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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20220719BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220719BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20220719BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08G18/80 096
C08G18/10
C08G18/80 070
C08G18/42
C08G18/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019560571
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018047053
(87)【国際公開番号】W WO2019124511
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2017245989
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 辰也
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-521541(JP,A)
【文献】特開昭60-252619(JP,A)
【文献】特開2002-205458(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025776(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/139117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/80
C08G 18/10
C08G 18/42
C08G 18/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記ポリイソシアネート化合物は、数平均分子量が250以上の高分子量ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、
前記高分子量ポリオールは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシプロピレングリコール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールである
ことを特徴とする、ブロックイソシアネート。
【化1】

(式中、R~Rは、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R~Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。RおよびRは、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記高分子量ポリオールは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールであることを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートからなることを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項4】
前記第2ブロック剤は、
イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物からなる群から選択される2種のブロック剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項5】
数平均分子量が250以上の高分子量ポリオールに加えて、活性水素基を含有する親水性化合物により変性されていることを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、ポリオール成分(主剤)とポリイソシアネート成分(硬化剤)とを混合して反応させることにより得られ、各種産業分野において広範に使用される。
【0003】
そのようなポリウレタン樹脂の加工性の向上の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合物(以下、ポリウレタン樹脂組成物とする。)のポットライフの向上が望まれている。そこで、ポリイソシアネート成分に、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされるブロックイソシアネートを用いることが知られている。
【0004】
ブロックイソシアネートは、加熱によりブロック剤が解離し、イソシアネート基が再生するため、ポリイソシアネート成分にブロックイソシアネートを用いれば、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。
【0005】
そのようなブロックイソシアネートとして、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体が、第1ブロック剤としてのグアニジン系化合物と、第2ブロック剤としてのイミダゾール系化合物とにブロックされるブロックイソシアネートが提案されている(例えば、特許文献1(実施例1~4)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-82208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、ポリウレタン樹脂は、種々の用途に応じた特性が要求され、例えば、塗料や接着剤などの用途に使用される場合、優れた耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく確保することが要求される。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のブロックイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂では、耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性のそれぞれの向上を図るには限度があり、それらをバランスよく確保できない場合がある。
【0009】
本発明は、ポリウレタン樹脂に、優れた耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく付与することができるブロックイソシアネートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、ポリイソシアネート化合物がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、前記ポリイソシアネート化合物は、数平均分子量が250以上の高分子量ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物である、ブロックイソシアネートを含む。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R~Rは、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R~Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。RおよびRは、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
本発明[2]は、前記高分子量ポリオールは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールである、上記[1]に記載のブロックイソシアネートを含む。
【0013】
本発明[3]は、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートからなる、上記[1]または[2]に記載のブロックイソシアネートを含む。
【0014】
本発明[4]は、第2ブロック剤は、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物からなる群から選択される2種のブロック剤を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のブロックイソシアネートを含む。
【0015】
本発明[5]は、活性水素基を含有する親水性化合物により変性されている、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のブロックイソシアネートを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のブロックイソシアネートでは、ブロック剤によってブロックされる前のポリイソシアネート化合物が、高分子量ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であり、高分子量ポリオールによって変性されている。
【0017】
そして、そのようなポリイソシアネート化合物が、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤と、第2ブロック剤とによってブロックされるので、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂に、優れた耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のブロックイソシアネートは、ブロック剤によってブロックされたポリイソシアネート化合物であり、ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応生成物(高分子量ポリオール変性ポリイソシアネート)である。
【0019】
<溶剤系ブロックイソシアネート>
まず、本発明のブロックイソシアネートの第1実施形態としての溶剤系ブロックイソシアネートについて説明する。溶剤系ブロックイソシアネートは、例えば、非水分散性ブロックイソシアネートであり、例えば、溶剤(後述)に溶解して用いられる。
【0020】
(1)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネートと、数平均分子量が250以上の高分子量ポリオールとの反応生成物であり、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有する。
【0021】
(1-1)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートとして、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、脂肪族ポリイソシアネート単量体、脂肪族ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネート単量体として、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0024】
また、脂肪族ポリイソシアネート単量体は、脂環族ポリイソシアネート単量体を含む。
【0025】
脂環族ポリイソシアネート単量体として、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(HXDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体、低分量ポリオール変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の2量体(例えば、ウレトジオン変性体)、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体などが挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリイソシアネート単量体の低分量ポリオール変性体は、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、数平均分子量が250未満の低分子量ポリオールとの反応生成物(アルコールアダクト体)である。
