(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】射出成形金型及び中空物品の射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/44 20060101AFI20220719BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220719BHJP
B29C 45/80 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C45/26
B29C45/80
(21)【出願番号】P 2019527681
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2018024958
(87)【国際公開番号】W WO2019009219
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2017131435
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 暢之
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518735(JP,A)
【文献】実公平05-032258(JP,Y2)
【文献】特開2017-100351(JP,A)
【文献】特開2012-206466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
B65D 1/00 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック部の内面に内ネジ部が形成された中空物品を射出成形するための射出成形金型であって、
前記ネック部の外面を形成するネック型と、
前記中空物品の胴部の外面を形成する射出キャビティ型と、
前記中空物品の内面を形成する射出コア型と、を有し、
前記射出コア型は、
前記内ネジ部を含む前記ネック部の内面を形成し、前記内ネジ部に沿って回転しながらその回転軸に沿って移動可能な外方コア型と、
前記ネック部よりも小径である前記中空物品の胴部の内面を形成し、前記外方コア型内を前記回転軸に沿って直線移動可能な内方コア型と、を備え
、
前記内方コア型が、前記外方コア型内を摺動可能に設けられ、前記内方コア型と前記外方コア型との摺動面が、前記射出キャビティ型の内面よりも外側に位置している
ことを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
請求項
1に記載の射出成形金型であって、
前記中空物品のネック部の底面から開口側に向かって突出する突起部を射出成形により形成するための空間部が、前記内方コア型と前記外方コア型との間に形成されている
ことを特徴とする射出成形金型。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の射出成形金型であって、
前記外方コア型は、前記ネック型の外側まで延設されて支持部材によって支持されており、前記外方コア型の先端部には前記支持部材に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成されており、該雄ねじ部のピッチが前記内ネジ部と同一である
ことを特徴とする射出成形金型。
【請求項4】
ネック部の内面に内ネジ部が形成された中空物品を射出成形するための射出成形金型であって、
前記ネック部の外面を形成するネック型と、
前記中空物品の胴部の外面を形成する射出キャビティ型と、
前記中空物品の内面を形成する射出コア型と、を有し、
前記射出コア型は、
前記内ネジ部を含む前記ネック部の内面を形成し、前記内ネジ部に沿って回転しながらその回転軸に沿って移動可能な外方コア型と、
前記ネック部よりも小径である前記中空物品の胴部の内面を形成し、前記外方コア型内を前記回転軸に沿って直線移動可能な内方コア型と、を備える射出成形金型を用いた中空物品の射出成形方法であって、
前記射出キャビティ型と前記射出コア型との間の射出空間に樹脂材料を充填して前記中空物品を射出成形した後、前記ネック型で前記ネック部を保持した状態で前記射出コア型及び前記射出キャビティ型から前記中空物品を離型させる離型工程を備え、
該離型工程では、
前記内方コア型を直線移動させて前記中空物品を前記内方コア型から離型させた後、前記外方コア型を前記内ネジ部に沿って回転させながらその回転軸に沿って直線移動させて前記中空物品を前記外方コア型から離型させる
