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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220719BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20220719BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20220719BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20220719BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20220719BHJP
   B01F 23/2326 20220101ALI20220719BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20220719BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20220719BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C02F1/44 C
C02F1/44 A
C02F1/44 D
B01D61/58
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/52 K
C02F1/20 A
C02F9/02
C02F9/04
B01J49/53
B01F21/00
B01F23/2326
B01F25/30
B01D61/00
B01D19/00 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019017982
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020124668
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】今 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 健介
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-070933(JP,A)
【文献】特開2003-300069(JP,A)
【文献】特開平09-155344(JP,A)
【文献】特開2001-347140(JP,A)
【文献】特開2016-137447(JP,A)
【文献】特開平11-197649(JP,A)
【文献】特開2017-064600(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053700(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/002309(WO,A1)
【文献】特開平10-244259(JP,A)
【文献】特開平11-221579(JP,A)
【文献】特開2006-181445(JP,A)
【文献】特開2014-233699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0150834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
C02F 1/42
C02F 1/52
C02F 1/20
C02F 9/00-9/14
B01D 61/00-71/82
B01D 19/00
B01J 49/53
B01F 21/00
B01F 23/2326
B01F 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水からアルカリ土類金属を回収して、軟水化された前記被処理水である被軟水化水を得る軟水化処理ユニットと、
第1の運転圧で脱塩処理を行い、前記被軟水化水を、第1の脱塩水及び第1の濃縮水に分離する第1分離ユニットと、
前記第1の運転圧よりも高い第2の運転圧で脱塩処理を行い、前記第1の濃縮水を、第2の脱塩水及び第2の濃縮水に分離する第2分離ユニットと、
前記アルカリ土類金属の回収に使用されたカチオン交換樹脂の再生処理に使用された再生液と前記第2の濃縮水との混合液に対して凝集沈殿処理を行い、シリカ成分を含む凝集沈殿物を生成させる凝集沈殿ユニットと、
前記第2の運転圧よりも高い第3の運転圧で脱塩処理を行い、前記凝集沈殿物が除去された前記混合液を、第3の脱塩水及び第3の濃縮水に分離する第3分離ユニットとを備える、水処理システム。
【請求項2】
前記再生液は、前記カチオン交換樹脂によって回収されたアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記軟水化処理ユニットと前記第1分離ユニットとの間に介挿され、前記軟水化処理ユニットによって得られた被軟水化水に対してpH調整剤を添加し、前記第1分離ユニットによって脱塩処理される前記被軟水化水を、pHが所定値以上のアルカリ性にする調整ユニットをさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記第2分離ユニットによって脱塩処理される前記第1の濃縮水を加熱する加熱部をさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記第2分離ユニットによって分離された前記第2の濃縮水の一部を回収し、前記第1の濃縮水と混合させて、前記第2分離ユニットに供給するポンプをさらに備え、
前記ポンプの動力熱が、前記第1の濃縮水及び前記回収された前記第2の濃縮水を加熱することによって、前記ポンプが前記加熱部として機能する、請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記軟水化処理ユニットは、前記カチオン交換樹脂として、強酸性カチオン交換樹脂及び弱酸性カチオン交換樹脂を用いて、前記被処理水から、前記強酸性カチオン交換樹脂によって、第1のアルカリ土類金属を回収し、次に、前記弱酸性カチオン交換樹脂によって、前記第1のアルカリ土類金属よりも低いイオン選択性を有する第2のアルカリ土類金属を回収する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記再生液は、前記弱酸性カチオン交換樹脂によって回収された第2のアルカリ土類金属を含む、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記第1のアルカリ土類金属は、カルシウムであり、前記第2のアルカリ土類金属は、マグネシウムである、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記軟水化処理ユニットと前記調整ユニットとの間に介挿され、前記軟水化処理ユニットによって得られた前記被軟水化水に対して脱気処理を行い、脱気された前記被軟水化水を、前記調整ユニットへ供給する脱気装置をさらに備える、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記第1の脱塩水、前記第2の脱塩水、及び前記第3の脱塩水が混合された脱塩水を、第4の脱塩水及び第4の濃縮水に分離する第4分離ユニットと、
前記脱気装置によって前記被軟水化水から脱気されたガスを、前記第4の濃縮水と混合し減圧して、前記第4の濃縮水中にバブルを生成し、前記バブルを含む前記第4の濃縮水を、前記調整ユニットへ供給するバブル生成ユニットとをさらに備える、請求項9に記載の水処理システム。
【請求項11】
前記第1の脱塩水、前記第2の脱塩水、及び前記第3の脱塩水が混合された脱塩水を、第4の脱塩水及び第4の濃縮水に分離する第4分離ユニットと、
前記第4の濃縮水を減圧して、前記第4の濃縮水に溶存している気体からバブルを生成し、前記バブルを含む前記第4の濃縮水を、前記調整ユニットへ供給するバブル生成ユニットとをさらに備える、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項12】
前記バブル生成ユニットは、空気を取り込む機能を備え、前記第4の濃縮水に溶存している気体からバブルを生成することに加えて、前記機能によって取り込まれた空気を、前記第4の濃縮水と混合し減圧することによってもバブルを生成する、請求項11に記載の水処理システム。
【請求項13】
被処理水からアルカリ土類金属を回収して、軟水化された前記被処理水である被軟水化水を得ることと、
第1の運転圧で脱塩処理を行い、前記被軟水化水を、第1の脱塩水及び第1の濃縮水に分離することと、
前記第1の運転圧よりも高い第2の運転圧で脱塩処理を行い、前記第1の濃縮水を、第2の脱塩水及び第2の濃縮水に分離することと、
前記アルカリ土類金属の回収に使用されたカチオン交換樹脂の再生処理に使用された再生液と前記第2の濃縮水との混合液に対して凝集沈殿処理を行い、シリカ成分を含む凝集沈殿物を生成させることと、
前記第2の運転圧よりも高い第3の運転圧で脱塩処理を行い、前記凝集沈殿物が除去された前記混合液を、第3の脱塩水及び第3の濃縮水に分離することとを含む、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健全な水循環を実現するための法規制が強化されている。ZLD(Zero Liquid Discharge)は、水質汚染リスクの低減、廃水の再生、及び再利用の視点から、工場内で水を再生して利用すると共に、さらに工場から外部に出される排水をゼロにまで低減することで水環境保全を図るコンセプトである。
