(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】熱安定性ポリメラーゼ阻害剤組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20220719BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20220719BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220719BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12N9/12
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2018563880
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017036225
(87)【国際公開番号】W WO2017214202
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-08
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504019928
【氏名又は名称】セファイド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ジー・ロコフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・エー・ガール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ・バラズネノク
(72)【発明者】
【氏名】エカテリーナ・ヴィ・ヴィアゾフキナ
(72)【発明者】
【氏名】イリーナ・シシュキナ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エイチ・パーシング
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540517(JP,A)
【文献】Biochemistry,2003年,Vol.68, No.2,p.228-235
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol.279, No.45,p.46483-46489
【文献】J. Mol. Biol.,1997年,Vol.271,p.100-111
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68-1/6897
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号
1又は配列番号
2を含む第1の配列、
配列番号
3を含む第2の配列、
配列番号
1又は配列番号
2を含む第3の配列、及び
配列番号
3を含む第4の配列
を含むアプタマーであって、第1の配列及び第3の配列のそれぞれが、
16~18ヌクレオチド長であり、互いに長さが等しく、その全長に沿って互いに100%相補的であり、
第2の配列及び第4の配列が12ヌクレオチド長であり、互いに同一であり
、及び、
第1の配列内の2つのヌクレオチド間に共有結合がなく、かつ、アプタマーが
第1の配列内に5’末端及び3’末端を含み、又は、
第3の配列内の2つのヌクレオチド間に共有結合がなく、かつ、アプタマーが
第3の配列内に5’末端及び3’末端を含
み、
並びに、
前記アプタマーが熱安定性ポリメラーゼの活性を阻害する、
アプタマー。
【請求項2】
第1の配列内の2つのヌクレオチド間に共有結合がなく、アプタマーが
第1の配列内に5'末端及び3'末端を含む、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項3】
第3の配列内の2つのヌクレオチド間に共有結合がなく、アプタマーが
第3の配列内に5'末端及び3'末端を含む、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項4】
第1の配列が配列番号1を含み、第3の配列が配列番号2を含み、配列番号1のヌクレオチド8と9の間に共有結合がない、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項5】
第1の配列が配列番号2を含み、第3の配列が配列番号1を含み、配列番号2のヌクレオチド8と9の間に共有結合がない、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項6】
第1の配列が配列番号2を含み、第2及び第4の配列が配列番号3を含む、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項7】
第1の配列及び第3の配列が、第1の配列及び第3の配列のそれぞれの全長に沿って互いにハイブリダイズされる、請求項1から6のいずれか一項に記載のアプタマー。
【請求項8】
配列番号106を含む
アプタマーであって、
熱安定性ポリメラーゼの活性を阻害する、アプタマー。
【請求項9】
配列番号110を含む
アプタマーであって、
熱安定性ポリメラーゼの活性を阻害する、アプタマー。
【請求項10】
5'末端がリン酸化されている、
3'末端が3'キャッピング部分に連結されている、
5'末端が5'キャッピング部分に連結されている、或いは、
3'末端が3'キャッピング部分に連結され、5'末端が5'キャッピング部分に連結されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載のアプタマー。
【請求項11】
3'キャッピング部分がプロパンジオールスペーサー(C3)又はリン酸である、請求項10に記載のアプタマー。
【請求項12】
5'キャッピング部分がアミノ基である、請求項10に記載のアプタマー。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のアプタマー及び熱安定性ポリメラーゼを含む組成物。
【請求項14】
ポリメラーゼに対するアプタマーのモル比が5:1~20:1の範囲である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
プライマーを伸長する方法であって、
標的核酸を含有し得る試料を試薬組成物と接触させて反応混合物を生成する工程を含み、試薬組成物が請求項1から13のいずれか一項に記載のアプタマー、熱安定性ポリメラーゼ、標的核酸に特異的なフォワードプライマー、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、及び二価の金属陽イオンを含む、方法。
【請求項16】
ポリメラーゼに対するアプタマーのモル比が5:1~20:1の範囲である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての目的についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる2016年6月7日に出願された米国特許出願公開第62/347,004号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
配列表の相互参照
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2017年6月6日に作成されたこのASCIIコピーはCPHDP012WO_2017-06-06_SeqList.txtと名付けられ、サイズは20795バイトである。
【0003】
本開示は、一般に、熱安定性ポリメラーゼ活性の核酸阻害剤、阻害剤を含む組成物、及びそれらの使用方法に関する。核酸阻害剤は、二次構造を適合させて、熱安定性ポリメラーゼを可逆的に阻害することができ、ここでその阻害活性は温度依存的である。阻害剤は、熱安定性ポリメラーゼによる核酸合成を含む方法及びアッセイに有用であり、ここで方法及びアッセイはホットスタート法を利用することから利益を得る。
【背景技術】
【0004】
核酸標的配列のin vitro合成、多くの研究アッセイの設立、及び診断産物は、熱安定性DNAポリメラーゼ、及び標的を含有することが疑われる試料中の標的核酸基質に特異的に結合するように設計される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの使用に一部依存することが多い。ポリメラーゼ及びプライマーを使用するアッセイは特異的な配列を生成するように設計されるが、アッセイが低温又は周囲温度での一定期間を必要とする場合、標的特異的プライマーは、非標的配列にハイブリダイズする、又はプライマーダーマーを形成し、ミスプライミング及び非特異的な産物の継続的な生成をもたらし得ることが周知である。そのような産物は、対象とする産物を覆い隠し、また必要な試薬の反応混合物を早まって使い尽くし得るため、望ましくない。
【0005】
ミスプライミングの影響を減らす主な手段は、そのようなミスプライミングがより起こりやすい低温で熱安定性ポリメラーゼ活性を可逆的に阻害することである。ポリメラーゼ反応混合物の温度を、熱安定性ポリメラーゼの最適な反応温度に近い温度まで上げると、阻害活性が取り除かれ、熱安定性ポリメラーゼは、基質核酸分子に結合しているプライマーを伸長する。低温でのプライマー伸長を防ぐ、好熱性のDNAポリメラーゼを可逆的に阻害するこの方法は、「ホットスタート」と呼ばれる。
【0006】
ホットスタートは、様々な物理的、化学的、又は生化学的な方法によって達成され得る。物理的なホットスタートでは、DNAポリメラーゼ又はDNAポリメラーゼ活性に必須の1つ若しくは複数の反応成分は、反応に必要な全ての成分が高温になるまで試料DNAと接触することができない(Horton, R.M.ら、Biotechniques、16;42~43頁、1994)。化学的なホットスタートは、ポリメラーゼが周囲温度では阻害され、高温で最も活性であるように、化学的に不活性化されるが可逆的であるDNAポリメラーゼの使用を含む方法を指す(米国特許第5,773,258号及び第6,183,998号)。ホットスタートを実行する別の方法は、試薬に添加する前にDNAポリメラーゼ酵素を抗DNAポリメラーゼ抗体と結合させることである。抗体は、周囲温度でポリメラーゼ活性を阻害するが、高いポリメラーゼ反応温度では、抗体は変性し、ポリメラーゼから解離し、ポリメラーゼの活性化を可能にする(Sharkeyら、Bio/Technology、12:506~509頁(1994);Kelloggら、Biotechniques、16:1134~1137頁(1994))。
【0007】
周囲温度で好熱性のDNAポリメラーゼを阻害する別の方法は、DNAポリメラーゼに結合及び阻害する核酸アプタマーの使用を含む(米国特許第6,183,967号)。アプタマーは、古典的なワトソン-クリック塩基対合以外の相互作用による、分子への特異的結合親和性を有する核酸分子である。様々なアプタマーが選択及び設計され、熱安定性ポリメラーゼに特異性及び親和性を示し、ポリメラーゼを可逆的に阻害できることが示されている。熱安定性ポリメラーゼの他の可逆的な阻害剤と同様に、アプタマーは、周囲温度で熱安定性ポリメラーゼを結合及び阻害するように設計される。温度の継続的な上昇は、熱安定性ポリメラーゼからのアプタマーの解離をもたらし、高い反応温度でのプライマー伸長及び/又は核酸増幅を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,773,258号
【文献】米国特許第6,183,998号
【文献】米国特許第6,183,967号
【文献】米国特許第4,889,818号
【文献】米国特許第5,998,203号
【文献】米国特許第4,683,195号
【文献】米国特許第4,683,202号
【文献】米国特許第5,958,349号
【文献】米国特許第6,403,037号
【文献】米国特許第6,440,725号
【文献】米国特許第6,783,736号
【文献】米国特許第6,818,185号
【文献】米国特許第5,959,090号
【文献】欧州特許第0816368号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Horton, R.M.ら、Biotechniques、16;42~43頁、1994
【文献】Sharkeyら、Bio/Technology、12:506~509頁(1994)
【文献】Kelloggら、Biotechniques、16:1134~1137頁(1994)
【文献】A.L. Lehninger、Biochemistry (Worth Publishers, Inc.、current addition
【文献】Morrison and Boyd、Organic Chemistry (Allyn and Bacon, Inc.、current addition)
【文献】J. March、Advanced Organic Chemistry (McGraw Hill、current addition)
【文献】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、A. Gennaro, Ed.、20th Ed.
