IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレクトリシテ ド フランスの特許一覧 ▶ ソルボンヌ・ユニヴェルシテの特許一覧

特許7106533ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法
<>
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図1-a
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図1-b
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図2
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図3
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図4
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図5
  • 特許-ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ポリマー材料のパラメータを推定するための携帯装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20220719BHJP
【FI】
G01N21/3563
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019527247
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017079543
(87)【国際公開番号】W WO2018091631
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】1661235
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507030070
【氏名又は名称】エレクトリシテ ド フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リブ コルテ,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ベン シュイハ,モハメド
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02138830(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第103743695(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0067569(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0178528(US,A1)
【文献】特開2015-206751(JP,A)
【文献】特表2005-504980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01N 33/00 - G01N 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを推定するための携帯用装置であって、当該装置は、:
少なくとも1つの赤外線源であって、ここで、各赤外線源は、1つ以上の時間パルスの形態でスペクトル線をポリマー材料に向けて放射することができ、各赤外線源は、ポリマー材料に向かって、波長10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmのうちの1つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちの1つから選択される、最大放出エネルギーを表すスペクトル線を放射することができる、赤外線源と、
前記少なくとも1つの赤外線源によって放射された、前記スペクトル線に応答して前記ポリマー材料によって反射されるスペクトル線を受け取ることができる少なくとも1つの赤外線検出器と、
前記少なくとも1つの赤外線源によって放射された前記スペクトル線に応答して、前記ポリマー材料によって反射され、且つ赤外線検出器によって受け取られた、前記スペクトル線に存在するエネルギーの関数として前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを決定するための決定ユニットと、
パルスのうちの少なくとも1つのそれぞれの時間幅に含まれるか又はそれに等しい第1の規定の時間幅にわたって、前記少なくとも1つの赤外線源によって放出されたスペクトル線への応答として前記ポリマー材料によって反射された、スペクトル線の複数の第1の測定取得して、第1の測定値を代表する第1の値の推定値を計算するための制御手段と、
2つの連続するパルス間のそれぞれの時間幅に含まれるか又はそれに等しい第2の規定の時間幅にわたって、前記少なくとも1つの赤外線源によって放出されたスペクトル線への応答として前記ポリマー材料によって反射されたスペクトル線の複数の第2の測定取得して、第2の測定値を代表する第2の値の推定値を計算するための制御手段であって、前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータは、少なくとも前記第1の測定を代表する値と前記第2の測定を代表する値との間の差からを計算される、
装置。
【請求項2】
スペクトル線が放射の狭帯域である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータが、前記ポリマー材料中の少なくとも1つ
のエージングトレーサの存在及び/又は含有量である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータがポリマーの識別である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
1つ以上の時間パルスが矩形である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
1つ以上の時間パルスと同期して少なくとも1つの赤外線検出器を始動するための制御手段が設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの赤外線源によるスペクトル線の放出をトリガするための少なくとも1つの手動制御部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの赤外線源は、少なくとも1つの赤外線発光ダイオード又は少なくとも1つのレーザ源である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの赤外線検出器は、フォトダイオード又は光導電型であり、且つ、それが受け取る、少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線への応答として、ポリマー材料によって反射された、スペクトル線の関数として光電流を発生させることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
すくなくとも1つの赤外線源は各々、波長10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmのうちのそれぞれ異なる2つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちのそれぞれ異なる2つから選択される、最大放出エネルギーを表す、2つの異なるスペクトル線を各ポリマー材料に放射することができる、少なくとも2つの赤外線源を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの赤外線源のスペクトル線の半値幅は1μm以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
決定ユニットが、少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線への応答として、ポリマー材料によって反射されたスペクトル線から赤外線検出器によって提供された、信号中の直流成分を抑制又は減衰させるための少なくとも1つのフィルタ又は回路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
決定ユニットは、アナログ-デジタル変換器によって提供されるデジタル信号(単数又は複数)からポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータ(ポリマー材料の特性パラメータ)を決定するために、フィルタ又は回路の下流でフィルタリングされた信号を幅するための増幅器と、前記増幅器の下流のアナログ-デジタル変換器と、データを処理し記憶するための手段と、を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
