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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20220719BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20220719BHJP
   G06Q 10/02 20120101ALI20220719BHJP
【FI】
B66B1/18 L
B66B1/18 S
B66B1/18 Q
B66B3/00 M
B66B3/00 Z
G06Q10/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018200744
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020066513
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 敏文
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅則
(72)【発明者】
【氏名】小池 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199445(JP,A)
【文献】特開平06-263334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0144644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
B66B 3/00
G06Q 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルに据え付けられたエレベーター装置と、
該エレベーター装置を管制する管制装置と、を備え、
前記エレベーター装置の乗りかごの配車時刻と配車階床を、利用者が事前予約するエレベーターシステムであって、
前記管制装置は、前記ビルにおける前記乗りかごの停車可能な階床数を基に、前記乗りかごの一往復運転における配車予約可能な最大階床数Nmaxを算出し、前記乗りかごの往復運転毎に前記最大階床数Nmax以下の階床を配車予約することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターシステムであって、
前記最大階床数Nmaxは、停車可能な階床数の1/2~1/4であることを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーターシステムであって、
前記管制装置は、前記乗りかごの一往復運転の最大時間Tmaxを算出し、該最大時間Tmaxより長い時間区間を定め、該時間区間に対し、前記最大階床数Nmax以下の階床を配車予約することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーターシステムであって、
さらに、前記エレベーター装置の利用者が、配車希望する時間区間と階床を入力する情報端末を備えており、
前記管制装置は、前記情報端末を介して入力された、各利用者の配車希望の時間区間と階床に基づいて、前記乗りかごの配車階床とその配車予定時刻を決定することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベーターシステムであって、
前記情報端末には、配車予約運転される時間区間と、各時間区間に配車予約可能な最大階床数が表示されることを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のエレベーターシステムであって、
前記情報端末には、配車予約運転される時間区間と、各時間区間の配車予約状況が表示され、前記利用者は、配車予約に空きのある時間区間に配車希望の階床を入力できることを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項7】
請求項4から6の何れか一項に記載のエレベーターシステムであって、
前記管制装置が決定した配車予定時刻を、前記情報端末を介して利用者に通知することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項8】
請求項4から6の何れか一項に記載のエレベーターシステムであって、
前記エレベーター装置は、配車予約階床からの乗車を予約した利用者の全員が乗車するか、前記配車予定時刻から所定時間が経過するか、の何れかの条件を満たすまで、当該配車予約階床に停車中の乗りかごを発車させないことを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項9】
請求項3に記載のエレベーターシステムであって、
前記エレベーター装置は、前記管制装置が配車予約しなかった時間区間においては、通常運転を実施することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項10】
ビルに据え付けられたエレベーター装置と、
該エレベーター装置を管制する管制装置と、を備え、
前記エレベーター装置の乗りかごの配車時刻と配車階床を、利用者が事前予約するエレベーターシステムであって、
前記管制装置は、
前記エレベーター装置の過去の運行データを蓄積する蓄積部と、
前記乗りかごを配車予約運転する時間帯を設定する設定部と、を備えており、
該設定部は、前記過去の運行データに基づいて、乗り場呼びの多発が繰り返される時間帯を検出し、その時間帯を配車予約運転する時間帯に設定することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のエレベーターシステムであって、
前記設定部は、前記過去の運行データに基づいて、特定の階床において、乗り場呼びの多発が繰り返される時間帯を検出し、その時間帯を配車予約運転する時間帯に設定することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のエレベーターシステムであって、
前記設定部は、
設定した配車予約運転の時間帯に対して、実際に配車予約運転を実施して良いかを前記エレベーター装置の利用者に確認し、
利用者の同意が得られた場合に、前記エレベーター装置に当該時間帯での配車予約運転を実施させることを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項13】
請求項10に記載のエレベーターシステムであって、
前記設定部が配車予約運転を設定した時間帯であっても、一部の時間区間では、配車予約運転ではない通常運転が実施されることを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のエレベーターシステムであって、
前記ビルには複数台のエレベーター装置が据え付けられており、
前記設定部が配車予約運転を設定した時間帯には、一部のエレベーター装置では配車予約運転を実施し、他のエレベーター装置では通常運転を実施することを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のエレベーターシステムであって、
配車予約運転が設定された時間帯における、過去の利用量が多いほど、配車予約運転するエレベーター装置の数を増やすことを特徴とするエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごを配車する階床と時間を予約できるエレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションのような集合住宅型のビルの場合、朝の通勤・通学時間帯は、各階の住人が一斉にエレベーターを利用して1階等に移動しようとするため、各階からの乗り場呼びが集中する、所謂、ダウンピーク混雑が発生することがよくある。その結果、乗りかごの停止回数が増えて一往復に要する運行時間が長くなるため、乗車前の乗り場での待ち時間や乗車後の行先階への移動時間が増加するだけでなく、乗りかごが途中で満員となった場合は、途中階の住人が乗りかごに乗り込めない状況も発生する。