【0003】
排水をゼロまで低減するためには、最終的には蒸発法で固形分と脱イオン水に分離する必要がある。蒸発法は、廃水を加熱して水蒸気を発生させて、この水蒸気を冷却して脱イオン水を得ることで、固形分と脱イオン水に分離する方法である。この方法は、2段フラッシュ蒸発法、多段フラッシュ蒸発法等が実用化されており、非常に純度の高い脱イオン水が得られるという利点を有しているが、熱源を必要とするためにエネルギー効率が悪いという欠点がある。そのため、エネルギー消費量低減の観点から、廃水の濃縮度を可能な限り高めることによって、蒸発法で処理する廃水量を極力低減することが求められている。
【0004】
これらのことから、蒸発法の前段階で、固形分を含有した濃縮廃水と真水を分離するための分離膜として逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜(以下、「RO膜」と称する)が用いられている。RO膜を適用した脱塩・濃縮システムは、RO膜に対し、被処理水を加圧導入し、RO膜を透過した水である脱イオン水と、RO膜を透過せず、濃縮された濃縮水とを得る基本プロセスから構成されている。
【0005】
RO膜は、シリカ、硬度スケール及びバイオファウリングによって目詰まりが生じる恐れがある。RO膜に目詰まりが生じると、RO膜を洗浄するために、水処理システム全体を停止する必要があるので、水処理システムの稼働率が低下する。また、想定された濃縮度まで濃縮されていない濃縮水を蒸発処理することになり、蒸発のために要する熱エネルギーが増加するため、全体的な処理コストの増加も招く。
【0006】
しかしながら、RO膜は、イオン性物質、微粒子、有機物、一部の溶存気体等ほぼ全てに対する除去効果があることや、目詰まりやトラブルが発生しない限り、再生等の不連続の工程を実施しなくてもよい等といった利点を有しているので、広く用いられている。
【0007】
RO膜を用いて廃水の濃縮率を高める方法として、廃水中の硬度成分をイオン交換樹脂等の軟水化装置で除去し、さらに脱気塔等で脱炭酸処理した後に、廃水を高pHにしてRO膜分離する方法が記載されている。この方法は、RO膜の詰まり原因の1つである硬度成分を軟水化装置で除去して、炭酸イオン成分を脱気塔で除去することで硬度スケールを抑制する。また、硬度成分や、炭酸イオン成分を除去した廃水を、シリカの少なくとも大部分がイオン状で存在するpH(pH≧10)にして、RO膜分離装置を運転することによって、シリカによるRO膜の目詰まりを抑制したものである。また、廃水を高pHにすることでバイオファウリングを抑制する効果もある。
【0008】
しかしながら、高pH条件で濃縮率を高めたRO膜運転を行うと、pHが高いほど膜劣化速度が大きく、膜分離性能が経時的に低下する。一方で、pHを下げると、溶解度が低いシリカが析出しやすくなり、シリカスケールによるRO膜の目詰りが生じ、システム稼動率が低減する。
【0009】
シリカを除去する方法として、シリカ含有水に規定濃度範囲のマグネシウム塩及び鉄塩を添加して、シリカを沈殿除去する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、マグネシウム塩を新たに添加する必要があり、薬品コストが高くなる。
【0010】
以上まとめると、水処理システムでは、廃水の蒸発のために要する熱エネルギーを低減することによってコストダウンを図ることができる。このためには、廃水の濃縮度を高めることが必須であるが、廃水の濃縮度が高くなると、一般に、シリカが析出し易くなる。シリカは、分離膜の目詰まりをもたらし、稼働率を低下させる要因となる。シリカの析出は、高アルカリ環境下では抑制されるものの、逆に高アルカリ環境下では、膜劣化速度が大きくなり、膜分離性能が低下するので、稼働率を低下させる要因となり得る。
【0011】
以上のような事情を考慮し、濃縮度の高い廃水を得るために、高アルカリ環境下において運転する場合であっても、膜分離性能の低下を抑え、高い運転稼働率及びコストダウンを実現する水処理システム及び水処理方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第6537456号明細書
【文献】国際公開第2014/136651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、濃縮度の高い廃水を得るために、高アルカリ環境下において運転する場合であっても、高い運転稼働率及びコストダウンを実現する水処理システム及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態の水処理システムは、軟水化処理ユニットと、第1分離ユニットと、第2分離ユニットと、凝集沈殿ユニットと、第3分離ユニットとを備える。軟水化処理ユニットは、被処理水からアルカリ土類金属を回収して、軟水化された被処理水である被軟水化水を得る。第1分離ユニットは、第1の運転圧で脱塩処理を行い、被軟水化水を、第1の脱塩水及び第1の濃縮水に分離する。第2分離ユニットは、第1の運転圧よりも高い第2の運転圧で脱塩処理を行い、第1の濃縮水を、第2の脱塩水及び第2の濃縮水に分離する。凝集沈殿ユニットは、アルカリ土類金属の回収に使用されたカチオン交換樹脂の再生処理に使用された再生液と第2の濃縮水との混合液に対して凝集沈殿処理を行い、シリカ成分を含む凝集沈殿物を生成させる。第3分離ユニットは、第2の運転圧よりも高い第3の運転圧で脱塩処理を行い、凝集沈殿物が除去された混合液を、第3の脱塩水及び第3の濃縮水に分離する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の水処理方法が適用された水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
図3】調整ユニットの構成例を示す概念図である。
図4】第1分離ユニットの構成例を示す概念図である。
図5】第2分離ユニットの構成例を示す概念図である。
図6】凝集沈殿ユニットの構成例を示す概念図である。
図7】第1の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャート(1/2)である。
図8】第1の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャート(2/2)である。
図9】第2の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
図11】第2の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャート(1/2)である。
図12】第2の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャート(2/2)である。
図13】第3の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
図14】第3の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
図15】第3の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
図16】第4の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
図17】第4の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
図18】第4の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、実施形態の水処理方法が適用された水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0017】
すなわち、水処理システム10は、少なくとも、軟水化処理ユニット100と、脱塩ユニット200と、熱処理装置300とを備えている。
【0018】
軟水化処理ユニット100は、強酸性カチオン交換樹脂が充填された強酸性カチオン交換樹脂塔110と、弱酸性カチオン交換樹脂が充填された弱酸性カチオン交換樹脂塔120とを備えている。
【0019】
また、脱塩ユニット200は、第1分離ユニット210と、第2分離ユニット220と、第3分離ユニット230と、凝集沈殿ユニット240とを備えている。
【0020】
軟水化処理ユニット100は、例えば工場廃水のような被処理水aから、カチオン交換樹脂を用いて、アルカリ土類金属を回収し、軟水化された被処理水である被軟水化水bを得る。具体的には、軟水化処理ユニット100は、被処理水aを、先ず強酸性カチオン交換樹脂塔110を通過させることによって、カルシウムのような第1のアルカリ土類金属を回収し、次に弱酸性カチオン交換樹脂塔120を通過させることによって、第1のアルカリ土類金属よりも低いイオン選択性を有するマグネシウムのような第2のアルカリ土類金属を回収する。
【0021】
被処理水aは、このようにアルカリ土類金属が回収されることによって、被軟水化水bとなる。被軟水化水bは、脱塩ユニット200の第1分離ユニット210へ供給される。
【0022】
