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特許7106514不織布および繊維のためのポリエステル中のCaCO3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】不織布および繊維のためのポリエステル中のCaCO3
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/011 20120101AFI20220719BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
D04H3/011
D01F6/92 301M
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019232746
(22)【出願日】2019-12-24
(62)【分割の表示】P 2015550049の分割
【原出願日】2013-12-20
(65)【公開番号】P2020090771
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】12199746.4
(32)【優先日】2012-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/748,779
(32)【優先日】2013-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】エリク・ラウルセン
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・プッレーガ
(72)【発明者】
【氏名】タッツィオ・フォルネラ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ティンクル
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・レンチュ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-257014(JP,A)
【文献】特公平01-054445(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/027732(WO,A1)
【文献】特表2007-514799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む不織布であって、
前記炭酸カルシウムは、前記不織布内に、前記不織布の全重量に基づいて、10から20重量%の量で存在し、ならびに、1.2から1.8μmの平均粒径d50および4から7μmのトップカット粒径d98を有し、
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの充填材を含む前記不織布は、0.5から40μmの直径を有する繊維および/またはフィラメントを含み、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであり、
前記ポリエチレンテレフタレートの量は、当該少なくとも1つのポリマーの総量100重量%に対して少なくとも75重量%である、
不織布。
【請求項2】
前記ポリエステルが、5000から100000g/molの数平均分子量を有する請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記ポリエステルが、10000から50000g/molの数平均分子量を有する請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記ポリエステルが、15000から20000g/molの数平均分子量を有する請求項2に記載の不織布。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムが、粉砕された炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理された炭酸カルシウムまたはこの混合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
前記炭酸カルシウムが、6から7μmのトップカット粒径d98を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項7】
a)ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材の混合物を提供するステップと、
b)前記混合物を0.5から40μmの直径を有する繊維および/またはフィラメントに成形するステップと、
c)前記繊維および/またはフィラメントから不織布を形成するステップ、ここで、前記炭酸カルシウムは、前記不織布内に、前記不織布の全重量に基づいて、10から20重量%の量で存在するステップ、
からなる不織布を製造するための方法であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであり、前記炭酸カルシウムは、1.2から1.8μmの平均粒径d50および4から7μmのトップカット粒径d98を有し、前記ポリエチレンテレフタレートの量は、当該少なくとも1つのポリマーの総量100重量%に対して少なくとも75重量%である、
方法。
【請求項8】
ステップb)において、前記混合物が、押出工程によって繊維に成形される請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記不織布が、前記繊維を表面またはキャリヤー上に集めることによって形成される請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)およびc)が、多層不織布の不織布を製造するために2回以上繰り返される請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む不織布内での充填材としての炭酸カルシウムの使用であって、
前記炭酸カルシウムは、前記不織布内に、前記不織布の全重量に基づいて、10から20重量%の量で存在し、ならびに、1.2から1.8μmの平均粒径d50および4から7μmのトップカット粒径d98を有し、
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの充填材を含む前記不織布は、0.5から40μmの直径を有する繊維および/またはフィラメントを含み、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであり、
前記ポリエチレンテレフタレートの量は、当該少なくとも1つのポリマーの総量100重量%に対して少なくとも75重量%である、
使用。
【請求項12】
ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む不織布の製造のための繊維の使用であって、
前記繊維が0.5から40μmの直径を有し、
前記炭酸カルシウムは、前記不織布内に、前記不織布の全重量に基づいて、10から20重量%の量で存在し、ならびに、1.2から1.8μmの平均粒径d50および4から7μmのトップカット粒径d98を有し、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートである、
使用。
【請求項13】
建造物、防水材、断熱材、防音材、屋根材、消費者向けアパレル、室内装飾産業および衣料産業、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材における請求項1からのいずれか一項に記載の不織布の使用。
【請求項14】
建造物、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材から選択される請求項1からのいずれか一項に記載の不織布を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、不織布を調製するための工程、当該不織布を含む物品および当該不織布の使用ならびに不織布の製造のための繊維の使用および不織布のための充填材としての炭酸カルシウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、繊維またはフィラメントを一緒に接合することによって作られるシートまたはウェブ構造体である。これらの不織布は、これらが製造される工程および使用される材料に応じて平坦に、またはかさ高くすることができて、さまざまな用途に適応させることができる。織布または編地などの他のテキスタイルとは対照的に、不織布は、ある一定のパターンのウェブに変えるために、ヤーンの紡績の準備段階を経る必要がない。特定の使用に必要な材料の強度に応じて、ある一定のパーセントのリサイクル布を不織布内で使用することができる。反対に、一部の不織布は、適切な処理および設備があれば、使用後にリサイクルできる。従って、不織布は、ある種の用途向け、特に病院、学校または養護ホームなど、使い捨てまたは一回使用の製品が重要な分野および産業において、より環境に優しい布であることがある。
