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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】車両誘導アシストシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20220719BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020062694
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163065
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000201515
【氏名又は名称】前田道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】武川 秀也
(72)【発明者】
【氏名】サミム アフマド サブール
(72)【発明者】
【氏名】村本 孝
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010541(WO,A1)
【文献】特開2018-190228(JP,A)
【文献】実開平04-122711(JP,U)
【文献】特開2018-191142(JP,A)
【文献】特開2014-109186(JP,A)
【文献】実開平07-031908(JP,U)
【文献】国際公開第2020/027314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
E01C 19/00 - 19/52
G05D 1/00 - 1/12
B60R 21/00 - 21/017
B60R 25/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の誘導指標の間に形成される誘導領域内を被誘導車両が通過して目的位置まで到達できるように、前記被誘導車両に対する誘導を支援する車両誘導アシストシステムであって、
前記誘導領域の外側には、前記被誘導車両の誘導に対する阻害要因が無いと想定される安全領域に至る所要幅の緩衝領域を設定し、
前記目的位置側の適所に設けられ、少なくとも、前記誘導領域と前記被誘導車両と前記緩衝領域とを含む二次元画像を予め定めた所定時間毎に必要十分な解像度で取得可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された前記二次元画像から、少なくとも、前記被誘導車両と前記誘導指標を含む検知対象物を抽出し、前記誘導領域と前記緩衝領域における各検知対象物の相対位置を特定する検知対象物特定手段と、
前記検知対象物特定手段により相対位置が特定された各検知対象物相互の位置関係および/または前記検知対象物と前記目的位置との位置関係が、予め定めた報知条件に該当するか否かを判定する報知条件判定手段と、
前記報知条件判定手段によって前記報知条件の成立が判定されることに基づき、成立した前記報知条件に適する報知内容で報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする車両誘導アシストシステム。
【請求項2】
前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両と前記誘導指標との離隔距離が、予め定めた片寄り閾値を下回ることを片寄り異常の報知条件と判定し、
前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記片寄り異常の報知条件と判定することに基づいて、前記片寄り異常の報知条件に適する報知内容で前記被誘導車両に報知するようにした、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両誘導アシストシステム。
【請求項3】
前記検知対象物特定手段は、少なくとも前記誘導領域内の人間を前記検知対象物として検知可能であり、
前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両と前記人間との離隔距離が、予め定めた接近閾値を下回ることを接近異常の報知条件と判定し、
前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記接近異常の報知条件と判定することに基づいて、前記接近異常の報知条件に適する報知内容で前記被誘導車両および/または前記人間に報知するようにした、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両誘導アシストシステム。
【請求項4】
前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両から前記目的位置までの離隔距離が、予め定めた第1警戒閾値を下回ることを第1警戒状態の報知条件と判定し、また、前記被誘導車両から前記目的位置までの離隔距離が、前記第1警戒閾値よりも小さい第2警戒閾値を下回ることを第2警戒状態の報知条件と判定し、
