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特許7106439振動特性評価プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】振動特性評価プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20220719BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220719BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01M7/02 H
G01M99/00
G01V1/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018234420
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094968
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】599105850
【氏名又は名称】株式会社中電シーティーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永坂 英明
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227507(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3106846(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0030493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 5/00-7/04
G01M 13/00-13/04;99/00
G01V 1/00-15/00;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面上に定着された地上建築物の第1部分に設置された第1の地震計と、前記地上建築物において前記第1部分の上方に位置される第2部分に設置された第2の地震計と、からそれぞれ離散関数の形で得られる振動の観測データに基づいて、前記地上建築物の振動特性を評価する機能を、コンピュータに実現させる振動特性評価プログラムにおいて、
前記第1の地震計が出力する振動の観測データを取得する第1の取得機能と、
前記第2の地震計が出力する振動の観測データを取得する第2の取得機能と、
前記第1の取得機能により取得された振動の観測データから、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で定められる振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数における所定の定義域である第1の定義域の範囲内で導出する第1の非定常振幅スペクトル導出機能と、
前記第2の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、少なくとも一部が前記第1の定義域と重複する、時間および振動周波数の定義域である第2の定義域の範囲内で導出する第2の非定常振幅スペクトル導出機能と、
前記第1の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値と、前記第2の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値との比を、前記第1の定義域と前記第2の定義域とが重複する時間および振動周波数の定義域である第3の定義域の範囲内で導出する比導出機能と、
前記比導出機能により導出された前記比の時系列変化に基づいて、前記地上建築物の振動特性の時系列変化を評価する評価機能と、
を、前記コンピュータに実現させる、
振動特性評価プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載された振動特性評価プログラムであって、
前記第2の定義域が、前記第1の定義域と同一の範囲となるように設定されている、
振動特性評価プログラム。
【請求項3】
地面上に定着された地上建築物の第1部分に設置された第1の地震計と、前記地上建築物において前記第1部分の上方に位置される第2部分に設置された第2の地震計と、からそれぞれ離散関数の形で出力される振動の観測データに基づいて、前記地上建築物の振動特性を評価する機能を、コンピュータに実現させる振動特性評価プログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記第1の地震計が出力する振動の観測データを取得する第1の取得機能と、
前記第2の地震計が出力する振動の観測データを取得する第2の取得機能と、
前記第1の取得機能により取得された振動の観測データから、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で定められる振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数における所定の定義域である第1の定義域の範囲内で導出する第1の非定常振幅スペクトル導出機能と、
前記第2の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、少なくとも一部が前記第1の定義域と重複する、時間および振動周波数の定義域である第2の定義域の範囲内で導出する第2の非定常振幅スペクトル導出機能と、