【0003】
今日、不織布は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドまたはポリエステルなどの熱可塑性ポリマーから主に製造される。ポリエステル繊維またはフィラメントの利点は、これらの高い結晶度、高強力および高強度である。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、最も広く使用されているポリエステルの種類で、PETの高い汎用性の理由となっている高弾性率、低収縮、ヒートセット安定性、耐光性および耐薬品性によって特徴づけられる。PETの主要な欠点の1つは、遅い結晶化速度であり、このため、射出成形などの製造工程において、妥当なサイクルタイムが可能でない。従って、タルクなどの核剤がしばしば添加される。しかし、これらの異質粒子は応力集中部として作用する可能性があり、これによって、ポリマーの機械的特性に影響を与えることがある。従って、有核PET(nucleated PET)はしばしば、ガラス繊維で補強される。
【0004】
タルク充填PETは、Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,1999,37,847-857に発表されている「Oxygen barrier properties of crystallized and talc-filled poly(ethylene terephthalate)」と題するSekelikらの論文に開示されている。US5,886,088Aは、無機物の核剤を含むPET樹脂組成に関係がある。炭酸カルシウムが充填されている熱可塑性ポリマー材料を製造するための方法が、WO2009/121085A1に記載されている。WO2012/052778A1は、ポリエステルおよび炭酸カルシウムまたはマイカ充填材を含む引き裂き可能なポリマーフィルムに関する。改質炭酸カルシウムを含むPET繊維の紡糸は、Boonsri Kuskthamにより検討されており、「Spinning of PET fibres mixed with calcium carbonate」と題する論文に記載されており、この論文は、Asian Journal of Textile,2011,1(2),106-113に発表された。
【0005】
二酸化チタンおよび少なくとも1つの鉱物充填材を含む押し出された繊維および不織ウェブがUS6,797,377B1に開示されている。WO2008/077156A2には、ポリマー樹脂および1つの充填材を含むスパン積層繊維ならびに当該繊維を含む不織布が記載されている。改善された結合組成物を伴う合成ポリマーの不織布が、EP2465986A1に開示されている。WO97/30199は、不織布の製造に適した繊維またはフィラメントに関し、繊維またはフィラメントは、実質的にポリオレフィンおよび無機粒子からなる。
【0006】
上記を考えると、ポリエステルベースの不織布の特性を改善することは、当業者にとって依然として重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第5886088号明細書
【文献】国際公開第2009/121085号
【文献】国際公開第2012/052778号
【文献】米国特許第6797377号明細書
【文献】国際公開第2008/077156号
【文献】欧州特許出願公開第2465986号明細書
【文献】国際公開第97/30199号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Sekelik et al.,Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,1999,37,847-857
【文献】Boonsri Kusktham,Asian Journal of Textile,2011,1(2),106-113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改善された柔らかな感触およびより高い剛性を有する不織布を提供することである。また、疎水性または親水性に関して適応させることができる不織布を提供することも望ましいであろう。また、不織布の品質に著しい影響を与えることなく、低減した量のポリマーを含む不織布を提供することも望ましいであろう。
【0010】
また、ポリエステルベースのポリマー組成物、特に、溶融加工中のサイクルタイムを短くすることができるPET組成物から不織布を製造するための工程を提供することも本発明の目的である。また、リサイクルポリエステル、特にリサイクルPETの使用を可能にする不織布を製造するための工程を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的および他の目的は、本明細書において独立項に定義される主題によって解決される。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む不織布が提供される。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、
a)ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材の混合物を提供するステップと、
b)混合物を繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体に成形するステップと、
c)繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体から不織布を形成するステップと
を含む、不織布を製造するための工程を提供する。
【0014】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明の不織布を含む物品を提供し、ここで、当該物品は、建造物、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材から選択される。
【0015】
さらに別の態様によれば、本発明は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含む不織布内における充填材としての炭酸カルシウムの使用を提供する。
【0016】
さらに別の態様によれば、本発明は、不織布の製造のための繊維の使用を提供し、ここで、繊維は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。
【0017】
さらに別の態様によれば、本発明は、建造物、防水材、断熱材、防音材、屋根材、消費者向けアパレル、室内装飾産業および衣料産業、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材における本発明の不織布の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項に定義される。
【0019】
1つの実施形態によれば、ポリエステルは、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸またはこの混合物またはこのコポリマーからなる群から選択され、好ましくは、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。別の実施形態によれば、ポリエステルは、5000から100000g/mol、好ましくは10000から50000g/mol、より好ましくは15000から20000g/molの数平均分子量を有する。
【0020】
