(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】繊維洗浄方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12P 1/00 20060101AFI20220719BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20220719BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220719BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
C12P1/00 A
A23L7/10 H ZNA
C12M1/00 Z
C12N9/24
C12N15/56
(21)【出願番号】P 2019514257
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(86)【国際出願番号】 US2017051701
(87)【国際公開番号】W WO2018053220
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド ビダル
(72)【発明者】
【氏名】オスカー パストル フェルレル
(72)【発明者】
【氏名】スコット アール.マクロフリン
(72)【発明者】
【氏名】ランドル デインハンマー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス パトリック ギボンズ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0257981(US,A1)
【文献】国際公開第2016/095856(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0244590(US,A1)
【文献】特開平02-046270(JP,A)
【文献】特開平05-277394(JP,A)
【文献】RAMIREZ E. et al.,Biotechnology for Biofuels,2009年,2:2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00
A23L 7/10
C12M 1/00
C12N 9/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
向流洗浄構成で流体連結され
た篩ユニット(S1
、S2、S3、S4)を含んでなる、トウモロコシ穀粒湿式製粉システムにおける繊維洗浄システムであって;
各篩ユニットが、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを以下の2つの画分に分離するように構成されており:
-第2の画分(f)が重量%繊維での測定で第1の画分(s)よりも多い量を含有する、第1の画分(s)および第2の画分(f);
-空間(V)がシステム内に配置され、前記第1の画分の(s)の1つ、前記第2の画分(f)の1つ、または混合された第1および第2の画分(s、f)、を受け入れるように流体連結され、前記空間内に受け入れられた片方または双方の画分に対してインキュベーション時間を提供するように構成されており;
それによってインキュベートされた片方または双方の画分を下流の篩ユニット(S4)に排出し、
前記繊維洗浄システムは、
-トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニット(S1)に注入し、
-最上流の篩ユニット(S1)からの第1の画分(s1)をデンプンを含有する生成流として排出し、
-下流の篩ユニット(S4)にプロセス水を注入し、
-下流の篩ユニット(S4)から、前記第2の画分(f4)を、前記最初のトウモロコシ穀粒塊よりも少ない量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として排出する、
ために構成され、
ここで、前記繊維洗浄システムは、加水分解酵素を前記第1の画分(s)、および/または前記第2の画分(f)、および/または混合された第1および第2の画分、および/または前記繊維洗浄システムに供給されたプロセス水流に導入するために構成され、
前記繊維洗浄システムは
、上流の篩ユニット(S1)によって生成された第2の画分(f1)が下流の篩ユニット(S3)によって生成された第1の画分(s3)と混合され、前記混合された画分が前記上流と前記下流の篩ユニット(S1、S3)との間にある中間篩ユニット(S2)によって第1の画分(s2)と第2の画分(f2)とに分離されるように配置され、
上流の篩ユニット(S2)によって生成された第3の画分(f2)が下流の篩ユニット(S4)によって生成された第1の画分(s4)と混合され、前記混合された画分が前記上流と前記下流の篩ユニット(S2、S4)との間にある中間篩ユニット(S3)によって第1の画分(s3)と第2の画分(f3)とに分離されるように配置され、
前記空間(V)は、
空間(V)内の0.5~3時間の酵素インキュベーション時間
、および繊維洗浄システム内の90分~5時間の総滞留時間を与えるように構成され、
空間(V)で1つ以上の加水分解酵素と接触されたトウモロコシ穀粒塊の第2の画分(f)は、5~15%(w/w)乾燥固体(DS)に相当する量の繊維を有する、システム。
【請求項2】
前記洗浄システムが、篩ユニット(S4)の下流に1~4個の篩ユニットを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記篩ユニットが、液体サイクロン(16)である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、投入装置(10)の手段によって、加水分解酵素を前記第1の画分(s)におよび/または前記第2の画分(f)におよび/または混合された第1および第2の画分におよび/または前記プロセス水に導入するように構成されている、請求項1
~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
投入装置(10)が、制御可能な投入量の酵素をシステムに供給するように適応されている、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記投入装置(10)が、定量ポンプである、請求項4または
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記投入装置(10)が、流動バルブを通って流れる酵素の量を制御するように構成された制御可能な流出バルブを有する、重力流計量分配装置である、請求項4または
5に記載のシステム。
【請求項8】
a)穀粒を水に浸漬して浸漬穀粒を製造するステップと;
b)前記浸漬穀粒を粉砕するステップと;
c)前記粉砕され浸漬された穀粒から胚芽を分離して、繊維、デンプン、およびグルテンを含んでなるトウモロコシ穀粒塊を製造するステップと;
d)得られたトウモロコシ穀粒塊を繊維洗浄手順に供するステップと
、
を含んでなる、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプン収率および/またはグルテン収率を改善する方法であって、
ステップd)において前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分が、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、ステップd)
が請求項1~
7のいずれか一項
に記載の繊維洗浄システムを使用して実行される、方法。
【請求項9】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、セルラーゼ(EC3.2.1.4)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55(非還元末端α-L-アラビノフラノシダーゼ);EC3.2.1.185(非還元末端β-L-アラビノフラノシダーゼ)セロビオヒドロラーゼI(EC3.2.1.150)、セロビオヒドロラーゼII(E.C.3.2.1.91)、セロビオシダーゼ(E.C.3.2.1.176)、β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)、β-キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)からなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などのセルラーゼバックグラウンドを有する生物において発現される、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、GH10キシラナーゼであるキシラナーゼを含んでなる、請求項
8~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼを含んでなる、請求項8~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
iv)配列番号22~26のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
v)配列番号22~26のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;および
vi)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH10ポリペプチドを含んでなる、請求項
8~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
iv)配列番号27~35のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
v)配列番号27~35のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;および
vi)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH11ポリペプチドを含んでなる、請求項
8~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
iv)配列番号1~21のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
v)配列番号1~21に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;および
vi)iv)およびv)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、アラビノフラノシダーゼ活性を有するGH62ポリペプチドを含んでなる、請求項
8~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記加水分解酵素の1つまたは複数が、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)において発現され、GH10キシラナーゼであるキシラナーゼと、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼとを含んでなる、請求項
8~
15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム内で加水分解酵素を使用するために最適化された、繊維洗浄システムに関する。さらに、本発明は、好ましくは最適化された繊維洗浄システムを含んでなる、湿式製粉工程におけるデンプンおよびグルテンの収率を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトウモロコシの湿式製粉は、デンプンと、胚芽、グルテン、および繊維をはじめとするいくつかの副産物との回収および精製のために設計された方法である。
【0003】
繊維は最も価値のない副産物であるため、産業界では、繊維の割合を減らしながら、デンプンやグルテンなどのより価値の高い製品の収率を増加させることにかなりの努力を注いでいる。高品質デンプンは、乾燥デンプン、改質デンプン、デキストリン、甘味料、およびアルコールなどの製品にさらに加工された後に、様々な商業目的に使用され得るので価値がある。グルテンは通常、コーングルテンミール(約60%のタンパク質)またはコーングルテンフィード(約20%のタンパク質)として、動物の飼料のために使用される。
【0004】
湿式製粉工程は、使用される特定の製粉装置に顕著に依存して変動し得るが、通常、工程は、穀粒洗浄、浸漬、粉砕、胚芽分離、二次粉砕、繊維分離、グルテン分離、およびデンプン分離を含む。トウモロコシ穀粒が洗浄された後、それらは典型的には、時間および温度が制御された状態下で水または希釈SO2溶液に浸漬することによって軟化される。次に、穀粒を粉砕して果皮を砕き、胚芽を穀粒の残りの部分から分離する。主に繊維、デンプン、およびグルテンからなる残留スラリーは、繊維洗浄工程で微粉砕および篩掛けされ、繊維がデンプンおよびグルテンから分離された後、グルテンとデンプンが分離され、デンプンは洗浄/濾過工程で精製され得る。
【0005】
湿式製粉工程の浸漬ステップのための酵素の使用など、湿式製粉工程のいくつかのステップにおける酵素の使用が示唆されている。市販の酵素製品Steepzyme(登録商標)(Novozymes A/Sから入手可能)は、湿式製粉工程の第1のステップ、すなわちトウモロコシ穀粒を水に浸す浸漬ステップに適することが示されている。
【0006】
より最近では、トウモロコシ湿式製粉における全処理時間を顕著に短縮し、処理剤としての二酸化硫黄に対する必要を排除する、修正された湿式製粉である「酵素的製粉」が開発されている。Johnston et al.,Cereal Chem,81,p.626-632(2004)。
【0007】
米国特許第6,566,125号明細書は、トウモロコシ穀粒を水に浸漬して浸漬トウモロコシ穀粒を製造し、浸漬トウモロコシ穀粒を粉砕して粉砕トウモロコシスラリーを製造し、粉砕トウモロコシスラリーを酵素(例えば、プロテアーゼ)と共にインキュベートすることを伴う、トウモロコシからデンプンを得る方法を開示する。
【0008】
米国特許第5,066,218号明細書は、穀粒を洗浄し、穀粒を水に浸漬して軟化させ、次に穀粒をセルラーゼ酵素と共に製粉することを含んでなる、穀粒、特にトウモロコシを製粉する方法を開示する。
【0009】
国際公開第2002/000731号パンフレットは、穀粒を水に1~12時間浸漬し、浸漬穀粒を湿式製粉して、穀粒を酸性プロテアーゼなどの1つまたは複数の酵素で処理することを含んでなる、作物穀粒を処理する方法を開示する。
【0010】
国際公開第2002/000911号パンフレットは、製粉デンプンを酸性プロテアーゼに曝すことを含んでなる、デンプングルテンを分離する方法を開示する。
【0011】
国際公開第2002/002644号パンフレットは、デンプンスラリーを酸性プロテアーゼの有効量を含んでなる水溶液で洗浄することを含んでなる、製粉工程のデンプンとグルテンの分離ステップから得られたデンプンスラリーを洗浄する方法を開示する。
【0012】
国際公開第2014/082566号パンフレットおよび国際公開第2014/082564号パンフレットは、湿式製粉で使用するためのセルロース分解性組成物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野では、トウモロコシの湿式製粉において、トウモロコシ穀粒の浸漬(steeping)/浸漬(soaking)中、トウモロコシ穀粒の粉砕中、およびデンプンとグルテンの分離中に酵素を使用することの効果が研究されているが、トウモロコシ湿式製粉に関連するエネルギー消費量とコストを低下させ、デンプンおよびグルテンの収率増大を与えてもよい、改善された酵素技術に対する必要性がなおもある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、トウモロコシ湿式製粉で使用され得て、システム内の加水分解酵素の使用のために最適化された、繊維洗浄システムに関する。
【0015】
さらに、本発明は、繊維洗浄中に、1つまたは複数のトウモロコシ穀粒塊画分を1つまたは複数の加水分解酵素の有効量に少なくとも35分間接触させることで、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプン収率および/またはグルテン収率を改善する方法に関する。
【0016】
第1の態様では、本発明は、向流洗浄構成で流体連結された複数の篩ユニットを含んでなる繊維洗浄システムに関し、各篩ユニットは、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを以下の2つの画分に分離するように構成され:
-第2の画分が重量%繊維での測定で第1の画分よりも多い量を含有する、第1の画分および第2の画分;
-空間がシステム内に配置されて、前記第1の画分の1つ、前記第2の画分の1つ、または混合された第1および第2の画分、好ましくは第2の画分のみを受け入れるように流体連結され、空間内に受け入れられた片方または双方の画分に対してインキュベーション時間を提供するように構成され;それによってインキュベートされた片方または双方の画分を下流の篩ユニットに排出し、
システムは、以下のために構成されている:
-トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニットに注入し、
-最上流の篩ユニットからの第1の画分をデンプンを含有する生成流として排出し、
-プロセス水を注入し、好ましくはプロセス水を最下流の篩ユニットに注入するように配置され、
-最下流の篩ユニットから、最初のトウモロコシ穀粒塊よりも少ない量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として、第2の画分を排出し、
