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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】把手付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20220719BHJP
   B65D 23/10 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D23/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019517676
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2018018001
(87)【国際公開番号】W WO2018207844
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2017093909
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 慎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519454(JP,A)
【文献】特開2015-134641(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1795126(CN,A)
【文献】国際公開第99/022994(WO,A1)
【文献】特開平08-323845(JP,A)
【文献】国際公開第2007/098837(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137942(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0173328(US,A1)
【文献】特開2004-276953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の流体が収容可能な容器であって、
液体の出入口部が形成された上面部と、
前記上面部に接続された側面部と、
前記上面部と反対側に配置されて前記側面部に接続された底面部と、
前記側面部に形成された中空で長尺状の把持部と、
を備え、
前記把持部は、
前記側面部と接続された第一接続端部と、
前記第一接続端部より前記底面部に対して近い位置で前記側面部と接続された第二接続端部と、
前記第一接続端部と前記第二接続端部との間に配置された把持胴部と、
前記容器の内部と連通する中空部と、
を有し、
前記出入口部を通る前記容器の中心軸に最も近い前記第二接続端部の第一の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積は、前記把持胴部における前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積よりも大きく、
前記把持胴部における前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の前記面積は、前記第二接続端部から前記第一接続端部に向けて順次縮小している、
把手付き容器。
【請求項2】
前記容器の前記液体の出入口部を通る中心軸と前記把持胴部とが重なるように前記容器を側面部側から見た時に、前記把持胴部は、前記第二接続端部から前記第一接続端部に向けて縮径している部位を含む、
請求項1に記載の把手付き容器。
【請求項3】
前記第一の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積は、前記中心軸に最も近い前記第一接続端部の第二の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積よりも大きい、
請求項1または請求項2に記載の把手付き容器。
【請求項4】
前記側面部は、前記第一接続端部および前記第二接続端部が接続された凹部を有し、
前記凹部を構成する各面のうち前記第一接続端部と接続された面は、前記容器の前記液体の出入口部を通る中心軸に近づくにつれて、前記底面部に近づくように傾斜している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の把手付き容器。
【請求項5】
前記凹部を構成する各面の少なくとも一部には、前記把持部の長手方向に沿った凸状リブ部が形成されている、
請求項4に記載の把手付き容器。
【請求項6】
前記把持胴部は湾曲している、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の把手付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体等の流体が充填される把手付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターサーバ等に使用される容器のうち、繰り返し洗浄して使用することが可能なリターナブル容器と呼ばれるものがある。例えば、特許文献1には、中空の把手が設けられた容器(高強度ボトル)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特表2014-519454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にリターナブル容器は、洗浄の際に容器を反転させた状態で出入口部から底面部の中心に向けて洗浄水等を打ち付けて、ボトルの内壁面の各部位の洗浄を行う。
