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特許7106457織布複合材料の連続的な製造のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】織布複合材料の連続的な製造のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 41/00 20060101AFI20220719BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220719BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20220719BHJP
   D03D 47/28 20060101ALI20220719BHJP
   B29C 70/22 20060101ALI20220719BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
D03D41/00 Z
D03D1/00 A
B29C70/50
D03D47/28
B29C70/22
B29K105:08
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018560063
(86)(22)【出願日】2017-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2017032703
(87)【国際公開番号】W WO2017200935
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】62/336,974
(32)【優先日】2016-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】オーバステ,クリストファー マルク
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フィリップ ソン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ベン
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179037(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012101016(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第101831744(CN,A)
【文献】米国特許第03881522(US,A)
【文献】特開2003-136550(JP,A)
【文献】特開2001-355154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 41/00
D03D 1/00
B29C 70/50
D03D 47/28
B29C 70/22
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布複合材料を連続的に形成するための機械であって、
1または複数の経糸フィラメントを供給する1または複数のスプールと、
1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを備える複合材料織布を受け入れるように構成されたローラー集合体と、
前記1または複数のスプールから1または複数の経糸フィラメントを受け入れる複数の経糸ヘッドを備える経糸ラックと、
1または複数の経糸フィラメントの間に1または複数の緯糸フィラメントを挿入して前記複合材料織布を形成する複数の緯糸挿入器を備える緯糸挿入器スタックと、を備え、
各経糸ヘッドが、当該経糸ヘッドの高さに沿って異なる垂直高さに位置する複数のフィラメント溝を備え、
各フィラメント溝は、前記1または複数のスプールのうちのスプールと前記ローラー集合体との間に張られた経糸フィラメントを引っ掛けるように構成されており、
各経糸ヘッドが、独立して垂直方向に移動可能であり、当該経糸ヘッドから前記ローラー集合体へと延出する経糸フィラメントの高さを調節する、機械。
【請求項2】
前記複数の経糸ヘッドが、垂直面において互いに隣接して整列しており、
前記複数の経糸ヘッドの各経糸ヘッドは、他の経糸ヘッドの垂直移動と独立して垂直移動することができ、前記経糸ヘッドから前記ローラー集合体へと延出する経糸フィラメントの高さを調整する、請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記ローラー集合体が複合材料織布を固化するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の機械。
【請求項4】
1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを加熱してそれらを融合させる加熱ゾーン、および/または、前記加熱ゾーン内においてフィラメントの温度を監視する温度センサをさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の機械。
【請求項5】
前記ローラー集合体が、前記複合材料織布を加熱する加熱ローラー対を備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載の機械。
【請求項6】
前記ローラー集合体が、前記複合材料織布を冷却する冷却ローラー対をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の機械。
【請求項7】
1または複数の経糸ヘッドの垂直移動および1または複数の緯糸フィラメントの1または複数の経糸フィラメント間への挿入のシーケンスを制御して所定のパターンを有する複合材料織布を作成するよう構成されたコントローラーをさらに備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載の機械。
【請求項8】
前記緯糸挿入器スタックにおける前記複数の緯糸挿入器のうちの前記1または複数は、挿入された各緯糸フィラメントが前記1または複数の経糸フィラメントに対して略直交する方向を向くように、1または複数の緯糸フィラメントを1または複数の経糸フィラメントの間に挿入するように構成されている、請求項1から請求項7のいずれかに記載の機械。
【請求項9】
前記緯糸挿入器スタックは、第1の経糸フィラメント対の間に第1の緯糸フィラメントを、第2の経糸フィラメント対の間に第2の緯糸フィラメントを、同時に挿入するように構成されている、請求項1から請求項8のいずれかに記載の機械。
【請求項10】
1または複数の緯糸挿入器は、レピア緯糸挿入器、エアジェット緯糸挿入器、および/または、慣性緯糸挿入器を備える、請求項1から請求項9のいずれかに記載の機械。
【請求項11】
織布複合材料を連続的に形成する機械であって、
1または複数の経糸フィラメントを供給する1または複数のスプールと、
1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを備える複合材料織布を受け入れるように構成されたローラー集合体と、
前記1または複数のスプールから1または複数の経糸フィラメントを受け入れる複数のヘドル集合体を備える経糸ラックであって、各ヘドル集合体が、
前記1または複数のスプールのうちのスプールと前記ローラー集合体との間に張られた第1の経糸フィラメントを引っ掛ける第1の孔を備える第1のヘドルであって、独立して垂直方向に移動して前記第1の孔の高さを調節可能な第1のヘドルと、
前記第1の経糸フィラメントを受け入れるスロットと、前記1または複数のスプールのうちのスプールと前記ローラー集合体との間に張られた第2の経糸フィラメントを引っ掛ける第2の孔とを有する第2のヘドルであって、独立して垂直方向に移動して前記第2の孔の高さを調節可能な第2のヘドルと、を備える、経糸ラックと、
1または複数の経糸フィラメントの間に1または複数の緯糸フィラメントを挿入して前記複合材料織布を形成する複数の緯糸挿入器を備える緯糸挿入器スタックと、を備える機械。
【請求項12】
前記複数のヘドル集合体が、第1の垂直面において互いに隣接して整列している、請求項11に記載の機械。
【請求項13】
各ヘドル集合体における前記第1のヘドルが、前記第1の垂直面と略直交する第2の垂直面において、それぞれのヘドル集合体における前記第2のヘドルと隣接するように配置されている、請求項12に記載の機械。
【請求項14】
前記複数のヘドル集合体のうちのヘドル集合体の前記第1のヘドルの前記第1の孔は、前記ヘドル集合体が中立位置にあるとき、前記ヘドル集合体の前記第2のヘドルの前記スロットと整列する、請求項11から請求項13のいずれかに記載の機械
【請求項15】
前記複数のヘドル集合体の各ヘドル集合体は、前記第1の経糸フィラメントと前記第2の経糸フィラメントとを受け入れるスロットと、前記1または複数のスプールのうちのスプールと前記ローラー集合体との間に張られた第3の経糸フィラメントを引っ掛ける第3の孔を有する第3のヘドルであって、独立して垂直方向に移動して前記第3の孔の高さを調節可能な第3のヘドルをさらに備える、請求項11から請求項14のいずれかに記載の機械。
【請求項16】
前記複数のヘドル集合体のうちの1または複数における前記第1、第2、および/または、第3のヘドルのうちの1または複数のヘドルの垂直移動および1または複数の緯糸フィラメントの1または複数の経糸フィラメント間への挿入のシーケンスを制御して所定のパターンを有する複合材料織布を作成するよう構成されたコントローラーをさらに備える、請求項15に記載の機械。
【請求項17】
ローラー集合体と、複数の経糸ヘッドを備える経糸ラックとの間に張られた複数の経糸フィラメントを有する機械を用いて織布複合材料を連続的に形成する方法であって、各経糸ヘッドは、当該経糸ヘッドの高さに沿って異なる垂直高さに位置する複数のフィラメント溝を備え、各フィラメント溝は、経糸フィラメントを引っ掛けるように構成されており、各経糸ヘッドは、独立して垂直方向に移動して、それぞれの経糸ヘッドと関連付けられた経糸フィラメントの前記ローラー集合体に対する高さを調節可能であって、
前記複数の経糸ヘッドの第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、前記複数の経糸ヘッドの第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における経糸フィラメントよりも高くなるように、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループを第1の垂直方向位置に、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループを第2の垂直方向位置に、垂直方向において配置する工程と、
各緯糸フィラメントが、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントと、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントとの間に挿入されるように、1または複数の緯糸フィラメントをローラー集合体と経糸ラックとの間に位置する経糸に挿入する工程と、
前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における各経糸フィラメントよりも低くなるように、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループを第3の垂直位置に、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループを第4の垂直位置に、垂直方向において再配置することによって、2またはそれ以上の経糸フィラメントの間に前記1または複数の緯糸フィラメントを固定して複合材料織物を作成する工程と、
前記ローラー集合体を作動させて、前記複合材料織物を加熱および圧縮するように構成された対向する一対のローラーを通して前記複合材料織物を引き出すことにより、複合材料織物を固化する工程と、を含む方法。
【請求項18】
複数のフィラメントスプールから出た複数の経糸フィラメントのそれぞれの自由端を、経糸ラックの複数の経糸ヘッドのうちの1つの固有のフィラメント溝を通して送る工程と、
前記複数の経糸フィラメントのそれぞれの自由端を前記対向するローラー対を通して送る工程と、によって、前記ローラー集合体と前記経糸ラックとの間に前記経糸を形成する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ローラー集合体と、複数の経糸ヘッドを備える経糸ラックとの間に張られた複数の経糸フィラメントを有する機械を用いて織布複合材料を連続的に形成する方法であって、各経糸ヘッドは、当該経糸ヘッドの高さに沿って異なる垂直高さに位置する複数のフィラメント溝を備え、各フィラメント溝は、経糸フィラメントを引っ掛けるように構成されており、各経糸ヘッドは、独立して垂直方向に移動して、それぞれの経糸ヘッドと関連付けられた経糸フィラメントの前記ローラー集合体に対する高さを調節可能であって、
前記複数の経糸ヘッドの第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、前記複数の経糸ヘッドの第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における経糸フィラメントよりも高くなるように、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループを第1の垂直方向位置に、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループを第2の垂直方向位置に、垂直方向において配置する工程と、
