(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】高セルロース繊維含有量を有する溶融加工材料
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20220719BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20220719BHJP
C08B 15/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08J5/00 CEP
C08L1/02
C08B15/02
(21)【出願番号】P 2019539827
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 SE2018050039
(87)【国際公開番号】W WO2018135994
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-22
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーション、ペール
(72)【発明者】
【氏名】ロー レ、イアダ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/003364(WO,A1)
【文献】特表2018-532052(JP,A)
【文献】特開平11-323783(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103172912(CN,A)
【文献】特表2019-500448(JP,A)
【文献】特表2020-500267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/24
C08L
C08K
C08B
B29B 11/16,15/08-15/14
B29C 70/00-70/88
D06M 10/00-11/84,16/00,19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含む溶融加工製品であって、
セルロース繊維が少なくとも部分的に修飾されてジアルコールセルロースを含み、溶融加工製品における修飾されたセルロース繊維の量が60重量%超であり;かつ
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき、少なくとも10%かつ70%未満である
溶融加工製品。
【請求項2】
溶融加工製品における修飾されたセルロース繊維の量が
、70重量%以
上である請求項1記載の溶融加工製品。
【請求項3】
溶融加工製品における修飾されたセルロース繊維の量が100重量%未満であり、かつ
製品がさらに(a)天然ポリマー、天然ポリマー誘導体、ポリオレフィン、ポリエチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸またはポリアミド、または前記ポリマーの2つ以上の共重合体または混合物などの熱可塑性ポリマー、(b)ポリオレフィン、またはその共重合体または混合物、または(c)ポリエチレンまたはポリプロピレン、またはそれらの共重合体または混合物を含み、または
製品がさらに上記(a)および天然セルロース、ヘミセルロースまたはスターチ、または天然セルロース、ヘミセルロースまたはスターチの誘導体である天然ポリマーを含む
請求項1または2記載の溶融加工製品。
【請求項4】
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき
、少なくとも20
%である請求項1~3のいずれか1項に記載の溶融加工製品。
【請求項5】
製品が、射出成型、押出し、押出しキャスト、押出し射出成型、押出しコート、または押出しプレス成型される請求項1~4のいずれか1項に記載の溶融加工製品。
【請求項6】
製品が、キャップ、クロージャーデバイス、パッケージトップ、開口物、玩具、容器、構造部品、室内装飾または自動車部品である請求項1~5のいずれか1項に記載の溶融加工製品。
【請求項7】
製品が、射出成型または押出し成型され、かつ修飾セルロース繊維が少なくとも70重量%である請求項1記載の溶融加工製品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製品の製造方法であって、
a)セルロース繊維を含む材料を提供する工程であって、そのセルロース繊維が少なくとも部分的に修飾されてジアルコールセルロースを含み、溶融加工製品における修飾セルロース繊維の量が60重量%超であり;かつ
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき、少なくとも10%かつ70%未満である工程;
b)任意には、十分な時間、または十分な量の水または水分が吸収されるまで材料に水または水分を吸収させる工程;
c)材料を製品に溶融加工する工程
を含み、かつ
セルロース繊維の修飾が、二段階で行われ、第1段階は、セルロース繊維を構成するフィブリル上/中で、セルロースを所望の程度までジアルデヒドセルロースに酸化することであり、その後、セルロース上のジアルデヒド基を還元してジアルコールセルロースとし、かつ酸化は主に、繊維懸濁液中で行われる不均一反応である
方法。
【請求項9】