決定ユニットは、少なくとも1つの赤外線検出器から及び少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線への応答として、ポリマー材料によって反射された、且つ前記少なくとも1つの赤外線検出器によって受け取られる、前記スペクトル線から得られる、検出信号の振幅の関数としてポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを計算するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
決定ユニットは、少なくとも1つのスペクトル線を放射するように少なくとも1つの赤外線源を制御するのに役立つ放射信号の振幅に関して、少なくとも1つの赤外線検出器から及び前記少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線への応答として、ポリマー材料によって反射された、且つ前記少なくとも1つの赤外線検出器によって受け取られる、前記スペクトル線から得られる、検出信号の振幅の関数としてポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを計算するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの赤外線検出器を冷却するための第1の冷却モジュール及び/又は少なくとも1つの赤外線源を冷却するための第2の冷却モジュールを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
サーモスタットと、少なくとも1つの赤外線検出器を維持するため、前記第1の冷却モジュールに、及び/又は前記少なくとも1つの赤外線源をサーモスタットで規定された温度に維持するため、前記第2の冷却モジュールに接続された自動温度安定化のための電子ユニットとを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
グリップハンドルから離れた前端に、少なくとも1つの赤外線源及び少なくとも1つの赤外線検出器を含む、照準モジュールに取り付けられたグリップハンドルを含むピストルの形状を有し、前記ピストルは、前記少なくとも1つの赤外線源による少なくとも1つのスペクトル線の放出をトリガするための少なくとも1つの手動制御部材を含み、ここで、前記手動制御部材は、前記グリップハンドル上で、前記グリップハンドルと前記照準モジュールとの間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
ここで、少なくとも1つの線源及び/又は少なくとも1つの赤外線検出器は、少なくとも1つの外側ブロックによって覆われ、
前記少なくとも1つの線源は前記少なくとも1つのスペクトル線を放射することができ、且つ、前記少なくとも1つの赤外線検出器は、後者に対して透明であり、且つポリマー材料に向けられている前記外側ブロックを通して前記少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線の応答として前記ポリマー材料によって反射されたスペクトル線を受け取ることが可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
ポリマー材料に対する支持のためのガードを含み、
同時に前記ポリマー材料に向けられ、且つガードの外側遠位表面に対して凹んでいる、外側遠位表面を有する外側ブロックも、前記ポリマー材料の表面に向けられている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを推定する方法であって、
ここで、波長10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmのうちの少なくとも1つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちの1つから選択される、最大放出エネルギーを表す、放出の少なくとも1つのスペクトル線は、少なくとも1つの赤外線源によって、ポリマー材料に向かって放出され、ここで、各赤外線源は、1つ以上の時間パルスの形態でスペクトル線をポリマー材料に向けて放射することができ、
前記少なくとも1つの赤外線源によって放射された前記スペクトル線に応答して、前記ポリマー材料によって反射される前記スペクトル線は、少なくとも1つの赤外線検出器によって受け取られ、
前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータは、ポリマー材料によって反射され、且つ前記少なくとも1つの赤外線源によって放射されたスペクトル線に応答して、前記赤外線検出器によって受け取られた、前記少なくとも1つのスペクトル線に存在するエネルギーの関数として、決定ユニットによって決定される、以下の:
パルスのうちの少なくとも1つのそれぞれの時間幅に含まれるか又はそれに等しい第1の規定の時間幅にわたって、前記少なくとも1つの赤外線源によって放出されたスペクトル線への応答として前記ポリマー材料によって反射された、スペクトル線の複数の第1の測定取得して、第1の測定値を代表する第1の値の推定値を計算されること、
2つの連続するパルス間のそれぞれの時間幅に含まれるか又はそれに等しい第2の規定の時間幅にわたって、前記少なくとも1つの赤外線源によって放出されたスペクトル線への応答として前記ポリマー材料によって反射されたスペクトル線の複数の第2の測定取得して、第2の測定値を代表する第2の値の推定値を計算するための制御手段であって、前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータは、少なくとも前記第1の測定を代表する値と前記第2の測定を代表する値との間の差からを計算されること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料のパラメータを推定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の1つの適用分野は、特に原子力発電プラントにおいて壁又はパイプを被覆するために使用されるポリマーに関する。
【0003】
本発明は、非限定的なやり方で、材料上の1つ又は複数のパラメータの測定に関する。前記材料は、:
- ポリマーコーティング、通常は塗料を構成する塗料、
- 流体輸送パイプなどのポリマー部品、
- 電気ケーブル、
であり得る。
【0004】
そのような塗料又は成分は、工業環境、例えばこれらの塗料及び成分が耐えなければならない厳しい温度及び湿度条件がある原子力発電所に見られる。原子力発電所に適用される安全基準では、原子炉建屋の囲いを形成するコンクリートの内壁に塗布されたポリマー塗料のような表面コーティングの防水特性が厳しい温度及び湿度条件に耐えることが要求される。このようなコーティングの剥離又は裂けは、例えば動作試験中又は熱水の放出をもたらす事故の際に、原子炉建屋の囲い内部に液滴を散布することによって水を注入する頭字語AESとして知られる緊急スプリンクラー回路を閉塞及び閉塞させることがある。被覆の剥離に起因するエンクロージャ内の圧力及び温度の実質的な上昇を引き起こし、その状況は緊急システムEASの寸法である。
【0005】
これらの要件は、循環流体が高温になり得る、いわゆる高密度ポリマーチューブ又はパイプなどの、すべてのポリマーベースの材料に関する。ここで、関連するコントロールはチューブの内側表面になければならない。モニタリングが必要とされる別の例は、同様にポリマー組成物の電気ケーブルのそれであり、ここで劣化は電気絶縁の喪失と同義である。
【0006】
各業界に固有の規制及び安全規制に従った要件では、オペレータは塗料などの表面コーティングの状態、及びパイプやケーブルなどの特定のコンポーネントの状態を監視する必要がある。それらがポリマー構造である限り、適切な制御方法を実施しなければならない。
【0007】
例えば、原子力発電所に施工された、密封機能を実行しなければならない原子力発電所の建物の内壁上のコーティングの場合、求められている基準に関して、視覚的な制御が、例えば亀裂又は膨潤などの実際の老化状態をパラメータとして推定することを可能にしないことはよく知られている。確かに、亀裂又は腫れのいずれかが現れ、そして進行した劣化の診断がすぐに明白になるか、又はこれらの症状のいずれも現れず、そしてオペレータが決定することができない。肉眼で劣化が見られなくても、それがコーティングの薄層の微細構造内に既に生じている、劣化の兆候であり、封止のような保護機能の喪失と同義である可能性がある。これらの条件下で、コーティングは、たとえ健康的な外観であっても、適用されたコーティングを剥がしてさらにオペレータにとって有害な廃棄物を構成する可能性がある温度及び湿度の著しい過渡現象の試験に耐えられないことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