-システムに加水分解酵素を導入する。
【0017】
第2の態様では、本発明は、開口部を通じて材料が上流から下流チャンバーに流れてもよい、2つの隣接するチャンバー間の通路を形成する開口部によって連続的に流体連結された、いくつかのチャンバーを含んでなるインキュベーターに関し、
-最上流チャンバーは連結されて、前記第1の画分、前記第2の画分または第1および第2の画分の組み合わせを受け入れ、
-最下流チャンバーは、インキュベーターからインキュベートされた材料を送り出すように適応された出口連結部を有し;
インキュベーターは、インキュベーター内の固体デカンテーションを防ぐように構成された、1つまたは複数の撹拌機をさらに含んでなる。
【0018】
第2の態様によるインキュベーターは、有利には、第1の態様による繊維洗浄システムにおいて使用されてもよいが、この使用に限定されるとは見なされない。
【0019】
第3の態様では、本発明は、
a)穀粒を水に浸漬して浸漬穀粒を製造するステップと;
b)浸漬穀粒を粉砕するステップと;
c)粉砕され浸漬された穀粒から胚芽を分離して、繊維、デンプン、およびグルテンを含んでなるトウモロコシ穀粒塊を製造するステップと;
d)得られたトウモロコシ穀粒塊を繊維洗浄手順に供するステップと
を含んでなる、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプン収率および/またはグルテン収率を改善する方法に関し、ステップd)においてトウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分が、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、ステップd)は、少なくとも45分間の総滞留時間を有する。
【0020】
本発明、特に本発明による好ましい実施形態を添付の図面を参照して、より詳細に説明する。図面は本発明を具現化する方法を示し、添付の特許請求の範囲内に含まれるその他の可能な実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による向流繊維洗浄システムの第1の実施形態を概略的に示す。
【
図2】本発明によるシステムのさらなる実施形態を概略的に示す。
【
図3】内蔵インキュベーターを有する篩ユニットを概略的に示す。
【
図4】液体サイクロンの形態の篩ユニットを概略的に示す。
【
図5A】シミュレーションに使用された異なる投入位置を示す、湿式製粉工程区域の流れ図である。
【
図5B】シミュレーションに使用された異なる投入位置を示す、湿式製粉工程区域の流れ図である。
【
図6】実験室繊維インキュベーション中における、濾液中の酵素回収率を示す。
【
図7】本発明によるインキュベーターの好ましい実施形態を概略的に示す;
図7は、垂直断面図(
図7の左側)、インキュベーター内部に配置された撹拌機の詳細(
図7の右上隅)、およびA-Aに沿った水平断面図(
図7の右下隅)によって、インキュベーターを示す。
【
図8】総デンプン、総タンパク質、乾燥繊維重量、および結合デンプン量を測定する工程の概要を述べる。
【
図9】平均(出発繊維から放出された不溶物%)および出発繊維から放出された不溶物%に対する、乾燥固体%(DS)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的は、加水分解酵素の使用に最適化された繊維洗浄システムを提供することである。さらに、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプンおよびグルテンの収率を改善する方法を提供することが、本発明の目的である。本発明のその他の利点としては、改善された繊維脱水および消泡効果が挙げられる。
【0023】
湿式製粉工程:トウモロコシ穀粒は、穀粒を割って、穀粒をその4つの主要成分であるデンプン、胚芽、繊維、およびグルテンに分離するために、湿式製粉される。
【0024】
湿式製粉工程は、製粉機毎に顕著に変動し得るが、従来の湿式製粉は通常以下のステップを含んでなる。
1.浸漬および胚芽分離、
2.繊維洗浄、圧搾、および乾燥、
3.デンプン/グルテン分離、および
4.デンプン洗浄。
【0025】
1.浸漬、粉砕、および胚芽分離
約50℃、例えば、約45℃~60℃の温度で、約30分間~約48時間、好ましくは30分間~約15時間、例えば、約1時間~約6時間にわたり、水に浸漬することによってトウモロコシ穀粒を軟化させる。浸漬中に穀粒は水分を吸収し、水分レベルが15パーセントから45パーセントに増加してサイズは2倍を超える。例えば、0.1パーセント二酸化硫黄(SO2)および/またはNaHSO3を水に任意に添加することは、温かい環境内における過剰な細菌増殖を防ぐ。トウモロコシが膨潤して軟化するにつれて、浸漬水の弱酸性がトウモロコシ中のグルテン結合を緩め始め、デンプンを放出する。トウモロコシ穀粒が浸漬された後、それらは挽き割られて胚芽が放出される。胚芽はコーンオイルを含有する。胚芽は、厳密に制御された条件下で、その他の物質を含まない胚芽部分を本質的に「浮遊させる」ことによって、デンプン、グルテン、および繊維のより高密度の混合物から分離される。この方法は、後時の加工ステップにおける微量のコーンオイルの悪影響を排除するのに役立つ。
【0026】
2.繊維洗浄、圧搾、および乾燥
最終製品中の繊維を最小限に抑えながら、最大のデンプンおよびグルテンの回収率を得るためには、加工中に遊離デンプンおよびグルテンを繊維から洗い流す必要がある。遊離デンプンおよびグルテンは、篩掛け(洗浄)中に繊維から分離され、製粉デンプンとして収集される。次に残留繊維は、含水量を減らすために圧搾され乾燥される。
【0027】
3.デンプングルテン分離
製粉デンプンと称される、繊維洗浄ステップからのデンプン-グルテン懸濁液は、デンプンおよびグルテンに分離される。グルテンは、デンプンと比較して密度が低い。製粉デンプンを遠心分離機に通過させることによって、グルテンは容易に遠心脱水される。
【0028】
4.デンプン洗浄
デンプン分離ステップからのデンプンスラリーは、いくらかの不溶性タンパク質および多くの可溶性物質を含む。最高品質のデンプン(高純度デンプン)を製造する前に、それらを除去する必要がある。わずか1または2パーセントのタンパク質が残留するデンプンは、ヒドロクローン(hydroclones)内で希釈され、8~14回浄洗され、再希釈され、再洗浄されて、最後の微量のタンパク質が除去され、典型的に純度99.5%を超える高品質デンプンが製造される。
【0029】
湿式製粉の製品:湿式製粉を使用して、限定されるものではないが、コーンスティープリカー、コーングルテンフィード、胚芽、コーンオイル、コーングルテンミール、コーンスターチ、改質コーンスターチ、コーンシロップなどのシロップ、およびコーンエタノールが製造され得る。
【0030】
酵素の定義:
アラビノフラノシダーゼ活性を有するアラビノフラノシダーゼ/ポリペプチド:「アラビノフラノシダーゼ」という用語は、α-L-アラビノシド中の末端非還元α-L-アラビノフラノシド残基の加水分解を触媒する、α-L-アラビノフラノシドアラビノフラノヒドロラーゼ(EC3.2.1.55)を意味する。酵素は、α-L-アラビノフラノシド、(1,3)-および/または(1,2)-および/または(1,5)-結合を含有するα-L-アラビナン、アラビノキシラン、およびアラビノガラクタンに作用する。α-Lアラビノフラノシダーゼは、アラビノシダーゼ、α-アラビノシダーゼ、α-L-アラビノシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、多糖α-L-アラビノフラノシダーゼ、α-L-アラビノフラノシドヒドロラーゼ、L-アラビノシダーゼ、またはα-L-アラビナナーゼとしても知られている。アラビノフラノシダーゼ活性は、200μlの総容積中で、1mlの100mM酢酸ナトリウム(pH5)当たり5mgの中粘度小麦アラビノキシラン(Megazyme International Ireland,Ltd.,Bray,Co.Wicklow,Ireland)を40℃で30分間使用し、それに続くAMINEX(登録商標)HPX-87Hカラムクロマトグラフィー(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA,USA)によるアラビノース分析によって、測定され得る。
【0031】
β-グルコシダーゼ活性を有するβ-グルコシダーゼ/ポリペプチド:「β-グルコシダーゼ」という用語は、β-D-グルコースの放出を伴う末端非還元β-D-グルコース残基の加水分解を触媒する、β-D-グルコシドグルコヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.21)を意味する。β-グルコシダーゼ活性は、Venturi et al.,2002,J.Basic Microbiol.42:55-66の手順に従って、p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシドを基質として使用して測定され得る。1単位のβ-グルコシダーゼは、0.01%ツイーン(登録商標)20を含有する50mMクエン酸ナトリウム中で、基質としての1mMのp-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシドから25℃、pH4.8で毎分生成される、1.0μモルのp-ニトロフェノレートアニオンとして定義される。
【0032】
β-キシロシダーゼ活性を有するβ-キシロシダーゼ/ポリペプチド:「β-キシロシダーゼ」という用語は、短いβ(1→4)-キシロオリゴ糖のエキソ加水分解を触媒して非還元末端から連続D-キシロース残基を除去する、β-D-キシロシドキシロヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.37)を意味する。β-キシロシダーゼ活性は、0.01%ツイーン(登録商標)20を含有する100mMクエン酸ナトリウム、pH5、40℃中で、1mMのp-ニトロフェニル-β-D-キシロシドを基質として使用して測定され得る。1単位のβ-キシロシダーゼは、0.01%ツイーン(登録商標)20を含有する100mMクエン酸ナトリウム中の1mMのp-ニトロフェニル-β-D-キシロシドから40℃、pH5で毎分生成される1.0μモルのp15ニトロフェノレートアニオンとして定義される。
【0033】
セロビオヒドロラーゼ活性を有するセロビオヒドロラーゼ/ポリペプチド:「セロビオヒドロラーゼ」という用語は、セルロース、セロオリゴ糖、または任意のβ-1,4-結合グルコース含有ポリマー中で1,4-β-D15グルコシド結合の加水分解を触媒し、鎖の還元末端(セロビオヒドロラーゼI)または非還元末端(セロビオヒドロラーゼII)からセロビオースを放出する、1,4-β-D-グルカンセロビオヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.91およびE.C.3.2.1.176)を意味する(Teeri,1997,Trends in Biotechnology 15:160-167;Teeri et al.,1998,Biochem.Soc.Trans.26:173-178)。セロビオヒドロラーゼ活性は、Lever et al.,1972,Anal.Biochem.47:273-279;van Tilbeurgh et al.,1982,FEBS Letters 149:152-156;van Tilbeurgh and Claeyssens,1985,FEBS Letters 187:283-288;およびTomme et al.,1988,Eur.J.Biochem.170:575-581によって記載される手順に従って測定され得る。
【0034】
セルラーゼ活性またはセルロース分解活性を有するセルロース分解性酵素またはセルラーゼ/ポリペプチド:「セルロース分解性酵素」または「セルラーゼ」という用語は、繊維などのセルロースを含んでなる任意の物質を含んでなるセルロース系材料を加水分解する、1つまたは複数の(例えば、いくつかの)酵素を意味する。セルロース分解性(Cellulytic)酵素としては、エンドグルカナーゼ(E.C3.2.1.4)、セロビオヒドロラーゼ(E.C3.2.1.91およびE.C3.2.1.150)、β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。セルロース分解性酵素活性を測定するための2つの基本的なアプローチは、Zhang et al.,2006,Biotechnology Advances 24:452-481で概説されるように、(1)総セルロース分解酵素活性の測定、および(2)個々のセルロース分解酵素活性(エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼ)の測定を含む。総セルロース分解酵素活性は、ワットマン#1濾紙、微結晶セルロース、細菌セルロース、藻類セルロース、綿、前処理リグノセルロースなどの不溶性基質を使用して測定され得る。最も一般的な総セルロース分解活性アッセイは、ワットマン#1濾紙を基質として使用する濾紙アッセイである。アッセイは、国際純正応用化学連合(IUPAC)によって確立された(Ghose,1987,Pure Appl.Chem.59:257-68)。
【0035】
セルロース分解性酵素活性は、以下の条件下における、セルロース分解性酵素によるセルロース系材料の加水分解中の糖生成/放出の増加を測定することによって判定され得る:1~50mgのセルロース分解性酵素タンパク質/前処理トウモロコシ茎葉(PCS)(またはその他の前処理セルロース系材料)中のセルロースg、40℃~80℃、例えば、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、または80℃などの適切な温度で3~7日間、および4~9、例えば、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0などの適切なpH、セルロース分解性酵素タンパク質の添加なしの対照加水分解との比較。典型的な条件は、1mlの反応物、洗浄または未洗浄PCS、5%不溶性固体(乾燥重量)、50mM酢酸ナトリウム5、pH5、1mMのMnSO4、50℃、55℃、または60℃で72時間、AMINEX(登録商標)HPX-87Hカラムクロマトグラフィー(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA,USA)による糖分析である。
【0036】
ヒドロラーゼ活性を有する加水分解酵素またはヒドロラーゼ/ポリペプチド:「加水分解酵素」は、水を使用して基質を分解する任意の触媒的タンパク質を指す。加水分解酵素としては、セルラーゼ(EC3.2.1.4)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55(非還元末端α-L-アラビノフラノシダーゼ);EC3.2.1.185(非還元末端β-L-アラビノフラノシダーゼ)セロビオヒドロラーゼI(EC3.2.1.150)、セロビオヒドロラーゼII(E.C.3.2.1.91)、セロビオシダーゼ(E.C.3.2.1.176)、β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)、β-キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)が挙げられる。
【0037】
キシラナーゼ活性を有するキシラナーゼ/ポリペプチド:「キシラナーゼ」という用語は、キシラン中の1,4-β-D-キシロシド結合のエンド加水分解を触媒する1,4-β-D-キシラン-キシロヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.8)を意味する。キシラナーゼ活性は、0.01%トリトン(登録商標)X-100および200mMリン酸ナトリウム、pH6、37℃中で、0.2%AZCL-アラビノキシランを基質として使用して測定され得る。1単位のキシラナーゼ活性は、200mMリン酸ナトリウム、pH6中で、基質としての0.2%AZCL-アラビノキシランから37℃、pH6で毎分生成される1.0μモルのアズリン(azurine)として定義される。
【0038】
その他の定義:
本文脈では、用語は当業者に普通であるように使用される。これらの用語のいくつかを以下で説明する。
【0039】
消泡効果:起泡は湿式製粉で広く観察されている現象である。「消泡効果」とは、起泡を減少させる手段を指す。
【0040】
接触時間:1つまたは複数の酵素が基質と反応するためには、1つまたは複数の酵素が基質と接触していなければならない。「接触時間」とは、1つまたは複数の酵素の有効量が、基質塊の少なくとも一部と接触している時間を指す。酵素は、接触時間中に全ての基質塊と接触していなくてもよいが、1つまたは複数の酵素を基質塊と混合することで、接触時間中に基質塊の一部が酵素触媒加水分解されるようにする。
【0041】
トウモロコシ穀粒:例えば、デントコーン、フリントコーン、ポッドコーン、ストライプメイズ、甘味種トウモロコシ、ワキシーコーンなどをはじめとする、様々なトウモロコシ穀粒が知られている。
【0042】
いくつかのトウモロコシ穀粒は、穀粒中の胚芽を保護する「果皮」と称される外被を有する。それは水と水蒸気に抵抗し、昆虫および微生物にとって望ましくない。「果皮」によって被覆されていない穀粒の唯一の領域は「先端キャップ」であり、これは穀粒の穂軸への付着点である。
【0043】
トウモロコシ穀粒塊:好ましくは、繊維、グルテン、およびデンプンを含んでなる塊に言及するために使用され、好ましくは、作物穀粒を蒸煮および粉砕し、繊維、グルテンおよびデンプンを含んでなる塊を胚芽から分離することによって得られる。トウモロコシ穀粒塊が繊維洗浄を通過するにつれて、それは第1(s)および第2の画分(f)などのいくつかの画分に分離される。したがって、「トウモロコシ穀粒塊の画分」および「トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分」は、これらの第1(s)および第2の画分(f)を指す。
