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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】炉の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/28 20060101AFI20220719BHJP
   C03B 5/24 20060101ALI20220719BHJP
   F27B 3/20 20060101ALI20220719BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20220719BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20220719BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20220719BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20220719BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
F27B3/28
C03B5/24
F27B3/20
F27D7/02 A
F27D19/00 A
F27D21/00 G
G01J5/00 101A
H04N5/225 500
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019528926
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 GB2017052830
(87)【国際公開番号】W WO2018104695
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】1620863.9
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519189016
【氏名又は名称】ランド インスツルメンツ インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ターナー スーザン フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン ニール ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ベネット マーク アシュトン
(72)【発明者】
【氏名】ドレクメラー ペーター
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-123656(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104215334(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0124598(US,A1)
【文献】特開2004-219114(JP,A)
【文献】特開2003-121262(JP,A)
【文献】特表2013-544735(JP,A)
【文献】特開2012-180268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00 - 3/28
F27D 7/00 -99/00
C03B 1/00 - 5/44
C03B 8/00 - 8/04
C03B 19/12 -20/00
G01J 5/00 - 5/62
H04N 5/222- 5/257
C21B 7/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の制御システムであって、
炉内の複数の位置から熱放射を受け取って、前記炉内の前記複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するように構成された熱画像カメラ(22)と、
前記画像を前記熱画像カメラ(22)から受け取って、前記画像を用いて前記炉のための制御信号を生成するように構成された制御ユニット(12)と、を備えており、
前記制御ユニット(12)が、前記炉内の生成物上の2つの位置を選択し、前記炉内の前記2つの選択された位置から受け取った前記熱放射における反射成分を識別及び減算するように構成された反射補償モジュール(26)を含み、
前記2つの選択された位置が同一の温度を有し、且つ、前記2つの選択された位置が前記炉内の異なる温度を有するそれぞれの位置から生じる反射成分を含む、制御システム。
【請求項2】
前記制御信号は、前記炉内の温度を調整する指示を含み、および/または
前記制御信号は、前記炉内の1以上の位置における温度を差別的に調整する指示を含み、および/または
前記制御信号は、バッチ導入を調整する指示を含む、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御ユニット(12)が、前記画像を以前に収集された画像と比較して、温度の変化又は溶融した前記生成物の表面上のバッチの固体領域の移動による位置の変化を検出するように構成されている、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記反射補償モジュール(26)が、前記生成物の放射率を算出するように構成されており、
前記反射補償モジュール(26)が、前記生成物の前記放射率を用いて前記生成物の温度を算出するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記炉内の単一の位置から放射を受けて当該位置の温度を測定するように構成された追加の温度感知装置(24)を備え、前記制御ユニット(12)が、前記単一の位置に関して、前記温度感知装置(24)及び前記熱画像カメラ(22)により測定された温度を比較し、そして、前記熱画像カメラ(22)により生成された画像に関連する温度情報を較正するように構成されており、