前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記第1警戒状態の報知条件と判定してから前記第2警戒状態の報知条件と判定するまで、目的位置接近に適する報知内容で前記被誘導車両に報知するようにした、
ことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両誘導アシストシステム。
【請求項5】
前記報知条件判定手段は、複数の前記報知条件の成立を判定しているとき、予め定めた報知優先順位に基づき、成立している前記報知条件のうち優先度の高い前記報知条件を選定し、選定した前記報知条件に適する報知内容での報知を前記報知手段へ指示するようにしたことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両誘導アシストシステム。
【請求項6】
前記報知手段は、
報知する前記報知内容に応じて設定された音声信号を送信する無線送信機と、
前記被誘導車両に装備され、あるいは、当該被誘導車両の運転手が携行し、前記無線送信機からの前記音声信号を受信して可聴出力する無線受信機と、
を含むことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両誘導アシストシステム。
【請求項7】
駐車場における駐車ますの幅員を示す左右のサイドラインを前記一対の誘導指標とし、前記駐車ますの奥側を前記目的位置とすることで、前記被誘導車両に対する前記駐車ますへの誘導を支援するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両誘導アシストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被誘導車両が目的位置まで到達できるように、被誘導車両に対する誘導を支援する車両誘導アシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物を敷き均すと共に締め固めるアスファルトフィニッシャには、ダンプトラックによってアスファルト混合物が適宜供給される。アスファルトフィニッシャは前部にアスファルト混合物を受け入れるホッパ部が設けられているので、ダンプトラックはアスファルト混合物を積んだ積載部がアスファルトフィニッシャのホッパ部にコンタクトするよう、後退しながらアスファルトフィニッシャに近づいてゆく。アスファルト敷設現場では、作業員等がダンプトラックの運転手に指示を出し、ダンプトラックをアスファルトフィニッシャまで誘導するのが一般的であるが、なるべく人手による作業を減らして作業効率を上げることが望ましい。
【0003】
そこで、アスファルトフィニッシャへの誘導作業を人為的に行わないで、ダンプトラックまでの正確な距離や横方向へのズレを自動的に検知して、ダンプトラックの運転手に適正な誘導指示を出す誘導装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の誘導装置では、ホッパ後方の中央上部にCCDカメラを前方に正しく向けて取り付けることで、アスファルトフィニッシャに近づいてくるダンプトラックを撮影した画像からダンプトラックのずれを検出している。すなわち、特許文献1に記載の誘導装置は、撮影画像において、アスファルトフィニッシャの中心に対してダンプトラックの中心が一致していないと、ダンプトラックが横にずれていると検知できるので、ずれを戻すようにダンプトラックの運転手に指示を出せるのである。また、特許文献1に記載の誘導装置は、CCDカメラに搭載されている距離計や撮影画像におけるダンプトラックの大きさから、ダンプトラックとの距離を検出し、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャへ近づいたときにも停止の指示を出すことができる。このように、特許文献1に記載の誘導装置は、作業員等に代わって、ダンプトラックの運転手に自動で適切な誘導指示を出せるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平7-47446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ダンプトラックをアスファルトフィニッシャへ誘導するための指示を自動で出せるものの、必ずしも作業現場における安全に配慮したものとなっていない。アスファルト敷設現場では、様々な作業が同時並行で行われているため、作業中の作業員が後退中のダンプトラックに気づかず、ダンプトラックの運転手も作業員の存在に気づかなかったために、ダンプトラックが作業員等と接触する事故が起きる場合もある。特許文献1に記載の発明では、ダンプトラックの後退進路のずれを誘導して、アスファルトフィニッシャまで到達させる機能しか無く、ダンプトラックと作業員との接触を回避して作業現場での安全を確保することはできない。
【0006】
また、車両を安全に目的位置へ誘導する技術は、ダンプトラックをアスファルトフィニッシャへ誘導するだけでなく、駐車場の駐車ますへ車両を誘導するような場合にも使うことができるので、汎用性の高い誘導技術であることが望ましい。例えば、駐車ますへ車両を誘導する技術として用いる場合には、単に車両の横ずれや停車位置を指示して駐車ますへ誘導するだけでなく、人や障害物が駐車ます内に存在していた場合にも警告して安全を担保できることが重要である。