1つの実施形態によれば、炭酸カルシウムは、粉砕された炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理された炭酸カルシウムまたはこの混合物であり、好ましくは表面処理された炭酸カルシウムである。別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、0.1から3μm、好ましくは0.4から2.5μm、より好ましくは1.0から2.3μm、最も好ましくは1.2から1.8μmの平均粒径d50を有する。さらに別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1から10μm、好ましくは5から8μm、より好ましくは4から7μm、最も好ましくは6から7μmのトップカット粒径d98を有する。さらに別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、不織布内に、不織布の全重量に基づいて、0.1から50重量%、好ましくは0.2から40重量%、より好ましくは1から35重量%の量で存在する。
【0021】
本発明の工程の1つの実施形態によれば、ステップb)において、混合物は、好ましくは押出工程によって、より好ましくはメルトブロー工程、スパンボンド工程またはこの組み合わせによって繊維に成形される。本発明の工程の別の実施形態によれば、不織布は、繊維を表面またはキャリヤー上に集めることによって形成される。本発明の工程のさらに別の実施形態によれば、ステップb)およびc)は、多層不織布、好ましくはスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(MSM)、スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(SMSM)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(MSMS)、スパンボンド-メルトブロー-メルトブロー-スパンボンド(SMMS)またはメルトブロー-スパンボンド-スパンボンド-メルトブロー(MSSM)の不織布を製造するために2回以上繰り返される。
【0022】
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有するものと理解されるべきである。
【0023】
本発明の文脈において用いられる用語「結晶化度」は、ポリマー内の整然とした分子の部分を指す。残りの部分は「非晶質」と呼ばれる。ポリマーは、溶融、機械的な伸張または溶媒の蒸発によって、冷却時に結晶化することがある。結晶性領域は、一般に、非晶性領域よりも密に充填されており、結晶化が、ポリマーの光学的、機械的、熱的および化学的性質に影響を与えることがある。結晶化度はパーセントで記述され、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる。
【0024】
本発明の意味における「粉砕された炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰石、大理石、方解石、白亜などの天然物から得られ、粉砕、ふるい分け、および/または、例えばサイクロンや分級機による分別などの湿式および/または乾式処理を通じて加工された炭酸カルシウムである。
【0025】
本発明の文脈において用いられる用語「固有粘度」は、溶液中のポリマーが溶液の粘度を高める能力の測定値であり、dl/gで記述される。
【0026】
本発明の意味における「改質炭酸カルシウム」(MCC)は、内部構造の改質または表面反応物、即ち、「表面を反応させた炭酸カルシウム」を伴う天然の粉砕された炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムを特徴としてもよい。「表面を反応させた炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウム、および不溶性で、好ましくは少なくとも部分的に結晶性の、酸の陰イオンのカルシウム塩を表面に含む材料である。好ましくは、不溶性のカルシウム塩は、少なくとも炭酸カルシウムの一部の表面から延びている。当該陰イオンの当該少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を生成するカルシウムイオンは、大部分が出発の炭酸カルシウム材料に由来する。MCCは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2264109A1、EP2070991A1または2264108A1に記載されている。
【0027】
本発明において、用語「不織布」は、繊維、フィラメントまたはフィルム状のフィラメント構造体の層またはネットワークを絡み合わせることにより製造される平坦で柔軟な多孔質シート構造体を指す。
【0028】
本文書全体にわたり、炭酸カルシウム充填材の「粒径」は、炭酸カルシウム充填材の粒径の分布で表される。値dは、d未満の直径を有する粒子が、重量でx%となる直径を表す。これが意味するところは、d20の値は、全粒子の20重量%がこれよりも小さい粒径であり、d98の値は、全粒子の98重量%がこれよりも小さい粒径であるということである。また、d98の値は、「トップカット」とも呼ばれる。従って、d50の値は重量中位粒径であり、即ち、全ての粒子のうちの50重量%は、この粒径よりも大きいか、または小さい。本発明において特に記載のない限り、粒径は重量中位粒径d50として記述される。重量中位粒径d50の値またはトップカット粒径d98の値を求めるために、Micromeritics社(米国)製Sedigraph5100または5120装置を用いることができる。
【0029】
本明細書において用いられる用語「ポリマー」は、概して、ホモポリマー、および、例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互のコポリマーなどのコポリマー、ならびにこのブレンドおよび変更形態を含む。
【0030】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は合成材料であり、概して、水性の環境中において二酸化炭素と水酸化カルシウム(消石灰)との反応に続いて沈降させることにより、または水中でカルシウムおよび炭酸塩源を沈降させることにより得られる。さらに、沈降炭酸カルシウムは、カルシウム塩および炭酸塩、例えば、塩化カルシウムおよび炭酸ナトリウムを水性の環境中に導入した生成物も可能である。PCCはバテライト、方解石またはアラゴナイトでもよい。PCCは、例えば、EP2447213A1、EP2,524,898A1、EP2371766A1または未公開の欧州特許出願第12164041.1号に記載されている。
【0031】
本発明の意味において、「表面処理された炭酸カルシウム」は、処理層または被覆層、例えば、脂肪酸、界面活性剤、シロキサンまたはポリマーの層を含む粉砕、沈殿または改質炭酸カルシウムである。
【0032】
本明細書および請求項において「を含む(comprising)」という用語が用いられる場合、この用語により他の要素は除外されない。本発明において、「からなる(consisting of)」という用語は、「を含む(comprising of)」という用語の好ましい実施形態と見なされる。以下で、ある群が、少なくともある一定の数の実施形態を含むよう定義されている場合は、これもまた、これらの実施形態のみからなることが好ましい群を開示するものと理解されるべきである。
【0033】
単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば「a(一つの)」、「an(一つの)」または「the(前記)」が用いられる場合、別途具体的に記載しない限り、この名詞の複数形が含まれる。
【0034】
「得られる(obtainable)」または「定義できる(definable)」および「得られた(obtained)」または「定義された(defined)」などの用語は、同義で用いられる。これが意味するところは、例えば、文脈により特に明確に定められていない限り、「得られた」という用語は、例えば、実施形態が、例えば、「得られた」という用語の後に続くステップの順序によって得られなければならないということを示すものではないということである。もっとも、このような限定された理解は、「得られた」または「定義された」という用語によって、好ましい実施形態として常に含まれる。
【0035】
本発明の不織布は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。以下で、本発明の生成物の詳細および好ましい実施形態をさらに詳細に記載する。これらの技術的な詳細および実施形態は、当該不織布を製造するための本発明の工程ならびに不織布、繊維、組成物および炭酸カルシウムの本発明の使用にも適用されると理解されるべきである。
