寄与がより大きくなるという事実によってオフセットされる)。
【0067】
同様に、ピクセルの個別のボクセルへの寄与を表す、ピクセル-ドリブン逆投影は、当業者には理解されている通り、逆投影演算の個別のマトリクス要素によってあらわされた高によって表された、ボクセルおよびピクセルのサイズ/重複にも依存する可能性がある。この様にして、ピクセル-ドリブン逆投影の実施例に対し、画像ROIにおける各ボクセルは、個別のピクセルへのX線源からの例のボリュームに従って、逆投影される(例えば、このボリュームは、対応するピクセルの横断面エリアにおおよそ比例する可能性がある)。
【0068】
図1へと戻って、方法100のステップ155において、停止基準が満たされたかどうかの紹介が実行される。当該停止基準が満たされていない場合、方法100は、ステップ155からステップ140へと進み、ステップ130から開始しステップ150まで継続する逐次ループが、繰り返される。そうでなければ(停止基準を満たせば)、方法100は完了である。
【0069】
特定の実施例において、ステップ130が繰り替えされた場合に、HR ROIの決定は、初期画像についてではなくマルチ解像度画像について実行され、サブROIは、ROIにおいて定義することが出来る。この様にして、ROI、サブROI、そしてサブのサブROIは、入れ子になった方法で、一方を他方のものの上に構成することが出来る。より小さなピクセルピッチがマルチ解像度再構成画像の画質を大いに改善しそうもない場合、係る停止基準は、より小さなピクセルピッチを使用することでROIにおける特徴をより鮮明にレンダリングすることが出来るかどうかを問い合わせる解像度基準を含むことがきる。例えば、当該照会は、マルチ解像度再構成画像および固有の解像度投影データの順投影の間の差を使用して、実現が出来るかもしれない。差が大きな領域においては、これらの領域における特徴が解像中であることを示すことが出来、また、次の逐次の間に、より高い解像度(最大で固有の解像度まで)がこれらの解像中の領域へと適用出来る。
【0070】
特定の実施例において、投影データにおけるピクセルピッチおよびマルチ解像度画像が、X線検出器の固有の解像度に達した場合に、停止基準を満たすことが出来る。
【0071】
また特定の実施例において、IR法の最大逐次数に達した場合に、停止基準を満たすことも出来る。
【0072】
方法100は、従来的な方法に勝る利点がいくつもある。第一に、再構成画像領域における領域に対する解像度は、IR法の逐次にわたって一定の可能性があるという点である。第二に、当該IR法において使用されるパラメータも、IR逐次にわたって一定の可能性がある点である。この点は、例えば、画像解像度がIR法の第二のパスに対して変更される場合に、異なるセットのIRパラメータが必要とされる二つのパスROI IR法と対比する。第三に、ROIの外側の画像情報が、マルチ解像度画像においても維持されて、ROIにおいて生体構造が表示されるためのコンテキストを提供するのに、粗解像度ではあるものの、表示出来るという点である。第四に、ROIの外側の画像/データに対する計算オーバーヘッドが大いに減る点である。第五に、異なる解像度でのマルチROIが再構成出来る点である。第六に、ROIが減衰するオブジェクトOBJに比べてずっと小さい場合であっても、裁断アーチファクトを最小化することが出来る点である。
【0073】
次に、画像ドメインおよびサイノグラムドメインにおけるマルチ解像度表示の両方を使用してマルチ解像度画像再構成法の、例示的な臨床的アプリケーションおよび実行が提供される。
【0074】
特定の実施例において、IRアルゴリズムは、臨床的コンピュータ断層撮影(CT)で使用される。例えば、IRアルゴリズムは、放射線量を低減し画質を改善することによる、臨床的アプリケーションにおける利点が明らかにされている。例えば、インターベンショナルな処置のための回転CアームコーンビームCT(CBCT)において、低コントラスト撮像(CTに似た撮像としても呼ぶことが出来る)および三次元デジタル差分血管造影法(3D-DSA)などの三次元撮像特徴は、画質を改善しアーチファクトを低減するIRアルゴリズムを使用しての画像再構成の利点から恩恵を享受出来る。GPU技術の急速な発達により、IR画像を生成するのに要する計算的時間は、インターベンショナルな処置の間に臨床的に実行可能なまでに、著しく低減している。これは、インターベンショナルな処置について、情報が臨床的処置に対する決断を誘導する上で有益な情報となりそうな場合に、その様な情報を素早く利用可能にする必要があるから、重要なのである。臨床的CTとは違い、フラットパネル検出器(FPD)に備え付けられたC-アームCBCTは、二次元撮像を行い、操作室において状況に即した角度にまで回転するために、適応性が高く且つ可動式になるよう考案されている。更に、FPDは、典型的なCT検出器と比べて小さな撮像視野(FOV)を有し、FPDは、高解像度撮像に適した高い解像度を典型的に有する。従って、IRアルゴリズムを、FPDを使用するC-アームCBCTとの組み合わせを使用して取得されたCT再構成画像は、臨床的に関連性があるとして画像再構成に係る計算的時間が掛かりすぎるので、インターベンショナルアプリケーションでは使用されていない。この計算的時間の長さは、検出器のFOVおよび高解像度の組み合わせに起因するものである。それにもかかわらず、画像再構成に要する計算的時間が低減出来た場合には、当該組み合わせは有利なことがある。ここに説明される方法は、関心領域にある高解像度での画像が、IRアルゴリズムを使用してマルチ解像度画像を生成するために、ROIの外側における解像度を犠牲にすることで、臨床的に関連する時間フレームにおいて生成出来ることにより、方針を提供する。