ことを特徴とする中空物品の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネック部の内面(内側)にネジ部(内ネジ部)を備える中空物品を射出成形するための射出成形金型及び中空物品の射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、飲料等を収容する容器の多くは、ネック部の外面(外側)にネジ部(外ネジ部)を有し、この外ネジ部を有するネック部の外側に装着されるキャップによって塞がれるようになっている。また容器としては、外ネジ部を有するものだけでなく、ネック部の内面に内ネジ部を有しネック部内に装着されるキャップによって塞がれるようになっているものもある。
【0003】
また、容器だけでなく、内部に空間を有する各種中空物品には、ネック部の内面に内ネジ部が形成されているものがある。この内ネジ部は、いわゆるアンダーカットとなるため、内ネジ部を備える中空物品を射出成形する際、内ネジ部を変形させずに中空物品を射出コア型から離型させるのが難しいという問題がある。
【0004】
近年は、内ネジ部(アンダーカット)を変形させないための種々の方法が考案されている。具体的には、いわゆるコラプシブル・コア型を利用するものや、単一構造の射出コア型を回転させて内ネジ部を変形させないようにプリフォーム(中空物品)のネック部から射出コア型を離型させるようにしたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
このような方法を採用することで、内ネジ部を変形させずに中空物品を射出コア型から離型させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭57-203512号公報
【文献】特許第5161358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載のコラプシブル・コア型は、高い加工精度を要する複数のパーツより構成される金型であるため、高コストであるという問題がある。またコラプシブル・コア型の径方向の進退移動は弾性部材により作動させるものであるため、耐久性が低いという問題もある。
【0008】
一方、特許文献2に記載のような単一構造のコア型を回転させる方法は、完全に冷却固化させられた中空物品(プリフォーム)であれば、好適に実施できるかもしれない。しかしながら、中空物品を射出成形する場合、射出成形後にブロー成形が実施されるため、十分に固化してない状態(軟化状態)で射出コア型を離型させる場合があり、このような状態で射出コア型を離型させると中空物品(特に、内ネジ部)が変形してしまう虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内ネジ部を有する中空物品を射出成形する際、中空物品を射出コア型から良好に離型することができる射出成形金型及び中空物品の射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、ネック部の内面に内ネジ部が形成された中空物品を射出成形するための射出成形金型であって、前記ネック部の外面を形成するネック型と、前記中空物品の胴部の外面を形成する射出キャビティ型と、前記中空物品の内面を形成する射出コア型と、を有し、前記射出コア型は、前記内ネジ部を含む前記ネック部の内面を形成し、前記内ネジ部に沿って回転しながらその回転軸に沿って移動可能な外方コア型と、前記ネック部よりも小径である前記中空物品の胴部の内面を形成し、前記外方コア型内を前記回転軸に沿って直線移動可能な内方コア型と、を備えることを特徴とする射出成形金型にある。
【0011】
ここで、前記内方コア型が、前記外方コア型内を摺動可能に設けられ、前記内方コア型と前記外方コア型との摺動面が、前記射出キャビティ型の内面よりも外側に位置していることが好ましい。
【0012】
また前記中空物品のネック部の底面から開口側に向かって突出する突起部を射出成形により形成するための空間部が、前記内方コア型と前記外方コア型との間に形成されていることが好ましい。
【0013】
さらに前記外方コア型は、前記ネック型の外側まで延設されて支持部材によって支持されており、前記外方コア型の先端部には前記支持部材に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成されており、該雄ねじ部のピッチが前記内ネジ部と同一であることが好ましい。
【0014】