しかしながら、特許文献1に記載のように中空の把手が設けられた容器は、洗浄の際に中空の把手の一部に洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じて、洗浄しにくい場合があった。
【0005】
本発明の目的は、把手の内部を洗浄しやすい把手付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の把手付き容器は、
所定量の流体が収容可能な容器であって、
液体の出入口部が形成された上面部と、
前記上面部に接続された側面部と、
前記上面部と反対側に配置されて前記側面部に接続された底面部と、
前記側面部に形成された中空で長尺状の把持部と、
を備え、
前記把持部は、
前記側面部と接続された第一接続端部と、
前記第一接続端部より前記底面部に対して近い位置で前記側面部と接続された第二接続端部と、
前記第一接続端部と前記第二接続端部との間に配置された把持胴部と、
前記容器の内部と連通する中空部と、
を有し、
前記出入口部を通る前記容器の中心軸に最も近い前記第二接続端部の第一の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積は、前記把持胴部における前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積よりも大きい。
【0007】
上記把手付き容器は、第一の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積が把持胴部における前記中心軸に直交する平面で切断された中空部の断面の面積よりも大きい。このため、洗浄の際に容器を反転させた状態で出入口部から底面部に向けて洗浄水等を打ち付けた場合において、底面部の内壁面を伝って落ちていく洗浄水やすすぎ水が把持部の内部への入口となる第二接続端部に向けて案内されて把持胴部の壁面で集積されやすくなる。このため、中空の把持部の内部において洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じにくくなり、把手付き容器を洗浄しやすくなる。
【0008】
本発明の把手付き容器において、
前記容器の前記液体の出入口部を通る中心軸と前記把持胴部とが重なるように前記容器を側面部側から見た時に、前記把持胴部は、前記第二接続端部から前記第一接続端部に向けて縮径している部位を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、洗浄の際、第二接続端部に向けて案内されて集積された洗浄水やすすぎ水が把持胴部の内壁面上において周囲の洗浄水やすすぎ水と合流しながら伝わり落ちやすくなる。このため、把持胴部の内壁面上を広く伝わりやすくなり、さらに把手付き容器を洗浄しやすくなる。また、把持部の持ちやすさも向上する。
【0010】
本発明の把手付き容器において、
前記第一の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積は、前記出入口部を通る前記容器の中心軸に最も近い前記第一接続端部の第二の端点を通る前記中心軸に直交する平面で切断された前記中空部の断面の面積よりも大きいことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、洗浄水やすすぎ水の出口である第一接続端部まで、把持胴部の内壁面上において圧力損失及び摩擦損失により周囲の洗浄水やすすぎ水と合流しながら伝わり落ちやすくなり、さらに把手付き容器を洗浄しやすくなる。
【0012】
本発明の把手付き容器において、
前記側面部は、前記第一接続端部および前記第二接続端部が接続された凹部を有し、
前記凹部を構成する各面のうち前記第一接続端部と接続された面は、前記容器の前記中心軸に近づくにつれて、前記底面部に近づくように傾斜していることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、洗浄の際、凹部の内壁面を伝って落ちていく洗浄水やすすぎ水が、凹部の上面部側の面に案内されて、洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じにくくなり、把手付き容器を洗浄しやすくなる。
【0014】
本発明の把手付き容器において、
前記凹部を構成する各面の少なくとも一部には、前記把持部の長手方向に沿った凸状リブ部が形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、落下の際に容器にかかる衝撃への強度を向上させることができる。
【0016】
本発明の把手付き容器において、
