(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】光ファイバーケーブル用の充填組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220719BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220719BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20220719BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G02B6/44 366
G02B6/44 341
C08L53/00
C08L25/06
C08L91/00
(21)【出願番号】P 2019570039
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2017090994
(87)【国際公開番号】W WO2019000361
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】スン、ガンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ヨンファ
(72)【発明者】
【氏名】エッセガー、モハメッド
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-067913(JP,A)
【文献】特開平11-174290(JP,A)
【文献】特開2015-187188(JP,A)
【文献】特開昭60-049308(JP,A)
【文献】特表2015-527448(JP,A)
【文献】特開平06-215641(JP,A)
【文献】米国特許第06377737(US,B1)
【文献】COSTELLO M T et al.,New polymeric optical cable filling compounds,Wire Journal International,Vol.30, No.5,1997年05月,PP.52-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
H01B 11/00-11/22
H01B 7/17-7/288
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する
70重量%~90重量%の鉱油と、
(B)
5重量%超~9重量%のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、
(C)1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、を含む、充填組成物。
【請求項2】
前記ポリスチレンが、1,000~50,000の重量平均分子量(M
w)を有する、請求項1に記載の充填組成物。
【請求項3】
195℃~220℃の滴点を有する、請求項2に記載の充填組成物。
【請求項4】
15Pa・s~30Pa・sの低剪断粘度を有する、請求項3に記載の充填組成物。
【請求項5】
2.0~8.0の剪断減粘指数を有する、請求項4に記載の充填組成物。
【請求項6】
5,000~300,000の重量平均分子量(Mw)を有するプロピレン/エチレンコポリマーをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の充填組成物。
【請求項7】
前記充填組成物が、1重量%~2.5重量%以下の前記ポリスチレンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の充填組成物。
【請求項8】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の充填組成物。
【請求項9】
バッファチューブであって、
前記バッファチューブの表面と接触している充填組成物を含み、前記充填組成物が、
(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する
70重量%~90重量%の鉱油と、
(B)
5重量%超~9重量%のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、
(C)1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、を含む、バッファチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバーケーブルに関する。一態様では、本開示は、光ファイバーケーブル用の充填組成物に関し、一方、別の態様では、本開示は、それを含む光ファイバーケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーケーブルには、光信号を伝える1つ以上の光ファイバーまたは他の光導波路が含まれる(例えば、音声、データ、ビデオ、または他の情報を伝送するための)。一般に、光ファイバーは、バッファチューブと呼ばれる管状アセンブリ内に配置される。光ファイバーを損傷(例えば、湿気/水分への曝露、物理的応力)から保護するために、バッファチューブは、光ファイバーを包囲する充填組成物で充填される。充填組成物は、水分が光ファイバーを損傷するのを防止するための水分バリアおよび機械的衝撃を吸収するためのクッションとして機能する。充填組成物は、流体、ゲル、グリース、または揺変性材料であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
充填組成物は、一般的に、スチレンブロックコポリマーおよび炭化水素油(例えば、鉱油)の大部分からなる組成物に基づいている。そのような充填組成物は、光ファイバーの周囲を容易に流動してバッファチューブを完全に充填する流体であり、光ファイバーケーブルの製造中にバッファチューブに容易に送り込まれ得る。しかしながら、そのような流体充填組成物の1つの欠点は、光ファイバーケーブルが切断されると、充填組成物が切断端部から流動し、これが、光ファイバーケーブルの設置を困難にする可能性があることである。充填剤組成物用の乾燥ゲルを有する切断された光ファイバーケーブルは、光ファイバーケーブルが切断されたときに滴ったり流動したりしないという点で、乾燥ゲルは操作者にとってより扱いやすい。しかしながら、乾燥ゲルは、送り込むのが困難であり、流体のように容易に流動しない。
【0004】
その結果、当該技術分野は、流動し(すなわち、送り込まれ得)、油漏出および浄化に関連する困難を軽減または回避する充填組成物の必要性を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油と、(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、(C)1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、を含む充填組成物を提供する。