各緯糸フィラメントが、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントと、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントとの間に挿入されるように、1または複数の緯糸フィラメントをローラー集合体と経糸ラックとの間に位置する経糸に挿入する工程と、
前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における各経糸フィラメントよりも低くなるように、前記複数の経糸ヘッドの前記第1のサブグループを第3の垂直位置に、前記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループを第4の垂直位置に、垂直方向において再配置することによって、2またはそれ以上の経糸フィラメントの間に前記1または複数の緯糸フィラメントを固定して複合材料織布を作成する工程と、
前記複合材料織布の1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを融合させる加熱ゾーンにおいて前記複合材料織布を加熱する工程と、
前記複合材料織布を圧縮する工程と、を含む方法。
【請求項20】
前記加熱ゾーンは、前記複合材料織布を振動させて弾性損失によって熱を発生させる超音波溶接棒を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱ゾーンは、交番磁界または回転磁界を発生させることによって前記複合材料織布内に電流を誘導して抵抗損失によって熱を発生させる誘導加熱器を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱ゾーンは、熱風を前記複合材料織布の周りに循環させる対流装置を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記加熱ゾーンは、マイクロ波加熱装置を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記複合材料織布を圧縮する工程は、前記ローラー集合体の対向する第1のローラー対を通して前記複合材料織布を引き出すことにより、前記複合材料織布を圧縮する工程を含む、請求項19から請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記対向する第1のローラー対を通して前記複合材料織布を圧縮した後に、対向する第2のローラー対を通して前記複合材料織布を引き出すことにより、前記複合材料織布が冷却される際に前記複合材料織布に張力を生じさせる工程をさらに備える、請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、織布複合材料の分野に関する。より具体的には、本開示は、制御可能な織物内部形状を有する織布複合材料の連続的な製造に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、「Continuous Composite Formation」と題され2016年5月16日付で出願された米国仮出願第62/336,974号に基づく優先権を主張するものであり、当該仮出願の全内容が、参照により、以下に全て記載されているかのように本明細書に援用される。
【0003】
複合材料は、著しく異なる特性を有する2またはそれ以上の異なる材料の組み合わせからなる不均質構造体である。高性能複合材料は、航空宇宙、自動車、防衛、生物医学の分野で幅広く使用されており、高い比強度と弾性率により、頑丈で燃費の良い車両や機器を製造することができる。しかし、現在の高性能複合材料には、その製造手法に固有の、いくつかの欠点がある。
【0004】
複合材料には、主に、積層材と三次元(「3D」)プリフォームの2種類がある。積層材の場合、織糸が織られて織物となり、その織物は、通例、マトリックス樹脂で予め含浸し、次いで、型に層状に入れられる。積層は、一般的に、手作業で行われるため、積層材が高価になり、またエラーの可能性が増す。積層材は、層状であるという性質のために、面外(すなわち層間)特性が面内特性の10%程度と低く、層間剥離抵抗性が低く、また面内特性が基布の構造により制限される。
【0005】
3D複合材料プリフォームは、これら問題のうちいくつかの解決を試みたものであるが、プリフォームには、製作して作業するのが比較的困難であるという制約がある。これには、繊維を適切に整列させるのが困難であること、複合材料形成技術が限られていること、および、複合材料形成プロセスにおいてプリフォームを固化する際に、織物に皺ができる危険性があることが含まれる。3Dプリフォームは、複雑なコンピュータ制御の織機で織糸を織ることによって形成される3次元織物構造体である。この織物構造体を型に入れ、マトリックス樹脂を注入する。このプロセスでは、積層材と比較して面外特性が改善されるが、樹脂注入プロセスにより、気泡(例えば、空隙)や繊維のよじれの発生といった欠陥が生じ得る。
【0006】
複合材料は、付加製造によって形成してもよい。しかし、付加製造では、積層材や織布プリフォームを製造することができず、従来技術で形成された複合材料よりも本質的に弱い。現在の付加製造法では、細断した繊維、あるいは連続する繊維を用いる。しかし、細断された繊維は強度と靱性が低く、また連続する繊維は、その織り方に起因して、繊維間で機械的に織り交ぜられることがなく、層間剥離や層内亀裂伝播が生じる。さらに、付加製造を用いて複合材料を形成する公知の方法は、大量の複合材料を迅速に生成するには不十分である。
【0007】
したがって、制御可能な内部形状を有する織布複合材料を連続的に形成するシステムおよび方法が求められる。本開示の実施形態は、このような考察を主題とする。
【発明の概要】
【0008】
制御可能な織物内部形状を有する織布複合材料の連続的な製造のための機械が開示される。一実施形態において、織布複合材料を連続的に形成するための機械は、1または複数の経糸フィラメントを供給する1または複数のスプールを含む。本機械は、さらに、1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを備える複合材料織布を受け入れるように構成されたローラー集合体を含む。本機械は、さらに、上記1または複数のスプールから1または複数の経糸フィラメントを受け入れる複数の経糸ヘッドを備える経糸ラックを含み、各経糸ヘッドは、当該経糸ヘッドの高さに沿って異なる垂直高さに位置する複数のフィラメント溝を含み、各フィラメント溝は、上記1または複数のスプールのうちのスプールと上記ローラー集合体との間に張られた経糸フィラメントを引っ掛けるように構成されている。各経糸ヘッドは、独立して垂直方向に移動可能であり、当該経糸ヘッドから上記ローラー集合体へと延出する経糸フィラメントの高さを調節する。本機械は、さらに、1または複数の経糸フィラメントの間に1または複数の緯糸フィラメントを挿入して上記複合材料織布を形成する複数の緯糸挿入器を備える緯糸挿入器スタックを含む。
【0009】
本機械の上記複数の経糸ヘッドのうちの1または複数が、1または複数の経糸フィラメントを加熱する加熱要素を含み得る。
【0010】
本機械の上記複数の経糸ヘッドのうちの1または複数が、温度センサを含み得る。
【0011】
本機械の上記ローラー集合体は複合材料織布を固化するように構成され得る。
【0012】
本機械の上記ローラー集合体は、上記複合材料織布を加熱する加熱ローラー対を含み得る。
【0013】
本機械の上記ローラー集合体は、上記複合材料織布を冷却する冷却ローラー対を含み得る。
【0014】
本機械の上記複数の経糸ヘッドは、垂直面において互いに隣接して整列し得る。
【0015】
本機械の上記複数の経糸ヘッドのうち1または複数は、1または複数の緯糸フィラメントが1または複数の経糸フィラメント間に挿入された後に、垂直方向に移動して、1または複数の経糸ヘッドにそれぞれ関連付けられた経糸フィラメントの高さを調節するよう構成され得る。
【0016】
本機械は、さらに、1または複数の経糸ヘッドの垂直移動および1または複数の緯糸フィラメントの1または複数のフィラメント間への挿入のシーケンスを制御して所定のパターンを有する複合材料織布を作成するよう構成されたコントローラーを含み得る。
【0017】
本機械の上記緯糸挿入器スタックにおける上記複数の緯糸挿入器のうちの1または複数は、挿入された各緯糸フィラメントが上記1または複数の経糸フィラメントに対して略直交する方向を向くように、1または複数の緯糸フィラメントを1または複数の経糸フィラメントの間に挿入するように構成され得る。
【0018】
本機械の上記緯糸挿入器スタックは、第1の経糸フィラメント対の間に第1の緯糸フィラメントを、第2の経糸フィラメント対の間に第2の緯糸フィラメントを、同時に挿入するように構成され得る。
【0019】
本機械の1または複数の緯糸挿入器は、レピア緯糸挿入器、エアジェット緯糸挿入器、および/または、慣性緯糸挿入器であり得る。
【0020】
別の実施形態において、織布複合材料を連続的に形成するための機械は、1または複数の経糸フィラメントを供給する1または複数のスプールを含む。本機械は、さらに、1または複数の経糸フィラメントおよび1または複数の緯糸フィラメントを備える複合材料織布を受け入れるように構成されたローラー集合体を含む。本機械はさらに、上記1または複数のスプールから1または複数の経糸フィラメントを受け入れる複数のヘドル集合体を備える経糸ラックを含み、各ヘドル集合体は、上記1または複数のスプールのうちのスプールと上記ローラー集合体との間に張られた第1の経糸フィラメントを引っ掛ける第1の孔を備える第1のヘドルと、上記第1の経糸フィラメントを受け入れるスロットと、上記1または複数のスプールのうちのスプールと上記ローラー集合体との間に張られた第2の経糸フィラメントを引っ掛ける第2の孔とを有する第2のヘドルとを含む。上記第1のヘドルおよび第2のヘドルは、独立して垂直方向に移動して、それぞれ第1の孔と第2の孔の高さを調節可能である。本機械は、さらに、1または複数の経糸フィラメントの間に1または複数の緯糸フィラメントを挿入して上記複合材料織布を形成する複数の緯糸挿入器を備える緯糸挿入器スタックを含む。
【0021】
本機械の上記複数のヘドル集合体は、第1の垂直面において互いに隣接して整列し得る。
【0022】
各ヘドル集合体における上記第1のヘドルは、上記第1の垂直面と略直交する第2の垂直面において、それぞれのヘドル集合体における上記第2のヘドルと隣接するように配置され得る。
【0023】
上記複数のヘドル集合体のうちのヘドル集合体の上記第1のヘドルの上記第1の孔は、上記ヘドル集合体が中立位置にあるとき、上記ヘドル集合体の上記第2のヘドルの上記スロットと整列し得る。
【0024】
上記複数のヘドル集合体の各ヘドル集合体は、上記第1の経糸フィラメントと上記第2の経糸フィラメントとを受け入れるためのスロットと、上記1または複数のスプールのうちのスプールと上記ローラー集合体との間に張られた第3の経糸フィラメントを引っ掛けるための第3の孔を有する第3のヘドルであって、独立して垂直方向に移動して上記第3の孔の高さを調節可能な、第3のヘドルをさらに含み得る。
【0025】
本機械は、上記複数のヘドル集合体のうちの1または複数における上記第1、第2、および/または、第3のヘドルのうちの1または複数のヘドルの垂直移動および1または複数の緯糸フィラメントの1または複数の経糸フィラメント間への挿入のシーケンスを制御して所定のパターンを有する複合材料織布を作成するよう構成されたコントローラーをさらに備え得る。
【0026】
制御可能な織物内部形状を有する織布複合材料を連続的に製造するための方法も開示される。本方法は、ローラー集合体と、複数の経糸ヘッドを備える経糸ラックとの間に張られた複数の経糸フィラメントを有する機械を用い、各経糸ヘッドは、当該経糸ヘッドの高さに沿って異なる垂直高さに位置する複数のフィラメント溝を備え、各フィラメント溝は、経糸フィラメントを引っ掛けるように構成されており、各経糸ヘッドは、独立して垂直方向に移動して、各経糸ヘッドと関連付けられた経糸フィラメントの上記ローラー集合体に対する高さを調節可能である。本方法は、上記複数の経糸ヘッドの第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、上記複数の経糸ヘッドの第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における経糸フィラメントよりも高くなるように、上記複数の経糸ヘッドの上記第1のサブグループを第1の垂直方向位置に、上記複数の経糸ヘッドの上記第2のサブグループを第2の垂直方向位置に、垂直方向において配置することを含む。本方法は、各緯糸フィラメントが、上記複数の経糸ヘッドの上記第1のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントと、上記複数の経糸ヘッドの上記第2のサブグループに関連付けられた経糸フィラメントとの間に挿入されるように、1または複数の緯糸フィラメントをローラー集合体と経糸ラックとの間に位置する経糸に挿入することを、さらに含む。本方法は、上記複数の経糸ヘッドの上記第1のサブグループの経糸ヘッドのフィラメント溝における各経糸フィラメントの垂直方向の高さが、上記複数の経糸ヘッドの上記第2のサブグループの経糸ヘッドの対応するフィラメント溝における各経糸フィラメントよりも低くなるように、上記複数の経糸ヘッドの上記第1のサブグループを第3の垂直位置に、上記複数の経糸ヘッドの前記第2のサブグループを第4の垂直位置に、垂直方向において再配置することによって、2またはそれ以上の経糸フィラメントの間に上記1または複数の緯糸フィラメントを固定して複合材料織物を作成することをさらに含む。本方法は、上記ローラー集合体を作動させて、上記複合材料織物を加熱および圧縮するように構成された対向する一対のローラーを通して上記複合材料織物を引き出すことにより、複合材料織物を固化することをさらに含む。