【0036】
少なくとも1つのポリマー
本発明の不織布は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含む。
【0037】
ポリエステルは、主鎖にエステル官能基を含み、一般に重縮合反応により得られるポリマーの一種である。ポリエステルは、クチンなどの天然に存在するポリマー、ならびにポリカーボネートまたはポリブチレートなどの合成ポリマーを含んでもよい。これらの構造に応じて、ポリエステルは生分解性でもよい。
【0038】
1つの実施形態によれば、ポリエステルは、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸またはこの混合物またはこのコポリマーからなる群から選択される。これらのポリマーのいずれかが純粋な形態、即ちホモポリマーの形態であってもよく、または、共重合、および/または主鎖もしくは主鎖の側鎖への1つまたは複数の置換基の付加により改質されてもよい。
【0039】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーはポリエステルからなる。ポリエステルは、ただ1つの特定のタイプのポリエステル、または1つまたは複数のタイプのポリエステルの混合物からなっていてもよい。
【0040】
少なくとも1つのポリマーは、不織布の全重量に基づいて、不織布内に少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の量で存在することができる。1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、不織布内に、不織布の全重量に基づいて、50から99重量%、好ましくは60から98重量%、より好ましくは65から95重量%の量で存在する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。
【0042】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は縮合ポリマーであり、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートのいずれかをエチレングリコールと縮合させることによって工業的に製造されてもよい。
【0043】
PETは、モノマーのジエチルテレフタレートおよびエチレングリコールを用いるエステル交換によって、またはモノマーのテレフタル酸およびエチレングリコールを用いる直接エステル化によって重合されてもよい。エステル交換および直接エステル化のいずれの工程も、バッチ式で、または連続的に重縮合ステップと組み合わせられる。バッチ式のシステムは2つの反応容器を必要とし、1つはエステル化用またはエステル交換用、1つは重合用である。連続的なシステムは少なくとも3つの容器を必要とし、1つはエステル化用またはエステル交換用、もう1つは過剰なグリコールを低減するため、さらにもう1つは重合用である。
【0044】
またPETは、固相重縮合によって製造されてもよい。例えば、このような工程において、溶融重縮合は、ポリマーが固体のフィルムにキャストされる1.0から1.4dl/gの固有粘度をプレポリマーが有する点まで継続される。予備結晶化は、例えば、200℃を超えて、ポリマーの望ましい分子量が得られるまで加熱することにより実施される。
【0045】
1つの実施形態によれば、PETは、連続重合工程、バッチ式重合工程または固相重合工程から得られる。
【0046】
本発明によれば、「ポリエチレンテレフタレート」という用語は、非改質および改質ポリエチレンテレフタレートを含む。ポリエチレンテレフタレートは、直鎖状ポリマー、分岐ポリマーまたは架橋ポリマーでもよい。例えば、グリセロールを二酸またはこの無水物と反応させた場合、それぞれのグリセロールは分岐点が発生する。内部でカップリングが起きる場合、例えば、ヒドロキシル基、および同じ分子または異なる分子の分岐の酸基の反応によって、ポリマーは架橋される。場合により、ポリエチレンテレフタレートは、好ましくはCからC10のアルキル基、ヒドロキシル基および/またはアミン基で置換することができる。1つの実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチル、ヒドロキシルおよび/またはアミン基で置換される。また、ポリエチレンテレフタレートは、共重合により、例えば、シクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸を用いて改質することもできる。
【0047】
加工および熱履歴に応じて、PETは、非晶性ポリマーおよび半結晶性ポリマーの両方として、即ち結晶性部分および非晶性部分を含むポリマーとして存在してよい。半結晶性材料は、結晶構造および粒径に応じて、透明または不透明および白色に見えることがある。
【0048】
1つの実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは非晶性である。別の実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは半結晶性であり、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートは、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の結晶化度を有する。さらに別の実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、10から80%、より好ましくは20から70%、最も好ましくは30から60%の結晶化度を有する。結晶化度は、示差走査熱量測定法(DSC)で測定されてもよい。
【0049】
本発明の1つの実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、0.3から2.0dl/g、好ましくは0.5から1.5dl/g、より好ましくは0.7から1.0dl/gの固有粘度(IV)を有する。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、50から200℃、好ましくは60から180℃、より好ましくは70から170℃のガラス転移温度(T)を有する。
【0051】
本発明の1つの実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、5000から100000g/mol、好ましくは10000から50000g/mol、より好ましくは15000から20000g/molの数平均分子量を有する。
【0052】
ポリエチレンテレフタレートは、バージンポリマー、リサイクルポリマーまたはこの混合物でもよい。リサイクルポリエチレンテレフタレートは、消費後PETボトル、プリフォームPET屑、再粒状化PETまたは再生PETから得られてもよい。
【0053】
1つの実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートの総量に基づいて、10重量%、好ましくは25重量%、より好ましくは50重量%、最も好ましくは75重量%のリサイクルPETを含む。
【0054】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーはポリエチレンテレフタレートからなる。PETは、ただ1つの特定のタイプのPETまたは2つ以上のタイプのPETの混合物からなっていてもよい。
【0055】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、別のポリマー、好ましくはポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリベンゾイミダゾールまたはこの混合物またはこのコポリマーを含む。このようなポリマーの例は、ポリヘキサメチレンジアジパミド、ポリカプロラクタム、芳香族または部分的に芳香族のポリアミド(「アラミド」)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンゾイミダゾール類またはレーヨンである。