【0003】
このような状況の解決には、利用者の集中に対応したエレベーターの運行制御が重要になる。そのような運行制御の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1は、各利用者が乗車階や配車時刻等を予約するもので、予約した配車時刻に対して所定時間内に乗りかごを配車する確率(保証率)も合わせて表示するものである。
【0004】
また、特許文献2でも、エレベーターに対する利用日時、出発階、到着階、相乗り可または相乗り否の可否情報を予約情報として登録する例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-43100号公報
【文献】特開2008-174319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を、ダウンピークが発生する状況で実際に適用した場合、多数の予約が短い時間に集中すると、結局、乗りかごが全階に停止することもあり、予約を踏まえて配車しているにも拘わらず、実際には待ち時間や乗車時間が長くなることが懸念される。特に、各階からの多数の配車予約が集まって運行する時間帯は、停止毎の利用者の乗車時間のばらつきなどで一往復の運行時間の不確実性がより大きくなるため、保証率もより低くなり、結局、予約した時間に配車されない可能性が高くなる。すなわち、配車予約が必要な時間帯にこそ、配車予約がうまく機能しないことになる。さらに配車予約は、エレベーターの運行動作を拘束するため、不適切な状況や時間帯で実施するとかえって他の利用者に不便を強いることになる。
【0007】
また、特許文献2には、相乗りの可否情報を予約情報として登録する例が示されているが、各階の利用が集中して待ち時間が長くなっている状況では、多くの人が相乗り否のような予約をしてしまうと、時間当たりの輸送人数(輸送効率に相当)が大きく減少して、さらに長い待ち時間が発生するか、エレベーターの配車予約が可能な時間が少なくなり、そもそもの配車予約ができなくなる可能性がある。
【0008】
以上の課題を踏まえ、本発明の目的は、ビルの各階からのエレベーターの利用が集中して乗り場での待ち時間や行先階への到着時間が増加するような混雑状況において、適切な配車予約運転を実施することで、確実に待ち時間や行先階への到着時間の低減を図りつつ、かつ利用者の利便性の向上も図るようなエレベーターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のエレベーターシステムは、ビルに据え付けられたエレベーター装置と、該エレベーター装置を管制する管制装置と、を備え、前記エレベーター装置の乗りかごの配車時刻と配車階床を、利用者が事前予約するものであって、前記管制装置は、前記ビルにおける前記乗りかごの停車可能な階床数を基に、前記乗りかごの一往復運転における配車予約可能な最大階床数Nmaxを算出し、前記乗りかごの往復運転毎に前記最大階床数Nmax以下の階床を配車予約するものとした。
【0010】
また、本発明の他のエレベーターシステムは、ビルに据え付けられたエレベーター装置と、該エレベーター装置を管制する管制装置と、を備え、前記エレベーター装置の乗りかごの配車時刻と配車階床を、利用者が事前予約するものであって、前記管制装置は、前記エレベーター装置の過去の運行データを蓄積する蓄積部と、前記乗りかごを配車予約運転する時間帯を設定する設定部と、を備えており、該設定部は、前記過去の運行データに基づいて、乗り場呼びの多発が繰り返される時間帯を検出し、その時間帯を配車予約運転する時間帯に設定するものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビルの各階の利用者がエレベーターに乗車しようとして利用が集中するような状況において、ビル、エレベーター、利用者の利用状況などに応じた適切な配車予約運転が実施できるため、利用が集中しても確実に待ち時間や行先階への到着時間の低減を図ることができ、かつ利用者の利便性の向上も図ることができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係るエレベーターシステムの全体構成図である。
図2図1の配車予約条件算出部と配車予約処理部の機能ブロック図である。
図3】実施例2に係る配車予約テーブルの一例である。
図4A】情報端末に表示される配車予約の最大階床数テーブルの一例である。
図4B】配車予約情報の入力画面の一例を示す図である。
図5】配車予約情報の入力画面の別例を示す図である。
図6】実施例1の配車予約運転計画部での処理手順を説明するフローチャート。
図7】実施例1の情報端末に表示される配車予約情報案内画面の一例である。
図8A】実施例1の乗り場情報端末に表示される情報の一例である。
図8B】実施例1の乗りかご内情報端末に表示される情報の一例である。
図9】実施例1に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転の実施処理の手順の例を説明するためのフローチャートである。
図10】実施例1に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転の時間軸上での運転動作を説明するための図である。
図11】実施例1に係るエレベーターシステムにおいて、図10とは異なる配車予約運転の時間軸上での運転動作を説明するための図である。
図12】実施例1に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転の実施を判定する処理の手順の例を説明するためのフローチャートである。
図13】実施例1に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転を実施する時間の判定の一例を説明するための図である。
図14】実施例2に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転に対する処理手順の例を説明するためのフローチャートである。
図15】実施例2に係るエレベーターシステムにおいて、複数台のエレベーターがあるケースでの配車予約運転の実施状況の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るエレベーターシステムについて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
まず、図1図13を用いて、本発明の実施例1のエレベーターシステムについて詳細に説明する。
<本実施例のエレベーターシステムの全体構成>
図1は、本実施例のエレベーターシステムの全体構成図であり、マンションのような集合住宅型のビル10に据え付けられたエレベーター装置13の概略構成と、通信ネットワーク14を介してエレベーター装置13を遠隔管制する遠隔管制装置1の機能ブロックを、利用者の状況とともに示すものである。
【0016】
本実施例のビル10は12階建てのビルであり、各階に停車可能に据え付けられたエレベーター装置13は、通信ネットワーク14を介して遠隔管制装置1により遠隔管制されることで後述する配車予約運転を実施する。なお、遠隔管制装置1は、複数のビル内のエレベーター装置13と通信ネットワーク14を介して接続されており、夫々を遠隔で監視、制御するものであるが、以下では1つのエレベーター装置13に焦点を当てて説明する。
【0017】
遠隔管制装置1内には、対象とするエレベーター装置13の日々の運行データを蓄積する運行データ蓄積部2、対象とするエレベーター装置13やビル10の仕様、例えば、ビルの階床数、階床ピッチ、エレベーター装置13のサービス階床、定格速度、定員などの仕様データを蓄積する仕様データ蓄積部3、および、これらのデータを用いて対象とするエレベーター装置13の配車予約運転を実行する配車予約運転実行部4等がある。
【0018】