【0044】
脱水:「脱水」は、トウモロコシ繊維から余分な水分が除去される工程を指す。
【0045】
発現:「発現」という用語は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、および分泌をはじめとするが、これに限定されるものではない、ポリペプチドの産生に関与するあらゆるステップを含む。
【0046】
胚芽:「胚芽」はトウモロコシ穀粒の唯一の生きている部分である。それは、穀粒がトウモロコシ植物に成長するのに不可欠な遺伝情報、酵素、ビタミン、およびミネラルを含有する。黄色デントコーンでは、胚芽の約25パーセントがコーンオイルである。胚芽に被覆されまたは取り囲まれている内胚乳は、穀粒乾燥重量の約82%を構成し、発芽種子のエネルギー源(デンプン)およびタンパク質源である。内胚乳には、軟質および硬質の2種類がある。硬質内胚乳では、デンプンはしっかりと詰まっている。軟質内胚乳では、デンプンはほぐれている。
【0047】
GH10ポリペプチド:酵素活性を有するポリペプチドを指し、ポリペプチドは、http://www.cazy.org/で利用できるCarbohydrate-Active enZYmes(CAZymes)データベースにおいて、グリコシドヒドロラーゼファミリー10のメンバーとして分類される。(Lombard,V.;Golaconda Ramulu,H.;Drula,E.;Coutinho,P.M.;Henrissat,B.(21 November 2013).”The carbohydrate-active enzymes database(CAZy) in 2013”.Nucleic Acids Research.42(D1):D490-D495;Cantarel BL,Coutinho PM,Rancurel C,Bernard T,Lombard V,Henrissat B(January 2009).”The Carbohydrate-Active EnZymes database(CAZy):an expert resource for Glycogenomics”.Nucleic Acids Res.37(Database issue):D233-8)。
【0048】
GH11ポリペプチドは、酵素活性を有するポリペプチドを指し、ポリペプチドは炭水化物活性酵素(CAZymes)データベースにおいて、グリコシドヒドロラーゼファミリー11のメンバーとして分類される。
【0049】
GH62ポリペプチドは、酵素活性を有するポリペプチドを指し、ポリペプチドは炭水化物活性酵素(CAZymes)データベースにおいて、グリコシドヒドロラーゼファミリー62のメンバーとして分類される。
【0050】
グルテン:グルテンは、2つの小型タンパク質であるグルテニンとグリアジンから構成されるタンパク質である。本明細書において「グルテン」とは、トウモロコシ穀粒に見られるタンパク質の大部分を指す。トウモロコシ湿式製粉からのグルテンの主な製品は、コーングルテンミール(約60%のタンパク質)とコーングルテンフィード(約20%のタンパク質)である。
【0051】
粉砕するまたは粉砕:「粉砕」という用語は、トウモロコシ穀粒をより小さな成分に破壊することを指す。
【0052】
インキュベーション時間:トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分が、篩掛けされることなく、繊維洗浄中に加水分解酵素と接触する時間。多くの好ましい実施形態では、本発明によるシステムおよび方法は、その中で材料が酵素によって「影響を受けたままにされる」インキュベーターを利用し、このような状況では、インキュベーション時間は以下によって判定されてもよい:
【数1】
【0053】
代案としては、インキュベーターへの流入が、単位時間当たりの容積で表されるならば:
【数2】
【0054】
不溶性物質:本文脈では、「不溶性物質」は「不溶性固体」と同義的に使用され;それは75μmの篩を通過することができて、水に溶解され得ない物質として定義される。
【0055】
製粉装置:「製粉装置」は、製粉で使用される全ての装置を指す。湿式製粉工程は、利用可能な製粉装置に応じて変化する。製粉装置の例は、浸漬タンク、蒸発器、スクリュープレス、回転乾燥機、脱水篩、遠心分離機、液体サイクロンなどであり得る。各製粉装置/製粉ラインのサイズおよび数は、製粉機によって変動し得て、それは製粉工程に影響を及ぼすであろう。例えば、繊維洗浄篩ユニットの数は変動し得て、遠心分離機のサイズについても同様である。
【0056】
滞留時間:総滞留時間は、第1の篩ユニット(S1)に受け入れられたトウモロコシ穀粒塊およびその1つまたは複数の画分が、繊維洗浄システムを再び出る前に、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触する時間である。滞留時間中に、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は、最上流篩ユニット(S1)からの第1の画分(s1)の一部として、または最下流篩ユニット(S4)からの第2の画分(f4)の一部として繊維洗浄システムを出る前に、空間(V)内で1つまたは複数の加水分解酵素と共にインキュベートされる。滞留時間は、好ましくは、本発明によるシステム内で固体が過ごす平均時間として推定されてもよい。これは以下の関係によって推定されてもよい:
【数3】
【0057】
代案としては、システムへの流入が、単位時間当たりの容積で表されるならば:
【数4】
【0058】
システムの容積は典型的に、システム内の全ての空隙の容積の合計に等しく設定される;しかし、システム内の管材料は典型的には小さく作られるので、滞留時間の決定において管の容積を棄却することが好ましくあってもよい。
【0059】
篩掛け:「篩掛け」という用語は、トウモロコシ穀粒塊を第1の画分sおよび第2の画分fに分離する工程、および1つの篩ユニットから別のユニットへのこれらの画分の移動を指す。篩ユニットは、例えば、その中で材料がノズルまたは回転篩を通して供給される圧力供給篩/供給圧力篩であってもよく、材料は重力によって篩を通して押し出される。このような篩の例は、それぞれDSM篩およびICM篩であり得る。
【0060】
非篩掛け時間は、トウモロコシ穀粒塊またはその画分と酵素とのインキュベーションのために提供される、非分離時間である。
【0061】
配列同一性:2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の関連性は、パラメータ「配列同一性」によって記述される。
【0062】
本発明の目的で、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度は、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)で実装されているように、好ましくはバージョン3.0.0以降で判定される。バージョン6.1.0が用いられた。
【0063】
使用されるオプションのパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ伸長ペナルティ、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」とラベル付けされた(-nobriefオプションを使用して取得された)Needleの出力が同一性百分率として使用され、以下のように計算される:(同一残基×100)/(アラインメント長さ-アラインメント中のギャップ総数)。
【0064】
デンプン:「デンプン」という用語は、アミロースおよびアミロペクチンからなる、貯蔵顆粒の形態で植物組織中に広く存在するグルコース単位からなる、植物の複合多糖類からなる任意の材料を意味し、(C6H10O5)nとして表され、式中、nは任意の数値である。
【0065】
浸漬(steeping)または浸漬(soaking):「浸漬」という用語は、穀粒を水および任意選択的にSO2に浸漬することを意味する。
【0066】
粘度:流体の粘度は、剪断応力または引張応力による漸進的変形に対する抵抗の尺度である。本出願では、「粘度」はまた、「濃さ」の非公式の概念も指す。
【0067】
発明の説明:
従来のトウモロコシ湿式製粉の工程では、繊維の洗浄および乾燥手順は、繊維スラリーの最大処理量を達成するために最適化されている。したがって、繊維洗浄工程は製粉機毎に異なるが、典型的には30分未満であり、それは繊維洗浄中に酵素を投入することをあまり魅力的にしない。
【0068】
本発明者らは、繊維洗浄における酵素の投入が、驚くほど大きな可能性を秘めていることを観察した:正しく投入され、滞留時間が適切であれば、酵素は繊維画分の脱水を提供するだけでなく;酵素はまた、繊維に結合したかなりの量の価値あるデンプンとグルテンを放出させる。さらに、本発明者らは、繊維洗浄工程において酵素を正しく適用すると、酵素が気泡形成を減少させ、それが消泡薬品の必要性を減少させ、または不要にさえしてもよいことを観察した。したがって、本発明は、繊維洗浄プロセスにおいて酵素を適切に投入する手段、および酵素とトウモロコシ穀粒塊との間の接触時間を増加させる手段を提供する。
【0069】
一態様では、本発明は、以下を含んでなる繊維洗浄システムに関する:
-向流洗浄構成で流体連結された複数の篩ユニット(S1...S4);各篩ユニットは、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを第1の画分(s)と第2の画分(f)の2つの画分に分離するように構成されており、前記第2の画分(f)は、重量%繊維での測定で第1の画分(s)よりも多い量を含有し;
-空間(V)がシステム内に配置され、前記第1の画分の(s)、前記第2の画分(f)、または混合された第1および第2の画分(s、f)、好ましくは第2の画分(f)のみを受け入れるように流体連結され、前記空間内に受け入れられた片方または双方の画分に対してインキュベーション時間を提供するように構成されており;それによってインキュベートされた片方または双方の画分を下流の篩ユニット(S4)に排出し、
システムは、以下のために構成されている:
-トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニット(S1)に注入し、
-最上流の篩ユニットt(S1)からの第1の画分(s1)をデンプンを含有する生成流として排出し、
-プロセス水を注入し、好ましくはプロセス水を最下流の篩ユニット(S4)に注入するように配置され、
-最下流の篩ユニット(S4)から、前記第2の画分(f4)を、前記最初のトウモロコシ穀粒塊よりも少ない量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として排出し、
-前記システムに加水分解酵素を導入する。
【0070】
図1は、本発明による繊維洗浄システムの実施形態を概略的に示す。
図1に示されるように、繊維洗浄システムは、向流洗浄構成で流体的に接続されている複数の篩ユニットS1、S2、S3、S4を含んでなる。流体連結は、典型的には、篩ユニット間で物質を輸送するためのパイプなどの流路を使用して、篩ユニットが連結されていることを意味する。篩ユニットS1~S4のそれぞれは、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを2つの画分、すなわち第1の画分s(s1、s2、s3、s4)と第2の画分f(f1、f2、f3、f4)とに分離するように構成される。当業者は理解するであろうように、繊維洗浄システムにおいて生成される第1の画分の数は、システムに含まれる篩ユニットの数に左右される。システム内の篩ユニットの数は、好ましくは2~8であり、このような実施形態では、第1および第2の画分の数もまた2~8である。篩ユニットは、典型的には、固体が別の流れ中で分離され、それによって第2の画分fは、重量%繊維での測定で第1の画分sよりも多い量を含有するように構成される。図において、表記「s」は、好ましくは繊維のない流れ(デンプンを含有する)を指し、表記「f」は、好ましくは繊維を含有する流れを指す。fおよびsの指数は、流れの起源を指す。第1の画分sがいかなる繊維も含まないことが好ましいが、これは実用的設定では達成し難いことに留意されたい。
【0071】
システム内の流れは、下流方向と上流方向に、各篩ユニットを有し、例えば篩ユニットS3は、例えばS2の上流の篩ユニットから、例えばf2の流れを受け入れ、例えばs3の流れを例えばS2の上流篩ユニットへ送達する。同様に、篩ユニットS3は、下流篩ユニットS4から流れs4を受け入れ、流れf3を下流篩ユニットS4に送達する。
【0072】
図1に示されるように、典型的にはシステム内の洗浄水として使用される水であるプロセス水は、最下流の篩ユニットS4に供給され、プロセス水は典型的には繊維を含有しない水である。トウモロコシ穀粒塊は、典型的には最上流の篩ユニットS1に供給される、液体懸濁液(典型的には水中懸濁液)である。これは
図1では、「製粉から」と表示される矢印によって示される。それによって、そして篩ユニット間の流体連結によって、トウモロコシ穀粒塊およびその画分fはシステムの下流に流れ、プロセス水はシステムの上流に移動する。したがって、システム内の流体構成は、コーネル(cornel)穀粒塊が、最上流篩ユニットS1内で大量のデンプンを含有する流体によって洗浄され、最下流篩ユニットS4内で少量のデンプンを含有する流体によって洗浄されると見なされ得る。さらに、最上流篩ユニットS1内のトウモロコシ穀粒塊は、最下流篩ユニットS4内のトウモロコシ穀粒塊の画分fよりも、多量のデンプンを含有する。
【0073】
本発明の目的の1つは、繊維からデンプンを除去する効率を高めるために、システム内におけるトウモロコシ粒塊またはその画分と酵素との接触時間を提供することである。システム内における酵素とトウモロコシ穀粒塊またはその画分との接触時間は、滞留時間とも称される。繊維洗浄システムの最適点で酵素を添加することによって、滞留時間が延長され得て、それは繊維からのデンプンの除去または分離の効率を高めてもよい。典型的な製粉機によって提供されるよりも長い滞留時間を提供するために、空間V(
図1では図示されない)がシステム内に配置され、前記第1の画分sの1つ、前記第2の画分fの1つ、または混合された第1および第2の画分s、f、好ましくは第2の画分fのみを受け入れるように流体連結され、空間内に受け入れられた片方または双方の画分にインキュベーション時間を提供し;それによってインキュベートされた画分を下流篩ユニットS4に排出するように構成されてもよい。システム内に配置された別個のインキュベーターユニットを有することが好ましくあってもよい一方で、篩ユニットを連結する流路もまた、空間を提供するために使用されてもよいことに留意されたい。
【0074】
さらに、そして本明細書に提示されるように、最上流篩ユニットS1の下流且つ最下流篩ユニットS4の上流の位置に、酵素を添加することが有利であることが見出された;
図1の実施形態では、酵素の添加は、篩ユニットS3の流体位置にあるものとして示されている(「酵素」と表示された
図1の矢印によって示される。
【0075】
繊維洗浄システムが2つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第1と第2の篩ユニットとの間で、または篩ユニット1と篩ユニット2との間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0076】
繊維洗浄システムが3つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット3との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット2内で、または篩ユニット2と3の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0077】
繊維洗浄システムが4つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2または第3の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット4との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット2内で、または篩ユニット2と3の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0078】
繊維洗浄システムが5つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3または第4の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット5との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット3内で、または篩ユニット3と4の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0079】
繊維洗浄システムが6つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、または第5の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット6との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット4内で、または篩ユニット4と5の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0080】