一方、第1のアルカリ土類金属を回収した強酸性カチオン交換樹脂塔110には、第1のアルカリ土類金属が吸着し、第2のアルカリ土類金属を回収した弱酸性カチオン交換樹脂塔120には、第2のアルカリ土類金属が吸着する。また、強酸性カチオン交換樹脂塔110および弱酸性カチオン交換樹脂塔120には、これらアルカリ土類金属のみならず、鉄等の重金属も吸着する。このため、定期的に、強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120から、吸着したアルカリ土類金属や重金属を除去する再生処理が必要となる。このような再生処理は、強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120を、酸を用いて洗浄することによってなされる。強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120に吸着されたアルカリ土類金属は、この再生処理によって、洗浄に使用された酸性溶液である再生液cとともに、軟水化処理ユニット100から排出される。
【0023】
この再生液cは、図示しないポンプ等によって、カチオン交換樹脂再生ラインL0内を移送されることによって、脱塩ユニット200の凝集沈殿ユニット240へ供給される。なお、水処理システム10では、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0のみならず、後述するような他の多くのラインLが後述されるが、これらラインLは何れも、例えば配管である。
【0024】
再生液cは、必ずしも強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120の両方に対してなされた再生処理によって発生したものに限定されず、強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120のうちの一方に対してなされた再生処理によって得られたものであってもよい。
【0025】
第1分離ユニット210は、圧力容器211を備え、この圧力容器211内に、例えばRO膜のような分離膜213を有する脱塩膜エレメント212を配置している。そして、軟水化処理ユニット100から供給された被軟水化水bに対して、分離膜213を用いて、第1の運転圧(好適には0~3MPa程度)で脱塩処理を行い、被軟水化水bを、脱塩水d1及び濃縮水e1に分離する。濃縮水e1は、被軟水化水bよりもTDS(Total Dissolved Solid)が高く濃縮されている。濃縮水e1は、ラインL3を介して排出され、第2分離ユニット220へ供給される。一方、脱塩水d1は、ラインL4を介して排出され、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。
【0026】
第2分離ユニット220は、ポンプ227及び圧力容器221を備えており、圧力容器221内に、例えばRO膜のような分離膜223を有する脱塩膜エレメント222を配置している。
【0027】
ポンプ227は、ラインL3に設けられ、脱塩膜エレメント212から排出された濃縮水e1を、第1の運転圧よりも高い第2の運転圧(好適には3~8MPa)に昇圧して、脱塩膜エレメント222へ供給する。この際に、濃縮水e1は、ポンプ227の動力熱を受けるので、加熱された状態で脱塩膜エレメント222へ供給される。このように、ポンプ227は、濃縮水e1を脱塩膜エレメント222へ供給するための供給手段としてのみならず、脱塩膜エレメント222へ供給される濃縮水e1の昇圧及び加熱を行う昇圧・加熱手段としても寄与する。
【0028】
脱塩膜エレメント222は、濃縮水e1に対して、分離膜223を用いて、第1の運転圧よりも高い第2の運転圧(好適には3~8MPa)で脱塩処理を行い、濃縮水e1を、脱塩水d2及び濃縮水e2に分離する。脱塩水d2は、ラインL7を介して排出される。ラインL7はラインL4に接続されており、脱塩水d2はラインL4へ流入し、脱塩水d1と合流された後に、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。濃縮水e2は、濃縮水e1よりもTDSが高く濃縮されており、ラインL5を介して脱塩膜エレメント222から排出される。
【0029】
ラインL5は、凝集沈殿ユニット240へ接続されているが、ラインL5の途中には、濃縮水e2の一部を、ラインL3のポンプ227の上流側へ戻すためのラインL6も接続されている。
【0030】
このラインL6によって、脱塩膜エレメント222からの濃縮水e2は、すべてが凝集沈殿ユニット240へ供給される訳ではなく、一部がポンプ227によってラインL3に戻され、濃縮水e1と混合された後、前述したようにポンプ227によって昇圧、加熱された後に、再び脱塩膜エレメント222へ供給される。したがって、脱塩膜エレメント222へは、濃縮水e1のみならず、濃縮水e1と濃縮水e2とが混合された濃縮水もまた、前述したように、ポンプ227によって、昇圧及び加熱されながら供給される。この濃縮水は、濃縮水e1よりもTDS濃度が高いので、このように、濃縮水e2の一部をラインL3に戻すことによって、脱塩膜エレメント222へ、より高いTDS濃度の濃縮水を供給することが可能となる。
【0031】
凝集沈殿ユニット240は、凝集沈殿槽241を備えている。凝集沈殿槽241には、ラインL5を介して供給された濃縮水e2と、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0を介して供給された再生液cとが供給され、混合される。再生液cには、凝集剤として寄与するカルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属が含まれているので、濃縮水e2と再生液cとの混合液中には、シリカ成分の凝集沈殿物fが凝集沈殿する。
【0032】
凝集沈殿物fは、ドレン等によって、凝集沈殿槽241から排出される。一方、凝集沈殿物fが除去された混合液gは、凝集沈殿槽241からポンプ等によって昇圧されて、第3分離ユニット230へ供給される。
【0033】
第3分離ユニット230は、圧力容器231を備え、この圧力容器231内に、例えばRO膜のような分離膜233を有する脱塩膜エレメント232を配置している。そして、凝集沈殿槽241から供給された混合液gに対して、脱塩膜エレメント232において、分離膜233を用いて、第2の運転圧よりも高い第3の運転圧(好適には8~12MPa)で脱塩処理を行い、混合液gを、脱塩水d3及び濃縮水e3に分離する。脱塩水d3は、ラインL11を介して排出される。ラインL11はラインL4に接続されており、脱塩水d3はラインL4へ送られ、脱塩水d1及び脱塩水d2と合流された後に、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。濃縮水e3は、濃縮水e2よりもTDSが高く濃縮されており、熱処理装置300へ供給される。
【0034】
熱処理装置300は、脱塩膜エレメント232から供給された濃縮水e3を濃縮・蒸発乾燥処理することによって、濃縮水e3から、溶解性固形分である塩分h、水分i、及びガス状の揮発成分jを回収する。
【0035】
塩分hは、濃縮された廃棄物として廃棄される。水分iは再生水として、例えば、被処理水aを排出した工場に戻され、再利用される。揮発成分jは、環境に放出される。
【0036】
このような概略構成をなす水処理システム10の具体的な各実施形態について、以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、図1で示した部位と同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0037】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の水処理システムについて説明する。
【0038】
図2は、第1の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
【0039】
水処理システム11は、前処理ユニット80と、調整ユニット180とをさらに備えている点が、水処理システム10と異なる。
【0040】
前処理ユニット80は、例えば工場廃水のような被処理水aに対して、固形分除去処理、軟水化処理、及び脱気処理等を含む前処理を実施するユニットであり、例えば、固形分除去装置90と、前述した軟水化処理ユニット100と、脱気装置130とを直列に配置することによって構成される。
【0041】
固形分除去装置90、軟水化処理ユニット100、及び脱気装置130の前段にはそれぞれ、必要に応じて、図示しないポンプが設けられている。
【0042】
固形分除去装置90は、例えば、精密濾過(MF:Microfiltration)膜、限外濾過(UF:Ultrafiltration)膜、及びMBR(Membrane Bioreactor)法等の膜分離技術を用いて実現する。このような固形分除去装置90は、被処理水aを濾過し、被処理水aから固形分を除去する。固形分を除去された被処理水a1は、固形分除去装置90から、例えば軟水化処理ユニット100の前段に設けられた図示しないポンプによって、軟水化処理ユニット100へ供給される。
【0043】