前記把持胴部は湾曲していることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、洗浄の際、第二接続端部に向けて案内されて集積された洗浄水やすすぎ水が、さらに把持胴部の内壁面上において周囲の洗浄水やすすぎ水と合流して伝わり落ちやすくなる。このため、さらに把手付き容器を洗浄しやすくなる。また、把持部の持ちやすさもさらに向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、把手の内部を洗浄しやすい把手付き容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一の実施形態に係る把手付き容器を表す側面図である。
図2】第一の実施形態に係る把手付き容器を表す側面図である。
図3】第一の実施形態に係る把手付き容器の把持部の拡大図(b)と、第一の端点を通る中心軸に直交する把持部のD1-D1断面(c)及び第二の端点を通る中心軸に直交する把持部のE1-E1断面(a)とを示す図である。
図4】第一の実施形態に係る把手付き容器のC1-C1断面を示す図である。
図5】第二の実施形態に係る把手付き容器を表す側面図である。
図6】第二の実施形態に係る把手付き容器を表す側面図である。
図7】第二の実施形態に係る把手付き容器の把持部の拡大図(b)と、第一の端点を通る中心軸に直交する把持部のD2-D2断面(c)及び第二の端点を通る中心軸に直交する把持部のE2-E2断面(a)とを示す図である。
図8】第二の実施形態に係る把手付き容器のC2-C2断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一の実施形態)
以下、本発明に係る把手付き容器の実施の形態の例(第一の実施形態)を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1図4は本発明の第一の実施形態に係る把手付き容器11を示す図である。図1及び図2に示すように、本実施形態において把手付き容器11は、上面部21と、上面部21に接続された側面部22と、上面部21と反対側に配置されて側面部22に接続された底面部23と、側面部22に形成された中空で長尺状の把持部31と、を備えている。その内部には、所定量の液体(飲料水等)等の流体が収容可能とされている。
【0022】
上面部21は、把手付き容器11の天面を形成するもので、その中心には、上方へ突出する筒状の出入口部24が形成されている。把手付き容器11の内部には、出入口部24から流体が流入される。また、把手付き容器11内の液体は、出入口部24から流出される。出入口部24には、キャップが取り付けられる。このキャップは出入口部24に対して着脱可能とされており、出入口部24にキャップを装着することで、把手付き容器11が密閉される。
【0023】
側面部22は、把手付き容器11の周面を形成するもので、上面部21に接続されて下方側へ延在されている。底面部23は、把手付き容器11の底面を形成するもので、上面部21と反対側に配置されて側面部22に接続されている。底面部23は、容器11の中心軸A1に向かうにつれて容器11の上面部21に徐々に向かう凹形状に形成された上底部26を含んでいる。上底部26はその中央部付近を除き、中心軸A1を通る平面で切断した場合の断面形状において、略一定の曲率半径で湾曲するように形成されている。底面部23は、容器11を底面部23を下にして水平面に設置した際に当該水平面に沿うように形成された周底部27を含んでいる。上底部26は周底部27の内側に設けられている。上底部26の中央部にはさらに上面部21に向かって張り出した張出部28が形成されている。容器11を底面部23を下にして水平面に設置した際の、当該水平面から上底部26の中央までの高さh1(張出部28が形成されずに、上底部26が中央まで略一定の曲率半径で延在していると仮定した場合の、水平面から上底部26の中央までの高さ)は、10mm以上50mm以下である。
【0024】
容器11は、図2に示すように把持部31側から容器11を見た時に、出入口部24を通る容器11の中心軸A1に対して線対称になるように形成されている。本実施形態の説明において、出入口部24を通る容器11の中心軸A1に対して容器11が線対称になるように把持部31側から容器11を見た時(図2)を、単に「容器11を正面から見た時」とする。また、本実施形態の説明において、容器11を正面から見た時から容器11を中心軸A1に対して反時計回りに90°回転させて容器11を見た時(図1)を、単に「容器11を左側から見た時」とする。
【0025】
側面部22には、容器11の中心軸A1に向かって凹んでいる凹部25が形成されている。凹部25は、上面部21側の第一の面25a、底面部23側の第二の面25b並びに第一の面25a及び第二の面25bと連なる第三の面25cにより形成される。容器11を左側から見た時、凹部25と把持部31との間は貫通孔が形成されている。第一の面25aは容器11の中心軸A1に近づくにつれて、底面部23に近づくように傾いている。第二の面25bは容器11の中心軸A1に近づくにつれて、上面部21に近づくように傾いている。
【0026】