前記第1の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値と、前記第2の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値との比を、前記第1の定義域と前記第2の定義域とが重複する時間および振動周波数の定義域である第3の定義域の範囲内で導出する比導出機能と、
前記比導出機能により導出された前記比の時系列変化に基づいて、前記地上建築物の振動特性の時系列変化を評価する評価機能と、
を、前記コンピュータに実現させる振動特性評価プログラムが記録された、
コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの地震計から出力される振動の観測データに基づいて地上建築物の振動特性を評価するための振動特性評価プログラム、および、この振動特性評価プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物が振動を受けると、その建築物の振動特性(振動に対する振幅の増幅度。振動周波数の関数)によって、特定の振動周波数に対して振動の振幅が増幅される。このため、例えば建築物の耐震性を検討する場合、その建築物の振動特性を前もって評価しておくことが重要となる。
【0003】
建築物の振動特性を評価する研究としては、例えば非特許文献1に記載された研究が知られている。この研究では、地面上に定着された地上建築物の下部と上部とにそれぞれ設置された地震計から振動の観測データを回収し、回収した観測データからコンピュータによって導出される建築物の振動特性の時系列変化を評価している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】飯場正紀、大川出、斉藤大樹、森田高市、長谷川隆:平成23年(2011 年)東北地方太平洋沖地震において観測された強震記録に基づく建築物の地震時挙動の分析、建築研究資料、No.138、pp.(5-1)-(5-14)、2012.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に記載された研究で用いられている従来の技術では、振動の観測データにおける離散関数のデータを所定の時間刻みで区切り、区切られた各データからそれぞれ振動特性を導出することで、振動特性の時系列変化を導出する。ここで、コンピュータが処理可能な振動の観測データは、振動を所定のサンプリング周波数でサンプリングした離散関数のデータに限られる。このため、振動の観測データからコンピュータによって導出される振動特性の精度は、この観測データにおける離散関数に含まれる振幅のデータの数が少なくなるほど悪くなる。また、離散関数のデータにおけるサンプリング周波数は一定の値となるため、コンピュータによって導出される振動特性の精度は、振動特性の導出に用いられる離散関数のデータが短くなるほど悪くなる。したがって、上記従来の技術では、振動特性の時系列変化における時間刻みの細かさと振動特性の精度との間にトレードオフの関係が生じていた。
【0006】
本発明の課題は、振動の離散関数のデータから振動特性の時系列変化を導出する際に、非定常振幅スペクトルを利用して離散関数のデータを区切る必要をなくすことで、振動特性の時系列変化における時間刻みの細かさと振動特性の高精度化の両立を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地面上に定着された地上建築物の第1部分に設置された第1の地震計と、地上建築物において上記第1部分の上方に位置される第2部分に設置された第2の地震計と、からそれぞれ離散関数の形で得られる振動の観測データに基づいて、地上建築物の振動特性を評価する機能を、コンピュータに実現させる振動特性評価プログラムを包含する。この振動特性評価プログラムは、それぞれ後述する第1の取得機能と、第2の取得機能と、第1の非定常振幅スペクトル導出機能と、第2の非定常振幅スペクトル導出機能と、比導出機能と、評価機能とを、コンピュータに実現させる。ここで、第1の取得機能は、第1の地震計が出力する振動の観測データを取得する機能である。また、第2の取得機能は、第2の地震計が出力する振動の観測データを取得する機能である。また、第1の非定常振幅スペクトル導出機能は、第1の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数における所定の定義域である第1の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、振動の非定常振幅スペクトルは、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で定められるものである。また、第2の非定常振幅スペクトル導出機能は、第2の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、第2の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、第2の定義域は、少なくとも一部が第1の定義域と重複する、時間および振動周波数の定義域である。また、比導出機能は、第1の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値と、第2の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値との比を、第3の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、第3の定義域は、第1の定義域と第2の定義域とが重複する時間および振動周波数の定義域である。また、評価機能は、比導出機能により導出された比の時系列変化に基づいて、地上建築物の振動特性の時系列変化を評価する機能である。