材料を溶融加工する前に、十分な時間、または十分な量の水または水分が吸収されるまで材料に水分または水を吸収させる請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、少なくとも20
%である請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
溶融加工が、射出成型、押出し、押出しキャスト、押出しコート、押出しプレス成型および押出し射出成型から選択されるか、または溶融加工が射出成型および/または押出しである請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
材料が水分または水を吸収され、射出成型または押出しが60~100
℃の温度で行われる請求項8記載の方法。
【請求項13】
溶融加工が少なくとも120
℃の温度で行われる請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
酸素バリアおよび/または水蒸気バリアなどのガスバリアとしての、または水バリアなどの液体バリアとしての請求項1~
7のいずれか1項に記載の製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルコールセルロースの溶融加工製品およびその製品の製造方法に関する。本発明は、高セルロース繊維含有量を有する押出および/または射出成型製品の製造を容易にする。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、おそらく地球上で最も豊富なバイオポリマーであり、将来の持続可能でバイオベースの経済において重要な構成要素であると考えられている。
【0003】
セルロースの課題は、例えば種々の溶融加工技術によりセルロースを加工することの難しさにある。セルロース、特にセルロース繊維の押出しおよび射出成型は、加工を容易にするため、高含有量の第2熱可塑性ポリマーを必要とする。しかしながら、これらのコンポジットまたはセルロースと第2ポリマーとの混合物は、引き抜き、セルロース繊維および第2ポリマー間の剥離、ならびに凝集体の形成に悩まされていることが示されている。
【0004】
非特許文献1には、60%までセルロース繊維を有するセルロース繊維強化ポリプロピレンコンポジットが開示されている。そのコンポジットは、セルロースをポリプロピレンと配合する前にセルロースのペレットを製造することにより押出しにより製造された。
【0005】
特許文献1には、セルロースエーテル、可塑剤および消泡剤の組成物が開示され、それらは、組成物が無機組成物の押出しにおいて使用され得る。
【0006】
非特許文献2および特許文献2には、セルロース繊維を部分的に酸化し(ジアルデヒドセルロースに)、次いで形成されたアルデヒドを完全に還元し、ジアルコールセルロースを生成することによるジアルコールセルロースを製造する方法が記載されている。得られた物質は、従来の製紙技術により材料を製造するために使用された。
【0007】
高セルロース含有材料を、例えば押出しまたは射出成型により溶融加工することはいまだ開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2007/0004826号明細書
【文献】PCT/SE2016/050663
【非特許文献】
【0009】
【文献】Bengtsson et al., Composites: Part A, 38(2007), 1922-1931
【文献】Larsson et al., Green Chemistry, 18(2016), 3324-3333
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、セルロースが少なくとも部分的にジアルコールセルロースに修飾されているセルロース繊維含有製品を提供することにより、先行技術の欠点を克服することである。
【0011】
本発明の主要な実施態様は、請求項1記載の製品に関する。
【0012】
第2の実施態様において、本発明は、本発明の製品の製造方法であって、
a)セルロース繊維を含む材料を提供する工程であって、そのセルロース繊維が少なくとも部分的に修飾されてジアルコールセルロースを含み、溶融加工された製品における修飾セルロース繊維の量が60重量%超であり;かつ
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき、少なくとも10%である工程;
b)任意には、十分な時間、または十分な量の水または水分が吸収されるまで材料に水または水分を吸収させる工程;ならびに
c)材料を製品に溶融加工する工程
を含む方法に関する。
【0013】
第3の実施態様において、本発明は、セルロース繊維を含む材料であって、セルロース繊維が少なくとも部分的にジアルコールセルロースに修飾されており、かつ材料中の修飾されたセルロース繊維の量が60重量%超であり;
少なくとも部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの変換の程度が、セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき、少なくとも10%であり;および
材料が任意には、5~40重量%の水分または水を吸収している
材料に関する。
【0014】
第4の実施態様において、本発明は、セルロース繊維含有製品を溶融加工する方法であって:
a)修飾されたセルロース繊維を含む材料を提供する工程であって、その修飾されたセルロース繊維が少なくとも部分的にジアルコールセルロースに修飾されている工程;
b)任意には、十分な時間、または十分な量の水または水分が吸収されるまで材料に水または水分を吸収させる工程;および
c)材料を製品に溶融加工する工程
を含む方法に関する。
【0015】
第5の実施態様において、本発明は、酸素バリアおよび/または水蒸気バリアなどのガスバリアとしての製品の使用に関する。
【0016】
第6の実施態様において、本発明は、水バリアなどの液体バリアとしての製品の使用に関する。
【0017】
第7の実施態様において、本発明は、セルロース繊維を含む材料であって、そのセルロース繊維が、少なくとも部分的にジアルコールセルロースに修飾されており、かつその材料が5~40重量%の水分または水を吸収している材料に関する。
【0018】
本明細書に開示されるすべての実施形態は、特段の断りのない限り、すべての実施態様に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ジアルコールセルロースへのセルロースの修飾の概略的反応スキームである。
【
図2】種々の相対湿度条件での、見かけのガラス転移温度を開示する動的熱機械分析(DMTA)測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願において、用語「吸収する(sorb)」または「吸収(sorption)」は、吸着および吸収(absorption)の両方を包含する。
【0021】
本出願において、用語「セルロース」は、特段の断りがない場合、ヘミセルロースも包含する。
【0022】
本出願において、用語「溶融加工」は、温度が十分に高く、処理された材料が溶融熱可塑性プラスチックと同様に流動する加工を意味する。
【0023】
本発明は、セルロースまたはセルロース含有材料の溶融加工製品を提供することを目的とし、それにより化石資源由来のプラスチックの量を低減することが可能となる。セルロースは、例えば押出しもしくは射出成型により、製品へと成型または成形することが非常に難しいということがよく知られている。当業者は、重合性材料は、水分を取り込ませることまたは温度を上昇させることにより軟化することを知っているが、それは溶融加工が可能であることとは異なるということも知っている。この問題を克服するために、一般的な方法は、セルロースと別の熱可塑性プラスチックポリマーとの混合物を使用することである。本発明は、100%までのセルロース繊維材料を含む製品の製造を容易にし、加工中、可塑剤などの添加剤を添加する必要がない。
【0024】
セルロースは、植物の一次細胞壁に見出される多糖類であり、セルロースおよびセルロース誘導体は、紙、板紙、テキスタイル、インプラントおよび火薬など多種多様な製品に見ることができる。本発明のセルロースは、木由来などのリグノセルロース起源であってもよい。
【0025】
本発明の材料や製品を製造する際に使用されるセルロース繊維は、特に制限されるものではないが、少なくとも1μm、例えば、少なくとも5μm、または少なくとも8μm、または少なくとも12μmの平均直径を有し得る。繊維の平均長さは、好ましくは少なくとも0.3mm、例えば0.3~4mmである。
【0026】
セルロースの繊維とフィブリルまたはナノフィブリルとの間には主要な違いがあるということを強調する必要がある。フィブリルは、数ナノメートルの直径を有する一方、繊維はマイクロメートルの範囲を有する。言い換えれば繊維は千倍大きい。したがって、フィブリルの示す多くの性質は繊維については見られない。
【0027】
セルロースは、パルプ化から得られるセルロースなど、任意の好適なセルロースであればよい。一つの実施形態において、セルロースは、クラフト加工から得られる。別の実施形態において、セルロースは、クラフト加工からのさらしパルプから得られる。パルプ化プロセスから得られるセルロースは、通常、ヘミセルロースも含む。しかしながら、ヘミセルロースはまた、本明細書に説明されるのと同様に修飾を受けるであろう。
【0028】
溶融加工製品
本発明の製品は、制限されるものではないが、射出成型、押出し、押出しキャスト、押出し射出成型、押出しコート、押出しプレス成型から選択することができる溶融加工により得られる成型または鋳造製品(mold or cast product)である。本発明に使用される材料は、押出し可能であり、これによりセルロース含有材料の、押出しまたは射出成型または溶融加工操作の組み合わせによる複雑なプロファイルまたは断面を有する製品の製造を容易にする。
【0029】
セルロース繊維を部分的にジアルコールセルロースへ修飾することにより、セルロース含有材料は、より容易に溶融加工されるであろう。ジアルコールセルロースへの修飾は、二段階で行うことができ、第1段階は、セルロース繊維を構成するフィブリル上/中で、セルロースを所望の程度までジアルデヒドセルロースに酸化することである。これは主に、繊維懸濁液中で行われる不均一反応である。好ましい酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩である。セルロース上のジアルデヒド基は、次いで、水素化ホウ素などの水素化物、例えば水素化ホウ素ナトリウムを用いることなどにより、ジアルコールセルロースに還元される。
【0030】