第三の面25cの中央部分には、把持部31の長手方向に沿った凸状リブ部(フィン)41が形成されている。凹部25および把持部31より形成される貫通孔の外縁とそれら近辺の領域を、総称してピンチオフ部とする。当該ピンチオフ部は、出入口部24を備えた有底状のプリフォームをブロー型内で空圧膨張させた後、凹部25に水平方向に対向して設けられた二つの入子型を互いに近づくように前進させ、その周囲の樹脂を圧着(溶着)させることで形成される。貫通孔に位置する樹脂はブロー成形後に除去される。凸状リブ部41はこの一連の工程で形成される凹部25側のピンチオフ部、つまり、凹部25の第三の面25cにのみ形成される。
【0027】
図3は、容器11の把持部31の拡大図(b)と、第一の端点33aを通る中心軸A1に直交する把持部31のD1-D1断面(c)及び第二の端点32aを通る中心軸A1に直交する把持部31のE1-E1断面(a)とを示している。なお、図1図3に示される把持部31を通る線B1は、中心軸A1と平行な仮想線である。
【0028】
側面部22に形成された把持部31は、側面部22の凹部25の第一の面25aと接続された第一接続端部32と、第一接続端部32より底面部23に対して近い位置で側面部22の凹部25の第二の面25bと接続された第二接続端部33と、第一接続端部32と第二接続端部33との間に配置された湾曲している把持胴部34と、容器11の内部と連通する中空部35とを有している。
【0029】
把持胴部34は、容器11を左側から見た時に、円弧状の第一の曲線34aと第一の曲線34aよりも容器11の中心軸A1に近い円弧状の第二の曲線34bと、を規定する。側面部22は、容器11を左側から見た時に、第二の曲線34bの底面部23側の第一の端点33aから底面部23側に伸びる円弧状の第三の曲線22bと、第二の曲線34bの上面部21側の第二の端点32aから上面部21側に伸びる円弧状の第四の曲線22aと、を規定する。第二の曲線34bの曲率半径は、第三の曲線22b及び第四の曲線22aの曲率半径と比較して大きい。なお、本発明を特に限定するものでは無いが、本実施形態において第二の曲線34bの曲率半径は、第三の曲線22b及び第四の曲線22aの曲率半径に対し、2倍以上大きい。容器11を左側から見た時に、把持胴部34及び側面部22により規定される曲線(22b、34b、22a)は、第一の端点33a及び第二の端点32aを境に、曲率半径が大幅に変化する。また、第一の端点33aは、第二接続端部33の容器11の中心軸A1に最も近い点である。第二の端点32aは、第一接続端部32の容器11の中心軸A1に最も近い点である。
【0030】
容器11を左側から見た時に、把持胴部34の第一の曲線34aは、凹部25の第二の面25bと第三の端点33bで接続されている。この第三の端点33bは、第一の曲線34aの変曲点である。第三の端点33b近くの第一の曲線34aの曲率中心は第一の曲線34aに対して中心軸A1の反対側に存在し、第一の曲線34aに対して第三の端点33bより先の曲線の曲率中心はこの曲線に対して中心軸A1側に存在する。
また、容器11を左側から見た時に、把持胴部34の第一の曲線34aは、凹部25の第一の面25aと第四の端点32bで接続されている。この第四の端点32bは、第一の曲線34aの変曲点である。第四の端点32b近くの第一の曲線34aの曲率中心は第一の曲線34aに対して中心軸A1の反対側に存在し、第一の曲線34aに対して第四の端点32bより先の曲線の曲率中心はこの曲線に対して中心軸A1側に存在する。
【0031】
第一接続端部32は、容器11を左側から見た時に、第二の端点32a及び第四の端点32bを通るように形成されている。また、第二接続端部33は、容器11を左側から見た時に、第一の端点33a及び第三の端点33bを通るように形成されている。
【0032】
把持胴部34は、容器11を正面から見た時に、第二接続端部33から第一接続端部32に向けて縮径している(図2参照)。
【0033】
図4は、中心軸A1と垂直である容器11の側面部22及び把持部31のC1-C1断面を示している。
【0034】
第一の端点33aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積(図3の(c)参照)は、第一の端点33aより上方で第二の端点32aより下方の把持胴部34における中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積(図4参照)よりも大きい。また、第一の端点33aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積は、第二の端点32aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積(図3の(a)参照)よりも大きい。
【0035】
従来の容器では、中空の長尺状の把手が長手方向に沿って略一定の径を有するように形成されていた。この構成の容器を反転させた状態で出入口部から底面部に向けて洗浄水等を打ち付けた場合、洗浄水の一部は底面部の内壁面を伝って落ちていくが、その洗浄水が伝わりにくい箇所、すなわち、洗浄水が届きにくく濡れにくい箇所が発生する場合があった。同様に、すすぎのためのすすぎ水が伝わりにくく、洗浄水が把手の内壁面の一部に残留してしまう場合があった。
