(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】移動体制御システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220719BHJP
【FI】
G05D1/02 K
(21)【出願番号】P 2019026649
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】清水 智得
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊一
(72)【発明者】
【氏名】郡司 雄一郎
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522064(JP,A)
【文献】特開2002-090093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、前記回転子の径方向外側に設けられ、前記回転子の軸方向の範囲で前記回転子の表面と対向するように配置された固定子と、前記回転子のうち前記固定子と対向する部分よりも軸方向外側に形成された大径部と、を備える発電機に使用され、
前記回転子の表面を走行する移動体と、
前記回転子の表面にラインレーザを照射するレーザ照射手段と、
前記移動体に設けられ、前記
回転子の表面に投影された前記ラインレーザを撮影する光学装置と、
前記回転子の表面に設置され、前記レーザ照射手段を搭載し、前記レーザ照射手段を移動させるレーザ照射手段位置決め装置と、
前記光学装置が撮影した前記ラインレーザの画像に基づいて、前記移動体の走行方向が適正かを判定する制御部と
を有し、
前記レーザ照射手段位置決め装置は、前記大径部上に設置され、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向に移動させる水平移動機構をさらに有し、昇降機構により前記レーザ照射手段を前記回転子の表面近傍に降ろすことを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記光学装置が撮影した前記ラインレーザの画像に基づいて、前記
回転子の表面に投影された前記ラインレーザを基準とした前記移動体の現在位置を求める請求項1記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記レーザ照射
手段は、前記回転子の軸方向に平行な
前記ラインレーザを照射する請求項
1記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動体の走行方向が前記ラインレーザの長手方向と一致するかを判定する請求項
3記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記光学装置が撮影した前記ラインレーザの画像に基づいて、前記回転子の軸方向における前記移動体の位置を演算する請求項
3または請求項
4に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
回転子、前記回転子の径方向外側に設けられて前記回転子の軸方向の範囲で前記回転子の表面と対向するように配置された固定子、前記回転子のうち前記固定子と対向する部分よりも軸方向外側に形成された大径部、を備える発電機に使用され、
前記回転子の表面に移動体を設置するステップと、
レーザ照射手段を搭載し、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向および径方向に移動可能なレーザ照射手段位置決め装置を前記大径部に設置するステップと、
前記レーザ照射手段位置決め装置が、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向に移動させて前記回転子と前記固定子の間の空間に移動させるステップと、
前記レーザ照射手段位置決め装置が、前記レーザ照射手段を前記回転子の径方向に移動させて前記回転子の表面近傍に位置決めするステップと、
前記レーザ照射手段が前記回転子の軸方向に沿って前記回転子の表面上にラインレーザを照射するステップと、
前記
回転子の表面上を走行するとともに前記ラインレーザを撮影する光学装置を備える
前記移動体が前記ラインレーザを撮影するステップと、