軟水化処理ユニット100は、強酸性カチオン交換樹脂及び弱酸性カチオン交換樹脂を用いて、被処理水a1を軟水化する。このため、軟水化処理ユニット100は、強酸性カチオン交換樹脂が充填された強酸性カチオン交換樹脂塔110を前段に、弱酸性カチオン交換樹脂が充填された弱酸性カチオン交換樹脂塔120を後段に設置して構成される。例えば、強酸性カチオン交換樹脂としては、スルホン酸基を交換基として有するイオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂としては、カルボン酸基を交換基として有するイオン交換樹脂を使用することができる。
【0044】
このような構成により、軟水化処理ユニット100は、強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120によって、被処理水a1から、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属からなる硬度成分を除去することによって、被処理水a1を軟水化し、硬度成分の濃度が低減された被軟水化水bを得る。
【0045】
被軟水化水bは、軟水化処理ユニット100から、例えば脱気装置130の前段に設けられた図示しないポンプによって、脱気装置130へ供給される。
【0046】
なお、カチオン交換樹脂に多量のカルシウムやマグネシウム等の硬度成分や、鉄等の重金属が吸着すると、カチオン交換樹脂は飽和し、硬度成分の漏洩が生じるので、カチオン交換樹脂の再生処理を定期的に実施する必要がある。
【0047】
強酸性カチオン交換樹脂塔110の再生処理を行う場合には、強酸性カチオン交換樹脂塔110に、濃NaCl溶液を供給し、強酸性カチオン交換樹脂に吸着した硬度成分および重金属とNaを交換する。これによって、強酸性カチオン交換樹脂を再生する。
【0048】
弱酸性カチオン交換樹脂塔120の再生処理を行う場合には、弱酸性カチオン交換樹脂塔120に、塩酸溶液を供給し、弱酸性カチオン交換樹脂に吸着した硬度成分および重金属とHを交換する。これによって、弱酸性カチオン交換樹脂を再生する。なお、塩酸溶液で再生処理した後に、水酸化ナトリウム溶液を供給することで、Na型弱酸性イオン交換樹脂に再生してもよい。
【0049】
さらに、弱酸性カチオン交換樹脂塔120に塩酸を供給する。これによって、弱酸性カチオン交換樹脂塔120から排出された硬度成分を含有した再生液c(弱酸性交換樹脂再生液)が得られる。この再生液cは、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0を介して凝集沈殿ユニット240の凝集沈殿槽241に供給される。
【0050】
脱気装置130は、純水製造等で用いられる既存のものが使用可能であり、例えば、充填式脱炭酸塔、ばっ気装置、膜脱気装置、及び真空脱気装置等を用いて実現する。いずれも、脱気効率向上のため、塩酸、硫酸等の酸を被軟水化水bに添加し、被軟水化水bのpHを7以下、より好ましくは5.5以下に下げて処理を行なうことが好ましい。気液接触式の場合、G/L比(N-m/m)は5~20の範囲が好ましい。なお、脱気装置130は、公知の技術を用いて実現可能であり、適用に制限はない。
【0051】
このような脱気装置130は、被軟水化水bに対して脱気処理を行い、被軟水化水bから、例えば二酸化炭素のようなガスを脱気する。このように脱気された被軟水化水b1は、ラインL1を介して、調整ユニット180へ供給される。
【0052】
調整ユニット180は、第1分離ユニット210へ導入される被軟水化水b1のpH調整等を行うための設備である。
【0053】
図3は、調整ユニットの構成例を示す概念図である。
【0054】
図3に例示されるように、調整ユニット180は、液混和槽181と、ラインL1に設けられ、脱気装置130からの被軟水化水b1を液混和槽181へ供給するためのポンプ182と、液混和槽181へ薬液kを供給するための薬液ラインLaと、液混和槽181に貯液された被軟水化水b1の水質を測定するための水質計184と、ラインL2に設けられ、液混和槽181においてpH調整等がなされた被軟水化水b2を脱塩膜エレメント222へ供給するためのポンプ183とを備えている。
【0055】
薬液ラインLaを介して液混和槽181へ供給される薬液kは、例えば、pH調整剤、殺菌剤、スケール防止剤、バイオファウリング防止剤、及び膜洗浄剤等が挙げられる。薬液kは、例えば、水質計184により計測される水質や、脱塩ユニット200の各脱塩膜エレメント212、222、232で用いられる分離膜213、223、233の材質や性能等により使い分けられる。薬液kはさらに、定常運転時、及びメンテナンス時等に応じて使い分けることもできる。
【0056】
pH調整剤としては、例えば、苛性ソーダ(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ剤を用いることができる。このようなpH調整剤によって、調整ユニット180は、液混和槽181において、被軟水化水b1のpHを10以上、好ましくは10.5以上にする。
【0057】
水質計184は、液混和槽181においてpH調整された被軟水化水b1のpHを測定するpH計である。さらには、液混和槽181に貯液された被軟水化水b1の水位を測定する水位計や、導電率を測定する導電率計等を適宜含んでいてもよい。
【0058】
ポンプ183は、液混和槽181に貯液された被軟水化水b1のpH等の水質が、脱塩膜エレメント222へ供給されるのに適切になったことが水質計184によって検出された場合に起動される。これによって、液混和槽181において所定の水質に調整された被軟水化水b2が、ポンプ183によって、あらかじめ設定された圧力まで昇圧され、ラインL2を介して第1分離ユニット210の脱塩膜エレメント212へ供給される。
【0059】
なお、あらかじめ設定された圧力とは、脱塩膜エレメント212における分離膜213の浸透圧よりも高い圧力であり、例えば、0~3MPa程度が好適である。
【0060】
図4は、第1分離ユニットの構成例を示す概念図である。
【0061】
前述したように、第1分離ユニット210は、圧力容器211を備え、この圧力容器211内に、例えばRO膜のような分離膜213を有する脱塩膜エレメント212を配置している。図4では、一例として、第1分離ユニット210が1つの圧力容器211を備え、圧力容器211が1つの脱塩膜エレメント212を配置した例を示している。しかしながら、第1分離ユニット210が備える圧力容器211の数は、単数に限定されず、複数であってもよい。また、圧力容器211の内部に設置される脱塩膜エレメント212の数もまた、単数に限定されず、複数であってもよい。
【0062】
脱塩膜エレメント212は、内部に分離膜213を備えているとともに、1つの導入部214、及び2つの排出部215、216を備えている。
【0063】
導入部214は、ラインL2に接続されており、ラインL2を介して調整ユニット180から供給される被軟水化水b2を、脱塩膜エレメント212の内部に導入するための入口である。
【0064】
分離膜213は、例えば、スパイラル状や中空糸状等の膜を適用し、導入部214から導入された被軟水化水b2を濾過して、分離膜213を透過した脱塩水d1と、分離膜213を透過せず、TDSが濃縮された濃縮水e1とに分離する。
【0065】
排出部215は、濃縮水e1を脱塩膜エレメント212から排出するための出口であり、排出部216は、脱塩水d1を脱塩膜エレメント212から排出するための出口である。
【0066】
排出部215から排出された濃縮水e1は、排出部215に接続されたラインL3を介して、下流側の第2分離ユニット220へ向けて送液される。脱塩水d1は、排出部216から排出され、ラインL4に流入する。
【0067】
図5は、第2分離ユニットの構成例を示す概念図である。
【0068】
第2分離ユニット220もまた、第1分離ユニット210と同様に、圧力容器221を備え、圧力容器221の内部に脱塩膜エレメント222を配置している。脱塩膜エレメント222の構成は、脱塩膜エレメント212の構成と同一であり、分離膜223、導入部224、及び2つの排出部225、226はおのおの、分離膜213、導入部214、及び2つの排出部215、216に対応するので、重複説明を避ける。また、第2分離ユニット220が備える圧力容器221の数や、圧力容器221の内部に設置される脱塩膜エレメント222の数が、単数に限定されず、複数であってもよいことも、第1分離ユニット210と同様である。
【0069】
また、第2分離ユニット220は、ラインL3に設けられたポンプ227を備えている。
【0070】
ポンプ227は、ラインL3内を流れる濃縮水e1を、脱塩膜エレメント222の分離膜223の浸透圧よりも高い圧力まで昇圧して、導入部224から脱塩膜エレメント222内に供給する。この圧力は、脱塩膜エレメント212の分離膜213の浸透圧よりも高く、好適には3~8MPa程度である。また、この際に、濃縮水e1は、ポンプ227の動力熱を受けるので、加熱された状態で脱塩膜エレメント222へ供給される。このように、ポンプ227は、濃縮水e1を脱塩膜エレメント222へ供給するための供給手段としてのみならず、脱塩膜エレメント222へ供給される濃縮水e1の昇圧及び加熱を行う昇圧・加熱手段としても寄与する。
【0071】
脱塩膜エレメント222では、導入部224から導入された濃縮水e1を、分離膜223において濾過し、分離膜223を透過した脱塩水d2と、分離膜223を透過せず、TDSがさらに濃縮された濃縮水e2とに分離する。
【0072】
脱塩水d2は、排出部226から排出され、ラインL7に流入する。ラインL7はラインL4に接続されており、脱塩水d2はラインL4へ流入し、脱塩水d1と合流された後に、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。