【0027】
本方法は、複数のフィラメントスプールから出た複数の経糸フィラメントのそれぞれの自由端を、経糸ラックの複数の経糸ヘッドのうちの1つの固有のフィラメント溝を通して送り、複数の経糸フィラメントのそれぞれの自由端をローラー集合体における対向するローラー対を通して送ることにより、ローラー集合体と経糸ラックの間に経糸を作成することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態の一例による連続複合材料織機の実施形態を示す部分概略図である。
図2A図2Aは、実施形態の一例による連続複合材料織機の代表的な側面図である。
図2B図2Bは、実施形態の一例による連続複合材料織機の代表的な上面図である。
図3A図3Aは、実施形態の一例による、第1の位置に複数の第1経糸ヘッドを有し第2の位置に複数の第2経糸ヘッドを有する連続複合材料織機の代表的な上面図である。
図3B図3Bは、実施形態の一例による、第1の位置に複数の第1経糸ヘッドを有し第2の位置に複数の第2経糸ヘッドを有する連続複合材料織機の代表的な側面図である。
図3C図3Cは、実施形態の一例による、上記第2の位置に上記複数の第1経糸ヘッドを有し第1の位置に上記複数の第2経糸ヘッドを有する連続複合材料織機の代表的な上面図である。
図3D図3Dは、実施形態の一例による、上記第2の位置に上記複数の第1経糸ヘッドを有し第1の位置に上記複数の第2経糸ヘッドを有する連続複合材料織機の代表的な側面図である。
図4A図4Aは、本開示による連続複合材料織機の経糸ラックの前面図である。
図4B図4Bは、本開示による連続複合材料織機の経糸ラックの背面図である。
図5A図5Aは、実施形態の一例による経糸ヘッドの背面図である。
図5B図5Bは、実施形態の一例による経糸ヘッドの側面図である。
図5C図5Cは、実施形態の一例による経糸ヘッドの側面断面図である。
図6図6は、実施形態の一例による連続複合材料織機の緯糸挿入器スタックの側面斜視図である。
図7A図7Aは、実施形態の一例による連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図7B図7Bは、実施形態の一例による、経糸ヘッドが第1の垂直構成(図7B)から第2の垂直構成(図7C)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントを示す、連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図7C図7Cは、実施形態の一例による、経糸ヘッドが第1の垂直構成(図7B)から第2の垂直構成(図7C)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントを示す、連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図8A図8Aは、実施形態の一例による、経糸ヘッドが第1の垂直構成(図8A)から第2の垂直構成(図8B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの別の例を示す、連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図8B図8Bは、実施形態の一例による、経糸ヘッドが第1の垂直構成(図8A)から第2の垂直構成(図8B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの別の例を示す、連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図9A図9Aは、実施形態の一例による、ヘドル集合体を備える別の経糸ヘッド構成を有する連続複合材料織機の代表的な側面図である。
図9B図9Bは、実施形態の一例による、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成の代表的な分解図である。
図9C図9Cは、実施形態の一例による、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成の代表的な前面図である。
図10図10は、実施形態の一例による、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成を備える連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図11A図11Aは、実施形態の一例による、ヘドルが第1の垂直構成(図11A)から第2の垂直構成(図11B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの例を示す、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成を有する連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図11B図11Bは、実施形態の一例による、ヘドルが第1の垂直構成(図11A)から第2の垂直構成(図11B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの例を示す、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成を有する連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図12A図12Aは、実施形態の一例による、ヘドルが第1の垂直構成(図12A)から第2の垂直構成(図12B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの別の例を示す、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成を有する連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図12B図12Bは、実施形態の一例による、ヘドルが第1の垂直構成(図12A)から第2の垂直構成(図12B)へと移動した際に生じる織り交ぜられたフィラメントの別の例を示す、ヘドル集合体を備える経糸ヘッド構成を有する連続複合材料織機の代表的な前面切り欠き図である。
図13図13は、実施形態の一例による、複合材料織布を連続的に形成する方法のフローチャートである。
図14図14は、実施形態の一例による別の連続複合材料織機の代表的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示技術の原理および特徴の理解を容易にするため、例示的な実施形態について以下で説明する。本開示技術の様々な要素を構成するものとして以下に説明する構成要素は、例示的であり、限定的ではない。本明細書に記載された構成要素と同一または同様の機能を果たし得る多くの好適な構成要素が、本開示の電子機器および方法の範囲内に包含されることが意図される。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素は、例えば、本開示技術の開発の後に開発された構成要素を含んでいてもよいが、それに限定されない。
【0030】
また、本明細書および添付の請求の範囲で用いられているところの単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明示されていない限り、複数の対象を含むことにも留意されたい。
【0031】
「含む/備える(comprising)」、「含有する(containing)」、あるいは「含む(including)」は、少なくとも指定された化合物、要素、粒子、または方法ステップが、構成、物品、または方法に存在することを意味するが、他の化合物、物質、粒子、または方法ステップが指定されたものと同一の機能を有している場合であっても、そのような他の化合物、物質、粒子、または方法ステップの存在を除外するものではない。
【0032】
また、1以上の方法ステップに言及した場合、追加される方法ステップや、これら明確に特定されたステップの間に介在する方法ステップの存在が除外されることはないことも理解されるべきである。同様に、装置あるいはシステムにおける1以上の要素に言及した場合、追加される要素や、これら明確に特定された要素間に介在する要素の存在が除外されることはないことも理解されるべきである。
【0033】
本開示の実施形態は、単一ステップのプロセスで織布複合材料の複数の層を形成する機械および方法を提示する。織布複合材料は、カスタマイズされた強度、剛性、および靭性を有する織布複合材料の作成を可能にする動的に制御可能な織物内部形状を有するように、連続的に作成されてもよい。ポリマーで含浸したフィラメントスプールが、連続複合材料織機の一端に搭載され、多層複合材料板が、追加の積層ステップを要することなく当該織機の反対側に出力されてもよい。本開示の連続複合材料織機は、経糸と緯糸のフィラメントの互いに対する間隔を変化させることによって複合材料の密度を変えることができるように構成されてもよい。
【0034】
ここで図面を参照して、本開示の様々な実施形態を、詳細に開示する。図面において、同様の参照符号は同様の部品を表す。図1は、制御可能な織物内部形状を有する複合材料織布を連続的に形成する機械100(連続複合材料織機100とも呼ぶ)の部分概略図である。機械100は、経糸ラック110およびローラー集合体116を支持するフレーム102を含んでいてもよい。以下でより詳細に示されるように、経糸ラック110は、ベースプレート121とトッププレート122の間に配置された複数の経糸ヘッドを含んでいてもよい。フレーム102は、オプションとして、緯糸挿入器スタック(図1には示されていない)を支持しているか、あるいは緯糸挿入器スタックが、独立してフレーム102に隣接して配置されていてもよい。フレーム102は、経糸ラック110、ローラー集合体116、または連続複合材料織機100の他の部分の周囲に搭載された断熱板を支持するのに使用可能な、複数の支柱108を含んでいてもよい。フレーム102は、複数のフィラメントスプール(不図示)を支持するスプールラックマウント104を含んでいてもよい。各フィラメントスプールは、例えば、熱可塑性ポリマーで予め含浸または被覆した連続した織糸またはトウを含む、経糸フィラメントのロールを含んでいてもよい。織糸またはトウの材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、あるいは金属繊維を含んでいてもよいが、これらに限定されない。繊維(または繊維の組み合わせ)は、所望の機械的または電気的特性に基づいて選択してもよい。各フィラメントスプールの経糸フィラメントの自由端は、経糸ラック110を介してローラー集合体116に供給されてもよい。
【0035】
ローラー集合体116は、複数の経糸フィラメントを受けるように構成された第1のローラー対120を含んでいてもよい。ローラー集合体116は、第1のローラー対120の間に経糸フィラメントを「挟み込む」ことによって、経糸フィラメントに張力を生じさせてもよい。言い換えれば、ローラー集合体116のローラーは、ローラーが適切な反対方向に回転するときに経糸フィラメントを前方に押し出す圧縮力を経糸フィラメントに加えてもよい。第1のローラー対120は、織布が第1のローラー対120を通って引っ張られるときに複合材料織布に対して圧縮力を加えることによって複合材料織布を圧縮してもよい。ローラー集合体116はさらに、複合材料織布をさらに圧縮するために第2のローラー対130を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、第1のローラー対120、および/または、第2のローラー対130は、複数のフィラメントスプールから経糸フィラメントを引き出すために、1以上のモーターによって動作されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のローラー対120は、材料を加熱して複合材料を固化するために、加熱要素を含んでいてもよい。例えば、第1のローラー対120は、カートリッジ形式の抵抗加熱器を含んでいてもよい。カートリッジ加熱器は第1のローラー対120のうちの一のローラーと同心状に設置してもよく、また、ローラーとカートリッジ加熱器との機械的な独立性を維持しつつ加熱器をローラーに熱的に連結するために、熱グリスを用いてもよい。いくつかの実施形態では、加熱要素は誘導加熱を行ってもよく、あるいは、加熱要素は、ローラーを通して送り込まれる加熱された作動流体であってもよい。さらに、いくつかの実施形態によれば、第2のローラー対130は、結果として得られる複合材料中のポリマーの結晶化度を制御するために、ポリマーマトリックスを凝固させ冷却する冷却要素を含んでいてもよい。例えば、冷却要素は、第2のローラー対130のうちの一のローラーと同心状に搭載され、熱グリスと接触する、カートリッジ型熱交換器であってもよい。カートリッジ型熱交換器は、冷却効果を提供するために、それを通して送り込まれる冷却水(または他の作動流体)を有していてもよい。あるいは、第2のローラー対130によってオプションとして実行される冷却機能は、低温液体(例えば、液体窒素)を用いることにより、熱いフィラメントの上を流れてそのフィラメントを冷却するように導かれ得る過冷却ガスを生成することによって達成してもよい。