課題は、最初の脆弱化が出現する前であっても、老化の状態を適切に評価することによってそのような状況を予測することである。
【0009】
したがって、オペレータは、以前に定義された劣化基準及び以前に固定された保守プログラムに関して保守要件を予測する、劣化を測定する方法を探している。
【0010】
コーティングを制御するために、塗料製造段階中にコントロールブリケット(des briquettes temoins)を製造することが知られている。コントロールブリケットはポリマーコーティングで塗装された後、当該建物内のキャビネットに保管される。この方法は、ブリケットの老化が保護コーティングの老化を表すという仮定に基づいている。プログラムされたやり方で、コントロールブリケットは分析ラボで制御される。これには、保管場所と分析ラボの間のコントロールブリケットの定期輸送(往復)が含まれる。いくつかの欠点がある。:
【0011】
輸送中にブリケットが時々紛失又は損傷する。例えば原子力発電所の建物の壁のコンクリートの柱状コアサンプル採取(carrotage)は、コントロールブリケットを交換するのに必要である。この作業は、柱状コアサンプル採取によって形成された穴を閉じて再塗装しなければならないので、かなり重い保守作業を必要とする。
【0012】
ブリケットのコーティングの老化状態は、建物全体の老化状態を完全に表すものではない。
【0013】
一方、他の問題は、特定のポリマーが存在することを確認しなければならないことであり得る。例えば、上記の環境において、例えばガスケットを形成する製品が、明細書、上記の環境又は他の環境の原子炉建屋、及びより一般的にはそのような多様な環境にある他の工業用建物において、特定のポリマー材料でできていることを制御することが望ましいかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、実施が簡単で、ポリマー材料のエージングトレーサを体系的に検出するようになっている装置及び方法によって、最新技術の欠点を克服すること、及びポリマー材料のパラメータを推定することを可能にする上で示した問題を解決することを目的とする。
【0015】
この目的のために、本発明の第1の目的は、ポリマー材料の少なくとも1つのパラメータを推定するための装置であり、当該装置は以下:
第1の赤外線をポリマー材料に送ることができる、少なくとも1つの所定の波長を有する少なくとも1つの発光スペクトル線を有する、ポリマー材料の少なくとも1つのエージングトレーサの検出に対応する、1つの赤外線源と、
第1の赤外線の送信に応答してポリマー材料によって反射される、第2の赤外線を受光することができる少なくとも1つの赤外線検出器と、
ポリマー材料のパラメータを、前記第2の赤外線の所定の波長を有する少なくとも1つの線の関数として決定するためのユニットと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
一実施形態によれば、ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを推定するための携帯用装置であって、以下:
少なくとも1つの赤外線源であって、各赤外線源は、ポリマー材料に向かって、10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmの波長のうちの1つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちの1つから選択される、最大発光エネルギーを表すスペクトル線を放射することができる、赤外線源と、
前記少なくとも1つの赤外線源によって放射された、前記スペクトル線に応答して前記ポリマー材料によって反射される赤外線を受け取ることができる少なくとも1つの赤外線検出器と、
前記ポリマー材料によって反射され、赤外線検出器によって受け取られた、前記赤外線の前記スペクトル線に存在するエネルギーの関数として前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを決定するためのユニットと、を含むことを特徴とする装置が提供される。
【0017】
選択された波長値及び波数値は、最大エネルギーがこれらの値のうちの1つに位置する線の放出によるポリマー材料の老化トレーサの検出に対応するものとして本発明者らによって決定されたものである。
【0018】
したがって、本発明は、老化トレーサの検出に依存してポリマーのパラメータを決定することを可能にし、これは実施が簡単な携帯用装置を使用して行われる。
【0019】
したがって、本発明による装置は、赤外スペクトルの全波長でポリマー材料を照射することを回避するが、1つ又は複数の前述の波長又は波数に位置する関心のある線のみによってそれを照射する。したがって、分光計によって赤外線検出器によって受信された1つ又は複数の波長を選択する必要性が回避される。
【0020】
一実施形態によれば、いくつかの赤外線源があり得る。
【0021】
一実施形態によれば、いくつかのスペクトル線があり得る。
【0022】
一実施形態によれば、各赤外線源は、上に示した単一のスペクトル線をポリマー材料に伝達することができる。以下では、ポリマー材料によって反射され、且つ、赤外線源(単数又は複数)による上記のスペクトル線(単数又は複数)の放出に応答して赤外線検出器によって受光された、赤外線を第2の赤外線ともいう。
【0023】
一実施形態によれば、前記スペクトル線は狭帯域放射である。
【0024】
一実施形態によれば、前記ポリマー材料の特性パラメータは、前記ポリマー材料中の少なくとも1つのエージングトレーサの存在及び/又は含有量である。
【0025】
一実施形態によれば、前記ポリマー材料の特性パラメータはポリマーの識別である。
【0026】
一実施形態によれば、各赤外線源は、1つ以上の時間パルス(impulsions temporelles)の形態で前記スペクトル線を前記ポリマー材料に放射することができる。
【0027】
一実施形態によれば、前記時間パルス(単数又は複数)は矩形である。
【0028】
一実施形態によれば、前記時間パルス(単数又は複数)と同期するように前記少なくとも1つの赤外線検出器をスイッチオンするための制御手段が設けられる。
【0030】
一実施形態によれば、当該装置は、第2の測定値の第2の代表値の推定値を計算するため、2つの連続するパルス間のそれぞれの時間幅に含まれるか又はそれに等しい第2の規定の時間幅の間に前記第2の赤外線の複数の第2の測定値を行うための制御手段を含み、前記パラメータは、少なくとも前記第1の測定値を代表する第1の値と前記第2の測定値を代表する第2の値との間の差から計算される。
【0031】
一実施形態によれば、当該装置は、前記少なくとも1つの赤外線源による前記スペクトル線の放出をトリガするための少なくとも1つの手動制御部材をさらに含む。
【0032】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの赤外線源は、少なくとも1つの赤外線発光ダイオード又は少なくとも1つのレーザ源である。
【0033】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの赤外線検出器は、フォトダイオード又は光導電型であり、それが受け取る赤外線の関数として光電流を発生させることができる。
【0034】
一実施形態によれば、赤外線源として少なくとも2つの赤外線源が設けられ、これらは(qui)、10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmの波長のうちのそれぞれ異なる2つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちのそれぞれ異なる2つから選択される、それぞれ最大放出エネルギーを表す2つの異なるスペクトル線をそれぞれポリマー材料に放出することができる。
【0035】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの赤外線源の前記スペクトル線の半値幅は1μm以下である。
【0036】
一実施形態によれば、前記ポリマー材料の特性パラメータを決定するための前記ユニットが、前記赤外線検出器によって提供された、信号中の直流成分(une composante continue)を抑制又は減衰させるための少なくとも1つのフィルタ又は回路又はフィルタユニットを含む。
【0037】