【0008】
上記の振動特性評価プログラムによれば、コンピュータは、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数である非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値の比に基づいて、振動特性の時系列変化を評価する。
【0009】
1つの好ましい実施態様では、第2の定義域が、第1の定義域と同一の範囲となるように設定されている。
【0010】
この場合、コンピュータは、第1の非定常振幅スペクトル導出機能および第2の非定常振幅スペクトル導出機能によって導出される振動の非定常振幅スペクトルのすべてを用いて、振動特性の時系列変化を評価する。
【0011】
また、地面上に定着された地上建築物の第1部分に設置された第1の地震計と、地上建築物において第1部分の上方に位置される第2部分に設置された第2の地震計と、からそれぞれ離散関数の形で出力される振動の観測データに基づいて、地上建築物の振動特性を評価する機能を、コンピュータに実現させる振動特性評価プログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明も提供される。ここで、振動特性評価プログラムは、それぞれ後述する第1の取得機能と、第2の取得機能と、第1の非定常振幅スペクトル導出機能と、第2の非定常振幅スペクトル導出機能と、比導出機能と、評価機能とを、コンピュータに実現させる。ここで、第1の取得機能は、第1の地震計が出力する振動の観測データを取得する機能である。また、第2の取得機能と、第2の地震計が出力する振動の観測データを取得する機能である。また、第1の非定常振幅スペクトル導出機能は、第1の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数における所定の定義域である第1の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、振動の非定常振幅スペクトルは、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で定められるものである。また、第2の非定常振幅スペクトル導出機能は、第2の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、第2の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、第2の定義域は、少なくとも一部が第1の定義域と重複する、時間および振動周波数の定義域である。また、比導出機能は、第1の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値と、第2の非定常振幅スペクトル導出機能により導出された非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値との比を、第3の定義域の範囲内で導出する機能である。ここで、第3の定義域は、第1の定義域と第2の定義域とが重複する時間および振動周波数の定義域である。また、評価機能は、比導出機能により導出された比の時系列変化に基づいて、地上建築物の振動特性の時系列変化を評価する機能である。
【0012】
上記のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、この記録媒体から振動特性評価プログラムをコンピュータ読み取りしたコンピュータは、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数である非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値の比に基づいて、振動特性の時系列変化を評価する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、離散関数の形で得られる振動の観測データを区切ることなく導出される非定常振幅スペクトル値の比から振動特性を評価することで、振動特性の時系列変化における時間刻みの細かさと振動特性の高精度化の両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる振動特性評価プログラムにより振動特性が評価される地上建築物10の概略構成を表した説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる振動特性評価プログラムによりコンピュータ20が実行する一連の各ステップを表したフローチャートである。
図3図2の続きを表したフローチャートである。
図4】本発明の効果を検証する実験の実験結果を表したグラフである。
図5】本発明の効果を検証する実験の実験結果を表したグラフである。
図6図3のステップS90およびステップS110の各繰り返し処理によって実現される、X方向成分の比およびY方向成分の比の導出の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を用いて、本発明の一実施形態にかかる振動特性評価プログラムについて説明する。この振動特性評価プログラムは、コンピュータ20に地上建築物10(図1参照)の振動特性を評価する機能を実現させる振動特性評価プログラムである。
【0016】