前記移動体と接続された制御部が、観測した前記ラインレーザの画像を処理し、前記移動体の走行方向が適正かを判定するステップと、
を備える移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動体の制御システムおよび移動体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無限軌道走行ロボット等の移動体にカメラが障害物を回避しながら走行して作業
を行う技術として、移動体自身に設けたカメラや周辺に設置したカメラにより、周辺環境
や移動体自身を撮影して走行するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、作業員によるアクセスや点検装置の設置が困難な狭隘部等において、検査等の
作業にあたり単に障害物を回避するだけでなくロボットの直進性の維持が求められる場合
がある。例えば、発電機における回転子表面のカメラによる画像検査や固定子表面のハン
マーによる打音検査を行うロボットは、検査対象物が軸方向に向かって一様に並んでいる
ため、発電機内を正確に直進走行することが求められる。
【0005】
発電機の回転子と固定子の間を走行するロボットを軸方向に直進させる場合に、例えば
発電機の固定子の溝に沿うガイドローラを設けて走行することが考えられる。しかし、作
業可能な範囲が溝の存在箇所に限定され、また発電機によっては固定子上にガイドローラ
の障害となる構造物があって適用できないことがある。
【0006】
別の方法として、オペレータがカメラ画像を見ながら操作するという方法が考えらえる
。しかし、この方法ではオペレータの技量に依存し、検査速度のばらつきや、操作のやり
直しが発生する可能性がある。
【0007】
上述した課題を鑑み、本発明の実施形態は、移動体を任意の場所で直進性を保って走行
させることが可能な移動体制御システムおよび方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による移動体制御システムは、回転子と、前記回転子の径方向外側に設けられ、前記回転子の軸方向の範囲で前記回転子の表面と対向するように配置された固定子と、前記回転子のうち前記固定子と対向する部分よりも軸方向外側に形成された大径部と、を備える発電機に使用され、前記回転子の表面を走行する移動体と、前記回転子の表面にラインレーザを照射するレーザ照射手段と、前記移動体に設けられ、前記回転子の表面に投影された前記ラインレーザを撮影する光学装置と、前記回転子の表面に設置され、前記レーザ照射手段を搭載し、前記レーザ照射手段を移動させるレーザ照射手段位置決め装置と、前記光学装置が撮影した前記ラインレーザの画像に基づいて、前記移動体の走行方向が適正かを判定する制御部とを有し、前記レーザ照射手段位置決め装置は前記大径部上に設置され、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向に移動させる水平移動機構をさらに有し、昇降機構により前記レーザ照射手段を前記回転子の表面近傍に降ろすことを特徴とする。
【0009】
また、実施形態による移動体制御方法は、回転子、前記回転子の径方向外側に設けられて前記回転子の軸方向の範囲で前記回転子の表面と対向するように配置された固定子、前記回転子のうち前記固定子と対向する部分よりも軸方向外側に形成された大径部、を備える発電機に使用され、前記回転子の表面に移動体を設置するステップと、レーザ照射手段を搭載し、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向および径方向に移動可能なレーザ照射手段位置決め装置を前記大径部に設置するステップと、前記レーザ照射手段位置決め装置が、前記レーザ照射手段を前記回転子の軸方向に移動させて前記回転子と前記固定子の間の空間に移動させるステップと、前記レーザ照射手段位置決め装置が、前記レーザ照射手段を前記回転子の径方向に移動させて前記回転子の表面近傍に位置決めするステップと、前記レーザ照射手段が前記回転子の軸方向に沿って前記回転子の表面上にラインレーザを照射するステップと、前記回転子の表面上を走行するとともに前記ラインレーザを撮影する光学装置を備える前記移動体が前記ラインレーザを撮影するステップと、前記移動体と接続された制御部が、観測した前記ラインレーザの画像を処理し、前記移動体の走行方