【0073】
濃縮水e2は、排出部225から脱塩膜エレメント222外へ排出される。排出部225には、凝集沈殿ユニット240の凝集沈殿槽241に至るラインL5が接続されている。
【0074】
なお、ラインL5には、濃縮水e2の一部を、ラインL3のポンプ227の上流側へ戻すためのラインL6も接続されている。したがって、図1を用いて前述したように、脱塩膜エレメント222からの濃縮水e2は、すべてが凝集沈殿槽241へ供給される訳ではなく、ポンプ227によって、一部がラインL3に戻され、濃縮水e1と混合された後、前述したようにポンプ227によって昇圧、加熱された後に、再び脱塩膜エレメント222へ供給される。
【0075】
したがって、脱塩膜エレメント222へは、濃縮水e1のみならず、濃縮水e1及び濃縮水e2が混合された濃縮水もまた、ポンプ227によって、昇圧及び加熱されながら供給される。このような構成によって、脱塩膜エレメント222へ、よりTDS濃度の高い濃縮水を供給することが可能となる。
【0076】
図6は、凝集沈殿ユニットの構成例を示す概念図である。
【0077】
凝集沈殿ユニット240は、凝集沈殿槽241と、水質計242と、ポンプ243と、薬液ラインLbとを備えている。
【0078】
凝集沈殿槽241には、ラインL5を介して、脱塩膜エレメント222から濃縮水e2が供給される。また、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0を介して、軟水化処理ユニット100から再生液cが供給される。これによって、凝集沈殿槽241では、濃縮水e2と再生液cとが混合され、混合液として貯液される。
【0079】
凝集沈殿槽241にはさらに、薬液ラインLbを介して、薬液mが供給される。薬液mとしては、例えば、苛性ソーダ、水酸化カリウム等のアルカリ剤や、塩酸等の酸剤等といったpH調整剤が挙げられる。これによって、凝集沈殿槽241において、混合液のpHは、シリカが効率良く沈殿するpH、好ましくはpH8~10.5に調整される。
【0080】
前述したように、再生液cには、凝集剤として寄与するカルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属が含まれていることに加えて、このようなpH調整がなされることによって、混合液中において、シリカ成分の凝集沈殿物fが凝集沈殿する。なお、温度が高いほど、シリカ成分の凝集沈殿は、促進される。前述したように、ポンプ227は、加熱手段としても寄与しているので、ポンプ227による加熱効果によって、凝集沈殿槽241に貯液された混合液において、シリカ成分が、より効率良く沈殿するようになる。凝集沈殿物fは、ドレン配管L8を介して、凝集沈殿槽241から排出される。
【0081】
水質計242は、混合液のpHを測定するpH計である。水質計242はさらに、凝集沈殿槽241に貯液されている混合液の水位を測定する水位計や、導電率を測定する導電率計等を含んでいてもよい。
【0082】
ポンプ243は、第3分離ユニット230の脱塩膜エレメント232に至るラインL9に設けられており、水質計242による測定結果に応じて起動される。例えば、ポンプ243は、水質計242によって測定されたpHの値が、脱塩膜エレメント232へ供給されるのに適切な値となった場合に起動される。これによって、ポンプ243は、凝集沈殿物fが除去された混合液gを、あらかじめ設定された圧力へ昇圧しながら脱塩膜エレメント232へ供給する。
【0083】
なお、あらかじめ設定された圧力とは、脱塩膜エレメント232における分離膜233の浸透圧よりも高い圧力である。この圧力は、脱塩膜エレメント222の分離膜223の浸透圧よりも高く、例えば、8~12MPa程度が好適である。
【0084】
第3分離ユニット230もまた、第1分離ユニット210と同様に、圧力容器231を備え、圧力容器231の内部に脱塩膜エレメント232を配置している。脱塩膜エレメント232の構成は、脱塩膜エレメント212の構成と同一であり、分離膜213に対応する分離膜233の他、導入部214及び2つの排出部215、216に対応する導入部及び2つの排出部も同様に備えた構成であるので、重複説明を避ける。また、第3分離ユニット230が備える圧力容器231の数や、圧力容器231の内部に設置される脱塩膜エレメント232の数が、単数に限定されず、複数であってもよいことも、第1分離ユニット210と同様である。
【0085】
脱塩膜エレメント232は、凝集沈殿ユニット240からラインL9を介して供給された混合液gを、分離膜233を用いて、脱塩水d3及び濃縮水e3に分離する。濃縮水e3は、濃縮水e2よりもさらにTDS濃度が高い。
【0086】
脱塩水d3は、脱塩膜エレメント232から排出され、ラインL11に流入する。ラインL11はラインL4に接続されており、脱塩水d3はラインL4に流入し、脱塩水d1及び脱塩水d2と合流された後に、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。
【0087】
一方、濃縮水e3は、ラインL10に設けられたポンプ(図示せず)によって、ライン10を介して、熱処理装置300へ供給される。
【0088】
熱処理装置300は、例えば、蒸発濃縮装置、蒸発乾燥装置、及び有機物熱処理装置等を備え、熱を用いた蒸留回収、蒸発乾燥処理、焼却、及び触媒酸化等の熱処理プロセスのうち、少なくとも1つ以上の熱処理プロセスを実施する。例えば、濃縮水e3中のイオン分の主成分が、アルカノールアミン等の有機アミン類である場合、有機物熱処理装置の熱処理プロセスにより、有機物を、分離、濃縮、廃棄することができる。また、有機物熱処理装置の熱処理プロセスにより、熱処理炭素を生成し、水分を回収する。
【0089】
このように、熱処理装置300は、濃縮水e3を濃縮・蒸発乾燥処理することによって、濃縮水e3から、溶解性固形分である塩分h、水分i、及び揮発成分jを回収する。塩分hは、濃縮された廃棄物として廃棄される。水分iは再生水として、例えば、被処理水aを排出した工場に戻され、再利用される。揮発成分jは、環境に放出される。
【0090】
例えば、濃縮水e3中のイオン分の主成分が、無機イオン分である場合、熱処理装置300による濃縮・蒸発乾燥処理により、イオン分を固形状の塩分として回収することが可能となる。
【0091】
なお、熱処理装置300に、晶析装置、及び遠心分離装置等を設けてもよい。これにより、固形状の塩分の回収をより円滑に実行することが可能となる。
【0092】
次に、以上のように構成された第1の実施形態の水処理システム11の動作例について説明する。
【0093】
図7及び図8は、第1の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
【0094】
水処理システム11の動作例として、例えば工場廃水のような被処理水aが処理される場合について説明する。
【0095】
水処理システム11によって処理される被処理水aは、例えばポンプによって前処理ユニット80の固形分除去装置90へ送液され、固形分除去装置90において濾過され、固形分が除去される(S1)。固形分を除去された被処理水a1は、例えばポンプによって軟水化処理ユニット100の強酸性カチオン交換樹脂塔110へ供給される。
【0096】
強酸性カチオン交換樹脂塔110では、被処理水a1から、カルシウムのように高いイオン選択性を有するアルカリ土類金属である硬度成分が除去され、被処理水a1が軟水化される(S2)。
【0097】
軟水化された被処理水a1は、次に、弱酸性カチオン交換樹脂塔120へ供給され、弱酸性カチオン交換樹脂塔120では、マグネシウムのように、カルシウムよりも低いイオン選択性を有するアルカリ土類金属である硬度成分が除去されることによって、さらに軟水化され(S3)、被軟水化水bとして、例えばポンプによって、脱気装置130へ供給される(S4)。
【0098】
一方、ステップS2の処理によって、強酸性カチオン交換樹脂塔110には、カルシウムのようなアルカリ土類金属が吸着し、ステップS3の処理によって、弱酸性カチオン交換樹脂塔120には、マグネシウムのようなアルカリ土類金属や、鉄等の重金属が吸着している。このため、定期的に、強酸性カチオン交換樹脂塔110及び弱酸性カチオン交換樹脂塔120から、吸着したアルカリ土類金属および重金属を除去する再生処理が必要となる。
【0099】
強酸性カチオン交換樹脂塔110の再生処理を行う場合には、強酸性カチオン交換樹脂塔110に、濃NaCl溶液が供給されることによって、強酸性カチオン交換樹脂に吸着した硬度成分および重金属と、Naとが交換される。これによって、強酸性カチオン交換樹脂の再生がなされる。
【0100】
弱酸性カチオン交換樹脂塔120の再生処理を行う場合には、弱酸性カチオン交換樹脂塔120に、塩酸溶液が供給されることによって、弱酸性カチオン交換樹脂に吸着した硬度成分および重金属と、Hとが交換される。これによって、弱酸性カチオン交換樹脂の再生がなされる。
【0101】
さらに、弱酸性カチオン交換樹脂塔120に塩酸が供給される。これによって、弱酸性カチオン交換樹脂塔120から排出された硬度成分を含有した再生液c(弱酸性交換樹脂再生液)が得られる。この再生液cは、後述するステップS10で説明するように、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0を介して凝集沈殿ユニット240に供給される。