【0036】
しかし、本実施形態の容器11では、第一の端点33aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積が、把持胴部34における中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積よりも大きい。これにより、洗浄の際に容器を反転させた状態で出入口部24から底面部23に向けて洗浄水等を打ち付けた場合において、底面部23の内壁面を伝って落ちていく洗浄水やすすぎ水が把持部31の内部への入口となる第二接続端部33に向けて案内されて、把持胴部34の壁面で集積されやすくなる。このため、中空の把持部31の内部において洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じにくくなり、容器11を洗浄しやすくなる。
【0037】
また、本実施形態の容器11によれば、把持胴部34が第二接続端部33から第一接続端部32に向けて縮径していることにより、洗浄の際第二接続端部33に向けて案内されて集積された洗浄水やすすぎ水が、把持胴部34の内壁面上において圧力損失及び摩擦損失により周囲の洗浄水やすすぎ水と合流しながら伝わり落ちやすくなる。このため、把持胴部34の内壁面上を水が広く伝わりやすくなり、さらに容器11を洗浄しやすくなる。また、使用者が握る上面部21側の把持部31が楕円状の断面形状になるように縮径することで持ちやすさも向上する。
【0038】
また、本実施形態の容器11では、第一の端点33aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積は、第二の端点32aを通る中心軸A1に直交する平面で切断された中空部35の断面の面積よりも大きい。これにより、集積された洗浄水やすすぎ水が、洗浄水やすすぎ水の出口である第一接続端部32まで把持胴部34の内壁面上において圧力損失及び摩擦損失により周囲の洗浄水やすすぎ水と合流しながら伝わり落ちやすくなり、さらに容器11を洗浄しやすくなる。
【0039】
また、本実施形態の容器11では、凹部25の第一の面25aが容器11の中心軸A1に近づくにつれて、底面部23に近づくように傾いている。これにより、洗浄の際凹部25の内壁面を伝って落ちていく洗浄水やすすぎ水が、凹部25の第一の面25aに案内されて洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じにくくなり、容器11を洗浄しやすくなる。また、本実施系形態の容器11では、凹部25の第二の面25bが容器11の中心軸A1に近づくにつれて、上面部21に近づくように傾いている。これにより、洗浄の際底面部23の内壁面を伝って落ちていく洗浄水やすすぎ水が、把持部31の内部への入口となる第二接続端部33に向けて更に案内されて集積されやすくなる。このため、中空の把持部31の内部において洗浄水やすすぎ水が届きにくい箇所が生じにくくなり、容器11を洗浄しやすくなる。
【0040】
また、本実施形態の容器11によれば、第三の面25cの中央部分に、把持部31の長手方向に沿った凸状リブ部41が形成されていることにより、落下の際に容器11にかかる衝撃への強度を向上させることができる。また凸状リブ部41により第一接続端部32及び第二接続端部33付近の容器11の強度も向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態の容器11によれば、把持胴部34が湾曲していることにより、洗浄の際、第二接続端部33に向けて案内されて集積された洗浄水やすすぎ水が、更に、把持胴部34の内壁面上において周囲の洗浄水やすすぎ水と合流して伝わり落ちやすくなる。このため、さらに容器11を洗浄しやすくなる。また、把持部31の持ちやすさも更に向上する。
【0042】
また、本実施形態の容器11では、容器11を底面部23を下にして水平面に設置した際の、当該水平面から上底部26の中央までの高さh1は、10mm以上50mm以下である。高さh1が10mm以上であることで、液体が充填された容器11が落下した場合に上底部26の下方への弾性変形により、ピンチオフ部に働く水撃作用(ウォーターハンマー)を軽減することができる。これにより、容器11の落下耐性を向上させることができる。高さh1の上限は容器11の容量、成形性の観点から50mm以下であると好ましい。また高さh1は、15mm以上45mm以下であるとより好ましく、20mm以上35mm以下であると特に好ましい。
【0043】
このように、上記実施形態によれば、把手の内部を洗浄しやすい把手付き容器11を提供することができる。
【0044】
(第二の実施形態)
以下、本発明に係る把手付き容器の実施の形態の別の例(第二の実施形態)を、図面を参照して説明する。
【0045】
図5図8は本発明の第二の実施形態に係る把手付き容器111を示す図である。図5及び図6に示すように、本実施形態において把手付き容器111は、上面部121と、上面部121に接続された側面部122と、上面部121と反対側に配置されて側面部122に接続された底面部123と、側面部122に形成された中空で長尺状の把持部131と、を備えている。その内部には、所定量の液体(飲料水等)等の流体が収容可能とされている。
