(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/504 20060101AFI20220719BHJP
H01R 12/51 20110101ALI20220719BHJP
H05K 5/02 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
H01R13/504
H01R12/51
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2019063790
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室野井 有
(72)【発明者】
【氏名】川島 直倫
(72)【発明者】
【氏名】平林 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】小林 伊織
(72)【発明者】
【氏名】角 佳朗
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328993(JP,A)
【文献】特開2019-041010(JP,A)
【文献】特開2018-116768(JP,A)
【文献】国際公開第2005/004563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 12/51
H01R 12/70-12/81
H05K 5/02
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、前記回路基板に取り付けられた
、ハウジング及び複数の端子を有するコネクタと、前記回路基板の全体及び前記
ハウジングの一部を被覆するモールド樹脂と、を備え、
前
記ハウジングは、樹脂材、及び繊維状の無機充填材を含有しており、
かつ、複数の前記端子の先端部を囲む筒形状に形成された、前記コネクタに対する相手側コネクタが装着されるフード部を有し、
前記ハウジング
における、前記フード部の根元側であって前記回路基板から突出する部位の全周には、前記相手側コネクタの装着方向に交差する方向に延びて、前記無機充填材を残す状態で前記樹脂材が除去された溝部が形成されており、
前記溝部の深さ及び幅は、50μm以上150μm以下の範囲内に形成されており、
前記モールド樹脂における、前記ハウジングを被覆する部位の先端部は、前記フード部の根元側であって前記回路基板から突出する部位の全周において、前記溝部
に充填されている、コネクタ装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記樹脂材は、液晶ポリマー又はポリフェニレンサルファイド樹脂によって構成されており、
前記モールド樹脂は、ポリアミド樹脂によって構成されている、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記モールド樹脂の前記先端部と平行に1つ又は複数形成されている、請求項
1又は請求項
2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記無機充填材は、ガラス繊維によって構成されており、
前記溝部内に配置された前記無機充填材は、複数本が互いに異なる方向に向けられている、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記モールド樹脂は、モールド成形によって成形されたことを示すゲート痕を有する、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記モールド樹脂における、前記回路基板の板面に対向する部位の厚みは、1mm以上5mm以下の範囲内にある、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記コネクタ装置は、車載用コントロールユニットとして用いられる、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、樹脂のハウジング内に端子を有するものであり、種々の電子制御部品を制御装置に配線する場合などに用いられる。また、種々の電子制御部品が設けられた機械部品等のカバー内に、制御装置を構成する回路基板を配置し、この回路基板を電子制御部品又は他の制御装置に配線するためのコネクタを、回路基板又はカバーに設けることがある。コネクタ装置は、樹脂のカバー内又はモールド樹脂内に配置された回路基板とコネクタとが一体化されたものであり、機械部品等に取り付けられて使用される。コネクタ装置は、基板コネクタと呼ぶこともある。
【0003】
従来のコネクタ装置においては、2つに分割されたカバーによって回路基板が覆われ、カバー同士の間の隙間に防水用のシール材が配置されたものがある。このカバータイプのコネクタ装置においては、カバー及びシール材の成形及び組み付けに手間がかかり、製造工程が煩雑になるといった課題がある。また、カバータイプのコネクタ装置においては、回路基板を覆うためにカバーの外形が大きくなり、コネクタ装置が大型化するといった課題もある。
【0004】