向が適正かを判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態による移動体制御システムおよび移動体制御方法によれば、移動体を回転子の表面上における任意の場所で直進性を保って走行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による移動体制御システム100の概略図。
【
図4】第1実施形態の基地3によるレーザ照射部の位置決めを説明する要部拡大図。
【
図5】第1実施形態のカメラ6による撮影画像の例を示す図。
【
図6】第1実施形態のカメラ6による撮影画像の例を示す図。
【
図7】第1実施形態による移動体制御方法を説明するフローチャート。
【
図8】第2実施形態による移動体制御システム100Aの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図面を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、作業対象を
発電機101とした移動体制御システム100について説明する。
【0014】
(構成)
図1は本実施形態による移動体制御システム100の概略図、
図2は回転子103の径
方向外側から移動体2、基地3等を見た俯瞰図、
図3は回転子103における移動体2の
配置を示す縦断面図である。
図1において、作業対象とする発電機101の回転子102
と固定子103の間に移動体10が配置されており、この移動体が回転子102の表面上
を移動し、例えばカメラによる画像検査、固定子表面のハンマーによる打音検査等を行う
。
【0015】
図1において、発電機101は回転子102と固定子103を概略的に図示したタービ
ン発電機である。回転子102はタービンの軸と連結されて回転し、固定子103は回転
子102の径方向外側に位置して回転子102と対向するように配置される。また、固定
子103からは固定子コイル104が延出するように設けられている。回転子102は、
固定子103と対向している範囲の軸方向の外側にエンドリング105が設けられている
。エンドリング105は、固定子103と対向する範囲の軸よりも大きい大径部を形成す
る。なお、固定子103は略円筒状に回転子102を囲っているが、
図1においては回転
子102に図示されるべき固定子103、およびその他の発電機101の構成は図示を省
略している。
【0016】
回転子102と固定子103の間は数cm程度と狭く、その一方で軸方向には長大であ
る。また、回転子102と固定子103が対向する範囲のすぐ外側も、固定子コイル10
4やエンドリング105があることから、非常に狭隘な空間である。以降、回転子102
表面のうち固定子103と対向する面を作業面102a、回転子102と固定子103に
挟まれた空間の端部付近を入口102bと称する。作業面102aとは移動体2が作業の
ために走行する面であって、検査等作業自体が作業面102aを対象に限定されるもので
はない。移動体2が固定子103に対して撮影等を行う場合もある。
【0017】
移動体制御システム100は、制御部1、移動体2、基地3、レーザ照射部4を有して
構成される。
【0018】
移動体2は、作業面102aに吸着する電磁石等の磁吸着手段、作業面102aを走行
する車輪やクローラ等の走行手段、発電機101に対してカメラ撮影や打音検査等を行う
ための作業手段、後述の墨出し線5を観測する光学装置としてのカメラ6、を有している
。移動体2は作業面102aの表面に吸着しながら走行し、検査等を行うロボットである
。移動体2は、墨出し線5を撮影しながら回転子102の軸方向に走行し、検査等作業を
行う。
図2の紙面右方向を移動体2の前方、紙面左方向を移動体2の後方とすると、カメ
ラ6は移動体2の後方を撮影するように固定されている。移動体2が回転子の軸方向に対
して傾いていなければ、カメラ6が墨出し線5を中心にとらえる位置、角度で固定されて
いる。
【0019】
基地3は、エンドリング105上に設置され、レーザ照射部4を搭載し、レーザ照射部
4を作業面102a近傍に移動させる機構を有するレーザ照射部位置決め手段である。レ
ーザ照射部4は、作業面102aにラインレーザを照射するレーザ照射手段である。ライ
ンレーザにより、作業面102aには線状のビームが投影され、墨出し線5として用いる
ことができる。墨出し線5は、各図面において一点鎖線で示す。なお、各図面において墨
出し線が移動体2までの長さで図示されているのは、移動体2自身がラインレーザの障害