【0046】
ここで、上面部121は第一の実施形態の上面部21と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0047】
側面部122は、把手付き容器111の周面を形成するもので、上面部121に接続されて下方側へ延在されている。底面部123は、上底部126および周底部127を含んでいる。周底部127は第一の実施形態に係る周底部27と同様の構成であるので説明を省略する。上底部126は、容器111を底面部123を下にして水平面に設置した際の、当該水平面から上底部126の中央までの高さh2が異なる以外は、第一の実施形態に係る上底部26と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。水平面から上底部126の中央までの高さh2(上記の第一の実施形態で定義された高さh1と同様に定義される。)は、20mm以上35mm以下である。
【0048】
本実施形態の説明においては、第一の実施形態で説明した定義と同様の定義に基づき、容器111を正面から見た時(図6)、および容器111を左側から見た時(図7)と、適宜場面について言及する。容器111は、容器111を正面から見た時(図6)、出入口部124を通る容器111の中心軸A2に対して線対称になるように形成されている。
【0049】
側面部122には、容器111の中心軸A2に向かって凹んでいる凹部125が形成されている。凹部125は、上面部121側の第一の面125a、底面部123側の第二の面125b並びに第一の面125a及び第二の面125bと連なる第三の面125cにより形成される。容器111を左側から見た時、凹部125と把持部131との間は貫通孔が形成されている。第一の面125aおよび第二の面125bは、第三の面125c、把持部131および凹部125以外の側面部122との接続箇所を除いた部分において、中心軸A2に対して略直交するように形成されている。
【0050】
容器111を左側から見た時に凹部125および把持部131の貫通孔を構成する部分には、当該貫通孔に沿った凸状リブ部(フィン)141が形成されている。第一の実施形態で説明したのと同様に、凹部125および把持部131より形成される貫通孔の外縁とそれら近辺の領域を、総称してピンチオフ部とする。当該ピンチオフ部は、第一の実施形態で説明した態様により形成される。本実施形態において、凸状リブ部141は一連の工程で形成される凹部125側および把持部131のピンチオフ部に形成される。
【0051】
図7は、容器111の把持部131の拡大図(b)と、第一の端点133aを通る中心軸A2に直交する把持部131のD2-D2断面(c)及び第二の端点132aを通る中心軸A2に直交する把持部131のE2-E2断面(a)とを示している。なお、図5図7に示される把持部131を通る線B2は、中心軸A2と平行な仮想線である。
【0052】
側面部122に形成された把持部131は、側面部122の凹部125の第一の面125aと接続された第一接続端部132と、第一接続端部132より底面部123に対して近い位置で側面部122の凹部125の第二の面125bと接続された第二接続端部133と、第一接続端部132と第二接続端部133との間に配置された湾曲している把持胴部134と、容器111の内部と連通する中空部135とを有している。
【0053】
把持胴部134は、容器111を左側から見た時に、第一の曲線134aと第二の曲線134bと、を規定する。側面部122は、容器111を左側から見た時に、第一の端点133aから伸びる第三の曲線122bと、第二の端点132aから伸びる第四の曲線122aと、を規定する。第一の曲線134a、第二の曲線134b、第三の曲線122b、第四の曲線122a、第一の端点133aおよび第二の端点132aについては、第一実施形態で説明した第一の曲線34a、第二の曲線34b、第三の曲線22b、第四の曲線22a、第一の端点33aおよび第二の端点32aと同様の構成である。
【0054】
容器111を左側から見た時に、把持胴部134の第一の曲線134aは、凹部125の第二の面125bと第三の端点133bで接続されている。この第三の端点133bは、第一の曲線134aの変曲点の近傍の点である。第三の端点133b近くの変曲点において、第一の曲線134aの曲率中心は、第一の曲線134aに対して中心軸A2側から中心軸A2の反対側へと移動し、または第一の曲線134aに対して中心軸A2の反対側から中心軸A2側へ移動する。
また、容器111を左側から見た時に、把持胴部134の第一の曲線134aは、凹部125の第一の面125aと第四の端点132bで接続されている。この第四の端点132bは、第一の曲線134aの変曲点の近傍の点である。第四の端点132b近くの変曲点において、第一の曲線134aの曲率中心は、第一の曲線134aに対して中心軸A2側から中心軸A2の反対側へと移動し、または第一の曲線134aに対して中心軸A2の反対側から中心軸A2側へ移動する。
【0055】