また本発明の他の態様は、上記射出成形金型を用いた中空物品の射出成形方法であって、前記射出キャビティ型と前記射出コア型との間の射出空間に樹脂材料を充填して前記中空物品を射出成形した後、前記ネック型で前記ネック部を保持した状態で前記射出コア型及び前記射出キャビティ型から前記中空物品を離型させる離型工程を備え、該離型工程では、前記内方コア型を直線移動させて前記中空物品を前記内方コア型から離型させた後、前記外方コア型を前記内ネジ部に沿って回転させながらその回転軸に沿って直線移動させて前記中空物品を前記外方コア型から離型させることを特徴とする中空物品の射出成形方法にある。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明によれば、内ネジ部を有する中空物品(例えば、プリフォーム)を射出成形する際に、中空物品を射出コア型から良好に離型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】最終製品である容器の一例を示す上面図及び断面図である。
【
図2】中空物品であるプリフォームの一例を示す側面図である。
【
図3】射出ブロー成形装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る射出成形金型装置を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る射出成形金型の一例を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る射出成形金型の動作を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る射出成形金型の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明は、内ネジ部を備える中空物品を射出成形するための射出成形金型、及び中空物品の射出成形方法にある。ここで中空物品とは、内部に空間を有する物品をいい、例えば、飲料等を収容する容器の他、容器を塞ぐキャップや、容器をブロー成形するためのプリフォーム等を含むものとする。そして本実施形態における中空物品とは、容器をブロー成形するためのプリフォームである。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る容器の一例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図2は、容器をブロー成形するための中空物品であるプリフォームの側面図であり、その一部を断面としている。
【0020】
図1に示す容器10は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂材料で形成され、液体等を収容可能に中空に形成されている。この容器10は、一端(上端)側が開口する筒状のネック部11と、ネック部11から連続する筒状の胴部12と、胴部12から連続する底部13と、で構成されている。また胴部12は、ネック部11の底面11aに接続されてネック部11よりも直径が小さい小径部14と、小径部14よりも直径が大きい胴部本体15と、で構成されている。本実施形態では、胴部本体15はネック部11よりも大きい直径で形成されている。なお胴部本体15の大きさは特に限定されず、ネック部11よりも小さい直径で形成されていてもよい。
【0021】
またネック部11の内周面11bには、雌ねじとなる内ネジ部16が形成されている。すなわちネック部11の内周面11bには、内ネジ部16を構成するねじ山(突部)17が、ネック部11の内側に突出して螺旋状に設けられている。このネック部11には、図示は省略するが、雄ねじである外ネジ部を備える装着部材が装着されることで、容器10が塞がれるようになっている。
【0022】
またネック部11の底面11aには、突起部18が形成されている。突起部18は、ネック部11の底面11aから開口側(図中上方)に向かって突出し、ネック部11の周方向に亘って連続して設けられている。
【0023】
突起部18は、装着部材(図示なし)がネック部11に装着された際、この装着部材に当接し、容器10との隙間を塞ぐシール材として機能する。また突起部18は、ネック部11の底面11aから、直線状ではなく曲線状(例えば、波形)に突出して設けられている。突起部18の形状は、特に限定されるものではなく、シール材としての機能を発揮できる形状であればよい。
【0024】
このような形状の容器10は、射出成形により形成された中空物品であるプリフォームの胴部をブロー成形することによって製造される。
図2に示すように、容器10をブロー成形するためのプリフォーム20は、一端(上端)側が開口するネック部21と、ネック部21に連続する胴部22と、胴部22に連続する底部23とで構成されている。
【0025】
なおプリフォーム20のネック部21は、最終製品である容器10のネック部11と共通する部分であり、同一形状を有する。つまり容器10のネック部11は、実質的に射出成形によって形成されている。例えば、本実施形態では、プリフォーム20のネック部21(11)の底面21a(11a)には、突起部24(18)が形成され、内周面21b(11b)には、内ネジ部25(16)が形成されている。