地上建築物10は、図1に示すように、地面10Aの上に定着された4階建ての建物である。この地上建築物10における最上階12の天井付近の壁である第2部分12Aには、この第2部分12Aにおける振動を観測して、観測したデータを送信する地震計である第2の地震計22が設置されている。ここで、第2の地震計22が送信するデータは、ケーブル22Bを介して、地上建築物10における1階11部分の床である第1部分11Aに設置されたデータロガー22Aに送られ、このデータロガー22Aにコンピュータ読み取りが可能な形態で記録される。
【0017】
また、第1部分11Aには、データロガー22Aとは別に、第1部分11Aにおける振動を観測する地震計である第1の地震計21と、この第1の地震計21に有線接続されて、第1の地震計21が観測したデータをコンピュータ読み取りが可能な形態で記録するデータロガー21Aとが設置されている。これらのデータロガー21A、22Aは、地上建築物10の1階11において第1部分11Aとは別の場所に設置されたコンピュータ20に有線接続されている。
【0018】
ここで、第1の地震計21は、第1部分11Aにおける振動を3軸で観測して、この振動において互いに直交する3方向の加速度波形をそれぞれ離散関数の形で求めるようになっている。この3方向の加速度波形は、具体的には、上下動の加速度波形と、水平動における所定の1方向の成分であるX方向成分の加速度波形と、水平動における、X方向成分とは直交する方向の成分であるY方向成分の加速度波形である。
【0019】
さらに、第1の地震計21は、観測した振動が地震動であるか否かを判定して、地震動であると判定した場合には求めた各加速度波形を「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータとしてデータロガー21Aに出力するようになっている。また、データロガー21Aは、第1の地震計21から出力されたデータが「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータである場合に、このひとまとまりのデータを、「地震動」のフラグが付された態様で記録するようになっている。
【0020】
また、第2の地震計22は、第2部分12Aにおける振動を3軸で観測して、この振動において互いに直交する3方向の加速度波形をそれぞれ離散関数の形で求めるようになっている。ここで、第2の地震計22が加速度波形を出力する3方向は、第1の地震計21が加速度波形を出力する3方向と同じ方向となるように設定されている。
【0021】
さらに、第2の地震計22は、観測した振動が地震動であるか否かを判定して、地震動であると判定した場合には求めた各加速度波形を「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータとして送信するようになっている。また、データロガー22Aは、第1の地震計21から受信したデータが「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータである場合に、このひとまとまりのデータを、「地震動」のフラグが付された態様で記録するようになっている。
【0022】
コンピュータ20は、上記振動特性評価プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録された記録媒体20Aを備えている。また、コンピュータ20は、2つのデータロガー21A、22Aに記録されたデータを常時検索し、これらのデータロガー21A、22Aの両方において「地震動」のフラグが付されたデータが検索された場合に、上記振動特性評価プログラムを実行するようにプログラミングされている。なお、コンピュータ20は、2つのデータロガー21A、22Aの一方のみから「地震動」のフラグが付されたデータが検索される状態が所定の時間(例えば10[秒])継続した場合に、検索されたデータから「地震動」のフラグを削除するようにプログラミングされている。
【0023】
ここで、上記振動特性評価プログラムによりコンピュータ20が実行する一連の各ステップについて、図2および図3に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップにおいて、コンピュータ20は、まず、図2のステップS10を実行する。
【0024】
ステップS10において、コンピュータ20は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、ステップS20に進む。
【0025】
ステップS20において、コンピュータ20は、データロガー21Aから「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータ(以下、「第1のデータ」とも称する。)を取得する。この第1のデータは、第1の地震計21が出力する振動の観測データであり、この観測データを取得する機能は、本発明における「第1の取得機能」に相当する。言いかえると、ステップS20において、コンピュータ20は、第1の地震計21が出力する振動の観測データを取得する第1の取得機能を実現させる。なお、ステップS20において第1のデータを取得したコンピュータ20は、データロガー21Aのデータからこのデータに付された「地震動」のフラグを削除する処理を行い、ステップS30に進む。
【0026】
ステップS30において、コンピュータ20は、データロガー22Aから「地震動」のフラグが付されたひとまとまりのデータ(以下、「第2のデータ」とも称する。)を取得する。この第2のデータは、第2の地震計22が出力する振動の観測データであり、この観測データを取得する機能は、本発明における「第2の取得機能」に相当する。言いかえると、ステップS30において、コンピュータ20は、第2の地震計22が出力する振動の観測データを取得する第2の取得機能を実現させる。なお、ステップS30において第2のデータを取得したコンピュータ20は、データロガー22Aのデータからこのデータに付された「地震動」のフラグを削除する処理を行い、ステップS40に進む。