【文献】Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J. Griffith Hardman、L. L. Limbird、A. Gilman、10th Ed
【文献】Saikiら、1988年、Science 239:487
【文献】Beaucage and Iyer、1993、Tetrahedron 49:1925
【文献】Fredrick M. Ausubelら(1995)、"Short Protocols in Molecular Biology"
【文献】John Wiley and Sons, and Joseph Sambrookら(1989)、"Molecular Cloning, A Laboratory Manual," second ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【文献】Nikiforovら、2011、Analytical Biochemistry、412:229~236頁
【文献】Summerer and Marx、Angew Chem Int、2002、41:3620~3622頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
熱安定性ポリメラーゼ活性を必要とする反応における使用のための阻害アプタマーを設計及び選択する場合、最適なポリメラーゼ活性の温度範囲等、適切な温度範囲でポリメラーゼを結合及び阻害するが、選択したプライマーが標的核酸基質にハイブリダイズされる場合の温度で最適な熱安定性ポリメラーゼ活性を可能にする温度で、ポリメラーゼから解離するアプタマーを生成することが重要である。本明細書に記載のアプタマーは、二次構造を形成することができ、熱安定性ポリメラーゼ活性に依存する様々なアッセイにおける非特異的なポリメラーゼ産物の生成を低減することができるが、ポリメラーゼから解離し、標的産物の生成及び検出を容易にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、アプタマーが提供され、アプタマーは5'から3'方向に:
TATAATTGCAAAATAA(配列番号1)若しくはその変異型又はTTATTTTGCAATTATA(配列番号2)若しくはその変異型を含む第1のヌクレオチド配列;TTCTTAGCGTTT(配列番号3)又はその変異型を含む第2のヌクレオチド配列、配列番号1若しくはその変異型又は配列番号2若しくはその変異型を含む第3のヌクレオチド配列;及び配列番号3又はその変異型を含む第4のヌクレオチド配列
を含み、第1の配列は第2の配列に相補的である。
【0012】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、第1及び第3のヌクレオチド配列が約45℃、42℃、40℃、39℃、又は38℃より低い温度でハイブリダイズしてステムを形成し、第2及び第4のヌクレオチド配列のそれぞれが単一鎖のままでループを形成し、ステムが第2及び第4のヌクレオチド配列によって形成されたループの間に位置する二次構造を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の配列の5'端と第4の配列の3'端の間に共有結合が存在する。他の実施形態では、共有結合はホスホジエステル結合である。
【0014】
いくつかの実施形態では、配列番号1の変異型は、1、2、3又は4個のヌクレオチド置換を含み、第3のヌクレオチド配列は配列番号2の変異型と相補的であり、配列番号1と配列番号2の間にミスマッチは存在しない。
【0015】
いくつかの実施形態では、配列番号2の変異型は、1、2、3又は4個のヌクレオチド置換を含み、第1のヌクレオチド配列は配列番号2の変異型と相補的であり、配列番号1と配列番号2の間にミスマッチは存在しない。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の配列及び第3の配列のそれぞれは、14~18、15~16、又は16~17ヌクレオチド長である。更に他の実施形態では、第1の配列及び第3の配列のそれぞれは、14、15、16、17又は18ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、第1の配列及び第3の配列のそれぞれは、16ヌクレオチド長である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の配列は配列番号1を含み、第2の配列は配列番号2を含む。更に他の実施形態では、第1の配列は配列番号1からなり、第2の配列は配列番号2からなる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の配列は配列番号11~41又はその変異型からなる群から選択され、変異型は1、2、3又は4個のヌクレオチド置換を含む。他の実施形態では、第3の配列は第1の配列と同じ長さであり、第3の配列は第1の配列と相補的であり、第1の配列と第3の配列の間にミスマッチはない。更に他の実施形態では、第1の配列は、配列番号11~41からなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の配列及び第4の配列の全長に沿って第2の配列は第4の配列と同一である。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2及び第4の配列のそれぞれは、12ヌクレオチド長である。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の配列は配列番号3を含み、第4の配列は配列番号3を含む。他の実施形態では、第2の配列は配列番号3からなり、第4の配列は配列番号3からなる。
【0022】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、5'端又は3'端を持たない。
【0023】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、5'端又は3'端を含み、第1の配列内又は第2の配列内の2つのヌクレオチド間に共有結合はない。他の実施形態では、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド1と2、2と3、3と4、4と5、5と6、6と7、7と8、8と9、9と10、10と11、11と12、12と13、13と14、14と15、若しくは15と16の間に共有結合はない。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の配列は配列番号1を含み、第3の配列は配列番号2を含み、配列番号1のヌクレオチド8と9の間にホスホジエステル結合はない。他の実施形態では、第1の配列は配列番号2を含み、第3の配列は配列番号1を含み、配列番号2のヌクレオチド8と9の間にホスホジエステル結合はない。
【0025】
いくつかの実施形態では、アプタマーの第1の配列及び第3の配列は、二本鎖構造で互いにハイブリダイズされている。他の実施形態では、アプタマーが、25℃又は37℃で液体中にある場合、アプタマーの第1の配列及び第3の配列は、二本鎖構造で互いにハイブリダイズされている。更に他の実施形態では、溶液のpHは約6~8である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の配列及び第4の配列は両方とも一本鎖構造である。他の実施形態では、アプタマーが、25℃又は37℃で液体中にある場合、第2の配列及び第4の配列は両方とも一本鎖構造である。更に他の実施形態では、溶液のpHは約6~8である。
【0027】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、約40℃~50℃、45℃~65℃、45℃~60℃、45℃~55℃、45℃~50℃、50℃~65℃、又は50℃~60℃の範囲の融解温度を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号42~53又はその変異型からなる群から選択される配列を含み、変異型は1、2、3又は4個のヌクレオチド置換を含む。他の実施形態では、アプタマーは、配列番号42~53からなる群から選択される配列を含む。更に他の実施形態では、アプタマーは5'端及び3'端を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、アプタマーの5'端はリン酸基を含む。他の実施形態では、アプタマーの3'端はリン酸基を含む。更に他の実施形態では、5'端及び3'端はそれぞれリン酸基を含む。
【0030】
更に他の実施形態では、アプタマーの3'端は3'キャッピング部分に連結されている。更に別の実施形態では、アプタマーの5'端は5'キャッピング部分に連結されている。更に他の実施形態では、アプタマーの3'端は3'キャッピング部分に連結されており、アプタマーの3'端は5'キャッピング部分に連結されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、5'キャッピング部分はアミノ基及び逆位のデオキシチミジンキャップからなる群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、3'端に連結している3'キャッピング部分は、リン酸、逆位のデオキシチミジンキャップ及びプロパンジオールスペーサー(C3)からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、
CAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTGCAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTG-C3(配列番号106);
CAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTGGAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTC-C3(配列番号:107);
GAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTCGAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTC-C3(配列番号:108);
CAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTGGAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTC-C3(配列番号:109);
CAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTGCAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTG-C3(配列番号:110);又は
GAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTCGAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTC-C3(配列番号:111)
を含む。他の実施形態では、配列番号106~111の1つの配列を含むアプタマーの最初のヌクレオチドと最後のヌクレオチドの間に共有結合はない。
【0034】
別の態様では、アプタマーが提供され、アプタマーは5'から3'方向に、配列番号4若しくはその変異型又は配列番号5若しくはその変異型を含む第1のポリヌクレオチド配列、配列番号3若しくはその変異型を含む第2のポリヌクレオチド配列、配列番号5若しくはその変異型又は配列番号4若しくはその変異型を含む第3のポリヌクレオチド配列、及び配列番号3若しくはその変異型又は配列番号5若しくはその変異型を含む第4のポリヌクレオチド配列を含み、第2の配列及び第4の配列のそれぞれが14~18ヌクレオチド長であり、長さが等しく、その全長に沿って互いに相補的であり、アプタマーは5'端及び3'端を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第3のポリヌクレオチドは互いにアニールし、ステムを形成する。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2及び第4のポリヌクレオチドのそれぞれはアプタマーの別の領域にアニールせず、第2及び第4のポリヌクレオチドのそれぞれは第1及び第2のループを形成する。
【0037】
いくつかの実施形態では、ステムは第1のループと第2のループの間に位置する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第4の配列の3'端は第1の配列の5'端と共有結合し、第4の配列内の2つのヌクレオチド間にホスホジエステル結合はない。
【0039】
いくつかの実施形態では、第4の配列の3'端は第1の配列の5'端と共有結合し、第3の配列の最後のヌクレオチドと第4の配列の最初のヌクレオチドの間にホスホジエステル結合はない。
【0040】
