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特許7106570超疎水性膜を用いた振動噴射による均一なポリマービーズの生産方法
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  • 特許-超疎水性膜を用いた振動噴射による均一なポリマービーズの生産方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】超疎水性膜を用いた振動噴射による均一なポリマービーズの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20220719BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20220719BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20220719BHJP
   B01J 2/18 20060101ALI20220719BHJP
   B01J 2/06 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 5/12 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08F2/01
C08J3/16 CEP
C08F2/18
B01J2/18
B01J2/06
C08L5/12
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019554010
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2017082976
(87)【国際公開番号】W WO2018109149
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/435,499
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】201710096177.X
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519216068
【氏名又は名称】ピュロライト(チャイナ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コスヴィンチェフ,セルゲイ ルドルフォヴィッチ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501839(JP,A)
【文献】特表2016-501307(JP,A)
【文献】特開平04-202501(JP,A)
【文献】特開昭57-102905(JP,A)
【文献】特開2005-194425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08J 3/00-3/28、99/00
B01J 2/06、2/18
C08L 5/12
B32B 9/04、27/00
B41J 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜が円筒形で二重壁形であり、前記金属膜がニッケルであり、前記膜の第1の面および第2の面が超疎水性コーティングでコーティングされており、前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンコーティングであり、第1の量が前記膜の第1のと接触しており、第2の量が前記膜の第2のと接触しており、前記第1の量が重合性モノマー相を含み、前記第2の量が前記モノマー相と不混和性の液体を含む、ステップと、
前記重合性モノマーを含む複数のモノマー液滴を形成するのに十分な条件下で前記貫通孔を通じて前記第1の量を前記第2の量中に分散させるステップであって、剪断力が前記第1の量が前記第2の量中に出て行く地点で提供され、剪断の向きが前記第1の量が出て行く向きに対して直方向であり、前記剪断力が前記膜を前記第2の量に対して変位させることにより提供される、ステップと、
前記第2の量中に分散した前記液滴を重合させるステップと
を含む、0から80μmの体積平均粒径を有する球状ポリマービーズを振動噴射により調製するための方法。
【請求項2】
前記膜が前記膜の1cm当たり00から,000個の貫通孔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貫通孔がμmから00μmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記貫通孔が0μmから0μmの範囲の直径を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
距離を各貫通孔の中心部から測定する場合、前記複数の貫通孔が互いから各貫通孔の直径の少なくとも0倍の距離で配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマー相が前記貫通孔を通じて前記第2の量中にから0cm/sの速度で分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーズが1.2未満の均一性係数を有する粒径分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記変位させることが回転する、脈動する、または揺動する動きである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の量に圧力をかけることにより、前記第1の量が前記第2の量中に分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記膜がニッケルめっきを施されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の貫通孔が円錐形である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記貫通孔がスロット形であり、スロット幅対スロット長の縦横比が少なくとも1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の量がアガロースまたは他のゲル形成化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記重合性モノマー相がポロゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンの粒子を含む、請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングの上面に塗布されているアモルファスなポリテトラフルオロエチレンのコーティングをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項19】