一方、モールド成形によって形成されるモールド樹脂内に回路基板及びコネクタの一部が配置され、コネクタの残部がモールド樹脂から突出する、モールドタイプのコネクタ装置もある。このモールドタイプのコネクタ装置においては、モールド樹脂によって回路基板が覆われることによって防水性能が確保されるため、カバー及びシール材を廃止することができる。また、モールドタイプのコネクタ装置においては、モールド成形を行うために成形及び組み付けの製造工程が簡単になり、カバーを用いないためにコネクタ装置が小型化する。モールドタイプのコネクタ装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者らがモールドタイプのコネクタ装置の防水性能(止水性)を検討した結果、コネクタのハウジングとモールド樹脂との間から、モールド樹脂内に水が浸入する場合があることが判明した。そのため、ハウジングとモールド樹脂との間からコネクタ装置の内部への水の浸入を防止するためには更なる工夫が必要とされる。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたもので、コネクタのハウジングとモールド樹脂との間の防水性能を高めることができるコネクタ装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、回路基板と、前記回路基板に取り付けられた、ハウジング及び複数の端子を有するコネクタと、前記回路基板の全体及び前記ハウジングの一部を被覆するモールド樹脂と、を備え、
前記ハウジングは、樹脂材、及び繊維状の無機充填材を含有しており、かつ、複数の前記端子の先端部を囲む筒形状に形成された、前記コネクタに対する相手側コネクタが装着されるフード部を有し、
前記ハウジングにおける、前記フード部の根元側であって前記回路基板から突出する部位の全周には、前記相手側コネクタの装着方向に交差する方向に延びて、前記無機充填材を残す状態で前記樹脂材が除去された溝部が形成されており、
前記溝部の深さ及び幅は、50μm以上150μm以下の範囲内に形成されており、
前記モールド樹脂における、前記ハウジングを被覆する部位の先端部は、前記フード部の根元側であって前記回路基板から突出する部位の全周において、前記溝部に充填されている、コネクタ装置にある。
【発明の効果】
【0009】
前記一態様のコネクタ装置によれば、コネクタのハウジングとモールド樹脂との間の防水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる、コネクタ装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる、コネクタ装置を示す、
図1のII矢視図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる、コネクタ装置を示す、
図1のIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる、
図3のIV-IV断面の拡大図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる、
図3の一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる、モールド樹脂が充填される前の、コネクタのハウジングに形成された溝部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる、モールド樹脂が充填された後の、コネクタのハウジングに形成された溝部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる、他のコネクタ装置の
図5に相当する断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる、複数の溝部が形成された、コネクタのハウジングの一部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかる、コネクタ装置の回路基板及びコネクタを示す平面図である。
【
図11】
図11は、確認試験にかかる、試験用サンプルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)本開示の一態様のコネクタ装置は、
回路基板と、前記回路基板に取り付けられたコネクタと、前記回路基板の全体及び前記コネクタの一部を被覆するモールド樹脂と、を備え、
前記コネクタのハウジングは、樹脂材、及び繊維状の無機充填材を含有しており、
前記ハウジングの表面における、前記モールド樹脂によって被覆される部位には、前記コネクタに対する相手側コネクタの装着方向に交差する方向に延びて、前記無機充填材を残す状態で前記樹脂材が除去された溝部が形成されており、
前記溝部の深さ及び幅は、50μm以上150μm以下の範囲内に形成されており、
前記溝部には、前記モールド樹脂が充填されている。
【0012】
(作用効果)
前記一態様のコネクタ装置は、回路基板の全体及びコネクタの一部をモールド樹脂によって被覆したモールドタイプのものである。そして、このコネクタ装置においては、コネクタのハウジングを構成する材料、及びハウジングとモールド樹脂との界面の形状に工夫をし、コネクタ装置の防水性能を向上させている。
【0013】
コネクタ装置においては、回路基板の全体がモールド樹脂によって被覆されていることにより、モールド樹脂によって回路基板を水から保護することができる。また、コネクタ装置の表面には、コネクタのハウジングとモールド樹脂との界面が位置する。この界面がコネクタ装置において最も水に対する対策が必要な部位となる。
【0014】
コネクタのハウジングの保持部の表面には、相手側コネクタの装着方向に交差する方向に延びる溝部が形成されている。この溝部内には、無機充填材が残されている。そして、溝部内にモールド樹脂が充填された状態においては、モールド樹脂が溝部内の無機充填材に引っ掛かって抜けにくくなるアンカー効果を得ることができる。
【0015】
これにより、ハウジングとモールド樹脂との密着度又は接着強度が高くなり、ハウジングとモールド樹脂との界面が開きにくくなる。そのため、コネクタのハウジングとモールド樹脂との間の防水性能を高めることができ、コネクタのハウジングとモールド樹脂との界面からコネクタ装置内に水が浸入することを防止することができる。