物となるためである。移動体2が前方に移動すれば、作業面102a上の墨出し線5は長
くなる。
【0020】
制御部1は、移動体2、基地3、レーザ照射部4と接続され、それぞれの駆動を制御す
るとともに、オペレータの入力を受け付け、また情報を提示する制御装置である。制御部
1は例えばパーソナルコンピュータで構成することができる。制御部1は演算手段、記憶
手段を有し、カメラ6が撮影した墨出し線を含む映像を画像処理し、移動体2の墨出し線
に対する現在位置を求める演算を実行する。
【0021】
(作用)
(レーザ照射部4の移動)
図4を用いて、基地3のレーザ照射部4を作業面102a近傍に移動させる機能につい
て説明する。
図4はレーザ照射部4を回転子102の軸方向に沿って移動させる機構を説
明する要部拡大図で、(a)は基地3を設置した状態を示す要部拡大図、(b)はスライ
ド機構12を伸展させた状態を示す要部拡大図、(c)は昇降機構を伸展させた状態を示
す要部拡大図である。なお、説明の便宜のために作業面102aを基準とした上下を用い
て説明するが、鉛直上下に限定されるものではない。
【0022】
基地3は、レーザ照射部4を搭載する台11と、台11を回転子102の軸方向に移動
させるスライド機構12と、台11を作業面102aに対して昇降させる(すなわち回転
子102の径方向に移動させる)昇降機構と、を備える。
【0023】
まず、
図4(a)(b)を用いてスライド機構12による台11の移動について説明す
る。基地3は、まずエンドリング105上に固定子コイル104等の周辺の構造物と干渉
しないように設置される。例えば、エンドリング105の径方向に巻かれたベルト(図示
省略)と基地3を結合し、このベルトを締め付けることでエンドリング105上において
位置決めされる。
【0024】
スライド機構12の伸展部12aは昇降機構13を保持し、昇降機構13が台11を保
持している。この伸展部12aが回転子102の軸方向に伸展することで、昇降機構13
ごと台11が移動して入口102bに進入し、作業面102aの上方に移動する(
図4(
b))。
【0025】
次に、
図4(c)を用いて昇降機構13による台11の移動について説明する。昇降機
構13が台11と連結された伸展部13aを下方に伸展させることで、台11を下方に移
動させる。これにより、台11、ひいてはレーザ照射部4が作業面102aの近傍に移動
する。台11は回転子102表面に接触してもしなくともよい。この状態でレーザ照射部
4が回転子102表面にラインレーザを照射し、墨出し線5を引くことができる。
【0026】
ここで、スライド機構12、昇降機構13は、それぞれレーザ照射部4を回転子102
の軸方向ならびに径方向に移動させられるものであれば、その構成は限定されない。墨出
し線5を回転子102の軸方向に沿って引くことを考慮すると、基地3の位置決めも含め
て、レーザ照射部4の照射するラインレーザが回転子102の軸方向に平行となる姿勢が
保たれるような構成であることが望ましい。例えば、基地3はエンドリング105と係合
する位置決め構造3aを有し、スライド機構12、昇降機構13はそれぞれ直動モータ等
によって伸展部12a、12bを一軸方向に伸縮するものとした構成が考えられる。ここ
で、台11は必須の構成ではなく、昇降機構13がレーザ照射部4の側面や上面を直接支
持するものであってもよい。
【0027】
(墨出し線5を用いた移動体2の位置把握)
次に、墨出し線5を用いた移動体2の位置の把握について説明する。
図5、
図6はそれ
ぞれ、カメラ6によって墨出し線5を撮影した画像の一例である画像21、画像22を示
す。なお、画像21、22のそれぞれレーザ照射部4や台11も映っているが、作業環境
は狭隘で暗いため、実際にレーザ照射部4も視認できる画像になるとは限らない。
【0028】
ここで、移動体2の走行方向が回転子102の軸方向と一致する姿勢で、かつ、作業予
定の位置に対して回転子102の周方向に現在位置がずれていない場合は、カメラ6が撮
影した墨出し線5が撮影画像の中心線Cに重複するようにカメラ6が移動体2に固定され
たものとする。
【0029】
図5に示す画像21は、墨出し線5が中心線Cに沿って撮影されている。画像21のよ
うな画像が撮影されたということは、移動体2が墨出し線5に対して傾いていない、すな
わち移動体2が回転子102の軸方向に沿って走行できる姿勢であると判断できる。また