【0029】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上、好ましくは、3つ以上有する数平均分子量60以上250未満、好ましくは、200以下の化合物である。低分子量ポリオールとして、例えば、2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソソルビド、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールAなど)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなど)、4価アルコール(例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなど)、5価アルコール(例えば、キシリトールなど)、6価アルコール(例えば、ソルビトールなど)、7価アルコール(例えば、ペルセイトールなど)などが挙げられる。低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0030】
低分子量ポリオールのなかでは、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のアロファネート変性体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、上記した低分子量ポリオールとを、公知のアロファネート化触媒の存在下で反応させた反応生成物である。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のビウレット変性体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、水やアミン類とを、公知のビウレット化触媒の存在下で反応させた反応生成物である。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のウレア変性体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、ジアミンとの反応生成物である。
【0034】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のオキサジアジントリオン変性体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、炭酸ガスとの反応生成物である。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のカルボジイミド変性体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応による反応生成物である。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のウレトンイミン変性体は、例えば、上記のカルボジイミド変性体と、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体との反応生成物である。
【0037】
芳香族ポリイソシアネートとして、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体、芳香族ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0038】
芳香族ポリイソシアネート単量体として、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネート誘導体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート誘導体と同様の誘導体が挙げられ、具体的には、上記した芳香族ポリイソシアネート単量体の多量体、アロファネート変性体、低分量ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。さらに、芳香族ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体、芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0041】
芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体として、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0042】
芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート誘導体と同様の誘導体が挙げられ、具体的には、上記した芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体、アロファネート変性体、低分量ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
このようなポリイソシアネートのなかでは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートからなる。
【0044】
ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートからなると、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂の耐折曲性および耐衝撃性の向上を確実に図ることができる。
【0045】
また、脂肪族ポリイソシアネートのなかでは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の3量体が挙げられ、とりわけ好ましくは、HDIのイソシアヌレート変性体、および、HXDIのイソシアヌレート変性体が挙げられ、特に好ましくは、HDIのイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0046】
また、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
【0047】
また、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の含有量(NCO%)は、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0048】
(1-2)高分子量ポリオール
高分子量ポリオールは、ポリイソシアネートを変性する変性剤である。高分子量ポリオールの数平均分子量は、250以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上、とりわけ好ましくは、1000以上、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
【0049】
高分子量ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。高分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0050】
ポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリオキシ(C3)アルキレンポリオール(例えば、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)など)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリトリメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0051】
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジペート系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0052】
ポリカーボネートポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物、上記した2価アルコールと開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0053】
ポリウレタンポリオールとして、例えば、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0054】
エポキシポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールと、多官能ハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリンなど)との反応生成物などが挙げられる。
【0055】
植物油ポリオールとして、例えば、ヒドロキシル基含有植物油(例えば、ひまし油、やし油など)、エステル変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0056】
ポリオレフィンポリオールとして、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0057】
アクリルポリオールとして、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)と、それと共重合可能な共重合性ビニルモノマー(例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニルモノマーなど)との共重合体などが挙げられる。
【0058】
シリコーンポリオールとして、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、ビニル基を含むシリコーン化合物(例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなど)が配合されるアクリルポリオールなどが挙げられる。
【0059】
フッ素ポリオールとして、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、ビニル基を含むフッ素化合物(例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなど)が配合されるアクリルポリオールなどが挙げられる。
【0060】
ビニルモノマー変性ポリオールとして、例えば、上記した高分子量ポリオールと、ビニルモノマー(例えば、アルキル(メタ)アクリレートなど)との反応生成物などが挙げられる。
【0061】
このような高分子量ポリオールのなかでは、好ましくは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。言い換えれば、高分子量ポリオールは、好ましくは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールである。また、その群のなかにおいて、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0062】
高分子量ポリオールが上記群から選択されるポリオールであると、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂に、耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく確実に付与することができる。
【0063】
(2)ポリイソシアネート化合物の調製
次に、ポリイソシアネート化合物の調製について説明する。
【0064】
ポリイソシアネート化合物を調製するには、上記したポリイソシアネートと、上記した高分子量ポリオールとを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0065】
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、高分子量ポリオールの水酸基の当量比(OH/NCO)は、例えば、0.005以上、好ましくは、0.02以上、例えば、0.2以下、好ましくは、0.04以下である。
【0066】
