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特許7106515チオウレタンポリマー、その合成方法及び付加製造技術における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】チオウレタンポリマー、その合成方法及び付加製造技術における使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20220719BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220719BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20220719BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20220719BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20220719BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220719BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220719BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220719BHJP
【FI】
C08G18/38 076
C08G18/08
C08G18/32 096
C08G18/16
B29C64/112
B29C64/264
B33Y70/00
B33Y10/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019500226
(86)(22)【出願日】2017-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017022268
(87)【国際公開番号】W WO2017160810
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/308,664
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/458,220
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518329848
【氏名又は名称】アダプティブ スリーディー テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルソン、グレゴリー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ルンド、ベンジャミン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ボイト、ウォルター
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20%から60%の結晶化度を有する半結晶性チオウレタンポリマーを合成する方法であって、
第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基を含む混合物を形成する工程であって、前記第1の種類のモノマーが、2つのチオール官能基を有する化合物を90モル%から100モル%、及び4つのチオール官能基を有する化合物を0モル%から10モル%含み、前記第2の種類のモノマーが、2つのイソシアネート官能基を有する、工程;並びに
前記光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、前記第1の種類のモノマーと前記第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させる工程、
を含み、
前記2つのチオール官能基を有する化合物が、EDDTであり、前記4つのチオール官能基を有する化合物が、PETMPであり、前記第2の種類のモノマーが、HDIである、上記方法。
【請求項2】
半結晶性チオウレタンポリマーを合成する方法であって、
第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基を含む混合物を形成する工程であって、前記第1の種類のモノマーが、2つ以上のチオール官能基を含み、且つ前記第2の種類のモノマーが、2つ以上のイソシアナート官能基を含む、工程;並びに
前記光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、前記第1の種類のモノマーと前記第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させる工程、
を含む方法であり、
前記第1の種類のモノマーが、EDDTを90モル%から100モル%、及びPETMPを0モル%から10モル%含み、前記第2の種類のモノマーが、HDIを100モル%を含む、上記方法。
【請求項3】
前記混合物に添加される前記光潜在性塩基が、前記混合物中の前記第1及び第2の種類のモノマーの全重量に対して、約0.005重量%から0.1重量%未満の範囲の値である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物に添加される前記光潜在性塩基が、前記混合物中の前記第1及び第2の種類のモノマーの全重量に対して、約0.1重量%から1重量%の範囲の値である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の種類のモノマーと前記第2の種類のモノマーとの前記段階成長重合が、非無水の空気環境及び無溶媒環境下で室温で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
微結晶を除去するための、前記半結晶性チオウレタンポリマーの重合後の熱硬化工程、その後の再結晶化工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/308,664号及び2017年3月14日に出願された米国非仮特許出願第15/458,220号の米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下での利益を主張し、本明細書に完全に記載されているかのように、これらの全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、一般に、チオウレタンポリマー、より具体的には、このようなポリマーの半結晶形態、合成方法、並びにこのようなポリマーの使用及び付加製造技術の用途における方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)ポリマー印刷技術等の、ポリマーを使用する産業的な付加製造技術は、最終的なポリマー製品の靭性が低く、熱動作範囲が狭く、及び/又は機械的等方性が劣っているために制限を受ける場合がある。例えば、光造形法によりポリマー部品を製造するためにアクリラートモノマーを使用する樹脂は、反応が速いので、印刷時間を確実に短くするが、最終的な製品であるポリアクリラートポリマーは、脆いガラス質物質か又は軟らかいゴム状物質のいずれかであるため、そのいずれも、所望の高靭性を有さない。光ラジカル開始剤と光カチオン開始剤の両方によって硬化されるアクリラートとエポキシドとを使用するハイブリッド樹脂、又はウレタン若しくはエポキシオリゴマーとアクリラートとを使用するハイブリッド樹脂は、速硬性があり、より高い靭性を有する最終的なポリマーを製造することができる。しかしながら、このような樹脂は、しばしば、粘度がより高いため、したがって、印刷時間がより長くなって、コストがより高くなる。更に、このような樹脂を使用して製造された3D印刷の部品は、層間接着性が劣るために機械的性能が劣る場合がある。例えば、これらの部品は、印刷された層方向(例えば、X軸及びY軸)と同じ方向には優れた機械的特性を有するが、印刷された層に垂直(例えばZ軸)に応力がかかった場合には機械的特性が劣る。更に、このようなポリマーのアモルファス構造より、それから製造される3D部品の性能は、半結晶性エンジニアリングプラスチックと比較して制限される。したがって、3D印刷の技術に適した靭性の高いポリマーが得られる樹脂及び合成プロセスの開発が引き続き必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーを提供する。半結晶性チオウレタンポリマーには、チオウレタン結合を介して第2の種類のモノマーに共有結合した第1の種類のモノマーの連続的な鎖が含まれる。第1の種類のモノマーの各々には、2つ以上のチオール官能基が含まれ、且つ第2の種類のモノマーの各々には、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。第1及び第2の種類のモノマーは、光潜在性塩基(photolatent base)の光開始分解によって生成され、7より大きいpKaを有する非求核性塩基によって触媒されるアニオン性段階成長(step-growth)重合反応において一緒に重合される。
【0005】
本開示の更に別の実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーを合成する方法を提供する。この方法には、第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基を含む混合物を形成することが含まれる。第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれ、且つ第2の種類のモノマーには、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。この方法には、光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させることが更に含まれる。
【0006】
本開示の更に別の態様では、ポリマー部品(polymer part)を製造するポリマー噴射方法を提供する。この方法には、堆積した混合物を光に暴露して、混合物中の光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、混合物中の第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させ、これにより、半結晶性チオウレタンポリマー部品を形成することが含まれ、第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれ、且つ第2の種類のモノマーには、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。
【0007】
本開示の更に別の実施形態では、ポリマー部品を製造する光造形法を提供する。この方法には、第1の種類のモノマー(第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれる。)、第2の種類のモノマー(第2の種類のモノマーには、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。)、及び光潜在性塩基の混合物を形成することが含まれる。この方法には、混合物の部分を光に暴露して、光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させることが更に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示をより完全に理解するために、次に、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照する。
【0009】
図1】本開示の原理に従う半結晶性チオウレタンポリマーを合成する例示的な方法の選択した態様をフロー図によって示す。
【0010】
図2図2Aは、本開示の原理に従うポリマー部品を製造する例示的なポリマー噴射方法の選択した態様をフロー図によって示す。 図2Bは、本開示の原理に従うポリマー部品を製造する例示的な光造形法の選択した態様をフロー図によって示す。
【0011】
図3】本開示の原理に従う表1に関連して記載したように合成した例示的なチオウレタンポリマー試料の例示的な示差走査熱量測定の第1の加熱ランプを示す。
【0012】
図4図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーの例示的な示差走査熱量測定の第2の加熱ランプを示す。
【0013】
図5図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーに対する温度の関数としての例示的な引張貯蔵弾性率値を示す。
【0014】
図6図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーに対する温度の関数としての例示的なタンデルタ(Tan delta)値を示す。
【0015】
