(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】制御装置及びその誤差補正方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20220719BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
G01D5/244 F
(21)【出願番号】P 2018238156
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】島田 大志
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032480(JP,A)
【文献】特開2013-072867(JP,A)
【文献】特開2002-296014(JP,A)
【文献】特開平01-156603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア信号によって励磁されたレゾルバから検出された位相の異なる第1及び第2位相信号のうち、前記第1位相信号の位相をシフトする第1位相シフタと、
前記第2位相信号の位相をシフトする第2位相シフタと、
前記第1位相シフタによって位相シフトされた前記第1位相信号と、前記第2位相シフタによって位相シフトされた前記第2位相信号と、を合成することにより、前記キャリア信号が前記レゾルバのロータの回転角によって変調された位相変調信号を出力する合成器と、
前記位相変調信号に含まれる磁気ノイズを除去するバンドパスフィルタと、
前記ロータの回転速度に基づいて前記合成器のゲインを調整するゲイン調整回路と、
を備え
、
前記ゲイン調整回路は、前記合成器から出力される前記位相変調信号が飽和しない所定の範囲で最大値を示すように、前記合成器のゲインを調整するように構成されている、
制御装置。
【請求項2】
前記ゲイン調整回路は、前記ロータの回転速度が大きくなるほど前記合成器のゲインを小さくし、前記ロータの回転速度が小さくなるほど前記合成器のゲインを大きくするように構成されている、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記合成器は、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、一端に前記第1位相シフタの出力信号が供給される第1入力抵抗と、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、一端に前記第2位相シフタの出力信号が供給される第2入力抵抗と、
前記第1及び前記第2入力抵抗のそれぞれの他端から出力される信号の合成信号を増幅するオペアンプと、
前記オペアンプの出力信号を当該オペアンプの入力に帰還させる帰還抵抗と、
を有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記合成器は、
一端に前記第1位相シフタの出力信号が供給される第1入力抵抗と、
一端に前記第2位相シフタの出力信号が供給される第2入力抵抗と、
前記第1及び前記第2入力抵抗のそれぞれの他端から出力される信号の合成信号を増幅するオペアンプと、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、前記オペアンプの出力信号を当該オペアンプの入力に帰還させる帰還抵抗と、
を有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記合成器は、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、一端に前記第1位相シフタの出力信号が供給される第1入力抵抗と、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、一端に前記第2位相シフタの出力信号が供給される第2入力抵抗と、
前記第1及び前記第2入力抵抗のそれぞれの他端から出力される信号の合成信号を増幅するオペアンプと、
前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成され、前記オペアンプの出力信号を当該オペアンプの入力に帰還させる帰還抵抗と、
を有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ロータの回転速度及びそれに対応する前記合成器のゲインの情報が格納されたメモリをさらに備えた、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記合成器の出力信号をモニタするモニタ回路をさらに備え、
前記ゲイン調整回路は、前記モニタ回路によるモニタ結果を用いて、前記ロータの回転速度に対応する前記合成器のゲインの情報を取得するように構成されている、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ゲイン調整回路によって取得された、前記ロータの回転速度及びそれに対応する前記合成器のゲインの情報が格納されたメモリをさらに備えた、
請求項
7に記載の制御装置。
【請求項9】
補正信号を生成する補正回路と、
前記補正信号が伝搬する抵抗素子と、をさらに備え、
前記合成器は、前記第1位相信号及び前記第2位相信号に加えて、前記抵抗素子を介して供給される前記補正信号を合成することにより、前記位相変調信号を出力するように構成され、
前記補正回路は、前記位相変調信号の包絡線の変動幅が最も小さくなるような振幅及び位相の前記補正信号を生成するように構成され、
前記抵抗素子は、前記ゲイン調整回路によって抵抗値を調整可能に構成されている、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1及び前記第2位相信号の位相差は略90°であって、
前記第1及び前記第2位相シフタは、それぞれによる位相シフト量の差が略90°となるように構成されている、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1位相シフタは、前記キャリア信号の周波数よりも低い第1周波数の極を持つように構成され、
前記第2位相シフタは、前記キャリア信号の周波数よりも高い第2周波数の極を持つように構成されている、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
前記第1及び前記第2位相シフタは、前記キャリア信号の周波数をfc、前記キャリア信号の周波数よりも低い前記第1周波数をf1、前記キャリア信号の周波数よりも高い前記第2周波数をf2、任意の正の実数をnとすると、f1=fc/n且つf2=fc×nを満たすように構成されている、
請求項
11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記位相変調信号と前記キャリア信号との位相差に基づいて前記レゾルバのロータの回転角を検出し、その検出結果に基づいてモータを制御する制御器をさらに備えた、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
モータと、
前記モータの回転軸にロータが取り付けられたレゾルバと、
前記レゾルバの回転角に基づいて前記モータを制御する請求項
13に記載の制御装置と、
を備えた、モータ制御システム。
【請求項15】
キャリア信号によって励磁されたレゾルバから検出された位相の異なる第1及び第2位相信号のうち、前記第1位相信号の位相を第1位相シフタによってシフトし、
前記第2位相信号の位相を第2位相シフタによってシフトし、
前記第1位相シフタによって位相シフトされた前記第1位相信号と、前記第2位相シフタによって位相シフトされた前記第2位相信号とを、合成器を用いて合成することにより、前記キャリア信号が前記レゾルバのロータの回転角によって変調された位相変調信号を出力し、
前記位相変調信号に含まれる磁気ノイズを除去し、
前記ロータの回転速度に基づいて前記合成器のゲインを調整する、
制御装置の誤差補正方法であって、
前記合成器から出力される前記位相変調信号が飽和しない所定の範囲で最大値を示すように、前記合成器のゲインを調整する、
制御装置の誤差補正方法。
【請求項16】