複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜が円筒形で二重壁形であり、前記金属膜がニッケルであり、前記膜の第1の面および第2の面が超疎水性コーティングでコーティングされており、前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンコーティングであり、第1の量が前記膜の第1のと接触しており、第2の量が前記膜の第2のと接触しており、前記第1の量がアガロース溶液を含み、前記第2の量が前記アガロース溶液と不混和性の液体を含む、ステップと、複数のアガロース液滴を形成するのに十分な条件下で、前記貫通孔を通じて前記アガロース溶液と不混和性の前記液体中に前記アガロース溶液を分散させるステップであって、前記第1の量が前記第2の量中に出て行く地点で剪断力が提供され、剪断の向きが前記第1の量が出て行く向きに対して直方向であり、前記膜を前記第2の量に対して変位させることにより前記剪断力が提供される、ステップと、前記第2の量中に分散している前記アガロース液滴を硬化させてアガロースビーズを形成するステップとを含む、0から80μmの体積平均粒径を有する球状アガロースビーズを振動噴射により調製するための方法。
【請求項20】
前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンのナノ粒子を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記超疎水性コーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜が円筒形で二重壁形であり、前記金属膜がニッケルであり、前記膜の第1の面および第2の面が超疎水性コーティングでコーティングされており、前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンコーティングであり、水性アガロース溶液が前記膜の第1のと接触しており、鉱物油が前記膜の第2のと接触している、ステップと、複数のアガロース液滴を形成するのに十分な条件下で、前記貫通孔を通じて前記鉱物油中に前記アガロース溶液を分散させるステップであって、前記アガロース溶液が前記鉱物油中に出て行く地点で剪断力が提供され、剪断の向きが前記アガロース溶液が出て行く向きに対して直方向であり、前記膜を前記鉱物油に対して変位させることにより前記剪断力が提供される、ステップと、前記鉱物油中に分散している前記アガロース液滴を硬化させてアガロースビーズを形成するステップとを含む、0から80μmの体積平均粒径を有する球状アガロースビーズを振動噴射により調製するための方法。
【請求項24】
前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンのナノ粒子を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記超疎水性コーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記アガロース溶液が前記貫通孔を通じて分散する前に加熱される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に球状ポリマービーズの調製に関し、より詳細には超疎水性膜を用いた振動噴射による、実質的に均一の粒径を有する球状ポリマービーズの調製に関する。
【0002】
発明の背景
サイズ範囲が直径約1から300μmの球状ポリマービーズは、様々な用途で有用である。たとえば、そのようなポリマービーズはとりわけ、イオン交換樹脂用の基材のような多様なクロマトグラフィーの用途で、より大きなサイズのポリマー粒子を調製するための種結晶として、血球計数器やエアロゾル機器の較正基準として、公害防止設備中で、また写真乳剤用のスペーサとして使用されている。
【0003】
しかし、遺憾ながら、周知の方法を用いた均一なサイズのポリマービーズの調製は多くの場合大規模生産に適さない。典型的には、ポリマービーズは撹拌機および水相を備えた容器中に有機モノマー相を液滴として分散させることにより、懸濁重合により調製でき、容器中のモノマーおよび生成するポリマーは本質的に不溶性である。次いでその分散したモノマー液滴を連続撹拌下で重合させる(たとえば、米国特許第3,728,318号明細書、第2,694,700号明細書、および第3,862,924号明細書を参照)。ポリマービーズは液体有機モノマー混合物を毛細管開口部を通じて水相または気相中に「噴射する」ことによっても製造される。次に、たとえば米国特許第4,444,961号明細書、第4,666,673号明細書、第4,623,706号明細書、および第8,033,412号明細書に記載されているように、そのモノマー液滴を反応器に移動し、そこで重合が起きる。しかし、バッチ式撹拌重合等のこれらの従来方法では、多くの場合、主として制御不能の凝集および/または懸濁するモノマー液滴の破壊の問題により、大きな粒径分布を示すビーズ生成物が生産される。既存の噴射方法には高コストおよび粒径300μm未満の生成物についての低生産量という難点もある。たとえば、板噴射方法は全体的な生産性が低く、振動発生ステップ中の大きなエネルギー損失により律速される。その上、気体媒体中への噴射が必要となる方法には非常に高機能の装置およびポリマー形成のための複雑な方法が必要である。小規模での用途には金属焼結膜、ガラス焼結膜または電鋳膜を用いて微細な液滴を発生させるためにクロスフロー膜を用いることが適当であるが、商業運転は実現不可能である。さらに、クロスフロー膜の単位面積あたりの低生産性により、複雑で大規模な装置が必要となるが、そのような装置は信頼できず、高額の資本および操業費が必要である。金属板または缶形の膜で、好ましくはニッケル製またはニッケルめっきを施したものが振動噴射で用いるのに望ましい。しかし、そのような板は比較的寿命が長いものの、使用中に経時的な摩耗がみられることが知られている。そのような摩耗により、膜細孔(または「貫通孔」、本明細書では細孔および貫通孔の用語は相互に交換可能である)の構成および形状が変わり、モノマー上に不均一なドラグを増加させ、結果として不統一で不均一なビーズが生産されるようになり、エネルギー費用が増加する。したがって、本発明の一目的は劣化せずに長い使用寿命を提供する、耐久性に富んだ表面をもつ金属膜を提供することである。ポリマービーズを生産するための他の噴射方法は米国特許第9,028,730号明細書および第9,415,530号明細書に記載されている。