【0075】
図10は、小さなFPDを使用して投影画像を取得する例を示している。この様にして、画像化されたオブジェクトOBJは、画像化されたオブジェクトOBJ上に重畳された白い円として示されている画像化された領域に比べてより大きいことが分かる。小さな画像ボリュームを使用することにより、画像化された領域の外側のオブジェクトOBJの部分から生じている投影データの減衰が原因で、再構成画像において裁断アーチファクトの恐れが生じる。FPDの小さなサイズは、三次元再構成に対するデータ取得の間のデータ裁断という結果に繋がる可能性がある。これが、FPDを使用するX線取得を表して
図10に描かれている。投影角の中には、FOVの収集は、データがオブジェクトOBJを完璧に特徴付けることを可能にさせるであろうと思われたデータが、FPDの拡がりには限度があるため、データが欠けていることがあるように、オブジェクトOBJに完全に及ばないことがある。欠如したデータは、以下の式(9)にて示されるシステムマトリクス方程式(例えば、IRアルゴリズムは、当該システムマトリクス方程式を解く逐次アルゴリズムとして、理解されることがある)に基づいた画像を再構成するのに利用可能な、公知の投影データgの量を減らすだろう。
【数9】
FOVがオブジェクトOBJ全体に比べて下回る場合に、システムマトリクス方程式は、決定されない傾向がある。つまり、順投影Aを使用してモデルになっているシステムマトリクスの結果として、FOVの内側の画像は、FOV外側の画像に比べて、方程式によってより制約を受けるということである。従って、FOV内側の画像は、正しい解へと収束する傾向がある一方で、FOV外側の画像は、正しい解から発散する傾向がある。その理由は、当該正しい解の解空間が、不完全な投影データの結果としてのシステムマトリクス方程式によって拘束されていない結果として大きいからである。
【0076】
臨床的アプリケーションに対して、再構成に対する画像化された領域は、何が表示出来るかについて、および上で説明されたように、特にフィルタ補正逆投影(FBP)再構成法で、小さなFOVが小さな画像化された領域を招く可能性について、制限する。しかし、一方ではFBPは画像化された領域を制限し、当該画像化された領域は、IRアルゴリズムが使用された場合に大きくなることがある。IRアルゴリズムは、システムマトリクス方程式の最小自乗(例えば、データ忠実項)を最小化することが出来、最小自乗は、FBPに対して使用された画像化された領域に比べてより大きな画像化された領域を含むことが出来る。つまり、当該IRアルゴリズムは、裁断によるアーチファクト無しでオブジェクトOBJを精確に表す解へと出来るだけ近くまで達するように、オブジェクトOBJ全体を含む、大きな画像ボリュームを使用出来る。
【0077】
大きな撮像領域を使用する結果として、より多くのボクセルが使用され、再構成画像fにおける数多くの画像変数という結果に繋がる。更に、投影データについての補外などの裁断補正は、オブジェクトOBJ全体を表す投影データを補外するのに、投影データgの境界へと付け加えることが出来、このような補外を実現することは、投影データgにおけるピクセル数を増やすことにより、問題の次元も増やすことになるだろう。画像化された領域の各次元の長さrにおける小さな増加(例えば、30%の増加)および投影データの各次元の長さlにおける小さな増加(例えば、20%の増加)は、システムマトリクス問題のサイズおよび対応する計算的時間における実質的な増加を生じる可能性がある。(例えば、計算的時間がオーダー0(r3×l2)であるということは、rにおいて30%の増加およびlにおいて20%の増加が、時間において216%増える結果になり、つまり1.33×1.22=3.16)。このようにして、再構成画像および投影データの個別の解像度(つまり、ピクセルピッチ)を変更することなく、再構成画像および投影データのサイズを増やすことにより、画像再構成時間が劇的に増える可能性があり、インターベンショナル撮像など素早い画像再構成からの恩恵を受けるような、特定の臨床的アプリケーションに対して適さない拡大した画像領域を潜在的に作り出す。ボリュームの長さにおける30%の増加、および投影の長さにおける20%の増加の比は、神経系のインターベンショナルな処置における頭部スキャンに対するIRアルゴリズムを使用するための実行を表す。このようにして、ここに説明される様なマルチ解像度IR法を介して達成された時間の節約抜きで、画像ドメインおよび投影ドメインにおける次元の小さな増加であっても、IR計算的時間の実質的な増加という結果になり、様々な臨床的アプリケーションにとって許容範囲を超えてこの計算的時間が膨れ上がる原因となる。
【0078】
血管におけるステントを配置する神経系のインターベンショナルな処置は、臨床的CT撮像の一例である。当該臨床的CT撮像において、高解像度および低解像度の両方の領域を含むIRアルゴリズムを使用して高速画像再構成を達成するために、ここに説明される方法を使用することは、有益である。例えば、
図11Aおよび11Bは、頭部のCT画像を使用してステントの配置に対する神経系インターベンショナルな処置を描いている。