高分子量ポリオールの配合割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0067】
また、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとの反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において、例えば、有機溶媒の存在下において実施される。
【0068】
有機溶媒として、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0069】
このような有機溶媒のなかでは、好ましくは、エーテル類が挙げられる。
【0070】
有機溶媒の添加割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、50質量部以上、例えば、1000質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0071】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、110℃以下であり、反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
【0072】
反応の終了は、例えば、滴定法により測定されるイソシアネート量が変化しなくなることによって、判断できる。
【0073】
なお、無溶媒下において、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとを反応させることもできる。
【0074】
以上によって、2つ以上の遊離のイソシアネート基が残存するポリイソシアネート化合物が調製される。
【0075】
ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
【0076】
ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の含有量(NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、13質量%以上、例えば、25質量%以下、好ましくは、16質量%以下である。
【0077】
また、ポリイソシアネート化合物における、遊離状態のイソシアネート基の含有量の含有量は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.05質量%以上、例えば、1.3質量%以下、好ましくは、1.1質量%以下である。
【0078】
また、ポリイソシアネート化合物における、高分子量ポリオールに由来するポリオールユニットの含有量は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上、とりわけ好ましくは、8質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0079】
ポリイソシアネート化合物におけるポリオールユニットの含有量が上記下限以上であれば、ポリウレタン樹脂の耐溶剤性の向上を確実に図ることができる。ポリイソシアネート化合物におけるポリオールユニットの含有量が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂の耐折曲性、耐衝撃性の向上を図ることができる。
【0080】
なお、ポリイソシアネート化合物の調製は、1種のポリイソシアネートと1種の高分子量ポリオールとの反応に限定されない。ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとの反応として、例えば、1種のポリイソシアネートと2種以上の高分子量ポリオールとの反応、2種以上のポリイソシアネートと1種の高分子量ポリオールとの反応、2種以上のポリイソシアネートと2種以上の高分子量ポリオールとの反応が挙げられる。これら反応によれば、ポリイソシアネート化合物を調製できる。
【0081】
また、ポリイソシアネート化合物に、高分子量ポリオールによって変性されていないポリイソシアネート化合物を混合することもできる。
【0082】
(3)ブロック剤
ブロック剤は、第1ブロック剤と、第2ブロック剤とを含む。
【0083】
そのため、ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有する。
【0084】
(3-1)第1ブロック剤
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する。
【0085】
具体的には、第1ブロック剤は、後述する第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が大きく、下記一般式(1)で示される。第1ブロック剤は、グアニジン骨格を有するグアニジン化合物である。
【0086】
【化1】
【0087】
(式中、R~Rは、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R~Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。RおよびRは、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
上記一般式(1)において、R~Rは、互いに同一または相異なって、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R~Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示す。
【0088】
~Rで示される炭素数1~12の炭化水素基として、例えば、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基などが挙げられる。
【0089】
炭素数1~12のアルキル基として、例えば、炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基などが挙げられる。
【0090】
炭素数1~12の鎖状アルキル基として、直鎖または分岐の炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
【0091】
炭素数3~12の環状アルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0092】
炭素数6~12のアリール基として、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0093】
炭素数1~12の炭化水素基は、R~Rにおいて、互いに同一または相異なっていてもよい。
【0094】
また、RおよびRは、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
【0095】
およびRが互いに結合して形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、3~20員環のヘテロ環、好ましくは、3~10員環、さらに好ましくは、3~8員環、とりわけ好ましくは、5~7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、例えば、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成する場合、Rは、水素原子を示す。
【0096】
このような上記一般式(1)におけるRおよびRのなかでは、低温硬化性の観点から、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。なお、RおよびRが上記の炭化水素基である場合、Rは、水素原子を示す。
【0097】
上記一般式(1)において、RおよびRは、互いに同一または相異なって、炭素数1~12の炭化水素基を示す。
【0098】
およびRで示される炭素数1~12の炭化水素基として、例えば、上記した炭素数1~12の炭化水素基が挙げられる。
【0099】
また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
【0100】
また、それらR、R、RおよびRから形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、6~20員環のヘテロ環、好ましくは、6~15員環、さらに好ましくは、6~12員環、とりわけ好ましくは、10~12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R、R、RおよびRがヘテロ環を形成する場合、Rは、水素原子を示す。このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、トリアザビシクロ環構造などが挙げられる。
【0101】
上記一般式(1)におけるRおよびRのなかでは、低温硬化性の観点から、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
【0102】
このような上記一般式(1)に示される第1ブロック剤は、グアニジン化合物であって、例えば、3,3-ジアルキルグアニジン(例えば、3,3-ジメチルグアニジンなど)、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン(例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなど)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。第1ブロック剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0103】
上記一般式(1)に示される第1ブロック剤(グアニジン化合物)のなかでは、好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)が挙げられる。
【0104】
第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0105】
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定できる(以下同様)。
【0106】
ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察する。なお、ブロック剤の触媒能(後述)が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、上記したポリオール(低分子量ポリオールまたは高分子量ポリオール)と混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオール化合物の水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
【0107】
(3-2)第2ブロック剤
第2ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生するブロック剤であって、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さいブロック剤である。
【0108】
なお、第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用は、特開2017-82208号公報の[0242]段落~[0247]段落に記載の方法により比較できる。
【0109】
第2ブロック剤として、例えば、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物などが挙げられる。
【0110】
イミダゾール系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0058]段落に記載のイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0111】
イミダゾール系化合物として、具体的には、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0112】
アルコール系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0070]段落に記載のアルコール系化合物などが挙げられる。