【0004】
発明の概要
本発明の一目的は、超疎水性膜を用いた振動噴射を用いて、均一の粒径および狭い粒径分布を有する均一のサイズの球状ポリマービーズを調製するための方法を提供することである。具体的には、そのポリマービーズはとりわけアガロースおよびキチン、ペクチン、ゼラチン、ジェラン、セルロース、アルギン酸塩、カラゲナン、デンプン、キサンタンガム等の他の天然のゲル化親水コロイド等の水溶性(親水性)物質から製造される。加えて、PVA(ポリビニルアセテート)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびPEG(ポリエチレングリコール)等の合成のゲル化ポリマーを用いてもよい。さらに、とりわけアクリル等の重合性水溶性モノマーを用いてもよい。本明細書では、これらの出発材料はそれぞれ「ポリマー」または「親水コロイド」を形成するものと同じ意味とされる。これらの出発材料のうち、アガロースが好ましい。アガロースビーズはたとえばクロマトグラフィー媒体中に基材を提供するので有用である。アガロースは耐酸性、耐塩基性かつ耐溶媒性で、親水性で、多孔性および官能化のための多数のヒドロキシル基を有する。米国特許第7,678,302号明細書を参照されたい。
【0005】
したがって、本発明の一実施形態は、約15から約200μmの体積平均粒径(D50)を有する均一な球状ポリマービーズを調製するための方法を対象とする。この方法では複数の細孔を含む金属膜を有する二重壁の円筒形器具を用意する。第1の量は2つの膜壁間の環に入り、第2の量はその環を囲む膜の2つの外壁と接触している。第1の量には分散相、たとえば重合性モノマー相または親水コロイド溶液が含まれる。第2の量には分散相と不混和性の懸濁相が含まれる。第1の量は分散相の液滴を形成するのに十分な条件下では細孔を介して第2の量中に分散している。剪断力は第1の量が第2の量へ出て行く地点で提供される。剪断の向きは第1の量が出て行く向きに対して実質的に垂直方向である。次に第2の量中に分散している分散相液滴を重合(または架橋またはゲル化)し、所望のポリマービーズを形成する。
【0006】
他の実施形態では、本発明は約10から約300μmの粒径を有するポリマービーズの形態の重合生成物であり、ビーズのうち少なくとも約70パーセントがビーズの平均粒径の約0.9から約1.1倍の粒径を有する重合生成物を提供する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は振動噴射により均一なポリマービーズを生産するのに用いるための膜であり、複数の細孔をもつ金属板を含み、使用寿命をより長くする耐久性に富む摩耗面を提供し、より均一なポリマービーズ特性をも提供する、超疎水性コーティングでコーティングされた膜を提供する。
【0008】
本発明の追加の利点、目的および特徴を次の説明で一部説明し、当業者に明らかにする。
【0009】
本発明の非限定的で包括的でない実施形態は、以下の図面に関連して記載されている。本発明を良好に理解するためには、添付図面に関連して読むべきである、以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の反応器ユニットを示す概略図である。
図2】本発明の缶形膜を示す概略図である。
図3】本発明の膜細孔を示す概略図である。
図4】本発明の一実施例によるポリマービーズの粒径分布を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例によるポリマービーズの粒径分布を示すグラフである。
図6】本発明の一実施例によるポリマービーズの粒径分布を示すグラフである。
【0011】
発明の詳細な記述
本明細書に記載されている本発明は、記載されている特定の方式、手順および試薬は変動し得るので、これらに限定されないことが理解されよう。本明細書で用いている専門用語は特定の実施形態のみを説明する目的のものであり、本発明の適用範囲を限定しようとするものではないことも理解されたい。別に定義しない限り、本明細書で用いる全技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同一の意味を有するものとする。本明細書に記載されているのと同様のまたは同等の方法および材料であればいずれも本発明の実施または試験に用いることができる。
【0012】
本明細書で引用または言及する全特許、特許出願および他の特許ならびに非特許刊行物を含む全刊行物は、少なくともそれらを引用している目的、たとえば本発明で用いてもよい材料もしくは方法の開示または説明を含む目的で、参照により本明細書に組み込まれるものとする。本明細書中の何物も、ある刊行物または他の参考文献(「発明の背景」節のみで引用している任意の参考文献を含む)が本発明の従来技術であるか、または本発明がたとえば従来発明により、そのような開示に先立つ資格を有しないことを認めるものと解釈すべきでない。
【0013】
当業者は本明細書で示す数値は近似値であることを理解するであろう。一般に、別に示さない限り、「約」および「およそ」等の用語には示した値の20%以内、より好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内が含まれる。
【0014】
次により詳細に図面を参照すると、図1には反応器ユニット20が図示され、反応器ユニット20は噴射形成膜18を有し、噴射形成膜18は槽2に取り付けられた供給管17に接続する。膜18を振動させる振盪機には供給管17を組み込んだ振動子8が含まれる。この振動子は振動子8が振動信号発生器により発生する振動数で振動するように、電気接触により振動数可変の(振動)電気信号発生器(図示せず)に接続する。図2において、膜18には分散相(重合性モノマーまたは親水コロイド)を含む環30が含まれる。膜18には供給管17を介して分散相が供給されている。膜18はまた、分散相と不混和性の液体を含む懸濁媒体の液相16中に吊るされている。この膜18は連続した側壁をもつ外側円筒形の部品、および環を囲む連続した側壁をもつ内側円筒形部品を含む、二重壁の缶形または円筒形に形状設定されている。図2に示すように、内側部品の側壁は外側部品の側壁から内向きに隔置されており、外壁の高さ全体にわたり一定の直径を備えている。その内側部品の側壁および外側部品の側壁は連続した上部の縁および下部の縁を備えており、その縁は内側部品と外側部品との間に気密室を形成するように接合している。膜18の内壁および外壁は貫通孔(または細孔)32を備える。膜18が円筒形で二重壁形であることにより、膜18上の各細孔32内に同等の力/加速度が確実に得られるようになる。このことは均一なビーズが確実に発生できるようになるために必要である。