【0006】
別の実施形態では、本開示は、バッファチューブの表面と接触している充填組成物を含むバッファチューブを提供し、充填組成物は、(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油と、(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、(C)2,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義および試験方法
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.,1990-1991によって出版されたものへの参照である。この周期律表の元素族について記載される場合、番号順に並べた族に関する新しい表記法に依拠している。
【0009】
米国特許実務を目的として、参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は必ず、それらの全体が、特に定義の開示、および当該技術分野における一般的な知識に関して(本開示において具体的に提供されるいかなる定義にも矛盾しない程度に)、参照により本明細書に組み込まれる(または、刊行物の相当する米国特許出願が同様に参照により組み込まれる)。
【0010】
本明細書に開示されている数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値の全ての値を含む。明確な数値(例えば、1もしくは2、または3~5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明確な数値間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)。反対の記載、文脈から暗黙のうちに、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づいており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0011】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、およびドメイン構成を測定および/もしくは同定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも含まなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層がブレンドを含んでもよい。
【0012】
「ケーブル」および同様の用語は、保護絶縁、ジャケット、またはシース内の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバーを指す。典型的には、ケーブルは、典型的には一般的な保護絶縁、ジャケット、またはシース内の一緒に結合した2つ以上のワイヤまたは光ファイバーである。ジャケット内の個々のファイバーは、むき出しであっても、被覆されても、または絶縁されてもよい。
【0013】
本明細書で使用する際、「組成物」は、組成物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む材料の混合物を含む。
【0014】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑いも避けるために、「含む(comprising)」という用語を使用して特許請求される全ての組成物は、相反する記述がない限り、ポリマー性かまたはポリマー性ではないかにかかわらず、あらゆる追加の添加剤、補助剤、または化合物を含んでもよい。対照的に、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の記載の範囲から、任意の他の成分、ステップ、または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙されたメンバーを個々に、および任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も含まれる。
【0015】
密度は、ASTM D1525に従って測定する。
【0016】
「直接接触」とは、表面が充填組成物に直接隣接し、表面と充填組成物との間に介在層または介在構造が存在しない構成を意味する。
【0017】
滴点は、完全な液化または過度の油分離なしに充填化合物が曝露され得る最高温度の指標である。滴点は、ShenKai滴点テスタを使用して決定され、℃で報告される。ShenKai滴点テスタの上部コルクは、試験のために装置が組み立てられたときに、第1の温度計の球の先端部がカップの底部から約3mm上にあるように位置付けられる。第2の温度計は、その球が第1の温度計の球とほぼ同じレベルになるように、油浴中に吊り下げられる。カップが充填されるまで充填組成物にそのより大きい開口部を提示することによって、カップが充填される。カップは、そのより小さい開口部が底部にある状態で垂直位置に保持されながら、ロッドがより大きい開口部の上で約25mm突出するまで金属ロッドの上に静かに押し下げられる。ロッドがカップの上部周辺部および下部周辺部の両方の周辺部と接触するように、ロッドは、カップに押し付けられる。カップがその軸を中心に回転し、同時にカップがロッドの下端を通過するまでロッドを下方に移動する間、この接触は維持される。このらせん状の動きにより、充填組成物は、ロッドに沿って付着し、カップ内に化合物の円錐形の空隙、およびカップの内側上に再現可能な形状を有するコーティングを残す。カップおよび温度計は、試験管内に配置され、試験管は、油浴中に吊り下げられる。油浴は、撹拌され、浴が充填組成物の予想される滴点よりも約17℃低い温度に達するまで、4℃/分~7℃/分の速度で加熱される。加熱は、試験管内の温度と油浴中の温度との差が1~2℃に維持されるような速度で継続される。この条件は、油浴が約1℃/分~1.5℃/分の速度で加熱されるときに確立される。温度が上昇すると、充填組成物は、カップのオリフィスを通して徐々に突出する。材料の第1の滴が落ちる温度が、滴点である。
【0018】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合エチレンモノマーを含み、任意選択により、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。用語「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」は、互換的に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られる)、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒系、4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなどの配位子構造を含む均一触媒系を使用して、気相流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成され得る。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器構成のいずれかにおいて使用され得る。