【0113】
アルコール系化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-または2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
【0114】
フェノール系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0071]段落に記載のフェノール系化合物などが挙げられる。
【0115】
フェノール系化合物として、具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-または8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、ピリジン-2-チオールなどが挙げられる。
【0116】
活性メチレン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0072]段落に記載の活性メチレン系化合物などが挙げられる。
【0117】
活性メチレン系化合物として、具体的には、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
【0118】
アミン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0073]段落に記載のアミン系化合物などが挙げられる。
【0119】
アミン系化合物として、具体的には、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-または2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルイソプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、6-アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0120】
イミン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0074]段落に記載のイミン系化合物などが挙げられる。
【0121】
イミン系化合物として、具体的には、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
【0122】
オキシム系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0075]段落に記載のオキシム系化合物などが挙げられる。
【0123】
オキシム系化合物として、具体的には、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
【0124】
カルバミン酸系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0076]段落に記載のカルバミン酸系化合物などが挙げられ、具体的には、N-フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
【0125】
尿素系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0077]段落に記載の尿素系化合物などが挙げられ、具体的には、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
【0126】
酸アミド系(ラクタム系)化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0078]段落に記載の酸アミド系(ラクタム系)化合物などが挙げられる。
【0127】
酸アミド系(ラクタム系)化合物として、具体的には、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0128】
酸イミド系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0079]段落に記載の酸イミド系化合物などが挙げられ、具体的には、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
【0129】
トリアゾール系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0080]段落に記載のトリアゾール系化合物などが挙げられ、具体的には、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0130】
ピラゾール系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0081]段落に記載のピラゾール系化合物などが挙げられる。
【0131】
ピラゾール系化合物として、具体的には、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。
【0132】
メルカプタン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0082]段落に記載のメルカプタン系化合物などが挙げられ、具体的には、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0133】
重亜硫酸塩として、例えば、特開2017-82208号公報の[0083]段落に記載の重亜硫酸塩などが挙げられ、具体的には、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
【0134】
イミダゾリン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0059]段落に記載のイミダゾリン系化合物などが挙げられ、具体的には、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0135】
ピリミジン系化合物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0060]段落に記載のピリミジン系化合物などが挙げられ、具体的には、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
【0136】
第2ブロック剤の解離温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下、さらに好ましくは、130℃以、例えば、60℃以上である。
【0137】
このような第2ブロック剤は、単独使用または2種併用することができる。
【0138】
言い換えれば、第2ブロック剤は、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物からなる群から選択される1種のブロック剤のみからなることができ、上記の群から選択される2種のブロック剤を含有することもできる。
【0139】
なお、第2ブロック剤が2種併用される場合、2種の第2ブロック剤のうち、一方の第2ブロック剤の使用量が、他方の第2ブロック剤の使用量よりも多い。以下において、第2ブロック剤が2種併用される場合、比較的使用量が多い一方の第2ブロック剤をメイン第2ブロック剤とし、比較的使用量が少ない他方の第2ブロック剤をサブ第2ブロック剤として区別する。
【0140】
第2ブロック剤のなかでは、好ましくは、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン、t-ブチルイソプロピルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)およびピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、イミダゾール系化合物(特に好ましくは、イミダゾール)、オキシム系化合物(特に好ましくは、メチルエチルケトオキシム)およびピラゾール系化合物(特に好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)が挙げられる。
【0141】
また、第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、好ましくは、第1ブロック剤が、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン(TMG)であり、第2ブロック剤が、イミダゾール(IMZ)、ジイソプロピルアミン(DiPA)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TMPDI)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TMPDO)、t-ブチルイソプロピルアミン(TBIPA)、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、メチルエチルケトオキシム(MEKO)からなる群から選択される少なくとも1種のブロック剤である組み合わせが挙げられる。なお、以下の組み合わせについては、便宜上、上記した略称により示す。
【0142】
第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、さらに好ましくは、TMG(第1ブロック剤)とIMZ(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とDMP(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とMEKO(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTMPDI(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTMPDO(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTBIPA(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とIMZ(メイン第2ブロック剤)とDMP(サブ第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とDiPA(メイン第2ブロック剤)とDMP(サブ第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられる。
【0143】
また、第2ブロック剤は、とりわけ好ましくは、1種のみからなり、第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、TMG(第1ブロック剤)とIMZ(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とDMP(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とMEKO(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTMPDI(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTMPDO(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とTBIPA(第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられる。
【0144】
なお、溶剤系ブロックイソシアネートでは、耐折曲性および耐衝撃性の観点から特に好ましくは、TMG(第1ブロック剤)とDMP(第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とMEKO(第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられる。
【0145】
(4)溶剤系ブロックイソシアネートの製造
次に、溶剤系ブロックイソシアネートの製造について説明する。
【0146】
溶剤系ブロックイソシアネートを製造するには、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤および上記した第2ブロック剤とを反応させる。