前記温度感知装置(24)が、少なくとも2つの波長で放射を受け取り、且つ、前記単一の位置の温度を、前記少なくとも2つの波長で受け取られる放射の量に基づいて測定するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御ユニット(12)が、前記熱画像カメラからの画像内で前記炉内の溶融した前記生成物の表面上のバッチの固体領域を前記バッチの温度に基づいて識別するように構成されたバッチ識別モジュール(28)を備えており、
前記バッチ識別モジュール(28)が、前記識別されたバッチの速度を測定する、および/または、前記バッチの移動を追跡するように構成されており、
前記バッチの移動を追跡することが、前記バッチの移動を予測することを含み、
前記バッチの移動の予測が、複数の位置における温度情報に基づいている、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記制御信号が、前記バッチの移動を制御するために前記炉内の1以上の位置の温度を調整するため、または、前記バッチの導入を制御するためのものである、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御ユニット(12)が、異常なバッチ温度またはロケーションを識別して、前記バッチに関する品質問題を示すためのアラームを発生させるための制御信号を生成するように構成されている、請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御ユニット(12)が、前記炉の熱応力、損傷、又は損傷の可能性の増大を示す、前記炉内の異常な温度及び温度差を識別するように構成されており、
前記制御信号が、前記炉内の温度プロファイルを変更するために、又は、前記炉の動作または前記炉の加熱及び/又はメンテナンス作業中の損傷を防止若しくは軽減するために操作者に警告するために発生される、請求項1から8のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御ユニット(12)が、さらに、前記炉内の前記温度が熱依存化学反応の可能性を示す所定の値に達する、前記炉内の1つ又は複数の位置を識別するように構成されており、
前記制御ユニット(12)が、前記化学反応の生成速度を、前記温度が前記所定の値を超えた位置の個数から予測するように構成されており、
前記予測が、各位置の温度と、温度の関数としての前記反応速度の知識とに基づいており、
前記化学反応が、望ましくない副生成物の形成であり、
前記化学反応がNOxの生成であり、前記所定の値が少なくとも1600℃であり、
前記制御信号が、前記温度が前記所定の値を超える前記識別された位置に基づいて前記炉内の温度を調整するためのものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項11】
バッチを受け取り、溶融させて生成物を形成するための炉(10)であって、
チャンバと、
前記チャンバにバッチを導入するためのバッチディスペンサと、
前記チャンバに導入されたバッチを溶融するための少なくとも1つのバーナ(16、18)と、
請求項1~10のいずれか一項に記載の前記制御システムと、を備えた、炉(10)。
【請求項12】
前記チャンバの第1のサイド(側面)上の第1バーナ(16)又はバーナ配列と、2のサイド(側面)上の第2バーナ(18)又はバーナ配列とを含み、前記制御信号が、前記第1のサイド上のバーナと前記第2のサイド上のバーナとを、前記熱画像カメラ(22)から受信した画像に基づいて切り替える指示を有しており、
前記制御信号が、所定の位置又は複数の位置における温度が所定の値に達したときに前記第1のサイド(側面)上の前記第1バーナ(16)又は前記バーナ配列と前記第2のサイド(側面)上の前記第2バーナ(18)又は前記バーナ配列とを切り替える指示を有しており、または、所定の位置又は複数の位置における温度が所定の値に達したときに、前記バーナ(16、18)の少なくとも1つに対して燃料及び酸素プロファイルを制御する指示を有している、請求項11に記載の炉(10)。
【請求項13】
炉を制御する方法であって、
炉(10)内の複数の位置から熱画像カメラ(22)で熱放射を受け取るステップと、
前記炉(10)内の複数の位置の温度情報を含む画像を生成するステップと、
制御ユニット(12)の反射補償モジュール(26)にて前記炉内の生成物上の2つの位置を選択するステップと、
前記反射補償モジュール(26)にて前記炉(10)内の前記2つの選択された位置から受け取った前記熱放射における反射成分を識別及び減算するステップと、
前記炉(10)のための制御信号を、前記制御ユニット(12)にて、前記画像を使用して生成するステップと、を含み
前記2つの選択された位置が同一の温度を有し、且つ、前記2つの選択された位置が前記炉内の異なる温度を有するそれぞれの位置から生じる反射成分を含む、方法。
【請求項14】
コンピュータ実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記命令が、コンピュータにより実行されるときに当該コンピュータに、
炉(10)内の複数の位置から熱画像カメラ(22)で熱放射を受け取るステップと、
前記炉(10)内の複数の位置の温度情報を含む画像を生成するステップと、
制御ユニット(12)の反射補償モジュール(26)にて前記炉内の生成物上の2つの位置を選択するステップと、
前記反射補償モジュール(26)にて前記炉(10)内の前記2つの選択された位置から受け取った前記熱放射における反射成分を識別及び減算するステップと、
前記炉(10)のための制御信号を、前記制御ユニット(12)にて、前記画像を使用して生成するステップと、を含むステップを実行させ、
前記2つの選択された位置が同一の温度を有し、且つ、前記2つの選択された位置が前記炉内の異なる温度を有するそれぞれの位置から生じる反射成分を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱画像カメラを用いた炉の制御システムに関する。特に、本発明は、炉により製造される生成物、並びに、その炉のエネルギー使用量、動作効率及び寿命を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、粒状の原料(一般に「バッチ」と称される)を「溶融タンク」又は炉の一端に加えることにより工業的に製造される。これを溶融するために、バッチより上にバーナが設置され、最終生成物は、炉の他端から流出する。また、炉は、その他の生成物(例えば金属)の工業的製造にも使用される。