図11Aは、ステントの円形横断面を含む、頭部の横断面の再構成画像を示している。
図11Bは、ステントの上下の部分に印がついたステントの側面図を示している。当該ステントは、直径が約3から4mm、長さが20から30mmである。
【0079】
上で説明された通り、三次元撮像における低コントラスト撮像に加えて、FPDを使用するC-アームCBCTも、高解像度撮像の能力がある。しかし、三次元撮像は、ワイヤ、カテーテル、そしてステントなど、デバイスのために二次元撮像用に元々考案された、FPDのより従来的な使用の拡大を表すものである。FPDの固有の解像度は、従来的に200マイクロメータに比べてより小さい。この高い解像度のために、FPDがあるC-アームCBCTにおける高解像度撮像の通常の環境では、画像の再構成に対する集中的な計算を伴うCPUの過負荷および画像再構成時間の大幅な増加を避けるために、小さな領域に制限されている。
【0080】
神経系インターベンショナルな処置に対する典型的な高解像度アプリケーションは、ステントの位置を測定するのに
図11Aや11Bのようにステントを撮像することである。ステントは、血管の内側に配置され、血管壁に接触して拡がっている。当該処置の適切な実行とは、ステントが位置から滑り出してしまうのを避けるために、ステントの突っ張りが血管壁に対して至当な位置にあることを必要とする。
図11Aは、FBPを使用する関心領域(ROI)再構成を示している。ステントの横断面は、
図11Aの中心近くに円の形状であることを認めることが出来る。
図11Bは、円筒の形であるステントの側面図を示している。
【0081】
改善された速さとマルチ解像度法の局所的な高解像度との組み合わせから恩恵を受けている別の臨床的アプリケーションは、
図12に示されたように、くも膜下出血の治療である。このアプリケーションは、出血している塊や骨など、異なる組織間をより良く分解し区別するために、高解像度でのROIを有することにより、恩恵を享受する。
図12は、大脳皮質を取り囲んでいる、くも膜下空間への出血の画像を示している。当該減少は、くも膜下出血(SAH)と呼ばれる。大脳皮質と頭蓋との間のくも膜下空間が非常に狭い場合に、出血を表す画像における領域は、特に血管と骨との間の空間を分解するには、画像解像度が不十分な場合に、骨に溶け込む可能性がある。上で説明された三次元撮像特徴を使用する低コントラスト撮像は、単一の低い解像度だが、コントラスト対ノイズ比の良い画像を作り出すよう、通常考案されている。ここに説明される高解像度画像法は、低コントラスト撮像において生成された従来的な単一の解像度画像の限界を解消出来る。このようにして、脳皮質と頭蓋との間のSAH領域をより良く分解し区別するために、頭蓋のエッジに沿った解像度画像を増やすことは、マルチ解像度画像が大いに役立つかもしれない。
【0082】
上で説明した通り、FPBを備えたC-アームCBCTは、通常小さな撮像FOVを有し、高解像度撮像能力を備えている。高速画像再構成は、結果が有用且つ当該分野における臨床医により採用されるようなものとなる目的で、適度な再構成時間を達成するために都合が良い。しかし、FPDの固有の解像度での均一な画像を再構成することは、IR再構成時間に臨床的に実行不可能なほどの増大をもたらす可能性がある。従って、高速マルチ解像度IRアルゴリズムは、マルチ解像度画像を生成するのに採用されるのである。それは、マルチ解像度画像は、特定のROIのみが高解像度で再構成され、残りの領域は計算的リソースを節約するのに低解像度で再構成されるからである。
【0083】
一実施例によると、解像度問題は、背景画像を表す低解像度画像(つまり、ROIを除く全て)およびROIを表す高解像度画像を含む目的関数を最小化するIR法として、公式化することが出来る。データ忠実項は、画像ドメインにおいて高解像度と低解像度との部分、つまり次の式(10)に分岐されたシステムマトリクス方程式(9)を表す。
【数10】
更に、上で説明されたようにサイノグラム(投影)ドメインも、次の式(11)に示されるシステムマトリクス方程式によって実証されている通り、高解像度と低解像度との部分に分岐される。
【数11】
【0084】
サイノグラム(投影)におけるマルチ解像度の使用を知らせるインサイトは、次の二つの見解を含む。第一に、再投影されたROIの外側の粗解像度データは、画像ドメインにおける高解像度ROIに寄与しないことが見て取れる。第二に、裁断補正に対する投影補間は、裁断された投影境界の平滑な変換を提供するために使用されること、また高解像度で表される必要がないこと、が見て取れる。従って、IRアルゴリズムのコンテキストにおいて、投影データにおけるマルチ解像度は、臨床的有意性の情報を犠牲にすることなく、使用することが出来る。
【0085】
単一の解像度IR法から、サイノグラム(投影)ドメインにおけるマルチ解像度を使用するマルチ解像度IR法までの拡張は、単一の再構成問題を多重の内側に関する再構成問題へと分割することとして、理解が出来る。
【0086】
当該拡張は、ある事実を使用して実現される。その事実とは、単一の解像度に対応するそれぞれに分割されたサブ問題に対し、またIRアルゴリズムの各逐次に対し、一回のレイ-ドリブン順投影演算と一回のピクセル-ドリブン逆投影演算とがあるということだ。多重領域の個別の解像度に従って、IRアルゴリズムの順投影演算および逆投影演算を分割することで、IRアルゴリズムを多重領域への分岐は、実行することが出来る。空間的に限られたROIに比べて量が多いことが多い、低解像度領域に対応する順投影演算および逆投影演算は、低い解像度が原因でコンピュータ的にはより効率良くなるだろう。従って、マルチ解像度IRアルゴリズムは、ROIの内側の画質に多大な影響を与えることなく、レイ-ドリブン順投影演算の計算的コストを低減出来る(つまり、レイ数は、投影データの解像度に依存するということ)。