【0015】
操作において、1種または複数種の共重合性モノマーの混合物、または1種または複数種の共重合性モノマーもしくは親水コロイド(デキストロース、アガロース等、(多糖))もしくは他のゲル形成化合物(PEG、PVA等)と、非重合性材料(たとえば、不活性ポロゲンまたは細孔形成材料、プレポリマー等)との混合物を含む相を含む分散相は槽2を介して供給管17に導入され、膜18中の環30中に堆積する(または充填される)。この分散相は分散相が複数の分散相液滴21を形成する流れ特性を有する噴射を形成するのに十分な速度で膜18の細孔32を通して液相16中に押し出されるような速度で供給管17中に供給される。この分散相液滴は反応器ユニット20中に直接発生する。
【0016】
分散相噴射が液相16に流れ込むとき、その噴射は噴射を液滴に破断する振動数に励起されている。一般に、膜18は実質的に均一のサイズの液滴が調製されるような適切な条件により励起される。用語「実質的に均一の」は、液滴が約30%または約10、15、20、25、または約29%未満の変動係数(すなわち、集団の標準偏差を母平均で割った値)を有する粒径分布を示すことを意味する。約15%未満の変動係数が好ましい。本発明の他の実施形態では、ビーズの約70パーセント、または約90パーセントが、ビーズの平均体積粒子直径の約0.90から約1.1倍の体積粒子直径を有する。
【0017】
液滴が形成される特定の条件は、様々な因子、詳細には生成する液滴および生成する球状ポリマービーズの所望のサイズおよび均一性に依存する。一般に、分散ビーズ液滴は好ましくは約20%未満、より好ましくは約15%未満の粒径分布の変動係数をもつように調製される。もっとも好ましくは、モノマー液滴の粒径の変動係数は約10%未満である。分散相液滴の形成後、続いて顕著な凝集または追加の分散が起こらない条件により分散相の重合またはゲル形成が行われ、結果として少なくとも約50体積パーセントがビーズの平均粒子直径の約0.9から約1.1倍の粒子直径を有するような粒径を有する球状ポリマービーズが形成されるであろう。有利には、ビーズの少なくとも約60体積パーセント、好ましくは70体積パーセント、より好ましくは少なくとも約75体積パーセントがそのような粒径を示す。本発明は約1μmから約300μmの間の体積平均粒径(すなわち、粒子の単位体積に基づく平均直径)を有する球状ポリマービーズも提供する。本発明のポリマービーズの平均体積直径は、好ましくは約1μmから約300μmの間、より好ましくは約10から約180μm、または約35から約180μmの間であり、追加の好ましい範囲は約40μmから約180μm、約100から約160μmの間である。体積平均粒径は任意の従来の方法、たとえば光学撮像、レーザ回析またはエレクトロゾーン感知により測定してもよい。エレクトロゾーン感知では導電した水溶液中に浸漬した粒子試料を分析する。溶液中にアノードおよびカソードをオリフィスの形に形成する。圧力によりオリフィスを通じて粒子をポンプ給送する。各粒子はオリフィスを通過するときある量の液体に置換し、電界中に混乱を引き起こす。混乱の程度は粒子のサイズに対応し、インピーダンス中の変化の数およびサイズを測定することにより、粒子分布をたどることができる。粒子直径も光学顕微鏡法により、または米国特許第4,444,961号明細書に記載されている技術等の他の従来の技術を用いることにより測定してもよい。
【0018】
本発明の多様な要素に関連して、噴射形成膜18は分散相の1回または複数回の噴射が層流特性を有して形成されるような条件下で分散相が通過することができる任意の手段を含むことができる。膜18は複数の細孔を有する板または同様の装置からなることができるが、膜18が図2に示すように環を囲む二重壁の缶形を含むことが好ましい。缶形膜を用いることにより、反応器中の比較的小さな体積しか占めなくなることが可能になり、膜の1cm当たり0.006から0.6kg/時間の範囲である均一の滴が、高い生産性で発生することもできるようになる。たとえば、6×16cmの缶膜については、生産性は3kg/時間から300kg/時間であり得る。膜18はろうそく形、渦巻き形、または平らであってもよい。膜18の環を囲む外壁は複数の貫通孔32を含む。たとえば、この膜は膜の表面全体に1cm当たり約200から約40,000個、好ましくは1,500から4,000個の細孔を含み得る。膜細孔の形は異なっていてもよい。たとえば、細孔の形は円筒形または円錐形であり得る。図3は本発明の円錐形の膜細孔42の概略図である。他の実施形態では、細孔はスロット形である。この実施形態では、スロットはスロット幅対スロット長の縦横比が少なくとも1:2、好ましくは1:3である。スロット幅対スロット長の縦横比は1:2から1:100の範囲であり得る。膜細孔は任意の従来の方法で作製してもよい。たとえば、膜細孔は穿孔または電鋳により作製してもよい。膜細孔は好ましくは適切なマンドレル上でニッケルの電気めっきまたは無電解めっきにより電鋳する。電鋳膜の使用により、要求されるほとんどどんなピッチでも、様々な孔径および孔形状が可能になる。このことは滴サイズを微細に調節し、明確に定義された粒径分布をもつポリマービーズの高生産を達成する可能性を示す。機械的穿孔ではなく電鋳により、円形の細孔が生産できるようになり、単位面積あたりより多数の細孔ができる。本発明のいくつかの実施形態では、膜細孔は表面に垂直方向である。他の実施形態では、膜細孔はある角度、好ましくは40から50度までの角度で配置する。細孔32の直径は約1.0μm未満から約100μm、好ましくは10μmから50μmの範囲であることができ、直径は最小の直径42をもつ開口部の断面を指す。各開口部の直径は主として分散相液滴の所望のサイズにより決定する。典型的には、所望の液滴径は約5から約300μm、より典型的には約25から約120μm、もっとも典型的には約40から約110μmで変動するだろう。このサイズの液滴を生産する細孔直径は物理的特性、たとえば分散相の粘度、密度および表面張力、ならびに振動励起の条件等の様々な因子に依存するが、典型的には、約1から約100μm、より典型的には約10から約45μmの細孔直径を用いる。