【0026】
次に、容器10を成形するための射出ブロー成形装置について説明する。
図3は、本実施形態に射出ブロー成形装置の概略構成の一例を示すブロック図であり、
図4は、射出成形金型装置の概略構成を示す断面図であり、
図5は、射出成形金型の概略構成を示す断面図である。
【0027】
図3に示すように、本実施形態に係る射出ブロー成形装置30は、いわゆる1ステージ方式の射出ブロー成形装置であり、例えば、射出成形部50と、温調部80と、ブロー成形部85と、取出部90と、を備えている。射出成形部50は、
図4及び
図5に示すように、射出装置100が連結される射出成形金型51を含む射出成形金型装置52を備え、上述した所定形状のプリフォーム20を射出成形により形成する。
【0028】
射出成形金型51は、ネック型53と、射出キャビティ型54と、射出コア型55とを備えている。これらネック型53と、射出キャビティ型54と、射出コア型55とで射出空間56が形成されている。この射出空間56内に、射出キャビティ型54の底部中央に設けられたゲート57を介して原材料である樹脂材料を充填することで、所定形状のプリフォーム20が形成される。なお樹脂材料を射出するための構成は既存の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0029】
ネック型53は、一対の割型で構成され、プリフォーム20のネック部21の外面を規定する。また射出キャビティ型54は、プリフォーム20の胴部22及び底部23の外面を規定する。ネック型53は、射出成形金型装置52を構成する第1の昇降板58に固定されている。この第1の昇降板58は、図示は省略するが、ネック型53と共に昇降可能に構成されている。
【0030】
射出コア型55は、プリフォーム20の内面を規定する。本発明に係る射出コア型55は、外方コア型59と、内方コア型60と、を備えている。詳しくは後述するが、このように射出コア型55が外方コア型59と内方コア型60とを備えていることで、プリフォーム20を射出成形する際にプリフォーム20を射出コア型55から良好に離型させることができる。
【0031】
外方コア型59は、ネック型53の内側に挿入されて、内ネジ部25を含むプリフォーム20のネック部21の内面を形成する。より具体的には、外方コア型59は、ネック部21の内ネジ部25が設けられた内周面21bと共に、底面21aの一部(外周部)を形成する(
図2参照)。
【0032】
内方コア型60は、ネック部21よりも小径である胴部22の内面を形成し、外方コア型59内を、外方コア型59の回転軸方向で直線移動可能に設けられている。詳しくは、内方コア型60は、先端(下端)側のコア部61と、コア部61から連続する摺動部62と、を備えている。コア部61は、射出キャビティ型54内に挿入され、プリフォーム20の胴部22の内面を形成する。摺動部62は、コア部61よりも大きい直径を有し、外方コア型59内に摺動可能に保持されている。
【0033】
これら外方コア型59と内方コア型60との摺動面63は、射出キャビティ型54の内面54aよりも外側(プリフォーム20の胴部22の内面よりも外側)に位置している。したがって内方コア型60は、プリフォーム20のネック部21よりも小径である胴部22の内面と共に、ネック部21の底面21aの一部(中央部)を形成する。
【0034】
すなわち内方コア型60のコア部61によってプリフォーム20の胴部22の内面が形成され、外方コア型59と、内方コア型60の摺動部62の先端面62aと、によって、ネック部21の内面(底面21a及び内周面21b)が形成される。
【0035】
ここで、プリフォーム20の胴部22は、その後の工程でブロー成形により延伸されるため、ネック部21に比べて肉厚に形成されている。したがって、射出成形後、プリフォーム20の胴部22は、ネック部21よりも軟化した状態になっている。このため、外方コア型59と内方コア型60との摺動面63がプリフォーム20の胴部22よりも外側となるようにしている。これによりプリフォーム20を射出コア型55から、より良好に離型することができる。
【0036】
さらに本実施形態では、外方コア型59と内方コア型60との摺動面63は、突起部24に対応する部分に設けられている。すなわち射出空間56の一部を構成し、上述した突起部24を形成するための空間部64が、外方コア型59と内方コア型60との間に形成されている。これにより、プリフォーム20を射出コア型55から良好に離型させることができ、且つその際の突起部24の変形を抑制することができる。
【0037】