【0087】
特定の実施例において、マルチ解像度IR法を実行するために使用される目的関数は、拘束された最適化問題によって表される。
【数12】
A1およびA2は、投影ドメインにおける高および低解像度領域にそれぞれ対応するシステムマトリクスAの構成要素システムマトリクスで、つまりA=[A
1 A
2]である。また、t(s)は画像(投影)ドメインにおける低解像度ピクセル(ボクセル)サイズおよび高解像度ピクセル(ボクセル)サイズの間の比である。
乗数tおよびsは、まるで画像解像度が均一であるかのように、パラメータ調整を一貫性させるように、解像度の多様性についての効果を補償するのに使用される。当該最適化問題は、任意の公知のIR技術および方法を使用して解くことが出来る。最適化問題の表現は、上で説明された目的関数といくつかの点で異なる目的関数を使用する。例えば、上で説明された目的関数は、データ忠実項と正則化項とを同時に最小化する一方で、この最適化問題の表現は、データ忠実項についての制約を条件に正則化項を最小化し、また減衰が非負となるような制約を最小化する。
更に、特定の実施例において、最適化問題は、正則化項についての制約を条件に、データ忠実項を最小化するよう装うこともある。また、特定の実施例において、正則化項は、最適化問題から省略されることもある。
【0088】
マルチ解像度再構成画像における高解像度領域および低解像度領域の選択は、どちらの領域をより良く、更に改良された解像度に対してきめ細やかな詳細へと分解される必要があるか、に依存出来る。高解像度領域および低解像度領域の選択は、画像ドメインにおける高解像度領域および低解像度領域の順投影から、その後生じる可能性がある。例えば、投影ドメインにおけるピクセルの解像度(つまり、ピクセルピッチ)は、X線照射がピクセル上を通過する最も細かい解像度ボクセルに対応する可能性がある。
【0089】
画像ドメインにおける様々な領域の解像度の決定は、自動化、半自動化、そして上に説明されたようなユーザ-ドリブン機構を使用して達成することが出来る。当該ユーザ-ドリブン機構は、例えば、GUIにおける画像を表示し且つ当該表示された画像においてユーザに領域を選択させること、エッジ検出法、空間周波数しきい値法、臨床的に関連性があると決定された、所定の特性を有する異なる領域に対する信号処理、またこれらの組み合わせを含む。例えば、所定の減衰特性を有するデバイスを挿入するインターベンショナルな処置において、ユーザ入力は、自動化されたアルゴリズムが、所定の減衰特性を有する領域を検出したり、高解像度画像再構成に対する当該領域をフラグ立てしたりすることが出来るように、所定の減衰特性を示すことが出来る。
【0090】
例えば、高解像度ROIは、エッジがインターベンショナルなデバイスまたは骨等解剖学的構造によって表されるように、急激な変遷およびエッジを伴う領域に対応するよう選択が出来る。二つだけの解像度、つまり高解像度および低解像度でのアプリケーションに加えて、マルチ高解像度ROIを選択することが出来、各ROIは固有の解像度(つまり、ピクセルピッチ)によって特徴付けられている。従って、ここに説明される方法は、柔組織に対する所望のコントラスト対ノイズ比(CNR)を維持しながら、再構成画像における鮮明な解剖学的エッジに近いLCI画像の画像解像度を改善することが出来る。例えば、
図12において、頭蓋と大脳皮質との間のくも膜下空間近くに、高い画像解像度が所望される。減衰における急激な変化は、高解像度が望ましいROIを決定するのに使用することが可能で、当該変化は、例えばエッジ検出、セグメンテーション、そしてウェーブレット、ラプラス、ガウス、またはその他のマルチスケール分解などを含む、いくつかの方法のうちの一つを使用して検出することが出来る。
【0091】
特定の実施例において、高解像度ROIは、1の値がROIピクセルを表し、0の値がROIでないピクセルを表す、二値のマスク画像を使用して提議することが出来る。
【0092】
図13は、画像を四つの領域へと分割する、非限定の例を示している。それらの領域とは、外側低解像度領域1330、中解像度領域1340、高解像度領域1350、そして内側低解像度領域1360である。当該例において、外側境界1310および内側境界1320は、高解像度領域を定義するのに、使用される。例えば、外側境界1310および内側境界1320は、頭蓋など鮮明な特徴を有する骨領域の個別の境界の可能性がある。高解像度領域1350は、検出器の固有の解像度と等しい解像度を有する。二つの低解像度領域1330および1360は、脳組織など比較的均一な画像の部分に対応する。
図13において、二つの低解像度領域1330および1360におけるピクセルピッチは、高解像度領域1340の四倍である。中解像度領域1350は、高解像度領域および低解像度領域におけるピクセルピッチの間の中間にある特性を伴う空間的特徴を有する特徴を含むことが出来る。
図13において、中解像度領域1350は、高解像度領域および低解像度領域の間の緩衝(バッファ)としても機能し、また高解像度領域1340の二倍のピクセルピッチを有する。
【0093】