【0147】
ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応順序は、特に制限されず、例えば、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0148】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.1以下である。
【0149】
また、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤との反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において実施される。
【0150】
反応温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下であり、反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0151】
これにより、第2ブロック剤がポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部をブロックして、第2潜在イソシアネート基を生成するとともに、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の残部が遊離状態で残存する。
【0152】
なお、上記したように第2ブロック剤が2種併用される場合、2種の第2ブロック剤を同時にポリイソシアネート化合物と反応させてもよく、2種の第2ブロック剤を逐次的にポリイソシアネート化合物と反応させてもよい。
【0153】
次いで、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0154】
ブロックイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.1以下である。
【0155】
なお、ブロックイソシアネートと第1ブロック剤との反応条件は、上記したポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤との反応条件と同様である。
【0156】
また、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって判断できる。
【0157】
これにより、ブロックイソシアネートにおいて、遊離状態で残存するイソシアネート基が第1ブロック剤と反応して、第1潜在イソシアネート基を生成する。
【0158】
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネートにおける第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。また、上記したように第2ブロック剤が2種併用される場合、メイン第2ブロック剤およびサブ第2ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネートにおけるメイン第2潜在イソシアネート基およびサブ第2潜在イソシアネート基の含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
【0159】
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。溶剤として、例えば、上記した有機溶媒、可塑剤などが挙げられる。溶剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0160】
可塑剤として、例えば、特開2017-82208号公報の[0109]段落~[0117]段落に記載される可塑剤などが挙げられる。可塑剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0161】
以上によって、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤にブロックされた、溶剤系ブロックイソシアネートが調製される。
【0162】
溶剤系ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
【0163】
溶剤系ブロックイソシアネートにおいて、第1潜在イソシアネート基の含有割合は、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、1mol%以上、好ましくは、5mol%以上、さらに好ましくは、10mol%以上、例えば、80mol%以下、好ましくは、50mol%以下、さらに好ましくは、30mol%以下である。
【0164】
溶剤系ブロックイソシアネートにおいて、第2潜在イソシアネート基の含有割合は、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、20mol%以上、好ましくは、50mol%以上、さらに好ましくは、70mol%以上、例えば、99mol%以下、好ましくは、95mol%以下、さらに好ましくは、90mol%以下である。
【0165】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、ポリウレタン樹脂組成物(後述)の低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0166】
また、上記したように第2ブロック剤が2種併用される場合、第2潜在イソシアネート基は、メイン第2ブロック剤によりブロックされているメイン第2潜在イソシアネート基と、サブ第2ブロック剤によりブロックされているサブ第2潜在イソシアネート基とを含む。
【0167】
溶剤系ブロックイソシアネートにおいて、メイン第2潜在イソシアネート基の含有割合は、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、15mol%以上、好ましくは、40mol%以上、さらに好ましくは、55mol%以上、例えば、95mol%以下、好ましくは、90mol%以下、さらに好ましくは、80mol%以下である。
【0168】
溶剤系ブロックイソシアネートにおいて、サブ第2潜在イソシアネート基の含有割合は、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、4mol%以上、好ましくは、10mol%以上、例えば、30mol%以下、好ましくは、20mol%以下である。
【0169】
なお、溶剤系ブロックイソシアネートの製造方法は、上記の方法に限定されない。
【0170】
例えば、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させてもよい。また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
【0171】
また、第1ブロック剤のみによってブロックされたポリイソシアネート化合物と、第2ブロック剤のみによってブロックされたポリイソシアネート化合物とを別々に調製し、それらを、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲となるように、混合することもできる。この場合、溶剤系ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基を有する分子と、第2潜在性イソシアネート基を有する分子とを別々に含有する。
【0172】
<水系ブロックイソシアネート>
次に、本発明のブロックイソシアネートの第2実施形態としての水系ブロックイソシアネートについて説明する。
【0173】
水系ブロックイソシアネートは、例えば、水分散性ブロックイソシアネートであり、例えば、水に分散させて用いられる。
【0174】
水系ブロックイソシアネートは、上記した溶剤系ブロックイソシアネートが活性水素基を含有する親水性化合物(以下、活性水素基含有親水性化合物とする。)により変性されている。より具体的には、水系ブロックイソシアネートは、活性水素基含有親水性化合物により変性されたポリイソシアネート化合物(以下、親水性ポリイソシアネート化合物とする。)と、ブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)との反応生成物(親水性高分子量ポリオール変性ポリイソシアネート)である。
【0175】
(5)親水性ポリイソシアネート化合物
親水性ポリイソシアネート化合物は、上記したポリイソシアネートと、上記した高分子量ポリオールと、活性水素基含有親水性化合物との反応生成物である。
【0176】
活性水素基含有親水性化合物は、活性水素基と親水性基とを併有する化合物である。活性水素基含有親水性化合物として、例えば、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物(例えば、特開2017-82208号公報の[0149]段落~[0157]段落に記載されるカルボン酸基含有活性水素化合物およびスルホン酸基含有活性水素化合物など)、活性水素基含有カチオン性親水性化合物(例えば、4級アミノ基含有活性水素化合物など)などが挙げられる。活性水素基含有親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0177】
活性水素基含有親水性化合物のなかでは、好ましくは、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物が挙げられ、さらに好ましくは、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物が挙げられる。
【0178】
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物として、例えば、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレン化合物などが挙げられる。
【0179】
ポリオキシエチレン化合物として、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
【0180】
ポリオキシエチレン基含有ポリオールは、分子内にポリオキシエチレン基を有するとともに、水酸基を2つ以上有する。ポリオキシエチレン基含有ポリオールとして、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
【0181】
ポリオキシエチレン基含有ポリオールとして、さらに、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールも挙げられる。
【0182】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート単量体など)と、後述する片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、メトキシエチレングリコールなど)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを調製し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなどのC1~20のジアルカノールアミンなど)とをウレア化反応させることにより、調製される。
【0183】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとして、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンなどが挙げられる。
【0184】
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、例えば、炭素数1~20のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)などが挙げられ、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0185】
片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンとして、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基で片末端封止したポリオキシエチレンジアミン(モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレン)などが挙げられる。