【0019】
「エチレン系ポリオレフィン材料」は、(材料の総重量に基づいて)50重量パーセント以上のエチレン系ポリマーを含有する材料である。エチレン系ポリオレフィン材料には、純粋なポリエチレンだけでなく、エチレン系ポリマーと他のポリオレフィンポリマーとのブレンドも含まれる。
【0020】
「オレフィンポリマー」、「オレフィン系ポリマー」、「オレフィン系インターポリマー」、「ポリオレフィン」などの用語は、単純オレフィンから誘導されるポリマーを指す。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、およびこれらの様々なインターポリマーが挙げられる。
【0021】
「光ファイバー」は、ガラスまたはプラスチックを数百ミクロン以下の直径に延伸することによって作られた柔軟で透明な繊維である。典型的な光ファイバーは、230マイクロメートル(μm)~270μmまたは250μmの直径を有する。光ファイバーの直径は、クラッドおよび/または光ファイバーを取り囲むコーティングを含んでも含まなくてもよい。光ファイバーは、ファイバーの両端間で光を伝送する方法として最も頻繁に使用される。光ファイバーは、ワイヤケーブルと比べて、より長距離な伝送、および、より高いデータレートの伝送を可能にする光ファイバー通信で広く使用されている。
【0022】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合可能モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択で、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が挙げられる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0023】
「プロピレン系ポリオレフィン材料」は、(材料の総重量に基づいて)50重量パーセント以上のプロピレン系ポリマーを含有する材料である。エチレン系ポリオレフィン材料には、純粋なポリプロピレンだけでなく、プロピレン系ポリマーと他のポリオレフィンポリマーとのブレンドも含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、このインターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0025】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238、条件230℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定され、10分当たりのグラム数(g/10分)で報告される。
【0026】
メルトインデックス(MI)は、190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定され、10分当たりのグラム数(g/10分)で報告される。
【0027】
本明細書で使用される場合、Tmまたは「融点」(プロットされたDSC曲線の形状に関して融解ピークとも称される)は、典型的には、USP5,783,638に説明されているように、ポリオレフィンの融点またはピークを測定するためのDSC(示差走査熱量測定)技術によって測定される。2つ以上のポリオレフィンを含む多くの混成物は、複数の融点または融解ピークを有し、多くの個々のポリオレフィンは1つのみの融点または融解ピークを含むことに留意すべきである。
【0028】
分子量は、140℃のシステム温度で動作する、3つの混合多孔性カラム(Polymer Laboratories 103、104、105、および106)を備えたWaters 150℃高温クロマトグラフィユニット上で、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用して決定される。溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、それから試料の約0.3重量%溶液が注入のために調製される。流量は、1.0mL/分であり、注入サイズは、100マイクロリットルある。
【0029】
分子量の決定を、狭い分子量分布のポリスチレン標準(Polymer Laboratoriesから)をそれらの溶出量と組み合わせて使用することにより推測する。同等のポリエチレン分子量は、ポリエチレンおよびポリスチレンに適切なMark-Houwink係数を使用して(T.Williams & I.M.Ward,The Construction of a Polyethylene Calibration Curve for Gel Permeation Chromatography Using Polystyrene Fractions,6J.Polymer Sci.Pt.B:Polymer Letter 621,621-624(1968)によって記載されるように)、以下の等式を導き出す。
Mポリエチレン=a×(Mポリスチレン)b
この等式において、a=0.4316およびb=1.0である。
【0030】
ポリマーの数平均分子量M
nは、分子量に対する各分子量範囲内の分子数のプロットの第1のモーメントとして表される。実際には、これは、全ての分子の総分子量を分子数で割ったものであり、以下の式に従って通常の状況で計算される。
【数1】
式中、
n
i=分子量M
iを有する分子数
w
i=分子量M
iを有する材料の重量分率
Σn
i=分子の総数。
【0031】
重量平均分子量、Mwは、以下の式:Mw=ΣwixMiに従って通常の様式で計算され、式中、wiおよびMiは、GPCカラムから溶出するi番目の画分の重量分率および分子量のそれぞれである。
【0032】
これら2つの平均の比である分子量分布(MWDまたはMw/Mn)は、分子量分布の幅を定義する。
【0033】
「Z平均分子量」(Mz)は、第3のモーメント平均モル質量であり、以下の等式に従って計算され、Z平均分子量を以下の等式に従って計算した。
【数2】
式中、M
iはi(溶出構成成分i)のスライスでの分子量であり、Wf
iはM