図7図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーに対する20℃における例示的な引張応力対歪みの挙動を示す。
【0016】
図8】合成後の第1の加熱ランプ、125℃に加熱してポリマー微結晶を融解させた後の加熱ランプ、及びアモルファスポリマーを85℃で24時間、保持して、ポリマーを再結晶化させた後の加熱ランプを示す、例示的なチオウレタンポリマーPEH-1の示差走査熱量測定加熱ランプ(縦の目盛りは任意である)を比較する。
【0017】
図9図8に関連して記載したような合成後及び再結晶化後の例示的なチオウレタンポリマーPEH-1試料の20℃における例示的な引張応力対歪みの挙動を示す。
【0018】
図10】表4に関連して記載したような第1及び第2の種類のモノマーの異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーのDSC分析から得た例示的な結晶融解温度プロファイルを示す。
【0019】
図11】表4に関連して記載したような第1及び第2の種類のモノマーの異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーの動的機械的分析から得た例示的なタンデルタ(tan delta)対温度プロファイルを示す。
【0020】
図12】表4に関連して記載したような第1及び第2の種類のモノマーの異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーの一軸引張試験から得た例示的な応力-歪みの挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーは、光開始分解すると、7より大きいpKaを有する非求核性塩基を形成する光潜在性塩基の存在下で2つ以上のチオール官能基を有する第1の種類のモノマー及び2つ以上のイソシアナートを有する第2の種類のモノマーを含む混合物から、速いアニオン性段階成長重合機構を介して合成することができるという発見から利益を得る。
【0022】
モノマーと非求核性塩基触媒とのこの組み合わせによって得られるチオール-イソシアナートカップリングの反応速度は速いので、このチオール-クリック(thiol-click)重合化学は、非限定的に、耐衝撃性材料、3D印刷用樹脂、生体移植可能な材料、又は保護コーティング等の特殊な材料に用途を提供する優れた候補となる。
【0023】
本開示の一実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーが提供される。半結晶性チオウレタンポリマーには、チオウレタン結合を介して、第2の種類のモノマーに共有結合した第1の種類のモノマーの連続的な鎖が含まれる。第1の種類のモノマーの各々には、2つ以上のチオール官能基が含まれ、且つ第2の種類のモノマーの各々には、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。第1及び第2の種類のモノマーは、光潜在性塩基の光開始分解によって生成され、7より大きいpKaを有する非求核性塩基によって触媒されるアニオン性段階成長重合反応において一緒に重合される。
【0024】
いくつかの実施形態では、他の化学反応が生じるのを回避又は低減するために、第1及び第2の種類のモノマーは、光開始前又は光開始中のいずれかで、第1及び第2の種類のモノマーのチオール官能基及びイソシアナート官能基と反応する恐れのあるいずれの他の種類の官能基も有さないのが好ましい。いくつかの実施形態では、例えば、第1の種類のモノマーは、-エン(-ene)及びイソシアナート官能基を有さず、第2の種類のモノマーは、-エン(-ene)及びチオール官能基を有さない。いくつかの実施形態では、例えば、第1の種類のモノマーは、チオール官能基のみを有し、第2の種類のモノマーは、イソシアナート官能基のみを有する。
【0025】
本開示の光潜在性塩基は、任意の有機又は無機の分子であることができ、それは、光(例えば、UV又は可視光)を照射されると、分解して、7より大きいpKaを有する非求核性塩基を含む1つ以上の塩基性成分になる。このような非求核性塩基の存在によって、チオール-イソシアナート重合反応は触媒するが、イソシアナート官能基とは反応しない塩基が有利に提供されると考えられ、したがって、安定した反応速度を都合よく提供できる。このような非求核性塩基は、第2の種類のモノマーのイソシアナート基と反応せず、これにより、所望のイソシアナート-チオール重合反応に限定されるので、それらは、使用するのに非常に望ましい触媒である。これは、光分解して、第一級アミン又は第二級アミン(それらは、イソシアナート基と反応して、尿素を形成する。)等の求核性塩基を形成する可能性のある他の種類の光潜在性塩基とは対照的であり、したがって、これらは、本明細書に開示したイソシアナート-チオール重合反応の触媒としての使用には不適切である。
【0026】
光潜在性塩基の非限定的な例には、UVを照射されると、分解して、7より大きいpKaを有する非求核性塩基として働く第三級アミン光分解生成物を提供する、DANBA等のアミンイミド光塩基が含まれる。他の光潜在性塩基には、照射されると、分解して、非求核性塩基として働くトリエチルアミン光分解生成物を提供する、BTOTPB、NTOTPB、PTOTPB、BBTTPB、又はTMTOTPBが含まれる。更に別の光潜在性塩基には、現在は無名の化合物であるChemical Abstracts Service番号(CAS)1857358-47-4が含まれる。
【0027】
いくつかの実施形態では、混合物に添加される光潜在性塩基の量は、第1及び第2の種類のモノマーの全重量に対して、約0.005重量%から5重量%の範囲の値であり、いくつかの実施形態では、約0.1から1重量%の範囲の値である。いくつかの実施形態では、例えば、1重量%以上の多量の光潜在性塩基によって、光散乱の影響が生じる可能性があり、これによって、重合反応の速過ぎる進行が望ましくなく引き起こされるので、例えば、3D印刷の用途において目標形状のポリマーを形成するのが妨げられる。更に、最終的なポリマー生成物中に非求核性塩基が存在すると、望むよりも高い可塑性を有するポリマーをもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、例えば、0.1重量%未満の少ない量の光潜在性塩基は、このような光散乱又は可塑化の影響を緩和するのには役立ち得るが、重合時間がより遅くなるという犠牲を払う可能性がある。いくつかの実施形態では、例えば、3D印刷に使用される光源の強度に応じて、より多量の光潜在性塩基が必要とされる場合がある。いくつかの実施形態では、光潜在性塩基は、混合物中の第1及び第2の種類のモノマーの全重量に対して、約5重量%まで、いくつかの実施形態では、約2重量%までである。
【0028】
半結晶(semi-crystallinity)(例えば、ポリマー中で非結晶性(non-crystalline)アモルファス構造に混ざる微結晶構造)の存在により、チオウレタンポリマーに靭性を有益に付与できることが発見された。本明細書で使用される靱性という用語は、MJ/mの単位で表される標準的なドッグボーンポリマー試料に対する応力歪み曲線の積分面積を指す。当業者は、ポリマーから収集したX線散乱データ又は示差走査熱量測定値からポリマー中に存在する結晶(crystallinity)のパーセンテージを決定する方法を理解するであろう。
【0029】
本明細書中で使用する場合、開示したチオウレタンポリマーのあるものは、その靭性が約10MJ/m以上に等しければ強靭性(tough)であると定義され、また靭性が約50MJ/m以上に等しければ超靭性(ultra-tough)であると定義される。いくつかの実施形態では、本開示の半結晶性チオウレタンポリマーは強靭性であり、いくつかの実施形態では、超靭性である。いくつかの実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーは、10から100MJ/mの範囲の靱性値を有することができ、他の実施形態では、100から150MJ/mの範囲の靱性値を有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、これらのポリマーの結晶化度は、重合反応の間に、チオウレタンポリマーの成長下にある鎖と鎖の間の架橋度を制御することによって調整できることも発見された。結晶化度は、二官能性のチオール基及びイソシアナート基をそれぞれ有する、第1の種類のモノマー及び/又は第2の種類のモノマーの割合を高くすることによって増加させることができる。混合物中にこのような二官能化モノマーが存在することによって、重合の間に、ポリマー鎖の線状非架橋セグメントの成長及び伸長が促進されると考えられる。結晶化度は、三官能性又はより高次の官能性のチオール基及びイソシアナート基をそれぞれ有する、第1の種類のモノマー及び/又は第2の種類のモノマーの割合を高くすることによって減少させることができる。結晶化度は、多かれ少なかれ好ましく結晶化する傾向のある骨格構造をそれぞれ有する二官能性モノマーを使用することによって、増加又は減少させることができる。このような三官能化又はより高次の官能化モノマーの存在によって、重合の間に、ポリマー鎖のセグメントとセグメントの間の架橋が促進され、それにより、ポリマー中の線状非架橋セグメントの数又は長さが減少する傾向にあると考えられる。
【0031】
チオウレタンポリマーのいくつかの実施形態では、特定の用途、例えば、3D印刷の用途における使用に対して必要な靭性を提供する、ある範囲の結晶化度を有することが望ましい。例えば、いくつかの実施形態では、このような三官能化又はより高次の官能化モノマーの割合が高過ぎる場合、そのときは、得られるチオウレタンポリマーは、靭性のない非結晶性アモルファス構造を有する可能性がある。他の実施形態では、このような三官能化又はより高次の官能化モノマーの割合が低過ぎるか又はゼロである場合、そのときは、得られるチオウレタンポリマーは、完全又はほぼ完全な結晶構造を有する可能性があり、非常に脆い、靭性もない構造となる。例えば、いくつかの実施形態では、チオウレタンポリマーは、約5パーセントから約90パーセント、いくつかの実施形態では、約20から60パーセントの範囲内にある結晶化度のパーセンテージの値を有するのが好ましい。いくつかの実施形態では、約20パーセントから約40パーセントの範囲内の値にて、特定の3D印刷の用途に望ましい場合がある高い又は最高の靭性を有するポリマーをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、約40パーセントから約60パーセントの範囲の値にて、特定のエレクトロニクスの用途に望ましい場合がある高誘電率を有するポリマーをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、チオウレタンポリマーの結晶化度のパーセンテージの値は、室温(20℃)でこのような範囲にあることができるが、一方、いくつかの実施形態では、ポリマーの結晶化度のパーセンテージのこのような範囲は、生理学的温度(例えば、約37℃)にてこのような範囲にあることができるので、特定の生物学的用途(例えば、移植可能なプローブ)に対して望ましい場合がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、例えば、モノマーの混合物には、2つ以上のチオール官能基を有する第1の種類のモノマーの2種類の異なる化合物の組み合わせ(すなわち、ジチオール官能化モノマー及びトリチオール又はより高次のチオール官能化モノマー)が含まれる。いくつかの実施形態では、1種類のみのジチオール官能化モノマー化合物が使用され、且つ1種類のみのトリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーが混合物中で使用される。他の実施形態では、ポリマーの物理的特性の更なる調整を容易にするために、2種類以上のジチオール官能化モノマー化合物及び/又は2種類以上(more than type)のトリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーを混合物中で使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ジチオール官能化モノマーが約100から300gm/モルの範囲の分子量を有する直鎖脂肪族化合物である場合、ポリマーの結晶化を促進することができると考えられる。このようなモノマーは、低粘度(例えば、水の粘度に類似する低粘度)及び混合物の他の成分との混和性(これにより、混合物が溶媒を含まないようにできる)等の、3D印刷の用途に有利な特性も有し得る。このようなジチオール官能化モノマーの非限定的な例には、EDT、PDT、HDT又はDDTが含まれる。いくつかのこのような実施形態では、直鎖は炭素のみの直鎖である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマーの結晶化は、ジチオール官能化モノマーの2つのチオール官能基が鎖のいずれの端部に位置する場合にも促進され得ると考えられる。