【0102】
ステップS4では、脱気装置130において、被軟水化水bに対して脱気処理が行われ、被軟水化水bから、例えば二酸化炭素のようなガスが脱気される(S4)。このように脱気された被軟水化水b1は、例えば、1000mg/Lから数1000mg/L程度のTDS濃度を有しており、ポンプ182によって、ラインL1を介して、調整ユニット180の液混和槽181へ供給される(S5)。
【0103】
液混和槽181にはまた、薬液ラインLaから、pH調整剤、殺菌剤、スケール防止剤、バイオファウリング防止剤、及び膜洗浄剤等のような薬液kも供給される。pH調整剤としては、例えば、苛性ソーダ(NaOH)や、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ剤が用いられる。このようなpH調整剤によって、液混和槽181において、被軟水化水b1のpHが、10以上、好ましくは10.5以上に調整される。
【0104】
このようにして液混和槽181においてpH調整された被軟水化水b1のpHは、水質計184によって測定される。そして、水質計184によって、pHが10以上、より好ましくは10.5以上であることが検出されると、ポンプ183が起動され、液混和槽181から、被軟水化水b2が、ポンプ183によって、あらかじめ設定された圧力まで昇圧されながら、ラインL2を介して第1分離ユニット210へ供給される(S6)。なお、あらかじめ設定された圧力とは、第1分離ユニット210の脱塩膜エレメント212における分離膜213の浸透圧よりも高い圧力であり、例えば、0~3MPa程度が好適である。
【0105】
第1分離ユニット210へ供給された被軟水化水b2は、導入部214から脱塩膜エレメント212内へ導入され、分離膜213を透過した透過水が、脱塩水d1として、排出部216から、ラインL4内へ排出される。一方、分離膜213を透過せず、TDSが濃縮された濃縮水e1が、排出部215からラインL3内へ排出される(S7)。
【0106】
ラインL3にはポンプ227が備えられており、このポンプ227によって、ラインL3内を流れる濃縮水e1が、第2分離ユニット220の脱塩膜エレメント222の分離膜223の浸透膜よりも高い圧力である、例えば3~8MPa程度まで昇圧された状態で、分離ユニット220の脱塩膜エレメント222へ供給される(S8)。
【0107】
脱塩膜エレメント222では、分離膜223を透過した透過水が、脱塩水d2として、排出部226から、ラインL7内へ排出される。一方、分離膜223を透過せず、濃縮水e1よりもさらにTDSが濃縮された濃縮水e2が、排出部225からラインL5内へ排出される(S9)。
【0108】
ラインL5は凝集沈殿ユニット240の凝集沈殿槽241に至っているが、ラインL5には、濃縮水e2の一部を、ラインL3のポンプ227の上流側へ戻すためのラインL6も接続されている。このため、排出部225から排出された濃縮水e2は、すべてが凝集沈殿槽241へ供給される訳ではなく、ポンプ227によって、一部がラインL3に戻され、濃縮水e1と混合された後、ポンプ227によって昇圧、加熱された後に、再び第2分離ユニット220の脱塩膜エレメント222へ供給され、ステップS8の処理が繰り返される。これによって、脱塩膜エレメント222へ、より高いTDS濃度の濃縮水が供給される。
【0109】
排出部225からラインL5へ排出された濃縮水e2のうち、ラインL3へ戻されなかった濃縮水e2は、凝集沈殿ユニット240の凝集沈殿槽241へ供給される。また、凝集沈殿槽241には、ステップS3で得られたカルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属である硬度成分を含有した再生液cが、カチオン交換樹脂再生液供給ラインL0を介して凝集沈殿ユニット240の凝集沈殿槽241に供給される(S10)。
【0110】
これによって、凝集沈殿槽241では、濃縮水e2と再生液cとの混合液が貯液される。
【0111】
凝集沈殿槽241にはさらに、薬液ラインLbを介して、薬液mが供給される。薬液mは、例えば、pH調整剤であり、凝集沈殿槽241にpH調整剤を供給することによって、混合液は、シリカが効率良く沈殿するpH、好ましくはpH8~10.5にpH調整される。
【0112】
前述したように、再生液cには、凝集剤として寄与するカルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属が含まれていることに加えて、このようなpH調整がなされることによって、凝集沈殿槽241において、混合液中に、シリカ成分の凝集沈殿物fが効率良く凝集沈殿する。凝集沈殿物fは、ドレン配管L8を介して、凝集沈殿槽241から排出される。
【0113】
凝集沈殿槽241から第3分離ユニット230の脱塩膜エレメント232に至るラインL9には、水質計242による測定結果に応じて起動されるポンプ243が設けられている。例えば、水質計242がpH計である場合、ポンプ243は、pH計によって測定された混合液のpHの値が、第3分離ユニット230の脱塩膜エレメント232へ供給されるのに適切な値となった場合に起動される。
【0114】
これによって、凝集沈殿物fが除去された混合液gは、ポンプ243によって、あらかじめ設定された圧力へ昇圧されながら、凝集沈殿槽241から、ラインL9を介して第3分離ユニット230へ供給される(S11)。
【0115】
なお、あらかじめ設定された圧力とは、脱塩膜エレメント232における分離膜233の浸透圧よりも高い圧力である。この圧力は、脱塩膜エレメント222の分離膜223の浸透圧よりも高く、例えば、8~12MPa程度が好適である。
【0116】
第3分離ユニット230へ供給された混合液gは、脱塩膜エレメント232へ供給され、分離膜233を透過した透過水が、脱塩水d3として、ラインL11内へ排出される。一方、分離膜233を透過せず、混合液gよりもさらにTDSが濃縮された濃縮水e3が、ライン10内へ排出され(S12)、熱処理装置300へ供給される(S13)。
【0117】
ステップS13では、熱処理装置300において、濃縮水e3に対して、例えば濃縮・蒸発乾燥処理がなされることにより、濃縮水e3から、溶解性固形分である塩分h、水分i、及び揮発成分jが回収される(S14)。
【0118】
ステップS14において回収された塩分hは、廃棄され(S15)、揮発成分jは、環境に放出され(S16)、水分iは、再生水として、例えば、被処理水aを排出した工場に戻され、再利用される(S17)。また、ステップS7で回収された脱塩水d1、ステップS9で回収された脱塩水d2、及びステップS12で回収された脱塩水d3もまた、被処理水aを排出した工場に戻され、再利用される(S17)。
【0119】
以上説明したように、水処理システム11によれば、高アルカリの環境下において分離膜を使用する場合であっても、分離膜の目詰まりの可能性を低減し、かつ膜劣化を抑制して、稼働率向上を実現することができる。
【0120】
すなわち、水処理システム11は、3つの脱塩膜エレメント212、222、232を直列に接続した構成であることにより、よりTDS濃度の高い濃縮水e3を熱処理装置300に供給することができる。
【0121】
特に、脱塩膜エレメント222からの濃縮水e2のすべてを凝集沈殿槽241へ供給するのではなく、その一部を、脱塩膜エレメント222へ再度供給することによって、脱塩膜エレメント222へ供給される濃縮水のTDS濃度を、より高めることができるので、結果的に、熱処理装置300へ供給される濃縮水e3のTDS濃度も、例えば8万mg/L以上、望ましくは10万mg/L以上のような極めて高い値とすることが可能となる。
【0122】
濃縮水e3のTDS濃度が高いほど、濃縮水e3に含まれる水分の量はより少なくなるので、熱処理装置300における濃縮・蒸発乾燥処理の際に消費される熱エネルギーを低減することが可能となる。これによって、コストダウンを図ることが可能となる。また、廃棄物の量を低減することも可能となる。
【0123】
なお、このようにTDS濃度の高い濃縮水を処理する場合、脱塩膜エレメント212、222、232における分離膜213、223、233のシリカ等による目詰まりの可能性が高くなる。
【0124】
しかしながら、水処理システム11では、固形分除去装置90において固形成分、硬度成分、及び炭酸成分等を除去していること、また、凝集沈殿槽241においてシリカ成分を沈殿除去することによって、分離膜213、223、233のシリカ等による目詰まりのリスクを低減することができる。
【0125】
特に、濃縮水e1、及び濃縮水e2の一部が、脱塩膜エレメント222へ再度供給される際に、ポンプ227による動作熱を受け加熱されるので、これら濃縮水に含まれるシリカの溶解度が上げられる。その結果、凝集沈殿槽241において、シリカ成分の凝集沈殿物fを、より多く凝縮沈殿させ、除去することができるので、分離膜213、223、233の目詰まりのリスクを低減することができる。
【0126】
このように、水処理システム11によれば、分離膜213、223、233の目詰まりや、硬度スケール析出や、シリカスケール析出の可能性が低減されるので、各脱塩膜エレメント212、222、232の長期運転が可能となり、もって、運転稼働率の向上を図ることが可能となる。
【0127】