【0036】
複数のフィラメントスプールからの複数の経糸フィラメントをローラー集合体116と経糸ラック110との間に張ったとき、ローラー集合体116と経糸ラック110とは、当該複数の経糸フィラメントを十分に引っ掛けて、経糸フィラメントが経糸ラック110とローラー集合体116との間で略直線状に延伸するように経糸に張力を生じさせてもよい。経糸ラック110とローラー集合体116との間に張られた経糸フィラメントにおけるこれら略直線状の部分は、以下でより詳細に示されるように、織布を形成するために、緯糸挿入器スタックにおける1以上の緯糸挿入器からの緯糸フィラメントを受け入れることが可能な経糸を形成してもよい。当業者には理解されるように、経糸は、1以上の経糸フィラメントが他の経糸フィラメントからある距離またはある角度だけずれた、複数の経糸フィラメントであってもよい。したがって、複数の経糸フィラメントは、経糸ラック110とローラー集合体116との間で、ローラー集合体116の第1のローラー対120の長手方向に直交する方向に互いに平行に配してもよいが、以下でより詳細に説明するように、当該複数の経糸フィラメントのうちの一部または全部は、互いに、垂直方向における異なる高さまたは角度(すなわち経糸フィラメントが経糸ラック110からローラー集合体116に向かって上方に傾斜/下方に傾斜する角度)で配してもよい。図6により詳細に示されるように、緯糸挿入器スタックは、垂直に積み重ねられた複数の緯糸挿入器を含んでいてもよい。当業者には理解されるように、緯糸挿入器スタックのうちの1以上の緯糸挿入器は、レピア緯糸挿入器、エアジェット緯糸挿入器、および/または、慣性緯糸挿入器であってもよい。例えば、緯糸挿入器スタックのうちの1以上の緯糸挿入器は、米国特許出願公開第2016/0305051号の段落[0076]~[0079]に記載されているようなラック・アンド・ピニオン型レピアあるいはエアジェット挿入システムであってもよい。
【0037】
機械100は、オプションとして、スプールラックマウント104と経糸ラック110の間に配された、フィラメントガイドプレート106を含んでいてもよい。フィラメントガイドプレート106は、スプールラックマウント104に搭載された複数のフィラメントスプールからの経糸フィラメントを受け入れる複数の開口107を含み、経糸フィラメントを経糸ラック110へとガイドする、剛性を有するプレートであってもよい。各経糸フィラメントは、経糸ラック110に通される前に、フィラメントガイドプレート106の個々の開口107に通されてもよい。フィラメントガイドプレート106は、各経糸フィラメントの位置を、対応する開口107に制限することによって、経糸フィラメントにおける複数のフィラメントローラーとフィラメントガイドプレート114との間に延びる部分の垂直移動に制約を与えるように機能してもよい。フィラメントガイドプレート106は、また、各開口107にアンカーポイントを提供することにより、当該複数の経糸フィラメントの横方向の移動を制限するよう機能してもよい。したがって、フィラメントガイドプレート106は、経糸フィラメントが機械100を通って連続的に動くことによって生じる経糸フィラメントの張りの変化のために経糸フィラメント同士が接触したり絡まったりする危険性なしに、複数の経糸フィラメントを経糸ラック110に受け入れることができるため、有利である。
【0038】
図1には示されていないが、スプールラックマウント104は、複数のフィラメントスプールが平行な行と列に配されるように、複数のフィラメントスプールをグリッド状に搭載することができる。例えば、スプールラックマウント104は、図1に示されるフィラメントガイドプレート106の、4行(各行10個)の開口107に対応する4行(各行10個)のフィラメントスプールを、各フィラメントスプールが個々の開口107にフィラメントを送ることができるように、支持することができる。図1は、40個の経糸フィラメント(すなわちフィラメントガイドプレート106の開口107に対応する4行(各行10個)の経糸フィラメント)を用いるように構成された機械100を示しているが、機械100はこれに限定されず、フィラメントスプールおよび経糸ラック110の個数を増やしたり減らしたりすることによって、任意の個数の経糸フィラメントを用いることが理解される。
【0039】
図2Aおよび図2Bは、それぞれ、連続複合材料織機100の代表的な側面図および上面図を示している。図1について上述したように、複数のフィラメントスプール210(スプールラック104に搭載されてもよい)が、複数の経糸フィラメント212を、経糸ラック110を介して、ローラー集合体116の第1のローラー対120に送る。図2Aおよび図2Bは、合計16本の経糸フィラメント212を供給する4×4のグリッドのフィラメントスプール210を表している。図2Aに示されるように、当該複数の経糸フィラメント212は、横から見たときに互いに整列して並んだ複数の経糸フィラメント212をそれぞれ含む複数の経糸フィラメント行212a、212b、212c、および212dからなっていてもよい。各経糸フィラメント行212a、212b、212c、および212dは、スプールラックマウント104に垂直方向における異なる高さに搭載された複数のフィラメントスプール210から出ている。図2Bに示されるように、当該複数の経糸フィラメント212は、上から見たときに互いに整列して並んだ複数の経糸フィラメント212をそれぞれ含む複数の平行経糸フィラメント列212e、212f、212g、および212hからなっていてもよい。簡略化および見易さのために、本願の図面の多くは、16本の経糸フィラメント212(すなわち、4行4列の縦糸フィラメント212)のみを描いているが、実際には、連続複合材料織機100は、図1について説明したように、例えば40本の経糸フィラメント212など、さらに多くの経糸フィラメントを用いてもよい。
【0040】
図2Aおよび2Bは、連続複合材料織機100を用いて織布複合材料230を形成するプロセスの流れを例示した図である。ローラー集合体116は、複数の経糸フィラメント212を、複数のフィラメントスプール210から、経糸ラック110を介して引き出すように構成されている。いくつかの実施形態では、ローラー集合体116は、経糸フィラメント212を一定の、あるいは可変の速度で連続的に引っ張るように構成されてもよく、また他の実施形態では、ローラー集合体116は、経糸フィラメント212を、所定の、あるいは可変の時間間隔で分けられた不連続な「引っ張り」において繰り返し引っ張るように構成してもよい。ローラー集合体116に引き込まれる前に、緯糸挿入器スタック220は、1以上の緯糸フィラメント222を、複数の経糸フィラメント212によって形成された経糸に挿入して、織布を形成することができる。緯糸フィラメント222は、図3Aに示されるように、外側の2つの経糸フィラメント列212eおよび212hの間の距離に亘るのに足る最小長さを有していてもよい。緯糸フィラメント222は、熱可塑性ポリマーで予め含浸または被覆した織糸またはトウからなっていてもよい。織糸またはトウの材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、あるいは金属繊維を含み得るが、これらに限定されない。緯糸フィラメント222はまた、不連続繊維強化熱可塑性プラスチックからなっていてもよい。
【0041】
緯糸フィラメント222が経糸フィラメント212間に挿入されて織布が形成された後、織布に対して圧縮力を加えるローラー集合体116によって織布が圧縮されて複合材料となってもよい。複合材料230の形成を助けるために、機械100は、複数の経糸フィラメント212および1以上の緯糸フィラメント222を加熱してそれらを融合させる加熱ゾーン240を含んでいてもよい。経糸フィラメント212は、加熱ゾーン240に入る前は、室温に保たれてもよい。加熱ゾーン240内において、フィラメントの温度をマトリックスポリマーのガラス転移温度(T)よりも高く保って、フィラメントの結合を可能にしてもよい。例えば、経糸ラック110は、フィラメントをTよりも高温に加熱し、加熱ゾーン240は、フィラメントがローラー集合体116に到達する前に、フィラメントの温度が溶融温度(T)を超えるまでフィラメントを加熱し続けてもよい。加熱ゾーン240は、経糸ラック110に関連付けられた加熱要素、第1のローラー対120に関連付けられた加熱要素、フレーム102の支柱108に搭載された断熱パネル、あるいは、それらの所定の組み合わせによって作成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、上記の加熱機能は、あるいは、材料を振動させて弾性損失によって熱を発生させることができる超音波溶接棒、交番磁界または回転磁界を発生させることによって材料内に電流を誘導して抵抗損失によって熱を発生させる誘導加熱器、熱風を材料の周りに循環させる対流装置(例えば、対流式オーブン)、マイクロ波加熱装置、または、当該技術分野においてそのような公知あるいは後に開発された任意の他の加熱方法によって実現されてもよい。
【0042】
上述したように、ローラー集合体116は、オプションとして、織布に対してさらなる圧縮力を加えるために第2のローラー対130を含んでいてもよい。第2のローラー対130は、前に加熱された経糸および緯糸フィラメント212、222の織布を冷却して織布複合材料230の形成を加速させる冷却ゾーン250を作成することができる関連冷却要素を有していてもよい。冷却ゾーン250では、複合材料の温度を、マトリックスポリマーのガラス転移温度(T)未満に低下させてもよい。マトリックスポリマーにおける結晶化度は、第1の加熱ローラー対120と第2の冷却ローラー対130との間の送り速度、および、距離を変化させることによって制御することができる。なぜなら、これにより、ポリマーがそのガラス転移温度(T)と溶融温度(T)との間にある時間が決まるからである。ローラー集合体116の実施形態は、織布複合材料を加熱する第1の加熱ローラー対120と、織布複合材料を冷却する第2の冷却ローラー対130とを有するものとして記載されているが、ローラー集合体116は、マトリックスポリマーにおける結晶化度を制御するため、任意の個数の加熱ローラー、および/または、冷却ローラーを含んでいてもよい。例えば、ローラー集合体116は、3個以上のローラー対を含み、各ローラー対の温度範囲が、複合材料織布が引き込まれる第1のローラー対で最も高温で、最後のローラー対で最も低温であり、各中間ローラー対の温度が、第1のローラー対の温度と最後のローラー対の温度の間で徐々に低下するように設定されていてもよい。
【0043】
連続複合材料織機100は、経糸ラック110、ローラー集合体116、および緯糸挿入器スタック220と電子的に通信し得るコントローラー260を含んでいてもよい。コントローラー260は、連続複合材料織機の様々な機能、たとえば、経糸ラック110の経糸ヘッドまたはヘドル集合体の垂直動作、経糸ラック110の加熱要素、ローラー集合体116の一部または全部のローラーの回転速度、ローラー集合体116の一部または全部のローラーによって加えられる圧縮力、ローラー集合体116の加熱および/または冷却要素、および緯糸挿入器スタック220による緯糸フィラメントの挿入などを制御するようプログラム可能な様々な電子機器であり得る。さらに、コントローラー260は、連続複合材料織機100が連続的に織布複合材料230を出力できるように、ローラー集合体116を通過する材料の前進、緯糸挿入器スタック220からの緯糸フィラメントの挿入、および、経糸ラック110の経糸ヘッドまたはヘドル構成の変更の相対的なタイミングを制御可能である。いくつかの実施形態では、コントローラー260は、複合材料織機100に所定のデザインの複合材料230を生産させるために、所定のプログラムを記憶および実行してもよい。コントローラー260は、例えば、プログラム可能な、あるいは、予めプログラムされた、マイクロコントローラー(例えば、特定用途向け集積回路(ASICs))であってもよい。あるいは、コントローラーは、連続複合材料織機100の態様を制御する、PC、サーバ、メインフレーム、あるいはその他のコンピュータプログラム装置であり得る。コントローラー260は、スマートフォンまたはタブレット上のアプリケーション(または「アプリ」)を含むことができる。コントローラー260は、例えば、直接有線接続、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、インターネット接続、無線接続、Bluetooth、近距離無線通信(NFC)、あるいは、移動体通信や電波接続などを用いて、システムに接続されてもよい。コントローラー260は、同様の接続を介してネットワーク化して、遠隔操作および制御を可能にすることもできる。
【0044】
図3A図3Dは、複数の経糸フィラメント212の、互いに対する垂直位置を調節することによって、織布を作成するプロセスを示す。経糸フィラメントの垂直位置とは、経糸ラック110における経糸フィラメント212の垂直方向における高さのことであってもよい。理解されるように、経糸ラック110における経糸フィラメント212の高さを変えることによって、経糸フィラメント212が、対応するフィラメントスプール210から経糸ラック110に向かって延伸する角度が変化してもよい。さらに、経糸フィラメントが経糸ラック110からローラー集合体116に向かって延伸する角度(「経糸角度」)も、経糸フィラメント212の高さが調節されると変化する。経糸300は、経糸フィラメント212の少なくとも1つのサブグループが経糸フィラメント212の第2のサブグループと異なる高さまたは経糸角度を有するように、複数の経糸フィラメント212の高さを調節することによって作成されてもよい。図3Bに示されるように、フィラメントスプール210の同じ行から出た、経糸ラック110において同じ高さにある経糸フィラメント212は、横から見ると整列している。