前記ロータの回転速度が大きくなるほど前記合成器のゲインを小さくし、前記ロータの回転速度が小さくなるほど前記合成器のゲインを大きくする、
請求項
15に記載の制御装置の誤差補正方法。
【請求項17】
前記合成器の出力信号をモニタし、
モニタした結果を用いて、前記ロータの回転速度に対応する前記合成器のゲインの情報を取得し、
取得した結果を用いて、前記合成器のゲインを前記ロータの回転速度に応じたゲインとなるように調整する、
請求項
15に記載の制御装置の誤差補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置及びその誤差補正方法に関し、例えばロータ回転角を精度良く検出するのに適した制御装置及びその誤差補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの回転軸に取り付けられたレゾルバのロータ部分の回転角を、レゾルバから出力される電気信号から算出し、その算出結果に基づいてモータを制御する制御装置が開示されている。
【0003】
この制御装置は、例えば、レゾルバのステータ部分に配置された励磁コイルに正弦波のキャリア信号を供給することによって、レゾルバに磁場を発生させる。ここで、レゾルバに発生した磁場は、レゾルバのロータ部分の回転によって変動する。励磁コイルとともにレゾルバのステータ部分に配置された2つの検出コイルは、レゾルバに発生した磁場の変動を検出して、2相の位相信号として出力する。この制御装置は、2相の位相信号から、ロータの回転角を算出している。
【0004】
ここで、レゾルバに設けられた励磁コイルや検出コイルには、モータにおいて発生した磁束が漏れてこれらのコイルと鎖交することにより、意図しない電圧信号が誘起されて磁気ノイズとなることが知られている。磁気ノイズは、レゾルバがキャリア信号によって励磁されていない場合でも、モータが回転しているだけで発生し、2相の位相信号に重畳されるため、ロータ回転角の検出精度を低下させてしまう。そこで、この制御装置は、バンドパスフィルタを用いることにより、2相の位相信号の合成信号に含まれる磁気ノイズを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された制御装置では、モータの回転速度(所定時間当たりの回転数)の上昇に伴って磁気ノイズが大きくなった場合、2相の位相信号の合成信号が飽和してしまい(クリップしてしまい)、高調波成分が発生してしまうため、ロータ回転角の検出精度が低下してしまうという問題があった。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、制御装置は、キャリア信号によって励磁されたレゾルバから検出された位相の異なる第1及び第2位相信号のうち、前記第1位相信号の位相をシフトする第1位相シフタと、前記第2位相信号の位相をシフトする第2位相シフタと、前記第1位相シフタによって位相シフトされた前記第1位相信号と、前記第2位相シフタによって位相シフトされた前記第2位相信号と、を合成することにより、前記キャリア信号が前記レゾルバのロータの回転角によって変調された位相変調信号を出力する合成器と、前記位相変調信号に含まれる磁気ノイズを除去するバンドパスフィルタと、前記ロータの回転速度に基づいて前記合成器のゲインを調整するゲイン調整回路と、を備える。
【0008】
また、一実施の形態によれば、制御装置の誤差補正方法は、キャリア信号によって励磁されたレゾルバから検出された位相の異なる第1及び第2位相信号のうち、前記第1位相信号の位相を第1位相シフタによってシフトし、前記第2位相信号の位相を第2位相シフタによってシフトし、前記第1位相シフタによって位相シフトされた前記第1位相信号と、前記第2位相シフタによって位相シフトされた前記第2位相信号とを、合成器を用いて合成することにより、前記キャリア信号が前記レゾルバのロータの回転角によって変調された位相変調信号を出力し、前記位相変調信号に含まれる磁気ノイズを除去し、前記ロータの回転速度に基づいて前記合成器のゲインを調整する。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、ロータ回転角を精度良く検出することが可能な制御装置及びその誤差補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態の概要に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る制御装置が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。
【
図3】位相シフタの具体的な構成例を示す図である。
【
図4】合成器に設けられた可変抵抗の第1の具体的な構成例を示す図である。
【
図5】合成器に設けられた可変抵抗の第2の具体的な構成例を示す図である。
【
図6】バンドパスフィルタ通過前の位相変調信号の波形を示す図である。
【
図7】バンドパスフィルタ通過後の位相変調信号の波形を示す図である。
【
図8】ロータの回転速度と、位相変調信号に対する磁気ノイズの割合と、の関係を示す図である。
【
図9】メモリに格納されているロータの回転速度及びそれに対応する合成器のゲインの情報の一例を示す図である。
【
図10】キャリア信号と、位相変調信号と、の関係を示す図である。
【
図11】キャリア周波数のクロック信号と、整形後の位相変調信号と、の関係を示す図である。
【
図12】
図2に示すモータ制御システムの変形例を示す図である。
【
図13】
図2に示すモータ制御システムに用いられた制御装置の第1の変形例を示す図である。
【
図14】
図2に示すモータ制御システムに用いられた制御装置の第2の変形例を示す図である。
【
図15】実施の形態2に係る制御装置が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。
【
図16】角度誤差成分がない場合におけるキャリア信号と第1及び第2位相信号との例を示す図である。
【
図17】角度誤差成分がある場合におけるキャリア信号と第1及び第2位相信号との例を示す図である。
【
図18】実施の形態3に係る制御装置が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。
【
図19】
図18に示す制御装置による、ロータの回転速度及びそれに対応する合成器のゲインの情報の取得方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
(実施形態の概要)
図1は、実施の形態の概要に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図1において、制御装置1は、位相シフタ101,102と、合成器103と、バンドパスフィルタ(BPF)329と、ゲイン調整回路141と、を備える。
【0013】
制御装置1は、キャリア周波数fcの正弦波のキャリア信号を、レゾルバのステータ部分に配置された励磁コイルに出力する。レゾルバには、励磁コイルに供給された正弦波のキャリア信号によって励磁されることにより、磁場が発生する。ここで、レゾルバに発生した磁場は、レゾルバのロータ部分の回転によって変動する。励磁コイルとともにレゾルバのステータ部分に配置された2つの検出コイルは、レゾルバ201に発生した磁場の変動を検出して、2相の位相信号として出力する。
【0014】
位相シフタ101は、キャリア周波数fcより低い周波数f1の極を持つように構成され、一方の検出コイルによって検出された位相信号(第1位相信号)の位相をシフトする。位相シフタ102は、キャリア周波数fcより高い周波数f2の極を持つように構成され、他方の検出コイルによって検出された位相信号(第2位相信号)の位相をシフトする。
【0015】
合成器103は、位相シフタ101によって位相シフトされた第1位相信号と、位相シフタ102によって位相シフトされた第2位相信号と、を合成する。それにより、キャリア信号がロータ回転角によって位相変調された信号(位相変調信号)が得られる。
【0016】
バンドパスフィルタ329は、位相変調信号に含まれる磁気ノイズを減衰(除去)して出力する。磁気ノイズは、モータ202において発生した磁束が漏れて、レゾルバ201に設けられたコイルと鎖交することによって、当該コイルに誘起された電圧信号である。この磁気ノイズは、ロータの回転速度の上昇に比例して大きくなる。