なお、この遠隔管制装置1は、実際には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えた計算機である。そして、補助記憶装置に記録されたデータベースを参照しながら、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、配車予約運転実行部4等を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
【0019】
配車予約運転実行部4は、配車予約運転の一連のプロセス全体を包括して実行する要となる処理部であり、以下、その処理の構成を説明する。この中で特に特徴となる処理が、配車予約運転実施判定部5、配車予約条件算出部6、配車予約処理部7での処理になる。
【0020】
配車予約運転実施判定部5は、運行データ蓄積部2に蓄積した運行データと、仕様データ蓄積部3に蓄積した仕様データに基づいて、配車予約運転を実施するのが適切か、さらに実施すると良い時間帯があるか等を判定する。この内容は図12などを基に後で説明する。
【0021】
配車予約条件算出部6では、その運行データや仕様データに合った適切な配車予約運転を実行するため配車予約の条件を算出する。例えば、ビルの上下往復1周の運転時間中での配車予約できる適正な階床数などを算出する。この内容は図2などを基に後ほど説明する。
【0022】
配車予約処理部7では、配車予約テーブルT(詳細は、図3にて説明する)を基に、配車予約処理を実行する。なお、この配車予約処理部7では、利用者から入力された配車階床や配車時刻などの配車予約情報を基に適切な配車予約運転を実施するための運転計画作成などの処理を実施する。この処理の内容は図2などにより後で説明する。
【0023】
配車予約運転制御部8では、計画通りの配車予約運転を実行できるように、運転計画に沿った運転制御や利用者のその時その場の状況に応じた運転の調整などを実施する。この内容は図9などを基に後ほど説明する。
【0024】
以上で概説した配車予約運転実行部4は、情報通信部9、通信ネットワーク14を介して、利用者との双方向の通信により必要な情報を提供することもできる。例えば、確定した配車予約の時間などの情報を利用者へ配信するなどの処理を実施する。
【0025】
以上が、配車予約運転の実施機能をメインとした遠隔管制装置1の説明となる。
【0026】
引き続き、図1を基に説明する。上述したように、本実施例のエレベーターシステムは、ダウンピーク混雑が発生しやすいマンションのような集合住宅型のビル10を対象とするが、特定の時間帯に乗り場呼びが集中するのであれば、ホテル、病院、オフィスビル、学校、または、これらが組合わさった複合型ビルを対象としても良い。
【0027】
図1に例示するように、集合住宅型のビル10は、各階が住居エリア11と乗り場エリア12に区分されている。このビル10で稼働するエレベーター装置13が配車予約運転を実施するエレベーターであり、遠隔管制装置1とは通信ネットワーク14を介して双方向の通信を実施して、配車予約運転を実行する。
【0028】
エレベーター装置13は、運行制御を実行する制御装置15、乗りかご16、制御装置15と乗りかご16を結ぶ通信ケーブル17で構成される。遠隔管制装置1からの配車予約運転に関する制御指令は通信ネットワーク14を介して、制御装置15に入力され、この制御装置15でこのビル10の状況に即した配車運転が実行される。
【0029】
ビル10の各階の住居エリア11には、エレベーター装置13の利用者である住人が住んでいる。そして、これらの住人は、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの携帯情報端末18aや、各住居に備え付けられた家庭用情報端末18b等を用いて、配車予約のための情報をエレベーターの制御装置15や遠隔管制装置1などと双方向で通信する。なお、これらの情報は、例えば無線通信や通信ネットワーク14によって伝送される。
【0030】
各階の乗り場エリア12にもディスプレイなどの乗り場情報端末19a~19dが設置されており、ここでも利用者に対して配車予約運転に関する情報が提供される。これらの情報は通信線を介して制御装置15より配信される。
【0031】
さらに、乗りかご16の中にもディスプレイなどの乗りかご内情報端末20が設置されており、ここでも配車予約運転に関する情報が乗りかご内の乗客に向けて提供される。これらの情報は通信ケーブル17を介して制御装置15より配信される。
【0032】
尚、乗り場情報端末19a~19dや乗りかご内情報端末20からは、それぞれの状況に応じた情報が配信される。これは後ほど図8A図8Bで詳しく説明する。
【0033】
以上が図1に示した本実施例に係るエレベーターシステムの全体構成例と機能ブロック図の例に対する構成要素の説明となるが、次にこれらの全体を通じたシステムの処理動作について説明する。
【0034】
上述したように、集合住宅型のビル10では、朝の時間帯は各階の住人が通勤や通学のため、一斉にエレベーターを使う状況(ダウンピーク混雑)がよく発生する。このため、乗車前の乗り場での待ち時間や乗車後の行先階への移動時間が増加するだけでなく、途中階で乗りかご16が満員となった場合は、それより下の階を通過せねばならないような状況も発生する。
【0035】
このようなダウンピーク混雑が日々繰り返し発生しているかを過去の運行データから判定し、必要に応じて配車予約運転実施を決定するのが配車予約運転実施判定部5となる。
【0036】
ここで、配車予約運転は、エレベーター装置13の利用者が事前に配車階と配車時間を予約しておき、システムから指定された時間の乗りかご16に乗車することで、いつ乗車できるか分からないような不安定な状況を回避するものである。したがって、本実施例のエレベーターシステムでは、各利用者が予約した乗車階床と乗車時間とを踏まえて、利用の集中を適度に分散させ、ダウンピーク混雑の緩和を図り、これによってエレベーターの運行効率の向上を図ることを狙っている。ここで、重要となるのは指定した時刻に確実にエレベーターを配車させることができ、その結果、適正な利用の分散となるような配車予約の計画となる。このような計画的な配車予約を実行するための配車予約条件を算出するのが配車予約条件算出部6での処理になる。さらにここで算出された配車予約条件に従って、配車予約の運行計画の基になる配車予約テーブルTを作成し、それに沿った配車予約の実施と運行計画の作成を実施するのが、配車予約処理部7になる。配車予約運転制御部8は配車予約テーブルTに基づいた配車予約運転計画に従って配車予約運転の制御を実施する。
【0037】
以上で概説したような処理によって、ダウンピーク混雑が発生する可能性の高い時間帯に対して配車予約運転の実施を割り当てることができ、さらに配車予約した時間に確実にエレベーターを運行させるような配車予約の設定、配車予約の運行計画、さらに計画に基づいた運行制御を実施することができる。この結果、特定の時間帯にエレベーター装置13の利用が集中しても乗り場での待ち時間や乗りかごの乗車時間の低減を図ることができ、利用者の利便性の向上も図ることができる。
【0038】
尚、図1の例では、エレベーターの配車予約運転の実施を遠隔管制装置1で実施するように記載したが、これに限る必要はなく、例えば、エレベーター本体に備え付けられた制御装置14、図1には図示していないが複数台のエレベーターがある場合の群管理制御装置、またビル内の設備を制御するビル設備制御装置などで、上記に記載した配車予約運転の処理を実施しても良い。上記の各制御装置のいずれかで実施しても、それぞれで分担して実行しても良い。
<配車予約条件算出部6と配車予約処理部7の詳細>
図2は、図1に示す本実施例のエレベーターシステムにおいて、配車予約条件算出部6と配車予約処理部7の機能をさらに詳細に説明するための機能ブロック図である。
【0039】
まず、配車予約条件算出部6では、対象となるエレベーター装置13のサービス階床数データと乗りかごの定員データから配車予約可能な最大階床数Nmaxを算出する。これは配車予約可能な最大階床数算出部6aで実施する。ここで、エレベーターのサービス階床数とはそのエレベーターが停車可能な全ての階床数(図1の例では12階床)である。このサービス階床数に応じて最大階床数Nmaxを算出する。このため、サービス階床数が多いエレベーター装置13の場合は最大階床数Nmaxは多くなり、逆に少ない場合はその最大階床数Nmaxも少なくなる。最大階床数Nmaxを求める具体的な算出法は、例えば、サービス階床数を所定値で割った商によって定めることが考えられる。ここでこの所定値は経験的に2~4の値が良い。例えば、所定値を3とし、サービス階床数を10または20とすると、それぞれの最大階床数Nmaxは3(サービス階床数10の場合)または6(サービス階床数20の場合)となる。