【0003】
バーナは、一般的に、炉の端部又は側面(サイド)上に配置されて、いわゆるエンドファイア型又はサイドファイア型の設計(共に空気及び酸素が燃焼される)を構成している。バーナは、大抵、炉の両端/側面に沿って対称的に又は互い違いに配列される。再生空気炉においては、両端/側面のいずれかのバーナが、約20~30分毎に「反転」されて連続的に燃焼される。
【0004】
炉は、伝統的に、単一点の温度を測定するための熱電対又はその他の個別の温度測定装置を有している。高温で強烈な環境の炉は、一般的に、耐火壁に埋め込まれた熱電対を有し、これらが温度傾向を提示する。
【0005】
また、炉内の瞬間的な点測定も、手持ち式高温計又は固定式繊維温度装置を使用して行われ得る。これらは、炉内の単一位置の温度測定を行い得るが、温度が読み取られるのは、アクセス窓を開けることができるとき、又は、反転中に炎が存在しないときだけであり、その頻度は低い。
【0006】
炉の放射測定は、通常、排気筒又は煙突で行われる。連続測定が可能であるが、炉の容積が大きく、また、炉内外へのガス流速に制限があるため、測定にはかなりのタイムラグが伴う。
【0007】
炉内の温度状態をリアルタイムで監視するために、昨今、熱画像カメラ及び光学画像カメラが導入されている。熱画像カメラは、炉内の状態に関するヒートマップを、赤外線を使用して作成できる。
【0008】
炉内の温度プロファイルが、生成物の品質、エネルギー使用量及び作業効率に重要であることがわかっている。ガラスの場合、温度は、理想的には、炉の長さに沿った特定の地点で最高温度まで上昇し、その後、排出端に向かって再び降下する。これが、ガラス内の対流を、最高温度の地点で上昇するように確立するが、バッチは、典型的に、炉の投入/溶融端で溶融ガラスになる。「泡立ち」又は電極、若しくは堰壁、或いは深さの変化が、最高温度の地点(深部からの熱いガラスが表面に上昇する)で時々観察される。ホットスポット又はバッチ溶融位置が偏ると、生成物の品質が低下することになる。
【0009】
炉の壁及びクラウンの温度プロファイルも重要である。熱応力は、ホットスポット又はコールドスポット周辺の耐火物を損傷させる。腐食性化合物、例えばNaOHは、炉の低温領域で凝縮し得るため、コールドスポットは化学的攻撃も受ける。これは、オキシ‐燃料を使用する昨今の炉(空気‐燃料混合物から、パーセントレベルで最大3.5倍のNaOHを生成し得る高い火炎温度を有する)において、特に問題である。
【0010】
また、詳細な熱画像を使用すると、熱依存化学反応が発生していると考えられる領域の特定も可能である。例えば、ガラス溶融用途において生成されるNOxの大部分は「サーマルNOx」であり、1600°C(2900°F)を超える温度で生成され、温度が上昇するにつれ、生成速度が速くなる。熱画像カメラからの画像を、燃焼ガス用のポータブル分析計による煙道ガス測定値と比較すると、炉の入口又は側面(1600℃超の温度領域が、明らかに、より大きい)に、より多量のNOxが存在することが明らかである。サーマルNOxの理論によれば、火炎の温度が高いほどNOxの生成速度が速い。高温領域が大きいほど反応ゾーンが大きい。従って、炉のリアルタイム熱画像があれば、感熱性化学反応が生じ得る領域を迅速に特定でき、そして、それらの領域の温度が、生じ得る反応速度を提示し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の炉は、動作の変化への応答又は反応に、不都合に長い時間がかかるという問題がある。本発明の目的は、この問題に対処し、これを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、炉の制御システムであって、前記炉内の複数の位置から熱放射を受け取って、前記炉内の前記複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するように構成された熱画像カメラと、前記画像を前記熱画像カメラから受け取って、前記画像を用いて前記炉のための制御信号を生成するように構成された制御ユニット、とを備えた制御システムが提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。前記命令は、コンピュータにより実行されるときに、当該コンピュータに、炉内の複数の位置から熱画像カメラで熱放射を受け取るステップと、前記炉内の複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するステップと、制御ユニットにて、前記炉のための制御信号を、前記画像を用いて生成するステップと、を含むステップを実行させる。
【0014】
前記熱画像カメラは、好ましくは、前記炉の内部の、前記カメラ内の画素に対応する数百又は数千の位置に関する温度情報を含む広角画像を生成するように構成される。好ましくは、前記熱画像カメラは、前記炉の複数の領域を画像化するように構成される。当該複数の領域は、前記炉の生成物、壁、及びクラウンのいずれをも含む。前記制御信号は、前記炉内の複数の位置における温度を差別的に調整するためのものであり得る。
【0015】
前記熱画像カメラは、前記炉内の温度プロファイルをリアルタイムで決定できる。従って、前記制御信号は、前記炉の特性をリアルタイムで調整可能となる。このリアルタイムのフィードバック制御が、高品質の生成物を常に保証でき、生成物及びエネルギーの無駄を最小限にする。当技術分野において、熱画像カメラを指す用語として、その他の多数の用語、例えば「赤外線カメラ」及び「熱画像ボアスコープ」が使用されている。
【0016】
前記熱画像カメラ及び制御信号は、前記炉の連続運転中だけでなく、加熱中、冷却中、及び/又は、修理作業(例えば、耐火壁のセラミック溶接)中のいずれにおいても使用され得る。
【0017】
誤動作の場合に冗長性を提供するために、或いは、前記炉の異なる段階に対する視野角を提供するために、複数の熱画像カメラを前記炉と共に使用してもよい。一例において、前記炉が、示差膨張率による損傷を特に受けやすい場合、炉の加熱中に、より低い温度範囲を有する熱画像カメラを使用してもよい。別の例において、特定の範囲の波長に敏感な熱画像カメラを選択して、前記炉内雰囲気の構成要素を画像化又は「透視」するか、或いは、溶融生成物内のより深い箇所から画像化可能である。
【0018】