【0019】
膜18中の複数の細孔32は、均一なサイズのモノマー液滴の形成および生成する液滴の安定性が層流噴射および近傍の噴射の液滴形成の影響を受けないように、互いから離れた距離に隔置する。一般に、近傍の噴射から形成される液滴間の相互作用は距離を各通路の中心部から測定した場合、もっとも近い通路から離れる各開口部の直径の少なくとも約1.2~5倍の距離で通路が隔置される場合顕著でない。同様に、反応器または回収タンク中で複数の膜を用いる場合、膜の間隔および配設は近傍膜での液滴の形成により液滴の形成が阻害されないように配置する。
【0020】
膜18は金属、ガラス、プラスチックまたはゴム等の様々な材料から調製できるが、好ましくは穴をあけた金属膜を使用する。この膜は実質的に金属であり、または完全に金属であってもよい。この膜は貴金属またはステンレス鋼等の化学的耐性のある金属を含んでもよく、または化学試薬で前処理してもよい。本発明で用いる適切な材料および膜構成は、たとえば、国際公開第2007/144658号パンフレットに開示されており、参照により本明細書にその全体が組み込まれている。一実施形態では、膜はニッケル製であり、またはニッケルめっきを施されていてもよく、超疎水性コーティングでコーティングしてあってもよい。
【0021】
超疎水性コーティングは、ニッケルめっき溶液中で、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)サブミクロン(たとえば、ナノメーター)ビーズでコーティングすることにより膜の表面(囲繞面を含み、膜の細孔をもつ)に塗布し、無電解析出により膜に塗布してもよい。そのようなコーティングは任意選択でTeflon(登録商標)AF 1600(CAS 37626-13-4)等のアモルファスなフッ素樹脂でさらにコーティングしてもよい。
【0022】
分散相噴射が液滴、好ましくは一般的な均一のサイズの液滴に破断されるように分散相噴射を励起させることができる振動数で振れ、または振動する任意の手段で振動をもたらす。振動励起により分散相が懸濁相中に出て行く地点で膜全体に均一な剪断力が起こる。この剪断力は液滴を作り出し、膜を介した分散相の流れを中断させると考えられている。この剪断力は振動する、回転する、脈動する、または揺動する動きにより急速に膜を変位させることによりもたらすことができる。剪断の向きは分散相の出て行く向きに対して実質的に垂直方向である。振動力に対して横行する細孔開口部を有することにより、細孔開口部で形成された噴射を液滴に破断するのに十分な振動加速度がもたらされる。膜の振動の振動数は市販の起震器を用いて10Hzから20,000Hz、Electro Dynamic shaker供給のPermanent magnet shakerまたはPiezo electro-cellのようなピエゾ電子起震器を用いる場合、500,000Hzまでとすることができる。典型的な振動の振動数は10Hz~20000Hz、好ましくは20~100Hzである。適切な振幅値は約0.001から約70mmの範囲である。
【0023】
懸濁重合法について、分散相には膜を介した液滴形成時に懸濁媒体全体にわたり分散した不連続相を形成する1種または複数種の重合性モノマーが含まれる。本発明の重合性モノマーは、液体中でのモノマー分散時に液滴を形成するのに十分なだけ、液体(または界面活性剤を含む液体)中で不溶性の重合性モノマー、または2種類以上の共重合性モノマーの混合物である。有利には、重合性モノマーは懸濁重合技術により重合性モノマーである。そのようなモノマーは当技術分野でよく知られており、たとえば、E. Trommsdoff et al., Polymer Processes, 69-109 (Calvin E. Schildknecht, 1956)に記載されている。
【0024】
重合性水溶性モノマーも本発明の適用範囲に含まれている。たとえば、本発明は水中で水溶液を形成するモノマーであり、生成する溶液が1種または複数種の他の懸濁液、一般に水不混和性の油等に十分に不溶性であり、したがってモノマー溶液が液体中への分散時に液滴を形成するモノマーの使用を企図している。代表的な水溶性モノマーには、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマルアミドおよびエタクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボキサミド;不飽和カルボン酸および無水物のアミノアルキルエステル;エチレン性不飽和カルボン酸、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸等を含む、米国特許第2,982,749号明細書に記載されているような従来の油中水型懸濁(すなわち、逆懸濁)重合技術により重合することができるモノマーが挙げられる。本明細書で用いるのに好ましいモノマーはエチレン性不飽和カルボキサミド、詳細にはアクリルアミド、およびアクリル酸またはメタクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸である。
【0025】
親水コロイドおよびゲル形成化合物も本発明の適用範囲に含まれる。たとえば、本発明は水中で水溶液を形成するアガロースであり、生成する溶液が1種または複数種の他の懸濁液、一般に水不混和性の油等に十分に不溶性であり、したがってアガロース溶液またはゲル形成化合物溶液が液体中への分散時に液滴を形成する、アガロースの使用を企図している。代表的な水溶性親水コロイドには文献によく説明されている任意の手段により、また当技術分野でよく知られている技術により、ゲルへと形成することができる分散相が挙げられる。続いて利用可能な刊行物により、また当技術分野でよく知られている技術により、上記のように形成されるゲルビーズの架橋結合が達成される。
【0026】
分散相中に存在するモノマーの量は変動する。一実施形態では、分散相にはモノマーを可溶化するのに十分な液体が含まれる。他の実施形態では、モノマーは水相中に分散している全モノマーの約50重量パーセント未満を占める。好ましくは、モノマーはゲルポリマー用の水相中に分散しているモノマーの約30から50重量パーセントを占める。他の実施形態では、ポロゲンが存在する場合、モノマーは全モノマー/水相の約30重量パーセント未満を占める。好ましくは、モノマーはマクロ多孔性ポリマー用の水相中に分散しているモノマーの約20から35重量パーセントを占める。