繊維洗浄システムが7つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、第5または第6の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット7との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット4内で、または篩ユニット4と5の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0081】
繊維洗浄システムが8つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、第5、第6または第7の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット8との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット5内で、または篩ユニット5と6の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0082】
したがって、本発明の好ましい実施形態に記載のシステムは、以下のために構成される。
-好ましくは物質を最上流篩ユニットS1に供給するシステムへの入口を含んでなることによって、トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニットS1に注入する;
-好ましくはシステムからの繊維のない流れを供給する最上流篩ユニットからの出口を含んでなることによって、デンプンを含有する生成流として、第1の画分s1を最上流篩ユニットS1から排出する;
-好ましくはプロセス水を最下流篩ユニットS4に注入するように配置されてプロセス水を注入し;プロセス水の入口が、好ましくは最下流篩ユニットS4の入口である;
-好ましくは最下流篩ユニットからの出口を含んでなることによって、元のトウモロコシ穀粒塊よりも少量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として、第2の画分f4を最下流篩ユニットS4から排出する。
【0083】
システムはまた、システム内に加水分解酵素を導入するようにも構成され、それは、トウモロコシ穀粒塊またはその画分と1つまたは複数の加水分解酵素との接触を可能にするために、好ましい位置に配置された入口であってもよい。
【0084】
本発明によるシステムのさらなる実施形態を概略的に示す、
図2を参照する。
図1で使用されたのと同じ表記法が、
図2で使用される。
図2に示されるように、篩ユニットS1~S4は、全て篩ユニットの内側に傾斜した点線で示される篩要素(篩)を含んでなる。この傾斜した点線は、繊維を含有する画分と、好ましくはいかなる繊維も含有しない画分とを分離するように構成された装置を図示し;これは、例えば、内壁部分に配置されて篩ユニットの内部空隙を画定する、バンドフィルターまたはフィルター全般によって提供され得る。
【0085】
図2に示される実施形態では、混合されるべき様々な画分は、篩ユニットS1~S4の外側で混合されるように示されている。しかし、それらは篩ユニット内で混合されてもよい。
【0086】
これもまた
図2に示されるように、空間Vは篩ユニットS3に流体連結された別個の容器であり、それによって篩ユニットS3は、空間V内で繊維および酵素を含む流体がインキュベーション時間を経た後に、繊維および酵素を含む流体を受け入れる。
図2に概略的に示されるように、空間Vは、流体が容器の入口から出口へ直線的に流れないことを確実にするための邪魔板を有してもよく、それはショートカットを防いでインキュベーション時間を提供し得る。
【0087】
図2はまた、酵素が、空間Vに入る流れf2およびs4に適用されることも示す。示される実施形態では、酵素は、クランク軸によって駆動されるピストンポンプとして概略的に示される投入ポンプ10によって投入され、投入される酵素の量はクランク軸の回転によって制御される(一方向入口および出口弁がシリンダーまたはシリンダーヘッドに存在するが図示されない)。
【0088】
したがって、本発明によるシステムは、好ましくは、加水分解酵素を前記第1の画分に(s)、および/または前記第2の画分に(f)、および/または混合された第1および第2の画分におよび/またはシステムに供給されるプロセス水流に導入するように構成される。
【0089】
篩ユニットSの数は、例えば2つの流れに分離するための容積容量および/または他の設計目的に従って選択されてもよい。しかし、本発明によるシステムは、一般に、最上流篩ユニット、最下流篩ユニット、および好ましくは最上流篩ユニットと最下流篩ユニットとの間に流体配置された1つまたは複数の中間篩ユニットを有するであろう。すなわち、
図1および2を参照すると、好ましいシステムは、最上流篩ユニットS1および最下流篩ユニットS4と、それらの間に配置されたいくつか(例えば2個)の篩ユニットを含んでなり、間に配置されたとは、
図1および2に示されるように流体連結されていることを指す。
【0090】
詳細には、
図1および
図2に開示されるような流体連結向流洗浄構成は、典型的には、上流篩ユニットS1によって生成される第2の画分f1が、下流篩ユニットS3によって生成される第1の画分s3と混合され、前記混合された画分が、前記上流および前記下流篩ユニットS1、S3の中間にある篩ユニットS2によって第1の画分s2と第2の画分f2とに分離されるように配置された、複数の篩ユニットS1…S4を含んでなる。
【0091】
本開示は、篩ユニットS3を参照してなされている一方で、篩S2などの任意の中間篩ユニットまたはその他の中間篩ユニットにも同じ説明が当てはまり、中間篩ユニットは、最上流篩ユニットの下流且つ最下流の篩ユニットの上流に配置された、篩ユニットを指す。
【0092】
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、第2の画分f1と第1の画分s3との混合は、中間篩ユニットS2へ注入される前に行われることが好ましい。このような混合は、典型的には流体の激しい撹拌を提供する撹拌手段を含んでなる混合チャンバーに、2つの画分を注入することによって提供されてもよく、または混合は、それぞれの流れのための入口と、混合された流れのための出口とを有するマニホルドによって提供されてもよい。
【0093】
篩ユニットへの注入前の混合の代案として、第2の画分f1および第1の画分3との混合は、中間篩ユニットS2の内部で行われてもよい。これは、例えば、篩ユニットの内部に、典型的には篩ユニット内の流体を激しく撹拌する撹拌手段を装着することによって、達成されてもよい。
【0094】
図1および2で開示される実施形態は、2つを超える篩ユニットを含んでなるように示されているが、システムは、わずか2つの篩ユニットで完全に動作可能であると考えられる。したがって、典型的には、
図1または2に示されるように配置された、2~8個の篩ユニットを含んでなるシステムが好ましい。
【0095】
本発明によるシステムは、好ましくは、前記繊維洗浄システム内における、少なくとも35分間、例えば、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間、少なくとも65分間、少なくとも70分間、少なくとも75分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも105分間、少なくとも110分間、少なくとも115分間、少なくとも120分間の総滞留時間を提供するように構成されてもよく、その間に、1つまたは複数の加水分解酵素が、前記トウモロコシ穀粒塊および/または1つまたは複数のその画分と接触され、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分とは、好ましくは、画分およびfのいずれかをはじめとする、繊維および/またはデンプンおよび/またはグルテンを含有するトウモロコシ穀粒塊の任意の画分を指す。ここで、滞留時間とは、流体要素が篩ユニットS1に入る時間から、それが篩ユニットS4を出るまでの時間から算出される、システム内に存在する時間を指す。これは典型的には、例えば、システムのm3単位の総容積(篩ユニット、流路および空間(V)の容積)を篩ユニットS1から出てくる繊維のない製品の総容積流量で除した、m3/hに基づいて判定される。実用的アプローチでは、繊維のない製品の総容積流量は、所定の設計パラメータであり、次にシステムの総容積は、この設計パラメータに基づいて選択される。
【0096】
繊維洗浄システム内の総滞留時間は、35分間~5時間、例えば、35分間~4時間、35分間~3時間、35分間~2.5時間、35分間~2時間、35分間~1.5時間、45分間~5時間、45分間~4時間、45分間~3時間、45分間~2.5時間、45分間~2時間、1時間~5時間、1時間~4時間、1時間~3時間、1時間~2.5時間、1時間~2時間、70分間~5時間、70分間~4時間、70分間~3時間、70分間~2.5時間、70分間~2時間、75分間~5時間、75分間~4時間、75分間~3時間、75分間~2.5時間、75分間~2時間、80分間~5時間、80分間~4時間、80分間~3時間、80分間~2.5時間、80分間~2時間、85分間~5時間、85分間~4時間、85分間~3時間、85分間~2.5時間、85分間~2時間、90分間~5時間、90分間~4時間、90分間~3時間、90分間~2.5時間、90分間~2時間であってもよい。
【0097】
さらに、空間の寸法(m3単位)は、少なくとも少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間少なくとも25分間、少なくとも30分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間のインキュベーション時間を提供するように構成されることが好ましい。繊維洗浄手順に構成された空間(V)内のインキュベーション時間は、24時間未満、例えば、12時間未満、8時間未満、5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満であってもよい。
【0098】
好ましくは、前記空間(V)内のインキュベーション時間は、0.5~3時間、例えば、1~3時間、1~2時間または例えば、85~95分間の範囲である。
【0099】
この場合も、繊維のない製品の流れは、設計パラメータであってもよく、所望のインキュベーション時間と共にシステムのレイアウトを使用して、空間Vの容積を判定し得る。
【0100】
インキュベーション用に指定された空間Vは、好ましくは少なくとも30m3、少なくとも40m3、少なくとも50m3、少なくとも60m3、少なくとも70,m3、少なくとも80,m3、少なくとも90,m3、少なくとも100m3、少なくとも110m3、少なくとも120m3、少なくとも130m3、少なくとも140m3、少なくとも150m3、少なくとも160m3、少なくとも170m3、少なくとも180m3、少なくとも190m3、少なくとも200m3、少なくとも210m3、少なくとも220m3、少なくとも230m3、少なくとも240m3、少なくとも250m3、少なくとも260m3、少なくとも270m3、少なくとも280m3、少なくとも290m3、少なくとも300m3、少なくとも400m3、または少なくとも500m3の容積を有する。インキュベーション時間はまた、総容積または合わせた容積が、少なくとも100m3、少なくとも110m3、少なくとも120m3、少なくとも130m3、少なくとも140m3、少なくとも150m3、少なくとも160m3、少なくとも170m3、少なくとも180m3、少なくとも190m3、少なくとも200m3、少なくとも210m3、少なくとも220m3、少なくとも230m3、少なくとも240m3、少なくとも250m3、少なくとも260m3、少なくとも270m3、少なくとも280m3、少なくとも290m3、少なくとも300m3、少なくとも400m3、少なくとも500m3である2つ以上の空間Vにあってもよい。
【0101】
インキュベーション時間中、空間Vに受け入れられた流体は、篩掛けされないことが好ましい。したがって、空間Vを出る流体は、空間Vに受け入れられる流体と、例えばデンプンおよび繊維の同一組成を有するが、好ましくは繊維から放出されたより高い比率のデンプンを含有する。
【0102】
酵素と繊維間の密着を確実にするために、ローターまたはインペラを含んでなることなどによって、前記空間Vに含有される物質の撹拌のために空間Vを構成することが好ましくあってもよい。
【0103】
図2に示されるように、空間Vが最上流篩ユニットS1の下流且つ前記最下流篩ユニットS4の上流に配置されることが好ましく;特に、
図2の実施形態は、空間Vが最下流から2番目の篩ユニットS3に流体を供給するように配置されることを示す。
【0104】
本明細書で開示されるように、空間は、様々な様式で提供されてもよく、
図2に示されるように、空間Vは、好ましくは別個のインキュベーターユニットとして提供されてもよい。インキュベーターユニットは、第1の画分s、第2の画分f、または第1および第2の画分の組み合わせs、f、好ましくは第2の画分fのみを受け入れ、それによってインキュベートされた材料を下流篩ユニットS3に送り出す、適切な流体ラインによって構成されてもよい。
【0105】
本発明によるインキュベーターの好ましい実施形態を概略的に示す、
図7を参照する;
図7は、垂直断面図(
図7の左側)、インキュベーター内部に配置された撹拌機の詳細(
図7の右上隅)、およびA-Aに沿った水平断面図(
図7の右下隅)によって、インキュベーターを示す。
【0106】
図7に示されるように、インキュベーター14は、いくつかの連続的に流体連結されたチャンバー30を含んでなる(4つが示されている)。チャンバー30は、開口部32を通じて材料が上流から下流チャンバー30に流れてもよい、2つの隣接するチャンバー30間の通路を形成する開口部32によって連続的に連結される。「上流から下流へ」の流れ方向は図中で垂直下向きであり、この流れ方向は典型的にはポンプ(図示せず)によって、および/または以下に説明されるようにインキュベーター14の内側に配置されたインペラの使用によって、規定されることに留意されたい。
【0107】
図7に示されるように、最上流チャンバー30は、第1の画分s、第2の画分f、または第1および第2の画分s、fの組み合わせを受け入れるように連結される。
図7では、第1および第2の画分s、fは、インキュベーター14の外側で混合され、最上流チャンバー30に供給される。
【0108】
インキュベーターの最下流チャンバー30は、インキュベーター14からインキュベートされた材料を送り出すように適応された出口連結部26を有する。
【0109】
さらに、
図7のインキュベーターは、インキュベーター14内の固体デカンテーションを防ぐように構成された、1つまたは複数の撹拌機20(4つが
図7に示される)を含んでなる。インキュベーター内のインキュベートされる材料は、液体(典型的には水)に含有された固体材料を含んでなり、材料は、典型的には液体と異なる密度を有し、それによって固体と液体との混合物が撹拌されずに残り、固体が(密度次第で)チャンバー底部に沈降し、または液体表面に浮遊してもよいことから、デカンテーションが考慮すべき問題になることもある。これを回避するために、インキュベーターは、撹拌を提供する撹拌機20を含んでなる。
【0110】
インキュベーター14は、線A-Aに沿った断面図に示されるような円形の断面を提供するように、円筒形状を有することが好ましい。
【0111】
図7に示されるように、インキュベーター14は、インキュベーター14の内部をチャンバー30に分割するためにインキュベーター14の内側に水平方向に間隔を置いて配置されたいくつかの壁、好ましくは漏斗状壁28を有してもよい(
図7ではこのような3つの漏斗状壁が示される)。漏斗状壁28は、材料を1つのチャンバーから下流チャンバー30へ下向きに注ぎ込むように配置される。90度を超える
図7中の角度αが、それである。典型的には角度αは、90~110、例えば、90~100、好ましくは90~95度である。
【0112】
図7の線A-Aに沿った断面図に示されるように、漏斗状壁28はそれぞれ、各漏斗状壁の最小断面に幾何学的中心がある開口部32を有する。
【0113】
インキュベーター14の最下流チャンバー30は下流チャンバー30に連続的に流体連結されていないので、このような最下流チャンバー30の底壁は前記出口連結部26の入口に向けて傾斜する傾斜底壁36である。傾斜角は、典型的には、漏斗状壁28の角度αに関して選択される。このような片側傾斜壁は、チャンバー内に含まれる材料が、壁によって出口連結部26に向けて誘導されるという利点を有する。
【0114】
出口連結部26は、その底部でインキュベーター14から材料を排出するように配置される。これは、底壁36に近い位置で、インキュベーター14の壁を通って水平方向に延びる管として具体化されてもよい。
【0115】
図7に示される実施形態では、出口連結部26は、インキュベーター14の上部および外側の位置から、最下流に位置するチャンバー30の底部まで、インキュベーター14の内側に延びる管の形態である。
【0116】
図7に示されるように、特に
図7の右上隅を参照して、撹拌機20は、好ましくは複数のインペラブレード34を含んでなるインペラである。さらに、インキュベーター14は、軸18と、軸14を回転させるように構成されたモータ22とをさらに含んでなり;インペラが前記軸14上に配置されているため、軸14の回転はインペラの回転をもたらす。
【0117】
インペラは、(撹拌による)固体デカンテーションを防止する以外にも、ポンプ輸送作用もまた提供してもよいので、インペラは、インキュベーター14を通して材料をポンプ輸送するポンプ輸送作用を提供するように構成されてもよい。
【0118】
ポンプ輸送とデカンテーションの組み合わせは、開口部32内のインペラの垂直位置を考慮することによって設計されてもよい。これは