ここで、外方コア型59は、ネック部21の内ネジ部25に沿って回転しながら、その回転軸に沿って直線移動可能に設けられている。すなわち外方コア型59は、ネック部21の内ネジ部25に沿って回転しながら昇降可能に設けられている。
【0038】
具体的には、外方コア型59は、ネック型53の外側(上方)まで延設されており、その先端部(上端部)付近は、射出成形金型装置52を構成する支持板(支持部材)65によって支持されている。より詳細には、支持板65には貫通孔66が形成されており、外方コア型59の先端部は、この貫通孔66に挿通されて回転可能に支持されている。
【0039】
貫通孔66に挿通された外方コア型59の端部(上端部)には、雄ねじ部67が形成されている。一方、支持板65の貫通孔66の内面の一部、本実施形態では、貫通孔66の上部には、雄ねじ部67が螺合する雌ねじ部68が設けられている。この雄ねじ部67及び雌ねじ部68は、プリフォーム20の内ネジ部25と同一ピッチで形成されている。
【0040】
なお図示は省略するが、外方コア型59は、複数のギヤ部材やベルト部材等の伝達部材を介してモータ等の駆動部に接続され、この駆動部を動力源として回転するように構成されている。勿論、外方コア型59を回転させるための構成は、特に限定されるものではない。
【0041】
また内方コア型60の先端部(上端部)は、射出成形金型装置52を構成する第2の昇降板69に固定されている。第2の昇降板69には、アクチュエータ装置70が固定されており、アクチュエータ装置70のロッド部材71は、第2の昇降板69に形成された挿通孔72に挿通されてその先端部(下端部)が支持板65に固定されている。
【0042】
このような射出成形金型装置52の構成では、アクチュエータ装置70のロッド部材71が(下方に)前進することで、アクチュエータ装置70と共に第2の昇降板69が上昇する。そして第2の昇降板69の上昇に伴って内方コア型60が上昇する。一方、内方コア型60が上昇した状態から、ロッド部材71が(上方に)後退することで第2の昇降板69が下降し、第2の昇降板69の下降に伴って内方コア型60が下降する。
【0043】
次に、
図6及び
図7を参照して、中空物品であるプリフォームの射出成形方法、具体的には、プリフォームの離型時における射出成形金型の動作について説明する。
【0044】
まず、
図6(a)に示すように、ネック型53と、射出キャビティ型54と、射出コア型55とを型締めした状態で、射出空間56内にゲート57を介して樹脂材料を充填することで、所定形状のプリフォーム20を形成する(射出成形工程)。このとき、第2の昇降板69は支持板65に当接しており、内方コア型60の上昇が規制されている。
【0045】
プリフォーム20が所定温度まで冷却された段階で、射出コア型55をプリフォーム20から引き離す。すなわちプリフォーム20を射出コア型55から離型させる。具体的には、
図6(b)に示すように、まず第2の昇降板69を上昇させて、内方コア型60をネック型53の外側(図中上方)に移動させる。すなわちアクチュエータ装置70を作動させてロッド部材71を前進させることにより、第2の昇降板69と共に内方コア型60を上昇させる。
【0046】
これにより、外方コア型59でプリフォーム20の外周部を保持した状態で、内方コア型60をプリフォーム20から引き離すことができる。上述したようにプリフォーム20のネック部21は、胴部22に比べて肉厚が薄く冷却され易い(硬化し易い)。したがって、外方コア型59で硬化状態にあるネック部21の外周部を保持した状態で内方コア型60を上昇移動させることで、内方コア型60をプリフォーム20の胴部22(高い保有熱を備え軟化状態にある)から良好に引き離すことができる。
【0047】
また第2の昇降板69を上昇させることで、第2の昇降板69と支持板65との間に隙間ができることで、外方コア型59が上昇可能な状態となる。
【0048】
この状態で、
図7(a)に示すように、外方コア型59を回転させながらネック型53の外側に向かって移動させる。具体的には、外方コア型59の先端部(上端部)に形成された雄ねじ部67を支持板65に設けられた雌ねじ部68に螺合させて回転させる。
【0049】
これにより、外方コア型59がネック部21の内ネジ部25に沿って回転しながらプリフォーム20の外側に向かって移動する(上昇させられる)。したがって、内ネジ部25の変形を抑制しつつプリフォーム20を外方コア型59から良好に離型することができる。すなわち本発明に係る射出成形金型51によれば、アンダーカットとなる内ネジ部25が備えるプリフォーム20を成形する際に、内ネジ部25の変形を抑えつつプリフォーム20を射出コア型55から良好に離型させることができる。
【0050】
次いで、