【0040】
このような算出方法によって、サービス階床数に応じた適正な最大階床数Nmaxを定めることができる。例えば、上記の例ではサービス階床に比例した最大階床数Nmaxとなる。この結果、高層マンションの場合など高階床のビルの場合は階床数の多さに応じて配車予約できる階床数を増やすことができる。
【0041】
また上記以外の最大階床数Nmaxの算出法として、1周時間を算出して、その長さに基づいて最大階床数Nmaxを定める方法も考えられる。この場合も1周時間を算出するためには、サービス階床数のデータが必要であり、さらに階床ピッチのデータ、エレベーターの定格速度のデータによって算出することができる。例えば、算出した1周時間が所定値以下(例えば3分など)となる条件で最大階床数Nmaxを定めればよい。この算出方法によって、1周時間が適正な時間となるような最大階床数Nmaxを定めることができる。
【0042】
さらに乗りかごの定員データを用いることで、満員で乗客が乗り込めなくなることを防ぐように最大階床数Nmaxを定めることができる。例えば、1階床当たりの平均の乗り込み人数とかご定員から乗りかごが満員となる配車階床数を求めることできる。上記で説明した算出法と合わせて、さらにこの値以下となるような条件を加えることで、途中で乗りかごが満員となることを防ぐことができる。
【0043】
以上、配車予約可能な最大階床数算出部6aで求めた最大階床数Nmaxが、対象のエレベーターで配車予約運転を実施する場合の最大階床数Nmaxとなる。
【0044】
続いて、配車予約運転時の1周最大時間算出部6bでは、最大階床数Nmax、階床ピッチデータ、乗りかごの定格速度データより、配車予約運転時の1周最大時間Tmaxを算出する。これは距離、速度、停止回数と停止時間から1周時間を求める算出式より値を算出できる。ここで停止時間は例えば10秒などそのエレベーターの停止時間の平均値とすれば良い。ここで算出された1周時間が、対象のエレベーターで配車予約運転を実施する場合の1周最大時間Tmaxとなり、これを基に決まった時間で運行できるように配車予約の運行パターンが定められる。
【0045】
以上で説明した最大階床数Nmaxと1周最大時間Tmaxの2つの算出値が正確な配車予約運転を実行するための重要な値となる。
【0046】
最大階床数Nmaxと1周最大時間Tmaxが求まると、配車予約処理部7では、配車予約テーブルTの時間区間と配車予約階床数を設定する。これらは配車予約テーブルTの時間区間と配車予約階床数の設定部7aで実施される。
【0047】
ここで時間区間とは、配車予約運転する場合の時間単位となる数分程度の短い時間帯を表し、この時間区間の中で決められた配車予約階床数を満たすように配車予約処理が実施される。さらに、この1つの時間区間の中で、乗りかごはビルの上下方向に1往復の運転(1周の運転)を実行する。従って、時間区間はビルを上下に1周する配車予約運転1回の時間の区切りでもある。
【0048】
この時間区間の長さの設定は、算出された1周最大時間Tmaxよりも長い時間となる。例えば、1周最大時間Tmaxが2分20秒の場合、時間区間は3分間と設定することができる。利用者の配車予約に対する利便性を考えると、時間区間が長すぎるのは好ましくなく、長くても5分間程度が良い。このように、時間区間を、想定される1周最大時間Tmaxよりも長くすることで、時間区間内に1回(1周回)の配車予約運転を確実に完了することができる。
【0049】
また、配車予約階床数の設定は、算出された最大階床数Nmaxもしくはそれ以下の値で定めるようにする。
【0050】
以上で説明した時間区間と配車予約階床数の設定法によって、配車予約された階床と時刻に正確に配車できるようなエレベーター装置13の運行が可能となる。
【0051】
配車予約テーブル作成部7bは、上記で設定した時間区間と配車予約階床数、および配車予約運転を実施する時間帯のデータを基に、図2に示す配車予約テーブルTを作成する。
【0052】
この配車予約テーブルTは、配車予約を実施する時間帯(例えば、8:00-8:30など)の中で、時間区間ごと(例えば、8:00-8:03、8:03-8:06、…など)に配車予約階床数に従って配車予約階床のデータおよびその利用人数が記録されたデータテーブルとなる。この配車予約テーブルTの詳細は後ほど図3を用いて説明する。また配車予約運転を実施する時間帯のデータは図1の配車予約運転実施判定部5で定められる。
【0053】
配車予約テーブルTの各時間区間は、配車予約テーブルTの時間区間と配車予約階床数の設定部7aで設定された時間区間を基に配車予約を実施する時間帯の中で定められる。例えば、時間区間が3分間、配車予約の時間帯が8:00-8:30の場合、配車予約テーブルTの時間区間は、8:00-8:03、8:03-8:06、8:06-8:09、…、8:27-8:30のように10区間が設定される。そして、この時間区間の中で設定した配車予約階床数を満たすよう各配車予約階床の欄が定められる。例えば、配車予約階床数が3の場合は、各時間区分で3個の配車予約階床の欄が設定される。配車予約テーブル作成の初期時は、この各配車予約階床の欄は空き状態となっており、この後の利用者による配車予約の入力処理によってこの欄の階床データが定まることになる。
【0054】
利用者に対する配車予約入力処理実行部7cでは、配車予約テーブルTの時間区間と配車予約階床数、利用人数を考慮しながら、利用者による配車予約入力を受け付ける処理を実行する。この入力は、利用者が複数の候補とその優先順を入力して、それに基づいて各利用者の配車予約階と時間を選定する方法や早いもの順で定める方法などが考えられる。この詳細は図4図5により後ほど説明する。
【0055】
入力された各配車予約情報に基づく配車予約運転計画の作成部7dでは、入力された配車予約の時間区間、階床、人数のデータを基に配車予約テーブルTのデータを確定させて、この配車予約テーブルTのデータに基づいて配車予約の運行計画を作成する。具体的には、配車予約の時間区間毎に定められた配車予約階床に順に停車するようなエレベーターの運行計画を作成する。この結果、各配車予約階に対する乗りかごの運行時間が算出されて、各予約階への到着予定時間が確定する。この配車予約運転計画の具体的な作成手順は図6により後ほど説明する。
【0056】
予約した利用者に対する配車予約階への乗りかご到着時間の配信部7eでは、上記で確定した各配車予約階への乗りかごの到着予定時間を利用者に通知するための処理を実行する。これは図1の情報通信部9を介して実施する。予約利用時は、例えば8:00-8:03の時間区分という幅のある粗い時間の指定であったが、ここで正確な到着時間(例えば、8:01:30)を連絡して、利用者にこの時間に希望の配車階の乗り場に待機するように通知する。
【0057】
以上に説明した図2の配車予約条件算出部6と配車予約処理部7の処理によって、対象とするビルおよびエレベーターの仕様に応じた適正な配車予約運転の時間区間とその中で配車階床数を設定でき、これに基づいた配車運転計画を作成することで、予約した階床、予定した時間に正確に配車することが可能となり、利用者は安心して配車予約を利用することができる。また利用集中する場合も上記により、エレベーターが時間通りに運行できるように配車予約を分散することができる。このため、利用者の待ち時間や行先階への到着時間が低減され、さらに利便性も向上できる。
<配車予約テーブルT
図3は、本実施例の配車予約を実施する上での要となる配車予約テーブルTを例示する図である。この配車予約テーブルTは、配車予約を実施する基本データをまとめた表であり、各列は、列C1が時間区間の番号、列C2が時間区間の開始と終了時刻、列C3~C5が配車予約された階床(図3では配車予約階床数が3であるため3列を確保)、列C6が乗車予定の利用人数である。