【0007】
そこで、本発明は、被誘導車両が目的位置まで安全に到達できるように、高い汎用性で被誘導車両に対する誘導を支援できる車両誘導アシストシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、一対の誘導指標の間に形成される誘導領域内を被誘導車両が通過して目的位置まで到達できるように、前記被誘導車両に対する誘導を支援する車両誘導アシストシステムであって、前記目的位置側の適所に設けられ、少なくとも、前記誘導領域と前記被誘導車両を含む二次元画像を予め定めた所定時間毎に必要十分な解像度で取得可能な撮像手段と、前記撮像手段によって取得された前記二次元画像から、少なくとも、前記被誘導車両と前記誘導指標を含む検知対象物を抽出し、各検知対象物の相対位置を特定する検知対象物特定手段と、前記検知対象物特定手段により相対位置が特定された各検知対象物相互の位置関係および/または前記検知対象物と前記目的位置との位置関係が、予め定めた報知条件に該当するか否かを判定する報知条件判定手段と、前記報知条件判定手段によって前記報知条件の成立が判定されることに基づき、成立した前記報知条件に適する報知内容で報知を行う報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記構成において、前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両と前記誘導指標との離隔距離が、予め定めた片寄り閾値を下回ることを片寄り異常の報知条件と判定し、前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記片寄り異常の報知条件と判定することに基づいて、前記片寄り異常の報知条件に適する報知内容で前記被誘導車両に報知するようにしてもよい。
【0010】
また、前記構成において、前記検知対象物特定手段は、少なくとも前記誘導領域内の人間を前記検知対象物として検知可能であり、前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両と前記人間との離隔距離が、予め定めた接近閾値を下回ることを接近異常の報知条件と判定し、前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記接近異常の報知条件と判定することに基づいて、前記接近異常の報知条件に適する報知内容で前記被誘導車両および/または前記人間に報知するようにしても良い。
【0011】
また、前記構成において、前記報知条件判定手段は、前記被誘導車両から前記目的位置までの離隔距離が、予め定めた第1警戒閾値を下回ることを第1警戒状態の報知条件と判定し、また、前記被誘導車両から前記目的位置までの離隔距離が、前記第1警戒閾値よりも小さい第2警戒閾値を下回ることを第2警戒状態の報知条件と判定し、前記報知手段は、前記報知条件判定手段が前記第1警戒状態の報知条件と判定してから前記第2警戒状態の報知条件と判定するまで、目的位置接近に適する報知内容で前記被誘導車両に報知するようにしても良い。
【0012】
また、前記構成において、前記報知条件判定手段は、複数の前記報知条件の成立を判定しているとき、予め定めた報知優先順位に基づき、成立している前記報知条件のうち優先度の高い前記報知条件を選定し、選定した前記報知条件に適する報知内容での報知を前記報知手段へ指示するようにしても良い。
【0013】
また、前記構成において、前記報知手段は、報知する前記報知内容に応じて設定された音声信号を送信する無線送信機と、前記被誘導車両に装備され、あるいは、当該被誘導車両の運転手が携行し、前記無線送信機からの前記音声信号を受信して可聴出力する無線受信機と、を含むものでも良い。
【0014】
また、前記構成において、駐車場における駐車ますの幅員を示す左右のサイドラインを前記一対の誘導指標とし、前記駐車ますの奥側を前記目的位置とすることで、前記被誘導車両に対する前記駐車ますへの誘導を支援するようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撮像手段によって取得した二次元画像から、検知対象物特定手段が検知対象物として被誘導車両や誘導指標などを抽出し、一対の誘導指標の間に形成される誘導領域内で被誘導車両を誘導する上で必要な報知条件の成否を報知条件判定手段が判定する。報知手段が報知条件に適する報知内容で報知を行うことにより、被誘導車両を目的位置まで安全に誘導する支援が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ダンプトラックをアスファルトフィニッシャへ誘導する車両誘導アシストシステムの概要を示し、(A)は側方から見た説明図、(B)は上方から見た説明図である。
図2】アスファルトフィニッシャに搭載する誘導支援装置の概略構成図である。