【0056】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つのポリマーの総量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%のポリエチレンテレフタレートを含む。
【0057】
少なくとも1つの充填材
本発明によれば、不織布は、炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。少なくとも1つの充填材は、少なくとも1つのポリマー内に分散している。
【0058】
ポリエステルベースの不織布内における炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材の使用は、従来の不織布と比べて、ある特定の利点を有する。例えば、不織ウェブの疎水性または親水性は、適切な炭酸カルシウム充填材を用いることによって、所期の用途に適合させることができる。さらに、炭酸カルシウム充填材を使用すると、不織布の品質に著しい影響を与えることなく、不織布の製造においてポリエステルを削減することができる。さらに、驚いたことに本発明者らは、炭酸カルシウムが充填材としてPETに添加されると、ポリマーがより高い熱伝導率を示すことを見出したが、これにより、ポリマーの冷却速度がより速くなる。さらに、いかなる理論によっても制限されることなく、炭酸カルシウムはPETの核剤として作用し、従ってPETの結晶化温度が高くなると考えられる。この結果、結晶化速度が大きくなり、これにより、例えば、溶融加工中のサイクルタイムがさらに短くなる。また、本発明者らは、炭酸カルシウム充填材を含むPETから製造される不織ウェブは、PETのみから作られる不織ウェブと比べて、改善された柔らかな感触およびより高い剛性を有することも見出した。
【0059】
1つの実施形態によれば、炭酸カルシウムは、粉砕された炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理された炭酸カルシウムまたはこの混合物である。好ましくは、炭酸カルシウムは表面処理された炭酸カルシウムである。
【0060】
粉砕された(または天然の)炭酸カルシウム(GCC)は、石灰石または白亜などの堆積岩から、または変成大理石岩(metamorphic marble rock)から採掘される炭酸カルシウムの天然に存在する形態であると理解される。炭酸カルシウムは、3つのタイプの結晶多形、即ち、方解石、アラゴナイトおよびバテライトとして存在することが知られている。方解石は、最も一般的な結晶多形であるが、最も安定な炭酸カルシウムの結晶形であると考えられている。あまり一般的でないのはアラゴナイトであり、離散または集合した斜方晶系の針状結晶構造を有する。バテライトは最もまれな炭酸カルシウムの多形であり、一般に不安定である。粉砕された炭酸カルシウムは、ほぼ排他的にカルサイトの多形であり、これは、三方晶系菱面体であるといわれており、炭酸カルシウムの多形のなかでも最も安定である。本願の意味において、炭酸カルシウムの「源」という用語は、炭酸カルシウムが得られる、天然に存在する鉱物材料を指す。炭酸カルシウムの源は、炭酸マグネシウム、アルミノシリケートなどの天然に存在する別の成分を含んでもよい。
【0061】
本発明の1つの実施形態によれば、粉砕された炭酸カルシウム(GCC)の源は、大理石、白亜、方解石、ドロマイト、石灰石またはこの混合物から選択される。好ましくは、粉砕された炭酸カルシウムの源は大理石から選択される。本発明の1つの実施形態によれば、GCCは乾式粉砕により得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは湿式粉砕およびこの後の乾燥により得られる。
【0062】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は合成材料であり、概して、水性の環境中における二酸化炭素と石灰との反応に続く沈降により、または水中でのカルシウムおよび炭酸イオン源の沈降により、または溶液からのカルシウムおよび炭酸イオン、例えば、CaClおよびNaCOの沈降により得られる。PCCを製造する別の可能な方法は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形、即ち、方解石、アラゴナイトおよびバテライトで存在し、これらの結晶形のそれぞれに、多くのさまざまな多形(晶癖)がある。方解石は三方晶系の構造を有し、典型的な晶癖には、偏三角面体(S-PCC)、菱面体(R-PCC)、六角柱状、卓面、コロイド状(C-PCC)、立方体および角柱状(P-PCC)などがある。アラゴナイトは斜方晶系の構造であり、典型的な晶癖には六角柱状の双晶ならびに薄く長い角柱状、曲がった刃形、急勾配の錐体、チゼル型の結晶、樹枝状、サンゴまたは蠕虫様の形状とさまざまである。バテライトは六方晶系に属する。得られたPCCのスラリーは機械的に脱水し、乾燥させることができる。
【0063】
本発明の1つの実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1つの沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形および異なる多形から選択される2つ以上の沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの沈降炭酸カルシウムは、S-PCCから選択される1つのPCC、およびR-PCCから選択される1つのPCCを含んでもよい。
【0064】
改質炭酸カルシウムは、内部構造の改質を伴うGCCまたはPCC、または表面を反応させたGCCまたはPCCを特徴としてもよい。表面を反応させた炭酸カルシウムは、GCCまたはPCCを水性懸濁液の形態で提供し、酸を当該懸濁液に加えることによって調製されてもよい。適した酸は、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸またはこの混合物である。次のステップにおいて、炭酸カルシウムは気体の二酸化炭素で処理される。硫酸または塩酸などの強酸が酸処理ステップに用いられる場合は、二酸化炭素がこの場で必然的に生成する。代替的または追加的に、二酸化炭素を外部の源から供給することができる。表面を反応させた炭酸カルシウムは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2264109A1、EP2070991A1またはEP2264108A1に記載されている。
【0065】
表面処理された炭酸カルシウムは、表面に処理層または被覆層を含むGCC、PCCまたはMCCを特徴としてもよい。例えば、炭酸カルシウムは、例えば、脂肪族カルボン酸、この塩またはエステル、またはシロキサンなどの疎水化表面処理剤で処理または被覆されてもよい。適した脂肪酸は、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などのCからC28の脂肪酸またはこの混合物である。また、炭酸カルシウムは、カチオン性またはアニオン性になるように、例えば、ポリアクリレートまたはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)で処理または被覆されてもよい。表面処理された炭酸カルシウムは、例えば、EP2159258A1に記載されている。
【0066】
1つの実施形態によれば、改質炭酸カルシウムは表面を反応させた炭酸カルシウムであり、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸またはこの混合物および二酸化炭素との反応から得られる。
【0067】
別の実施形態によれば、表面処理された炭酸カルシウムは、脂肪酸、これらの塩、これらのエステルまたはこの組み合わせを用いる処理から、好ましくは脂肪族のCからC28の脂肪酸、これらの塩、これらのエステルまたはこの組み合わせを用いる処理から、より好ましくはステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸またはこの混合物を用いる処理から得られる処理層または表面被覆を含む。
【0068】
1つの実施形態によれば、炭酸カルシウムは、0.1から3μm、好ましくは0.4から2.5μm、より好ましくは1.0から2.3μm、最も好ましくは1.2から1.8μmの平均粒径d50を有する。追加的または代替的に、炭酸カルシウムは、1から10μm、好ましくは5から8μm、より好ましくは4から7μm、最も好ましくは6から7μmのトップカット粒径d98を有する。
【0069】