セルロース分子のグルコースモノマー単位の酸化可能なC2-C3結合の修飾は、まず、繊維を構成するセルロースナノフィブリルの表面で起こる。修飾が進むと、修飾されたナノフィブリルがコア-シェル構造をとり、それにより、ジアルコールシェルから、熱可塑性プラスチックポリマーの性質と似ていて、押出しおよび射出成型のプロセスにおいて有利である機械的および物理的性質を得ると考えられる。
【0031】
酸化時間は、酸化剤、その濃度、ならびにセルロース濃度および温度に部分的に依存し、高い濃度および高い温度は、酸化時間を減少する。非限定的な例として、酸化時間は、0.1~40時間、例えば1~35時間、10~30時間、または20~25時間とすることができる。一つの実施形態において、酸化時間は0.5~4時間、例えば1~2時間である。酸化温度は、20~60℃、例えば30~50℃とすることができるが、それらに限定されるものではない。しかしながら、酸化時間がより長ければ、修飾の程度がより高くなり、材料が溶融加工工程中に変色しやすくなり得る。
【0032】
セルロースのジアルコールセルロースへの修飾または変換の程度を決定する場合、第1の工程は、ジアルデヒドへの変換の程度を決定することである。これは、以下に説明する「カルボニル含量決定」の方法を用いて行われる。変換は、開始物質を純粋なセルロースと仮定して、変換の最大量の割合として与えられる。第2の工程において、すべてのアルデヒドは、反対を示す表示や説明が何もないかぎり、アルコールに変換される(これも第2のカルボニル含量決定によりサポートされ得る)と仮定する。
【0033】
ジアルコールセルロースへの還元の前のセルロースのジアルデヒドセルロースへの変換の程度は、天然セルロース材料における酸化可能なC2-C3結合の合計数に基づき、好ましくは13%以上、例えば18%以上、または20%以上である。さらに、変換の程度は、60%以下、例えば50%以下であってもよい。一つの実施形態において、ジアルデヒドセルロースへの変換の程度は、22%および49%の間、例えば24%および45%の間である。セルロース繊維のジアルコールセルロースへの修飾または変換の程度は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも32%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、好ましくは100%未満、または90%未満、または80%未満、または70%未満である。一つの実施形態において、修飾の程度は、30~60%、例えば32~40%または40~50%である。
【0034】
ジアルコールセルロースへの変換の程度が100%に近づくと、セルロースは溶解し、部分的にまたは完全に非繊維状となるであろう。この状態は、セルロースを再凝集させて固体セルロース材料にする必要があり、これは簡単でない追加のプロセス工程であるため、作用可能ではあるが望ましいものではない。溶液から固化した場合、セルロースは、繊維よりもより粉末の形態であるであろう。プロセスの観点から、セルロースの変換の最適な程度は、25~60%、例えば35~50%であるようである。
【0035】
材料の繊維を製造する方法において使用される繊維懸濁液は、叩解繊維の懸濁液であってもよい。
【0036】
製品中の修飾されたセルロース繊維の量は、1~100重量%であってもよい。一つの実施形態において、その量は、10重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上、または40重量%以上、または50重量%以上、または60重量%以上、または61重量%以上、または63重量%以上、または65重量%以上、または70重量%以上、または75重量%以上、または80重量%以上、または85重量%以上、または90重量%以上、または95重量%以上、または100重量%である。
【0037】
修飾されたセルロース繊維の量が100重量%未満の場合、製品は、さらに少なくとも1つの第2のポリマーを含んでもよく、第2のポリマーは、熱可塑性プラスチックポリマーであってもよく、天然ポリマー、天然ポリマー誘導体、ポリオレフィン、ポリエチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリアミド、または2つ以上の任意のそれらのポリマーの混合物または共重合体から選択されてもよい。一つの実施形態において、第2のポリマーは熱硬化性である。一つの実施形態において、熱硬化性ポリマーは、ポリエステル、ポリウレタンおよびエポキシ樹脂から選択される。一つの実施形態において、第2のポリマーの一つはポリエチレンまたはポリプロピレンである。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、天然セルロース、ヘミセルロースまたはスターチ、または天然セルロース、ヘミセルロースまたはスターチの誘導体である。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、天然セルロースである。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、セルロース誘導体である。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリオレフィンおよびアクリル酸またはメタクリル酸の共重合体である。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリ(エチレンアクリル酸)(EAA)である。