【0017】
例えば、磁気ノイズが除去された位相変調信号と、キャリア信号と、の位相差から、レゾルバのロータ部分の回転角(即ち、モータの回転角)を算出することができる。例えば、制御装置1は、算出されたロータ回転角に基づいて、モータを制御する。
【0018】
ゲイン調整回路141は、ロータの回転速度に基づいて合成器103のゲインを調整する。例えば、ゲイン調整回路141は、ロータの回転速度が大きくなるほど合成器103のゲインを小さくなるように調整する。それにより、ロータの回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが大きくなった場合でも、合成器103から出力される合成信号が飽和しなくなる(クリップしなくなる)ため、高調波成分の発生が抑制される。
【0019】
また、ゲイン調整回路141は、ロータの回転速度が小さくなるほど合成器103のゲインを大きくなるように調整する。それにより、ロータの回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが小さくなった場合には、合成器103のゲインが大きくなるため、合成器103の出力信号に対する熱雑音等のノイズの割合、即ち、SN比(Signal to Noise ratio)の悪化が抑制される。
【0020】
このように、実施の形態の概要に係る制御装置1は、ロータの回転速度に基づいて合成器103のゲインを調整することにより、SN比の悪化や高調波成分の発生を防ぎつつ磁気ノイズを除去して、ロータ回転角を精度良く検出することができる。
【0021】
<実施の形態1>
実施の形態1では、実施の形態の概要で説明した制御装置1の詳細な構成、及び、制御装置1を用いたモータの制御システムについて説明する。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る制御装置1が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。
図2に示すモータ制御システムは、制御装置1と、モータ202と、レゾルバ201と、を備える。また、制御装置1は、アナログ回路300と、カウンタ回路400と、マイコン制御器500と、パワー回路600と、を備える。
【0023】
制御装置1は、モータ202の回転軸に取り付けられたレゾルバ201のロータ部分の回転角を、レゾルバ201から出力された電気信号から算出し、その算出結果に基づいてモータ202を制御する。
【0024】
なお、例えば、マイコン制御器500とカウンタ回路400とを1つの半導体基板上に形成することによって、1つのマイクロプロセッサチップが構成される。また、アナログ回路300を1つの半導体基板上に形成することによって、1つのアナログフロントエンドチップが構成される。そして、マイクロプロセッサチップ及びアナログフロントエンドチップを樹脂によって封止することにより、1つの半導体パッケージが構成される。あるいは、マイコン制御器500とカウンタ回路400とアナログ回路300とを1つの半導体基板上に形成することによって、1つのチップが構成される。そして、この1つのチップを樹脂によって封止することにより、1つの半導体パッケージが構成される。
【0025】
レゾルバ201は、所謂トランス型のレゾルバであって、ロータ204と、ステータ205と、励磁コイル206と、検出コイル207,208と、を備える。ロータ204は、モータ202の回転軸203に固定され、モータ202の回転とともに回転する。ステータ205は、ロータ204を囲むように設けられている。
【0026】
励磁コイル206及び検出コイル207,208は、何れもステータ205部分に配置されている。レゾルバ201には、制御装置1から励磁コイル206に供給された正弦波のキャリア信号によって励磁されることにより、磁場が発生する。ここで、レゾルバ201に発生した磁場は、ロータ204の回転によって変動する。検出コイル207,208は、レゾルバ201に発生した磁場の変動を検出して、2相のレゾルバ検出信号(位相信号)として出力する。
【0027】
検出コイル207,208は、互いの配置方向が異なるように配置されている。それにより、検出コイル207,208は、レゾルバ201に発生した磁場の変動をそれぞれ位相の異なる2相のレゾルバ検出信号として出力することができる。本実施の形態では、検出コイル207の配置方向と、検出コイル208の配置方向とが、90°異なる場合を例に説明する。したがって、検出コイル207は正弦波の第1レゾルバ検出信号を出力するのに対し、検出コイル208は余弦波の第2レゾルバ検出信号を出力する。
【0028】
なお、本実施の形態では、レゾルバ201によって2相のレゾルバ検出信号が出力される場合を例に説明しているが、これに限られず、2相以上のレゾルバ検出信号が出力され、当該2相以上のレゾルバ検出信号によってロータ回転角が検出される構成であっても良い。また、本実施の形態では、励磁コイル206及び検出コイル207,208が、何れもステータ205部分に配置されている場合を例に説明しているが、これに限られない。例えば、励磁コイル206がロータ204部分に配置され、検出コイル207,208がステータ205部分に配置されても良い。
【0029】
(アナログ回路300の構成)
次に、アナログ回路300の構成について説明する。
アナログ回路300は、励磁回路301と、増幅回路331と、差動増幅回路105,106と、位相シフタ101,102と、合成器103と、バンドパスフィルタ329と、オペアンプOP330と、備える。
【0030】
励磁回路301は、キャリア周波数fcの方形波のクロック信号からキャリア周波数fcの正弦波のキャリア信号を生成する。
【0031】
増幅回路331は、励磁回路301によって生成された正弦波のキャリア信号を増幅する。具体的には、増幅回路331は、オペアンプOP302と、トランジスタTR303,TR304と、ダイオードD305,D306と、によって構成されている。オペアンプOP302は、正弦波のキャリア信号と、増幅回路331の出力信号と、の電位差を増幅して、トランジスタTR303,TR304のそれぞれのベースに出力する。トランジスタTR303,TR304は、何れもバイポーラトランジスタであって、プッシュプル接続されている。ダイオードD305,D306は、それぞれ、トランジスタTR303,TR304に並列に設けられている。増幅回路331は、トランジスタTR303、TR304間のノードの電圧を、増幅回路331の出力信号として、励磁コイル206に出力する。
【0032】
差動増幅回路105は、検出コイル207によって検出されたレゾルバ検出信号(差動信号)の電位差を増幅する。また、差動増幅回路106は、検出コイル208によって検出された差動信号(レゾルバ検出信号)の電位差を増幅する。したがって、例えば、差動増幅回路105は、正弦波の信号を出力するのに対し、差動増幅回路106は、余弦波の信号を出力する。なお、差動増幅回路105,106のそれぞれ出力信号の位相差は、理想的には90°であるが、例えば88°から92°までの範囲の略90°であれば良い。
【0033】
具体的には、差動増幅回路105は、抵抗素子R311~R314と、オペアンプOP315と、によって構成されている。抵抗素子R311は、オペアンプOP315の反転入力端子と、検出コイル207の一方の端子と、の間に設けられている。抵抗素子R312は、オペアンプOP315の非反転入力端子と、検出コイル207の他方の端子と、の間に設けられている。抵抗素子R313は、オペアンプOP315の反転入力端子及び出力端子間に設けられている。抵抗素子R314は、オペアンプOP315の非反転入力端子とグランドとの間に設けられている。オペアンプOP315の出力信号は、差動増幅回路105の出力信号として用いられる。
【0034】
また、差動増幅回路106は、抵抗素子R316~R319と、オペアンプOP320と、によって構成されている。抵抗素子R316は、オペアンプOP320の反転入力端子と、検出コイル208の一方の端子と、の間に設けられている。抵抗素子R317は、オペアンプOP320の非反転入力端子と、検出コイル208の他方の端子と、の間に設けられている。抵抗素子R318は、オペアンプOP320の反転入力端子及び出力端子間に設けられている。抵抗素子R319は、オペアンプOP320の非反転入力端子とグランドとの間に設けられている。オペアンプOP320の出力信号は、差動増幅回路106の出力信号として用いられる。