【0045】
以下でより詳細に示されるように、経糸ラック110の複数の経糸ヘッドは、それぞれ、垂直方向に移動して当該経糸ヘッドに引っ掛けられる経糸フィラメント212の高さを調節できるように構成されている。図3Aおよび図3Bは、第1の垂直構成の経糸ラック110における複数の経糸ヘッドを示し、一方、図3Cおよび3Dは、第2の垂直構成に移動させた経糸ラック110の複数の経糸ヘッドを表す。図3Aおよび図3Bに示されるように、経糸フィラメント212eおよび212gの第1のグループである第1の行212aは、最初に第1の高さに配置された第1の経糸ヘッドグループ111と関連づけられ、経糸フィラメント212fおよび212hの第2のグループである第2の行212bは、最初に第1の高さより低い第2の高さに配置された第2の経糸ヘッドグループ112と関連づけられていてもよい。第1の行212aの、経糸ラック110とローラー集合体116との間に配置された部分311と、第2の行212bの、経糸ラック110とローラー集合体116との間に配置された部分312の相対位置は、1以上の緯糸フィラメント222を受け得る経糸300を構成する。したがって、第1の垂直構成では、図3Bに示されるように、緯糸フィラメント222は、緯糸挿入器スタック220により、経糸フィラメント212eおよび212gの第1の行212aと経糸フィラメントの第2の行212bとの間に挿入することができる。緯糸フィラメント222を経糸300(すなわち、2個以上の経糸フィラメント212の間)に挿入した後、経糸フィラメント212eおよび212gの第1の行212aが経糸フィラメント212fおよび212hの第2の行212bよりも下に配置されるように、経糸ラック110の複数の経糸ヘッドの垂直位置を第2の垂直構成に調節してもよい。図3Dに示されるように、こうした経糸ラック110の複数の経糸ヘッドの反転により、複数の経糸フィラメント212の第1および第2の行212a、212bの部分311、312を、挿入された緯糸フィラメント222の背後で互いに交差させ、それにより、織布を作成して複数の経糸フィラメント212間に緯糸フィラメント222を固定してもよい。次いで、織布の緯糸フィラメント222を含む部分を、上述のように、圧縮して織布複合材料230とするためにローラー集合体116に引き込んでもよい。
【0046】
簡略化および見易さのために、図3A図3Dは、経糸ラック110の経糸ヘッドの垂直構成に基づいて、経糸フィラメント212の2つの行212a、212bを作成するフィラメントスプール210の1つの行のみを描いているが、連続複合材料織機100は、さらに多くの経糸フィラメント行212を含んでいてもよいことが理解されよう。例えば、上述のように、連続複合材料織機100は、複数のフィラメントスプール210から延出する4個以上の行の経糸フィラメント212を含んでいてもよい。さらに、以下に述べるように、経糸ラック110の複数の経糸ヘッドは、それらの垂直方向における相対的な高さを調節して、経糸300に動的な数の行を作成することができる。さらに、図3A図3Dは、単一の緯糸フィラメント222の挿入のみを描いているが、緯糸挿入器スタック220は、複数の緯糸フィラメント222を、適宜、経糸における垂直方向の異なる高さに同時に挿入してもよいことが理解されよう。このように、そして図7A図11Bについて以下でより詳細に示されるように、連続複合材料織機100は、経糸ラック110の複数の経糸ヘッドに対する一連の高さ調節、および1以上の緯糸フィラメント222の、経糸300への選択的な挿入により、種々の異なる織りパターンを動的に作成してもよい。
【0047】
図4Aおよび図4Bは、複数の経糸ヘッド402を有する経糸ラック110の前面および背面を示す図である。図に示されるように、複数の経糸ヘッド402のそれぞれは、垂直面において互いに隣接して整列していてもよい。各経糸ヘッド402は、当該経糸ヘッド402を垂直方向に移動できるようにするリードスクリュー404に搭載されていてもよい。特定の経糸ヘッドに関連付けられたリードスクリュー404は、当該経糸ヘッド402の上方または下方に配置されていてもよい。各経糸ヘッド402はまた、経糸ヘッド402が横方向に動くのを制限する1以上の線型シャフト405に搭載されていてもよい。各経糸ヘッド402の垂直移動は、複数の経糸ヘッド402の下方に配置されたベースプレート121と、複数の経糸ヘッド402の上方に配置されたトッププレート122とによって制限されていてもよい。いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402の垂直移動は、リミットスイッチ、ビーム式のセンサ、または経糸ヘッドを駆動するモーター上のエンコーダによって制限されていてもよい。当業者には理解されるように、各リードスクリュー404は、リードスクリュー404を回転させることができるモーターによって動作され、それにより、関連付けられた経糸ヘッド402の垂直位置が、リードスクリュー404の回転方向に基づいて、上下に調節されてもよい。各モーターは、コントローラー260によって制御されてもよい。いくつかの実施形態では、1以上の経糸ヘッド402の垂直移動は、ソレノイド式システム、油圧システム、空気圧システム、ラック・アンド・ピニオン、あるいはその他任意の、経糸ラック110における経糸ヘッド402の垂直移動を選択的に制御可能にする適切なシステムによって駆動されてもよい。
【0048】
複数の経糸ヘッド402における各経糸ヘッド402は、他の経糸ヘッド402とは独立した垂直移動が可能であってもよい。このように、いくつかの実施形態によれば、複数の経糸ヘッド402における各経糸ヘッド402は、垂直方向における互いに異なる高さに、動的に配置させることが可能とされていてもよい。いくつかの実施形態では、複数の経糸ヘッド402のサブグループは、当該サブグループの各経糸ヘッド402が、それぞれ同じ高さを維持するように、連動して移動するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、複数の経糸ヘッド402のサブグループは、コントローラー260によって動的に形成されたり形成されなかったりしてもよい。
【0049】
図5Aは、実施形態の一例による、図4Aおよび図4Bの経糸ラック110の経糸ヘッド402の背面図である。経糸ヘッド402は、複数のフィラメント溝502と、複数の加熱要素504と、1以上の温度センサ506とを含んでいてもよい。複数のフィラメント溝502は、経糸ヘッド402の垂直軸に沿って(すなわち、経糸ヘッド402の高さに沿って)異なる位置に配置してもよい。各フィラメント溝502は、経糸フィラメント212がフィラメント溝502を介して経糸ヘッド402を通過することができるような、経糸ヘッド402の前面から経糸ヘッド402の背面まで延びるスロットであってもよい。フィラメント溝502は、経糸ヘッド402の垂直位置に基づいてフィラメント溝502が経糸フィラメント212を垂直方向に固定するように、経糸フィラメント212を引っ掛けるか、または受け入れるように構成される。言い換えれば、図4Aおよび図4Bに関して上述したように、経糸ヘッド402が上方または下方に移動すると、それに対応して、経糸ヘッド402のフィラメント溝502のそれぞれを通過する複数の経糸フィラメント212が、フィラメント溝502をそれぞれ通過する箇所において、上方または下方に移動する。フィラメント溝502は、挿入された経糸フィラメント212が横方向に移動するのを制限しつつ、当該経糸フィラメント212がフィラメント溝502を通って前方または後方に自由に引っ張られるのを可能にするように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、フィラメント溝502は、経糸フィラメント212が当該溝を通過する際に、経糸フィラメント212に牽引力を加えるように構成されてもよく、これにより、フィラメントの形状、および/または、サイズを、経糸ヘッド402によって調節することが可能になる。例えば、いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402の背面のフィラメント溝502の寸法は、経糸ヘッド402の前面のフィラメント溝502の寸法と異なっていてもよく、これにより、余分な樹脂を除去することを可能にし、かつ/あるいは、経糸フィラメント212の再成形を可能にする(引き抜き成形に類似)。
【0050】
加熱要素504は、所与のフィラメント溝502の両側の経糸ヘッド402の内部に一体化され、経糸フィラメント212がフィラメント溝502を通過する際に経糸フィラメント212を加熱してもよい。加熱要素は、例えば、抵抗カートリッジ加熱器または誘導コイルであってもよいが、これらに限定されない。1以上の温度センサ506を経糸ヘッド402内に一体化して、加熱要素504が発生する温度を監視してもよい。いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402は、経糸フィラメント212を、経糸フィラメント212のポリマーのガラス転移温度(T)を上回る最低温度まで加熱するように構成されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402は、経糸フィラメント212の溶融温度(T)より約20℃~30℃低い温度まで経糸フィラメント212を加熱するように構成してもよい。上述のように、経糸フィラメント212が経糸ヘッド402から加熱ゾーン240を通ってローラー集合体116へと移動すると、ローラー集合体116に到達する前に、経糸フィラメント212の温度が、特定の温度、例えばTよりも高温に上昇してもよい。図示されていないが、機械100は、加熱ゾーン240、ローラー集合体116、および/または、冷却ゾーン250内に温度センサを含み、フィラメント、および/または、織布の温度を監視してもよい。コントローラー260は、経糸ヘッド506の温度を示す、経糸ヘッド506の1以上の温度センサ506から、1以上の信号を受信してもよく、コントローラー260は、1以上の加熱要素504に信号を送信して、それらの熱出力を調節してもよい。コントローラー260は、経糸ヘッド402における温度が、最低温度、例えばTよりも低温であることを示す信号を、温度センサ506から受信した場合に、1以上の経糸ヘッド402の加熱要素の熱出力を増加させる信号を送ってもよい。
【0051】
図5Bおよび図5Cは、それぞれ、実施形態の一例による経糸ヘッド402の側面図および側面断面図である。上述したように、経糸ヘッド402は、経糸ヘッド402の垂直移動を容易にするリードスクリュー404に搭載されていてもよい。経糸ヘッド402はまた、リードスクリュー404が発生させるねじり力に抵抗し、経糸ヘッド402を経糸ラック110内で横方向に安定させる、複数の線型シャフト405を含んでいてもよい。例えば、図1に示されるように、経糸ラック110の経糸ヘッド402の底部から延出する複数の線型シャフト405は、ベースプレート121の開口に受け入れられ、経糸ラック110の経糸ヘッド402の上部から延出する複数の線型シャフト405は、トッププレート122の開口に受け入れられ、それにより、各経糸ヘッド402に対して、その他の経糸ヘッド402と平行な個々の垂直面において制約を与える。経糸ヘッド402は、1以上の断熱材508を含んでいてもよく、これは例えば、セラミック断熱材508である。セラミック断熱材508は、溶融温度(T)に関わらず任意のフィラメントと共に用いることができるため有利である。Tが低い経糸フィラメント212(例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレン)が用いられた場合、セラミック断熱材508の代わりに高温ポリマー断熱材508が利用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、断熱材508は、複数の加熱要素504の上下両側に配置されてもよく、それにより、熱が、加熱要素504から、リードスクリュー404、線型シャフト405、ベースプレート121、トッププレート122、あるいは熱に晒されるのが好ましくない経糸ラック110の任意の部分へと伝わるのを防ぐ。図5Cに示されるように、経糸ヘッド402は、経糸ヘッド402の構成要素を取り外し可能に一体的に固定してモジュール化できるようにするボルトまたはねじ用の、1以上のボルト孔514を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402のフィラメント溝502は、詰まると取り外して交換してもよい。さらに、フィラメント溝502を追加または除去して、カスタマイズした個数の異なる層を有する複合材料を構築することができる。
【0052】