図14は、マルチ解像度逐次再構成に対する方法800のフロー概略図を示している。方法800は、
図1に示された方法100への代替的な実施例である。方法800は、投影データおよび再構成画像が、如何にROIへと分割することが出来るのかを表しており、ROIの個別の解像度に従って、ROIはユニークに対処される。方法800の特定の実施例において、マルチ解像度画像および投影データは、自動的にROIへと分割が出来る。
【0094】
方法800のステップ810において、オリジナル投影データは、検出器の固有の解像度で取得される。固有の解像度投影データg812は、低解像度シード/初期画像が再構成された低解像度(つまり、粗解像度ピクセルに対応する大きなピクセルピッチ)へとダウンサンプルすることが出来る。例えば、低解像度シード画像は、FBP法またはIR法(収束に向かう逐次を伴う、または伴わない)を使用して、再構成出来る。
【0095】
方法800の820において、シード画像は、例えば線形平滑化フィルタ、異方性拡散、非局所平均、または非線形フィルタを使用してデノイズされる。
【0096】
線形平滑化フィルタは、ローパスフィルタまたは平滑化演算を表すマスクで、オリジナル画像を畳み込むことによりノイズを除去する。例えば、ガウスのマスクは、ガウスの関数によって決定された要素を具備する。この畳み込みは、各ピクセルの値をそのピクセルに近傍するピクセルの値へと近づけるようにするものである。一般的に、平滑化フィルタは、各ピクセルを各ピクセル自体の、または各ピクセルの周りに近傍するピクセルの、平均値、または重み付けられた平均値へと設定する。例えば、ガウシアンフィルタは、正に可能な重みのセットであると言える。不都合なことに、平滑化フィルタは、周囲の/に近傍するピクセルに比べて著しくよりピクセル強度値が高い或いは低いと、それらの近傍のエリアにわたって、広がるあるいは均されてしまうので、画像をぼやかす傾向がある。それにより、鮮明な境界が不鮮明になる。一般的に、局所線形フィルタ法は、局所近傍に見受けられる均一性は均一であると仮定し、従って、画像に均一性を押し付ける傾向にあり、病変や臓器境界など非均一な特徴を曖昧にする。
【0097】
異方性拡散は、熱伝導方程式と同様の平滑化偏微分方程式の下で、画像を展開させることにより、鮮明な境界を維持しながらノイズを除去する。拡散係数が空間的に不変の場合に、この平滑は線形ガウシアンフィルタリングと等しくてもよいが、拡散係数が境界の存在に従って異方性の場合に、ノイズは画像の境界をぼやかすことなく除去することが出来る。
【0098】
メジアンフィルタは、非線形フィルタの一例であり、もし適切に設計されれば、非線形フィルタも境界を保ち、ぼかしを避けられるかもしれない。メジアンフィルタは、例えば、画像におけるそれぞれピクセルを評価することで、輝度に従って近傍するピクセルを分類し、ピクセルのオリジナル値を順序付けられた輝度の表から中央値と置き換える、演算をする。メジアンフィルタは、階数条件ランク選択(RCRS)フィルタの一例である。例えば、メジアンフィルタとその他RCRSフィルタは、明らかなぼかしアーチファクトを取り込むことなく、画像から塩と胡椒ノイズを除去するために適用することが出来る。
【0099】
更に全変分(TV)最小化正則化項を使用するフィルタは、画像化されるべき複数のエリアがそれらのエリア間の比較的鮮明な境界を持つ離散的領域に渡って均一であると仮定される箇所に、使用されてよい。TVフィルタは、非線形フィルタの別例として使用されてもよい。
【0100】
非局所的平均フィルタリングにおいて、ピクセルは、ピクセルの空間的近似に従ってピクセルの重みづけ平均化を実行するのではなく、画像におけるパッチ間の類似性に従う重みづけ平均となるように決定される。このようにして、ノイズは画像における、全てのピクセルの非局所的平均化に基づいて、除去される―近傍するピクセルだけが除去されるのではない。特に、ピクセルに対する重みの量は、あるピクセル近くに中心がある小さなパッチと、デノイズされるピクセル周辺に中心がある別の小さなパッチと、の間の類似の程度に基づいている。
【0101】
方法800のステップ830において、シード画像は、高解像度画像が望ましいROIを決定するのに、準備することが出来る。これらの準備は、画像のセグメンテーション(例えば、骨ボリュームをセグメンテーションする)、エッジ検出、および/またはマルチ解像度分解を実行すること、を含んでよい。特定の実施例において、低解像度FBPシード画像fは、当該シード画像のデノイジングの後に実行される、骨セグメンテーションおよび/またはエッジ検出アルゴリズムを使用して処理される。
【0102】
方法800のステップ840において、シード画像fは、ROIの外側にある低解像度区分fLと、ROIの内側にある高解像度高解像度区分fHとに、分解され分割される。シード画像の低解像度区分fLは、目的関数を最小化することで、上の最適化問題を解くためのステップ880における、提案されるマルチ解像度IRアルゴリズムへと直接提供することが出来る。ROI検出アルゴリズムの任意のタイプが、ROIを検出するのに提供されてよい。例えば、検出アルゴリズムの選択は、画像化されている身体の領域、臨床的アプリケーション、使用されるCTスキャナ、および/またはユーザ入力に依存することが出来る。
【0103】
特定の実施例において、ROIは、信号処理を使用して所定の特徴および特性に基づいて、検出することが出来る。所定の特徴および特性を示すとして検出された領域は、境界ブロックにより、またはそうでなければROIの境界をデマーキングする三次元表面境界により、その後取り囲むことが出来る。