【0035】
位相シフタ101は、キャリア周波数fcより低い周波数f1の極を持つように構成され、差動増幅回路105の出力信号(第1位相信号)の位相をシフトする。位相シフタ102は、キャリア周波数fcより高い周波数f2の極を持つように構成され、差動増幅回路106の出力信号(第2位相信号)の位相をシフトする。
【0036】
(位相シフタ101,102の具体的な構成例)
図3は、位相シフタ101の具体的な構成例を示す図である。
図3に示すように、位相シフタ101は、オールパスフィルタであって、オペアンプOP701と、抵抗素子R702~R704と、キャパシタC705と、を備える。
【0037】
オペアンプOP701の反転入力端子には、抵抗素子R702を介して、差動増幅回路105の出力信号(第1位相信号)が入力される。オペアンプOP701の非反転入力端子には、抵抗素子R703を介して、差動増幅回路105の出力信号(第1位相信号)が入力される。抵抗素子R704は、オペアンプOP701の反転入力端子及び出力端子間に設けられている。キャパシタC705は、オペアンプOP701の非反転入力端子とグランドとの間に設けられている。オペアンプOP701の出力信号は、位相シフタ101の出力信号として用いられる。
【0038】
位相シフタ102の構成については、位相シフタ101の場合と同様であるため、その説明を省略する。なお、位相シフタ101,102の構成は、
図3に示す構成に限られず、所望のシフト量で位相をシフトさせることが可能な他の構成に適宜変更可能である。
【0039】
位相シフト量及び極はオールパスフィルタの伝達関数により決定可能であるため、抵抗素子R703のインピーダンス及びキャパシタC705のキャパシタンスは、所望する位相シフト量及び極に応じて決定される。
【0040】
具体的には、キャリア周波数fcと、位相シフタ101の極の周波数f1と、位相シフタ102の極の周波数f2とは、f1=fc/nかつf2=fc×n(nは任意の正の実数)を満足させることによって、位相シフタ101の位相シフト量と、位相シフタ102位相シフト量と、の差を90°とすることができる。
【0041】
例えば、抵抗素子R702~R704のインピーダンスを100kΩとし、キャパシタC705のキャパシタンスを80pFとすることにより、f1=1.99kHzの極とすることができる。また、抵抗素子R702~R704のインピーダンスを100kΩとし、キャパシタC705のキャパシタンスを135pFとすることにより、f2=11.8kHzの極とすることができる。
【0042】
f1=1.99kHz及びf2=11.8kHzは、キャリア周波数fc=4.88kHzに対してf1=fc/nかつf2=fc×n(nは任意の正の実数)の関係を満たしているので、位相シフタ101の位相シフト量と、位相シフタ102の位相シフト量と、の差は90°となる。なお、位相シフタ101,102のそれぞれの位相シフト量の差は、理想的には90°であるが、例えば、88°から92°までの範囲の略90°であってもよい。
【0043】
図2に戻り、説明を続ける。
合成器103は、位相シフタ101によって位相シフトされた第1位相信号と、位相シフタ102によって位相シフトされた第2位相信号と、を合成する。それにより、キャリア信号がロータ回転角によって位相変調された信号(位相変調信号)が得られる。
【0044】
具体的には、合成器103は、入力抵抗R325と、入力抵抗R326と、帰還抵抗R328と、オペアンプOP327と、によって構成されている。入力抵抗R325,R326は、オペアンプOP327の反転入力端子と、位相シフタ101,102のそれぞれの出力端子と、の間に設けられている。帰還抵抗R328は、オペアンプOP327の反転入力端子及び出力端子間に設けられている。オペアンプOP327の非反転入力端子は、グランドに接続されている。
【0045】
オペアンプOP327は、入力抵抗R325を介して供給された第1位相信号と、入力抵抗R326を介して供給された第2位相信号と、の合成信号を増幅する。オペアンプOP327の出力信号は、帰還抵抗R328を介して、オペアンプOP327の反転入力端子に帰還される。オペアンプOP327の出力信号は、合成器103の出力信号として用いられる。
【0046】
ここで、入力抵抗R325,R326は、何れもゲイン調整回路141からの制御信号に基づいて抵抗値が調整可能に構成されている。
【0047】
例えば、ロータ204の回転速度が大きくなるほど、入力抵抗R325,R326の抵抗値は大きくなるように調整される。それにより、合成器103のゲインは小さくなる。それに対し、ロータ204の回転速度が小さくなるほど、入力抵抗R325,R326の抵抗値は小さくなるように調整される。それにより、合成器103のゲインは大きくなる。
【0048】
(入力抵抗R325,R326の第1の具体的な構成例)
図4は、入力抵抗R325の第1の具体的な構成例を入力抵抗R325aとして示す図である。
【0049】
図4に示すように、入力抵抗R325aは、m(mは2以上の整数)個のスイッチ素子SW1_1~SW1_mと、m個の抵抗素子R1_1~R1_mと、を有する。
【0050】
抵抗素子R1_1~R1_mは、位相シフタ101の出力端子と、オペアンプOP327の反転入力端子と、の間に直列接続されている。スイッチ素子SW1_1は、オペアンプOP327の反転入力端子と抵抗素子R1_1の一端との間に設けられている。スイッチ素子SW1_2~SW1_mは、それぞれ、オペアンプOP327の反転入力端子と、抵抗素子R1_1~R1_m間のノードと、の間に設けられている。ここで、ゲイン調整回路141によって、スイッチ素子SW1_1~SW1_mのうち、何れか一つのスイッチ素子がオンに制御され、それ以外のスイッチ素子がオフに制御される。つまり、ゲイン調整回路141によって、入力抵抗R325aの抵抗値が切り替えられる。
【0051】
入力抵抗R326の第1の具体的な構成例については、入力抵抗R325aの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0052】
(入力抵抗R325,R326の第2の具体的な構成例)
図5は、入力抵抗R325の第2の具体的な構成例を入力抵抗R325bとして示す図である。
【0053】
図5に示すように、入力抵抗R325bは、スイッチ素子SW2_1と、抵抗素子R2_1と、を有する。
【0054】
抵抗素子R2_1は、位相シフタ101の出力端子と、オペアンプOP327の反転入力端子と、の間に設けられている。スイッチ素子SW2_1は、抵抗素子R2_1に並列に設けられている。ここで、ゲイン調整回路141によって決定されたデューティ比でスイッチ素子SW2_1のオンオフが切り替えられる。つまり、ゲイン調整回路141によって、入力抵抗R325bの抵抗値が切り替えられる。
【0055】
入力抵抗R326の第2の具体的な構成例については、入力抵抗R325bの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0056】
図2に戻り、説明を続ける。
バンドパスフィルタ329は、位相変調信号の所定の周波数範囲以外を減衰して出力する。具体的には、バンドパスフィルタ329は、位相変調信号に含まれる磁気ノイズを減衰(除去)して出力する。
【0057】
図6は、バンドパスフィルタ329通過前の位相変調信号の波形を示す図である。
図7は、バンドパスフィルタ329通過後の位相変調信号の波形を示す図である。
図6及び
図7を見てもわかるように、バンドパスフィルタ329によって位相変調信号に含まれる磁気ノイズが除去されている。
【0058】
オペアンプOP330は、コンパレータを構成しており、合成器103からバンドパスフィルタ329を介して供給された位相変調信号を方形波に整形する。
【0059】
(カウンタ回路400の構成)
次に、カウンタ回路400の構成について説明する。
カウンタ回路400は、基準CLK回路401と、励磁CLK回路402と、位相差カウンタ404と、CLK同期回路403と、を備える。