【0027】
モノマーは一般にUV光または熱によるフリーラジカル開始、またはこれらの方法の組合せにより重合することができるが、本発明では好ましくは化学ラジカル開始剤を用いる。過硫酸塩、過酸化水素またはヒドロペルオキシド等のフリーラジカル開始剤も用いることができる。典型的には、有機開始剤と乾燥モノマーとの比は約0.1から約8重量%、または約0.5から約2重量%、好ましくは約0.8から約1.5重量%である。
【0028】
液体または懸濁相は重合性モノマーまたは分散相と不混和性の、懸濁液を含む媒体である。典型的には、分散相に水溶性モノマーまたは親水コロイドの溶液が含まれる場合、懸濁相として水不混和性の油を用いる。そのような水不混和性の油には、好ましくは約4から約15個の炭素原子を有し、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、トルエン、鉱物油および液体パラフィン等の芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素、またはその混合物を含む、塩化メチレン、液体炭化水素等のハロゲン化炭化水素が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0029】
懸濁相の粘度は、有利にはモノマー液滴が懸濁相全体を簡単に動くことができるように選択する。一般に、懸濁相の粘度が分散相の粘度より高いか、または実質的に同様である(たとえば同一の桁)場合、液滴形成が実現しやすく、懸濁媒体全体にわたる液滴の動きが円滑化する。好ましくは、懸濁媒体は室温で約50センチポアズ単位(cps)未満の粘度を有する。10cps未満の粘度値が好ましい。一実施形態では、懸濁相の粘度は分散相の粘度の約0.1から約2倍である。
【0030】
本発明の水不混和性の油懸濁相で用いるのに適した粘度調整剤の例として、エチルセルロースが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0031】
典型的には、懸濁相には懸濁化剤も含まれる。当業者に公知の懸濁化剤の例はHLB(親水性-親油性バランス)5未満の界面活性剤である。好ましくは、水相中の懸濁化剤の総量は0.05%から4%、より好ましくは、0.5%から2%である。
【0032】
重合性モノマー液滴は複数の膜細孔32を介して懸濁相中にモノマー相を分散させることにより形成される。膜を介した直鎖状モノマーの流量は1~50cm/s、好ましくは40、30、20、または10cm/s未満で変動し得る。ポンプ給送、または圧力を加えて(または加圧とポンプ給送との組合せ)分散相を懸濁液中に送ることにより、好ましくはポンプ給送により、モノマー液滴を懸濁相中に送ることができる。一実施形態では、加える圧力は0.01から4バール、好ましくは0.1から1.0バールの範囲である。他の実施形態では、分散相を懸濁液に送るためにピストン、または隔膜等の同様の手段を用いる。
【0033】
重合反応容器20は有利にはかき混ぜまたは撹拌して重合中にモノマー液滴が顕著な凝集または追加の分散をしないようにする。一般に、撹拌の条件は撹拌によりモノマー液滴が著しくサイズを変更しないように、モノマー液滴が反応容器中で著しくまとまらないように、懸濁液中で顕著な温度勾配が発生しないように、また重合して大きなポリマーの塊を形成するおそれがあるモノマープールが反応容器中で実質的に形成できないように選択する。一般に、これらの条件はBates et al., "Impeller Characteristics and Power," Mixing, Vol. I, V. W. Uhl and J. B. Gray, Eds, published by Academic Press, New York (1966), pp. 116-118に記載されているような撹拌機(かい)を用いて実現することができる。好ましくは、撹拌機はBatesらのpp. 116-118に記載されているようなアンカー式もしくはゲート式、または「ループ」式もしくは「泡立て器」式である。より好ましくは、図1に示すように、撹拌機の棒は懸濁液表面から上に延び、それによって懸濁液表面上でモノマープールが形成されないようにする。
【0034】
重合完了時に、生成したポリマービーズを濾過等の従来技術により回収してもよい。次に、回収したビーズをさらに加工することができる。
【0035】
他の実施形態では、ポリマービーズの冷却速度が仕上がったビーズの多孔性に影響し得ることが発見されている。与えられた制御された温度変化に対して、図1を参照しながら、反応器20中でビーズが形成された後、ビーズは脈動流ポンプ22に向かって懸濁液中に絞り出される。次に懸濁液は栓流反応器24を通って移動し、この栓流反応器24は温度を低下させ、それによって所定の時間枠にわたってビーズを硬化させる。硬化したビーズ26が栓流反応器24を出たら、回収容器28に収集する。
【0036】
本発明の方法および組成物は、重合性モノマー、詳細には懸濁重合技術を用いて重合性モノマーから均一のサイズの球状ポリマー粒子を調製するための非常に効率的で生産的な方法を提供する。
【0037】
以下の実施例は、上記の発明を用いた方式をより完全に説明するのみならず、本発明の多様な態様を実施するために企図される最良の方法を説明する働きをする。これらの実施例は本発明の適用範囲を少しも限定する働きをせず、むしろ例示の目的で示されていることが理解されよう。
【実施例
【0038】
[実施例1]
超疎水性表面をもつ膜の調製。1cm当たり約1500個の細孔を有し、各細孔が直径16μmであり、電鋳により形成されるニッケル板を、二重壁の円筒形の缶形(「缶」)になるように組み立てた。次にこの缶を30分間10%水酸化ナトリウム溶液中に浸し、次いで水洗浄することにより、洗浄した。次にこの缶を30分間5%クエン酸溶液中に浸し、次いで水洗浄した。次にこの洗浄した缶を室温で1分間亜リン酸ニッケル水溶液(ニッケル80g/l(70~90g/l)リン25g/l(20~30g/l))中に浸した。この缶を85℃に保持したPTFE無電解ニッケルめっき溶液を含むタンクに移し、10~30分間めっきを続けた。(Caswell Europeから)。次にこの缶を超音波水浴中で音波処理洗浄し、160℃で2時間乾燥させた。次にこの缶をトルエン浴中で3回洗浄し、次に60℃で1時間乾燥させた。次にPFTEコーティング缶を周囲温度で2時間0.5%Teflon AF(Sigma Aldrich CAS 37626-13-4)の電子液体Fluorinert FC-70(3M Performance Materials、セントポール、ミネソタ州から入手)溶液中に浸した。次にTeflon AFコーティング缶を純粋なFluorinert FC-70で洗い流し、最後に160℃で2時間乾燥させた。