図6は、最大3つの別々の緯糸フィラメント222を同時に出力するように構成された3つの慣性緯糸挿入器を有する緯糸挿入器スタック220の一実施形態を示す。図6に示す緯糸挿入器スタック220は、3つの慣性緯糸挿入器ローラー対602を含み、慣性緯糸挿入器ローラー対602は、それぞれ、緯糸挿入器スタック220の背後に位置する緯糸フィラメント源から溝606を通ってスリット608から出る緯糸フィラメントの連続する撚糸を押し出して、複数の経糸フィラメント212によって構成される経糸300に挿入するように構成されている。緯糸フィラメント222の連続する撚糸は、緯糸フィラメントスプールあるいはロール(不図示)から供給され、慣性挿入器ローラー対602のうちの1つに送られてもよい。緯糸フィラメント222を引っ掛けるローラー対602の2つのローラーは、同時に反対方向に回転して、緯糸フィラメント222の一部をスプールから引っ張りつつ、緯糸フィラメント222の別の部分を、溝606を通してスリット608に向かって押し出す。ローラー対602が発生させる押し出し力は、緯糸挿入器スタック220のスリット608から所定の長さの緯糸フィラメント222を排出するように機能してもよい。1以上のローラー対602の回転は、モーター604を動力源としてもよい。図6に示されるように、複数のローラー対602は単一のモーターによって動作され、各ローラー対602が、ローラー対602と関連付けられたギアを当該モーターによって駆動される歯車チェーンと係合させることによって、選択的に駆動されるように動作されてもよい。コントローラー260は、複数のローラー対602に信号を送り、1以上のローラー対602を選択的に係合させて、予めコントローラー260が実行するようにプログラムされた織りパターンに従って、緯糸挿入器スタック220が緯糸フィラメント222を排出するようにしてもよい。したがって、緯糸挿入器スタック220による緯糸繊維222の排出は、ローラー集合体116の動きと呼応して動作するようにタイミングをとることができる。いくつかの実施形態では、各ローラー対602は、当該ローラー対602に関連付けられた固有のモーターによって個別に動作されてもよい。
【0053】
スプールから緯糸挿入器スタック220へと供給される緯糸フィラメント222は連続的な撚糸であってもよいが、切断装置610が、緯糸フィラメント222を、ある長さの不連続な緯糸フィラメント222が緯糸挿入器スタック220から排出されて経糸300に挿入されるように切断してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、慣性緯糸挿入器ローラー対が、所定量回転して所定の長さの緯糸フィラメント222を排出するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、経糸300の反対側に配置されたセンサが、緯糸フィラメント222の位置を検出してもよく、対応する慣性緯糸挿入器ローラー対602は、緯糸フィラメント222が所定の距離だけ排出されたことを示す信号を受信すると回転を停止してもよい。いくつかの実施形態では、当該所定の距離は、緯糸フィラメント222が両端の経糸フィラメント212e、212hの列の間の距離をカバーするのに必要な最短距離を表していてもよい。
【0054】
図6に示されるように、緯糸挿入器スタック220は、複数の慣性緯糸挿入器ローラー対602からの緯糸フィラメント222を複数のスリット608へと導く複数の溝606を含んでいてもよい。溝は、緯糸フィラメント222が、溝606によって規定される経路に沿って移動するよう制約が与えられるように、緯糸挿入器スタック220の本体の内部にあってもよい。スリット608は、装置の前面に沿って、垂直方向において異なる高さに配置される緯糸挿入器スタック220の縁部の開口であってもよい。いくつかの実施形態では、隣接する各スリット608は、共通のオフセット距離だけ垂直方向に離間していてもよい。スリット608の位置決めは、図7A図12Bに関して以下でより詳細に説明するように、緯糸挿入器スタック220によって排出される緯糸フィラメント222を位置決めして、各緯糸フィラメント222が垂直方向における所望の高さで経糸300に挿入されるように構成されていてもよい。1以上の緯糸フィラメント222が経糸300に挿入された後、緯糸フィラメントは、切断装置610によって、ある長さの不連続なフィラメントに切断されてもよい。図6に示されるように、いくつかの実施形態では、切断装置は、緯糸挿入器スタック220の本体の内側の、スリット608に隣接した位置に配置してもよい。切断装置610は、1以上の緯糸フィラメント222を切断するために、スリット608に配置された緯糸フィラメント222に略直交する垂直面内で移動するように構成された1以上のブレードを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、切断装置は、一斉に移動するように構成された複数のブレードを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、上記複数のブレードの個数は、スリット608の個数に対応していてもよい。いくつかの実施形態では、切断装置は、切断ホイールまたはディスク、レーザー、あるいはウォータージェットであってもよい。
【0055】
図6に示す実施形態は3つの緯糸挿入器のみを描いているが、より多くの慣性緯糸挿入器ローラー対602、溝606、およびスリット608を追加することによって、任意の個数の緯糸挿入器を有する緯糸挿入器スタック220を同様に構成することができる。さらに、本実施形態では、緯糸フィラメント222の押し出し/排出力を発生させるために慣性緯糸挿入器ローラー対602を用いているが、緯糸挿入器スタック220は、あるいは上述の通り、1以上のレピア緯糸挿入器、エアジェット挿入器、または、それらの特定の組み合わせを用いて構成されていてもよい。
【0056】
図7A図8Bは、実施形態の一例による連続複合材料織機100の切り欠き図であって、ローラー集合体116から経糸ラック110に向かって見た図である。図7Aに示されるように、連続複合材料織機100は、図3Bについて上述したように、それぞれがローラー集合体116に向かって延出し経糸300を構成する複数の経糸フィラメント212を有する、複数の経糸ヘッド402a、402b、402c、および402dを有していてもよい。本実施形態では、複数の経糸ヘッド402のそれぞれが、4個の経糸フィラメント212を支持している。連続複合材料織機100は、複数の経糸ヘッド402の横に配置され、緯糸フィラメント222を経糸300に(すなわち、経糸フィラメント212の2つの行の間に)挿入するように構成された、緯糸挿入器スタック220を含む。図7Aに示す経糸ヘッド402は、それぞれ「中立位置」にあると言える。これは、経糸ヘッド402がデフォルトの高さに位置することを意味する。例えば、中立位置は、複数の経糸ヘッド402が緯糸挿入器スタック220の、垂直方向における中央付近に配置されるような位置であってもよい。例えば、経糸ヘッド402は、中立位置にあるときに、緯糸挿入器スタック220の真ん中の緯糸挿入器702が、経糸ヘッド402の経糸フィラメント212の真ん中の2つの行の間に中央の緯糸フィラメント222bを挿入するよう位置合わせされるように配置されてもよい。図7Aに示されるように、全ての経糸ヘッド402が中立位置にあるとき、緯糸挿入器スタック220は、経糸フィラメント212の間に緯糸フィラメント222を挿入して、織布複合材料230が交互に0-90の一方向の複合材料となるような、織り交ぜられていない織りパターンを作成してもよい。
【0057】
図7Aに示されるように、いくつかの実施形態では、緯糸挿入器スタック220は、複数の主緯糸挿入器702および複数の副緯糸挿入器704を含んでいてもよい。主緯糸挿入器702は緯糸挿入器スタック220の中央部に垂直に配置されてもよく、一方、副緯糸挿入器704は、緯糸スタック220の上部および底部に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、主緯糸挿入器702は、経糸ヘッド402の任意の垂直構成で使用できる緯糸挿入器であってもよいが、一方、副緯糸挿入器704は、1以上の経糸ヘッド402が、副緯糸挿入器704によって排出された緯糸フィラメント222が少なくとも1対の経糸フィラメント212間に位置するように、十分な垂直距離だけ移動した場合のみ使用できる。各主緯糸挿入器702および各副緯糸挿入器704は、緯糸挿入器702と704の任意の組み合わせを用いて緯糸フィラメント222を同時に経糸300に挿入できるように、コントローラー260によって互いに独立して制御されてもよい。
【0058】
図7Bおよび7Cは、経糸フィラメント212と緯糸フィラメント222とを織り交ぜた織布複合材料230を形成するプロセスの一例を示す。図7Bに示されるように、緯糸挿入器スタック220が複数の緯糸フィラメント222を経糸300に挿入する際、3つの経糸ヘッド402a、402c、および402dは中立位置にあり、1つの経糸ヘッド402bは、垂直方向に上昇させた位置にある。図示されているように、経糸ヘッド402bは、副緯糸挿入器704aの位置が、経糸ヘッド402bから延出する一番上の経糸フィラメント対212の間に緯糸フィラメント222aを挿入する位置となるように、上昇させられる。この場合、経糸ヘッド402bは、1「段」上昇させられたと言う。経糸ヘッド402が上または下に1段動くことは、経糸ヘッド402が一対の経糸フィラメント222の間から緯糸フィラメント222を受け取るように配置された緯糸挿入器702および704の組が、1単位変化することを意味する。例えば、図7Bに示されるように、経糸ヘッド402bは、1段上昇しているので、1対の経糸フィラメント212の間の副緯糸挿入器704aから緯糸フィラメント222aを受け取る位置にあるが、主緯糸挿入器702cから1対の経糸フィラメント212の間の緯糸フィラメント222dを受け取る位置にはもうない。図7Cに示されるように、経糸ヘッド402bが1段上昇した位置から中立位置に戻ると、経糸ヘッド402bの各経糸フィラメント212は、その下の緯糸フィラメント222a、222b、222c、222dを押し下げ、図7Cに示す織り交ぜられた織りパターンを生成する。この織りパターンが作成されると、ローラー集合体116は、上述のように、経糸フィラメント212の、緯糸フィラメント222a、222b、222c、および222dを含む部分を第1のローラー対120内に引っ張ってフィラメントを圧縮して織布複合材料230にするプロセスを実行してもよい。
【0059】
連続複合材料織機100は、ローラー集合体116が経糸ラック110を介してフィラメントスプール210から経糸フィラメント212を引っ張り出し続ける限り織布複合材料230を連続的に作成してもよい。連続複合材料織機100は、織布複合材料を連続的に作成することに加えて、織りパターンを動的に変化させて、カスタマイズ可能な強度および剛性を有する織布複合材料230を作成してもよい。織布複合材料230の強度は、織物形状の1つの関数であり、これは、連続複合材料織機100によって制御されてもよい。例えば、たくさんの皺は面内引張強度を低下させ、層間の連結は剥離強度および衝撃強度を増加させ得る。剛性は、織物形状および織り密度の1つの関数であり、これもまた、連続複合材料織機100により制御可能であってもよい。例えば、高密度の織布は、低密度の織布よりも堅い可能性がある。平織りがより高い面内せん断係数を有する一方、サテン織りはより高い面内引張係数を有し、綾織りは、それらの中間であり得る。
【0060】
連続複合材料織機100は、織布複合材料230の各部の織物形状、および/または、織り密度を動的に変化させることによって、材料全体にわたって異なる特性を有する織布複合材料230を生成することができる。例えば、図8Aおよび図8Bは、図7Bおよび図7Cに示されるものとは別の織りパターンを作成するプロセスの一例を示す。図8Aに示されるように、緯糸挿入器スタック220が緯糸フィラメント222を経糸300に挿入する際、各経糸ヘッド402a、402b、402c、および402dは異なる段に位置していてもよい。この例では、第1の経糸ヘッド402aは中立位置に配置され、第2の経糸ヘッド402bは1段上に配置され、第3の経糸ヘッド402cは2段上に配置され、第4の経糸ヘッド402dは3段上に配置される。したがって、図8Aに示されるように、第1の経糸ヘッド402aの経糸フィラメント対212は、3つの主緯糸挿入器702から緯糸フィラメント222d、222e、および222fを受け入れるように配置され、第4の経糸ヘッド402dの経糸フィラメント212は、3つの副緯糸挿入器704から緯糸フィラメント222a、222b、および222cを受け入れるように配置され、第2および第3の経糸ヘッド402bおよび402cの経糸フィラメント対212は、主および副緯糸挿入器702および704の組み合わせから緯糸フィラメント222を受け入れる。緯糸挿入器スタック220が緯糸フィラメント222a、222b、222c、222d、222e、および222fを経糸300に挿入した後、上昇させた経糸ヘッド402b、402c、および402dは、図8Bに示されるように、中立位置に戻り、緯糸フィラメント222a、222b、222c、222d、222e、および222fを下方に押して、織り交ぜられたパターンを作成する。この例では、3つの緯糸フィラメント222d、222e、および222fが、経糸ヘッド402dの底部に集まり、これにより、面内強度および剛性が改善された局在領域を作成し得るが、衝撃強度、せん断強度および剛性がより低くなり得る。緯糸挿入の際に、1以上の経糸ヘッド402が複数段上昇し、1つまたは2つの経糸ヘッド402が中立位置に留まるようにして形成された織りパターンは、層間の織り交ぜにより衝撃強度が強化された織布複合材料構造となり得る。
【0061】
なお、図7A図8Bに示される織りパターンは、単一の織布複合材料230に順次統合されてもよい。また、図7A図8Bに示す特定の織りパターンは単なる例示であり、1以上の緯糸フィラメント222を引き続き挿入する際に、複数の経糸ヘッド402の垂直位置を変更することによって、任意の個数の、あるいは種々の異なる織りパターンを得て任意の順序で複合材料230に統合してもよい。作成可能な織りパターンの数は、より多くの経糸フィラメント212、経糸ヘッド212、および/または、緯糸挿入器702、702を機械100に追加することによって、さらに増加させ得る。
【0062】
本明細書に開示された概念の説明を容易にするため、図7A図8Bは4つの経糸ヘッド402を有する連続複合材料織機100の実施形態の一例を示しているが、連続複合材料織機100はこれに限定されず、任意の個数の経糸ヘッド402を含んでいてもよい。例えば、連続複合材料織機100は、10個またはそれ以上の数の経糸ヘッド402を有していてもよい。