【0104】
方法800のステップ850において、高解像度区分fHを、所望のピクセルピッチを有するfHを有する高解像度区分fHへとアップサンプルすることが出来る。
【0105】
方法800のステップ850において、高解像度区分fHは、所望のピクセルピッチを有する高解像度画像fHを生成するのにアップサンプルし、補間することが出来る。
【0106】
方法800のステップ860において、ROIは、画像ドメインから投影ドメインへと順投影される。当該投影ドメインにおけるROI決定の順投影は、方法100のステップ140について説明された任意の方法を使用して、実行することが出来る。
【0107】
例えば、二値マスクは、画像ドメインにおけるROIを表すのに作り出すことが出来る。当該二値マスクは、ROIの内側の1の値およびROIの外側の0の値のボクセルを有する可能性がある。投影ドメインにおける当該ROIは、0に比べてより大きい二値マスクの順投影に対するあれらのピクセルの可能性がある。
【0108】
また、ステップ860は、シード画像を順投影することにより、測定された投影データの外側の領域に対する投影データの補間を含むことが可能である。例えば、
図10は、画像化されたオブジェクトOBJに完全にわたらない投影画像における画像を示している。しかし、
図10にしめされた投影角に対してサンプルされないオブジェクトOBJのエッジは、その他の投影角でサンプルすることが出来る。従って、
図10におけるオブジェクトOBJのサンプルされない領域は、投影データにおいて少なくとも部分的に表れている。つまり、再構成画像は、上で説明された通り、
図10に示された画像化された領域に比べてより大きい、拡大された撮像領域に対して生成することが出来る、ということである。この拡大された撮像領域に対する再構成画像を順投影することにより、投影データは、補間された投影データがオブジェクトOBJに完全にわたるように、
図10に示されたFPDのエッジを超えて補間が出来る。この補間されたデータは、裁断効果を軽減することで、マルチ解像度画像の画質を改善出来る。この補外は、ステップ860かまたはステップ870において実行することが出来る。
【0109】
方法800のステップ870において、高解像度投影データまたは固有の解像度投影データは、ステップ860で決定された投影ドメインにおけるROIの外側の低解像度投影データを生成するのに、ダウンサンプルされる。
【0110】
例えば、高解像度画像fHから作り出された二値マスク画像を順投影することで投影ドメインROIを決定した後、第二の二値マスクが投影ドメインROIに対応して作り出される。この第二の二値マスクは、固有の検出器解像度を有する投影データg812に適用され、ROIの内側の高解像度投影データgHを指定する。特定の実施例において、高解像度投影データgHに対し、追加の処理は必要とされない。その理由は、投影データg812がステップ880において実行されたマルチ解像度IRアルゴリズムへと直接移動するように、ROIに対する所望の解像度だからである。低解像度投影データgLを作り出すのに第二の二値マスクによって指定された、ROIの投影ドメインの外側の固有の解像度投影データg812について、ダウンサンプリングが実行され、低解像度投影データgLが生成される。
【0111】
特定の実施例において、投影データg812は、例えば、ローデータ規格化、ビームハードニング補正、散乱補正、リング状アーチファクト補正で予備処理をすることが出来る。
【0112】
特定の実施例において、計算的効率を改良するのに、投影データg812hは、シード画像の再構成に対する低解像度投影データの生成に先立って、ダウンサンプルすることが出来る。その後、追加のダウンサンプリングをステップ870で実行する必要はなく、投影ドメインにおけるROIの外側である、シード画像に対するもともとダウンサンプリングされた投影データは、低解像度投影データgLとして使用することが出来る。
【0113】
従って、ROI844の外側の画像である、画像ドメインにおける画像ドメインROIの外側の領域は、低解像度画像fLであり、任意の追加処理をすることなくシード画像から直接取得が出来る。他方で、画像ドメインROI842の内側の画像は、シード画像をアップサンプリングすることにより、および/または高解像度画像fHに対する初期ボクセル値を取得するのに、ステップ850において補間することにより、初期化される。高解像度投影データgHは、投影ドメインROIの内側の投影データである。低解像度投影データgLは、投影ドメインROIの内側の投影データをダウンサンプリングすることで、ステップ870において生成される。それにより、低および高解像度シード画像fLとfHと、低および高解像度投影データgLとgHとは、取得され、また上で説明された最適化問題を解くことにより、マルチ解像度画像を再構成するためのステップ880へと適用される。
【0114】
方法800のステップ880において、低および高解像度シード画像fLとfHと、低および高解像度投影データgLとgHとは、上で説明された拘束条件に従って、上で説明された目的関数の独立変数を最適化することにより、マルチ解像度画像を逐次的に再構成するために使用される。
【0115】
特定の実施例において、マルチ解像度IR問題の最適化の間に、f
Lおよびf