【0058】
従って、この配車予約テーブルTには、配車予約運転の時間帯(この例では08:00-08:30)における各時間区間の配車予約階床と利用人数のデータが格納されている。例えば、1番目の08:00-08:03の時間区間では、配車予約可能な3階床のうち2つ(4階と11階)が定まっており、また、利用人数は2人である。この場合、エレベーターは08:00-08:03の時間区間の中で11階と4階に配車して、利用者2人を乗せて1階(ここでは図示していないが、目的は共に1階とする)に輸送するサービスを実施するような配車運転計画を作成する。また、現時点では3番目の配車予約階床が空きとなっているが、新たに入力された場合は既に作成した配車運転計画を更新すれば良い。
【0059】
また、この配車予約テーブルTで特徴的なことは、番号5、番号10の時間区間に示すように、定期的に(この例では5回に1回の割合で)配車予約運転ではない通常運転を実施する時間区間を設けていることである。この理由は、配車予約はしていないが、その日に急にエレベーターを利用したい人や配車予約したが理由があってキャンセルや乗り損ねた人向けに、通常通りエレベーターを使える時間を確保するためである。配車予約時間帯(08:00-08:30)の全てで配車予約運転のみとすると、上記のような利用者がエレベーターを利用できなくなる可能性があるため、その回避策として通常運転の時間区間も定期的に設けることで利便性の向上を図っている。なお、図3では、配車予約運転を4回実施した後、通常運転を1回実施する例を示しているが、通常運転を実施する頻度やタイミングは適宜調整すればよい。例えば、次のような形態でもよい。
【0060】
1)通常運転を主体にして配車予約運転を少数回で実施する。例えば、時間区間5回中の4回を通常運転として、1回を配車予約運転とする。この形態は配車予約運転を希望する人が少ない場合やエレベーターの台数が少ない場合に有効である。また配車予約運転がどのような運転か分からない場合にトライアルで実施する場合も有効である。
【0061】
2)配車予約運転と通常運転の回数の割合が等しくなるように実施する(1:1とする)。例えば、時間区間4回中の2回を配車予約運転として、2回を通常運転とする。この形態の場合も配車予約運転を希望する利用者が全体の1/2程度の場合や初めから配車予約運転をメインで実施するのではなく、通常運転と併用しながら様子を見ていく場合に有効である。
【0062】
以上のように、本実施例のエレベーターシステムでは、図3に示したような配車予約テーブルTを基にして配車予約の運転計画が作成され、さらに実際の配車予約運転制御が実施される。
<利用者による配車予約情報の第一の入力方法例>
図4A図4Bは、配車予約入力処理実行部7cで実施される配車予約情報の入力方法の一例を説明するための図であり、図4Aは、予約可能時間帯通知テーブルTを表し、図4Bは利用者が配車予約情報を入力する画面例(ポップアップ入力ウィンドウの画面)を表している。
【0063】
図4Aに示す予約可能時間帯通知テーブルTは、配車予約テーブルTと同等の列C1、列C2と、配車予約可能な階床数を示す列C7で構成されている。なお、列C7は、配車予約テーブルTの列C3~C5と違い、配車予約可能な階床数の値が示されており、例えば、番号1の時間区間では3階床の配車予約が可能であることが示されている。また、番号5の時間区間では0階床の配車予約が可能であること、すなわち、番号5の時間区間は配車予約不可能な通常運転となる時間区間であることも示されている。利用者は予約可能時間帯通知テーブルTの情報を参考にして、希望する配車予約情報を入力する。
【0064】
具体的には、携帯情報端末18aや家庭用情報端末18bに表示される、図4Bのような配車予約情報を入力する画面W1にて、利用者は配車を希望する時間区間、配車希望の階(利用者が乗り込む階)や行先階などの必要な情報を入力する。まず、入力画面(入力ウインドウ)W1において、まず、表示されているID情報W2(例えば、マンションの部屋の番号など)が正しいことを確認してから、第1希望欄W3から第3希望欄W5に、配車を希望する時間区間を優先順位に従って入力する。その後、配車希望階欄W6、行先階欄W7、利用人数欄W8の情報を入力する。
【0065】
図4Bの例では、各利用者は複数の配車希望の時間区間を優先順位を付けて入力でき、エレベーターシステム側はその入力結果を集めて優先順と希望階、行先階の情報を基に各利用者の配車時間区間を決めていく。
【0066】
また同じ時間区間で高い優先順の希望が多数重なり、配車予約可能な階床数を超過する場合は抽選のような形で選定する。もしくは図4Bの符号W9にあるような配車優先ポイントの値を基準に選定してもよい。この配車優先ポイントは、例えば、前回は抽選で外れた場合は次回に希望が通りやすいようにポイントが加算されたり、また予約した配車時間に毎回確実に乗車した場合にインセティブとしてポイントを加算したり、逆に配車予約時間に乗車しなかった場合にペナルティとしてポイントが減算するなどで、ポイントを付与して、それを基に配車予約時間が重なった場合はポイントが高い利用者を優先するようなことしても良い。
【0067】
またこの配車予約情報の入力実施のタイミングは、3か月ごと、4か月ごと、6か月ごと、1年ごとなどの周期で、配車予約時間帯全体に対して一斉に更新して新規の配車予約を実施することを想定している。これは希望した配車予約時間が重複して抽選が外れた場合や通勤や通学時間が変更する場合を考慮してのものである。尚、予約時間に空きがある場合はその都度変更しても良い。
<利用者による配車予約情報の第二の入力方法例>
図5は、入力処理実行部7cで実施される配車予約情報の入力方法の他例を説明するための図であり、システム側で管理する配車予約テーブルTに利用者が配車予約情報を直接入力できる例となる。従って、携帯情報端末18a等に表示される図5の配車予約テーブルTの各列の内容は、システム側で管理される図3の配車予約テーブルTの現時点の内容と同じであるが、配車予約される階床を示す列C3~C5は利用者が直接編集できるようになっている。
【0068】
例えば、番号2の時間区間では、配車予約可能な階床数が3であるのに対し、既に予約が入力されている階床数は「2」であるため(6階と9階)、3つ目はまだ空きの状態となっている。従って、この時間区間での配車を希望する利用者は、番号2の時間区間の「空き」欄に所望の配車階床を予約することができる。
【0069】
この場合、番号2の「空き」欄に利用者が触れるとポップアップウィンドウの形で配車予約情報の入力ウィンドウW11が立ち上がる。そして、この入力ウィンドウW11の中に、配車希望時間の記載欄W12があるため、これが正しいことを確認した上で、配車希望階欄W13、行先階欄W14、利用人数欄W15の各欄に所望の情報を登録する。
【0070】
図5の例は、ビル10の住人であれば早いもの順に予約登録できる例となる。低層マンションのように、エレベーター装置13の利用者数がそう多くない場合は、予約時間の重複がそれほど発生しないと考えられるため、このような入力形態でも良い。
<運行計画作成処理>
図6は、配車予約テーブルTが存在することを前提にして実施される、配車予約運転の運転計画を作成する処理の手順を説明するフローチャートである。この配車予約運転の運転計画を作成する処理は、図1の配車予約処理部7、特に、図2の配車予約運転計画の作成部7dで実施されるものである。
【0071】
以下、運転計画作成の処理手順を図6のフローチャートに従って説明する。
【0072】
まず、配車予約運転計画の作成部7dは、配車予約運転計画の作成時や配車予約運転実行日に該当するかを判定する(S1)。前者に該当する場合は、配車予約処理のための事前の配車運転計画作成であり、後者に該当する場合は、実際に配車予約運転を実施するための配車運転計画作成となる。Yesの場合は次の処理へ進み、Noの場合は本処理を終了する。
【0073】