【0186】
このようなポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0187】
ポリオキシエチレン化合物として、好ましくは、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、および、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、および、モノアルコキシポリエチレングリコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
【0188】
このような活性水素基含有ノニオン性親水性化合物(ポリオキシエチレン化合物を含む。)の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上、さらに好ましくは、400以上、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下、さらに好ましくは、1200以下である。
【0189】
(6)親水性ポリイソシアネート化合物の調製
次に、親水性ポリイソシアネート化合物の調製について説明する。
【0190】
親水性ポリイソシアネート化合物を調製するには、上記したポリイソシアネートと、上記した高分子量ポリオールと、上記した活性水素基含有親水性化合物とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0191】
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、高分子量ポリオールの水酸基および活性水素基含有親水性化合物の活性水素基の総量の当量比((OH+活性水素基)/NCO)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.04以上、例えば、0.2以下、好ましくは、0.08以下である。
【0192】
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、高分子量ポリオールの水酸基の当量比(OH/NCO)の範囲は、例えば、0.005以上、好ましくは、0.01以上、例えば、0.2以下、好ましくは、0.03以下である。
【0193】
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、活性水素基含有親水性化合物の活性水素基の当量比(活性水素基/NCO)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.03以上、例えば、0.2以下、好ましくは、0.05以下である。
【0194】
高分子量ポリオールの配合割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0195】
活性水素基含有親水性化合物の配合割合は、ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、10質量部以上、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0196】
また、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、活性水素基含有親水性化合物との反応は、例えば、第1実施形態において上記したポリイソシアネートと高分子量ポリオールとの反応と同様の条件(例えば、反応温度、反応圧力、反応時間、有機溶媒の有無など)において実施される。
【0197】
以上によって、ポリイソシアネートのイソシアネート基と、高分子量ポリオールの水酸基とが反応するとともに、ポリイソシアネートのイソシアネート基と、活性水素基含有親水性化合物の活性水素基とが反応して、親水性ポリイソシアネート化合物が調製される。
【0198】
親水性ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
【0199】
親水性ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の含有量(NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0200】
親水性ポリイソシアネート化合物における、高分子量ポリオールに由来するポリオールユニットの含有量は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、さらに好ましくは、4質量%以上、とりわけ好ましくは、7質量%以上、例えば、35質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0201】
親水性ポリイソシアネート化合物におけるポリオールユニットの含有割合が上記下限以上であれば、ポリウレタン樹脂の耐溶剤性の向上を確実に図ることができる。親水性ポリイソシアネート化合物におけるポリオールユニットの含有割合が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂の耐衝撃性の向上を確実に図ることができる。
【0202】
また、親水性ポリイソシアネート化合物における、活性水素基含有親水性化合物に由来する親水性ユニットの含有量は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、35質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0203】
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合、親水性ポリイソシアネート化合物のエチレンオキシド基の含有量は、例えば、7質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0204】
親水性ポリイソシアネート化合物におけるエチレンオキシド基の含有量が上記下限以上であれば、水系ブロックイソシアネートの分散性を確実に確保することができる。親水性ポリイソシアネート化合物におけるエチレンオキシド基の含有量が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂の耐衝撃性の向上を確実に図ることができる。
【0205】
なお、親水性ポリイソシアネート化合物の調製方法は、上記の方法に限定されない。
【0206】
例えば、活性水素基含有親水性化合物により変性されていない上記のポリイソシアネート化合物を準備し、そのポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有親水性化合物とを反応させてもよい。
【0207】
また、親水性ポリイソシアネート化合物の調製は、1種のポリイソシアネートと、1種の高分子量ポリオールと、1種の活性水素基含有親水性化合物との反応に限定されない。
【0208】
ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび活性水素基含有親水性化合物の反応として、例えば、2種以上のポリイソシアネート、1種の高分子量ポリオールおよび1種の活性水素基含有親水性化合物の反応、1種のポリイソシアネート、2種以上の高分子量ポリオールおよび1種の活性水素基含有親水性化合物の反応、1種のポリイソシアネート、1種の高分子量ポリオールおよび2種以上の活性水素基含有親水性化合物の反応、2種以上のポリイソシアネート、2種以上の高分子量ポリオールおよび1種の活性水素基含有親水性化合物の反応、2種以上のポリイソシアネート、1種の高分子量ポリオールおよび2種以上の活性水素基含有親水性化合物の反応、1種のポリイソシアネート、2種以上の高分子量ポリオールおよび2種以上の活性水素基含有親水性化合物の反応、2種以上のポリイソシアネート、2種以上の高分子量ポリオールおよび2種以上の活性水素基含有親水性化合物の反応が挙げられる。これら反応によれば、親水性ポリイソシアネート化合物を調製できる。
【0209】
また、親水性ポリイソシアネート化合物に、高分子量ポリオールによって変性されていない親水性ポリイソシアネート化合物を混合することもできる。
【0210】
(7)水系ブロックイソシアネートの製造
水系ブロックイソシアネートは、活性水素基含有親水性化合物により変性されていないポリイソシアネート化合物を親水性ポリイソシアネート化合物に変更する以外は、第1実施形態と同様の方法により製造される。つまり、水系ブロックイソシアネートは、上記した親水性ポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることにより製造される。そのため、水系ブロックイソシアネートの製造方法の詳細な説明を省略する。
【0211】
水系ブロックイソシアネートにおいて、親水性ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤にブロックされている。
【0212】
水系ブロックイソシアネートは、例えば、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
【0213】
水系ブロックイソシアネートにおける第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基のそれぞれの含有割合の範囲は、上記した溶剤系ブロックイソシアネートにおける第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基のそれぞれの含有割合の範囲と同じである。
【0214】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、水系ブロックイソシアネートにおいても、ポリウレタン樹脂組成物(後述)の低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0215】
また、上記したように第2ブロック剤が2種併用される場合、水系ブロックイソシアネートにおけるメイン第2潜在イソシアネート基およびサブ第2潜在イソシアネート基のそれぞれの含有割合の範囲は、溶剤系ブロックイソシアネートにおけるメイン第2潜在イソシアネート基およびサブ第2潜在イソシアネート基のそれぞれの含有割合の範囲と同じである。
【0216】
なお、水系ブロックイソシアネートの製造方法は、上記の方法に限定されない。
【0217】
例えば、活性水素基含有親水性化合物により変性されていないポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させて、未反応のイソシアネート基を含むブロックイソシアネートを調製した後、そのブロックイソシアネートと活性水素基含有親水性化合物とを反応させることにより、水系ブロックイソシアネートを調製することもできる。
【0218】
なお、ブロック剤の分解や、副反応、ブロックイソシアネートの水分散性の観点から、上記のように、親水性ポリイソシアネート化合物を調製した後、親水性ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることが好ましい。
【0219】
<作用効果>
上記したブロックイソシアネート(溶剤系ブロックイソシアネートおよび水系ブロックイソシアネート)では、ブロック剤によってブロックされる前のポリイソシアネート化合物(親水性ポリイソシアネート化合物)が、高分子量ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であり、高分子量ポリオールによって変性されている。
【0220】
そして、そのようなポリイソシアネート化合物(親水性ポリイソシアネート化合物)が、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤と、第2ブロック剤とによってブロックされているので、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂に、耐溶剤性、耐折曲性(優れた密着性)および耐衝撃性(優れた摩擦堅牢性)をバランスよく付与することができる。
【0221】