第一接続端部132は、容器111を左側から見た時に、第二の端点132a及び第四の端点132bを通るように形成されている。また、第二接続端部133は、容器111を左側から見た時に、第一の端点133a及び第三の端点133bを通るように形成されている。
【0056】
把持胴部134は、容器111を正面から見た時に、第二接続端部133から第一接続端部132に向けて縮径している(図6参照)。
【0057】
図8は、中心軸A2と垂直である容器111の側面部122及び把持部131のC2-C2断面を示している。
【0058】
第一の端点133aを通る中心軸A2に直交する平面で切断された中空部135の断面の面積(図7の(c)参照)は、第一の端点133aより上方で第二の端点132aより下方の把持胴部134における中心軸A2に直交する平面で切断された中空部135の断面の面積(図8参照)よりも大きい。また、第一の端点133aを通る中心軸A2に直交する平面で切断された中空部135の断面の面積は、第二の端点132aを通る中心軸A2に直交する平面で切断された中空部135の断面の面積(図7の(a)参照)よりも大きい。
【0059】
本実施形態の容器111では、第一の実施形態の容器11の同様の構成(中空部135の断面の面積ならびに把持胴部134の縮径および湾曲)を備えることにより、第一の実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0060】
また、本実施形態の容器111では、第一の面125aおよび第二の面125bが、第三の面125c、把持部131および凹部125以外の側面部122との接続箇所を除いた部分において、中心軸A2に対して略直交するように形成されている。これにより、凹部125の剛性が高められている。そして凹部125の剛性が高められることで、液体が充填された容器111が落下した場合に生じ得る容器111の割れを好適に防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の容器11では、容器111を左側から見た時に凹部125および把持部131の貫通孔を構成する部分に、当該貫通孔に沿った凸状リブ部(フィン)141が形成されている。これにより、凹部25を含む凸状リブ部の近傍領域の剛性が高められている。そして凸状リブ部の近傍領域の剛性が高められることで、液体が充填された容器111が落下した場合にピンチオフ部に生じやすい割れを好適に防止することができる。
【0062】
また、本実施形態の容器111では、容器111を底面部123を下にして水平面に設置した際の、当該水平面から上底部126の中央までの高さh2は、20mm以上35mm以下である。高さh2が20mm以上であることで、液体が充填された容器111が落下した場合に上底部126の下方への弾性変形が大きくなり、ピンチオフ部に働く水撃作用(ウォーターハンマー)をさらに軽減することができる。これにより、容器111の落下耐性をさらに向上させることができる。高さh2の上限は容器111の容量、成形性の観点から35mm以下であると特に好ましい。
【0063】
このように、上記実施形態によれば、把手の内部を洗浄しやすい把手付き容器111を提供することができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0065】
例えば、前述の実施形態に係る容器11、111において、容器11、111を正面から見た時に、把持胴部34、134は、第二接続端部33、133から第一接続端部32、132に向けて途中まで縮径し、途中から拡径していてもよい。
【0066】
また、容器11,111に収容される飲料水等の液体物の重さは約19-20kgにも及ぶ。そのため、容器11,111の特にピンチオフ部の落下耐性を高めなければならない。
また、容器11,111の断面形状は円形状で、胴径は25-30cm(約27cmが望ましい)で、高さは45-55cm(約49cmが望ましい)であってもよい。
また、上底部26,126の高さは胴径の5-10%(約6%が望ましい)に設定すると効果が高い。
【0067】
本願は、2017年5月10日付で出願された日本国特許出願(2017-093909)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0068】
11,111:把手付き容器、21,121:上面部、22,122:側面部、22a,122a:第四の曲線、22b,122b:第三の曲線、23,123:底面部、24,124:出入口部、25,125:凹部、25a,125a:第一の面、25b,125b:第二の面、25c,125c:第三の面、26,126:上底部、27,127:周底部、28:張出部、31、131:把持部、32,132:第一接続端部、32a,132a:第二の端点、32b,132b:第四の端点、33,133:第二接続端部、33a,133a:第一の端点、33b,133b:第三の端点、34,134:把持胴部、34a,134a:第一の曲線、34b,134b:第二の曲線、35,135:中空部、41,141:凸状リブ部、A1,A2:把手付き容器の中心軸、B1,B2:中心軸A1,A2に平行な仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8