いくつかの実施形態では、第4の配列中の配列番号3のヌクレオチド1と2、2と3、3と4、4と5、5と6、6と7、7と8、8と9、9と10、10と11、又は11と12の間にホスホジエステル結合はない。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは配列番号54~77からなる群から選択される配列を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第3のポリヌクレオチドは同じ長さである。更に他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドと第3のポリヌクレオチドの間にミスマッチはない。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の配列及び第3の配列の全長に沿って、第1の配列は第3の配列と同一である。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の配列及び第3の配列のそれぞれは12ヌクレオチド長である。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1の配列は配列番号3を含み、第3の配列は配列番号3を含む。他の実施形態では、第1の配列は配列番号3からなり、第3の配列は配列番号3からなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、アプタマーは配列番号82~105からなる群から選択される配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、アプタマーの5'端はリン酸基を含む。他の実施形態では、アプタマーの3'端はリン酸基を含む。更に他の実施形態では、5'端及び3'端はそれぞれリン酸基を含む。
【0048】
更に他の実施形態では、アプタマーの3'端は3'キャッピング部分に連結されている。更に別の実施形態では、アプタマーの5'端は5'キャッピング部分に連結されている。更に他の実施形態では、アプタマーの3'端は5'キャッピング部分に連結されており、アプタマーの3'端は5'キャッピング部分に連結されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、5'キャッピング部分はアミノ基及び逆位のデオキシチミジンキャップからなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、3'端に連結している3'キャッピング部分は、リン酸、逆位のデオキシチミジンキャップ及びプロパンジオールスペーサー(C3)からなる群から選択される。
【0051】
一態様では、組成物は、前述の態様及び実施形態のいずれかに記載の熱安定性ポリメラーゼ及びアプタマーを含んで提供され、アプタマーはポリメラーゼの活性を阻害する。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物中のアプタマー:ポリメラーゼのモル比は、約1:1~20:1、2:1~15:1、5:1~20:1、10:1~20:1、12:1~18:1、14:1~16:1、1:1~10:1、5:1~10:1、又は12:1~18:1の範囲である。他の実施形態では、組成物中のアプタマー:ポリメラーゼのモル比は、約1:1、2:1、4:1、5:1、8:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1又は20:1である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、サーマス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・マリチマ(Thermus maritima)からなる群から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物はデオキシリボヌクレオチド三リン酸及び二価の金属陽イオンを更に含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物はフォワードプライマーを更に含む。他の実施形態では、組成物はフォワードプライマーとリバースプライマーの両方を含む。更に他の実施形態では、フォワード及び/又はリバースプライマーは標的核酸に特異的である。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は乾燥組成物である。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は液体組成物である。
【0058】
一態様では、プライマーを前記の態様及び実施形態のいずれかに記載の熱安定性ポリメラーゼ及びアプタマーと混合して反応混合物を形成する工程を含む、プライマーを伸長する方法が提供される。
【0059】
いくつかの実施形態では、プライマーは標的核酸配列に特異的である。
【0060】
いくつかの実施形態では、方法はリバースプライマーを添加する工程を更に含む。他の実施形態では、リバースプライマーは標的核酸配列に特異的である。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は反応混合物にデオキシリボヌクレオチド三リン酸及び二価の金属陽イオンを添加する工程を更に含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、45℃、40℃、37℃、35℃、32℃、又は30℃より低い温度でポリメラーゼ活性を阻害、低減又は除去する。
【0063】
一態様では、前述の態様及び実施形態のいずれかに記載のアプタマー並びに熱安定性ポリメラーゼを含む組成物を含むキットが提供される。
【0064】
いくつかの実施形態では、キットは、フォワード及びリバースプライマーを更に含み、そのそれぞれは、標的核酸配列に特異的である。
【0065】
いくつかの実施形態では、キットは、標的核酸配列の配列を検出及び/又は決定するためのプライマー及び少なくとも1つのプローブを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、標的核酸配列に特異的なフォワードオリゴヌクレオチドプライマーを更に含む。他の実施形態では、組成物は標的核酸配列に特異的なリバースオリゴヌクレオチドプライマーを更に含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、キットは逆転写酵素を更に含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、組成物は逆転写酵素を更に含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物は乾燥組成物である。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物は液体組成物である。
【0071】
本発明のこれら及び他の目的及び特徴は、以下の詳細な説明と併せて読むとより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1A】5'端及び3'端を持たない閉じたアプタマーを示す図である。
【
図1B】
図1Aに示した閉じたアプタマーを生成するために合成され得るオリゴヌクレオチド配列を示す図である。
【
図2A】5'端(下線C)及び3'端(箱G)を有するアプタマーを示す図である。2つのループ間のステムの予測される構造を有する開いたアプタマーのこの図では、5'Cと3'Gの間に共有結合はない。
【
図2B】
図2Aに示した開いたアプタマーを生成するために合成され得るオリゴヌクレオチド配列を示す図である。2つのループ間のステムの予測される構造を有する開いたアプタマーのこの図では、5'Cと3'Gの間に共有結合はない。
【
図3A】3'オーバーハングを有するヘアピンアプタマーを示す図である。下線は、配列番号3内の2つのヌクレオチド間の共有結合(例えば、ホスホジエステル結合)の不在が、周囲温度での予測されるヘアピン構造の形成を可能にする、TTCTTAGCGTTT(配列番号3)を含むループ配列の2つの位置を示す。
【
図3B】
図3Aに示す開いた予測されるヘアピンアプタマーを生成するために合成され得るオリゴヌクレオチド配列を示す図である。下線は、配列番号3内の2つのヌクレオチド間の共有結合(例えば、ホスホジエステル結合)の不在が、周囲温度での予測されるヘアピン構造の形成を可能にする、TTCTTAGCGTTT(配列番号3)を含むループ配列の2つの位置を示す。
【
図4A】ゲノムDNA内の2つの標的配列の検出のためのリアルタイムPCR反応(実施例4)の結果を示す図である。反応は本開示に記載のアプタマーの不在下で実行された。蛍光の増加はPCR産物の生成を表す。
【
図4B】ゲノムDNA内の2つの標的配列の検出のためのリアルタイムPCR反応(実施例4)の結果を示す図である。反応は本開示に記載のアプタマーの存在下で実行された。蛍光の増加はPCR産物の生成を表す。
【
図5A】
図4Aに示したリアルタイムPCR反応のPCR後融解曲線分析(実施例4)を示す図である。不在下で生成されたPCR産物の融解曲線分析は、本開示に記載のアプタマーの存在がより多くの標的アンプリコン及びより少ない非特異的産物の生成をもたらすことを示す。
【
図5B】
図4Bに示したリアルタイムPCR反応のPCR後融解曲線分析(実施例4)を示す図である。存在下で生成されたPCR産物の融解曲線分析は、本開示に記載のアプタマーの存在がより多くの標的アンプリコン及びより少ない非特異的産物の生成をもたらすことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
ここで、様々な態様は、以下により完全に記載される。そのような態様は、多くの異なる形態で実施されるが、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、この開示が十分及び完全であり、その範囲が当業者に完全に伝わるように提供される。
【0074】
本開示の実施は、他に示さない限り、当技術分野内の化学、生化学、及び薬理学の従来の方法を用いる。そのような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、A.L. Lehninger、Biochemistry (Worth Publishers, Inc.、current addition); Morrison and Boyd、Organic Chemistry (Allyn and Bacon, Inc.、current addition); J. March、Advanced Organic Chemistry (McGraw Hill、current addition); Remington: The Science and Practice of Pharmacy、A. Gennaro, Ed.、20th Ed.; Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J. Griffith Hardman、L. L. Limbird、A. Gilman、10th Ed参照。
【0075】
値の範囲が提供される場合、その範囲及び任意の他の記載の上限と下限の間の各介在値又は記載した範囲の介在値は本開示内に包含される。例えば、1%~8%の範囲が記載される場合、2%、3%、4%、5%、6%、及び7%もまたはっきりと開示されること、並びに値の範囲が1%より大きい又は1%に等しいこと及び値の範囲が8%より少ない又は8%に等しいことを意図する。
【0076】
I.定義
本明細書で使用される場合及び添付の請求項において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がはっきりと他に示さない限り複数の参照を含むことに注意が必要である。
【0077】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての専門及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものに類似している又は等価である任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法、装置、及び材料がここで記載される。本明細書に記載の全ての出版物は、本発明と関連して使用されるであろう出版物に報告される方法論を記載及び開示する目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