また、凝集沈殿ユニット240における凝集沈殿物fの生成のための凝集剤として寄与するマグネシウムやカルシウム等は、軟水化処理ユニット100のカチオン交換樹脂によって回収されたものを使用しているので、マグネシウムやカルシウム等を新たに添加する必要はなくなり、薬品コストを下げることができる。
【0128】
以上のように、第1の実施形態の水処理システムによれば、分離膜を使用して、廃液を高い濃縮度まで濃縮するために、高アルカリ環境下において運転する場合であっても、分離膜の目詰まりの可能性を低く抑えることによって、運転稼働率の向上及びコストダウンを実現することが可能となる。
【0129】
次に、第2ないし第4の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、既に説明したものと同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0130】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
【0131】
水処理システム12は、水処理システム11に、第4分離ユニット400とファインバブル生成ユニット500とを付加した構成をしている。
【0132】
第4分離ユニット400は、第1分離ユニット210、第2分離ユニット220、及び第3分離ユニット230と同様に、圧力容器401を備え、この圧力容器401内に、例えばRO膜のような分離膜403を有する脱塩膜エレメント402を配置している。図9では、一例として、第4分離ユニット400が1つの圧力容器401を備え、圧力容器401が1つの脱塩膜エレメント402を配置した例を示している。しかしながら、第4分離ユニット400が備える圧力容器401の数は、単数に限定されず、複数であってもよい。また、圧力容器401の内部に設置される脱塩膜エレメント402の数もまた、単数に限定されず、複数であってもよい。
【0133】
脱塩膜エレメント402は、ラインL4に接続された導入部404を有している。
【0134】
導入部404は、ラインL4を介して供給される脱塩水d(脱塩水d1、d2、d3の混合液)を、脱塩膜エレメント402の内部に導入する。
【0135】
分離膜403は、分離膜213、223、233と同様に、例えば、スパイラル状や中空糸状等の膜を適用し、導入部404から導入された脱塩水dを濾過して、分離膜403を透過した透過水nと、分離膜403を透過せず、TDSが濃縮された濃縮水e4とに分離する。
【0136】
排出部405は、濃縮水e4を脱塩膜エレメント402から排出するための出口であり、排出部406は、透過水nを脱塩膜エレメント402から排出するための出口である。
【0137】
排出部405から排出された濃縮水e4は、排出部405に接続されたラインL12を介して、ファインバブル生成ユニット500へ供給される。排出部406から排出された透過水nは、排出部406に接続されたラインL13を介して、脱塩膜エレメント402から排出され、例えば、被処理水aを排出した工場で再利用される。
【0138】
ファインバブル生成ユニット500は、ラインL12を介して脱塩膜エレメント402から供給された濃縮水e4を減圧することによって、濃縮水e4に溶存している気体からファインバブルを生成するファインバブル生成装置501を備えている。
【0139】
図10は、第2の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
【0140】
図10は、ベンチュリー式のファインバブル生成装置501を示しており、ノズル部503を有することによって断面積の縮小及び拡大が実現されるベンチュリー管502を備えている。
【0141】
ベンチュリー管502の上流側(図中上側)は、ラインL12に接続されており、図示しないポンプによって、ラインL12からベンチュリー管502へ濃縮水e4が導入される。
【0142】
ベンチュリー管502へ導入された濃縮水e4が、ノズル部503を通過すると、急激な減圧によって、濃縮水e4に溶存している気体が膨張した気泡が生じ、続いて生じる急激な圧力回復によって気泡は微細に粉砕されてファインバブルqが発生する。
【0143】
なお、ファインバブル生成装置501は、図10に例示するようなベンチュリー式に限定されず、外部から気体を導入する図示しないエグゼクター式であってもよい。エグゼクター式では、狭い流路を高速で通過する液量によって生じる負圧を利用して、ガスを吸引し、下流における管路の拡大により生じたキャビテーションによって吸引ガスを微細に破砕することによって、ファインバブルを生成する。
【0144】
ベンチュリー管502の下流側(図中下側)は、ラインL13に接続されており、ファインバブル生成装置501で生成されたファインバブルqを含む濃縮水e4は、ラインL13を介して液混和槽181へ供給される。
【0145】
ファインバブルqは、平均径1000nm以下であり、液中安定性のみならず分離膜213、223、233、403への浸透性も高く、分離膜213、223、233、403におけるスケールやバイオファウリングを防止する効果を高める。また、ファインバブルqの表面は疎水性であり、帯電していることから、スケール防止剤、バイオファウリング防止剤、pH調整剤、殺菌剤、及び膜洗浄剤等を付着させることも容易となるので、これによって、バブル安定性のみならず分離膜213、223、233、403の浸透性を高めるとともに、スケール及びバイオファウリング防止効果を高める。
【0146】
また、スケール及びバイオファウリング防止効果は、平均径が小さいほど高くなることから、ファインバブルqの平均径は、150nm以下であることが好ましい。
【0147】
次に、以上のように構成された第2の実施形態の水処理システム12の動作例について説明する。
【0148】
図11及び図12は、第2の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
【0149】
以下では、図7及び図8と異なる点について説明する。
【0150】
ステップS7で排出された脱塩水d1、ステップS9で排出された脱塩水d2、及びステップS12で排出された脱塩水d3は、ラインL4において合流し、混合された後に、第4分離ユニット400に供給され(S20)、この混合された脱塩水は、分離膜403によって濃縮水e4及び透過水nに分離される(S21)。
【0151】
透過水nは、ステップS17において、再生水として、例えば、被処理水aを排出した工場に戻され、再利用される(S17)。
【0152】
一方、濃縮水e4は、ファインバブル生成ユニット500へ供給され、ファインバブル生成装置501において、濃縮水e4からファインバブルqが生成される(S22)。生成されたファインバブルqは、濃縮水e4とともに調整ユニット180へ供給され、液混和槽181においてステップS5の処理が行われる前に、被軟水化水b1と混合される。
【0153】
これによって、各脱塩膜エレメント212、222、232、402において処理される溶液中に、ファインバブルqが含まれるようになるので、バブル安定性のみならず分離膜213、223、233、403の浸透性を高めるとともに、スケール及びバイオファウリング防止効果を高めることが可能となる。
【0154】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
【0155】
図14は、第3の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
【0156】
第3の実施形態の水処理システム13は、第2の実施形態の水処理システム12の変形例であり、水処理システム13が備えているファインバブル生成ユニット600の構成が、水処理システム12が備えているファインバブル生成ユニット500の構成と異なる。
【0157】
図14に示すように、ファインバブル生成ユニット600は、ファインバブル生成装置501に、空気rを取り込むための空気導入ライン602をさらに備えた構成をしているファインバブル生成装置601を備えている。
【0158】
図14に例示するファインバブル生成装置601は、図10と同様にベンチュリー式のものであり、ノズル部503を有することによって断面積の縮小と拡大を有するベンチュリー管502と、ベンチュリー管502に接続され、周囲から空気rを取り込むための空気導入ライン602とを備えている。
【0159】
空気導入ライン602は、ベンチュリー管502の断面積が最小となるノズル部503よりも上流側で、ベンチュリー管502に接続されている。これによって、濃縮水e4は、空気rと混合され、空気rの気泡を含んだ状態で、ノズル部503に進入する。
【0160】
空気rの気泡を含んだ状態で濃縮水e4がノズル部503を通過すると、急激な減圧によって、空気rの気泡は膨張し、続いて生じる急激な圧力回復によって気泡は微細に粉砕されてファインバブルqが発生する。
【0161】
このような構成によって、ファインバブル生成装置601は、濃縮水e4に溶存している気体のみならず、空気導入ライン602から取り込まれた空気rを、濃縮水e4と混合し減圧することによっても、ファインバブルqを生成することができる。
【0162】
ファインバブル生成装置601によって生成されるファインバブルqもまた、ファインバブル生成装置501によって生成されるファインバブルqと同様に、平均径が1000nm以下、好ましくは150nm以下のバブルであることが好ましい。
【0163】
このように、濃縮水e4に溶存している気体が膨張した気泡のみならず、周囲から取り込んだ空気rの気泡を用いてファインバブルqを生成する構成であっても、各分離膜213、223、233、403におけるスケール析出やバイオファウリングの発生を抑制することができる。