炭酸カルシウムは、不織布内に、不織布の全重量に基づいて、0.1から50重量%、好ましくは0.2から40重量%、より好ましくは1.0から35重量%の量で存在することができる。別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、不織布内に、不織布の全重量に基づいて、0.5から20重量%、1.0から10重量%、5.0から40重量%、7.5から30重量%または10から25重量%の量で存在する。
【0070】
1つの実施形態によれば、炭酸カルシウムは、少なくとも1つのポリマー内に分散しており、少なくとも1つのポリマーの全重量に基づいて、0.1から50重量%、好ましくは0.2から40重量%、より好ましくは1から35重量%の量で存在する。別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、少なくとも1つのポリマー内に分散しており、少なくとも1つのポリマーの全重量に基づいて、0.5から20重量%、1.0から10重量%、5.0から40重量%、7.5から30重量%または10から25重量%の量で存在する。
【0071】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの充填材は炭酸カルシウムからなる。炭酸カルシウムは、ただ1つの特定のタイプの炭酸カルシウム、または2つ以上のタイプの炭酸カルシウムの混合物からなっていてもよい。
【0072】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの充填材は別の鉱物顔料を含む。別の顔料粒子の例には、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、粘土、焼成粘土、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、珪灰石、マイカ、ベントナイト、硫酸バリウム、セッコウまたは酸化亜鉛が含まれる。
【0073】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの充填材は、少なくとも1つの充填材の総量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の炭酸カルシウムを含む。
【0074】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの充填材は、不織布内に、不織布の全重量に基づいて、0.1から50重量%、好ましくは0.2から40重量%、より好ましくは1から35重量%の量で存在する。
【0075】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの充填材は、少なくとも1つのポリマー内に分散しており、少なくとも1つのポリマーの全重量に基づいて、1から50重量%、好ましくは2から40重量%、より好ましくは5から35重量%の量で存在する。
【0076】
本発明の1つの態様によれば、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含む不織布内での充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供される。本発明の別の態様によれば、不織布内での充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供され、ここで、充填材は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー内で分散している。
【0077】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレートを含む不織布内での充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供される。本発明の別の好ましい実施形態によれば、不織布内での充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供され、ここで、充填材は、ポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマー内で分散している。好ましくは、炭酸カルシウムは表面処理された炭酸カルシウムである。
【0078】
本発明の別の態様によれば、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマーを含む不織布繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体内での、充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供される。本発明の別の態様によれば、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマーを含む不織布繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体内での、充填材としての炭酸カルシウムの使用が提供され、ここで、充填材は、少なくとも1つのポリマー内に分散している。
【0079】
不織布
不織布は、繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体の層またはネットワークを絡み合わせることにより製造される平坦で柔軟な多孔質シート構造体である。
【0080】
本発明の1つの態様によれば、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む不織布繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体が提供される。
【0081】
1つの実施形態によれば、不織布は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含み、ここで、少なくとも1つの充填材は、少なくとも1つのポリマー内に分散している別の実施形態によれば、不織布は、繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体の形態で少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填材を含み、ここで、少なくとも1つの充填材は、少なくとも1つのポリマー内に分散している。
【0082】
繊維および/またはフィラメントは、0.5から40μm、好ましくは5から35μmの直径を有してもよい。さらに、繊維および/またはフィラメントは、任意の断面形状、例えば、円形、楕円形、長方形、ダンベル形、腎臓形、三角形または不規則な形状を有することができる。また、繊維および/またはフィラメントは、中空繊維および/または2成分繊維および/または3成分繊維にすることもできる。
【0083】
少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填材に加えて、不織布は、別の添加剤、例えば、ワックス、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、つや出し剤、界面活性剤、天然油または合成油を含んでもよい。また、不織布は、別の無機繊維、好ましくはガラス繊維、炭素繊維または金属繊維を含んでもよい。代替的または追加的に、綿、亜麻、絹または羊毛などの天然繊維を加えてもよい。また、不織布は、テキスタイル表面構造の形態で、好ましくは布、積層、編地、ニットウェアまたは不織布の形態で補強糸によって補強されてもよい。
【0084】
1つの実施形態によれば、不織布は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材からなる。別の実施形態によれば、不織布は、ポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。さらに別の実施形態によれば、不織布は、ポリエチレンテレフタレートおよび炭酸カルシウムからなる。
【0085】