【0060】
基準CLK回路401は、基準周波数の基準クロック信号を生成し、生成した基準クロック信号を励磁CLK回路402、CLK同期回路403、及び、位相差カウンタ404に出力する。
【0061】
励磁CLK回路402は、基準CLK回路401において生成された基準クロック信号を分周し、分周により得られたキャリア周波数の方形波のクロック信号を励磁回路301及び位相差カウンタ404に出力する。
【0062】
CLK同期回路403は、整形された位相変調信号を基準クロック信号に同期して検波することにより、整形された位相変調信号と整形されたキャリア信号とを同期させる。CLK同期回路403によって検波された信号(検波信号)は、位相差カウンタ404及び位置演算器501に入力される。
【0063】
位相差カウンタ404は、同期検波により得られた位相変調信号とキャリア信号との位相差を基準周波数の分解能で計数し、計数結果を位置演算器501及び三相変換器509に出力する。
【0064】
(マイコン制御器500の構成)
次に、マイコン制御器500の構成について説明する。
マイコン制御器500は、位置演算器501と、シリアル通信器502と、減算器503と、位置ゲイン演算器504と、微分処理器505と、減算器506と、速度ゲイン演算器507と、トルク演算器508と、三相変換器509と、乗算器510~512と、ゲイン調整回路141と、メモリ142と、を備える。
【0065】
位置演算器501は、検波信号と、位相差の計数結果と、から位置検出値を算出し、減算器503及び微分処理器505に出力する。
【0066】
シリアル通信器502は、外部からの位置指示信号を受信し、位置指令値を減算器503に出力する。減算器503は、位置検出値から位置指令値を減算し、得られた位置偏差を位置ゲイン演算器504に出力する。
【0067】
位置ゲイン演算器504は、位置偏差に所定の位置ゲインを乗じて、モータ202の目標速度を算出する。微分処理器505は、回転位置を表す検出信号を微分して、モータ202の回転速度を算出する。減算器506は、目標速度から回転速度を減算し、得られた速度偏差を速度ゲイン演算器507に出力する。
【0068】
速度ゲイン演算器507は、速度偏差に速度ゲインを乗じて、トルク指令値を算出する。トルク演算器508は、トルク指令値からモータ202の各相に流す電流指令値を算出する。三相変換器509は、位相差の計数結果から三相信号を生成し、三相信号を乗算器510~512にそれぞれ出力する。
【0069】
乗算器510~512は、それぞれ電流指令値に三相信号を乗算して、三相の制御信号を生成し、三相の制御信号をパワー回路600に出力する。パワー回路600は、三相の制御信号に基づいてモータ202を三相PWM(Pulse Width Modulation)制御するインバータである。
【0070】
ゲイン調整回路141は、微分処理器505によって算出されたモータ202の回転速度(換言すると、ロータ204の回転速度)に基づいて、合成器103のゲインを調整する。
【0071】
図8は、ロータ204の回転速度と、位相変調信号に対する磁気ノイズの割合と、の関係を示す図である。
図8に示すように、磁気ノイズは、ロータ204の回転速度の上昇に比例して大きくなっている。
【0072】
そこで、ゲイン調整回路141は、ロータ204の回転速度が大きくなるほど合成器103のゲインを小さくなるように調整する。ここで、ゲイン調整回路141は、合成器103から出力される位相変調信号が飽和しない(クリップしない)範囲でできるだけ大きな値を示すように、合成器103のゲインを調整する。それにより、ロータ204の回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが大きくなった場合でも、合成器103から出力される位相変調信号が飽和しなくなる(クリップしなくなる)ため、高調波成分の発生が抑制される。
【0073】
また、ゲイン調整回路141は、ロータの回転速度が小さくなるほど合成器103のゲインを大きくなるように調整する。それにより、ロータの回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが小さくなった場合には、合成器103のゲインが大きくなるため、合成器103から出力される位相変調信号に対する熱雑音等のノイズの割合、即ち、SN比の悪化が抑制される。
【0074】
具体的には、ゲイン調整回路141は、メモリ142からロータ204の回転速度に対応する合成器103のゲインの情報を読み出し、合成器103のゲインをメモリ142から読み出したゲインとなるように調整する。
【0075】
メモリ142には、例えば
図9に示されるように、ロータ204の回転速度及びそれに対応する合成器103のゲインの情報(テーブル)が格納されている。この情報は、予め測定又は算出されたものである。ここで、メモリ142に格納されているゲインの値は、何れも、合成器103から出力される位相変調信号が飽和しない(クリップしない)範囲でできるだけ大きな値に設定されている。なお、実際のロータ204の回転速度に対応する合成器103のゲインの情報がメモリ142に格納されていない場合、合成器103に設定されるゲインは、例えば、メモリ142に格納された情報を用いて線形補間することによって算出される。なお、ゲイン調整回路141は、テーブルを用いる代わりに演算式を用いて合成器103のゲインを調整しても良い。
【0076】
このように、制御装置1は、ロータ204の回転速度に基づいて合成器103のゲインを調整することにより、SN比の悪化や高調波成分の発生を防ぎつつ磁気ノイズを除去して、ロータ回転角を精度良く検出することができる。
【0077】
(ロータ回転角の算出方法)
続いて、ロータ回転角の算出方法について、
図2を用いて説明する。
【0078】
まず、励磁回路301によって生成された正弦波sinωtのキャリア信号は、増幅回路331によって増幅された後、励磁コイル206に入力される。
【0079】
レゾルバ201には、制御装置1から励磁コイル206に供給された正弦波sinωtのキャリア信号によって励磁されることにより磁場が発生する。ここで、レゾルバ201に発生した磁場は、ロータ204の回転によって変動する。検出コイル207,208は、レゾルバ201に発生した磁場の変動を検出して、90°位相の異なる2相のレゾルバ検出信号として出力する。
【0080】
差動増幅回路105は、検出コイル207によって検出されたレゾルバ検出信号(差動信号)の電位差を増幅する。また、差動増幅回路106は、検出コイル208によって検出された差動信号(レゾルバ検出信号)の電位差を増幅する。
【0081】
ここで、差動増幅回路105の出力信号Z1、及び、差動増幅回路106の出力信号Z2は、それぞれ、以下の式(1)及び式(2)のように表される。
【0082】
Z1=K・sinθm×sinωt ・・・(1)
Z2=K・cosθm×sinωt ・・・(2)
【0083】
但し、ωはキャリア信号の角周波数、tは時間、θmはレゾルバ201のロータの回転角、Kはレゾルバ検出信号の振幅成分を示している。
【0084】
位相シフタ101は、例えばオーパスフィルタであって、差動増幅回路105の出力信号Z1の位相をシフト量φ1だけシフトさせる。位相シフタ102は、例えばオーパスフィルタであって、差動増幅回路106の出力信号Z2の位相をシフト量φ2だけシフトさせる。
【0085】
例えば、位相シフタ101,102は、φ1-φ2=-90°を満たすように設計される。具体的には、例えば、キャリア周波数fc=4.88kHzに対して、位相シフタ101の極の周波数が1.99kHz、位相シフタ102の極の周波数が11.8kHzとなるように設計することにより、φ1-φ2=-90°を満足させることができる。
【0086】
このとき、位相シフタ101の出力信号X1、及び、位相シフタ102の出力信号X2は、それぞれ、以下の式(3)及び式(4)のように表される。
【0087】
X1=K・sinθm×sin(ωt-φ1) ・・・(3)
X2=K・cosθm×sin(ωt-φ2) ・・・(4)
【0088】
ここで、式(3)にφ1=φ2-90°を代入することにより、X1は、以下の式(5)のように表される。
【0089】
X1=K・sinθm×sin(ωt+90°-φ2)