iの分子量を有するポリマー鎖の重量分率である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、同じまたは異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、唯一の種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、およびすでに定義されたようなインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物、例えば触媒残渣は、ポリマー中に、および/またはポリマー内に取り込まれる可能性がある。
【0035】
「オレフィンポリマー」、「オレフィン系ポリマー」、「オレフィン系インターポリマー」、「ポリオレフィン」などの用語は、単純オレフィンから誘導されるポリマーを指す。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、およびこれらの様々なインターポリマーが挙げられる。「アルファ-オレフィン」、「α-オレフィン」、および同様の用語は、炭化水素分子または置換炭化水素分子(すなわち、例えばハロゲン、酸素、窒素など、水素および炭素以外の1つ以上の原子を含む炭化水素分子)を指し、炭化水素分子は、(i)唯一のエチレン系不飽和(この不飽和物は、第1の炭素原子と第2の炭素原子の間に位置する)と、(ii)少なくとも3個の炭素原子、好ましくは3~20個の炭素原子、場合によっては、好ましくは4~10個の炭素原子、他の場合には好ましくは4~8個の炭素原子と、を含む。エラストマーが調製されるα-オレフィンの非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、およびこれらのモノマーのうちの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0036】
剪断速度は、流体の1つの層が隣接する層を通過する速度の変化率である。剪断速度は、勾配速度であり、流速およびチューブ/容器の半径に依存する。一方が一定速度で移動し、もう一方が定常である2つの平行プレート間の流体の流動のために(クエット流れ)、剪断速度は、
【数3】
によって計算され、式中、
【数4】
は、毎秒で測定される剪断速度であり、vは、1秒当たりのメートル数(m/秒)で測定される移動プレートの速度であり、hは、メートル(m)で測定される2つの平行プレート間の距離である。剪断速度は、毎秒(s
-1)で報告される。
【0037】
剪断減粘指数は、低剪断速度(例えば、0.1s-1~10s-1)および高剪断速度(例えば、100秒-1以上)での剪断粘度の比である。剪断減粘指数は、20mm、2度の鋼製コーンプレートを備えた回転式レオメーターAR2000EX(TA instruments)によって、定常状態の剪断モードで測定される。試験温度は、25℃に設定され、剪断速度は、1s-1~201s-1の範囲である。剪断減粘指数は、6s-1の剪断粘度および201s-1の剪断粘度を使用して計算される。
【0038】
剪断粘度(または動的粘度)は、剪断流に対する流体の抵抗であり、Pa・s(パスカル秒)、mPa・s(ミリパスカル秒)、またはMPa・s(メガパスカル秒)で報告される。剪断粘度は、
【数5】
によって計算され、式中、ηは、パスカル秒で測定される剪断粘度であり、τは、パスカルで測定される剪断応力であり、
【数6】
は、毎秒で測定される剪断速度である。本明細書の目的で、剪断粘度は、20mm、2度の鋼製コーンプレートを備えたAR2000EX回転式レオメータ(TA instruments)を使用して測定される。試験温度は、25℃に設定され、剪断速度は、1s
-1~200s
-1の範囲である。
【0039】
低剪断速度粘度は、5s-1の剪断速度で測定される剪断粘度を意味する。
【0040】
中剪断速度粘度は、50s-1の剪断速度で測定される剪断粘度を意味する。
【0041】
高剪断速度粘度は、200s-1の剪断速度で測定される剪断粘度を意味する。
【0042】
動粘度は、流体の剪断粘度対密度の比であり、St(ストークス)またはcSt(センチストークス)で報告される。本明細書の目的で、動粘度は、ASTM D 445に従ってBrookfield粘度計を使用して40℃で測定される。
【0043】
詳細な説明
本開示は、(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油と、(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、(C)1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、を含む充填組成物を提供する。
【0044】
(A)鉱油
充填組成物は、32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油を含む。
【0045】
一実施形態では、鉱油は、増粘剤などの充填剤およびレオロジー調整剤を含まない。
【0046】
好適な市販の鉱油の非限定的な例としては、Suzhou SAIPAHAN Special Oil Co.Ltd.から入手可能な400N鉱油が挙げられる。
【0047】
一実施形態では、鉱油は、充填組成物の総重量に基づいて70重量パーセント(重量%)、または75重量%、または80重量%~85重量%、または87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%の量で組成物中に存在する。
【0048】
(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマー
充填組成物は、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーを含む。
【0049】
スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーは、25質量%、または30質量%、または35質量%~40質量%、または45質量%の結合スチレン含有量を有する。
【0050】
スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーは、0.890g/cc、または0.895g/cc、または0.900g/cc、または0.905g/cc~0.910g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/ccの密度を有する。
【0051】
一実施形態では、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーは、特にトリブロックポリマーおよびスチレントリボックポリマーを除いて、充填組成物中に存在する。
【0052】
好適な市販のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの非限定的な例は、Kraton Companyから入手可能な、35質量%の結合スチレン含有量を有するスチレンおよびエチレン/プロピレン系の透明な直鎖状ジブロックコポリマーである、G1701である。
【0053】