図3】(A1)は、検知対象物特定手段へのプリセット条件として用いるプリセット用平面座標のイメージ図である。(A2)は、プリセット条件が設定された実空間を写したプリセット用取得画像のイメージ図である。(B1)は、実空間を写した取得画像のイメージ図である。(B2)は、取得画像から射影変換により生成した実空間俯瞰像のイメージ図である。
図4】誘導領域から外れているダンプトラックを検知対象物とする場合の説明図である。
図5】ダンプトラックがアスファルトフィニッシャに十分近づいてから行う誘導制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る車両誘導アシストシステムの実施形態につき説明する。以下の説明においては、被誘導車両をアスファルト混合物運搬用のダンプトラック1とし、目的位置DPをアスファルトフィニッシャ2のホッパ部前端に設定する。また、ダンプトラック1を誘導する誘導路は、幅員方向の舗装範囲を示す左型枠3aと右型枠3bとの間とする。すなわち、本実施形態の車両誘導アシストシステムは、一対の誘導指標である左右型枠3a,3bの間に形成される誘導領域LZ内を被誘導車両としてのダンプトラック1が通過して目的位置DPまで到達できるように、ダンプトラック1に対する誘導を支援するのである。なお、説明を簡略するため、アスファルトフィニッシャ2の進む方向(アスファルト敷設方向)を前、その逆方向を後、前後方向に直交する横方向は前方を向いたときの左右と呼び分ける。
【0018】
図1(A)は、ダンプトラック1がアスファルトフィニッシャ2まで誘導される誘導路(誘導領域LZ)を、アスファルト敷設方向に対して左手から見た様子を示し、図1(B)は、誘導領域LZを上方から見た様子を示す。本実施形態の車両誘導アシストシステムは、主として、アスファルトフィニッシャ2に搭載した撮像手段としての単眼カメラ4および誘導支援装置5から構成される。なお、誘導支援のための報知を合成音声や警告音等で出力できるように、アスファルトフィニッシャ2にスピーカ6が設けてあり、誘導支援装置5によりスピーカ6の動作制御を行うことで、現場の作業員等に報知できる。また、ダンプトラック1に無線受信機7を設け、誘導支援装置5から送信された音声信号等を無線受信機7が受信して出力することにより、車内の運転手に報知することも可能である。
【0019】
単眼カメラ4は、目的位置DP側の適所、例えば、アスファルトフィニッシャ2の運転席屋根部に設け、少なくとも、誘導領域LZとダンプトラック1を含む二次元画像(路面を見下ろす俯瞰画像)を取得できるように設置状態を調整しておく。なお、単眼カメラ4は、必ずしもアスファルトフィニッシャ2の中心位置に設置する必要はなく、誘導領域LZとダンプトラック1を含む二次元画像を取得できれば、左側端部あるいは右側端部に設置しても構わない。同様に、単眼カメラ4の設置高さはアスファルトフィニッシャ2の運転席屋根部に限らず、誘導領域LZとダンプトラック1を含む二次元画像を取得できれば、屋根部より低い位置に設けても構わないし、支持ポール等で屋根部より高い位置に設けても構わない。また、本実施形態では、単眼カメラ4を、予め定めた所定時間(例えば、100ms未満)毎に必要十分な解像度(例えば、VGA以上)で二次元画像を取得可能な撮像手段として用いるが、約30fpsあるいは60fpsでの動画撮影が可能なビデオカメラを撮像手段として用いても構わない。
【0020】
上述した単眼カメラ4で撮影された二次元画像は誘導支援装置5に取り込まれ、適切な支援を行うための処理が行われる。誘導支援装置5は、例えば、防塵性の収納ケースにバッテリや回路基板等を収納して構成される。無論、誘導支援装置5を別体構成とせず、アスファルトフィニッシャ2に標準搭載してもよいし、単眼カメラ4と一体形にしても構わない。図2に、誘導支援装置5の一構成例を示す。
【0021】
誘導支援装置5の画像取得手段51は、単眼カメラ4の撮影開始や撮影終了を指示すると共に、単眼カメラ4から画像を取り込む。単眼カメラ4によって取得された二次元画像は、画像取得手段51から検知対象物特定手段52へ供給され、少なくとも、ダンプトラック1と左右型枠3a,3bを含む検知対象物を抽出し、各検知対象物の相対位置を特定する。すなわち、ダンプトラック1と左右型枠3a,3bとの相対距離が分かれば、ダンプトラック1が右寄りか左寄りかを判断できるので、誘導領域LZの中央へ戻すような支援が可能となる。なお、検知対象物としては、ダンプトラック1と左右型枠3a,3bのほかに、誘導領域LZ内で作業を行っている人間、誘導領域LZ内にある舗装用建設機材(道具・工具類、発電機、投光器、ロードコーン、道路舗装機械等)を含めてもよい。
【0022】
上述した機能を実現するために、検知対象物特定手段52は、検知対象物を認識する機能に加えて、検知対象物の位置を特定する機能が必要である。具体的には、検知対象物認識手段52a、検知パターン記憶手段52b、検知対象物位置特定手段52c、射影変換情報記憶手段52d、射影変換手段52e、プリセット条件設定手段52fを備える。
【0023】