例えば、いくつかの実施形態では、ジチオール官能化モノマーは、化学式HS-(CH-SH(式中、nは2から10の範囲の数である。)を有するアルカンであることができる。更に、いくつかのこのような実施形態では、このような短鎖ジチオール官能化モノマーの使用により、高い融解温度(例えば、いくつかの実施形態では、100℃より高く、また、他の実施形態では、150℃より高い。)を有するポリチオウレタンの合成を促進することが発見された。理論的考察によって本開示の範囲を限定するものではないが、このようなより短い鎖長のジチオール官能化モノマーは、特に、同様に、より短い鎖長のジイソシアナート官能化モノマーと使用される場合、ポリマー中で線状鎖(linear chains)の形成を促進し、それにより、ポリマー中の結晶化度の量を増加させる傾向があると考えられる。これは、おそらく、骨格中のチオ-イソシアナート基の数が増加し、鎖間の水素結合と剛性の両方を高め、且つ融解温度を上げるためであると考えられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、直鎖ジチオール官能化モノマーは、アルキルエーテル及び/又はチオエーテル基として、鎖中に1つ以上の酸素及び/又は硫黄原子をそれぞれ含むことができる。非限定的な例には、TDET、EDDT又はBD1が含まれる。このようなアルキルエーテル及び/又はチオエーテル含有ジチオール官能化モノマーが存在することによって、ポリマー骨格中に酸素又は硫黄が含まれると、ポリマーの線状セグメントの規則的なパッキングが乱される可能性があると考えられる。それにより、このことから、微結晶を融解させるのに必要な熱エネルギーが減少され、及び/又は再結晶が妨げられる可能性がある。このようなものとして、ジチオール官能基化モノマーの鎖にこのようなエーテル及び/又はチオエーテル基が含まれることを利用して、本明細書に記載したように合成されたポリチオウレタンポリマーの融点及び再結晶化を調節することができる。例えば、上記の直鎖脂肪族ジチオール官能化モノマーの一部又は全部を、アルキルエーテル及び/又はアルキルスルフィド含有類似体で置換することにより、ポリマーの融解温度を下げ、及び/又は結晶化ヒステリシスを高めることができる。
【0036】
更に他の実施形態では、ジチオール官能化モノマーは、約100から300gm/モルの範囲の分子量を有する分枝鎖又は環式化合物(例えば、TCDDT)及び/又は芳香族化合物を含むことができる。他の実施形態では、例えば、分子量が約300から1000gm/モルの範囲の、より長い鎖長の化合物を使用することができる。更に他の実施形態では、チオール官能基の一方又は両方は、直鎖の端部に位置するのではなく、むしろ鎖の内部の原子上に位置する。
【0037】
いくつかの実施形態では、トリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーは、トリチオール官能化モノマーである。非限定的な例には、TMICN又はTMTMPが含まれる。いくつかの実施形態では、トリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーは、テトラチオール官能化モノマーである。非限定的な例には、PETMPが含まれる。更に他の実施形態は、ペンタ-、ヘキサ-又はヘプタ-チオール官能基化モノマーを含むことができる。架橋は、モノマー1分子当りのチオール官能基の数を増加させることによって促進できると考えられる。いくつかのこのような実施形態では、低粘度及び混合物の他の成分との混和性を得るために、トリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーは300gm/モル以下の分子量を有することが有利である場合があるが、他の実施形態では、より高分子量のモノマーを使用してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、例えば、モノマーの混合物は、2つ以上のイソシアナート官能基を有する第2の種類のモノマーの2種類の異なる化合物の組み合わせ(すなわち、ジイソシアナート官能化モノマー及びトリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマー)を含むことができる。いくつかの実施形態では、混合物中で、1種類のみのジイソシアナート官能化モノマー化合物が使用され、また1種類のみのトリ-ジ-イソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーが使用される。他の実施形態では、ポリマーの物理的特性の更なる調整を容易にするために、混合物中で、2種類以上のジイソシアナート官能化モノマー化合物及び/又は2種類以上(more than type)のトリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーを使用することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ポリマーの結晶化は、ジイソシアナート官能化モノマーが、約100から300gm/モルの範囲の分子量を有する直鎖脂肪族化合物である場合に促進できると考えられる。更に、上記と同じ理由で、このような化合物は低粘度及び混和性の特性を有するのが有利である場合がある。同様に、いくつかの実施形態では、ポリマーの結晶化は、ジイソシアナート官能化モノマーの2つのイソシアナート官能基が鎖のいずれの端部に位置する場合にも促進され得ると考えられる。いくつかのこのような実施形態では、直鎖は炭素のみの直鎖である。例えば、いくつかの実施形態では、ジイソシアナート官能化モノマーは、化学式OCN-(CH-NCO(式中、nは2から10の範囲の数である。)を有するアルカンであることができる。このようなジイソシアナート官能化モノマーの非限定的な例は、HDIである。上記と同じ理由で、ジイソシアナート官能化モノマーのこのようなより短い鎖長は、特に、同様に、より短い鎖長のジチオール官能化モノマーと使用される場合、ポリマー中で線状鎖の形成を促進し、それにより、ポリマー中の結晶化度の量を増加させる傾向があると考えられる。
【0040】
しかしながら、他の実施形態では、直鎖ジイソシアナート官能化モノマーは、アルキルエーテル及び/又はチオエーテル基として、鎖中に1つ以上の酸素及び/又は硫黄原子をそれぞれ含むことができる。更に他の実施形態では、ジイソシアナート官能化モノマーは、分枝鎖若しくは環式化合物(例えば、IDI又はHDI-T)及び/又は芳香族化合物(例えば、XDI又はTDI)を含み、約100から300gm/モルの範囲内の分子量を有することができる。他の実施形態では、例えば、分子量が約300から1000gm/モルの範囲の、より長い鎖長の化合物を使用することができる。更に他の実施形態では、イソシアナート官能基の一方又は両方は、直鎖の端部に位置するのではなく、むしろ鎖の内部の原子上に位置する。
【0041】
いくつかの実施形態では、トリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーは、トリイソシアナート官能化モノマー又はテトライソシアナート官能化モノマーである。更に他の実施形態は、ペンタ-、ヘキサ-又はヘプタ-イソシアナート官能化モノマーを含む。架橋は、モノマー1分子当りのイソシアナート官能基の数を増加させることによって促進できると考えられる。いくつかのこのような実施形態では、低粘度及び混合物の他の成分との混和性を得るために、トリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーは300gm/モル以下の分子量を有することが有利である場合があるが、他の実施形態では、より高分子量のモノマーを使用してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、混合物が、ジチオール及びトリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーの両方を有する第1の種類のモノマーを含む場合、その混合物は、ジイソシアナート官能化モノマーのみを有する第2の種類のモノマーを含むことができる。逆に、いくつかの実施形態では、混合物が、ジイソシアナート及びトリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーの両方を有する第2の種類のモノマーを含む場合、その混合物は、ジチオール官能化モノマーのみを有する第1の種類のモノマーを含むことができる。しかしながら、更に他の実施形態では、混合物は、ジチオール官能化モノマー、トリチオール又はより高次のチオール官能化モノマー、ジイソシアナート官能化モノマー及びトリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーの組み合わせを含むことができる。
【0043】
第1の種類のモノマーの非限定的な例には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート);トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセタート);ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセタート);ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート);2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール;1,3-プロパンジチオール;1,2-エタンジチオール;1,4-ブタンジチオール;1,5-ペンタンジチオール;1,6-ヘキサンジチオール;1,9-ノナンジチオール;キシレンジチオール;チオビス(ベンゼンチオール);1,4-ブタンジオールビス(チオグリコラート);1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン;トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌラート;3,4-エチレンジオキシチオフェン;1,10-デカンジチオール;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジチオール;ベンゼン-1,2-ジチオール;トリチオシアヌル酸;1-ブタンチオール;1-ヘキサンチオール;1-ヘプタンチオール;1-オクタンチオール;1-ノナンチオール;1-デカンチオール;及び1-オクタデカンチオールが含まれる。
【0044】
第2の種類のモノマーの非限定的な例には、ヘキサメチレンジイソシアナート;イソホロンジイソシアナート;ジイソシアナトブタン;ジイソシアナトオクタン;1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン;フェニレンジイソシアナート;キシリレンジイソシアナート;トリレンジイソシアナート;シクロヘキシレンジイソシアナート;トルエンジイソシアナート;メチレンビス(フェニルイソシアナート);プロピルイソシアナート;1-ペンチルイソシアナート;ヘキシルイソシアナート;オクチルイソシアナート;ノニルイソシアナート;sec-ブチルイソシアナート;2-エチルヘキシルイソシアナート;シクロペンチルイソシアナート;及び1-イソシアナト-3-メチルブタンが含まれる。
【0045】
以下に記載される実験で更に例証するように、第1及び第2の種類のモノマーを構成し得る化合物の範囲及びそれらの相対的な使用量から、本明細書に記載したように合成されたチオウレタンの結晶化度、これに基づく靱性又は他の物理的特性を調整するための様々なアプローチが提供される。
【0046】
非限定的な例として、いくつかの実施形態では、混合物に添加されるジチオール官能化モノマーの量は、寄与するチオールのモルパーセンテージ(モル%)が、25から100パーセント、いくつかの実施形態では90から100%の範囲のパーセンテージ値に等しくなるように調整することができ、混合物に添加されるトリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーの量は、寄与するチオールのモル%が、75から0%、いくつかの実施形態では10から0パーセントの範囲のパーセンテージ値に等しくなるように調整される。いくつかのこのような実施形態では、化学量論的反応が起こることができるように添加される第2の種類のモノマーの量は、ジイソシアナート官能化モノマーからの100モル%に対応する。しかしながら、他の実施形態では、例えば、過剰のチオール又は過剰のイソシアナート官能基を得るために、全チオール官能基対イソシアナート官能基の非化学量論的な比を提供することが有利である場合がある。別の非限定的な例として、いくつかの実施形態では、混合物に添加されるジイソシアナート官能化モノマーの量は、寄与するジイソシアナートのモル%が、25から100、いくつかの実施形態では、90から100パーセントの範囲のパーセンテージ値に等しくなるように調整され、混合物に添加されるトリイソシアナート又はより高次のイソシアナート官能化モノマーの量は、寄与するイソシアナートのモル%が、75から0パーセント、いくつかの実施形態では、10から0パーセントの範囲のパーセンテージ値に等しくなるように調整される。いくつかのこのような実施形態では、化学量論的反応が起こることができるように添加される第1の種類のモノマーの量は、ジチオール官能化モノマーからの100モル%に対応する。しかしながら、他の実施形態では、例えば、過剰のチオール又は過剰のイソシアナート官能基を得るために、全チオール官能基対イソシアナート官能基の非化学量論的な比を提供することが有利である場合がある。