、画像21は、墨出し線5のレーザ照射部4側端部である始点5aまで含む範囲で撮影し
ている。ここで、カメラ6位置の作業面102aに対する高さ、撮影角度が既知であれば
、画像21における墨出し線5の長さL(画像上長さL)を用いて、制御部1が墨出し線
5の実際の長さを演算により求めることができる。また、これにより、移動体2の回転子
102軸方向における位置をも求めることができる。より具体的には、始点5aの回転子
102軸方向における位置は、基地3の設置位置、スライド機構12および昇降機構13
の伸展長さ、レーザ照射部4によるラインレーザの照射角度によって把握することができ
る。したがって、回転子102の軸方向における墨出し線5の実際の長さと始点5aの位
置を求めることができる。
【0030】
ここで、上述した演算に代えて、あらかじめ画像上長さLと実際の墨出し線5の長さの
関係、または画像上長さLと移動体2の位置の関係を制御部1の記憶部に保持しておき、
この記憶部を参照することで墨出し線5の長さないしは移動体2の位置を求めるようにし
てもよい。これにより、リアルタイムに行う必要がある移動体2位置を求める演算の負荷
を軽減することができる。
【0031】
次に、
図6に示す画像22が撮影された状態について説明する。画像22は、墨出し線
5が中心線Cに対して傾いている。これは、カメラ6の撮影方向が墨出し線5に対して傾
いていることを示し、すなわち移動体2の走行方向が回転子102の軸方向に対して傾い
た姿勢、または周方向における位置がずれている、あるいはその両方であると判定できる
。
【0032】
制御部1は、移動体2の傾きないし周方向ずれを判定すると、移動体2の姿勢ないし位
置を補正する制御を行う。具体的には移動体2の構成によって異なり、移動体2が回転子
102の周方向に移動する手段を有する場合は当該手段を用いて補正する。移動体2が例
えば走行方向に対して左右に配されたキャタピラや車輪等の走行手段によって、主に走行
方向に対しての移動のみを行う構成である場合は、左右の走行手段の駆動量や駆動方向を
変更することで、姿勢ないし位置の補正を行う。また、制御部1は、移動体2の姿勢ない
し位置のずれが検査等作業の許容範囲を逸脱しているか判定し、逸脱している場合は移動
体2をいったん後退させるとともに姿勢ないし位置を補正し、作業を再開する。
【0033】
(方法)
次に、
図7を用いて、本実施形態による移動体2の移動制御方法を説明する。
図7は本
実施形態による移動体2の制御方法を示すフローチャートである。
【0034】
まず、回転子102の作業面102aに移動体2を設置する(ステップS1)。
【0035】
次に、基地3を発電機101のエンドリング105上に設置する(ステップS2)。ス
テップS1とS2は逆でも構わないが、回転子102と固定子103の作業面102aへ
アクセスするための入口102bは非常に狭いため、基地3の設置よりも先に移動体2を
設置することが現実的である。
【0036】
次に、基地3のスライド機構を伸展させ、レーザ照射部4を回転子102と固定子10
3の間に移動させる(ステップS3)。
【0037】
次に、昇降機構13を伸展させ、レーザ照射部4を作業面102aの近傍へ降ろす(ス
テップS4)。ここで、近傍へ降ろすとは、台11ないしレーザ照射部4を作業面102
aに接触する位置まで降ろすことも含む。
【0038】
次に、レーザ照射部4が作業対象面102aにラインレーザを照射し、墨出し線5を引
く(ステップS5)。
【0039】
次に、移動体2のカメラ6で墨出し線5を撮影し(ステップS6)、制御部1がこの画
像を用いた演算処理を行い、墨出し線5を基準とした移動体2の現在位置と姿勢を求める
(ステップS7)。
【0040】
次に、制御部2が、求めた移動体2の現在位置と姿勢が、作業可能な位置および姿勢で
あるかを判定する(ステップS8)。これは、作業開始時点であれば移動体2が作業開始
位置に適正な姿勢で配置されているかを判定することとなる。また、作業開始後であれば
、移動体2の走行および作業中に位置や姿勢のずれが生じていないかをリアルタイムに判
定することとなる。
【0041】
移動体2の位置および姿勢が適正と判定された場合は(ステップS8 YES)、移動
体2の走行および作業を実施する。移動体2の位置または姿勢の何れかが適正でないと判
定された場合は(ステップS8 NO)、移動体2の位置と姿勢について必要な補正を行