また、高分子量ポリオールは、好ましくは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールである。
【0222】
高分子量ポリオールが上記群から選択されるポリオールであると、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂に、耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく確実に付与することができる。
【0223】
また、ポリイソシアネートは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートからなり、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体からなる。
【0224】
ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートからなると、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂の耐折曲性および耐衝撃性の向上を確実に図ることができる。
【0225】
また、第2ブロック剤は、好ましくは、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物からなる群から選択される2種のブロック剤を含有する。
【0226】
第2ブロック剤が上記群から選択される2種のブロック剤を含有すると、ブロックイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂に、耐溶剤性、耐折曲性および耐衝撃性をバランスよく、より一層確実に付与することができる。
【0227】
また、ブロックイソシアネートは、活性水素基を含有する親水性化合物により変性されていてもよい。
【0228】
これにより、ブロックイソシアネートを、水に分散して用いられる水系ブロックイソシアネートとして調製することができる。
【0229】
<ポリウレタン樹脂>
そして、上記したブロックイソシアネート(溶剤系ブロックイソシアネートおよび水系ブロックイソシアネート)は、例えば、ポリウレタン樹脂原料、ポリオレフィン樹脂原料、ポリアクリル樹脂原料、ポリエステル樹脂原料などの公知の樹脂原料として用いることができ、好ましくは、ポリウレタン樹脂原料として用いられる。
【0230】
ポリウレタン樹脂原料として、より具体的には、二液型ポリウレタン樹脂原料および一液型ポリウレタン樹脂原料が挙げられる。
【0231】
二液型ポリウレタン樹脂原料は、上記したブロックイソシアネートを含有するイソシアネート成分としてのA剤と、上記した低分子量ポリオールおよび/または上記した高分子量ポリオールを含有するポリオール成分としてのB剤とを備える。そして、二液型ポリウレタン樹脂原料は、別々に調製されるA剤(硬化剤)およびB剤(主剤)を使用直前に配合するものである。
【0232】
一液型ポリウレタン樹脂原料は、上記したブロックイソシアネートを含有するイソシアネート成分(硬化剤)と、上記した低分子量ポリオールおよび/または上記した高分子量ポリオールを含有するポリオール成分(主剤)とが予め配合される組成物である。
【0233】
ポリオール成分に含有されるポリオール(低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオール)のなかでは、好ましくは、高分子量ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、アクリルポリオールが挙げられる。
【0234】
また、ポリオール成分は、ブロックポリイソシアネートの分散性の観点から好ましくは、ポリオールに加えて、モノオールを含有する。
【0235】
モノオールとして、例えば、特開2017-82208号公報の[0230]段落に記載されるモノオール化合物(具体的には、メタノール、エタノール、t-ブタノールなど)などが挙げられる。モノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0236】
モノオールの配合割合は、ポリウレタン樹脂原料の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。
【0237】
また、ポリオール(必要により、モノオール化合物を含む。以下同様)は、塊状(バルク状、固形分濃度100質量%)で用いることもできるが、例えば、水や上記した有機溶媒に溶解または分散させて用いることもできる。その他、例えば、乳化重合や、懸濁重合のように上記のポリオールが水に分散した状態で得られる重合方法を用いて調製したものを用いることもできる。さらに、上記ポリオールを非水分散させたものや、プラスチゾルも用いることができる。なお、プラスチゾルは、例えば、樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂など)と、上記した可塑剤と、充填剤とを含有する。
【0238】
ポリオールを水や有機溶媒に溶解または分散させる場合、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上である。
【0239】
そして、ポリウレタン樹脂原料では、予め、または、その使用時において、イソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)とを配合して、ポリウレタン樹脂組成物を調製し、ブロックイソシアネートからブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)を解離させる。
【0240】
イソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)との配合では、例えば、ブロックイソシアネートを、水や有機溶媒に分散または溶解させ、分散液または溶液を調製した後に、塊状(バルク状、固形分濃度100質量%)のポリオールや、ポリオールの分散液または溶液と配合する。また、ブロックイソシアネートをポリオールの分散液または溶液に直接分散させることもできる。
【0241】
イソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)との配合割合は、例えば、ポリオールの水酸基に対する、ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.05以上、好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2以下となる割合である。
【0242】
また、解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)が解離する条件であれば、特に制限されないが、解離温度(すなわち、ポリウレタン樹脂組成物の硬化温度)が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃未満、好ましくは、130℃未満である。
【0243】
そして、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とを反応させ、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることができ、ポリウレタン樹脂を製造することができる。
【0244】
このとき、イソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きい第1ブロック剤(イソシアネート基をブロックした状態の第1ブロック剤、および、解離された第1ブロック剤を含む。)は、イソシアネート基を活性化する触媒として作用する。そのため、第1ブロック剤を用いれば、第2ブロック剤のみを用いる場合に比べ、より効率よくポリウレタン樹脂組成物を硬化させることができる。
【0245】
つまり、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基が併存している場合の第1ブロック剤および第2ブロック剤の解離温度は、第1潜在イソシアネート基が存在せず、第2潜在イソシアネート基のみが存在している場合の第2ブロック剤の解離温度よりも低い。
【0246】
言い換えれば、ポリイソシアネート化合物(親水性ポリイソシアネート化合物)と第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるポリウレタン樹脂組成物の硬化温度A(℃)は、ポリイソシアネート化合物(親水性ポリイソシアネート化合物)と第2ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるポリウレタン樹脂組成物の硬化温度B(℃)よりも低い。
【0247】
つまり、第1ブロック剤が第2ブロック剤よりも触媒作用が大きいために、第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるポリウレタン樹脂組成物の硬化温度A(℃)が、第1ブロック剤を用いず第2ブロック剤のみが用いられること以外はそれと同様に製造されるポリウレタン樹脂組成物の硬化温度B(℃)よりも低くなる。なお、硬化温度B(℃)と硬化温度A(℃)との差(℃)を第1ブロック剤1モルに換算した値(℃/モル)を、第1ブロック剤の触媒能とする。
【0248】
ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオールの水酸基との加熱条件下における反応時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0249】
また、必要に応じて、イソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール化合物(主剤)のいずれか一方またはその両方に、例えば、反応溶媒、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤などの添加剤を適宜配合することができる。添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0250】
また、ブロックイソシアネートを硬化剤として用いる場合、メラミン、エポキシなどの公知の硬化剤と併用することができる。そのような場合において、各硬化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0251】
このようなポリウレタン樹脂原料の用途として、例えば、塗料、接着剤、繊維、皮革、防水材、バインダー、発泡体などが挙げられ、好ましくは、塗料および接着剤が挙げられる。
【0252】
つまり、ポリウレタン樹脂原料は、ポリウレタン塗料原料およびポリウレタン接着剤原料として好適に利用され、ブロックイソシアネートは、塗料用ブロックイソシアネートおよび接着剤用ブロックイソシアネートとして好適に利用される。
【0253】
そして、ポリウレタン塗料原料およびポリウレタン接着剤原料は、予め、または、その使用時において配合されてポリウレタン樹脂組成物に調製された後、公知の塗装方法(例えば、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、回転霧化塗装、カーテンコート塗装など)により、被塗物に塗装され、乾燥されることにより塗膜を形成する。
【0254】
また、必要により、静電印加することができ、さらには、塗装後に、焼付けることもできる。焼付け方法は、特に限定されないが、例えば、赤外線加熱、熱風加熱、高周波加熱などの公知の方法が採用される。
【0255】
また、被塗物として、例えば、特開2017-82208号公報の[0255]段落に記載の被塗物(具体的には、繊維強化プラスチック(FRP)、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリートなどの有機無機複合体など)などが挙げられる。
【0256】
また、上記被塗物には、表面処理(例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理など)が施されていてもよい。また、例えば、電着塗料などの下塗り塗膜や、中塗り塗膜が形成されていてもよい。さらに、プラスチックが前処理(例えば、脱脂処理、水洗処理、プライマー処理など)されていてもよい。
【0257】