次に、配車予約運転計画の作成部7dは、対象とするエレベーター装置13に対して配車予約運転の実施が設定されていかを判定する(S2)。これは図1の配車予約運転実施判定部5の出力を参照すればよい。例えば、朝の利用集中が無い場合や、利用者が配車予約運転の望まない場合は配車予約運転の実施がなくNoとなる。ここでもYesの場合は次の処理へ進み、Noの場合は本処理を終了する。
【0074】
続いて、配車予約運転計画の作成部7dは、配車予約テーブルTから配車予約運転のデータを読込み(S3)、この配車予約テーブルTのデータに基づき、各時間区間の初期設定を実施する(S4)。これは、最初の時間区間(例えば、8:00-8:03)から順番に配車運転のデータセットを処理する初期設定に対応する。
【0075】
続いて、配車予約運転計画の作成部7dは、対象とする時間区間が通常運転を実施する時間区間かを判定する(S5)。これは、例えば、図3の配車予約テーブルTであれば、5回に1回の割合で設定された通常運転の時間区間に該当するかを判定する処理である。S5でYesの場合は、当該時間区間では通常運転を実施する(S6)。一方、S5でNoの場合は、当該時間区間に配車予約があるかどうかを判定する(S7)。配車予約がある場合、すなわち、配車予約テーブルTの列C3~C5に配車階床が登録されている場合は、次の処理であるS8へ進み、配車予約が無い場合は、当該時間区間では、配車予約運転は実施せず、通常運転を実施する(S6)。
【0076】
S7でYesの場合、すなわち、対象としている時間区間に配車予約がある場合、配車予約運転計画の作成部7dは、まずは、配車予約された階と行先階を高い階床の順に整列させる(S8)。これは、想定している利用者の流れがビルの上から下へ向かうダウン方向の交通流であり、上階から順にエレベーターを配車させるため、配車予約の階および行先階を上階から順に並べる処理である。
【0077】
この処理の後、配車予約運転計画の作成部7dは、対象とする時間区間の中で、配車予約された階および行先階を順に停車するように運行計画を作成する(S9)。ここで、運行計画の作成とは、例えば、符号S9aで示したような横軸を時間、縦軸を階床の位置で示した乗りかご16の運行線図を作成することに相当する。これは鉄道で言えば、ダイヤグラム(列車運行計画)に相当する。この運行計画(運行線図)は、配車予定時間(対象とする配車予約の時間区間)、配車予定階床、行先階床、乗りかごの定格速度、エレベーターのサービス階、階床ピッチなどの情報から運行線図のように時間軸上での乗りかごの位置を算出することで作成できる。符号S9aの運行線図の例では、上の階で待機後に上から順に配車予定階へ乗りかごが配車している様子が示されている。
【0078】
このように、配車予約の情報から時間軸上での乗りかごの運行計画をあらかじめ作成することによって、配車予定の時間に確実に乗りかごを配車する運行(鉄道のような定時運行)が可能となる。
【0079】
この運行線図に基づく配車予約の運行計画を作成することより、配車予約階への到着予定時刻が決定し、配車予約運転実行部4は、利用者へこの予定時刻を連絡する(S10)。この連絡は、図1に示した携帯情報端末18aや、家庭用情報端末18bを介して、配車予約したそれぞれの利用者に対して通知される。
【0080】
続いて、配車予約運転計画の作成部7dは、対象とした時間区間が、配車予約時間帯の最後の配車時間区間かどうかを判定する(S11)。Yesの場合は本処理を終了とし、Noの場合は配車時間区間を更新して処理S5へ戻る(S12)。
【0081】
以上の処理により、配車予約運転計画の作成部7dは、配車予約時間帯内の全ての配車予約運転の時間区間に対し、運行計画を作成することができ、配車予約運転制御部8は、各運行計画に従い、エレベーター装置13を制御することができる。
<本実施例のエレベーターシステムの配車予約運転に関する情報案内>
図7は、本実施例のエレベーターシステムの携帯情報端末18aや家庭用情報端末18bに表示される、利用者に配車予約情報を連絡する案内情報の一例を示す図である。なお、これは図6のS10にて実施されるものである。
【0082】
以下、図7の内容を説明する。案内情報の画面全体W16において、利用者を特定するためのID情報(例えば、住居の番号など)、今回の案内が対象となる配車予約運転の実施期間、図6の配車予約運転計画作成のフローチャートによって算出され、確定した当該利用者の階への配車予定時間W19、配車する階W20、行先階W21、利用人数W22、さらに利用者の配車優先ポイントW23などの情報が案内される。
【0083】
配車予約の段階では、08:00-08:03という幅を持った時間区分での指定であったが、図6のフローチャートの処理ステップS9の運行計画(例えば、符号S9aのグラフ)の作成によって、各配車予約階への時刻が特定されたため、その時刻に乗車してもらうように符号W19のような詳細な時刻の案内がなされている。またその階で停車する時間も表示して、その時間までに確実に間に合って乗車するように案内がなされている。また既にその乗りかごに乗車している利用者の情報も提示している。これは既に乗車している利用者がいることを伝えて、暗にあまり待たせないことを伝える狙いもある。
【0084】
さらに配車階の表示の箇所W20では、他にその階で乗車する利用者がいるかどうかも、参考情報として提示している。
【0085】
図8Aは、本実施例のエレベーターシステムの乗り場情報端末19に表示される利用者に向けた配車予約運転情報の案内の一例を示す図となる。ここに示すように、各階の乗り場エリア12には、乗り場情報端末19が設置されており、その表示画面D1には、「配車予約運転を実施中であること」、「その実施時間帯」、「当該時間区間の利用者への乗りかごの到着予定時刻」などが表示されている。これにより、配車予約をした利用者はエレベーターの状況を確認して安心して待つことができる。また配車予約していない利用者に対しては、今の時間は通常の運転とは異なる運転を実施していることを情報提供して注意を促す効果がある。
【0086】
また、図8Bは、本実施例のエレベーターシステムの乗りかご内情報端末20に表示される乗客に向けた配車予約運転情報の案内の一例を示す図となる。ここに示すように、乗りかご16の内部には、乗りかご内情報端末20が設置されており、その表示画面D2には、「どの時間区間での配車予約運転を実施しているかの情報」、「配車予約による停止階の情報」、「利用者の行先階への到着予定時刻の情報」などが表示されている。これにより、乗客はエレベーターの今後の運転内容をあらかじめ知ることができ、安心して乗車することができる。特に、他の階の利用者によって途中で停止することや行先階への到着予定時刻の情報は、乗客が安心して乗車するために重要な情報となる。
<本実施例のエレベーターシステムの配車予約運転制御に関する処理機能>
図9は、図1の配車予約運転制御部8にて配車予約運転を制御する際に実施する、配車予約運転の実施処理の手順の例を説明するためのフローチャートを示している。この一連の処理フローは、実際の利用者が必ずしも配車予約時刻に乗り場に到着できないケースも想定して、その場合でも柔軟に対応できるような配車運転を実施することを特徴としている。
【0087】
以下、図9のフローチャートの処理を順に説明する。まず、乗りかご16が配車予定時刻に配車予約階に到着すると(S13)、配車予約運転制御部8は、当該の配車予約階から予約した人数が乗車したかを検出する(S14)。乗車人数検出には、乗りかご16が装備する荷重センサやかご内カメラを利用することができる。また、乗車人数検出にIDカードや無線タグでID情報を利用できる場合は、その情報に基づき、乗客が予約者であるかを判定してもよい。その階で配車予約した利用者全員が乗車したことを確認した場合は次の処理ステップS18へ進む。まだ乗込んでいない利用者がいる場合は、その乗りかごがその階を出発する時刻かどうかを判定する(S15)。出発時刻ではない場合は、停車状態で待機して待ち、合わせて乗りかご内の乗客に出発時間をかご内に表示装置や音声案内で通知する(S16)。
【0088】
乗りかご16がその階での出発予定時刻となった場合で、配車予約したが、予定時刻までに乗り込まなかった人が特定できる場合は、その人に対してペナルティとしてポイントを減算もしくは乗り込んだ人にポイントを加算する(S17)。これにより、利用者に予約を守るよう動機づけることができる。