【0027】
ステップS40において、コンピュータ20は、ステップS20にて取得された第1のデータから、X方向成分およびY方向成分の加速度波形をそれぞれ抽出し、抽出した各加速度波形から振動の非定常振幅スペクトルを導出して、ステップS50に進む。ここで、各非定常振幅スペクトルは、時間および振動周波数を離散変数として有する2変数関数であり、その離散変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域(以下、「第1の定義域」とも称する。)が設定されている。
【0028】
すなわち、ステップS40において、コンピュータ20は、第1の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、第1の定義域の範囲内で導出する第1の非定常振幅スペクトル導出機能を実現させる。なお、ステップS40において、第1の定義域は、ステップS20において取得された第1のデータにおける時間の最小値(すなわち、第1の地震計21が、出力する加速度波形に「地震動」のフラグを付け始めた瞬間の時間)を時間の原点として設定される。
【0029】
なお、本実施形態においては、コンピュータ20は、ステップS40において、振動の非定常振幅スペクトルを、窓関数が掛け合わされることで平滑化された態様の関数として導出する。ここで、上記窓関数は、具体的には例えばハニング窓関数もしくはハミング窓関数または一般化ハミング窓関数である。
【0030】
ステップS50において、コンピュータ20は、ステップS30にて取得された第2のデータから、X方向成分およびY方向成分の加速度波形をそれぞれ抽出し、抽出した各加速度波形から振動の非定常振幅スペクトルを導出して、ステップS60に進む。ここで、各非定常振幅スペクトルは、時間および振動周波数を離散変数として有する2変数関数であり、その離散変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域(以下、「第2の定義域」とも称する。)が設定されている。
【0031】
すなわち、ステップS50において、コンピュータ20は、第2の取得機能により取得された振動の観測データから、振動の非定常振幅スペクトルを、第2の定義域の範囲内で導出する第2の非定常振幅スペクトル導出機能を実現させる。なお、第2の定義域は、ステップS30において取得された第2のデータにおける時間の最小値(すなわち、第2の地震計22が、出力する加速度波形に「地震動」のフラグを付け始めた瞬間の時間)を時間の原点として設定される。これにより、第2の定義域は、第1の定義域と少なくとも一部が重複される。本実施形態においては、第2の定義域は、第1の定義域と同一の範囲となるように設定される。
【0032】
なお、本実施形態においては、コンピュータ20は、ステップS50において、振動の非定常振幅スペクトルを、窓関数が掛け合わされることで平滑化された態様の関数として導出する。ここで、上記窓関数は、具体的には例えばハニング窓関数もしくはハミング窓関数または一般化ハミング窓関数である。
【0033】
ステップS60において、コンピュータ20は、第1の定義域と第2の定義域とが重複する時間および振動周波数の定義域である第3の定義域を設定し、ステップS70に進む。本実施形態においては、第2の定義域は、第1の定義域と同一の範囲となるように設定されているため、第3の定義域は、第1の定義域および第2の定義域と同一の範囲となるように設定される。
【0034】
ステップS70において、コンピュータ20は、後述するステップS110(図3参照)の繰り返し処理に用いるカウンターである時間カウンターaを設定し、ステップS80に進む。
【0035】
ステップS80において、コンピュータ20は、後述するステップS90(図3参照)の繰り返し処理に用いるカウンターである振動周波数カウンターbを設定し、図3に示すステップS90に進む。なお、ステップS80において、振動周波数カウンターbの値は、ステップS60にて設定される第3の定義域における振動周波数の最小値が設定される。
【0036】
ステップS90において、コンピュータ20は、後述するステップS100からステップS190に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、振動周波数カウンターbの値が第3の定義域から外れるまでの間、時間カウンターaおよび振動周波数カウンターbの値を変更しながら繰り返し実行される。なお、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbの値が第3の定義域から外れると、ステップS90の繰り返し処理をストップさせてその処理をステップS200に進める。
【0037】
ステップS100において、コンピュータ20は、時間カウンターaの値を再設定し、ステップS110に進む。なお、ステップS100において、時間カウンターaの値は、第3の定義域のうち、振動周波数の値が現時点での振動周波数カウンターbの値に等しいライン状の部分における、時間の最小値が設定される。
【0038】
ステップS110において、コンピュータ20は、後述するステップS120からステップS170に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、時間カウンターaの値が第3の定義域から外れるまでの間繰り返し実行される。なお、コンピュータ20は、時間カウンターaの値が第3の定義域から外れると、ステップS110の繰り返し処理をストップさせてその処理をステップS180に進める。
【0039】