【0063】
図9Aは、実施形態の一例による、複数のへドル集合体902を備える別の経糸ラックを有する連続複合材料織機900の代表的な側面図である。経糸ヘッド402と関連付けられた複数の経糸フィラメント212の位置を集合的に垂直方向に調節可能な経糸ヘッド402とは対照的に、へドル集合体902は、へドル集合体902に関連付けられた個々の経糸フィラメント212を、へドル集合体902のヘドル904のうちの1つにより、垂直方向に個別に調節できる複数のヘドル904を含む。各へドル集合体902は、複数のヘドル904a、904b、904c、および904dを含む。複数のヘドル904は、それぞれ、当該ヘドル904によって垂直方向に調節され得る経糸フィラメント212を引っ掛ける孔910と、当該ヘドル904によって垂直方向に調節されない他の経糸フィラメント212を通すスロット912とを有している。図9Aおよび図9Bに示されるように、特定のヘドル904が個別に制御するように構成されている制御対象である経糸フィラメント212はヘドル904の孔910を通ってもよく、一方、へドル集合体902の別のヘドル904によって制御される経糸フィラメント212は、その特定のヘドル904のスロット912を通るか、あるいはその特定のヘドル904の底部の下を通ってもよい。各ヘドル904は、図4Aおよび図4Bの経糸ヘッド402について上述した移動と同様の、独立した垂直移動が可能である。ある特定のヘドル904が移動すると、経糸フィラメント212の孔910によって保持された部分の高さがヘドル904の移動に応じて調節される。
【0064】
図4Aおよび4Bに示される経糸ヘッド402と同様、複数のへドル集合体902は、第1の垂直面において互いに隣接して整列していてもよい。図9Aに示されるように、へドル集合体902の個々のヘドル904は、第1の垂直平面に略直交する第2の垂直面において互いに隣接して整列していてもよい。例えば、図9Aに示されるように、第1のヘドル904aは第2のヘドル904bに隣接しており、さらにそれは第3のヘドル904cに隣接しており、さらにそれは第4のヘドル904dに隣接している。したがって、図9Aに示されるように、へドル集合体902の複数のヘドル904は、続けざまに配置されてもよい。複数のへドル集合体902は、それぞれ、経糸ヘッド402と同様に作動させてもよく、例えば、モーターでリードスクリューを駆動させたり、ソレノイドや、空気圧式または油圧式アクチュエータで作動させたりするなど、垂直移動を可能にする他の任意の方法で作動させてもよい。また、経糸ヘッド402同様、各ヘドルの垂直移動は、ベースプレート121およびトッププレート122、リミットスイッチ、ビーム式のセンサ、またはヘドル集合体を駆動するモーター上のエンコーダによって制限されていてもよい。
【0065】
図9Bは、ヘドル集合体902'の分解図である。分解したヘドル集合体902'中に示されるように、第1のヘドル910aは、第1のヘドル910aによって垂直方向に個別に制御され得る第1のフィラメント212aを受け入れる孔910を有している。分解したヘドル集合体902'はさらに、第2のヘドル910bが、第2のヘドル910bによって垂直方向に個別に制御され得る第2のフィラメント212bを受け入れる孔910と、第1の経糸フィラメント212aを受け入れるスロット912を有していることを示している。ヘドル集合体902の第3のヘドル910cは、第3のヘドル910cによって垂直方向に個別に制御され得る第3のフィラメント212cを受け入れる孔910と、第1の経糸フィラメント212aと第2の経糸フィラメント212bを受け入れるスロット912を有している。ヘドル集合体902の第4のヘドル904dは、第4のヘドル910dによって垂直方向に個別に制御され得る第4のフィラメント212dを受け入れる孔910と、第1の経糸フィラメント212aと、第2の経糸フィラメント212bと、第3の経糸フィラメント212cとを受け入れるスロット912を有している。図9Cは、各ヘドル904a、904b、904c、904dが、図9Aに示されるように続けざまに配置されたヘドル集合体902"の正面図である。続けざまの構成で整列させたとき、第1の経糸フィラメント212aは、第1のヘドル904aの孔910を通過してローラー集合体116に向かって延出する前に、第4、第3、および第2のヘドル904d、904c、および904bのスロット912を通過してもよい。同様に、第2の経糸フィラメント212aは、第2のヘドル904dの孔910を通過して第1のヘドル904aの下を通ってローラー集合体116に向かって延出する前に、第4および第3のヘドル904dおよび904cのスロット912を通過してもよい。第3の経糸フィラメント212cは、第3のヘドル904cの孔910を通過して第1および第2のヘドル904aおよび904bの下を通ってローラー集合体116に向かって延出する前に、第4のヘドル904dのスロット912を通過してもよい。さらに、第4の経糸フィラメント212dは、第4のヘドル904dの孔910のみを通過して、第1、第2、および第3のヘドル904a、904b、および904cの下を通ってローラー集合体116に向かって延出してもよい。したがって、第1の経糸フィラメント212aは、第1のヘドル904aによって垂直方向に個別に制御可能であり、第2の経糸フィラメント212bは、第2のヘドル904bによって垂直方向に個別に制御可能であり、第3の経糸フィラメント212cは、第3のヘドル904cによって垂直方向に個別に制御可能であり、第4の経糸フィラメント212dは、第4のヘドル904dによって垂直方向に個別に制御可能である。図9Aから分かるように、いくつかの経糸フィラメント212b、212c、212dは、いくつかのヘドル904a、904b、904cの下に位置していてもよいため(例えば、経糸フィラメント212dは、ローラー集合体116に入る前にヘドル904a、904b、904cの下を通過する)、所与のヘドル904の垂直下方向への移動の程度は、それに隣接するヘドル904も一緒に移動するのでない限り、ヘドル904の底部がその下の経糸フィラメント212に接触しないように、当該隣接するヘドル904の位置に基づいて制限されてもよい。例えば、図9Aに示す第2のヘドル904bを2段下降させるには、第3および第4のヘドル904cおよび904dもまた、第2のヘドル904bの動きに対応して少なくとも2段下降させなければならない。いくつかの実施形態では、ヘドル904は、中立位置から下方向にのみ移動するように構成されてもよいが、中立位置または中立位置より1段以上下の位置に戻るためには、上方向に移動するように構成されてもよい。中立位置は、図9Aおよび図9Cに示されるように、ヘドルの孔910が、それぞれ、その前方のヘドルの孔910の一段下に位置するように複数のヘドル904が配置されている位置と考えることができる。いくつかの実施形態によれば、ヒーター要素がヘドル集合体902に含まれていてもよいが、他の加熱要素(例えば、赤外線またはマイクロ波加熱要素)を複数のへドル集合体902と第1のローラー対120の間の領域に配置して、フィラメントをマトリックスポリマーのガラス転移温度より高い温度に加熱してもよい。
【0066】
図10図12Bは、実施形態の一例による連続複合材料織機900の代表的な切り欠き図であって、ローラー集合体116から経糸ラック110に向かって見た図である。図10に示されるように、連続複合材料織機900は、図6に関して上述したのと同様の緯糸スタック挿入器220と、図9A図9Cに関して上述したように複数のヘドル集合体902a、902b、902c、および902dとを含んでいてもよい。図10は、各ヘドル集合体902a、902b、902c、902dが、図6に示した実施形態と同様に、複数のヘドル集合体902a、902b、902c、902dの各孔910から延出する経糸フィラメントを織り交ぜることなく、緯糸フィラメント222を受け入れる位置に経糸を構成するように、中立位置にあるような構成を示している。
【0067】
図11A図11Bは、織り交ぜられた織布パターンを連続複合材料織機900によって形成するプロセスを例示した図である。図11Aに示されるように、連続複合材料織機900の3つのヘドル集合体902a、902c、902dは中立位置にあるが、1つのヘドル集合体902bは1「段」下がった位置にある。へドル集合体902を参照したとき、「段」は、ヘドル904の孔910が、孔910内に含まれる経糸フィラメント212を、隣接する緯糸挿入器スタック220の次の緯糸挿入器702、704の下に押しやるような、へドル集合体902の下方への移動を指す。例えば、1段の降下は、ヘドル904の孔910が、次の挿入器704がその中で緯糸フィラメント222を挿入するよう構成されているような平面を超えて、垂直方向に移動したことを意味する。図11Aに示されるように、第2のヘドル集合体902bの第4のヘドル904dは、複数の緯糸フィラメント222a、222b、222c、および222dが緯糸挿入器スタック220によって挿入される前に、1段降下している。上側の3つの経糸フィラメント212a,212b,212cが第4のヘドル904dのスロット912を通過するため、それらの位置は、第4のヘドル904dが動いてもそのままであり、よって、第4のヘドル904dの孔910に引っ掛けられた経糸フィラメント212dの垂直位置だけが影響を受ける。緯糸フィラメント222が経糸に挿入された後、第2のヘドル集合体の第4のヘドル904dが1段上昇して、中立位置に戻り、図11Bに示されるように、織り交ぜられた織布を形成する。図12A図12Bは、連続複合材料織機900によって形成された、織り交ぜられた織布パターンの別の実施形態を示す。図12Aに示されるように、緯糸挿入器スタック220によって複数の緯糸フィラメント222a、222b、222c、222d、222e、および222fが挿入される際、第1のヘドル集合体902aは中立位置にあり、第2のヘドル集合体902bの第4のヘドル904dは1段下がっており、第3のヘドル集合体902cの第4のヘドル904dは2段下がっており、第4のヘドル集合体902dの第4のヘドル904dは3段下がっている。第2、第3、および第4のヘドル集合体902b、902c、および902dの第4のヘドル904dが中立位置に戻るのに続いて、図12Bに示すような織り交ぜられたパターンが形成される。図面はヘドル集合体902の第4のヘドル904dが1段以上下降する例のみを示しているが、へドル集合体902の第1、第2、および第3のヘドル904a、904b、および904cは、すべて独立して垂直方向に下降し、ローラー集合体116によって経糸が連続的に前方に引き出され圧縮されることによって、複雑に織り交ぜられた様々な織布パターンを動的に作成してもよい。例えば、へドル集合体902の第4のヘドル904dが3段下降すると、第3のヘドル904cが、1段、2段、または3段下降してもよい。言い換えると、へドル集合体902の特定のヘドル904が数段下降すると、当該特定のヘドル904の前に配置された隣接するヘドル904が、同じ段数またはそれより少ない段数下降できるようにしてもよい。
【0068】
図13は、連続複合材料織機100を用いて織布複合材料を連続的に形成する方法1300のフローチャートを示す。連続複合材料織機100は、ローラー集合体116と複数の経糸ヘッド402を備える経糸ラック110との間に張られた複数の経糸フィラメントを有していてもよい。各経糸ヘッド402は、当該経糸ヘッド402の高さに沿って垂直方向に異なる位置に配置された複数のフィラメント経路502を備えていてもよい(図5A参照)。各フィラメント溝502は、経糸フィラメント212を引っ掛けるように構成されていてもよく、経糸ヘッド402は、それぞれ独立して垂直方向に移動可能で、各経糸ヘッド402に関連付けられた経糸フィラメント212のローラー集合体116に対する高さを調節することができてもよい。
【0069】
本方法は、ブロック1310において、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループの経糸ヘッド402のフィラメント溝502における各経糸フィラメント212の垂直方向の高さが、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループの経糸ヘッド402の対応するフィラメント溝502における経糸フィラメント212よりも高くなるように、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループを第1の垂直方向位置に、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループを第2の垂直方向位置に配置することを含んでいてもよい。
【0070】