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリエチレンメタクリル酸である。別の実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。一つの実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)である。一つの実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。一つの実施形態において、第2のポリマーの一つは、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6またはナイロン66などのナイロン(ポリアミド)である。一つの実施形態において、第2のポリマーの一つは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸またはポリグリコール酸などの生分解性ポリエステルである。一つの実施形態において、製品は2つ以上の第2のポリマーを含有する。
【0038】
第2のポリマーの合計量は、1~99重量%であってもよい。一つの実施形態において、第2のポリマーの合計量は、10重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上、または40重量%以上、または50重量%以上である。別の実施形態において、第2のポリマーの合計量は、1重量%より多く40重量%未満、または35重量%未満、または30重量%未満、または25重量%未満である。別の実施形態において、第2のポリマーの合計量は、10~50重量%、例えば39~12重量%、または35~15重量%、または20~30重量%である。
【0039】
製品はさらに、可塑剤、架橋剤、強化繊維、相溶化剤、フィラー、消泡剤または顔料などの任意の好適な添加剤を含むことができる。一つの実施形態において、製品は、ポリオール、ポリアルデヒド、ポリカルボン酸、ポリアミン、イソシアネート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)(AIBN)、ウレア、ホルムアルデヒドおよびビスフェノールAなどの架橋剤を含む。強化繊維は、ガラス繊維または炭素繊維から選択することができる。一つの実施形態において、製品は、鉱物フィラーなどのフィラーを含む。しかしながら、製品は、本質的に添加剤を何も含まなくてもよい。一つの実施形態において、製品は、本質的に可塑剤および相溶化剤を含まない。一つの実施形態において、製品は、本質的に架橋剤を含まない。一つの実施形態において、添加剤の量は、0.5~10重量%である。一つの実施形態において、量は、8重量%未満、または6重量%未満、または4重量%未満、または2重量%未満であり、好ましくは少なくとも1重量%である。
【0040】
製品は、キャップ、クロージャー、クロージャーデバイス、パッケージトップ、開口物(opening)、玩具、容器、構造部品(construction part)、室内装飾部品または自動車部品とすることができる。自動車部品は、車内またはフード下部品、構造部品および非荷重アプリケーションであっても良い。構造部品または室内装飾としては、製品は、プロファイル、ストリップ、縁、幅木として使用することができる。
【0041】
機械特性は、第2のポリマーの種類と量を変化させることにより、および/または修飾の程度を変化させることにより調整することができる。例えば、EAAなどの軟質ポリマーと混合する場合に修飾されたセルロースの量を増加させることにより、得られる材料は、弾性率と降伏力が有意に増加した。
【0042】
理論に拘束されるものではないが、本発明の繊維の修飾は、第2のポリマーと混合した場合繊維の分散度を増加させ、繊維の引き抜きまたは剥離数の減少を導く、言い換えればマトリックスが繊維に適切に付着していないと考えられる。
【0043】
製品は、酸素および/または水蒸気バリア性などの良好なガスバリア性を有する。例えば、飲料、流動食、オイル、シャンプー、石鹸または水などの液体バリアとして機能することもできる。材料は、水分から分解しにくく、液体包装のための積層体における押出し層として使用することができる。さらに、第2のポリマーが使用される場合、2つの異なるポリマー間の強い相互作用がバリア性に有益であるとも考えられる。
【0044】
製品は、バリアとしてのその好適性を確認する実施例において示されている水蒸気透過性および酸素透過性を開示する。相対湿度(RH)50%および温度23度で測定されたASTM F1249-06による水蒸気透過性(g*mm/m2*kPa*24h)は、100以下、または80以下、または50以下、または30以下、または10以下であってもよい。相対湿度50%および温度23度で測定されたASTM D3985による酸素透過性(g*mm/m2*kPa*24h)は、200以下、または150以下、または100以下、または50以下であってもよい。本発明はまた、低い酸素透過率(OTR)を有する製品を提供する。溶融加工され、射出成型された製品は、これらのプロセスが繊維を破壊する傾向にあるため、このような良好な機械特性およびバリア性を示したということは予期せぬことであった。
【0045】
製品のバリア性は、押出しコート層、成型された開封デバイス、クロージャーおよびキャップなどの包装アプリケーションに用いる場合に好適とされる。
【0046】
溶融加工方法