【0016】
コネクタのハウジングを構成する樹脂材は、熱可塑性樹脂によって構成することができる。ハウジングを構成する繊維状の無機充填材は、ガラス繊維の他、絶縁性及び耐熱性を有する種々の繊維材料によって構成することができる。モールド樹脂は、モールド成形を行うことによって形成されものとする。モールド成形には、ホットメルト成形等のメルト成形の他、射出成形等もある。
【0017】
溝部の深さ及び幅が、50μm未満である場合には、溝部の大きさが小さくなり、コネクタのハウジングとモールド樹脂との界面からコネクタ装置の内部への水の浸入を防止することが難しくなる。一方、溝部の深さ及び幅が、150μm超過である場合には、溝部の大きさが大きくなり、レーザー光によって溝部を加工しにくくなる。
【0018】
ハウジングにおける溝部は、ハウジングにレーザー光を照射して樹脂材を除去することによって形成することができる。この場合には、レーザー光の照射によって樹脂材が除去される深さ及び幅が、溝部の深さ及び幅となる。レーザー光は、指向性(直進性)及び収束性の高い光であり、ハウジングにおける、目標とする部位の樹脂材を、短時間で精度よく除去することに適している。
【0019】
(2)前記一態様のコネクタ装置において、前記モールド樹脂における、前記ハウジングを被覆する部位の先端部は、前記ハウジングにおける、前記装着方向に平行な、前記コネクタの中心を通る中心軸線に直交する方向に沿って配置されており、前記溝部は、前記ハウジングにおける、前記モールド樹脂の前記先端部よりも根元側に位置する部位に、前記先端部と平行に形成されていてもよい。この構成により、溝部及び溝部内に配置されたモールド樹脂は、モールド樹脂の先端部からコネクタ装置内へ浸入しようとする水を堰止めることができる。そして、コネクタ装置内への水の浸入を効果的に防止することができる。
【0020】
(3)前記モールド樹脂の前記先端部は、前記ハウジングにおける前記中心軸線の周りの全周に配置されており、前記溝部は、前記ハウジングにおける、前記モールド樹脂の前記先端部よりも根元側に位置する部位において、前記中心軸線の周りの全周に形成されていてもよい。この構成により、ハウジングの全周において、モールド樹脂の先端部からコネクタ装置内へ水が浸入することを効果的に防止することができる。
【0021】
(4)前記溝部は、前記モールド樹脂の前記先端部と平行に1つ又は複数形成されていてもよい。溝部がモールド樹脂の先端部と平行に複数形成されている場合には、モールド樹脂の先端部からコネクタ装置内への水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0022】
(5)前記無機充填材は、ガラス繊維によって構成されており、前記溝部内に配置された前記無機充填材は、複数本が互いに異なる方向に向けられていてもよい。無機充填材にガラス繊維を用いることにより、溝部を形成する際に、溝部内に無機充填材が残りやすくすることができる。
【0023】
(6)前記モールド樹脂は、モールド成形によって成形されたことを示すゲート痕を有していてもよい。この構成により、コネクタ装置のモールド樹脂がモールド成形によって成形されたものであることを確認することができる。
【0024】
(7)前記モールド樹脂における、前記回路基板の板面に対向する部位の厚みは、1mm以上5mm以下の範囲内にあることが好ましい。この構成により、モールド樹脂の強度を維持しつつモールド樹脂の厚みを薄くすることができる。
【0025】
(8)前記コネクタ装置は、車載用コントロールユニットとして用いることができる。車載用コントロールユニットは、電子制御ユニットとも呼ばれる。コネクタ装置は、車両に搭載して用いる場合に、車両が被水するときの水から保護される。
【0026】
(9)前記モールド樹脂は、大気に晒される最外殻のカバーを構成してもよい。この構成により、コネクタ装置の小型化を図ることができる。また、コネクタのハウジングとモールド樹脂との界面に、大気に含まれる水が浸入することが防止される。
【0027】
(10)前記モールド樹脂には、前記コネクタ装置を外部に取り付けるための取付部が形成されており、前記取付部には、ボルトが挿通される金属製のカラーが配置されていてもよい。この構成により、カラーに挿通されたボルトによって、コネクタ装置を外部の機械部品等に取り付けることができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタ装置についての具体例を、図面を参照して説明する。
<実施形態>
本形態のコネクタ装置1は、
図1~
図3に示すように、回路基板2と、回路基板2に取り付けられたコネクタ3と、回路基板2の全体及びコネクタ3の一部を被覆するモールド樹脂5とを備える。
図4~
図7に示すように、コネクタ3のハウジング31は、樹脂材301、及び繊維状の無機充填材302を含有している。ハウジング31の表面における、モールド樹脂5によって被覆される部位には、コネクタ3に対する相手側コネクタ62の装着方向Dに交差する方向に延びて、無機充填材302を残す状態で樹脂材301が除去された溝部321が形成されている。溝部321の深さh1及び幅w1は、50μm以上150μm以下の範囲内に形成されている。溝部321には、モールド樹脂5が充填されている。
【0029】
以下に、本形態のコネクタ装置1について詳説する。
(コネクタ装置1)
図1~
図3に示すように、コネクタ装置1は、車載用コントロールユニットとして、車両に搭載された機械部品61の制御装置として用いられる。コネクタ装置1は、機械部品61等に取り付けられて使用される。コネクタ装置1の回路基板2は、機械部品61における各種の電子制御部品の制御を行うものである。この電子制御部品には、種々のアクチュエータ、センサ等がある。