Hは、次の式(12)で表現される最適画像を取得するために、収束するまで各逐次において逐次的且つ同時にアップデートされる。
【数13】
【0116】
特定の実施例において、マルチ解像度IR問題の最適化の間に、fLおよびfHは、低解像度画像fLが安定するまで、各逐次において逐次的且つ同時にアップデートされる。その後に、低解像度画像fLは、高解像度画像fHが式(12)で示された最適画像を取得するのに逐次的に最適化されながら、一定に保たれる。
【0117】
特定の実施例において、シード画像は、収束に向かって初期に逐次的に再構成される。その後に、マルチ解像度IR問題の最適化の間に、低解像度画像fL
*は、高解像度画像fHが式(12)で示された最適画像を取得するのに逐次的に最適化されながら、シード画像から取得され一定に保たれる。
【0118】
方法800のステップ895において、停止基準が満たされたかどうかの照会が実行される。当該停止基準が満たされた場合に、方法800は完了である。満たされてなければ、方法800は、ROIを決定し、更にステップ840へと戻ることでROIにおける解像度を更に改良するステップを繰り返す。当該停止基準は、解像度を更に改良することにより、追加領域が改善出来るかどうかを含むことが出来る。
【0119】
停止基準が満たされなければ、次に別のROIを決定することが出来、このその他のROIにおける解像度は、方法800のステップ840へと戻ることで、改良出来る。
【0120】
特定の実施例において、方法800は、ステップ840へと向けて処理するのではなく、ステップ895からステップ830へと進んでも良い。
【0121】
また、特定の実施例において、高解像度投影データがX線検出器アレイの固有の解像度にまだ到達していない場合に、繰り返しステップ840、850、860、そして870は、高解像度画像および投影ドメインROIに対する小さなピクセルピッチの使用を含んでも良い。
【0122】
図15は、CT装置またはCTスキャナに含まれる放射線ガントリの実装を描いている。
図15に図示されるように、放射線ガントリ1000は側面から見て描かれており、X線管1001、環状フレーム1002、そして多列または2次元アレイ型X線検出器1003を更に含む。X線管1001およびX線検出器1003は、環状フレーム1002上にオブジェクトOBJを横切って正反対に取り付けられ、環状フレーム1002は回転軸RAの回りに回転可能に支持される。オブジェクトOBJが図示された頁の奥の方向または手前の方向の軸RAに沿って移動されながら、回転ユニット1007は環状フレーム1002を0.4秒/回転もの高速で回転させる。
【0123】
本発明に係るX線コンピュータ断層撮影(CT)装置の第一の実施形態は、付随する図面を参照しながら以下に説明される。X線CT装置は、様々なタイプの装置を含んでいることに留意されたい。具体的には、X線管とX線検出器とが検査される予定のオブジェクトの周辺を一緒に回る回転/回転型機構と、そして多数の検出器素子がリング状または水平状に配置されており、X線管のみが検査される予定のオブジェクトの周辺を回る固定/回転型機構とがある。本発明は、いずれのタイプにも適用可能である。今回は、現在の主流である回転/回転型機構が例示される。
【0124】
マルチスライスX線CT装置は高電圧発生器1009を更に含み、X線管1001がX線を生成するように、高電圧発生器1009はスリップリング1008を通してX線管1001に印加される管電圧を生成する。X線は、オブジェクトOBJに向かって照射され、オブジェクトOBJの断面領域が円で表される。例えば、第一のスキャン中に平均的なX線エネルギーを有するX線管1001は、第二のスキャン中の平均的なX線エネルギーに比べてより小さい。このようにして、二回以上のスキャンが異なるX線エネルギーに対応して、取得が出来る。X線検出器1003は、オブジェクトOBJを通り抜けて伝播してきた照射X線を検出するために、オブジェクトOBJを挟んでX線管1001から反対側に位置されている。X線検出器1003は、個々の検出器素子または検出器ユニットを更に含む。
【0125】
CT装置は、X線検出器1003から検出された信号を処理するための、その他のデバイスを更に含む。データ収集回路またはデータ収集システム(DAS)1004は、各チャンネルに対するX線検出器1003からの出力信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を増幅し、更にその電圧信号をデジタル信号へと変換する。X線検出器1003およびDAS1004は、1回転当たりの所定全投影数(TPPR)を処理するように構成されている。
【0126】
上に説明されたデータは、非接触データ送信装置1005を通して、放射線ガントリ1000外部のコンソール内に収容された、前処理デバイス1006へと送られる。前処理デバイス1006は、ローデータに関する感度補正など、特定の補正を実行する。格納部1012は、再構成処理直前のステージで、投影データとも呼ばれる結果データを格納する。格納部1012は、再構成デバイス1014、入力部1015、表示部516と共に、データ/制御バス1011を通して、システムコントローラ1010に接続されている。当該システムコントローラ1010は、CTシステムを駆動させるのに十分なレベルに達するまで電流を制限する電流調整器1013を制御する。