ステップS120において、コンピュータ20は、第3の定義域のうち、振動周波数の値が現時点での振動周波数カウンターbの値に等しく、かつ、時間の値が現時点での時間カウンターaの値に等しいポイントを抽出ポイントとして設定し、ステップS130に進む。
【0040】
ステップS130において、コンピュータ20は、ステップS40およびステップS50にて導出された各非定常振幅スペクトルに対し、直前に実行されたステップS120にて設定された抽出ポイントの時間および振動周波数を代入して、ステップS140に進む。この処理により、コンピュータ20は、ステップS40およびステップS50において導出された第1のデータ由来の非定常振幅スペクトルおよび第2のデータ由来の非定常振幅スペクトルに対し、抽出ポイントにおける非定常振幅スペクトル値を抽出する。本実施形態においては、ステップS130において、第1のデータ由来のX方向成分の非定常振幅スペクトルと、第1のデータ由来のY方向成分の非定常振幅スペクトルと、第2のデータ由来のX方向成分の非定常振幅スペクトルと、第2のデータ由来のY方向成分の非定常振幅スペクトルと、のそれぞれに対し、抽出ポイントにおける非定常振幅スペクトル値が抽出される。
【0041】
ステップS140において、コンピュータ20は、直前に実行されたステップS130にて抽出された、第1のデータ由来の非定常振幅スペクトル値と第2のデータ由来の非定常振幅スペクトル値との比を、非定常振幅スペクトルの方向成分ごとに導出して、ステップS150に進む。本実施形態においては、コンピュータ20は、第1のデータ由来のX方向成分から抽出される非定常振幅スペクトル値と第2のデータ由来のX方向成分から抽出される非定常振幅スペクトル値との比(以下、「X方向成分の比」とも称する。)、および、第1のデータ由来のY方向成分から抽出される非定常振幅スペクトル値と第2のデータ由来のY方向成分から抽出される非定常振幅スペクトル値との比(以下、「Y方向成分の比」とも称する。)、のそれぞれを導出する。ここで、時間カウンターaおよび振動周波数カウンターbの値を変更しながら繰り返されるステップS90の繰り返し処理において、ステップS140を実行するコンピュータ20の機能は、本発明における「比導出機能」に相当する。
【0042】
ステップS150において、コンピュータ20は、直前に実行されたステップS140にて導出された非定常振幅スペクトル値の比であるX方向成分の比およびY方向成分の比を記録媒体20A(図1参照)に保存し、ステップS160に進む。この際、コンピュータ20は、X方向成分の比およびY方向成分の比を、直近に実行されたステップS120にて設定された抽出ポイントと対応付けた態様で保存する。
【0043】
ステップS160において、コンピュータ20は、時間カウンターaの値を、上記ライン状の部分において現時点における時間カウンターaの値よりも大きな値をとる時間の最小値となるように増やし、ステップS170に進む。ただし、現時点における時間カウンターaの値が上記ライン状の部分における時間の最大値に等しい場合、コンピュータ20は、時間カウンターaの値を第3の定義域から外れた値となるように増やし、ステップS170に進む。
【0044】
ステップS170は、上述したステップS110の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、コンピュータ20は、時間カウンターaの値が第3の定義域から外れている場合はその処理をステップS180に進め、そうでない場合はその処理をステップS120に進める。
【0045】
ステップS180において、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbの値を、第3の定義域において現時点における振動周波数カウンターbの値よりも大きな値をとる振動周波数の最小値となるように増やし、ステップS190に進む。ただし、現時点における振動周波数の値が第3の定義域における振動周波数の最大値に等しい場合、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbの値を第3の定義域から外れた値となるように増やし、ステップS190に進む。
【0046】
ステップS190は、上述したステップS90の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbの値が第3の定義域から外れている場合はその処理をステップS200に進め、そうでない場合はその処理をステップS100に進める。
【0047】
ここで、上述したステップS90およびステップS110の各繰り返し処理によって実現される、X方向成分の比およびY方向成分の比の導出の例について、図6を用いて説明する。この導出の例では、第3の定義域30(図6参照)は、振動周波数の値と時間の値との組を(振動周波数の値,時間の値)の記法で表す場合に、集合{(b1,a1),(b1,a2),(b2,a1),(b2,a2)}(ただしb2>b1、a2>a1)の形で表されるものとする。
【0048】
上述したステップS90およびステップS110の各繰り返し処理が始まる直前のステップS80において、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbとして、第3の定義域30における振動周波数の最小値であるb1を設定する。また、続くステップS100において、コンピュータ20は、時間カウンターaとして、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb1に等しいライン状の部分31における時間の最小値であるa1を設定する。
【0049】