い(ステップS10)、移動体2の走行および作業を実施する(ステップS9)。ここで
、ステップS10およびステップS9について、例えば姿勢の傾きが検出されたものの作
業において許容範囲とされる程度であった場合は、傾きを補正しつつ移動体2の走行およ
び作業を継続する制御を行う場合も有り得る。すなわち、ステップS10とステップS9
が一体的に実行される場合が有り得る。また、作業開始後であって、制御部1が移動体2
の後退が必要と判定した場合の後退処理は、ステップS10において実行される。
【0042】
移動体2の走行および作業の実施により作業が完了したかを判定する(ステップS11
)。作業完了前の場合はステップS6に戻る(ステップS11 NO)。作業が完了した
場合は処理を終了する(ステップS11 YES)。
【0043】
以上の一連の処理によって、回転子102の任意の周方向位置における、回転子102
軸方向への作業が実行される。
【0044】
(効果)
以上説明した本実施形態の移動体制御システムおよび移動体制御方法によれば、以下の
効果を奏する。
【0045】
(1)作業対象の任意の位置にラインレーザを照射し、投影されたラインレーザを墨出
し線5として移動体2により撮影し、撮影画像を用いて、移動体2の姿勢を適切に維持す
ることができる。これにより、任意の位置で移動体の直進性を保つことができる。
【0046】
(2)作業環境におけるガイドとして活用できる構造物(溝や突起)の有無に関わらず
、移動体2の位置および姿勢を把握することができ、適正な姿勢の維持や移動体2の位置
決めが可能である。例えば、固定子103の表面に構造物があり、固定子103の溝をガ
イドとして活用することができないタイプの発電機101であっても、本実施形態を適用
することができる。
【0047】
(3)カメラ6で撮影した画像における墨出し線の長さLに基づいた演算を行うことで
、移動体2の墨出し線5長手方向、ひいては回転子102の軸方向における位置を求める
ことができる。移動体2の姿勢と位置を求めることができるため、墨出し線5を基準とし
て移動体2の位置決めを行うことが可能である。
【0048】
(4)自動で移動体2の姿勢を補正しながら走行可能であり、オペレータの技量に依存
されない。これにより、オペレータの技量に起因する作業速度のばらつきや操作しなおし
がなく、作業効率および作業品質を向上することができる。
【0049】
(5)スライド機構12および昇降機構13を有する基地3により、レーザ照射部4を
容易に回転子102の作業面102a近傍に位置決めすることができる。具体的には、基
地3の設置は発電機101の構造物に干渉しないように設置することができ、またレーザ
照射部4の位置決めは入口102b周辺の構造物を回避しながら、複雑で狭隘な空間にレ
ーザ照射部4を位置決めすることができる。作業員が狭隘な入口102bを通じてレーザ
照射部4を作業面102aに設置する必要がなく、作業を効率化することができる。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による移動体制御システム100Aについて、
図8を用いて説明
する。第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2実
施形態は、第1実施形態の変形例である。
【0051】
第1実施形態においては墨出し線5を撮影した画像の処理による移動体の位置ないし姿
勢の判定と補正を離間して設置された制御部1が行っていたが、本実施形態においては移
動体2に搭載された演算手段により実行する。より具体的には、ロボットである移動体2
には駆動制御のためにマイクロコンピュータ等の演算手段が搭載されており、この演算手
段を用いて画像処理等を行うものである。
【0052】
本実施形態によれば、移動体2によって墨出し線5の観測による位置ないし姿勢の判定
および補正が可能となり、より簡易なシステム構成とすることができる。また、画像処理
に関して、離間して設置した制御部1との通信のための時間や外乱がない。なお、離間し
て設置したパーソナルコンピュータ等との接続を許容しないものではない。少なくともカ
メラ6の撮影画像の処理による位置ないし姿勢の判定および補正を移動体2の演算手段が
行うものであれば、その他の制御(例えば移動体2への作業開始の指示、作業の経時記録
の蓄積、レーザ照射部4の制御等)は制御部1が担うものであってもよい。
【0053】