本ブロック1320において、本方法は、各緯糸フィラメント222が、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループに関連付けられた経糸フィラメント212と、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループに関連付けられた経糸フィラメント212との間に挿入されるように、(例えば緯糸挿入器スタック220により)1以上の緯糸フィラメント222を、ローラー集合体116と経糸ラック110との間に位置する経糸300に挿入することを含んでいてもよい。緯糸フィラメント222は、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループに関連付けられた複数の経糸フィラメント212が緯糸フィラメント222の上方に位置し、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループに関連付けられた複数の経糸フィラメント212が緯糸フィラメント222の下方に位置するように、経糸300に挿入されてもよい。緯糸挿入器スタック220は、経糸300における異なる高さに複数の緯糸フィラメント222を同時に挿入してもよい。経糸300に同時に挿入される各緯糸フィラメント222は、緯糸フィラメント222の上方に位置する異なる経糸フィラメント212のサブグループと、緯糸フィラメント222の下方に位置する異なるサブグループとを有していてもよい。このように、複数の経糸ヘッド402の垂直位置、および挿入された緯糸フィラメント222の数および垂直位置に基づき、連続複合材料織機100は、織布がカスタマイズされた所定の内部形状を完成するように、緯糸フィラメント222を経糸300内に配置してもよい。
【0071】
ブロック1330において、本方法は、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループの経糸ヘッド402のフィラメント溝502における各経糸フィラメント212の垂直方向の高さが、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループの経糸ヘッド402の対応するフィラメント溝502における各経糸フィラメント212よりも低くなるように、垂直方向において、複数の経糸ヘッド402の第1のサブグループを第3の垂直位置に、複数の経糸ヘッド402の第2のサブグループを第4の垂直位置に再配置することによって、2以上の経糸フィラメント212の間に1以上の緯糸フィラメント222を固定して複合材料織布を作成することを含んでいてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、経糸フィラメント212の第1および第2のサブグループに関連付けられた経糸ヘッド402が、例えば、中立位置に戻るように、第3および第4の垂直位置が同じ垂直高さであってもよい。中立位置において、各経糸ヘッド402のフィラメント溝502は、行をなすように垂直に整列していてもよい。
【0072】
ブロック1340において、本方法は、ローラー集合体116を作動させて、複合材料織布を加熱および圧縮するように構成された対向する一対のローラー(例えば、第1のローラー対120)を通して複合材料織布を引き出すことにより、複合材料織布を固化することを含んでいてもよい。連続複合材料織機100は、ブロック1310、1320、1330、および1340を順に繰り返すことにより、継続的に複合材料織布を作成してもよい。経糸ヘッド402のサブグループの垂直位置は、特定の内部形状を有する複合材料織布を作成するために、この継続するプロセスの繰り返しの各回において変化してもよい。例えば、コントローラー260は、緯糸フィラメント222を挿入する特定のシーケンスと共に経糸ヘッド402を移動させる特定のシーケンスを指定する命令を含み、織り交ぜを用いた特定の内部形状を有する織布複合材料230を作成してもよい。いくつかの実施形態では、1以上の緯糸フィラメント222を経糸300に挿入するたびにローラー集合体116を短く一気に作動させて、複合材料織布における新しく挿入された緯糸フィラメント222を含む部分を固化してもよい。いくつかの実施形態では、経糸ヘッド402は、1以上の緯糸フィラメント222の挿入が実行された後、ローラー集合体116が作動する前に、中立位置に戻ってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法1300は、オプションとして、複数のフィラメントスプール210から出た複数の経糸フィラメント212のそれぞれの自由端を、経糸ラック110の複数の経糸ヘッド402のうちの1つの固有のフィラメント溝502を通して送り、次いで、さらには、複数の経糸フィラメント212のそれぞれの自由端をローラー集合体116における対向するローラー対(例えば第1のローラー対120)を通して送ることにより、ローラー集合体116と経糸ラック110の間に経糸300を作成するステップを含んでいてもよい。
【0074】
方法1300は、複数の経糸ヘッド402を有する経糸ラック110を用いる連続複合材料織機100について記載したが、複数のへドル集合体902を用い、図9A図9Cについて上述した構成を有する連続複合材料織機900に関して同様の方法が実行されてもよい。例えば、経糸300を形成するため、複数のへドル集合体902の第1のサブグループのヘドル904は、第1の垂直構成において垂直に配置されてもよく、複数のへドル集合体902の第2のサブグループのヘドル904の第2のサブグループは、第2の垂直構成に配置されてもよい。緯糸挿入器スタック220は、1以上の緯糸フィラメント222を、挿入された各緯糸フィラメント222が、その上方および下方に位置する経糸フィラメント212の異なるサブセットを有するように、経糸300の垂直方向における異なる高さに挿入してもよい。複数のへドル集合体902の第1および第2のサブグループのヘドル904の一部またはすべては、異なる垂直構成に変化して、1以上の緯糸フィラメント222を織布内に固定してもよい。例えば、すべてのヘドル904が中立位置に戻ってもよい。1以上の緯糸フィラメント222が織布内に固定された後、ローラー対(例えば、第1のローラー対120)を作動させて、織布における1以上の緯糸フィラメント222を含む部分を引き込んでもよく、また、上述のように、ローラー集合体116が複合材料織布230を固化させてもよい。このプロセスは、連続複合材料織機900によって繰り返され、制御可能な内部形状を有する複合材料織布を連続的に形成してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、連続複合材料織機100によって織布複合材料230が形成された後、織布複合材料230は、プリフォーム化されるか、トリミングされるか、かつ/あるいは、従来の射出成型または長繊維熱可塑性成型を用いて三次元構造にされてもよい。例えば、織布複合材料230は、ローラー集合体116を出た後、例えばウォータージェット、レーザー、せん断プレス、あるいはトリミング方法の他の任意の適切な装置を用いてトリミングしてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、織布複合材料230がローラー集合体116を出た後に、織布複合材料230をトリミングするように構成されたトリミング装置を含んでいてもよい。トリミング装置は、例えば、コンピュータ数値制御(CNC)ウォータージェットであってもよい。
【0076】
トリミングした複合材料は、次いで加熱し、プリフォーム形状に打ち抜き/プレス加工してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、トリミングした複合材料をプレス加工してプリフォーム形状にし得る打ち抜きプレス機を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、トリミングした複合材料を拾い上げて打ち抜きプレス機内に配置する、ロボットアームを含んでいてもよい。加熱は、例えばオーブン、誘導加熱、または他の適切な加熱方法を用いて行うことができる。プリフォームは、次いで圧縮成型用の型または射出成型用の型に入れ、オーバーモールドしてもよい(例えば、射出、DLFT、LFTなど)。いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、プリフォームを射出成型またはオーバーモールドする射出成型機を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、打ち抜きプレス機からプリフォームを拾い上げて射出成型機内に配置するように構成された、ロボットアームを含んでいてもよい。オーバーモールドのプロセスは、プリフォームのテクスチャ化および非構造的突出という特徴の作成を可能にしてもよい。プリフォームを複数回オーバーモールドして、プリフォームに異なる材料を追加したり、プリフォームの異なる側面や部分に材料を追加したりしてもよい。オーバーモールドプロセスに続いて、部品を型から取り出し、トリミングして仕上げてもよい。例えば、部品は、縁がトリミングされてもよく、穴があけられてもよく、研磨されてもよく、あるいは、他のこのような典型的な仕上げプロセスが部品に適用されてもよい。いくつかの実施形態では、複合材料織機100は、オーバーモールドされたプリフォームを拾い上げ、部品をトリミングして仕上げるように構成された装置内に配置するように構成されたロボットアームを含んでいてもよい。このプロセスを用いて、例えば平坦な、あるいは曲線状の輪郭を有するブラケットやパネル(車体パネルなど)を含む、様々な形状が形成され得るが、これらに限定されるものではない。
【0077】
例えば、2つの部品からなる自動車用ドアを、織布複合材料をドアパネルの外面の形状になるようにプリフォーム化することによって形成し得る。この例では、第1の部品は、滑らかな気流表面を形成可能とし得る第1のオーバーモールドショットと、ドアの内面を形成(例えば、配線用の溝、窓、取っ手などの形成)する第2のオーバーモールドショットによって作成し得る。ドアの内部コンポーネント(例えば配線、窓、取っ手など)が第1の部品の溝に設置されると、内部コンポーネントを包み込むために、第2の部品が第1の部品に接合され得る。構造的な剛性のために必要であれば、第2の部品もまた織布プリフォームを含んでいてもよい。上述の例は、連続複合材料織機100によって製造された織布複合材料230から作られたプリフォームの特定の産業上の用途を示しているが、当業者は、このようなプリフォームが様々な異なる産業上の用途を有することを理解するであろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、上述の織布複合材料230のトリミング、打ち抜き、射出成型/オーバーモールディング、トリミング、および仕上げのプロセスは、予備トリミング、プリフォーム化、およびオーバーモールドのための型プレス加工を用いて連続的に行い得る。型プレス加工では、プレス作業中、連続的に材料を用い得る。この処理に続いて、上述のように最終的なトリミングを行うことができる。いくつかの実施形態では、プリフォーム化ステップの前において複合材料がTより高い温度を維持している必要があり得るので、連続複合材料織機100は、冷却ローラーを有していなくてもよい(例えば、第2のローラー対130を省略してもよい)。
【0079】
図14は、複合材料織布がローラー集合体116に入る前に、複合材料織布の上面および/または底面にポリマーフィルム1402を貼り付けるように構成された連続複合材料織機100の実施形態の代表的な側面図を示す。ポリマーフィルム1402は、純粋なポリマーフィルム、ポリマーが注入された繊維マット、またはその2つの組み合わせであってもよい。ポリマーフィルムローラー1404上のポリマーフィルム1402のロールは第1のローラー対120の上方、および/または、下方に配置することができる。ローラー集合体116は(例えば第1のローラー対120を介して)ポリマーフィルムローラー1404から、ポリマーフィルム1402を、上述のようにローラー集合体がフィラメントスプール210から経糸フィラメント212を引き出すのと同様の方法で、引き出してもよい。ポリマーフィルム1402は、ローラー集合体116によって固化されたときに、複合材料織布の上面、および/または底面に積層されてもよい。ローラー集合体116によって固化された後、固化プロセスにより、そのまま用いることができる、または、上記のオーバーモールドプロセスで用いることができる、完成した平板なパネルである固化織布複合材料230が得られる。
【0080】
本願に記載されている設計および機能性は本質的に例示的なものであり、決して本開示を限定するものではない。当業者であれば、本開示の教示が、本明細書で開示された形態および当業者に知られている追加の形態を含む、様々な適切な形態で実施され得ることを理解するであろう。例えば、実行可能な命令が、1以上のプロセッサによって実行されると1以上のプロセッサに上記の方法を実施させるように、非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納されていてもよいことを、当業者は認識するであろう。
【0081】
本開示の特定の実施形態は、現在最も実用的な様々な実施形態であると考えられるものに関連して記載されているが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な変形例および均等な構成を含むことが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ用いられており、限定する目的では使用されていない。
【0082】
本明細書では、例を用いて技術の特定の実施形態を開示し、また、任意の装置またはシステムを作製し、使用すること、そこに組み込まれた方法を実行することを含む、当該技術の特定の実施形態を、当業者が実施できるようにする。技術の特定の実施形態の特許可能な範囲は、特許請求の範囲に定義されており、当業者が思いつく他の実施例を含んでいてもよい。そのような他の例は、特許請求の範囲における文字通りの言葉と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲における文字通りの言葉とごくわずかに相違する同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれているものとする。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14