一実施形態では、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーは、本明細書に記載の2つ以上のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの混合物である。
【0054】
一実施形態では、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーまたは2つ以上のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの混合物は、充填組成物の総重量に基づいて5重量%、または5.5重量%、または6重量%、または6.5重量%、または7重量%~7.5重量%、または8重量%、または8.5重量%、または9重量%を超える量で組成物中に存在する。
【0055】
(C)ポリスチレン
充填組成物は、1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンを含む。
【0056】
ポリスチレンは、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量%を超える重合スチレンモノマーを含有し、任意選択で、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る、精製された8~9個の炭素芳香族モノマー系の透明で色安定性の低分子量熱可塑性炭化水素ポリマーである。
【0057】
一実施形態では、ポリスチレンは、1,000、または2,000、または5,000、または10,000、または15,000、または20,000、または25,000~30,000、または35,000、または40,000、または50,000、または75,000、または100,000のMwを有する。
【0058】
ポリスチレンは、1000、または1100、または1200、または1300、または1400、または1500、または1600~1700、または1800、または1900、または2000、または2100、または2100、または2200、または2300、または2400、または2500、または2600、または3000のMnを有する。
【0059】
ポリスチレンは、1.0、または2.0、または3.0、または5.0、または10.0~15.0、または20.0、または25.0、または30.0の分子量分布(Mw/Mn)を有する。
【0060】
ポリスチレンは、1,000、または5,000、または100,000、または15,000、または20,000、または25,000~30,000、または35,000、または40,000、または45,000、または50,000、または75,000、または100,000のMzを有する。
【0061】
ポリスチレンは、1.00g/cc、または1.01g/cc、または1.02g/cc、または1.03g/cc~1.04g/cc、または1.05g/cc、または1.06g/cc、または1.07g/cc、または1.08g/cc、または1.09g/cc、または1.10g/ccの密度を有する。
【0062】
ポリスチレンは、ポリスチレンの総重量に基づいて95重量%、または96重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%、または99.9重量%、または99.99重量%以上~100重量%のスチレン含有量を有する。
【0063】
一実施形態では、ポリスチレンは、1,000、または2,000、または5,000、または10,000、または15,000、または20,000、または25,000~30,000、または35,000、または40,000、または50,000、または75,000、または100,000のMwを有し、同じであるか、または以下の特性の全てである。
i)1000、もしくは1100、もしくは1200、もしくは1300、もしくは1400、もしくは1500、もしくは1600~1700、もしくは1800、もしくは1900、もしくは2000、もしくは2100、もしくは2200、もしくは2300、もしくは2400、もしくは2500、もしくは2600、もしくは3000のMn、および/または
ii)1.0、もしくは2.0、もしくは3.0、もしくは5.0、もしくは10.0~15.0、もしくは20.0、もしくは25.0、もしくは30.0のMw/Mn、および/または
iii)1,000、もしくは5,000、もしくは100,000、もしくは15,000、もしくは20,000、もしくは25,000~30,000、もしくは35,000、もしくは40,000、もしくは45,000、もしくは50,000、もしくは75,000、もしくは100,000のMz、および/または
iv)ポリスチレンの総重量に基づいて95重量%、もしくは96重量%、もしくは97重量%、もしくは98重量%、もしくは99重量%、もしくは99.9重量%、もしくは99.99重量%以上~100重量%のスチレン含有量、および/または
v)1.00g/cc、もしくは1.01g/cc、もしくは1.02g/cc、もしくは1.03g/cc~1.04g/cc、もしくは1.05g/cc、もしくは1.06g/cc、もしくは1.07g/cc、もしくは1.08g/cc、もしくは1.09g/cc、もしくは1.10g/ccの密度。
【0064】
一実施形態では、ポリスチレンは、1,000、または2,000、または5,000、または10,000、または15,000、または20,000、または25,000~30,000、または35,000、または40,000、または50,000、または75,000、または100,000のMwを有し、特性i)~v)のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てを有する。
【0065】
好適な市販のポリスチレンの非限定的な例としては、Eastman Chemicalから入手可能なKristalex F115、Eastman Chemicalから入手可能なEndex 160、およびEastman Chemicalから入手可能なPiccolastic D125が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、ポリスチレンは、本明細書に開示される2つ以上のポリスチレンの混合物であってもよい。
【0067】
一実施形態では、ポリスチレンまたは2つ以上のポリスチレンの混合物は、充填組成物の総重量に基づいて1.0重量、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%~3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または4.5重量%、または5.0重量%未満の量で存在する。
【0068】
(D)ポリオレフィンコポリマー
充填組成物は、任意選択で、5,000、または7,500、または10,000、または15,000~20,000、または25,000、または30,000の重量平均分子量(Mw)を有するポリオレフィンコポリマーを含む。