検知対象物を認識するために、検知対象物特定手段52の検知対象物認識手段52aは、検知パターン記憶手段52bに記憶されている検知パターンを用いて、画像取得手段51からの二次元画像からパターン抽出を行い、画像内に含まれている検知対象物を認識する。検知対象物の検知パターンは、ディープラーニングによって検知精度の高い情報とすることができる。そして、検知パターン記憶手段52bに記憶させる情報を適宜更新すれば、検知対象物の種類を増やしたり、検知対象物の認識率を高めたりすることができる。図1においては、ダンプトラック1と左右型枠3a,3bに加えて、誘導領域LZ内にいる人間を検知対象物である現場作業員FW1,FW2として認識している。なお、誘導領域LZの左右両側には、所要幅(例えば、1〔m〕程度)の緩衝領域BZを挟んで、安全領域SZとしている。安全領域SZにはダンプトラック1の誘導に対する阻害要因は無いと想定されるので、安全領域SZにいる現場作業員FW3は検知対象物から除外される。
【0024】
検知対象物認識手段52aが認識した検知対象物の位置を特定するために、検知対象物位置特定手段52cは、射影変換情報記憶手段52dに記憶されている射影変換情報(例えば、射影変換式)に基づいて、単眼カメラ4が撮影した画像を実空間俯瞰像に変換する。なお、射影変換情報は単眼カメラ4の設置状態によって異なるので、車両誘導アシストシステムを稼動させる毎に、単眼カメラ4の設置状態に応じた適切な射影変換情報を取得しておくことが望ましい。射影変換情報をプリセットするために、射影変換手段52eは、検知対象物認識手段52aから供給される検知対象物の認識情報と、プリセット条件設定手段52fにて設定されたプリセット条件とを用いて、射影変換情報を生成する。
【0025】
ここで、射影変換情報をプリセットする作業について、図3に基づき説明する。図3(A1)は、プリセット条件設定手段52fに設定するプリセット条件として用いるプリセット用平面座標を示し、この条件に適合するよう、例えば、単眼カメラ4の直下を原点とした座標系(単位は〔m〕)に4点のマークポイントを設ける。左第1ポイントL1、右第1ポイントR1、左第2ポイントL2、右第2ポイントR2は、任意の四辺形を構成する4点である。図3(A)では、x軸に平行な2辺とy軸に平行な2辺よりなる正方形を構成する4点を例示したが、これに限定されるものではなく、長方形や台形、あるいは平行な辺がない四辺形を構成する4点でもよい。本例の座標系(x,y)において、左第1ポイントL1の中心は(-1.5,2.0)、右第1ポイントR1の中心は(1.5,2.0)、左第2ポイントL2の中心は(-1.5,5.0)、右第2ポイントR2の中心は(1.5,5.0)である。なお、4点のマークポイントは、路面に直接描いたり置いたりしてもよいが、4点のマークポイントが描かれたシートを路面に広げて配置する方が効率的である。
【0026】
4点のマークポイントの特徴を検知パターン記憶手段52bに記憶しておくことで、検知対象物認識手段52aは、4点のマークポイントを含む誘導領域LZを写した二次元画像(プリセット用取得画像)から4点のマークポイントを認識できる(図3(A2)を参照)。なお、左第1ポイントL1、右第1ポイントR1、左第2ポイントL2、右第2ポイントR2は、それぞれ異なる特徴を備えるものとして、それぞれ別のマークポイントとして認識できるようにしてもよいし、全てのマークポイントを同一形状としてもよい。左第1ポイントL1、右第1ポイントR1、左第2ポイントL2、右第2ポイントR2を同一形状とした場合は、認識された各マークポイントの相対的な位置関係から、左第1ポイントL1、右第1ポイントR1、左第2ポイントL2、右第2ポイントR2を割り当てればよい。
【0027】
検知対象物認識手段52aは、プリセット用取得画像から、左右型枠3a,3bや現場作業員FW1,FW2等も認識しているが、射影変換手段52eでは、4点のマークポイントのみ用いる。例えば、プリセット用取得画像は640〔ピクセル〕×480〔ピクセル〕のVGAサイズで、各マークポイントの中心点の座標は、以下のように特定されたものとする。左第1ポイントL1の中心座標は(87,425)、右第1ポイントR1の中心座標は(478,425)、左第2ポイントL2の中心座標は(186,190)、右第2ポイントR2の中心座標は(476,190)である。
【0028】
そして、射影変換手段52eは、プリセット用取得画像から認識された各マークポイントの中心座標で特定される四辺形を、プリセット条件設定手段52fから供給されたプリセット用平面座標上の四辺形に射影変換するためのパラメータを求め、射影変換式を決定する。この射影変換式が射影変換情報として射影変換情報記憶手段52dに記憶され、検知対象物位置特定手段52cが射影変換情報を利用できるようになる。なお、射影変換情報のプリセット動作は、検知対象物認識手段52aがプリセット用のマークポイントを検知したときに自動で行うようにしてもよいし、プリセット開始スイッチ等を操作することで実行されるようにしてもよい。
【0029】