好ましくは、前記制御ユニットは、前記炉内の位置から受け取った前記放射における反射成分を識別及び減算するように構成された反射補償モジュールを含む。炉の底部上の溶融又は部分溶融生成物が、熱放射の有効な反射体として作用し得る。反射成分を減算することにより、前記生成物から直接放出される放射成分を算出することが可能であり得る。このようにして、前記生成物の正確な放射率及び温度を測定することが可能であり得る。前記生成物の複数の位置が選択され得る。各位置に対して放射率及び温度の算出を実行し得る。或いは、1つの位置で算出された放射率値を、その他の位置(前記生成物が前記プロセスの同一段階にあり同一放射率を有し得る位置)での温度を算出するために使用することも可能である。
【0019】
前記反射補償モジュールは、前記炉内の前記生成物上の、ほぼ同一温度の2つの位置を任意に選択することもできる。前記2つの選択された位置は、前記炉内の異なる温度のそれぞれの位置から発生する反射成分を含み得る。従って、前記反射成分は、それらがほぼ同一温度であるという事実にもかかわらず、それぞれ識別され得る。なぜなら、前記2つの選択された位置から受け取られる放射の量が異なるからである。これにより、前記反射成分の識別及び減算が可能になり、前記2つの選択された位置における前記生成物の真の温度が決定され得る。これは、前記生成物(ガラスであり得る)の放射率を算出することにより達成され得る。
【0020】
好ましくは、前記熱画像カメラは、また、前記炉内の異なる温度のそれぞれの位置から直接放射される熱放射を受け取る。これは、前記反射補償モジュールが、前記生成物上の選択された位置から受け取った放射からこの放射束を減算することを可能にし得る。
【0021】
追加の温度感知装置、すなわち、前記炉内の単一の位置から放射を受けて当該位置の温度を決定するように構成された温度感知装置を設けてもよい。次いで、前記制御ユニットが、前記温度感知装置及び前記熱画像カメラにより関連する位置に関して決定された温度を比較し、そして、前記熱画像カメラにより生成された画像に関連する温度情報を較正し得る。こうして、前記熱画像カメラにより算出された温度に対して調整をなし得る。これは、材料がカメラのレンズを覆い隠し、受け取った放射線量を減らして、誤った温度測定をもたらす場合に特に有用である。このような状況は、前記炉の過酷な環境では珍しいことではない。
【0022】
一構成において、前記温度感知装置は、単一の位置にて温度を測定するように設計された高温計である。前記温度感知装置を、熱画像形成カメラとは異なる位置に取り付けて、これらの両方の装置が同種類の掩蔽を受ける可能性を最小限にすることも可能である。
【0023】
前記温度感知装置は、(少なくとも)2つの波長で放射を受け取り、且つ、前記関連位置の温度を、前記2つの波長で受け取られる放射の相対的な量に基づいて決定するように構成され得る。二波長高温計は、部分的な掩蔽が生じても温度を適切に測定できる。なぜなら、温度における掩蔽のいずれの影響も、各波長で異なるからである。二波長高温計を使用することで、前記熱画像内の関連位置の温度測定値を有効に較正でき、その地点での掩蔽を補償するのに必要な係数を、前記熱画像の残りの部分にも適用できる。幾つかの実施形態において、前記熱画像カメラは、2つ以上の波長の放射を受け取ることが可能であり、これは、さらなる温度感知装置(例えば高温計)を必要とせずに、前記熱画像カメラが自己較正可能なことを意味する。
【0024】
前記制御ユニットは、前記画像を以前に収集された画像と比較して、温度又は位置の変化を検出するように構成されている。前記画像は、連続した時点で生成されてもよく、移動変化、速度変化、温度変化及び変化率のいずれかを決定するために制御システムにより以前の画像と比較されてもよい。有利には、これにより、生成物がその形成中に経験した条件の履歴を、品質目的のために編集することが可能になる。これにより、異常な変化率及び材料又は計測機器、例えば熱電対の緩慢な劣化を確認できる。連続した時点からの画像を使用して、連続運転中、炉の加熱中若しくは冷却中、又はメンテナンス作業中に状態を記録し、又は異常な温度変化を識別することが可能である。
【0025】
前記連続した時点は、連続したフレーム間の間隔から1年の間隔までの任意の間隔にあり得る。定期的な測定が、一定の時間間隔で、或いは、炉の事象に従って行われ得る。例えば、再生式ガラス炉の場合、毎日午前0時以降の最初の2回の反転時に温度画像を記録することが可能である。幾つかの態様において、300,000個を超える温度データポイントが、連続した時点の各々にて収集され得る。
【0026】
熱画像カメラの使用は、炉を長期間にわたり監視可能なことを意味する。従って、前記制御ユニットは、前記炉の動作を変更する制御信号を長時間にわたり生成するように構成され得る。これらの制御信号の使用により、炉の寿命を延ばすことができ、或いは、メンテナンスのためのより良好なタイミングを提供できる。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、炉を制御する方法が提供され、この方法は、炉内の複数の位置から熱画像カメラで熱放射を受け取るステップと、前記炉内の複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するステップと、前記炉のための制御信号を、制御ユニットにて、前記画像を使用して生成するステップと、を含む。前記方法は、前記制御ユニットで生成された制御信号に従って前記炉を制御するステップを、さらに含み得る。
【0028】
このようにして、前記炉を、前記複数の位置の温度に従って制御できる。炉の特性、例えばバーナ、及び/又はスループット率に対して調整をなし得る。これが、最終生成物の品質及び生産率を向上させ、前記炉の寿命を最大化し、そして、エネルギー使用量及び排出量を最小化し得る。
【0029】
好ましくは、前記制御信号は、前記炉内の温度を調整するためのものである。前記炉内の温度は、火炎長さ、及び/又は、燃料/酸素若しくは空気混合物を制御することにより調整可能である。また、火炎を、前記炉内の異なる位置で温度の微調整を達成するようにも制御し得る。温度プロファイルの正確な制御は、前記生成物の品質、並びにその炉のエネルギー使用量、動作効率及び寿命を最適化するために重要であり得る。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記制御ユニットは、さらに、温度が所定の値(高温又は低温)を超えた位置を識別するように構成される。これは、インフラストラクチャの損傷又は製品品質の低下が発生し得る状態を示し得る。前記制御信号を、必要に応じて加熱を加減して供給するために使用し得る。