【0069】
ポリオレフィンコポリマーは、2つ以上のアルファ-オレフィンに由来する単位を含む。
【0070】
一実施形態では、ポリオレフィンは、エチレン系コポリマーである。エチレン系コポリマーは、エチレンに由来する単位と、1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーに由来する単位と、を含む。好適なアルファ-オレフィンコモノマーの非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、および1-オクテンが挙げられる。一実施形態では、エチレン系コポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマーである。
【0071】
一実施形態では、ポリオレフィンコポリマーは、プロピレンに由来する単位と、1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーに由来する単位と、を含むプロピレン系コポリマーである。好適なアルファ-オレフィンコモノマーの非限定的な例としては、エチレン、1-ブテン、および1-オクテンが挙げられる。一実施形態では、プロピレン系コポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマーである。
【0072】
一実施形態では、ポリオレフィンコポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマーであり、以下の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
i)5,000、もしくは10,000、もしくは20,000、もしくは50,000~60,000、もしくは75,000、もしくは100,000の数平均分子量(Mn)、および/または
ii)0.850g/cc、もしくは0.855g/cc、もしくは0.860g/cc、もしくは0.965g/cc~0.870g/cc、もしくは0.875g/cc、もしくは0.880g/cc、もしくは0.885g/cc、もしくは0.890g/cc、もしくは0.895g/cc、もしくは0.900g/ccの密度。
【0073】
一実施形態では、ポリオレフィンコポリマーは、本明細書に記載の2つ以上のポリオレフィンコポリマーの混合物である。
【0074】
存在する場合、ポリオレフィンコポリマーまたは2つ以上のポリオレフィンコポリマーの混合物は、充填組成物の総重量に基づいて1重量%、または2重量%、または3重量%、または5重量%~6重量%、または7重量%、または8重量%、または90重量%、または10重量%の量で組成物中に存在する。
【0075】
(E)酸化防止剤。
充填組成物は、任意選択で、酸化防止剤を含む。
【0076】
「酸化防止剤」は、ポリマーの加工中に起こり得る酸化を最小限に抑えるために使用することができる化学的化合物の種類またはクラスを指す。好適な酸化防止剤としては、高分子量ヒンダードフェノール、および硫黄、および多官能性フェノール(リン含有フェノールなど)が含まれる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン;ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール);4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);2,6-ジ-tertブチルフェノール;6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-1,3,5トリアジン;ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート;およびソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]が挙げられる。
【0077】
好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、CibaからIRGAFOS(登録商標)168として入手可能なトリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、およびAkrochem CorporationからAntioxidant 1010として入手可能なテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンが挙げられる。
【0078】
酸化防止剤は、充填組成物の総重量に基づいて0重量%、または0重量%超、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.03重量%、または0.04重量%、または0.05重量%、または0.06重量%、または0.07重量%、または0.08重量%、または0.09重量%、または0.1重量%~0.12重量%、または0.14重量%、または0.16重量%、または0.18重量%、または0.2重量%、または0.25重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または1重量%、または2重量%の量で存在する。
【0079】
充填組成物
本開示は、(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油と、(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、(C)1,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、任意選択で、(D)5,000~30,000のMwを有するポリオレフィンコポリマーと、(E)酸化防止剤と、を含む充填組成物を提供する(以下「充填組成物1」)。
【0080】
一実施形態では、充填組成物1は、195℃、または200℃、または206℃~210℃、または215℃、または220℃の滴点を有する。
【0081】
一実施形態では、充填組成物1は、15Pa・s、または20Pa・s、または21Pa・s、または22Pa・s~23Pa・s、または24Pa・s、または25Pa・s、または27Pa・s、または30Pa・s、または35Pa・sを超える低剪断速度粘度を有する。
【0082】
一実施形態では、充填組成物1は、5Pa・s、または6Pa・s、または7Pa・s~8Pa・s、または9Pa・s、または10Pa・s、または11Pa・s、または12Pa・s、または15Pa・sの中剪断速度粘度を有する。
【0083】
一実施形態では、充填組成物1は、1.5Pa・s、または2.0Pa・s、または2.5Pa・s、または3.0Pa・s、または3.5Pa・s~4.0Pa・s、または4.5Pa・s、または5.0Pa・s、または5.5Pa・s、または6.0Pa・s、または6.5Pa・sの高剪断粘度を有する。