上記のようにして、単眼カメラ4の設置状態に応じた射影変換情報がプリセットされると、検知対象物位置特定手段52cは、検知対象物認識手段52aから供給された検知対象物の画像内座標を誘導領域LZ内の平面座標へ適切に変換できる。図3(B1)は実空間を写した取得画像を示し、検知対象物認識手段52aによって現場作業員FW1が検知対象物RO1として、現場作業員FW2が検知対象物RO2として認識されている。検知対象物位置特定手段52cは、射影変換情報記憶手段52dに記憶された射影変換式に基づき、取得画像内の検知対象物RO1,RO2の座標を射影変換することで、図3(B2)に示す実空間俯瞰像における検知対象物RO1,RO2の座標(検知対象物位置)を特定できる。実空間俯瞰像における検知対象物RO1,RO2の座標(x,y)が特定されれば、原点であるカメラ位置(単眼カメラ4の直下位置)からの距離(例えば、検知対象物RO1まで3.1〔m〕、検知対象物RO2まで7.9〔m〕)を求めることもできる。
【0030】
なお、検知対象物認識手段52aは、ディープラーニングを用いた画像認識技術により検知対象物の認識を行うが、検知対象物は、取得画像内である程度の面積を占める範囲として認識される。しかしながら、取得画像を実空間俯瞰像にする射影変換では、ダンプトラック1が誘導されてくる誘導領域LZ内の地面上の位置を必要としているので、例えば、検知対象物の最下部における点群を地面に接している範囲(接地範囲)とし、接地範囲の点群から検知対象物の座標を特定する。検知対象物における接地範囲のどこを代表座標とするかは任意であり、接地範囲の中心点を代表座標としてもよいし、左もしくは右の端点を代表座標としてもよい。ただし、左右型枠3a,3bは、誘導領域LZと緩衝領域BZとの境界を特定するものであるから、左型枠3aは右側縁の接地範囲に対応する点群を検知対象物とし、右型枠3bは左側縁の接地範囲に対応する点群を検知対象物とする。
【0031】
また、上記の例では、カメラ位置を原点とした座標系にて検知対象物の相対位置を特定したが、これに限定されるものではなく、例えば、ダンプトラック1を誘導する目的位置DP(アスファルトフィニッシャ2の前端部)を基準として、検知対象物の相対位置を特定しても構わない。取得画像にアスファルトフィニッシャ2の前端部が写るように単眼カメラ4の設置位置を調整しておくと共に、取得画像にアスファルトフィニッシャ2の前端部を検知パターンとして記憶させておけば、目的位置DPを検知対象物として認識できる。なお、検知対象物の検出位置を相対座標で特定せずに、緯度経度などの絶対座標に置き換えてもよい。しかしながら、アスファルトフィニッシャ2は、敷設方向へ前進しながらアスファルト舗装を行うので、アスファルトフィニッシャ2と一緒に移動する物またはアスファルトフィニッシャ2の一部分を座標系の基準とし、取得画像で見える範囲内の相対位置で各検知対象物を扱う方が効率的である。
【0032】
検知対象物位置特定手段52cにより相対位置が特定された各検知対象物相互の位置関係、検知対象物と目的位置DPとの位置関係が、予め定めた報知条件に該当するか否かを、報知条件判定手段53が判定する。この報知条件は、報知条件記憶手段54に予め記憶させておくもので、必要に応じて報知条件を追加したり取り消したりできる。以下に、いくつかの報知条件を例示する。
【0033】
報知条件の一つは、被誘導車両であるダンプトラック1と誘導指標である左右型枠3a,3bとの離隔距離が、予め定めた片寄り閾値を下回る片寄り異常である。図1(B)に示すように、ダンプトラック1の左側端部と左型枠3aとの離隔距離α1が片寄り閾値を下回っていれば、報知条件判定手段53は、ダンプトラック1が左に寄りすぎている片寄り異常と判定する。逆に、ダンプトラック1の右側端部と右型枠3bとの離隔距離α2が片寄り閾値を下回っていれば、報知条件判定手段53は、ダンプトラック1が右に寄りすぎている片寄り異常と判定する。
【0034】
報知条件判定手段53が片寄り異常の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55が、片寄り異常の報知条件に適する報知内容での報知を行う。ダンプトラック1が左に寄り過ぎている片寄り異常と判定された場合、無線送信機55aから「右に寄せてください」といった音声信号をダンプトラック1の無線受信機7へ送信し、車内で音声出力することにより運転手に報せる。逆に、ダンプトラック1が右に寄り過ぎている片寄り異常と判定された場合、無線送信機55aから「左に寄せてください」といった音声信号をダンプトラック1の無線受信機7へ送信し、車内で音声出力することにより運転手に報せる。このように、離隔距離α1,α2が片寄り閾値以上を保つように、ダンプトラック1に指示すれば、目的位置DPに対して左右にずれないようにダンプトラック1を誘導できる。運転手への報知は、アラート音などで簡易に行うようにしてもよい。
【0035】
なお、報知条件判定手段53が片寄り異常の報知条件を判定する対象のダンプトラック1は、誘導領域LZを後退している被誘導車両であり、安全領域SZを通過している車両は対象外である。誘導領域LZと安全領域SZとの間に緩衝領域BZを設けた場合、緩衝領域BZを跨いでいる車両を、被誘導車両とするか、誘導対象外の車両とするかは、任意に定めて良いが、本実施形態では、以下のように判断することとした。図4(A)に示すように、ダンプトラック1の大部分は誘導領域LZに入っているが、一部(右側方)は右型枠3bを越えて緩衝領域BZに入っている場合、誘導領域LZへ戻す誘導支援が必要と考えられるので、ダンプトラック1を被誘導車両として認識する。図4(B)に示すように、ダンプトラック1の一側方(右側方)は安全領域SZに入っているが、他側方(左側方)は誘導領域LZに入っている場合、誘導領域LZへ戻る可能性もあるので、ダンプトラック1を被誘導車両として認識する。図4(C)に示すように、ダンプトラック1の大部分は安全領域SZに入っているが、一部(左側方)は緩衝領域BZに入っている場合、不意に誘導領域LZへ進入する危険性を考慮して、ダンプトラック1を被誘導車両として認識する。