図7中において、(点線の円で示される)拡大図によって示され、前記開口部32の1つに配置された各インペラは、インペラの下端が開口部32の縁部32の下方に距離hに来る位置に配置される。距離hは、好ましくは、開口部32で測定されたインペラブレード34の高さよりも小さい。例えば、高さhがゼロに等しくなるようにインペラが配置されている場合、(下流側チャンバーに向かう)ポンプ輸送作用は実質的に生じず、インペラは実質的に撹拌作用のみを提供する。
【0119】
図7の例示的な実施形態では、漏斗状壁28は、(インペラブレード34の高さと比較して)実質的な厚さを有していないように示されている;しかし、壁28が実質的な厚さで設計され、それによって上縁部および下縁部を画定する場合、高さhは壁28の下縁部におけるインペラブレード34の高さであると考えられることにも留意されたい。このような全てのインペラが各開口部32中に同一に配置されることが好ましいが、インペラは各開口部32中で異なる垂直高さhに配置されてもよいことに留意されたい。
【0120】
図7は、拡大図中では、クリアランスcもまた示すことに留意されたい。このクリアランスは典型的には、インペラが漏斗状壁28との機械的接触を回避できるように選択される。
【0121】
したがって、撹拌機20/インペラの1つまたは複数が、開口部32を通って1つのチャンバー30から下流チャンバー30に流れる材料の撹拌を提供するように、好ましくは、前記開口部32の1つにそれぞれ配置される。
【0122】
典型的には、本発明の好ましい実施形態によるインキュベーターは、50m3を超える、例えば、100m3を超える、好ましくは150m3を超える、例えば、200m3を超える総容積を有する。
【0123】
インキュベーターは、好ましくは、部分的または全体的にステンレス鋼から製造されてもよいが、被覆鋼、被覆ステンレス鋼、ポリマーおよび繊維強化ポリマーなどのその他の材料もまた、インキュベーターの構築において使用されてもよい。
【0124】
インキュベーターが部分的にまたは完全に被覆金属から製造される場合、被覆は、溶融ガラス、溶融フルオロポリマー(flourpolymers)、あるいはエポキシまたはポリウレタンまたはビニルエステル(vinylesther)またはポリエステルをベースとする熱硬化被覆システムを含んでもよい。
【0125】
インキュベーターがポリマーから製造される場合、ポリマーは好ましくはポリオレフィン(polyolefine)であり、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンから選択される。
【0126】
インキュベーターが部分的または全体的に繊維強化ポリマーから製造される場合、強化繊維は、好ましくはガラスまたはバソールトであり、マトリックス材料は、好ましくはエポキシ、ビニルエステルまたはポリエステルの群から選択される。
【0127】
好ましくは、本発明によるインキュベーターは、2つ、例えば、3つ、好ましくは4つ、例えば、5つ、好ましくは6つでさえある連続的に流体連結されたチャンバー30である、いくつかの連続的に流体連結されたチャンバー30を含んでなってもよい。
【0128】
好ましくは、全ての連続的に流体連結されたチャンバー30は、同一容積を有する。
【0129】
内蔵インキュベーター/空間Vを有する篩ユニットを概略的に示す、
図3を参照する。図示されるように、篩ユニット/インキュベーターは下端に篩要素14を含んでなり、その上に空間Vがある。空間内には、(
図3の開示された実施形態では分画f1およびs3を受け入れる)上端部から、篩要素14に向かう流体の流れのショートカットを回避するように、邪魔板が配置される。これもまた図示されているように、繊維を含まない流れs2が篩分けされて、繊維含有画分f2が提供される。
【0130】
トウモロコシ穀粒塊からデンプンを放出させるのに使用される酵素は、典型的には、酵素放出が最も効率的である温度範囲を有し、したがって空間Vなどのシステム内の選択された位置で温度を制御できることが有利であってもよい。これについては、本発明によるシステムは、好ましくは熱電対を含んでなり、前記空間(V)内部で、好ましくは35~70℃の範囲、例えば40~60℃、例えば46~48℃の範囲、例えば45~49℃の範囲、例えば45~48℃の範囲、例えば47℃の流体のインキュベーション温度を提供してもよい。(
図2のように)空間が別個のインキュベーションユニットとして提供される実施形態では、熱電対は、インキュベーションユニットの内側に、および/またはインキュベーションユニットの囲壁を画定するシェル上に配置されてもよい。
【0131】
熱電対は、好ましくは、温度を測定し、空間への/空間からの熱流束を変化させ、空間に含有される材料の温度を既定の範囲内に制御するように適応された、温調可能な加熱/冷却要素である。
【0132】
いくつかの好ましい実施形態では、温調可能な加熱エレメントは、電気加熱/冷却素子または液体加熱/冷却素子および温度センサーを含んでなる。
【0133】
本明細書に提示されるように、篩ユニットは2つの画分sおよびfへの流体の分離を提供し、篩ユニットは典型的には機械的様式で篩掛けし、全ての篩ユニットなどの1つまたは複数の篩ユニットは、既定サイズ未満の固体を通過させるように構成された(例えば、
図2では傾斜した点線で示されている)開口部を有する、1つまたは複数の篩要素を含んでなる。規定サイズは、いくつかの設計基準に従って定義されてもよい。しかし、典型的には、いかなる繊維も開口部を通過しないことが好ましい。他方、小さな開口部はブロックされる傾向を有することもあり、多くの場合、開口部の実際のサイズは、ブロッキング側面および篩掛け側面を考慮することによって選択され、その結果、少量の繊維が通過することもある。
【0134】
いくつかの好ましい実施形態では、全ての篩ユニットなどの1つまたは複数の篩ユニットは、前記2つの画分s、fを提供するように構成された、ローターブレードおよび/または篩を含んでなる。全ての篩ユニットのような1つ以上の開口部によって構成された篩要素の代案は、
図4に概略的に示されるような液体サイクロン16であってもよい。
【0135】
上で開示されるように、システムは、投入装置10の手段によって、加水分解酵素を前記第1の画分sにおよび/または前記第2の画分fにおよび/または混合された第1および第2の画分におよび/またはプロセス水に導入するように構成されており、
図2を参照されたい。
【0136】
このような投入装置10は典型的には、好ましくは酵素量とトウモロコシ穀粒塊の供給量との間の所定の特定の比率に従って、制御可能な投入量の酵素をシステムに供給するように適応されている。これを達成するために、投入装置10は、
図2のピストンポンプによって示されるような定量ポンプであり得る。
【0137】
代案としては、投入装置10は、流動バルブを通って流れる酵素の量を調節するように構成された、制御可能な流出バルブを有する重力流計量分配装置であってもよい。
【0138】
一態様では、本発明は、
a)穀粒を水に浸漬して浸漬穀粒を製造するステップと;
b)浸漬穀粒を粉砕するステップと;
c)粉砕され浸漬された穀粒から胚芽を分離して、繊維、デンプン、およびグルテンを含んでなるトウモロコシ穀粒塊を製造するステップと;
d)得られたトウモロコシ穀粒塊を繊維洗浄手順に供するステップと
を含んでなる、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプン収率および/またはグルテン収率を改善する方法に関し、ステップd)中、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、ステップd)は、少なくとも35分間、例えば、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間、少なくとも65分間、少なくとも70分間、少なくとも75分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも105分間、少なくとも110分間、少なくとも115分間、少なくとも120分間の総滞留時間を有する。
【0139】
繊維洗浄手順中の総滞留時間は、35分間~5時間、例えば、35分間~4時間、35分間~3時間、35分間~2.5時間、35分間~2時間、35分間~1.5時間、45分間~5時間、45分間~4時間、45分間~3時間、45分間~2.5時間、45分間~2時間、1時間~5時間、1時間~4時間、1時間~3時間、1時間~2.5時間、1時間~2時間、70分間~5時間、70分間~4時間、70分間~3時間、70分間~2.5時間、70分間~2時間、75分間~5時間、75分間~4時間、75分間~3時間、75分間~2.5時間、75分間~2時間、80分間~5時間、80分間~4時間、80分間~3時間、80分間~2.5時間、80分間~2時間、85分間~5時間、85分間~4時間、85分間~3時間、85分間~2.5時間、85分間~2時間、90分間~5時間、90分間~4時間、90分間~3時間、90分間~2.5時間、90分間~2時間であってもよい。
【0140】
トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は、上で定義されるような、第1の画分(s)、第2の画分(f)、または混合された第1および第2の画分であってもよい。
【0141】
繊維洗浄手順において、1つまたは複数の加水分解酵素が至適に機能できるようにする滞留時間を得ることは、困難であり得る。したがって、一実施形態では、繊維洗浄手順に、少なくとも45分間、例えば、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間、少なくとも65分間、少なくとも70分間、少なくとも75分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも105分間、少なくとも110分間、少なくとも115分間、少なくとも120分間の前記総滞留時間を供給するように空間(V)が構成され、その中で前記1つまたは複数の加水分解酵素が、前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分に接触する。
【0142】
繊維洗浄手順中の総滞留時間は、35分間~5時間、例えば、35分間~4時間、35分間~3時間、35分間~2.5時間、35分間~2時間、35分間~1.5時間、45分間~5時間、45分間~4時間、45分間~3時間、45分間~2.5時間、45分間~2時間、1時間~5時間、1時間~4時間、1時間~3時間、1時間~2.5時間、1時間~2時間、70分間~5時間、70分間~4時間、70分間~3時間、70分間~2.5時間、70分間~2時間、75分間~5時間、75分間~4時間、75分間~3時間、75分間~2.5時間、75分間~2時間、80分間~5時間、80分間~4時間、80分間~3時間、80分間~2.5時間、80分間~2時間、85分間~5時間、85分間~4時間、85分間~3時間、85分間~2.5時間、85分間~2時間、90分間~5時間、90分間~4時間、90分間~3時間、90分間~2.5時間、90分間~2時間であってもよい。
【0143】
総滞留時間は、第1の篩ユニット(S1)に受け入れられたトウモロコシ穀粒塊およびその1つまたは複数の画分が、繊維洗浄システムを再度出る前に、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触する時間である。滞留時間中に、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は、最上流篩ユニット(S1)からの第1の画分(s1)の一部として、または最下流篩ユニット(S4)からの第2の画分(f4)の一部として繊維洗浄システムを出る前に、空間(V)内で1つまたは複数の加水分解酵素と共にインキュベートされる。
【0144】
好ましくは、第2の画分の全てが、全繊維洗浄手順を通して1つまたは複数の加水分解酵素と接触するであろうが、酵素濃度は異なる画分(f)中で変化するであろう。
【0145】
一実施形態では、繊維洗浄手順中に構成された前記空間内のインキュベーション時間は、少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間少なくとも25分間、少なくとも30分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間である。
【0146】
繊維洗浄手順に構成された空間(V)内のインキュベーション時間は、24時間未満、例えば、12時間未満、8時間未満、5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満であってもよい。
【0147】
好ましくは、前記空間(V)内のインキュベーション時間は、0.5~3時間、例えば、1~3時間、1~2時間または例えば、85~95分間の範囲である。
【0148】
酵素は、篩ユニット内、2つの篩ユニット間の連結点内、繊維洗浄システム内に構成された空間(V)内、またはプロセス水中に投入され得る。好ましくは、1つまたは複数の加水分解酵素は、制御可能な流量を有する投入装置を用いて、最下流篩ユニットの上流且つ最上流篩ユニットの下流に連続的に投入される。
【0149】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記空間V内のインキュベーション時間および/または繊維洗浄手順における総滞留時間は、繊維洗浄工程における泡形成の減少をもたらす。好ましくは、気泡の形成が、少なくとも90%(v/v)、例えば少なくとも80%(v/v)、例えば少なくとも70%(v/v)、例えば少なくとも60%(v/v)、例えば少なくとも50%(v/v)、例えば少なくとも30%(v/v)、または例えば少なくとも20%(v/v)減少する。
【0150】
一実施形態では、繊維洗浄手順は2~8段階の繊維洗浄ステップを含んでなる。
【0151】
繊維洗浄システムが2つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第1と第2の篩ユニットとの間で、または篩ユニット1と篩ユニット2との間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0152】
繊維洗浄システムが3つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット3との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット2内で、または篩ユニット2と3の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0153】
繊維洗浄システムが4つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2または第3の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット4との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット2内で、または篩ユニット2と3の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0154】
繊維洗浄システムが5つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3または第4の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット5との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット3内で、または篩ユニット3と4の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0155】
繊維洗浄システムが6つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、または第5の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット6との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット4内で、または篩ユニット4と5の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0156】
繊維洗浄システムが7つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、第5または第6の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット7との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット4内で、または篩ユニット4と5の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0157】
繊維洗浄システムが8つの篩ユニットを含んでなる実施形態によれば、投入は、第2、第3、第4、第5、第6または第7の篩ユニット内で、または篩ユニット1と篩ユニット8との間に構成された空間内で、最も好ましくは篩ユニット5内で、または篩ユニット5と6の間に構成された空間内で行われることが好ましい。
【0158】
一実施形態では、繊維洗浄ステップは、トウモロコシ穀粒塊の水性懸濁液などのトウモロコシ穀粒塊および液体/液体懸濁液の流れを、前記トウモロコシ穀粒塊および液体の流れを第1の画分sおよび第2の画分fの2つの画分に分離するように構成された篩ユニットに通過させるステップを含んでなり、前記第2の画分fは第1の画分よりも多量の重量%繊維を含有する。
【0159】