【0031】
前記制御信号は、バーナの反転を制御するためにも使用され得る。従って、バーナの逆転は、単純に規則的な時間間隔ではなく、前記炉のリアルタイム状態に従って最も適切な時間に生じ得る。前記熱画像カメラが、特定の位置又は複数の位置での温度が所定の値又は最大値に達したことを示したとき、或いは、その所定の値を超えた位置の割合が、所定の閾値に達した場合、バーナの反転が前記制御ユニットにより合図され得る。前記特定の位置は、画像の任意の領域又は複数の領域に、壁、クラウン、生成物及び/又は炎の温度に基づいて反転をトリガーするように関連し得る。
【0032】
前記制御信号は、一般的に「バッチ」と称される原材料の導入率を調整するためのものであり得る。生成物のスループットをリアルタイムで制御することが、製品の品質、エネルギー使用量、及び動作効率の最適化において重要であることが分かっている。幾つかの態様において、前記方法は、さらに、前記画像内のバッチの領域を識別すること、及び、温度情報に基づいてバッチの移動を追跡することを含み得る。
【0033】
前記制御ユニットは、前記熱画像カメラからの画像内のバッチを識別するように構成されたバッチ識別モジュールを含み得る。このようにして、バッチに関する温度が測定され得る。前記バッチ識別モジュールは、バッチが存在する画像内の位置を識別でき、これらの位置からのデータの使用が、溶融ガラス温度に関する制御信号の生成においては回避される。
【0034】
好ましくは、前記バッチ識別モジュールは、識別されたバッチの速度を測定するように構成され得る。前記熱画像カメラは、連続した時点で得られた温度情報を統合してバッチの移動を追跡できるように、連続した時点で画像を生成し得る。これが、バッチ移動の速度を測定するために使用され得る。
【0035】
バッチの移動の追跡は、バッチの移動の予測を含み得る。バッチ移動の予測は、複数の位置における温度情報に基づき得る。前記制御信号を、バッチの移動を制御するために前記炉内の1以上の位置で温度を調整するために使用できる。或いは、又は、さらに、前記制御信号を、バッチの導入を制御するために使用することも可能である。
【0036】
前記生成物の温度分布の分析から、対流を、高温領域から低温領域への経路として識別できる。これらの対流は、バッチのリアルタイムでの移動を示すものである。これは、上述のように、バッチを最適な対流に方向付けるために前記バッチチャージャを制御するように用いられて、バッチの混合、滞留時間、そしてそれにより製品品質を最大限にし得る。或いは、前記制御ユニットを、バーナ間で、対流パターン及び直接バッチ移動を変更するために調整し又は切り替えてもよい。
【0037】
対流を識別及び制御することは、生成物の特性を決定するためだけでなく、損傷の低減にも有用であろう。マランゴニ効果により、前記炉のガラス浴のガラス接触耐火物は、継続的に磨耗する。過度の冷却領域が摩耗を増大させ得ることも分かっている。バッチの移動を追跡して対流を制御できれば、この不都合な影響の低減に役立つであろう。
【0038】
本発明の別の態様によれば、バッチを受け取り、溶融させて生成物を形成するための炉が提供される。当該炉は、チャンバと、当該チャンバにバッチを導入するためのバッチディスペンサ又はチャージャと、前記チャンバに導入されたバッチを溶融するための少なくとも1つのバーナと、上述の制御システムと、を備えている。
【0039】
前記炉は、ガラスの製造用に特別に設計されていても、或いは、金属などのその他の生成物に適していてもよい。
【0040】
好ましくは、前記炉は、第1バーナ、又は、前記チャンバの第1のサイド(側面)に沿ったバーナ配列と、第2バーナ、又は、バーナの第2のサイド(側面)に沿ったバーナ配列とを含む。前記制御信号は、好ましくは、前記第1サイドバーナと前記第2サイドバーナとを、前記熱画像カメラから受信した画像に基づいて切り替えることができる。このようにして、前記炉の反転を、リアルタイムの熱的条件に従って動的に制御できる。
【0041】
前記制御ユニットは、前記炉内の或る位置の温度が所定の値又は最大値に達したときに前記第1サイドバーナ及び前記第2サイドバーナの動作を切り替えることが可能である。前記位置は所定の位置であり得る。前記所定の位置は、前記炉又は再生器の任意の領域であり得る。この状態の検出により、前記炉の反転が、最適な製品品質、エネルギー使用量、排出量及び資産寿命のいずれかを保証するために促され得る。
【0042】
場合によっては、前記制御信号は、さらに、個々のバーナに対して燃料プロファイルを切り替えて制御できる。これは、バーナの拡張セット内にある。このようにして、前記炉内の温度プロファイルに対する、より微細な調整が可能である。
【0043】
幾つかの態様において、前記バーナ制御の反転又は個々の調整は、前記炉内でのバッチの移動をリアルタイムで制御することであり得る。例えば、低温領域が検出されたとき、当該低温領域に最も近いバーナのスイッチをオンにして、バッチが前記低温領域から確実に遠ざかるようにし得る。
【0044】
本発明の方法は、温度が所定の値を超える領域内の位置又は位置の個数若しくは割合を識別することをさらに含み得る。多くの化学反応は感熱性(温度依存性)であるため、それらの可能な反応量が熱画像内で観察され得る。化学反応は、望ましい化合物の形成、又は、望ましくない副生成物(例えばNOx)の形成を含み得る。
【0045】
一例において、少なくとも1600℃、典型的には1800℃を超える所定の値を超える温度を有する位置を、NOx生成率のリアルタイム指標として使用してもよい。この場合、前記制御信号を使用して、前記第1サイドバーナと前記第2サイドバーナとを切り替えるか、又は、燃料プロファイル又はそのバーナへの燃料速度を調整することにより、1以上の個々のバーナから、火炎の温度又は長さを減じ得る。
【0046】