【0047】
別の非限定的な例として、いくつかの実施形態では、混合物に添加されるジチオール官能化モノマーが、ジチオール官能化モノマーからの寄与によるチオールのモル%が、約100%に等しくなるようなものであり、混合物に添加されるジイソシアナート官能化モノマーの量が、ジイソシアナート官能化モノマーからの寄与によるイソシアナートのモル%が、約100パーセントに等しくなるようなものである場合、そのときに得られるチオウレタンポリマーは、熱可塑性ポリマー、いくつかの実施形態では、半結晶性熱可塑性ポリマーであることができる。いくつかの実施形態では、混合物に添加されるジチオール官能化モノマーの量が、ジチオール官能化モノマーからの寄与によるチオールのモル%が、約100%未満であるようなものであり、及び/又は混合物に添加されるジイソシアナート官能化モノマーの量が、ジイソシアナート官能基化モノマーからの寄与によるイソシアナートのモル%が、約100%未満に等しくなるようなものである場合、そのときに得られるチオウレタンポリマーは、熱硬化性ポリマー、いくつかの実施形態では、半結晶性熱硬化性ポリマーであることができる。例えば、いくつかの実施形態では、混合物に添加されるジチオール官能化モノマーの量が、ジチオール官能化モノマーからの寄与によるチオールのモル%が、約97から90パーセント(チオールモノマーの残部は、トリチオール又はより高次のチオール官能化モノマーによって供給される。)に等しくなるようなものであり、混合物に添加されるジイソシアナート官能化モノマーの量が、ジイソシアナート官能化モノマーからの寄与によるイソシアナートのモル%が、約100%に等しくなるようなものである場合、そのときに得られるチオウレタンポリマーは、半結晶性熱硬化性ポリマーであることができる。
【0048】
本開示に基づいて、当業者は、所望の半結晶化度及び/又は熱硬化性若しくは熱可塑性の特性及び/又は靭性及び/又は特定の用途に必要な他の物理的特性を有するポリチオウレタンを合成するために、第1及び第2のモノマーの種類に対応する化合物の量及び種類を調整することによって、チオール及びイソシアナート基のモルパーセンテージを変化させる方法を理解するであろう。
【0049】
本開示の更に別の実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーを合成する方法を提供する。図1は、本開示の原理に従う半結晶性チオウレタンポリマーを合成する例示的な方法100の選択した態様を、フロー図によって示す。例示的な方法100には、第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基を含む混合物を形成する工程110が含まれる。第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれ、第2の種類のモノマーには、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。この方法には更に、光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合(工程130)を開始させる工程120が含まれる。
【0050】
方法100の有利な特徴は、合成工程110、120の実施形態が、重合反応に有害な影響を及ぼすことなく、非無水(non-anhydrous)又は無水の環境のいずれでも実施することができることである。これは、例えば、アルコールを活性化する塩基を含む反応環境の存在下では、イソシアナート官能化モノマーが、水とも反応して、競合反応にてカーボナートを形成する可能性があるので、無水環境を維持しなければならないいくつかの他の重合合成系とは対照的である。例えば、方法100のいくつかの実施形態では、工程110、120及びこれに続く重合反応(工程130)は、最高で100%の湿度を有する空気環境中で行うことができ、又は窒素雰囲気等の無水環境中で行うことができる。
【0051】
方法100の別の有利な特徴は、合成工程110、120の実施形態が、溶媒を含まない環境中で実施できることである。すなわち、方法100の実施形態は、混合物が、第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基から本質的になり、重合反応に関与しない他の成分は、微量の(例えば、1重量%未満、いくつかの実施形態では0.1重量パーセント未満)他の成分(例えば、水、緩衝剤又は安定化剤)以外、存在しない環境で行うことができる。これは、溶媒が存在しなければならないいくつかの他の重合合成系とは対照的である。溶媒を含まない環境で合成工程を行うことができることから、溶媒を除去するための更なる工程を行う必要がないので、合成されたチオウレタンポリマーが熱硬化性ポリマーである場合に有利である。これは、熱硬化性ポリマーからの溶媒の除去によって、ポリマー中に望ましくない空隙が形成される可能性がある他の用途とは対照的である。しかしながら、例えば、熱硬化性ポリマーフォームを形成する一部として、このような空隙を形成する他の実施形態では、混合物中に溶媒が存在することは有利である場合がある。
【0052】
以下に記載した実験で更に例証するように、いくつかの実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーの物理的特性のいくつかは、重合後の熱硬化工程140及び再結晶化工程150によって改質できることが発見された。例えば、熱硬化工程140のいくつかの実施形態では、半結晶性チオウレタンポリマーを10℃/分で125℃に加熱して、微結晶を除去することができる。例えば、再結晶化工程150のいくつかの実施形態では、このような熱硬化ポリマーを10℃/分で85℃に冷却して、再結晶化半結晶性チオウレタンポリマーを形成することができる。いくつかの実施形態では、再結晶化半結晶性チオウレタンポリマーは、最初に合成された半結晶性チオウレタンポリマーよりも結晶化度のパーセントが低い(例えば、約16%低下)。したがって、いくつかのこのようなポリマーでは、破壊歪み(failure strain)、靭性及び引張強度が約12から15%低減する場合がある。
【0053】
いくつかの実施形態では、再結晶化工程150における冷却速度は、結晶化を回復させるのに重要であり得る。理論的考察によって本開示の範囲を限定するものではないが、例えば、室温までの冷却が速過ぎると、ポリマー鎖が非結晶構造に固定される可能性があると考えられる。いくつかの実施形態では、よりゆっくりと、例えば85℃に冷却することによって、ポリマー鎖には、ポリマー鎖が整列して微結晶をリフォーム可能とするのに十分なセグメント運動が与えられる。
【0054】
半結晶性チオウレタンポリマーをそれらの結晶融解温度を超える温度で処理し、再結晶化させて、それらの結晶化度及び機械的特性を実質的に回復させることができることは、特定の用途において有利であろう。例えば、3D印刷の用途では、本明細書に記載したように合成された半結晶性チオウレタンポリマーは、その結晶融解温度を超える温度で更に処理され、次に、再結晶化されて、最初に合成されたポリマーと実質的に同じ機械的特性を有する再結晶化ポリマーを生成する。更に、重合後の熱硬化工程及び/又は再結晶化工程によって、最初に合成されたポリマーの機械的特性を微調整する手段を提供できる。
【0055】
方法100の任意の実施形態は、本明細書に開示された、第1及び第2の種類のモノマーと光潜在性塩基の組成及び量、並びに重合、硬化及び再結晶化のための物理的条件のバリエーションのいずれかを含むことができる。
【0056】
方法100の任意の実施形態では、第3の種類のモノマーを混合物に添加することができ、第3の種類のモノマーの各々は、単一のチオール官能基又は単一のイソシアナート官能基を有する。このようなモノ官能化モノマーは、チオウレタンポリマーの連鎖キャッピング及び分枝網目構造を促進するのに使用することができる。
【0057】
本開示の更に別の実施形態では、ポリマー部品を製造するポリマー噴射方法を提供する。図2Aは、本開示の原理に従う、半結晶性チオウレタンポリマーを含むポリマー部品を製造する例示的な噴射方法200の選択した態様を、フロー図によって示す。
【0058】
例示的な方法200には、堆積した混合物を光に暴露して、混合物中の光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合(工程270)を開始させ、これにより、半結晶性チオウレタンポリマー部品を形成する工程260が含まれる。第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれ、第2の種類のモノマーには2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。
【0059】
方法200のいくつかの実施形態は、第1の種類のモノマーを第1の容器に添加する工程210、及び第2の種類のモノマーを第2の容器に添加する工程220を更に含むことができる。方法200のいくつかのこのような実施形態は、第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基が、堆積中(例えば、工程230、240のいずれか又は両方)に、基体の表面上で混合物(例えば、堆積混合物)を形成する(工程250)ように、第1の容器からの第1の種類のモノマーを基体表面上に堆積させる工程230、及び第2の容器からの第2の種類のモノマーを基体表面上に堆積させる工程240を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の容器の一方又は両方に、光潜在性塩基が更に含まれ、一方で、他の実施形態では、光潜在性塩基は、別々に添加されて混合物を形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、容器には、更に、染料、抑制剤又は安定化剤を更に含ませることができる。
【0060】
方法200のいくつかの実施形態は、容器内に、第1の種類のモノマー、第2の種類のモノマー及び光潜在性塩基の混合物を形成する工程252を更に含むことができる。方法200のいくつかのこのような実施形態は、混合物を基体の表面上に堆積させて、これにより、堆積混合物を形成する工程を更に含むことができる。
【0061】
いくつかのこのような実施形態では、基体は、混合物を保持するように構成されたモールドであることができ、光開始工程は、層ごとに行われる。いくつかの実施形態では、堆積工程230、240の一部として、第1の容器及び第2の容器の各内容物を、別々の第1及び第2の種類のモノマー又は混合物を、薄層として基体上に噴射するように構成された共通の又は別々の噴射ノズルに向かわせることができ、各薄層が基体表面上に堆積されるのにつれて、多数の異なる光開始工程260を行うことができる。
【0062】
本開示の更に別の実施形態では、ポリマー部品を製造する光造形法を提供する。図2Bは、本開示の原理に従う、半結晶性チオウレタンポリマーを含むポリマー部分を製造する例示的な光造形法270の選択した態様を、フロー図によって示す。
【0063】
この方法には、第1の種類のモノマー(第1の種類のモノマーには、2つ以上のチオール官能基が含まれる。)、第2の種類のモノマー(第2の種類のモノマーには、2つ以上のイソシアナート官能基が含まれる。)及び光潜在性塩基の混合物を形成する工程275が含まれる。この方法には、混合物の部分を光に曝露して、光潜在性塩基を光開始分解させて、7より大きいpKaを有する非求核性塩基触媒を形成し、これにより、第1の種類のモノマーと第2の種類のモノマーとの段階成長重合を開始させる工程280が更に含まれる。いくつかの実施形態では、工程280の一部としての光への暴露は、単一のラスター化したレーザーからの光を含むことができ、一方、他の実施形態では、工程280の一部としての光への暴露は、パターン化した光の投影(例えば、DLP)を含むことができる。例えば、これらの手順は、容器内に保持されている混合物の別個の層を暴露させるために、工程280の一部として使用することができる。
【0064】
方法200、270は、本明細書に開示した第1及び第2の種類のモノマーと光潜在性塩基の組成及び量、並びに重合、硬化及び再結晶並びに合成工程の方法(例えば、方法100)のための物理的条件のバリエーションのいずれかを含むことができる。
【0065】
本開示の様々な特徴の理解を容易にするために、本文及び図で参照する例示的なモノマー及び光潜在性塩基のいくつかの構造及び頭字語を以下に示す:
チオール官能化モノマー:
名称:1,2’-エタンジチオール
頭字語:EDT
【化1】