【0089】
続いて、配車予約運転制御部8は、次の配車予約階があるかどうかを判定し(S18)、Yesの場合は次の配車予約階へ出発し(S19)、次の配車予約階にて処理ステップS13の処理を実行する。一方、次の配車予約階が無い場合は、一番近い行先階へ出発する(S20)。なお、図9は乗客の全員が1階で降車するような状況を想定しているため図示を省略しているが、配車予約運転制御部8は、S18のタイミングで、次の配車予約階に向かう途中に行先階があるかも判断しており、途中に行先階がある場合はその階で乗客を降ろしてから、次の配車予約階へ出発することは言うまでもない。
【0090】
図9に示した配車予約運転制御のポイントは、配車予約された階に乗りかごが到着した後、1)その階で配車予約した利用者全員が乗りかごに乗車した場合(人数もしくはID情報で判定する)、もしくは、2)その階での到着から所定の待機時間が経過した場合のいずれの条件で、乗りかごを出発させることにある。これは予約した利用者を許容範囲の時間までできるだけ待って乗車してもらうことと、一方で次の配車予約階の利用者や乗りかご内の利用者のために予定の時間に従った運転を実施するためとなる。また乗りかご内で待たされている利用者にはその理由(その階にまだ利用者がいるため待っていること)を説明することも実施する。これは利用者の不安やイライラを緩和するためのものとなる。さらに、配車予約した利用者に時間通りに確実に乗車してもらうために、ポイントを設けて、インセンティブやペナルティをポイントで実施することも特徴となる。このポイントは次の配車予約を入力する際の優先権などに反映される。
<本実施例のエレベーターシステムの配車予約運転の動作例>
図10は、配車予約運転の時間軸上での運転動作の例を説明するための図である。この図は鉄道の列車運行ダイヤグラムと同じで、エレベーターの運行線図を示している。図10に示すグラフは横軸が時間、縦軸が階床の位置を表しており、グラフの線は各時間における乗りかごの位置をトレースしたもので、かごの運行の動きを表している。従って、この図から配車予約運転の特徴をみることができる。
【0091】
まず時間については、横軸で示されているように、08:00-08:03、08:03-08:06、08:06-08:09の3つの時間区間が示されている。この例では、最大階床数Nmaxは3としているため、各時間区間で配車予約で停車している階は3個となっている。またエレベーターの乗りかごが上下に1往復(1周)する時間は必ず時間区間よりも短くなっている。このため、各時間区間で確実に時間通りに配車予約階へ配車する運行を継続できる。ここで、1周時間は時間区間よりも短いため、その差の時間は乗りかごが待機する必要があるが、図10の例では1階のロビー階(基準階とも呼ぶ)が待機階となっており、乗りかごはそこで戸閉状態で時間まで待機するようにしている。これによって不要な運転による無駄なエネルギー消費を避けるのと同時に、予定外の使用を防ぐことができる。
【0092】
図10に示す運行線図より、配車予約運転での乗りかごの運行動作の特徴をまとめると次のようになる。
【0093】
1)配車予約の時間通りに動作させるため、配車予約運転の時間帯で、配車予約運転前と運転終了後のかごを待機させる時間では、乗りかごは予定の時刻までロビー階に戸閉で待機させる。
【0094】
2)配車予約により停車する階床数は、あらかじめ定めた最大階床数Nmax以下の値とする。これにより、運行時間の範囲が限定されるため、計画した時間通りの運行が可能となる。
【0095】
3)同様に乗りかごが上下に1往復(1周)する運転時間は必ず時間区間よりも短くしている。これも時間通りの運行を実施するために必要な条件となる。
【0096】
上記の1)から3)の特徴を満たすような配車予約運転を実施することで、利用者にとって重要となる配車予約した予定時間通りの乗りかごの運行が可能となる効果がある。この結果、利用者は安心して配車予約運転を利用でき、待ち時間、行先階への到着時間も短縮できる。
【0097】
図11は、配車予約運転の時間軸上での運転動作の例を示す図で、図10とは異なる例を示している。
【0098】
図11の配車予約運転の動作のポイントは、配車予約がない時間区間では、乗りかごを配車予約ではない通常運転を実施している点にある。図11の08:03-08:06の時間区間がこれに該当しており、この時間区間では利用者の乗り場呼びに従った通常の運転を実施している。この通常運転を実施している時間区間(図11の例では08:03-08:06)における重要なポイントは、その次の時間区間では再び配車予約運転を実施するため、当該時間区間の終端(図11の例では08:06の時点)で必ず全てのサービスを終えて待機状態(ロビー階の1階で戸閉待機の状態)とさせることにある。このため、通常運転といっても制約を付ける必要があり、受付けられる乗り場呼び数、かご呼び数は、個数を限定したものとする。またこのような呼び数に関する制約を利用者に情報端末、ディスプレイを用いて通知する。
【0099】
上記のようにエレベーターの運行を制御することで、制約は生じるが、配車予約がない場合は通常運転も併用することで、配車予約運転と通常運転とを組み合わせた柔軟な運転が可能となる。これによって利用者はニーズに応じた多様な使い方ができ、さらに利便性を向上できる。
<本実施例のエレベーターシステムの配車予約運転実施の判定処理>
以上では、主に、配車予約時間帯が設定済みであるエレベーター装置13における配車予約制御を説明してきたが、この前提として、エレベーター装置13に配車予約時間帯を設定する処理が必要である。以下では、配車予約時間帯の設定処理の詳細を説明する。
【0100】
図12は、配車予約運転実施判定部5が配車予約運転の実施を判定する処理の手順の例を説明するためのフローチャートである。配車予約運転は朝のダウンピーク混雑の交通流に有効であり、限られた設備リソース(エレベーター)を利用者が適切に分担することで待ち時間を短縮できる効果がある。しかし反面、エレベーター装置13の動作を拘束するため、不適切な状況で実施すると、かえって利用者に不便な結果となりかねない。そこで、図12に示すような配車予約運転の実施条件を判定するフローチャートが重要となる。
【0101】
以下、図12のフローチャートの処理を順に説明する。まず、配車予約運転実施判定部5は、対象のエレベーター装置13が稼働しているビルの用途が、マンションもしくはホテルかを判定する(S21)。配車予約運転は、このような用途のビルに特に有効なため、まずはそれを判定する。対象としているビルの用途については図1の仕様データ蓄積部3にデータが格納されているため、配車予約運転実施判定部5は、これを参照することで判定をすることができる。判定の結果、Yesの場合は次の処理へ進み、Noの場合は終了する。
【0102】
次に、配車予約運転実施判定部5は、運行データ蓄積部2に蓄積された、当該エレベーターの過去の運行データに基づき、各階からの利用により混雑する時間帯があるかどうかを判定する(S22)。これはダウンピークによる混雑時間帯があるかどうかを判定することになる。具体的には、時間毎のエレベーターの利用人数(特に下降方向に移動した人数)、乗り場呼びの発生回数(特に下降方向の乗り場呼び発生回数)をエレベーターの利用量もしくは需要量とみなして、利用人数もしくは乗り場呼び発生回数が所定値以上となる時間帯を混雑時間帯、利用集中時間帯と判定する。尚、エレベーターの利用人数は乗りかごの荷重センサもしくはかご内カメラなどによって検出できる。判定の結果、Yesの場合は次の処理へ進み、Noの場合は終了する。
【0103】
混雑時間帯を判定した場合、配車予約運転実施判定部5は、さらに、当該過去の運行データより、その混雑時間帯において、特定の時刻に特定の階でエレベーターを利用することが多く発生しているかどうかを判定する(S23)。例えば、08:05付近で8階にほぼ必ず乗り場呼びが発生、8:07付近では6階にほぼ必ず乗り場呼びが発生して3人が乗り込むなど、日々、規則的にエレベーターを利用する利用者の存在をこの処理で判定する。このような規則的にエレベーターを使う利用者が配車予約に適しており、その数が多いほど、配車予約が効果的に実施できる可能性が高まるため、混雑時間帯の判定に加えて、処理ステップS23のような判定を実施する。ここで、多いかどうかの判定は絶対数に対するしきい値の判定や全体に対する割合に対してのしきい値などで判定する。判定の結果、Yesの場合は次の処理へ進み、Noの場合は終了する。