さらなる態様によれば、炉の制御システムであって、炉内の複数の位置から熱放射を受け取り、当該炉内の複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するように構成された熱画像カメラと、前記温度情報を分析して、異常な温度を示す位置を判断し、そして、異常な温度が検出されたことを示すためのアラーム(警報)を生じさせるための制御信号を生成するように構成された制御ユニットと、を備えた、炉の制御システムが提供される。
【0047】
さらに別の態様において、コンピュータ実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。前記命令は、コンピュータにより実行されるときに、当該コンピュータに、炉内の複数の位置から熱画像カメラで熱放射を受け取るステップと、前記炉内の複数の位置に関する温度情報を含む画像を生成するステップと、当該温度情報を分析して、異常な温度を示している位置を判断するステップと、当該異常な温度が検出されたことを示すためのアラームを発生させる制御信号を生成するステップと、を含むステップを実行させる。
【0048】
有利なことに、これは、一般的に望まれる温度範囲以外の温度で動作している領域の検出を可能にする。これにより、操作者は適切な措置をなし得る。いくつかの局面における異常な温度は、製品品質の重大事項を示す場合があり、或いは、炉への損傷又は損傷の可能性を示す場合もある。適切な措置は、炉の運転条件の調整(例えば、バーナ設定)、現在の生成物を後続段階の検疫及び品質検査に送ること、及び、炉のメンテナンス作業のいずれをも含み得る。アラームシステムは、連続運転中、炉の加熱中若しくは冷却中、又は、修理作業中に使用され得る。
【0049】
アラームは、低温警報、高温警報、又は、温度が所定の範囲内にあるかどうかを示すための温度警報のいずれであってもよい。アラームは、所定の位置における温度を、予め決められた最大値、最小値、又は閾値の範囲と比較することによりトリガーされ得る。また、アラームは、画像内の位置間の温度差により、若しくは、画像内の位置と別の温度測定源(例えば熱電対)との温度差によりトリガーされ得る。異なる温度状況が検出されたことを示すために、様々なアラームが存在し得る。
【0050】
ここで、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の一実施形態における炉及び制御システムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態で使用するための熱画像カメラの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態で使用するための熱画像カメラにより生成されたエンドファイア型炉の画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、炉10及び制御ユニット12の概略図である。炉10は、バッチ、すなわち原材料を炉の一端に投入又は分与するためのバッチチャージャ(投入器)14を含む。サイドバーナ16,18が炉10の両側部に設けられている。炉10の一方の側部のサイドバーナ16は、約20分間燃焼するように設計されており、その後、反転があり、他方側のサイドバーナ18が燃焼する。生成物出口20が、炉10の、バッチチャージャ14の反対端に設けられている。使用時に、バッチがバッチチャージャにより導入され、サイドバーナ16,18により溶融される。サイドバーナ16,18は、炉10内での所望の温度プロファイル(典型的に、コンテナ炉に沿った経路の75%~80%でピーク温度に達する)を生成するように制御される。より高品質のガラス用のその他の炉であれば、チャージャ14により近い地点でピーク温度を有するであろう。次いで、温度プロファイルは、その最大値から生成物出口20に向かって低減する。
【0053】
炉10は、バッチチャージャ14とは反対側の端壁に配置された熱画像カメラ22を含む。熱画像カメラ22の一例が図2に示されている。このカメラは、ランド・インストゥルメンツ・インターナショナル社(Land Instruments International Ltd.)により製造されたNIRボアスコープとして商業的に知られている。熱画像カメラ22は、炉10内部の高解像度画像を生成するように設計されており、300,000画素よりも多数の画素、及び、90°の視野を有する。熱画像カメラより生成された高解像度画像は、各画素が、炉10内の個々の位置に対応する温度情報を含む。
【0054】
図1の実施形態においては、バッチラインを監視するためにチャージャ14へと戻る長手方向視野を有する単一のカメラが存在する。その他の実施形態において、カメラがその他の壁上又は炉クラウン内に設置されてもよく、或いは、複数のカメラが使用されてもよい。視野は必ずしも90°でなくてもよく、機器は、その取り付け具に対して必ずしも垂直に位置合わせされなくてもよい。幾つかの実施形態において、熱画像カメラは可動式であり得る。熱画像カメラの配置は、必要に応じて温度を炉全体にわたって測定できるようになされ得る。
【0055】
また、炉10は二波長高温計24も含み、二波長高温計24も、バッチチャージャ14とは反対側の端壁に配置されているが、熱画像カメラ22からずらして配置されている。二波長高温計24は、炉10内の特定の位置(炉10の底部、又は壁の1つの上に存在する生成物であり得る)に向くように構成されている。二波長高温計24を用いることにより、炉内の温度を、2つの波長で受けた放射比率を分析することにより測定できる。従って、二波長高温計24により測定される温度は、装置上に展開し得る掩蔽(オブスキュレーション)による影響が大幅に低減される。
【0056】
バッチチャージャ14、サイドバーナ16,18、熱画像カメラ22、及び二波長高温計24は、制御ユニット12に接続されている。使用中、熱画像カメラ22は、炉10内のリアルタイムの高解像度熱画像(画像の各点が温度情報を含む)を生成し、これを制御ユニット12に送信する。制御ユニット12は、この画像を、1以上のプロセッサを用いて、理想的な温度プロファイルと比較することにより処理する。制御ユニット12は、熱画像カメラ22により検出された炉10内の実際の温度プロファイルと、理想的な温度プロファイルとの差を決定して、炉10のための制御信号を生成する。制御信号は、サイドバー16,18に、炉10内の状態を変更するために、及び、実際の温度プロファイルと理想的な温度プロファイルとの差を低減するために送信され得る。
【0057】