第1の篩掛けユニット(S1)で受け入れられたトウモロコシ穀粒塊からのいくらかの材料は、繊維洗浄システム内の全ての篩掛けユニットを通過し、篩ユニットの数は特定の製粉機に依存し、したがって2つ以上の第2画分の一部であってもよく、および/または2つ以上の第1の画分の一部になる一方で、トウモロコシ穀粒塊からのその他の材料は、全ての篩ユニットを通過しないであろう。これらの画分は、第1の画分の1つまたは複数および/または第2の画分の1つまたは複数の一部になるが、第2の画分の全部にはならない。
【0160】
好ましくは、繊維洗浄手順において全ての篩ユニットを通過するトウモロコシ穀粒塊からの材料は、主に繊維を含んでなる。
【0161】
好ましくは、繊維洗浄手順において全ての篩単位を通過しないトウモロコシ穀粒塊からの材料は、主にデンプンおよび/またはグルテンを含んでなる。
【0162】
一実施形態では、デンプンおよび/またはグルテンの重量%は、上流の第2の画分(f1)と比較して下流の第2の画分(f4)において減少する。
【0163】
デンプンおよび/またはグルテンの重量%は、下流の第一の画分(s4)と比較して上流の第一の画分(s1)においてより高くあってもよい。
【0164】
繊維洗浄手順において適切な滞留時間で正しく投入された酵素の利点を観察することに加えて、本発明者らはまた、繊維からの不溶性物質の放出を観察した。本明細書の
図9に示されるように、反応中の繊維の相対量が約7.5~10%乾燥固体(DS)に相当する場合に、最も効率的な放出不溶性が達成された。
【0165】
したがって、本発明は、特定の実施形態において、トウモロコシ穀粒塊の画分が、前記1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触される上記の方法を提供し、前記画分は、2~15%(w/w)乾燥固体(DS)、例えば、5~15%(w/w)DS、5~12%(w/w)乾燥固体(DS)、5~10%(w/w)乾燥固体(DS)、7.5~12.5%(w/w)DS、8~12%(w/w)DSまたは9~11%乾燥固体(DS)に相当する量の繊維を含有する。
【0166】
乾燥固体の量は、特に、例えば、上で定義されたような空間(V)またはインキュベーターユニットの開口部を通じて、または前記空間(V)への入口を通じて、空間(V)またはインキュベーターユニットから、または前記入口から採取された、前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分のサンプル中で測定されてもよい。
【0167】
入口は、空間(V)または前記インキュベーターユニットと、空間(V)または前記インキュベーターに最も近い上流篩ユニットである上流篩ユニット(S)とを連結する入口であってもよい。したがって、サンプル中で測定される乾燥固体の含有量が、空間(V)またはインキュベーターに入って1つまたは複数の加水分解酵素と接触される、画分中に存在する乾燥固体の量の直接測定であるように、好ましくは、上で開示された空間(V)またはインキュベーターユニットに送達される画分から採取されたサンプルが、好ましいものと理解される。
【0168】
特に、乾燥固体の量は、
i)100gの湿重量を有する上で定義されるような定義されるようなサンプルを提供するステップと;
ii)サンプルを5Lの蒸留水で洗浄し、250μm篩に通過させるステップと;
iii)篩に残留する固体を50℃で一晩乾燥するステップと;
iv)乾燥固体の重量を測定し、式、
【数5】
に従って乾燥固体%(DS)を計算するステップと
によって判定されてもよい。
【0169】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、セルラーゼ(EC3.2.1.4)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55(非還元末端α-L-アラビノフラノシダーゼ);セロビオヒドロラーゼI(EC3.2.1.150)、セロビオヒドロラーゼII(E.C.3.2.1.91)、セロビオシダーゼ(E.C.3.2.1.176)、β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)、およびβ-キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)からなる群から選択される。
【0170】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などのセルラーゼバックグラウンドを有する生物において発現される。
【0171】
セルラーゼバックグラウンドを有する生物は、1つまたは複数のセルロース分解性(cellulytic)酵素を天然に発現する生物として理解されるべきである。
【0172】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、GH10キシラナーゼであるキシラナーゼを含んでなる。
【0173】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、GH11キシラナーゼであるキシラナーゼを含んでなる。
【0174】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼを含んでなる。
【0175】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、
i)配列番号22~26のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
ii)配列番号22~26のいずれか1つと少なくとも60%、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列;および
iii)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH10ポリペプチドを含んでなる。
【0176】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、
i)配列番号27~35のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
ii)配列番号27~35のいずれか1つと少なくとも60%、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列;および
iii)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH11ポリペプチドを含んでなる。
【0177】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、
iv)配列番号1~21のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
v)配列番号1~21に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも60%、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列;および
vi)iv)およびv)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、アラビノフラノシダーゼ活性を有するGH62ポリペプチドを含んでなる。
【0178】
上で定義された部分配列は、30個以下のアミノ酸残基、例えば、25個以下のアミノ酸残基、20個以下のアミノ酸残基、15個以下のアミノ酸残基、10個以下のアミノ酸残基、または5個以下のアミノ酸残基が欠失している部分配列であってもよい。
【0179】
その他の実施形態では、上記の項目ii)および/またはv)中のアミノ酸配列は、各配列番号に記載される配列の長さの75%以上、例えば、80%以上、90%以上、95%以上、または98%以上の長さを有する。
【0180】
一実施形態では、前記加水分解酵素の1つまたは複数は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)中で発現され、GH10キシラナーゼまたはGH11キシラナーゼであるキシラナーゼと、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼとを含んでなる。
【0181】
一実施形態では、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分と接触される1つまたは複数の加水分解酵素の有効量は、0.5、0.4、0.3、0.2kg酵素タンパク質/メートルトン(MT)のトウモロコシ穀粒塊を超えない。
【0182】
一実施形態では、前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分と接触される1つまたは複数の加水分解酵素の有効量は、0.010~0.5kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、例えば、0.05~0.5kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.075~0.5kg/MTまたは0.1~0.5kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.01~0.4kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.05~0.4kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.075~0.4kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.1~0.4kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.01~0.3kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.05~0.3kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.075~0.3kg/MTまたは0.1~0.3kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.010~0.2kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.05~0.2kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.075~0.2kg/MTまたは0.1~0.2kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または例えば、0.075~0.10kg/MTのトウモロコシ穀粒塊、または0.075~0.11kg/MTのトウモロコシ穀粒塊である。
【0183】
一実施形態では、前記繊維洗浄手順は、本発明の態様および実施形態で上で定義されたような繊維洗浄システムを使用して実施される。したがって、繊維洗浄手順は、以下を含んでなる、繊維洗浄システムを使用して実施されてもよい。
-向流洗浄構成で流体連結された複数の篩ユニット(S1...S4);各篩ユニットは、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを以下の2つの画分に分離するように構成されており:第2の画分(f)が重量%繊維での測定で第1の画分(s)よりも多い量を含有する、第1の画分(s)および第2の画分(f)
-空間(V)がシステム内に配置され、前記第1の画分の(s)、前記第2の画分(f)、または混合された第1および第2の画分(s、f)、好ましくは第2の画分(f)のみを受け入れるように流体連結され、前記空間内に受け入れられた片方または双方の画分に対してインキュベーション時間を提供するように構成されており;それによってインキュベートされた片方または双方の画分を下流の篩ユニット(S4)に排出し、
システムは、以下のために構成されている:
-トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニット(S1)に注入し、
-最上流の篩ユニット(S1)からの第1の画分(s1)をデンプンを含有する生成流として排出し、
-プロセス水を注入し、好ましくはプロセス水を最下流の篩ユニット(S4)に注入するように配置され、
-最下流の篩ユニット(S4)から、前記第2の画分(f4)を、前記最初のトウモロコシ穀粒塊よりも少ない量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として排出し、
-前記システムに加水分解酵素を導入する。
【0184】
一態様では、本発明は、本発明の態様および実施形態において上で定義されたような繊維洗浄手順の使用を含んでなる、湿式製粉工程である。したがって、製粉工程は、トウモロコシ穀粒塊を繊維洗浄手順に供することを含んでなってもよく、トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、ステップd)は、少なくとも35分間、例えば、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも60分間、少なくとも65分間、少なくとも70分間、少なくとも75分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも105分間、少なくとも110分間、少なくとも115分間、少なくとも120分間の総滞留時間を有する。
【0185】
特に、繊維洗浄手順における総滞留時間は、35分間~5時間、例えば、35分間~4時間、35分間~3時間、35分間~2.5時間、35分間~2時間、35分間~1.5時間、45分間~5時間、45分間~4時間、45分間~3時間、45分間~2.5時間、45分間~2時間、1時間~5時間、1時間~4時間、1時間~3時間、1時間~2.5時間、1時間~2時間、70分間~5時間、70分間~4時間、70分間~3時間、70分間~2.5時間、70分間~2時間、75分間~5時間、75分間~4時間、75分間~3時間、75分間~2.5時間、75分間~2時間、80分間~5時間、80分間~4時間、80分間~3時間、80分間~2.5時間、80分間~2時間、85分間~5時間、85分間~4時間、85分間~3時間、85分間~2.5時間、85分間~2時間、90分間~5時間、90分間~4時間、90分間~3時間、90分間~2.5時間、90分間~2時間であってもよい。
【0186】
本発明は、コーンスターチを含んでなる組成物をさらに含んでなり、前記組成物は、上で定義された湿式製粉工程によって得られる。
【0187】
最後に、本発明は、コーングルテンを含む組成物を提供し、前記組成物は、上で定義された湿式製粉工程によって得られる。
【0188】
本発明を以下の段落でさらに要約する。
1.向流洗浄構成で流体連結された複数の篩ユニット(S1...S4)を含んでなる繊維洗浄システムであって;各篩ユニットは、トウモロコシ穀粒塊と液体の流れを以下の2つの画分に分離するように構成されており:
-第2の画分(f)が重量%繊維での測定で第1の画分(s)よりも多い量を含有する、第1の画分(s)および第2の画分(f);
-空間(V)がシステム内に配置され、前記第1の画分の(s)の1つ、前記第2の画分(f)の1つ、または混合された第1および第2の画分(s、f)、好ましくは第2の画分(f)のみを受け入れるように流体連結され、前記空間内に受け入れられた片方または双方の画分に対してインキュベーション時間を提供するように構成されており;それによってインキュベートされた片方または双方の画分を下流の篩ユニット(S4)に排出し、
システムは、以下のために構成されている:
-トウモロコシ穀粒塊および液体を最上流の篩ユニット(S1)に注入し、
-最上流の篩ユニットt(S1)からの第1の画分(s1)をデンプンを含有する生成流として排出し、
-プロセス水を注入し、好ましくはプロセス水を最下流の篩ユニット(S4)に注入するように配置され、
-最下流の篩ユニット(S4)から、前記第2の画分(f4)を、前記最初のトウモロコシ穀粒塊よりも少ない量のデンプンおよびグルテンを含有する洗浄されたトウモロコシ穀粒塊として排出し、
-前記システムに加水分解酵素を導入する。
【0189】
2.前記加水分解酵素を前記第1の画分(s)に、および/または前記第2の画分(f)に、および/または混合された第1および第2の画分におよび/またはシステムに供給されるプロセス水流に導入するために構成されている、段落1に記載のシステム。
【0190】
3.システムが、最上流篩ユニット(S1...S4)、最下流篩ユニット、好ましくは最上流および最下流篩ユニット(S1、S4)の間に流体配置された1つまたは複数の中間篩ユニットを含んでなる、段落1または2に記載のシステム。
【0191】
4.複数の篩ユニット(S1...S4)を含んでなる前記流体連結向流洗浄構成が、上流篩ユニット(S1)によって生成される第2の画分(f1)が、下流篩ユニット(S3)によって生成される第1の画分(s3)と混合され、前記混合された画分が、前記上流および前記下流篩ユニット(S1、S3)の中間にある篩ユニット(S2)によって第1の画分(s2)と第2の画分(f2)とに分離されるように配置されている、段落1~3のいずれかに記載の繊維洗浄システム。
【0192】
5.前記第2の画分(f1)と前記第1の画分(s3)との混合が、前記中間篩ユニット(S2)への入口になる前に行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維洗浄システム。
【0193】
6.前記第2の画分(f1)と前記第1の画分(s3)との混合が、前記中間篩ユニット(S2)内で行われる、段落1~4のいずれかに記載の繊維洗浄システム。
【0194】
7.2~8個の篩ユニットを含んでなる、段落1~3のいずれかに記載のシステム。
【0195】
8.システムが、前記繊維洗浄システム内で少なくとも35分間、45分間、1.5時間、例えば、少なくとも3時間の総滞留時間を提供するように構成され、その間に1つまたは複数の加水分解酵素が前記トウモロコシ穀粒塊および/または1つまたは複数のその画分と接触される、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0196】