名称:1,5’-ペンタンジチオール
頭字語:PDT
【化2】

名称:1,6’-ヘキサンジチオール
頭字語:HDT
【化3】

名称:1,10’-デカンジチオール
頭字語:DDT
【化4】

名前:トリシクロデカンジチオール
略語:TCDDT
【化5】

名称:2,2’-チオジエタンチオール
頭字語:TDET
【化6】

名称:2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール
頭字語:EDDT
【化7】

名称:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン
頭字語:BD1
【化8】

名称:トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌラート
頭字語:TMICN
【化9】

名称:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)
略語:TMTMP
【化10】

名称:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)
略語:PETMP
【化11】
【0066】
イソシアナート官能化モノマー:
名称:ヘキサメチレンジイソシアナート
頭字語:HDI
【化12】

名称:イソホロンジイソシアナート
頭字語:IDI
【化13】

名称:トリス(6-イソシアナトヘキシル)イソシアヌラート
頭字語:HDI-T
【化14】

名称:m-キシリレンジイソシアナート
頭字語:XDI
【化15】

名称:トリレン-2,4-ジイソシアナート
頭字語:TDI
【化16】
【0067】
光潜在性塩基:
名称:1,1-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)アミンp-ニトロベンズイミド
頭字語:DANBA
【0068】
光放出触媒:未同定の第三級アミン
【化17】

名称:未だ無名
CAS:1857358-47-4
【化18】

名称:ベンゼンエタンアミニウム、N-N、N-トリエチル-β-オキソ-,テトラフェニルボラート(1-)(9CI)
CAS:212753-21-4
頭字語:BTOTPB
光放出触媒:トリエチルアミン
【化19】