実際の温度プロファイルが理想的温度プロファイルに十分に一致するまで、リアルタイムプロセスが繰り返し行われる。
【0058】
制御ユニット12は、熱画像カメラ22とは別に示されている。幾つかの実施形態において、制御ユニット12は熱画像カメラ22内に埋め込まれ得る。制御ユニット12は、コンピュータ又はその他の任意のローカル若しくはリモートコンピューティングデバイスに実装され得る。制御ユニット12は、熱画像を記録し、それらの画像を以前の画像と比較して、動きの変化、速度変化、温度変化及び変化率を推定するために使用され得る。制御ユニット12は、炉を制御するための信号と、生じ得る問題を作業員に警告するためのアラームとを発生する。
【0059】
二波長高温計24は、熱画像カメラ22による温度測定値を較正するために使用され得る。熱画像カメラ22が、炉10内の材料により不明瞭になり得ることが分かっている。制御ユニット12は、二波長高温計24により測定された特定の位置の温度と、熱画像カメラ22により測定された同一位置の温度とを比較する。そして、制御ユニット12は、熱画像カメラ22の全ての測定値に較正係数を用いて、不都合な掩蔽作用のいずれをも補正できる。
【0060】
その他の実施形態においては、単一波長高温計も使用できる。有効であるために、単一波長高温計は、熱画像カメラ22とは独立に、掩蔽が生じないような位置に取り付けられる必要があろう。さらに別の実施形態において、熱画像カメラ自体が2つの熱波長の放射を検出することも可能であろう。これは、掩蔽の悪影響を低減又は除去するために熱画像カメラ22が自己較正することを可能にし得る。
【0061】
熱画像は、検出器の個々の画素により収集された赤外線の一連の測定値を基に作成される。各画素の温度は、収集された放射から、プランクの法則(Planck’s Law)(黒体輻射を波長及び温度の関数として定義する)を用いて決定される。実際の対象物の放射のほとんどが黒体輻射よりも効率が悪く、放出される放射は、表面放射率として知られている因子により減じられている。正確な温度測定のためには、表面放射率を熱画像カメラ22又は制御ユニット12内で確認又は計算する必要がある。
【0062】
制御ユニット12は、炉10の底部上の生成物から受け取った放射中の反射成分を識別して減算できる反射補償モジュール26を含む。図3は、熱画像カメラ22により生成された、エンドファイア型炉の、炉10の内部を示す画像の一例である。この例において、炉はエンドファイア型であり、バーナ16が、予熱空気を供給及び排出するポートの下に配置されている。熔融ガラス11が炉10の底部上に提供されている。
【0063】
熱画像カメラ22は、溶融ガラス11の表面上の第1領域1及び第2領域2から熱放射を受け取る。さらに、熱画像カメラ22は、熱放射を、炉10の端壁上の第3領域3、及び、排気側再生器(リジェネレータ)のターゲット壁における第4領域4から受け取る。炉10の幾何学的形状は、第3領域3からの放射が熱画像カメラ22にて直接、及び反射により間接的に受け取られるような形状である。第3領域3からの放射は第1領域1にて反射され、次いで熱画像カメラ22で受信される。従って、熱画像カメラ22が第1領域1から受ける放射は、溶融ガラス11からの放射成分と、第3領域3から放射された後に反射された成分とを含む。同様に、熱画像カメラ22が第2領域2から受ける放射は、溶融ガラス11からの放射成分と、第4領域4から放射された後に反射された成分とを含む。反射成分と放射成分との相対的な割合は、ガラスの放射率ε及び反射率rに基づいて決定され得る。
【0064】
第1領域1と第2領域2とは、炉10の長さに沿った同一の地点にあり、且つ、これらの地点の温度T及び放射率εが実質的同一であるように十分に近接している。第1領域1内のスポットを見ている画素は、放射Rを受ける。すなわち、
【数1】
式中、関数f(T)は、表面からの放射を温度Tでモデル化するためのプランクの法則の適用に基づくが、機器固有のパラメータ(熱画像カメラ22の画素により収集される放射量を制限する)も含む。この関数は、方程式よりも、カメラ22内のルックアップテーブルとして与えられることが一般的である。
【0065】
第2領域2内のスポットを見ている画素が、放射Rを受ける。すなわち、
【数2】
【0066】
こうして、ガラスの放射率は、反射補償モジュール26により、式(1)から式(2)を減算し、以下のように整理することにより算出され得る。
【数3】
【0067】
及びTは、第3領域3及び第4領域4の直接測定から知られる。第3領域3及び第4領域4は、具体的には、同一温度を有する可能性が低い領域として選択される。この例において、第4領域4内のバッチチャージャ14の温度は、炉の端壁上の第3領域3の温度よりも低い可能性が高い。
【0068】
ガラスの放射率は、式(3)に従って算出され得る。そして、真のガラス温度は、制御ユニット12内の反射補償モジュール26により、ガラス放射率を式(1)又は(2)に代入することにより導出され得る。
【0069】
熱画像カメラ22からの画像は、バーナ16により生成された火炎内の第5領域5と、溶融ガラスの表面上の、バーナ16に近接した第6域6とを含む。上述の方法によりガラスの放射率及び温度を算出するために、壁の高温領域及び低温領域を用いるのではなく、火炎自体を、ガラスにて反射された高温領域として、ガラスにて反射された壁の、より低温の領域と共に用いることが可能である。
【0070】
ガラス上の複数の点に関して算出された放射率値を用いて温度を算出することにより、一次元温度プロファイル又は二次元サーマルマップの導出が可能になる。ガラス表面上の対流を、高温領域から低温領域への経路として認識できる。そしてこれらを、以下に説明するように、バッチ流を予測するために使用できる。
【0071】
泡立ち点が、制御ユニット12により、耐火壁又は天井に沿った温度プロファイルにおける、又はガラスの長さに沿った(ガラス放射率値を用いることによる)ホットスポットとして検出され得る。温度測定が、ガラス表面上の泡立ち点で熱画像カメラ22により行われる場合、これらの温度は、ガラス内の対流により新たに上昇した温度であり、従って、炉10の底部にあるガラスの温度を示す。
【0072】