一実施形態によれば、アナログ-デジタル変換器によって提供されるデジタル信号(単数又は複数)から前記ポリマー材料の特性パラメータを決定するため、前記ポリマー材料の特性パラメータを決定するための前記ユニットは、前記フィルタ又は回路又はフィルタユニットの下流でフィルタリングされた信号を増幅するための増幅器と、前記増幅器の下流のアナログ-デジタル変換器と、データを処理し記憶するための手段と、を含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記決定するためのユニットが、少なくとも赤外線検出器及び赤外線から得られる、前記少なくとも1つのスペクトル線に対応する前記少なくとも1つの波長で受信された検出信号の振幅の関数としてポリマー材料の特性パラメータを計算するように構成される。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記決定するための前記ユニットが、前記少なくとも1つのスペクトル線を放射するように前記少なくとも1つの赤外線源を制御するための放射信号の振幅に関して、前記赤外線検出器及び赤外線から得られる、前記少なくとも1つのラインに対応する前記少なくとも1つの波長で受信された検出信号の振幅の関数としてポリマー材料の特性パラメータを計算するように構成される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、当該装置は、前記少なくとも1つの赤外線検出器を冷却するための冷却モジュール及び/又は前記少なくとも1つの赤外線源を冷却するための冷却モジュールを含む。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、当該装置は、前記少なくとも1つの赤外線検出器及び/又は前記少なくとも1つの赤外線源をサーモスタットで規定された温度に維持するため、サーモスタットと、冷却モジュールに接続された電子温度安定化ユニットとを含む。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、ピストルの形状をしている当該装置は、ハンドルから離れた前端に前記少なくとも1つの赤外線源及び前記少なくとも1つの赤外線検出器を含む、照準モジュールに接続されたハンドルを含み、前記ピストルは、前記少なくとも1つの赤外線源による前記少なくとも1つのスペクトル線の放出をトリガするための少なくとも1つの手動制御部材を含み、前記手動制御部材は、前記ハンドルを前記照準モジュールに接続する前記ピストルの領域の近くに配置されている。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1つの線源及び/又は前記少なくとも1つの赤外線検出器は、少なくとも1つの外側ブロックによって覆われ、
前記少なくとも1つの線源は前記少なくとも1つのスペクトル線を放射することができ、それに対して透明であり、前記ポリマー材料に面する前記外側ブロックを通して前記赤外線を受け取るようになっている。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、当該装置は、ポリマー材料を支えるガードを含み、
前記外側ブロックは、外側遠位面を有し、前記外側遠位面は両方ともポリマー材料に向けられており、前記ガードの外側遠位面に対して凹んでおり、これも前記ポリマー材料の表面に面している。
【0045】
本発明の第2の目的は、ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータを推定するための方法であって、
少なくとも1つの赤外線源が、材料の少なくとも1つのエージングトレーサの検出に対応する、少なくとも1つの所定の波長を有する少なくとも1つの発光スペクトル線を特徴とする第1の赤外線放射をポリマー材料に送ること、
少なくとも1つの赤外線検出器は、前記第1の赤外線の送信に応答してポリマー材料によって反射される第2の赤外線を受信すること、
前記ポリマー材料に特徴的な少なくとも1つのパラメータは、前記第2の赤外線放射で規定された波長の少なくとも1つのスペクトル線の関数として決定するためのユニットによって決定されること、
を特徴とする。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー材料の少なくとも1つの特性パラメータを推定する方法であって、
10μm、9.5μm、7.2μm、6μm、3.5μm、2.7μmの波長のうちの1つ、又は波数1000cm-1、1050cm-1、1350cm-1、1700cm-1、2900cm-1、3700cm-1のうちの1つから選択される、最大放出エネルギーを表す少なくとも1つの赤外線源が、ポリマー材料に向かって少なくとも1つの放出スペクトル線を放出すること、
少なくとも1つの赤外線検出器は赤外線を受け取り、前記赤外線は、前記少なくとも1つの赤外線源によって放射された前記スペクトル線に応答して、ポリマー材料によって反射されること、
前記ポリマー材料の特性パラメータは、ポリマー材料によって反射され、前記赤外線検出器によって受け取られた、第2の赤外線の前記少なくとも1つのスペクトル線に存在するエネルギーの関数として、決定するためのユニットによって決定されること、を特徴とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明は、添付の図面を参照しながら非限定的な例としてのみ与えられた以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
図1a図1aは、本発明の一実施形態による推定装置の一般的なモジュールブロック図(un synoptique modulaire)を表す。
図1b図1bは、本発明の一実施形態による推定装置の一部を表す。
図2図2は、本発明の一実施形態による推定装置の測定値取得部分のブロック図である。
図3図3は、横軸の波長の逆数の関数として、ポリマーの赤外分光反射率の変化を表す。
図4図4は、本発明の一実施形態による推定装置の赤外線源の制御信号のタイミング図を表す。
図5図5は、本発明の一実施形態による推定装置の赤外線検出器によって行われる測定のタイミング図である。
図6図6は、本発明の一実施形態による推定装置のモジュールブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
ポリマー材料Mのパラメータを推定するための装置1、及びこの方法を使用して実施されるポリマー材料Mのパラメータを推定するための方法の実施形態を以下に説明する。このパラメータは、少なくとも1つのエージングトレーサの存在及び/又は少なくとも1つのエージングトレーサの含有量及び/又はポリマー材料Mの識別であり得る。
【0049】
図において、パラメータ推定装置1は、1つ以上の赤外線源101、1つ以上の赤外線検出器102、及びパラメータを決定するためのユニット2を含む。
【0050】
一般的には、本発明によれば、赤外線源101は、ポリマー材料の少なくとも1つのエージングトレーサの検出に対応する、所定の波長の1つ又は複数の発光スペクトル線を有する第1の赤外線111をポリマー材料Mに送る。
【0051】
一実施形態によれば、各赤外線源は、ポリマー材料Mのエージングトレーサに対応する、規定の波長、前記興味対象、又は興味対象のピークを含む狭帯域発光波長である。
【0052】
一実施形態によれば、赤外線源は、発光スペクトル線を含む少なくとも1つの発光スペクトル領域(又は帯域)においてのみ、又は高分子材料Mのエージングトレーサの検出に対応する規定の波長の赤外線を有する発光スペクトル線の周りにおいてのみ発光する。
【0053】
一実施形態によれば、赤外線源101は赤外線発光ダイオードである。そのようなダイオードは、上記の線の周りに位置する上記の発光スペクトル領域で発光する。この放出スペクトル領域は、例えば、放出された最大エネルギーに対応するスペクトル線を中心とするガウス分布によって表すことができる。したがって、ダイオードは、線とその線が位置する帯域によって特徴付けることができる。
【0054】
他の実施形態では、赤外線源101はレーザ源である。そのようなレーザ源は実質的に単色である。この場合、光源は、規定の波長でのみ、又は前述の線の周りの実質的に幅がゼロのスペクトル放射帯で放射する。
【0055】
一実施形態によれば、装置1は、その中又は下に前記1つ以上の光源101及び/又は前記1つ以上の赤外線検出器102がある表面1010を含むことができる。そしてそれは試験されるべき高分子材料Mに向けられることを意図している。一実施形態では、前記1つ以上の光源101及び/又は前記1つ以上の赤外線検出器102は、少なくとも1つの外部ブロック1011によって覆われている。それは(qui)、第1及び第2の赤外線111及び112に対して透明であり、外側ブロックの遠位面1013がそれと接触することなくポリマー材料Mの表面200に近づくように配置される。この外部ブロック1011は、この実施形態に関して図1bに示されるように、幾何光学の法則による屈折による第1及び第2の赤外線111及び112の光路変化以外に、前記1つ以上の赤外線源101の放射線111を変更することなく材料Mに、材料Mを前記1つ以上赤外線検出器に伝達することを可能にする。遠位面1013とポリマー材料Mの表面200との間に空いたままの薄い容積1014は、赤外線(単数又は複数)111及び/又は112と相互作用することによって測定上の空気の存在によって引き起こされる擾乱を制限し、空気中の酸素が特定の波長の吸収によって放射を減衰させるのを防ぐ。このブロックは、例えばゲルマニウムであり得る。
【0056】
前記1つ以上の赤外線検出器102は、1つ以上の赤外線源101からの第1の赤外線111の送信に応答して(その表面200を通して)ポリマー材料Mによって反射される第2の赤外線112を受信するように構成される。