名称:2-ナフタレンエタンアミニウム,N,N,N-トリエチル-β-オキソ-,テトラフェニルボラート(1-)(9CI)
CAS:376644-79-0
頭字語:NTOTPB
光放出触媒:トリエチルアミン
【化20】

名称:1-ピレンエタンアミニウム,N,N,N-トリエチル-β-オキソ-,テトラフェニルボラート(1-)(9CI)
CAS:1532544-49-2
頭字語:PTOTPB
光放出触媒:トリエチルアミン
【化21】

名称:ベンゼンメタンアミニウム,4-ベンゾイル-N,N,N-トリエチル-,テトラフェニルボラート(1-)(9CI)
CAS:216067-03-7
頭字語:BBTTPB
光放出触媒:トリエチルアミン
【化22】

名称:9H-チオキサンテン-2-メタンアミニウム,N,N,N-トリエチル-9-オキソ-,テトラフェニルボラート(1-)(9CI)
CAS:929895-20-5
略語:TMTOTPB
光放出触媒:トリエチルアミン
【化23】
【0069】
光潜在性塩基BTOTPB、NTOTPB、PTOTPB、BBTTPB又はTMTOTPBのいずれかの場合、トリエチルアミン置換基を、以下の置換基のいずれか1つによって置換することができる:
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
【化24】