=K・sinθm×cos(ωt-φ2) ・・・(5)
【0090】
合成器103は、位相シフタ101の出力信号X1と、位相シフタ102の出力信号X2と、を合成して出力する。ここで、合成器103の出力信号Yは、式(4)及び式(5)より、以下の式(6)のように表される。
【0091】
Y=X1+X2
=K・sinθm×cos(ωt-φ2)+K・cosθm×sin(ωt-φ2)
=K・sin(ωt-φ2+θm) ・・・(6)
【0092】
例えば、φ1=-90°、φ2=0°の場合、合成器103の出力信号Yは、式(6)より、以下の式(7)のように表される。
【0093】
Y=K・sin(ωt+θm) ・・・(7)
【0094】
即ち、合成器103は、キャリア信号がロータ回転角θmによって位相変調された信号(位相変調信号)を生成する。
【0095】
図10は、キャリア信号と、位相変調信号と、の関係を示す図である。
図10において、縦軸は振幅を示し、横軸は時刻を示す。
図10に示すように、キャリア信号及び位相変調信号では、周波数が同じであるのに対して位相が異なっている。そのため、キャリア信号及び位相変調信号の位相差から、ロータの回転角を算出することが可能である。
【0096】
具体的には、キャリア周波数のクロック信号と、方形波に整形された位相変調信号と、の位相差を検出し、検出された位相差から、ロータの回転角を算出することが好ましい。
【0097】
図11は、キャリア周波数のクロック信号と、整形後の位相変調信号と、の関係を示す図である。
図11において、縦軸は振幅を示し、横軸は時刻を示す。
図11に示すように、キャリア周波数のクロック信号と、整形後の位相変調信号と、の間には、ロータの回転角に応じた位相差が存在する。
【0098】
カウンタ回路400において、CLK同期回路403は、キャリア周波数ωがロータ回転角θmによって位相変調された信号(整形された位相変調信号)を、基準クロック信号に同期して検波することにより、キャリア周波数ωがロータ回転角θmによって位相変調された信号と、キャリア周波数ωのクロック信号と、を同期させる。また、位相差カウンタ404は、同期検波によって得られた位相変調信号及びキャリア信号の位相差を基準周波数の分解能で計数する。
【0099】
マイコン制御器500及びパワー回路600は、カウンタ回路400において計数された位相変調信号及びキャリア信号の位相差に基づいて、モータ202を制御する。
【0100】
上述のロータ回転角の算出方法によれば、キャリア周波数fcより低い周波数f1の極を持つ位相シフタ101によって、差動増幅回路105の出力信号(第1位相信号)の位相をシフトし、キャリア周波数fcより高い周波数f2の極を持つ位相シフタ102によって、差動増幅回路106の出力信号(第2位相信号)の位相をシフトする。そして、位相シフトされた第1位相信号と、位相シフトされた第2位相信号と、を合成している。それにより、ロータ回転角を精度良く検出することができるとともに、回路規模の増大を抑制することができる。
【0101】
また、ゲイン調整回路141は、微分処理器505によって算出されたモータ202の回転速度(換言すると、ロータ204の回転速度)に基づいて、合成器103のゲインを調整する。具体的には、ゲイン調整回路141は、ロータ204の回転速度が大きくなるほど合成器103のゲインを小さくなるように調整する。ここで、ゲイン調整回路141は、合成器103から出力される位相変調信号が飽和しない(クリップしない)範囲でできるだけ大きな値を示すように、合成器103のゲインを調整する。それにより、ロータ204の回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが大きくなった場合でも、合成器103から出力される位相変調信号が飽和電圧に張り付かなくなる(クリップしなくなる)ため、高調波成分の発生が抑制される。
【0102】
また、ゲイン調整回路141は、ロータの回転速度が小さくなるほど合成器103のゲインを大きくなるように調整する。それにより、ロータの回転速度の上昇に伴って磁気ノイズが小さくなった場合には、合成器103のゲインが大きくなるため、合成器103から出力される位相変調信号に対する熱雑音等のノイズの割合、即ち、SN比の悪化が抑制される。
【0103】
このように、本実施の形態に係る制御装置1は、ロータ204の回転速度に基づいて合成器103のゲインを調整することにより、SN比の悪化や高調波成分の発生を防ぎつつ磁気ノイズを除去して、ロータ回転角を精度良く検出することができる。
【0104】
(電流検出型のレゾルバが用いられたモータ制御システムの構成例)
本実施の形態では、レゾルバ201がトランス型のレゾルバである場合であるについて説明したが、これに限られず、例えば、電流検出型のレゾルバであっても良い。以下、
図12を用いて、具体的に説明する。
【0105】
図12は、
図2に示すモータ制御システムの変形例を示す図である。
図2に示すモータ制御システムでは、トランス型のレゾルバ201が用いられていた。それに対し、
図12に示すモータ制御システムでは、電流検出型のレゾルバ201aが用いられている。
図12に示すモータ制御システムのその他の構成については、
図2に示すモータ制御システムの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0106】
電流検出型のレゾルバ201aは、ロータ204と、ステータ205と、コイルL1~L4と、抵抗素子R1~R4と、を備える。ロータ204は、モータ202の回転軸203に固定され、モータ202の回転とともに回転する。ステータ205は、ロータ204を囲むように設けられている。
【0107】
コイルL1~L4は、ステータ205部分において、モータ202の回転軸203を中心にして、それぞれ0°、90°、180°、270°の位置に配置されている。コイルL1~L4は、制御装置1から供給される正弦波のキャリア信号によって励磁されることにより磁場を生成する。ここで、コイルL1~L4に発生した磁場は、レゾルバ201のロータ部分の回転によって変動する。そのため、コイルL1~L4に流れる電流も、レゾルバ201のロータ部分の回転によって変動する。
【0108】
抵抗素子R1~R4は、それぞれ、コイルL1~L4に流れる電流を電圧に変換して、0°、90°、180°、270°の相のレゾルバ検出信号として出力する。
【0109】
具体的には、抵抗素子R1は、コイルL1に直列に設けられ、抵抗素子R1及びコイルL1間のノードN1の電圧を0°の相のレゾルバ検出信号として出力する。抵抗素子R2は、コイルL2に直列に設けられ、抵抗素子R2及びコイルL2間のノードN2の電圧を90°の相のレゾルバ検出信号として出力する。抵抗素子R3は、抵抗素子R3及びコイルL3間のノードN3の電圧を180°の相のレゾルバ検出信号として出力する。抵抗素子R4は、コイルL4に直列に設けられ、抵抗素子R4及びコイルL4間のノードN4の電圧を270°の相のレゾルバ検出信号として出力する。
【0110】
差動増幅回路105は、コイルL1,L3のそれぞれに流れる電流を抵抗素子R1,R3を用いて電圧に変換したレゾルバ検出信号の電位差を増幅する。また、差動増幅回路106は、コイルL2,L4のそれぞれに流れる電流を抵抗素子R2,R4を用いて電圧に変換したレゾルバ検出信号の電位差を増幅する。したがって、例えば、差動増幅回路105は、正弦波の信号を出力するのに対し、差動増幅回路106は、余弦波の信号を出力する。なお、差動増幅回路105,106のそれぞれ出力信号の位相差は、理想的には90°であるが、例えば88°から92°までの範囲の略90°であれば良い。
【0111】
このように、制御装置1は、レゾルバ201が電流検出型であってもトランス型である場合と同等の効果を奏することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、合成器103に設けられた入力抵抗R325,R326の抵抗値を調整することにより、合成器103のゲインが調整される場合を例に説明したが、これに限られない。以下、
図13及び
図14を用いながら、合成器103の変形例について説明する。
【0113】
(合成器103の第1変形例)