【0030】
コネクタ装置1は、例えば、電気機械ブレーキ(Electro Mechanical Brake:EMB)、電動パーキングブレーキ(Electronic Parking Brake:EPB)などの電動ブレーキシステムのモジュール、あるいは燃料噴射制御のコントロールユニット(Fuel Injection Engine Control Unit:FI-ECU)などのコントロールユニットとして用いることができる。
【0031】
本形態のコネクタ装置1は、回路基板2が熱可塑性樹脂のモールド樹脂5によって被覆されたモールタイプのものである。そして、コネクタ装置1は、回路基板2を収容する樹脂等のカバー(ケース)及び防水用のシール材を用いないものである。回路基板2の全体及びコネクタ3のハウジング31の一部を被覆するモールド樹脂5は、大気に晒される最外殻のカバーを構成する。モールド樹脂5は、カバー及びシール材の代わりに設けられたものであり、回路基板2及びコネクタ3の端子35を、大気に含まれる水から保護するものである。モールド樹脂5がカバー及びシール材の代わりとなることにより、コネクタ装置1の小型化を図ることができる。
【0032】
(回路基板2)
図3及び
図5に示すように、回路基板2は、ガラス、樹脂等によって構成された絶縁性基材に電気が流れる導体が形成された板状の基板部21と、基板部21の導体に電気接続されるよう基板部21に設けられた半導体、抵抗器、コンデンサ、コイル、スイッチ等の電気部品22を有する。電気部品22には、半導体等による電子部品も含まれることとする。四角形の板面201を有する板状の基板部21における1つの辺の付近には、コネクタ3が取り付けられている。ここで、板面201とは、板状の回路基板2において面積が最も広い一対の表面のことをいう。また、角部に面取り形状、曲面形状等がある場合も四角形に含まれる。
【0033】
基板部21は、四角形の板形状とする以外にも、四角形の板の一部が切り欠かれた板形状等とすることができる。例えば、基板部21における、後述する取付部11を形成する部位には、切欠きを形成することができる。
【0034】
(コネクタ3)
図1~
図3に示すように、コネクタ3は、熱可塑性樹脂によって形成された絶縁性のハウジング31と、ハウジング31に保持された導電性の金属材料からなる複数の端子35とを有する。複数の端子35には、制御信号の送電に用いられる制御用端子、直流電源、グラウンド等に接続される電源用端子等がある。本形態のコネクタ3は、回路基板2の板面201に平行な平面方向に沿って配置されている。
【0035】
複数の端子35の先端部351は、回路基板2の平面方向に沿って配置されている。また、複数の端子35における、基板部21の導体に接続される根元部(基端部)352は、基板部21の平面方向に対して平行な状態から基板部21の平面方向に対して垂直な状態に屈曲して配置されている。
【0036】
換言すれば、
図4及び
図5に示すように、複数の端子35は、基板部21の平面方向に対して平行な状態、平面方向に対して垂直な状態及び平面方向に対して平行な状態になるよう、クランク形状に屈曲して形成されている。コネクタ3のハウジング31は、複数の端子35の中間部353を保持する保持部32と、複数の端子35の先端部351を囲む筒形状に形成され、相手側コネクタ62が装着されるフード部(装着部)33とを有する。
【0037】
ハウジング31の保持部32の多くは、回路基板2に対面しており、回路基板2とともにモールド樹脂5によって被覆されている。ハウジング31のフード部33は、回路基板2の端面202から突出しており、モールド樹脂5によって被覆されていない。ハウジング31とモールド樹脂5との界面Kの端部、換言すればモールド樹脂5の先端部51は、ハウジング31の保持部32に位置している。コネクタ3は雄コネクタを構成し、コネクタ3における複数の端子35は雄端子を構成する。フード部33内において保持部32から突出する複数の端子35の先端部351は、雌コネクタとしての相手側コネクタ62の雌端子に電気接続される。
【0038】
図4及び
図5に示すように、複数の端子35の根元部352は、ハウジング31の保持部32から突出して、回路基板2の基板部21の導体に半田付けによって接続されている。ハウジング31の保持部32には、複数の端子35の他に、ハウジング31を回路基板2に固定するためのペグ(金属部品)36が配置されている。ペグ36の一部は、回路基板2の基板部21の導体に半田付けによって接続されている。そして、ハウジング31は、複数の端子35の根元部352及びペグ36の一部によって回路基板2に固定されている。
【0039】
複数の端子35の根元部352は、保持部32の外部に配置されており、モールド樹脂5によって被覆されている。また、ペグ36の一部は、保持部32の外部に配置されており、モールド樹脂5によって被覆されている。
【0040】
図6及び
図7に示すように、ハウジング31は、樹脂材301としての液晶ポリマーと、繊維状の無機充填材302としてのガラス繊維とを含有している。無機充填材302にガラス繊維を用いることにより、溝部321を形成する際に、溝部321内に無機充填材302が残りやすくすることができる。繊維状とは、紐状に長く延びる状態のことをいい、長尺状と言い換えることもできる。
【0041】
ガラス繊維は、直径が5~20μmの範囲内にある繊維とすることができる。ガラス繊維の長さは、直径の5倍以上の長さとすることができる。ガラス繊維の長さは、ハウジング31の溝部321から脱落しにくくするためには、ハウジング31の溝部321の深さh1及び幅w1よりも大きくすることができる。ガラス繊維の長さは、ハウジング31の成形が行われる過程において短くなると考えられる。
