(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/04 20060101AFI20220719BHJP
D06F 25/00 20060101ALI20220719BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20220719BHJP
D06F 33/00 20200101ALI20220719BHJP
【FI】
D06F58/04
D06F25/00 Z
D06F58/02 F
D06F58/02 Q
D06F33/00 Z
(21)【出願番号】P 2019171042
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 浩司
(72)【発明者】
【氏名】菅原 道太
(72)【発明者】
【氏名】藁谷 二郎
(72)【発明者】
【氏名】田邉 耕一
(72)【発明者】
【氏名】河村 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】北 慎勇希
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-092234(JP,A)
【文献】特開平10-071292(JP,A)
【文献】特開2007-229001(JP,A)
【文献】特開2012-161511(JP,A)
【文献】特開2010-184005(JP,A)
【文献】特開2006-259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/04
D06F 25/00
D06F 58/02
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する内槽と、
前記内槽を内包し、洗濯水を溜める外槽と、
空気を加熱する加熱部と、
前記内槽に前記加熱部で加熱された温風を吹き出す第1風路と前記第1風路と異なる第2風路を有する送風部と、
前記内槽に設けられた吹き出し孔と、
前記第1風路と前記第2風路とを切り替える風路切替部と、を有し、
前記第1風路は、前記内槽上面から第1吐出口を介して前記内槽内に前記温風を吹き出し、
前記第2風路は、前記第1吐出口より後方に設けた第2吐出口から
前記吹き出し孔を通して前記内槽内に前記温風を吹き出
し、
前記第2風路から風を送り込む際は、前記内槽の回転を停止させ、前記吹き出し孔と前記第2吐出口とが対向する位置で静止させることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1記載の洗濯機であって、
前記第2風路は、前記第1風路より空気通過断面積が小さい、洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等を洗濯する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯機の乾燥機能はヒータで加熱された温風を送風ファンによって衣類に吹付け、温風によって衣類に含まれた水分は蒸発し、水分を含んだ空気は循環経路に導かれ、この循環経路に設けられた除湿機能により水分が取り除かれる。また、乾燥工程の途中にて温風を内槽の下側や側面から吹出すことにより、衣類を持ち上げ、乾燥効率の向上やしわの低減を図っている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのような送風経路を用いた場合、しわを伸ばす為に必要な高速・高圧の風路が長くなってしまうことにより、圧力損失が発生し吹出す温風が弱くなってしまうことや、温度低下が発生してしまう問題がある。さらに、使用者により近い位置に吹き出し口がある為、風が吹き出す際の音が伝わりやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、衣類のしわを低減して乾燥仕上がりが良く、乾燥効率を向上させ、吹出し音の低減する乾燥機能を備えた洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の洗濯機は、衣類を収容する内槽と、前記内槽を内包し、洗濯水を溜める外槽と、空気を加熱する加熱部と、前記内槽に前記加熱部で加熱された温風を吹き出す第1風路と前記第1風路と異なる第2風路を有する送風部と、前記内槽に設けられた吹き出し孔と、前記第1風路と前記第2風路とを切り替える風路切替部と、を有し、前記第1風路は、前記内槽上面から第1吐出口を介して前記内槽内に前記温風を吹き出し、前記第2風路は、前記第1吐出口より後方に設けた第2吐出口から前記吹き出し孔を通して前記内槽内に前記温風を吹き出し、前記第2風路から風を送り込む際は、前記内槽の回転を停止させ、前記吹き出し孔と前記第2吐出口とが対向する位置で静止させる構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣類のしわを低減して乾燥仕上がりが良く、乾燥効率を向上させ、吹出し音の低減する乾燥機能を備えた洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機の構成説明図である。
【
図2】本発明における上方から風が吹きこむ様子を示す縦断面図である。
【