【0164】
特に、ファインバブルqが二酸化炭素を含んでいる場合、殺菌効果や、バイオファウリング抑制効果を高めることが知られている。空気には二酸化炭素が含まれているので、ファインバブル生成装置601によって生成されたファインバブルqによって、殺菌効果や、バイオファウリング抑制効果をさらに高めることができる。
【0165】
したがって、ファインバブル生成装置601は、変形例として、ファインバブルqを生成するために、周囲から取り込んだ空気rを利用する代わりに、空気ボンベから取り込んだ空気を利用したり、二酸化炭素ボンベから取り込んだ二酸化炭素を利用してもよい。特に、二酸化炭素ボンベから取り込まれた二酸化炭素を利用して生成されたファインバブルqは、空気を利用して生成されたファインバブルqよりも、二酸化炭素含有量が高い。このため、二酸化炭素ボンベから取り込まれた二酸化炭素を利用して生成したファインバブルqによって、より高い殺菌効果、及び、より高いバイオファウリング抑制効果を実現することも可能となる。
【0166】
次に、以上のように構成された第3の実施形態の水処理システム13の動作例について説明する。
【0167】
図15及び図12は、第3の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
【0168】
以下では、図15について、図11と異なる点について説明する。図15に示す以外の処理は、既に説明した図12に示す通りであるので、重複説明を避ける。
【0169】
ステップS21において生成された濃縮水e4は、ファインバブル生成ユニット600へ供給され、ファインバブル生成装置601において、空気rが混合された濃縮水e4からファインバブルqが生成される(S31)。生成されたファインバブルqは、調整ユニット180へ供給され、液混和槽181においてステップS5の処理が行われる前に、被軟水化水b1と混合される。
【0170】
これによって、各脱塩膜エレメント212、222、232、402において処理される溶液中に、ファインバブルqが含まれるようになるので、バブル安定性のみならず分離膜213、223、233、403の浸透性を高めるとともに、スケール及びバイオファウリング防止効果を高めることも可能となる。また、二酸化炭素の効果によって、水処理システム12の場合よりも、より高い殺菌効果と、より高いバイオファウリング抑制効果とを実現することが可能となる。
【0171】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態の水処理システムの構成例を示すブロック図である。
【0172】
図17は、第4の実施形態の水処理システムに適用されるファインバブル生成装置の構成例を示す概念図である。
【0173】
第4の実施形態の水処理システム14は、第3の実施形態の水処理システム13の変形例であり、水処理システム14が備えているファインバブル生成ユニット700の構成が、水処理システム13が備えているファインバブル生成ユニット600の構成と異なる。さらに、脱気装置130において脱気された例えば二酸化炭素のような脱気ガスsを、ファインバブル生成ユニット700へ供給するためのラインL14を備えている。
【0174】
ファインバブル生成ユニット700は、図17に示すように、ファインバブル生成装置601における空気導入ライン602の代わりに、脱気ガス導入ライン702を備えたファインバブル生成装置701を備えている。脱気ガス導入ライン702はラインL14に接続されている。これによって、脱気装置130から供給された脱気ガスsが、ライン14を介して、脱気ガス導入ライン702から、ファインバブル生成装置701に供給される。
【0175】
ファインバブル生成装置701において、脱気ガス導入ライン702は、ベンチュリー管502の断面積が最小となるノズル部503よりも上流側において、ベンチュリー管502に接続されている。これによって、濃縮水e4は、脱気ガスsと混合され、脱気ガスsの気泡を含んだ状態で、ノズル部503に進入する。
【0176】
脱気ガスsの気泡を含んだ状態で濃縮水e4がノズル部503を通過すると、急激な減圧によって、脱気ガスsの気泡は膨張し、続いて生じる急激な圧力回復によって気泡は微細に粉砕されてファインバブルqが発生する。
【0177】
このような構成によって、ファインバブル生成装置701は、濃縮水e4に溶存している気体のみならず、脱気ガス導入ライン702から取り込まれた脱気ガスsを、濃縮水e4と混合し減圧することによっても、ファインバブルqを生成することができる。
【0178】
ファインバブル生成装置701によって生成されるファインバブルqもまた、平均径が1000nm以下、好ましくは150nm以下のバブルであることが好ましい。
【0179】
このように、濃縮水e4に溶存している気体が膨張した気泡のみならず、脱気装置130からの脱気ガスsの気泡を利用してファインバブルqを生成する構成であっても、各分離膜213、223、233、403におけるスケール析出やバイオファウリングの発生を抑制することができる。
【0180】
前述したように、ファインバブルqが二酸化炭素を含んでいる場合、殺菌効果や、バイオファウリング抑制効果を高めることが知られているが、脱気装置130からの脱気ガスsには、二酸化炭素も含まれている。したがって、ファインバブル生成装置701によって生成されたファインバブルqによっても、殺菌効果や、バイオファウリング抑制効果を高めることができる。
【0181】
次に、以上のように構成された第4の実施形態の水処理システム14の動作例について説明する。
【0182】
図18及び図12は、第4の実施形態の水処理システムの動作例を示すフローチャートである。
【0183】
以下では、図18について、図15と異なる点について説明する。図18に示す以外の処理は、既に説明した図12に示す通りであるので、重複説明を避ける。
【0184】
ステップS4の代わりにステップS40が実行される。ステップS40では、ステップS4と同様に、脱気装置130において、被軟水化水bに対して脱気処理が行われ、被軟水化水bから、例えば二酸化炭素のようなガスが脱気され、脱気された被軟水化水b1が調整ユニット180の液混和槽181へ供給されることに加えて、脱気されたガスである脱気ガスsがファインバブル生成ユニット700へ供給される。
【0185】
また、ステップS21において生成された濃縮水e4もまたファインバブル生成ユニット700へ供給される。
【0186】
ファインバブル生成ユニット700では、ファインバブル生成装置701において、脱気ガスsが混合された濃縮水e4からファインバブルqが生成される(S41)。生成されたファインバブルqは、調整ユニット180へ供給され、液混和槽181においてステップS5の処理が行われる前に、被軟水化水b1と混合される。
【0187】
これによって、各脱塩膜エレメント212、222、232、402において処理される溶液中に、ファインバブルqが含まれるようになるので、バブル安定性のみならず分離膜213、223、233、403の浸透性を高めるとともに、スケール及びバイオファウリング防止効果を高めることも可能となる。また、脱気ガスsにも二酸化炭素が含まれていることから、第3の実施形態で説明したように、水処理システム12の場合よりも、より高い殺菌効果、及び、より高いバイオファウリング抑制効果を実現することが可能となる。
【0188】
以上のように、第1ないし第4の実施形態の水処理システムによれば、分離膜を使用して、廃液を高い濃縮度まで濃縮するために、高アルカリ環境下において運転する場合であっても、分離膜の目詰まりの可能性を低く抑えることによって、運転稼働率の向上及びコストダウンを実現することが可能となる。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0190】
10~14・・水処理システム、80・・前処理ユニット、90・・固形分除去装置、100・・軟水化処理ユニット、110・・強酸性カチオン交換樹脂塔、120・・弱酸性カチオン交換樹脂塔、130・・脱気装置、180・・調整ユニット、181・・液混和槽、182、183・・ポンプ、184・・水質計、200・・脱塩ユニット、210・・第1分離ユニット、211・・圧力容器、212・・脱塩膜エレメント、213・・分離膜、214・・導入部、215、216・・排出部、220・・第2分離ユニット、221・・圧力容器、222・・脱塩膜エレメント、223・・分離膜、224・・導入部、225、226・・排出部、227・・ポンプ、230・・第3分離ユニット、231・・圧力容器、232・・脱塩膜エレメント、233・・分離膜、240・・凝集沈殿ユニット、241・・凝集沈殿槽、242・・水質計、243・・ポンプ、300・・熱処理装置、400・・第4分離ユニット、401・・圧力容器、402・・脱塩膜エレメント、403・・分離膜、404・・導入部、405、406・・排出部、500・・ファインバブル生成ユニット、501・・ファインバブル生成装置、502・・ベンチュリー管、503・・ノズル部、600・・ファインバブル生成ユニット、601・・ファインバブル生成装置、602・・空気導入ライン、700・・ファインバブル生成ユニット、701・・ファインバブル生成装置、702・・脱気ガス導入ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18