図13は、制御装置1の第1変形例を制御装置1aとして示す図である。制御装置1aは、制御装置1と比較して、合成器103の第1変形例である合成器103aを備える。合成器103aでは、入力抵抗R325,R326の代わりに帰還抵抗R328の抵抗値がゲイン調整回路141によって調整可能となっている。帰還抵抗R328の具体的な構成については、
図4,
図5に示す構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
例えば、ロータ204の回転速度が大きくなるほど、帰還抵抗R328の抵抗値は小さくなるように調整される。それにより、合成器103のゲインは小さくなる。それに対し、ロータ204の回転速度が小さくなるほど、帰還抵抗R328の抵抗値は大きくなるように調整される。それにより、合成器103のゲインは大きくなる。
【0115】
合成器103aは、合成器103の場合と同等程度の機能を実現することができる。
【0116】
(合成器103の第2変形例)
図14は、制御装置1の第2変形例を制御装置1bとして示す図である。制御装置1bは、制御装置1と比較して、合成器103の第2変形例である合成器103bを備える。合成器103bでは、入力抵抗R325,R326に加えて帰還抵抗R328の抵抗値もゲイン調整回路141によって調整可能となっている。
【0117】
例えば、ロータ204の回転速度が大きくなるほど、入力抵抗R325,R326の抵抗値が大きくなるように調整されたり、帰還抵抗R328の抵抗値が小さくなるように調整されたりする。それにより、合成器103のゲインは小さくなる。それに対し、ロータ204の回転速度が小さくなるほど、入力抵抗R325,R326の抵抗値が小さくなるように調整されたり、帰還抵抗R328の抵抗値が大きくなるように調整されたりする。それにより、合成器103のゲインは大きくなる。
【0118】
合成器103bは、合成器103の場合と同等程度の機能を実現することができる。さらに、合成器103bは、入力抵抗及び帰還抵抗のそれぞれの抵抗値を調整することができるため、より細やかにゲインを調整することができる。
【0119】
<実施の形態2>
図15は、実施の形態2にかかる制御装置2が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。制御装置2は、制御装置1の場合と比較して、補正回路143と、AD変換器144と、DA変換器145と、抵抗素子R146,R148と、キャパシタC147と、をさらに備える。
図15の例では、補正回路143は、マイコン制御器500に設けられ、AD変換器144及びDA変換器145は、カウンタ回路400に設けられ、抵抗素子R146,R148及びキャパシタC147は、アナログ回路300に設けられている。
【0120】
(レゾルバ検出信号の角度誤差成分についての説明)
制御装置2の詳細について説明する前に、まず、レゾルバ検出信号に含まれる角度誤差成分について説明する。
【0121】
図16は、角度誤差成分がない場合におけるキャリア信号と第1及び第2位相信号(差動増幅回路105,106のそれぞれの出力信号)との例を示す図である。
図16において、縦軸は振幅を示し、横軸は時刻を示す。
【0122】
図16に示すように、角度誤差成分がない場合、第1位相信号は、キャリア信号がレゾルバ201のロータ回転角によって位相変調された正弦波の位相変調信号となっている。また、第2位相信号は、キャリア信号がレゾルバ201のロータ回転角によって位相変調された余弦波の位相変調信号となっている。ここで、第1及び第2位相信号の包絡線は、何れもノイズのない波形を形成している。
【0123】
それに対し、例えばレゾルバ201に巻線ばらつきがあると、位相変調信号には、固定位相のキャリア信号が角度誤差成分(残留成分)として残ってしまう。
図17は、角度誤差成分がある場合におけるキャリア信号と第1及び第2位相信号との例を示す図である。
図17において、縦軸は振幅を示し、横軸は時刻を示す。
【0124】
図17に示すように、角度誤差成分がある場合、第1位相信号は、角度誤差成分を含むキャリア信号がレゾルバ201のロータ回転角によって位相変調された正弦波の信号となっている。また、第2位相信号は、角度誤差成分を含むキャリア信号がレゾルバ201のロータ回転角によって位相変調された余弦波の信号となっている。つまり、角度誤差成分がある場合、第1及び第2位相信号には、ロータ回転角によって位相変調された角度誤差成分が含まれてしまう。
【0125】
ここで、角度誤差成分がある場合、差動増幅回路105の出力信号(第1位相信号)Z1、及び、差動増幅回路106の出力信号(第2位相信号)Z2は、それぞれ、以下の式(8)及び式(9)のように表される。
【0126】
Z1=K・(α+sinθm)×sinωt ・・・(8)
Z2=K・(β+cosθm)×sinωt ・・・(9)
【0127】
但し、ωはキャリア信号の角周波数、tは時間、θmはレゾルバ201のロータの回転角、Kはレゾルバ検出信号の振幅成分、α,βは誤差成分、を示している。
【0128】
このとき、位相シフタ101の出力信号X1、及び、位相シフタ102の出力信号X2は、それぞれ、以下の式(10)及び式(11)のように表される。
【0129】
X1=K・(α+sinθm)×sin(ωt-φ1) ・・・(10)
X2=K・(β+cosθm)×sin(ωt-φ2) ・・・(11)
【0130】
ここで、式(10)にφ1=φ2-90°を代入することにより、X1は、以下の式(12)のように表される。
【0131】
X1=K・(α+sinθm)×sin(ωt+90°-φ2)
=K・(α+sinθm)×cos(ωt-φ2) ・・・(12)
【0132】
合成器103は、位相シフタ101の出力信号X1と、位相シフタ102の出力信号X2と、を合成して出力する。ここで、合成器103の出力信号Yは、式(11)及び式(12)より、以下の式(13)のように表される。
【0133】
Y=X1+X2
=K・(α+sinθm)×cos(ωt-φ2)+K・(β+cosθm)×sin(ωt-φ2)
=
【数1】
・・・(13)
【0134】
例えば、φ1=-90°、φ2=0°の場合、合成器103の出力信号Yは、式(13)より、以下の式(14)のように表される。
【0135】
【0136】
式(13)の右辺の第2項が角度誤差成分に該当する。後述する補正回路143は、式(13)の右辺の第2項の値が限りなくゼロに近づくように位相変調信号を補正することになる。
【0137】
図15に戻り説明を続ける。
AD変換器144は、合成器103から出力された位相変調信号をデジタル信号に変換して出力する。補正回路143は、位相及び振幅を任意に変更可能な補正信号を生成する。DA変換器145は、デジタルの補正信号をアナログ信号に変換する。
【0138】
抵抗素子R146,R148は、DA変換器145の出力端子と、オペアンプOP327の反転入力端子と、の間に直列に設けられている。キャパシタC147は、抵抗素子R146,R148間のノードと、グランドと、の間に設けられている。ここで、抵抗素子R146及びキャパシタC147によってローパスフィルタが構成されている。
【0139】
DA変換器145によってアナログ化された補正信号は、抵抗素子R146及びキャパシタからなるローパスフィルタと、抵抗素子R148と、を伝搬してオペアンプOP327の反転入力端子にフィードバックされる。
【0140】
ここで、補正回路143は、AD変換器144によってデジタル化された位相変調信号の包絡線の変動幅(振幅)ができるだけ小さくなるように、補正信号の振幅及び位相を任意に調整する。つまり、補正回路143は、位相変調信号に含まれる角度誤差成分を打ち消すような振幅及び位相の補正信号を生成する。
【0141】
制御装置2のその他の構成及び動作については、制御装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0142】
それにより、制御装置2は、補正回路143を用いて、位相変調信号に含まれる角度誤差成分を打ち消すような振幅及び位相の補正信号を生成し、位相変調信号に重畳させる。それにより、制御装置2は、位相変調信号に含まれる角度誤差成分を抑制することができるため、ロータ回転角の検出精度をさらに向上させることができる。
【0143】