【0042】
無機充填材302は、樹脂材301の中にできるだけ均一な状態で分散されている。無機充填材302は、複数本が互いに異なる方向に向けられて配置されている。無機充填材302は、レーザー光が照射されたときに溶融せず、レーザー光によって樹脂材301が除去されて形成された溝部321内に残るものであれば、ガラス繊維以外の無機繊維とすることもできる。
【0043】
液晶ポリマーは、溶融状態で分子の直鎖が規則正しく並ぶ性質を有する。液晶ポリマーは、芳香族ポリエステル系樹脂を構成し、液晶ポリエステルと呼ぶこともできる。液晶ポリマーは、結晶性の熱可塑性樹脂である。
【0044】
ハウジング31は、複数の端子35及び複数のペグ36を配置した成形型に、ガラス繊維を含有する液晶ポリマー用の樹脂材料のインサート成形を行って形成されている。ハウジング31においては、複数の端子35の両端部351,352とペグ36の一部とが露出している。
【0045】
ハウジング31の樹脂材301に液晶ポリマーを用い、モールド樹脂5にポリアミド樹脂を用いることにより、ハウジング31とモールド樹脂5との密着性がよく、ハウジング31とモールド樹脂5との界面Kからコネクタ装置1内への水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0046】
なお、ハウジング31の樹脂材301には、液晶ポリマーの代わりにポリフェニレンサルファイド樹脂を用いることもできる。この場合にも、液晶ポリマーを用いる場合と同様の効果が得られる。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、フェニル基(ベンゼン環)と硫黄(S)が交互に繰り返し繋がる分子構造を持ったものである。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、結晶性の熱可塑性樹脂である。
【0047】
コネクタ3は、回路基板2の板面201の平面方向に垂直な方向に沿って配置することもできる。この場合には、複数の端子35の先端部351は、回路基板2の平面方向に垂直な方向に沿って配置される。
【0048】
(モールド樹脂5)
図1~
図3に示すように、モールド樹脂5は、モールド成形として、回路基板2及びコネクタ3を成形型に配置して、成形型内にモールド樹脂5を成形するための溶融した樹脂材料を充填し、この樹脂材料を固化させることによって形成されている。このモールド成形は、ホットメルト成形(ホットメルトモールディング)とも呼ばれ、溶融した樹脂材料を低圧で成形型内に注入して、成形型内にモールド樹脂5を成形するものである。ホットメルト成形を行うことにより、低温かつ低圧でモールド樹脂5を成形することができ、インサート部品としての回路基板2に取り付けられた電気部品22に温度及び圧力による悪影響を与えることがない。
【0049】
図1に示すように、モールド樹脂5は、モールド成形を行うことによって低圧かつ低い温度で成形することができ、成形が容易である。モールド樹脂5は、モールド成形によって成形されたことを示すゲート痕52を有している。ゲート痕52は、成形型に形成された、樹脂材料の注入口であるゲートに樹脂材料が残り、このゲートに残った樹脂材料が、製品としてのモールド樹脂5から切断されたときの痕として残ったものである。モールド樹脂5にゲート痕52があることにより、モールド樹脂5がモールド成形によって成形されたものであることを確認することができる。
【0050】
図5に示すように、モールド樹脂5は、電気部品22を含む回路基板2の全体、コネクタ3のハウジング31の保持部32、複数の端子35の根元部352、ペグ36の一部を被覆している。モールド樹脂5は、回路基板2の板面201及びコネクタ3のハウジング31の保持部32の表面において、できるだけ均一な厚みに形成されている。モールド樹脂5における、回路基板2の板面201に対向する部位の厚みt1,t2は、1mm以上5mm以下の範囲内にある。モールド樹脂5の厚みt1,t2が1mm未満である場合には、モールド樹脂5の強度が十分ではなく、モールド樹脂5の厚みt1,t2が5mm超過である場合には、樹脂材料の使用量が過剰になる。
【0051】
同図に示すように、回路基板2の基板部21の板面201においては、電気部品22が配置された部位が凸状になっている。回路基板2の基板部21の板面201に配置されたモールド樹脂5の表面は、平坦状に形成されていてもよい。この場合には、電気部品22が配置された基板部21の部位におけるモールド樹脂5の厚みt2は、電気部品22が配置されていない基板部21の部位におけるモールド樹脂5の厚みt1よりも薄くなる。
【0052】
また、
図8に示すように、電気部品22が配置された基板部21の部位における第1モールド樹脂5Aの厚みt2は、電気部品22が配置されていない基板部21の部位における第1モールド樹脂5Aの厚みt1と同じになるようにしてもよい。この場合には、電気部品22が配置された基板部21の部位におけるモールド樹脂5が、電気部品22が配置されていない基板部21の部位におけるモールド樹脂5から凸状に膨らむことになる。
【0053】
図4及び
図5に示すように、複数の端子35の先端部351が延びる方向及びフード部33の形成方向を、相手側コネクタ62が装着される装着方向Dとしたとき、モールド樹脂5は、コネクタ3のハウジング31の保持部32において、装着方向Dに沿ったフード部33及び保持部32の中心軸線Oの周りの全周に設けられている。ここで、中心軸線Oとは、フード部33及び保持部32の装着方向Dに直交する断面の図心を通る仮想線のことをいう。モールド樹脂5における、コネクタ3のハウジング31の表面に対向する部位の厚みは、1mm以上5mm以下の範囲内にある。