句「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、一本鎖形態又は二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。用語は、公知のヌクレオチド類似体若しくは修飾骨格残基、又は結合を含有し、合成であり、天然に存在し、又は天然に存在せず、参照核酸に類似した結合特性を有し、参照ヌクレオチドに類似した形で代謝される核酸を包含する。そのような類似体の例としては、限定はされないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「熱安定性ポリメラーゼ」又は「好熱性ポリメラーゼ」は、例えば大腸菌(E.coli)由来のヌクレオチドポリメラーゼと比較した場合、熱に対して比較的安定であり、ヌクレオシド三リン酸の鋳型依存的な重合を触媒する酵素を指す。「熱安定性ポリメラーゼ」は、例えばPCRで使用される加熱及び冷却サイクルの繰り返しに供される場合、重合の酵素活性及びエキソヌクレアーゼ活性を保持する。好ましくは、「熱安定性核酸ポリメラーゼ」は、45℃より高い温度で、又は40℃から80℃及びより好ましくは55℃から75℃の範囲の温度で最適な活性を有する。サーマス・アクウァーティクス(Taq)から単離された代表的な熱安定性ポリメラーゼ酵素は、米国特許第4,889,818号に記載され、従来のPCRにそれを使用する方法は、Saikiら、1988年、Science 239:487に記載されている。他の熱安定性DNAポリメラーゼとしては、限定はされないが、好熱性真正細菌(Eubacteria)、又は古細菌(Archaebacteria)、例えばサーマス・サーモフィラス、T.ボッキアヌス(T. bockianus)、T.フラバス(T. flavus)、T.ラバー(T. rubber)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、パイロコッカス・フリオサス(Pyroccocus(Pyrococcus) furiousus)、パイロコッカス・ヴェッセイ(P. wosei(P. woesei))、パイロコッカス属 KGD(Pyrococcus spec. KGD)、サーモトガ・マリティマ(Thermatoga maritime(maritima))、サーモプラズマ・アシドフィラス(Thermoplasma acidophilus)、及びスルホロブス属(Sulfolobus spec.)由来のDNAポリメラーゼを含む。55~60℃の間で機能的な逆転写酵素としては、限定はされないが、MmLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、及びHIV-2逆転写酵素が挙げられる。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「アプタマー」は、標的分子、例えばタンパク質に特異的な結合親和性を有する核酸を指す。全ての核酸のように、特定の核酸リガンドは、ヌクレオチド(A、U、T、C及びG)、典型的には30~75ヌクレオチド長の線状配列によって記載され得る。アプタマーは、予測される二次構造の領域に関しても記載され、アプタマーの一本鎖部分が同じアプタマーの別の一本鎖部分に相補的であり、それにより互いにハイブリダイズ(アニール)して、本明細書において「ステム」と呼ばれる二重鎖を形成し、同じアプタマーの他の部分とハイブリダイズしないと予測されるアプタマーの部分は本明細書において「ループ」と呼ばれる。一般に、ループの各端は、それによりループ構造を提供するステムの端に連結されている。
【0081】
用語「キャッピング部分」は、核酸の安定性を変更し、ポリメラーゼによる核酸の伸長を阻害し、及び/又は核酸二量体形成の効率を増加させる、アプタマー又は他の核酸の3'端又は5'端に結合する部分を指す。「キャップ構造」は、オリゴヌクレオチドの端に挿入されている化学修飾を意味する(例えば、Matulic-Adamicら、米国特許第5,998,203号参照)。非限定的な例では、好適な5'-キャップは逆位の非塩基残基;4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(ベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チオヌクレオチド;炭素環ヌクレオチド;1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;アルファ-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコヌクレオチド;非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'-3'-逆位ヌクレオチド部分; 3'-3'-逆位非塩基部分;3'-2'-逆位ヌクレオチド部分; 3'-2'-逆位非塩基部分;1,4-ブタンジオールリン酸;3'-ホスホロアミデート;リン酸ヘキシル;リン酸アミノヘキシル;3'-リン酸;3'-ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;又は結合若しくは非結合メチルホスホネート部分からなる群から選択されるものであり得る。
【0082】
別の非限定的な例では、好適な3'-キャップは、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(ベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4'-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;5'-アミノ-アルキルリン酸;1,3-ジアミノ-2-プロピルリン酸;3-アミノプロピルリン酸;6-アミノヘキシルリン酸;1,2-アミノドデシルリン酸;ヒドロキシプロピルリン酸;1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;アルファ-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコヌクレオチド;3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5'-5'-逆位ヌクレオチド部分;5'-5'-逆位非塩基部分;5'-ホスホロアミデート;5'-ホスホロチオエート;1,4-ブタンジオールリン酸;5'-アミノ;架橋及び/又は非架橋5'-ホスホロアミデート、ホスホロチオエート及び/又はホスホロジチオエート、架橋又は非架橋メチルホスホネート並びに5'-メルカプト部分を含む群から選択され得る。より詳細には、参照により本明細書に組み込まれるBeaucage and Iyer、1993、Tetrahedron 49:1925を参照。
【0083】
第1の核酸配列の「変異型」は、第1の核酸配列と比較して1つ又は複数のヌクレオチド置換を有する第2の核酸配列を指す。
【0084】
「プライマー」は、様々な数のヌクレオチドによって離された鋳型核酸分子の配列部分に相補的である一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。鋳型核酸にアニールされたプライマーは、熱安定性ポリメラーゼによって触媒される核酸分子の増幅又は重合中にヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長され得る。典型的には、プライマーは12~35ヌクレオチド長であり、好ましくは15~20ヌクレオチド長である。プライマーは、鋳型の公知の部分から設計され、鋳型核酸分子の2本鎖の各鎖に相補的なものであり、合成される領域の反対側に置かれる。プライマーは、当技術分野で周知のように設計され合成により調製され得る。
【0085】
本明細書で使用する用語「フォワードプライマー」は、3'から5'方向に整列した核酸配列の鎖に相補的なプライマーを意味する。「リバースプライマー」は、核酸配列の他の鎖に相補的な配列を有する。
【0086】
本明細書で使用する場合、「鋳型」は、核酸合成の基質を提供する二本鎖又は一本鎖核酸分子を指す。二本鎖DNA分子の場合、第1及び第2の鎖を形成するその鎖の変性は、これらの分子が核酸合成の基質として使用され得る前に実施される。鋳型として働く一本鎖核酸分子の部分と相補的なプライマーは、適切な条件下でハイブリダイズされ、適切なポリメラーゼは次いで、鋳型又はその部分に相補的な分子を合成し得る。新しく合成された分子は、元々の鋳型と等しい又は鋳型より短い長さであり得る。
【0087】
「標的」又は「標的核酸」は、ポリメラーゼ及びオリゴヌクレオチドプライマーを含む反応で複製又は増幅しようとする一本鎖又は二本鎖ポリヌクレオチド配列を指す。
【0088】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイズする」は、特定のヌクレオチド配列への優先的な核酸分子の結合、二重鎖形成、又はハイブリダイズを指す。ハイブリダイゼーションは通常、ポリヌクレオチドの2つ一本鎖間の水素結合の形成を含む。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「相補的な」は、2つのヌクレオチド間の正確な対合の能力を指す;すなわち、核酸の所与の位置のヌクレオチドが別の核酸のヌクレオチドと水素結合して(例えば、標準的なワトソン-クリック塩基対合及びフーグスティーン型水素結合により)古典的な塩基対を形成することができる場合、2つの核酸はその位置で互いに相補的であると考えられる。2つの一本鎖核酸分子間の相補性は、「部分的」であり得る。2つの一本鎖ヌクレオチド配列間にミスマッチがない場合、相補性は「完全」、「十分」、又は「100%」である。「配列の全長に沿って100%相補性」は、ハイブリダイズでき、同じ長さのものである2つの核酸鎖間にミスマッチがないことを示す。
【0090】
本明細書で使用する場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチド単量体の配列を指し、それぞれ隣接するヌクレオチド単量体に共有結合によって結合する。「オリゴヌクレオチド」はヌクレオチド単量体の配列内の非ヌクレオチドサブユニット又はヌクレオチド類似体も含むことができ、ここで非ヌクレオチドサブユニット又はヌクレオチド類似体は、隣接するサブユニット、類似体、又はヌクレオチドに共有結合によって結合する。オリゴヌクレオチドの2つの離接するヌクレオチド単量体間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。
【0091】
本明細書において用語「乾燥した」は、水含量が、約10%、8%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%より少ない組成物を指す。
【0092】
「ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)」は、複製コピーが、1つ又は複数のプライマー、及び重合の触媒、例えばDNAポリメラーゼ、特に熱に安定なポリメラーゼ酵素を使用する標的ポリヌクレオチドから作成される反応である。一般に、PCRは、以下の3つの工程の「サイクル」を繰り返し実施する工程を含む:DNAが一本鎖に解離するように温度が調整される「融解」、増幅されるポリヌクレオチドのスパンの一端において、二重鎖を形成する塩基対認識を使用してオリゴヌクレオチドプライマーがそれらの相補的な塩基配列に適合するように温度が調整される「アニーリング」、並びにアニーリングと同じ温度で起こり得る、又は二重鎖を形成したオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼによって伸長されるように温度がわずかに高くより適した温度に調整される「伸長」又は「合成」。次いでこのサイクルは、所望の量の増幅されたポリヌクレオチドが得られるまで繰り返される。PCR増幅の方法は、例えば、米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号に教示される。
【0093】
プライマー伸長又はPCR増幅の「特異性」は、プライマー及びプライマーが塩基に相補的な形でアニールするように設計されたゲノム又は核酸の転写領域の配列から予測されるサイズ及び配列を有する単一の「特異的」PCR産物の生成を指す。「非特異的」PCR産物は、そのような予測とは異なるサイズ又は配列を有する。
【0094】
「標的核酸」は、ゲノム又は核酸の転写領域であり、その端はPCR試薬の完全なセットに含まれるプライマーに塩基相補性(正しい方向)である。プライマーは、標的核酸配列の公知の部分に相補的であり、DNAポリメラーゼによる合成を開始するために必要な核酸配列を指す。「正確な方向」は、2つのプライマーが、それらの3'端が互いの方を向き、二本鎖標的核酸の反対の鎖にアニールする。そのようなプライマーは、ゲノム又は転写配列をそれらが塩基相補性であるその端で標的化すると言われる。PCR増幅に関して請求項で述べられるように、「適切な温度」は、プライマーと標的核酸配列の間で特異的なアニーリングが起こる温度を示す。
【0095】
「オリゴヌクレオチド」は、1つのヌクレオチドのペントースの3'位置と隣接するヌクレオチドのペントースの5'位置の間のホスホジエステル結合によって接合されているヌクレオチドの共有結合配列を含む合成又は天然の分子を指す。
【0096】