続いて、コンピュータ20は、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb1に等しく、時間の値がa1に等しいポイントである元31Aを抽出ポイントとして設定する(ステップS120)。そして、コンピュータ20は、抽出ポイントにおけるX方向成分の比およびY方向成分の比を導出して(ステップS130、ステップS140)記録媒体20A(図1参照)に保存する(ステップS150)。
【0050】
ここで、現時点での時間カウンターaの値であるa1はライン状の部分31における時間の最大値ではないため、コンピュータ20は、続くステップS160において、時間カウンターaの値を、ライン状の部分31においてa1よりも大きな値をとる時間の最小値であるa2に増やす。このa2は第3の定義域30から外れた値ではないため、コンピュータ20は、その処理をステップS120に進める(ステップS170)。
【0051】
すなわち、コンピュータ20は、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb1に等しく、時間の値がa2に等しいポイントである元31Bを抽出ポイントとして設定する。そして、コンピュータ20は、抽出ポイントにおけるX方向成分の比およびY方向成分の比を導出して(ステップS130、ステップS140)記録媒体20A(図1参照)に保存する(ステップS150)。
【0052】
ここで、現時点での時間カウンターaの値であるa2はライン状の部分31における時間の最大値であるため、コンピュータ20は、時間カウンターaの値を第3の定義域30から外れた値に増やし(ステップS160)、その処理をステップS180に進める(ステップS170)。
【0053】
このとき、現時点での振動周波数カウンターbの値であるb1は第3の定義域30における振動周波数の最大値ではないため、コンピュータ20は、ステップS180において、振動周波数カウンターbの値を、第3の定義域30においてb1よりも大きな値をとる振動周波数の最小値であるb2に増やす。このb2は第3の定義域30から外れた値ではないため、コンピュータ20は、その処理をステップS100に進める(ステップS190)。すなわち、コンピュータ20は、時間カウンターaとして、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb2に等しいライン状の部分32における時間の最小値であるa1を設定する。
【0054】
続いて、コンピュータ20は、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb2に等しく、時間の値がa1に等しいポイントである元32Aを抽出ポイントとして設定する(ステップS120)。そして、コンピュータ20は、抽出ポイントにおけるX方向成分の比およびY方向成分の比を導出して(ステップS130、ステップS140)記録媒体20A(図1参照)に保存する(ステップS150)。
【0055】
ここで、現時点での時間カウンターaの値であるa1はライン状の部分32における時間の最大値ではないため、コンピュータ20は、続くステップS160において、時間カウンターaの値を、ライン状の部分32においてa1よりも大きな値をとる時間の最小値であるa2に増やす。このa2は第3の定義域30から外れた値ではないため、コンピュータ20は、その処理をステップS120に進める(ステップS170)。
【0056】
すなわち、コンピュータ20は、第3の定義域30のうち、振動周波数の値がb2に等しく、時間の値がa2に等しいポイントである元32Bを抽出ポイントとして設定する。そして、コンピュータ20は、抽出ポイントにおけるX方向成分の比およびY方向成分の比を導出して(ステップS130、ステップS140)記録媒体20A(図1参照)に保存する(ステップS150)。
【0057】
このとき、現時点での振動周波数カウンターbの値であるb2は第3の定義域30における振動周波数の最大値であるため、コンピュータ20は、振動周波数カウンターbの値を第3の定義域30から外れた値に増やし(ステップS180)、その処理をステップS200に進める(ステップS190)。
【0058】
ステップS200において、コンピュータ20は、まず、ステップS90の繰り返し処理において記録媒体20A(図1参照)に保存されたX方向成分の比およびY方向成分の比のデータを取得する。ついで、コンピュータ20は、取得した各データを、これらのデータに対応付けられた抽出ポイントの時間の値に基づいてソートすることで、X方向成分の比およびY方向成分の比のそれぞれについて、これらの時系列変化を導出する。そして、コンピュータ20は、導出した各時系列変化に基づいて地上建築物10(図1参照)の振動特性の時系列変化を評価する。言いかえると、コンピュータ20は、X方向成分の比およびY方向成分の比の時系列変化に基づいて、地上建築物10の振動特性の時系列変化を評価する評価機能を実現させる。
【0059】
なお、本実施形態においては、コンピュータ20は、ステップS200において、下記の処理により上記評価機能を実現させる。すなわち、コンピュータ20は、導出されたX方向成分の比の時系列変化およびY方向成分の比の時系列変化のそれぞれに対し、これらの時間断面を複数導出する。続いて、コンピュータ20は、導出された各時間断面においてその最大値をもたらす振動周波数を卓越振動周波数とすることで、X方向成分の比の時系列変化およびY方向成分の比の時系列変化をそれぞれ卓越振動周波数の時間変化に変換する。そして、コンピュータ20は、これらの卓越振動周波数が変化するときを探して、このときに地上建築物10の振動特性が変化すると評価する処理を行う。また、ステップS200において上記評価機能を実現させたコンピュータ20は、その評価結果を記録媒体20A(図1参照)に保存して、振動特性評価プログラムの終了処理を行う。