【0054】
本形態のモールド樹脂5は、融点又は軟化点が190℃であるポリアミド樹脂によって形成されている。ここで、融点とは、熱を加えることによって固体物質が液体に変化する転移温度のことをいう。また、軟化点とは、JIS K6863に準拠した環球法によって定義される、樹脂が軟化する温度のことをいう。モールド樹脂5を成形する際には、190℃以上230℃以下に、ポリアミド樹脂の材料を加熱し、成形型内に充填する。そして、成形型内に充填されたポリアミド樹脂の材料が冷やされて固化して、モールド樹脂5が成形される。
【0055】
モールド樹脂5のモールド成形を行う際に、回路基板2の基板部21の導体とコネクタ3の端子35とを接続する半田等の導電性材料が溶融しないようにするために、モールド樹脂5を構成する樹脂材料の融点又は軟化点は230℃以下とする。
【0056】
(取付部11)
図1及び
図2に示すように、モールド樹脂5には、コネクタ装置1を、外部の機械部品61等に取り付けるための取付部11が形成されている。取付部11には、ボルト42が挿通される金属製のカラー4が配置されている。本形態の取付部11は、複数のカラー4によって構成されている。カラー4は、円筒形状に形成されており、その中心穴にはボルト42が挿通される。カラー4の両端部は、モールド樹脂5の表面から突出している。カラー4に挿通されたボルト42は、機械部品61等に設けられたネジ穴に締め付けられる。
【0057】
カラー4の外周41には、カラー4がモールド樹脂5から抜け出すことを防止するために、外周側に突出する鍔部が形成されていてもよい。鍔部は、カラー4の軸方向の複数箇所に形成されていてもよい。
【0058】
取付部11を構成するカラー4は、4つであり、四角形の板状の回路基板2の4つの角部の付近にそれぞれ配置されている。回路基板2における、カラー4が配置される部位の周辺には、カラー4との干渉を避ける切欠きが形成されていてもよい。
【0059】
(ハウジング31の溝部321及び溝部321内のモールド樹脂5)
図4及び
図5に示すように、コネクタ3のハウジング31に形成された溝部321及び溝部321内のモールド樹脂5は、モールド樹脂5の先端部51からコネクタ装置1内への水の浸入を防止する形状に形成されている。モールド樹脂5における、ハウジング31を被覆する部位の先端部51は、ハウジング31における、相手側コネクタ62の装着方向Dに平行な、コネクタ3の中心を通る中心軸線Oに直交する方向に沿って配置されている。
【0060】
また、モールド樹脂5の先端部51は、ハウジング31の保持部32における中心軸線Oの周りの全周に配置されている。モールド樹脂5の先端部51は、ハウジング31とモールド樹脂5との界面Kを形成する部位であり、コネクタ装置1の外部から内部へ水が浸透しようとする部位となる。
【0061】
溝部321は、ハウジング31の保持部32における、モールド樹脂5の先端部51よりも根元側に位置する部位において、先端部51と平行に中心軸線Oの周りの全周に形成されている。換言すれば、溝部321は、ハウジング31の保持部32において、中心軸線Oの周りに環状に一つ形成されている。ハウジング31における根元側とは、回路基板2における中心側のことをいう。
【0062】
図6及び
図7に示すように、本形態の溝部321の形成方向に直交する断面は、四角形状又は底部が曲面となる形状に形成されている。溝部321の深さh1は、溝部321の最大深さとすることができる。この場合には、溝部321の最大深さは、50μm以上150μm以下の範囲内にあればよい。溝部321の深さh1及び幅w1は、溝部321の全周においてほぼ均一にすることができる。
【0063】
図6は、モールド樹脂5が充填される前の溝部321を拡大して示し、
図7は、モールド樹脂5が充填された後の溝部321を拡大して示す。同各図に示すように、溝部321は、レーザー光の照射を受けてハウジング31の樹脂材301が除去されたことによって形成されている。溝部321内には、樹脂材301が除去された後に溝部321内に残った無機充填材302が配置されている。そして、ハウジング31の表面に配置されたモールド樹脂5の一部は、ハウジング31の表面から溝部321内に連続して配置されている。また、モールド樹脂5の一部は、無機充填材302を埋没させる状態で溝部321内に配置されている。
【0064】
本形態のレーザー照射装置によって照射されるレーザー光を用いて形成される溝部321の深さh1及び幅w1は、50μm以上150μm以下の範囲内となる。溝部321は、レーザー光をハウジング31の保持部32の表面に照射しながら移動することによって形成される。このとき、レーザー光を移動させる速度を一定にして、溝部321の深さh1及び幅w1が一定になるようにする。
【0065】
ハウジング31とモールド樹脂5との間の密着力は、モールド樹脂5の一部がアンカー効果によって溝部321内の無機充填材302に引っ掛かることによって、溝部321において最も大きくなる。これにより、溝部321を形成するハウジング31の部分と、モールド樹脂5の一部との界面Kに水が浸透することは極めて難しくなる。
【0066】
図9に示すように、溝部321は、モールド樹脂5の先端部51と平行に複数形成されていてもよい。同図は、モールド樹脂5が設けられる前のハウジング31の表面付近を示す。この場合には、ハウジング31の保持部32の中心軸線Oの周りに、互いに平行な複数本の環状の溝部321が形成されることになる。また、この場合には、モールド樹脂5の先端部51からコネクタ装置1内への水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0067】