【0057】
装置1は、第2の赤外線112の所定の波長を有する少なくとも1つの発光スペクトル線の関数としてポリマー材料Mのパラメータを決定するためのユニット2を含む。
【0058】
発光スペクトル線を含む又は発光スペクトル線の周りの少なくとも1つの発光スペクトル領域(又は帯域)の場合、例えば、光源101としてダイオードの場合、及び他のいかなる放射源も存在しない場合、第2の放射線のエネルギーは、放射を生成するダイオードに関連する帯域に含まれる。赤外線検出器102は帯域の概念を知らないが、例えばダイオードのような線源から来るエネルギーを積分するだけである。これにより、受信時に帯域作成される。
【0059】
一実施形態によれば、ユニット2は、赤外線検出器102から、及びスペクトル線(単数又は複数)に対応して規定される波長での第2の赤外線112から得られる第2の信号の存在及び/又は振幅の関数としてポリマー材料Mのパラメータを決定する。
【0060】
決定ユニット2は、少なくとも1つのスペクトル線を有する第1の赤外線111を少なくとも1つの所定の波長に送信するように、少なくとも1つの赤外線源101を制御するための第1の信号の振幅で除算される、赤外線検出器102及び第2の赤外線112から得られる第2の信号の振幅と、少なくとも1つのスペクトル線に対応する少なくとも1つの所定の波長との計算された比に従って、高分子材料Mのパラメータを算出するように構成することができる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、所定の波長の少なくとも1つのスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6は、2μmから10μmまでの波長範囲、すなわち1000cm-1から5000cm-1までの波数範囲内で選択される。本発明の一実施形態によれば、所定波長の少なくとも1つの線R1、R2、R3、R4、R5、R6を含む少なくとも1つの発光スペクトル領域B1、B2、B3、B4、B5、B6の半値幅は1μm以下である。本発明の一実施形態によれば、所定の波長の少なくとも1つの線R1、R2、R3、R4、R5、R6を含む少なくとも1つのスペクトル領域B1、B2、B3、B4、B5、B6の半値幅(FWM)は、0.2μm以上1μm以下である。例えば、この、所定波長の少なくとも1つの線R1、R2、R3、R4、R5、R6を含む少なくとも1つの発光スペクトル領域B1、B2、B3、B4、B5、B6の半値幅、は0.2μmに等しい。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー材料Mのパラメータを決定するために、所定の波長の少なくとも1つのスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6が、以下に記載される波長のうちの少なくとも1つにおいて、特に、興味関心のあるラインR1、R2、R3、R4、R5、R6、にそれぞれ対応する、それぞれ6μm及び/又は9.5μm及び/又は3.5μm及び/又は7.2μm及び/又は10μm及び/又は2.7μmにおいて選択される。
【0063】
一実施形態によれば、パラメータがエージングトレーサの存在及び/又は少なくとも1つのエージングトレーサの含有量である場合、この存在及び/又はこの含有量は、第2の赤外線112内の規定の1対以上波長における1つ以上の線R1、R2、R3、R4、R5、R6から、及び場合によっては、それぞれ線(単数又は複数)R1、R2、R3、R4、R5、R6の周囲の赤外発光スペクトル帯(単数又は複数)B1、B2、B3、B4、B5、B6から決定される。
【0064】
パラメータがポリマー材料Mの識別である場合、ユニット2は、さらに、前記所定のポリマーに関してポリマー材料Mを特定するため、第2の赤外線の所定の波長の線(R1、R2、R3、R4、R5、R6)の周りの少なくとも1つの発光スペクトル帯(B1、B2、B3、B4、B5、B6)を、少なくとも1つの所定のポリマーの少なくとも1つの予め記録されたスペクトルシグネチャと比較するための比較手段を含み得る。
【0065】
パラメータが高分子材料Mの識別である場合、ユニット2は、第2の赤外線112のスペクトル線が特性値に対応するのか、又は既知の識別のスペクトルシグネチャに対応するのかを決定するため、
- 一方では、所定の波長又は複数の波長の1つ又は複数の線の周りの1つ又は複数の帯域内にある、第2の赤外線放射112から得られる少なくとも1つの赤外線検出器112の検出信号(又は赤外線検出器の応答)(例えば、検出信号の振幅及び所定の波長)、
- 他方では、スペクトル線又はスペクトルシグネチャの1つ又は複数の特性値(検出信号の振幅及び所定の波長)、これらは、ユニット2のメモリに予め記録されており、かつ既知の識別を有する1つ以上のポリマー材料について予め決められている、(例えば組成)、
を比較するための比較手段をさらに含む。
【0066】
本文中、μmで与えられた値は、それぞれ赤外線の放射帯に含まれる波長であり、cm-1で与えられる値は波長の逆数として定義される波数であり、化学者によってより多く使わる。前者は、光学機器、オプトエレクトロニクスの製造業者の間でより多く使用されている。同様に、Rで表される単語「線(raie)」の使用は、赤外線の放射帯Bで放射されるμm単位の寸法の波長のスペクトル線に対応する。Pで表される単語「ピーク」又は興味関心のあるピークの使用は、高分子材料Mの興味関心のある成分に特徴的な、cm-1で寸法決めされた波数のスペクトルピークに対応するであろう。
【0067】
推定装置1は全てのポリマー(特に塗料、ネオプレン、電気ケーブルなど)に使用可能である。特に、6μmのスペクトル線は、カルボニルを介して明らかにされた全てのポリマーの酸化に対応する。実際、カルボニルは約1700cm-1で現れ、その発光帯B1に含まれる約6ミクロンに規定された第1の線R1の波長で以下に対応する関心のあるピークP1を形成する。しかし、例えば、ネオプレンの老化はまた、約1000cm-1から約1100cm-1の間に生じる他の原因(その負荷が低下する)によるものであり、そして関心のあるピークP2を形成する、約9.5μm、すなわち1050cm-1に規定された第2の線R2の波長によって観察される。第3の線R3は、約2900cm-1に位置する関心対象のピークP3に対応する、約3.5μmの所定の波長にある。3000cm-1を超えると、他の老化原因が観察され、それは全ての異なる老化方法又は特定のポリマーに適用可能である。例えば、エージングモードによって、関連する帯域を持つ規定の波長のスペクトル線がある。
【0068】
例えば、カルボニル濃度は、Beer-Lambertの法則によって決定することができる老化トレーサである。老化トレーサとして作用するこの物理的パラメータは、酸化的分解を直接担う。
【0069】
成分又はエポキシ被覆の種類が何であれ、それはポリマー構造であるので、初期エージングの発生は材料の構造のレベルで、分子レベルで起こる。実験は、図3による赤外反射率の統計曲線(縦座標の存在密度)をグラフで表す汎函数Boxplot法(boxplot fonctionnelle)による統計処理による赤外反射率スペクトルの分析が、ポリマーの劣化がある場合に興味のあるピークを明らかにしたことを示した。
【0070】
汎函数Boxplot法は箱ひげ図(la boite a moustache)から派生した統計的方法で、スカラの集合にではなく関数に適用できる。
【0071】
これらのピークは、汎函数Boxplot法によって得られた曲線の統計的分散が、特に第2のスペクトル線R2に対応する約1050cm-1のピークP2及び約1350cm-1のピークP4に向かって、広い赤外周波数の線と一致するように作られている。第2のスペクトル線R2及び第4のスペクトル線R4にそれぞれ対応する波長は、それぞれ約9.5μm及び7.2μmに規定されている。スペクトルのこれらの領域に配置された検出器102は老化を特徴付けることを可能にする。一実施形態によれば、関心のある各ピーク又は関心のある線は、老化トレーサの検出及びパラメータの推定のために関連情報が見つけられるべきスペクトル領域に対応する。この関連情報は、関数Boxplot法による統計分析によって見出すことができた。
【0072】
ポリマーの場合、分析は、中赤外帯域におけるIR波放射後の反射率のスペクトルに関する。この反射率から、統計分析の後に特異点が観察される。
【0073】
図3は、関数boxplotの例を示す。これは、横軸の波長の逆数(cm-1)に応じた赤外線放射111、112の反射率の縦座標での変化を表す。図3では、密度関数の四分位数が区別される。
1)中央値曲線を黒で、
2)ダークグレーでは、関数四分位数25%と75%との間のすべての曲線、すなわち中央データの50%。
3)薄い灰色では、5%から95%の間のすべての曲線、すなわちデータは外れ値(observations aberrantes)(英語ではoutliers)のない範囲内にある。
【0074】
この図3では、外れ値は表されていない。