制御信号は、炉10内で、燃料分布を調整し、また、任意選択的に、バーナ16,18からの火炎長さ、火炎タイミング、及び/又は、燃料/酸素混合物を調整することにより実行され得る。また、個々のバーナからの火炎を、炉10内の異なる位置で温度が変わるように制御することもできる。このようにして、炉10内の火炎温度を制御して、NOx排出を低減し、熱依存化学反応を制御できる。これに関しては、以下に説明する。また、制御信号は、熱画像カメラ22により測定された炉10の実際の状態に従ってバーナ16,18の反転を制御するためにも使用され得る。バーナ16,18の反転は、炉10内の所定の位置における温度が、所定の値又は最大値に達したときに行われ得る。
【0073】
制御ユニット12は、注意又はメンテナンスを必要とし得る炉10内の問題を決定するために使用され得る。例えば、熱画像カメラ22は、耐火物損傷の危険性がある過熱領域を検出し得る。同様に、熱画像カメラ22は、予測された温度よりも一貫して低温状態にある画像内位置を検出し得る。これは、この地点で炉10の壁に欠陥があることを示し得、動作状況の変更、アラームの発生、及び/又はメンテナンスが必要となろう。
【0074】
熱画像カメラ22は、炉10の初期加熱中に使用され得る。加熱中、炉10の異なる領域が同じ速度で加熱されることを確実にすることが重要である。そうでない場合、熱応力が損傷を引き起こす可能性がある。制御ユニット12は、炉10のリアルタイム加熱を理想的なヒートマップと比較して、バーナ16,18の動作を最適化する制御信号を生成するように動作可能である。
【0075】
熱画像カメラ22は、炉がその動作温度まで最初に上昇される前に設置され得る。場合によっては、周囲状況から温度を測定可能な特別な低温範囲の熱画像カメラを設置してもよい。例えば、これは、ランド・インストゥルメンツ社(Land Instruments Ltd.)から市販されているArcイメージャ(Arc Imager)であり得る。低温カメラの温度範囲は、0℃~500℃、又は、100℃~1000℃であり得る。この低温カメラは、炉の温度が、より高い温度範囲に達したときに取り外されてよい。運転中に炉内で使用される熱画像カメラの温度範囲は、プロセス温度に応じて、より高温の運転温度領域を有し得る。ガラス溶融炉、及びその他の火炎加熱炉に関しては、少なくとも1600℃に達し、より好ましくは、少なくとも1800℃にも達する高温が望ましい。
【0076】
制御ユニット12は、炉の壁又はクラウン上の1以上の位置の温度が、炉の雰囲気中に存在する揮発性化合物、例えば水酸化ナトリウムNaOHの凝縮点よりも低くなるときを判断できる。温度がこの揮発性凝縮点を下回らないようにすることが、耐火物損傷の防止に役立つ。
【0077】
また、制御ユニット12は、セラミック溶接補修に必要な領域を識別し、その後、補修の完了及び/又は完全性を確認するためにも使用され得る。有利には、熱画像を溶接プロセス中に使用でき、この場合、これらの条件において、光学画像は大気により曖昧になる可能性がある。
【0078】
制御システム12を用いて、ガラスの品質がいつ妥協されたかを判断することも可能である。例えば、溶融温度が、理想的なガラス形成には過度に高温又は過度に低温の場合がある。熱プロファイルが移動したか、或いは、バッチラインが臨界点を超えたのかも知れない。製品の品質が低下した可能性があることを示すために、アラームがトリガーされ得る。有利には、これが、検査機器又は操作者が問題を解決するために動員されることを可能にし、且つ/又は、動作条件が自動的に調整されることを可能にする。また、これにより、特定の製品を追加検査のために隔離する場合もある。
【0079】
制御ユニット12は、感熱性化学反応の反応速度を示すためにも使用され得る。制御ユニット12は、温度が所定の閾値温度を超えている位置を特定できる。制御ユニット12は、さらに、画像内の1以上の領域内又は画像全体内のそのような位置の個数又は割合を算出できる。所定の閾値が、それを超えると化学反応が起こる温度である場合、この温度を超える位置の個数又は割合が、生じ得る反応体積を示す。反応及び試薬濃度に関する知識を利用して、或いは、以前の較正から、化学反応による生成物に関する、推定生成速度を算出できる。また、制御ユニット12は、各位置の温度、及び、異なる温度での変化する反応速度を考慮に入れた、より詳細な分析も実行できる。この場合、初期閾値は必要でない場合があり、或いは、計算に含まれる画素数を減じるためにのみ使用され得る。
【0080】
熱依存反応速度は、温度帯域内で、或いは温度閾値未満で(例えば、試薬濃度が高温の反応により枯渇され得る場合)推定され得る。幾つかの実施形態において、反応速度は、化学反応からの望ましい生成物の生成速度を示すために使用されるであろう。その他の実施形態において、反応速度は、NOxなどの不都合な副生成物の生成速度を示すために使用されるであろう。この場合、閾値温度は少なくとも1600°Cになる。
【0081】
また、制御ユニット12は、バッチ識別モジュール28も含む。バッチ識別モジュール28は、溶融生成物11の表面上のバッチの固体領域を識別するように構成される。固体バッチは溶融生成物11よりも低温であり、従って、制御ユニットは、炉10のための制御信号を生成するときに、これらの固体領域を無視できる。
【0082】
バッチ識別モジュールは、バッチの溶融が許容可能な状況内で生じていることを確認するように構成されている。例えば、固体バッチが、炉内の望ましくない位置で識別された場合、炉制御信号が生成されて、アラームがトリガーされ得る。
【0083】
また、バッチ識別モジュール28は、バッチの移動を追跡し、バッチの移動速度、移動方向及び加速度を、以前の画像からこれまでの位置の変化に基づいて算出し、今後の移動を予測するようにも構成される。今後の移動の予測は、バッチの現在の移動パラメータと、上述のように算出されるガラス内及び炉内の対流を使用する。現在及び計画されている炉の設定も計算に含めることもできる。予測される移動が、要求限界を超えるバッチ移動、又は準最適の溶融若しくは混合を示す場合、炉内の温度プロファイルと、従って対流及びバッチ溶融とを調整するために、制御信号が発生され得る。
【0084】
幾つかの実施形態において、制御ユニット12は、熱画像カメラ22の視野を補正して、上述のように算出された距離、速度、加速度、寸法、体積、熱プロファイル及びマップが、画像座標ではなく現実世界に存在するように構成され得る。この場合、炉の取り付け位置及び形状に関する知識が必要である。
図1
図2
図3