「プライマー伸長アッセイ」は、一本鎖核酸鋳型分子の相補的な配列部分にハイブリダイズされたプライマーが、DNA鋳型分子に相補的な新しいDNA分子を形成するプライマーの3'端へのヌクレオチドの連続的な共有結合によって伸長されるin vitro方法を指す。プライマー伸長方法は、一本鎖核酸鋳型を部分的に又は完全に二本鎖核酸分子に転換する。本明細書で使用する場合、プライマー伸長方法は、鋳型核酸分子のコピー数の増幅のない単一工程の核酸合成方法である。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「調節する」又は「制御する」は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)の活性の変更を指す。例えば、調節又は制御は、PDKのタンパク質活性、結合特性、若しくは任意の外の生物学的、機能的、免疫学的特性の増加又は低下を起こし得る。
【0098】
核酸の分子操作を含む本明細書に開示の手順は、当業者に公知である。一般に、両方とも参照により組み込まれる、Fredrick M. Ausubelら(1995)、"Short Protocols in Molecular Biology"、John Wiley and Sons, and Joseph Sambrookら(1989)、"Molecular Cloning, A Laboratory Manual, " second ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0099】
II.ポリメラーゼ活性のアプタマー阻害剤
本開示は、ポリメラーゼによるプライマー伸長を必要とする反応での使用のための熱安定性ポリメラーゼの可逆的阻害剤を提供する。これらの可逆的阻害剤は、アプタマー、ステム及びループを含む二次構造を採用するように設計される核酸である。アプタマーは、ホットスタートを組み入れることから利益を得る反応及びアッセイに有用であり、核酸合成の感度及び特異性を改善することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、「ダンベル」構造を有する(例えば、
図1A及び
図2Aを参照)。ダンベルアプタマーは、合成オリゴヌクレオチドの5'端及び3'端のライゲーションにより5'末端又は3'末端がない「閉じた」構造として存在し得る(
図1Aに示す)。例えば、閉じたダンベルアプタマーは、アニーリングして予測されるダンベル構造を形成し、次いで5'及び3'をライゲートすることを可能にする、本明細書で提供する配列を有する線状オリゴヌクレオチドを合成することによって生成することができる。いくつかの実施形態では、ダンベルアプタマーは、折りたたまれたアプタマーのステム内で互いに隣接して位置する5'及び3'末端を作成する方法で合成される。
【0101】
ステム及び2つのループを有するアプタマーへと折りたたまれると予測される線状オリゴヌクレオチドの例は
図1B及び
図2Bに提供され、線状オリゴヌクレオチドの5'部分及び3'部分は、同じオリゴヌクレオチドの内部相補性配列にハイブリダイズし、線状オリゴヌクレオチドの5'端及び3'端が互いに隣接するステム構造を形成する。
図1Aは、
図1Bのオリゴヌクレオチドの5'端及び3'端が共にライゲートされる、
図1Bに示すオリゴヌクレオチド配列から形成されたアプタマー構造を示す。
図2Aは、オリゴヌクレオチドの5'端及び3'端が共にライゲートされず、5'端及び3'端が予測されるステム構造内で互いに隣接する5'端及び3'端でアプタマーを離す、
図2Bに示す配列から形成されたアプタマー構造を示す。
【0102】
従って、及び
図1Aを参照して、線状オリゴヌクレオチドが折りたたまれ、アニール(ハイブリダイズ)し、ステムの1つの鎖を含む第1のポリヌクレオチド配列(例えば、
図1AのTTATTTTGCAATTATA(配列番号2、図では右から左へ記載する))、アプタマーの部分にアニールせず、ループを形成する第2のポリヌクレオチド配列(例えば、TTCTTAGCGTTT(配列番号3))、配列番号1に相補的であり、適切な条件及び温度で配列番号1にアニールしてステムを形成する第3のポリヌクレオチド配列(例えば、TATAATTGCAAAATAA(配列番号1))、並びにアプタマーの部分にアニールせず、ループを形成する第4のポリヌクレオチド配列(例えばTTCTTAGCGTTT(配列番号3))を含むアプタマーが提供される。
【0103】
図2A及び
図2Bは、5'端及び3'端がライゲートされない、すなわちアプタマーが5'端及び3'端を有する、「開いた」アプタマーを示す。とりわけ、5'端及び3'端のヌクレオチドは予測されるアプタマーの二次構造のステム内で互いに隣接する。
図2Bに示すように、オリゴヌクレオチドは合成され、その3'端で修飾される。この特定の実施形態では、3'端はプロパンジオールスペーサー(C3)に結合し、閉じたアプタマーを形成する5'端及び3'端のライゲーションを防ぐ。熱変性及び冷却すると、オリゴヌクレオチドの5'部分及び3'部分は、
図2Aに図示するようにオリゴヌクレオチドの内部相補的配列にハイブリダイズし得る。
【0104】
ダンベルアプタマーの2つのループ(上述並びに
図1A及び
図2Aに示した第2及び第4のポリヌクレオチド配列)は、互いに同一であり得る又は第1のループが1若しくは1ヌクレオチドによる第2のループと異なる互いにマイナーな変異型であり得る。ループは、ポリヌクレオチド配列TTCTTAGCGTTT(配列番号3)又はその変異型を含み、変異型は、配列番号3内に1つ又は2つのヌクレオチド置換を含有する。配列番号3における許容可能な置換は、ループ配列がそれぞれ配列番号3を有するアプタマーと比較して約5%又は10%より多くアプタマーの可逆的阻害活性に影響しないものである。
【0105】
アプタマーの2つのループの間に位置するステムは、約12~18塩基対長の二本鎖構造(上述並びに
図1Aに示した第1及び第3のポリヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション又はアニーリングによって形成される)であるが、変更が、アプタマーが解離し、もはやポリメラーゼ活性を阻害しない温度に影響し得ることを理解してステムの長さは異なり得る。ポリメラーゼから解離する温度が異なるアプタマーを有することは有利である。従って、本開示のアプタマーは、12~16、14~18、14~17、14~16、15~16、15~17、若しくは15~18塩基対長又は約12、13、14、15、16、17、若しくは18塩基対長であるステムを含むものを含む。ステムは、本明細書に記載のアプタマーが、12~16、14~18、14~17、14~16、15~16、15~17、若しくは15~18ヌクレオチド長又は約12、13、14、15、16、17、若しくは18ヌクレオチド長であり、互いに相補的である2つの一本鎖オリゴヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであるように、等しい長さの2つの一本鎖オリゴヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、2つのオリゴヌクレオチド配列は水素結合を介してハイブリダイズされ、アプタマーの結果として生じたステムにミスマッチが存在しない。2つのループ及びステムを含むアプタマーを形成するため、1つの一本鎖ステムオリゴヌクレオチド配列の3'端は、2つのループの1つ目の5'端と共有結合するが、第2の一本鎖ステムオリゴヌクレオチド配列の3'端は、2つのループの2つ目の5'端と共有結合する。
【0106】
本明細書に記載の2つのループを含むアプタマーは、閉じた又は開いた形態であり得る。言い換えると、閉じた形態では、アプタマーポリヌクレオチドの遊離端がない。従って、当技術分野で周知のように配列は5'から3'方向を維持するが、アプタマーは5'端(例えば、5'リン酸)又は3'端(例えば、3'ヒドロキシル)を含まない。代わりに、アプタマーの全てのヌクレオチドは、共有結合により隣接するものに結合する。いくつかの実施形態では、共有結合はホスホジエステル結合である。他の実施形態では、アプタマーのヌクレオチド単量体を連結している全ての共有結合はホスホジエステル結合である。代替の実施形態では、アプタマーステムの1つの鎖は、リンカーがDMT-エタンジオールホスホロアミダイト(C-2スペーサー)を含むように、非ヌクレオチド連結部分を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、アプタマーのステム構造はステムの鎖の1つのみにおいて2つのヌクレオチド間の共有結合を欠如する。これらの実施形態では、アプタマーは5'端及び3'端を有する。ステムの全てのヌクレオチドが反対側の、十分に相補的な鎖にハイブリダイズしたままであり得るため、アプタマーがその予測される二次構造に折りたたまれる場合(例えば、
図1A参照)、5'端及び3'端は互いに隣接したままである。いくつかの実施形態では、5'端はリン酸基を含むが、3'端はヒドロキシル基を含む。代替の実施形態では、5'端、3'端、又は両端はキャッピング部分に連結される。キャッピング部分は、アプタマーの安定化及び/又はアプタマーの3'端で開始される重合を防ぐために機能し得る。共有結合の欠如及び/又はキャッピング部分の存在が、5'端及び/又は3'端に最も近いヌクレオチド間の水素結合を破壊し得るが、これはアプタマーの阻害活性に必ずしも影響しないことも可能である。
【0108】
本開示に従って2つのループ及びステムを有するアプタマーを合成するため、通例の化学合成法を使用して3'から5'方向に線状オリゴヌクレオチドが合成される。上記のように閉じたアプタマー(5'又は3'遊離端を持たない)を生成するため、所望のアプタマー配列がまず合成され、次いで加熱により変性され、ゆっくりと室温まで冷却され、オリゴヌクレオチドをアニールさせて所望の予測されるダンベル構造を有するアプタマーが形成される。例えば、合成されたオリゴヌクレオチドは、KCl等50mLの塩を含むpH7.5の5mM HEPES-KOH緩衝液中で約95℃の温度で変性され、次いでゆっくりと室温まで冷却され得る(約45分から1時間)。
【0109】
5'端及び3'端のライゲーションは、上記のように合成、変性及びオリゴヌクレオチドのアニーリング後に、化学的又は酵素的な手段(例えば、実施例1参照)によって達成され得る。酵素的なライゲーションはT4リガーゼの使用によって達成され、ここで、合成されたオリゴヌクレオチドの5'端はリン酸化され、適切な条件下でT4リガーゼとインキュベートされる。化学的なライゲーションは、例えば臭化シアン又は他の当技術分野で通例の方法を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、合成されたオリゴヌクレオチドは次いで、まずオリゴヌクレオチドの5'端にアミノ基を配置するように修飾される。5'-修飾オリゴヌクレオチドは次いで、イミダゾール-HCl(pH6.0)及び16.7mg EDC(1-エチル-e-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)とインキュベートされ、5'端及び3'端を共にライゲートし、2つのループ及びステムの予測される構造を有するアプタマーを形成し、ここで、アプタマー内の全てのヌクレオチドは2つの隣接するヌクレオチドと共有結合する。
【0110】
遊離5'端及び3'端を有するアプタマーを生成するため、所望のアプタマー配列が上記で化学的に合成され、ここで、合成オリゴヌクレオチドの最初及び最後のヌクレオチドはステム構造の一本鎖内で互いに隣接するヌクレオチドであるが(上述並びに
図2A及び
図2Bに示す)、5'端と3'端の間に共有結合(例えば、ホスホジエステル結合)を欠如する。いくつかの実施形態では、5'端はリン酸基を欠如する。合成オリゴヌクレオチドは、適切な条件下で折りたたまれ、ステムによって離された2つのループを持つ予測される二次構造を有し、ステムの1つの鎖において3'端に隣接する5'端がある。5'リン酸端は、本明細書に記載のようにアミノ基等のキャッピング部分又は他の関連するキャッピング部分に結合し得る。オリゴヌクレオチドの3'-ヒドロキシルは、本明細書に記載のようにプロパンジオールスペーサーC3等のキャッピング部分又は他の関連するキャッピング部分に結合し得る(実施例3参照)。アプタマーは、5'キャップ、3'キャップ、又は5'キャップと3'キャップの両方を含み得る。5'キャップ及び/又は3'キャップの存在により、オリゴヌクレオチドの2つの端のライゲーションを阻害でき、オリゴヌクレオチドの重合も阻害できる。
【0111】
上記のように、ポリメラーゼに結合し、ポリメラーゼ活性を阻害できるアプタマーは、ポリメラーゼへの結合に関与し、結合した場合にポリメラーゼ活性の阻害をもたらすとYakimovichら(2003、Biochem (Moscow)、68:228~235)によって決定されたように、配列TTCTTAGCGTTT(配列番号3)を含む2つのループを有するように設計された。いくつかの実施形態では、配列番号3のループ配列は1つ又は2つのヌクレオチド置換を有する。2つのループは、等しい長さの2つの相補的な配列を含むステムによって離されている。従って、その例が
図1に示される、アプタマー構造はステムによって離された2つのループを有する。ステムの例示的な一本鎖配列はTATAATTGCAAAATAA(配列番号1)でありその相補鎖はTTATTTTGCAATTATA(配列番号2)であるが、ステム内に1、2、又は3塩基対置換があり得ることが企図される。重要なことに、1つの鎖における置換は、ステムの相補的な鎖における相補的な置換をいつも伴う。
【0112】