【0084】
一実施形態では、充填組成物1は、2.0、または2.5、または3.0、または3.25、または3.5、または3.75、または4.0、または4.25、または4.5~4.75、または5.0、または5.5、または6.0、または8.0の剪断減粘指数を有する。
【0085】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ポリスチレンとスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーとの間の分子間スチレン-スチレン相互作用は、本充填組成物の流体性能に影響を及ぼすと考えられている。ポリスチレンおよびスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの芳香族部分は、強い相互作用を有し、より高い滴点をもたらす。スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーのポリオレフィンセグメント間の相互作用(ならびに存在する場合、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーおよびポリオレフィンコポリマーのポリオレフィンセグメント間の相互作用)は、より弱い相互作用であり、これは、剪断力を加えると容易に破壊される。したがって、本組成物は、剪断力下で流体のように挙動する。
【0086】
一実施形態では、充填組成物1は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
i)195℃、もしくは200℃、もしくは206℃~210℃、もしくは215℃、もしくは220℃の滴点、および/または
ii)15Pa・s、もしくは20Pa・s、もしくは21Pa・s、もしくは22Pa・s~23Pa・s、もしくは24Pa・s、もしくは25Pa・s、もしくは27Pa・s、もしくは30Pa・s、もしくは35Pa・sの低剪断速度粘度、および/または
iii)5Pa・s、もしくは6Pa・s、もしくは7Pa・s~8Pa・s、もしくは9Pa・s、もしくは10Pa・s、もしくは11Pa・s、もしくは12Pa・s、もしくは15Pa・sの中剪断速度粘度、および/または
iv)1.5Pa・s、もしくは2.0Pa・s、もしくは2.5Pa・s、もしくは3.0Pa・s、もしくは3.5Pa・s~4.0Pa・s、もしくは4.5Pa・s、もしくは5.0Pa・s、もしくは5.5Pa・s、もしくは6.0Pa・s、もしくは6.5Pa・sの高剪断粘度、および/または
v)2.0、もしくは2.5、もしくは3.0、もしくは3.25、もしくは3.5、もしくは3.75、もしくは4.0、もしくは4.25、もしくは4.5~4.75、もしくは5.0、もしくは5.5、もしくは6.0、もしくは8.0の剪断減粘指数。
【0087】
一実施形態では、充填組成物1は、特性i)~v)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つ全てを有する。
【0088】
一実施形態では、充填組成物1は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
i)206°C~220°Cの滴点、
ii)20Pa・s~35Pa・sの低剪断速度粘度、
iii)6Pa・s~12Pa・sの中剪断速度粘度、
iv)4.5Pa.s超~5.5Pa.sの高剪断速度粘度、および
v)2.0~8.0の剪断減粘指数。
【0089】
一実施形態では、充填組成物1は、特性i)~v)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つ全てを有する。
【0090】
バッファチューブ
本開示は、バッファチューブを提供する。「バッファチューブ」は、一本以上の光ファイバーが通って延びる光ケーブル内に含まれる導管である。
図1は、複数の光ファイバー15を包囲し、充填組成物20で充填された例示的なバッファチューブ10の断面図を提供する。一実施形態では、
図1に示されるように、充填組成物20は、バッファチューブ10の表面、具体的には内側表面12と接触している。充填組成物20、または単に組成物は、本明細書に提供される実施形態のうちのいずれか1つまたは2つ以上の実施形態の組み合わせによる。
【0091】
一実施形態では、バッファチューブは、バッファチューブの表面と接触している充填組成物を含み、組成物は、(A)40℃で32cSt~100cStの動粘度を有する鉱油と、(B)スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、(C)2,000~100,000の重量平均分子量(Mw)を有する1重量%~5重量%未満のポリスチレンと、任意選択で、(D)ポリオレフィンコポリマーと、(E)酸化防止剤と、を含む(充填組成物1)。
【0092】
バッファチューブは、ポリマー材料からなる。好適なポリマー材料の非限定的な例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーなどのオレフィン系ポリマー、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、バッファチューブは、ポリプロピレンおよびポリエチレンから選択されるポリオレフィン材料からなる。
【0093】
一実施形態では、バッファチューブ材料は、プロピレン系ポリオレフィン材料である。プロピレン系ポリオレフィン材料は、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または100重量%のプロピレン系ポリマーを含む。プロピレン系ポリマーは、少なくとも1つの他のポリオレフィンとブレンドされてもよい。好適なポリオレフィンの非限定的な例としては、ランダムプロピレン系および/またはエチレン系ポリマーおよびブロックコポリマーを含む、他のプロピレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーが挙げられる。
【0094】
一実施形態では、バッファチューブ材料は、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%を超えるプロピレン系ポリマーと、5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%未満のエチレン系ポリマーと、を含むブレンドである。
【0095】
一実施形態では、バッファチューブ材料は、エチレン系ポリオレフィン材料である。エチレン系ポリオレフィン材料は、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または100重量%のエチレン系ポリマーを含む。エチレン系ポリマーは、少なくとも1つの他のポリオレフィンとブレンドされてもよい。他のポリオレフィンの非限定的な好適な例としては、ランダムエチレン系および/またはプロピレン系ポリマーおよびブロックコポリマーを含む、他のエチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0096】