セルロース繊維の修飾は、特許文献2(本明細書に参照として組み込まれる)に説明されている方法により行ってもよい。
【0047】
溶融加工される材料は、修飾されたセルロース繊維および任意には1つ以上の第2のポリマーを含む。修飾されたセルロースは、紙、粉末、粒子またはペレットなど、好適なあらゆる形態で提供することができる。修飾されたセルロースと第2のポリマーとの混合は、任意の好適な方法で行うことができる。ある実施形態によれば、修飾されたセルロースは、熱可塑性プラスチックポリマーと、マスターバッチ配合物として、例えば粒子またはペレットの形態で配合することができる。
【0048】
その後、材料に水分または水を吸収させる。吸収は、材料を、水分を含む環境中に、水分または水の十分な量が材料に吸収されてしまうまで、十分な期間置くことにより行うことができる。水分を含む環境は、蒸気を入れた容器であってもよい。材料はまた、水を材料に添加するか、または材料を十分な期間水中に潜らせることにより吸収することができる。セルロースは、仮に吸収中の温度が上昇するとより少ない水分または水を吸収するため、温度は上げすぎてはならない。一つの実施形態において、吸収は、30℃以下、例えば室温でなされる。吸着中の相対湿度(RH)は、30~100%、例えば50~99%または70~95%であってもよい。材料を水分を含む環境に少なくとも5分間、または少なくとも15分間、または少なくとも30分間、または少なくとも1時間、または少なくとも2時間置いてもよい。材料は、水に浸してもよく、水中に潜らせてもよい。一つの実施形態において、材料は、少なくとも10秒間、または少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、水に浸されるかまたは潜らされる。別の実施形態において、材料は、1~10秒間浸されるかまたは潜らされる。吸収時間は、材料の量や水分または水の添加方法に部分的に依存する。一つの実施形態において、材料は、相対湿度70~100%の水分を含む環境において少なくとも10分間処理される。この工程後の材料の水分含量は、5~40重量%、例えば10~30重量%とすることができる。
【0049】
材料に水分を吸収させることにより、必要とされる温度が低く、必要とされる力が小さくなるため、材料はより容易に溶融加工することができる。さらに、吸収は、加工温度を低くできるため、加工中の変色を抑制することができると考えられる。水分を吸収させていない材料は、高セルロース含量材料の溶融加工を容易にするために、好ましくは高度に修飾されているべきである。例えば、少なくとも70%のセルロース含量での乾燥処理(すなわち、何ら水分を吸収させていない材料)は、好ましくは少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%の修飾の程度を有し、好ましくは95%未満、または90%未満、または80%未満、または70%未満の修飾の程度を有する。一つの実施形態において、修飾の程度は30~60%、例えば40~50%である。材料は、水分を吸収させているのみならず、高い修飾の程度を有してもよい。第2のポリマーおよび使用と量も、溶融加工特性に影響を及ぼし得る。
【0050】
次に、材料は、溶融スクリュー型押出し機または二軸押出し機などの任意の好適な技術を用いて、材料の性質により配合(be compounded)されるか、または60~200℃で溶融処理される。配合(compounding)または溶融処理のあいだ、材料を流動させるために十分に温度を高くし得る。配合または溶融処理は、温度が材料を溶融するかまたは溶融状態とするのに十分高いか、または材料を流動させるのに十分に柔らかくする溶融プロセスとして説明することができる。水分を吸収させた材料の配合については、60~100℃または70~90℃などのより低い温度が使用される。乾燥材料、すなわち水分または水を吸収させていない材料については、120~160℃、例えば130~150℃の温度が使用される。材料の配合は、5~10分間行ってもよい。変色の危険が減るため、より低い温度がしばしばより好ましい。
【0051】
材料は、例えば射出成型、押出し、押出しキャスト、押出し射出成型、押出しプレス成型、または押出しコートなどにより溶融加工される。一つの実施形態において、製品は、押出しおよび/または射出成型により溶融加工される。
【0052】
一つの実施形態において、製品は最初に材料を配合することにより製造される。配合された材料は、その後、好適なサイズの粒子または顆粒に、例えば切断または研削により変換される。顆粒は、その後、押出しスクリューを用いて押出され、ノズルを通して型中に、またはストランドまたはフィルムに押し出される。
【0053】
材料のフィルムを冷却ローラ上またはローラ上に配置された基板上に押出すことにより、押出されたフィルムまたは被覆された基板を製造することができる。押出しキャストフィルムは、機械特性などのフィルムの種々の特性を向上させるために、繊維または高分子さを整列させるために任意の方向で延伸されてもよい。
【0054】
材料が射出成型される場合、まず、最初に別個の押出し機において配合され、任意の第2のポリマーおよび任意の添加剤と一緒に直接射出成型装置に添加されてもよい。射出成型は、製品がその場で直接射出成型される、いわゆるインライン射出成型である製造ラインにおける一工程であってもよい。
【0055】