図3】本発明における下方から風が吹きこむ様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る洗濯機は、以下の実施形態例に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0011】
<洗濯乾燥機>
図1は、本発明の実施形態に係る洗濯機(洗濯乾燥機)の構成説明図である。
【0012】
図1に示すように、洗濯乾燥機1は、衣類等を収容する内槽である洗濯兼脱水槽8の回転軸が略鉛直方向の縦型式洗濯機(縦型式洗濯乾燥機)である。この洗濯乾燥機1の筐体2の上部には上面カバー2aが設けられており、上面カバー2aには、洗濯兼脱水槽8を内包し、洗濯水を溜める外蓋3が設けられている。外蓋3は、後ろ側に開くことにより、開口部2bを開口し、洗濯兼脱水槽8に衣類等(洗濯物)が出し入れ可能になっている。
【0013】
上面カバー2aの奥側(後側)には、水道栓からの給水ホース接続口4及び風呂の残り湯を吸引する吸水ホース接続口(図示省略)が設けられている。
【0014】
洗濯乾燥機1は、筐体2内に、洗濯兼脱水槽8、外槽9、駆動装置10、洗剤・仕上剤の投入装置11、給水ユニット7、乾燥ダクト12、洗い・すすぎ・脱水・乾燥等の各工程の制御を行う制御部(不図示)と、を備えている。
【0015】
洗濯兼脱水槽8は、有底円筒形状を呈し、ステンレス鋼板等で形成された胴板8aを有している。胴板8aには、通水及び通風のための多数の貫通孔8a1(一部のみ図示)が形成されている。洗濯兼脱水槽8は、内側底面に回転翼8bを備える。
【0016】
外槽9は、有底円筒形状を呈し、洗濯兼脱水槽8を同軸上に内包し、その上部に外槽カバー9aを備えて構成されている。洗濯乾燥機1のユーザは、外蓋3及び外槽カバー9aの蓋部材9cを開くことにより、開口部2bから洗濯兼脱水槽8内に洗濯物の出し入れを行うことができる。
【0017】
駆動装置10は、外槽9の底面の外側中央に配置されている。この駆動装置10は、モータ10aとクラッチ機構10bとを有し、駆動装置10の回転軸10cが外槽9を貫通し、洗濯兼脱水槽8及び回転翼8bと結合するように構成されている。クラッチ機構10bは、モータ10aの回転動力を洗濯兼脱水槽8及び回転翼8bの少なくともいずれかに伝達する機能を有する。モータ10aは、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタ等で構成される回転検出装置5と、モータ10aに流れる電流を検出するモータ電流検出装置6を備える。
【0018】
投入装置11は、上面カバー2aの手前側に備えられる。洗剤や仕上剤の投入は、投入ホース11aにより水道水と共に外槽9と洗濯兼脱水槽8の間に行われる。
【0019】
給水ユニット7は、上面カバー2aの奥側に設けられる。この給水ユニット7は、給水ホース接続口4からの水道水を投入装置11、水冷除湿機構(図示省略)へ給水する。また、給水ユニット7は、給水ホース接続口4からの水道水や吸水ホース接続口からの風呂水を、注水ホース11bを介して、外槽9と洗濯兼脱水槽8の間から外槽9内に注水することができる。また、給水ユニット7は、給水ホース接続口4からの水道水を、洗浄ホース11cを介して洗濯兼脱水槽8の上部に注水することができる。
【0020】
外槽9の底面に設けられた落込部9mは、排水弁14を介して、洗濯水排水路15と連通するように接続されている。
【0021】
そして、この洗濯水排水路15には、機外に排水を送り出す図示しない排水ホースが接続されている。
【0022】
ちなみに、排水弁14を閉弁することにより、外槽9内に洗い水やすすぎ水を貯水可能となる。また、排水弁14を開弁することにより、外槽9内の水(洗い水、すすぎ水)を、洗濯水排水路15を介して、洗濯乾燥機1の機外へ排水することができる。
【0023】
乾燥ダクト12は、筐体2の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽9の落込部9mとゴム製の蛇腹管12aによって接続されている。乾燥ダクト12内には、水冷除湿機構(図示省略)が内蔵されており、給水ユニット7は、この水冷除湿機構に冷却水(水道水)を供給する。冷却水は乾燥ダクト12の壁面を伝わって流下して落込部9mに入り、洗濯水排水路15を通り機外へ排出される。
【0024】
洗濯兼脱水槽8は、胴板8aの上端縁部に合成樹脂等で形成されたバランスリング(流体バランサともいう)8cを備えている。このバランスリング8cは、その内部に比重の大きな流体を封入して構成され、洗濯兼脱水槽8の回転時に洗濯物の偏り等によって偏心が生じたときに、バランスリング8c内での流体の移動によって偏心をキャンセルし、回転のバランスを維持する働きを有する。
【0025】
外槽カバー9aは、略半円形状の投入口を有し、外槽9の上端縁部に取り付けられる。なお、投入口には、開閉可能に取り付けられた蓋部材9cが設けられている。
【0026】
乾燥ダクト12の出口はファン13の吸気口と接続され、ファン13の出口は、空気を加熱する加熱部であるヒータ16と接続されている。ヒータ16の出口は、風路切替部20に接続されており、風路切替部20を介し、第1風路又は第2風路へ分岐される。第1風路はゴム製の蛇腹管17を介して、第1吐出口18と接続されている。第2風路はゴム製の蛇腹管21を介して、第2吐出口22へと接続されている。なお、ファン13やヒータ16や乾燥ダクト12を含み、空気(風)を吹き出す送風部は、は、第1風路と第2風路を備え、第1風路と第2風路は、洗濯兼脱水槽8に加熱部であるヒータ16で加熱された温風を吹き出すが、第2風路は第1の風路とは物理的に異なる位置に設けられている。