【0060】
上述した振動特性評価プログラムによれば、コンピュータ20は、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数である非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値の比に基づいて、振動特性の時系列変化を評価する。ここで、非定常振幅スペクトルは、離散関数の形で得られる振動の観測データを区切ることなく導出される。したがって、振動特性の時系列変化における時間刻みの細かさと振動特性の高精度化の両立が可能となる。
【0061】
また、上述した振動特性評価プログラムによれば、第1の非定常振幅スペクトル導出機能および第2の非定常振幅スペクトル導出機能によって導出される振動の非定常振幅スペクトルのすべてを用いて、振動特性の時系列変化を評価する。したがって、非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値の比に基づいて振動特性の時系列変化を評価する際のデータの欠落を回避して、振動特性の精度を向上させることができる。
【0062】
また、上述した振動特性評価プログラムによれば、振動の非定常振幅スペクトルを窓関数が掛け合わされることで平滑化された態様の関数として導出することで、非定常振幅スペクトルの非定常振幅スペクトル値が0または0に近い値をとる可能性が低くなる。したがって、上記非定常振幅スペクトル値の比を求める際に、0または0に近い値による除算によって比の導出結果が異常となる可能性を低減させることができる。
【0063】
なお、本発明者は、上述した振動特性評価プログラムの有用性についての検証を行った。この検証は、強震観測網を構成する観測点の1つである建築物Z(図示せず)において観測された兵庫県南部地震の強震記録を用いて、建築物Zの振動特性を評価することで行った。
【0064】
ここで、建築物Zは、地上15階、地下3階の高層ビルであり、その最上階と地下3階とにそれぞれ振動を3軸で観測する加速度計が設置されている。これらの加速度計は、それぞれ、南から9[°]だけ西によった水平方向の加速度波形をX方向成分とし、西から9[°]だけ北によった水平方向の加速度波形をY方向成分とし、鉛直方向の加速度波形を上下方向成分として求めるようになっている。
【0065】
また、兵庫県南部地震の強震記録としては、上記強震観測網の運用者が所有している強震観測データベースにある、建築物Zの各加速度計が離散関数の形で観測した強震記録を使用した。この強震記録は、上記運用者が地震動であると判断したひとまとまりのデータである。
【0066】
本発明者は、上記強震記録のうち、建築物Zの地下3階にある加速度計にて観測されたデータを第1のデータとし、建築物Zの最上階にある加速度計にて観測されたデータを第2のデータとして、上述した振動特性評価プログラムを実行した。そして、本発明者は、導出されたX方向成分の比およびY方向成分の比の各時系列変化から、X方向成分およびY方向成分の卓越振動周波数の時間変化を求め、そのグラフから地上建築物10の振動特性の変化を評価することができるか否かを検証した。この際、本発明者は、X方向成分またはY方向成分を10[秒]の時間刻みで区切り、区切られた各データからそれぞれ卓越振動周波数を導出することで求めた卓越振動周波数の時間変化を、コントロールとして使用した。
【0067】
上記検証によれば、図4および図5に示すように、X方向成分から求められた卓越振動周波数(A)およびY方向成分から求められた卓越振動周波数(B)には、それぞれ経時的な減少傾向が見られ、これらの減少傾向には対数近似曲線をフィッティングすることができた。一方、X方向成分から求められたコントロール(C)およびY方向成分から求められたコントロール(D)は、上記(A)または(B)と比して振動周波数および時間刻みの両方で精度が悪く、時間変化の有無を判断することができなかった。
【0068】
ここで、建築物に強震動が作用する際に、その卓越振動周波数が減少することは、建築物において、その固有周波数がより小さい値をとるように振動特性が変化し、応答塑性率(正規化された応答変位の最大値)がより大きくなることを意味する。ここから、上述した振動特性評価プログラムは、地上建築物の振動特性の変化を、上述した従来の技術よりも適切に評価することができるといえる。
【0069】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0070】
(1)上述した第2の定義域は、上述した第1の定義域と同一の範囲である必要はなく、第1の定義域と重複する範囲を含むという条件の下で種々に変更することができる。
【0071】
(2)第1の地震計および第2の地震計は3軸の加速度計である必要はない。すなわち、第1の地震計および第2の地震計は加速度計、速度計、変位計のいずれであってもよく、その検出軸数および検出方向は適宜変更することができる。また、地上建築物における第1の地震計および第2の地震計の設置場所は、第2の地震計が第1の地震計の設置場所の上方に位置されるという条件の下で任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 地上建築物
10A 地面
11 1階
11A 第1部分
12 最上階
12A 第2部分
20 コンピュータ
20A 記録媒体
21 第1の地震計
21A データロガー
22 第2の地震計
22A データロガー
22B ケーブル
30 第3の定義域
31 ライン状の部分
31A 元
31B 元
32 ライン状の部分
32A 元
32B 元
図1
図2
図3
図4
図5
図6