(コネクタ装置1の製造方法)
コネクタ装置1を製造するに当たっては、まず、複数の端子35及び複数のペグ36がインサートされたハウジング31の、射出成形としてのインサート成形が行われ、コネクタ3が形成される。このとき、ハウジング31を構成する材料は、無機充填材302としての多数のガラス繊維が分散された樹脂材301とする。
【0068】
次いで、コネクタ3における保持部32の表面における、中心軸線Oの周りの全周にレーザー光を照射する。このとき、保持部32の表面における、レーザー光が照射された部位の樹脂材301が溶融して、この樹脂材301が保持部32の表面から除去される。そして、
図6に示すように、樹脂材301が除去された部位には、陥没形状の溝部321が形成される。また、溝部321内には、樹脂材301の中に含まれていた無機充填材302が露出する。
【0069】
また、種々の電気部品22が配置された回路基板2が形成される。次いで、
図10に示すように、回路基板2にコネクタ3が配置され、コネクタ3の複数の端子35及び複数のペグ36が、半田付けによって基板部21の導体に接続される。同図は、コネクタ3が配置された回路基板2、換言すればモールド樹脂5が設けられる前のコネクタ装置1を示す。
【0070】
次いで、
図1~
図5に示すように、コネクタ3が取り付けられた回路基板2及び複数のカラー4がインサートされたモールド樹脂5の、ホットメルト成形としてのインサート成形が行われ、コネクタ装置1が製造される。そして、回路基板2の全体、コネクタ3のハウジング31の保持部32、複数の端子35の根元部352、複数のペグ36、及び複数のカラー4の外周41がモールド樹脂5内に埋設される。また、複数の端子35の根元部352及び複数のペグ36と、回路基板2の基板部21の導体との半田付け部分もモールド樹脂5内に埋設される。
【0071】
ハウジング31の保持部32の外周に配置されるモールド樹脂5の一部は、溝部321内に連続して配置される。また、ハウジング31のフード部33、複数の端子35の先端部351がモールド樹脂5の外部に露出する。また、モールド樹脂5を構成するポリアミド樹脂が、コネクタ3のハウジング31を構成する液晶ポリマーに密着し、モールド樹脂5とハウジング31との界面Kが封止される。
【0072】
(作用効果)
コネクタ装置1においては、回路基板2の全体がモールド樹脂5によって被覆されていることにより、モールド樹脂5によって回路基板2を、大気中に飛散する水から保護することができる。また、コネクタ装置1の表面には、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との界面Kが位置する。この界面Kがコネクタ装置1において最も水に対する対策が必要な部位となる。
【0073】
コネクタ3のハウジング31の保持部32の表面には、相手側コネクタ62の装着方向Dに交差する方向に延びる溝部321が形成されている。この溝部321内には、無機充填材302が残されている。そして、溝部321内に、ハウジング31の保持部32の表面に配置されたモールド樹脂5の一部が充填された状態においては、モールド樹脂5の一部が溝部321内の無機充填材302に引っ掛かって抜けにくくなるアンカー効果を得ることができる。
【0074】
これにより、ハウジング31とモールド樹脂5との密着度又は接着強度が高くなり、ハウジング31とモールド樹脂5との界面Kが開きにくくなる。そのため、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の防水性能を高めることができ、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との界面Kからコネクタ装置1内に水が浸入することを防止することができる。
【0075】
また、本形態のコネクタ装置1においては、モールド樹脂5に融点又は軟化点が230℃以下のポリアミド樹脂を用い、かつコネクタ3のハウジング31に液晶ポリマー又はポリフェニレンサルファイド樹脂を用いている。このポリアミド樹脂と液晶ポリマー又はポリフェニレンサルファイド樹脂との組み合わせにより、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の防水性能を高めることができる。そして、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との界面Kからコネクタ装置1内に水が浸入することを防止することができる。
【0076】
本願発明者らの研究開発によって、ポリアミド樹脂と液晶ポリマー又はポリフェニレンサルファイド樹脂との密着性が特に優れていることが判明した。この樹脂材料同士の組み合わせによって、材料同士の界面Kの防水性能(封止性及び止水性)が向上することは、本願発明者らの研究開発によって初めて見出されたことである。
【0077】
界面Kの防水性能が向上する理由は、ポリアミド樹脂におけるアミド結合と、液晶ポリマーにおける極性基又はポリフェニレンサルファイド樹脂における極性基とが結び付くことによって、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との密着度が高くなるためであると考えられる。
【0078】
このように、本形態のコネクタ装置1によれば、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の防水性能を高めることができる。
【0079】
(確認試験)