【0104】
処理ステップS23でYesと判定された場合は、当該混雑時間帯に対して配車予約運転を実施するのが適していると判定されたことなるため、配車予約運転実施判定部5は、その混雑している時間帯で、配車予約運転を実施するかどうかを、システムを介して各利用者に問い合わせを実施する(S24)。これは、配車予約運転は効果的ではあるが、実施している時間帯では通常のエレベーターの利用ができないため、実施に当たって利用者の同意を得ることが必要なためである。この問い合わせ時は、配車予約運転による効果、利用法の変化、デメリット、実施時間帯、複数台のエレベーターがある場合は実施するエレベーター号機などの情報を提示して、配車予約運転の実施に賛成か反対かを問い合わせるような方法を行うのが良い。
【0105】
利用者からの回答が集まると、配車予約運転実施判定部5は、回答を集約して、利用者の多数が配車予約運転の実施に同意しているかどうかを判定する(S25)。ここで、同意はできるだけ多いほどが望ましく、少なくとも対象とするエレベーターの利用者もしくは利用世帯の半数以上、できれば2/3以上、もしくは80%以上の同意があることが望ましい。
【0106】
また1週間のような短期間でトライアルに実施することへの問い合わせを実施して同意を確認した上で、トライアル後の結果でさらに問い合わせを実施することでも良い。
【0107】
配車予約運転はある条件で効果が高いものの、エレベーターの利用形態を大きく変えるため、利用者がよく理解し、納得した上で実施することが望ましい。
【0108】
問い合わせの結果、多くの同意が得られた場合は、当該時間帯において配車予約運転を実施すると判定し(S26)、配車予約運転実施のプロセスを進めていく。
【0109】
図13は、図12のフローチャートで示した配車予約運転の実施を判定する処理により、配車予約運転を実施する時間を判定した結果の例を説明するための図であり、エレベーター装置13の利用量の時間推移を表すグラフを示している。
【0110】
このグラフは、横軸が時間、縦軸が利用人数もしくは乗り場呼び発生回数であり、各時間帯におけるエレベーター装置13の利用量を表している。配車予約運転実施判定部5は、日々の運行データから、対象とするエレベーター装置13毎に、このようなグラフを算出し、利用量が判定しきい値thを超えている時間帯(例えば、08:00-08:20)を配車予約運転の候補となる混雑時間帯として抽出する。
【0111】
さらに、配車予約運転実施判定部5は、図12のフローチャートの処理によって、規則的な利用状況の発生、利用者の賛同を得るなどの条件をクリアした場合に、時間帯08:00-08:20での配車予約運転実施を決定する。尚、時間帯08:00-08:20の中をさらに細分化した時間単位(例えば4分間)が配車予約運転の時間区間となる。また、時間帯08:00-08:20以外の時間帯は通常運転の時間帯となる。
【実施例2】
【0112】
次に、図14図15を用いて、本発明の実施例2のエレベーターシステムを説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
<本実施例のエレベーターシステムの複数台のエレベーターがある場合の配車予約運転>
実施例1のエレベーターシステムは、1台のエレベーター装置13を備えたビルを対象としていたが、本実施例のエレベーターシステムは、複数台のエレベーター装置13を備えたビルを対象としている。
【0113】
図14は、本実施例に係るエレベーターシステムにおいて、配車予約運転に対する処理手順の例を説明するためのフローチャートになる。
【0114】
本実施例での配車予約運転に対する処理は、複数台のエレベーターがある利点を活かして、配車予約運転するエレベーター号機とそうではない通常運転するエレベーター号機を分けて運用するものであり、混雑状態に応じて、それぞれの運転に対して振り分ける台数を変えることが特徴となる。ここで、配車予約運転は特殊な運転となるため、基本的には通常運転のエレベーター台数の方を配車予約運転の台数よりも多くするようにする。
【0115】
以下、図14のフローチャートに従って配車予約運転に対する処理手順を説明する。
【0116】
まず、対象とするビルにおいて、同一階をサービスする複数台のエレベーターがあるかどうかを判定する(S27)。この複数台のエレベーターとしては、特に群管理されているエレベーターの場合が望ましい。
【0117】
複数台のエレベーターがある場合、次にそのエレベーターの利用に対して、ダウンピーク混雑の状況が発生しているかどうかを過去の当該エレベーターの運行データを参照して判定する(S28)。ここで、ダウンピーク混雑が発生していることの判定は、1)利用人数が所定値よりも多い、2)所定階床数以上で乗り場呼びが発生している、3)乗りかごが満員で乗車不可となる階が発生している、4)輸送能力を超えるような利用人数が発生している、などの条件で判定する。
【0118】
この判定の結果で、ダウンピーク混雑が発生していない場合は全台を通常運転のままとする(S29)。
【0119】
一方、ダウンピーク混雑が発生しており、かつ、混雑している場合は(S30)、1台のみの配車予約運転を実施する(S31)。また、より混雑している場合は(S32)、複数台の配車予約運転を実施する(S33)。ここでの配分は、配車予約運転台数≦通常運転台数となるようにする。さらに、非常に混雑している場合は(S34)、複数台の配車予約運転を実施する(S35)。ここでの配分は、配車予約運転台数>通常運転台数となるようにする。
【0120】
以上のように、複数台のエレベーター装置13を備えるビルにおいては、混雑状況に応じて、配車予約運転と通常運転の台数配分を調整することで、ビル全体としての、待ち時間の低減、行先階までの到着時間の低減、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0121】
図15は、本実施例での配車予約運転の実施状況の一例を具体的に説明する図になる。ここに例示するビルは、群管理された3台のエレベーター装置13a~13cを備えている。このような構成の場合、遠隔管制装置1は、3台のエレベーター装置13a~13cを群として制御する群管理装置21を介して各々のエレベーターの制御装置15と結ばれているため、遠隔管制装置1は、群管理装置21を介して各々のエレベーター装置13を所望の運用法で制御することができる。
【0122】
具体的には、ダウンピーク混雑の発生時に、過半数となる2台のエレベーター装置13a、13bでは群管理運転による通常運転を実施するとともに、群管理運転から外した1台のエレベーター装置13cでは配車予約運転を実施している。
【0123】
このように、複数台のエレベーターがある場合は、通常運転のエレベーターと配車予約運転のエレベーターを分けることで、通常通りにエレベーターを使いたい利用者と決まった時間に配車予約して利用したい利用者のそれぞれにニーズに応える運用が可能になる。
【符号の説明】
【0124】
1・・・遠隔管制装置
2・・・運行データ蓄積部
3・・・仕様データ蓄積部
4・・・配車予約運転実行部
5・・・配車予約運転実施判定部
6・・・配車予約条件算出部
7・・・配車予約処理部
8・・・配車予約運転制御部
9・・・利用者との情報通信部
10・・・集合住宅ビル
11・・・住居エリア
12・・・乗り場エリア
13・・・エレベーター装置
14・・・通信ネットワーク
15・・・制御装置
16、16a、16b、16c・・・乗りかご
17・・・通信ケーブル
18a・・・携帯情報端末
18b・・・家庭用情報端末
19a、19b、19c、19d・・・乗り場情報端末
20・・・乗りかご内情報端末
21・・・群管理装置
・・・配車予約テーブル
・・・配車予約時間帯通知テーブル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15