9.前記空間(V)が、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも15分間、例えば、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも45分間、例えば、少なくとも1時間、好ましくは24時間未満、例えば、12時間未満のインキュベーション時間を提供するように構成された、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0197】
10.前記空間(V)内に受け入れられた流体が、前記インキュベーション時間内に篩掛けされない、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0198】
11.前記空間(V)が、ローターまたはインペラを含んでなることなどによって、前記空間(V)に含有される物質を撹拌するように構成された、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0199】
12.前記空間(V)が、前記最上流篩ユニット(S1)の下流且つ前記最下流篩ユニット(S4)の上流に配置された、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0200】
13.前記空間が、前記第1の画分(s)、前記第2の画分(f)、または第1および第2の画分の組み合わせ(s、f)、好ましくは第2の画分(f)のみを受け入れて、インキュベートされた材料を下流篩ユニット(S3)に送り出すように構成された、別々のインキュベーターユニット(14)として提供される、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0201】
14.インキュベーター(14)が、開口部(32)を通じて材料が上流から下流チャンバー(30)に流れてもよい、隣接するチャンバー(30)間の通路を形成する開口部(32)によって連続的に流体連結された、いくつかのチャンバー(30)を含んでなる、段落13に記載のシステムであって、
-最上流チャンバー(30)は、前記第1の画分(s)、前記第2の画分(f)または第1および第2の画分の組み合わせ(s、f)を受け入れるように連結され、
-最下流チャンバー(30)は、インキュベーター(14)からインキュベートされた材料を送り出すように適応された出口連結部(26)を有し;
インキュベーター(14)は、インキュベーター(14)内の固体デカンテーションを防ぐように構成された、1つまたは複数の撹拌機(20)をさらに含んでなる。
【0202】
15.インキュベーター(14)が、インキュベーター(14)の内部をチャンバー(30)に分割するためにインキュベーター(14)の内側に水平方向に間隔を置いて配置され、材料を1つのチャンバーから下流チャンバー(30)に下方向に注ぎ込むいくつかの漏斗状壁(28)を含んでなる、段落14に記載のシステム。
【0203】
16.漏斗型壁(28)が、各漏斗状壁の最小断面に幾何学的中心がある前記開口部(32)をそれぞれ含んでなる、段落15に記載のシステム。
【0204】
17.インキュベーターが、前記出口連結部(26)の入口に向けて傾斜する傾斜底壁(36)を含んでなる、先行する段落14~16のいずれかに記載のシステム。
【0205】
18.前記出口連結部(26)が、その底部でインキュベーター(14)から材料を排出するように配置されている、先行する段落14~17のいずれかに記載のシステム。
【0206】
19.前記出口連結部(26)が、インキュベーター(14)の上部および外側の位置から最下流に位置するチャンバー(30)の底部まで、インキュベーター(14)の内側に延びる管の形態である、先行する段落14~18のいずれかに記載のシステム。
【0207】
20.全ての撹拌機(20)などの1つまたは複数の撹拌機が、複数のインペラブレード(34)を含んでなるインペラであり、インキュベーター(14)が、軸(18)と軸(14)を回転させるように構成されたモーター(22)とをさらに含んでなり、軸(14)の回転がインペラの回転をもたらすように、インペラが前記軸(14)上に配置された、先行する段落14~19のいずれかに記載のシステム。
【0208】
21.インペラが、ポンピング作用を提供するように構成されて、インキュベーター(14)を通して材料をポンプ輸送する、段落20に記載のシステム。
【0209】
22.前記開口部(32)の1つに配置された各インペラが、インペラ下端が開口部(32)の末端(32)の下に距離(h)で配置される位置に配置され、前記距離が、好ましくは開口部(32)で測定されたインペラブレード(34)の高さよりも小さい、段落20または21に記載のシステム。
【0210】
23.前記撹拌機(20)の1つが、開口部(32)を通じて1つのチャンバー(30)から下流チャンバー(30)に流れる材料の撹拌を提供するように、それぞれ前記開口部(32)中に配置された、先行する段落14~22のいずれかに記載のシステム。
【0211】
24.インキュベーターが、50m3を超える、例えば、100m3を超える、好ましくは150m3を超える、例えば、200m3を超えるの総容積を有する、先行する段落14~23のいずれかに記載のシステム。
【0212】
25.連続的に流体連結されたチャンバー(30)数が、2つ、例えば、3つ、好ましくは4つ、例えば、5つ、および好ましくは6つでさえある、先行する段落14~24のいずれかに記載のシステム。
【0213】
26.連続的に流体連結されたチャンバー(30)の全てが同一容積を有する、先行する段落14~25のいずれかに記載のシステム。
【0214】
27.前記空間が篩ユニットの内部に提供される、段落1~11のいずれかに記載のシステム。
【0215】
28.前記空間(V)内部の流体に、好ましくは35~70℃の範囲、例えば40~60℃、例えば46~48℃の範囲、例えば45~49℃の範囲、例えば45~48℃の範囲、例えば47℃のインキュベーション温度を提供する熱電対をさらに含んでなる、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0216】
29.熱電対が、温度を測定して、空間への/空間からの熱流束を変化させて空間に含有される材料の温度を既定の範囲内に制御するように適応された、サーモスタット可能な加熱/冷却素子である、段落28に記載のシステム。
【0217】
30.前記サーモスタット加熱素子が電気加熱/冷却素子または液体加熱/冷却素子および温度センサーを含んでなる、段落28または29に記載のシステム。
【0218】
31.各篩ユニット(S1、..S4)などの1つまたは複数の篩ユニットが、既定のサイズ未満の固体が通過できるように構成された開口部を有する、1つまたは複数の篩要素(22)を含んでなる、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0219】
32.全ての篩ユニットなどの1つまたは複数の篩ユニットが、前記2つの画分(s、f)を提供するように構成されたローターブレードおよび/または篩を含んでなる、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0220】
33.全ての篩ユニットなどの1つまたは複数の篩ユニットが、液体サイクロン(16)である、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0221】
34.システムが、投入装置(10)の手段によって、加水分解酵素を前記第1の画分(s)におよび/または前記第2の画分(f)におよび/または混合された第1および第2の画分におよび/または前記プロセス水に導入するように構成された、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0222】
35.前記投入装置(10)が、制御可能な投入量の酵素、好ましくは酵素量とトウモロコシ穀粒塊の供給量との間の所定の特定の比率に従ってシステムに供給するように適応されている、先行する段落のいずれかに記載のシステム。
【0223】
36.投入装置(10)が、定量ポンプである、段落34または35に記載のシステム。
【0224】
37.投入装置(10)が、流動バルブを通って流れる酵素の量を制御するように構成された、制御可能な流出バルブを有する重力流計量分配装置である、段落34または35に記載のシステム。
【0225】
38.先行する請求項のいずれか一項に記載の繊維洗浄システムを含んでなる、作物穀粒湿式製粉システム。
【0226】
39.a)穀粒を水に浸漬して浸漬穀粒を製造するステップと;
b)浸漬穀粒を粉砕するステップと;
c)粉砕され浸漬された穀粒から胚芽を分離して、繊維、デンプン、およびグルテンを含んでなるトウモロコシ穀粒塊を製造するステップと;
d)得られたトウモロコシ穀粒塊を繊維洗浄手順に供するステップと
を含んでなる、湿式製粉工程におけるトウモロコシ穀粒からのデンプン収率および/またはグルテン収率を改善する方法であって、ステップd)においてトウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分は、1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、ステップd)は少なくとも45分間の総滞留時間を有する。
【0227】
40.トウモロコシ穀粒塊の前記1つまたは複数の画分が、第1の画分(s)、第2の画分(f)、または請求項1~37のいずれか一項で定義される第1および第2の画分との混合物である、段落39に記載の方法。
【0228】
41.空間(V)が繊維洗浄手順に構成されて、少なくとも45分間の前記総滞留時間を供給し、前記1つまたは複数の加水分解酵素が前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分と接触される、段落39または40に記載の方法。
【0229】
42.繊維洗浄手順に構成された前記空間(V)内のインキュベーション時間が、少なくとも5分間で24時間未満である、段落39~41のいずれかに記載の方法。
【0230】
43.前記繊維洗浄手順が、2~8回の繊維洗浄ステップを含んでなる、先行する段落39~42のいずれかに記載の方法。
【0231】
44.繊維洗浄ステップが、トウモロコシ穀粒塊および液体の流れを第1の画分(s)および第2の画分(f)の2つの画分に分離するように構成された篩ユニットを通して、トウモロコシ穀粒塊および液体流れを通過させることを含んでなり、前記第2の画分(f)が第1の画分よりも多量の重量%繊維を含有する、段落39~43のいずれかに記載の方法。
【0232】
45.デンプンおよび/またはグルテンの重量%が、上流の第2の画分(f1)と比較して下流の第2の画分(f4)において減少する、段落39~44のいずれかに記載の方法。
【0233】
46.トウモロコシ穀粒塊の画分が、前記1つまたは複数の加水分解酵素の有効量と接触され、前記画分が、2~15%(w/w)乾燥固体(DS)、例えば、5~15%(w/w)DS、5~12%(w/w)乾燥固体(DS)、5~10%(w/w)乾燥固体(DS)、7.5~12.5%(w/w)DS、8~12%(w/w)DSまたは9~11%乾燥固体(DS)に相当する量の繊維を含有する、段落39~45のいずれかに記載の方法。
【0234】
47.乾燥固体の量が、空間(V)内またはインキュベーターユニット中の開口部などを通じて、または前記入口内で、請求項1~37のいずれか一項に記載の空間(V)またはインキュベーターユニットから、または前記空間(V)またはインキュベーターユニットへの入口から採取された、前記トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分のサンプル中で測定される、段落46に記載の方法。
【0235】
48.前記入口が、空間(V)または前記インキュベーターユニットと、空間(V)または前記インキュベーターに最も近い上流篩ユニットである上流篩ユニット(S)とを連結する、段落47に記載の方法。
【0236】
49.乾燥固体の量が、
i)100gの湿重量を有する請求項46または47で定義されたサンプルを提供するステップと;
ii)サンプルを5Lの蒸留水で洗浄し、250μm篩に通過させるステップと;
iii)篩に残留する固体を50℃で一晩乾燥するステップと;
iv)乾燥固体の重量を測定し、式、
【数6】
に従って乾燥固体%(DS)を計算するステップと
によって測定される、段落46~48のいずれかに記載の方法。
【0237】
50.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、セルラーゼ(EC3.2.1.4)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55(非還元末端α-L-アラビノフラノシダーゼ);EC3.2.1.185(非還元末端β-L-アラビノフラノシダーゼ)セロビオヒドロラーゼI(EC3.2.1.150)、セロビオヒドロラーゼII(E.C.3.2.1.91)、セロビオシダーゼ(E.C.3.2.1.176)、β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)、β-キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)からなる群から選択される段落39-49のいずれかに記載の方法。
【0238】
51.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などのセルラーゼバックグラウンドを有する生物において発現される、段落39~50のいずれかに記載の方法。
【0239】
52.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、GH10キシラナーゼであるキシラナーゼを含んでなる、段落39~52のいずれかに記載の方法。
【0240】
53.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼを含んでなる、段落39~52のいずれかに記載の方法。
【0241】
54.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
i)配列番号22~26のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
ii)配列番号22~26のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;および
iii)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH10ポリペプチドを含んでなる、段落39~53のいずれかに記載の方法。
【0242】
55.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
i)配列番号27~35のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
ii)配列番号27~35のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;および
iii)i)およびii)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、キシラナーゼ活性を有するGH11ポリペプチドを含んでなる、段落39~54のいずれかに記載の方法。
【0243】
56.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、
i)配列番号1~21のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;
ii)配列番号1~21に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;および
iii)iv)およびv)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分配列
からなる群から選択される、アラビノフラノシダーゼ活性を有するGH62ポリペプチドを含んでなる、段落39~55のいずれか一項に記載の方法。
【0244】
57.前記加水分解酵素の1つまたは複数が、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)において発現され、GH10キシラナーゼであるキシラナーゼと、GH62アラビノフラノシダーゼであるアラビノフラノシダーゼとを含んでなる、段落39~56のいずれかに記載の方法。
【0245】
58.トウモロコシ穀粒塊の1つまたは複数の画分と接触される1つまたは複数の加水分解酵素の有効量が、0.5kg酵素タンパク質/メートルトンのトウモロコシ穀粒塊を超えない、段落39~57のいずれかに記載の方法。
【0246】
59.前記トウモロコシ穀粒質量の1つまたは複数の画分と接触される1つまたは複数の加水分解酵素の有効量が、0.010~0.5kg/メートルトンのトウモロコシ穀粒塊である、段落39~58のいずれかに記載の方法。
【0247】
60.前記繊維洗浄手順が、段落1~38のいずれかに記載のシステムを使用して実施される、先行する段落39~59のいずれかに記載の方法。
【0248】
61.段落39~60のいずれか一項に記載の繊維洗浄手順の使用を含んでなる、湿式製粉工程。
【0249】
62.段落61に記載の湿式粉砕工程によって得られる、コーンスターチを含んでなる組成物。
【0250】
63.段落61に記載の湿式製粉工程によって得られる、コーングルテンを含んでなる組成物。
【0251】