【0039】
[実施例2]
均一なアガロースビーズ(体積平均直径82μm)の調製

図1に示す器具構成を用いて均一の粒径のアガロースビーズを製造した。下記を含むアガロース相(分散相)を中性pHで調製した:
【0040】
【表1】
【0041】
連続した(懸濁)相は1.5%のSPAN80非イオン性界面活性剤(オレイン酸ソルビタン)を含む鉱物油SIPMED15からなる。
【0042】
室温で水中でアガロースを懸濁させることにより、かい式オーバーヘッド撹拌機を備えた3リットルの覆い付き反応器中で、分散モノマー相を調製した。温度を90℃に上昇させ、この温度で90分間撹拌した。次に温度を80℃に低下させた(これがインジェクション温度であった)。次に分散相を流量16ml/分で膜に供給した。
【0043】
この実施例で用いた膜は懸濁相と分散相とを接続する、約250,000個の16μmの円錐形の貫通孔を含む、4×4cm(L/d)のニッケル性超疎水性膜(純ニッケル)であった。次に歯車ポンプを用いて16ml/分の速度でこの膜を介して分散相を懸濁相中に送った。この膜を振動数21Hz、振幅2.6mmに振動励起して、アガロース相が懸濁相中に分散して、懸濁相中に複数のアガロース液滴を形成するようにした。液滴サイズを変更することなく液滴を懸濁させるのに十分な撹拌の下で、5リットルのガラス反応器フラスコ中に、生成した液滴エマルションを入れた。次にその反応器を20℃に冷却した。アガロースビーズを油相から分離し、ビーズを洗浄した後、以下の特性を認めた:体積平均粒径は82μm、均一性係数は1.28、分布のSPANは0.44であった。SPANは(D90-D10)/D50すなわち90%体積でのビーズの直径から、10%体積での直径を50%体積でのビーズの直径で割った商を引いた値として定義され、平均サイズ分布の広がりまたは収率に正規化した無次元量を示す。
【0044】
[実施例3]
均一なアガロースビーズ(体積平均直径63μm)の調製
膜振動の振動数が21.5Hzで振幅が3mmであることを除いては、実施例2を繰り返した。アガロースビーズを油から分離し洗浄した後、以下の特性を認めた:体積平均粒径は63μm、均一性係数は1.20、SPAN=0.32であった。
【0045】
[実施例4]
均一なアガロースビーズ(体積平均直径71μm)の調製
膜振動の振動数が21Hzで振幅が2.8mmであることを除いては、実施例2を繰り返した。アガロースビーズを油から分離し洗浄した後、以下の特性を認めた:体積平均粒径は71μm、均一性係数は1.29、SPAN=0.45であった。
【0046】
表1に示した同一の濃度をもつアガロース溶液の標準的な撹拌したバッチの乳化の結果と、実施例4の結果。この撹拌したバッチビーズを40および120μmふるいによりふるい分けた。Coulter Multisizerで測定した双方についての体積サイズ分布を図4に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
[実施例5]
膜振動の振動数が21.5Hzで振幅が2.8mmであることを除いては、実施例2を繰り返した。アガロースビーズを油から分離し洗浄した後、以下の特性を認めた:体積平均粒径は66μm、均一性係数は1.23、SPAN=0.35であった。
【0049】
表1に示した同一の濃度をもつアガロース溶液の標準的な撹拌したバッチの乳化の結果と、実施例5の結果。このビーズを40および120μmふるいによりふるい分けた。顕微鏡で測定した3つ全ての体積サイズ分布を表2および図5に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
[実施例6]
疎水性膜および超疎水性膜をもつ均一なアガロースビーズの調製。
40×40mm缶1個を疎水性処理および超疎水性処理後に用いた。最初に純ニッケル膜を周囲温度で2時間0.5%Teflon AF(Sigma Aldrich CAS 37626-13-4)の電子液体Fluorinert FC-70(3M Performance Materials、セントポール、ミネソタ州から入手)溶液中に浸した。次にTeflon AFコーティング缶を純粋なFluorinert FC-70で洗い流し、最後に160℃で2時間乾燥させた。
【0052】
バッチを生産した後、この膜をTeflon AFから取り除き、実施例1中に記載しているような超疎水性処理を実施した。
【0053】
疎水性膜および超疎水性膜による乳化のために同一の振動条件を用いた(24Hz、振幅3mm、噴射速度14ml/分)。
【0054】
乳化の結果を表3に示す。疎水性膜による約1時間のインジェクション後、PSDは広がり、より大きな滴が形成され、最後にPSDは超疎水性膜を用いて得たPSDよりも実質的に悪化した。超疎水性膜の分布の均一性係数(UC)は1.26であるが、疎水性膜のUCは1.60である。
【0055】
【表4】
【0056】
表3の結果を図6にグラフで表す。
【0057】
[実施例7]
制御可能な滴固化のための栓流反応器の使用。
本実施例では、同一の条件下で同一の膜を用いて生産した2バッチの滴が異なる冷却温度プロファイルで栓流反応器の中を流れた。第1の例では15~20分間にわたって80℃から20℃への冷却が起こった。しかし、第2の例では、滴は200~250分間にわたって20℃に冷却された。得られた多孔性アガロースビーズをサイズ排除クロマトグラフィーにより多孔性について試験した。表4に挙げたタンパク質について分配係数を測定した。急速な冷却により低速な冷却よりも小さい分配係数が得られ、それゆえ高速で冷却したビーズの多孔性はより小さくなる。
【0058】
【表5】
【0059】
図面の図4は示す:
【0060】
【表6】
以下の態様を包含し得る。
[1] 複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜がニッケルであり、超疎水性コーティングでコーティングされており、第1の量が前記膜の第1の面と接触しており、第2の量が前記膜の第2の面と接触しており、前記第1の量が重合性モノマー相を含み、前記第2の量が前記モノマー相と不混和性の液体を含む、ステップと、