【0027】
ファン13が駆動すると、外槽9内の空気が落込部9mを介して乾燥ダクト12に流れ込む。そして、乾燥ダクト12で水冷除湿された空気は、ファン13から吐出され、次いでヒータ16で加熱された後、高温低湿の風となって第1吐出口18又は第2吐出口22から洗濯兼脱水槽8内に向けて吹き出される。つまり、第1風路は、洗濯兼脱水槽8の上面から第1吐出口18を介して洗濯兼脱水槽内に温風を吹き出し、第2風路は、第1吐出口18より後方に設けた第2吐出口22から洗濯兼脱水槽内に温風を吹き出すものである。
【0028】
なお、図示していないが、落込部9と排水弁14の間には、洗濯水の温度や、乾燥運転中に洗濯水排水路15から機外に排出される空気の温度を検出する温度センサが設けられている。
【0029】
このような構成を備えた洗濯乾燥機において、次に本発明の特徴的な構成とその動作を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る洗濯機(洗濯乾燥機)の構成説明図である。
図2は第1吐出口18から空気が洗濯兼脱水槽8内に吹きこまれている様子(第1の風路の様子)を示している。
図3は第2吐出口22から空気が洗濯兼脱水槽8内に吹きこまれている様子(第2の風路の様子)を示している。
【0030】
図1の通り、本体のファン13は本体中心より上面後方に配置されている。第1吹出口18は第2吐出口22より本体前面側に配置されている。
【0031】
洗濯乾燥コースや乾燥コースが設定されている場合は、乾燥を実行する。この乾燥は排水弁14を解放したままの状態として、洗濯工程と同様に洗濯兼脱水槽8を静止させた状態で回転翼8bを正逆回転させながら、乾燥ダクト12の後方に設けたファン13を運転させることによって、外槽9内の空気を落込部9mから乾燥ダクト12内に吸い出し、この乾燥ダクト12内を通過するときに該乾燥ダクト12内で水冷除湿を行い、リントフィルタを(図示省略)通して糸屑を捕集し、ヒータ16によって加熱した後に第1吐出口18または、第2吐出口22から洗濯兼脱水槽8内に吹きこむことにより行われる。乾燥は温度センサによって温風の温度を監視しながら実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに終了する。
【0032】
第1吐出口18は外槽9の上面に位置し、衣類上面全体に風を当てる必要がある為、第2吐出口22に比べて空気通過断面積は大きくなっている。
【0033】
第2吐出口22は外槽9の側面下部に位置し、衣類を持ち上げて、押し広げる必要がある為、高速・高圧の風が吹き出せるように第1吐出口18に比べて空気通過断面積は小さくなっている。
【0034】
乾燥運転時は風路切替部20によって、適宜第1風路と第2風路の切替が行われる。
【0035】
風路切替部20が風路の切替を行う際には、ファン13の回転を低下させた後、ヒータ16の加熱能力を低下させ、風路の切替を実施する。つまり、各工程を制御する制御部は、送風部の送風量を制御可能とし、その制御部は、乾燥行程中に、風路切替部20にて風路を変更する前に、送風部の送風能力を一時的に低下または停止させ、その後に加熱部であるヒータ16の加熱能力を低下させ、その後に制御部が風路切替部20を動作させて風路を切り替える構成とする。
【0036】
第1風路を介し、第1吐出口18から風を送り込む際は、外槽9の上部から衣類の上面に向けて吹付ける。
【0037】
洗濯兼脱水槽8、または回転翼8bを回転させることにより衣類全体を撹拌しながら加熱させ乾燥を行う。
【0038】
第2風路を介し、第2吐出口22から風を送り込む際は、洗濯兼脱水槽8の回転を停止させて、温風吹き出し孔23と第2吐出口22とが対向した位置で静止させる。
【0039】
第2吐出口22から吹出した風は吹出し孔23より衣類に向けて下方向から吹付けられ、回転翼8bの回転と合わせて衣類が持ち上げられる。持ち上げられた衣類にさらに風が当たることによって、衣類が押し広げられ、乾燥中に発生するしわが低減する。
【0040】
このとき、第2吐出口22が第1吐出口18より後方にある為、ファン13に対し近い位置にあり、ファンから送り出される風の圧力損失を比較的小さくすることが可能となる。
【0041】
また、第2吐出口22が第1吐出口18より後方にある為、ヒータ16に対し従来より近い位置にあり、ヒータ16によって加熱された空気が、温度を比較的下げること無く、洗濯兼脱水槽8に吹き出すことが可能となる。
【0042】
第2吐出口22からは高速・高圧の風が吹き出されるため、吹出す際の騒音が大きくなる傾向がある。今回は第1吐出口18より第2吐出口22を本体後方に配置することにより、使用者から第2吐出口22の位置を離すことにより、騒音を伝わりにくくすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 洗濯乾燥機
8 洗濯兼脱水槽
9 外槽
8b 回転翼
13 ファン
12 乾燥ダクト
16 ヒータ
17 蛇腹管
18 第1吐出口
20 風路切替部
21 蛇腹管
22 第2吐出口
23 吐出し孔