なお、抵抗素子R148は、入力抵抗R325,R326とともに、ゲイン調整回路141によって抵抗値を調整可能に構成されている。それにより、抵抗素子R148の抵抗値が固定された場合におけるゲイン調整の制限が緩和される。
【0144】
本実施の形態では、補正回路143による位相変調信号の補正が制御装置1に適用された制御装置2について説明したが、これに限られない。補正回路143による位相変調信号の補正は、例えば、制御装置1a,1bに適用されても良い。
【0145】
<実施の形態3>
図18は、実施の形態3にかかる制御装置3が搭載されたモータ制御システムの構成例を示す図である。制御装置3は、制御装置1の場合と比較して、ロータ204の回転速度に応じた合成器103のゲインを自動的に算出する機能をさらに備える。
【0146】
具体的には、制御装置3は、モニタ回路149をさらに備える。モニタ回路149は、例えばAD変換回路であって、ロータ204を所定の回転速度で回転させた場合における合成器103の出力信号(位相変調信号)をモニタする。ゲイン調整回路141は、モニタ回路149によって合成器103の出力信号をモニタしながら、合成器103の出力信号がクリップしない範囲内でできるだけ大きな値を示すような合成器103のゲインを探索する。そして、ゲイン調整回路141は、その探索結果、即ち、ロータ204の回転速度及びそれに対応する合成器103のゲインの情報を、メモリ142に格納する。ゲイン調整回路141は、このような動作を繰り返すことによって、ロータ204の回転速度及びそれに対応する合成器103のゲインの情報を複数取得し、それらをメモリ142に格納する。
【0147】
図19は、制御装置3による、ロータ204の回転速度及びそれに対応する合成器103のゲインの情報の取得方法を示すフローチャートである。
【0148】
まず、合成器103の出力信号に対して閾値電圧VTが設定される(ステップS101)。閾値電圧VTには、合成器103の出力信号として許容される電圧の最大値が設定される。具体的には、閾値電圧VTは、飽和電圧よりもわずかに低い値に設定される。例えば、飽和電圧(限界電圧)が4.5Vである場合、閾値電圧VTは4Vに設定される。例えば、モニタ回路149は、合成器103の出力電圧が閾値電圧VTよりも高い場合には“1”のモニタ結果を出力し、合成器103の出力電圧が閾値電圧VT以下の場合には“0”のモニタ結果を出力する。
【0149】
その後、合成器103のゲインの初期値が設定される(ステップS102)。ゲインの初期値には、例えば合成器103が取り得るゲインの最小値が設定される。
【0150】
その後、ロータ204を所定の回転速度で回転させる(ステップS103)。ここでは、例えばロータ204を回転速度0[r/min]で回転させる。モニタ回路149は、このときの合成器103の出力信号をモニタする(ステップS104)。
【0151】
例えば、モニタ回路149から“0”のモニタ結果が出力された場合(ステップS105のNO)、合成器103の出力信号が閾値電圧VT以下であるため、ゲイン調整回路141は、合成器103のゲインを一段階大きくする(ステップS106)。なお、このときの合成器103のゲインの変化量が小さいほど、より精度の高いゲイン情報の取得が可能である。その後、モニタ回路149は、合成器103の出力信号を再びモニタする(ステップS104)。
【0152】
それに対し、モニタ回路149から“1”のモニタ結果が出力された場合(ステップS105のYES)、合成器103の出力信号が閾値電圧VTより高くなっているため、ゲイン調整回路141は、その直前に設定された(或いはそのときに設定されている)合成器103のゲインの情報を、対応するロータ204の回転速度の情報とともに、メモリ142に格納する(ステップS107)。なお、合成器103のゲインを最大にしてもモニタ回路149から“0”のモニタ結果が出力され続ける場合には、ゲイン調整回路141は、そのゲインの最大値を、対応するロータ204の回転速度の情報とともに、メモリ142に格納する(ステップS105のYES→ステップS107)。
【0153】
その後、探索対象となっている複数のロータ回転速度に対応する複数の合成器103のゲイン情報の全ての取得が完了していない場合には(ステップS108のNO)、ロータ204の回転速度は、まだ選択されていない別の回転速度(例えば500[r/min]に切り替えられる(ステップS109)。その後、ステップS103~S109の処理が繰り返される。
【0154】
その後、探索対象となっている複数のロータ回転速度に対応する複数の合成器103のゲイン情報の全ての取得が完了した場合には(ステップS108のYES)、制御装置3による、ロータ204の回転速度及びそれに対応する合成器103のゲインの情報の取得は終了する。
【0155】
このように、本実施の形態に係る制御装置3は、制御装置1,2等と同等程度の効果を奏することができるとともに、レゾルバの素性がわからない場合でも、ロータ204の回転速度に応じた合成器103のゲインを自動的に算出することができる。
【0156】
以上のように、上記実施の形態1~3にかかる制御装置は、ロータ204の回転速度に基づいて合成器103のゲインを調整することにより、SN比の悪化や高調波成分の発生を防ぎつつ磁気ノイズを除去して、ロータ回転角を精度良く検出することができる。
【0157】
なお、上記各実施の形態において、カウンタ回路400及びマイコン制御器500は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアまたはソフトウェアで実施できる。また、処理の一部をソフトウェアで実施し、それ以外をハードウェアで実施することとしても良い。ソフトウェアで実施する際には、マイクロプロセッサ等の1つあるいは複数のCPUを有するコンピュータシステムに機能ブロックの処理に関するプログラムを実行させればよい。
【0158】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0159】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0160】
例えば、キャリア周波数及び位相シフト量は、いずれも上記実施の形態の数値に限定されるものではない。
【0161】
また、例えば、上記の実施の形態1~4に係る制御装置及びそれを備えたモータ制御システムでは、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。
【符号の説明】
【0162】
1 制御装置
1a,1b 制御装置
2 制御装置
3 制御装置
101 位相シフタ
102 位相シフタ
103 合成器
105 差動増幅回路
106 差動増幅回路
141 ゲイン調整回路
142 メモリ
143 補正回路
144 AD変換器
145 DA変換器
149 モニタ回路
201 レゾルバ
201a 電流検出型のレゾルバ
202 モータ
203 回転軸
204 ロータ
205 ステータ
206 励磁コイル
207 検出コイル
208 検出コイル
300 アナログ回路
301 励磁回路
329 バンドパスフィルタ
331 増幅回路
400 カウンタ回路
401 基準CLK回路
402 励磁CLK回路
403 CLK同期回路
404 位相差カウンタ
500 マイコン制御器
501 位置演算器
502 シリアル通信器
503 減算器
504 位置ゲイン演算器
505 微分処理器
506 減算器
507 速度ゲイン演算器
508 トルク演算器
509 三相変換器
510 乗算器
511 乗算器
512 乗算器
600 パワー回路
C147 キャパシタ
C705 キャパシタ
D305 ダイオード
D306 ダイオード
L1~L4 コイル
OP302 オペアンプ
OP315 オペアンプ
OP320 オペアンプ
OP327 オペアンプ
OP330 オペアンプ
OP701 オペアンプ
R1~R4 抵抗素子
R1_1~R1_m 抵抗素子
R2_1 抵抗素子
R146,R148 抵抗素子
R311~R314 抵抗素子
R316~R319 抵抗素子
R325 入力抵抗
R325a 入力抵抗
R325b 入力抵抗
R326 入力抵抗
R328 帰還抵抗
R702 抵抗素子
R703 抵抗素子
R704 抵抗素子
SW1_1~SW1_m スイッチ素子
SW2_1 スイッチ素子
TR303 トランジスタ
TR304 トランジスタ