そして、上記のポリウレタン塗料原料およびポリウレタン接着剤原料は、工業製品全般(例えば、特開2017-82208号公報の[0257]段落に記載される物品など)に用いることができる。
【実施例
【0258】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0259】
<溶剤系ブロックイソシアネートの調製>
1.実施例1~20および比較例1~4
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、表1~表5に示すポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールを、表1~表5に示す処方となるように、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(有機溶媒)79質量部に加えて、90℃において、残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、ポリイソシアネート化合物を調製した。なお、比較例1では、高分子量ポリオールを添加せず、ポリイソシアネートをそのまま使用した。
【0260】
また、高分子量ポリオールの添加率は、下記式(1)により算出した。
【0261】
高分子ポリオールの添加率(%)=高分子ポリオール(質量部)/[ポリイソシアネート(質量部)+高分子ポリオール(質量部)]×100・・・(1)
次いで、表1~表5に示す第2ブロック剤を、表1~表5に示す処方となるように、反応溶液の温度が50℃を超えないように調整しながら、反応溶液に数回に分けて加えた。なお、比較例2では、第2ブロック剤を添加しなかった。
【0262】
次いで、第1ブロック剤(1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)を、表1~表5に示す処方となるように、反応溶液に数回に分けて加えた。その後、反応溶液を、室温(25℃)において3時間攪拌した。なお、比較例3および4では、第1ブロック剤を添加しなかった。
【0263】
その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネートがブロック化されていることを確認し、溶剤系ブロックイソシアネートを得た。溶剤系ブロックイソシアネートの固形分濃度は、65質量%であった。
【0264】
2.実施例21および22
実施例1の溶剤系ブロックイソシアネートと、比較例1の溶剤系ブロックイソシアネートとを、表4に示す配合割合となるように混合して、溶剤系ブロックイソシアネートを得た。
【0265】
<溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料の調製>
アクリルポリオール(商品名:Q182、三井化学社製)およびt-ブタノール(モノオール)を、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(有機溶媒)に溶解したポリオール成分(溶液)を準備した。ポリオール成分は、最終的な溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料の固形分濃度が40質量%となり、t-ブタノール(モノオール)の濃度が5質量%となるように濃度調整した。
【0266】
次いで、各実施例および各比較例で得られた溶剤系ブロックイソシアネートを、アクリルポリオールの水酸基と、溶剤系ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのモル比が1になるように加えて、30分間攪拌することによって、溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料を得た。
【0267】
<水系ブロックイソシアネートの調製>
1.実施例23~44および比較例5~8
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、表6~表10に示すポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび親水性化合物を、表6~表10に示す処方となるように、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(有機溶媒)89質量部に加えて、90℃において、残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性ポリイソシアネート化合物を調製した。なお、比較例5では、高分子量ポリオールを添加せず、ポリイソシアネートと親水性化合物とを反応させて、親水性ポリイソシアネート化合物を調製した。
【0268】
次いで、表6~表10に示す第2ブロック剤を、表6~表10に示す処方となるように、反応溶液の温度が50℃を超えないように調整しながら、反応溶液に数回に分けて加えた。なお、比較例6では、第2ブロック剤を添加しなかった。
【0269】
次いで、第1ブロック剤(1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)を、表6~表10に示す処方となるように、反応溶液に数回に分けて加えた。その後、反応溶液を、室温(25℃)において3時間攪拌した。なお、比較例7および8では、第1ブロック剤を添加しなかった。
【0270】
その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネートがブロック化されていることを確認し、水系ブロックイソシアネートを得た。水系ブロックイソシアネートの固形分濃度は、65質量%であった。
【0271】
2.実施例45および46
実施例23の水系ブロックイソシアネートと、比較例5の水系ブロックイソシアネートとを、表9に示す配合割合となるように混合して、水系ブロックイソシアネートを得た。
【0272】
<水系一液型ポリウレタン樹脂原料の調製>
アクリルポリオール(商品名:RE4788、三井化学社製)を、水に分散したポリオール成分(分散液)を準備した。ポリオール成分は、最終的な水系一液型ポリウレタン樹脂原料の固形分濃度が30質量%となるように濃度調整した。
【0273】
次いで、各実施例および各比較例で得られた水系ブロックイソシアネートを、アクリルポリオールの水酸基と、水系ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのモル比が1になるように加えて、30分間攪拌することによって、水系一液型ポリウレタン樹脂原料を得た。
【0274】
<評価>
1.塗膜の耐溶剤性
上記のように調製した溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料および水系一液型ポリウレタン樹脂原料のそれぞれを、100μmのアプリケーターにより、ブリキ基板上に塗布して、120℃で30分硬化させた。
【0275】
そして、硬化させた各塗膜を、酢酸エチルに浸したガーゼで、50回ラビングし、塗膜を観察した。塗膜がダメージを受けていないものを○、部分的に剥離したものを△、完全に剥離したものを×として評価した。その結果を表1~10に示す。
【0276】
2.エリクセン試験(塗膜の耐折曲性)
上記のように調製した溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料および水系一液型ポリウレタン樹脂原料のそれぞれを、100μmのアプリケーターにより、鋼板上に塗布して、120℃で30分硬化させた。JIS K 5600-5-2(1999年)に準拠して、鋼板上の塗膜表面と反対側から、塗膜が形成された鋼板に20mm径の押し込み器をあて、鋼板をしっかり固定しておき、所定の速度で押し込み器を押し出して塗膜表面に割れ、剥がれを生じた時の押し出し長さ(mm)を評価した。その結果を表1~10に示す。
【0277】
3.塗膜の衝撃試験
上記のように調製した溶剤系一液型ポリウレタン樹脂原料および水系一液型ポリウレタン樹脂原料のそれぞれを、100μmのアプリケーターにより、鋼板上に塗布して、120℃で30分硬化させた。そして、塗膜が形成された鋼板を、デュポン式衝撃試験器の1/2インチの撃ち型と受け台との間に挟み、おもり(500g)を用いて、鋼板における塗膜が形成された面(表面)から衝撃を加えて、塗膜に損傷が現れるおもりの高さ(cm)を測定した。その結果を表1~10に示す。
【0278】
【表1】
【0279】
【表2】
【0280】
【表3】
【0281】
【表4】
【0282】
【表5】
【0283】
【表6】
【0284】
【表7】
【0285】
【表8】
【0286】
【表9】
【0287】
【表10】
【0288】
なお、各表中の略号の詳細を下記する。
【0289】
タケネートD170N:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(HDIのイソシアヌレート変性体)、イソシアネート基含有量20.7質量%、三井化学社製、
タケネートD127N:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体(HXDIのイソシアヌレート変性体)、イソシアネート基含有量13.5質量%、三井化学社製、
タケネートD110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチルロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体、XDIのTNPアダクト体)、イソシアネート基含有量11.5質量%、三井化学社製、
タケネートD103H:トリレンジイソシアネートのトリメチルロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体、TDIのTNPアダクト体)、イソシアネート基含有量13.0質量%、三井化学社製、
PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1000、三菱ケミカル社製、
PTMG650:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量650、三菱ケミカル社製、
PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量2000、三菱ケミカル社製、
PPG2000:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量2000、和光純薬工業社製、
UH-100:1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとの反応生成物であるポリカーボネートジオール、数平均分子量1000、宇部興産社製、
U-5620:タケラックU-5620、アジペート系ポリエステルポリオール、数平均分子量2000、三井化学社製、
TMG:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、
IMZ:イミダゾール、日本合成化学社製、
DMP:3,5-ジメチルピラゾール、
MEKO:メチルエチルケトキシム、東京化成工業社製、
DiPA:ジイソプロピルアミン、東京化成工業社製、
TMPDI:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、東京化成工業社製、
TMPDO:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン、東京化成工業社製、
TBIPA:N-tert-ブチルイソプロピルアミン、Aldrich社製、
MePEG1000:メトキシPEG#1000、ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル、数平均分子量1000、東邦化学工業社製。
【0290】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該当技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0291】
本発明のブロックイソシアネートは、例えば、各種産業製品に用いられるポリウレタン樹脂の原料、より具体的には、塗料、接着剤、繊維、皮革、防水材、バインダー、発泡体などのポリウレタン樹脂原料に好適に用いられる。