検出器は、どんな世代のCTスキャナシステムであっても、患者に対して回転されるおよび/または固定される。一実施例において、上で説明されたCTシステムは、第三世代ジオメトリシステムと第四世代ジオメトリシステムとが組み合わせられた例であってもよい。第三世代ジオメトリシステムにおいて、X線管1001とX線検出器1003とは、環状フレーム1002上に正反対に取り付けられ、環状フレーム1002が回転軸RAの周りを回転する時に、オブジェクトOBJの周りを回転する。第四世代ジオメトリシステムにおいて、検出器は患者の周辺に固定して取り付けられており、X線管は患者の周辺を回転する。代替的な実施形態において、放射線ガントリ1000は、Cアームおよびスタンドによって支持されている、環状フレーム1002上に配置された多数の検出器を有する。
【0127】
格納部1012は、X線検出器1003でX線照射量を示す測定値を格納することが出来る。更に、格納部1012は、方法100を実行するための専用プログラムを格納していても良い。
【0128】
再構成デバイス1014は、方法100を実行することが出来る。更に、再構成デバイス1014は、必要に応じてボリュームレンダリング処理や画像差処理など、前再構成処理を実行することが出来る。
【0129】
前処理デバイス1006によって実行された投影データの前再構成処理は、例えば検出器キャリブレーション、検出器非直線性、極性効果のための補正を含むことが出来る。その上、前再構成処理は、方法100の様々なステップを含んで良い。
【0130】
再構成デバイス1014によって実行される後再構成処理は、画像のフィルタリングや平滑化、ボリュームレンダリング処理、そして画像差処理を、必要に応じて含むことが出来る。画像再構成処理は、方法100のステップの様々な実行を含むことが出来る。再構成デバイス1014は、格納部を使って、例えば投影データ、再構成画像、キャリブレーションデータやパラメータ、そしてコンピュータプログラムを格納することが出来る。
【0131】
再構成デバイス1014は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他の複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)など、個々の論理ゲートとして実行可能な、CPU(処理回路)を含むことが出来る。FPGAまたはCPLD実行は、VHDL、ベリログ、または任意のその他のハードウェア記述言語でコード化されていてもよく、そして当該コードはFPGAまたはCPLDにおいて直接電子メモリ内に格納されてもよいし、あるいは個別の電子メモリとして格納されてもよい。更に、格納部1012は、ROM、EPROM、EEPROM(登録商標)、またはフラッシュメモリなど、不揮発性メモリであってもよい。格納部1012は、静的または動的RAMなど揮発性でよい。マイクロコントローラやマイクロプロセッサなどプロセッサ(処理回路)と格納部112とは、FPGAまたはCPLDと格納部1012との間の相互作用と同様、電子メモリを管理するために提供されていてもよい。
【0132】
代替的に、再構成デバイス1014におけるCPUは、ここで説明された機能を実行するコンピュータ読み取り可能命令のセットを含んでいるコンピュータプログラムを実行することが出来、当該コンピュータプログラムは、任意の上述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、または任意のその他の既知の格納媒体に格納されている。更に、コンピュータ読み取り可能命令は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムの構成要素、またはそれらの組み合わせで提供されてもよく、所定のオペレーティングシステムや、当業者にとっては既知のその他のオペレーティングシステムと一体となって実行する。更に、CPUは、指示を実行するために並行して協同的に動く、マルチプルプロセッサとして実行されてもよい。
【0133】
一実施例において、再構成画像は、表示部1016上に映し出されてよい。表示部1016は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、または当業者にとって既知のその他のディスプレイであってもよい。
格納部1012は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、または当業者にとって既知のその他の格納メディアであってもよい。
【0134】
特定の実行例について説明してきたが、これらの実行例は、例として提示されたものにすぎず、本開示の教示を限定する意図はない。実際に、ここで説明された新規の方法およびシステムは様々なその他の形態で具体化することが出来る。その上、ここで説明された方法、装置およびシステムの形態における様々な省略、置換、および変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行うことが出来る。
【符号の説明】
【0135】
112…格納部
516…表示部
1000…放射線ガントリ
1001…X線管
1002…環状フレーム
1003…X線検出器
1004…データ収集システム
1005…非接触データ送信装置
1006…前処理デバイス
1007…回転ユニット
1008…スリップリング
1009…高電圧発生器
1010…システムコントローラ
1011…データ/制御バス
1012…格納部
1013…電流調整器
1014…再構成デバイス
1015…入力部
1016…表示部