【0075】
したがって、図3は、約10μmの所定の波長に対応する、1000cm-1における関心のある約5番目のピークP5における5番目のスペクトル線R5と、シリカのピーク及び加水分解シリカのピークに対応する約9.5μmの所定の波長に対応する約1050cm-1におけるほぼ第2の関心ピークP2における第2のスペクトル線R2と、約2.7μmの所定の波長に対応する、約3700cm-1における関心のある約1/6のピークP6における第6のスペクトル線R6と、を示している。
【0076】
上述の統計的方法は、上記の波長又は波数のいくつか又はすべてにおけるすべての反射率についての分布関数を決定することを可能にした。したがって、一実施形態によれば、2つの異なる赤外線源から生じる、異なる波長又は異なる波長の少なくとも2つのスペクトル線が使用される。これは、ポリマー材料の表面状態に起因し得る、測定値のばらつきを克服する。これにより、老化度及び/又はポリマー材料の識別をより効果的に検出することが可能になる。
【0077】
一実施形態によれば、赤外線源は、放射が生じるスペクトル帯Bによって特徴付けられ、このバンドは、一般に放射のエネルギーが最大であるスペクトル線Rの周りにある。
【0078】
1つ又は複数の赤外線源によって放射されるスペクトル帯域は、1つ又は複数のスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6のうちの1つ又は複数の周りで選択することができる。特に、少なくとも2つの異なるスペクトル線を選択することができる。
【0079】
一実施形態によれば、関心のあるスペクトル線は、これらのスペクトル帯域で放射し、且つ、強制的に消去されるべき非常に重大なノイズを発生させる原因となる材料の温度によって引き起こされる寄生信号を処理した後に監視される。
【0080】
したがって、上記の線のうちの1つ以上の周りの狭い波長のスペクトル帯域で赤外線ショットを実行すること、及び老化を特徴付けるためには、反射率の相対密度を測定することで十分である。
【0081】
投射ビームの好ましい優先領域、したがってその反射率の測定は、図3の例に示されているように、波数範囲[1000cm-1;4000cm-1]内であることが好ましい。これは関連する波長範囲[2.5μm;10μm]に対応する。この選択は、10μmから測定手段が高価になり、そして2.5μm未満では関連する観察がないという事実から生じる。
【0082】
一実施形態によれば、興味関心のあるピーク又は線があるのと同じ数のスペクトル線の所定の波長の周りで放射する赤外線源101がある。
【0083】
一実施形態によれば、赤外線源101は、ポリマー材料Mに向かって第1の決定された方向に第1の赤外線を放射するように向けられる。例えば、線源101用のダイオードの場合、ダイオードはレンズを含み得る。所与の線源101に対して、検出器102は理想的には、第2の測定された赤外線112の反射が、送信された第1の赤外線111の入射角と等しい反射角を有し、放出されたすべてのエネルギーが(又はほとんど)検出されるように配置される。そのため、反射率が導き出される鏡面反射を探している。
【0084】
当然ながら、ポリマー材料Mの反射はまた、デバイス1が配置されているポリマー材料の表面200によって画定される半空間内で拡散することもできる。
【0085】
一実施形態によれば、少なくとも1つの赤外線検出器102は、赤外線源101によって送信された第1の赤外線111に応答してポリマー材料Mの赤外線反射スペクトルを受け取ることができる。一実施形態によれば、少なくとも1つの赤外線検出器102は、第2の赤外線112又はスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6を1つ以上の所定の波長で受信するようになっている。一実施形態によれば、少なくとも1つの赤外線検出器102は、第2の赤外線112において、1つ又は複数のスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6の周りの1つ又は複数の所定の波長の帯域B1、B2、B3、B4、B5、B6を1つ以上の所定の波長で受信することができる。赤外線検出器102の受信波長帯域は、例えば、少なくとも所定の波長(単数又は複数)及び/又は所定の波長のスペクトル線R1、R2、R3、R4、R5、R6(単数又は複数)及び/又は赤外線源101によって放射される波長(単数又は複数)を含む。少なくとも1つの赤外線検出器102は、例えば受信波長において広帯域であり得る。一実施形態によれば、少なくとも1つの赤外線検出器102は、材料Mの鏡面反射及び/又は拡散反射の中に配置される。少なくとも1つの赤外線検出器102は、例えばフォトダイオード又は光導電型のものであり得る光検出器である。例えば、赤外線検出器102は、第2の赤外線112の関数として光電流を生成することができる。取得電子機器は、赤外線検出器102から来るアナログ信号を取得することを可能にする。
【0086】
一実施形態によれば、赤外線源101(単数又は複数)は、図4に示すように、例えば矩形(単数又は複数)であり得る1つ以上の時間パルスi、i+1、i+2の形態で第1の赤外線111をポリマー材料Mに送ることができる。一実施形態によれば、装置1は、パルス制御信号によって1つ又は複数の光源101を制御するためのモジュール12を含み、パルス制御信号は、例えば矩形であってもよく、及び/又は所定の繰り返し周波数fで周期的であってもよい。その結果、1つ又は複数の光源は、1つ又は複数の時間パルス、例えば矩形パルス及び/又は周期的パルスの形態で第1の赤外線111を放射する。
【0087】
赤外線源101によって放射された連続時間パルスi、i+1、i+2は、例えばそれぞれ規定された時間幅(赤外線源101の第1の状態ON)τ、τi+1及びτi+2をそれぞれ有することができ、そして、持続時間T及びTi+1によってそれぞれ時間的に間隔を空けた連続パルスi、i+1、i+2のそれぞれの始点A、Ai+1及びAi+2を有することができる。ON状態にあるパルスi、i+1、i+2の間では、線源101は、第1の状態ON(例えば、ハイ(haut)又は点灯)とは異なる第2の状態OFF(例えば、ロー(bas)又はOFF)にあり、この状態OFFは、継続時間T-τを有する連続パルスiとi+1との間である。
【0088】
一実施形態によれば、パルスi、i+1、i+2は所定の周期Tで繰り返すことができる。各持続時間Tは、周期T=T=Ti+1に等しく、繰り返し周波数f=1/Tに対応する。一実施形態によれば、パルスのそれぞれの時間的な波長τ、τi+1及びτi+2は、同じ時間幅τ=τ=τi+1=τi+2に等しくてもよい。
【0089】
例えば、τi+1≦T及びτi+2≦Tである。
【0090】
もちろん、それぞれの時間幅τ、τi+1及びτi+2は互いに異なっていてもよい。もちろん、期間TとTi+1は互いに異なっていてもよい。
【0091】
この特性により、このポリマー材料Mの熱放射の存在下でも、ポリマー材料Mから受け取った第2の赤外線112で規定された波長の線(単数又は複数)を検出することが可能になる。この熱放射は、測定されたサンプル(ポリマー材料M)の温度によるものであり、そして、このポリマー材料Mによって反射される第2の赤外線112のエネルギーよりも最大約1000倍大きいエネルギーで、所定の波長の1つ又は複数のスペクトル線の周りの狭いスペクトル帯域で連続的に放射される。したがって、このことは、この第2の放射線112の検出及び測定された反射率を妨げる。
【0092】
一実施形態によれば、装置1は、例えば時間パルス又は時間パルスi、i+1、i+2のバーストに従って、少なくとも1つの赤外線源101による第1の赤外線111の送信をトリガするための少なくとも1つの手動制御部材103を含む。一実施形態によると、手動制御部材103は、線源101による第1の赤外線111の送信をトリガしない第1の非作動位置に戻るように、プレストレス部材(例えば、バネなど)によってプレストレスを与えられてもよい。その第2の手動作動位置から、光源101による第1の赤外線111の送信をトリガするので、制御部材はこれらの第1及び第2の位置の一方と他方との間で移動可能である。したがって、ユーザは、線源101による第1の赤外線111の送信をトリガするために、制御部材103を第2の手動作動位置に押したままにしなければならない。手動制御部材103は、ボタン型でもトリガ型でもよい。
【0093】
一実施形態によれば、図4図5及び図6に示すように、赤外線検出器102(単数又は複数)は線源101(単数又は複数)と同期して制御される。装置1又はユニット2は、時間パルス(i、i+1、i+2)(単数又は複数)と同期して少なくとも1つの赤外線検出器102をオンにするための制御手段を備えることができる。
【0094】
一実施形態によれば、制御モジュール12は、光源101と赤外線検出器102の両方に接続されている。それにより、例えば図5において測定値を表す点によって表されるように、単数又は複数の赤外線検出器102は時間パルスi、i+1、i+2(時間幅τiの第1状態ON)の間にオンにされ、且つ、時間パルスi、i+1、i+2の間にオフにされる(第1のON状態とは異なる第2のOFF状態)。