前記重合性モノマーを含む複数のモノマー液滴を形成するのに十分な条件下で前記貫通孔を通じて前記第1の量を前記第2の量中に分散させるステップであって、剪断力が前記第1の量が前記第2の量中に出て行く地点で提供され、剪断の向きが前記第1の量が出て行く向きに対して実質的に垂直方向であり、前記剪断力が前記膜を前記第2の量に対して変位させることにより提供される、ステップと、
前記第2の量中に分散した前記液滴を重合させるステップと
を含む、約10から約180μmの体積平均粒径を有する球状ポリマービーズを調製するための方法。
[2] 前記膜が前記膜の1cm 当たり約200から約2,000個の貫通孔を含む、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記貫通孔が約1μmから約100μmの範囲の直径を有する、上記[1]に記載の方法。
[4] 前記貫通孔が約20μmから約60μmの範囲の直径を有する、上記[3]に記載の方法。
[5] 距離を各貫通孔の中心部から測定する場合、前記複数の貫通孔が互いから各貫通孔の直径の少なくとも約20倍の距離で配置されている、上記[1]に記載の方法。
[6] 前記モノマー相が前記貫通孔を通じて前記第2の量中に約1から約50cm/sの速度で分散する、上記[1]に記載の方法。
[7] 前記ビーズが1.2未満の均一性係数を有する粒径分布を有する、上記[1]に記載の方法。
[8] 前記変位させることが回転する、脈動する、または揺動する動きである、上記[1]に記載の方法。
[9] 前記第1の量に圧力をかけることにより、前記第1の量が前記第2の量中に分散する、上記[1]に記載の方法。
[10] 前記膜がニッケルめっきを施されている、上記[1]に記載の方法。
[11] 前記複数の貫通孔が円錐形である、上記[1]に記載の方法。
[12] 前記貫通孔がスロット形であり、スロット幅対スロット長の縦横比が少なくとも1:2である、上記[1]に記載の方法。
[13] 分散相がアガロースまたは他のゲル形成化合物を含む、上記[1]に記載の方法。
[14] 前記重合性モノマー相がポロゲンを含む、上記[1]に記載の方法。
[15] 前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンである、上記[1]に記載の方法。
[16] 前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンの粒子を含む、上記[15]に記載の方法。
[17] 前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、上記[15]に記載の方法。
[18] 前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、上記[15]に記載の方法。
[19] 前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングの上面に塗布されているアモルファスなポリテトラフルオロエチレンのコーティングをさらに含む、上記[15]に記載の方法。
[20] 複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜がニッケルであり、超疎水性コーティングでコーティングされており、第1の量が前記膜の第1の面と接触しており、第2の量が前記膜の第2の面と接触しており、前記第1の量がアガロース溶液を含み、前記第2の量が前記アガロース溶液と不混和性の液体を含む、ステップと、複数のアガロース液滴を形成するのに十分な条件下で、前記貫通孔を通じて前記アガロース溶液と不混和性の前記液体中に前記アガロース溶液を分散させるステップであって、前記第1の量が前記第2の量中に出て行く地点で剪断力が提供され、剪断の向きが前記第1の量が出て行く向きに対して実質的に垂直方向であり、前記膜を前記第2の量に対して変位させることにより前記剪断力が提供される、ステップと、前記第2の量中に分散している前記アガロース液滴を硬化させてアガロースビーズを形成するステップとを含む、約10から約180μmの体積平均粒径を有する球状アガロースビーズを調製するための方法。
[21] 前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンである、上記[20]に記載の方法。
[22] 前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンのナノ粒子を含む、上記[21]に記載の方法。
[23] 前記超疎水性コーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、上記[21]に記載の方法。
[24] 前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、上記[21]に記載の方法。
[25] 複数の貫通孔を含む金属膜を含む器具を用意するステップであって、前記金属膜がニッケルであり、超疎水性コーティングでコーティングされており、水性アガロース溶液が前記膜の第1の面と接触しており、鉱物油が前記膜の第2の面と接触している、ステップと、複数のアガロース液滴を形成するのに十分な条件下で、前記貫通孔を通じて前記鉱物油中に前記アガロース溶液を分散させるステップであって、前記アガロース溶液が前記鉱物油中に出て行く地点で剪断力が提供され、剪断の向きが前記アガロース溶液が出て行く向きに対して実質的に垂直方向であり、前記膜を前記鉱物油に対して変位させることにより前記剪断力が提供される、ステップと、前記鉱物油中に分散している前記アガロース液滴を硬化させてアガロースビーズを形成するステップとを含む、約10から約180μmの体積平均粒径を有する球状アガロースビーズを調製するための方法。
[26] 前記超疎水性コーティングがポリテトラフルオロエチレンである、上記[25]に記載の方法。
[27] 前記ポリテトラフルオロエチレンコーティングがポリテトラフルオロエチレンのナノ粒子を含む、上記[26]に記載の方法。
[28] 前記超疎水性コーティングが元素状ニッケルのナノ粒子をさらに含む、上記[26]に記載の方法。
[29] 前記超疎水性コーティングが無電解析出により前記膜に塗布される、上記[26]に記載の方法。
[30] 前記アガロース溶液が前記貫通孔を通じて分散する前に加熱される、上記[25]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6