1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン
【化25】

トリブチルアミン
【化26】

4-(ジメチルアミノ)ピリジン
【化27】

1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
【化28】

1,1,3,3-テトラメチルグアニジン
【化29】
【0070】
追加的に又は代替的に、光潜在性塩基BTOTPB、NTOTPB、PTOTPB、BBTTPB又はTMTOTPBのいずれかの場合、テトラフェニルボラートアニオン置換基を、以下の置換基によって置換することができる:
ボラート(1-),ブチルトリフェニル-,(T-4)-
【化30】
【実施例
【0071】
本開示の様々な特徴を更に例証するために、非限定的な例示的なチオウレタンポリマーの合成及びそれらの物理的及び機械的特性のいくつかを以下に示す。
【0072】
[実験1]
<ポリチオウレタン合成例>
一連の実験では、光塩基発生剤DANBAを、モノマー混合物の予想される質量の0.5重量%に等しくなるように測定し、覆われたシンチレーションバイアルに添加した。例示的なEDDT及びPETMPチオールモノマーを、バイアルに添加し、次に、それを、FlackTek DAC 400スピードミキサーで5分間、2000rpmで混合した。次に、例示的なHDIイソシアナートモノマーを、混合物に添加し、これを、FlackTek DAC 400スピードミキサーで5分間、2000rpmで再び混合した。ポリマー試料のフィルムの調製には、一軸引張試験以外の全ての試験のために、0.6mmのスペーサーによって隔てられた2枚のスライドガラス(3インチ×2インチ)に対応するモールドの間に混合物を入れる(例えば、注入又はピペットにより)ことが含まれる。引張試験のための試料は、1.1mmのスペーサーによって隔てられた2枚のスライドガラス(5インチ×4インチ)の間に混合物を入れることによって調製した。次に、混合物をモールドに入れた後、速い重合を開始させるために、混合物を365nmの光の下で、周囲温度で90分間、硬化させて、ポリマー試料を形成した。次に、各ポリマー試料を、85℃で少なくとも12時間、真空下で後硬化させた。
【0073】
バイアルに添加されたPETMP、EDDT及びHDIモノマーの量は、重合反応においてこれらのモノマーからの寄与によるチオール及びイソシアナート官能基の個々の目標モルパーセンテージが得られるように調整した。表1は、合成された異なる種類のポリチオウレタンポリマー試料についての、PETMP、EDDT及びHDIモノマーの各々からの寄与によるチオール及びイソシアナート官能基の装填率の個々の目標モルパーセンテージを示す。
【表1】
【0074】
<物理的及び機械的特性試験>
示差走査熱量測定法(DSC)による測定は、40μLのアルミニウムるつぼにてメトラートレド(Mettler Toledo)(オハイオ州のコロンバス)DSC 1で行った。ガラス転移温度(Tg)を測定するために、ポリチオウレタンポリマー試料を室温から-50℃に冷却し、200℃に加熱した。次に、更に2サイクルの場合は、各試料を冷却して-50℃に戻し、200℃に加熱した。全ての加熱及び冷却速度は10℃/分に固定した。全ての試験を窒素雰囲気下で行った。第2の加熱ランプは、以下に記載したように実施した。Tgは転移の中点として表される。各試料について行った少なくとも3回の別々の試験の平均値を、本明細書に報告する。
【0075】
PEH-1ポリマーの試料を、室温から-50℃に冷却し、125℃に加熱した。次に、試料を冷却して-50℃に戻し、125℃に加熱して、微結晶の除去を観察した。次に、試料を85℃に冷却し、24時間アニールした。次に、試料を-50℃に冷却し、125℃に加熱した。回復パーセントは、最初の融解のものと比較した、アニーリング後の結晶融解吸熱の積分面積として記録した。全ての加熱及び冷却速度は10℃/分に固定した。全ての試験を窒素雰囲気下で行った。各試料について行った少なくとも3回の別々の試験の平均値を、本明細書に報告する。
【0076】
熱重量分析(TGA)は、70μLのアルミナるつぼにてメトラートレド TGA/DSC 1で行った。全ての試験を窒素雰囲気下で行った。試料を室温から700℃に10℃/分の速度で加熱した。各試料について行った少なくとも3回の別々の試験の平均値を、本明細書に報告する。
【0077】
動的機械分析(DMA)は、メトラートレド(オハイオ州のコロンバス)DMA 861e/SDTAで行った。各ポリマー組成物の3つの試料を、長さ約20mm、幅3mm、厚さ約0.6mmの長方形のバーに切断した。変形のモードは引張であった。力は10Nに制限し、変形は55μmに制限した。試料を、-50℃から150℃の間で2℃/分の加熱速度で試験した。変形の周波数は1Hzであった。試料のtanδ及び貯蔵弾性率E’を温度に関して記録した。DMAによって決定されたTgは、tanδのピークとして示される。
【0078】
一軸引張試験は、Lloyd Instruments(英国のウェスト・サセックス)のLR5K Plus Universal Materials Testing Machineで、500Nロードセル及びLaserscan 200レーザー伸び計を用いて行った。ASTM規格D-638-Vに従って、試料をドッグボーン形状に切断した。各試料ポリマーの少なくとも4つの試料を、試料が破壊するまで(until sample failure)、50mm/分の速度で歪ませた。引張強度は、ポリマーが受ける最大応力として採った。靭性は、起点から破壊点までの応力-歪み曲線の下の面積(area)として採った。温度に依存する試験の場合、試料を目標温度にし、試験を実施する前の少なくとも5分間、恒温にした。再結晶化試料を125℃で2時間アニールして、微結晶を除去し、85℃に冷却し、24時間保持した後、室温に冷却した。
【0079】
<結果>
図3は、表1に関連して記載した異なる試料ポリマーの各々について実施した例示的なDSCの第1の加熱ランプを示す。DCSデータは、試料のガラス転移温度及び結晶化度に関する情報を提供する。試料EH、PEH-1、PEH-2、及びPEH-3では、100℃付近に結晶融解吸熱が見られる。試料PEH-4、PEH-5、及びPEH-6では、試験を通して融解吸熱は示されない。
【0080】
図示されるように、結晶融解発熱の大きさは、PETMPのチオールの割合が増加するのにつれて減少する傾向があり、また、より高度に架橋した試料の結晶化度は、より低下することを示している。これは、PETMP分子が結晶化を抑制するだけでなく、約15モル%以上に対応するPETMPからのチオール官能基装填率にて結晶化が阻害され得ることを示唆している。理論的考察によって本開示の範囲を限定するものではないが、ポリマー中の結晶は、ポリマー鎖の線状EDDT-HDIセグメントによって形成され得ると考えられる。2つより多くのチオール官能基を有するPETMPモノマーの量が増加すると、重合しているポリマーの鎖と鎖の間の架橋量の増加が促進され、これにより、このような線状EDDT-HDIセグメントの長さ又は数は減少すると考えられる。PETMPの相対的な量が15モル%に向かって増加するのにつれて、結晶化するのに十分な長さを有する、十分な数の線状EDDT-HDIセグメントがもはや存在できなくなり、これにより、非結晶性アモルファスポリマーが得られる。
【0081】
特に、これらの試料の全ては、脂肪族チオール-イソシアナートポリマーであり、試料EH、PEH-1、PEH-2、及びPEH-3は、結晶化度の指標を有する。これは、微結晶形成の一部として積み重なることができ、物理的な架橋として役立つことができ、あるいは機械的特性を改善することができる芳香環を含有するモノマーの添加によって、結晶化が促進されるいくつかのウレタン及びチオウレタンポリマーとは対照的である。
【0082】
図4は、図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーの例示的なDSCの第2の加熱ランプを示す。試料の各々は、第1の加熱ランプを経ており、図4に示すように、架橋ポリマーPEH-1からPEH-6については、融解吸熱が消失している。図4に示すデータから決定されるガラス転移温度を、表2にまとめる(DSCによるTg)。
【表2】
【0083】
試料中のPETMPからのチオール官能基の装填率が高くなるにつれて、Tgも同様に上昇する。特に、第1の(initial)加熱ランプに見られた結晶融解吸熱(図3)は、EHを除いて、全ての試料に、もはや存在しない(図4)。この試料の場合、わずかな融解が105℃で見られるが、その融解はその後のサイクルで消失する。この挙動は、冷却すると自然に再結晶化するナイロン等の脂肪族半結晶性ポリマーとは逆である。しかしながら、ナイロンは、150℃から300℃の間に結晶融解温度を有する傾向がある。再結晶化しないことに加えて、この物質の特に低い融解温度から、ナイロン等のポリマーと比較して、微結晶は、エネルギー的有利性が比較的低いことが示唆される。
【0084】
理論的考察によって本開示の範囲を限定するものではないが、ポリマー骨格にEDDTからの酸素が取込まれると、線状セグメントの規則的なパッキングが、ある程度妨げられ得ると考えられる。それにより、このことから、微結晶を融解するのに必要な熱エネルギーが減少し、冷却速度を遅くしない限り、再結晶化が妨害され得る。これは、EDDTモノマーの一部又は全部を、酸素を含まない構造類似モノマーで置換することによって、融解温度を高くし、且つ結晶化ヒステリシスを改善する可能性を示唆している。融点を正確に制御できることは、特定温度を超えた融点に調整することが、熱溶解積層法(FFF:fused filament fabrication)3D印刷等の製品性能にとって重要となる用途には有用であろう。
【0085】
<熱機械的特性>
図5及び図6は、図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマーに対する温度の関数としての、例示的な引張貯蔵弾性率と例示的なタンデルタ(Tan delta)値とをそれぞれ示す。図示されるように、ガラス弾性率は、試料の結晶化度に依存する。非結晶性アモルファスポリマー試料PEH-4、PEH-5及びPEH-6は全て、約2400MPaのゴム弾性率を有する。これは、約1600MPaのガラスヤング率を有し得るいくつかの光硬化チオール-エン(-ene)ポリマー網目構造よりも高い。いくらかの結晶化度を有する試料(EH、PEH-1、PEH-2、PEH-3)は、約3000MPaまでのガラス弾性率を有し、上記チオール-エン(-ene)網目構造の約2倍である。このようなガラス弾性率を有するチオウレタンポリマーは、機械的剛性が有益である用途、例えば、最小の座屈剛性(buckling stiffness)を必要とするポリマー部品において有利であり得る。このような高いガラス弾性率を有するポリマー部品は、必要な剛性を維持しながら、厚さがより薄い製造デバイス(例えば、移植可能な組織プローブ)を実現できる。それにより、これは、経時的なデバイスの性能及び安定性を高めることができる。
【0086】
更に図示されるように、ガラス転移と結晶融解との間の領域の弾性率は、100MPaと250MPaの間で変化する。この領域の弾性率は、試料の全体的な結晶化度及びPETMPモノマーからのチオール官能基の装填率の両方に依存することを示す。PETMPモノマーを少量添加すると(例えば、試料PEH-1)、PETMPモノマーを有さないポリマー試料EHと比較して、ポリマーの弾性率はかなり低くなる。理論的考察によって本開示の範囲を限定するものではないが、これは、例えば、図3に関連して論じたように、架橋促進PETMPモノマーを添加することに伴う結晶化度の低下に起因し得ると考えられる。このようなチオウレタンポリマーの結晶化度を調整することによって、ゴム弾性率を制御できることから、加工前、加工中又は加工後に、精緻な熱処理を施すことによって、このようなポリマーから製造されたポリマー部品の機械的特性を調整することが可能になる。
【0087】