【0036】
報知手段55は、アスファルトフィニッシャ2側の無線送信機55aとダンプトラック1側の無線受信機7で構成される場合のほか、音声を直接出力するスピーカ6単独でも構成できる。あるいは、表示ランプや電光掲示板といった表示装置で可視表示による報知を行う構成でもよい。なお、無線送信機55aとしてFMトランスミッタを用いれば、音声信号をFMラジオの周波数に乗せて送信できるので、ダンプトラック1に取り付けられているFMラジオを無線受信機7として利用できる。また、ダンプトラック1の運転手が携行する無線通信端末装置(スマートフォンやタブレット端末など)を無線受信機7として利用することもできる。
【0037】
また、報知条件の一つは、被誘導車両であるダンプトラック1と人間である現場作業員FW1,FW2との離隔距離が、予め定めた接近閾値を下回る接近異常である。図1(B)に示すように、ダンプトラック1の後端部と現場作業員FW1との離隔距離β1が近接閾値以上であれば、報知条件判定手段53は、現場作業員FW1に対して近接異常なしと判定する。一方、ダンプトラック1の後端部と現場作業員FW2との離隔距離β2が近接閾値を下回っていれば、報知条件判定手段53は、現場作業員FW2に対して近接異常と判定する。なお、検知対象物位置特定手段52cは、認識された検知対象物の接地点を推定して検知対象物の位置を特定するため、ダンプトラック1の後端部の位置や現場作業員FW1,FW2の前後幅を正確に特定できないので、その誤差を見込んで近接閾値を設定してもよい。あるいは、ダンプトラック1の接地点である最後輪より荷台の後端までの補正値など、検知対象物に応じた位置補正情報を予め設定しておき、検知対象物に応じて検出位置を補正し、近接閾値と対比させるようにしてもよい。
【0038】
報知条件判定手段53が近接異常の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55が、近接異常の報知条件に適する報知内容での報知として、無線送信機55aから「左後方、作業員に注意してください」といった音声信号を送信し、ダンプトラック1の運転手に報せる。運転手への報知は、アラート音などで簡易に行うようにしてもよい。ダンプトラック1への報知と併せて、スピーカ6より「後退車両に注意してください」といった音声を出力し、現場作業員FW2や他の現場作業員FW1,FW3に注意を促す。なお、無線受信機7によるダンプトラック運転手への報知か、スピーカ6による現場作業員等への報知か、一方のみ行うようにしてもよい。
【0039】
また、ダンプトラック1をアスファルトフィニッシャ2まで誘導する上で、ダンプトラック1の後端部からアスファルトフィニッシャ2の前端部(目的位置DP)までの離隔距離α3は重要であるが、図1(B)に示すように、離隔距離α3が大きい場合は問題ない。慎重な誘導が必要となる位置にダンプトラック1が近づくまでは、運転手の技量に応じたスピードで誘導領域LZ内を後退して構わない。しかしながら、ダンプトラック1が目的位置DPにある程度近づくと、ダンプトラック1のスピードを落として左右のズレを補正しつつアスファルトフィニッシャ2に衝突しないように慎重な誘導が必要になる。
【0040】
そこで、報知条件の一つは、被誘導車両であるダンプトラック1から目的位置DPまでの離隔距離が、予め定めた第1警戒閾値を下回る第1警戒状態である。図5(A)に示すように、第1警戒閾値WL1の離隔距離α3は、目的位置DPまで比較的余裕のある距離となっており、目的位置DPに接近していることを運転手に報せて警戒感を持たせることができればよい。例えば、報知条件判定手段53が第1警戒状態の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55が、目的位置接近に適する報知内容での報知として、無線送信機55aから「近づきました。慎重にお願いします」といった音声信号を送信し、ダンプトラック1の運転手に報せる。運転手への報知は、アラート音などで簡易に行うようにしてもよい。なお、報知手段55が行う、目的位置接近に適する報知内容での報知は、1回だけでもよいし、離隔距離α3がより小さい第2警戒閾値(後に詳述)になるまで継続して行ってもよい。
【0041】