図7(b)に示すように、第1の昇降板58を上昇させることでネック型53を上昇させ、プリフォーム20の胴部22を射出キャビティ型54から離型させる。この段階では、プリフォーム20の胴部22の表面(スキン層)は十分に硬化しているため、ネック型53を上昇させることでプリフォーム20の胴部22を射出キャビティ型54から良好に離型することができる。
【0051】
上述のように、硬化状態の内ネジ部25と軟化状態の胴部22とを備えたプリフォーム20に対して射出コア型55を二段階で離型させる方法、つまり硬化部位と軟化部位とに其々対応させた二つのコア型(外方コア型59及び内方コア型60)を独立して作動させてプリフォーム20を離型させる方法、を用いることにより、プリフォーム20(特に胴部22)の変形を抑止して良好に離型させることが可能になる。
【0052】
なお、ネック部21に突起部24を設ける場合、内方コア型60を突起部24とは干渉しない位置、つまり突起部24よりも上方の位置まで上昇させた後、外方コア型59による離型動作を行う。
【0053】
突起部24は内方コア型60の離型前に十分に硬化させられ、弾性変形可能な状態になっている。したがって、外方コア型59による離型動作を行う際、内方コア型60を突起部24とは干渉しない位置まで上昇させておくことで、突起部24は外方コア型59の回転を伴った上昇移動に従い、干渉物が無い内径側へ一時的に弾性変形させられるが、外方コア型59の離型動作後には、射出成形された元の位置に復元する。よって、ネック部21に突起部24が形成されたプリフォーム20を良好に離型させることができる。
【0054】
その後は、ネック型53によってプリフォーム20のネック部21を保持した状態で、プリフォーム20を射出成形部50から温調部80に搬送する(
図3参照)。温調部80では、プリフォーム20の胴部22の温度をブロー成形に適した温度に調整する。そして、所定温度に調整されたプリフォーム20を温調部80からブロー成形部85に搬送する。ブロー成形部85では、ブロー成形用金型内にプリフォーム20を配置し、プリフォーム20の胴部22をブロー成形することによって所望の形状の容器10を形成する(
図1参照)。ブロー成形した容器10は、ネック型53で保持した状態でブロー成形部85から取出部90に搬送する。そして取出部90にて、容器10をネック型53から離型させて射出ブロー成形装置30の外部に取り出す。
【0055】
上述のようにプリフォーム20のネック部21は、すでに射出コア型55から離型されているため、取出部90では、容器10をネック型53から離型させるだけで、容器10を射出ブロー成形装置30の外部に取り出すことができる。すなわち、取出部90にて容器10を取り出す際、容器10をブロー成形用金型から比較的容易に離型させて射出ブロー成形装置30の外部に取り出すことができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、射出成形金型として、一つのプリフォームを形成する構成を例示したが、勿論、射出成形金型は、一度に複数のプリフォームを形成できる構成であってもよい。
【0058】
また上述の実施形態では、射出ブロー成形装置が温調部を備える構成を例示したが、射出ブロー成形装置は、必要に応じて温調部を備えていればよく、必ずしも備えていなくてもよい。
【0059】
また上述の実施形態では、中空物品の一例として容器をブロー成形するためのプリフォームを一例として本発明を説明したが、本発明は、各種の中空物品の射出成形方法に適用することができる。すなわち中空物品は、射出成形により形成されるものであれば、その用途は限定されるものではない。したがって本発明は、例えば、最終製品である容器や、容器を塞ぐための装着部材の射出成形方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 容器
11 ネック部
11a 底面
11b 内周面
12 胴部
13 底部
14 小径部
15 胴部本体
16 内ネジ部
17 ねじ山(突部)
18 突起部
20 プリフォーム(中空物品)
21 ネック部
21a 底面
21b 内周面
22 胴部
23 底部
24 突起部
25 内ネジ部
30 射出ブロー成形装置
50 射出成形部
51 射出成形金型
52 射出成形金型装置
53 ネック型
54 射出キャビティ型
55 射出コア型
56 射出空間
57 ゲート
58 第1の昇降板
59 外方コア型
60 内方コア型
61 コア部
62 摺動部
63 摺動面
64 空間部
65 支持板
66 貫通孔
67 雄ねじ部
68 雌ねじ部
69 第2の昇降板
70 アクチュエータ装置
71 ロッド部材
72 挿通孔
80 温調部
85 ブロー成形部
90 取出部
100 射出装置