一実施形態では、バッファチューブ材料は、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%を超えるエチレン系ポリマーと、5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または30重量%~35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%未満のプロピレン系ポリマーと、を含むブレンドである。
【0097】
一実施形態では、バッファチューブ材料は、(i)プロピレンホモポリマー、(ii)エチレン/プロピレンコポリマー、および(iii)プロピレンブロック(PB)とエチレンブロック(EB)とを有するブロックコポリマーからなるブロック複合体であり、プロピレンブロック(PB)は、ブロック複合体の構成成分(i)と同じプロピレンホモポリマーであり、エチレンブロック(EB)は、ブロック複合体の構成成分(ii)と同じエチレン/プロピレンコポリマーである。
【0098】
光ファイバーケーブル
光ファイバーケーブルには、光信号を伝える1つ以上の光ファイバーまたは他の光導波路が含まれる(例えば、音声、データ、ビデオ、または他の情報を伝送するための)。一般に、光ファイバーは、本明細書に記載のバッファチューブ内に配置される。
図1は、例示的な光ファイバーケーブル100の断面図である。
図1は、各々が複数の光ファイバー15を包囲し、充填組成物20を含む、複数のバッファチューブ10を示す。バッファチューブ10は、中央強度部材30の周囲に配置され、バッファチューブ10および強度部材30は、水遮断テープ40およびケーブルジャケット50によって包み込まれて、光ファイバーケーブル100を形成する。示されている実施形態では、水遮断テープ40およびケーブルジャケット50によって形成された管状構造は、充填組成物20で充填されて、湿気および機械的応力に対する保護を提供する。
【0099】
一実施形態では、光ファイバーケーブルは、本明細書に記載の1つ以上のバッファチューブを含む。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に記載する。
【実施例】
【0101】
材料
鉱油は、Suzhou SAIPAHAN Special Oil Co.Ltd.から400N鉱油として入手可能な、40℃で100cStの動粘度を有する鉱油である。
【0102】
S-E/Pは、Kraton CompanyからG1701として入手可能な、質量に基づいて35%の結合スチレン含有量を有する透明な直鎖状スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーである。
【0103】
PS1は、Kristalexとして入手可能な、114~120℃の環球式軟化点、1.06g/ccの密度、2030のMw、1150のMn、および1.8のMw/Mnを有するポリスチレンである。
【0104】
PS2は、Endex 160として入手可能な、159℃の環球式軟化点、8600のMw、2500のMn、および3.6のMw/Mnを有するポリスチレンである。
【0105】
PS3は、Piccolastic D125として入手可能な、126℃の環球式軟化点、1.05g/ccの密度、37,400のMw、1300のMn、および28.5のMw/Mnを有するポリスチレンである。
【0106】
試料調製
(A)鉱油、(B)SE/P、および(C)PS1、PS2、またはPS3の組成物は、表1に提供される量に従って、構成成分(A)~(C)をParr Reactor鋼製容器に入れることによって形成される。容器がParr Reactor内に設置されている間、水道管および圧力解放弁は、閉められている。ミキサが100~200rpmで開始すると同時に、ヒータは、容器を室温から160℃に加熱し始める。温度が160℃に達すると、ミキサは、最大速度(800rpm)に設定される。最大速度で1.5時間混合した後、ヒータは、止められる。温度が100℃に達すると、容器は、解放される。流体は、性能評価のために鋼製容器からガラス瓶に移される。
【表1】
【0107】
CS1、CS2、およびCS3は各々、主要構成成分としての鉱油、および表1に記載される様々な量のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーからなる2構成成分組成物である。CS1、CS2、およびCS3は、鉱油中のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの量を増加させると、滴点が増加するが、粘度および剪断減粘値も増加することを示している。
【0108】
CS4、CS5、およびCS6は各々、3構成成分組成物であり、各々は、過半量の鉱油と、5重量%のスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーと、重量平均分子量(Mw)の値が異なる5重量%のポリスチレンと、を含む。ポリスチレンが含まれているにもかかわらず、CS4、CS5、およびCS6の各々の滴点は、195°C未満である。
【0109】
IE1~IE4をCS1~CS3と比較すると、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーの量を、1,000~100,000のMwを有するポリスチレンで置き換えると、滴点および粘度性能の両方が改善されることが示されている。具体的には、IE1~IE4は各々、(i)15Pa・秒~35Pa・秒の低剪断速度粘度、(ii)1.5Pa・秒~6.5の高剪断速度粘度、および(iii)2.0~8.0の剪断減粘指数と組み合わせて、195℃以上の滴点を有する。IE1~IE4の場合、各々は、同じポリスチレンを2重量%から4重量%(5重量%未満)の増加量で含む。
【0110】
さらに、IE1~E4は各々、195℃以上の滴点、および同様にIE1~IE4と同じポリスチレンを使用するCS6と比較して改善された粘度性能を有するが、CS6のポリスチレンは、5重量%の量で存在する。IE1~IE6とCS4~CS6の比較から示されるように、いったんポリスチレンの量が5重量%に達すると、滴点は、195℃未満に低下する。CS4およびCS5とIE5およびIE6のそれぞれの比較は、ポリスチレンの量が5重量%未満である場合、ポリスチレンのMwがより高い(200,000を超える)ときでさえ、5重量%のポリスチレン含有量を有する同一の組成物と比較して、滴点および粘度性能が改善される。
【0111】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範疇に該当するものとして含むことが、特に意図されている。