ステム配列は、配列番号2と対である配列番号1を含むもの等、ATリッチである。例えば、ステム配列は12~18塩基対長であり、これらの塩基対の少なくとも14、15、又は16個がA-T塩基対である。いくつかの実施形態では、2つのループの間に位置するステムは16塩基対長であり、14個のA-T塩基対及び2つのG-C塩基対を含む。2つのG-C塩基対は互いに隣接してよい。
【0113】
上記のように、アプタマーは、ステム部分内の鎖の1つに存在する2つのヌクレオチド間に共有結合を欠如し得る。例えば、配列番号1及び配列番号2又はその変異型を含むステム鎖は、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド1と2、2と3、3と4、4と5、5と6、6と7、7と8、8と9、9と10、10と11、11と12、12と13、13と14、14と15、又は15と16間に共有結合を欠如し得る。従って、2つのヌクレオチド間の共有結合を欠如するアプタマーは、単一の5'末端及び単一の3'末端を含む。上記したように、単一の5'末端及び単一の3'末端を含むアプタマーは、アプタマーの全配列を含む一本鎖オリゴヌクレオチドとして化学的に合成され得る。言い換えると、合成された一本鎖オリゴヌクレオチドは、配列番号1又はその変異型を含む第1のステム配列、配列番号3又はその変異型を含む第1のループ配列、配列番号2又はその変異型を含む第2のステム配列、第2のループ配列又はその変異型の5'部分、及び配列番号1又はその変異型を含む第1のステム配列の残りの3'部分を含む。一本鎖ヌクレオチドとしていったん合成されると、適切な条件下で折りたたまれ、単一のステムによって離された2つのループを有することができ、ここで、ステムの1つの鎖は、2つの隣接するヌクレオチド間に共有結合を有さない。理論に縛られないが、予測されるステム構造の1つの鎖における2つの隣接するヌクレオチド間の共有結合の欠如は、曲げる等柔軟性を可能にし、それによりポリメラーゼの活性部位を有する2つの予測されるループ構造のそれぞれの相互作用を促進し得る。予測されるダンベル構造におけるステムを介してつながれた2つのループの存在は、アプタマーループの局所的な濃縮を増大し、約25℃から30℃等より低い温度でのポリメラーゼへのアプタマーのより効率的な結合をもたらし得る。従って、より少ないアプタマーが反応混合物中で必要とされ、所望のホットスタート機能性を提供し得る。
【0114】
遊離5'端及び3'端を含むダンベルアプタマーの設計により(ステムの1つの鎖の2つのヌクレオチド間の共有結合を欠如する)、アプタマーは、約30℃又はそれより低い温度での熱安定性ポリメラーゼのポリメラーゼ活性を依然として阻害できることも決定された。開いたダンベルアプタマー配列の変更は、それより低いとポリメラーゼ活性が阻害される温度に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、開いたダンベルアプタマーは、約32℃、35℃、38℃、又は40℃又はそれより低い温度で、ポリメラーゼ活性を阻害する。特に有利なのは、40℃、45℃、50℃、又は55℃より高い温度でのこれらの開いたアプタマー組成物によるポリメラーゼ活性阻害の完全な喪失である。
【0115】
以下のTable 1(表1)は、アニールして予測されるダンベル構造を形成するアプタマーに関して上記したように例示的な第1及び第3の配列を提供し、ここで、アプタマーの第1及び第3のポリヌクレオチド配列は互いに相補的であり、アニールして予測されるステム構造を形成し得る。以下の第1及び第3の配列の各5'端及び3'端が、ループ構造の一端にライゲートされることが理解される。いくつかの実施形態では、第1及び第3のポリヌクレオチド配列の1つが、第1又は第3の配列内の2つのヌクレオチド間にホスホジエステル結合を欠如し得ることも理解される。更に、予測されるステムの鎖に形成されると予測されるこれらの配列のいずれも、配列の1、2、3又は4つの位置にヌクレオチド置換を有し得る。従って、この鎖にアニールすると予測される反対の鎖は、十分に相補的な配列を有する。
【0116】
【0117】
以下のTable 2(表2)は、合成され得る、2つのループ及びステムを有するアプタマーへと折りたたまれると予測される例示的なオリゴヌクレオチド配列を提供する。太字のヌクレオチドはそのステム配列の位置を表し、オリゴヌクレオチドが予測されたように折りたたまれる場合、下線部分によって示した第2のステム配列にハイブリダイズする。
【0118】
【0119】
本明細書に記載の他の実施形態では、アプタマーが、相補的であり、単一のループで終止する2つの一本鎖を有する単一のステムを含むと予測されるヘアピン構造を形成するようにアプタマーは設計される。本明細書に記載のように予測されるヘアピン構造における単一のステムは、第1及び第3のポリヌクレオチド配列が相補的であり、長さが等しい第3のポリヌクレオチド配列にアニールされる第1のポリヌクレオチド配列を含む。第1のポリヌクレオチド配列の3'端は第2のポリヌクレオチド配列の5'端と共有結合し、予測されたヘアピンアプタマーの単一の鎖のループを形成すると予測され、第2のポリヌクレオチド配列の3'端が第3のポリヌクレオチド配列の5'端と共有結合する。以下のTable 3(表3)は、ヘアピンアプタマーの第1及び/又は第3のポリヌクレオチド配列のいくつかの例示的なオリゴヌクレオチド配列を提供する。これらの配列のいずれも、配列の1、2、3、又は4つの位置にヌクレオチド置換を有し得ると理解される。好ましい実施形態では、ループを形成すると予測される第2のポリヌクレオチド配列は、TTCTTAGCGTTT(配列番号3)を含む。
【0120】
【0121】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアプタマーは、配列番号3又はその変異型の全ての若しくは部分的な配列を表す5'オーバーハング及び/又は3'オーバーハングを有する。本開示に記載のヘアピンアプタマーの例は、
図3A及び
図3Bに提供される。
図3Aの下線部分は、配列番号3の配列を示す。従って、
図3Aのヘアピンアプタマーは、配列番号3の3'部分を含むオーバーハングを有する。特に、
図3Aは、配列番号3の3'部分(GTTT)が配列TTATTTTAAAATTATA(配列番号58)を含むステム鎖の5'ヌクレオチドにライゲートされ、配列番号3の残りの5'部分が配列TATAATTTTAAAATAA(配列番号59)を含む第2のステム鎖の3'ヌクレオチドにライゲートされているヘアピンアプタマーを示す。配列番号3のヌクレオチド4と5の間に共有(ホスホジエステル)結合が存在しないため、配列番号90(
図3B)のオリゴヌクレオチドは
図3Aに記載したようにヘアピン構造に折りたたまれると予測される。
【0122】
ヘアピンアプタマーを合成するため、オリゴヌクレオチドは以下のTable 4(表4)に示す配列に基づいて化学的に合成され得る。下線の塩基は配列番号3の3'部分及び5'部分を示す(カットループ)。太字の塩基は、互いに十分に相補的なステム配列を示し、アプタマーがヘアピン構造に折りたたまれる場合にハイブリダイズすると予測される。配列番号79は、3'オーバーハングが配列番号3の全てのループ配列を表すヘアピン構造を示すが、配列番号80は、5'オーバーハングが配列番号3の全てのループ配列を表すヘアピン構造を示す。配列番号84は、配列番号3からなる配列の5'部分が1つのステム配列の3'端と共有結合する3'オーバーハングを有するヘアピンアプタマーの例であり、配列番号3からなる配列の残りの3'部分が相補的なステム配列の5'端と共有結合し、配列番号3からなる配列のヌクレオチド7と8の間に共有(例えば、ホスホジエステル)結合がない。
【0123】
【0124】
アプタマー阻害活性
本明細書に記載したようにアプタマーを熱安定性ポリメラーゼとインキュベートする工程を含む、ポリメラーゼ活性を可逆的に阻害する方法も企図される。本開示のアプタマーは、熱安定性ポリメラーゼに結合し、より低い温度でそのポリメラーゼのポリメラーゼ活性を阻害し、次いで反応温度が上昇するとポリメラーゼから解離するように設計された。いくつかの実施形態では、熱安定性ポリメラーゼは、限定はされないが、サーマス・アクウァーティクス、サーマス・サーモフィラス、T.ボッキアヌス、T.フラバス、T.ラバー、サーモコッカス・リトラリス、パイロコッカス・フリオサス、パイロコッカス・ヴェッセイ、パイロコッカス属 KGD、サーモトガ・マリティマ、サーモプラズマ・アシドフィラス、及びスルホロブス属を含む、限定はされないが、好熱性真正細菌又は古細菌由来のDNAポリメラーゼから選択される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは55~60℃の間で逆転写酵素機能性であり、限定はされないが、MmLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、及びHIV-2逆転写酵素が挙げられる。
【0125】
アプタマーの、ポリメラーゼに結合及び阻害し、次いでポリメラーゼから解離する能力は、反応混合物中のその二次構想に一部依存する。本開示のアプタマーは、約45℃~70℃の範囲の融解温度を有する。いくつかの実施形態では、閉じた(ライゲートされた)ダンベルアプタマーは、約60℃~70℃、60℃~65℃、又は65℃~70℃の範囲のより高い融解温度を有するが、ステムの1つの鎖のホスホジエステル結合を欠如する開いたダンベルアプタマーは、約45℃~55℃、45℃~50℃、50℃~55℃、又は48℃~53℃の範囲の融解温度を有する。融解温度は、いくつかの実施形態では、約pH 8の緩衝溶液中、約8μMのアプタマー濃度で決定される。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、3mM MgCl2、15 KCl、25mM HEPESを含み、pH8.0である。各アプタマーの融解温度は、UV-Vis-NIR分光光度計を使用して測定され得る(例えば、実施例2参照)。
【0126】
阻害アプタマーの二次構造の喪失は、ポリメラーゼへの結合及び阻害を維持するアプタマーの能力の低下をもたらし得るが、温度の上昇によるポリメラーゼからの解離は、アプタマーの一次配列及びアプタマーとポリメラーゼの間のインターフェース等他の因子に依存し得る。従って、約50℃、45℃、44℃、43℃、42℃、41℃、40℃、39℃、又は38℃より低い温度で熱安定性ポリメラーゼ活性を阻害、低減、又は除去するアプタマーが企図され、記載される。いくつかの実施形態では、アプタマー及びポリメラーゼは、溶液中でpHが約6~8、6~9、7~8、7~9、又は8~9である。
【0127】
熱安定性ポリメラーゼのポリメラーゼ活性を阻害、低減、又は除去するアプタマーの能力は、様々な温度でアプタマーの存在又は不在下でポリメラーゼ活性を測定するアッセイを使用して測定及び定量され得る。いくつかの代替の方法が、温度依存的な方法でポリメラーゼ活性を阻害するアプタマーの能力を測定するために使用され、そのいくつかのみが本明細書に簡潔に記載されることが理解される。
【0128】
熱安定性ポリメラーゼの活性に対するアプタマーの阻害効果を測定する1つの方法は、以下の実施例3に説明され、Nikiforovら、2011、Analytical Biochemistry、412:229~236頁に更に記載される。特に、蛍光標識(例えば、フルオレセイン(FAM;5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[N-((3',6'-ジピバロイルフルオレセイニル)-アミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソピロピル)]-ホスホラミダイト)dT残基)が3'端付近(例えば、オリゴヌクレオチド基質の3'端から2、3、4、又は5塩基離れた)に組み込まれるヘアピン鋳型が提供される。PCR反応混合物(例えば、50mM Tris-HCl、pH8.3、50mM NaCl、5mM MgCl2、及び2 μLの2mM dATP)にポリメラーゼ調製物が添加され、ここでは、ポリメラーゼは阻害剤アプタマーの存在又は不在下である。ポリメラーゼと阻害剤アプタマーの両方を含むいくつかの実施形態では、約0.8μM ポリメラーゼが8μM アプタマーと混合される(1:10比)。他の実施形態では、ポリメラーゼ/アプタマー比は約1:5~1:15又は約1:5若しくは1:15である。標識されたヘアピン基質を含有するPCR反応混合物へのポリメラーゼの添加後、反応は約25℃から75℃に加熱され、FAMシグナルが標準解離曲線プログラム(例えば、Mx3005P、Agilent Technologies社)を使用して測定され、ポリメラーゼが活性化される温度、及びポリメラーゼがアプタマーによって阻害されるよりも低い温度を決定する。
【0129】