更に図示されるように、PETMPモノマーの存在下で合成されたポリマー試料の全ては、非結晶性アモルファス特性を有するので、弾性率は、結晶融解よりも、ポリマー架橋密度に依存することを示す。PEH-1又はPEH-2等の少量の架橋促進PETMPモノマーを有するポリマー試料は、約3MPaに近いゴム弾性率を有するが、PEH-5又はPEH-6等のより多量の架橋促進PETMPモノマーを有するポリマー試料は、約2倍である、約6MPaのゴム弾性率を有する。より多量のPETMPを添加することによって、架橋量を更に増加させて、ゴム弾性率を、10MPaを超えるように調整できると考えられる。いくつかの実施形態では、移植前はガラス弾性率がより高いが、移植後はゴム弾性率がより低い部品を製造するために、このような合成プロセスによってポリマー部品(例えば、移植可能な組織プローブ)を製造するのは有利であり得る。
【0088】
更に図示されるように、試料PEH-3はまた、他の半結晶性試料のいくつかよりも多くの架橋促進PETMPモノマーを有するにもかかわらず、ガラス転移と結晶融解の間の領域において、試料EHとほぼ等しい弾性率を有する。これから、PEH-3が、PEH-1及びPEH-2よりも高い結晶化度を有することが示唆され得る。PEH-3はまた、最も架橋していないと考えられる試料であるPEH-1と同程度に低いアモルファスゴム弾性率を有する。ゴム弾性率は純粋に架橋密度に依存するので、PEH-2とPEH-4の弾性率の間のどこかにあると考えられる。この装填率のPETMP架橋剤では、硬化は不十分となり、85℃の後硬化によっては完了しない可能性がある。
【0089】
更に図示されるように、タンデルタ(tan delta)ピークは、試料中のPETMPモノマー部分の割合が高くなるにつれて、ガラス転移温度の上昇に対応して、上方にシフトする。ポリマー試料のアモルファスの部分のみがガラス転移を受け、転移中にタンデルタピークに寄与すると考えられる。したがって、タンデルタピークの大きさは、試料中の結晶化度の指標であると考えられる。EH、PEH-1、PEH-2、及びPEH-3等の半結晶性試料は、ピーク値が低く、0.32を超えない。逆に、非結晶性アモルファスポリマー試料PEH-4、PEH-5及びPEH-6は、大きなピーク値を有する。これらの試料は、ピーク高さが2.0までであり、半値幅が約10℃であるので、網目構造の均一性の程度が高く、ガラス転移がシャープであることを示唆している。
【0090】
図7は、図3に関連して記載したのと同じ例示的なチオウレタンポリマー対する20℃における例示的な引張応力対歪み挙動を示す。表3は、これらのポリマー試料の引張強度、破壊歪み、及び靱性の平均及び標準偏差を示す。
【表3】
【0091】
EH、PEH-1、PEH-2、及びPEH-3等の半結晶性試料は、約15%から20%の歪み(図7では、約0.15から0.2mm/mm)で降伏する前に大きな初期弾性率を有する。降伏応力は、試料PEH-3に対する約15MPaから試料EHに対する約28MPaまで、結晶化度と共に増加する。応力が少し低下した後、試料の結晶化度との関連性を示唆する値でプラトーになる。二次応力は増加し、次に、200%と300%の歪みの間で降伏が見られ、その後、たいてい400%を超える歪みで破壊する。この二次応力の増加は、架橋密度の程度との関連性を示唆しており、熱可塑性EH試料は、ほぼ300%の歪みまで応力プラトーに留まる。最も低い架橋密度を有すると考えられる試料PEH-1及びPEH-2は、より高度に架橋されたPEH-3よりも長い応力プラトーを有する。PEH-3は、混合したモードの挙動を示す。すなわち、PEH-3は、明確な降伏点を示したが、降伏の後、290%歪み及び45MPaで破壊するまで、あまり明確ではないプラトー領域を示した。これは、PEH-3が、結晶化することができる限界に近いPETMP装填率を有することを示唆している可能性があり、このことは、図3に関連して論じたDSCデータと一致する。半結晶性試料EH、PEH-1、PEH-2、及びPEH-3は、20から40MPaの引張強度及び200%から650%の破壊歪みを有する、特定の靭性の最も高い芳香族チオール-イソシアナート熱可塑性物と比較して、好ましい引張特性を有する。試料EH及びPEH-1は、非常に高い引張強度、破壊歪み及び靭性を有する。両方の種類の試料は、40MPaを上回る引張強度、380%に近い破壊歪み、及び100MJ/mに迫る靭性を有する。非結晶性アモルファスポリマー試料PEH-4、PEH-5及びPEH-6の試料は、より低い弾性率を示し、降伏点を有しておらず、エラストマー挙動を示唆している。試料PEH-4は、220%の歪みまで、応力が直線的に増加しており、そのスロープは、19MPa及び260%の歪みで破壊する前に、急激に増加する。試料PEH-5及びPEH-6は、純粋に直線的な挙動を示し、4.6MPa及び150%の歪み、並びに4.8MPa及び110%の歪みで破壊した。
【0092】
本明細書に提示された分析に基づいて、本発明者らは、試料PEH-1、PEH-2及びPEH-3は、半結晶性架橋熱硬化性ポリマーの特性を示し、試料EHは、半結晶性熱可塑性ポリマーの特性を示すと考える。これらの熱可塑性及び熱硬化性の試料の両方並びにそれらの変形種は、光硬化性衝撃吸収材料及び3D印刷用樹脂等の用途に有望であると考えられる。例えば、試料EHは、靭性が高く、ポリカプロラクトン及びポリ乳酸等の他の印刷材料と比較して、引張強度は同様である(例えば、40MPa)が、加工温度はより低く(例えば、60℃未満の融点)、破壊歪みはより高い(例えば、10%より大きい)ので、印刷材料として使用するのに有利であることが示唆される。例えば、試料PH-1は、いくつかの従来のフォトポリマー樹脂と比較して、引張強度は同様である(例えば、40MPa)が、靭性は高く、破壊歪みはより高く(例えば、40%超)、硬化速度は速いので、光造形用樹脂として使用するのに有利であることが示唆される。更に、いくつかの従来のフォトポリマー樹脂と比較して、モノマー混合物は、粘度が低いので、印刷工程中に硬化樹脂上をリフローすることができる溶液を使用することが有用である光造形法工程にも適している。
【0093】
<再結晶化の特徴>
試料PEH-1の再結晶化の特徴を、DSC及び一軸引張試験によって調べた。PEH-1の試料を125℃に加熱して、試料から結晶部分を除去した。次に、アモルファスポリマーを85℃で24時間、アニールして、再結晶化を誘導した。図8は、例示的なチオウレタンポリマーPEH-1の示差走査熱量測定加熱ランプ(縦の目盛りは任意である)を、合成後の第1の加熱ランプと、ポリマー微結晶を融解するために125℃に加熱した後の加熱ランプと、ポリマーを再結晶化させるためにアモルファスポリマーを85℃で24時間保持した後の加熱ランプとを示して比較している。図9は、図8に関連して記載したような、合成後及び再結晶化後の例示的なチオウレタンポリマーPEH-1試料の20℃での例示的な引張応力対歪み挙動を示す。
【0094】
DSC測定に基づいて、再結晶化PEH-1は、最初の結晶化度の84%を回復し、すなわち16%減少する。一軸引張測定に基づいて、PEH-1の再結晶化試料の引張強度は、42.81±1.35MPaであり、破壊歪みは319.28±11.32%であり、靱性は87.27±4.54MJ/mであった。これは、引張強度では約12%の減少、破壊歪みでは15%の減少、靱性では12%の低下であることを表す。
【0095】
これらの結果は、PEH-1を、結晶融解温度を超える温度で処理し、再結晶化後に、更に熱的に処理して、その機械的特性の大部分を回復できることを示唆している。このことから、3D印刷された又はUV硬化されたポリマー部品を、その結晶融解温度よりも十分に高い温度で更に処理し、次に、再結晶化して、最初に合成されたポリマーに類似した機械的特性を有する最終的な、靭性の高い部品を製造できることが示唆される。このことからまた、より大きな弾性を有する部品が望ましい場合、弾性を微調整するために、より短い時間でアニーリングサイクルを行えることが示唆される。更に、結晶化に関与しない少量の鎖延長モノマーを添加することによって、アニーリング後に、異なる最大結晶化度を付与するバリエーションをポリマー部品に生じさせることが可能であり得る。同様の再結晶化の特徴は、試料EH又は試料PEH-2若しくはPEH-3又はその変形種にも当てはまると考えられる。
【0096】
[実験2]
追加的なポリチオウレタンポリマー試料を、2つ以上のチオール官能基を有する第1の種類のモノマーと、2つ以上のイソシアナート官能基を有する第2の種類のモノマーとを組み合わせて、実験1に記載したのと同様の手順で合成し、次に、実験1に記載したのと同様の手順を使用して試験した。
【0097】
更に、選択した試料の結晶化度を、X線回折分析(XRD)又はDSCを使用して測定した。当業者は、試料中に存在する結晶化度のパーセンテージを決定する一部として、ポリマー試料から適切なX線散乱データを収集し、このようなデータから1次元全散乱スペクトルを生成し、ポリマー試料の結晶部分及びアモルファス部分に対応するスペクトルのピークの面積を測定する方法を理解するであろう。
【0098】
当業者は、ポリマー試料の結晶化度のパーセンテージの推定値を得るために、DSCを使用する方法を理解するであろう。例えば、XRDを使用して、特定の試料の結晶化度のパーセントを得ることができ、次に、全く同じ試料を使用して、図3に示すのと同様のDSCデータを得ることができる。DSCプロファイルにおける融解吸熱の面積を積分することにより、特定の試料を融解するのに必要な熱量を決定することができる。その試料の結晶化度のパーセントが、XRDによってちょうど決定されたので、その材料の融解熱を計算することができる。同じポリマーの後続の試料は、同じ条件下でDSC加熱ランプを実験し、次に、計算した融解熱と共に融解吸熱量を使用することによって、結晶化度のパーセントについて簡単に試験することができる。これは、DSCと比較して、XRDがより困難であり、時間がかかり、コストがかかるので、どの試料についてもXRD測定を行うのが好ましい場合がある。この方法は、結晶構造が変化していない場合に有効である。各結晶構造は若干異なる融解熱を有するので、新しい組み合わせのモノマー及び/又は異なる合成プロセスのそれぞれについて、新しいXRDデータを収集しなければならない。
【0099】
表4は、合成した異なる種類の例示的なポリチオウレタンポリマー試料について、第1の種類及び第2の種類のモノマーの各々からの寄与によるチオール及びイソシアナート官能基装填率の異なる目標モルパーセンテージを示す。
【表4】
【0100】
表5は、表4に記載した例示的なポリチオウレタンポリマー試料(から選択した試料)についての選択した特性を示す。
【表5】
【0101】
図10は、例えば、表4に関連して記載したような、第1及び第2のモノマーの種類の異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーのDSC分析から得た例示的な結晶融解温度プロファイルを示す。
【0102】
図11は、例えば、表4に関連して記載したような、第1及び第2のモノマーの種類の異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーのDMA分析から得た例示的なタンデルタ(tan delta)対温度プロファイルを示す。
【0103】
図12は、例えば、表4に関連して記載したような、第1及び第2のモノマーの種類の異なる組み合わせを使用して合成した異なる例示的なチオウレタンポリマーの一軸引張試験分析から得た例示的な応力-歪み挙動を示す。
【0104】
図10から12は、本開示に提示された原理に従って合成したチオウレタンポリマーを、広範な用途に特有の要件を満たすように、広範囲な結晶融解温度(例えば、110から220℃)、ガラス転移温度(例えば、10℃から140℃)及び応力-歪み特性(例えば、PETMP、EDDT及びXDIモノマーポリマーを使用して合成したポリマーの場合は剛性が高く、PETMP、EDDT及びHDIモノマーを使用して合成したポリマーの場合は靭性が非常に高く、又はTMTMD、BD1及びHDIポリマーを使用して合成したポリマーの場合は弾性が高い)を有するように設計できることを示す。
【0105】
本出願に関連する当業者は、記載された実施形態に対して、他の及び更なる追加、削除、置換及び改変を行うことができることを理解するであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12