【0095】
一実施形態によれば、制御モジュール12は、単数又は複数線源101と単数又は複数赤外線検出器102の両方に接続されている。それにより、例えば図5に測定値を表す点によって示されているように、赤外線パルス検出器102は、時間パルスi、i+1、i+2の間にオンにされ(時間幅τ1の第1の状態ではON)、且つ、図5に一例として示されるように、時間パルスi、i+1、i+2の間でもスイッチオンされる(第1のON状態とは異なる第2のOFF状態)。一実施形態によれば、赤外線検出器102は、各時間パルスi、i+1、i+2の間に第2の受信赤外線112(図5の点で表される)のいくつかの測定を行う。
【0096】
図5に示すように、一実施形態によれば、装置1は、パルスiの第1のオン状態のそれぞれの時間幅τiに含まれるか又は等しい第1の所定の時間幅γi1の間に第2の赤外線112のいくつかの第1の測定300を行うための制御手段21を備える(だからγi1≦τiが成り立つ)。所定の時間幅γi1中に行われた第1の測定値300を表す第1の値の推定値
【数1】
を計算する。
【0097】
一実施形態によれば、第2の規定時間幅γi2の間に第2の測定値301の第2の代表値
【数3】
の推定値を計算するため、装置1は、パルスiと次のパルスi+1との間の第2のオフ状態のそれぞれの時間幅Ti―τiに含まれるか等しい第2の所定の時間幅γi2の間に、パルスiと前のパルスi-1との間の第2のオフ状態のそれぞれの時間幅Ti-1-τi-1の間に、第2の赤外線112の複数の第2の測定301を行うための、又は制御手段21を含む(つまり、γi2≦Ti-τi又はγi2≦Ti-1-τi-1となる)。
【0098】
一実施形態によれば、パラメータは第1の測定300を代表する
【数5】
と第2の測定301を代表する
【数6】
の間で計算された差から計算される。これにより、OFF状態に対するON状態の測定値300のゼロオフセットを補償することが可能になる。
【0099】
一実施形態によれば、第1の測定300を代表する
【数9】
は、この第1の測定300を代表する
【数10】
から所定の偏差未満の第1の測定値300の選択から計算される。一実施形態によれば、第2の測定301を代表する
【数11】
は、この第2の測定301を代表する
【数12】
に関して規定された差よりも小さい第2の測定値301の選択から計算される。したがって、測定値300と測定値301との間で、外れ値(les points aberrants)(又は図5において十字で表される「外れ値(outliers)」)が排除される。一実施形態によれば、パルスiの間に取得された図5の複数の測定値は、統計的処理がこれらの測定値に適用されるので、電子ノイズを低減するのに役立つ。一実施形態によれば、第1の測定300を代表する
【数13】
は、例えば、第1の測定値300の中央値、第1の測定値300の平均のロバスト推定値、又は別の中心推定値(非ガウス値)とすることができる。一実施形態によれば、第1の測定300を代表する
【数14】
は、例えば、第2の測定値301の中央値、第2の測定値301の平均のロバスト推定値、又は他の中心推定値(非ガウス値)であり得る。一実施形態によれば、次いで、第1の測定300を代表する
【数16】
と第2の測定301を代表する
【数17】
との間で計算された差は、ポリマーサンプルMの熱雑音を克服するために(フィルタ11による)周波数処理を受ける。
【0100】
以下、図2及び図6を参照して、決定するためのユニット2の実施形態について説明する。
【0101】
一実施形態によれば、装置1は、赤外線検出器102から受け取った第2の赤外線112を、1つ又は複数の赤外線源101及び/又は単数又は複数のスペクトル線周辺の帯域によって送信された所定の波長のスペクトル又はスペクトル線に対するポリマー材料Mの応答を抽出するための抽出手段を備える。これらの抽出手段は、例えば、以下に記載される要素のうちの1つ以上を含む。
【0102】
一実施形態によれば、装置1は、第2の赤外線112から赤外線検出器102によって提供された信号中の直流成分(une composante continue)を抑制又は減衰するための少なくとも1つの回路及び/又はフィルタ11を含む。絶対零度以上の温度を持つすべての物体は、温度に応じて、波長とその絶対温度の関数として黒体の単色放射率を定義するプランクの法則に従う放射線を放出する。周囲温度では、放射範囲は長波長赤外線の範囲(l'etendue des longues ondes rouges)を下回り、人間の目には見えない。物体の放射率は放射された赤外線エネルギーの量を示す。装置1によって測定された物体は、この熱放射を1~20μmの範囲の波長範囲で放射する傾向がある。結果として、赤外線検出器102によって受信される第2の赤外線112は、DC成分とAC成分(une composante alternative)とからなる(単数又は複数の所定のスペクトル線を有する第1の赤外線111に応答する第2の赤外線112)。
【0103】
一実施形態によれば、回路及び/又はフィルタ11は、装置1の少なくとも1つの回路及び/又は少なくとも1つのハイパスフィルタ、及び/又は装置1の少なくとも1つのバンドパスフィルタである。これにより、有用信号のスペクトルのみを通過させ、スペクトルのDC成分(la composante continue)に対応する熱放射を除去することが可能になる。存在する第2の赤外線112のフーリエ級数分解は、信号の平均値を表すDC成分(une composante continue)と、振幅がsin(x)/xの周波数と共に変化する一連の高調波とからなるスペクトルを与える。例えば、ハイパスフィルタは一次であり得る。1/(2T)のカットオフ周波数を有する一次ハイパスフィルタ(Tは時間パルスの繰り返し周期である)は、DC成分をかなり減衰させることを可能にする。一方、復元された信号のDC成分はフィルタの減衰量に依存する。矩形波信号の振幅はハイパルスとローパルスの差によって決定できるので、この問題は我々の場合には重要ではない。図示されていない増幅器をフィルタ11の下流に設けることができる。放射線111によって発生した矩形信号を線源からフィルタリングした信号に復元するため、増幅器11及びハイパスフィルタ11を設けてもよい。
【0104】
提案されている取得アーキテクチャを検証するためにテストベンチが設定されている。非限定的な例として構成された単一チャネルプロトタイプでは、発光ダイオードから形成された光源102は、繰り返し周波数f 4kHz及びデューティサイクル20%の矩形パルス制御信号によって制御された。ベンチは、赤外線検出器、エレクトロルミネセントダイオード、トランスインピーダンスアンプで構成されている。目的は、光検出器(赤外線検出器)において、温度によって発生した信号よりも十分に小さい矩形信号を発生することであった。我々は長方形の信号を発するLEDを使用した。検出器からの光電流はトランスインピーダンスアンプに送られる。DC成分の測定は、熱放射によって生成された信号に対応する40A程度の光電流を与える。その後、信号をフィルタリングし(ハイパス)、LEDによって生成されたAC成分を再構築するために増幅された。12dBの減衰、0.3Hzのカットオフ周波数、及び1pA/Vのゲインにより、連続的なバックグラウンドよりも1000倍以上小さい信号(繰り返し周波数f 4kHz、周期比20%の矩形パルス)を復元することが可能になる。この測定は、シングルチャンネルプロトタイプに使用されるアーキテクチャを検証する。
【0105】
したがって、一実施形態によれば、本発明による装置は、熱放射によって引き起こされるノイズ処理を考慮に入れる。一実施形態によれば、この解決策は、所定の振幅及び波長及び所定の繰り返し周波数f Rの矩形信号に従ってパルス化されたショットを送信することからなり、その反射は検出器102によって測定され、フーリエ展開によって時間的に処理され、それは熱放射のノイズを除去する効果を有する。
【0106】
一実施形態によれば、装置1は、赤外線検出器102を冷却するための、例えばペルチェ型の冷却モジュール13及び/又は1つ又は複数の光源101を冷却するための、例えばペルティエ型の冷却モジュール13‘を含む。これにより、線源101及び検出器102を安定した温度に冷却することができる。特にペルチェ冷却モジュールは小型であり、装置1の小型化を図ることができる。
【0107】
ペルチェ型冷却モジュール13、13‘は、熱電素子のスタックで構成されいる。熱電素子は、2つの半導体部品で構成されている。ペルチェ型冷却モジュール13、13’の端子に直流が印加されると、吸熱が起こる。吸収された熱は次に部品の高温部分に伝達され、これはモジュール13、13‘の一方の側から他方の側へ熱を伝達する効果を有する。
【0108】