ここで、第1実施形態のように制御部1が画像処理等の演算を行う場合は、演算処理の
負荷を制御部1に担わせることができる。移動体2よりも制御部1のほうが高機能な演算
手段を搭載させることが容易であるので、移動体2の小型化や画像処理の高速化の面では
第1実施形態の構成をとることが好ましい。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は、上述した構成に限られるものではない。
【0055】
例えば、基地3およびレーザ照射部4と移動体2の制御は連動している必要はなく、共
通の制御部とする必要はなく、別々の制御装置であってもよい。墨出し線5が引かれた状
態で移動体2を動作させることが可能であればよい。
【0056】
また、発電機101に適用した場合において、スライド機構12は必須ではない。基地
3を設置する際に、レーザ照射部4および昇降機構13を入口102bに挿入したような
配置をすることが容易であれば、昇降機構13のみでレーザ照射部4を移動させものであ
ってもよい。
【0057】
また、スライド機構12および昇降機構13は、回転子102の軸方向ないし径方向に
対して斜めに移動させるものであってもよい。少なくとも回転子102の軸方向ないし径
方向において移動させるものであればよい。例えば、エンドリング105が作業面102
aに対して斜めの面、つまり基地3が設置される面から回転子102の表面に向かって傾
斜した面を有する場合は、当該傾斜した面に沿って伸展する機構としてもよい。
【0058】
また、墨出し線5の撮影画像について、カメラ6によって墨出し線5を正面かつ中心に
とらえるものとして説明したが、これに限るものではない。カメラ6の移動体2における
取り付け位置、撮影角度(撮影方向)が既知であれば、墨出し線5が例えば斜めに撮影さ
れる画像に基づいて移動体2の姿勢ないし位置を求めることは可能である。したがって、
カメラ6は複数あってもよいし、角度を変更できるものであってもよい。ただし、演算の
簡易さや、オペレータに提示する場合のオペレータのわかりやすさ等の面から、墨出し線
5が移動体2を走行させたい方向に平行に引かれ、移動体2が適正な姿勢であるときに墨
出し線5を撮影すると、墨出し線5が垂直や水平等になるように各構成要素を設定するこ
とが好ましい。特に、作業面102aが曲率を有する場合に、このような設定が有効であ
る。
【0059】
また、移動体2の姿勢のみを判定、補正できればよい場合は、墨出し線5の全体でなく
移動体2に近い一部を撮影する構成であってもよい。
【0060】
また、墨出し線5の始点5aの位置を求める点を説明したが、始点5aを求める演算は
必須ではない。作業面102aの端から始点5aまでの距離は、移動体2の走行範囲に比
較するとわずかな長さであり、問題にならない程度の誤差であれば考慮しなくともよい。
または、回転子102の軸方向における始点5aの位置は、作業ごと(レーザ照射部4の
位置決めごと)にほぼ同じと考えられるので、軸方向における位置を予め決定するもので
もよい。
【0061】
以上説明した移動体制御システムの制御部は、専用のチップ、FPGA(Field Progra
mmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Pro
cessing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memo
ry)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)
やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と
、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュ
ータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる
。
【符号の説明】
【0063】
100,100A…移動体制御システム、101…発電機、102…回転子、102a…
作業面、102b…入口、103…固定子、104…固定子コイル、105…エンドリン
グ、1…制御部、2…移動体、3…基地、4…レーザ照射部、5…墨出し線、5a…始点
、6…カメラ、11…台、12…スライド機構、13…昇降機構、12a,13a…伸展
部、21,22…画像、L…墨出し線撮影長さ、C…中心線