例示的な実施形態によれば、不織布は、不織布の全重量に基づいて、50から99重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび1から50重量%の量の少なくとも1つの充填材、好ましくは60から98重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび2から40重量%の量の少なくとも1つの充填材、より好ましくは65から95重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび5から35重量%の量の少なくとも1つの充填材を含む。別の例示的な実施形態によれば、不織布は、不織布の全重量に基づいて、90重量%のポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、および10重量%の炭酸カルシウム、好ましくは粉砕された炭酸カルシウムからなる。さらに別の例示的な実施形態によれば、不織布は、不織布の全重量に基づいて、80重量%のポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、および20重量%の炭酸カルシウム、好ましくは粉砕された炭酸カルシウムからなる。
【0086】
本発明の1つの態様によれば、不織布を製造するための工程は、a)ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材の混合物を提供するステップと、b)混合物を繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体に成形するステップと、c)繊維、フィラメントおよび/またはフィルム状のフィラメント構造体から不織布を形成するステップとを含んで提供される。
【0087】
好ましい実施形態によれば、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであり、および/または炭酸カルシウムは表面処理された炭酸カルシウムである。
【0088】
工程ステップa)において提供されるポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材の混合物は、当技術分野において周知の任意の方法により調製することができる。例えば、少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填材は、ドライブレンドされても、溶融ブレンドされても、場合により粒状物またはペレットに成形されてもよく、または少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填材のマスターバッチが予備混合されても、場合により粒状物またはペレットに成形されても、および別のポリマーまたは充填材と混合されてもよい。
【0089】
1つの実施形態によれば、ステップb)において、混合物は、好ましくは押出工程によって、より好ましくはメルトブロー工程、スパンボンド工程またはこの組み合わせによって繊維に成形される。しかし、ポリマーを繊維に成形するための当技術分野において周知のこの他の任意の適した工程を用いてもよい。
【0090】
少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填材の混合物を繊維に成形する当技術分野において周知の任意のメルトブロー工程、スパンボンド工程またはこの組み合わせが用いられてもよい。例えば、メルトブロー繊維は、繊維を形成するために混合物を溶融し、ダイまたは小さなオリフィスを通じて混合物を押し出すことにより、および溶融したポリマー繊維を高温の空気により細くすることにより製造されてもよい。次いで、繊維を冷却および凝固するために、周囲の冷気を高温の空気流内に誘導することができる。スパンボンド工程において、混合物は、縦横の均一な配列に並べられた多数のキャピラリーを通じて溶融した混合物をポンプで押し出し、繊維に溶融紡糸することができる。押出後、繊維は高速の空気により細くすることができる。空気は、繊維に対して、所望のデニールまで延伸する延伸力を生み出す。スパンボンド工程は、不織布に、より大きな強力を与える利点を有してもよい。第2の成分は、スパンボンド工程において共押し出されてもよく、これによって特性または接合能力が追加されてもよい。
【0091】
2つの典型的なスパンボンド工程は、Lurgi法およびReifenhauser法として当技術分野において周知である。Lurgi法は、溶融したポリマーの口金オリフィスを通じての押出と、これに続く、新たに押し出されて形成されたフィラメントの空気での急冷、およびベンチュリ管を通じての吸引による延伸に基づいている。形成後、フィラメントはコンベヤベルト上にばらまかれて不織ウェブを形成する。
【0092】
Reifenhauser法は、フィラメントの急冷区域が密封されており、急冷空気流が加速されるため、空気流内へのより効果的なフィラメントの取り込みが誘導されるという点でLurgi法とは異なる。
【0093】
工程ステップb)において形成される繊維は、延伸または伸長されて分子配向を誘導し、結晶性に影響を与えてもよい。これにより、直径が小さくなり、物理特性が改善してもよい。
【0094】
本発明の1つの実施形態によれば、ステップb)において、混合物は、メルトブロー工程をスパンボンド工程と組み合わせることにより、繊維に成形される。
【0095】
メルトブロー工程をスパンボンド工程と組み合わせることにより、多層不織布を製造することができて、例えば、不織布は、スパンボンド布の2つの外層およびメルトブロー布の内層を含み、これは、スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)不織布として当技術分野において周知である。さらに、これらの工程の一方または両方は、任意の配置で、ステープル繊維のカーディング工程、または不織ステープル繊維のカーディング工程から生じる接合された布と組み合わせられてもよい。説明したこのようなラミネート布において、層は一般に、以下でさらに説明する任意選択の接合方法のうちの1つによって少なくとも部分的に固結される。
【0096】
本発明の工程により製造される不織布は、多層不織布、好ましくはスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(MSM)、スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(SMSM)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(MSMS)、スパンボンド-メルトブロー-メルトブロー-スパンボンド(SMMS)またはメルトブロー-スパンボンド-スパンボンド-メルトブロー(MSSM)の不織布にすることができる。当該不織布は、層を密着させるために、例えば、ラミネーションによって圧縮されてもよい。
【0097】
1つの実施形態によれば、本発明の工程のステップb)およびc)は、多層不織布、好ましくはスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(MSM)、スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー(SMSM)、メルトブロー-スパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(MSMS)、スパンボンド-メルトブロー-メルトブロー-スパンボンド(SMMS)またはメルトブロー-スパンボンド-スパンボンド-メルトブロー(MSSM)の不織布を製造するために2回以上繰り返される。
【0098】
1つの実施形態によれば、ステップc)において、不織布は、繊維を表面またはキャリヤー上に集めることによって形成される。例えば、繊維は、移動するスクリーンまたは成形ワイヤなど、孔のある表面に集めることができる。繊維は、シートを形成するように孔のある表面にランダムに堆積されてもよく、このシートは、真空力によって表面に保持されてもよい。
【0099】
本発明の工程の任意選択の実施形態によれば、得られた不織布は、接合ステップが施される。接合方法の例には、熱による点接合またはカレンダー加工、超音波接合、ハイドロエンタングルメント(hydroentanglement)、ニードリングおよび空気貫通接合(through-air bonding)が含まれる。熱による点接合またはカレンダー加工は一般に用いられる方法であり、接合される不織布が加熱されたカレンダーロールおよびアンビルロールを通過するものである。カレンダーロールは、通常、表面全体にわたって布全体が接合されないように、何らかの方法でパターンがつけられている。ウェブの機械的特性に影響を与えることなく、さまざまなパターンを本発明の工程において用いることができる。例えば、ウェブは、リブニットパターン、ワイヤ織パターン、ダイヤモンドパターンなどに従って接合することができる。しかし、当技術分野において周知のこの他の任意の接合方法を用いてもよい。場合により、結合剤、接着剤または他の化学薬品を結合ステップ中に加えてもよい。