一実施形態によれば、装置1は、モジュールに接続されたサーモスタットと、自動温度安定化又は温度制御(比例、積分器及び差動型の調整器に基づく)のための電子ユニット9とを含む。これは、少なくとも1つの赤外線検出器(102)及び/又は少なくとも1つの赤外線源(101)をサーモスタットによって規定された温度に維持するために、例えばペルチェ型の冷却モジュール13、13‘に接続される。例えば、温度コントローラ9は、典型的には-30℃の所与の設定値付近でLED光源101及び検出器102の温度を調整する。
【0109】
ユニット9はアナログでもデジタルでもよく、例えばマイクロコントローラ、プログラマブルロジックフィールド(FPGAフィールドプログラマブルゲートアレイ)、又は専用集積回路(特定用途向け集積回路-ASIC)などのシステムオンチップに埋め込むことができる(システムオンチップSOC)。
【0110】
一実施形態によれば、装置1は、回路の下流に増幅器10及び/又はフィルタ処理された信号を増幅するためのフィルタ11を備える。この増幅器10はトランスインピーダンス増幅器であり得る。
【0111】
一実施形態によれば、装置1は、増幅器10の下流にアナログ-デジタル変換器5を含む。アナログ-デジタル変換器5を制御及び制御するための電子システムが提供される。アナログ-デジタル変換器5は、所定の各波長におけるポリマー材料Mの反射率に対応するデジタル信号を生成することを可能にする。
【0112】
一実施形態によれば、装置1は、赤外線検出器の検出信号に規定されている1つ又は複数の波長線の重要性から少なくともパラメータを決定するための、第2の赤外線112から得られた、又は第2の赤外線放射112で規定された波長線の周りの帯域における赤外線検出器の応答の重要性から得られたデータを処理及び格納するための手段107を含む。上記の例では、データ処理及び記憶手段107は、それぞれ1つ又は複数のそれぞれの線及び波長に従って、この振幅にそれぞれ対応する、1つ又は複数のデジタル信号からパラメータを決定する。一実施形態によれば、データ処理及び記憶手段107は、回路及び/又はフィルタ11の代わりに又はそれらに加えて、フーリエ変換処理モジュールを含むことができる。さらに、これらのデータ処理及び記憶手段107は、上述のように測定を実行し、上述のように測定を選択するための制御手段21を備えることができる。
【0113】
一実施形態によれば、装置1はコンピュータプログラムをダウンロードするための手段109を含み、コンピュータプログラムは前述の決定のためのオンボードアルゴリズムを実行するソフトウェアプログラムを含むことができる。手段107、109は、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどのこの目的のための電子充電システムを含むことができる。
【0114】
一実施形態によれば、装置1は、第1の赤外線111を受光し、第2の赤外線112を反射するために、赤外線源101及び赤外線検出器102をポリマー材料Mの領域Sの前方及び/又は近傍に配置するためのガード110を含む。一実施形態によれば、ガード110がポリマー材料Mの表面200に対して位置決めされたときに、ガード110は、外側ブロック1011がポリマー材料Mの表面200からある距離にあるように配置される。例えば、外側ブロック1011は外側遠位面1013を有し、これは両方ともポリマー材料Mの表面200に向けられており、ガード110の外側遠位面113に対して凹んでおり、これもまたポリマー材料Mの表面200に面している。例えば、試験されるポリマー材料Mの表面200への第1の赤外線111の入射角は、10度以上又は20度以上60度又は70度以下であり得、この表面200に対するガード110及び/又は外側ブロック1011の位置決めによって提供され得る。例えば、試験されるべきポリマー材料Mの表面200上への第1の赤外線111の入射角は、10度以上又は20度以上60度又は70度以下であり得、この表面200に対するガード110及び/又は外側ブロック1011の位置決めによって提供され得る。例えば、試験されるポリマー材料Mの表面200上の第2の赤外線112の反射角は、10度以上又は20度以上60度又は70度以下であってもよく、この表面200に対するガード110及び/又は外側ブロック1011の位置決めによって提供されてもよい。赤外線源101と試験されるポリマー材料Mの表面200との間の距離は、1mm以上10cm以下であってもよく、この表面200に対するガード110の位置決めによって提供されてもよい。例えば、赤外線検出器102と試験されるポリマー材料Mの表面200との間の距離は、1mm以上10cm以下であってもよく、この表面200に対するガード110の位置決めによって提供されてもよい。
【0115】
一実施形態によれば、装置1は、照準モジュール15に接続されたハンドル14を有するピストル100の形態であり、ハンドル15から離れた前端16に線源101及び検出器102(及び/又は線源101及び検出器102の前及び横にある適用面1010及びガード110)を含む。制御部材103は、例えば、ハンドル14を照準モジュール15に接続するピストル100の領域17の近くに配置されている。このハンドルによって、装置1を管内に又は管の内面に対して導入することも可能になる。もちろん、装置1は、ペンの形状などの他の任意の形状を有することができる。
【0116】
一実施形態によれば、装置1は、視覚的及び/又は音声的であり得る情報を示すための手段104を含み、且つ、例えば老化トレーサの存在又は老化トレーサの不在を示す情報などのパラメータを示す情報、及び/又は老化トレーサの含有量を示す情報及び/又はポリマー材料Mの識別を示す情報であり得る。表示手段104は、例えばディスプレイ104とすることができ、又はそれを含むことができる。装置1の他の動作特性は、表示手段104によって示されてもよい。
【0117】
一実施形態によれば、装置1は、制御部材103以外のものであってもよい制御インターフェース105を含んでもよく、例えば、光源101と検出器102から、例えばゾーン17から離れた後面18上の、例えば制御キーボード105とすることができる。
【0118】
一実施形態によれば、装置1は、少なくとも電源101、検出器102及びユニット2を含む前述の要素に電力を供給するための自律電力供給手段106を含む。これらの自律電力供給手段106は、例えば、充電式であるか否か、取り外し可能であるか否かを問わず、電池又は蓄電池である。一実施形態によれば、装置1は携帯可能である。
【0119】
一実施形態によれば、装置1は、パラメータを示す情報を外部に送信するための通信手段108を含み、老化トレーサーの存在を示す情報又は老化トレーサーの不在を示す情報、及び/又は老化トレーサーの含有量を示す情報及び/又はポリマー材料Mの識別を示す情報であり得る。通信手段108は、例えば移動端末(携帯電話又は他のもの)、サーバ又は他のものなどの遠隔ユニット又は遠隔プラットフォームへのアップリンク及び/又はダウンリンクであり得る。
【0120】
一実施形態によれば、装置1のユニット2は、上述の様々な要素を制御するための1つ又は複数のマイクロコントローラ、FPGA、ASIC19を含む。
【0121】
例えば、マイクロコントローラ19は以下のタイミングに進む。
A-トリガ103を押すことによる測定命令、
B-線源101及び検出器102の温度設定点制御、
C-線源101にON/OFFパルスを送信するコマンド、
D-変換器5からの測定値の受信制御及び記憶、
E-周囲温度によるノイズを抑制するための周波数フーリエ処理制御→Cに戻るための線源101(ステップC、D、Eなどを実行するため)、
F-全ての線源101からの信号が受信されると、測定値(4つの線源について4つの測定値の例)が処理モジュール107に送られて測定値が関連データに変換され、老化又はポリマー材料が特徴付けられる。
【0122】
例えば、一連の測定を実行するために、ガード110を適用して試験される材料Mの表面200に対してピストル100を位置決めしかつ楔止めすることによって、装置1又はピストル100をポリマー材料Mの壁に配置する。次に、固定されたプロトコルに従って制御部材103又はトリガ103を押す。したがって、いくつかのショットを練習し、手段107によってデータを処理して記憶することが可能であり、前記測定値は、測定値を確認するかしないかを示す視覚的又は可聴的インジケータと共に制御スクリーン104に表示されている。
【0123】
装置1を備えたオペレータは、異なる位置で材料のパラメータの測定を容易にそして短時間で実行することができる。例えば、彼は原子力発電所の原子炉建屋内で制御活動(campagne)を実施するかもしれない。様々なポリマー材料Mを同じ装置1で制御することができる。測定結果及び/又は老化又は識別の診断は、その場で(in-situ)リアルタイムで装置1に表示することができる。測定装置は、ポリマー材料の反射率又は吸光度特性のスペクトル測定を不要にし、且つ、分光計、特にFTIR又はフィルタータイプの分光計の使用を省く。測定装置は、ある波長から別の波長に切り換えるために光学フィルタ及び機械的システムを必要としない。これにより、軽量で導入が容易な、例えばパイプ内部の測定を行うための携帯型装置が可能になる。測定装置は部品の機械的移動を不要にし、隔離室を必要としない。
図1-a】
図1-b】
図2
図3
図4
図5
図6