さらに、報知条件の一つは、被誘導車両であるダンプトラック1から目的位置DPまでの離隔距離が、第1警戒閾値よりも小さい第2警戒閾値を下回る第2警戒状態である。図5(B)に示すように、第2警戒閾値WL2の離隔距離α3は、目的位置DPまで残り僅かな距離となっており、より慎重な微調整で目的位置DPに到達しなければならないことを運転手に報せる必要がある。しかしながら、ダンプトラック1の荷台をアスファルトフィニッシャ2のホッパ部にコンタクトさせる最終的な位置合わせは、数センチ程度の移動を伴う微妙な誘導指示が必要となり、誘導支援装置5による誘導支援では十分な機能を果たせるとは言えない場合もある。そこで、報知条件判定手段53が第2警戒状態の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55は、無線送信機55aから「以後は、誘導員の指示に従ってください」といった音声信号を送信し、音声での誘導指示終了をダンプトラック1の運転手に報せる。運転手への報知は、アラート音などで簡易に行うようにしてもよい。
【0042】
また、第2警戒状態になると、以後の誘導指示を誘導員に委ねる場合、第2警戒状態になる前に誘導員が適所にスタンバイしている必要がある。そこで、報知条件判定手段53が第1警戒状態の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55が、誘導員へのアナウンスとして、スピーカ6から「係員はトラック誘導の準備をお願いします」といった音声出力を行い、現場作業員等に注意を促す。そして、報知条件判定手段53が第2警戒状態の報知条件が成立したと判定すると、これを受けた報知手段55が、誘導員へのアナウンスとして、スピーカ6から「トラックへの誘導指示をお願いします」といった音声出力を行い、スタンバイしている誘導員に誘導作業を委ねる。その後は、誘導員によってダンプトラック1に対する微妙な誘導指示が行われ、図3(C)に示すように、ダンプトラック1がアスファルトフィニッシャ2へ適切に誘導されることとなる。なお、アスファルトフィニッシャ2の運転手が誘導員の役割を兼ねるようにしてもよい。
【0043】
なお、アスファルトフィニッシャ2のホッパ部とダンプトラック1の荷台後端部との距離や左右のずれを、正確に計測できる距離センサ(例えば、レーザセンサや音波センサなど)を用いれば、数センチ程度の移動を伴う微妙な誘導指示が可能になる。そこで、アスファルトフィニッシャ2に設けた距離センサの計測データを誘導支援装置5に入力し、第2警戒状態になると、報知条件判定手段53が正確な距離センサからの計測データに基づいて報知条件の判定を行い、誘導指示を行うようにしてもよい。かくすれば、最終段階で誘導員に頼ることなく、最後まで誘導支援装置5による誘導指示を自動で適切に行うことが可能となる。
【0044】
報知条件判定手段53によって判定される報知条件は、1つに限らず、複数の報知条件が同時多発的に成立する可能性もある。そこで、報知条件判定手段53が複数の報知条件の成立を判定しており、全ての報知条件に応じた報知内容による報知を、報知手段55が同時に実行できない場合を考慮して、報知内容に優先順位をつけておく。報知優先順位の設定は任意であるが、例えば、車両と人との接触を防ぐために接近異常の報知条件を最優先とし、以下、片寄り異常の報知条件、第2警戒状態の報知条件、第1警戒状態の報知条件とする。この報知優先順位に基づいて、報知条件判定手段53は、成立を判定した報知条件のうち優先度の高い報知条件を選定し、選定した報知条件に適する報知内容での報知を報知手段55に指示すれば、優先度の高い報知内容による報知を実行できる。無論、同時に行うことが可能な報知条件が複数成立している場合(例えば、無線受信機7によるダンプトラック1への報知と、スピーカ6による現場作業員等への報知)には、優先順位が低い報知条件であっても、同時に報知動作を行うようにして構わない。また、成立した報知条件における優先順位を判定する機能を報知手段55に設けておき、報知手段55が報知対象とする報知条件を選定するようにしてもよい。
【0045】
上述したように、本実施形態の車両誘導アシストシステムでは、ダンプトラック1を目的位置DPまで安全に誘導する支援を行うために、単眼カメラ4によって取得した取得画像を誘導支援装置5に取り込む。誘導支援装置5の検知対象物特定手段52は、検知対象物としてダンプトラック1や左右型枠3a,3bなどを抽出する。誘導支援装置5の報知条件判定手段53は、左右型枠3a,3bの間に形成される誘導領域LZ内でダンプトラック1を誘導するために必要な報知条件の成否を判定する。報知条件判定手段53が判定した報知条件に適する報知内容での報知を報知手段55が行うことにより、被誘導車両を目的位置DPまで安全に誘導する支援が可能になる。
【0046】
なお、車両誘導アシストシステムは、被誘導車両に対する駐車ますへの誘導を支援するために使うことも可能である。この場合、駐車場における駐車ますの幅員を示す左右のサイドラインを一対の誘導指標とし、駐車ますの奥側を目的位置とすればよい。
【0047】
以上、本発明に係る車両誘導アシストシステムを実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての車両誘導アシストシステムを権利範囲として包摂するものである。
【符号の説明】
【0048】
1 ダンプトラック
2 アスファルトフィニッシャ
3a 左型枠
3b 右型枠
4 単眼カメラ
5 誘導支援装置
52 検知対象物特定手段
53 報知条件判定手段
55 報知手段
DP 目的位置
LZ 誘導領域
図1
図2
図3
図4
図5