【0100】
本発明の工程の別の任意選択の実施形態によれば、得られた不織布は、後処理ステップが施される。後処理工程の例は、方向配向、クレーピング、ハイドロエンタングルメントまたはエンボス加工工程である。
【0101】
本発明の1つの態様によれば、不織布の製造のための繊維の使用が提供され、ここで、繊維は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、不織布の製造のための繊維の使用が提供され、ここで、繊維は、ポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。
【0102】
本発明の別の態様によれば、不織布の製造のためのポリマー組成物の使用が提供され、ここで、ポリマー組成物は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。本発明の別の好ましい実施形態によれば、不織布の製造のためのポリマー組成物の使用が提供され、ここで、ポリマー組成物は、ポリエチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマー、および炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填材を含む。
【0103】
本発明の不織布は、多くのさまざまな用途で用いることができる。本発明の1つの態様によれば、本発明の不織布は、建造物、防水材、断熱材、防音材、屋根材、消費者向けアパレル、室内装飾産業および衣料産業、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材において使用される。本発明の別の態様によれば、本発明の不織布を含む物品が提供され、ここで、当該物品は、建造物、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療用品、家庭用備品、防護用品、梱包材料、化粧品、衛生用品または濾材から選択される。
【0104】
建造物の例は、ハウスラップ、アスファルトオーバーレイ、道路および鉄道の路床、ゴルフコートおよびテニスコート、壁装材の裏地、音響用壁装材、屋根材およびタイルの下張り、土壌安定材および道路の下敷き、基礎安定材、侵食防止製品、運河建設、排水系統、ジオメンブレン保護および防霜製品、農業用マルチ、池および運河の防水壁または暗渠排水用の砂侵入防止壁である。建造物の他の例は、埋め立て用の固定または補強である。
【0105】
消費者向けアパレルの例は、芯地、衣類および手袋の絶縁材、ブラジャーおよび肩のパッド、ハンドバッグ部材または靴部材である。工業用アパレルの例は、ターポリン、テント、または輸送(材木、鋼)用の覆いである。
【0106】
医療用品の例は、保護衣、フェイスマスク、隔離用ガウン、手術用ガウン、手術用ドレープおよびカバー、外科用手術着、帽子、スポンジ、包帯材、ふき取り材、整形外科用詰め物、包帯、テープ、歯科用胸当て、酸素供給器、透析器、静脈注射用溶液または血液用のフィルターまたは経皮薬物送達部材である。家庭用備品の例は、枕、クッション、キルトまたは掛け布団の詰め物、ほこりよけカバー、絶縁材、ウィンドートリートメント、毛布、カーテン地部材、カーペットバッキング材またはカーペットである。
【0107】
防護用品の例は、コーテッドファブリック、強化プラスチック、保護衣、実験用白衣、吸収剤または耐火壁である。梱包材料の例は、乾燥剤の梱包、吸収剤の梱包、贈答用の箱、ファイル用の箱、各種不織袋、本の表紙、郵送用封筒、速達用封筒またはメッセンジャーバッグである。濾材の例は、濾液カートリッジおよびバッグフィルターを含むガソリン、オイルおよび空気のフィルター、真空バッグ、または不織層を備えるラミネートである。
【0108】
本発明の範囲および利益は、本発明の特定の実施形態を説明するための以下の実施例に基づいてよりよく理解されるであろうが、これらに限定されない。
【実施例
【0109】
1.測定方法および材料
以下において、実施例で用いた測定方法および材料を説明する。
【0110】
粒径
炭酸カルシウム充填材の粒子分布は、Micromeritics社(米国)製Sedigraph5120を用いて測定した。方法および測定器は当業者に周知であり、充填材および顔料の粒度を求めるために一般に用いられる。測定は、0.1重量%のNaを含む水溶液中で行った。サンプルは、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。
【0111】
固有粘度
固有粘度またはIVは、ポリマーの分子質量の測定値であり、希薄溶液粘度測定により測定される。全てのIVは、ウベローデ型キャピラリー粘度計内で、ASTM D4603に従って重量比60/40のフェノール/テトラクロロエタン溶液中、25℃で測定した。通常、約8から10個のチップを溶解させて、約0.5%の濃度の溶液を作製した。
【0112】
引張試験
引張試験はISO527-3にしたがい、1 BA(1:2)試験サンプルを用いて50mm/minの速度で行った。引張試験を通じて測定した特性は、ポリマーまたはポリマー組成物の降伏応力、破断-ひずみ、破断-応力およびe-弾性率である。
【0113】
シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、ISO179-2:1997(E)にしたがい、50×6×6mmのサイズのノッチ付きおよびノッチなし試験サンプルを用いて行った。
【0114】
材料
ポリマー1:Lighter S98 PET(Equipolymers GmbH(ドイツ)から市販されている。)
固有粘度:0.85±0.02;T:78℃;T:247℃;結晶度:最低50
ポリマー2:Lighter C93 PET(Equipolymers GmbH(ドイツ)から市販されている。)
固有粘度:0.80±0.02;T:78℃;T:247℃;結晶度:最低50。
充填材:Omyafilm 707-OG(粉砕された炭酸カルシウム)(Omya AG(スイス)から市販されている。)
粒径d50:1.6μm;トップカットd98:6μm
【0115】
2.実施例
【0116】
[実施例1]
ポリマー1のみを含む試験サンプル、ならびに組成物の全重量に基づいて、90重量%のポリマー1および10重量%の充填材の組成物を調製した。
【0117】
試験サンプルの機械的特性を、500Nの試験機を用い、5Nの張力で上述の引張試験を適用して測定した。引張試験の結果を下表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
本発明のサンプルBは、比較例のサンプルAと比べて、さらに高い降伏応力およびe-弾性率を示したが、本発明のサンプルBの破断-ひずみおよび破断-応力は低下した。従って、本発明のポリマー組成物(サンプルB)は、純粋なPETポリマー(サンプルA)と比べて、さらに高い弾性および柔らかさを有していた。これは、このようなポリマー組成物から製造される不織布の触覚特性に対して、特に、材料の柔らかさに関してプラスの効果を有する。例えば、このような材料は摩耗に対してより好ましい。
【0120】
[実施例2]
ポリマー2のみを含む試験サンプル、ならびに組成物の全重量に基づいて、90重量%のポリマー2および10重量%の充填材の組成物、および80重量%のポリマー2および20重量%の充填材の組成物を調製した。
【0121】
試験サンプルの機械的特性を、20kNの試験機を用い、4Nの張力で上述の引張試験を適用し、およびシャルピー衝撃試験を適用して測定した。引張試験の結果を下表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
本発明のサンプルDおよびEは、比較例のサンプルCと比べて、さらに高い降伏応力およびe-弾性率を示したが、本発明のサンプルCおよびDの破断-ひずみ、破断-応力および耐衝撃性は低下した。従って、本発明のポリマー組成物(サンプルDおよびE)は、純粋なPETポリマー(サンプルC)と比べて、さらに高い弾性および柔らかさを有していた。これは、このようなポリマー組成物から製造される不織布の触覚特性に対して、特に、材料の柔らかさに関してプラスの効果を有する。例えば、このような材料は摩耗に対してより好ましい。