本確認試験においては、コネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の気密性を確認する試験を行った。この確認試験においては、
図11に示すように、ハウジング31を模擬した第1樹脂部分71と、モールド樹脂5を模擬した第2樹脂部分72とが形成された試験用サンプル7を準備した。試験用サンプル7の第1樹脂部分71は、内径φb1がφ20mm、外径φb2がφ50mm、厚みu1が1mmの円筒板とした。試験用サンプル7の第2樹脂部分72は、直径φb3がφ30mm、厚みu2が2mmの円板とした。そして、第1樹脂部分71と第2樹脂部分72との軸心を合わせて、第1樹脂部分71と第2樹脂部分72とを、第2樹脂部分72を成形するときに密着させた。
【0080】
また、試験品1~6について、第1樹脂部分71における、第2樹脂部分72と対面する表面には、第1樹脂部分71の中心穴711の周りに、1つ又は複数の円環状の溝部712を形成した。この溝部712は、100μmの深さh1及び100μmの幅w1で形成した。また、複数の溝部712を形成する場合には、溝部712同士の幅方向における中心間距離w2を300μmとした。この中心間距離w2は、レーザー光を照射するときのピッチとなる。比較品としての試験品7には、溝部712は形成していない。
【0081】
試験品1~3における、コネクタ3のハウジング31を模擬した第1樹脂部分71は、ガラス繊維を含有する液晶ポリマー(LCP)によって形成されている。試験品4~6における第1樹脂部分71は、ガラス繊維を含有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)によって形成されている。また、試験品1~6における、モールド樹脂5を模擬した第2樹脂部分72は、軟化点が190℃であるポリアミド樹脂(PA)によって形成されている。
【0082】
試験品1及び試験品4の第1樹脂部分71には、1つの円環状の溝部712を形成し、試験品2及び試験品5の第1樹脂部分71には、3つの円環状の溝部712を形成し、試験品3及び試験品6の第1樹脂部分71には、5つの円環状の溝部712を形成した。一方、試験品7の第1樹脂部分71は液晶ポリマーによって形成し、試験品7の第2樹脂部分72はポリエステル(PEs)によって形成した。また、試験品7の第1樹脂部分71には、溝部712を形成しなかった。
【0083】
試験品1~7について、第1樹脂部分71は射出成形によって成形し、第2樹脂部分72はホットメルト成形によって成形した。ホットメルト成形を行う成形温度は210℃とした。
【0084】
本確認試験においては、第1樹脂部分71の中心穴711に、空気Aが供給される空気管8を接続し、空気管8に流れる空気Aの圧力を200~500kPaの間で変化させて、第1樹脂部分71と第2樹脂部分72との間に空気Aの漏洩(エアリーク)が発生したか否かを確認した。また、第1樹脂部分71の中心穴711を、空気Aによって200~500kPaの圧力で30秒間加圧した。この空気Aによる加圧は室温(25℃)において行った。試験品1~7について、空気Aの漏洩の有無を確認した結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
表1の評価結果において、空気Aによる加圧後に、空気Aの圧力が低下していない場合には、第1樹脂部分71と第2樹脂部分72との間に空気Aの漏洩が発生しなかったとして、「good」とした。一方、空気Aによる加圧後に、空気Aの圧力が低下している場合には、第1樹脂部分71と第2樹脂部分72との間に空気Aの漏洩が発生したとして、「poor」とした。
【0087】
試験品1,4については、空気Aの圧力が400kPa以下である場合に、空気Aの漏洩が発生しないことが確認できた。また、試験品2,3,5,6については、空気Aの圧力が500kPaであっても、空気Aの漏洩が発生しないことが確認できた。そして、ハウジング31に溝部712が形成された試験品1~6については、コネクタ装置1におけるコネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の、十分な止水性能(封止性能)が得られることが分かった。
【0088】
一方、ハウジング31に溝部712が形成されていない試験品7については、空気Aの圧力が300kPa以上である場合に、空気Aの漏洩が発生することが確認できた。そして、コネクタ装置1におけるコネクタ3のハウジング31とモールド樹脂5との間の止水性能(封止性能)には改善の余地があることが分かった。
【0089】
これらの結果より、コネクタ3のハウジング31の保持部32に溝部321が形成され、溝部321内に、無機充填材302としてのガラス繊維を埋没する状態でモールド樹脂5の一部が配置されたコネクタ装置1により、ハウジング31とモールド樹脂5との間の防水性能を高められることが分かった。
【0090】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 コネクタ装置
11 取付部
2 回路基板
201 板面
202 端面
21 基板部
22 電気部品
3 コネクタ
301 樹脂材
302 無機充填材
31 ハウジング
32 保持部
321 溝部
33 フード部
35 端子
351 先端部
352 根元部
353 中間部
36 ペグ
4 カラー
41 外周
42 ボルト
5 モールド樹脂
51 先端部
52 ゲート痕
61 機械部品
62 相手側コネクタ
71 第1樹脂部分
72 第2樹脂部分
7 試験用サンプル
711 中心穴
712 溝部
8 空気管
A 空気
D 装着方向
K 界面
O 中心軸線
t1,t2 厚み
h1 深さ
w1 幅
w2 中心間距離
φb1 内径
φb2 外径
φb3 直径
u1,u2 厚み