アプタマーの存在及び不在下で熱安定性ポリメラーゼ活性を測定する別の方法は、ステム及びループを有するヘアピン構造を形成するポリメラーゼのためのオリゴヌクレオチド基質の使用を含み、ここでステムは3'端で終止する長い一本鎖部分を有する。クエンチャー(例えば、N,N'-テトラメチル-ローダミン、TAMRA)は、ループの5'端付近のステムに結合し、蛍光色素(例えば、カルボキシフルオレセイン、FAM)はループの3'端付近のステムに結合する。オリゴヌクレオチドプライマーが添加されてステムの一本鎖部分の3'端にアニールされ、伸長されてポリメラーゼにより相補的な鎖を合成するまで、アプタマー基質がその予測される折りたたまれた構造である場合、クエンチャーによる共鳴エネルギー転位により色素の蛍光はクエンチされ、ループの開放及びクエンチャー及び色素の空間分離をもたらす。ポリメラーゼ及びアプタマーは、少なくともヌクレオチド三リン酸、二価の金属陽イオン、適切な緩衝液及びプライマーを含む適切な試薬の溶液中で混合され、ポリメラーゼ活性に比例する割合で増加する蛍光により、蛍光が経時的に測定される。酵素的なDNA合成の動態は、基質濃度にミカエリスメンテン依存性を示す。従って、様々なアプタマーの阻害プロファイルは、増加した量のアプタマーの存在下で一連のポリメラーゼ反応を実行することにより生成され得る。得られたデータは、各アプタマーのIC50値を決定するために使用され得る(Summerer and Marx、Angew Chem Int、2002、41:3620~3622頁)。更に、各アプタマーのIC50値は温度範囲にわたって決定され得る。
【0130】
本明細書に記載のように温度依存的な形で熱安定性ポリメラーゼを阻害するアプタマーの能力を測定する第3の代替の方法は、その5'端を32P-γ-ATPで標識され、オリゴヌクレオチドの5'部分(例えば12~24ヌクレオチド)が二本鎖ステム及び小さいループに続く一本鎖であるヘアピンを形成する鋳型オリゴヌクレオチドDNA分子を使用することによる。上記のように、熱安定性ポリメラーゼは本明細書に記載のように様々な濃度のアプタマーとインキュベートされ、次いで基質及び標準的なPCR反応混合物に添加され、PCR反応は異なる温度(例えば、25℃~75℃)で一定時間(例えば、45分~1時間)進行され、EDTAの添加によって停止され、次いでポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して分離された。標準的なホスフォイメージャー検出及び定量方法は、ポリメラーゼが活性であり(所与の温度でアプタマーによって阻害されない)、ヘアピン基質の3'端が放射線標識及び検出される長い産物を形成するために伸長される場合のみ、ポリメラーゼ活性レベルを決定するために使用され得る。上記のアッセイのように、所与の温度での各アプタマーのIC50は定量及び分析によって決定され得る。
【0131】
非特異的な産物生成を減少し得るホットスタートポリメラーゼ適用のための本明細書に記載のアプタマーの使用は、温度によりポリメラーゼから解離するアプタマーの能力による。従って、アプタマーを含有する反応混合物及びポリメラーゼが少なくとも約45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、又は80℃の温度に上昇される場合、本開示に記載のアプタマーは熱安定性ポリメラーゼから解離する。ポリメラーゼの阻害の喪失がポリメラーゼからのアプタマー解離の適当な指標であるため、他の実施形態では、アプタマー及びポリメラーゼを含有する反応混合物が少なくとも約45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、又は80℃の温度に上昇される場合、本開示の可逆的な阻害アプタマーは熱安定性ポリメラーゼ活性を阻害しない。アプタマーがもはやポリメラーゼ活性を阻害しない上記の温度は、配列、組成物、及びポリメラーゼを含む溶液中のアプタマーの固有の構造に依存することが理解される。従って、本明細書に記載の任意のアプタマー配列は、特定の温度で又は特定の温度より高い温度でのそのポリメラーゼ活性阻害の欠如によって更に特徴付けられ、又は定義され得る。
【0132】
更に、本明細書に記載される任意のアプタマー配列及び予測される構造は、特定の温度で又は特定の温度より低い温度でポリメラーゼ活性を阻害するその能力によって更に特徴付けられ、又は定義され得る。いくつかの実施形態では、約25℃、30℃、又は35℃の温度で又はそれより低い温度でアプタマーの不在下でのポリメラーゼ活性に対して95%~100%、98%~100%、又は約100%、アプタマーはポリメラーゼを阻害する。アプタマー及びポリメラーゼを含有する混合物の温度が上昇されると、対応する阻害の喪失が起こり得る。実験的な研究は、約95%~100%のポリメラーゼ活性の実質的に全ての阻害の喪失への移行は、約4℃~10℃、又は5℃~7℃の範囲の温度にわたって起こり得ることを示す。本明細書に記載のようにアプタマーによるポリメラーゼ活性の阻害はまた、混合物中のアプタマー及びポリメラーゼの濃度により、又はアプタマー:ポリメラーゼの比により影響され得る。例えば、アプタマーが約100nM~1000nM、100nM~500nM、25nM~750nM、500nM~1000nMの濃度で混合物中に存在する場合、アプタマーはポリメラーゼ活性を阻害する際に有効である。記載したアプタマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び逆転写酵素を含む熱安定性ポリメラーゼを可逆的に阻害するのに有用である。
【0133】
本明細書で提供されるアプタマーの、周囲温度又はポリメラーゼ活性に最適な温度より低い温度でポリメラーゼ活性を阻害する能力は、少なくともこれらの低い温度で生成される非特異的産物の減少又は除去が起こり得るために有益である。少なくとも実施例4及び5並びに
図4~5に示すように、アプタマーの使用は、非特異的産物の生成を減少し、標的アンプリコンの産生を増加し得る。
【0134】
適用
上記のように、本開示のアプタマーは周囲温度又は様々な熱安定性ポリメラーゼの最適な温度より低い温度で熱安定性ポリメラーゼを可逆的に阻害する能力を有する。従って、これらのアプタマーは、熱安定性ヌクレオチドポリメラーゼが使用され、低い温度ではポリメラーゼ活性が遮断されるが、次いで高い温度ではその活性を回復することができる(ホットスタート)ポリメラーゼ活性を有することが望ましい任意の適用に容易に適用され得る。そのような適用としては、限定はされないが、標準的なPCR、逆転写酵素PCR、in-situ PCR、定量的PCR、及びミニシーケンシング又は熱安定性ポリメラーゼが存在し、ホットスタート法が有益であるプライマー伸長を含む他の反応が挙げられる。そのような方法は当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、開示された組成物によって提供される感度及び特異性の増加は、医学的遺伝子研究及び診断、病原体検出、法医学分析、並びに動物及び植物遺伝学の適用におけるDNA及びRNAの増幅及び分析中に有用である。本開示の方法及び組成物は、40℃と80℃の間のどこかでサイクルに熱安定性ポリメラーゼを必要とする任意のポリヌクレオチド合成反応において有用である。
【0135】
以下の実施例4及び実施例5は、本開示に記載のアプタマーの存在又は不在下でTaqポリメラーゼを使用して実施したPCR実験を記載する。これらの研究は、非特異的増幅産物の生成の減少並びに反応混合物中の標的アンプリコンの量の増加の両方への本明細書に記載のアプタマーの能力を実証する。実施例4は、ゲノムDNA及び2つの標的配列の増幅のための2つのプライマー対を含有するbiplex PCR反応を記載する。熱安定性ポリメラーゼの添加によるPCR反応の開始前に、Taqポリメラーゼの4つのユニットは、PCRマスターミックスにTaqを添加する前に200nMでインキュベートされた。この特定の実施形態では、約42℃の融解温度を有すると示された(実施例2)ライゲートされない(開いた)ダンベルアプタマーが使用された。蛍光シグナルの検出及び分析並びにPCR産物のゲル分析は、非特異的産物生成と標的アンプリコン産生の量の両方への効果を示す。反応混合物中の熱安定性ポリメラーゼの最適な温度より低い融解温度を有する本明細書に記載の任意のアプタマーは、標的アンプリコン生成及び検出を増強し得ることが企図される。
【0136】
実施例5は、非特異的産物及び標的アンプリコン生成におけるアプタマー:熱安定性ポリメラーゼの変化する比を調査する。約2.5:1~15:1の範囲の比を試験した。全ての比が所望の産物の生成をもたらすが、15:1の比が標的アンプリコン生成のレベルを維持しながら非特異的産物生成を低減するのに最も効果的であった。
【0137】
従って、熱安定性ポリメラーゼを使用してヌクレオチド鋳型又は基質分子にアニールされるプライマーを伸長する工程を含む方法が本明細書において企図される。当技術分野で十分に理解されているように、プライマーはヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド、dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、Mg2+又はMn2+等の二価の金属陽イオン、緩衝液、及び少なくとも1つのプライマーの存在下でポリメラーゼによって伸長される。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の阻害剤は、抗体ベースのホットスタート等他のホットスタート技術と組み合わせて使用され得る。他の実施形態では、例えば、異なる温度でポリメラーゼから解離した2つ又はそれ以上のアプタマーは単一の反応で組み合わされ得る。
【0139】
例示的な自動化及びシステム
いくつかの実施形態では、標的核酸配列がコピー又は増幅され、次いで自動の試料操作及び/又は分析プラットフォームを使用して検出される。いくつかの実施形態では、市販の自動化分析プラットフォームが利用される。例えば、いくつかの実施形態では、GeneXpert(登録商標)システム(Cepheid社、Sunnyvale、Calif.)が利用される。
【0140】
本開示は、GeneXpertシステムによる使用のために示す。例示的な試料調製及び分析方法を以下に記載する。しかしながら、本開示は、特定の検出方法又は分析プラットフォームに限定されない。当業者は、任意の数のプラットフォーム及び方法が利用され得ることを理解する。
【0141】
GeneXpert(登録商標)は、自己完結型の、単回使用のカートリッジを利用する。試料抽出、増幅、及び検出は全て、自己完結型の「カートリッジ内実験室」内で行われ得る。(例えば、米国特許第5,958,349号、第6,403,037号、第6,440,725号、第6,783,736号、第6,818,185号参照;それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。)
【0142】
カートリッジの成分は、限定はされないが、抽出、生成、及び増幅標的核酸に有用な試薬、フィルター、及び捕捉技術を含有する処理チャンバーを含む。バルブは、チャンバーからチャンバーへの液体の移行を可能にし、核酸溶解液及び濾過成分を含有する。光学窓は、リアルタイムの光学的検出を可能にする。反応チューブは非常に速い熱サイクルを可能にする。
【0143】
いくつかの実施形態では、GeneXpert(登録商標)システムは、スケーラビリティーのための複数のモジュールを含む。各モジュールは、試料操作及び分析部品とともに複数のカートリッジを含む。
【0144】
試料がカートリッジに添加された後、試料は溶解緩衝液と接触され、放出されたDNAは、シリカ又はガラス基質等DNA結合基質に結合する。次いで試料の上澄み液が除去され、DNAはTris/EDTA緩衝液等溶出緩衝液に溶出される。次いで溶出物はカートリッジ内で処理され、本明細書に記載のように標的遺伝子を検出する。いくつかの実施形態では、溶出物は、少なくともいくつかのPCR試薬を再構築するために使用され、それは凍結乾燥粒子としてカートリッジに存在する。
【0145】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列及び/又はゲノムコピー数を示す核酸配列の存在を増幅及び検出するためにPCRが使用される。いくつかの実施形態では、PCRは本明細書で提供するアプタマーの使用によってホットスタート機能を付与されたTaqポリメラーゼを使用する。
【0146】
キット
固体、半固体、又は液体の生物試料中に存在する核酸標的配列を検出するキットも提供される。キットは、本明細書に記載のように熱安定性ポリメラーゼ及びポリメラーゼの活性を可逆的に阻害し得るアプタマーを含む試薬混合物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、任意の標的核酸の検出、定量、又はシーケンシングに使用され得る。代わりに、キットは、当技術分野で通例であるように、特定の標的核酸に特異的にハイブリダイズし、標識されたプライマー及び/又はプローブも含み得る1つ又は複数のオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、フォワード及び/又はリバースプライマー)を含む。
【0147】
キットは、生物試料を得、それを試料緩衝液と接触させるため、試料緩衝液と試料を混合し、標識を装置上に置き、関連する試験データを記録するため、装置を輸送するため等の説明書を含み得る。キットは、アッセイの結果を読み取り解釈するための説明書を含み得る。キットは更に、検体試料による試験結果と比較するために使用され得る参照試料を含み得る。
【実施例】
【0148】
(実施例1)