本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、それは決して提示された例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。請求項の文脈で、「含んでなる(comprising)」または「含んでなる(comprises)」という用語は、その他の可能な要素またはステップを排除しない。また、「a」または「an」などのような参照の言及は、複数を排除すると解釈されるべきではない。図面に示される要素に関する請求項における参照符号の使用もまた、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載されている個々の特徴は、場合により有利に組み合わされてもよく、異なる請求項におけるこれらの特徴への言及は、特徴の組み合わせが可能でなく有利でないことを排除するものではない。
【実施例】
【0252】
実施例1:湿式製粉における最適酵素投入点
湿式製粉工程における滞留時間は短いため、酵素を投入する最適な位置を選択することは、酵素と基質との接触を最大にするために重要である。これは、基質が最も利用可能である工程区画内において、所与の投入量で最高の酵素濃度を達成することを意味する。しかし、この判定は、工程中における流れの多数の分割および再循環のために、容易には行われない。最適な投入点についての回答を提供するために、工程シミュレーションを実施した。
【0253】
方法:
1.モデルシミュレーションをSuperPro Designer V.9(評価バージョン)中で実施した。USDAモデルは、全ての単位操作を含めて、100,000ブッシェル/日湿式製粉工場に相当する。
図5に示すように、工程中の4つの異なる時点で酵素を導入したことを除いて、モデルには変更を加えなかった。ケースと称されるこれらの投入点は、(1)2回目の粉砕後、(2)3回目の粉砕後、(3)4回目の繊維洗浄ステップ後、および(4)6回目の繊維洗浄ステップ(繊維圧搾前の最後の洗浄段階)後、である。酵素供給量は、0.20kg/MTのコーンの投入量で固定した。
【0254】
2.シミュレーションの決定パラメータは、酵素の分配特性である。この場合、酵素は可溶性固体のように挙動する、という単純な仮定を採用した。この仮定は、実験室での繊維インキュベーション中における、濾液中の100%近くの酵素回収率を示す
図6のデータによって支持される。
【0255】
3.モデル中の可溶性成分の分配は、主に、遠心機および篩などの分離ユニットから出てくる流れの一部の可溶性物質および水分に関する経験的データに基づき(参考文献:Ramirez et al.2008;Industrial Crops and Products 27;91-97)、残りの部分はモデルを用いて近似した。
【0256】
4.USDAモデルから上記のパラメータをそのまま採用し、Superproを用いて質量平衡を解決した(このケースではエネルギー収支を無視した)。シミュレートされたケースの1つについて表1に示したように、質量平衡結果を収束後の精度についてチェックした。ひとたび質量平衡を解決したら、異なる中間流の質量流量(定常状態における)を出量として得た。これらの質量流量は、繊維洗浄区域の異なる段階における酵素の有効投入量(または繊維固体に対する酵素の比率)を計算するのに、必要なデータである。
【0257】
【0258】
5.繊維は標的基質と見なされるので、有効投入量は、工程の関連区域内における繊維に対する酵素の比率として採用した。簡潔さのために、この区域は2回目の粉砕で始まり、繊維圧搾直前の最後の繊維洗浄ステップで終わると解釈される。これは、関連する基質-酵素接触が起こると予測される工程のあらゆるステップを含むであろう。加重平均投入量は、含まれる全ての工程ステップにおける個々の有効投入量に、各篩の後に配置された受け入れタンクの滞留時間を考慮に入れることによって、区域全体について判定する。このケースではセグメント全体は、1.28時間の全滞留時間を有した。しかし、滞留時間は受け入れタンクの使用に起因し、工場によってはタンクがあってもなくてもよいことに留意すべきである。さらに、タンクのサイズは工場毎に変動してもよい。しかし、タンクのサイズに関わりなく、本明細書で到達した結論は変わらないはずである。
【0259】
結果:以下の表2は、シミュレートした各投入ケースについて、湿式製粉工程の様々な段階における加重平均有効酵素投入量(滞留時間を考慮した)を示す。これから、繊維洗浄における投入は、2回目の粉砕または3回目の粉砕における投入と比較して、より高い酵素レベルをもたらすように見える。最良のケースは、最後の洗浄ステップではなく、繊維洗浄ステップの最後に向けて投入することを示唆する。
【0260】
【0261】
異なる投入ケースにおける残存酵素濃度(全製品重量に基づくppm)を以下の表3に示す。一般に、レベルは、様々なケースで非常に良く似ている。大部分の酵素(>85%)はグルテンフィード(DGF)に戻し入れられる浸出液に行き着くので、最高レベルは乾燥DGF中に見られる。徹底的なデンプン洗浄が行われるために、デンプンスラリーで最も低く、0.1ppm未満である。デンプン流は、酵素が活性を保持する最も可能性の高い場所であるため、これは重要であり;その他は全て、潜在的に酵素を不活性化させる高温乾燥を経るであろう。
【0262】
【0263】
実施例2.繊維スラリー粘度に対する酵素の効果
本実施例では、本発明者らは、RVA(Rapid Visco Analyzer)を用いて、繊維スラリーの粘度プロファイルを経時的に測定した。繊維スラリーは、12%の乾燥固体を含有する第5の繊維洗浄段階の溢流から採取した。1つの処理では、加水分解酵素を1mgのBCAタンパク質/g乾燥固体の投入量で添加した。別の処理では、陰性対象の役割を果たすように、等容積の水のみを添加した。RVA実行の合計時間は90分であり、温度は48℃に設定した。絶対粘度数はサンプルの粘稠度に対して非常に敏感であり、スラリーの不均質性のために、出発値が同様であることを確実にすることは困難である。2つの処理間で開始粘度をできる限り近く保つため、RVAインペラのrpmを異なる値に設定した。しかし、結果の絶対値よりもさらに重要なのは、粘度の経時的変化であることに留意すべきである。
【0264】
粘度の変化は、酵素処理によるスラリーの水分濃度の変化を追跡するのに便利な方法である。ニュートン流体懸濁液の理想的ケースでは、有効粘度は固体の体積分率の正の関数である(Bailey,J.E.and Ollis,D.F.,Biochemical Engineering Fundamentals 2nd ed,1986,McGraw-Hill,Inc.page 502)。スラリーは非ニュートン流体として挙動する可能性が最も高いものの、固体の体積分率が増加するにつれて(または等価的には、水の体積分率が減少するにつれて)粘度が増加するという普遍性は変わらず、逆もまた然りである。そのため、酵素反応中に脱水が起こると、これによって固体の体積分率が低下し(または等価的には、水の体積分率が上がり)、結果的に粘度も低下する。
【0265】
RVA測定を連続的に行い、結果を要約するために、実行平均を各10分間毎に計算した。計算された各平均および標準偏差は、300を超えるデータ点からなる。以下の表4および5は、それぞれ酵素処理サンプルおよび対照サンプルの結果を示す。
【0266】
【0267】
【0268】
酵素処理繊維スラリーと未処理繊維スラリーとの間で、粘度プロファイルの非常に明確な違いが現れた。酵素を添加した場合、90分の反応時間中に粘度の有意な低下(50%を超える)が観察された。対照的に、繊維スラリーへの酵素添加がない場合、同じ期間中に粘度変化は観察されなかった。さらに、酵素処理スラリーの粘度変化の大部分は最初の40分以内に起こり、それ以降、より緩やかな減少が起こる。(上記の離散平均値ではそれほど明確ではないが、連続粘度データでは、変曲点は40分の時点の近くで生じる)。別の顕著な特徴は、この期間中に観察された高い標準偏差によって記述されるように、特に最初の10~20分の間における、酵素処理スラリー中で得られたより不安定な粘度値であり、これは40分後に徐々に落ち着いた。これは陰性対照ケースでは、観察されなかった。この驚くべき観察は、繊維との結合から新たに放出された水がまだ水相と平衡していない初期段階で起こる、相移行のためであると思われる。したがって、粘度変動を増大させる一過性の非均質性が生じる。これらの観察は、酵素反応の間に起こる急速な脱水相の概念を指摘する。
【0269】
実施例3.デンプンおよびグルテン収率に対するインキュベーション時間および酵素投入量の影響
本実施例では、本発明者らは、インキュベーション時間および酵素投入量を変化させながら、加水分解酵素(トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)中で発現された配列番号7および22の成熟ポリペプチド)の存在下および非存在下でのインキュベーション後に、繊維から分離されたデンプンおよびグルテンを測定した。繊維サンプルは、湿式製粉工場から繊維圧縮後に41%の総乾物含量で得た。サンプルを緩衝液(pH4、0.02M酢酸ナトリウム)中に5%乾燥固体を含有する100gのスラリーに再懸濁した。このスラリーに、乾燥固形基質1g当たり0、2、6、および10mgの酵素濃縮物の最終比で酵素を添加した(1グラムの酵素濃縮物は約280mgのタンパク質を含有する)。インキュベーション時間を10、50、および90分間に変更して、絶え間なく振盪しながら、空気加熱インキュベーター内でインキュベーションを50℃で行った。インキュベーション後、加工前にサンプルを氷水(5℃)中で迅速に冷却した。通過した濾液を収集しながら、スラリーを100ミクロンの篩に移した。篩の上に保持された繊維をスパチュラを用いて圧搾し、できるだけ多くの濾液を回収した。次に、圧搾した繊維を200mlの水を入れたビーカーに移して撹拌した。このスラリーを再度100ミクロンの篩に通過させ、収集された濾液を最初のものと合わせた。上記の圧搾、洗浄、および濾過ステップをもう一度繰り返し、最終濾液を回収して最初の2つと合わせた。次に、合わせた濾液を今度は、ガラスマイクロ濾紙(Whatman)を通して真空濾過し、それは繊維から放出されて100ミクロンの篩を通過した不溶性固体を保持した。濾紙上に200mlの水を通過させてあらゆる微量の可溶性物質を除去した後、ろ紙上に保持された全不溶性固体を乾燥して秤量した。乾燥重量は、出発基質の繊維乾物の百分率として、放出されたデンプン+グルテンとして報告された。結果は、表6に示される。
【0270】
【0271】
酵素添加の効果は、全てのインキュベーション時間におけるデンプンおよびグルテンの収率の増加から明らかである。しかしながら、投入量に対する応答は、10分間のインキュベーション時間の間は平坦であるのに対して、50分間、特に90分間のインキュベーション中に、投入量に対する急な応答がある。これらのより長い滞留時間では、より低い投入量は、はるかにより高い投入量のみがより短い滞留時間で達成できる収率を達成できる。例えば、90分間で6mgの投入量は、50分間で10mgの投入量よりも高い収率を達成できた。これはまた、酵素が機能するのに十分な最小限のインキュベーション時間を有することの重要性を強調し、例えば、投入量に関わりなく、10分間のインキュベーションでは、より長いインキュベーションを有する最も低い投入量(すなわち、2mg)の収率すら達成できない。
【0272】
実施例4:湿式製粉におけるデンプンおよびグルテン収率に対する増加した滞留時間の影響
繊維洗浄システム:試験設備の繊維洗浄レイアウトは、4つの篩ユニットからなる。インキュベーションタンク(250m3)は、第2および第3の篩ユニットの間に設置され、トウモロコシ穀粒塊またはその画分の追加的な滞留時間を可能にする。酵素(トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)中で発現された配列番号7および22の成熟ポリペプチド)を保持タンク前の第2の篩に投入した。追加的なインキュベーションタンクなしでは、繊維洗浄システムにおける滞留時間(RT)は10分間前後であると推定された(既存の受け入れタンクの総容量に基づく)。滞留時間の影響は、追加的なタンクの使用容積を0%から40%(100m3、RTで40分間を追加)に、そして最後に80%(200m3、RTで80分間を追加)に増加させることによって評価した。
【0273】
方法:繊維を上記のように繊維洗浄システムで洗浄した。酵素とインキュベーションタンクなしの試験を3ヶ月間実施した。インキュベーションタンクなしである(RTで10分間)が、酵素を使用した試験を0.5kg/MTのコーンの酵素投入量で4週間にわたって実施した。インキュベーションタンク(100m3)あり、50分間のRT(40分間のインキュベーション時間)で、酵素を用いた実験を0.5kg/MTのコーンの酵素投入量で1週間実施した。インキュベーションタンク(200m3)あり、90分間のRT(80分間のインキュベーション時間)で、酵素を用いた実験を0.5kg/MTのコーンの酵素投入量で2週間実施した。
【0274】
繊維を洗浄した後、繊維を圧搾して乾燥前の含水量を減少させた。
【0275】
湿潤繊維の1つのサンプルを秤量してから、湿潤繊維中の総デンプン(%)および総タンパク質(%)を測定した。総デンプン(%)は、穀物製品中の総デンプンを測定するために確立された酵素的方法(方法76-13、AACC International 2000)によって測定した。総タンパク質(%)は、粗タンパク質を測定するマイクロケルダール法(AACCI方法46-13.01)によって測定した。
【0276】
次に、湿潤繊維の1つのサンプルを乾燥させて乾燥繊維重量を測定し、乾燥繊維中の総デンプンおよび総タンパク質(%)の計算ができるようにした。
【0277】
総デンプンは、抽出可能デンプン(洗い流し得るデンプン)と、結合デンプン(洗浄しても繊維に付着するデンプン)とに分類され得る。清浄水での追加の洗浄ステップ後にサンプル中に残留するデンプン(結合デンプン)の量を対照として用い、デンプンおよびタンパク質が繊維から放出されることを確実にした。サンプルを10Lの水で洗浄し、50ミクロンの篩を通して濾過し、抽出可能なデンプンを洗い流してから、結合デンプンを測定した。この工程は、
図8の流れ図に示される。
【0278】
乾燥繊維の総デンプン(重量%)およびタンパク質(重量%)は、繊維の洗浄、圧搾、および乾燥後に繊維中になおも存在する、デンプンおよびタンパク質の量を反映する。酵素はプロセス流へのデンプンおよびタンパク質の放出を触媒するという仮説があるので、理論上はこのデンプンおよびタンパク質の量は、滞留時間が増加するにつれて減少するはずである。滞留時間の変化による、乾燥繊維の総デンプン(重量%)および総タンパク質(重量%)に対する効果を以下の表7に示す。示されるように、元の10分間の滞留時間でさえも、酵素の添加によるデンプンおよびタンパク質の除去に対して有意な効果がある。滞留時間の増加(RTで+80分間)に伴い、総デンプンおよびタンパク質の双方の減少が見られ、これは、繊維洗浄における滞留時間の増加が、トウモロコシ湿式製粉における総デンプンおよびタンパク質の収率を実際に増加させ得ることを反映する。
【0279】
圧搾された湿潤繊維の総水分(重量%)は、湿潤繊維重量から乾燥繊維重量を差し引いたものとして計算された。含水量は、酵素の添加によって湿潤繊維中で減少する(脱水)が、滞留時間によって影響されるようには見えない。
【0280】
【0281】
実施例5:酵素反応において出発繊維から放出される不溶性物質に対する乾燥固体の量の影響。
本実施例では、本発明者らは、酵素(Novozymes A/Sから市販されるFrontia(登録商標)Fiberwash)と共に、様々な乾燥固体%でインキュベートした後に、繊維から分離された不溶性固体を測定した。
【0282】
繊維サンプルは、湿式製粉工場からvetter圧搾後に42.80%の総乾物含量で得た。サンプルを緩衝液(pH4、0.02M酢酸ナトリウム)中に様々な乾燥固体を含有するスラリーに再懸濁した。このスラリーに、酵素を0.9kg/MTの湿潤トウモロコシで添加した。
【0283】
以下の表に示すように%DSを様々な量の水で調整して、%DSの範囲を達成した。
【0284】
【0285】
インキュベーションは、120分間にわたり絶え間なく混合しながら、Werner Mathis AG Labomat反応器内で、48℃で実施した。インキュベーション後、加工前にサンプルを氷水(5℃)中で迅速に冷却した。
【0286】
次にスラリーをオメガ1000ジューサーに注ぎ入れ、可変単巻変圧器を30%出力で1分間に設定した。濾液を75μm篩および捕捉パンで捕捉した。捕捉パン内の不溶性固体を500mlのNalgeneボトルに移した。繊維をオメガ1000ジューサーバスケットから掻き取り、ビーカー内でスパチュラを用いて200mlの脱イオン水で洗浄した。次に繊維スラリーをジューサーに注ぎ戻し、30%の出力で1分間稼働させた。再び濾液を75μmの篩および捕捉パン上に注ぎ、不溶性固体を同じNalgeneボトルに移した。ジュースバスケットをジューサーから取り出し、ジューサー本体を水スプレーボトルですすいで、75μmの篩および捕捉パン上の全ての不溶物をすすぎ、500mlのNalgeneボトルに移した。
【0287】
次にボトルに栓をして、真空濾過を用いて不溶性固体を分離した。真空濾過装置は、濾紙(Whatman)の入った漏斗を用いて、不溶性固体スラリーを真空下で濾紙上に注いだ。濾過前に濾紙の重量を量り、濾紙を50℃のオーブンに入れて乾燥させ、オーブン内で24時間後に重量を量った。
【0288】
【0289】
【0290】
使用された参照記号の一覧:
S 篩
f 篩によって生成される画分
V 空隙/空間
c クリアランス
h 高さ
10 投入装置
12 篩要素
14 インキュベーター
16 液体サイクロン
18 軸
20 撹拌手段;撹拌機
22 モータ
26 出口連結部
28 漏斗状壁
30 チャンバー
32 開口部
34 インペラブレード
36 傾斜底壁
32 開口部縁部
【配列表】