溶融加工は、特定の材料組成物に好適でガラス転移温度および/または溶融温度に依存する温度で行われる。例えば、射出成型は、修飾セルロース繊維とポリ(エチレンアクリル酸)とを含む材料について100~150℃、例えば120~130℃の温度で行われる。セルロースの水分含量が増加すれば、温度を下げることができる。
【0056】
処理される材料は、可塑剤、架橋剤、強化繊維、相溶化剤、フィラー、消泡剤または顔料などの任意の好適な添加剤をさらに含む。しかしながら、材料は、本質的に添加剤を何も含まなくてもよい。一つの実施形態において、材料は、吸収工程の任意の水または水分の他に、本質的に可塑剤を含まない。別の実施形態において、材料は、本質的に相溶化剤を含まない。一つの実施形態において、製品は、本質的に架橋剤を含まない。
【実施例】
【0057】
実施例1
繊維
乾燥漂白クラフト繊維(K46)は、SCA AB(エストランド パルプ ミル(Oestrand pulp mill)、スウェーデン王国)により提供された。使用前に、繊維を水に浸し、分解し、次いでフォイトミル(Voith mill)においてエネルギー入力160Wh/kg(約30SR)に機械的に叩解した。
【0058】
化学薬品
セルロース酸化用のメタ過ヨウ素酸ナトリウム、ラジカル捕捉剤として使用されるイソプロパノール(純度≧99.8%)、および酸化の程度を測定するためのヒドロキシルアミン塩酸塩。水素化ホウ素ナトリウムは、ジアルデヒドセルロースをジアルコールセルロースに還元するために使用した。これら、および塩酸や水酸化ナトリウムなどすべての他の化学薬品は、すべて分析用グレードであった。
【0059】
セルロースの酸化
攪拌下、繊維1グラム当たり5.4グラムの過ヨウ素酸ナトリウムを、6.3%イソプロパノール(容量)を副反応と鎖の切断を防ぐためにラジカル捕捉剤として含む4g/Lの繊維懸濁液に加えた。さらに鎖の切断を防ぐために、酸化反応を、ろ過および脱イオン水による完全な洗浄により反応を終結させる前に、暗条件で16時間、24時間または32時間行った。ジアルデヒドセルロースへの変換の程度は、純粋なセルロースを開始材料と仮定して、先に説明した手順に従いヒドロキシルアミン塩酸塩との反応と水酸化ナトリウムでの粉砕により、それぞれ、32%、46%および55%である(以下、繊維32、繊維46および繊維55と呼ぶ)と決定した。
【0060】
セルロースの還元
次いで、繊維を4g/Lに懸濁し、生成したジアルデヒドセルロースを、繊維1グラム当たり0.5gの水素化ホウ素ナトリウムを添加することによりジアルコールセルロースに還元した。水素化ホウ素ナトリウムの添加の際のpHの上昇を約pH10までに制限するため、リン酸二水素ナトリウムを水素化ホウ素と共に、0.01Mに相当する量で加えた。還元時間は、4時間で一定とし(分析によれば、この時間以後には測定可能な残存アルデヒドは示されなかった)、その後、ろ過し、徹底して洗浄した。
【0061】
製紙
おおよその坪量150gm-2のハンドシートを、Rapid Koethen sheet former(ペーパーテスティングインスツルメンツ、オーストリア)において水道水を用いて製造した。シートを93℃で95kPaの減圧下で乾燥した。次いでシートを23℃および50%RHで試験/使用まで保管した。
【0062】
実施例2
修飾のスケールアップの効果をテストするため、および長い一連のテストのために十分な材料を得るため、次の実験設定を使用した:
乾燥含有量0.4%の代わりに4%に増加させ、酸化剤の量を1.4g(NaIO4)/g繊維に減らし、反応時間を3~4時間に減らすために温度を50℃に上昇した以外は、実施例1に記載したように修飾を行った。酸化の程度は、カルボニル含量分析により38%(これらの繊維を以下、繊維38と呼ぶ)であることを決定した。
【0063】
還元工程中、還元剤の量は0.5g/g繊維~0.2g/g繊維に減少させた(アルデヒドの完全な還元はカルボニル含量決定により測定された)。
【0064】
実施例3
修飾されたセルロースの湿-および熱-機械特性のより大きな理解を得るため、動的機械熱分析(DMTA)を、選ばれた数の相対湿度について行った。すべてのDMTAテストは、湿度-および温度-制御チャンバーを備えたTAインスツルメンツ製のQ800DMTAを活用して制御された環境下で行った。おおよそ一定の相対湿度(113℃および高湿度でのDMTAの結果を除き、この原稿の全てのデータ点で±2.5%、湿度に最大±12%の誤差)を各試験のあいだ維持した(0%、50%、60%および70%RH)。所望の相対湿度と温度10℃を達成し、その後テストの最初の120分間にわたって維持した。120分が過ぎた後、温度を206分間で10~113℃まで掃引し、30分間113℃で保持し、206分間で113~10℃まで掃引し、その後30分間10℃で保持した。この温度サイクルを3回またはサンプルが不能となるまで行った。サンプルの表面付近の相対湿度、貯蔵弾性率、および損失弾性率などの種々の出力パラメータを得た。最初の温度サイクルから得たデータは、ヒステリシス効果により利用しなかった(すなわち、最初とその後のサイクルは、わずかに異なる結果を示した)。したがって、二回目およびその後のサイクルのみをデータ分析に利用した。温度掃引のあいだの損失弾性率のピークは、見かけのガラス転移温度として規定した。
【0065】
【0066】
実施例4
ジアルコール-セルロース-繊維(以下、繊維Xと呼び、Xは修飾の程度を示す)に基づくコンポジットの加工条件
【0067】
装置:
DSM マイクロコンパウンダー 5ml:MC 5(DSM、Xplore Instruments BV、オランダ)
サーモサイエンティフィックHAAKE MiniJet Pro-サーモフィッシャーサイエンティフィック
【0068】
セルロース繊維およびEAAアシスト処理:
実施例1および2において得られた材料を、射出成型製品を製造するために使用した。種々の繊維およびEAA含量のコンポジットを100%繊維製品と同様に製造した。種々の含量は表1~4に示す。
【0069】
種々の材料に対して配合(押出し)中に必要とされた力を表1、2および5に示す。
【0070】
DMTA試験は、ASTM D882にしたがって行った:損失弾性率(E”)のピーク値としてのアルファ転移温度(Tα);タンデルタのピーク値としてのダンピング因子;-20℃および25℃(RT)での貯蔵弾性率(E’)。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
H2O支援:
100%繊維、ジアルコールセルロースへの38%(繊維38)および55%(繊維55)変換は、RH>90%で一定の水分含量となるまで調整した。
【0076】
【0077】
材料を、120℃または80℃、30または60rpmで乾燥または湿潤(RH90%)のいずれかで押出し(配合し)、射出した。その後、射出したサンプルを105℃で2時間乾燥した。応力ひずみ測定を、Instron5944を用いて23℃および50%RHで行った。
【0078】
【0079】
【0080】
上述のように、高いセルロース繊維含量の材料は、可塑剤または相溶化剤などの添加剤を添加することなく、合理的な温度で押出しおよび射出成型することができる。さらに、得られた材料も良好な機械特性を有する。
【0081】
実施例5
濃セルロースは、良好な酸素バリアであることは知られているが、良好な水蒸気バリアであることは知られていない。溶融加工材料のバリア特性を評価するために、一片の射出成型材料を2つの平滑な表面の間で、おおよそ15~50MPaの範囲の圧力と表5による追加の条件で熱プレスした。その後、形成されたフィルムを、特注した両面接着アルミフォイルマスクを用いてマスクし、酸素および水蒸気透過率を、50%RHで、Mocon MOCON OX-TRAN(登録商標)2/21およびMOCON PermaTran-W 3/33を用いてそれぞれ測定した。使用した材料は繊維38であった。テスト領域は2.5cm2であった。結果を表7に示す。
【0082】
【0083】
実施例6
修飾されたセルロース繊維材料のパイロット生産をRISE Processum ABにより行った。
【0084】
パルプ(39kg、乾燥含量4.5%)を、機械的攪拌機を備えた50リットルのステンレススチール反応器に加え、51℃まで加熱した。2.5リットルのイソプロパノールを加え、次いで2.5kgの過ヨウ素酸ナトリウムを加えた。反応混合物を105分間攪拌した。反応器の底部をからにし、ろ過し(FSIフィルターサイズ2)、温度を下げて過剰な過ヨウ素酸を除去するために素早く脱イオン水で洗浄した。パルプまたは生成物を、洗浄水が10μS/cm未満の電導度となるまで脱イオン水で洗浄した。
【0085】
生成物を、水および7.5kgの氷に懸濁し合計37kgとした。冷却した生成物を反応容器に入れ、NaBH4(約2リットルの水中350g)を3分間かけて添加した。温度が10℃以上にならないようにモニターした。1時間攪拌を続け、反応生成物を反応容器の底部から出した。反応生成物を、フィルターバッグ(FSIフィルターサイズ2)を用いてろ過し、素早く脱イオン水で洗浄して残存するNaBH4を除去した。生成物を、洗浄水の電導度が10μS/cm未満となるまで洗浄した。ろ過し、洗浄した生成物を、機械的スクリュープレスを用いて乾燥含量10~15%まで脱水した。
【0086】
酸化工程後のカルボニル含量は、5.2mmol/gであると決定し、全収量は48.5%であった。
【0087】
実施例7
実施例6から得られた材料のキャップを製造し、メルト・フロー・インデックスおよびOTR(酸素透過率)を測定した。結果を表8および9に示す。
【0088】
キャップ(修飾セルロース80重量%およびEAA20重量%)を、Dr Boy GmbH&Co製のBOY 12Aを用いて射出成型した。射出成型は、圧力2200~2400バール、温度130℃、射出速度14ccm/秒で行った。
【0089】
着色したキャップも顔料を2~3重量%用いて射出成型した。
【0090】
【0091】
OTR測定は、上記と同じ装置を用いて行った。OTR測定のためのサンプルを特別なホルダー上にエポキシで接着し、酸素濃度21%:23℃および50%RH(21% 23℃/50%RH)、23℃および80%RH(21% 23℃/80%RH)ならびに38℃および90%RH(21% 38℃/90%RH)の3つの異なる気候で測定した。OTRが平行に達したら読み取りを行った。LDPE(低密度ポリエチレン)製の市販のキャップを参照として用いた。頂部は所定の厚さで、縁は幾分厚い(0.88mmおよび0.86mm)。
【0092】
【0093】
キャップは非常に良好なOTRの結果を示した。射出成型は繊維にとって非常に厳しい方法であるため、この結果はまったく予想外である。
【0094】
実施例8
実施例6で得られた修飾セルロース繊維材料100重量%(乾燥状態)を、Dr Boy GmbH Co製のBOY 12Aを用い、温度130℃、圧力2200~2400バールで溶融押出しした。