オリゴヌクレオチド合成及びライゲーション
本明細書に記載のアプタマーは、標準的なオリゴヌクレオチド合成方法を使用して合成された。オリゴヌクレオチド合成はMerMade 12 DNA Synthesizer(BioAutomation社)で実施された。標準的なホスホロアミダイト合成サイクルが使用され、結合時間は、修飾ホスホロアミダイトでは360秒に増加された。固体支持体からの開裂及び脱保護は、24時間室温の濃縮した水性アンモニア中で行われた。HPLC分析は、第四ポンプ、オートサンプラー、及びダイオードアレイ検出器を備えたAgilent1100装置で実施された。オリゴヌクレオチドは、直線勾配のアセトニトリル/0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム、pH7: DMT-onオリゴヌクレオチドは20分間にわたり16~23%アセトニトリル及びDMT基を除いた(DMT-off)オリゴヌクレオチドは7~14%アセトニトリルによって溶出する、C18 Geminiカラム(4.6mm×250mm、5um、Phenomenex社)の逆相HPLC(RP HPLC)を使用して分析された。DMT-onオリゴヌクレオチドは逆相HPLCを使用して精製され、DMT基は開裂され、最終オリゴヌクレオチド産物はエタノール沈殿によって単離され、UVによって定量された。
【0149】
合成後に5'端及び/又は3'端が修飾されたいくつかのアプタマーが示される。5'リン酸化及び3'リン酸化は、(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)-2,2-(ジカルボキシメチルアミド)プロピル-1-O-サクシノイル-長鎖アルキルアミノ-CPG)(Glen Research Cat. No. 10-1901;米国特許第5,959,090号及び欧州特許第0816368号)及び(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)-2,2-ジカルボキシエチル]プロピル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホロアミダイト)(Glen Research Cat. No. 20-2903;米国特許第5,959,090号)を使用して達成された。アミノ基による5'端の修飾は、5'-アミノ-dT-CEホスホロアミダイト(Glen Research Cat. No. 10-1932)、(5'-モノメトキシトリチルアミノ-2'-デオキシチミジン、3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト)を使用して達成された。プロパンジオールスペーサーCPG(-C3)による3'端の修飾は、((1-ジメトキシトリチルオキシ-プロパンジオール-3-サクシノイル)-長鎖アルキルアミノ-CPG)(Cat. No. 20-2913)を使用して達成された。
【0150】
ライゲートされたダンベルアプタマーを産生するため、上記のように合成されたオリゴヌクレオチドは酵素的又は化学的のいずれかでライゲートされた。酵素的なライゲーションのため、1mLの50mM KCl溶液中16μM 5'-リン酸修飾オリゴヌクレオチドは加熱ブロックで5分間95℃に加熱され、電源を切ることによって同じ加熱ブロックで室温までゆっくりと冷却され、オリゴヌクレオチドのアニーリング(分子内ハイブリダイゼーション)を可能にした。900μLのアニールされたオリゴヌクレオチドは100μL T4ライゲーション緩衝液と、次いで10μL T4リガーゼ(New England BioLabs社)と混合され、16℃で終夜おいた。ライゲートされたアプタマーは、RP-HPLC法によって精製された。
【0151】
化学的にライゲートされたアプタマーを産生するため、5 mM HEPES-KOH緩衝液pH7.5及び50mM KCl中5'((アミノ)-T))-修飾オリゴヌクレオチド(220μM)は5分間95℃で変性され、続いてゆっくりと(およそ1時間)室温に冷却-アニーリングした。次いで、100μLのアニールされたオリゴヌクレオチドは66.7μL 0.1M イミダゾール-HCl(pH6.0)及び16.7mg EDC(1-エチル-e-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)と混合された。短いボルテックス及び遠心分離後、更なる266μLの0.1M イミダゾール-HCl(pH6.0)が反応に供給され、混合物は室温で終夜置いた。ライゲートされたオリゴヌクレオチドはRP-HPLCによって精製された。
【0152】
(実施例2)
融解温度(Tm)決定
UV-融解曲線分析が、上記の実施例1に従って生成された様々なアプタマーに関して実施された。オリゴヌクレオチドは緩衝液(3mM MgCl2、15 KCl、25mM HEPES、pH8.0)中1μMの濃度で調製され、Agilent Technologies Cary 4000 Series UV-Vis-NIR分光光度計及び製造業者の指示による関連ソフトウェアを使用して分析された。結果は以下のTable 5(表5)に示す。予想通り、ライゲートされていないダンベルアプタマーのTmは、ライゲートされたダンベルアプタマーのTmよりも低い。
【0153】
【0154】
(実施例3)
ポリメラーゼ阻害
温度の関数として本明細書に記載されたアプタマーの阻害活性を測定するために研究を行った。アプタマーの存在下でのTaqポリメラーゼのポリメラーゼ活性は、以下の修飾を伴う当技術分野で記載される方法(Nikiforov T.、Analytical Biochemistry、412:229~236頁(2011))によりアッセイされる。本発明のアプタマーは、上記周囲温度でTaqポリメラーゼ活性を阻害するため、ヘアピン基質の構造が修飾されそのTmが上昇する。Xが蛍光dT残基を示すヘアピン基質TTTTTTTGCAGGTGACAGGCGCGAAGCGCCTGTCACCXGC(配列番号6)がアッセイで使用される。50mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM MgCl2、及びTaqポリメラーゼ中150nMのヘアピン基質の溶液に、2μLの2mM dATPが添加され、反応混合物が標準的な解離曲線プログラム(Mx3005P、Agilent社)を使用して25℃から74℃に加熱される間にFAMシグナルがモニターされる。アッセイはアプタマーの可逆的な阻害活性を測定し、それによりポリメラーゼ活性は反応混合物の加熱により回復される。阻害が喪失する温度は、配列及びアプタマーの構造に依存する。
【0155】
(実施例4)
ホットスタート活性
本明細書に記載のように設計されたアプタマーの、PCR反応における非特異的産物生成を低減する能力を試験するため、ベータグロビン遺伝子の2つの領域が検出され、Eva-Greenを使用するPCR後融解曲線分析に続くヒトゲノムbiplex PCR増幅アッセイが実施された。2つのプライマー対は、配列: AAAAGGCATTCCTGAAGCTGACAGCATTC (配列番号7、フォワードプライマー1)及びGAGAGAGTAGCGCGAGCACAGCTA(配列番号8、リバースプライマー1);並びにAAAACCTGCCTTCTGCGTGAGATTCT(配列番号9、フォワードプライマー2)及びCTGTACGAAAAGACCACAGGGCCCAT(配列番号10、リバースプライマー2)を有する。PCRマスターミックスは室温で調製され、100μM dNTPs、5mM MgCl2、25mM HEPES、pH8.5、×1 EvaGreen(登録商標)(1×濃度)、ヒトゲノムDNA(1000コピー/反応)、0.30% Tween 20、及び1mg/mL BSAを含有した。4u Taq DNAポリメラーゼ(GMP Taq、Roche Diagnostics社)は0.25μ/μL調製物から各反応に添加された。CAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTGCAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTG-C3(配列番号106)を含むアプタマーは、200nMの濃度で選択された反応に添加された。反応は、Taq又はTaqプラスアプタマーの添加によって開始された。アプタマーが反応中でインキュベートされた場合、Taq及びアプタマーは、PCRマスターミックスへの添加の直前に室温で予混合された。PCR反応を実行及び分析するためにStratagene Mx3005P 96ウェルプレートシステム(Agilent Technologies社)が使用された。サイクル条件は以下の通りであり: 95℃100秒、95℃8秒と68℃30秒の45サイクル、次いで95℃10秒、60℃30秒、20分間にわたる60℃から95℃での融解曲線分析で終結した。
【0156】
産物生成が、蛍光対サイクル数の増加によって測定される結果は(
図4A及び
図4B)、アプタマーの存在(
図4B)がアプタマーの不在(
図4A)と比較してより高い産物生成をもたらしたことを示す。融解曲線分析(
図5A及び
図5B)は、ベータグロビンアンプリコンに対応する2つの特異的なバンドは、アプタマー有り及び無しの両方での反応において検出されたが、Taqポリメラーゼを欠如する反応では検出されなかったことを示す。更に、
図5A及び
図5Bは、アプタマーの不在下で実行された反応と比較した場合、Taqポリメラーゼ及びアプタマーを含有する反応における非特異的産物の生成の著しい減少を実証する。データは、特異的なベータ-グロブリンアンプリコンの量は、Taqとアプタマー両方を含有する反応ではより高かったことを示す。(レーン1:分子量マーカー;bp値は、ゲル画像の左及び右に対応する;レーン2、3、6、7、8、9:PCRマスターミックス無しのTaq及びアプタマーのみ;レーン4、10、11: Taq有りアプタマー無しのPCRマスターミックス:レーン5、12、13:Taq及びアプタマー有りのPCRマスターミックス。)
【0157】
(実施例5)
ホットスタートPCR
本明細書に記載のように、アプタマーはポリメラーゼに最適な反応温度より低い温度でポリメラーゼ活性を可逆的に阻害することができる。Xpert(登録商標) C. difficile/Epi Assay(Cepheid社)を使用して、アプタマー:Taq(サーマス・アクウァーティクスDNAポリメラーゼ)比の変更の効果を評価するために研究を行い、標的産物及び非特異的標的産物生成に関して最適なアプタマー:Taq比を決定した。本実施例で使用したアプタマーは、配列番号106(CAAAATAATTCTTAGCGTTTTTATTTTGCAATTATATTCTTAGCGTTTTATAATTG-C3)として本明細書に記載のアプタマーであり、実施例1に記載のようにプロパンジオールスペーサーCPGによってその3'端を修飾された。
【0158】
ヒト糞便バックグラウンドマトリックス中の3つの濃度(275、92、又は23CFU/試験)の生きたクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)細胞がアッセイに使用された。実験の日に調製された全て湿ったマスターミックスによりGeneXpert(登録商標)装置の開いたカートリッジ中で実験は実行された。48ユニットのTaqポリメラーゼが各反応中で使用され、AptaTaq(登録商標)対照(Roche Diagnostics社)と並行して実行された。アプタマー:Taqの全ての溶液は10%グリセロール中で保存された。2.5:1、5:1、10:1、及び15:1のアプタマー:Taq比が試験された。各条件につき8回繰り返し実行した。GeneXpert(登録商標)の実行の終わりに、アンプリコンがカートリッジのPCRチューブから回収され、2100 Agilent Bioanalyzer(Agilent Technologies社)によってAgilent DNA 1000チップで評価した。1×LoD(92CFU/試験と等価)試料のみが選択され、Agilentシステムで2回評価された。
【0159】
対象とする標的のアンプリコン長は以下の通りである:toxin B(tcdB)は81bp、ヌクレオチド117欠損のtcdCは91bp、SPC(試料処理対照)は133bp及びバイナリートキシン(cdt)は143bp。210bpの非特異的なバンドが、試験した全ての反応混合物で観察されたが、アプタマー:Taq比15:1で最も薄かった。210bp及び400bpの非特異的なバンドは、アプタマー:Taq比2.5:1で最も顕著であった(データは示さない)。
【0160】
更に、非特異的結合の量が減少するとバイナリートキシンエンドポイントが増加する(データは示さない)。最も少ないバイナリートキシンエンドポイントは、アプタマー:Taq比が2.5:1で観察された。最も高いバイナリートキシンエンドポイントは、アプタマー:Taq比が15:1で観察された。これは、非特異的増幅が制限された場合に、より標的バイナリートキシン産物が作成されたことを示す。この研究の結果は、配列番号106を含むアプタマーでは、15:1のアプタマー:Taq比が、サーマス・アクウァーティクスDNAポリメラーゼを使用するホットスタートPCR法に最適であることを示す。
【配列表】